特表2017-526610(P2017-526610A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エラクレスの特許一覧 ▶ サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス)の特許一覧

特表2017-526610高温での自己持続した反応による複合材料から成る部品の製造方法
<>
  • 特表2017526610-高温での自己持続した反応による複合材料から成る部品の製造方法 図000004
  • 特表2017526610-高温での自己持続した反応による複合材料から成る部品の製造方法 図000005
  • 特表2017526610-高温での自己持続した反応による複合材料から成る部品の製造方法 図000006
  • 特表2017526610-高温での自己持続した反応による複合材料から成る部品の製造方法 図000007
  • 特表2017526610-高温での自己持続した反応による複合材料から成る部品の製造方法 図000008
  • 特表2017526610-高温での自己持続した反応による複合材料から成る部品の製造方法 図000009
  • 特表2017526610-高温での自己持続した反応による複合材料から成る部品の製造方法 図000010
  • 特表2017526610-高温での自己持続した反応による複合材料から成る部品の製造方法 図000011
  • 特表2017526610-高温での自己持続した反応による複合材料から成る部品の製造方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-526610(P2017-526610A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】高温での自己持続した反応による複合材料から成る部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/80 20060101AFI20170818BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20170818BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20170818BHJP
【FI】
   C04B35/80
   F02C7/00 D
   F02C7/00 C
   F01D25/00 L
   F01D25/00 X
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2017-522740(P2017-522740)
(86)(22)【出願日】2015年7月16日
(85)【翻訳文提出日】2017年3月8日
(86)【国際出願番号】FR2015051943
(87)【国際公開番号】WO2016009148
(87)【国際公開日】20160121
(31)【優先権主張番号】1456895
(32)【優先日】2014年7月17日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512162432
【氏名又は名称】サフラン セラミクス
(71)【出願人】
【識別番号】501089863
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェサイアンティフィク(セエヌエールエス)
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【弁理士】
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】ブリス タイエ
(72)【発明者】
【氏名】ルネ パイエ
(72)【発明者】
【氏名】フランシス テイサンディエ
(72)【発明者】
【氏名】エリク フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】エリク ブイヨン
(57)【要約】
本発明は、セラミックマトリックスを有する複合材料製の部品を製造する方法であって、次の工程:
a)繊維構造体の細孔中にセラミックマトリックスを形成することによって、部品を製造する工程であって、繊維構造体の細孔中に存在している粉末組成物に基づく高温での自自己持続した反応により、セラミックマトリックスを形成する、工程;
を含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックマトリックス複合材料製の部品を製造する方法であって、次の工程:
a)繊維構造体の細孔中にセラミックマトリックスを形成することによって、前記部品を製造する工程であって、前記繊維構造体の前記細孔中に存在している粉末組成物からの自己伝播高温合成により、前記セラミックマトリックスを形成する、工程;
を含み、工程a)の間に形成された前記マトリックスが、質量で過半の:
・ケイ素粉末と、シリカ粉末と、元素Nを含む気相との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された、SiO;又は
・チタンを含む粉末と、ホウ素を含む粉末と、元素Nを含む気相との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された化合物である、TiN相及びTiB
を含む、方法。
【請求項2】
工程a)の前に、自己伝播高温合成の前記方法以外の方法により、前記繊維構造体を緻密化させる、予備的な工程b)を行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記部品を緻密化させる、追加の工程c)を、工程a)の後に行う、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記粉末組成物の粒子が、1.5μm以下のメジアン径を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)の前に、前記繊維構造体の細孔中に、前記粉末組成物を挿入することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)の前に、前記繊維構造体の細孔中にあらかじめ挿入した前駆体組成物を変態させることによって、前記繊維構造体の細孔中に直接的に前記粉末組成物を形成することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記繊維構造体の細孔中に前記粉末組成物の幾らか又は全部を形成するため、工程a)の前に熱分解させたポリマーを前駆体組成物が含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程a)の一部又は全部を通して、2000℃以下の温度に維持されている体積中に、前記繊維構造体が存在していることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程a)の前に、次の工程:
・前記繊維構造体の細孔中に、少なくとも第1の粉末を挿入する工程;及び
・次いで、前記繊維構造体の細孔中に、前記第1の粉末とは異なる少なくとも第2の粉末を挿入する工程;
を行い、
前記部品の外表面に向かって前進推移している組成のセラミックマトリックスが、工程a)の後に得られる
ことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
雰囲気バリア及び/又は熱バリアを形成する工程を更に含み、工程a)の後において、前記部品の外表面の全部又は幾らかの上に、前記雰囲気バリア及び/又は前記熱バリアが存在していることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記繊維構造体の繊維が、界面相コーティングで被覆されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程a)の間に形成された前記マトリックスが、25%以下の残留気孔率を有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程a)の間に形成された前記マトリックスが、ケイ素粉末と、シリカ粉末と、元素Nを含む気相との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された、質量で過半のSiOを含むこと、及び工程a)の前に、前記繊維構造体の細孔中にホウ素を含む粉末が存在しており、そして工程a)の間に、前記ホウ素を含む粉末が、前記気相との窒化反応によってBN相を形成することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
セラミックマトリックス複合材料製の部品であって:
・強化用繊維構造体;及び
・前記繊維構造体の細孔中に存在している、質量で過半のSiOを含む、セラミックマトリックスであって、前記マトリックスが、5%以下の質量含有率の遊離残留ケイ素を示している、セラミックマトリックス
を含む、部品。
【請求項15】
前記マトリックスが、25%以下の残留気孔率を有することを特徴とする、請求項16に記載の部品。
【請求項16】
前記マトリックスが、結晶質SiOを70%以上の質量含有率で含むことを特徴とする、請求項14又は15に記載の部品。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか一項に記載の部品を具備している、タービンエンジン。
【請求項18】
セラミックマトリックス複合材料製の部品を製造する方法であって、次の工程:
a)繊維構造体の細孔中にセラミックマトリックスを形成することによって、前記部品を製造する工程であって、前記繊維構造体の前記細孔中に存在している粉末組成物からの自己伝播高温合成により、前記セラミックマトリックスを形成する、工程;
を含み、工程a)の間に形成された前記マトリックスが、質量で過半の:
