特表2017-526621(P2017-526621A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-526621(P2017-526621A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】錯体
(51)【国際特許分類】
   C07F 19/00 20060101AFI20170818BHJP
   C07C 49/84 20060101ALI20170818BHJP
   C07C 45/68 20060101ALI20170818BHJP
   C07C 22/08 20060101ALI20170818BHJP
   C07C 17/32 20060101ALI20170818BHJP
   C07F 15/00 20060101ALN20170818BHJP
   C07F 9/50 20060101ALN20170818BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170818BHJP
【FI】
   C07F19/00CSP
   C07C49/84 C
   C07C45/68
   C07C22/08
   C07C17/32
   C07F15/00 C
   C07F9/50
   C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】69
(21)【出願番号】特願2016-572542(P2016-572542)
(86)(22)【出願日】2015年3月20日
(85)【翻訳文提出日】2017年2月3日
(86)【国際出願番号】GB2015050835
(87)【国際公開番号】WO2015189554
(87)【国際公開日】20151217
(31)【優先権主張番号】62/011,168
(32)【優先日】2014年6月12日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.CombiFlash
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】コラコット, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】チャウ, リシャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ディーンゲリス, アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
4H050
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC24
4H006BA25
4H006BA44
4H006BA48
4H006BB12
4H039CA99
4H039CD20
4H050AA01
4H050AA02
4H050AA03
4H050AB40
4H050WA29
(57)【要約】
本発明は、式(1)のパラジウム(II)錯体又は式(2)のパラジウム(II)錯体を提供する。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、m、E、及びXは、本明細書に記載されている。本発明はまた、錯体の調製方法、並びに炭素−炭素及び炭素−ヘテロ原子カップリング反応におけるその使用を提供する。


【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)のパラジウム(II)錯体:
[式中、
及びRは、独立に、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、又はRとRは、連結して、Eと環構造を形成しており、
、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成しており、この場合において、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成していてもよく、又はR、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、上で定義される通りであり、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Eは、P又はAsであり、
Xは、配位しているアニオン性配位子であり、
但し、式(1)のパラジウム錯体は、(π−クロチル)PdCl(ジシクロヘキシルホスフィノ−2−ビフェニル)でない]。
【請求項2】
EがPである、請求項1に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項3】
、R、R、R10、及び/又はR11がシクロヘキシル基より立体的にかさ高くないとき、R及びRが、シクロヘキシル基より立体的にかさ高い、請求項2に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項4】
、R、R、R10、及び/又はR11がシクロヘキシル基より立体的にかさ高いとき、R及びRが、シクロヘキシル基より立体的にかさ高くない、請求項2に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項5】
及びRが、置換及び非置換直鎖アルキル、置換及び非置換分枝鎖アルキル、置換及び非置換シクロアルキル、置換及び非置換アリール、並びにヘテロ原子が硫黄、窒素、及び酸素から独立に選択される置換及び非置換ヘテロアリールからなる群から独立に選択される、請求項1から4の何れか一項に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項6】
、R、R、及びRが、−H、置換及び非置換直鎖アルキル、置換及び非置換分枝鎖アルキル、置換及び非置換シクロアルキル、置換及び非置換アルコキシ、置換及び非置換アリール、置換及び非置換ヘテロアリール、置換及び非置換−N(アルキル)[アルキル基は、同じでも異なってもよく、直鎖又は分枝鎖基から独立に選択される]、置換及び非置換−N(シクロアルキル)[シクロアルキル基は、同じでも異なってもよい]、置換及び非置換−N(アリール)[アリール基は、同じでも異なってもよい]、置換及び非置換−N(ヘテロアリール)[ヘテロアリール基は、同じでも異なってもよい]、並びに置換及び非置換ヘテロシクロアルキル基からなる群から独立に選択される、請求項1から5の何れか一項に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項7】
、R、R、及びRがそれぞれ、−Hである、請求項6に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項8】
、R、R、及びRの2つが、−Hであり、R、R、R、及びRの他の2つが、非置換直鎖アルキル、非置換分枝鎖アルキル、非置換シクロアルキル、及び非置換アルコキシからなる群から独立に選択される、請求項6に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項9】
、R、R、R10、及びR11が、−H、置換及び非置換直鎖アルキル、置換及び非置換分枝鎖アルキル、置換及び非置換シクロアルキル、置換及び非置換アルコキシ、置換及び非置換アリール、置換及び非置換ヘテロアリール、置換及び非置換−N(アルキル)[アルキル基は、同じでも異なってもよく、直鎖又は分枝鎖基から独立に選択される]、置換及び非置換−N(シクロアルキル)[シクロアルキル基は、同じでも異なってもよい]、置換及び非置換−N(アリール)[アリール基は、同じでも異なってもよい]、置換及び非置換−N(ヘテロアリール)[ヘテロアリール基は、同じでも異なってもよい]、並びに置換及び非置換ヘテロシクロアルキル基からなる群から独立に選択される、請求項1から8の何れか一項に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項10】
、R、R、R10、及びR11がそれぞれ、−Hである、請求項9に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項11】
、R、R、R10、及びR11の3つが、−Hであり、R、R、R、R10、及びR11の他の2つが、非置換直鎖アルキル、非置換分枝鎖アルキル、非置換シクロアルキル、非置換アルコキシ、非置換−N(アルキル)[アルキル基は、同じでも異なってもよく、直鎖又は分枝鎖基から独立に選択されてよい]、及び非置換−N(アリール)[アリール基は、同じでも異なってもよい]からなる群から独立に選択される、請求項9に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項12】
、R、R、R10、及びR11の2つが、−Hであり、R、R、R、R10、及びR11の他の3つが、非置換直鎖アルキル、非置換分枝鎖アルキル、非置換シクロアルキル、非置換アルコキシ、非置換−N(アルキル)[アルキル基は、同じでも異なってもよく、直鎖又は分枝鎖基から独立に選択されてよい]、及び非置換−N(アリール)[アリール基は、同じでも異なってもよい]からなる群から独立に選択される、請求項9に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項13】
単座第三級ホスフィン配位子が、
からなる群から選択される、請求項1から12の何れか一項に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項14】
12が、置換及び非置換直鎖アルキル、置換及び非置換分枝鎖アルキル、置換及び非置換シクロアルキル、置換及び非置換アリール、並びにヘテロ原子が硫黄、窒素、及び酸素から独立に選択される置換及び非置換ヘテロアリールからなる群から選択される、請求項1から13の何れか一項に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項15】
Xが、ハロ基又はトリフルオロアセテート基である、請求項1から14の何れか一項に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項16】
式(1)の錯体が、
からなる群から選択される、請求項1から15の何れか一項に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項17】
式(2)のパラジウム(II)錯体:
[式中、
18及びR19は、−Me、−Et、−Pr、−Pr、−Bu、−Bu、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルからなる群から独立に選択され、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
20、R21、R22、R23、及びR24は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
20/R21又はR22/R23から選択される一方又は両方の対は、独立に、これらが結合している原子と環構造を形成していてもよく、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Xは、配位しているアニオン性配位子である]。
【請求項18】
18とR19が同じであり、シクロヘキシル基である、請求項17に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項19】
20及びR21が、−H、置換及び非置換直鎖アルキル、置換及び非置換分枝鎖アルキル、置換及び非置換シクロアルキル、置換及び非置換アルコキシ、置換及び非置換アリール、置換及び非置換ヘテロアリール、置換及び非置換−N(アルキル)[アルキル基は、同じでも異なってもよく、直鎖又は分枝鎖基から独立に選択される]、置換及び非置換−N(シクロアルキル)[シクロアルキル基は、同じでも異なってもよい]、置換及び非置換−N(アリール)[アリール基は、同じでも異なってもよい]、置換及び非置換−N(ヘテロアリール)[ヘテロアリール基は、同じでも異なってもよい]、並びに置換及び非置換ヘテロシクロアルキル基からなる群から独立に選択される、請求項17又は請求項18に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項20】
20及びR21が両方とも、−Hである、請求項19に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項21】
22及びR24が、−H、置換及び非置換直鎖アルキル、置換及び非置換分枝鎖アルキル、置換及び非置換シクロアルキル、置換及び非置換アルコキシ、置換及び非置換−チオアルキル、置換及び非置換アリール、置換及び非置換ヘテロアリール、置換及び非置換−N(アルキル)[アルキル基は、同じでも異なってもよく、直鎖又は分枝鎖基から独立に選択される]、置換及び非置換−N(シクロアルキル)[シクロアルキル基は、同じでも異なってもよい]、置換及び非置換−N(アリール)[アリール基は、同じでも異なってもよい]、置換及び非置換−N(ヘテロアリール)[ヘテロアリール基は、同じでも異なってもよい]からなる群から独立に選択される、請求項17から20の何れか一項に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項22】
23が、−H、置換及び非置換直鎖アルキル、置換及び非置換分枝鎖アルキル、置換及び非置換シクロアルキル、置換及び非置換アルコキシ、置換及び非置換アリール、並びに置換及び非置換ヘテロアリールからなる群から選択される、請求項17から21の何れか一項に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項23】
22、R23、及びR24がそれぞれ、フェニル基である、請求項17から22の何れか一項に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項24】
式(2)の錯体が、
からなる群から選択される、請求項17から23の何れか一項に記載のパラジウム(II)錯体。
【請求項25】
式(1)の錯体又は式(2)の錯体の調製方法であって、式(3)の錯体を、式(4)の単座ビアリール配位子又は式(5)の単座ビヘテロアリール第三級ホスフィン配位子と反応させて、式(1)の錯体又は式(2)の錯体を生成するステップを含む調製方法
[式中、
及びRは、独立に、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、又はRとRは、連結して、Eと環構造を形成しており、
、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
/R、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11から選択される1つ又は複数の対は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成していてもよく、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
18及びR19は、−Me、−Et、−Pr、−Pr、−Bu、−Bu、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルからなる群から独立に選択され、
20、R21、R22、R23、及びR24は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
20/R21又はR22/R23から選択される一方又は両方の対は、独立に、これらが結合している原子と環構造を形成していてもよく、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Eは、P又はAsであり、
Xは、配位しているアニオン性配位子であり、
但し、式(1)のパラジウム錯体は、(π−クロチル)PdCl(ジシクロヘキシルホスフィノ−2−ビフェニル)でない]。
【請求項26】
触媒の存在下で炭素−炭素カップリング反応を実施する方法であって、
(a)式(1)の錯体の使用:
[式中、
及びRは、独立に、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、又はRとRは、連結して、Eと環構造を形成しており、
、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成しており、この場合において、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成していてもよく、又はR、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、上で定義される通りであり、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Eは、P又はAsであり、
Xは、配位しているアニオン性配位子である]、
又は
(b)請求項17から24の何れか一項に定義される式(2)の錯体
を含む方法。
【請求項27】
請求項1から16の何れか一項に定義される式(1)の錯体の使用を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項17から24の何れか一項に定義される式(2)の錯体の使用を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
触媒の存在下で炭素−ヘテロ原子カップリング反応を実施する方法であって、
(a)式(1)の錯体の使用:
[式中、
及びRは、独立に、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、又はRとRは、連結して、Eと環構造を形成しており、
、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成しており、この場合において、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成していてもよく、又はR、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、上で定義される通りであり、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Eは、P又はAsであり、
Xは、配位しているアニオン性配位子である]、
又は
(b)請求項17から24の何れか一項に定義される式(2)の錯体
を含む方法。
【請求項30】
請求項1から16の何れか一項に定義される式(1)の錯体の使用を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
請求項17から24の何れか一項に定義される式(2)の錯体の使用を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
炭素−炭素カップリング反応における触媒としての式(1)の錯体又は式(2)の錯体の使用であって、
(a)式(1)の錯体が、
[式中、
及びRは、独立に、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、又はRとRは、連結して、Eと環構造を形成しており、
、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成しており、この場合において、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成していてもよく、又はR、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、上で定義される通りであり、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Eは、P又はAsであり、
Xは、配位しているアニオン性配位子である]であり、
(b)式(2)の錯体が請求項17から24の何れか一項に定義されている通りである、使用。
【請求項33】
式(1)の錯体が、請求項1から16の何れか一項に定義されている通りである、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
式(2)の錯体が、請求項17から24の何れか一項に定義されている通りである、請求項32に記載の使用。
【請求項35】
炭素−ヘテロ原子カップリング反応における触媒としての式(1)の錯体又は式(2)の錯体の使用であって、
(a)式(1)の錯体が、
[式中、
及びRは、独立に、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、又はRとRは、連結して、Eと環構造を形成しており、
、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成しており、この場合において、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成していてもよく、又はR、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、上で定義される通りであり、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Eは、P又はAsであり、
Xは、配位しているアニオン性配位子である]であり、
(b)式(2)の錯体が、請求項17から24の何れか一項に定義されている通りである、使用。
【請求項36】
式(1)の錯体が、請求項1から16の何れか一項に定義されている通りである、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
式(2)の錯体が、請求項17から24の何れか一項に定義されている通りである、請求項35に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換されていてもよいπ−アリルパラジウム錯体及びカップリング反応におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2011/161451号(Johnson Matthey PLC)は、π−アリルパラジウム錯体やπ−アリルニッケル錯体などのπ−アリル錯体を記載している。
【0003】
Faller等(Organometallics, 2004, 23, 2179-2185)は、機械論的な調査報告において、錯体(クロチル)Pd(CyP−ビフェニル)Clの調製を記載している。Faller等は、この錯体をカップリング反応のためのプレ触媒として使用できることを開示もしていなければ提案もしていない。
【0004】
