特表2017-526519(P2017-526519A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-526519(P2017-526519A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】浄化用の吸入装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/02 20060101AFI20170818BHJP
   A47L 9/14 20060101ALI20170818BHJP
   A47L 7/00 20060101ALI20170818BHJP
   B01D 29/11 20060101ALI20170818BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20170818BHJP
【FI】
   B01D46/02 Z
   A47L9/14 Z
   A47L7/00 Z
   A47L7/00 A
   B01D29/10 510A
   B01D29/10 530D
   B23Q11/00 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-570799(P2016-570799)
(86)(22)【出願日】2015年6月1日
(85)【翻訳文提出日】2017年1月18日
(86)【国際出願番号】EP2015062141
(87)【国際公開番号】WO2015185500
(87)【国際公開日】20151210
(31)【優先権主張番号】102014107732.6
(32)【優先日】2014年6月2日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】ユング, シュテフェン
(72)【発明者】
【氏名】フェール, マルティン
(72)【発明者】
【氏名】メール, ディルク
(72)【発明者】
【氏名】エンゲルハルト, ライナー
【テーマコード(参考)】
3B062
3C011
4D058
4D116
【Fターム(参考)】
3B062AA08
3B062AD12
3C011BB31
4D058JA04
4D058JB25
4D058KC39
4D058LA10
4D058QA03
4D058QA21
4D058UA30
4D116AA01
4D116BB01
4D116BC17
4D116DD01
4D116FF15A
4D116KK06
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4D116QB01
4D116QB26
4D116QB44
4D116QC08B
4D116VV12
4D116VV15
(57)【要約】
本発明は、容器内部空間を有する容器と、吸入機構と、容器内部空間に設けられる交換式のフィルタエレメントと、ポンプ機構とを備え、吸入機構が発生する負圧を用い、搬送用流体と砕片粒子との混合物を吸入口から取り込み、フィルタエレメントにより砕片粒子を捕捉可能であり、フィルタエレメントが濾過した搬送用流体を、ポンプ機構により容器内部空間から流出口に送給可能な浄化処理用の吸入装置に関する。高信頼性で作動する吸入装置を提供すべく、フィルタエレメントを袋状フィルタとし、袋状フィルタを介し、吸入機構により混合物を取り込み、吸入装置が、容器内部空間をフィルタ収容空間と流体供給空間とに区分するフィルタ保持部材を備え、袋状フィルタをフィルタ収容空間に設け、フィルタ保持部材により流体供給空間への膨出を抑止し、フィルタ保持部材を通過または迂回した搬送用流体を、ポンプ機構で流体供給空間から送給することを提案する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内部空間(22)を有する容器(20)と、
吸入機構(58)と、
前記容器内部空間(22)に設けられる交換式のフィルタエレメント(46)と、
ポンプ機構(60)とを備えた浄化処理用の吸入装置(10)であって、
前記吸入機構(58)が発生する負圧を用い、搬送用流体と砕片粒子との混合物を吸入口(34)から取り込むことが可能であり、
前記フィルタエレメント(46)により、前記砕片粒子を捕捉可能であり、
前記フィルタエレメント(46)によって濾過された前記搬送用流体を、前記ポンプ機構(60)により、前記容器内部空間(22)から流出口(36)に送給可能な吸入装置(10)において、
前記フィルタエレメント(46)は、袋状フィルタ(48)からなり、当該袋状フィルタ(48)を介し、前記吸入機構(58)により前記混合物が取り込まれ、
前記吸入装置(10)は、前記容器内部空間(22)を、フィルタ収容空間(70)と流体供給空間(72)とに区分するフィルタ保持部材(66)を備え、
前記袋状フィルタ(48)は、前記フィルタ収容空間(70)に設けられて、前記フィルタ保持部材(66)により、前記流体供給空間(72)への膨出が抑止され、
フィルタ保持部材(66)の周囲または内部を通過した搬送用流体が、前記ポンプ機構(60)によって前記流体供給空間(72)から送給される
ことを特徴とする吸入装置。
【請求項2】
膨張した状態の前記袋状フィルタ(48)の体積は、前記フィルタ収容空間(70)の容積より大きく、
前記フィルタ収容空間(70)内に配置された前記袋状フィルタ(48)は、前記フィルタ保持部材(66)により、最大の大きさまでの膨張が抑止される
ことを特徴とする請求項1に記載の吸入装置。
【請求項3】
前記フィルタ保持部材(66)は、前記袋状フィルタ(48)のための少なくとも1つの支承部(88)と、前記袋状フィルタ(48)のための少なくとも1つの側方当接部(80)との少なくとも一方を備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の吸入装置。
【請求項4】
前記支承部(88)及び前記側方当接部(80)の少なくとも一方は、平坦に形成されることを特徴とする請求項3に記載の吸入装置。
【請求項5】
リブ状及びこぶ状の少なくとも一方の形状を有した突起(84)が、前記支承部(88)及び前記側方当接部(80)の少なくとも一方に設けられることにより、前記袋状フィルタ(48)と前記フィルタ保持部材(66)との平面接触を防止することを特徴とする請求項3または4に記載の吸入装置。
【請求項6】
前記支承部(88)と、前記容器(20)の底壁(24)との間に、前記流体供給空間(72)の一部領域(86)が設けられることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の吸入装置。
【請求項7】
前記フィルタ保持部材(66)は、濾過された流体が流通可能な開口を少なくとも1つ備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の吸入装置。