・チタンを含む粉末と、ケイ素を含む粉末と、炭素を含む粉末との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された化合物である、TiC及びSiC;又は
・アルミニウムを含む粉末と、炭素粉末と、元素Nを含む気相との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された、AlN
を含む、方法。
【請求項19】
工程a)の前に、自己伝播高温合成の前記方法以外の方法により、前記繊維構造体を緻密化させる、予備的な工程b)を、行うことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記部品を緻密化させる、追加の工程c)を、工程a)の後に行う、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記粉末組成物の粒子が、1.5μm以下のメジアン径を有することを特徴とする、請求項18〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
工程a)の前に、前記繊維構造体の細孔中に、前記粉末組成物を挿入することを特徴とする、請求項18〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
工程a)の前に、前記繊維構造体の細孔中にあらかじめ挿入した前駆体組成物を変態させることによって、前記繊維構造体の細孔中に直接的に前記粉末組成物を形成することを特徴とする、請求項18〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記繊維構造体の細孔中に前記粉末組成物の幾らか又は全部を形成するため、工程a)の前に熱分解させたポリマーを前駆体組成物が含むことを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
工程a)の一部又は全部を通して、2000℃以下の温度に維持されている体積中に、前記繊維構造体が存在していることを特徴とする、請求項18〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
工程a)の前に、次の工程:
・前記繊維構造体の細孔中に、少なくとも第1の粉末を挿入する工程;及び
・次いで、前記繊維構造体の細孔中に、前記第1の粉末とは異なる少なくとも第2の粉末を挿入する工程;
を行い、
前記部品の外表面に向かって前進推移している組成のセラミックマトリックスが、工程a)の後に得られる
ことを特徴とする、請求項18〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
雰囲気バリア及び/又は熱バリアを形成する工程を更に含み、工程a)の後において、前記部品の外表面の全部又は幾らかの上に、前記雰囲気バリア及び/又は前記熱バリアが存在していることを特徴とする、請求項18〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記繊維構造体の繊維が、界面相コーティングで被覆されていることを特徴とする、請求項18〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
工程a)の間に形成された前記マトリックスが、25%以下の残留気孔率を有することを特徴とする、請求項18〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
セラミックマトリックス複合材料製の部品を製造する方法であって、次の工程:
a)繊維構造体の細孔中にセラミックマトリックスを形成することによって、前記部品を製造する工程であって、前記繊維構造体の前記細孔中に存在している粉末組成物からの自己伝播高温合成により、前記セラミックマトリックスを形成する、工程;
を含み、工程a)の間に形成された前記マトリックスが、質量で過半の:
・チタンを含む粉末と、ホウ素及び炭素を含む粉末と、元素Nを含む気相との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された化合物である、BN相及びTi−C−N相;又は
・ケイ素及び酸素を含む粉末と、アルミニウムを含む粉末と、炭素を含む粉末との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された化合物である、Al相及びSiC相;又は
・ケイ素粉末と、シリカ粉末と、アルミニウムを含む粉末と、元素Nを含む気相との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された、SiAlONタイプの化合物
を含む、方法。
【請求項31】
工程a)の前に、自己伝播高温合成の前記方法以外の方法により、前記繊維構造体を緻密化させる、予備的な工程b)を、行うことを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記部品を緻密化させる、追加の工程c)を、工程a)の後に行う、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記粉末組成物の粒子が、1.5μm以下のメジアン径を有することを特徴とする、請求項30〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
工程a)の前に、前記繊維構造体の細孔中に、前記粉末組成物を挿入することを特徴とする、請求項30〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
工程a)の前に、前記繊維構造体の細孔中にあらかじめ挿入した前駆体組成物を変態させることによって、前記繊維構造体の細孔中に直接的に前記粉末組成物を形成することを特徴とする、請求項30〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記繊維構造体の細孔中に前記粉末組成物の幾らか又は全部を形成するため、工程a)の前に熱分解させたポリマーを前駆体組成物が含むことを特徴とする、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
工程a)の一部又は全部を通して、2000℃以下の温度に維持されている体積中に、前記繊維構造体が存在していることを特徴とする、請求項30〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
工程a)の前に、次の工程:
・前記繊維構造体の細孔中に、少なくとも第1の粉末を挿入する工程;及び
・次いで、前記繊維構造体の細孔中に、前記第1の粉末とは異なる少なくとも第2の粉末を挿入する工程;
を行い、
前記部品の外表面に向かって前進推移している組成のセラミックマトリックスが、工程a)の後に得られる
ことを特徴とする、請求項30〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
雰囲気バリア及び/又は熱バリアを形成する工程を更に含み、工程a)の後において、前記部品の外表面の全部又は幾らかの上に、前記雰囲気バリア及び/又は前記熱バリアが存在していることを特徴とする、請求項30〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記繊維構造体の繊維が、界面相コーティングで被覆されていることを特徴とする、請求項30〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
工程a)の間に形成された前記マトリックスが、25%以下の残留気孔率を有することを特徴とする、請求項30〜40のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックマトリックス複合材料から部品を製造する方法、及びかかる方法により得ることができる部品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱分解炭素(PyC)タイプの界面相(interphase)で被覆されているSiCを基礎材料とする繊維が、機械負荷移動機能(mechanical load transferring function)をも果たす自己修復性カーバイドマトリックスにより酸化から保護されるべきことが知られている。これらの材料の幾つかの弾性限度は、比較的低い可能性があり、例えば、60メガパスカル(MPa)程度の値である。弾性限度を超えて、亀裂のネットワークがマトリックス中で形成される可能性があり、この亀裂は、界面相及び繊維の酸化をもたらす可能性がある。かかる材料の自己修復性は、SiBC系におけるカーバイド相の酸化によるガラスの形成に基づくものであり、それらが損傷したときに作用することが可能となる。それにもかかわらず、低温で酸化することが可能であるカーバイド相を合成することは、困難である可能性がある。その結果、かかる材料の幾つかは、構造補強(繊維及びPyC界面相で構成されている)の酸化速度と、修復ガラスの生成速度との間の好ましくない妥協の結果として、450℃の周辺において脆性を示す可能性がある。このことは、かかる材料の性能、及びその結果、かかる材料を用いることができる用途の範囲を制限する可能性がある。
【0003】
溶融含浸法(melt−infiltration method)を行うことにより、セラミックマトリックス複合材料を製造することも知られている。これらの方法は、高い弾性限度及び高い熱伝導度を有する材料を合成する原理に依存するものである。材料は、SiCタイプのカーバイド相及び/又はSi相で被覆されている、BNの(又はケイ素でドープされたBNの)界面相を含むことができ、これらの相は、ガス法(gas technique)を用いて作製される。マトリックスは、セラミック及び/又は炭素充填物を、繊維プレフォーム(preform)中に挿入し、次いでケイ素を基礎材料とする溶融合金とともに含浸させ、1420℃の最小温度で反応を行うことにより得られる。かかる方法は、高温で安定な繊維、例えば「Hi−Nicalon S」の呼称で日本の提供者NGSにより提供されている繊維を用いることを必要とする。より正確には、挿入される充填物がSiCのみである溶融含浸法と、炭素を含む充填物の混合物が挿入されて、次の反応:
