(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-526725(P2017-526725A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】核酸一本鎖環状ライブラリを構築するための方法および試薬
(51)【国際特許分類】
C40B 40/06 20060101AFI20170818BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20170818BHJP
C12Q 1/68 20060101ALN20170818BHJP
【FI】
C40B40/06ZNA
C12N15/00 A
C12Q1/68 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-514335(P2017-514335)
(86)(22)【出願日】2014年10月14日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月10日
(86)【国際出願番号】CN2014088543
(87)【国際公開番号】WO2016037394
(87)【国際公開日】20160317
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2014/086418
(32)【優先日】2014年9月12日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512096768
【氏名又は名称】ビージーアイ シェンチェン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コン、チュンユイ
(72)【発明者】
【氏名】クオ、ロンロン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ルオイン
(72)【発明者】
【氏名】ホー、リンユイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ウェンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チアン、ホイ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ43
4B063QR08
4B063QR20
4B063QR42
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4B063QS12
4B063QS25
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、核酸一本鎖環状ライブラリを構築するための方法および試薬を提供する。上記方法は、トランスポサーゼ包埋複合体を用いることにより核酸をランダムに切断して第1のリンカーを接続させ、差異の部分に第2のリンカーを接続させ、第1のPCR反応を実施し、その際、一方のプライマーの5'末端が第1のアフィニティタグを有し、その結果、得られた産物の両末端に異なるリンカー配列が接続され、上記産物を第2のアフィニティタグを有する固体ベクターと結合させ、アフィニティタグを有さない一本鎖を変性して分離し、上記一本鎖を環化する工程を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一本鎖環状核酸を含むライブラリを構築するための方法であって、
トランスポサーゼとトランスポサーゼ認識配列を含有する第1のアダプターとを含むトランスポサーゼ包埋複合体を用いて、二本鎖核酸サンプルをランダムに断片化することにより、各末端に前記第1のアダプターがライゲーションされた断片化二本鎖核酸を取得し、前記断片化二本鎖核酸において3’末端と前記第1のアダプターとの間には差異ができており、
反応系から前記トランスポサーゼを除去した後、前記断片化二本鎖核酸の前記差異の部分に、リガーゼを用いて第2のアダプターをライゲーションさせ、前記第2のアダプターの配列は前記第1のアダプターの配列とは異なり、
前記第1のアダプターを標的とするプライマーと前記第2のアダプターを標的とするプライマーとからなる第1のプライマー対を用いて第1のPCR反応を実施することにより、両末端に第1のアダプター配列および第2のアダプター配列がそれぞれライゲーションされた第1のpcr産物を取得し、前記第1のプライマー対のうち一方のプライマーが5’末端に第1のアフィニティマーカーを含み、
第2のアフィニティマーカーを有する固体担体に前記第1のpcr産物を接触させることにより、前記第1のアフィニティマーカーと前記第2のアフィニティマーカーとが結合し、
前記固体担体と結合した前記第1のpcr産物を変性させることにより、前記第1のアフィニティマーカーを含まない一本鎖核酸を単離し、
前記一本鎖核酸の両末端に結合できる一本鎖環化「架橋」配列を用いて前記一本鎖核酸を環化する
工程を有する方法。
【請求項2】
前記第1のPCR反応を実施する前に、前記第1のアダプターを標的とするプライマーと前記第2のアダプターを標的とするプライマーとからなる第2のプライマー対を用いて第2のPCR反応を実施することにより、両末端に前記第1のアダプター配列および前記第2のアダプター配列がそれぞれライゲーションされた第2のpcr産物を取得する工程をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のプライマー対のうち一方のプライマーが5’末端にサンプルタグ配列を含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のPCR反応で用いる、エクソン配列を含有する一本鎖核酸を、前記エクソン配列のプローブを用いて前記第2のpcr産物から捕獲する工程を、前記第2のPCR反応の後であって前記第1のPCR反応より前にさらに有し、前記エクソン配列の前記プローブは前記第1のアフィニティマーカーを含み、前記固体担体の前記第2のアフィニティマーカーと結合できる、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のpcr産物の一本鎖の各末端に位置するプライマー配列を、プライマー遮断配列を用いて遮断する工程を、前記エクソン配列を含有する前記一本鎖核酸を前記エクソン配列の前記プローブを用いて前記第2のpcr産物から捕獲する前にさらに有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のアフィニティマーカーはビオチンマーカーであり、前記第2のアフィニティマーカーはストレプトアビジンマーカーである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記トランスポサーゼの反応系からの除去は磁気ビーズ精製、カラム精製、または化学試薬処理によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記固体担体は磁気ビーズである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
トランスポサーゼとトランスポサーゼ認識配列を含有する第1のアダプターとを含むトランスポサーゼ包埋複合体を用いて、二本鎖核酸サンプルをランダムに断片化することにより、各末端に前記第1のアダプターがライゲーションされた断片化二本鎖核酸を取得し、前記断片化二本鎖核酸において3’末端と前記第1のアダプターとの間には差異ができており、
