特表2017-523922(P2017-523922A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-523922恒久的非粘着性被覆を有するゲルおよび製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-523922(P2017-523922A)
(43)【公表日】2017年8月24日
(54)【発明の名称】恒久的非粘着性被覆を有するゲルおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/00 20060101AFI20170728BHJP
   A61B 17/00 20060101ALI20170728BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20170728BHJP
【FI】
   B29C45/00
   A61B17/00
   B29C45/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-502787(P2017-502787)
(86)(22)【出願日】2015年7月16日
(85)【翻訳文提出日】2017年1月17日
(86)【国際出願番号】US2015040798
(87)【国際公開番号】WO2016011286
(87)【国際公開日】20160121
(31)【優先権主張番号】62/026,317
(32)【優先日】2014年7月18日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ボラノス エデュアルド
(72)【発明者】
【氏名】ブイ デニス
(72)【発明者】
【氏名】プラヴォン ブン
(72)【発明者】
【氏名】ピネル カルロス
(72)【発明者】
【氏名】チェハイェブ サム
【テーマコード(参考)】
4C160
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4C160MM21
4F202AA13
4F202AA45
4F202AB07
4F202AC06
4F202AH63
4F202AJ03
4F202AM10
4F202AR06
4F202CA11
4F202CB01
4F202CD22
4F202CM82
4F202CP06
4F202CS02
4F206AA13
4F206AA45
4F206AB07
4F206AC06
4F206AH63
4F206AJ03
4F206AM10
4F206AR06
4F206JA07
4F206JL02
(57)【要約】
本発明は、フッ素化超高分子量ポリエチレンの不連続層が非粘着性被覆をもたらすために恒久的にゲルパッドに結合する、非粘着性ゲルおよび非粘着性ゲルパッドの製造方法に向けたものである。ゲルパッドは、非粘着性表面を有する外科用アクセス装置を提供するために、ゲルキャップに組み込まれてもよい。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非粘着性ゲルの作製方法であって、
金型を用意するステップと、
フッ素化超高分子量ポリエチレンを金型に適用するステップと、
ゲルスラリーをその硬化温度を超えて溶融状態まで加熱し、それにより溶融ゲルを生成するステップと、
溶融ゲルを金型内に射出するステップと、
ゲルが固化してそれにより非粘着性ゲルを生成するまで金型を冷却するステップと
を含む方法。
【請求項2】
フッ素化超高分子量ポリエチレンを適用する前にブラスト媒体を金型に吹き付けることにより金型をテクスチャー加工する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フッ素化超高分子量ポリエチレンを適用する前に約220°Fから約260°Fの温度に金型を予備加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
フッ素化超高分子量ポリエチレンを静電塗装で金型に適用する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
フッ素化超高分子量ポリエチレンは約5μmから約100μmの粒径を有する粉体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
溶融ゲルを射出する前に約110°Fから約160°Fの温度に金型を予備加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ゲルスラリーはオイルおよびエラストマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ゲルスラリーはオイル対エラストマーの質量比約7:1から約10:1で含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
オイルは鉱油を含み、エラストマーはスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンポリマーのブロックコポリマーを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
ゲルスラリーを溶融状態に加熱する前に、ゲルスラリーをバルク状で脱気する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ゲルスラリーを約120°Fから約130°Fの温度にてバルク状で脱気する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
非粘着性ゲルの作製方法であって、
金型を用意するステップと、
フッ素化超高分子量ポリエチレンを金型に適用するステップと、
金型を約110°Fから約160°Fの温度に予備加熱するステップと、
ゲルスラリーを約125°Fの温度に加熱するステップと、
ゲルスラリーを脱気するステップと、
ゲルスラリーを金型内に分配するステップと、
ゲルスラリーに2回目の脱気をするステップと、
ゲルを金型内で約140°Fから約160°Fの温度で硬化して非粘着性ゲルをもたらすステップと
を含む方法。
【請求項13】
フッ素化超高分子量ポリエチレンを適用する前にブラスト媒体を金型に吹き付けることにより金型をテクスチャー加工する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ゲルスラリーはオイルおよびエラストマーを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
オイルは鉱油を含み、エラストマーはスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンポリマーを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
患者の体腔と患者の外側の領域との間の封止を維持しながら患者の体腔へのアクセスを実現するように適合された、リングとゲルパッドとを含むゲルキャップを備える外科用アクセス装置であって、
ここで、リングは、患者の体壁を貫通する切開により少なくとも部分的に画定されたアクセスチャネルの軸に対して一直線に配置され、
ここで、ゲルパッドは、リングと連結されており、実質的にリング内に配置され少なくとも部分的にそれによって支持されており、ゲルパッドはエラストマーとオイルとの混合物を含み、ゲルパッドは自己封止弁を備え、アクセスチャネルの少なくとも一部分を画定し、自己封止弁は自己封止弁を貫通する物体の周囲と一致するように構成され、自己封止弁を貫通する物体の不在下で作業チャネルを封止し、
ここで、ポリエチレン粉末の不連続層は恒久的にゲルパッドの外側表面と結合し、それにより非粘着性表面を創り出す、装置。
【請求項17】
ポリエチレン粉末は、フッ素化超高分子量ポリエチレン、非変性超高分子量ポリエチレン、酸化超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンの少なくとも1種を含む、請求項16に記載の外科用アクセス装置。
【請求項18】