Si+C→SiC
の結果として、ケイ素合金との反応的な含浸をもたらすようにする反応性溶融含浸法との差異がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラスを生じさせることができるBN界面相とは別に、溶融含浸により得られた材料は、亀裂のある領域を処理するために十分でない程度でしか自己修復性を有しない可能性がある。加えて、かかる材料は、比較的長い期間にわたって応力の複雑な組合せにさらされる部品についての亀裂のない領域における作動限界をも示し得る。更に、BN界面相により与えられた酸化に対する保護は、約800℃まで、この温度範囲においてBNの酸化速度が低い限りにおいて保証され得る。この温度より高い温度においては、BNのBへの酸化が有意となり始め、これが材料の寿命の無視できない低減をもたらし得る。
【0005】
更に、溶融含浸により得られた材料は、湿食の現象に対して敏感でもある可能性がある。
【0006】
加えて、溶融含浸法又は反応性溶融含浸法を行うことにより製造された材料は、マトリックス中に存在している遊離残留ケイ素により制限される可能性がある。これは、問題となる部品の利用温度を、1300℃付近にまで制限することをもたらす可能性がある。
【0007】
化学気相浸透(CVI)によりセラミックマトリックスを作製することも知られている。かかる方法は、比較的長時間を要し、かつ行うために高価であるという欠点を有する可能性がある。同様に、繊維構造体を緻密化させたマトリックスを形成するためのポリマーの含浸熱分解サイクルによる緻密化の方法は、満足な気孔率を得るために複数の含浸熱分解サイクルを行うことを必要とする可能性がある。複数のサイクルを行うことは、実施される方法の期間及びコストを増大させる。
【0008】
したがって、迅速かつ安価に行うことができ、特にマトリックスを形成するために化学気相浸透法に頼ることを制限する、複合材料部品を製造するための方法を利用可能とする必要性が存在する。
【0009】
また、マトリックスが遊離残留ケイ素の低い含有率を示すとともに、かかる材料の利用温度がその結果1300℃までに制限されない、セラミックマトリックス複合材料を得る必要性も存在する。
【0010】
また、SiC及びSiを基礎材料とするマトリックスを有する複合材料よりも良好な、酸化及び腐食に対する耐性を示す、セラミックマトリックス複合材料を得る必要性が存在する。
【0011】
また、PyC及びBN界面相を用いること、及び強化用繊維の全てのタイプに適合する、複合材料部品を製造するための方法を利用可能とする必要性も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のため、第1の側面においては、本発明は、セラミックマトリックス複合材料製の部品を製造する方法であって、次の工程:
a)繊維構造体の細孔中にセラミックマトリックスを形成することによって、部品を製造する工程であって、繊維構造体の細孔中に存在している粉末組成物からの自己伝播高温合成により、セラミックマトリックスを形成する、工程;
を含む、方法を提供する。
【0013】
本発明の脈絡において実施される自己伝播高温合成(self propagating high temperature synthesis)の方法は、その頭文字SHSによっても知られている。
【0014】
本発明者らが認識している限りでは、かかる方法は、繊維構造体を有するセラミックマトリックス複合材料を製造するためにこれまで用いられていない。この方法においては、行われる反応は、繊維構造体に沿った反応先端の自己伝播が存在するように、反応が自己持続する(self−sustaining)ために十分に発熱性である。したがって、かかる方法は、繊維構造体に沿った高温の波の自己持続した伝播により特徴づけられる。
【0015】
自己伝播高温合成の方法を実施することは、有利には、特に短い反応時間で、比較的に純粋な材料を得ることを可能とする。本発明の方法は、比較的単純で、安価で、かつ速い方法で、セラミックマトリックス複合材料を作製することを可能とする。特に、ポリマーを含浸熱分解サイクルにより緻密化させる方法と比較して、サイクルによるポリマーによる緻密化が満足な気孔率を得るためには含浸及び熱分解の工程を複数回要するのに対して、自己伝播高温合成の方法は、マトリックスによって単一の方法で緻密化を有利に得ることができる。
【0016】
自己伝播高温合成は、エネルギーを集中させること、例えばマイクロ波、レーザー、火炎、高周波数(HF)ジェネレーター、又は抵抗器等の点火器、繊維構造体をオーブン中に配置すること、又は実際には発熱の一次化学反応により加熱することによって、局所的に加熱することにより開始することができる。スパークも自己伝播高温合成を開始するために役立つことができる。このタイプの方法は、従来の焼結法と比較して、過剰な量の供給すべきエネルギーを必要としないため、行うことが比較的容易である。
【0017】
反応先端での温度は、比較的高くてもよい。それにもかかわらず、反応先端が急速に伝播し、それによって繊維、界面相、又は保護バリアが高温にさらされる時間の長さを制限するために役立つため、繊維構造体は、それによっては損傷されない。したがって、自己伝播高温合成の方法は、処理される繊維構造体の機械的特性に影響を及ぼさない。
【0018】
有利には、工程a)の間に形成されたマトリックスは、25%以下の残留気孔率(residual porosity)を有することができる。
【0019】
「残留気孔率」との表現は、次の比を特定するものである:[工程a)の後に得られる部品中に存在している全ての細孔が占める体積]/[工程a)の後に得られる部品の全体積]。
【0020】
有利には、工程a)の間に形成されたマトリックスは、いかなるマクロ孔も示さない。
【0021】
細孔は、材料の開口を画定しており、この開口は、長さ及び幅を有する。「マクロ孔」との表現は、500マイクロメートル(μm)以上の長さ及び100μm以上の幅の開口を有する細孔を示している。
【0022】
したがって、工程a)の間に形成されたマトリックスにおいては、最大寸法が数ナノメートル〜数百ナノメートルの範囲にある細孔のみが残っている。
【0023】
マトリックスの残留気孔率は、水圧入法(water porosimetry)又は含浸により測定することができる。
【0024】
したがって、制限された残留気孔率、特に化学気相浸透法を行うことによって従来得られたマトリックスにおいてよりも制限された残留気孔率をマトリックスが示している、セラミックマトリックス複合材料を有利に得ることを可能とする。
【0025】
一実施態様においては、自己伝播高温合成の方法の間に、粉末組成物と気相との間の化学反応を実施することができる。かかる場合、気相は、元素Nを含むことができ、例えばNを含むことができる。変形態様においては、自己伝播高温合成の方法の間、化学反応は専ら粉末組成物の構成成分間で起きることができる。自己伝播高温合成の方法のこれらの2つのタイプを示す実施例を、下に詳細に記載している。
【0026】
一実施態様においては、工程a)の一部又は全部を通して、2000℃以下の温度、例えば1500℃以下の温度、好ましくは用いる繊維の分解温度(degradation temperature)未満の温度に維持されている体積中に、繊維構造体が存在していることができる。
【0027】
一実施態様においては、工程a)の前に、繊維構造体の細孔中に、粉末組成物を挿入することができる。
【0028】
変形態様においては、工程a)の前に、繊維構造体の細孔中にあらかじめ挿入した前駆体組成物を変態させることによって、繊維構造体の細孔中に直接的に粉末組成物を形成することができる。
【0029】
前駆体組成物の変態は、有利には化学的変態である。
【0030】
前駆体組成物は、粉末の形態であることができる。変形態様においては、繊維構造体の細孔中に粉末組成物の幾らか又は全部を形成するため、前駆体組成物が、工程a)の前に熱分解させたポリマーを含むことができる。ポリマーは、充填ポリマーであってよい。ポリマーは、任意選択的に充填されたポリシロキサン又はポリカルボシランであってよい。
【0031】
好ましくは、粉末組成物の粒子は、1.5μm以下のメジアン径を有することができる。
【0032】
反対の明示がない限り、「メジアン径」との表現は、統計的な粒度分布の中位(half−population)により与えられる寸法を示すものであり、D50として知られている。
【0033】
用いられる粉末についてのかかる粒子径は、繊維構造体の細孔の充填度及び工程a)の間の粉末の反応性の両方を更に向上させることを有利に可能とする。
【0034】
粉末組成物の粒子のメジアン径は、典型的には、数ナノメートル〜数マイクロメートルの範囲、好ましくは0.5μm〜1.5μmの範囲にあることができる。例として、粉末組成物の粒子は、200ナノメートル(nm)〜1μmの範囲、例えば200nm〜800nmの範囲にあるメジアン径を有することができる。
【0035】
一実施態様においては、繊維構造体は、炭素繊維及び/又はセラミック繊維を含むことができる。
【0036】
セラミック繊維は、窒化物タイプの繊維、炭化物タイプの繊維、例えばSiC繊維、酸化物タイプの繊維、及びかかる繊維の混合物を含むことができる。
【0037】
一実施態様においては、繊維構造体の繊維は、界面相コーティングで被覆されていることができる。
【0038】
界面相コーティングは、PyC、BC、又はBNを含むことができ、特にPyC、BC、又はBNから成っていることができる。
【0039】
有利には、工程a)の前に、自己伝播高温合成の方法以外の方法により、繊維構造体を緻密化させる、予備的な工程b)を行うことができる。
【0040】
予備的な緻密化は、工程a)の前に、20%〜80%の範囲にある気孔率、及び好ましくは35%〜55%の範囲にある気孔率を示す、繊維構造体を得ることを可能とすることができる。
【0041】