反応系から前記トランスポサーゼを除去した後、前記断片化二本鎖核酸の前記差異の部分に、リガーゼを用いて第2のアダプターをライゲーションさせ、前記第2のアダプターの配列は前記第1のアダプターの配列とは異なり、
前記第1のアダプターを標的とするプライマーと前記第2のアダプターを標的とするプライマーとからなる第2のプライマー対を用いて第2のPCR反応を実施することにより、両末端に第1のアダプター配列および第2のアダプター配列がそれぞれライゲーションされた第2のpcr産物を取得し、前記第2のプライマー対のうち一方のプライマーが5’末端にサンプルタグ配列を含有し、
前記第2のpcr産物の一本鎖の各末端に位置するプライマー配列を、プライマー遮断配列を用いて遮断し、
エクソン配列を含有する一本鎖核酸を、前記エクソン配列のプローブを用いて前記第2のpcr産物から捕獲し、前記プローブはビオチンマーカーを含み前記固体担体のストレプトアビジンマーカーと結合でき、
前記エクソン配列をそれぞれ含有する前記一本鎖核酸の両末端をそれぞれ標的とするプライマーからなる第1のプライマー対を用いて第1のPCR反応を実施することにより、両末端に異なるアダプター配列がそれぞれライゲーションされた第1のpcr産物を取得し、前記第1のプライマー対のうち一方のプライマーが5’末端に前記ビオチンマーカーを含み、
前記ストレプトアビジンマーカーを有する前記固体担体に前記第1のpcr産物を接触させることにより、前記ビオチンマーカーと前記ストレプトアビジンマーカーとが結合し、
前記固体担体と結合した前記第1のpcr産物を変性させることにより、前記ビオチンマーカーを含まない一本鎖核酸を単離し、
前記ビオチンマーカーを含まない前記一本鎖核酸の両末端に結合できる一本鎖環化「架橋」配列を用いて、前記ビオチンマーカーを含まない前記一本鎖核酸を環化する
工程を有する方法。
【請求項10】
一本鎖環状核酸を含むライブラリを構築するための試薬であって、
トランスポサーゼとトランスポサーゼ認識配列を含有する第1のアダプターとからなるトランスポサーゼ包埋複合体であって、前記トランスポサーゼ包埋複合体は、二本鎖核酸サンプルをランダムに断片化して各末端に前記第1のアダプターがライゲーションされた断片化二本鎖核酸を取得し、前記断片化二本鎖核酸において3’末端と前記第1のアダプターとの間に差異をつくるのに好適な、前記トランスポサーゼ包埋複合体、
第2のアダプターおよびリガーゼを含む成分であって、前記断片化二本鎖核酸の前記差異の部分に、リガーゼを用いて前記第2のアダプターをライゲーションさせるのに好適な、前記成分、
第1のPCR反応で用いる第1のプライマー対であって、前記第1のプライマー対は前記第1のアダプターを標的とするプライマーと前記第2のアダプターを標的とするプライマーとからなり、前記第1のプライマー対のうち一方のプライマーが5’末端に第1のアフィニティマーカーを含む、前記第1のプライマー対、
第2のアフィニティマーカーを有し、前記第1のアフィニティマーカーとの結合に好適な、固体担体、
前記固体担体と結合したPCR産物を変性させる変性溶液であって、前記第1のアフィニティマーカーを有さない一本鎖核酸を単離するのに好適な前記変性溶液、および
前記一本鎖核酸の両末端に結合でき、前記一本鎖核酸を環化するのに好適な、一本鎖環化「架橋」配列
を含む試薬。
【請求項11】
請求項10に記載の試薬であって、第2のPCR反応で用いる第2のプライマー対をさらに含み、前記第2のプライマー対は、前記第1のアダプターを標的とするプライマーと前記第2のアダプターを標的とするプライマーとからなり、
好ましくは、前記第2のプライマー対のうち一方のプライマーが5’末端にサンプルタグ配列を含有する試薬。
【請求項12】
請求項10または11に記載の試薬であって、エクソン配列のプローブをさらに含み、前記プローブは前記第1のアフィニティマーカーを有し、前記固体担体の前記第2のアフィニティマーカーと結合でき、前記エクソン配列を含有する一本鎖核酸を第2のPCR産物から捕獲するのに好適であり、
好ましくは、前記試薬は、前記第2のPCR産物の各末端に位置するプライマー配列を遮断するプライマー遮断配列をさらに含有する試薬。
【請求項13】
前記第1のアフィニティマーカーはビオチンマーカーであり、前記第2のアフィニティマーカーはストレプトアビジンマーカーである、請求項10に記載の試薬。
【請求項14】
前記固体担体は磁気ビーズである、請求項10に記載の試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は分子生物学分野に関し、特に、一本鎖環状核酸を含むライブラリを構築するための方法および試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
エクソンシーケンシングはゲノム分析法の1つであり、標的エクソーム捕獲としても知られる。この方法では、エクソン領域を含む全ゲノムDNAを配列領域捕獲技術によって捕獲し、濃縮し、続いてハイスループットシーケンシングに供する。エクソンシーケンシングによれば、ゲノムからコード配列を高効率で選択できる。この方法はゲノムリシーケンシングよりも安価であり、単一塩基多型や既知遺伝子の挿入および欠失を研究する上で非常に有利である。エクソンライブラリとして一般的に使用されるのは、イルミナプラットフォームまたはプロトンプラットフォームに用いる二本鎖DNAを含むライブラリである。こうしたライブラリは、次のようなプロトコールによって大まかに構築される。ゲノムDNAをランダムに断片化して長さ180〜280bpの断片とし、エンドリペアに供した後、得られた断片の各末端にアダプターをライゲーションさせ、アデニン(A)テールを付加することによって、ライブラリを構築する。このライブラリを、ビオチン標識プローブを用いて1回目の液体ハイブリダイゼーションを行うことにより1回目の濃縮に供し、この1回目の濃縮により得たエクソンを、ストレプトマイシン被覆磁気ビーズを用いて捕獲し、次いで溶出により磁気ビーズから分離して、2回目の液体ハイブリダイゼーションを行うことにより2回目の濃縮に供する。2回の濃縮の後に得たライブラリをPCR反応によって直鎖方向に増幅し、適格であると確認されたら、シーケンシングに使用できる。
【0003】
ただ、Complete Genomics(CG)プラットフォームシーケンシングに使用されるエクソンライブラリについては、これを安定して構築できる方法はない。従来のライブラリ構築法はCGによるものであり、基本的に
図1に示すプロトコールに従ってアダプターを1つ用いてライブラリを構築する。
図1に示すプロトコールでは、ゲノムDNAをランダムかつ物理的に断片化して、特定範囲内の長さを有する断片とし、エンドリペアに供した後、アダプターAを指向的にライゲーションさせ、ビオチン被覆プローブとともに液体ハイブリダイゼーションに供し、ストレプトマイシン被覆磁気ビーズを用いてエクソンを捕獲し、PCR増幅に供して一本鎖核酸を単離し、最後にこの一本鎖核酸を環化して、一本鎖環状核酸を含むライブラリを得る。この方法は複雑で時間がかかるため、大幅な改善の余地がある。
【0004】
Epicentra社のNexteraキットによるトランスポサーゼ断片化キット(購入元はIllumina)は、トランスポサーゼを用いて、完全なDNA断片化とアダプターライゲーションとを同時に実施できるため、サンプル調製にかかる時間が短い。こうした断片化およびアダプターライゲーション法をライブラリ構築に使用できる。
【0005】