エラストマーは、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリイソプレン、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマー、トリブロックコポリマー、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンの少なくとも1種を含む、請求項16に記載の外科用アクセス装置。
【請求項19】
オイルは、鉱油、植物油、石油、およびシリコーン油の少なくとも1種を含む、請求項16に記載の外科用アクセス装置。
【請求項20】
ゲルキャップは、調整可能な開創器に連結するように構成されている、請求項16に記載の外科用アクセス装置。
【請求項21】
非粘着性ゲルの作製方法であって、
ポリエチレン金型を用意するステップと、
ゲルスラリーをその硬化温度を超えて溶融状態まで加熱し、それにより溶融ゲルを生成するステップと、
溶融ゲルを金型内に分配するステップと、
ゲルが固化してそれにより非粘着性ゲルを生成するまで金型を冷却するステップと
を含む方法。
【請求項22】
非粘着性ゲルの作製方法であって、
金型を用意するステップと、
金型にポリエチレンスプレーを吹き付けるステップと、
ゲルスラリーをその硬化温度を超えて溶融状態まで加熱し、それにより溶融ゲルを生成するステップと、
溶融ゲルを金型内に分配するステップと、
ゲルが固化してそれにより非粘着性ゲルを生成するまで金型を冷却するステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は米国特許出願第62/026,317号、2014年7月18日出願の利益を主張する。そのすべての開示内容が参照により本明細書に組み込まれる。
技術分野
本発明は概して非粘着性被覆を有するゲルに関し、より詳細には恒久的な非粘着性被覆を有するゲルの製造方法に関する。アクセスポートなどの外科用具中に組み込まれるとき、そのようなゲルは特に有用である。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
「ゲル」は、沈殿または凝固したコロイドの半固体状態として定義されることが多い。ラテン語のgelare「凍らせる」からの派生にもかかわらず、ゲルはその液体/固体の特質が幅広く異なっており、ゲル状歯磨剤に見られるものなどのより流動的なゲルから、自転車のシートパッドに使用するものなどのより固体状のゲルにまで及ぶ。
その範囲の「固体」側の傾向があるゲルは、通常荷重分散を容易にするために使用される。基本的に荷重を支持できる領域の範囲を拡大する高い追従性をもたらすことにより、ゲルはこの機能を増強する。支持領域の拡大によって、荷重はかなり圧力が減少される。特に人体が係わる場所では、体組織内の毛細管血流維持のために減圧が望ましい。この点を念頭に置いて、ゲルは一般に、自転車のシート、リストパッド、インソール支持体、ならびにひじおよび肩のパッド用に使用される。
【0003】
ゲルの高い追従性および広範な伸長性は相当の価値があり、ゲルは封止の形成で特に興味を持たれてきた。トロカールおよびその他の外科用アクセス装置(アクセスポートを含む)で使用する封止で、手術器具(または外科医の手)の存在下、および手術器具の不在下の両方で、その中に封止が形成されなくてはならないような場合である。
一般に、アクセス装置は、腹壁などの体壁を横切って、腹腔などの体腔内へ、手術器具へのアクセスを実現することを意図した外科用具である。作業環境の操作空間を拡張するために、体腔を気体、通常は二酸化炭素で加圧することが多い。このような状況下では、アクセス装置は、封止を通して配置された手術器具がある、なしの両方で、加圧ガスの損失を防ぐために適切な封止を備えなければならない。ゲル材料で形成された封止は、高い追従性、著しい引裂強度および並はずれた伸長性をもたらし、そのためアクセスポートとして特に有用である。
【0004】
ゲルはその有利な特性のために多くの用途の候補となってきたが、1つの欠点によってその使用がひどく制限されてきた。ほとんどのゲルは極端に粘着性である。この特質のみのために、ゲルは製造が困難で、使用が嫌われる。
自然に非粘着性であるゲルを生み出すための試みが行われてきた。しかしながら、このような自然に非粘着性のゲルは、特に圧縮荷重下では、少量の熱によって急速に材料が固化して歪む原因となるので、特に熱耐性ではない。この現象は、例えば通常の室温でさえも長期間に渡ることにより発生し得る。
粘着性のゲルを非粘着性のポーチで囲むための試みが行われてきた。これはまた有利な特性をも覆ってしまうきらいがあり、製造コストを著しく増加させる傾向がある。
粘着性を低減するために、表面にシリコーン油などの潤滑剤が適用されてきた。残念ながら、これらの潤滑剤は、ゲルをその生来の粘着性状態で残したまま、経時的に乾ききってしまう傾向がある。
デンプンを含めて、粉末が粘着性表面に適用されてきたが、結果としては持続時間と効果の両面で限度があった。加えて、ブロッキング剤としてのデンプンベース粉末の使用、および製作中のブロッキング剤の適用は、製造コストを増加させ、追加の清掃ステップを必要とする可能性があり、粉末をつけたゲル製品製作のための製造時間を著しく増加させる。
【0005】
デンプンのブロッキング剤は、細菌およびその他の微生物に増殖培地をもたらすことになり、さらに製造を複雑なものにする。この点を補償するために、ゲルを組み込む医療機器は通常、より高い滅菌線量が照射される。しかしながら、高い滅菌線量は機器の材料の機械的特性を損なうことが知られている。また、コーンスターチはゲル表面に永久的に融着する訳ではないので、湿潤により容易に除去され、粘着性ゲルを露出させ、コーンスターチ残渣を発生させる。
前述のとおり、最良のゲル材料は非常に粘着性な表面を示す傾向がある。粘着性ゲルを使用することは製造プロセスを作り出し、封止およびアクセス装置にゲルを使用することは極端に困難である。粘着性ゲルはまた、器具挿入の間に著しい抵抗力を生む。さらに、粘着性表面は、製造および処理のプロセスの間に粒子状物質を引き寄せて保持する傾向がある。これらの理由により、アクセスポートおよびその他の同様の機器などの医療機器の場合には、高粘着性ゲル表面を非粘着性にすることがなお一層望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、非粘着性ゲル、および、型金型を用意するステップと、フッ素化超高分子量ポリエチレンを金型に適用するステップと、ゲルスラリーをその硬化温度を超えて溶融状態まで加熱し、それにより溶融ゲルを生成するステップと、溶融ゲルを金型内に射出するステップと、ゲルが固化してそれにより非粘着性ゲルを生成するまで金型を冷却するステップを含む、非粘着性ゲルパッドの製造方法を対象とする。
一実施形態では、フッ素化超高分子量ポリエチレンを適用する前に、ブラスト媒体を金型に吹き付けることにより、金型をテクスチャー加工(textured)する。別の実施形態では、フッ素化超高分子量ポリエチレンを適用する前に、約220°Fから約260°Fの温度に金型を予備加熱する。あるいは、フッ素化超高分子量ポリエチレンを静電塗装で金型に適用する。
【0007】
一実施形態では、フッ素化超高分子量ポリエチレンは、約5μmから約100μmの粒径を有する粉体を含む。
一実施形態では、溶融ゲルを射出する前に、約110°Fから約160°Fの温度に金型を予備加熱する。
一実施形態では、ゲルスラリーは、オイルおよびエラストマーまたはエラストマーを含む。一実施形態では、ゲルスラリーは、オイル対エラストマーの質量比約7:1から10:1で含む。オイルは鉱油を含んでよく、エラストマーはスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンポリマーのブロックコポリマーを含んでもよい。
【0008】
方法の別の実施形態では、ゲルスラリーを溶融状態に加熱する前に、ゲルスラリーをバルク状で脱気する。一実施形態では、ゲルスラリーを約120°Fから約130°Fの温度でバルク状で脱気する。
非粘着性ゲル作製の代替の方法は、金型を用意するステップと、フッ素化超高分子量ポリエチレンを金型に適用するステップと、金型を約110°Fから約160°Fの温度に予備加熱するステップと、ゲルスラリーを約125°Fの温度に加熱するステップと、ゲルスラリーを脱気するステップと、ゲルスラリーを金型内に分配するステップと、ゲルスラリーに2回目の脱気をするステップと、ゲルを金型内で約140°Fから約160°Fの温度で硬化して非粘着性ゲルをもたらすステップとを含む。