カップリング反応における、[(アリル)PdCl]又は[(シンナミル)PdCl]の、Buchwald配位子などのビアリール/ヘテロアリールホスフィン配位子と組み合わせての使用は、成功が限られ、不確実なものであることがわかっている。Buchwald配位子と組み合わせて[(アリル)PdCl]、Pd(dba)(x=1、1.5、又は2)、Pd(OAc)などのパラジウム源から触媒を生成することの限界を克服する試みにおいて、MITのBuchwaldグループは、以下に示すような、かさ高いビアリールホスフィンを利用する第3世代パラダサイクルプレ触媒のライブラリーを導入している。
【0005】
しかし、パラダサイクルは、いくつかの限界を示す。第一に、第1世代パラダサイクルの合成には、不安定な中間体[(TMEDA)PdMe]の生成を含むいくつかのステップが必要である。第2及び第3世代パラダサイクルの合成には、毒性の高い4−異性体で汚染されている恐れのある、毒性となる可能性を秘めた2−アミノビフェニルを使用する必要があり、高純度の原料を求める必要がある。さらに、第2及び第3世代パラダサイクルの活性化によって、遺伝毒性のある、当量のカルバゾールが生じる。出発材料のアミノビフェニル及び副生物のカルバゾールは、反応混合物を汚染しかねない。したがって、こうした材料の取扱いに伴う健康及び安全の懸念という考慮すべき事柄に加えて、精製が複雑になる場合もある。その上、(次の図に示す通り)還元的に脱離したカルバゾールによって、アリール求電子試薬出発材料が消費され、また一部のクロスカップリング反応がかなり遅れる場合もある。
【0006】
ごく最近のN−置換第3世代パラダサイクルの活性化は、当量のN−メチルカルバゾール又はN−フェニルカルバゾールを生じさせ、その毒性についてはほとんど知られていない。N−置換型の第3世代パラダサイクルには、非置換類似体に比べて追加の合成ステップも調製に必要である。
【0007】
先行技術における限界を克服する、配位子/パラジウム比が明確なパラジウムプレ触媒を提供することが、依然として求められている。
【発明の概要】
【0008】
多くの場合では、[(アリル)PdCl]などのアリル二量体は、ビアリールホスフィンと一緒でもパラジウム源として十分に機能せず、アリル二量体/Buchwald配位子の組合せによって活性触媒を生成することには困難がある。しかし、本発明者らは、C−N及びC−C結合形成反応などの様々なカップリング反応の実施に用いることのできる、置換されていてもよいπ−アリルパラジウム錯体のクラスを発見した。ある特定の実施態様では、π−アリル錯体は、高活性触媒である。ある特定の実施態様では、π−アリル錯体は、周囲温度で空気及び水分に対して安定である。
【0009】
一態様では、本発明は、式(1)のパラジウム(II)錯体:
[式中、
及びRは、独立に、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、又はRとRは、連結して、Eと環構造を形成しており、
、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成しており、この場合において、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成していてもよく、又はR、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、上で定義される通りであり、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Eは、P又はAsであり、
Xは、配位しているアニオン性配位子であり、
但し、式(1)のパラジウム錯体は、(π−クロチル)PdCl(ジシクロヘキシルホスフィノ−2−ビフェニル)でない]を提供する。
【0010】
別の態様では、本発明は、式(2)のパラジウム錯体:
[式中、
18及びR19は、−Me、−Et、−Pr、−Pr、−Bu、−Bu、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルからなる群から独立に選択され、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
20、R21、R22、R23、及びR24は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
20/R21又はR22/R23から選択される一方又は両方の対は、独立に、これらが結合している原子と環構造を形成していてもよく、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Xは、配位しているアニオン性配位子である]を提供する。
【0011】
別の態様では、本発明は、式(1)の錯体又は式(2)の錯体の調製方法であって、式(3)の錯体を、式(4)の単座ビアリール配位子又は式(5)の単座ビヘテロアリール第三級ホスフィン配位子と反応させて、式(1)の錯体又は式(2)の錯体を生成するステップを含む調製方法
[式中、
及びRは、独立に、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、又はRとRは、連結して、Eと環構造を形成しており、
、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
/R、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11から選択される1つ又は複数の対は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成していてもよく、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
18及びR19は、−Me、−Et、−Pr、−Pr、−Bu、−Bu、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルからなる群から独立に選択され、
20、R21、R22、R23、及びR24は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
20/R21又はR22/R23から選択される一方又は両方の対は、独立に、これらが結合している原子と環構造を形成していてもよく、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Eは、P又はAsであり、
Xは、配位しているアニオン性配位子であり、
但し、式(1)のパラジウム錯体は、(π−クロチル)PdCl(ジシクロヘキシルホスフィノ−2−ビフェニル)でない]を提供する。
【0012】
別の態様では、本発明は、触媒の存在下で炭素−炭素カップリング反応を実施する方法であって、
(a)式(1)の錯体の使用:
[式中、
及びRは、独立に、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、又はRとRは、連結して、Eと環構造を形成しており、
、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成しており、この場合において、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成していてもよく、又はR、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、上で定義される通りであり、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Eは、P又はAsであり、
Xは、配位しているアニオン性配位子である]、
又は
(b)本明細書で定義される式(2)の錯体
を含む方法を提供する。
【0013】
別の態様では、本発明は、触媒の存在下で炭素−ヘテロ原子カップリング反応を実施する方法であって、
(a)式(1)の錯体:
[式中、
及びRは、独立に、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、又はRとRは、連結して、Eと環構造を形成しており、
、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成しており、この場合において、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成していてもよく、又はR、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、上で定義される通りであり、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Eは、P又はAsであり、
Xは、配位しているアニオン性配位子である]、
又は
(b)本明細書で定義される式(2)の錯体
の使用を含む方法を提供する。
【0014】
別の態様では、本発明は、炭素−炭素カップリング反応における触媒としての式(1)の錯体又は式(2)の錯体の使用であって、
(a)式(1)の錯体が、
[式中、
及びRは、独立に、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、又はRとRは、連結して、Eと環構造を形成しており、
、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成しており、この場合において、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成していてもよく、又はR、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、上で定義される通りであり、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Eは、P又はAsであり、
Xは、配位しているアニオン性配位子である]であり、
(b)式(2)の錯体が本明細書で定義されている
使用を提供する。
【0015】
別の態様では、本発明は、炭素−ヘテロ原子カップリング反応における触媒としての式(1)の錯体又は式(2)の錯体の使用であって、
(a)式(1)の錯体が、
[式中、
及びRは、独立に、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、又はRとRは、連結して、Eと環構造を形成しており、
、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成しており、この場合において、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成していてもよく、又はR、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、上で定義される通りであり、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Eは、P又はAsであり、
Xは、配位しているアニオン性配位子である]であり、
(b)式(2)の錯体が本明細書で定義されている
使用を提供する。
【0016】
定義
部分又は置換基の結合点は、「−」で表す。例えば、−OHは、酸素原子を介して結合している。
【0017】
「アルキル」とは、直鎖又は分枝状の飽和炭化水素基を指す。ある特定の実施態様では、アルキル基は、1−20個の炭素原子、ある特定の実施態様では1−15個の炭素原子、ある特定の実施態様では1−8個の炭素原子を有する場合がある。アルキル基は、非置換の場合もある。別法として、アルキル基は、置換されている場合もある。別段指定しない限り、アルキル基は、適切な何れの炭素原子の箇所で結合していてもよく、置換されている場合、適切な何れの原子において置換されていてもよい。典型的なアルキル基としては、限定はしないが、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルなどが挙げられる。
【0018】
用語「シクロアルキル」は、飽和炭素環式炭化水素基を示すのに使用する。シクロアルキル基は、単一の環又は縮合したいくつもの環を有する場合がある。ある特定の実施態様では、シクロアルキル基は、3−15個の炭素原子、ある特定の実施態様では3−10個の炭素原子、ある特定の実施態様では3−8個の炭素原子を有する場合がある。シクロアルキル基は、非置換の場合もある。別法として、シクロアルキル基は、置換されている場合もある。別段指定しない限り、シクロアルキル基は、適切な何れの炭素原子の箇所で結合していてもよく、置換されている場合、適切な何れの原子において置換されていてもよい。典型的なシクロアルキル基としては、限定はしないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0019】
「アルコキシ」とは、式アルキル−O−又はシクロアルキル−O−である置換されていてもよい基を指し、アルキル及びシクロアルキルは、上で定義される通りである。
【0020】
「アルコキシアルキル」とは、式アルコキシ−アルキル−である置換されていてもよい基を指し、アルコキシ及びアルキルは、上で定義される通りである。
【0021】
「アリール」とは、芳香族炭素環基を指す。アリール基は、単一の環又は縮合したいくつもの環を有する場合がある。ある特定の実施態様では、アリール基は、6−20個の炭素原子、ある特定の実施態様では6−15個の炭素原子、ある特定の実施態様では6−12個の炭素原子を有する場合がある。アリール基は、非置換の場合もある。別法として、アリール基は、置換されている場合もある。別段指定しない限り、アリール基は、適切な何れの炭素原子の箇所で結合していてもよく、置換されている場合、適切な何れの原子において置換されていてもよい。アリール基の例としては、限定はしないが、フェニル、ナフチル、アントラセニルなどが挙げられる。
【0022】
「アリールアルキル」とは、式アリール−アルキル−である置換されていてもよい基を指し、アリール及びアルキルは、上で定義される通りである。
【0023】
「カップリング」とは、2つの分子又は分子の部分がつなぎ合わさる化学反応を指す(Oxford Dictionary of Chemistry, Sixth Edition, 2008)。
【0024】
「ハロ」又は「hal」とは、−F、−Cl、−Br、及び−Iを指す。
【0025】
「ヘテロアルキル」とは、1個又は複数の炭素原子が1個又は複数のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン、及び/又は硫黄原子)で独立に置き換えられている、直鎖又は分枝状の飽和炭化水素基を指す。ヘテロアルキル基は、非置換の場合もある。別法として、ヘテロアルキル基は、置換されている場合もある。別段指定しない限り、ヘテロアルキル基は、適切な何れの原子の箇所で結合していてもよく、置換されている場合、適切な何れの原子において置換されていてもよい。ヘテロアルキル基の例としては、限定はしないが、エーテル、チオエーテル、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンなどが挙げられる。
【0026】
「ヘテロシクロアルキル」とは、1個又は複数の炭素原子が1個又は複数のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン、及び/又は硫黄原子)で独立に置き換えられている、飽和環状炭化水素基を指す。ヘテロシクロアルキル基は、非置換の場合もある。別法として、ヘテロシクロアルキル基は、置換されている場合もある。別段指定しない限り、ヘテロシクロアルキル基は、適切な何れの原子の箇所で結合していてもよく、置換されている場合、適切な何れの原子において置換されていてもよい。ヘテロシクロアルキル基の例としては、限定はしないが、エポキシド、モルホリニル、ピペラジニル(piperadinyl)、ピペラジニル(piperazinyl)、チラニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、チアゾリジニル、チオモルホリニルなどが挙げられる。
【0027】
「ヘテロアリール」とは、1個又は複数の炭素原子が1個又は複数のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン、及び/又は硫黄原子)で独立に置き換えられている、芳香族炭素環基を指す。ヘテロアリール基は、非置換の場合もある。別法として、ヘテロアリール基は、置換されている場合もある。別段指定しない限り、ヘテロアリール基は、適切な何れの原子の箇所で結合していてもよく、置換されている場合、適切な何れの原子において置換されていてもよい。ヘテロアリール基の例としては、限定はしないが、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、チオフェニル、オキサジアゾリル、ピリジニル、ピリミジル、ベンゾオキサゾリル、ベンズチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、キノリニルなどが挙げられる。
【0028】
「置換されている」とは、1個又は複数の水素原子が、同じでも異なってもよい置換基(例えば、1、2、3、4、5、又はそれ以上)でそれぞれ独立に置き換えられている基を指す。置換基の例としては、限定はしないが、−ハロ、−C(ハロ)、−R、=O、=S、−O−R、−S−R、−NR、−CN、−NO、−C(O)−R、−COOR、−C(S)−R、−C(S)OR、−S(O)OH、−S(O)−R、−S(O)NR、−O−S(O)−R、及び−CONR、例えば、ハロ、−C(ハロ)(例えば、−CF)、−R、−O−R、−NR、−CN、−NOが挙げられる。R及びRは、H、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリールからなる群から独立に選択され、又はR及びRは、これらが結合している原子と一緒に、ヘテロシクロアルキル基を形成している。R及びRは、非置換の場合もあり、又は本明細書で定義される通りにさらに置換されている場合もある。
【0029】
「チオアルキル」とは、式アルキル−S−又はシクロアルキル−S−である置換されていてもよい基を指し、アルキル及びシクロアルキルは、上で定義される通りである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
一態様では、本発明は、式(1)のパラジウム(II)錯体:
[式中、
及びRは、独立に、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、又はRとRは、連結して、Eと環構造を形成しており、
、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成しており、この場合において、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成していてもよく、又はR、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、上で定義される通りであり、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Eは、P又はAsであり、
Xは、配位しているアニオン性配位子である]であり、
但し、式(1)のパラジウム錯体は、(π−クロチル)PdCl(ジシクロヘキシルホスフィノ−2−ビフェニル)でない]を提供する。
【0031】
Eがリン原子(すなわち、P)であるとき、式(1)の錯体は、単座ビアリール第三級ホスフィン配位子と、配位しているアニオン性配位子と、置換されていてもよいπ−アリル基とを含むパラジウム(II)錯体である。
【0032】
Eがヒ素原子(すなわち、As)であるとき、式(1)の錯体は、単座ビアリール第三級アルシン配位子と、配位しているアニオン性配位子と、置換されていてもよいπ−アリル基とを含むパラジウム(II)錯体である。
【0033】
とRは、同じでも異なってもよい。一実施態様では、RとRは同じである。別の実施態様では、RとRは異なる。R及びRは、安定性のために受ける制約及び原子価規則に合致して選択される。R及びRは、置換及び非置換直鎖アルキル、置換及び非置換分枝鎖アルキル、置換及び非置換シクロアルキル、置換及び非置換アリール、並びにヘテロ原子が硫黄、窒素、及び酸素から独立に選択される置換及び非置換ヘテロアリールからなる群から独立に選択されてよい。R及びRは、独立に、置換又は非置換の分枝鎖又は直鎖アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル(例えば、n−ペンチル又はネオペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、若しくはステアリル、シクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、若しくはアダマンチル、又はアリール基、例えば、フェニル、ナフチル、若しくはアントラシルでよい。一実施態様では、アルキル基は、1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5つ)の置換基で置換されていてもよく、置換基はそれぞれ、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)やアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどの、同じ又は異なるものでよい。アリール基は、1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5つ)の置換基で置換されていてもよく、置換基はそれぞれ、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)、直鎖又は分枝鎖アルキル(例えば、C−C10)、アルコキシ(例えば、C−C10アルコキシ)、直鎖又は分枝鎖(ジアルキル)アミノ(例えば、C−C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えば、モルホリニルやピペラジニルなどのC3−10ヘテロシクロアルキル基)、トリ(ハロ)メチル(例えば、FC−)などの、同じ又は異なるものでよい。適切な置換アリール基としては、限定はしないが、4−ジメチルアミノフェニル、4−メチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル、及び3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニルが挙げられる。ピリジルなどの置換又は非置換ヘテロアリール基を使用してもよい。代替実施態様では、RとRは、連結して、Eと環構造、好ましくは4〜7員環を形成している。RとRは同じであり、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、又は3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニルなどの置換フェニル基であることが好ましい。R及びRは、−Me、−Et、−Pr、−Pr、−Bu、−Bu、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルからなる群から独立に選択されてもよい。
