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特表2017-525858金属カルボン酸塩錯体の調製のための電解方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-525858(P2017-525858A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(54)【発明の名称】金属カルボン酸塩錯体の調製のための電解方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 3/12 20060101AFI20170810BHJP
   C25B 15/04 20060101ALI20170810BHJP
   C25B 11/08 20060101ALI20170810BHJP
   C25B 9/12 20060101ALI20170810BHJP
   C25B 11/06 20060101ALI20170810BHJP
【FI】
   C25B3/12
   C25B15/04
   C25B11/08 Z
   C25B9/12
   C25B11/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-527995(P2017-527995)
(86)(22)【出願日】2015年8月6日
(85)【翻訳文提出日】2017年4月5日
(86)【国際出願番号】IN2015000316
(87)【国際公開番号】WO2016024285
(87)【国際公開日】20160218
(31)【優先権主張番号】2619/MUM/2014
(32)【優先日】2014年8月14日
(33)【優先権主張国】IN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517050215
【氏名又は名称】インフィニウム プレシャス リソーシズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080528
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 冨士男
(74)【代理人】
【識別番号】100073601
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 和男
(72)【発明者】
【氏名】デバブラタ・モハンティ
(72)【発明者】
【氏名】スレラサ・クティ
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA30
4K011AA68
4K011DA10
4K021AC09
4K021BA10
4K021BB03
4K021BC03
4K021CA10
4K021DB07
4K021DB11
4K021DB20
4K021DB40
4K021DC15
(57)【要約】
【課題】金属カルボン酸塩錯体の調製のための電解方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、電極間に半透過膜(18)を介在させて同電極を絶縁させることを含む、金属カルボン酸塩錯体の調製のための電解方法に関する。この膜(18)は、陽極から陰極への金属イオンの移行を阻止することで陽極液中の金属イオン濃度を増加させ、金属カルボン酸塩錯体の形成の高度促進及び迅速化に導く。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
iv) カルボン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含む電解液において所定の距離で少なくとも1つの陽極及び少なくとも1つの陰極を含侵させるステップと、
v) 前記陽極及び前記陰極を、半透過膜を介在させることにより互いに絶縁させるステップと、
vi) 前記陽極及び前記陰極に対し電位を印加して金属イオンを生成するステップと、を含む、金属カルボン酸塩錯体の調製のための電解方法。
【請求項2】
前記陽極が回転陽極である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記陽極の少なくとも40%が陽極液中に含侵される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
陽極液が連続的に循環される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの陽極及び前記少なくとも1つの陰極が、10〜30mmの距離に設置される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記陽極及び陰極が、好ましくは同一の金属から成る、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記陽極及び陰極が、銅、銀、金、パラジウム、並びに白金から選択される遷移金属又は貴金属で構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記カルボン酸が、クエン酸、乳酸、及び/又は酒石酸から選択される、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、金属カルボン酸塩錯体の調製のための電解方法に関する。より具体的には、本発明は、貴金属イオンの陰極への移行を阻止することで陽極液中の金属イオン濃度を増加させる、電極間の半透明膜の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術では、水溶液中の銅イオン及び銀イオンの存在が、消毒剤として有用であることを実証している。先行技術の多くでは、水溶液中の銅イオン及び銀イオンについては、冷却塔、水泳用プール、病院内の温水システム、飲料水システム、温水プールなどの水系における消毒剤として使用している。