この実施形態では、ゲルスラリーは、オイルとエラストマーとを含む。オイルは鉱油を含んでもよく、エラストマーはスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンポリマーを含んでもよい。金型はフッ素化超高分子量ポリエチレンを適用する前に、ブラスト媒体を金型に吹き付けることにより、テクスチャー加工してもよい。
【0009】
本発明はまた、患者の体腔と患者の外側の領域との間の封止を維持しながら患者の体腔へのアクセスを実現するように適合された、リングおよびゲルパッドを備えるゲルキャップを備える外科用アクセス装置であって、ここで、リングは、患者の体壁を貫通する切開により少なくとも部分的に画定されたアクセスチャネルの軸に対して一直線に配置され、ここで、ゲルパッドは、リングと連結されており、実質的にリング内に配置され、少なくとも部分的にそれによって支持されており、ゲルパッドはエラストマーとオイルとの混合物を含み、ゲルパッドは自己封止弁を備え、アクセスチャネルの少なくとも一部分を画定し、自己封止弁は自己封止弁を貫通する物体の周囲と一致するように構成され、自己封止弁を貫通する物体の不在下で作業チャネルを封止し、ここで、ポリエチレン粉末の不連続層は恒久的にゲルパッドの外側表面と結合し、それにより非粘着性表面を創り出す、装置も対象とする。
【0010】
一実施形態では、ポリエチレン粉末は、フッ素化超高分子量ポリエチレン、非変性超高分子量ポリエチレン、酸化超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンの少なくとも1種を含む。
一実施形態では、エラストマーは、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリイソプレン、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマー、トリブロックコポリマー、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンの少なくとも1種を含む。
一実施形態では、オイルは、鉱油、植物油、石油、およびシリコーン油の少なくとも1種を含む。
【0011】
一実施形態では、外科用アクセス装置のゲルキャップは、調整可能な開創器に装着するように設計されている。
本発明は、ポリエチレン金型を用意するステップと、ゲルスラリーをその硬化温度を超えて溶融状態まで加熱し、それにより溶融ゲルを生成するステップと、溶融ゲルを金型内に分配するステップと、ゲルが固化してそれにより非粘着性ゲルを生成するまで金型を冷却するステップとを含む非粘着性ゲルの作製方法も対象とする。
本発明は、金型を用意するステップと、金型にポリエチレンスプレーを吹き付けるステップと、ゲルスラリーをその硬化温度を超えて溶融状態まで加熱し、それにより溶融ゲルを生成するステップと、溶融ゲルを金型内に分配するステップと、ゲルが固化してそれにより非粘着性ゲルを生成するまで金型を冷却するステップとを含む非粘着性ゲルの作製方法も対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のアクセス装置の上面斜視図である。
図2図1のアクセス装置の底面斜視図である。
図3】キャップを形成する部品の端部内に形成された、押し込み解放するバックルコネクターを有する、多部品キャップの上面斜視図である。
図4】押し込み解放するバックルコネクターの一端を固定するオスと押し込み解放するバックルコネクターの他端を固定するメスとを有するキャップの部品の1個の上面斜視図である。
図5】割れ目の片側に回動可能に連結されるラッチと割れ目の他方の側にラッチを受けるための溝とを備える割れ目を有するキャップの上面斜視図である。
図6】キャップを保持器に解除可能に連結するためのラッチを有するキャップの上面斜視図である。
図7図6のキャップの側面図である。
図8】キャップと保持器とを含む本発明のアクセス装置の上面斜視図であり、保持器は、保持器をキャップに解除可能に連結するための複数のスナップを有する。
図9図8のキャップの上面斜視図である。
図10図8の保持器の上面斜視図である。
図11図8のキャップと保持器との間の相互作用を描いた断面図である。
図12】キャップと保持器とを含む本発明のアクセス装置の上面斜視図であり、キャップは、キャップを保持器に解除可能に連結するための複数のスナップを有する。
図13図12のキャップの上面斜視図である。
図14図12の保持器の上面斜視図である。
図15図12のキャップと保持器との間の相互作用を描いた断面図である。
図16】非粘着性のゲルキャップを製作するための1種のプロセスを例示する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
非粘着性ゲルの製作方法を本明細書で開示する。医療製品を参考に、より詳細には、腹腔鏡手術用のアクセスシステムで使用するためのゲルパッドを参考に説明したが、そのようなゲルは、非医療用での使用を含めて広範囲の応用で使用でき、本開示によりそのようなすべての応用が企図される。
【0014】
本発明の一態様による外科用アクセス装置50を図1および図2に示す。装置は保持器52およびキャップ54を備える。キャップ54および保持器52は共に実質的に環状であり、共にそこを通す開放部を備える。保持器52は体壁に対して設置されるように適合されている。保持器52は、一態様では、剛性があり、延長スリーブ56を伴い、および/または連結可能である。外科用アクセス装置50は、体壁の切開部に対して配置するように適合されている。外科用アクセス装置50はまた、アクセス装置を通す器具の挿入を容易にし、その器具との間で封止の関係を維持することを容易にする。
【0015】
一態様では、延長スリーブ56は、装着している保持リング58が体腔の内部部分に接触して、体腔の外側の保持器52と保持リングとの間に張力を提供する点まで、切開部を貫通する。保持器52はまた一態様では、延長スリーブ56の一部分が体腔の外側に残留することを支持し、または可能にする。加えて、保持器52、保持リング58および延長スリーブ56は共に、外科処置の間、切開部を開いて隔離することを可能にする。一態様では、延長スリーブ56であり、その外観は、米国特許第7,650,887号に記載のものなどの開創器金型の装置であり、この開示は全体が本明細書中で説明されたかのように参照により本願に組み込まれる。
【0016】
示したように、保持器52および保持リング58は環状であるが、当業者はそれらが異なる形状および大きさでもよいと認識すると思われる。保持器52は一態様では、剛性でも、可撓性でも、または両方の組合せでもよい。保持リング58は、体腔内への挿入を容易にするために可撓性でもよい。さらに詳細に記述するように、アクセス装置50は、キャップ54と保持器52とを共に連結するのに適した連結手段を備える。
ゲルパッド60は、キャップ54に連結され、装着され、形成され、または一体化されて、それによりキャップとスリーブ56との間に気密導管を形成する。ゲルパッド60はキャップ54において全開放部を覆って封止する。一態様ではゲルパッドは、ゲルパッド60へのアクセス部分または通路を形成する複数の交差する行き止まりスリット62、64を備える。気泡ゴムまたは他の同様な種類の弾性材料とは異なり、ゲルパッド60は、それを通して挿入される様々な形状および大きさの手または器具の周囲に気密封止をもたらす。
【0017】
一態様では、ゲルパッド60を作製するゲル材料は、弾性ゲルである。そのようなゲルのいくつかは、米国特許第7,473,221号、米国特許第7,481,765号、米国特許第7,951,076号および米国特許第8,105,234号に記載されており、これらの開示は、全体が本明細書中で説明されたかのように参照により本願に組み込まれる。ゲルは、トリブロックコポリマーをその中間ブロックの溶媒と混合することにより調製できる。末端ブロックは通常、スチレンなどの熱可塑性材料であり、中間ブロックはイソプレンまたはブタジエンなどの熱硬化性エラストマーであり、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)である。一態様では、使用する溶媒は鉱油である。この混合物またはスラリーを加熱することにより、中間ブロックは鉱油に溶解し、不溶である末端ブロックの網目構造を形成する。得られた網目構造は、元のコポリマーを超えて強化された弾性特性を有する。一態様では、使用したトリブロックコポリマーは、スチレン対ゴム比で33/67を有するKRATON G1651である。いったん形成されると、ゲルは実質的に恒久的であり、末端ブロックの性質により、この後は熱可塑性エラストマーとして処理可能である。混合物またはスラリーはゲル化する最低温度、すなわち最低ゲル化温度(MGT)を有する。この温度は、一態様では、熱可塑性末端ブロックのガラス転移温度プラス数度に相当する。例えば、KRATON G1651と鉱油との混合物のMGTは約120℃である。スラリーがMGTに到達するとき、ゲル状態への変態が起こり、ゲルはより透明になり、それによりスラリーからゲル状態への変態が実質的に完了した時の視覚的な確認手段がもたらされ、それでゲルは冷却できる。トリブロックに加えて、使用できる材料のジブロック版もまたあり、スチレンが化学式の一端だけに存在する、例えばスチレン−エチレン/ブチレン(SEB)である。