【請求項8】
前記容器(20)の側壁(26,28)と前記フィルタ保持部材(66)との間には、流体が流通可能な空隙(90)が設けられることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の吸入装置。
【請求項9】
前記フィルタ保持部材(66)は、前記容器(20)の底壁(24)に支持され、
前記吸入装置(10)は、前記フィルタ保持部材(66)の上下方向の移動を抑止する固定機構(92)を備える
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の吸入装置。
【請求項10】
前記フィルタ保持部材(66)は、固定機構(92)を介し、手作業及び工具を用いない作業の少なくとも一方により、前記容器(20)に着脱可能に固定されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の吸入装置。
【請求項11】
前記フィルタ保持部材(66)は、前記フィルタ収容空間(70)と前記流体供給空間(72)とを互いに隔てる部分溝状または溝状の隔壁(68)を具備または形成することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の吸入装置。
【請求項12】
前記フィルタ保持部材(66)は、前記フィルタ収容空間(70)と前記流体供給空間(72)とが概ね同じ大きさとなるように構成されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の吸入装置。
【請求項13】
前記フィルタ保持部材(66)は、前記フィルタ収容空間(70)と前記流体供給空間(72)とが横方向で隣接するように構成されることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の吸入装置。
【請求項14】
前記袋状フィルタ(48)は、不織布の袋体であるか、または不織布の袋体を備えることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の吸入装置。
【請求項15】
前記袋状フィルタ(48)のために前記容器(20)に取り付けられ、前記袋状フィルタ(48)が着脱可能に固定される保持体(44)を備えることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の吸入装置。
【請求項16】
前記フィルタ保持部材(66)は、前記容器内に流体が充填されていることを示す充填インジケータを有した表示機構を具備または形成することを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の吸入装置。
【請求項17】
前記容器(20)を有する装置下方部分(12)と、
前記装置下方部分(12)の上に着脱可能に密封状態で載置され、前記吸入機構(58)を有する装置上方部分(14)と
を備えることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の吸入装置。
【請求項18】
前記ポンプ機構(60)は、前記装置上方部分(14)内に設けられ、
前記吸入装置(10)は、
前記ポンプ機構(60)の圧送側に接続されて前記流出口(36)が形成された吐出路(64)と、
前記ポンプ機構(60)の流入側に接続された供給路(62)であって、濾過された搬送用流体のために前記流体供給空間(72)に配置された流入口(104)を有する供給路(62)とを備える
ことを特徴とする請求項17に記載の吸入装置。
【請求項19】
前記流入口(104)は、前記容器(20)の底壁(24)及び前記容器(20)の側壁(26,28)の少なくとも一方から距離を置いて配置されることを特徴とする請求項18に記載の吸入装置。
【請求項20】
前記ポンプ機構(60)は、前記流体供給空間(72)に配置される液中ポンプであって、
前記吸入装置(10)は、前記流出口(36)が形成されると共に前記液中ポンプの圧送側に接続された吐出路を有する
ことを特徴とする請求項17に記載の吸入装置。
【請求項21】
前記装置上方部分(14)に配置された前記ポンプ機構(60)に接続される供給路(62)、または液中ポンプに接続される吐出路は、少なくとも一部が前記流体供給空間(72)に配置される第1流路部分(98)と、少なくとも一部が前記装置上方部分(14)に配置される第2流路部分(100)とを有し、
前記第1流路部分(98)と前記第2流路部分(100)とは、前記装置上方部分(14)を前記装置下方部分(12)の上に載置したときに、接続機構(108,126)を介して互いに液密に接続され、
前記接続機構(108,126)は、前記装置下方部分(12)から前記装置上方部分(14)を上昇させたときに互いに分離する
ことを特徴とする請求項18〜20のいずれかに記載の吸入装置。
【請求項22】
前記第1流路部分(98)の前記接続機構(108)は、前記装置下方部分(12)に保持された保持部に固定されることを特徴とする請求項21に記載の吸入装置。
【請求項23】
前記フィルタ保持部材(66)は、前記保持部を具備または形成することを特徴とする請求項22に記載の吸入装置。
【請求項24】
前記供給路(62)の前記第1流路部分(98)は、一端に前記流入口(104)が設けられた管路(102)を備えることを特徴とする請求項18、19、21〜23のいずれかに記載の吸入装置。
【請求項25】
前記管路(102)は、前記フィルタ保持部材(66)に固定されることを特徴とする請求項24に記載の吸入装置。
【請求項26】
前記装置上方部分(14)及び前記フィルタ保持部材(66)は、前記装置下方部分(12)の上に前記装置上方部分(14)を載置するときに相互に作用する相対位置決め部材(130,132)を有することを特徴とする請求項1〜25のいずれかに記載の吸入装置。
【請求項27】
前記相対位置決め部材(130,132)は、少なくとも1つのピン状突起(130)と、前記ピン状突起(130)が係合する少なくとも1つの止り穴状受け口(132)とからなることを特徴とする請求項26に記載の吸入装置。
【請求項28】
前記相対位置決め部材(130,132)は、前記装置上方部分(14)及び前記フィルタ保持部材(66)のぞれぞれに2つ設けられ、これら2つの前記相対位置決め部材(130,132)の一方と他方と間に、前記接続機構(108,126)が配置されることを特徴とする、請求項21を引用する請求項26、または請求項21を引用する請求項27に記載の吸入装置。
【請求項29】
