特表2017-526840(P2017-526840A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-526840(P2017-526840A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】ビット、特に丸形シャンクビット
(51)【国際特許分類】
   E21C 35/18 20060101AFI20170818BHJP
【FI】
   E21C35/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-513486(P2017-513486)
(86)(22)【出願日】2015年9月8日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月9日
(86)【国際出願番号】EP2015070474
(87)【国際公開番号】WO2016038021
(87)【国際公開日】20160317
(31)【優先権主張番号】102014112964.4
(32)【優先日】2014年9月9日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512103321
【氏名又は名称】ベテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Betek GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ クレーマー
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ フリーデリヒス
【テーマコード(参考)】
2D065
【Fターム(参考)】
2D065DA16
(57)【要約】
本発明は、ビット(10,11)、特に切削ドラムにおいて使用される丸形シャンクビットに関し、ビットヘッド(20)と、ビットホルダ(50)内に当該ビットを保持するためのビットシャンク(40)とを備えており、当該ビットのビットヘッドは、少なくとも1つの切削領域(20.3)を有している。平面のおよび/または凹面のエジェクト領域(20.4)が、切削領域(20.3)に間接的にまたは直接的に接続して、ビットヘッドの中央領域に配置されている。このビットは、廃土石物質のための最適化された搬出機能を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビット(10,11)、特に切削ドラムにおいて使用される丸形シャンクビットであって、ビットヘッド(20)と、ビットホルダ(50)内にビット(10,11)を保持するためのビットシャンク(40)とを備えており、当該ビット(10,11)の前記ビットヘッドは、少なくとも1つの切削領域(20.3)を有している、ビット(10,11)において、
前記切削領域(20.3)に間接的にまたは直接的に接続して、平面のおよび/または凹面のエジェクト領域(20.4)が、前記ビットヘッド(20)の中央領域に配置されていることを特徴とする、ビット(10,11)。
【請求項2】
前記切削領域(20.3)は、前記ビットヘッド(20)の、前記ビットシャンクとは反対側の端部において、当該ビット(10,11)の、送り方向(V)の方向に方向付けられた前側(20.1)に取り付けられた、硬質材料製、特に硬質合金製の少なくとも1つの切削エレメント(30)を有しており、および/または前記エジェクト領域(20.4)は、特に硬質合金製の少なくとも1つのプレート形状の硬質材料エレメント(28)を有していて、該硬質材料エレメント(28)は、間接的にまたは直接的に前記切削エレメント(30)に接続されている、請求項1記載のビット(10,11)。
【請求項3】
前記ビットヘッド(20)の前記エジェクト領域(20.4)に間接的にまたは直接的に、変向領域(20.5)が配置されており、該変向領域(20.5)は、当該ビット(10,11)の前記前側(20.1)に向かって延びており、前記切削領域(20.3)、前記エジェクト領域(20.4)および前記変向領域(20.5)によって、当該ビット(10,11)の前記前側(20.1)に向かって方向付けられたショベル形状の凹部(20.6)が形成されている、請求項1または2記載のビット(10,11)。
【請求項4】
前記ビットヘッド(20)は、保持部分(23)を有していて、該保持部分(23)は、前記切削領域(20.3)および前記エジェクト領域(20.4)に配置されており、前記保持部分(23)は前記切削領域(20.3)および/または前記エジェクト領域(20.4)において、該保持部分(23)の両側に配置された側部の接続面(25.1,25.2)を有しており、該接続面(25.1,25.2)の相互の間隔が、前記前側(20.1)を起点として当該ビット(10,11)の後側(20.2)に向かって減少している、請求項1から3までのいずれか1項記載のビット(10,11)。