【0018】
所与のスラリーの塊が完全なゲルに形成されるために、スラリーのすべての塊をMGTまで加熱し、末端ブロックが相互に接続した基質を形成するために十分な時間、MGTでの加熱を維持する。スラリー/ゲル内の成分が分解または酸化し始める温度にスラリー/ゲルが達するまで、スラリーは、MGTを超える温度でゲルを形成し続けることになる。例えば、スラリー/ゲルが250℃を超える温度で加熱されるとき、スラリー/ゲル中の鉱油が揮発し始め、酸化し始めることになる。酸化は、ゲルが茶色に変わり、油っぽくなる原因となり得る。
【0019】
スラリーの所与の量がゲルを形成する速度は、スラリーの塊全体がMGTに到達する速度に依存する。また、MGTよりも高い温度を適用することにより、末端ブロックの網目構造がより高速に分布し形成されるので、この速度はさらに高められる。
様々な中間的な特性を達成するために、様々な基本的化学式を互いに合わせることもできる。例えば、KRATON G1701Xは、SEBを70%、SEBSを30%の混合物で、全体のスチレン対ゴム比が28/72である。ほとんど無限の数の組合せ、合金およびスチレン対ゴム比を処方することができ、そのそれぞれが本発明の特定の実施形態に利点を提供できることが認識できる。これらの利点には通常、低硬度、高伸び率および良好な引裂強度を含む。
【0020】
ゲル材料はまた、シリコーン、軟質ウレタンおよびより硬質のプラスチックさえも含むことができ、発泡剤の添加と合わせて所望の封止品質をもたらし得ることが企図される。シリコーン材料は、電子回路の封止用に現在使用されている種類でもよい。より硬質なプラスチックには、PVC、イソプレン、純粋KRATON、および他のKRATON/オイル混合物を含んでもよい。KRATON/オイル混合物では、植物油、石油およびシリコーン油などのオイルを鉱油と置き換えることができる。
強化した潤滑性、外観、および創傷保護などの異なる特性を達成するために、企図されるいかなるゲル材料も改変され得る。添加剤を直接ゲル中に組み込んでもよく、または表面処理として適用してもよい。ゲルの物性を改変するために、または結合部位もしくは表面電荷を提供することによってその後の表面の改変を支援するために、その他の化合物もゲルに添加できる。加えて、異なる色のゲルを創り出すために、オイル系着色剤をスラリーに添加できる。
【0021】
鉱油対KRATON G1651の比率は、所望のゲルの特質およびゲルパッドの鋳造方法に応じて変化し得る。一態様では、本明細書で説明するキャップの様々な実施形態で使用する混合物/スラリーは、鉱油約90質量%、KRATON G1651約10質量%の9対1の比率で構成される。本明細書で説明するように、この比率は低温鋳造プロセスで特に有用である。別の態様では、混合物/スラリーは、鉱油約89質量%、KRATON G1651約11質量%の8対1の比率で構成される。また本明細書で説明するように、この比率は高温鋳造プロセスで好ましく使用される。熱力学的観点からは、これらの混合物は鉱油と同様の挙動をする。鉱油は相当な熱容量を有しており、そのため約130℃で、1ポンドのスラリーを加熱して、十分に均質なゲルを形成するために、3から4時間かかり得る。いったん形成したら、ゲルに明らかに有害な影響が無い状態で、ゲルを現実的に出来るだけ早く冷却できる。この冷却は、一態様では、冷水浸漬で成される。別の態様では、ゲルは空冷してもよい。当業者は、当技術分野でよく知られたその他の冷却技術も採用できると認識すると思われ、本発明の範囲内と考えられる。
【0022】
KRATON/オイル混合物の多くの特性は、その成分の質量比の調整で変化することになる。一般的に、鉱油の割合が大きくなるほど、混合物は硬さを減じ、KRATONの割合が大きくなるほど、混合物はより硬くなる。得られたゲルが軟質過ぎると、手術中に患者の腹腔に気体が吹きこまれたとき、ゲルキャップが過度にテント状またはドーム状になることを引き起こし得る。過度なテント状またはドーム状では、スリット62、64を開く原因となることがあり、漏洩経路をもたらす。加えて、ゲルが軟質過ぎると適切な封止をもたらさないことになる。ゲルは外科医にとって快適であるように十分に軟質であるべきであるが、その一方で同時に、器具の存在下および器具の不存在下の両方で、良好な封止をもたらすべきである。
【0023】
スラリーを長期間放っておくと、KRATONなどのコポリマーと、鉱油などの溶媒とが分離する恐れがある。スラリーをより均質にするために、スラリーを高せん断力羽根などで混合してもよい。しかしながら、スラリーを混合することは、空気をスラリーに導入または加えることになる。スラリーから空気を除去するには、スラリーを脱気してもよい。一態様では、スラリーは真空チャンバ内などの真空中で脱気できる。一態様では、適用される真空は水銀柱0.79メートル(29.9インチ)、すなわち約1.0気圧である。空気の除去を容易にするために、スラリーが真空下にある間、スラリーを撹拌してもよい。真空中での脱気の間、スラリーは通常膨張し、その後起泡し、その後体積が縮小する。起泡が実質的に終了したとき、真空を止めることができる。真空チャンバ中でのスラリーの脱気で、スラリーの体積は約10%縮小する。スラリーの脱気は、仕上がったゲルが酸化する可能性を低下させるのに役立つ。
【0024】
スラリーの脱気は得られたゲルをより硬くする傾向がある。鉱油約91.6質量%およびKRATON G165を約8.4質量%の11対1の比率で構成された脱気したスラリーは、結果として、鉱油約90質量%およびKRATON G1651約10質量%の9対1の比率で構成された非脱気のスラリーから作製されたゲルと、ほぼ同等の硬さを有するゲルになる。
鉱油はKRATONよりも低密度であり、混合後に2種の成分は、より軽い鉱油が容器の上部に上がって分離することになる。この分離は、静置したスラリーを数時間後にゲルに形成する試みの時に起こることがある。その分離は、得られたゲルが上部では鉱油をより高濃度に有し、下部ではより低濃度である、例えば非均質性ゲルの原因となり得る。分離の速度は、加熱されるスラリーの深さまたは頂上高さの関数である。頂上高さと、ゲルが固化する温度と、エネルギーがゲルに移転できる速度と組み合わせるスラリーの塊が、均質なゲル対不均質なゲルを決定するまたは結果となる要因として含まれる。
【0025】
本発明の様々な態様でのゲルパッドまたはゲルキャップは、ガンマ線滅菌できる。例えば、ガンマ線対酸化エチレンなど、ゲルパッドおよびゲルパッド付き装置の滅菌プロセスを適格なものとするの相対的または比較的な単純さが望まれる。しかしながら、ガンマ線滅菌下では、ゲルパッド内に大きな泡が形成され、滅菌された装置の潜在的な外見または美的な問題の原因となる。泡は99%超が室内の空気であり、そのためスラリー中に溶解した空気の除去は、スラリーをゲルに形成する前になされる。例えば、前述したように、スラリーは真空によって脱気され、加熱によりゲルに変わることができる。泡は、ガンマ線滅菌の間にもゲル中で依然として形成し得るが、約24から72時間で消滅する。一態様では、室温での鉱油中の溶解ガスの割合は約10%である。ゲル中の空気の除去は、ゲルをより硬くする付加的な効果を有する。このことはしかしながら、ガンマ線滅菌の間のガンマ線照射に起因するゲルの軟化効果により相殺される。
【0026】
