特表2017-526639(P2017-526639A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-526639ダビガトランエテキシラート中間体の製造方法及び中間体化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-526639(P2017-526639A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】ダビガトランエテキシラート中間体の製造方法及び中間体化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/75 20060101AFI20170818BHJP
【FI】
   C07D213/75CSP
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-501166(P2017-501166)
(86)(22)【出願日】2014年7月3日
(85)【翻訳文提出日】2017年1月4日
(86)【国際出願番号】CN2014081539
(87)【国際公開番号】WO2016000230
(87)【国際公開日】20160107
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】513237320
【氏名又は名称】シャンハイ インスティテュート オブ ファーマシューティカル インダストリー
(71)【出願人】
【識別番号】517004894
【氏名又は名称】チャイナ ステート インスティテュート オブ ファーマシューティカル インダストリー
(71)【出願人】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】正大天晴薬業集団股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHIA TAI TIANQING PHARMACEUTICAL GROUP CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100163418
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 元
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グォ, ヤージュン
(72)【発明者】
【氏名】シャン, ハンビン
(72)【発明者】
【氏名】ヂュ, シュエン
(72)【発明者】
【氏名】ユエン, ヂェドン
(72)【発明者】
【氏名】ユー, シォン
(72)【発明者】
【氏名】グォ, モン
(72)【発明者】
【氏名】フー, ミントン
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ドゥヂォン
【テーマコード(参考)】
4C055
【Fターム(参考)】
4C055AA01
4C055BA02
4C055BA53
4C055BB04
4C055BB07
4C055BB10
4C055CA01
4C055DA01
4C055FA15
4C055FA32
4C055FA37
(57)【要約】
【課題】ダビガトランエテキシラート中間体の製造方法及び中間体化合物の提供。
【解決手段】本発明は、ダビガトランエテキシラート中間体の製造方法及び中間体化合物を公開する。当該ダビガトランエテキシラート中間体4の製造方法は、化合物3とメチルアミンのC1〜C3アルキルアルコール溶液とを有機溶媒に反応させる工程を含む。ただし、X=塩素、臭素又はヨウ素。本発明は、中間体化合物3及びその製造方法をさらに公開する。本発明のダビガトランエテキシラート中間体の製造方法は、簡単で、操作が容易であり、収率が高く、精製しやすく、工業的生産に適合する。
[化1]

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン性有機溶媒又は非プロトン性有機溶媒である有機溶媒に、化合物3とメチルアミンのC1〜C3アルキルアルコール溶液とを反応させる工程を含むダビガトランエテキシラート中間体4の製造方法。
【化1】
(ただし、X=塩素、臭素又はヨウ素である。)
【請求項2】
前記プロトン性有機溶媒はメタノールおよび/またはエタノールであり、前記非プロトン性有機溶媒は非プロトン性極性有機溶媒であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記非プロトン性有機溶媒は、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドンからの一種又は複数種であることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記メチルアミンのC1〜C3アルキルアルコール溶液は、メチルアミンのメタノール溶液、メチルアミンのエタノール溶液及びメチルアミンのプロパノール溶液からの一種又は複数種であり、前記