「気孔率」との表現は、次の比を特定するものとして理解されるべきである:[繊維構造体中の全ての細孔が占める体積]/[繊維構造体の全体積]。
【0042】
代替的に又は組み合わせて、部品を緻密化させる、追加の工程c)を、工程a)の後に行うことができる。
【0043】
予備的な及び/又は相補的な緻密化は、化学気相浸透及び/又はポリマーを含浸及び熱分解させるサイクルにより行うことができる。
【0044】
好ましくは化学気相浸透により、工程a)の前に、予備的な緻密化を行うことが有利であることができる。かかる予備的な緻密化は、繊維を一緒に結合し、そして支持体の備え付けの助けなしに硬化された構造がそれ自体の形状を保持することを可能とする、硬化コーティング(consolidation coating)を形成するために役立つ。工程a)の前にかかる予備的な緻密化を行うことは、自己伝播高温合成の方法に耐えるための繊維の性能を更に向上させるためにも役立つ。
【0045】
一実施態様においては、工程a)の前に、次の工程を行うことができる:
・繊維構造体の細孔中に、少なくとも第1の粉末、例えば第1の粉末混合物を挿入する工程;
・次いで、繊維構造体の細孔中に、第1の粉末とは異なる少なくとも第2の粉末、例えば第1の粉末混合物とは異なる第2の粉末混合物を挿入する工程;
工程a)の後には、部品の外表面に向かって前進推移(vary on going)している組成のセラミックマトリックスが得られる。
【0046】
有利には、一実施態様は、特に外部の保護、例えば熱バリア及び/又は雰囲気バリアを画定するために、表面に組成勾配を生み出すことを可能とする。かかる場合、工程a)の後において、部品の外表面の幾らか又は全部を熱バリア及び/又は雰囲気バリアが画定している、部品が得られる。
【0047】
第1の粉末又は第1の粉末混合物は、自己伝播高温合成に参加することができ、又は変形態様においては、第1の粉末又は第1の粉末混合物は、自己伝播高温合成に参加する粉末組成物のための前駆体である組成物を構成することができる。
【0048】
第2の粉末又は第2の粉末混合物の構成成分は、任意選択的に、工程a)の間の化学反応に参加することができる。例として、第2の粉末又は第2の粉末混合物は、希土類元素ケイ酸塩、例えばイットリウムを含む希土類元素ケイ酸塩を含むことができる。
【0049】
一実施態様においては、方法は、雰囲気バリア及び/又は熱バリアを形成する工程を含むことができ、工程a)の後において、部品の外表面の全部又は幾らかの上に雰囲気バリア及び/又は熱バリアが存在している。
【0050】
一実施態様においては、工程a)を実施した後に、雰囲気バリア及び/又は熱バリアを形成することができる。かかる場合、雰囲気バリア及び/又は熱バリアは、部品の外表面の全部又は幾らかを覆っているコーティングを形成する。変形態様においては、雰囲気バリア及び/又は熱バリアを、工程a)の間に形成することができる。かかる場合、雰囲気バリア及び/又は熱バリアは、部品の外表面の全部又は幾らかを画定する。かかる場合、雰囲気バリア及び/又は熱バリアは、工程a)の前に、第2の粉末又は第2の粉末混合物が、繊維構造体の細孔中に存在することによってもたらされる。
【0051】
好ましくは、工程a)の間に形成されたマトリックスは、ケイ素粉末と、シリカ粉末と、元素Nを含む気相との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された、質量で過半のSiOを含むことができる。
【0052】
「質量で過半のXを含むマトリックス」との表現は、化合物Xが、50%超、好ましくは60%以上、好ましくは70%以上の質量含有率でマトリックス中に存在していることを意味するものとして理解されるべきである。
【0053】
SiOを基礎材料とするマトリックスを形成することは、この材料が酸化に耐えるための(SiCのそれより良好な)優秀な能力を示し、かつ得られる部品に湿食に耐える非常に良好な能力を与えるために有利である。SiOはまた、良好な温度安定性、低い密度、及び良好な機械的特性をも示す。
【0054】
SiOを形成するための公知の方法は、1700℃超の温度及び高圧の処理を実施し得るものであり、この操作条件は、繊維プレフォームの処理と両立するものではない。具体的には、熱間等方加圧(hot isostatic pressing:HIP)によりSiOを合成することは、例えば、Hi−Nicalon SタイプのSiC繊維を用いることと両立しない。反応温度は、1950℃に達し得る。加えて、熱間等方加圧法における反応時間は、自己伝播高温合成の方法における反応時間よりも有意に長い可能性がある。
【0055】
したがって、自己伝播高温合成の方法を用いることに関連する本発明の1つの利点は、処理している繊維構造体を損傷させることなく急速にSiOを形成することを可能とすることである。
【0056】
有利には、マトリックス中の遊離残留ケイ素の有意な存在により1300℃未満の温度の使用に限定される可能性がある、ポリマーの含浸及び熱分解のサイクルを用いて溶融含浸又は緻密化させることによりマトリックスが形成された部品とは異なり、本発明の方法は、少なくとも1450℃まで、及びそれどころか1800℃まで用いることができる、セラミックマトリックス複合材料部品を得ることを可能とする。
【0057】
したがって、有利には、工程a)の間に形成されたマトリックスは、5%以下である遊離残留ケイ素の質量含有率を示すことができる。
【0058】
マトリックスに存在する種々の構成成分、例えばSiO、遊離残留ケイ素、並びに化合物α−Si及びβ−Siの質量含有率は、X線回折(XRD)により定量することができる。XRD分析は、本発明の方法により得られた部品の中央の厚み中から採取したマトリックスのサンプル上で行う。
【0059】
自己伝播高温合成反応によりSiOマトリックスを形成することは、ポリマー含浸熱分解法(polymer impregnation and pyrolysis:PIP)のサイクルにより緻密化する方法を用いて形成されたSiOマトリックスと比較して特に有利である。具体的には、複数の連続したサイクルを行った結果として、かかる方法により形成されたSiOマトリックスは、十分でない純度及び/又は均一性を示す可能性がある。ポリマー含浸熱分解法のサイクルによる緻密化の方法によりSiOを形成することは、非晶質であるSiOを得ることをもたらす可能性があるのに対し、自己伝播高温合成の方法は、有意な量の結晶質であるSiOを得ることを可能にする。したがって、自己伝播高温合成反応によるSiOの形成は、非晶質SiOを結晶質SiOへと変態させるために、繊維の劣化をもたらし得る追加の熱処理に頼る必要性をなくすことを有利に可能とすることができる。
【0060】
それにもかかわらず、工程a)の後には、SiOの結晶化を向上させるための、及び/又は得られるSiOの粒子の大きさの成長を得るための熱処理を行うことが可能である。
【0061】
有利には、工程a)を行った後に得られたマトリックスは、結晶質SiOの相を70%以上の質量含有率で含むことができる。
【0062】
工程a)の間、以下の化学反応を行うことにより、SiOを形成することが可能である:
3Si(s)+SiO(s)+2N(g)→2SiO(s)
【0063】
一実施態様においては、気相は、O及び/又はNOを含むこともできる。
【0064】
気相中にO及び/又はNOの分圧を導入することは、有利には、工程a)の間に形成されるSiOの比率を上昇させること、及び工程a)の間に形成される他の化合物、例えばSiの比率を低減させることを可能とする。
【0065】
有利には、工程a)の前に、ケイ素粉末を繊維構造体の細孔中に挿入することができ、また工程a)の前に、ケイ素粉末の部分的な酸化のための処理を実施することができ、この部分的な酸化処理は、ケイ素粉末の幾らか及び全部をシリカへと変換するために役立つ。この実施態様は、工程a)の前に、ケイ素を含む前駆体組成物を繊維構造体の細孔中に導入することに相当する。特に、ケイ素は、58%〜100%の範囲にある質量含有率で、導入した前駆体組成物中に存在することができる。
【0066】
かかる酸化前処理は、有利には、工程a)の間に形成されるSiの量を低減させるために役立つ。具体的には、酸化前処理の間に、ケイ素粒子の周囲にシリカ層が生じる。窒素圧下で、このように保護されたケイ素は、容易に窒化しないようになり、したがって、SiOの形成が、Siの形成と比較して増進される。
【0067】
酸化前処理を行わない場合と比較すると、酸化前処理の結果としてその場(in situ)でシリカが形成されるこの実施態様は、工程a)を行った後に得られる部品の残留気孔率を更に低減させるためにも役立つことができる。
【0068】
一実施態様においては、比[自己伝播高温合成を開始する前のケイ素粉末の物質量]/[自己伝播高温合成を開始する前のシリカ粉末の物質量]は、3以上、例えば3〜3.5の範囲にあることができる。
【0069】
特に、比[自己伝播高温合成を開始する前のケイ素粉末の物質量]/[自己伝播高温合成を開始する前のシリカ粉末の物質量]は、3に略等しくてもよい。かかるSi−SiO混合物においては、ケイ素の質量含有率は、58%である。
【0070】
自己伝播高温合成の方法の間に気相を用いる場合、工程a)の全部又は幾らかの間の気相の圧力は、10bar〜50barの範囲、好ましくは20bar〜30barの範囲にあることができる。
【0071】
有利には、90℃/分(min)以上の平均昇温速度での昇温段階を、工程a)の前に行う。
【0072】
昇温速度についてのかかる値は、SiOの形成を、Siの形成と比較して多くするのに有利に役立つ。
【0073】
好ましくは、ホウ素を含む粉末は、工程a)の前に繊維構造体の細孔中に存在することができ、そして工程a)の間には、ホウ素を含む粉末は、気相との窒化反応により、BN相を形成することができる。
【0074】
ホウ素をSi/SiOの混合物に添加することは、複合材料の緻密化を促進するために役立つ。具体的には、ホウ素を窒化すること(BNを形成すること)は、その体積を140%まで上昇させることをもたらす。かかる場合、マトリックスは、SiO、BN、及び任意選択的にSiを含む。