ゲルパッドをガンマ線滅菌する場合、ゲルは、鉱油約89〜90質量%およびKRATON約10〜11質量%含むことができる。上述のとおり、スラリーの脱気はゲルをより硬くする効果を有する。しかしながらガンマ線照射は、鉱油約89〜90質量%およびKRATON約10〜11質量%有し、脱気もガンマ線滅菌も行わないゲルと、実質的に同一の硬さまでゲルを軟化させる。
一態様では、シアノアクリレート、例えばSUPERGLUEまたはKRAZY GLUEを、ゲルパッド60をキャップ54に結合または連結または装着するために使用することができる。接着剤は、ゴムまたはトリブロックのスチレン成分に付着でき、その結合はゲル材料自体よりも強固であることが多い。別の態様では、キャップ中のプラスチックおよびゲル中のポリスチレンを溶解するために、溶媒を使用できる。溶媒の液を、スプレーまたは浸漬のどちらかの形態でゲルパッドおよびキャップに適用する。実際、溶液はキャップのプラスチックとゲルパッド中のポリスチレンとの両方を溶かし、溶媒が蒸発したときに残留するその2種の間に化学結合を形成できる。
【0027】
ポリエチレンは鉱油に溶解でき、次いでゲルパッドに適用できる。鉱油は蒸発しないが、経時的にゲルパッド中に吸収され、ゲルパッド上にいくつかの有益な特性を有することになるポリエチレン層を付与する。
一態様では、ゲルパッド60は、DYNAFLEXまたはKRATONのポリマー支持構造の中に鋳造され、例えばキャップ54である。KRATONポリマーまたは同様の材料をキャップに使用することにより、ゲルパッド60とキャップ54との間に環状の接着が成され得る。ゲル中のポリスチレンは、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリスチレンおよび他のポリマーと接着できることにより識別される。
【0028】
キャップ54は、一態様では、ポリマー、例えばポリエチレン(PE)を含む。一態様では、ポリエチレンは低密度ポリエチレン(LDPE)もしくは高密度ポリエチレン(HDPE)、または超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)である。一態様では、キャップ54はポリカーボネートなどのポリマーで作製されてもよく、射出成形を含む方法で製作されてもよい。
ゲルは鉱油を含む。PEは鉱油よりも高い分子量を有する。PEは高温で鉱油に溶解する。このように、PEとゲルパッド60中の鉱油とを混合した両方を加熱し、約130℃を超える温度で保持するので、PEとゲルパッドとの間に結合を形成する。
一態様では、キャップ54はポリカーボネートを含む。キャップ54のポリカーボネートは、130℃ではゲルパッド60との結合を形成しない。しかしながら、鋳造中に数分間温度を約150℃に上昇させることにより、ゲルパッド60とキャップ54との間に結合が生じる。このようにして、ゲルのポリスチレンとポリカーボネートとの両方が同時にそれらの融点を超える温度までゲルパッド60およびキャップ54を加熱することにより、ゲルパッドとキャップとの間で結合を形成する。あるいは、ゲルパッド60およびキャップ54をポリカーボネートキャップのガラス転移温度またはその近傍まで加熱して、ゲルパッドとキャップとの間に結合を形成することができる。
【0029】
図3図5を参照すると、キャップ100、130は、キャップの環状の周囲長に沿って少なくとも1個の割れ目101、132を備える。少なくとも1個の割れ目101、132は、キャップ100、130の少なくとも1個の第1の末端103、134と少なくとも1個の第2の末端105、138とを創り出す。割れ目101、132は、第1の、より大きな周囲から第2の、より小さい周囲へのキャップの移行を容易にする。より詳細に以下で説明するが、キャップ100、130は第2の、より小さい周囲にキャップを維持する手段を備える。キャップ100、130を第1の、より大きな周囲に固定するとき、保持器52(図1)をキャップの開放部に挿入したり、またはそこから除去したりできる。保持器52(図1)は、保持器がキャップの開放部の内部に位置しているときに、キャップの周囲長を第2の、より小さい周囲へ転換することにより、キャップ100、130に固定して連結され、維持手段を用いてキャップの周囲を第2の、より小さい周囲に維持することができる。
【0030】
図3図4を参照すると、キャップ100は、キャップに形成された、またはキャップに連結された押し込み解放バックル102を組み込んでいる。キャップ100は、第1の円弧108および第2の円弧110を備え、第1および第2の円弧は第1および第2の割れ目101により分離されている。第1の円弧108は、第2の円弧110の第2の末端から延びている第2の、受け部114と、噛み合った状態で固定するスナップ内に挿入されるように適合された、第1の末端から延びる第1のかえし部分112を有し、それによりキャップ100の少なくとも1個の第1の末端103をキャップの少なくとも1個の第2の末端105に連結する。もう一方のかえし部分112は、第2の円弧110の第1の末端から延びており、第1の円弧108の第2の末端105から延びているもう一方の受け部114と噛み合った状態で固定するスナップに、操作をして挿入する。別の態様では、第1の円弧108は、円弧の各末端にかえし部分112を有し、第2の円弧110が第2の円弧の各末端に、対応する受け部114を有する状態である。
【0031】
互いに隣接して位置する第1および第2の円弧108、110で、第1の円弧の第1の末端103は第2の円弧の第2の末端105に対応し、第1の円弧の第2の末端105は第2の円弧の第1の末端103に対応するようになっており、合わせてカチッと留める前に、2つの円弧の間に保持器52(図1)を設置できるように、円弧は第1の、より大きな周囲を画定する。かえし部分112は対応する受け114と噛み合い、円弧どうしを連結する。各かえし部分は、複数の弾力のあるアーム122を有し、そのうちの2個はそこから延びる突起124を有する。各受け114は、かえし部分からの噛み合わせ突起124のための対応する側壁126を有し、それによりアームは受けによって画定されたチャネル128にスライドして入るので、アーム122が互いの方に曲がる原因となる。突起124は側壁126の端部を乗り越えるので、アーム122は互いに離れて曲がることができる。突起124の縁と側壁126の端部の縁との間の噛み合わせまたは接触により、円弧108、110が互いに外れるのを妨げる。保持器52(図1)を捕捉または保持するために、2つの円弧108、110を共に連結することにより、円周の境界を第2の、より小さい周囲まで縮小する。アーム122を互いの方に曲げることにより、かえし部分112は対応する受け114の側壁からの噛み合わせが解かれ、受けから滑り出て、その結果円弧108、110が分離して、保持器52(図1)から外れる。
示してはいないが、キャップ100と保持器52(図1)との間の連結を支えるため、またはキャップおよび/もしくは保持器のその他の大きさおよび形状の構成を可能にするために、スナップで噛み合わせる追加のかえし部分および受けが、各円弧に備えられてもよい。一態様では、単一の割れ目101および単一のかえし部分112および受け部114を備えるキャップ100が提供される。一態様では、単一のかえし部分112および受け部114を有するキャップ100は、円弧の別の部分に、蝶番または旋回軸を付けて提供されてもよい。
【0032】
ここで図5を参照すると、キャップ130は、割れ目すなわちキャップの周囲の部分に沿った開放部132を有する。ラッチ136は、キャップ130の開放部132の第1の末端134の近傍に、蝶番または回転可能にキャップに連結する。ラッチ136を解放可能に受けるために、開放部132の第2の、反対側の末端138の近傍に、開口部またはチャネル140などのラッチ受け部が、実質的に平行なチャネル壁142、144で画定されて構成される。ラッチ136は、一端でキャップ130に連結するシャフト146を有し、ラッチの蝶番になっていない末端のシャフトの周囲長または直径よりも大きい周囲長または直径を有する拡大した、または球根状のヘッド148を有する。ラッチ136のヘッド148は握ることができてラッチを振るように構成されており、チャネル壁142、144で画定されるチャネル140中に、ヘッドを噛み合わせて保持されるようにする。チャネル140の幅は、ラッチ136のヘッド148の直径よりも小さく、チャネル壁142、144は弾力があって、ラッチのヘッドを受ける間は、壁が相互に離れて曲がるようになる。あるいは、または追加で、ヘッド148の一部が縮み、ヘッドがチャネル140中に受けられ、保持され得る。一態様では、ラッチ136をチャネル140にしっかりと留めるために、1つまたはそれ以上の突起が一方または両方のチャネル壁142、144から延びて、ヘッド148の切欠と噛み合わせる、または逆も同様である。