メチルアミンのC1〜C3アルキルアルコール溶液の質量分率は27〜32%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記化合物3と前記メチルアミンのモル比は、1:1.98〜1:2.35であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記メチルアミンのC1〜C3アルキルアルコール溶液の添加としては、メチルアミンのC1〜C3アルキルアルコール溶液を、化合物3と有機溶媒との混合物に滴下することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記有機溶媒がプロトン性有機溶媒である場合、前記反応の温度は30〜40℃であり、前記有機溶媒が非プロトン性有機溶媒である場合、前記反応の温度は60〜90℃であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記有機溶媒が非プロトン性有機溶媒である場合、前記反応の温度は70℃であることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
有機塩基の存在下で、化合物2と3-(ピリジン-2-イル-アミノ)プロピオン酸エチルとをジクロロメタンおよび/またはテトラヒドロフランにアシル化反応させる方法によって、前記化合物3が得られて、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法によってダビガトランエテキシラート中間体4を調製することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【化2】
(ただし、X=塩素、臭素又はヨウ素である。)
【請求項10】
前記有機塩基は、トリエチルアミンおよび/またはN,N-ジイソプロピルエチルアミンであることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記化合物2と前記3-(ピリジン-2-イル-アミノ)プロピオン酸エチルとのモル比は1:1であり、前記有機塩基と化合物2とのモル比は1:1〜2:1であり、前記アシル化反応の温度は0〜30℃であることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ジクロロメタンおよび/またはテトラヒドロフランと化合物2との体積質量比は、4〜7ml/gであることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記化合物2の添加としては、化合物2とジクロロメタンおよび/またはテトラヒドロフランとの混合物を、3-(ピリジン-2-イル-アミノ)プロピオン酸エチルと有機塩基との混合物に滴下することを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
下記のような構造である化合物3。
【化3】
(ただし、X=塩素、臭素又はヨウ素である。)
【請求項15】
有機塩基の存在下で、化合物2と3-(ピリジン-2-イル-アミノ)プロピオン酸エチルとをジクロロメタンおよび/またはテトラヒドロフランにアシル化反応させる工程を含む製造方法であって、反応条件は、請求項9〜13のいずれか1項に記載するようにすることを特徴とする請求項14に記載の化合物3の製造方法。
【化4】
(ただし、X=塩素、臭素又はヨウ素である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬合成の分野に関し、特に、ダビガトランエテキシラート中間体の製造方法及び中間体化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ダビガトランエテキシラートとは、英語名:Dabigatran Etexilateであって、化学名:3-[[[2-[[4-[[[(ヘキシルオキシ)カルボニル]アミノ]イミノメチル]フェニル]アミノ]トルエン]1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-5-イル]カルボニル(ピリジン-2-イル)アミノ]プロピオン酸エチルであり、その化学構造式は下記の式1−1に示す。
【0003】
【化1】
【0004】
ダビガトランエテキシラートは、ドイツのBoehringerlngelheim(ベーリンガーインゲルハイム)社の開発・販売した新規な経口抗凝固薬であって、非ペプチドトロンビン阻害剤に属するものである。当該薬物は、2008年4月に初めにドイツ及びイギリスで市販され、2010年にFDAで認可されたものである。当該薬物は、経口可能で、臨床的な検査が必要なくなり、薬物との相互作用が少ないなどの利点がある。
【0005】