前記フィルタ保持部材(66)は、単一部材及び合成材料から形成された部材の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1〜28のいずれかに記載の吸入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内部空間を有する容器と、前記容器内部空間に設けられる交換式のフィルタエレメントと、ポンプ機構とを備え、吸引機構が発生する負圧を用い、搬送用流体と砕片粒子との混合物を吸入口から取り込むことが可能であって、フィルタエレメントにより砕片粒子を捕捉し、フィルタエレメントによって濾過された搬送用流体を、ポンプ機構により、容器内部空間から流出口に送給可能な浄化用の吸入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような吸入装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
吸入装置は、例えば、コアボーリング装置などの電動工作機械と組み合わせて用いられる。コアボーリング装置のドリルビットに集積した土砂の砕片粒子は、搬送用流体によって捕捉され、吸入口に接続された吸入ホースを介して吸入装置に送り込まれる。砕片粒子は、袋状のフィルタエレメント内で分離される。搬送用流体は、このフィルタエレメントによって濾過され、容器内部空間に配置された液中ポンプによって流出口に送給される。流出口には、コアボーリング装置のドリル部分にある抽出用フードに吸入装置を接続する供給路が接続されている。この吸入装置において、負圧はブロワを用いて生成され、このブロワは装置上部に配置され、袋状のフィルタエレメントの開口部上方に配置される。吸入された混合物は、吸入装置内に入っていくに従って拡大する通路断面積によって速度を緩め、フィルタエレメント内に到達する。エアーの抜き取りは、吸入機構を用い、フィルタエレメントのすぐ上流側で行われるため、吸入機構の入口側にはカートリッジ式のフィルタが必要となる。
【0004】
このため、この吸入装置における負圧の生成は、全体として非効率的である。また、流体の粒子が飛び散って吸入機構に入り込み、カートリッジ式のフィルタを湿らせてしまうおそれがある。これにより、吸入装置の性能が著しく低下することになる。
【0005】
上述したような形式の吸入装置は、作業現場から流体を吸入して再び作業現場に送給するような、上述の循環方式のみで使用可能なわけではない。
【0006】
上述のような使用に代え、或いはこれに加え、砕片粒子が混入した搬送用流体の送給及び浄化のみに吸入装置を用い、浄化した流体を排水設備または貯留槽に送給することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国実用新案出願公開第202007018176号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、より高い信頼性をもって作動させることが可能な吸入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の形式の吸入装置において、このような目的を達成するため、本発明による吸入装置は、フィルタエレメントが袋状フィルタからなり、当該袋状フィルタを介し、吸入機構によって混合物が取り込まれるものであって、吸入装置は、容器内部空間を、フィルタ収容空間と流体供給空間とに区分するフィルタ保持部材を備え、袋状フィルタは、フィルタ収容空間に設けられて、フィルタ保持部材により、流体供給空間内への膨出が抑止され、フィルタ保持部材の周囲または内部を通過した搬送用流体が、ポンプ機構によって流体供給空間から送給される。
【0010】
本発明による吸入装置においては、袋状フィルタで構成されるフィルタエレメントを通過するように指向された吸入流動がもたらされることで、非常に優れたフィルタ効果が得られる。流入する流体は、例えば袋状フィルタに組み付けられた吸入ノズルにより、袋状フィルタに到達し、この場合、吸入用ホースが吸入ノズルに接続されている。袋状フィルタ内では、砕片粒子が効率的に分離され、吸入空気が袋状フィルタを通過して吸入機構に到達する。
【0011】
特許文献1に記載された吸入装置の場合のような、吸入機構の入口側に設けられるカートリッジ式のフィルタは、省略することが可能である。
【0012】
このため、同じ大きさの吸入機構を用い、高効率を実現することが可能となる。更に、吸入機構は、容器内部空間を、フィルタ収容空間と流体供給空間とに区分するフィルタ保持部材を備える。袋状フィルタは、フィルタ収容空間内に設けられており、フィルタ保持部材により、流体供給空間内への膨出が抑止される。このような構成による利点として、容器内部空間にある流体が、吸入機構に到達してその機能を阻害するほどは、負圧のために膨張する袋状フィルタによって押し出されることがない。このような構成は、袋状フィルタの膨張を伴い流動が急増する吸入装置の起動の際に、特に有用であることが判る。更に、流体供給空間内への袋状フィルタの膨出が抑止されることにより、流体供給空間内に配置された流体流路流入開口、またはポンプ機構の流入開口が、膨張する袋状フィルタによって塞がることがないという効果も得られる。
【0013】
このように、ポンプ機構により流体を確実に送給することが可能となる。これに対し、特許文献1に開示された吸入装置では、砕片粒子で満たされたフィルタエレメントが、液中ポンプの流入側に向かう流体の流動を妨げ、電動工作機械に流体が十分に供給されなくなるおそれがある。
【0014】
膨張した状態の袋状フィルタの体積が、フィルタ収容空間の容積より大きく、フィルタ収容空間内に配置された袋状フィルタは、最大の大きさまでの膨張がフィルタ保持部材によって抑止されるようにするのが好ましい。即ち、フィルタ保持部材は、袋状フィルタが容器の外にある場合になり得る大きさまで袋状フィルタが膨張するのを抑止する。これにより、袋状フィルタの最大限の濾過面積を用い、特に効果的に(搬送用)流体の浄化を行うことができるようになる。また、フィルタ保持部材により、流体供給空間内への袋状フィルタの膨出を確実に防止することができる。
【0015】
フィルタ保持部材が、袋状フィルタのための、少なくとも1つの支承部と、例えば側方用支持部のような、少なくとも1つの側方当接部の一方または両方を具備または形成すると有利であることが判る。支承部上での支持または側方当接部への当接により、砕片粒子で満たされた袋状フィルタが、増大する重量のために損傷するようなことが確実になくなる。砕片粒子は、袋状フィルタの底の部分に堆積する可能性があり、この砕片粒子の上方で、流体が流出する可能性がある。例えば、流体は、側方当接部を通り過ぎて、流体供給空間内へ流入する。
【0016】
支承部及び側方当接部の少なくとも一方は、平坦に形成されるのが好ましい。これにより、フィルタ保持部材は強固な形状となり、袋状フィルタが満杯になったとしても、この袋状フィルタを確実に支持することができる。