【0033】
このように、ラッチ136が開放、すなわちチャネル140と噛み合わない状態では、キャップ130の最初の周囲は、キャップの周囲内に保持器52(図1)を単純に置くことができる。ラッチ136を作動させることによりキャップ130を閉め、キャップで区切られる周囲の大きさが減少し、それによりキャップは保持器52(図1)をしっかりと留める。
【0034】
図3図5に戻って参照すると、キャップ100、130が分離可能、またはばらばらな状態では、キャップの内周内のそれぞれの保持器52(図1)の位置は、解放されている。続いてキャップを共に結合または再連結することにより、保持器とキャップとを互いにしっかりと留める。このようにして、当業者は、キャップと保持器とを共に包むまたはしっかりと留める、およびその逆のために、キャップおよび/または保持器の分離した部分を共に連結または結合することにより周囲を閉めるまたは区切るため、他の種類の連結または噛み合わせも使用できると認識するであろう。一態様では、保持器、または保持器とキャップとの両方は、キャップと保持器とを互いにしっかりと留めるために、分離した部分を共に再連結する連結器および/または噛み合わせを有することにより、分離可能である。
【0035】
図6図7では、保持器150は、保持器をキャップ54(図1および図2)に解除可能に連結するための、1つまたはそれ以上のラッチ152を有する。一態様では、複数のラッチ152は、保持器150の周囲に沿って一定の間隔を保つ。ラッチ152は、保持器150に蝶番または回転可能に連結され、保持器の周囲に沿って一定の間隔を保つ。一態様では、各ラッチは保持器150にライブヒンジ(live hinge)で連結する。第1の位置では、ラッチ152は、保持器と実質的に平面な関係で、保持器150の周囲から横に延びる。各ラッチ152は、ラッチから実質的に直交して延びる突起156を有する。キャップ54を保持器150上に置く、もしくは取り付けた後、および/またはその逆で、キャップと保持器とを共に連結するためにラッチ152を作動させる。特に、保持器をキャップに連結するために、ラッチ152を、ラッチがキャップ154の部分または縁と噛み合うキャップの方の第2の位置へ回転させる。一態様では、キャップ54の噛み合い部分は、ラッチ152の突起をキャップにしっかりと留めるための、開放部、開口部、切欠、段差、突起またはその他の同様な種類の受けまたは噛み合いである。
【0036】
一態様では、保持器150をキャップに連結するために、1つまたはそれ以上のラッチ152は、キャップ54から横に延びる対応する突起または隆起部を受けるための切欠または開放部を有する。加えてまたはその代わりに、示してはいないが、キャップと保持器とを共に解除可能に連結するために、キャップは、保持器の部分または縁と噛み合うための、キャップの周囲に沿って蝶番状になった、1つまたはそれ以上のラッチを有してもよい。
【0037】
ここで図8図11を参照すると、保持器160は、保持器とキャップ164とを共に解除可能に連結するために、1つまたはそれ以上の弾力のあるスナップ162を有する。スナップ162は、保持器160の外周または縁から、保持器の実質的に平面状で環状の表面166から実質的に垂直な方向に延びる。保持器160の平面状で環状の表面166は、スリーブ56(図1および図2)を保持器にしっかりと留める。一態様では、表面166は、スリーブ56を保持器160に張力の下で受け止めてしっかりと留めるための突起またはフックを有する。保持器160の縁はまた、スリーブ56の保持と、保持器の操作を助けるために、やや上がっている。
【0038】
複数のスナップ162は保持器160の周囲に沿って一定の間隔を保ってもよい。一態様では、各スナップに隣接した保持器160の縁の部分を高めて、それにより各スナップの両側に側壁部167を形成する。側壁部167はスナップ162を保護し、保持器160とキャップ164との間が一度連結すると、その連結を強化し、または支える。加えて、側壁部167は、取扱を容易にし、保持器160をキャップ164に連結することを容易にする。保持器160の側壁部167を受けるために、対応する開放部または切欠169を、キャップ164の縁に沿って配置する。
【0039】
各スナップ162はまた、スナップと実質的に垂直に、スナップから半径方向の内側に向けて延びる突起168を有する。キャップ164を保持器160の上に置く、または取り付けた後で、および/またはその逆の後で、両者を共に押し込む。キャップと保持器とを噛み合った状態で共に運ぶとき、スナップ162は、半径方向の外側に曲がる、またはそることにより、キャップ164のへりの部分または縁などの対応する受け部170を摺動して越えるよう構成されている。スナップ162はまた、スナップ上の突起168が、キャップ164の受け部170を通過して、スナップの突起がキャップの受け部170と噛み合うようになった後で、中立位置に戻るように構成されている。受け部170は、一態様では、スナップ162の突起168がキャップ164をしっかりと留めるために、開放部、開口部、切欠、段差、突起またはその他の同様な種類の受けまたは噛み合い手段を有する。あるいは、保持器160のスナップがキャップ164をしっかりと留めるために、1つまたはそれ以上のスナップ162は、キャップから延びる対応する突起または隆起(図示せず)を受けるための切欠または開放部(図示せず)を有する。キャップ164および保持器160はそれぞれ射出成形によって作製できる。加えて、キャップ164および保持器160はそれぞれポリカーボネート材料から作製できる。
一態様では、図12図15に示すように、キャップ180は、キャップを保持器184に解除可能に連結するために、1つまたはそれ以上のスナップ182を有する。保持器184の対応するへり部分および/または縁などの部分188と噛み合うために、スナップ182は、キャップ180の周囲から垂直に延びる。各スナップ182は、スナップと実質的に垂直に、スナップから半径方向の内側に向けて延びる突起186を有する。キャップ180を保持器184の上に置くまたは取り付けた後、両者を共に押し込む。スナップ182は、半径方向の外側に曲がる、またはそることにより、保持器184のへりまたは縁188を摺動して越えて、キャップ180と保持器とを噛み合った状態で共に運ぶとき、それによってキャップ、保持器およびその間に配置されたスリーブ56をしっかりと留める。各スナップ182は、スナップ上の突起186が、保持器184のへり部分188を通過して、スナップの突起が保持器のへり部分と噛み合うようになった後で、中立位置に戻るように構成されている。
【0040】
ここで図1図15を参照すると、一態様としてこれまで説明した保持器とキャップは剛性であり、それにより製造上の恩恵と装置の組立の容易化をもたらす。一態様では、キャップ54、70、90、100、130、164、180はまた、ゲルパッド60がキャップにそこで結合または連結または付着する内部円筒壁172(図9参照)を組み込んでいる。このように、ゲルパッド60はスリーブ56の内側の「骨格」に付着し、装置と傷、切開および/または体腔との間に封止領域をもたらす。スリーブ、キャップおよび保持器を共に連結または交差させることはまた、装置と身体との間に別の封止領域をもたらす。
【0041】
ゲルパッド60を内部円筒壁172にしっかりと留めることにより、ゲルパッドと対応するキャップ54、70、90、100、130、164、180との厚さは、装置全体の専有面積を含めて、最小化される。装置の厚さと全体的な大きさの減少は、より軽量な装置をもたらし、手または器具の交換をより簡便にする。ゲルパッドの厚さの減少と、ゲルパッドがキャップ内で実質的に同一面になるか、またはへこむことができることにより、身体および装置に気体が吹きこまれている間に働くガス圧力により生成される「ドーム化」現象もまた低減される。
【0042】