ダビガトランエテキシラートの合成については、特許文献1〜6及び非特許文献1に記載されており(本願において上記の文献の全文を参照として引用する)、これらの文献には、いずれも合成ルートにおけるキー中間体として3-[4-メチルアミノ-3-ニトロベンゾイル)(ピリジン-2-イル)アミノ]プロピオン酸エチル(4)を用いる。非特許文献1を例とすると、式1-2のように、3-[(4-メチルアミノ-3-ニトロベンゾイル)(ピリジン-2-イル)アミノ]プロピオン酸エチル(4)を出発原料として、還元ニトロ化、縮合閉環、シアノ基のアンモノリシス、エステル化を経て、ダビガトランエテキシラートを調製した。
【0006】
【化2】
【0007】
従来、3-[(4-メチルアミノ-3-ニトロベンゾイル)(ピリジン-2-イル)アミノ]プロピオン酸エチル(4)の製造方法は、非特許文献1を例として、4-メチルアミノ-3-ニトロ安息香酸と塩化チオニルとを反応させて4-メチルアミノ-3-ニトロベンゾイルクロリド塩酸塩を調製した後、3-(ピリジン-2-イル-アミノ)プロピオン酸エチルとアシル化反応させて、3-[(4-メチルアミノ-3-ニトロベンゾイル)(ピリジン-2-イル)アミノ]プロピオン酸エチル(4)が調製された。両ステップ後の収率が55%である。式1−3のとおりである。
【0008】
【化3】
【0009】
従来の3-[(4-メチルアミノ-3-ニトロベンゾイル)(ピリジン-2-イル)アミノ]プロピオン酸エチル(4)の合成ルートを検討したところ、アシル化反応において4-メチルアミノ-3-ニトロベンゾイルクロリド塩酸塩がトリエチルアミンにて遊離された後、自体と縮合反応しやすく、副反応物の生成が避けられなくなることにより、収率が高くなくなる。さらに、アシル化反応のキーポイントとしては、4-メチルアミノ-3-ニトロベンゾイルクロリド塩酸塩のテトラヒドロフラン溶液の滴下速度であり、しかし、当該化合物はテトラヒドロフランに極めて溶けにくく、溶解させるように多くのテトラヒドロフランが必要であり、工業的生産に不利となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】中国特許第1861596号明細書
【特許文献2】国際公開第2007/071743号
【特許文献3】国際公開第2008/095928号
【特許文献4】国際公開第2009/111997号
【特許文献5】国際公開第2011/061080号
【特許文献6】中国特許第102633713号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】J.Med.Chem.2002,45,1757〜1766
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする技術課題は、従来のダビガトランエテキシラート中間体の調製の高難度、多くの副反応、低収率、さらに精製しにくいという不具合を解決し、ダビガトランエテキシラート中間体の製造方法及び中間体化合物の提供を目的とする。本発明のダビガトランエテキシラート中間体の製造方法は、簡単で、操作が容易であり、収率が高く、精製しやすく、工業的生産に適合する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、下記のような技術構成によって上記の課題を解決した。
【0014】
本発明は、プロトン性有機溶媒又は非プロトン性有機溶媒である有機溶媒に、化合物3とメチルアミンのC1〜C3アルキルアルコール溶液とを反応させる工程を含むダビガトランエテキシラート中間体4の製造方法を提供する。
【0015】
【化4】
【0016】
(ただし、X=塩素、臭素又はヨウ素である。)
【0017】
ここで、前記プロトン性有機溶媒はメタノールおよび/またはエタノールであることが好ましく、エタノールであることがより好ましい。前記プロトン性有機溶媒と化合物3との体積質量比は3〜5ml/gであることが好ましい。前記非プロトン性有機溶媒は非プロトン性極性有機溶媒であることが好ましく、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンからの一種又は複数種であることがより好ましい。前記非プロトン性有機溶媒と化合物3との体積質量比は2.5〜5.0ml/gであることが好ましい。
【0018】
ここで、前記Xは塩素であることが好ましい。
【0019】
ここで、前記メチルアミンのC1〜C3アルキルアルコール溶液は、メチルアミンのメタノール溶液、メチルアミンのエタノール溶液及びメチルアミンのプロパノール溶液からの一種又は複数種であることが好ましく、メチルアミンのエタノール溶液であることがより好ましい。
【0020】
ここで、前記メチルアミンのC1〜C3アルキルアルコール溶液の質量分率は27〜32%であることが好ましい。
【0021】
ここで、前記化合物3と前記メチルアミンのモル比は1:1.98〜1:2.35であることが好ましい。
【0022】
ここで、前記メチルアミンのC1〜C3アルキルアルコール溶液の添加としては、メチルアミンのC1〜C3アルキルアルコール溶液を、化合物3と有機溶媒との混合物に滴下するのが好ましい。
【0023】
ここで、前記有機溶媒がプロトン性有機溶媒である場合、前記反応の温度は30〜40℃であることが好ましい。前記有機溶媒が非プロトン性有機溶媒である場合、前記反応の温度は、60〜90℃であることが好ましく、70℃であることがより好ましい。