【0075】
特に、ホウ素を含む粉末は、ホウ素粉末であることができる。
【0076】
以下で詳細に説明するように、本発明の方法は、SiOを基礎材料とするマトリックスを形成することに限定されない。
【0077】
好ましくは、工程a)で形成されたマトリックスは、チタンを含む粉末と、ホウ素を含む粉末と、元素Nを含む気相との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された化合物である、質量で過半のTiN相及びTiB相を含むことができる。
【0078】
「質量で過半の…相及び…相を含むマトリックス」との表現は、マトリックスにおける上記の相の質量含有率の合計が、50%超、好ましくは60%以上、好ましくは70%以上であることを意味するものとして理解されるべきである。
【0079】
窒化チタン(TiN)は、非常に硬質であり、良好な熱伝導度を有しており、かつ高い融点(3200℃)を有している。圧力下(20bar〜100bar)での直接的なチタンの窒化は、反応の発熱性(二窒素の40barの圧力で約3000℃の最大燃焼温度)により引き起こされる熱衝撃の結果として、比較的濃密であるが亀裂のある材料を生成する可能性がある。反応の発熱性を低減させ、作製段階の間の材料のひび割れを回避するため、ホウ素を含む粉末、例えば、窒化ホウ素(BN)の粉末を、チタンに添加することができる。TiNに加え、次いで二ホウ化チタン(TiB)が形成される。二ホウ化チタンはまた、高い融点(3225℃)、酸化に対する良好な耐性、及び非常に大きな硬度をも示す。
【0080】
特に、チタン粉末と、BN粉末と、元素Nを含む気相、例えばNを含む気相との間の化学反応の結果としての自己伝播高温合成により、TiN及びTiBを形成することができる。
【0081】
好ましくは、工程a)の間に形成されたマトリックスは、チタンを含む粉末と、ケイ素を含む粉末と、炭素を含む粉末との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された化合物である、質量で過半のTiC相及びSiC相を含むことができる。
【0082】
特に、これらの化合物は、チタン粉末と、ケイ素粉末と、炭素粉末との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成することができる。
【0083】
好ましくは、工程a)の間に形成されたマトリックスは、アルミニウムを含む粉末と、元素Nを含む気相との間の化学反応による自己伝播高温合成により形成された、質量で過半のAlNを含むことができる。
【0084】
窒化アルミニウムは、マトリックス材料としての多くの利点、例えば高い融点(2300℃)、良好な熱伝導度、低い熱膨張率、及び酸化に対する非常に良好な耐性を示す。
【0085】
特に、アルミニウム粉末と、元素Nを含む気相、例えばNを含む気相との間の化学反応による自己伝播高温合成により、AlNを形成することができる。
【0086】
アルミニウム粉末に炭素粉末を添加することが有利であることができる。
【0087】
炭素粉末を添加することは、有利には、アルミニウムの粒子上に存在している保護的なアルミナ層と反応すること(化学還元)により、アルミニウムの窒化率を上昇させることを可能とする。
【0088】
好ましくは、工程a)の間に形成されたマトリックスは、チタンを含む粉末と、ホウ素及び炭素を含む粉末と、元素Nを含む気相との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された化合物である、質量で過半のBN相及びTi−C−N相を含むことができる。
【0089】
窒化ホウ素(BN)は、腐食及び酸化に耐える優れた能力を有する、共有結合性が高いセラミックである。
【0090】
特に、これらの化合物は、チタン粉末と、BC粉末と、元素Nを含む気相、例えばNを含む気相との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成することができる。
【0091】
工程a)の間に形成されたマトリックスは、好ましくは、ケイ素及び酸素を含む粉末と、アルミニウムを含む粉末と、炭素を含む粉末との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された化合物である、質量で過半のAl相及びSiC相を含むことができる。
【0092】
特に、これらの化合物は、シリカ粉末と、アルミニウム粉末と、炭素粉末との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成することができる。
【0093】
工程a)の間に形成されたマトリックスは、好ましくは、ケイ素粉末と、シリカ粉末と、アルミニウムを含む粉末と、元素Nを含む気相との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された、質量で過半のSiAlONタイプの化合物を含むことができる。
【0094】
SiAlON類は、酸化に対する優れた耐性、及び良好な機械的特性を有するセラミックである。
【0095】
特に、ケイ素粉末と、シリカ粉末と、アルミニウム粉末と、元素Nを含む気相、例えばNを含む気相との間の化学反応による自己伝播高温合成により、β−SiAlON相を形成することができる。
【0096】
本発明は、セラミックマトリックス複合材料製の部品であって:
・強化用繊維構造体;及び
・繊維構造体の細孔中に存在している、質量で過半のSiOを含む、セラミックマトリックスであって、マトリックスが、5%以下の質量含有率の遊離残留ケイ素を示している、セラミックマトリックス
を含む、部品も提供する。
【0097】
かかる部品は、上記の方法により得ることができる。
【0098】
有利には、マトリックスは、25%以下の残留気孔率を有することができる。
【0099】
有利には、マトリックスは、結晶質SiOを70%以上の質量含有率で含むことができる。
【0100】
本発明は、上記のように定義された部品を具備している、タービンエンジンも提供する。
【0101】
本発明は、上記の部品又は上記の方法を行うことにより得られた部品を、1つ又は複数の要素と組み立てる工程を含む、タービンエンジンの製造方法も提供する。
【0102】
非限定的な例として与える本発明の特定の実施態様の以下の説明から、添付図面を参照しながら、本発明の他の特性及び利点を明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0103】
図1図1は、本発明の方法の一例のフローチャートである。
図2図2は、本発明の別形の方法のフローチャートである。
図3図3は、本発明の別形の方法のフローチャートである。
図4図4は、本発明の方法の例のより詳細なフローチャートである。
図5図5は、本発明の方法の例のより詳細なフローチャートである。
図6図6は、本発明の方法の例のより詳細なフローチャートである。
図7図7は、本発明の方法の実施態様を行うことにより形成された複合材料部品の、走査型電子顕微鏡により得られた画像である。
図8図8は、本発明の方法の実施態様を行うことにより形成された複合材料部品の、走査型電子顕微鏡により得られた画像である。
図9図9は、本発明の方法の別の実施態様を行うことにより形成された複合材料製の部品の、走査型電子顕微鏡により得られた画像である。
【発明を実施するための形態】
【0104】
図1は、本発明の方法の一連の工程の工程を示している。最初に、粉末組成物を作製する(工程10)。SiOを基礎材料とするマトリックスを得ることが望まれる場合には、粉末組成物は、Si粉末及びSiO粉末の混合物を含むことができる。
【0105】
その後、工程10において作製した混合物を、液状媒体中で、例えば水中で懸濁させる(工程20)。SiOを基礎材料とするマトリックスを得ることが望まれる場合には、ケイ素粉末及びシリカ粉末は、15%以上、例えば15%〜25%の範囲にある体積含有率(ケイ素粉末の体積含有率+シリカ粉末の体積含有率の合計)で液状媒体中に存在することができる。
【0106】
次いで、液状媒体中の懸濁液の状態の粉末組成物を、例えばサブミクロン粉末吸引(submicron powder aspiration:SPA)タイプの方法により、繊維構造体の細孔中に導入する(工程30)。
【0107】
次いで、高温での自己持続した反応により合成を行い、繊維構造体の細孔中にマトリックスが形成されることが可能となる(工程40)。工程a)の全部又は幾らかを通して、1500℃以下の温度、例えば1450℃以下の温度に維持されている体積中に、繊維構造体が存在していてもよい。
【0108】
図2は、本発明の方法の変形実施態様を示しているフローチャートである。
【0109】
第1の工程31では、前駆体組成物を繊維構造体の細孔中に導入する。例として、前駆体組成物は、粉末組成物を形成するために、熱分解すべきポリマーを含んでいてもよい。変形態様においては、前駆体組成物は、粉末の形態であり、例えば、SiOを基礎材料とするマトリックスを得ることが望まれる場合には、ケイ素粉末である。
【0110】
その後、前駆体組成物を、粉末組成物へと変態させる(工程35)。例えば、前駆体組成物がケイ素粉末を含んでいる場合には、シリカ粉末及びケイ素粉末を含む粉末組成物を得て、自己伝播高温合成反応によってSiOを基礎材料とするマトリックスを形成するようにするために、ケイ素粉末に酸化処理を行うことが可能である。例として、ケイ素粉末の一部をシリカへと変態させるために行う熱処理は、ケイ素粉末を空気中で1時間900℃の温度に曝すことを含むことができる。変形態様においては、前駆体組成物がポリマーを含む場合には、工程35は、粉末組成物を得るため、このポリマーを熱分解させるための熱処理を含んでもよい。
【0111】
自己伝播高温反応による合成は、繊維構造体の細孔中にマトリックスを形成することを可能とする(工程40)。
【0112】