【0003】
通常、上記銅イオン及び銀イオンは、直流電源に接続されていた。電極に直流電流が印加されると、水中ではそれぞれ銅陽極及び銀陽極から電解方法によって銅イオン及び銀イオンが生成された。先行技術の一例において、送水は、銅電極及び銀電極を有するイオン室を通じて連続的に行われた。このイオン室から発散した水は、上記イオン室内の銅電極及び銀電極によって生成された銅イオン及び銀イオンを含有していた。この銅イオン及び銀イオンを含有したイオン室から発散した水は、冷却塔、水泳用プール、病院内の温水システム、飲料水システム、温水プールなどの水系における消毒剤として使用される。これら水系中の銅イオン及び銀イオンは、藻類、ウイルス、バクテリアなどを制御するための消毒剤として機能していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6197814号明細書
【特許文献2】米国特許第7732486号明細書
【0005】
特許文献1は、電解生成クエン酸銀と呼ばれるクエン酸の存在下で、電解生成銀イオンによって配合された消毒剤を開示している。所要の電位の下、陽極として銀金属を使用することで水性のクエン酸媒体中に銀イオンが生成されることにより、陽極付近に銀イオンが生成される。上記電位が電極に対して印加されると、銀イオンは陰極に向かって移行する傾向があり、また電解液における銀イオン数を低減させた状態で酸と共に錯体を形成する。これにより、クエン酸銀錯体配合物の濃度については、所望の濃度に達するのに要する時間を大幅に低減している。
【0006】
特許文献2は、クエン酸二水素銀と、クエン酸と、を含む無水クエン酸二水素銀組成物を開示している。この無水組成物は、フリーズドライ法によって調整されうる。液体SDC(クエン酸二水素銀)の調製方法は、電極に対し直流電位を適用することを含んでいる。この特許は、可逆的な電流を印加して陰極上への銀の堆積を低減させることを更に開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
今でも、短期間に高濃度で電解生成されうる安定的なイオン配合を付与する金属カルボン酸塩錯体の調製のための方法への需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
i) カルボン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含む電解液において所定の距離で少なくとも1つの陽極及び少なくとも1つの陰極を含侵させるステップと、
ii) 前記陽極及び前記陰極を、半透過膜を介在させることにより互いに絶縁させるステップと、
iii)前記陽極及び前記陰極に対し電位を印加して金属イオンを生成するステップと、
を含む、金属カルボン酸塩錯体の調製のための電解方法に関する。
【0009】
本開示内容の判り易い説明及び実施可能性については、添付の図面に基づいて図示される例示的な実施態様を参照されたい。これら図面は、以下の詳細な説明と共に本明細書中に組み込まれて同明細書の一部を成すと同時に、上記開示内容に従って実施態様を更に図示し、各種原理及び利点を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は電解液に含侵させた電極付き電解槽の斜視図を示す。
図2図2は上記電解槽の上面図を示す。
図3図3は本発明の方法で使用される代表的な陽極を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本具体的な実施態様の説明は、他者が、現在の知識を適用することにより、その一般的な概念を逸脱せずにこのような具体的な実施態様を様々な用途に容易に改変すること、及び/又は適合させることを可能とする実施態様の一般的な性質を全て披露しているため、このような適合及び改変は、開示された実施態様の等価物の意味及び範囲に包括されるものとする。ここで用いられる言い回し又は用語はあくまでも説明を目的とするものであって、限定を目的とするものではないと理解されるべきである。従って、これら実施態様は、好適な実施態様の意味で説明される一方、同実施態様が、ここで説明されるような実施態様の趣旨及び範囲内であれば改変により実施可能であることが当業者に理解されよう。
【0012】
本発明は、遷移金属/貴金属カルボン酸塩錯体を生成する改良型の方法に関する。
【0013】
本発明の一実施態様は、
i) カルボン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含む電解液において所定の距離で少なくとも1つの陽極及び少なくとも1つの陰極を含侵させるステップと、
ii) 前記陽極及び前記陰極を、半透過膜を介在させることにより互いに絶縁させるステップと、
iii)前記陽極及び前記陰極に対し電位を印加して金属イオンを生成するステップと、
を含む、金属カルボン酸塩錯体の調製のための電解方法に関する。
【0014】