【0024】
ここで、前記反応のプロセスについては、本分野の一般的な手段(例えば、TLC又はHPLC)によって監視してもよく、通常に化合物3が無くなる時点を反応の終了点とするが、前記反応の時間は0.5〜5時間であることが好ましい。
【0025】
ここで、前記反応終了後、さらに後処理で化合物4をさらに精製してもよい。前記後処理としては、本分野の一般的な後処理であってもいい。前記有機溶媒がプロトン性有機溶媒である場合、好ましくは、反応液を蒸発乾固させ、カラムクロマトグラフィーを通過する工程を含む。前記有機溶媒が非プロトン性有機溶媒である場合、好ましくは、酢酸エチルを入れて、水で洗浄し、乾燥ろ過させて、ろ液を蒸発乾固させる工程を含む。前記酢酸エチルと化合物3との体積質量比は、1〜5ml/gであることが好ましく、前記乾燥は、無水硫酸ナトリウムで乾燥することが好ましい。
【0026】
ここで、前記化合物3は、有機塩基の存在下で、ジクロロメタンおよび/またはテトラヒドロフランに、化合物2と3-(ピリジン-2-イル-アミノ)プロピオン酸エチルとをアシル化反応させるという方法によって調製される。ただし、X=塩素、臭素又はヨウ素である。
【0027】
【化5】
【0028】
ここで、前記有機塩基は、本分野におけるこのような反応にアルカリ性環境を付与できる汎用な有機塩基であってもよく、トリエチルアミンおよび/またはN,N-ジイソプロピルエチルアミンであることが好ましい。
【0029】
ここで、前記化合物2と前記3-(ピリジン-2-イル-アミノ)プロピオン酸エチルとのモル比は1:1であることが好ましい。
【0030】
ここで、前記アシル化反応の温度は、本分野の一般的なアシル化反応の温度であってもよく、0〜30℃であることが好ましい。
【0031】
ここで、前記ジクロロメタンおよび/またはテトラヒドロフランと化合物2との体積質量比は4〜7ml/gであることが好ましい。
【0032】
ここで、前記有機塩基と化合物2とのモル比は1:1〜2:1であることが好ましい。
【0033】
ここで、前記化合物2の添加としては、化合物2とジクロロメタンおよび/またはテトラヒドロフランとの混合物を、3-(ピリジン-2-イル-アミノ)プロピオン酸エチルと有機塩基との混合物に添加することが好ましく、化合物2とジクロロメタンおよび/またはテトラヒドロフランとの混合物を、3-(ピリジン-2-イル-アミノ)プロピオン酸エチルと有機塩基との混合物に滴下することがより好ましい。
【0034】
ここで、前記アシル化反応のプロセスについては、本分野の一般的な手段(例えば、TLC又はHPLC)によって監視してもよく、通常に3-(ピリジン-2-イル-アミノ)プロピオン酸エチルが無くなる時点を反応の終了点とするが、前記反応の時間は0.5〜2時間であることが好ましい。
【0035】
ここで、前記アシル化反応終了後、さらに後処理で化合物3をさらに精製してもよい。前記後処理としては、本分野の一般的な後処理であってもいいが、反応液を水で洗浄し、乾燥ろ過させて、ろ液を蒸発乾固させ、カラムクロマトグラフィーを通過する工程を含むことが好ましい。
【0036】
本発明は、下記のような構造である化合物3をさらに提供する。
【0037】
【化6】
【0038】
(ただし、X=塩素、臭素又はヨウ素である。)
【0039】
当該化合物3は、ダビガトランエテキシラート中間体4の調製に用いられる。
【0040】
本発明は、有機塩基の存在下で、ジクロロメタンおよび/またはテトラヒドロフランに、化合物2と3-(ピリジン-2-イル-アミノ)プロピオン酸エチルとをアシル化反応させる工程を含む前記化合物3の製造方法をさらに提供する。ただし、X=塩素、臭素又はヨウ素である。
【0041】
【化7】
【0042】
ここで、前記有機塩基は、本分野におけるこのような反応にアルカリ性環境を付与できる汎用な有機塩基であってもいいが、トリエチルアミンおよび/またはN,N-ジイソプロピルエチルアミンであることが好ましい。
【0043】
ここで、前記化合物2と前記3-(ピリジン-2-イル-アミノ)プロピオン酸エチルとのモル比は1:1であることが好ましい。
【0044】
ここで、前記アシル化反応の温度は、本分野の一般的なアシル化反応の温度であってもいいが、0〜30℃であることが好ましい。
【0045】
ここで、前記ジクロロメタンおよび/またはテトラヒドロフランと化合物2との体積質量比は4〜7ml/gであることが好ましい。
【0046】
ここで、前記有機塩基と化合物2とのモル比は1:1〜2:1であることが好ましい。
【0047】
ここで、前記化合物2の添加としては、化合物2とジクロロメタンおよび/またはテトラヒドロフランとの混合物を、3-(ピリジン-2-イル-アミノ)プロピオン酸エチルと有機塩基との混合物に添加することが好ましく、化合物2とジクロロメタンおよび/またはテトラヒドロフランとの混合物を、3-(ピリジン-2-イル-アミノ)プロピオン酸エチルと有機塩基との混合物に滴下することがより好ましい。
【0048】