【請求項5】
前記切削エレメント(30)は、当該ビット(10,11)の前記前側(20.1)に向かって方向付けられた固定部材(36)と、該固定部材(36)から当該ビット(10,11)の前記後側(20.2)に向かって方向付けられた付加部(32)とによって形成されており、前記切削エレメント(30)は、前記ビットヘッド(20)の最も外側の端部において切削縁(31)を形成しており、前記切削エレメント(30)は、前記切削縁(31)を起点として前記固定部材(36)に向かって導出面(37)を形成し、かつ前記付加部(32)に向かって逃げ面(33)を形成している、請求項1から4までのいずれか1項記載のビット(10,11)。
【請求項6】
前記固定部材(36)は接触面(35)を形成し、かつ前記付加部(32)は支持部分(34)を形成しており、前記切削エレメント(30)は、素材結合式結合部を用いて、前記接触面(35)と接触領域(24.2)との間および/または前記支持部分(34)と前記保持部分(23)の支持領域(24.1)との間において、前記保持部分(23)に保持されている、請求項5記載のビット(10,11)。
【請求項7】
前記ビットヘッド(20)は、前記切削領域(20.3)、前記エジェクト領域(20.4)および/または前記変向領域(20.5)において、摩耗防止被覆層(29)によって、特に装甲溶接によって被覆されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のビット(10,11)。
【請求項8】
前記摩耗防止被覆層(29)は、少なくとも最低間隔によって、前記切削エレメント(30)および/または前記保持部分(23)の、前記硬質材料エレメント(28)を保持する領域に対して間隔を空けて装着されている、請求項7記載のビット(10,11)。
【請求項9】
前記切削エレメント(30)の前記切削縁(31)は、当該ビット(10,11)の中心長手方向平面(M)に沿った方向に配置されていて、該中心長手方向平面(M)の面垂線が当該ビット(10,11)の前記前側(20.1)の方向に延びており、特に前記切削縁(31)は、当該ビット(10,11)の中心長手方向平面(M)に沿って配置されている、請求項5から8までのいずれか1項記載のビット(10,11)。
【請求項10】
前記切断エレメント(30)は前側に導出面(37)を有していて、該導出面(37)は、膨らんだ形に、特に凸面状に成形されており、および/または前記導出面(37)は、前記前側(20.1)に向かって方向付けられた、第1の外角を備えた縁部を有しており、および/または前記切削縁(31)は、第2の外角を備えた切削先端(38)を有しており、および/または前記逃げ面(33)は、第3の外角を備えた縁部を有しており、および/または前記外角は、前記前側(20.1)から前記後側(20.2)に向かって延びる、当該ビット(10,11)の第2の中心長手方向平面に沿った方向に配置されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のビット(10,11)。
【請求項11】
前記ビットシャンク(40)は、丸形シャンク(42)として形成されており、前記ビットシャンク(40)は、前記ビットホルダ(50)の形状結合対応エレメントと共働するのに適した少なくとも1つの形状結合エレメントを有しており、または前記ビットホルダ(50)に、該ビットホルダ(50)に固定可能なロック部材(60)が形状結合対応エレメントとして対応配置可能であり、かつ当該ビット(10,11)は前記形状結合エレメントによって前記形状結合対応エレメントに回動不能に固定可能である、請求項1から10までのいずれか1項記載のビット(10,11)。
【請求項12】
前記ビットヘッド(20)は、前記ビットシャンク(40)の側に支持体(27)を有しており、該支持体(27)は、半径方向において前記ビットシャンク(40)を越えて張り出している支持面(27.1)によって終端している、請求項1から11までのいずれか1項記載のビット(10,11)。
【請求項13】
前記変向領域(20.5)を用いて、前記エジェクト領域(20.4)から前記ビットヘッド(20)の前記前側(20.1)へと延びる変向面(24.5)が形成されており、該変向面(24.5)は、前記ビットヘッド(20)の中央領域を起点として、該ビットヘッド(20)の前記前側(20.1)に向かって、前記ビットシャンク(40)の方向に下降している、請求項3から12までのいずれか1項記載のビット(10,11)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビット、特に切削ドラムにおいて使用される丸形シャンクビットであって、ビットヘッドと、ビットホルダ内に当該ビットを保持するためのビットシャンクとを備えており、当該ビットのビットヘッドは、少なくとも1つの切削領域を有している、ビットに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなビットは、独国特許発明第3701905号明細書に基づいて公知である。