【0034】
、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、R、R4、、R、R、R、R9、10、及びR11は、安定性のために受ける制約及び原子価規則に合致して選択される。R、R、R、及びRは、−H、置換及び非置換直鎖アルキル、置換及び非置換分枝鎖アルキル、置換及び非置換シクロアルキル、置換及び非置換アルコキシ、置換及び非置換アリール、置換及び非置換ヘテロアリール、置換及び非置換−N(アルキル)(アルキル基は、同じでも異なってもよく、直鎖又は分枝鎖基から独立に選択される)、置換及び非置換−N(シクロアルキル)(シクロアルキル基は、同じでも異なってもよい)、置換及び非置換−N(アリール)(アリール基は、同じでも異なってもよい)、置換及び非置換−N(ヘテロアリール)(ヘテロアリール基は、同じでも異なってもよい)、並びに置換及び非置換ヘテロシクロアルキル基からなる群から独立に選択されてよい。ヘテロアリール又はヘテロシクロアルキル基中のヘテロ原子は、硫黄、窒素、及び/又は酸素から独立に選択されてよい。一実施態様では、アルキル基は、1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5つ)の置換基で置換されていてもよく、置換基はそれぞれ、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)、アルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどの、同じ又は異なるものでよい。アリール基は、1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5つ)の置換基で置換されていてもよく、置換基はそれぞれ、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)、直鎖又は分枝鎖アルキル(例えば、C−C10)、アルコキシ(例えば、C−C10アルコキシ)、直鎖又は分枝鎖(ジアルキル)アミノ(例えば、(C−C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えば、モルホリニルやピペラジニルなどのC3−10ヘテロシクロアルキル基)、トリ(ハロ)メチル(例えば、FC−)などの、同じ又は異なるものでよい。適切な置換アリール基としては、限定はしないが、2−、3−、又は4−ジメチルアミノフェニル、2−、3−、又は4−メチルフェニル、2,3−又は3,5−ジメチルフェニル、2−、3−、又は4−メトキシフェニル、及び4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルが挙げられる。ピリジルなどの置換又は非置換ヘテロアリール基を使用してもよい。適切な非置換−N(アルキル)基としては、限定はしないが、−NMe、−NEt、及び−NPr(n−又はi−)が挙げられる。適切な非置換−N(シクロアルキル)基としては、限定はしないが、−N(Cy)が挙げられる。適切な置換−N(アルキル)基としては、限定はしないが、−N(CHCHOMe)及び−N(CFが挙げられる。適切な非置換−N(アリール)基としては、限定はしないが、−NPhが挙げられる。適切な置換−N(アリール)基としては、限定はしないが、−N(2−、3−、又は4−ジメチルアミノフェニル)、−N(2−、3−、又は4−メチルフェニル)、−N(2,3−又は3,5−ジメチルフェニル)、−N(2−、3−、又は4−メトキシフェニル)、及び−N(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)が挙げられる。適切な非置換−N(ヘテロアリール)基としては、限定はしないが、−N(フリル)及び−N(ピリジル)が挙げられる。置換及び非置換ヘテロシクロアルキル基としては、限定はしないが、ピペリジニルやモルホリニルなどのC4−8−ヘテロシクロアルキル基が挙げられる。
【0035】
、R、R、及びRは、−H、非置換直鎖アルキル、非置換分枝鎖アルキル、非置換シクロアルキル、非置換アルコキシ、非置換−N(アルキル)(アルキル基は、同じでも異なってもよく、直鎖又は分枝鎖基から独立に選択されてよい)、及び非置換−N(アリール)(アリール基は、同じでも異なってもよい)からなる群から独立に選択されてよい。分枝鎖又は直鎖アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル(例えば、n−ペンチル又はネオペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ステアリルなどの基を挙げることができる。シクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチルなどの基を挙げることができる。アルコキシ基としては、メトキシ(−OMe)、エトキシ(−OEt)、n−プロポキシ(−O−n−Pr)、iso−プロポキシ(−O−i−Pr)、n−ブトキシ(−O−n−Bu)、iso−ブトキシ(−O−i−Bu)、sec−ブトキシ(−O−s−Bu)、tert−ブトキシ(−O−t−Bu)、−O−ペンチル、−O−ヘキシル、−O−ヘプチル、−O−オクチル、−O−ノニル、−O−デシル、−O−ドデシルを挙げることができる。−N(アルキル)基としては、−NMe、−NEt、−N(n−Pr)、又は−N(i−Pr)などの基を挙げることができる。
【0036】
、R、R、及びRは、−H、非置換−N(アルキル)(アルキル基は、同じでも異なってもよく、直鎖又は分枝鎖基から独立に選択されてよい)、及び非置換−N(アリール)(アリール基は、同じでも異なってもよい)からなる群から独立に選択されてよい。
【0037】
、R、R、及びRは、−H、非置換直鎖アルキル、非置換分枝鎖アルキル、非置換シクロアルキル、及び非置換アルコキシからなる群から独立に選択されてよい。
【0038】
一実施態様では、R、R、R、及びRはそれぞれ、−Hである。
【0039】
別の実施態様では、R、R、R、及びRの少なくとも1つは、−Hでない基から選択される。例えば、R、R、R、及びRの2つ、R、R、R、及びRの3つ、R、R、R、及びRのすべてなど、R、R、R、及びRの1つは、−Hでない基から選択されてよい。
【0040】
別の実施態様では、R、R、R、及びRの2つは、−Hであり、R、R、R、及びRの他の2つは、非置換直鎖アルキル、非置換分枝鎖アルキル、非置換シクロアルキル、及び非置換アルコキシからなる群から独立に選択されてよい。別の実施態様では、R、R、R、及びRの2つ(例えば、R及びR)は、−Hであり、R、R、R、及びRの他の2つ(例えば、R及びR)は、−Me、−Et、−Pr(n−又はi−)、−Bu(n−、i−、又はt−)、−OMe、−OEt、−OPr(n−又はi−)、−OBu(n−、i−、又はt−)などの、C1−5−アルキル及び−O−C1−5−アルキル、例えば、−Me、−Et、−OMe、−OEtからなる群から独立に選択される。
【0041】
別の実施態様では、R、R、R、及びRの2つ(例えば、R及びR)は、−Hであり、R、R、R、及びRの他の2つ(例えば、R及びR)は、非置換直鎖アルキル、非置換分枝鎖アルキル、非置換シクロアルキル、及び非置換アルコキシからなる群から選択される。好ましい実施態様では、R、R、R、及びRの2つは、−Hであり、R、R、R、及びRの他の2つは、−Me、−Et、−Pr(n−又はi−)、−Bu(n−、i−、又はt−)、−OMe、−OEt、−OPr(n−又はi−)、−OBu(n−、i−、又はt−)などの、C1−5−アルキル及び−O−C1−5−アルキル、例えば、−Me、−Et、−OMe、及び−OEtからなる群から選択される。特に好ましい一実施態様では、R及びRは、−Hであり、R及びRは、−OMeである。
【0042】
、R、R、R10、及びR11は、−H、置換及び非置換直鎖アルキル、置換及び非置換分枝鎖アルキル、置換及び非置換シクロアルキル、置換及び非置換アルコキシ、置換及び非置換アリール、置換及び非置換ヘテロアリール、置換及び非置換−N(アルキル)(アルキル基は、同じでも異なってもよく、直鎖又は分枝鎖基から独立に選択される)、置換及び非置換−N(シクロアルキル)(シクロアルキル基は、同じでも異なってもよい)、置換及び非置換−N(アリール)(アリール基は、同じでも異なってもよい)、置換及び非置換−N(ヘテロアリール)(ヘテロアリール基は、同じでも異なってもよい)、並びに置換及び非置換ヘテロシクロアルキル基からなる群から独立に選択されてよい。ヘテロアリール又はヘテロシクロアルキル基中のヘテロ原子は、硫黄、窒素、又は/及び酸素から独立に選択されてよい。一実施態様では、アルキル基は、1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5つ)の置換基で置換されていてもよく、置換基はそれぞれ、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)、アルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどの、同じ又は異なるものでよい。アリール基は、1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5つ)の置換基で置換されていてもよく、置換基はそれぞれ、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)、直鎖又は分枝鎖アルキル(例えば、C−C10)、アルコキシ(例えば、C−C10アルコキシ)、直鎖又は分枝鎖(ジアルキル)アミノ(例えば、C−C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えば、モルホリニルやピペラジニルなどのC3−10ヘテロシクロアルキル基)、トリ(ハロ)メチル(例えば、FC−)などの、同じ又は異なるものでよい。適切な置換アリール基としては、限定はしないが、2−、3−、又は4−ジメチルアミノフェニル、2−、3−、又は4−メチルフェニル、2,3−又は3,5−ジメチルフェニル、2−、3−、又は4−メトキシフェニル、及び4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルが挙げられる。ピリジルなどの置換又は非置換ヘテロアリール基を使用してもよい。適切な非置換−N(アルキル)基としては、限定はしないが、−NMe、−NEt、及び−NPr(n−又はi−)が挙げられる。適切な非置換−N(シクロアルキル)基としては、限定はしないが、−N(Cy)が挙げられる。適切な非置換−N(アルキル)基としては、限定はしないが、−N(CHCHOMe)及び−N(CFが挙げられる。適切な非置換−N(アリール)基としては、限定はしないが、−NPhが挙げられる。適切な置換−N(アリール)基としては、限定はしないが、−N(2−、3−、又は4−ジメチルアミノフェニル)、−N(2−、3−、又は4−メチルフェニル)、−N(2,3−又は3,5−ジメチルフェニル)、−N(2−、3−、又は4−メトキシフェニル)、及び−N(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)が挙げられる。適切な非置換−N(ヘテロアリール)基としては、限定はしないが、−N(フリル)及び−N(ピリジル)が挙げられる。置換及び非置換ヘテロシクロアルキル基としては、ピペリジニルやモルホリニルなどのC4−8−ヘテロシクロアルキル基が挙げられる。
【0043】
、R、R、R10、及びR11は、−H、非置換直鎖アルキル、非置換分枝鎖アルキル、非置換シクロアルキル、非置換アルコキシ、非置換−N(アルキル)(アルキル基は、同じでも異なってもよく、直鎖又は分枝鎖基から独立に選択されてよい)、及び非置換−N(アリール)(アリール基は、同じでも異なってもよい)からなる群から独立に選択されてよい。分枝鎖又は直鎖アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル(例えば、n−ペンチル又はネオペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ステアリルなどの基を挙げることができる。シクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチルなどの基を挙げることができる。アルコキシ基としては、メトキシ(−OMe)、エトキシ(−OEt)、n−プロポキシ(−O−n−Pr)、iso−プロポキシ(−O−i−Pr)、n−ブトキシ(−O−n−Bu)、iso−ブトキシ(−O−i−Bu)、sec−ブトキシ(−O−s−Bu)、tert−ブトキシ(−O−t−Bu)、−O−ペンチル、−O−ヘキシル、−O−ヘプチル、−O−オクチル、−O−ノニル、−O−デシル、−O−ドデシルを挙げることができる。−N(アルキル)基としては、−NMe、−NEt、−N(n−Pr)、又は−N(i−Pr)などの基を挙げることができる。
【0044】
、R、R、R10、及びR11は、−H、非置換−N(アルキル)(アルキル基は、同じでも異なってもよく、直鎖又は分枝鎖基から独立に選択されてよい)、及び非置換−N(アリール)(アリール基は、同じでも異なってもよい)からなる群から独立に選択されてよい。
【0045】
、R、R、R10、及びR11は、−H、非置換直鎖アルキル、非置換分枝鎖アルキル、非置換シクロアルキル、及び非置換アルコキシからなる群から独立に選択されてよい。
【0046】
別の実施態様では、R、R、R、R10、及びR11の少なくとも1つは、−Hでない基から選択される。例えば、R、R、R、R10、及びR11の2つ(例えば、R及びR11)、R、R、R、R10、及びR11の3つ(例えば、R、R、及びR11)、R、R、R、R10、及びR11の4つ、R、R、R、R10、及びR11のすべてなど、R、R、R、R10、及びR11の1つは、−Hでない基から選択されてよい。
【0047】
一実施態様では、R、R、R、R10、及びR11はそれぞれ、−Hである。
【0048】
別の実施態様では、R、R、R、R10、及びR11の4つは、−H(例えば、R、R、R10、及びR11)であり、R、R、R、R10、及びR11の他の1つ(例えば、R)は、非置換直鎖アルキル、非置換分枝鎖アルキル、非置換シクロアルキル、非置換アルコキシ、非置換−N(アルキル)(アルキル基は、同じでも異なってもよく、直鎖又は分枝鎖基から独立に選択されてよい)、及び非置換−N(アリール)(アリール基は、同じでも異なってもよい)からなる群から選択される。
【0049】
別の実施態様では、R、R、R、R10、及びR11の4つ(例えば、R、R、R10、及びR11)は、−Hであり、R、R、R、R10、及びR11の他の1つ(例えば、R)は、−Me、−Et、−Pr(n−又はi−)、−Bu(n−、i−、又はt−)、−OMe、−OEt、−OPr(n−又はi−)、−OBu(n−、i−、又はt−)、−NMe、−NEt、−N(n−Pr)、−N(i−Pr)などの、C1−5−アルキル、−O−C1−5−アルキル、及び−N(C1−5−アルキル)、例えば、−Me、−Et、−n−Pr、−i−Pr、−OMe、−OEt、−O−n−Pr、−O−i−Pr、−NMe、−NEtからなる群から選択される。例えば、R、R、R10、及びR11は、−Hであり、Rは、上述のものなどの、C1−5−アルキル、−O−C1−5−アルキル、及び−N(C1−5−アルキル)基から選択される。別の実施態様では、R、R、R10、及びR11は、−Hであり、Rは、−OMe、−O−i−Pr、−NMe、−NEt、−N(n−Pr)、及び−N(i−Pr)、例えば、−OMe及び−NMeからなる群から選択される。
【0050】
別の実施態様では、R、R、R、R10、及びR11の3つ(例えば、R、R、及びR10)は、−Hであり、R、R、R、R10、及びR11の他の2つ(例えば、R及びR11)は、非置換直鎖アルキル、非置換分枝鎖アルキル、非置換シクロアルキル、非置換アルコキシ、非置換−N(アルキル)(アルキル基は、同じでも異なってもよく、直鎖又は分枝鎖基から独立に選択されてよい)、及び非置換−N(アリール)(アリール基は、同じでも異なってもよい)からなる群から独立に選択される。
【0051】
一実施態様では、R、R、R、R10、及びR11の3つ(例えば、R、R、及びR10)は、−Hであり、R、R、R、R10、及びR11の他の2つ(例えば、R及びR11)は、非置換直鎖アルキル、非置換分枝鎖アルキル、非置換シクロアルキル、非置換アルコキシ、非置換−N(アルキル)(アルキル基は、同じでも異なってもよく、直鎖又は分枝鎖基から独立に選択されてよい)、及び非置換−N(アリール)(アリール基は、同じでも異なってもよい)からなる群から選択される。
【0052】
別の実施態様では、R、R、R、R10、及びR11の3つ(例えば、R、R、及びR10)は、−Hであり、R、R、R、R10、及びR11の他の2つ(例えば、R及びR11)は、−Me、−Et、−Pr(n−又はi−)、−Bu(n−、i−、又はt−)、−OMe、−OEt、−OPr(n−又はi−)、−OBu(n−、i−、又はt−)、−NMe、−NEt、−N(n−Pr)、−N(i−Pr)などの、C1−5−アルキル、−O−C1−5−アルキル、及び−N(C1−5−アルキル)、例えば、−Me、−Et、−n−Pr、−i−Pr、−OMe、−OEt、−O−n−Pr、−O−i−Pr、−NMe、−NEtからなる群から独立に選択される。例えば、R、R、及びR10は、−Hであり、R及びR11は、上述のものなどの、C1−5−アルキル、−O−C1−5−アルキル、及び−N(C1−5−アルキル)基から独立に選択される。別の実施態様では、R、R、及びR10は、−Hであり、R及びR11は、−OMe、−O−i−Pr、−NMe、−NEt、−N(n−Pr)、及び−N(i−Pr)、例えば、−OMe及び−O−i−Prからなる群から独立に選択される。
【0053】
好ましい実施態様では、R、R、R、R10、及びR11の3つ(例えば、R、R、及びR10)は、−Hであり、R、R、R、R10、及びR11の他の2つ(例えば、R及びR11)は、−Me、−Et、−Pr(n−又はi−)、−Bu(n−、i−、又はt−)、−OMe、−OEt、−OPr(n−又はi−)、−OBu(n−、i−、又はt−)、−NMe、−NEt、−N(n−Pr)、−N(i−Pr)などの、C1−5−アルキル、−O−C1−5−アルキル、及び−N(C1−5−アルキル)、例えば、−Me、−Et、−n−Pr、−i−Pr、−OMe、−OEt、−O−n−Pr、−O−i−Pr、−NMe、−NEtからなる群から選択される。特に好ましい一実施態様では、R、R、及びR10は、−Hであり、R及びR11は、上述のものなどの、C1−5−アルキル、−O−C1−5−アルキル、及び−N(C1−5−アルキル)基から独立に選択される。特に好ましい実施態様では、R、R、及びR10は、−Hであり、R及びR11は、−OMe、−O−i−Pr、−NMe、−NEt、−N(n−Pr)、及び−N(i−Pr)、例えば、−OMe及び−O−i−Prからなる群から選択される。
【0054】
別の実施態様では、R、R、R、R10、及びR11の2つ(例えば、R及びR10)は、−Hであり、R、R、R、R10、及びR11の他の3つ(例えば、R、R、及びR11)は、非置換直鎖アルキル、非置換分枝鎖アルキル、非置換シクロアルキル、非置換アルコキシ、非置換−N(アルキル)(アルキル基は、同じでも異なってもよく、直鎖又は分枝鎖基から独立に選択されてよい)、及び非置換−N(アリール)(アリール基は、同じでも異なってもよい)からなる群から独立に選択される。
【0055】
別の実施態様では、R、R、R、R10、及びR11の2つ(例えば、R及びR10)は、−Hであり、R、R、R、R10、及びR11の他の3つ(例えば、R、R、及びR11)は、非置換直鎖アルキル、非置換分枝鎖アルキル、非置換シクロアルキル、非置換アルコキシ、非置換−N(アルキル)(アルキル基は、同じでも異なってもよく、直鎖又は分枝鎖基から独立に選択されてよい)、及び非置換−N(アリール)(アリール基は、同じでも異なってもよい)からなる群から選択される。
【0056】
好ましい一実施態様では、R、R、R、R10、及びR11の2つ(例えば、R及びR10)は、−Hであり、R、R、R、R10、及びR11の他の3つ(例えば、R、R9、及びR11)は、−Me、−Et、−Pr(n−又はi−)、−Bu(n−、i−、又はt−)、−OMe、−OEt、−OPr(n−又はi−)、−OBu(n−、i−、又はt−)、−NMe、−NEt、−N(n−Pr)、−N(i−Pr)などの、C1−5−アルキル、−O−C1−5−アルキル、及び−N(C1−5−アルキル)、例えば、−Me、−Et、−n−Pr、−i−Pr、−OMe、−OEt、−O−n−Pr、−O−i−Pr、−NMe、−NEtからなる群から独立に選択される。特に好ましい一実施態様では、R及びR10は、−Hであり、R、R、及びR11は、上述のものなどの、−C1−5−アルキル基から独立に選択される。
【0057】
別の好ましい実施態様では、R、R、R、R10、及びR11の2つ(例えば、R及びR10)は、−Hであり、R、R、R、R10、及びR11の他の3つ(例えば、R、R9、及びR)は、−Me、−Et、−Pr(n−又はi−)、−Bu(n−、i−、又はt−)、−OMe、−OEt、−OPr(n−又はi−)、−OBu(n−、i−、又はt−)、−NMe、−NEt、−N(n−Pr)、−N(i−Pr)などの、C1−5−アルキル、−O−C1−5−アルキル、及び−N(C1−5−アルキル)、例えば、−Me、−Et、−n−Pr、−i−Pr、−OMe、−OEt、−O−n−Pr、−O−i−Pr、−NMe、−NEtからなる群から選択される。特に好ましい一実施態様では、R及びR10は、−Hであり、R、R、及びR11は、上述のものなどの、−C1−5−アルキル基から独立に選択される。特に好ましい一実施態様では、R及びR10は、−Hであり、R、R、及びR11は、−i−Prである。
【0058】
一実施態様では、単座第三級ホスフィン配位子は、
からなる群から選択される。
【0059】
/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成していてもよく、この場合において、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成しており、又はR、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、上で定義される通りである。こうした対(一組又は複数)は、安定性のために受ける制約及び原子価規則に合致して選択される。
【0060】