【0017】
リブ状及びこぶ状の少なくとも一方の形状を有した突起が、支承部及び側方当接部の少なくとも一方に設けられることにより、袋状フィルタとフィルタ保持部材との平面接触を防止するのが好ましい。この突起は、上述したような支承部及び側方当接部の少なくとも一方の平坦部分に設けることも可能である。このような突起により、袋状フィルタはフィルタ保持部材の広い範囲にわたって平坦とはならず、その結果、受容した砕片粒子の荷重でぴったりと張り付くようなことが確実になくなる。
【0018】
その代わり、突起が設けられている領域で、流体が袋状フィルタを通過可能となる。
【0019】
特に、最後に述べた態様においては、支承部と容器の底壁との間に、流体供給空間の一部領域が設けられるのが好ましい。即ち、流体供給空間が、支承部の下方に位置する容器内部空間の領域にまで、少なくとも部分的に延在している。袋状フィルタから流出した流体は、フィルタ保持部材の下方に集まり、そこから送給することが可能となる。
【0020】
フィルタ保持部材は、濾過された流体が流通可能な開口を少なくとも1つ有するのが好ましい。
【0021】
容器の側壁とフィルタ保持部材との間には、流体が流通可能な空隙が設けられるのが好ましい。例えば、フィルタ保持部材は、容器の互いに対向する2つの側壁の間に延在し、それぞれの側壁から離間しているのが好ましい。空隙が存在することにより、袋状フィルタから流出した流体は、流体供給空間内に流入することができる。
【0022】
上記の方向を横切る方向においては、フィルタ保持部材が、容器の壁または壁部の間にぴったり嵌まり込むように配置されるようにしてもよい。
【0023】
フィルタ保持部材が容器の底壁に支持され、吸入装置が、フィルタ保持部材の上下方向の移動を抑止する固定機構を備えると、有利であることが判る。袋状フィルタは、フィルタ保持部材の上に載置することができるようにして、袋状フィルタの重量を底壁で受け止めることができるようにするのが好ましい。
【0024】
フィルタ保持部材は、固定機構、具体的には上述したような固定機構を介し、好ましくは手作業及び工具を用いない作業の少なくとも一方により、容器に着脱可能に固定されるのが好ましい。例えば、このような容器への固定は、ラッチ機構またはクランプ機構によって行われる。
【0025】
フィルタ保持部材は、フィルタ収容空間と流体供給空間とを互いに隔てる隔壁を具備または形成するのが好ましい。このような隔壁は、例えば、部分溝状、または溝状に形成することができる。この部分溝形状は、例えば、上述したような支承部及び側方当接部により、フィルタ保持部材に形成することが可能であり、これにより、袋状フィルタは、フィルタ保持部材の上に静止すると共に、フィルタ保持部材により横方向で保持することができる。
【0026】
例えば、隔壁は、支承部を形成する第1段部と、側方当接部となる直立部と、後述する指向部材及び接続機構の少なくとも一方が設けられる第2段部とを有した、概ね階段状の形状を有する。
【0027】
フィルタ収容空間は、隔壁の上側に配置されるのが好ましく、流体供給空間は、隔壁の下側に配置されるのが好ましい。
【0028】
例えば、フィルタ収容空間は、支承部によって底面が定められると共に、側方当接部によって横方向の境界が定められ、流体供給空間は、支承部によって上面が定められると共に、側方当接部によって横方向の境界が定められる。
【0029】
フィルタ保持部材は、フィルタ収容空間と流体供給空間とが概ね同じ大きさとなるように構成されるようにしてもよい。
【0030】
袋状フィルタは、不織布の袋体であるか、或いは不織布の袋体を備えるのが好ましい。
【0031】
吸入装置は、袋状フィルタのために容器に取り付けられ、袋状フィルタが着脱可能に固定される保持体を備えると、有利であることが判る。袋状フィルタは、保持体に固定された後に、吸入装置に取り付けることができる。袋状フィルタを取り外す場合は、保持体を取り外した後に、袋状フィルタから保持体を分離することができる。
【0032】
フィルタ保持部材は、容器内に流体が充填されていることを示す充填インジケータを有した表示機構を具備または形成するのが好ましい。例えば、この充填インジケータは、容器内に充填された流体の液面レベルを、使用者に知らせるものである。
【0033】
本発明に係る吸入装置の有用な態様において、吸入装置が、容器を有する装置下方部分と、装置下方部分の上に着脱可能に密封状態で載置され、吸入機構を有する装置上方部分とを備えるのが好ましい。フィルタ保持部材は、装置下方部分を構成する部材であって、容器内に配置されるのが好ましい。
【0034】
ポンプ機構が、装置上方部分内に設けられ、吸入装置が、ポンプ機構の圧送側に接続されて流出口が形成された吐出路と、ポンプ機構の流入側に接続された供給路であって、濾過された搬送用流体のために流体供給空間に配置された流入口を有する供給路とを備えるのが好ましいことが判る。装置上方部分内のポンプ機構は、この供給路を介し、流体供給空間から流体を取り込むことができる。流体は、吐出路を経て流出口に送給される。
【0035】
流入口は、容器の底壁及び容器の側壁の少なくとも一方から距離を置いて配置されるのが好ましい。意に反して砕片粒子が流体供給空間に到達すると、それらの砕片粒子は、容器の底壁に堆積する。流入口と底壁との間に距離を置くことにより、砕片粒子が底壁から流入口に入り込む危険性が低減する。容器の側壁からの離間は、例えば、上述のように、フィルタ収容空間から流体供給空間への流体の流動が、側壁に沿ってフィルタ保持部材を通り過ぎるように生じる場合に有利である。これにより、流体の流動と共に移動する砕片粒子が、最終的に供給路に到達することは、ほとんどあり得ない。
【0036】
少しでも砕片粒子があれば、これを除去するため、もう1つのフィルタを流入口に設けるのが好ましい。
【0037】
別の有用な態様として、ポンプ機構は、流体供給空間に配置される液中ポンプであり、吸入装置は、流出口が形成されると共に液中ポンプの圧送側に接続された吐出路を有するようにすることができる。液中ポンプは、流体を流体供給空間から吸引し、吐出路を介して流出口に送給する。
【0038】