トランスポサーゼ断片化は操作が簡便であるため、他の方法よりもスループットおよび操作の簡便さの点で大幅に優れていることは疑いない。しかし、この断片化法にも欠点がある。例えば、トランスポサーゼによる転位は特定の配列、すなわち19bpのMe配列に依存する。従って、たとえトランスポサーゼが2種の全く異なるアダプター配列を包埋し、これによって異なるアダプター配列を標的配列の5’末端および3’末端にライゲーションできても、標的配列を断片化すると、トランスポサーゼのもつ特殊な機能のために、両末端に対称的にMe配列を含有することになり、標的配列(断片化断片)とMe配列との間に9ntの差異が生じる。そして、標的配列の両末端に位置する同一のMe配列は、以降の工程に悪影響を及ぼすことになる。例えば、このアダプターライゲーションを次世代シーケンシング技術と組み合わせた場合には、標的配列の鎖の両末端にあるMe配列が互いに相補的であるために、1つの一本鎖分子の内部でアニーリングが起こりやすく、その結果、アンカリングプライマーとの結合に悪影響を及ぼす。
【0006】
現時点では、特にエクソンシーケンシングに使用するための、一本鎖環状核酸を含むライブラリを構築する簡便な方法が緊急に求められている。
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施形態は、一本鎖環状核酸を含むライブラリを構築するための方法および試薬を提供する。この方法は、簡便で、短時間で実施でき、一本鎖核酸の両末端にある同一トランスポサーゼ認識配列による悪影響を受けない。
【0008】
本開示の第1の態様の実施形態によれば、一本鎖環状核酸を含むライブラリを構築するための方法が提供される。この方法は、
トランスポサーゼとトランスポサーゼ認識配列を含有する第1のアダプターとを含むトランスポサーゼ包埋複合体を用いて、二本鎖核酸サンプルをランダムに断片化することにより、各末端に上記第1のアダプターがライゲーションされた断片化二本鎖核酸を取得し、上記断片化二本鎖核酸において3’末端と上記第1のアダプターとの間には差異ができており、
反応系から上記トランスポサーゼを除去した後、上記断片化二本鎖核酸の上記差異の部分に、リガーゼを用いて第2のアダプターをライゲーションさせ、上記第2のアダプターの配列は上記第1のアダプターの配列とは異なり、
上記第1のアダプターを標的とするプライマーと上記第2のアダプターを標的とするプライマーとからなる第1のプライマー対を用いて第1のPCR反応を実施することにより、両末端に第1のアダプター配列および第2のアダプター配列がそれぞれライゲーションされた第1のpcr産物を取得し、上記第1のプライマー対のうち一方のプライマーが5’末端に第1のアフィニティマーカーを含み、
第2のアフィニティマーカーを有する固体担体に上記第1のpcr産物を接触させることにより、上記第1のアフィニティマーカーと上記第2のアフィニティマーカーとが結合し、
上記固体担体と結合した上記第1のpcr産物を変性させることにより、上記第1のアフィニティマーカーを含まない一本鎖核酸を単離し、
上記一本鎖核酸の両末端に結合できる一本鎖環化「架橋」配列を用いて上記一本鎖核酸を環化する
工程を有する。
【0009】
本開示の実施形態において、上記方法はさらに、上記第1のPCR反応を実施する前に、上記第1のアダプターを標的とするプライマーと上記第2のアダプターを標的とするプライマーとからなる第2のプライマー対を用いて第2のPCR反応を実施することにより、両末端に上記第1のアダプター配列および上記第2のアダプター配列がそれぞれライゲーションされた第2のpcr産物を取得する工程を有する。
【0010】
本開示の実施形態において、上記第2のプライマー対のうち一方のプライマーが5’末端にサンプルタグ配列を含有する。
【0011】
本開示の実施形態において、上記方法はさらに、上記第1のPCR反応で用いる、エクソン配列を含有する一本鎖核酸を、上記エクソン配列のプローブを用いて上記第2のpcr産物から捕獲する工程を、上記第2のPCR反応の後であって上記第1のPCR反応より前に有し、上記エクソン配列の上記プローブは上記第1のアフィニティマーカーを含み、上記固体担体の上記第2のアフィニティマーカーと結合できる。
【0012】
本開示の実施形態において、上記方法はさらに、上記第2のpcr産物の一本鎖の各末端に位置するプライマー配列を、プライマー遮断配列を用いて遮断する工程を、上記エクソン配列を含有する上記一本鎖核酸を上記エクソン配列の上記プローブを用いて上記第2のpcr産物から捕獲する前に有する。
【0013】
本開示の実施形態において、上記第1のアフィニティマーカーはビオチンマーカーであり、上記第2のアフィニティマーカーはストレプトアビジンマーカーである。
【0014】
本開示の実施形態において、上記トランスポサーゼの反応系からの除去は磁気ビーズ精製、カラム精製、または化学試薬処理によって行われる。
【0015】
本開示の実施形態において、上記固体担体は磁気ビーズである。
【0016】
本開示の実施形態において、上記方法はさらに、
トランスポサーゼとトランスポサーゼ認識配列を含有する第1のアダプターとを含むトランスポサーゼ包埋複合体を用いて、二本鎖核酸サンプルをランダムに断片化することにより、各末端に上記第1のアダプターがライゲーションされた断片化二本鎖核酸を取得し、上記断片化二本鎖核酸において3’末端と上記第1のアダプターとの間には差異ができており、
反応系から上記トランスポサーゼを除去した後、上記断片化二本鎖核酸の上記差異の部分に、リガーゼを用いて第2のアダプターをライゲーションさせ、上記第2のアダプターの配列は上記第1のアダプターの配列とは異なり、
上記第1のアダプターを標的とするプライマーと上記第2のアダプターを標的とするプライマーとからなる第2のプライマー対を用いて第2のPCR反応を実施することにより、両末端に第1のアダプター配列および第2のアダプター配列がそれぞれライゲーションされた第2のpcr産物を取得し、上記第2のプライマー対のうち一方のプライマーが5’末端にサンプルタグ配列を含有し、
上記第2のpcr産物の一本鎖の各末端に位置するプライマー配列を、プライマー遮断配列を用いて遮断し、
エクソン配列を含有する一本鎖核酸を、上記エクソン配列のプローブを用いて上記第2のpcr産物から捕獲し、上記プローブはビオチンマーカーを含み上記固体担体のストレプトアビジンマーカーと結合でき、
上記エクソン配列をそれぞれ含有する上記一本鎖核酸の両末端をそれぞれ標的とするプライマーからなる第1のプライマー対を用いて第1のPCR反応を実施することにより、両末端に異なるアダプター配列がそれぞれライゲーションされた第1のpcr産物を取得し、上記第1のプライマー対のうち一方のプライマーが5’末端に上記ビオチンマーカーを含み、
上記ストレプトアビジンマーカーを有する上記固体担体に上記第1のpcr産物を接触させることにより、上記ビオチンマーカーと上記ストレプトアビジンマーカーとが結合し、
上記固体担体と結合した上記第1のpcr産物を変性させることにより、上記ビオチンマーカーを含まない一本鎖核酸を単離し、
上記ビオチンマーカーを含まない上記一本鎖核酸の両末端に結合できる一本鎖環化「架橋」配列を用いて、上記ビオチンマーカーを含まない上記一本鎖核酸を環化する
工程を有する。
【0017】
本開示の第2の態様の実施形態によれば、一本鎖環状核酸を含むライブラリを構築するための試薬が提供される。上記試薬は、