SiOのマトリックスを得ることが望まれる場合には、実際に、ケイ素粉末の形態の前駆体組成物を用いること、及び前駆体組成物の一部を繊維構造体中で直接的にシリカへと変態させることにより、良好に緻密化させることができる。この変態により、ケイ素粉末の部分的な酸化の後に、繊維構造体の細孔の良好な充填率を得ることが可能となる。例えば、ケイ素粉末をSPAにより挿入して、繊維構造体の細孔を55%まで充填するようにする場合には、酸化の後に、68%の繊維構造体の細孔の充填率を得ることが可能である。このように、シリカをその場で形成することにより、工程a)の後に特に少ない残留気孔率を示すマトリックスを得ることが可能となる。
【0113】
図3は、本発明の方法の変形実施態様を示しているフローチャートである。工程32の間、第1の粉末混合物を繊維構造体の細孔中に挿入する。その後、第1の粉末混合物と異なる第2の粉末混合物を、繊維構造体中に挿入する(工程33)。第1の粉末混合物を先に導入することにより、繊維構造体中に存在する第2の粉末混合物の量は、繊維構造体の深さが上昇するにつれて低減する。この変動の結果として、工程41の後に、部品の外表面に向かって前進推移している組成のセラミックマトリックスを得ることが可能となる。かかる場合、工程a)の後に、有利には、部品の外表面の全部又は幾らかを画定している雰囲気バリア及び/又は熱バリアを形成することが可能となる。その結果、かかる別形の方法は、単一の工程で、繊維構造体を緻密化させること及び雰囲気バリア及び/又は熱バリアを形成することの両方を可能とするという利点を示す。
【0114】
図4〜6を参照して、SiOを基礎材料とするマトリックスを得ることが望まれる場合の、本発明の脈絡において行うことができる一連の工程の幾つかの例の説明を続ける。簡潔にするために、これらの図は、SiOを基礎材料とするマトリックスを形成することにのみ関している。しかしながら、上記のように、本発明はSiOを基礎材料とするマトリックスを形成することに限定されるものではないことを当然に理解すべきである。
【0115】
図4は、本発明の例示的な方法の一連の工程を示している。工程2の間、複数の糸を、繊維構造体、例えば2D又は3Dの構造体へと変形させる。これは、当業者により知られている随意の方法により行うことができる。
【0116】
用いられる糸1は、複数のセラミック繊維及び/又は炭素繊維を含む。例として、セラミック繊維は、SiC繊維である。例として、適切なSiC繊維は、「Nicalon」、「Hi−Nicalon」若しくは「Hi−Nicalon−S」の呼称で日本の提供者NGSにより提供されているものか、又は「Tyranno SA3」の呼称で提供者UBEにより提供されているものである。例として、適切な炭素繊維は、「Torayca」の呼称で提供者Torayにより提供されているものである。
【0117】
その後、糸上に界面相を作製する(工程4)。この界面は、有利には、セラミックマトリックス複合材料の機械的強度を、特にマトリックス中のあらゆる亀裂を偏向させて、繊維の完全性(integrity)に影響しないようにすることにより、セラミックマトリックス複合材料の機械的強度を高めるために有利に役立つ。変形態様においては、繊維を界面相で被覆しない。その後、アニール処理を行うことが可能である(工程6、これは説明している例示的な方法においては任意選択的である)。
【0118】
工程8の間、硬化コーティングを繊維上に形成する。この目的のため、繊維構造体をシェーパー内に配置することができ、そして硬化コーティングを化学気相浸透により形成することができる。例として、硬化コーティングは、炭化物を含み、硬化コーティングは、例えばSiC、BC、及び/又はSiBCである。硬化コーティングは、繊維及び(存在している場合には)界面相を、生じ得る変質から保護するために役立つ化学バリア及び/又は熱バリアを構成することができる。
【0119】
次いで、繊維構造体を機械加工する工程を行うことが可能である(工程12)。この機械加工工程の後、液状媒体中の懸濁液の形態で存在している粉末組成物を、サブミクロン粉体吸引法(sub−micrometer powder suction method)により、繊維構造体中に挿入する(工程30)。その後、SiOを基礎材料とするマトリックスを形成するため、自己伝播高温合成を行う(工程40)。
【0120】
上述したように、SiOは、多くの利点を示している。特に、この材料は、SiCよりも酸化に対する大きな耐性を示している(酸化開始温度:乾燥空気中で1600℃)。更に、SiO材料の機械的特性は、作製された部品においては、SiC繊維(例えば、「Hi−Nicalon S」タイプ)及びSi相の両方に関連する機械的特性と両立する(下の表1を参照されたい)。
【0121】
【表1】
【0122】
工程a)の間に形成されたマトリックスが、過半のSiO相を有している場合には、SiO以外の化合物、例えばSiを、マトリックス中に形成することが可能である。工程a)の間に形成されたマトリックス中のSiの質量含有率は、50%未満、好ましくは5%以下である。
【0123】
続いて、本発明の方法により形成することができる構造の幾つかの例である:
・SiC繊維/PyC界面相/SiC硬化コーティング又はSi/Si及びSiO粉末の混合物からの窒素圧下での自己伝播高温合成により形成された、SiOを含むマトリックス;
・SiC繊維/PyC界面相/SiC硬化コーティング又はSi/Si、SiO及びB粉末の混合物からの窒素圧下での自己伝播高温合成により形成された、SiO及び式Siの化合物を含むマトリックス;
・SiC繊維/PyC界面相/SiC硬化コーティング又はSi/Si、SiO及びAl粉末の混合物からの窒素圧下での自己伝播高温合成により形成された、SiO及びSiAlONを含むマトリックス。
【0124】
図5は、本発明の別形の方法を示している。図5における工程の順番は、図4のそれとは、粉末組成物を繊維構造体中に導入するために用いる方法、及び工程a)の後に後処理を行ったことが異なっている。
【0125】
図5の例においては、水性懸濁液の形態の粉末組成物を、注入により繊維構造体中に挿入し、次いで熱処理を行って水を蒸発させる。行う注入及び熱処理は、樹脂を注入することにより成形する方法(樹脂トランスファー成形法又は「RTM」として知られている方法)において実施されるそれらと同一のタイプであることができる。当業者に公知の他の方法を用いて繊維構造体中に粉末組成物を挿入することが可能であり、したがって、例として、電気泳動法により繊維構造体中に粉末組成物を挿入することが可能である。
【0126】
自己伝播高温合成を行った時点で、得られるマトリックスの残留気孔率を埋めるため、追加の緻密化工程c)を、例えば、ポリマーの含浸及び熱分解のサイクルにより行うことができる(工程50)。変形態様においては、部品の最終的な密度を上昇させるため、工程50の間、放電プラズマ焼結(SPS)緻密化の追加の工程を行うことができる。
【0127】
図6は、本発明の方法の別の例における一連の工程を示している。この例においては、繊維構造体を形成する前に、糸上に最初に界面相を形成する(工程3)。その後、糸をサイジング及び/又はラッピング処理にさらし、続けて繊維構造体を得るために、製織等のテキスタイル操作(textile operation)を行う(工程5)。上で説明したように、粉末組成物を繊維構造体中に挿入し、マトリックスを自己伝播高温合成により形成し、次いで追加の緻密化を行うことができる。
【実施例】
【0128】
〈実施例1:ケイ素粉末及びシリカ粉末からのSiO相を有するマトリックスの形成〉
本発明の方法の種々の工程の順番を、以下で説明する。
【0129】
市販のケイ素及びシリカの粉末を、最初に摩擦粉砕(attrition grinding)にかけた。シリカ粉末及びケイ素粉末は、提供者Sigma−Aldrichにより入手可能となっているシリカ粉末及びケイ素粉末を用いた。粉砕の前においては、用いたシリカ粉末は、2.1μmに等しいメジアン径(D50)を有する粒子を示しており、用いたケイ素粉末は、11μmに等しいメジアン径(D50)を有する粒子を示していた。
【0130】
粉砕は、シリカ及びケイ素粉末の粒子径を調節するために役立つ。粉砕の後においては、シリカ粉末の粒子のメジアン径(D50)は、約600nmであり、ケイ素粉末の粒子のメジアン径(D50)は、約400nmであった。
【0131】
次いで、ケイ素粉末の濡れ性を向上させるため、ケイ素粉末を600℃で6時間空気中で熱処理にさらした。
【0132】
次いで、20体積%までの粉末で充たした安定した水性懸濁液を作製した。懸濁液は、9〜9.5の範囲にあるpHを示しており、そしてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を添加することによって、pHを安定させた。懸濁液中のSi/SiOモル比は、約3であった。
【0133】
繊維プレフォームを、サブミクロン粉末吸引(submicron powder aspiration:SPA)法により、4barの圧力下で、2時間真空を適用して含浸させた。用いた繊維プレフォームは、「Hi−Nicalon−S」の呼称で販売されている複数のSiC繊維を有しており、100nmの厚さを有するPyC界面相、及び1μmの厚さを有するSiC硬化コーティングで被覆されていた。用いた繊維プレフォームは、54%の初期気孔率を示していた(類似の値を与える3つの異なる測定法から得られた結果:ヘリウムピクノメトリー、水含浸法、水銀圧入法)。
【0134】
繊維プレフォーム中に粉末を挿入した後、次の圧力下での熱処理を行って、自己伝播高温合成(「SHS」法)を実施した:
・ジュール効果加熱(Joule effect heating)による、250℃/分での1400℃の温度までの温度の上昇;
・1400℃で20barの圧力の窒素下での30分間の静置;及び
・周囲温度への制御冷却。
【0135】
かかるプロトコルを実施した後、図7及び8に示した結果が得られた。繊維構造体の細孔に効果的かつ均一に充填されたマトリックスを得た。繊維、界面相、及び硬化コーティングは、自己伝播高温合成によっては損傷しなかった。
【0136】