/R又はR/Rの連結基は、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルコキシ、又は置換若しくは非置換ヘテロアルキルでよい。R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、及びR10/R11からなる群から選択される対(一組又は複数)から形成される環構造は、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換アリール、又は置換若しくは非置換ヘテロアリール基でよい。R及びRは、Rと環構造を形成しないとき、上で定義される基から独立に選択されてよい。
【0061】
一実施態様では、R、R、及びRは、−Hであり、対R/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成している。別の実施態様では、R、R、及びRは、−Hであり、対R/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成している。これらの場合の何れかにおいて、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成していてよく、又はR、R、R、R10、及びR11は、上で定義される通りである。R/R又はR/Rは、
からなる群から選択される環構造を形成していてよい。
式中、
及びRは、上で定義される通りであり、
R’及びR’’は、独立に、R及びRについて上で定義される通りである。
【0062】
一実施態様では、R’及びR’’は、メチル、プロピル(n−又はi−)、ブチル(n−、i−、又はt−)、シクロヘキシル、又はフェニルからなる群から独立に選択される。
【0063】
リン配位子の例としては、Tang等、Angew.Chem.Int.Ed.,2010,49,5879−5883、Zhao等、Chem.Eur.J,2013、19(7),2261−2265、及びXu等、Journal of the American Chemical Society,2014,136(2),570−573に記載のもの、例えば、
が挙げられる。
【0064】
本明細書における描写では、−Me又は−iPrが波線(
)によってつながっている場合では、どちらの立体異性体が存在してもよいことは理解されよう。
【0065】
式(1)の錯体におけるPd原子は、置換されていてもよいアリル基を配位子とする。R12は、1−20個の炭素原子、好ましくは1−10個の炭素原子、より好ましくは1−8個の炭素原子を有する有機基であり、R12は、安定性のために受ける制約及び原子価規則に合致して選択される。R12基の数は、0〜5の範囲である、すなわち、mは、0、1、2、3、4、又は5である。mが、2、3、4、又は5であるとき、R12はそれぞれ、同じでも異なってもよい。ある特定の実施態様では、mが2、3、4、又は5であるとき、各R12は同じである。ある特定の実施態様では、mは0である、すなわち、アリル基は、非置換である。ある特定の実施態様では、mは1である。ある特定の実施態様では、mは2であり、各R12は、同じ又は異なる。
【0066】
12は、置換及び非置換直鎖アルキル、置換及び非置換分枝鎖アルキル、置換及び非置換シクロアルキル、置換及び非置換アリール、並びにヘテロ原子が硫黄、窒素、及び酸素から独立に選択される置換及び非置換ヘテロアリールからなる群から選択されてよい。一実施態様では、R12は、置換及び非置換直鎖アルキル、置換及び非置換分枝鎖アルキル、並びに置換及び非置換シクロアルキルからなる群から選択される。別の実施態様では、R12は、置換及び非置換アリール、並びにヘテロ原子が硫黄、窒素、及び酸素から独立に選択される置換及び非置換ヘテロアリールからなる群から選択される。R12は、置換又は非置換の分枝鎖又は直鎖アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、若しくはステアリル、シクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、若しくはアダマンチル、又はアリール基、例えば、フェニル、ナフチル、若しくはアントラシルでよい。一実施態様では、アルキル基は、1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5つ)の置換基で置換されていてもよく、置換基はそれぞれ、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)、アルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどの、同じ又は異なるものでよい。アリール基は、1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5つ)の置換基で置換されていてもよく、置換基はそれぞれ、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)、直鎖又は分枝鎖アルキル(例えば、C−C10)、アルコキシ(例えば、C−C10アルコキシ)、直鎖又は分枝鎖(ジアルキル)アミノ(例えば、C−C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えば、モルホリニルやピペラジニルなどのC3−10ヘテロシクロアルキル基)、トリ(ハロ)メチル(例えば、FC−)などの、同じ又は異なるものでよい。適切な置換アリール基としては、限定はしないが、2−、3−、又は4−ジメチルアミノフェニル、2−、3−、又は4−メチルフェニル、2,3−又は3,5−ジメチルフェニル、2−、3−、又は4−メトキシフェニル、及び4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルが挙げられる。ピリジルなどの置換又は非置換ヘテロアリール基が使用されてもよい。一実施態様では、各R12は、独立に、メチル、フェニル、又は置換フェニル基である。
【0067】
Pd原子の配位子となるような、適切な置換されていてもよいアリル基を、以下に示す。
、例えば、
【0068】
式(1)の錯体において、Xは、配位しているアニオン性配位子である、すなわち、アニオン性配位子は、配位圏内でPd原子に結合している。一実施態様では、Xは、ハロ基、好ましくは、Cl、Br、I、より好ましくはClである。別の実施態様では、Xは、トリフルオロアセテート(すなわちFCCO)である。
【0069】
式(1)の錯体は、以下のものからなる群から選択されてよい。
【0070】
別の態様では、本発明は、式(2)のパラジウム錯体:
[式中、
18及びR19は、−Me、−Et、−Pr、−Pr、−Bu、−Bu、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルからなる群から独立に選択され、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
20、R21、R22、R23、及びR24は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
20/R21又はR22/R23から選択される一方又は両方の対は、独立に、これらが結合している原子と環構造を形成していてもよく、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Xは、配位しているアニオン性配位子である]を提供する。
【0071】
式(2)の錯体は、単座ビヘテロアリール第三級ホスフィン配位子と、配位しているアニオン性配位子と、置換されていてもよいπ−アリル基とを含むパラジウム(II)錯体である。
【0072】
12、m、及びXは、上述の通りである。
【0073】
18及びR19は、−Me、−Et、−Pr、−Pr、−Bu、−Bu、及びシクロヘキシルからなる群から独立に選択される。R18及びR19は、安定性のために受ける制約及び原子価規則に合致して選択される。R18とR19は、同じでよい。別法として、R18とR19は、異なってよい。好ましい一実施態様では、R18とR19は同じであり、シクロヘキシル基である。
【0074】
20、R21、R22、R23、及びR24は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基である。R20、R21、22、R23、及びR24は、安定性のために受ける制約及び原子価規則に合致して選択される。R20及びR21は、−H、置換及び非置換直鎖アルキル、置換及び非置換分枝鎖アルキル、置換及び非置換シクロアルキル、置換及び非置換アルコキシ、置換及び非置換アリール、置換及び非置換ヘテロアリール、置換及び非置換−N(アルキル)(アルキル基は、同じでも異なってもよく、直鎖又は分枝鎖基から独立に選択される)、置換及び非置換−N(シクロアルキル)(シクロアルキル基は、同じでも異なってもよい)、置換及び非置換−N(アリール)(アリール基は、同じでも異なってもよい)、置換及び非置換−N(ヘテロアリール)(ヘテロアリール基は、同じでも異なってもよい)、並びに置換及び非置換ヘテロシクロアルキル基からなる群から独立に選択されてよい。ヘテロアリール又はヘテロシクロアルキル基中のヘテロ原子は、硫黄、窒素、又は/及び酸素から独立に選択されてよい。一実施態様では、アルキル基は、1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5つ)の置換基で置換されていてもよく、置換基はそれぞれ、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)、例えば−CF、アルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどの、同じ又は異なるものでよい。アリール基は、1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5つ)の置換基で置換されていてもよく、置換基はそれぞれ、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)、直鎖又は分枝鎖アルキル(例えば、C−C10)、アルコキシ(例えば、C−C10アルコキシ)、直鎖又は分枝鎖(ジアルキル)アミノ(例えば、C−C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えば、モルホリニルやピペラジニルなどのC3−10ヘテロシクロアルキル基)、トリ(ハロ)メチル(例えば、FC−)などの、同じ又は異なるものでよい。適切な置換アリール基としては、限定はしないが、2−、3−、又は4−ジメチルアミノフェニル、2−、3−、又は4−メチルフェニル、2,3−又は3,5−ジメチルフェニル、2−、3−、又は4−メトキシフェニル、及び4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルが挙げられる。ピリジルなどの置換又は非置換ヘテロアリール基が使用されてもよい。適切な非置換−N(アルキル)基としては、限定はしないが、−NMe、−NEt、及び−NPr(n−又はi−)が挙げられる。適切な非置換−N(シクロアルキル)基としては、限定はしないが、−N(Cy)が挙げられる。適切な置換−N(アルキル)基としては、限定はしないが、−N(CHCHOMe)及び−N(CFが挙げられる。適切な非置換−N(アリール)基としては、限定はしないが、−NPhが挙げられる。適切な置換−N(アリール)基としては、限定はしないが、−N(2−、3−、又は4−ジメチルアミノフェニル)、−N(2−、3−、又は4−メチルフェニル)、−N(2,3−又は3,5−ジメチルフェニル)、−N(2−、3−、又は4−メトキシフェニル)、及び−N(4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル)が挙げられる。適切な非置換−N(ヘテロアリール)基としては、限定はしないが、−N(フリル)及び−N(ピリジル)が挙げられる。置換及び非置換ヘテロシクロアルキル基としては、ピペリジニルやモルホリニルなどのC4−8−ヘテロシクロアルキル基が挙げられる。
【0075】
好ましい一実施態様では、R20及びR21は両方とも、−Hである。
【0076】
22及びR24は、−H、置換及び非置換直鎖アルキル、置換及び非置換分枝鎖アルキル、置換及び非置換シクロアルキル、置換及び非置換アルコキシ、置換及び非置換−チオアルキル、置換及び非置換アリール、置換及び非置換ヘテロアリール、置換及び非置換−N(アルキル)(アルキル基は、同じでも異なってもよく、直鎖又は分枝鎖基から独立に選択される)、置換及び非置換−N(シクロアルキル)(シクロアルキル基は、同じでも異なってもよい)、置換及び非置換−N(アリール)(アリール基は、同じでも異なってもよい)、置換及び非置換−N(ヘテロアリール)(ヘテロアリール基は、同じでも異なってもよい)からなる群から独立に選択されてよい。ヘテロアリール基中のヘテロ原子は、硫黄、窒素、又は/及び酸素から独立に選択されてよい。一実施態様では、アルキル基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)、アルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどの1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5つ)の置換基で置換されていてもよい。アリール基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)、直鎖又は分枝鎖アルキル(例えば、C−C10)、アルコキシ(例えば、C−C10アルコキシ)、直鎖又は分枝鎖(ジアルキル)アミノ(例えば、C−C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えば、モルホリニルやピペラジニルなどのC3−10ヘテロシクロアルキル基)、トリ(ハロ)メチル(例えば、FC−)などの1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5つ)の置換基で置換されていてもよい。適切な置換アリール基としては、限定はしないが、2−、3−、又は4−ジメチルアミノフェニル、2−、3−、又は4−メチルフェニル、2,3−又は3,5−ジメチルフェニル、2−、3−、又は4−メトキシフェニル、及び4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルが挙げられる。ピリジルなどの置換又は非置換ヘテロアリール基が使用されてもよい。置換又は非置換の−チオアルキル基としては、−S(C1−5−アルキル)、例えば、−SMe、−SEt、−SPr(n−又はi−)が挙げられる。一実施態様では、R22及びR24は両方とも、フェニルである。
【0077】
23は、−H、置換及び非置換直鎖アルキル、置換及び非置換分枝鎖アルキル、置換及び非置換シクロアルキル、置換及び非置換アルコキシ、置換及び非置換アリール、並びに置換及び非置換ヘテロアリールからなる群から独立に選択されてよい。ヘテロアリール基中のヘテロ原子は、硫黄、窒素、又は/及び酸素から独立に選択されてよい。一実施態様では、アルキル基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)、アルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどの1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5つ)の置換基で置換されていてもよい。アリール基は、ハロゲン化物(F、Cl、Br、又はI)、直鎖又は分枝鎖アルキル(例えば、C−C10)、アルコキシ(例えば、C−C10アルコキシ)、直鎖又は分枝鎖(ジアルキル)アミノ(例えば、(C−C10ジアルキル)アミノ)、ヘテロシクロアルキル(例えば、モルホリニルやピペラジニルなどのC3−10ヘテロシクロアルキル基)、トリ(ハロ)メチル(例えば、FC−)などの1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、又は5つ)の置換基で置換されていてもよい。適切な置換アリール基としては、限定はしないが、2−、3−、又は4−ジメチルアミノフェニル、2−、3−、又は4−メチルフェニル、2,3−又は3,5−ジメチルフェニル、2−、3−、又は4−メトキシフェニル、及び4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニルが挙げられる。ピリジルなどの置換又は非置換ヘテロアリール基が使用されてもよい。一実施態様では、R23は、フェニルである。
【0078】
好ましい一実施態様では、R22、R23、及びR24はそれぞれ、フェニル基である。
【0079】
一実施態様では、単座ビヘテロアリール第三級ホスフィン配位子は、
からなる群から選択される。
【0080】
式(2)の錯体は、
からなる群から選択されてよい。
【0081】
式(1)の錯体又は式(2)の錯体は、式(3)の錯体を、式(4)の単座ビアリール配位子又は式(5)の単座ビヘテロアリール第三級ホスフィン配位子と反応させて、式(1)の錯体又は式(2)の錯体を生成するステップを含む方法において調製することができる
[式中、
及びRは、独立に、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、又はRとRは、連結して、Eと環構造を形成しており、
、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
/R、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11から選択される1つ又は複数の対は、独立に、これらが結合している原子と環構造を形成していてもよく、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
18及びR19は、−Me、−Et、−Pr、−Pr、−Bu、−Bu、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルからなる群から独立に選択され、
20、R21、R22、R23、及びR24は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
20/R21又はR22/R23から選択される一方又は両方の対は、独立に、これらが結合している原子と環構造を形成していてもよく、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Eは、P又はAsであり、
Xは、配位しているアニオン性配位子であり、
但し、式(1)のパラジウム錯体は、(π−クロチル)PdCl(ジシクロヘキシルホスフィノ−2−ビフェニル)でない]。
【0082】
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、m、E、及びXは、上で定義される通りである。
【0083】
/R、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11から選択される1つ又は複数の対(例えば、1、2、又は3組の対)は、独立に、これらが結合している原子と環構造を形成していてもよい。こうした対(一組又は複数)は、安定性のために受ける制約及び原子価規則に合致して選択される。環構造は、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換アリール、又は置換若しくは非置換ヘテロアリール基でよい。
【0084】
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、又はR11は、対の一端をなさない場合、上述の通りである。
【0085】
/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成していてもよく、この場合において、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成しており、又はR、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、上で定義される通りである。R及びRは、Rと環構造を形成しないとき、上で定義される基から独立に選択されてよい。
【0086】
/R又はR/Rの連結基は、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換アルコキシ、又は置換若しくは非置換ヘテロアルキルでよい。R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、及びR10/R11からなる群から選択される対(一組又は複数)から形成される環構造は、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換アリール、又は置換若しくは非置換ヘテロアリール基でよい。R及びRは、Rと環構造を形成しないとき、上で定義される基から独立に選択されてよい。
【0087】
一実施態様では、R、R、及びRは、−Hであり、対R/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成している。別の実施態様では、R、R、及びRは、−Hであり、対R/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成している。これらの場合の何れかにおいて、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成していてよく、又はR、R、R、R10、及びR11は、上で定義される通りである。R/R又はR/Rは、
からなる群から選択される環構造を形成していてよい。
式中、
及びRは、上で定義される通りであり、
R’及びR’’は、独立に、R及びRについて上で定義される通りである。
【0088】
一実施態様では、R’及びR’’は、メチル、プロピル(n−又はi−)、ブチル(n−、i−、又はt−)、シクロヘキシル、又はフェニルからなる群から独立に選択される。
【0089】
別の実施態様では、Rは、−Hであり、対R/R及びR10/R11は、これらが結合している原子と環構造を形成している。各対は、これらが結合している炭素原子と一緒に、置換又は非置換アリール環(例えば、フェニル環)を形成していてよい。
【0090】
リン配位子の例としては、Tang等、Angew.Chem.Int.Ed.、2010、49、5879−5883、Zhao等、Chem.Eur.J、2013、19(7)、2261−2265、及びXuら、Journal of the American Chemical Society、2014、136(2)、570−573に記載のもの、例えば、
が挙げられる。
【0091】
本明細書における描写では、−Me又は−Prが波線(
)によってつながっている場合では、どちらの立体異性体が存在してもよいことは理解されよう。
【0092】
一実施態様では、R及びRは、これらが結合している炭素原子と一緒に、置換又はは非置換アリール環、好ましくはフェニル環を形成している。別の実施態様では、R及びRは、これらが結合している炭素原子と一緒に、置換又はは非置換アリール環、好ましくはフェニル環を形成している。一例を以下に示す。