トランスポサーゼとトランスポサーゼ認識配列を含有する第1のアダプターとからなるトランスポサーゼ包埋複合体であって、上記トランスポサーゼ包埋複合体は、二本鎖核酸サンプルをランダムに断片化して各末端に上記第1のアダプターがライゲーションされた断片化二本鎖核酸を取得し、上記断片化二本鎖核酸において3’末端と上記第1のアダプターとの間に差異をつくるのに好適な、上記トランスポサーゼ包埋複合体、
第2のアダプターおよびリガーゼを含む成分であって、上記断片化二本鎖核酸の上記差異の部分に、リガーゼを用いて上記第2のアダプターをライゲーションさせるのに好適な、上記成分、
第1のPCR反応で用いる第1のプライマー対であって、上記第1のプライマー対は上記第1のアダプターを標的とするプライマーと上記第2のアダプターを標的とするプライマーとからなり、上記第1のプライマー対のうち一方のプライマーが5’末端に第1のアフィニティマーカーを含む、上記第1のプライマー対、
第2のアフィニティマーカーを有し、上記第1のアフィニティマーカーとの結合に好適な、固体担体、
上記固体担体と結合したPCR産物を変性させる変性溶液であって、上記第1のアフィニティマーカーを有さない一本鎖核酸を単離するのに好適な上記変性溶液、および
上記一本鎖核酸の両末端に結合でき、上記一本鎖核酸を環化するのに好適な、一本鎖環化「架橋」配列
を含む。
【0018】
本開示の実施形態において、上記試薬は、第2のPCR反応で用いる第2のプライマー対をさらに含み、上記第2のプライマー対は、上記第1のアダプターを標的とするプライマーと上記第2のアダプターを標的とするプライマーとからなり、
好ましくは、上記第2のプライマー対のうち一方のプライマーが5’末端にサンプルタグ配列を含有する。
【0019】
本開示の実施形態において、上記試薬は、エクソン配列のプローブをさらに含み、上記プローブは上記第1のアフィニティマーカーを有し、上記固体担体の上記第2のアフィニティマーカーと結合でき、上記エクソン配列を含有する一本鎖核酸を第2のPCR産物から捕獲するのに好適であり、
好ましくは、上記試薬は、上記第2のPCR産物の各末端に位置するプライマー配列を遮断するプライマー遮断配列をさらに含有する。
【0020】
本開示の実施形態において、上記第1のアフィニティマーカーはビオチンマーカーであり、上記第2のアフィニティマーカーはストレプトアビジンマーカーである。
【0021】
本開示の実施形態において、上記固体担体は磁気ビーズである。
【0022】
本開示の実施形態において提供される技術上の解決策によれば、本方法は、二本鎖核酸サンプルをトランスポサーゼによって断片化し、さらに得られた断片化二本鎖核酸に第2のアダプターをライゲーションさせて、その結果、二本鎖核酸の両末端に2種の異なるアダプター配列がそれぞれライゲーションした二本鎖を得る工程を含む。これをもとに、本方法はさらに、一本鎖核酸を単離し次いで環化して、一本鎖環状核酸を含むライブラリを得る工程を含む。従来の方法と比較して、本開示の方法は、簡便で、短時間で実施でき、一本鎖核酸の両末端にある同一トランスポサーゼ認識配列による悪影響を受けない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、アダプター1つを用いてGCによりライブラリを構築する先行技術の方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、トランスポサーゼとアダプター1つとを用いた本開示の一実施形態のエクソンライブラリ構築方法を示す簡潔なフローチャートである。
【
図3】
図3は、トランスポサーゼとアダプター1つとを用いた本開示の一実施形態のエクソンライブラリ構築方法を示す詳細なフローチャートである。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態の一本鎖環状核酸を含むライブラリの検出を行った際の電気泳動図である。レーン1はこの実施形態で得た環状一本鎖産物を示し、M1およびM2は環状一本鎖DNAのマーカー2種を示す。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態の一本鎖環状核酸を含むライブラリのシーケンシングにより得た塩基1個の読み深度累積値の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示を、特定の実施形態を参照してさらに詳細に記載する。以下の実施形態において用いられる技術は、特記しない限り、当業者に知られる従来の技術である。本明細書中で用いられる装置、機器、および試薬は、当業者であれば、市販品を購入する等といった周知の方法により入手できる。
【0025】
本明細書中で用いられる用語に関し、特定の実施形態において、第1のアダプターはアダプターNo.1、第2のアダプターはアダプターNo.2と称する。
【0026】
本開示中の「第1」および「第2」等の概念はすべて、あるものをそれ以外のものと区別する目的のみにおいて記載されるものであり、相対的な順序や技術を示したり示唆したりするものではない。
【0027】
本開示の一実施形態の一本鎖環状核酸を含むライブラリを構築するための方法は、トランスポサーゼとトランスポサーゼ認識配列を含有する第1のアダプターとを含むトランスポサーゼ包埋複合体を用いて、二本鎖核酸サンプルをランダムに断片化することにより、各末端に上記第1のアダプターがライゲーションされた断片化二本鎖核酸を取得し、上記断片化二本鎖核酸において3’末端と上記第1のアダプターとの間には差異ができており;反応系から上記トランスポサーゼを除去した後、上記断片化二本鎖核酸の上記差異の部分に、リガーゼを用いて第2のアダプターをライゲーションさせ、上記第2のアダプターの配列は上記第1のアダプターの配列とは異なり;上記第1のアダプターを標的とするプライマーと上記第2のアダプターを標的とするプライマーとからなる第1のプライマー対を用いて第1のPCR反応を実施することにより、両末端に第1のアダプター配列および第2のアダプター配列がそれぞれライゲーションされた第1のpcr産物を取得し、上記第1のプライマー対のうち一方のプライマーが5’末端に第1のアフィニティマーカーを含み;第2のアフィニティマーカーを有する固体担体に上記第1のpcr産物を接触させることにより、上記第1のアフィニティマーカーと上記第2のアフィニティマーカーとが結合し;上記固体担体と結合した上記第1のpcr産物を変性させることにより、上記第1のアフィニティマーカーを含まない一本鎖核酸を単離し;上記一本鎖核酸の両末端に結合できる一本鎖環化「架橋」配列を用いて上記一本鎖核酸を環化する工程を有する。
【0028】
一本鎖環状核酸を含む上記ライブラリは、エクソンまたはイントロンに関係なく、上述の方法によって作成できる。イントロンを含まない細菌ゲノムの場合、上述の方法によって一本鎖環状核酸を含むライブラリを構築でき、このライブラリを以降の操作(シーケンシング等)で使用できることが知られている。
【0029】
本開示の実施形態において提供される上記方法は、上記トランスポサーゼ包埋複合体を用いて上記核酸の断片化と上記アダプターのライゲーションとを同時に実施できる。従って、従来の方法にあるエンドリペア、アダプターライゲーション、および中間体精製の工程を要しないため、工程が簡潔であり時間がかからない。
【0030】