ここで、前記アシル化反応のプロセスについては、本分野の一般的な手段(例えば、TLC又はHPLC)によって監視してもよく、通常は3-(ピリジン-2-イル-アミノ)プロピオン酸エチルが無くなる時点を反応の終了点とするが、前記反応の時間は0.5〜2時間であることが好ましい。
【0049】
ここで、前記アシル化反応終了後、さらに後処理で化合物3をさらに精製してもよい。前記後処理としては、本分野の一般的な後処理であってもいいが、反応液を水で洗浄し、乾燥ろ過させて、ろ液を蒸発乾固させ、カラムクロマトグラフィーを通過する工程を含むことが好ましい。
【0050】
ここで、前記化合物2は、N,N-ジメチルホルムアミドとトルエンとの混合溶媒に化合物1と塩化チオニルとを反応させる方法によって調製される。ただし、Χ=塩素、臭素又はヨウ素である。当該方法は、文献J.Med.Chem.1989,32,409〜417を参照すればよい(本願は、当該文献の全文を参照として引用する)。
【0051】
【化8】
【0052】
本分野の常識に応じて、上記の好ましい態様を任意に組み合わせれば、本発明の各々好ましい実施例が得られる。
【0053】
本発明に用いられる試薬及び原料は、いずれも市販なものとして得られる。
【0054】
本発明の積極的な進歩効果は、本発明のダビガトランエテキシラート中間体の製造方法が簡単で、操作が容易であり、収率が高く、精製しやすく、工業的生産に適合することである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、実施例によって本願発明をさらに説明するが、本発明は当該実施例の範囲に限定されない。下記の実施例において、具体的な条件を付いていない実験方法は、一般的な方法及び条件に従って、又は製品仕様書に従って選択すればよい。
【0056】
実施例1
3-ニトロ-4-クロロ安息香酸クロリド(化合物2)の合成
【0057】
【化9】
【0058】
3-ニトロ-4-クロロ安息香酸(10.0g、49.6mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(0.3ml、3.6mmol)及びトルエン(50ml)を反応釜に入れて、70℃に加熱し、塩化チオニル(4.3ml、59.5mmol)を入れて、続いて30分加熱還流させて、減圧蒸発で塩化チオニル及び溶媒を留出させて、淡黄色のオイル状物(化合物2)が得られ、ジクロロメタン(60ml)を入れて溶解させ、直接に次の反応に供する。
【0059】
実施例2
3-[(3-ニトロ-4-クロロベンゾイル)(ピリジン-2-イル)アミノ]プロピオン酸エチル(化合物3)の合成
【0060】
【化10】
【0061】
3-(ピリジン-2-イル-アミノ)プロピオン酸エチル(9.6g、49.6mmol)、トリエチルアミン(13.8ml、99.2mmol)及びジクロロメタン(20ml)を反応釜に入れて、実施例1で得られた化合物2のジクロロメタン溶液を滴下した。添加後、室温で1時間撹拌した。反応液は、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後ろ過させ、ろ液を蒸発乾固し、残りの固体をカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物3(16.3g、収率87.0%)が得られた。mp63〜65℃;ESI-MS(m/z):378[M+H]+、400[M+Na]+1H-NMR(DMSO-d6、400MHz)δ:1.19(t,3H)、2.70(t,2H)、3.95(q,2H)、4.20(t,2H)、7.22(d,2H)、7.25(t,1H)、7.44(dd,1H)、7.66(d,1H)、7.75(m,1H)、7.92(d,1H)、8.35(dd,1H)。HPLC純度が98.5%である。
【0062】
実施例3
3-[(4-メチルアミノ-3-ニトロベンゾイル)(ピリジン-2-イル)アミノ]プロピオン酸エチル(化合物4)の合成
【0063】
【化11】
【0064】
化合物3(16.3g、47.15mmol)及びエタノール(60.0ml)を反応釜に入れて、40℃に昇温し、27.0%〜32.0%メチルアミンのエタノール溶液(16.3ml)を緩やかに滴下し、2時間攪拌した。反応液を蒸発乾固し、残りの固体をカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物4(13.6g、収率84.6%)が得られた。mp86〜88℃;1H-NMR(DMSO-d6、400MHz)δ:1.11(t,3H)、2.66(t,2H)、2.91(t,3H)、3.96(q,2H)、4.18(t,2H)、6.83(d,1H)、7.08(d,1H)、7.21(m,1H)、7.32(dd,1H)、7.69(m,1H)、7.93(d,1H)、8.36(d,1H)、8.43(dd,1H)。HPLC純度が97.9%である。
【0065】
実施例4
3-ニトロ-4-クロロ安息香酸クロリド(化合物2)の合成
【0066】
【化12】
【0067】