【0093】
理論に拘泥するものではないが、式(1)の錯体は、基R及びRの立体的なかさを基R、R、R、R10、及び/又はR11の立体的なかさと釣り合わせた結果として調製できると考えられる。例えば、式(1)の錯体において、EがPである場合、置換基R、R、R、R10、及び/又はR11が、より立体的にかさ高くならないように選択されるとき(例えば、H)、R及びRは、シクロヘキシル基より立体的にかさ高くなるように選択することができる(例えば、tert−ブチル基)。同様に、置換基R、R、R、R10、及び/又はR11が、より立体的にかさ高くなるように選択されるとき(例えば、メトキシ、iso−プロピル、ジメチルアミノ)、R及びRは通常、より立体的にかさ高くならないように選択される(例えば、シクロヘキシル基又はより小さい基)。
【0094】
式(3)の錯体は、既知の方法に従って調製することができ(例えば、a)Marion, N.: Navarro, O.; Mei, J.; Stevens, E. D.; Scott, N. M.; Nolan, S. P. J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 4101、b)Auburn, P. R.; Mackenzie, P. B.; Bosnich, B. J. Am. Chem. Soc. 1985, 107, 2033、c)Dent, W. I.; Long, R.; Wilkinson, G. J. Chem. Soc. 1964, 1585、d)Nicholson, J. K.; Powell, J.; Shaw, B. L. J. Chem. Soc.; Chem. Commun. 1966, 174を参照されたい)、それぞれ、すべての目的でその全体が出典明示により援用される。適切な式(3)の錯体としては、
が挙げられる。
【0095】
一実施態様では、方法は、式(3)の錯体を式(4)の単座配位子と反応させて、式(1)の錯体を生成するステップを含む。別の実施態様では、方法は、式(3)の錯体を式(5)の単座ビヘテロアリールホスフィン配位子と反応させて、式(2)の錯体を生成するステップを含む。
【0096】
式(3)の錯体と配位子(4)又は(5)は、溶媒中で合わせることができる。この場合では、溶媒は、適切な何れかの非プロトン性溶媒又は非プロトン性溶媒の組合せである。非プロトン性溶媒の例は、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、ジクロロメタン(DCM)、ジオキサン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリジン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、ジエチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、又は酢酸エチルである。好ましい溶媒は、THF、2−メチルテトラヒドロフラン、トルエン、DCM、又はこれらの組合せである。溶媒は、無水でよい。溶媒中の式(3)の錯体の濃度は、好ましくは約0.001mol/L〜約3.00mol/L、より好ましくは約0.03mol/L〜約2.50mol/Lである。
【0097】
式(3)の錯体:配位子のモル比が約1:1〜約1:15、例えば、約1:1〜約1:11であることが好ましいが、適切ないかなる量の配位子を使用してもよい。一実施態様では、式(3)の錯体:配位子のモル比は、約1:1.90〜約1:2.30である。
【0098】
反応は、窒素やアルゴンなどの不活性雰囲気中で実施することが好ましい。
【0099】
本発明の方法は、約−10℃〜約60℃、好ましくは約0℃〜約35℃、より好ましくはほぼ室温(rt)(すなわち、約20℃〜約30℃)の範囲の温度で実施することができる。温度は、分解温度未満に保つことが好ましいので、式(1)、(2)、又は(3)の錯体が、上で示した温度範囲内で分解することがわかれば、温度をその分解温度未満に保つべきである。
【0100】
反応は、約数分〜約24時間かけて実施することができる。通常、実験室規模の反応については、約6時間以内に反応が完了する。完了後、錯体を回収する前に、必要なら、溶媒の一部分を蒸発させてもよい。さらに、必要なら、貧溶媒(例えば、ペンタンやヘキサンなどのアルカン)を使用して、溶媒から錯体を沈殿させてもよい。錯体生成物は、濾過、デカント、又は遠心分離によって直接回収することができる。
【0101】
ともかく、錯体を回収し、分離された錯体を洗浄し、次いで乾燥させることができる。乾燥は、既知の方法を使用して、例えば、1−30ミリバールの減圧下、10−60℃、好ましくは20−40℃の範囲の温度で1時間〜5日間行ってよい。必要なら、錯体を再結晶させてもよい。
【0102】
ある特定の実施態様では、錯体は、高収率で調製することができる。ある特定の実施態様では、錯体は、高純度で調製することができる。ある特定の実施態様では、錯体は、高活性触媒である。ある特定の実施態様では、錯体は、周囲温度で空気及び水分に対して安定である。いくつかの錯体(例えば、(π−アリル)Pd(CyBippyPhos)Cl、(π−アリル)Pd(SPhos)Cl、(π−アリル)Pd(XPhos)Cl、(π−アリル)Pd(RuPhos)Cl、(π−アリル)Pd(BrettPhos)Cl、(π−クロチル)Pd(XPhos)Cl、(π−クロチル)Pd(SPhos)Cl、(π−クロチル)Pd(RuPhos)Cl、(π−シンナミル)Pd(SPhos)Cl、及び(π−シンナミルl)Pd(RuPhos)Cl)を貯蔵安定性について試験し、31P NMRによって判断したところ、標準的な貯蔵条件下で1−2年間は実質的に分解が示されなかった。標準的な貯蔵条件とは、標準的な水分条件下での空気中での貯蔵(すなわち、グローブボックス又はデシケーター中でない)を指す。錯体の応用研究では、錯体が、穏やかな条件下で容易に活性化しうることが示唆されている。例えば、アリル錯体は、通常は60℃超で活性化し、クロチル及びシンナミル錯体は、室温で容易に活性化しうる。しかし、必要なら、本発明の錯体は、より高温(例えば、約60℃以上〜約150℃以下)での反応において使用してもよい。
【0103】
理論に拘泥するものではないが、錯体は、活性化して、LPd(0)種(L=ホスフィン配位子)になると考えられる。錯体が活性化されると、比較的害のない置換オレフィン副生物も生じうる。オレフィン副生物の一例を、mが1である特定のπ−アリル錯体について以下に示す。
【0104】
理論に拘泥するものではないが、本発明の錯体によって認められる活性は、安定な非反応性(μ−(R12−アリル)Pd(L)(μ−Cl)二量体の生成が抑制される結果として生じうるとも考えられる。この点において、反応性の「LPd(0)」種は、まだ反応していない式(1)又は(2)の錯体との均等化によって消費されて、二量体錯体となりかねない。二量体錯体が、立体ひずみによる配位子サイズの増大及び/又はアリル基上での置換の増加と共にますます不安定化し、そのためにその生成傾向が妨げられることによって、均等化過程の抑制がもたらされうる。加えて、本発明の錯体が示す酸化的付加は高速であるために、活性L−Pd(0)が触媒サイクルに急速に引き込まれ、したがって、非生産的な均等化過程にとって不利になるはずである。こうした機序を、Lが式(4)又は(5)の配位子であり、Xがクロロであり、mが1である特定のπ−アリル錯体について以下に図示する。
【0105】
本発明の触媒は、炭素−炭素カップリング反応に使用することができる。炭素−炭素カップリング反応の例としては、Heck、鈴木、園頭、又は根岸反応、ケトンα−アリール化反応、アルデヒドα−アリール化反応、アリル置換反応、及びトリフルオロメチル化反応が挙げられる。本発明の触媒は、炭素−窒素カップリング反応(すなわち、ブッフバルト−ハートウィッグ反応)や、炭素−酸素又は炭素−硫黄カップリング反応などの、炭素−ヘテロ原子カップリング反応にも使用できる。
【0106】
したがって、別の態様では、本発明は、触媒の存在下で炭素−炭素カップリング反応を実施する方法であって、
(a)式(1)の錯体:
[式中、
及びRは、独立に、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、又はRとRは、連結して、Eと環構造を形成しており、
、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成しており、この場合において、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成していてもよく、又はR、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、上で定義される通りであり、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Eは、P又はAsであり、
Xは、配位しているアニオン性配位子である]、
又は
(b)請求項17から24の何れか一項に定義される式(2)の錯体
の使用を含む方法を提供する。
【0107】
式(1)の錯体、式(2)の錯体、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、m、E、及びXは、上で定義される通りである。
【0108】
一実施態様では、方法は、請求項1から16の何れか一項に定義される式(1)の錯体の使用を含む。別の実施態様では、方法は、請求項17から24の何れか一項に定義される式(2)の錯体の使用を含む。
【0109】
別の態様では、本発明は、触媒の存在下で炭素−ヘテロ原子カップリング反応を実施する方法であって、
(a)式(1)の錯体:
[式中、
及びRは、独立に、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、又はRとRは、連結して、Eと環構造を形成しており、
、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成しており、この場合において、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成していてもよく、又はR、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、上で定義される通りであり、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Eは、P又はAsであり、
Xは、配位しているアニオン性配位子である]、
又は
(b)請求項17から24の何れか一項に定義される式(2)の錯体
の使用を含む方法を提供する。
【0110】
式(1)の錯体、式(2)の錯体、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、m、E、及びXは、上で定義される通りである。
【0111】
一実施態様では、方法は、請求項1から16の何れか一項に定義される式(1)の錯体の使用を含む。別の実施態様では、方法は、請求項17から24の何れか一項に定義される式(2)の錯体の使用を含む。
【0112】
別の態様では、本発明は、炭素−炭素カップリング反応における触媒としての式(1)の錯体又は式(2)の錯体の使用であって、
(a)式(1)の錯体が、
[式中、
及びRは、独立に、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、又はRとRは、連結して、Eと環構造を形成しており、
、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成しており、この場合において、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成していてもよく、又はR、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、上で定義される通りであり、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Eは、P又はAsであり、
Xは、配位しているアニオン性配位子である]であり、
(b)式(2)の錯体が請求項17から24の何れか一項に定義されている
使用を提供する。
【0113】
式(1)の錯体、式(2)の錯体、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、m、E、及びXは、上で定義される通りである。
【0114】
一実施態様では、式(1)の錯体は、請求項1から14の何れか一項に定義されている。別の実施態様では、式(2)の錯体は、請求項17から24の何れか一項に定義されている。
【0115】
別の態様では、本発明は、炭素−ヘテロ原子カップリング反応における触媒としての式(1)の錯体又は式(2)の錯体の使用であって、
(a)式(1)の錯体が、
[式中、
及びRは、独立に、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、又はRとRは、連結して、Eと環構造を形成しており、
、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、独立に、−H、又は1−20個の炭素原子を有する有機基であり、あるいは
/R又はR/Rは、これらが結合している原子と環構造を形成しており、この場合において、R/R、R/R、R/R、R/R、R/R10、又はR10/R11は、独立に、これらが結合している炭素原子と環構造を形成していてもよく、又はR、R、R、R、R、R、R、R、R10、及びR11は、上で定義される通りであり、
12は、1−20個の炭素原子を有する有機基であり、
mは、0、1、2、3、4、又は5であり、
Eは、P又はAsであり、
Xは、配位しているアニオン性配位子である]であり、
(b)式(2)の錯体が、請求項17から24の何れか一項に定義されている
使用を提供する。
【0116】
式(1)の錯体、式(2)の錯体、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、m、E、及びXは、上で定義される通りである。
【0117】
一実施態様では、式(1)の錯体は、請求項1から16の何れか一項に定義されている。別の実施態様では、式(2)の錯体は、請求項17から24の何れか一項に定義されている。
【0118】
本発明の実施態様及び/又は任意選択的な特色について上で述べてきた。本発明の何れの態様も、文脈上別段に要求されない限り、本発明の他の何れかの態様と組み合わせてよい。文脈上別段に要求されない限り、任意の態様の実施態様又は任意選択的な特色の何れかを、本発明の任意の態様と、個々に又は一緒に組み合わせてもよい。
【0119】
ここで本発明について、以下の非限定的な実施例によって、また以下の図面に即して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0120】
図1】Pd(π−アリル)(BrettPhos)ClのH NMRスペクトルを示すグラフである。
図2】Pd(π−クロチル)(BrettPhos)ClのH NMRスペクトルを示すグラフである。
図3】Pd(π−シンナミル)(BrettPhos)ClのH NMRスペクトルを示すグラフである。
図4】Pd(π−アリル)(JackiePhos)ClのH NMRスペクトルを示すグラフである。
図5】Pd(π−クロチル)Pd(CyBippyPhos)ClのH NMRスペクトルを示すグラフである。
図6】(π−アリル)Pd(XPhos)Cl、(π−クロチル)Pd(XPhos)Cl、(π−シンナミル)Pd(XPhos)Cl、第3世代XPhosパラダサイクル、及び1mol%のカルバゾールを加えた(π−アリル)Pd(XPhos)Clを使用してのアセトフェノンの4−クロロアニソールとのα−アリール化における変換率を示すグラフである。
【実施例】
【0121】
すべての溶媒及び試薬は商業的供給源から購入し、受領した状態のまま使用した。すべての触媒、リガンド又は貴金属前駆体は、Johnson Matthey Catalysis又はAlfa Aesarから入手した。フラッシュクロマトグラフィーは、12gのRediSepRfシリカゲルカートリッジを用いるTeledyne Isco CombiFlashRfの何れかで行った。31P、H及び13C NMRスペクトルは、別段の記載がない限り、化学シフトを内部基準としての残留溶媒に対して報告して(CDClH NMRについて7.26ppm及び13C NMRについて77.26ppm、CH NMRについて7.16ppm及び13C NMRについて128.06ppm、DMSO−d6:H NMRについて2.50ppm及び13C NMRについて39.52ppm、トルエン−d8:H NMRについて2.08ppm及び13C NMRについて20.43ppm)、400MHz分光計で記録し、一方、31P{H} NMRスペクトルは85%HPOを外部基準とした。以下の略語を使用して、多重度を説明した:s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、quint=五重線、sept=七重線、m=多重線、b=広幅、app t=見かけの三重線、app d=見かけの二重線、br=広幅。元素分析は、Robertson Microlit Laboratories,Inc.に送られた。すべての反応は、窒素雰囲気下の個々のシュレンクフラスコ内で行った。単離生成物の純度は、別段の注記がない限り、H NMR、GC/MS又は元素分析により測定したところ>95%であった。
【0122】
結晶学的データは、モノキャップコリメーターを備えたAPEX Bruker−AXS CCD X線回折計で120Kにて得た。構造は、SHELXTLソフトウェアを用いて解明した。これらのデータは、デラウェア大学化学及び生化学部のX線結晶解析実験室から得た。
【0123】
[Pd(置換されていてもよい(R12−アリル)(X)]錯体の調製のための一般的な手順:
三口丸底フラスコ内の蒸留HOを窒素で30分間パージする。その後、PdCl及びKClをフラスコに添加し、溶液を室温で1時間撹拌する。次いで、置換されていてもよい(R−塩化アリルを添加し、得られた反応混合物を室温で終夜(18−20時間)撹拌する。反応物をクロロホルムで抽出し、水性層をクロロホルムで3回洗浄する。有機層を合わせ、MgSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮する。粗生成物をクロロホルム及びメチルtert−ブチルエーテルから再結晶し、得られた固体を濾過により単離し、真空中で乾燥させる。
【0124】
[Pd(π−シンナミル)Cl]
PdCl(590mg、3.33mmol);KCl(473mg、6.67mmol);塩化シンナミル(1.39mL、9.99mmol);HO(83mL)。二量体を黄色固体として得る。
【0125】
[Pd(π−1−クロチル)Cl]
PdCl(590mg、3.33mmol);KCl(473mg、6.67mmol);塩化クロチル(0.97mL、9.99mmol);HO(83mL)。二量体を黄色固体として得る。
【0126】
[Pd(π−プレニル)Cl]
PdCl(590mg、3.33mmol);KCl(473mg、6.67mmol);1−クロリド−3−メチル−2−ブテン(1.13mL、9.99mmol);HO(83mL)。二量体を黄色固体として得る。
【0127】
[Pd(π−メタリル)Cl]
PdCl(590mg、3.33mmol);KCl(473mg、6.67mmol);3−クロリド−2−メチル−1−プロペン(0.98mL、9.99mmol);HO(83mL)。二量体を黄色固体(269mg、41%)として得る。
【0128】
実施例1(本発明による)
[Pd(置換されていてもよい(R12−アリル)(リガンド)(X)]錯体の調製のための代表的な手順:
乾燥シュレンク管に、リガンド(4.74mmol)及び[(置換されていてもよい(R12−アリル)PdCl](2.36mmol)を入れる。管を排気し、窒素で合計3回再充填する。10mLの無水溶媒(THF又はトルエンなど)を添加し、混合物を室温で一定時間(例えば20分間)撹拌する。ペンタン(5mL)又はヘキサンを添加して、生成物を十分に析出させる。生成物を真空濾過により収集し、洗浄し(3×10mLのペンタン、又はヘキサン)、真空下で乾燥させる。
【0129】
Pd(π−アリル)(JohnPhos)Cl
代表的な手順に従う:[(アリル)PdCl](1.00g、2.75mmol);JohnPhos(1.64g、5.50mmol);トルエン(13.2mL);1時間。生成物を淡黄色固体(2.46g、93%)として得る;1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 7.93 - 7.82 (m, 1H), 7.71 - 7.57 (m, 2H), 7.50 - 7.19 (m, 6H), 4.85 - 2.60 (m, 5H), 1.90 - 1.10 (m, 18H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ): 149.0, 148.8, 142.2 (2ピーク), 134.8, 134.6, 133.6 (2ピーク), 130.4, 129.8, 129.7, 129.6, 128.1, 126.3, 125.4, 125.3, 113.3, 113.2, 81.7 (br), 57.6 (br), 37.2, 30.9 [C-Pカップリングの為に複雑に見える]; 31P NMR (162 MHz, CDCl3, δ): 57.3;元素分析:C2332ClPPdの計算値:C、57.39;H、6.70。実測値C、57.35;H、6.53。
【0130】
(π−クロチル)Pd(JohnPhos)Cl
テフロンコートした磁気撹拌子を備えた乾燥シュレンクフラスコに、1.00g(2.54mmol)の[(クロチル)PdCl](0.50当量)、続いて1.52g(5.08mmol)のJohnPhosを入れる。フラスコにゴムセプタムを取り付け、これを排気し、窒素で再充填する。この排気/窒素再充填サイクルをさらに2回繰り返す。溶媒(無水トルエン)をシリンジにより添加し、反応混合物を室温で1.25時間撹拌する。次いで、ペンタン(25mL)を添加して、生成物を十分に析出させる。次いで、固体物質を吸引濾過により収集し、追加のペンタン(又はヘキサン)で洗浄し、真空中で乾燥させて、2.40g(4.84mmol、95%)の表題化合物を黄色固体として得る。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 7.87 (s, 1H), 7.50 - 7.75 (m, 2H), 7.10 - 7.50 (m, 6H), 3.98 - 4.23 (m, 1H), 3.60 - 3.83 (m, 1H), 2.99 - 3.11 (m, 1H), 1.20 - 1.76 (m, 22H).