本開示において、上記第1のアダプターは上記トランスポサーゼ認識配列、典型的には既知の19bpのMe配列を含有し、二本鎖の状態で存在する。この二本鎖は、一方の鎖の3’末端がジデオキシ修飾されているため(すなわちジデオキシヌクレオチド)、自己ライゲーションも内部ライゲーションもしない。「自己ライゲーション」とは、同種のアダプター2つの間で生じるライゲーションを指し、例としては、第1のアダプター2つの間で生じるライゲーションや第2のアダプター2つの間で生じるライゲーションが挙げられる。「内部ライゲーション」は異なるアダプター2つの間で生じるライゲーションを指し、例としては、上記第1のアダプターと上記第2のアダプターの間で生じるライゲーションが挙げられる。上記トランスポサーゼ包埋複合体により上記二本鎖核酸サンプルを断片化し、その後、上記第1のアダプターの第1の鎖を上記断片化二本鎖核酸の鎖の一方とライゲーションさせる。この際、上記第1のアダプターのもう一方の鎖と上記断片化二本鎖核酸のもう一方の鎖との間に9ntの差異が形成される。この差異は、従来の方法においてはニックトランスレーションによって埋める必要があるが、本開示の方法においては上記第2のアダプターのライゲーション部位となる。
【0031】
本開示において、上記第2のアダプターの配列は、上記第1のアダプターの配列と異なる配列であれば任意の配列であってよい。その理由として、本開示で用いる上記第2のアダプターの主な目的は、上記二本鎖核酸の両末端に同一トランスポサーゼ認識配列がくるのを避けることだからである。上記第2のアダプターが上記差異の部分にライゲーションされた後、上記第1のアダプターおよび上記第2のアダプターをそれぞれ標的とするプライマーを用いて上記第1のPCR反応を実施することにより、両末端に上記第1のアダプター配列および上記第2のアダプター配列がそれぞれライゲーションされた上記第1のpcr産物を得ることができる。
【0032】
本開示において、上記第1のPCRで用いる第1のプライマー対のうち一方のプライマーは5’末端に第1のアフィニティマーカーを含む。上記第1のアフィニティマーカーは、生物学的結合反応に一般的に用いられるもの、例えば抗原または抗体、二本短鎖DNA断片の一方の鎖、ビオチンまたはストレプトアビジン等であってよい。上記第1のアフィニティマーカーとして抗原を選択する場合、この抗原に結合できる抗体を上記第2のアフィニティマーカーとして選択する。逆の場合も同じである。二本短鎖DNA断片の一方の鎖を上記第1のアフィニティマーカーとして選択する場合、これに相補的な、その二本短鎖DNA断片のもう一方の鎖を上記第2のアフィニティマーカーとして選択する。逆の場合も同じである。上記第1のアフィニティマーカーとしてビオチンを選択する場合、ビオチンに結合できるストレプトアビジンを上記第2のアフィニティマーカーとして選択する。逆の場合も同じである。本開示の一実施形態において、上記第1のアフィニティマーカーはビオチン、上記第2のアフィニティマーカーはストレプトアビジンであり、いずれも強い結合能力を有する。
【0033】
本開示において、上記一本鎖環化「架橋」配列は、上記一本鎖核酸の両末端に相補的な配列であり、そのため、上記一本鎖核酸の末端同士を架橋する。これにより、上記一本鎖核酸が環化される。
【0034】
本開示のさらなる一実施形態において、上記方法はさらに、上記第1のPCR反応を実施する前に、上記第1のアダプターを標的とするプライマーと上記第2のアダプターを標的とするプライマーとからなる第2のプライマー対を用いて第2のPCR反応を実施する工程を有する。上記第2のPCR反応の目的のひとつは、両末端に上記第1のアダプター配列および上記第2のアダプター配列がそれぞれライゲーションされた上記断片化二本鎖核酸を大量に増幅することである。上記第2のプライマー対の配列は上記第1のプライマー対の配列と同じであってよいが、上記第2のプライマー対は上記第1のアフィニティマーカーを含まない。上記第2のプライマー対は上記第1のプライマー対と同じでなくてもよく、例えば、上記第2のプライマー対の5’末端に上記第1のプライマー対にない塩基が付加されていてもよい。上記第2のプライマー対のうち一方のプライマーが5’末端にサンプルタグ配列を含有するのが典型的であるが、これに限定されない。上記サンプルタグ配列は、異なるサンプルを区別するためのランダムな配列であってよい。これにより、各サンプルの断片化核酸がそれぞれ特定のサンプルタグ配列を含有することになるため、複数のサンプルを同時に断片化工程、ライブラリ構築工程、およびこれに続くシーケンシング用混合工程で処理した後でも、異なるサンプルの配列を区別することができる。そのため、ハイスループットシーケンシングにおけるシーケンシング効率が大幅に改善される。従って、上記第2のプライマー対のうち一方のプライマーがサンプルタグ配列を含有する場合に、上記第2のPCR反応のもうひとつの目的は、上記断片化二本鎖核酸断片をこのサンプルタグ配列にライゲーションさせることである。
【0035】
本開示のさらなる一実施形態において、上記方法はさらに、エクソン配列を含有する一本鎖核酸を、上記エクソン配列のプローブを用いて上記第2のpcr産物から捕獲する工程を、上記第2のPCR反応の後であって上記第1のPCR反応より前に有する。この実施形態で用いるエクソン捕獲技術は、こうしたエクソン配列を取得するための既知の技術である。エクソン中および/またはエクソンとイントロンの間に存在するコンセンサス配列は保存配列であるものがあり、このコンセンサス配列に結合できる配列を上記エクソン配列のプローブとして設計することができる。このプローブを用いれば、エクソンシーケンシングで使用するための、上記エクソン配列を含有する上記一本鎖核酸を、多数のゲノムDNAサンプルを断片化した後で得る種々の断片化核酸から単離することができる。上記プローブを用い、上記アフィニティマーカーと上記ストレプトアビジンマーカーを有する固体担体との組み合わせによって、上記エクソン配列を含有する断片を単離するために、本開示の特定の一実施形態において、上記エクソン配列の上記プローブはビオチン等のアフィニティマーカーを含む必要がある。
【0036】
本開示のさらなる一実施形態において、上記方法はさらに、上記第2のpcr産物の一本鎖の各末端に位置するプライマー配列を、プライマー遮断配列を用いて遮断する工程を、上記エクソン配列を含有する上記一本鎖核酸を上記エクソン配列の上記プローブを用いて上記第2のpcr産物から捕獲する前に有する。上記プライマー遮断配列は、上記第2のpcr産物の一本鎖の各末端に位置する上記プライマー配列に特異的に結合できるため、このプライマー配列に上記エクソン配列のプローブが結合できないことになり、従って偽陽性結果が生じない。
【0037】
本開示において、上記エクソン配列を含有する上記断片を上記第2のpcr産物から捕獲するための上記固体担体および上記第1のpcr産物と結合する上記固体担体は、チップまたは磁気ビーズであってもよい。具体的に、上記チップまたは磁気ビーズは、上記第1のアフィニティマーカーと結合できる上記第2のアフィニティマーカーで被覆されている。本開示の一実施形態において、上記ストレプトアビジンマーカーで被覆された磁気ビーズが使用される。
【0038】
本開示において、上記二本鎖核酸サンプルを断片化した後、続いて行う酵素反応に上記トランスポサーゼが影響を及ぼすことを避けるため、通例、磁気ビーズ精製、カラム精製、または化学試薬処理によって、上記トランスポサーゼを反応系から除去する必要がある。従来の精製方法として、Ampure XPビーズ等を用いた磁気ビーズ精製およびQIAGEN PCR等から入手した精製カラム等を用いたカラム精製が挙げられ、こうした方法は当該技術分野において既知である。当然のことながら、磁気ビーズ精製およびカラム精製に類似する任意の製品を本開示において使用してもよい。この精製により反応系からトランスポサーゼを完全に除去できるが、その分の操作と費用が増える。ここで、トランスポサーゼはタンパク質であるため、化学試薬処理による変性または消化を行えば標的配列から分離することができ、こうした処理の後は生物学的活性を失うため、続いて行う反応に悪影響を及ぼすことがない。この場合、トランスポサーゼは系内に残存していてもよい。