装置上方部分に配置されたポンプ機構に接続される供給路、または液中ポンプに接続される吐出路は、少なくとも一部が流体供給空間に配置される第1流路部分と、少なくとも一部が装置上方部分に配置される第2流路部分とを有し、これら第1流路部分と第2流路部分とが、装置上方部分を装置下方部分の上に載置したときに、それぞれの接続機構を介して互いに液密に接続され、これら接続機構が、装置下方部分から装置上方部分を上昇させたときに、互いに分離するようにすると有利である。これにより、ある程度「自動的」な接続と分離とが可能となる。装置上方部分を装置下方部分の上に載置すると、2つの流路部分にあるそれぞれの接続機構が互いに結合する。例えば、市販の標準的なプラグ式の連結部材を用い、2つの流路部分の相互の連結を行うことができる。装置上方部分が装置下方部分から分離されると、接続機構が互いに引き離されることにより、2つの流路部分が連通しなくなる。このような構成は、上述のポンプ機構が装置上方部分に設けられる態様に適用することが可能である。即ち、供給路を2つの流路部分に区分することが可能である。また、このような構成は、上述のようにポンプ機構が流体供給空間に設けられる液中ポンプとして構成される態様にも適用することができる。この態様では、吐出路を2つの流路部分に区分することができる。
【0039】
第1流路部分の接続機構は、装置下方部分に保持された保持部に固定されるのが好ましい。保持部に固定されることにより、この接続機構は、装置上方部分が装置下方部分の上に載置される際に、相手側の接続機構と確実に結合することができるように規定された位置に設けることができる。保持部は、例えばラッチ機構及びクランプ機構の少なくとも一方により、装置下方部分に保持することができる。
【0040】
上述した形式の吸入装置に関し、必要に応じ、第1流路部分の接続機構を、装置下方部分に保持された保持部に固定することも可能である。これにより、フィルタ保持部材がとりうる形式に依存しない、様々な発明が規定されることになる。
【0041】
フィルタ保持部材が、保持部を具備または形成するようにすると特に有利であることが判る。これにより、別体の保持部を省略することが可能な、特に単純な構造の構成とすることができる。この場合、フィルタ保持部材に、第1流路部分の接続機構を固定することが可能となる。このような接続機構を用い、装置上方部分に設けられたもう一方の接続機構と液密に接続することができる。
【0042】
上述した階段状のフィルタ保持部材における第2段部は、接続機構が固定される部分を形成する。
【0043】
供給路の第1流路部分は、一端に流入口が設けられた管路を備える。この管路は、例えば第1流路部分の接続機構に接続される。
【0044】
この管路は、例えばラッチ機構及びクランプ機構の少なくとも一方により、フィルタ保持部材に固定するようにしてもよい。
【0045】
装置上方部分及びフィルタ保持部材は、装置下方部分の上に装置上方部分を載置するときに相互に作用する相対位置決め部材を有すると有利であることが判る。このような相対位置決め部材により、使用者は、装置下方部分に対して装置上方部分を容易に位置決めすることができるようになる。例えば、装置上方部分を下方に移動し、まだ装置下方部分に載置されていないときに、双方の相対位置決め部材が互いに係合する。即ち、相対位置決め部材によって、装置上方部分を、装置下方部分の目標相対位置に正確に案内することができる。
【0046】
これらの相対位置決め部材は、例えば、少なくとも1つのピン状突起と、このピン状突起が係合する少なくとも1つの止り穴状受け口とからなる。例えば、この少なくとも1つのピン状突起はフィルタ保持部材に設けられ、少なくとも1つの止り穴状受け口は装置上方部分に設けられる。
【0047】
具体的には、フィルタ保持部材及び装置上方部分のそれぞれに、2以上の相対位置決め部材を設けてもよい。
【0048】
相対位置決め部材は、フィルタ保持部材及び装置上方部分のそれぞれに2つ設け、これら2つの相対位置決め部材の一方と他方との間に、接続機構が配置されるのが好ましい。この結果、これらの相対位置決め部材により、装置下方部分の接続機構と、装置上方部分の接続機構との相対的な位置決めを正確に行うことが可能となり、装置下方部分の上に装置上方部分を載置する際に、両者の相互の結合を、ある程度「自動的」に行うことが可能となる。
【0049】
装置下方部分の上に装置上方部分を載置する際に、装置下方部分に向けて加えられる力により、装置上方部分がフィルタ保持部材を押圧すると有利である。これにより、装置下方部分における目標相対位置に、正確にフィルタ保持部材を保持することが可能となる。また、誤った位置にあるフィルタ保持部材を、装置上方部分の下降により、装置下方部分における目標位置に、正確に移動させることが可能となる。
【0050】
フィルタ保持部材は、単一部材及び合成材料で形成された部材の少なくとも一方であるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】装置下方部分と当該装置下方部分の上に載置される装置上方部分とを備えた、本発明に係る吸入装置の前後方向断面を簡略化して示す断面図である。
図2】装置下方部分を示す斜視図である。
図3】装置下方部分を示す分解斜視図である。
図4図1のA部の詳細を示す拡大図である。
図5図1の5−5線に沿う断面図である。
図6図5のB部の詳細を示す拡大図である。
図7】吸入装置の袋状フィルタを示す斜視図である。
図8】吸入口及び流出口を示す吸入装置の部分斜視図である。
図9】本発明のもう1つの実施形態に係るフィルタ保持部材の斜視図である。
図10】本発明のもう1つの実施形態に係るフィルタ保持部材の斜視図である。
図11】袋状フィルタの斜視図である。
図12】本発明の更なる実施形態に係るフィルタ保持部材を、装置下方部分内にある当該フィルタ保持部材の上方の袋状フィルタと共に示す側面図である。
図13】本発明の更なる実施形態に係るフィルタ保持部材を、装置下方部分内にある当該フィルタ保持部材上に載置された袋状フィルタと共に示す側面図である。
図14】本発明の更なる実施形態に係るフィルタ保持部材を、装置下方部分内にある当該フィルタ保持部材の上方の袋状フィルタと共に示す正面図である。
図15】本発明の更なる実施形態に係るフィルタ保持部材を、装置下方部分内にある当該フィルタ保持部材上に載置された袋状フィルタと共に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の好ましい実施の形態に関する以下の記載は、図面に基づき本発明を更に説明するものである。
【0053】
図面は、符号10が付された本発明に係る吸入装置の有用な一実施形態を示している。吸入装置10は、例えば、図示はしないが電動工作機械と組み合わせて用いられる。この電動工作機械は、例えば、コアボーリング装置とすることが可能であり、ドリルビットに生じる土砂の砕片粒子が搬送用流体によって捕捉され、図示しない吸入用ホースを介して吸入装置10に送られる。一方、搬送用流体は、吸入装置10により、図示しない供給用ホースを介し、コアボーリング装置に送給することができる。
【0054】
また、吸入装置10は、砕片粒子を含む搬送用流体を浄化し、浄化後の搬送用流体を貯留槽または排水設備に送給するように、単独で作動することも可能である。
【0055】