13C NMR (101 MHz, CDCl3, δ): 149.0, 148.8, 142.1 (2ピーク), 135.0, 133.9 (2ピーク), 130.4, 130.0, 129.8, 129.7, 127.9, 126.4, 125.2 (2ピーク), 112.7 (2ピーク), 100.3, 100.0, 52.2, 37.7, 37.6, 37.3, 37.2, 31.7, 31.6, 30.5, 30.4, 17.7, 17.6 [C-Pカップリングの為に複雑に見える].
31P NMR (162 MHz, CDCl3, δ): 57.1.
元素分析:C2434ClPPdの計算値:C、58.19;H、6.92。実測値:C、57.91;H、6.74。
【0131】
Pd(π−アリル)(SPhos)Cl
代表的な手順に従う:[(アリル)PdCl](505mg、1.39mmol);SPhos(1.14g、2.78mmol);THF(3mL);6時間。生成物を白色固体(1.30g、79%)として得る;1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 7.65 (t, J = 8.6 Hz, 1H), 7.42 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 7.33 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.30 - 7.22 (m, 1H), 7.06 (dd, J = 3.5 Hz, 8.2 Hz, 1H), 6.70 - 6.44 (m, 2H), 5.24 - 5.08 (m, 1H), 4.47 (t, J = 7.1 Hz, 1H), 3.82 - 3.60 (m, 6H), 3.40 - 3.22 (m, 1H), 3.02 (dd, J = 9.4 Hz, 13.7 Hz, 1H), 2.41 - 2.00 (m, 3H), 2.00 - 0.90 (m, 20H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ): 158.0, 140.6, 140.5, 134.8, 134.7, 133.0, 132.9, 131.3, 131.0, 129.5, 128.9, 125.9, 125.8, 119.4, 119.4, 115.9, 115.8, 109.9, 104.2, 103.1, 82.2, 81.9, 55.4, 54.7, 36.2 (4ピーク), 29.8, 29.0, 27.3, 27.2, 26.1 [C-Pカップリングの為に複雑に見える]; 31P NMR (162 MHz, CDCl3, δ): 31.8;元素分析:C2940ClPPdの計算値:C、58.67;H、6.79。実測値C、58.93;H、6.76。
Pd(π−アリル)(SPhos)Clの単結晶は、冷凍庫内で1:1 THF/ペンタン溶液をゆっくりと冷却することにより得る。
【0132】
Pd(π−クロチル)(SPhos)Cl
代表的な手順に従う:[(クロチル)PdCl](501mg、1.27mmol);SPhos(1.05g、2.56mmol);THF(5mL);6時間。生成物をオフホワイトの固体(1.28g、83%)として得る;1H NMR (400 MHz, C6D6, δ): 7.58 (t, J = 7.7 Hz, 1H), 7.17 - 7.04 (m, 4H), 6.42 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.28 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 4.69 - 4.58 (m, 1H), 3.77 - 3.62 (m, 1H), 3.53 (s, 3H), 3.25 (s, 3H), 3.20 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 2.52 - 2.29 (m, 2H), 2.20 - 1.15 (m, 24H); 13C NMR (100 MHz, C6D6, δ): 158.0, 157.7, 141.8, 141.7, 133.4 (2ピーク), 133.2, 133.1, 132.0, 131.7, 129.1 (2ピーク), 128.2, 125.6, 125.5, 119.8, 119.7, 114.1 (2ピーク), 103.7, 102.8, 99.8, 99.6, 54.8, 54.6, 48.4, 38.0, 37.8, 37.3, 37.1, 29.9, 28.5, 28.3, 27.4 (2ピーク), 27.3, 27.1, 27.0 (2ピーク), 26.9, 26.1, 17.1 (2ピーク) [C-Pカップリングの為に複雑に見える]; 31P NMR (162 MHz, C6D6, δ): 28.9;元素分析:C3042ClPPdの計算値:C、59.31;H、6.97。実測値C、59.15;H、7.17
【0133】
Pd(π−シンナミル)(SPhos)Cl
代表的な手順に従う:[(シンナミル)PdCl](1.00g、1.93mmol);SPhos(1.59g、3.86mmol);トルエン(4.3mL);1時間。生成物を黄色固体(2.56g、99%)として得る;1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 7.68 (t, J = 8.5 Hz, 1H), 7.48 - 7.20 (m, 8H), 7.08 - 7.02 (m, 1H), 6.60 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 5.53 - 5.42 (m, 1H), 4.78 - 4.67 (m, 1H), 3.67 (s, 6H), 3.43 - 2.20 (m, 4H), 2.01 - 1.88 (m, 2H), 1.80 - 1.51 (m, 8H), 1.46 - 1.05 (m, 10H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ): 157.8, 140.3, 140.2, 136.9, 136.8, 135.0, 134.9, 133.0 (2ピーク), 131.3, 131.0, 129.3, 129.0, 128.4, 128.4, 128.1, 127.6 (2ピーク), 127.5, 125.7, 125.6, 119.4 (2ピーク), 109.3, 109.2, 103.6, 101.7, 101.4, 55.3, 50.0, 36.1, 35.9, 29.8, 29.7, 29.2, 27.3, 27.2, 27.0, 26.9, 26.1 [C-Pカップリングの為に複雑に見える]; 31P NMR (162 MHz, CDCl3, δ): 37.5;元素分析:C3544ClPPdの計算値:C、62.78;H、6.62。実測値C、62.66;H、6.54。
Pd(π−シンナミル)(SPhos)ClのX線分析のための単結晶は、冷凍庫内で1:1 THF/ペンタン溶液をゆっくりと冷却することにより得る。
【0134】
Pd(π−アリル)(RuPhos)Cl
代表的な手順に従う:[(アリル)PdCl](503mg、1.43mmol);RuPhos(1.29g、2.77mmol);THF(2mL);1時間。生成物を白色固体(1.52g、85%)として得る;1H NMR (400 MHz, C6D6, δ): 7.60 (t, J = 8.7 Hz, 1H), 7.18 - 7.05 (m, 4H), 6.96 - 6.86 (m, 1H), 6.92 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 6.32 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 5.03 - 4.91 (m, 1H), 4.49 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 4.46 - 4.30 (m, 1H), 4.22 - 4.08 (m, 1H), 3.37 - 3.22 (m, 1H), 3.01 (dd, J = 9.7 Hz, 13.4 Hz, 1H), 2.55 - 2.04 (m, 5H), 2.03 - 0.80 (m, 30H); 13C NMR (100 MHz, C6D6, δ): 157.2, 156.7, 141.3 (2ピーク), 134.4, 134.3, 132.7, 132.6, 132.4, 132.1, 128.7 (2ピーク), 128.3, 127.9, 125.4, 125.3, 122.5, 122.4, 115.3 (2ピーク), 106.4, 105.5, 80.1, 79.8, 70.2, 69.9, 55.8, 36.2, 36.0, 35.5, 35.3, 29.5, 29.4, 27.1, 27.0, 26.2, 25.5, 22.3, 22.2, 21.6, 21.3 [C-Pカップリングの為に複雑に見える]; 31P NMR (162 MHz, C6D6, δ): 34.6;元素分析:C3348ClPPdの計算値:C、61.02;H、7.45。実測値C、60.87;H、7.42。
X線分析のためのPd(π−アリル)(RuPhos)Clの単結晶は、冷凍庫内で1:1 THF/ヘキサン溶液をゆっくりと冷却することにより得る。
【0135】
Pd(π−クロチル)(RuPhos)Cl
代表的な手順に従う:[(クロチル)PdCl](1.022g、5.09mmol);RuPhos(2.37g、10.18mmol);THF(2.5mL);2時間。生成物を淡黄色固体(2.93g、87%)として得る;1H NMR (400 MHz, C6D6, δ): 7.64 (t, J = 8.4 Hz, 1H), 7.24 - 7.09 (m, 3H), 7.06 - 7.00 (m, 1H), 6.50 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 6.34 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 4.90 - 4.80 (m, 1H), 4.58 - 4.45 (m, 1H), 4.31 - 4.18 (m, 1H), 3.82 - 3.70 (m, 1H), 3.34 - 3.26 (m, 1H), 2.57 - 0.80 (m, 38H); 13C NMR (100 MHz, C6D6, δ): 157.4, 156.9, 142.3, 142.2, 133.9, 133.8, 132.8 (2ピーク), 132.5, 128.9 (2ピーク), 128.2, 125.6, 125.5, 122.7 (2ピーク), 114.7 (2ピーク), 106.3, 105.4, 99.4, 99.1, 70.2, 70.0, 50.7, 37.5, 37.3, 36.7, 36.5, 30.0, 29.2, 27.4, 27.3, 27.1, 26.4, 22.5, 22.4, 21.6, 21.4, 17.4 (2ピーク) [C-Pカップリングの為に複雑に見える]; 31P NMR (162 MHz, C6D6, δ): 33.2;HRMS−ESI m/z:[M−Cl]、C3348PPdの計算値、627.2583;実測値627.2554。
X線分析のためのPd(π−クロチル)(RuPhos)Clの単結晶は、冷凍庫内で1:1 THF/ヘキサン溶液をゆっくりと冷却することにより得る。
【0136】
Pd(π−シンナミル)(RuPhos)Cl
代表的な手順に従う:[(シンナミル)PdCl](1.00g、1.93mmol);RuPhos(1.80g、3.86mmol);THF(4mL);2時間。生成物を黄色固体(2.13g、76%)として得る;1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 7.78 - 7.68 (m, 1H), 7.46 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.35 - 7.18 (m, 7H), 6.92 - 6.87 (m, 1H), 6.55 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 5.72 - 5.58 (m, 1H), 4.91 - 4.77 (m, 1H), 4.52 - 4.39 (m, 1H), 3.00 - 2.50 (m, 1H), 2.31 - 2.19 (m, 2H), 2.05 - 1.94 (m, 2H), 1.74 - 1.49 (m, 8H), 1.44 - 0.89 (m, 24H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ): 156.9, 140.1, 137.1 (2ピーク), 135.1, 132.8, 132.7, 131.8, 131.5, 128.7, 128.4, 127.5 (2ピーク), 127.4, 125.2, 125.1, 122.4 (2ピーク), 109.7, 109.6, 106.0, 100.3, 100.0, 70.4, 52.6, 35.0, 24.8, 30.0, 29.2. 27.0, 26.9, 26.8, 26.0, 22.4, 22.0, 21.8 [C-Pカップリングの為に複雑に見える]; 31P NMR (162 MHz, CDCl3, δ): 44.0;HRMS−ESI m/z:[M−Cl]、C3952PPdの計算値、689.2740;実測値689.2739。
【0137】
Pd(π−アリル)(XPhos)Cl
代表的な手順に従う:[(アリル)PdCl](858mg、2.36mmol);XPhos(2.56g、5.37mmol);THF(5mL);3時間。生成物を黄色固体(3.11g、97%)として得、生成物は〜5mol%のTHFを含有する;1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 7.98 - 7.84 (m, 1H), 7.40 - 7.27 (m, 2H), 7.07 - 6.99 (m, 3H), 5.47 - 5.26 (m, 1H), 4.54 (t, J = 7.1 Hz, 1H), 3.51 (dd, J = 9.3 Hz, 13.6 Hz, 1H), 3.12 - 3.01 (m, 1H), 3.00 - 2.88 (m, 1H), 2.70 - 2.42 (m, 2H), 2.41 - 2.10 (m, 3H), 1.92 - 0.73 (m, 38H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ): 148.7, 146.2, 142.1, 136.6, 136.4, 136.3, 133.7, 133.6, 131.8, 131.6, 128.0 (2ピーク), 125.5, 125.4, 120.7, 116.0, 116.0, 79.3, 79.0, 55.7, 34.4, 34.1, 33.9, 31.3, 30.4, 29.0, 27.1, 27.0, 26.8, 26.7, 25.6, 25.4, 23.9, 22.3 [C-Pカップリングの為に複雑に見える], THFによるピークが67.7、25.8に認められた; 31P NMR (162 MHz, CDCl3, δ): 48.0;元素分析:C3654ClPPdの計算値:C、65.55;H、8.25。実測値C、65.79;H、8.01。
【0138】
Pd(π−クロチル)(XPhos)Cl
代表的な手順に従う:[(クロチル)PdCl](1.00g、2.54mmol);XPhos(2.42g、5.08mmol);トルエン(30mL);2時間。生成物を白色固体(3.11g、91%)として得る;1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 7.99 - 7.86 (m, 1H), 7.38 - 7.29 (m, 2H), 7.18 - 6.99 (m, 3H), 5.19 - 5.03 (m, 1H), 4.32 - 4.13 (m, 1H), 3.00 - 2.80 (m, 2H), 2.71 - 2.42 (m, 2H), 2.31 - 2.02 (m, 3H), 1.95 - 0.74 (m, 47H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ): 148.7, 146.3, 142.1, 136.9, 136.7, 136.5, 133.7, 133.6, 132.3, 132.0, 128.8, 128.0 (2ピーク), 125.5, 125.4, 120.8, 115.0 (2ピーク), 98.5, 98.2, 50.9, 34.8, 34.2, 31.4, 30.5 (2ピーク), 29.2, 27.2, 27.1, 27.0, 26.9, 26.8, 25.8, 25.7, 24.0, 22.4, 17.2, 17.1 [C-Pカップリングの為に複雑に見える]; 31P NMR (162 MHz, CDCl3, δ): 50.8;HRMS−ESI m/z:[M−Cl]、C3756PPdの計算値、637.3154;実測値637.3153。
【0139】
Pd(π−シンナミル)(XPhos)Cl
代表的な手順に従う:[(シンナミル)PdCl](1.00g、1.93mmol);XPhos(1.84g、3.86mmol);トルエン(5mL);2時間。生成物を黄色固体(2.27g、80%)として得、生成物は微量残留トルエンを含有する;1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 8.10 - 7.95 (m, 1H), 7.52 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.42 - 7.23 (m, 5H), 7.11 - 7.01 (m, 3H), 5.87 - 5.69 (m, 1H), 5.20 - 5.06 (m, 1H), 3.08 - 2.90 (m, 2H), 2.73 - 0.70 (m, 49H), トルエンによるピークが7.17および2.36に認められた; 13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ): 148.9, 146.4, 142.1, 137.2, 136.9, 136.8, 136.7, 136.6, 133.8, 133.7, 132.4, 132.2, 129.0, 128.6, 128.4, 128.1, 127.6 (2ピーク), 125.7, 125.6, 125.2, 121.0, 109.7, 109.6, 99.4, 99.1, 51.9, 34.5, 34.3, 31.7, 30.6, 29.2, 27.3, 27.2, 27.0, 26.9, 26.0, 25.7, 24.1, 22.5 [C-Pカップリングの為に複雑に見える],トルエンによるピークが137.7、21.4に認められた; 31P NMR (162 MHz, CDCl3, δ): 54.3;元素分析:C3654ClPPdの計算値:C、68.56;H、7.95。実測値C、68.85;H、7.93。
【0140】
Pd(π−アリル)(BrettPhos)Cl
代表的な手順に従う:[(アリル)PdCl](502mg、1.38mmol);BrettPhos(1.48g、2.76mmol);トルエン(6mL);1時間。生成物をオフホワイトの固体(1.95g、99%)として得る;1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ):錯体スペクトル(図1を参照);31P NMR (162 MHz, CDCl3, δ): 54.1, 48.7;元素分析:C3858ClPPdの計算値:C、63.42;H、8.12。実測値C、63.17;H、8.16。
【0141】
Pd(π−クロチル)(BrettPhos)Cl
代表的な手順に従う:[(クロチル)PdCl](303mg、0.769mmol);BrettPhos(827mg、1.53mmol);トルエン(2mL);1時間。生成物をオフホワイトの固体(1.04g、92%)として得る;1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ):錯体スペクトル(図2を参照);31P NMR (162 MHz, CDCl3, δ): 41.4;元素分析:C3960ClPPdの計算値:C、63.84;H、8.24。実測値C、65.01;H、8.57
【0142】
Pd(π−シンナミル)(BrettPhos)Cl
代表的な手順に従う:[(シンナミル)PdCl](503mg、0.971mmol);BrettPhos(1.04g、1.94mmol);トルエン(4mL);0.5時間。生成物を黄色固体(1.34g、87%)として得る;1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ):錯体スペクトル(図3を参照);31P NMR (162 MHz, CDCl3, δ):元素分析:C4462ClPPdの計算値:C、66.41;H、7.85。実測値C、66.44;H、8.15。
【0143】
Pd(π−アリル)(JackiePhos)Cl
代表的な手順に従う:[(アリル)PdCl](183mg、0.500mmol);JackiePhos(797mg、1.00mmol);トルエン(5mL);1時間。生成物を白色固体(529mg、54%)として得る;1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ):錯体スペクトル(図4を参照);31P NMR (162 MHz, CDCl3, δ): 18.1;元素分析:C424212ClPPdの計算値:C、51.50;H、4.32。実測値C、51.52;H、4.15。
【0144】
Pd(π−アリル)(CyBippyPhos)Cl
代表的な手順に従う:[(アリル)PdCl](245mg、0.671mmol);CyBippyPhos(750mg、1.34mmol);THF(4.5mL);0.5時間。生成物を淡黄色固体(220mg、22%)として得る。
Pd(π−アリル)(CyBippyPhos)Clはまた、以下の手順により調製することもできる:
乾燥した20mLのシンチレーションバイアルに245mg(0.67mmol)の[(アリル)PdCl]を入れ、窒素充填したグローブボックス内に移す。次いで、バイアルに750mg(1.34mmol)のCyBippyPhosを入れる。4mLのトルエンを添加し、混合物を室温で30分間撹拌する。撹拌時間中は、混合物が濃厚になり、撹拌は困難である。追加の4mLのトルエンを添加し、それにより撹拌を続けることが可能になる。8mLのヘキサンを添加することにより、生成物を十分に析出させる。固体を空気中での真空濾過により収集し、3×10mLのヘキサンで洗浄する。固体を真空中で乾燥させて、913mg(1.23mmol、92%)の表題化合物をオフホワイトの固体として得る。生成物は、<2重量%の残留トルエンを含有する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 7.99 (s, 1H), 7.44 - 7.18 (m, 15H), 6.68 - 6.55 (m, 1H), 5.30 - 4.99 (m, 1H), 4.60 - 4.50 (m, 1H), 3.54 - 3.33 (m, 1H), 2.88 - 2.78 (m, 1H), 2.20 - 0.77 (m, 22H), 0.48 - 0.30 (m, 1H); 31P NMR (162 MHz, CDCl3, δ): 25.2, 23.2;HRMS−ESI m/z:[M−Cl]、C3756PPdの計算値、637.3154;実測値637.3153。元素分析:C3944ClPPdの計算値:C、63.16;H、5.98;N、7.55。実測値C、63.22;H、6.14;N、7.30。
【0145】
(π−クロチル)Pd(CyBippyPhos)Cl
乾燥シュレンクフラスコに264mg(0.67mmol)の[(クロチル)PdCl]を入れ、窒素充填したグローブボックス内に移す。次いで、フラスコに750mg(1.34mmol)のCyBippyPhosを入れる。8mLのトルエンを添加し、混合物を室温で1時間撹拌する。氷浴中で冷却しながら20mLのペンタンを添加することにより、生成物を析出させる。固体を空気中での真空濾過により収集し、3×10mLのヘキサンで洗浄し、真空中で乾燥させて、904mg(1.10mmol、83%)の表題化合物をオフホワイトの固体として得る。生成物は2/3トルエン付加物であり、これを、CHClに溶解し、溶媒を減圧下60℃で蒸発させることにより分解する。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ):錯体スペクトル(図5を参照)。
13C NMR (101 MHz, CDCl3, δ): 147.2, 142.2, 142.0, 140.5, 140.4, 140.0, 139.9, 137.9, 137.6, 137.3, 137.1, 131.4, 131.3, 130.4, 129.1 (2ピーク), 129.0, 128.7, 128.6 (2ピーク), 128.5, 128.2 (2ピーク), 127.6, 127.5, 126.2 (2ピーク), 126.1, 125.3, 120.1, 119.8, 116.9, 116.8, 116.4, 116.3, 115.8 (2ピーク), 115.3 (2ピーク), 100.9, 100.6, 100.4, 52.0, 50.6, 34.9, 34.7, 34.4, 34.1, 30.6, 29.9 (2ピーク), 29.6, 29.5, 28.5, 28.3, 27.9, 27.7, 27.2, 27.0, 26.9, 26.8, 26.7, 26.6, 26.0, 25.8, 22.4, 21.5 [C-Pカップリングの為に複雑に見える].