【0039】
本開示において、上記化学試薬処理において、吸着しているトランスポサーゼと標的核酸配列とを分離するために、プロテアーゼ溶液、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液、NTバッファー(S5シリーズのTruprepキットに同梱されるNTバッファー)等をまず選択できる。次いで、上記試薬が次の酵素反応に及ぼす悪影響を緩和するため、Triton−X100を含有する溶液を使用する。この方法を用い、従来の、手順が複雑で費用もかかる磁気ビーズ精製やカラム精製に置き換えれば、下流工程であるPCR増幅を問題なく実施できる。
【0040】
本開示において、上記固体担体により捕獲される上記PCR産物を、熱、または水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム等のアルカリ、好ましくはアルカリによって変性させてもよい。本開示の一実施形態においては水酸化ナトリウムが使用される。
【0041】
図2は、トランスポサーゼとアダプター1つとを用いた本開示の一実施形態のエクソンライブラリ構築方法を示す簡潔なフローチャートである。上記方法は、ゲノムDNAサンプルをトランスポサーゼで断片化して断片化断片を取得し、上記断片化断片を第2のPCR反応により増幅して、エクソン配列を含有する断片をエクソン捕獲技術により捕獲し、第1のPCR反応を実施して一本鎖核酸を単離し、上記一本鎖核酸を環化して一本鎖環状核酸を含むライブラリを取得する工程を有する。
【0042】
図3は、トランスポサーゼとアダプター1つとを用いた本開示の一実施形態のエクソンライブラリ構築方法を示す詳細なフローチャートである。上記方法は、ゲノムDNAサンプルをトランスポサーゼ包埋複合体で断片化して、各末端に第1のアダプターがライゲーションされた断片化二本鎖DNAを取得し、上記断片化二本鎖DNAにおいて3’末端と上記第1のアダプターとの間に9ntの差異が形成され、上記トランスポサーゼを除去し、第2のアダプターをライゲーションさせ、第2のプライマー対を用いて第2のPCR増幅を実施し、上記第2のプライマー対のうち一方のプライマーがタグ配列を含有し、その結果、上記タグ配列を含有する第2の増幅産物を取得し、エクソン配列を含有する断片を、(ビオチンマーカーを含む)上記エクソン配列のプローブを用いて捕獲し、第1のプライマー対を用いて第1のPCR増幅を実施し、上記第1のプライマー対のうち一方のプライマーがビオチンマーカーを含有し、その結果、一方の鎖に上記ビオチンマーカーを含む第1の増幅産物を取得し、上記ビオチンマーカーを含む産物をストレプトマイシン被覆磁気ビーズを用いて単離し、変性により、上記ビオチンマーカーを含まない一本鎖核酸を取得し、上記ビオチンマーカーを含まない一本鎖核酸を一本鎖環化「架橋」配列を用いて環化して、一本鎖環状核酸を含むライブラリを取得する工程を有する。
【0043】
以下に、実施形態に関連して本開示を詳細に記載する。
【0044】
本開示の実施形態において使用される試薬は以下の通りである。リガーゼはINVITROGENより購入した。トランスポサーゼ(PCR酵素を含む)は、Vazyme Biotechより購入したTruePrep Advanced DNA Sample Prep Kitに同梱されているものを使用した。エキソヌクレアーゼIおよびエキソヌクレアーゼIIIはNEBより購入した。
【0045】
本実施形態において、技術開発のためにトランスポサーゼキットを使用した。このキットは、ゲノムDNAを5ngと50ngの2通りの量で含有するが、本実施形態においては後者の量を選択した。
【0046】
1.19bpのMe配列を含有するプライマー配列対(アダプターNo.1の配列Aおよび配列B)を設計して購入し、包埋するアダプターNo.1を調製した。配列Bに含有されるジデオキシチミン(T)塩基は、アダプターの自己ライゲーションを高い効率で避けることができる。
アダプターNo.1の配列A:GCTTCGACTGGAGACAGATGTGTATAAGAGACAG(配列番号1);
アダプターNo.1の配列B:CTGTCTCTTATACACATC ddT(配列番号2)。
【0047】
2.アダプターNo.1の配列Aおよび配列Bを100μMに希釈し、十分に混合した後で遠心分離し、次いで下記手順(表1)に従ってPCR機器内においてアニールさせることにより、アダプターNo.1を得た。得たアダプターNo.1を−20℃で保管して、トランスポサーゼ包埋複合体の調製に備えた。
【表1】
【0048】
反応後、アニールした2つの群のアダプターを体積1:1の割合で混合して、トランスポサーゼ包埋複合体の調製に備えた。
【0049】
3.下記系(表2)に示す成分を上下に20回穏やかに振って混合し、次いで30℃で1時間インキュベートすることにより、アダプターNo.1をトランスポサーゼの中に包埋した。こうして得たトランスポサーゼ包埋複合体を−20℃で保管した。
【表2】
【0050】
4.高質のゲノムDNAを50ng、上記トランスポサーゼ包埋複合体および表3中に示す他の成分と上下に20回穏やかに振って混合し、続いて55℃で10分間インキュベートした後、4℃に冷却した。こうして、ゲノムDNAを断片化した。
【表3】
【0051】
5.以下の2通りの方法により精製した。
方法1:上記で得た断片化ゲノムをまず、最終濃度0.04%〜0.1%となるようにSDSと混合して均一とし、次いでAmpure XPビーズを用いて1.3倍に濃縮することにより精製した。
方法2:上記で得た断片化ゲノムをまず、等倍体積のPBI(Qiagen PCR精製キット)を用いて混合して均一とし、次いでAmpure XPビーズを用いて1.3倍に濃縮することにより精製した。
方法3(精製せず):上記で得た断片化ゲノムに最終濃度0.04%〜0.1%となるようにSDSを添加し、次の酵素反応において0.1% Triton−X100を添加した。
【0052】
6.前の工程で得た精製物を表4に示す成分と共に25℃で60分間インキュベートすることによって、アダプターNo.2をライゲーションさせた。
【表4】
【0053】
注:アダプターNo.2の配列を以下に示す。
アダプターNo.2の配列A:AGTCGGAGGCCAAGCGGTCGTC(配列番号3);
アダプターNo.2の配列B:TTGGCCTCCGAC ddT(配列番号4、ddは3’末端におけるジデオキシ修飾を表す)。
【0054】
7.以下の手順を実施した。
方法1(精製):Ampure XPビーズを用いて1.3倍に濃縮することにより精製した。
方法2(精製せず):次のPCR反応のために1% Triton−X100を補充した。
【0055】
8.0.1%〜2% Triton−X100、本実施形態においては好ましくは0.1% Triton−X100を下記成分(表5)と混合し、得られた混合物を表6に示す条件の下で第1のPCR増幅に供した。精製の直後に領域(タグ)捕獲のための異なるタグを含むプライマーを設計し、PCR産物に混合した。
【表5】
【0056】
注:タグ付プライマー1〜8を以下に示す。下線を付した配列はタグ配列(ランダム配列)を表す。
タグ付プライマー1(配列番号5):
AGACAAGCTCGAGCTC
ACTGGTAAGAGCTTCGACTGGAGAC
タグ付プライマー2(配列番号6):
AGACAAGCTCGAGCTC