吸入装置10は、装置下方部分12と、当該装置下方部分12の上に着脱可能に載置できる装置上方部分14とを備える。装置下方部分12は端縁部16を有し、装置上方部分14は端縁部18を有しており、装置上方部分14が装置下方部分12の上に載置されたときに、端縁部16と端縁部18とが互いに液密且つ気密に結合するようになっている。図示はしないが、装置上方部分14を装置下方部分12に固定するため、公知の閉止部材が設けられる。
【0056】
装置下方部分12は、容器内部空間22を形成する容器20を備える。容器20は、前壁30及び後壁32に加え、台座に保持されるのが好ましい底壁24と、互いに対向する側壁26及び側壁28とを備える。
【0057】
「前壁」及び「後壁」など、位置や方向を示す用語は、吸入装置10が床に置かれた状態で、当該吸入装置10の作動操作に関する方向を示すためものと理解すべきである。
【0058】
吸入装置10、即ち、装置上方部分14の前側には、吸入口34が配置されている。更に、この装置上方部分14の前側には、流出口36(図8)が配置されている。
【0059】
底壁24は、前壁30に沿って隆起した隆起部38を有する(図1図3には1つの隆起部のみを示す)。これら隆起部38は、曲面を有すると共に、図示はしないが間をあけて互いに離間して設けられる。これら隆起部38の下方には、台座のキャスタ40が設けられる。
【0060】
前壁30には受容部材42が設けられており、この受容部材42は、図1にのみ示されている。受容部材42は、吸入装置10のフィルタエレメント46のための保持体44を受容するために用いられる。図7には、フィルタエレメント46が斜視図により示されている。図1では、膨張したフィルタエレメント46の外形が破線によって示されている。
【0061】
フィルタエレメント46は袋状フィルタ48からなる。具体的には、袋状フィルタ48が不織布製の袋状フィルタからなる。袋状フィルタ48は、流入開口52が設けられた保持部50を備える。保持部50は、保持体44に着脱可能に取り付けることができる。保持体44は、好ましくは取付座を介し、受容部材42に結合できるようになっている。袋状フィルタ48の取り扱いを容易にするため、この保持体44は、フックで引っ掛けて容器20に取り付けることができるようにするのが好ましい。保持体44を容器20から外すことにより、袋状フィルタ48を容器20から取り外すことが可能であり、その後、保持体44を袋状フィルタ48から分離できるようにすることで、袋状フィルタ48を処分することが可能となる。
【0062】
装置上方部分14には、吸入口34を形成する吸入ノズル54が設けられる。
【0063】
装置下方部分12の上に装置上方部分14を載置したとき、吸入ノズル54は、その下方部分が、袋状フィルタ48内に入った状態で、袋状フィルタ48に係合できるようになっている。吸入ノズル54は、流入開口52を通して延設される。流入開口52の縁部には、例えばシールリップの形式のシール部材56を設けるのが好ましい。
【0064】
吸入装置10は、容器内部空間22に負圧を生成して、搬送用流体と砕片粒子とからなる混合物を、図示しない吸入ホースと吸入ノズル54とを介して袋状フィルタ48内に取り込むことができるようにするため、装置上方部分14内に配置された吸入機構58を有する。このような吸入は、袋状フィルタ48を介して行われる。砕片粒子は、袋状フィルタ48によって捕捉され、浄化された(搬送用)流体は、袋状フィルタ48を通過して容器内部空間22に流入することができる。袋状フィルタ48に負圧が作用すると、袋状フィルタ48の輪郭で図1に概略を示しているように、袋状フィルタ48が膨張する。
【0065】
更に、吸入装置10はポンプ機構60を備えており、このポンプ機構60は、本実施形態において装置上方部分14内に配置される。ポンプ機構60の流入側には、供給路62が接続されているが、その構成については後に詳述する。ポンプ機構60の圧送側には、部分的に図示された吐出路64が接続されている。この吐出路64には、ホースを接続可能な流出口36が形成されている。
【0066】
浄化された流体は、袋状フィルタ48の外側の容器内部空間22から、ポンプ機構60により、供給路62を介して吸引され、吐出路64を介して流出口36に送給することが可能である。
【0067】
一般的な吸入装置の作動においては、特に、吸入装置の作動開始時や、流体と砕片粒子とからなる混合物が突然押し寄せる場合などにおいて、袋状フィルタの膨張により、流体の液位が上昇する可能性がある。
【0068】
このとき、複数の液体の粒が吸入機構に取り込まれるおそれがあり、吸入機構の機能が阻害されるおそれがある。吸入装置10は、このような事態が生じる危険性を最小化するものである。
【0069】
また、可能な限り効率的に流体から砕片粒子を除去し、膨張する袋状フィルタ48や、袋状フィルタ48の外側の容器内部空間22に存在するかもしれない砕片粒子によって供給路62が塞がれないようにして、吸入装置10の最大限信頼性のある作動を得ることができるのが好ましい。例えば、このことは、吸入装置に接続された、例えばコアドリル装置などの電動工作機械に、十分な流体が供給されないという問題が生じる可能性を最小化しようとするものである。
【0070】
このような目的のため、吸入装置10は、フィルタ保持部材66(以下では、簡略化して保持部材66と称する)を備える。保持部材66は、装置下方部分12の一部を構成する部材であり、容器内部空間22に配置される。保持部材66は、単一部材及び合成樹脂材料による部材の少なくとも一方として形成するのが好ましい。
【0071】
保持部材66は、容器内部空間22を、袋状フィルタ48のためのフィルタ収容空間70と、内部の流体が供給路62を介して送給される流体供給空間72とに区画する隔壁68を形成する。以下では、フィルタ収容空間70を簡略化して収容空間70と称し、流体供給空間72を簡略化して供給空間72と称する。
【0072】
特に図1図3において明らかなとおり、吸入装置10の前後方向74において、隔壁68は概ね階段状をなしている。隔壁68には、前壁30に面する第1段部76と、後壁32に面する第2段部78とが形成されている。第1段部76と第2段部78とは、上下方向に延設された支持部80を介して互いに結合されている。
【0073】
前後方向74において、支持部80は、概ね前壁30と後壁32との中央に配置されている。支持部80は、湾曲して第1段部76へと続いている。前壁30と対向する隔壁68により、概ね部分溝状の形状が得られる。
【0074】
第1段部76及び支持部80は、いずれも平坦になっている。
【0075】
但し、突起物としてリブ84が設けられている。複数のリブ84が、前後方向74を横切る方向に互いに離間して並設され、支持部80を第1段部76に結合する湾曲部分にまで延設されている。
【0076】