31P NMR (162 MHz, CDCl3, δ): 22.6 (br), 19.8 (br).
HRMS(ESI)m/z[M−Cl]、C4046NPPdの計算値:719.2495;実測値:719.2510。
【0146】
実施例2(比較例)
4−クロロアニソールによるアセトフェノンのアリール化
代表的な手順:
テフロンコートした磁気撹拌子を備えた乾燥シュレンク管に、1mol%(0.01mmol)のPdプレ触媒及び2.00mmol(2.0当量)のt−BuOKを入れる。管にゴムセプタムを取り付け、排気し、窒素で再充填する。この排気/再充填の手順をさらに2回繰り返す。4−クロロアニソール(1.00mmol、1当量)及びアセトフェノン(1.20mmol、1.2当量)、続いて4mLの無水トルエンをシリンジにより添加する。管を、予熱した(40−60℃)油浴に入れ、混合物を18時間激しく撹拌する。次いで、管を油浴から取り出し、内容物を室温に冷却する。粗反応混合物の試料をH NMRにより分析する。
【0147】
実施例3(本発明による)
4−クロロアニソールによるアセトフェノンのアリール化
代表的な手順:
テフロンコートした磁気撹拌子を備えた乾燥シュレンク管に、6.5mg(0.01mmol)の(R−アリル)Pd(XPhos)Cl及び224mg(2.00mmol)のt−BuOKを入れる。管にゴムセプタムを取り付け、排気し、窒素で再充填する。この排気/再充填の手順をさらに2回繰り返す。4−クロロアニソール(129μL、1.05mmol)及びアセトフェノン(117μL、1.00mmol)、続いて4mLの無水トルエンをシリンジにより添加する。管を、予熱した(60℃)油浴に入れ、混合物を4時間激しく撹拌する。次いで、管を油浴から取り出し、内容物を室温に冷却する。試料をGCにより分析する。
メチルケトンのα−アリール化で観察される共通の問題は、ジアリール化生成物の形成である。この実施例の結果は、クロロアレーンによるアセトフェノンのモノアリール化:ジアリール化についての著しくより高い収率及びより高い選択性(>20:1)が、(R−アリル)Pd(AmPhos)Cl錯体に対して相対的に(R−アリル)Pd(XPhos)Cl錯体を使用することで達成されることを示している(実施例2を参照)。触媒の活性を決定するのはリガンドの同一性であることに留意することは重要である。
【0148】
実施例4(本発明による)
モルホリンによる4−クロロアニソールのアミノ化[a]
[a]反応条件:4−クロロアニソール(1.0mmol)、モルホリン(1.2mmol)、NaOtBu(1.2mmol)、触媒(0.5mol%)、THF(2mL)。[b]ドデカンを内部標準として使用してGCにより測定。[c]0.5mol%の追加のRuPhosを添加。[d]2.5時間実行。
上記のデータは、本発明の(R−π−アリル)Pd(L)Cl(L=RuPhos)錯体が、第1世代のRuPhosパラダサイクルよりも良好な活性を、並びに第2世代及び第3世代のRuPhosパラダサイクルよりも著しく良好な活性を示すことを実証している。
さらに、第2世代及び第3世代のBuchwaldパラダサイクルプレ触媒は、本発明の錯体とは異なり、活性化時に遺伝毒性カルバゾールの等価物を放出する。上記のデータは、(R−π−アリル)Pd(L)Cl錯体から生成される活性触媒は、第2世代及び第3世代のパラダサイクルが受けるカルバゾール形成による阻害を受けないことも示している。
【0149】
実施例5(本発明による)
3−クロロピリジン及びp−トリルボロン酸の鈴木−宮浦カップリング[a]
[a]反応条件:3−クロロピリジン(1.0mmol)、p−トリルボロン酸(1.5mmol)、KPO(2.0mmol)、触媒(2mol%)、THF(2mL)、HO(4mL)。[b]2時間実行。
テフロンコートした磁気撹拌子を備え、ゴムセプタムを取り付けた乾燥シュレンク管に、プレ触媒(0.02mmol、2mol%)及び204mg(1.50mmol、1.50当量)のp−トリルボロン酸を入れる。管を排気し、窒素で再充填する。この排気/再充填サイクルをさらに2回繰り返す。3−クロロピリジン(95μL、1.00mmol、1.00当量)、続いて2mLの無水THF及び4.0mLの0.5M KPO(水溶液)を添加する。内容物を30分間激しく撹拌する。アリコートを取り出し、ガスクロマトグラフィーにより分析する。
(アリル)Pd(XPhos)Cl錯体は、第3世代XPhosパラダサイクルに匹敵する変換を示す。しかし、(クロチル)Pd(XPhos)Cl及び(シンナミル)Pd(XPhos)Clは両方とも、第3世代のパラダサイクルよりも速い速度で鈴木−宮浦カップリング反応を促進する。
【0150】
実施例6(本発明による)
(π−クロチル)Pd(RuPhos)Clを使用するアリール/ヘテロアリール塩化物のアミノ化[a]
[a]反応条件:ArCl/HetArCl(1.0mmol)、アミン(1.2mmol)、NaOtBu(1.2mmol)、触媒(0.5mol%)、RuPhos(0.5mol%)、THF(2mL)。[b]1mol%(π−クロチル)Pd(RuPhos)Cl/1mol%RuPhos、KCO、t−AmOH、110℃、18時間。
18時間を必要とした4−(チオフェン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジンを除くすべての場合において変換率100%に1−2.5時間で達し、速い反応時間が観察された。4−(チオフェン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジンの合成はまた、NaOt−Buと比較して弱い塩基(KCO)の使用による触媒活性化も実証している。
【0151】
アミノ化反応のための一般的な手順
テフロンコートした磁気撹拌子を備え、オーブン乾燥したシュレンク管に、(π−クロチル)Pd(RuPhos)Cl(示されている通り0.5−1mol%)、RuPhos(示されている通り0.5−1mol%)、塩化アリール(固体の場合1.00mmol)及びNaOt−Bu(1.20mmol)を入れる。管を排気し、窒素で再充填する。この排気/再充填サイクルをさらに2回繰り返す。ドデカン(GC標準、0.20mmol)、アミン(1.20mmol)、塩化アリール(液体の場合1.00mmol)及び無水THF(2mL)をシリンジにより順次添加する。管を、予熱した油浴に入れ、示されている時間撹拌する。次いで、管を油浴から取り出し、室温に冷却する。反応混合物を10mLのEtOAcで希釈し、セライトのパッドに通して濾過する。溶液を真空中で濃縮し、残留物を、Teledyne ISCO CombiFlashRfを使用するシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかける。
【0152】
4−(4−メトキシフェニル)モルホリン
一般的な手順に従って、4−クロロアニソール(123μL、1.00mmol)、モルホリン(105μL、1.20mmol)、NaOtBu(115mg、1.20mmol)、(π−クロチル)Pd(RuPhos)Cl(3.3mg、0.005mmol)、RuPhos(2.3mg、0.005mmol)及び2mLのTHFの混合物を、80℃で2.5時間撹拌する。粗物質を、溶離液として0−20%EtOAc/ヘキサンの勾配を用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて、186mg(0.96mmol、96%)の4−(4−メトキシフェニル)モルホリンを無色固体として得る。分光データは、以前に報告されたもの(D. Maiti, B. P. Fors, J. L. Henderson, Y. Nakamura, S. L. Buchwald, Chem. Sci. 2011, 2, 57)と一致する。
【0153】
N,N−ジエチル−6−メトキシピリジン−2−アミン
一般的な手順に従って、2−クロロ−6−メトキシピリジン(119μL、1.00mmol)、ジエチルアミン(124μL、1.20mmol)、NaOtBu(115mg、1.20mmol)、(π−クロチル)Pd(RuPhos)Cl(3.3mg、0.005mmol)、RuPhos(2.3mg、0.005mmol)及び2mLのTHFの混合物を、80℃で70分間撹拌する。粗物質を、溶離液として0−5%EtOAc/ヘキサンの勾配を用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて、171mg(0.95mmol、95%)のN,N−ジエチル−6−メトキシピリジン−2−アミンを無色油状物として得る。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 7.33 (t, J = 7.5 Hz, 1H), 5.99 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 5.93 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 3.86 (s, 3H), 3.49 (q, J = 7.0 Hz, 4 H), 1.81 (t, J = 7.0 Hz, 6H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ): 163.4, 156.7, 139.8, 96.8, 95.2, 52.9, 42.7, 13.2.
HRMS(ESI)m/z[M+H]、C1017Oの計算値:181.1341。実測値:181.1318
【0154】
1−(ピラジン−2−イル)インドリン
一般的な手順に従って、2−クロロピラジン(89μL、1.00mmol)、インドリン(135μL、1.20mmol)、NaOtBu(115mg、1.20mmol)、(π−クロチル)Pd(RuPhos)Cl(3.3mg、0.005mmol)、RuPhos(2.3mg、0.005mmol)及び2mLのTHFの混合物を、80℃で1時間撹拌する。粗物質を、溶離液として0−50%EtOAc/ヘキサンの勾配を用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて、191mg(0.97mmol、97%)の1−(ピラジン−2−イル)インドリンを黄色固体として得る。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 8.14 - 8.28 (m, 3H), 8.00 (app d, J = 2.6 Hz, 1H), 7.13 - 7.27 (m, 2H), 6.88 - 6.93 (m, 1H), 4.05 (t, J = 8.7 Hz, 2H), 3.24 (t, J = 8.7 Hz, 2H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ): 151.6, 144.1, 141.8, 134.3, 132.0, 131.3, 127.5, 124.8, 121.6, 114.2, 48.7, 27.9.
元素分析:C1211の計算値:C、73.07;H、5.62;N、21.30。実測値:C、73.17;H、5.63;N、21.42。
【0155】
N−メチル−N−フェニルキノリン−6−アミン
一般的な手順に従って、6−クロロキノリン(164mg、1.00mmol)、N−メチルアニリン(130μL、1.20mmol)、NaOtBu(115mg、1.20mmol)、(π−クロチル)Pd(RuPhos)Cl(3.3mg、0.005mmol)、RuPhos(2.3mg、0.005mmol)及び2mLのTHFの混合物を、80℃で1時間撹拌する。粗物質を、溶離液として0−50%EtOAc/ヘキサンの勾配を用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて、231mg(0.99mmol、99%)のN−メチル−N−フェニルキノリン−6−アミンを黄色油状物として得る。分光データは、以前に報告されたもの(M. Tobisu, A. Yasutome, K. Yamakawa, T. Shimasaki, N. Chatani, Tetrahedron 2012, 68, 5157)と一致する。
【0156】
4−(チオフェン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジン
以下の修正を加えて、一般的な手順に従う:3−クロロチオフェン(93μL、1.00mmol)、ベンゾモルホリン(140μL、1.20mmol)、KCO(194mg、1.40mmol)、(π−クロチル)Pd(RuPhos)Cl(6.6mg、0.01mmol)、RuPhos(4.7mg、0.01mmol)及び2mLのt−AmOHの混合物を、110℃で20時間撹拌する。粗物質を、溶離液として0−5%EtOAc/ヘキサンの勾配を用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて、212mg(0.98mmol、98%)の4−(チオフェン−3−イル)−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ[b][1,4]オキサジンを黄色油状物として得る。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 7.30 (dd, J = 3.2 Hz, 5.2 Hz, 1H), 7.07 (dd, J = 1.4 Hz, 5.2 Hz, 1H), 6.92 - 6.98 (m, 1H), 6.85 - 6.91 (m, 1H), 6.81 (dd, J = 1.4Hz, 3.2 Hz, 1H), 6.73 - 6.81 (m, 2H), 4.33 (t, J = 4.5 Hz, 2H), 3.69 (t, J = 4.4 Hz, 2H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ): 146.1, 144.5, 133.1, 125.4, 124.1, 121.2, 120.1, 117.0, 116.3, 112.3, 64.5, 49.0.