本発明による様々な態様(図6図15)では、保持器150、160は、保持器の外周のまわりに配置される高められた縁158、174を有する。高められた縁159、190は、一態様では、保持器150、184の内周のまわりにもまた配置される。その内周は、スリーブがそこを通して延びる開放部157、192を画定する。外側の高められた縁158、174は、キャップと保持器との間が解除可能に連結することを維持し、またはしっかりと留めることを助ける。一態様では、溝129(図3)は、キャップと保持器との間の連結をさらに強化するために、外側の高められた縁を受けるためにキャップの円周に沿って延びる。同様に、内側の高められた縁は、保持器とスリーブとの間の解除可能な連結を維持し、またはしっかりと留めることを助ける。内側の高められた縁はまた、内部円筒壁および/またはゲルパッド、スリーブおよび保持器との間の封止を容易にする。一態様では、切欠または間隔を空けた谷または開放部155(図6)は、内側の高められた縁159に沿って配置され、それが構成部品間の結合を低下させることにより、内部円筒壁および/またはゲルパッドと保持器との噛み合いを容易にする。
【0043】
いくつかの上記の留め具は、保持器または保持器様構成部品を、キャップがそこに解除可能に連結するために、直接スリーブに一体化するように改変できる。同様に、キャップを保持器および/またはスリーブに直接一体化して、構成部品間が解除できない連結を創り出すこともできる。
一態様では、ゲルキャップ66を形成するためにゲルパッド60をキャップ54内で鋳造することは、キャップを鋳造金型の成金型空洞内に置くことを含む。成金型空洞には、キャップ54の環状壁用の支持体を備えていてもよい。金型はアルミニウム、銅、真ちゅう、または良好な放熱特性を有するその他の金型の材料で作製できる。しかしながら当業者は、より低い放熱特性を有するその他の金型の材料でも許容できる部品を製作できることを認識すると思われ、これらのことも同様に本発明の範囲内であると企図される。
【0044】
別の態様では、ゲルパッド60は、キャップ54とは別に成形されて、結合などの第2の操作によってキャップ54と連結されてもよい。一態様では、ゲルパッド60は、キャップ54の内部円筒壁よりも小さい外周を有するゲルスラッグ60内に成形されてもよく、キャップの高さよりも高い高さにする。次いで、ゲルスラッグ60を、キャップ54の内部円筒壁内に置くことができる。ゲルスラッグ60は、キャップ54の内部円筒壁内にそれを置く前に、冷却および/または冷凍してもよい。ゲルスラッグ60は、ゲルスラッグが長手方向に圧縮されてゲルスラッグの外周が膨張し、キャップの内部円筒壁を押し返す状態で、圧縮成形を介してキャップ54と連結されてもよい。ゲルスラッグ60とキャップ54とを、ゲルのポリスチレンおよびキャップのポリマーが、ゲルとキャップとの間で結合を形成するために十分な温度まで加熱する。キャップ54とは別にゲルスラッグ60を成形し、後でキャップにゲルスラッグを熱結合することは、キャップがMGTよりも低い融解温度を有する材料で作製されているときに、特に有用である。そのような状況では、ゲルスラッグ60を最初に成形し、キャップを溶かすこと無くキャップ54に熱結合することができる。
【0045】
キャップと共に成形されても、または別でも、いずれにせよ、金型から取り出したとき、ゲルパッド60は通常粘着性表面を有している。本発明では、ゲルパッドの製造プロセスを恒久的な非粘着性被覆を製作するために改変する。
【0046】
そのプロセスは、粉末付けと鋳造とのステップを1つの連続するプロセスに統合し、フッ素化超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の不連続層をゲルパッドに恒久的に結合して、非粘着性表面を創り出す。粉末付けと鋳造との統合は、第2の粉末付けおよび清掃のプロセスの必要性を取り除き、ゲルパッドの修正、金型の清掃に必要な時間を非常に減少させる。ゲルパッドの製造に従来のプロセスを使用するとき、ゲルの残余をゲルパッドから除去し、その後粉末付けし、過剰なオイルと粉末を清掃する。室温で鋳造され、オーブンで硬化されたゲルの成形物は、粘着性の残渣のある状態で残され、かなりの量の清掃が求められる。この新規のプロセスを使用すると、ゲルは射出成形機または押出成形機から熱的に鋳造され、残余が無い。ゲルパッド上の過剰な粉末は拭き取りで迅速に除去できる。また、事前に粉末付けした金型には残渣が残らず、金型内に残された過剰な粉末は容易に除去できる。
【0047】
デンプン粉末ではなく、ポリエチレン粉末を使用することはまた、プロセスおよび製品の向上に寄与する。ポリエチレンは微生物の増殖培地ではないので、ポリエチレンはゲルパッドの汚染微生物数を著しく低下させる。さらに、新規の高温鋳造プロセスの間に、ポリエチレン粉末は基本的にゲルの表面上に溶解し、その結果として、ゲルパッドを使用する間に被覆している残留物が損失する機会を取り除く。加えて新規のプロセスは、製品の機能的特性または、封止性および弾性などのそれぞれの材料の機械的特性の、如何なるものをも妨害しない不連続被覆を創り出す。不連続被覆によって、表面亀裂の発生無しに、ゲルを伸ばして、その元の形状に戻すことができる。亀裂または剥離を防止するために、連続被覆は、ゲルと同等の弾性を持たなければならない。高弾性を有する材料は、通常粘着性であり、エラストマーの性質に一致させることは、材料を、そうではなく、非粘着性表面を有するようにする。
好ましくは、ゲルの金型を製造プロセスで使用する前にテクスチャー加工する。テクスチャー加工は、不均一に粒子を配置させることに結果的になる粒子の流動を防ぐことにより、ゲル表面上の粒子を安定化させる助けになる。金型をテクスチャー加工するには、研磨剤のブラストキャビネット(blast cabinet)を用いてもよい。金型、例えばアルミニウム金型、をキャビネット内に置き、ブラスト媒体(約80から約100グリット/メッシュのグリット範囲である)を、気体を動力とするホースを使用して、金型の表面が均一にテクスチャー加工されるまで吹き付ける。その後、金型を取り出し、余剰の媒体を除去するために、空気ホースで吹き付ける。
金型をテクスチャー加工する代わりに、金型を約240°Fの温度まで予備加熱して、金型の平滑表面に粒子がより強固に付着するようにしてもよい。さらに別の実施形態では、静電塗装(e−コーティング)のプロセスにより、鋳造の間、その場に荷電粒子を保持することもできる。導電性の金型は、スプレーまたは金型を浸漬することのいずれかにより、表面に適用された荷電粒子を引き寄せて保持する。e−コーティングプロセスは、溶融ゲルを金型内に分配するまで粒子をその場に保持するのに、十分に強靱である。
【0048】
ゲルを加える前に、金型は、フッ素化UHMWPEの粉末付けをする。一実施形態では、フッ素化UHMWPEは粉末である。一実施形態では、フッ素化UHMWPE粉末の粒径は約40〜50μmである。別の実施形態では、フッ素化UHMWPE粉末の粒径は約45μmである。フッ素化UHMWPEの粒径は、所望の粘着性の程度に応じて変化できる。通常、非常に小さな粒子はより密に詰まって、特に下にあるゲルが引っ張られたときに、より非粘着性な表面をもたらす。
【0049】
他の実施形態では、フッ素化UHMWPE以外の粒子も非粘着性表面を達成するのに使用できる。ポリエチレン粉末を各種組み合わせた形態も、フッ素化UHMWPEと同様に使用できる。酸化UHMWPEは、基本的にフッ素化UHMWPEのそれと同一の結果をもたらし、粉末の表面改変用に利用する方法が唯一の違いである。また、酸化UHMWPEでは、放射線滅菌後のゲル取扱の後でわずかな残渣が手に残ることもある。ポリエチレン粉末のその他の形態、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および非変性UHMWPEなどもまた、所望の非粘着性製品を達成するために採用できる。しかしながら、異なる粉末およびそれらそれぞれの粒径は、非粘着性層の被覆の変動をもたらす。通常、24μmから350μmの範囲の粒径が、粘着性の程度が様々なゲルを提供するために使用できる。
【0050】
いくつかの実施形態では、フッ素化UHMWPEで粉末付けした金型を、溶融ゲルを加える前に予備加熱する。場合によっては、最終的なゲル製品に応じて、粉末付けした金型を、キャップリングまたは他の挿入物と共に予備加熱する。一実施形態では、金型を約110〜160°Fの範囲の温度に予備加熱する。技能工は、予備加熱の温度は金型の壁の厚さに応じて変化してもよく、しかも非常に薄い壁で作製された金型には予備加熱を必要としないことを認識するであろう。