AAGCTCCTGAGCTTCGACTGGAGAC
タグ付プライマー3(配列番号7):
AGACAAGCTCGAGCTC
CTGGGGCTATGCTTCGACTGGAGAC
タグ付プライマー4(配列番号8):
AGACAAGCTCGAGCTC
CCCAGTCAGGGCTTCGACTGGAGAC
タグ付プライマー5(配列番号9):
AGACAAGCTCGAGCTC
GGATTTGGTTGCTTCGACTGGAGAC
タグ付プライマー6(配列番号10):
AGACAAGCTCGAGCTC
TACTAATGGCGCTTCGACTGGAGAC
タグ付プライマー7(配列番号11):
AGACAAGCTCGAGCTC
TTTTCATTTTGCTTCGACTGGAGAC
タグ付プライマー8(配列番号12):
AGACAAGCTCGAGCTC
CTGAGCTCCTGCTTCGACTGGAGAC
プライマー2(配列番号13):TCCTAAGACCGCTTGGCCTCCGACT
【表6】
【0057】
上記第2のPCRの後、異なるタグを含むサンプル8個を混合し、次いでAmpure XPビーズを用いて1.3倍に濃縮することにより精製した。
【0058】
9.前の工程で得たサンプル750ngを濃縮して乾燥粉末とした。
【0059】
反応混合物1を以下工程で調製した。
(1)以下の反応溶液(表7)を調製した。
【表7】
【0060】
注:
プライマー遮断配列#1(配列番号14):
5’−CTGTCTCTTATACACATCTGTCTCCAGTCGAAGCCCGATCTTACCAGTTCGAGCTTGTCT−3’;
プライマー遮断配列#2(配列番号15):
5’−AAGTCGGAGGCCAAGCGGTCTTAGGA−3’。
【0061】
遮断配列#1および遮断配列#2は、Agilent社から購入した、ヒトゲノムのタンデム反復の一部を遮断する際に使用されるキットに同梱されていたオリゴヌクレオチド配列(Oligo)を使用した。
【0062】
(2)(1)で得た反応溶液を上記乾燥粉末サンプルと混合し,得られた均一な反応混合物1をPCR装置にて95℃で5分間インキュベートし、次いで65℃で保持した。
【0063】
(3)表8に従って反応混合物2を調製し、次いでPCR装置にて65℃で少なくとも5分間インキュベートした。
【表8】
【0064】
(4)表9に従って反応混合物3を調製し、次いでPCR装置にて65℃で少なくとも2分間インキュベートした。
【表9】
【0065】
注:ビオチン・ハイブリダイゼーション・プローブ(本開示の他の箇所ではエクソン配列のプローブとも称する)を使用して、エクソン配列を含有する一本鎖断片を捕獲した。
【0066】
(5)反応混合物1〜3をいずれも65℃で保持した。反応混合物2を13μL、反応混合物1に添加し、得られた均一な混合物を反応混合物3中に移し、フィルムで密閉した後、24時間ハイブリダイゼーションさせた。
【0067】
10.24時間のハイブリダイゼーション後に得たサンプルをM280磁気ビーズ(すなわちストレプトマイシン被覆磁気ビーズ)を用いて溶出に供した後、M280磁気ビーズを分離することなく、以下の成分(表10)を用いて表11に示す反応条件の下で第1のPCRに供した。これにより、最大量600ngまで増幅し、アダプターNo.2が結合している末端にビオチンを導入して、次の一本鎖単離工程に備えた。
【表10】
【0068】
注:
ユニバーサルプライマー1:5’−AGACAAGCTCGAGCTC−3’(配列番号16);
ビオチンを含むプライマー2:
5’−bio−TCCTAAGACCGCTTGGCCTCCGACT−3’(配列番号17)。
【表11】
【0069】
PCRの後、Ampure XPビーズを用いて1.3倍に濃縮することにより増幅産物を精製した。
【0070】
11.精製物600ngをM280ストレプトマイシン被覆磁気ビーズと共に15分間インキュベートし、次いで磁気セパレータで2回洗浄し、最後に0.1M NaOH溶液78μLで変性させた。NaOH溶液はその後再使用し、残留NaOH溶液は0.3M MOPS(3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸、SIGMA)バッファー37.5μLで中和した。
【0071】
12.一本鎖核酸の環化
表12に従って反応系を調製し、37℃で1.5時間インキュベートした。
【表12】
【0072】
注:「架橋」配列:5’−TCGAGCTTGTCTTCCTAAGACCGC−3’(配列番号18)。
【0073】
13.非環化一本鎖核酸の消化
表13に従って混合物を調製して、前の工程で得た反応系を少し遠心分離したものに添加した。続いて、37℃で30分間インキュベートした。
【表13】
【0074】
14.非環化一本鎖核酸を消化して得た生成物(すなわち一本鎖環状核酸)を、Ampure XPビーズを用いて1.8倍に濃縮することにより精製した。精製物の溶解度が十分であると確認されたら、上記精製物をシーケンシングに供することができる。この実施形態においては上記精製物を0.65pmol得た。この量は、全ゲノムシーケンシングに用いるDNAナノ球体とするのに十分な量である。少量の上記精製物を電気泳動検出に供した。その結果を
図4に示す。図中、レーン1からわかるように、この実施形態で得た一本鎖環状核酸は予期した通りサイズが600〜800ntで分散したバンドであり、一本鎖環状核酸を含むライブラリを作製する条件を満たしている。
【表14】
【0075】
15.上記ライブラリをCGシーケンサーでシーケンシングした。シーケンシング結果を表15に示す。
【表15】
【0076】
図5は、塩基1個の読み深度累積値の分布を示す図である。上記結果から、本開示の上記実施形態で構築した一本鎖環状核酸を含むライブラリをシーケンシングに使用でき、望ましい結果が得られることが示される。
【0077】
上記内容は、本開示を特定の実施形態と組み合わせてさらに詳細に記載したものである。ただし、本開示の特定の実施形態は上記記載に限定されるものではない。当業者には、上記実施形態において要素の一部を単純に除外したり置き換えたりしても本開示の理念および範囲を外れないということが理解される。
【手続補正書】
【提出日】2017年5月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一本鎖環状核酸を含むライブラリを構築するための方法であって、
トランスポサーゼとトランスポサーゼ認識配列を含有する第1のアダプターとを含むトランスポサーゼ包埋複合体を用いて、二本鎖核酸サンプルをランダムに断片化することにより、各末端に前記第1のアダプターがライゲーションされた断片化二本鎖核酸を取得し、前記断片化二本鎖核酸において3’末端と前記第1のアダプターとの間には差異ができており、
反応系から前記トランスポサーゼを除去した後、前記断片化二本鎖核酸の前記差異の部分に、リガーゼを用いて第2のアダプターをライゲーションさせ、前記第2のアダプターの配列は前記第1のアダプターの配列とは異なり、
前記第1のアダプターを標的とするプライマーと前記第2のアダプターを標的とするプライマーとからなる第1のプライマー対を用いて第1のPCR反応を実施することにより、両末端に第1のアダプター配列および第2のアダプター配列がそれぞれライゲーションされた第1のpcr産物を取得し、前記第1のプライマー対のうち一方のプライマーが5’末端に第1のアフィニティマーカーを含み、
第2のアフィニティマーカーを有する固体担体に前記第1のpcr産物を接触させることにより、前記第1のアフィニティマーカーと前記第2のアフィニティマーカーとが結合し、