第1段部76の、前壁30に面する側は、底壁24に向けて下方に屈曲しており、底壁24の上に載っている。従って、保持部材66は、底壁24によって支持されていることになる。
【0077】
第1段部76と底壁24との間には、供給空間72の一部領域86が設けられる。
【0078】
第1段部76は、袋状フィルタ48のための支承部88を形成し、支持部80は、袋状フィルタ48のための当接部を形成する。膨張状態にあるとき、袋状フィルタ48は収容空間70内で膨張することができるが、この膨張は、底部が支承部88及び隆起部38により、後部が支持部80により、前部が前壁30により、また側部が2つの側壁26及び28により、それぞれ規制される。支承部88に袋状フィルタ48を載置可能とすることにより、袋状フィルタ48の荷重を底壁24で支えることが可能となる。また、支持部80も、同様に袋状フィルタ48の荷重の一部を支える。
【0079】
第2段部78は、支持部80から後壁32に向けて延設されており、保持部材66は、後壁32に支持されるようにしてもよい。従って、前後方向74において、後方側では後壁32において、また前方側では隆起部38において、それぞれ支持がなされることになる。これにより、保持部材66は、前後方向74に位置を移動することなく、容器内部空間22に配置される。前後方向を横切る方向では、保持部材66と2つの側壁26及び28のそれぞれとの間に、空隙90が存在する(図2及び図5)。これら空隙90を介し、収容空間70と供給空間72とが連通することにより、濾過された流体が、保持部材66を越えて流動することができる。
【0080】
供給空間72は、支承部88(一部領域86の部分)、支持部80、及び第2段部78によって上方の範囲が定められ、底壁24によって下方の範囲が定められる。また、供給空間72は、2つの側壁26及び28の一部によって側方の範囲が、また後壁32によって後方の範囲が、それぞれ定められる。
【0081】
従って、隔壁68は、収容空間70が隔壁68の上側に、また供給空間72が隔壁68の下側に、それぞれ位置するようにして、収容空間70と供給空間72とを、前後方向74において互いに隣接して配置するように構成される。また、一部領域86においては、収容空間70が供給空間72の上方に位置している。
【0082】
これに代わる更なる実施形態として、保持部材66を実質的に鞍状の形状に構成することも可能である(図9参照)。このような形状とするため、保持部材66は、第1領域部66a及び第2領域部66bを備えている。これら第1領域部66a及び第2領域部66bは、それぞれの上部116a及び116bにおいて、互いに結合されている。従って、連結部66cは、アーチ状、即ち丸みを帯びた形状となっている。このような実施形態における保持部材66は、実質的に屈曲面によって形成されたような外観を有する。連結部66cは、図13図15に示すように、保持部材66の上に載置された袋状フィルタ48が損傷したり、過剰に圧迫されたりすることがないように、アーチ状、即ち丸みを帯びた形状となっている。保持部材66を鞍状の形状に構成することで、保持部材66の上に載置された袋状フィルタ48を、均一に、即ち第1領域部66a上の部分と第2領域部66b上の部分とが等しくなるように配分し、それにより、保持部材66の下方に、最大限可能な大きさの供給空間72を形成する。
【0083】
図9図12、及び図13に示すように、支持部80は、袋状フィルタ48の設置部位として板状に形成され、保持部材66の後端部分66dに配設される。前述したように、第2段部78は、支持部80に対し実質的に直角に(即ち、約90°の角度で)延設されている(図9参照)。
【0084】
更に、この実施形態では、保持部材66の前端部分66eと連結部66cとの間に、凹部66fが設けられており、この凹部66fは、収容空間70と供給空間72との間の逃し流路として機能する(図9参照)。凹部66fは、実質的に湾曲した外形を有する。このような湾曲した形状により、連結部66cの丸みを帯びた上縁の形状が形成される。また、このような丸みを帯びた上縁の形状には、保持部材66に載置された袋状フィルタ48を保護する役割もある。
【0085】
図12図15に示すように、袋状フィルタ48は、上方からAの方向に保持部材66の上に配置される。つぶれた状態の袋状フィルタ48が、図15に示すように、第1領域部66a上と第2領域部66b上とに、実質的に等しい比率で割り当てられる。
【0086】
本実施形態における保持部材66、即ち第1領域部66a、第2領域部66b、支持部80、及び凹部66fは、流体透過性を有した部材として構成される。この流体透過性部材は、複数の孔を有した板材とすることができる。また、この流体透過性部材を、格子状の部材として形成することも可能である(図10参照)。このような流体透過性部材とすることにより、流体(例えば、吸入された水)は、保持部材6を通って、収容空間70から供給空間72に達し、供給空間72内に集積することが可能となる。
【0087】
保持部材66は、固定機構92を介し、容器20内に着脱可能に固定することが可能である。この固定機構92は、後壁32に配置され、具体的にはラッチ機構で構成される。固定機構92は、後壁32に設けられた係合突起94と、この係合突起94に係合して固定できるように第2段部78に設けられた係合突起96とを備える。
【0088】
保持部材66は、第1段部76の底面が底壁24上に静止すると共に、第1段部76の前部が隆起部38に当接するまで、上方から容器内部空間22に挿入していくことができる。係合突起94と係合突起96とは、底壁24の方に向かう力を第2段部78に加えることで、互いに係合して固定される。前述したように、このとき保持部材66は、前後方向74に位置を移動しないように容器20内に保持される。底壁74から離間する方向である上方向においては、ラッチ機構によって保持部材66が容器20に固定される。
【0089】
供給路62は、第1流路部分98と第2流路部分100とを備える。第1流路部分98は、供給空間72内に設けられた管路102を備える(図1)。管路102の一端には、流入口104が形成されており、この流入口104には、補助フィルタエレメント106を設けるのが好ましい。
【0090】
管路102は、例えば隔壁68に係止することによって保持される(図1)。流入口104は、底壁24と2つの側壁26及び18との少なくとも一方から距離を置いて配置されるのが好ましい。本実施形態では、支持部80を支承部88に結合する曲面部分の領域に、流入口104が配設されている。
【0091】
第1流路部分98は、第2段部78に保持される接続機構108を更に備える。第2段部78には、接続機構108のための保持部が形成されている。接続機構108はアダプタ部110を備え、アダプタ部110の一部は、第2段部78に形成された通路112を通して延設される。アダプタ部110は、上部がフランジなどにより第2段部78に接しており、例えばネジ止めなどで、第2段部78に結合される。供給空間72内において、管路102は、例えば螺合などにより、アダプタ部110に着脱可能に接続される。