本発明の代表的な電解方法は、電解液として有機酸を使用すること、並びに貴金属/遷移金属電極を使用することを含んでいる。これら電極(陽極(3)及び陰極(4))は、好ましくは99.99%の純金属から形成される。高純度金属の電極の使用により不純物の度合いが100ppm以下の高品質の生成物が得られる。金属陽極(3)は、好ましくはギア式モータ構成(15)によって回転させる。上記陽極液は、陽極液循環ポンプ(21)を使用して連続的に循環され、この陽極液の循環に伴い、磁気結合されたポンプによって陽極内の金属イオン濃度が維持されるようになる。具体的な一例において、陽極(3)は、毎分5〜30回転(rpm)で連続的に回転する空洞シャフト上に取り付けられた円形ディスクであって、同陽極液中には陽極の最大面積が含侵される。
【0015】
上記電解液は、カルボン酸及び/又はそのアルカリ金属塩を含む。このカルボン酸は、乳酸、クエン酸、酒石酸などから選択される。同様に、金属電極は、銅、銀、金、パラジウム、白金などの遷移金属又は貴金属から選択される。
【0016】
陽極(3)は、印加電位2〜20Vの下で、凡そ10〜30mmの距離で陰極(5)から離間される。
【0017】
好ましくは半透明膜の固定基板(20)の上に固定される半透明膜(18)は、電極間、例えば、陽極(3)と、陰極(5)との間に挿入される。この膜(18)は、金属イオンの陽極から陰極への移行を阻止することで陽極液中の金属イオン濃度を増加させ、金属カルボン酸塩錯体の形成の高度促進及び迅速化に導く。
【0018】
上記電極にバスバー(陰極バスバー(1)及び陽極バスバー(2))を通じて約2〜20ボルトの電圧を有する電位を供給すべく、適切な直流電源が利用される。電極(3)にて生成される金属イオンは、陽極液中のカルボン酸又はその塩類に反応し、金属カルボン酸塩錯体を形成する。半透明膜(18)は、陽極で生成された金属イオンがこの膜を透過して陰極に移行するのを阻止するので、これら金属イオンは、金属カルボン酸塩錯体を形成する陽極液と高濃度で反応する。この溶液は更に処理され、濾過及びフリーズドライ法によって固体のカルボン酸錯体を生成しうる。この電解液中では、特定の電圧をより長時間印加することで経時的に所望のイオン濃度が実現されうる。
【0019】
金属カルボン酸塩錯体の生成の迅速化については、一連の陽極及び陰極が同時に使用できる。
【0020】
上記は、後続の詳細な説明について当業者が完全に理解できるようにより判り易くするため、本発明のより関連性の高い重要な特徴を幾分広義に概説したものである。本発明の主題を形成する、本発明の更なる特徴については下記に説明される。本発明の同じ目的を実現するための他の構成を改変又は設計するための根拠として、上記開示された概念及び具体的な実施態様が容易に利用されうることは当業者によって理解されるべきである。また、このような等価的な構成が発明の趣旨及び範囲を逸脱しないことは当業者によって実感されるものとする。
【実施例】
【0021】
上記では本発明の基本的な態様を説明してきたが、以下の実施例では、その具体的な実施態様を例示する。
【実施例1】
【0022】
この実施例は、クエン酸銀錯体の生成を例示している。
【0023】
電解槽(22)は、高純度の蒸留水と共に生成された5〜40グラム/リットルの濃度を有するクエン酸(AR級)で充填させた。円形の陽極(3)は、高純度の銀(99.99%)から成るものであり、絶縁シャフト(4)の上に取り付けられた。このシャフトは、カーボンブラシ(12)及び電気接触ディスク(13)を通じて直流電源に接続された。各陽極は、導電体を通じて電気接触ディスク(13)に接続される。上記カーボンブラシへの電流は、陽極バスバー(2)を通じて供給される。上記絶縁シャフトは、ナット(11)によって固定されたボールベアリング(10)を有するボールベアリングハウジング(9)の内部に取り付けられる。上記陽極取り付けシャフトは、カプラー(14)を通じてギア式モータ(15)に結合される。このギア式モータは、モータスタンド(17)付きベース板(16)の上に取り付けられる。上記電解液は、最大陽極表面が陽極液中に沈降させるような態様で上記タンク内に充填させた。半透明膜(18)は、各陽極と、各陰極との間に介在させた。これらの膜(18)は、底板(20)に固定された。上記陽極と、上記陰極との間の距離は、27mmに維持された。高純度の銀板から成る各陰極(5)は、陽極と、陰極との間で一定の隙間が維持されるような態様でハンガーバー(6)から吊るされた。上記陰極ハンガーバーには陰極バスバー(1)を通じて電流が供給された。上記タンクの底部では、排水プラグ(8)に陽極液循環ポンプ(21)が接続され、上記タンクの上側に配置されたプラグを通じて同タンクに陽極液を逆循環させるようにした。この循環により、陽極液室内の濃度の均一性を確保した。上記陽極含有シャフトは、5〜50rpmの範囲で変化する一定の速度で回転させた。上記陽極と、上記陰極との間には整流器の支援により2〜20Vの電位が印加された。電解時間は、整流器の内部に固定されたタイマーの支援により設定された。陽極液中の銀イオン濃度は随時検査されたが、所望の濃度が得られた場合には電解は停止され、電極液は、如何なる懸濁粒子も除去する適切な濾過機構を通じて濾過され、光から保護されたタンク内に貯蔵された。上記電解槽内には新規分の処理のために新規の陽極液が投入された。
【0024】
実施例1における方法に従い、他の金属カルボン酸塩錯体も調製された。
【0025】
本方法によって調製された金属カルボン酸塩錯体は、様々な用途を有する。上記用途には、殺菌剤、抗菌剤などとしての使用を含んでいる。
【0026】
表1は、実施例1で説明される方法によって調製された様々な金属カルボン酸塩錯体濃度を示し、先行技術の方法によって調製された金属カルボン酸塩錯体との比較データを提供する。
【0027】
【表1】
図1
図2
図3
【国際調査報告】