元素分析:C1211NOSの計算値:C、66.33;H、5.10;N、6.45。実測値:C、66.42;H、5.24;N、6.42。
【0157】
実施例7(本発明による)
(π−クロチル)Pd(XPhos)Clを使用する鈴木−宮浦反応[a]
[a]反応条件:HetArCl(1.0mmol)、ArB(OH)(1.5mmol)、KPO(2.0mmol)、触媒(2mol%)、THF(2mL)、HO(4mL)。[b]精製を容易にするためにヒドロメタンスルホン酸塩として単離する。
(クロチル)Pd(XPhos)Cl触媒を使用して、幅広い塩化ヘテロアリールを、活性「L−Pd(0)」の高速生成のために室温又は室温をわずかに上回る温度(45℃まで)にて、一様に高い収率で、急速なプロト脱ホウ素化の傾向があるものを含む高難度のアリール及びヘテロアリールボロン酸とカップリングさせることができる。例えば、2−チエニルボロン酸、2−フランボロン酸及び2,6−ジフルオロフェニルボロン酸はすべて、短い反応時間(≦1時間)で高い収率でカップリングさせた。
【0158】
鈴木−宮浦カップリングのための一般的な手順
テフロンコートした磁気撹拌子を備え、オーブン乾燥したシュレンク管に、(π−クロチル)Pd(XPhos)Cl(2mol%)、塩化ヘテロアリール(固体の場合1.00mmol)及びアリール/ヘテロアリールボロン酸(1.5mmol)を入れる。管を排気し、窒素で再充填する。この排気/再充填サイクルをさらに2回繰り返す。塩化ヘテロアリール(液体の場合1.00mmol)、無水THF(2mL)及び0.5M KPO水溶液(4.0mL)をシリンジにより順次添加する。管を室温で撹拌し、又は示されている45℃の予熱した油浴に入れ、示されている時間撹拌する。加熱したら、次いで管を油浴から取り出し、室温に冷却する。反応混合物を10mLのEtOAc及び10mLのHOで希釈し、次いで水性相を3×10mLのEtOAcで抽出する。合わせた有機抽出物を無水MgSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮する。残留物は、別段の注記がない限り、Teledyne ISCO CombiFlashRfを使用するシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかける。
【0159】
3−(4−トリル)ピリジン
一般的な手順に従って、3−クロロピリジン(95μL、1.00mmol)、p−トリルボロン酸(204mg、1.50mmol)、(π−クロチル)Pd(XPhos)Cl(14mg、0.02mmol)、2mLのTHF及び4mLの0.5M KPO水溶液の混合物を、室温で2時間撹拌する。粗物質を、溶離液として10−40%EtOAc/ヘキサンの勾配を用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて、160mg(0.95mmol、95%)の3−(4−トリル)ピリジンを無色固体として得る。分光データは、以前に報告されたもの(C. L. Cioffi, W. T. Spencer, J. J. Richards, R. J. Herr, J. Org. Chem. 2004, 69, 2210)と一致する。
【0160】
2−(チオフェン−2−イル)キノリン
一般的な手順に従って、2−クロロキノリン(164mg、1.00mmol)、2−チエニルボロン酸(192mg、1.50mmol)、(π−クロチル)Pd(XPhos)Cl(14mg、0.02mmol)、2mLのTHF及び4mLの0.5M KPO水溶液の混合物を、45℃で2時間撹拌する。粗物質を、溶離液として0−5%EtOAc/ヘキサンの勾配を用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて、208mg(0.99mmol、99%)の2−(チオフェン−2−イル)キノリンを無色固体として得る。分光データは、以前に報告されたもの(F.-F. Zhuo, W.-W. Xie, Y.-X. Yang, L. Zhang, P. Wang, R. Yuan, C.-S. Da, J. Org. Chem. 2013, 78, 3243)と一致する。
【0161】
4−(フラン−2−イル)−2,6−ジメトキシピリミジン
一般的な手順に従って、6−クロロ−2,4−ジメトキシピリミジン(175mg、1.00mmol)、2−フランボロン酸(168mg、1.50mmol)、(π−クロチル)Pd(XPhos)Cl(14mg、0.02mmol)、2mLのTHF及び4mLの0.5M KPO水溶液の混合物を、室温で1時間撹拌する。粗物質を、溶離液として0−10%EtOAc/ヘキサンの勾配を用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて、194mg(0.94mmol、94%)の4−(フラン−2−イル)−2,6−ジメトキシピリミジンを無色固体として得る。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 7.53 (dd, J = 0.9 Hz, 1.9 Hz, 1H), 7.19 (dd, J = 0.7 Hz, 3.5 Hz, 1H), 6.69 (s, 1H), 6.53 (dd, J = 1.7 Hz, 3.4 Hz, 1H) 4.02 (s, 3H), 3.99 (s, 3H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ): 172.6, 165.6, 157.4, 152.2, 144.6, 112.3, 111.9, 95.0, 54.8, 54.0.
元素分析:C1010の計算値:C、58.25;H、4.89;N、13.59。実測値:C、58.19;H、4.72;N、13.42。
【0162】
2−(2,6−ジフルオロフェニル)−6−メトキシピリジン
一般的な手順に従って、2−クロロ−6−メトキシピリジン(119μL、1.00mmol)、2,6−ジフルオロフェニルボロン酸(237mg、1.50mmol)、(π−クロチル)Pd(XPhos)Cl(14mg、0.02mmol)、2mLのTHF及び4mLの0.5M KPO水溶液の混合物を、室温で30分間撹拌する。粗物質を、溶離液として0−5%EtOAc/ヘキサンの勾配を用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて、195mg(0.88mmol、88%)の2−(2,6−ジフルオロフェニル)−6−メトキシピリジンを淡黄色油状物として得る。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 7.64 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.35 - 7.26 (m, 1H), 7.05 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 7.00 - 6.92 (m, 2H), 6.75 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 3.95 (s, 3H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ): 163.8, 160.5 (dd, J = 250.7 Hz, 6.97 Hz), 146.7, 138.6, 129.8 (t, J = 10.23 Hz), 118.8 (t, J = 1.95 Hz), 118.2 (t, J = 17.23 Hz), 111.8 (dd, J = 26.1 Hz, 6.6 Hz), 110.3, 53.6.
元素分析:C12NOの計算値:C、65.16;H、4.10;N、6.33。実測値:C、65.14;H、4.37;N、6.46。
【0163】
5−(ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)−1,3−ジメチル−1H−ピラゾール
一般的な手順に従って、5−クロロ−1,3−ジメチル−1H−ピラゾール(115μL、1.00mmol)、ジベンゾ[b]−フラン−4−ボロン酸(318mg、1.50mmol)、(π−クロチル)Pd(XPhos)Cl(14mg、0.02mmol)、2mLのTHF及び4mLの0.5M KPO水溶液の混合物を、室温で2時間撹拌する。粗物質を、溶離液として0−10%EtOAc/ヘキサンの勾配を用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて、240mg(0.92mmol、92%)の5−(ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)−1,3−ジメチル−1H−ピラゾールをオフホワイトの固体として得る。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 8.02 - 7.97 (m, 2H), 7.57 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.58 - 7.36 (m, 4H), 6.33 (s, 1H), 3.85 (s, 3H), 2.39 (s, 3H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ): 156.2, 153.3, 147.9, 139.1, 128.0, 127.7, 125.0, 124.0, 123.2, 123.0, 121.1, 120.9, 115.6, 112.0, 107.1, 37.4, 13.7.
元素分析:C1714Oの計算値:C、77.84;H、5.38;N、10.68。実測値:C、77.93;H、5.29;N、10.56。
【0164】
5−メチル−6−(チオフェン−3−イル)イミダゾ[1,2−a]ピリジンヒドロメタンスルホン酸塩
一般的な手順に従って、6−ブロモ−5−メチルイミダゾ[1,2,a]ピリジン(167mg、1.00mmol)、3−チエニルボロン酸(152mg、1.50mmol)、(π−クロチル)Pd(XPhos)Cl(14mg、0.02mmol)、2mLのTHF及び4mLの0.5M KPO水溶液の混合物を、45℃で5時間撹拌する。粗物質を10mLの酢酸イソプロピルに溶かし、撹拌する。析出が生じる間に0.08mLのメタンスルホン酸をゆっくりと添加し、混合物を室温で30分間撹拌する。固体を真空濾過により収集し、洗浄し(3×5mLの酢酸イソプロピル、1×10mLのヘキサン)、真空中で乾燥させて、194mg(0.80mmol、80%)の5−メチル−6−(チオフェン−3−イル)イミダゾ[1,2−a]ピリジンヒドロメタンスルホン酸塩を黄褐色固体として得る。
1H NMR (400 MHz, 4:1 D2O/DMSO-d6, δ): 8.18 (s, 1H), 8.06 (s, 1H), 7.97 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 7.85 (d, J = 9.3 Hz, 1H), 7.70 - 7.60 (m, 2H), 7.32 (d, J = 4.6 Hz, 1H), 2.87 - 2.77 (m, 6H).
13C NMR (100 MHz, 4:1 D2O/DMSO-d6, δ): 140.4, 137.8, 137.3, 137.2, 130.1, 128.5, 127.3, 126.5, 123.9, 114.7, 110.4, 40.1, 17.4.
HRMS(ESI)m/z[M+H−OMs]、C1210Sの計算値:215.0643。実測値:215.0644。
【0165】
実施例8(本発明による)
ケトンエノレートのモノアリール化
XPhos錯体である(π−アリル)Pd(XPhos)Cl、(π−クロチル)Pd(XPhos)Cl及び(π−シンナミル)Pd(XPhos)Clを、ケトンエノレートのモノアリール化において評価した。これらの錯体はすべて、4−クロロアニソールによるアセトフェノンのα−アリール化において、1時間後の急速変換(≧95%)を促進した(図6を参照)。変換率はG3 XPhosをプレ触媒として用いた場合に著しく低く、1時間の時点で変換率34%が観察され、高い変換率(93%)に達するには4時間を必要とした。カルバゾールは、アミノ化におけるより少ない程度ではあるが、この反応の速度を遅らせることが示されている。1mol%のカルバゾールを添加した(π−アリル)Pd(XPhos)Clにより触媒される反応の動態プロファイルは、G3 XPhosにより触媒される反応のものとほぼ一致した。
(π−アリル)Pd(XPhos)Clを使用するケトンエノレートのアリール化の4つの例は、この触媒の多用途性を際立たせている:
反応条件:ArCl(1.0mmol)、ケトン(2.0mmol)、KOt−Bu(2.0mmol)、(π−アリル)Pd(XPhos)Cl(1mol%)、トルエン(4mL)、60℃、2−4時間。[a]2mol%の(π−アリル)Pd(XPhos)Clを使用。
【0166】
ケトンエノレートのアリール化反応のための一般的な手順
テフロンコートした磁気撹拌子を備え、オーブン乾燥したシュレンク管に、(π−アリル)Pd(XPhos)Cl(示されている通り1−2mol%)、塩化アリール(固体の場合1.00mmol)及びKOt−Bu(示されている通り2.00−2.40mmol)を入れる。管にゴムセプタムで蓋をし、排気し、窒素で再充填した。この排気/再充填サイクルをさらに2回繰り返す。ドデカン(GC標準、0.20mmol)、ケトン(1.20mmol)、塩化アリール(液体の場合1.00mmol)及び無水トルエン(4mL)をシリンジにより順次添加する。管を、予熱した油浴(60℃)に入れ、示されている時間撹拌する。次いで、管を油浴から取り出し、室温に冷却する。飽和NHCl(4mL)及びEtOAc(10mL)を添加し、水性相をEtOAc(3×10mL)で抽出する。有機抽出物を合わせ、無水MgSOで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮する。残留物を、Teledyne ISCO CombiFlashRfを使用するシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかける。
【0167】
2−(4−メトキシフェニル)−1−フェニルエタン−1−オン
一般的な手順に従って、4−クロロアニソール(123μL、1.00mmol)、アセトフェノン(140μL、1.20mmol)、KOtBu(224mg、2.00mmol)、(π−アリル)Pd(XPhos)Cl(6.6mg、0.01mmol)及び4mLのトルエンの混合物を、60℃で2時間撹拌する。粗物質を、溶離液として0−4%EtOAc/ヘキサンの勾配を用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて、210mg(0.93mmol、93%)の2−(4−メトキシフェニル)−1−フェニルエタン−1−オンを無色固体として得る。分光データは、以前に報告されたもの(M. R. Biscoe, S. L. Buchwald, Org. Lett. 2009, 11, 1773)と一致する。
【0168】
1−(ピリジン−3−イル)−2−(キノリン−6−イル)エタン−1−オン
一般的な手順に従って、6−クロロキノリン(164mg、1.00mmol)、3−アセチルピリジン(132μL、1.20mmol)、KOtBu(269mg、2.40mmol)、(π−アリル)Pd(XPhos)Cl(6.6mg、0.01mmol)及び4mLのトルエンの混合物を、60℃で4時間撹拌する。粗物質を、溶離液としてEtOAcを用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて、236mg(0.95mmol、95%)の1−(ピリジン−3−イル)−2−(キノリン−6−イル)エタン−1−オンを淡黄色固体として得る。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 9.29 (s, 1H), 8.90 (d, J = 3.5 Hz, 1H), 8.88 (d, J = 3.5 Hz, 1H), 8.29 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 8.17 - 8.02 (m, 2H), 7.72 (s, 1H), 7.65 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.47 - 7.31 (m, 2H), 4.50 (s, 2H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ): 196.1, 153.8, 150.6, 150.1, 147.6, 135.9, 135.8, 132.1, 131.8, 131.2, 130.1, 128.4, 128.2, 123.9, 121.5, 45.7.
HRMS(ESI)m/z[M+H]、C1613Oの計算値:249.1028。実測値:249.1020。
【0169】
1−(フラン−2−イル)−2−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オン
一般的な手順に従って、4−クロロベンゾトリフルオリド(133μL、1.00mmol)、2−アセチルフラン(132μL、1.20mmol)、KOtBu(269mg、2.40mmol)、(π−アリル)Pd(XPhos)Cl(13.2mg、0.02mmol)及び4mLのトルエンの混合物を、60℃で4時間撹拌する。粗物質を、溶離液としてEtOAcを用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて、236mg(0.95mmol、95%)の1−(フラン−2−イル)−2−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)エタン−1−オンを淡黄色固体として得る。分光データは、以前に報告されたもの(T. Miura, S. Fujioka, N. Takemura, H. Iwasaki, M. Ozeki, N. Kojima, M. Yamashita, Synthesis, 2014, 46, 496)と一致する。
【0170】
1−(ナフタレン−1−イル)−2−(ピリジン−3−イル)エタン−1−オン
一般的な手順に従って、3−クロロピリジン(95μL、1.00mmol)、1−アセトナフタレン(182μL、1.20mmol)、KOtBu(269mg、2.40mmol)、(π−アリル)Pd(XPhos)Cl(13.2mg、0.02mmol)及び4mLのトルエンの混合物を、60℃で4時間撹拌する。粗物質を、溶離液として50%EtOAc/ヘキサンを用いるシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて、237mg(0.96mmol、96%)の1−(ナフタレン−1−イル)−2−(ピリジン−3−イル)エタン−1−オンを黄色油状物として得る。
1H NMR (400 MHz, CDCl3, δ): 8.61 - 8.49 (m, 3H), 8.01 - 7.94 (m, 2H), 7.89 (dd, J = 1.6 Hz, 7.9 Hz, 1H), 7.63 (dt, J = 1.8 Hz, 7.8 Hz, 1H), 7.60 - 7.48 (m, 3H), 7.29 - 7.23 (m, 1H), 4.38 (s, 2H).
13C NMR (100 MHz, CDCl3, δ): 200.3, 150.8, 148.5, 137.2, 135.0, 134.1, 133.4, 130.4 (2ピーク), 128.6, 128.3, 128.2, 126.8, 125.8, 124.4, 123.6, 45.7.
HRMS(ESI)m/z[M+H]、C1714NOの計算値:248.1075。実測値:248.1075。
【0171】
実施例9(本発明による)
(π−アリル)Pd(BrettPhos)Clを使用するトリフルオロメチル化
窒素充填したグローブボックス内で、テフロンコートした磁気撹拌子を備えた2ドラムの反応バイアルに、(アリル)Pd(BrettPhos)Cl(21.6mg、30μmol)、BrettPhos(16.1mg、30μmol)及びフッ化カリウム(58.1mg、1.0mmol)を入れる。ジオキサン(1.65mL)、トリエチル(トリフルオロメチル)シラン(188μL、1.0mmol)及び1−nブチル−4−クロロベンゼン(84.3μL、0.50mmol)をシリンジにより添加する。反応バイアルは、オープントップキャップ及びPTFE表面を有するシリコーンセプタムで蓋をし、グローブボックスから取り出し、予熱したアルミニウムブロック(120℃)上に置き、16時間激しく撹拌する。室温に冷却した後、バイアルを大気に開放し、アリコート(〜200μL)を取り出し、セライトのプラグに通過させ、酢酸エチル(2mL)で溶出し、GCにより分析する。ベンゾトリフルオリド生成物は、GC収率84%で観察される(較正せず)。
この実験は、プレ触媒(π−アリル)Pd(BrettPhos)Clが4−n−ブチル−1−クロロベンゼンのトリフルオロメチル化において有能であることを実証している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】