【0092】
接続機構108は接続用ニップル114を更に備えており、この接続用ニップル114は、第2段部78の上方となるアダプタ部110の部分に設けられ、例えば螺合などによりアダプタ部110に取り付けられる。接続用ニップル114をアダプタ部110にしっかりと固定するため、接続機構108は、接続用ニップル114を取り囲む固定部材116を有している。
【0093】
接続用ニップル114は、装置上方部分14の方に向け、第2段部78から突出している。
【0094】
第2流路部分100は管路118を備えており、この管路118は、一端がポンプ機構60の流入側に接続され、ポンプ機構60から遠い方の端部には、接続部材120が設けられる。この接続部材120は、例えばネジ止めなどにより、装置上方部分14の底壁122に結合される。底壁122には通路124が形成されている。底壁122の第2段部78に向く側には、接続機構126が設けられる。接続機構126は、フランジなどにより底壁122に接しており、ネジ止めなどで底壁122に結合される。接続機構126には、接続機構108の接続用ニップル114のための受け口128が形成されている。
【0095】
装置上方部分14が装置下方部分12の上に載置されると、接続機構108と接続機構126とが互いに組み合わされ、接続用ニップル114が受け口128内に接続される。第1流路部分98と第2流路部分100との間の液密な接続は、接続機構108と接続機構126とを介して行われる。接続用ニップル114と受け口128との間は、シール部材129によってシールされている。
【0096】
一方、装置上方部分14が装置下方部分12から上方に持ち上げられると、接続機構108と接続機構126とは互いに分離する。
【0097】
上述したような吸入装置10の構成は、特に有用であることが判る。第1流路部分98と第2流路部分100とからなる供給路62は、装置上方部分14が装置下方部分12に対する目標相対位置にあるとき、ある程度「自動的」に形成される。同様に、装置上方部分14が上方に持ち上げられたときには、供給路62が自動的に分離状態となる。
【0098】
保持部材66、即ち第2段部78には、複数の位置決め部材130が設けられている。これら位置決め部材130は、ピン状の突起で構成される。位置決め部材130は、接続機構108の両側方となる位置に、前後方向74を横切る方向に並べて配置され、接続機構108が、これら位置決め部材130の概ね中間に位置するようになっている(前後方向74に幾分ずれた位置となっている)。
【0099】
これら位置決め部材130には、それぞれ対応する位置決め部材132が割り当てられる。
【0100】
位置決め部材132は、装置上方部分14の底壁122に形成された止り穴状受け口で構成される。
【0101】
装置上方部分14が装置下方部分12の上に載置されると、位置決め部材130が位置決め部材132と相互に作用し、使用者による吸入装置10の組立を容易にすることができる。突起が止り穴状受け口内に係合することにより、装置下方部分12に対する所望の目標相対位置に、装置上方部分14をしっかり案内することができる。
【0102】
このとき同時に、接続機構108と接続機構126とが液密状態で互いに接続されるように、両者を互いに位置決めすることができる。
【0103】
図5、及び特に図6には、位置決め部材130がある程度の遊びを有して位置決め部材132に係合した状態が示されている。これにより、位置決め部材130が位置決め部材132に嵌まり込んで固着してしまうような状態を回避し、吸入装置10の取り扱いを容易にする。
【0104】
吸入装置10では、搬送用流体と砕片粒子とからなる混合物が、袋状フィルタ48を通し、吸入機構58によって取り込まれる。
【0105】
砕片粒子は、袋状フィルタ48により確実に分離することが可能である。袋状フィルタ48の荷重は、隔壁68を介し、容器20で分散支持することができる。袋状フィルタ48は、支承部88及び支持部80によって確実に支持される。リブ84は、袋状フィルタ48が、平坦な状態で支承部88及び支持部80に密着したままとなるのを確実に防止する。このため、流体は、袋状フィルタ48の底部から流出し、隔壁68を越えて供給空間72に達することができる。
【0106】
但し、多くの流体は、堆積した砕片粒子の上方において、袋状フィルタ48から流出することになり、同様に隔壁68を越えて、即ち空隙90を通り、供給空間72に達することになる。
【0107】
保持部材66は、膨張した袋状フィルタ48によって容器内部空間22内の流体が押し出されるのを確実に防止する。これにより、押し出された流体が吸入機構58に達して吸入機構58の機能を阻害してしまうような事態を防止することができる。また、膨張した袋状フィルタ48が、例えば流入口104に当接してこれを塞ぐことなどで、供給路62を塞いでしまうようなことも防止できる。供給路62は、第1流路部分98が供給空間72内にあり、袋状フィルタ48は、保持部材66によって、この供給空間72内までまで拡張することはできない。このため、ポンプ機構60により、いつでも流体を送給することが可能となる。
【0108】
流入口104と、底壁24並びに2つの側壁26及び28との間に距離を置くことにより、万一砕片粒子が供給空間72に入り込んだとしても、供給路62に達して供給路62を詰まられるようなことが確実になくなる。
【0109】
更に、収容空間70の容積が、最大限膨張した状態の袋状フィルタ48の体積より小さいと有利であることが判る。即ち、袋状フィルタ48は、保持部材66により、最大の大きさまで膨張した体積に達することがない。一方、このように上回る体積の袋状フィルタ48を設けることにより、大きい濾過面積が得られ、濾過を効果的に行うことが可能となる。
【0110】
また、保持部材66により、袋状フィルタ48の不均衡な膨張が防止される。
【0111】
本発明に係る吸入装置の、図示しない様々な実施形態として、前述したような装置上方部分14に設けられるポンプ機構60に代えて、供給空間72内に液中ポンプを設けるようにしてもよい。このような実施形態においても、上述したような効果を同様に得ることができる。この実施形態では、液中ポンプの圧送側に接続される吐出路が、それぞれ接続機構を有した2つの流路部分を備えることになり、装置上方部分14を装置下方部分12の上に載置したときに、これらの接続機構により、供給路62の2つの接続機構108及び126と同様に接続を行うことができる。
図1
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【国際調査報告】