3-ニトロ-4-クロロ安息香酸(1.0g、4.96mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(0.03ml、0.36mmol)及びトルエン(8ml)を反応釜に入れて、70℃に加熱し、塩化チオニル(0.43ml、5.95mmol)を入れて、続いて30分加熱還流させて、減圧蒸発で塩化チオニル及び溶媒を留出させて、淡黄色のオイル状物(化合物2)が得られ、テトラヒドロフラン(6ml)を入れて溶解させ、直接に次の反応に供する。
【0068】
実施例5
3-[(3-ニトロ-4-クロロベンゾイル)(ピリジン-2-イル)アミノ]プロピオン酸エチル(化合物3)の合成
【0069】
【化13】
【0070】
3-(ピリジン-2-イル-アミノ)プロピオン酸エチル(0.96g、4.96mmol)、トリエチルアミン(1.38ml、9.92mmol)及びテトラヒドロフラン(4ml)を反応釜に入れて、実施例4で得られた化合物2のテトラヒドロフラン溶液を滴下した。添加後、室温で1時間撹拌した。反応液は、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後ろ過させ、ろ液を蒸発乾固し、残りの固体をカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物3(1.59g、収率84.9%)が得られた。mp63〜65℃;ESI-MS(m/z):378[M+H]+、400[M+Na]+1H-NMR(DMSO-d6、400MHz)δ:1.19(t,3H)、2.70(t,2H)、3.95(q,2H)、4.20(t,2H)、7.22(d,2H)、7.25(t,1H)、7.44(dd,1H)、7.66(d,1H)、7.75(m,1H)、7.92(d,1H)、8.35(dd,1H)。HPLC純度が98.9%である。
【0071】
実施例6
3-ニトロ-4-クロロ安息香酸クロリド(化合物2)の合成
【0072】
【化14】
【0073】
3-ニトロ-4-クロロ安息香酸(1.0g、4.96mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(0.03ml、0.36mmol)及びトルエン(8ml)を反応釜に入れて、70℃に加熱し、塩化チオニル(0.43ml、5.95mmol)を入れて、続いて30分加熱還流させて、減圧蒸発で塩化チオニル及び溶媒を留出させて、淡黄色のオイル状物(化合物2)が得られ、テトラヒドロフラン(6ml)を入れて溶解させ、直接に次の反応に供する。
【0074】
実施例7
3-[(3-ニトロ-4-クロロベンゾイル)(ピリジン-2-イル)アミノ]プロピオン酸エチル(化合物3)の合成
【0075】
【化15】
【0076】
3-(ピリジン-2-イル-アミノ)プロピオン酸エチル(0.96g、4.96mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.64ml、9.92mmol)及びテトラヒドロフラン(4ml)を反応釜に入れて、実施例6で得られた化合物2のテトラヒドロフラン溶液を滴下した。添加後、室温で1時間撹拌した。反応液は、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後ろ過させ、ろ液を蒸発乾固し、残りの固体をカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物3(1.61g、収率85.92%)が得られた。mp63〜65℃;ESI-MS(m/z):378[M+H]+、400[M+Na]+1H-NMR(DMSO-d6、400MHz)δ:1.19(t,3H)、2.70(t,2H)、3.95(q,2H)、4.20(t,2H)、7.22(d,2H)、7.25(t,1H)、7.44(dd,1H)、7.66(d,1H)、7.75(m,1H)、7.92(d,1H)、8.35(dd,1H)。HPLC純度が98.7%である。
【0077】
実施例8
化合物3(21.2g、56.12mmol)及びジメチルスルホキシド(77.0ml)を反応釜に入れて、70℃に昇温し、27.0%〜32.0%メチルアミンのエタノール溶液(21.0ml)を緩やかに滴下し、30分攪拌した。反応液に酢酸エチル(39.0ml)を入れて、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後ろ過させ、ろ液を蒸発乾固して、化合物4(20.6g、収率98.56%)が得られた。mp86〜88℃1H-NMR(DMSO-d6,400MHz)δ:1.11(t,3H)、2.66(t,2H)、2.91(t,3H)、3.96(q,2H)、4.18(t,2H)、6.83(d,1H)、7.08(d,1H)、7.21(m,1H)、7.32(dd,1H)、7.69(m,1H)、7.93(d,1H)、8.36(d,1H)、8.43(dd,1H)。HPLC純度が98.3%である。
【0078】
実施例9