XRD分析の後に、マトリックスの組成について、次の結果が得られた:75質量%の結晶質SiO、α−Si相及びβ−Si相の存在、並びに5質量%以下のマトリックス中の遊離残留ケイ素の濃度。得られた材料の残留気孔率は、約23%であった(水浸漬法により測定)。
【0137】
SPAによるプレフォームの含浸工程に続けて自己伝播高温合成を行うことにより、初期気孔率の約55%を満たすことが可能となる。
【0138】
〈実施例2:工程a)の前の部分的な酸化前処理を含む、SiO相を含むマトリックスの形成〉
本発明の別の例示的な方法の種々の工程の順番を、以下で説明する:
1.SiO粉末を水中で、そしてSi粉末をイソプロパノール/エタノール中で粉砕した。粉末は、0.5μm〜1μmの範囲にあるメジアン径を示した。
2.ケイ素粉末を、600℃で6時間空気中で熱処理にさらした。
3.73質量%のSi及び27質量%のSiOで構成されている、5.77のSi/SiOモル比を与える粉末混合物を得た。
4.粉末を水中で懸濁させ、この懸濁液を、TMAHによりpH9で安定させ、20体積%の乾物含有率を示した。
5.SPA(4bar〜2時間の真空)により、熱分解炭素の界面相及びSiC硬化体で被覆されたセラミック繊維から成る繊維構造体中に含浸させた。
6.材料を100℃で一晩乾燥させる。
7.SPA工程後に、ケイ素粉末を酸化加熱処理した:1時間900℃で空気中。
8.自己伝播高温合成による熱処理:二窒素20bar下で200℃/分の速度で1450℃まで昇温した。10分間この温度で静置した。周囲温度へと制御冷却した。
【0139】
マトリックスは、86質量%の結晶質SiO、12質量%のSi及び2質量%のSiから成っていた。
【0140】
残留気孔率は、約17%であった。
【0141】
マトリックスは、均一かつ濃密であり(図9を参照されたい)、そして得られた材料の残留気孔率は、実施例1で得られた材料よりも実に低かった。
【0142】
〈実施例3:ケイ素粉末、シリカ粉末及びホウ素粉末からのSiO相を有するマトリックスの形成〉
本発明の別の例示的な方法の種々の工程の順番を、以下で説明する:
1.Si及びBの粉末をイソプロパノール/エタノール中で、SiOの粉末を蒸留水中で別々に粉砕した。
2.懸濁させることを促進するため、ケイ素粉末を600℃で空気中で熱処理にさらした。
3.粉末を次の質量組成で一緒に混合した:Si/SiO=1.4+10%B。
4.水性懸濁液(15体積%〜20体積%の範囲にある乾物含有率)とした。pHは、強塩基TMAHを添加することにより制御した。
5.SPAにより繊維プレフォームへと含浸させた。
6.乾燥させた。
7.自己伝播高温合成による熱処理:二窒素20bar又は30bar下で200℃/分の速度で1450℃まで昇温した。10分間この温度で静置した。周囲温度へと制御冷却した。
【0143】
〈実施例4:TiN及びTiB相を含むマトリックスの形成〉
本発明の別の例示的な方法の種々の工程の順番を、以下で説明する。
1.市販のTi及びBNの粉末を、次の組成で混合させた:BN/Ti=1(モル比)、すなわちBN/Ti=0.52(質量比)。用いた粉末の粒子は、0.5μm〜1μmの範囲にあるメジアン径を有していた。
2.粉末をエタノール中に懸濁させ、立体的な分散剤としての1平方メートル当たり2ミリグラム(mg/m)のポリエチレンイミン(PEI)を添加した。懸濁液中の乾物の量は、15体積%〜20体積%の範囲にあった。
3.SPA(4bar〜真空)により、熱分解炭素の界面相及びSiC硬化体で被覆されたセラミック繊維から成る繊維構造体中に含浸させた。
4.乾燥させた。
5.自己伝播高温合成による熱処理:二窒素40bar下で200℃/分の速度で950℃まで昇温した。周囲温度へと制御冷却した。
【0144】
BN、Ti及びNが、繊維構造体の細孔中で反応して、TiB及びTiNを基礎材料とするマトリックスが、以下の反応により得られる:
yTi(s)+xBN(s)+0.5(y−1.5x)N2(g)→0.5xTiB2(s)+(y−0.5x)TiN(s)
【0145】
この方法で、55質量%のTiB及び35質量%のTiNを含むマトリックスを得た。最大燃焼温度は、1500℃未満にとどまった。
【0146】
〈実施例5:TiC及びSiCを含むマトリックスの形成〉
本発明の別の例示的な方法の種々の工程の順番を、以下で説明する:
1.イソプロパノール/エタノール中でケイ素粉末を粉砕した。粉末は、0.5μm〜1μmの範囲にあるメジアン径を有していた。
2.粉末を混合させて、48質量%のTi(市販のチタン粉末)、28質量%のSi、及び24質量%のC(0.8μm Luvomax)で構成される混合物を得た。
3.粉末をエタノール中に懸濁させ、立体的な分散剤としての2mg/mのPEIを添加した。懸濁液中の乾物の量は、15体積%〜20体積%の範囲にあった。
4.SPA(4bar〜真空)により、熱分解炭素の界面相及びSiC硬化体で被覆されたセラミック繊維から成る繊維構造体中に含浸させた。
5.自己伝播高温合成による熱処理:不活性雰囲気下で650℃で反応を開始させた。周囲温度へと制御冷却した。
【0147】
Ti、Si及びC粉末が、繊維構造体の細孔の内部で反応して、TiC及びSiCから成るマトリックスが、以下の反応により得られる:
xTi(s)+(1−x)Si(s)+C(s)→xTiC(s)+(1−x)SiC(s)
【0148】
自己伝播高温合成によりTiCが合成されることをもたらす反応は、極めて発熱性でかつ急速である。これに対し、SiCを形成するためのSiとCとの間の反応も発熱性であるが、この反応は、自己伝播するのに十分な発熱性ではない。
【0149】
したがって、TiC及びSiCから成る材料は、強い発熱性の反応(Ti+C)と、より低い発熱性の反応(Si+C)とを組み合わせることにより合成することができる。かかる場合、この反応は、伝播するために気相の参加を必要としないことが当然に観察される。
【0150】
〈実施例6:AlN相を含むマトリックスの形成〉
本発明の別の例示的な方法の種々の工程の順番を、以下で説明する:
1.Al/AlN=1又はAl/Si=1の質量比を有する市販の粉末を一緒に混合した。NHFが3質量%で混合物中に存在しており、Cが3質量%で混合物中に存在していた。
2.粉末をエタノール中に懸濁させ、立体的な分散剤としての2mg/mのPEIを添加した。懸濁液中の乾物の量は、15体積%〜20体積%の範囲にあった。
3.SPA(4bar〜真空)により、熱分解炭素の界面相及びSiC硬化体で被覆されたセラミック繊維から成る繊維構造体中に含浸させた。
4.自己伝播高温合成による熱処理:二窒素50bar下で200℃/分の速度で加熱して1100℃で開始させた。30分間この温度で静置した。周囲温度へと制御冷却した。
【0151】
次の反応により、アルミニウムは、気相と反応として、繊維プレフォームの細孔中でAlNを形成する:
2Al(s)+N2(g)→2AlN(s)
【0152】
炭素粉末を添加することは、アルミニウム粒子上のアルミナの保護層と反応させること(化学還元)により、アルミニウムの窒化率を上昇させるために有利に役立つ。
【0153】
〈実施例7:BN及びTi−C−N相を含むマトリックスの形成〉
本発明の別の例示的な方法の種々の工程の順番を、以下で説明する。
1.必要に応じ、イソプロパノール/エタノール中でBCを粉砕した。
2.Ti/BC=1のモル比で粉末を一緒に混合した。
3.粉末をエタノール中に懸濁させ、立体的な分散剤としての2mg/mのPEIを添加した。懸濁液中の乾物の量は、15体積%〜20体積%の範囲にあった。
4.SPA(4bar〜真空)により、熱分解炭素の界面相及びSiC硬化体で被覆されたセラミック繊維から成る繊維構造体中に含浸させた。
5.自己伝播高温合成による熱処理:二窒素1000bar下で、電気フィラメントにより反応を開始させた。
【0154】
粉末は、気相と反応して、BN及びTi−C−Nから成るマトリックスを、繊維構造体の細孔中で、次の反応により形成する:
xTi(s)+B(s)+[(4+y)/2]N2(g)→4BN(s)+Ti−C−Ny(s)
【0155】
TiNは、好ましくは燃焼段階の間に形成される。BCの分解に由来する遊離炭素は、TiN格子中で拡散して、Ti−C−N相を形成する。
【0156】
〈実施例8:Al及びSiC相を含むマトリックスの形成〉
本発明の別の例示的な方法の種々の工程の順番を、以下で説明する。
1.α(SiO)石英を蒸留水中で粉砕した。得られた粉末は、0.5μm〜1μmの範囲にあるメジアン径を示した。
2.SiO、市販のAl、及び市販のCの粉末を、それぞれ56質量%、33質量%、及び11質量%の割合で一緒に混合した。
3.粉末をエタノール中に懸濁させ、立体的な分散剤としての2mg/mのPEIを添加した。懸濁液中の乾物の量は、15体積%〜20体積%の範囲にあった。
4.SPA(4bar〜真空)により、熱分解炭素の界面相及びSiC硬化体で被覆されたセラミック繊維から成る繊維構造体中に含浸させた。
5.自己伝播高温合成による熱処理:不活性雰囲気下で、電気フィラメントにより反応を開始させた。
【0157】
次の反応により、粉末が細孔中で反応して、SiC及びAlを形成する:
3SiO2(s)+4Al(s)+3C(s)→3SiC(s)+2Al3(s)
【0158】
〈実施例9:SiAlONタイプの相を有するマトリックスの形成〉
本発明の別の例示的な方法の種々の工程の順番を、以下で説明する:
1.SiO粉末を水中で、そしてSi粉末をイソプロパノール/エタノール中で粉砕した。粉末は、0.5μm〜1μmの範囲にあるメジアン径を示した。
2.次の質量組成で、粉末を一緒に混合した:70%のSi、15%のSiO、及び15%の市販のAl。少量のY(約3質量%)を添加して、相で得られたSiAlONを更に安定化させた。
3.粉末をエタノール中に懸濁させ、立体的な分散剤としての2mg/mのPEIを添加した。懸濁液中の乾物の量は、15体積%〜20体積%の範囲にあった。
4.SPA(4bar〜真空)により、熱分解炭素の界面相及びSiC硬化体で被覆されたセラミック繊維から成る繊維構造体中に含浸させた。
5.自己伝播高温合成による熱処理:二窒素10bar下で200℃/分の速度で1400℃まで昇温した。30分間この温度で静置した。周囲温度へと制御冷却した。