前記固体担体と結合した前記第1のpcr産物を変性させることにより、前記第1のアフィニティマーカーを含まない一本鎖核酸を単離し、
前記一本鎖核酸の両末端に結合できる一本鎖環化「架橋」配列を用いて前記一本鎖核酸を環化する
工程を有する方法。
【請求項2】
前記第1のPCR反応を実施する前に、前記第1のアダプターを標的とするプライマーと前記第2のアダプターを標的とするプライマーとからなる第2のプライマー対を用いて第2のPCR反応を実施することにより、両末端に前記第1のアダプター配列および前記第2のアダプター配列がそれぞれライゲーションされた第2のpcr産物を取得する工程をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のプライマー対のうち一方のプライマーが5’末端にサンプルタグ配列を含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のPCR反応で用いる、エクソン配列を含有する一本鎖核酸を、前記エクソン配列のプローブを用いて前記第2のpcr産物から捕獲する工程を、前記第2のPCR反応の後であって前記第1のPCR反応より前にさらに有し、前記エクソン配列の前記プローブは前記第1のアフィニティマーカーを含み、前記固体担体の前記第2のアフィニティマーカーと結合できる、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のpcr産物の一本鎖の各末端に位置するプライマー配列を、プライマー遮断配列を用いて遮断する工程を、前記エクソン配列を含有する前記一本鎖核酸を前記エクソン配列の前記プローブを用いて前記第2のpcr産物から捕獲する前にさらに有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のアフィニティマーカーはビオチンマーカーであり、前記第2のアフィニティマーカーはストレプトアビジンマーカーである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記トランスポサーゼの反応系からの除去は磁気ビーズ精製、カラム精製、または化学試薬処理によって行われる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記固体担体は磁気ビーズである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法であって、
トランスポサーゼとトランスポサーゼ認識配列を含有する第1のアダプターとを含むトランスポサーゼ包埋複合体を用いて、二本鎖核酸サンプルをランダムに断片化することにより、各末端に前記第1のアダプターがライゲーションされた断片化二本鎖核酸を取得し、前記断片化二本鎖核酸において3’末端と前記第1のアダプターとの間には差異ができており、
反応系から前記トランスポサーゼを除去した後、前記断片化二本鎖核酸の前記差異の部分に、リガーゼを用いて第2のアダプターをライゲーションさせ、前記第2のアダプターの配列は前記第1のアダプターの配列とは異なり、
前記第1のアダプターを標的とするプライマーと前記第2のアダプターを標的とするプライマーとからなる第2のプライマー対を用いて第2のPCR反応を実施することにより、両末端に第1のアダプター配列および第2のアダプター配列がそれぞれライゲーションされた第2のpcr産物を取得し、前記第2のプライマー対のうち一方のプライマーが5’末端にサンプルタグ配列を含有し、
前記第2のpcr産物の一本鎖の各末端に位置するプライマー配列を、プライマー遮断配列を用いて遮断し、
エクソン配列を含有する一本鎖核酸を、前記エクソン配列のプローブを用いて前記第2のpcr産物から捕獲し、前記プローブはビオチンマーカーを含み前記固体担体のストレプトアビジンマーカーと結合でき、
前記エクソン配列をそれぞれ含有する前記一本鎖核酸の両末端をそれぞれ標的とするプライマーからなる第1のプライマー対を用いて第1のPCR反応を実施することにより、両末端に異なるアダプター配列がそれぞれライゲーションされた第1のpcr産物を取得し、前記第1のプライマー対のうち一方のプライマーが5’末端に前記ビオチンマーカーを含み、
前記ストレプトアビジンマーカーを有する前記固体担体に前記第1のpcr産物を接触させることにより、前記ビオチンマーカーと前記ストレプトアビジンマーカーとが結合し、
前記固体担体と結合した前記第1のpcr産物を変性させることにより、前記ビオチンマーカーを含まない一本鎖核酸を単離し、
前記ビオチンマーカーを含まない前記一本鎖核酸の両末端に結合できる一本鎖環化「架橋」配列を用いて、前記ビオチンマーカーを含まない前記一本鎖核酸を環化する
工程を有する方法。
【請求項10】
一本鎖環状核酸を含むライブラリを構築するための試薬であって、
トランスポサーゼとトランスポサーゼ認識配列を含有する第1のアダプターとからなるトランスポサーゼ包埋複合体であって、前記トランスポサーゼ包埋複合体は、二本鎖核酸サンプルをランダムに断片化して各末端に前記第1のアダプターがライゲーションされた断片化二本鎖核酸を取得し、前記断片化二本鎖核酸において3’末端と前記第1のアダプターとの間に差異をつくるのに好適な、前記トランスポサーゼ包埋複合体、
第2のアダプターおよびリガーゼを含む成分であって、前記断片化二本鎖核酸の前記差異の部分に、リガーゼを用いて前記第2のアダプターをライゲーションさせるのに好適な、前記成分、
第1のPCR反応で用いる第1のプライマー対であって、前記第1のプライマー対は前記第1のアダプターを標的とするプライマーと前記第2のアダプターを標的とするプライマーとからなり、前記第1のプライマー対のうち一方のプライマーが5’末端に第1のアフィニティマーカーを含む、前記第1のプライマー対、
第2のアフィニティマーカーを有し、前記第1のアフィニティマーカーとの結合に好適な、固体担体、
前記固体担体と結合したPCR産物を変性させる変性溶液であって、前記第1のアフィニティマーカーを有さない一本鎖核酸を単離するのに好適な前記変性溶液、および
前記一本鎖核酸の両末端に結合でき、前記一本鎖核酸を環化するのに好適な、一本鎖環化「架橋」配列
を含む試薬。
【請求項11】
請求項10に記載の試薬であって、第2のPCR反応で用いる第2のプライマー対をさらに含み、前記第2のプライマー対は、前記第1のアダプターを標的とするプライマーと前記第2のアダプターを標的とするプライマーとからなり、
好ましくは、前記第2のプライマー対のうち一方のプライマーが5’末端にサンプルタグ配列を含有する試薬。
【請求項12】
請求項10または11に記載の試薬であって、エクソン配列のプローブをさらに含み、前記プローブは前記第1のアフィニティマーカーを有し、前記固体担体の前記第2のアフィニティマーカーと結合でき、前記エクソン配列を含有する一本鎖核酸を第2のPCR産物から捕獲するのに好適であり、
好ましくは、前記試薬は、前記第2のPCR産物の各末端に位置するプライマー配列を遮断するプライマー遮断配列をさらに含有する試薬。
【請求項13】
前記第1のアフィニティマーカーはビオチンマーカーであり、前記第2のアフィニティマーカーはストレプトアビジンマーカーである、請求項10〜12のいずれか一項に記載の試薬。
【請求項14】
前記固体担体は磁気ビーズである、請求項10〜13のいずれか一項に記載の試薬。
【手続補正書】
【提出日】2017年6月23日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]
【国際調査報告】