化合物3(5.0g、13.24mmol)及びN,N-ジメチルホルムアミド(18.0ml)を反応釜に入れて、70℃に昇温し、27.0%〜32.0%メチルアミンのエタノール溶液(5.0ml)を緩やかに滴下し、30分攪拌した。反応液に酢酸エチル(10.0ml)を入れて、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後ろ過させ、ろ液を蒸発乾固して、化合物4(4.8g、収率97.36%)が得られた。mp86〜88℃1H-NMR(DMSO-d6、400MHz)δ:1.11(t,3H)、2.66(t,2H)、2.91(t,3H)、3.96(q,2H)、4.18(t,2H)、6.83(d,1H)、7.08(d,1H)、7.21(m,1H)、7.32(dd,1H)、7.69(m,1H)、7.93(d,1H)、8.36(d,1H)、8.43(dd,1H)。HPLC純度が98.9%である。
【0079】
実施例10
化合物3(5.0g、13.24mmol)及びN,N-ジメチルアセトアミド(18.0ml)を反応釜に入れて、70℃に昇温し、27.0%〜32.0%メチルアミンのエタノール溶液(5.0ml)を緩やかに滴下し、30分攪拌した。反応液に酢酸エチル(10.0ml)を入れて、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後ろ過させ、ろ液を蒸発乾固して、化合物4(4.9g、収率99.39%)が得られた。mp86〜88℃1H-NMR(DMSO-d6、400MHz)δ:1.11(t,3H)、2.66(t,2H)、2.91(t,3H)、3.96(q,2H)、4.18(t,2H)、6.83(d,1H)、7.08(d,1H)、7.21(m,1H)、7.32(dd,1H)、7.69(m,1H)、7.93(d,1H)、8.36(d,1H)、8.43(dd,1H)。HPLC純度が98.0%である。
【0080】
実施例11
化合物3(3.5g、9.40mmol)及びN-メチルピロリドン(12.6ml)を反応釜に入れて、70℃に昇温し、27.0%〜32.0%メチルアミンのエタノール溶液(3.5ml)を緩やかに滴下し、30分攪拌した。反応液に酢酸エチル(7.0ml)を入れて、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後ろ過させ、ろ液を蒸発乾固して、化合物4(3.4g、収率98.55%)が得られた。mp86〜88℃1H-NMR(DMSO-d6、400MHz)δ:1.11(t,3H)、2.66(t,2H)、2.91(t,3H)、3.96(q,2H)、4.18(t,2H)、6.83(d,1H)、7.08(d,1H)、7.21(m,1H)、7.32(dd,1H)、7.69(m,1H)、7.93(d,1H)、8.36(d,1H)、8.43(dd,1H)。HPLC純度が98.8%である。
【0081】
実施例12
化合物3(5.0g、13.24mmol)及びN,N-ジメチルアセトアミド(18.0ml)を反応釜に入れて、90℃に昇温し、27.0%〜32.0%メチルアミンのエタノール溶液(5.0ml)を緩やかに滴下し、30分攪拌した。反応液に酢酸エチル(10.0ml)を入れて、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後ろ過させ、ろ液を蒸発乾固して、化合物4(4.8g、収率97.36%)が得られた。mp86〜88℃1H-NMR(DMSO-d6、400MHz)δ:1.11(t,3H)、2.66(t,2H)、2.91(t,3H)、3.96(q,2H)、4.18(t,2H)、6.83(d,1H)、7.08(d,1H)、7.21(m,1H)、7.32(dd,1H)、7.69(m,1H)、7.93(d,1H)、8.36(d,1H)、8.43(dd,1H)。HPLC純度が98.4%である。
【0082】
実施例13
化合物3(3.5g、9.40mmol)及びN-メチルピロリドン(12.6ml)を反応釜に入れて、60℃に昇温し、27.0%〜32.0%メチルアミンのエタノール溶液(3.5ml)を緩やかに滴下し、30分攪拌した。反応液に酢酸エチル(7.0ml)を入れて、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後ろ過させ、ろ液を蒸発乾固して、化合物4(3.4g、収率98.55%)が得られた。mp86〜88℃1H-NMR(DMSO-d6、400MHz)δ:1.11(t,3H)、2.66(t,2H)、2.91(t,3H)、3.96(q,2H)、4.18(t,2H)、6.83(d,1H)、7.08(d,1H)、7.21(m,1H)、7.32(dd,1H)、7.69(m,1H)、7.93(d,1H)、8.36(d,1H)、8.43(dd,1H)。HPLC純度が98.4%である。
【0083】
本発明を実施するための形態を説明したが、これらはいずれも例示したものであり、本発明の原理と実質を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって限定される。
【国際調査報告】