【0159】
SiAlONは、次の反応により、プレフォームの細孔中に形成される:
4.5Si(s)+Al(s)+0.5SiO2(s)+3.5N2(g)→β−SiAlON7(s)
【0160】
〈実施例10:SiO相及び環境バリア/熱バリアを含むマトリックスの形成〉
本発明の別の例示的な方法の種々の工程の順番を、以下で説明する:
1.SiO、ムライト(3Al・2SiO)、及びYSiの粉末を水中で、そしてSiの粉末をイソプロパノール/エタノール中で粉砕した。粉末は、0.5μm〜1μmの範囲にあるメジアン径を示した。
2.第一に、繊維構造体を、58質量%のSi及び42質量%のSiOで構成されており、あらかじめpH9で水性懸濁させた第1の粉末混合物で、SPAにより含浸させた。この懸濁液は、20体積%で充填されていた。
3.材料を100℃で一晩乾燥させた。
4.第二に、繊維構造体を、72質量%のYSi及び28質量%のムライトで構成されており、あらかじめpH12で水性懸濁させた第2の粉末混合物で、真空供給により含浸させた。この懸濁液は、25体積%で充填されていた。
5.材料を100℃で一晩乾燥させる。
6.自己伝播高温合成による熱処理:二窒素20bar下で200℃/分の速度で1450℃まで昇温した。30分間この温度で静置した。周囲温度へと制御冷却した。
【0161】
SiOは、繊維構造体の細孔中に形成され、そしてAl、Y及びSiOは、部品の表面上に、数十マイクロメートルの深さにわたって形成される。
【0162】
「〜を含む/含有する(comprising/containing a)」との表現は、「〜を少なくとも1つ含む/含有する(comprising/containing at least one)」として理解されるべきである。
【0163】
「…〜…との範囲にある」との表現は、境界値を含むものとして理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2017年3月21日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックマトリックス複合材料製の部品を製造する方法であって、次の工程:
a)繊維構造体の細孔中にセラミックマトリックスを形成することによって、前記部品を製造する工程であって、前記繊維構造体の前記細孔中に存在している粉末組成物からの自己伝播高温合成により、前記セラミックマトリックスを形成する、工程;
を含み、工程a)の間に形成された前記マトリックスが、質量で過半の:
・ケイ素粉末と、シリカ粉末と、元素Nを含む気相との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された、SiO;又は
・チタンを含む粉末と、ホウ素を含む粉末と、元素Nを含む気相との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された化合物である、TiN相及びTiB
を含む、方法。
【請求項2】
工程a)の前に、自己伝播高温合成の前記方法以外の方法により、前記繊維構造体を緻密化させる、予備的な工程b)を行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記部品を緻密化させる、追加の工程c)を、工程a)の後に行う、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)の前に、次の工程:
・前記繊維構造体の細孔中に、少なくとも第1の粉末を挿入する工程;及び
・次いで、前記繊維構造体の細孔中に、前記第1の粉末とは異なる少なくとも第2の粉末を挿入する工程;
を行い、
前記部品の外表面に向かって前進推移している組成のセラミックマトリックスが、工程a)の後に得られる
ことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
雰囲気バリア及び/又は熱バリアを形成する工程を更に含み、工程a)の後において、前記部品の外表面の全部又は幾らかの上に、前記雰囲気バリア及び/又は前記熱バリアが存在していることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)の間に形成された前記マトリックスが、ケイ素粉末と、シリカ粉末と、元素Nを含む気相との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された、質量で過半のSiOを含むこと、及び工程a)の前に、前記繊維構造体の細孔中にホウ素を含む粉末が存在しており、そして工程a)の間に、前記ホウ素を含む粉末が、前記気相との窒化反応によってBN相を形成することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
セラミックマトリックス複合材料製の部品であって:
・強化用繊維構造体;及び
・前記繊維構造体の細孔中に存在している、質量で過半のSiOを含む、セラミックマトリックスであって、前記マトリックスが、5%以下の質量含有率の遊離残留ケイ素を示している、セラミックマトリックス
を含む、部品。
【請求項8】
前記マトリックスが、結晶質SiOを70%以上の質量含有率で含むことを特徴とする、請求項に記載の部品。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の部品を具備している、タービンエンジン。
【請求項10】
セラミックマトリックス複合材料製の部品を製造する方法であって、次の工程:
a)繊維構造体の細孔中にセラミックマトリックスを形成することによって、前記部品を製造する工程であって、前記繊維構造体の前記細孔中に存在している粉末組成物からの自己伝播高温合成により、前記セラミックマトリックスを形成する、工程;
を含み、工程a)の間に形成された前記マトリックスが、質量で過半の:
・チタンを含む粉末と、ケイ素を含む粉末と、炭素を含む粉末との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された化合物である、TiC及びSiC;又は
・アルミニウムを含む粉末と、炭素粉末と、元素Nを含む気相との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された、AlN
を含む、方法。
【請求項11】
工程a)の前に、自己伝播高温合成の前記方法以外の方法により、前記繊維構造体を緻密化させる、予備的な工程b)を、行うことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記部品を緻密化させる、追加の工程c)を、工程a)の後に行う、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
工程a)の前に、次の工程:
・前記繊維構造体の細孔中に、少なくとも第1の粉末を挿入する工程;及び
・次いで、前記繊維構造体の細孔中に、前記第1の粉末とは異なる少なくとも第2の粉末を挿入する工程;
を行い、
前記部品の外表面に向かって前進推移している組成のセラミックマトリックスが、工程a)の後に得られる
ことを特徴とする、請求項1012のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
雰囲気バリア及び/又は熱バリアを形成する工程を更に含み、工程a)の後において、前記部品の外表面の全部又は幾らかの上に、前記雰囲気バリア及び/又は前記熱バリアが存在していることを特徴とする、請求項1013のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
セラミックマトリックス複合材料製の部品を製造する方法であって、次の工程:
a)繊維構造体の細孔中にセラミックマトリックスを形成することによって、前記部品を製造する工程であって、前記繊維構造体の前記細孔中に存在している粉末組成物からの自己伝播高温合成により、前記セラミックマトリックスを形成する、工程;
を含み、工程a)の間に形成された前記マトリックスが、質量で過半の:
・チタンを含む粉末と、ホウ素及び炭素を含む粉末と、元素Nを含む気相との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された化合物である、BN相及びTi−C−N相;又は
・ケイ素及び酸素を含む粉末と、アルミニウムを含む粉末と、炭素を含む粉末との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された化合物である、Al相及びSiC相;又は
・ケイ素粉末と、シリカ粉末と、アルミニウムを含む粉末と、元素Nを含む気相との間の化学反応による自己伝播高温合成によって形成された、SiAlONタイプの化合物
を含む、方法。
【請求項16】
工程a)の前に、自己伝播高温合成の前記方法以外の方法により、前記繊維構造体を緻密化させる、予備的な工程b)を、行うことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記部品を緻密化させる、追加の工程c)を、工程a)の後に行う、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
工程a)の前に、次の工程:
・前記繊維構造体の細孔中に、少なくとも第1の粉末を挿入する工程;及び
・次いで、前記繊維構造体の細孔中に、前記第1の粉末とは異なる少なくとも第2の粉末を挿入する工程;
を行い、
前記部品の外表面に向かって前進推移している組成のセラミックマトリックスが、工程a)の後に得られる
ことを特徴とする、請求項1517のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
雰囲気バリア及び/又は熱バリアを形成する工程を更に含み、工程a)の後において、前記部品の外表面の全部又は幾らかの上に、前記雰囲気バリア及び/又は前記熱バリアが存在していることを特徴とする、請求項1518のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】