オイルおよびエラストマーまたはコポリマーを含むゲルスラリーを、その硬化温度を超えて溶融状態まで加熱し、粉末付けした金型に加える。いくつかの実施形態では、オイルは、鉱油、植物油、石油、およびシリコーン油の少なくとも1種を含む。一実施形態では、オイルは鉱油である。
【0051】
いくつかの実施形態では、エラストマーは、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリイソプレン、熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマー、トリブロックコポリマー、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンの少なくとも1種を含む。一実施形態では、エラストマーは、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンポリマーのブロックコポリマーである。別の実施形態では、エラストマーはKRATON G1651である。
オイル対エラストマーの質量比は、最終ゲル製品の所望の粘度に応じて変化し得る。手術のアクセス装置として有用なゲルキャップなどの製品用では、約7:1から約10:1のオイル対エラストマーの質量比を有するゲルスラリーが有用である。一実施形態では、オイル対エラストマーの質量比は、8:1である。
ゲルスラリーを溶融状態に加熱するために使用する温度が高いほど、結果として酸化的分解により分子量が低下し、より軟質な硬度のゲルが生じるので、硬さの損失を補償するために、低温鋳造プロセスよりも、オイル対エラストマーの比をより低下させて通常は使用する。例として、通常、ゲルを低温鋳造プロセスで、鉱油対エラストマーを9:1の質量比で使用して製作する場合、本高温鋳造方法を使用して同様の硬さのゲル製品を製作するためには、鉱油対エラストマーを8:1の質量比で使用することになる。当業者は、その他の比率も所望のゲル特質を達成するために使用することができると認識するであろう。
【0052】
一実施形態では、ゲルスラリーをバルク状で脱気し、射出成形機または押出成形機にポンプで搬送し、そこでスラリーの硬化温度を超えて溶融状態まで加熱する。ゲルスラリーは、室温またはより高温で脱気できる。一実施形態では、ゲルスラリーを約125°Fで脱気する。
一実施形態では約460°Fから約480°Fの温度を有する溶融ゲルを、金型内に分配する。金型にキャップまたは他の挿入物を入れている場合、ゲルがキャップ/挿入物に接触するように、ゲルを分配する。
【0053】
粉末付けした金型の蓋を設置して、そのユニットを室温まで冷却する。空冷、冷水浸漬または当技術分野でよく知られたその他の冷却手段などにより、ゲルキャップ66を冷却できる。150℃ではゲルパッドは軟質であり、冷却中に歪んだ場合、歪みを含んだ状態で固化することになる。ゲルパッド60の歪みの可能性を低減するために、ゲルキャップ66を金型の内部で冷却してもよい。金型の大きさおよび形状、ゲルの量、冷却媒体の温度および量、冷却媒体の特性および金型の材料を含むパラメーターに基づいて、冷却時間は変化できる。例として、空気中で冷却する場合、冷却時間は約2時間であり、水中で冷却する場合、約15分であり得る。空気か水かでの冷却にかかわらず、ゲルの最終的な特性は実質的に同一である。ゲルキャップ66は通常概ね室内環境温度に冷却するが、より低温に冷却してもよい。
【0054】
ゲルキャップ66は、ゲルが固化した後にいつでも金型から取り出せる。粉末付けした金型では、粉末が金型の剥離剤として作用するので離金型を容易にする。したがって、ゲルパッドは単純に金型を反転することにより取り出せる。その後、金型を清掃してプロセスを繰り返す準備をする。上記の高温鋳造プロセスを使用することにより、遊離オイルを最小限にした状態の均質混合物として溶融ゲルを金型に注ぎ、低温鋳造プロセスでは離金型後に残るワックス状残渣を取り除き、清掃が容易でゲルパッド上を一貫して非粘着性表面とする成形物を製作する。これは重要なことによりあり、ゲルスラリーのバッチはスラリー中に存在する遊離オイルの量で変化し得るので、一貫した結果を達成することを困難にする可能性があるからである。溶融ゲルを使用することは、この問題を排除する。
【0055】
非連続的な恒久的非粘着性被覆を有するゲルパッドの製作用プロセスの概観を図16に示す。図16では、ゲルパッドは、ゲルキャップを形成するためのキャップリングと共に鋳造されることを示す。しかしながら、当業者は、キャップリングを加えることは、ゲルパッドのその他の形状および使用では任意であると認識するであろう。また上述のように、キャップリングはゲルパッドの形成後にゲルパッドに加えてもよい。
非粘着性ゲル製作用の好ましいプロセスは、高温鋳造の溶融ゲルを必要とするが、そのプロセスはまた、低温鋳造ゲルにも使用できる。低温鋳造プロセスでは、ゲルスラリーを通常、オイル対コポリマーが9:1の質量比で使用する。脱気したスラリーを金型内に分配する(任意でキャップリングと共に)前に、脱気している間にスラリーを約125°Fに加熱し、金型内のゲルを硬化する前に、約150℃で約1.5時間、2回目の脱気を行う。非粘着性ゲルを実現するために、上述のように、フッ素化UHMWPEで金型を事前粉末付けできるが、ゲルスラリー中により多くの遊離鉱油が存在するために、離金型後にワックス状残渣が金型に残され、そのため金型が再使用できる前に追加の清掃ステップが必要になる。また、ゲルスラリーは溶融ゲルよりも不均質であり、そのため一貫性が劣る非粘着性表面を生成する。
【0056】
非粘着性ゲルを製作するための説明した方法とは別の実施形態では、従来の金属製の金型の代わりに、様々な密度(例えばLDPE、HDPE)を有するポリエチレンの金型を使用できる。このプロセスでは、事前粉末付けは不用である。ゲルをポリエチレンの金型に注ぎ、室温まで冷却する。一度冷却すると、ポリエチレンの薄層がゲルに移転して、ゲルは金型からはがれ落とせて、非粘着性表面を生成する。上述した射出成形法を使用して、または「ホットポット」タイプの方法を使用して、ゲルを鋳造できる。「ホットポット」法では、ゲルを溶解するまで加熱して撹拌し、所望の空洞に分配する。しかしながら、この方法は制御が困難な場合があり、プラスチック金型からの応力の下での成形は、非粘着性表面上に亀裂および欠陥を導くことがある。加えて、ゲルを溶融させるために必要な高温では、ポリエチレンの金型が溶融または変形し、ゲルが劣化する原因となり得る。ポリエチレンの金型の代替として、ポリエチレンの挿入物を金金型中に使用できる。挿入物は、所望のゲル製品のように形作った、射出成形のポリエチレン皿であり、溶融ゲルを加える前に金型内に設置する。金型は挿入物とゲルとを支える。一度ゲルを冷却すると、ゲルは金型および挿入物から取り出すことができ、ゲルの表面上にポリエチレンの薄層が堆積して残される。
【0057】
別の実施形態では、エアゾールのポリエチレンスプレーを利用する。ポリエチレン金型プロセスと同様に、この方法も事前粉末付けが不要である。この実施形態では、金型にポリエチレンスプレーを吹き付け、金型の表面上にポリエチレンの薄層を残す。スプレーした金型の中でゲルを高温鋳造し、ポリエチレン残留物を有するゲル製品を冷却して生成し、非粘着性表面を残す。ゲルは、射出成形または「ホットポット」技法のいずれで鋳造してもよい。しかしながら、スプレーで金型の表面にポリエチレンの均一な被覆を得ることは困難であり得、離金型後のゲル製品表面にポリエチレンの不均一な分布を生成する。薄い被覆ではゲルの粘着性の部分が残ることになり、厚い被覆では非粘着性層に亀裂をもたらすことになる。加えて、エアゾールスプレーは、揮発性有機化合物(VOC)を環境に放出し、そのため製造プロセスとしては好ましくない。
【0058】
したがって本発明は、恒久的非粘着性被覆を有するゲル、恒久的非粘着性被覆を有するゲルの作製方法およびアクセス装置へのそのようなゲルの使用を提供するものである。本発明をいくつかの具体的な実施形態で説明してきたが、多くの追加の改変形態および変形例が当業者には明白と思われる。そのため本発明は、具体的に記載されたことの他にも実施されてよく、本発明の範囲および精神から逸脱しないかぎり、大きさ、形状および材料の様々な変更を含むことを理解すべきである。このように、本発明の実施形態は、すべての点で例示的であり、制限するものではないと考えるべきである。
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【国際調査報告】