このビットは、ビットヘッドと、このビットヘッドに一体成形されていて丸形シャンクとして形成されたビットシャンクとから成っている。ビットヘッドおおびビットシャンクは、中心長手方向軸線を中心にして回転対称的に構成されている。ビットヘッドからビットシャンクへの移行部は、カラーとして形成されていて、このカラーは、ビットヘッドの最大外径を成している。ビットヘッドは、ビット先端に向かって円錐形に先細になっている。ビット先端は、硬質合金インサートによって形成されている。ビットはそのビットシャンクにおいて、緊締スリーブを用いて、ビットホルダの対応する収容部において保持されている。緊締スリーブは、ビットシャンクを取り囲む溝に係合していて、ビットが軸方向においては保持されているが、その中心長手方向軸線を中心にして回転できるようになっている。この構成には、ビットがその使用中にすべての側から均一に摩耗するという利点がある。
【0003】
このようなビットは、例えば、大規模の露天掘りにおいて岩石および地面を破砕するための、いわゆるサーフィスマイナ(Surface Miner)の回転する切削ドラムにおいて使用される。廃土石物質(Abraummaterial)は、切削ドラムに固定されたビットによって細かく砕かれ、切削ドラムの運動によって排出部に搬送され、そこから次いで、例えばチャージベルトシステムによって搬出される。
【0004】
この記載したビットにおける欠点は、ビットの形状付与に基づいて、特に例えばオイルサンドのような比較的軟質の廃土石物質に対する、ビットの搬送性能が低いことにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゆえに、本発明の課題は、冒頭に述べた形式のビットを改良して、搬送機能が改善されたビットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、切削領域に間接的にまたは直接的に接続して、平面のおよび/または凹面のエジェクト領域が、ビットヘッドの中央領域に配置されていることによって解決される。切削領域によって地面もしくは岩石は、掘り返されかつ細かく砕かれる。面状のエジェクト領域は、廃土石物質を捕捉し、ビットおよび切削ドラムの送り方向に搬送する。エジェクト領域の面状の構成によって、極めて細かく砕かれた、塑性変形可能なまたは砂状の廃土石物質も確実に捕捉され、切削ドラムの回転に従って大量に排出部に搬送される。
【0007】
高い切削性能と同時にビットの長い耐用寿命が得られる実施形態では、切削領域は、ビットの、ビットシャンクとは反対側の端部において、当該ビットヘッドの、送り方向(V)の方向に方向付けられた前側に取り付けられた、硬質材料製、特に硬質合金製の少なくとも1つの切削エレメントを有しており、および/またはエジェクト領域は、特に硬質合金製の少なくとも1つのプレート形状の硬質材料エレメントを有していて、硬質材料エレメントは、間接的にまたは直接的に切削エレメントに接続されている。切削エレメントおよびプレート形状の硬質材料エレメントは、その後側に配置されたビットヘッド領域を、研磨による摩耗に対して保護する。このとき、硬質材料エレメントが切削エレメントに直接的に接続していて、両エレメントの間に、廃土石物質が作用するおそれがある間隙が存在しないと、特に高い耐摩耗性が得られる。
【0008】
特に粘稠性または砂状の廃土石物質の搬出を改善することができる実施形態では、ビットヘッドのエジェクト領域に間接的にまたは直接的に、変向領域が配置されており、変向領域は、ビットの前側に向かって延びており、切削領域、エジェクト領域および変向領域によって、ビットの前側に向かって方向付けられたショベル形状の凹部が形成されている。この凹部によって、例えば塑性変形可能な廃土石物質が、切削領域において破砕され、エジェクト領域および変向領域を介して球形状またはロール形状に成形される。このように成形された廃土石物質は、エジェクト領域によってさらに搬送され、かつ変向領域によって保持される。砂状の廃土石物質は、変向領域によって凹部内に保持される。
【0009】
ビットヘッドの研磨による摩耗をさらに減じる実施形態では、ビットヘッドは、保持部分を有していて、保持部分は、切削領域およびエジェクト領域に配置されており、保持部分は切削領域および/またはエジェクト領域において、保持部分の両側に配置された側部の接続面を有しており、接続面の相互の間隔が、前側を起点としてビットの後側に向かって減少している。このように構成されていると、保持部分の幅は、廃土石物質に直接さらされるビット前側を起点として、ビット後側に向かって先細になる。このように形成されたアンダカットによって、側部の接続面には、廃土石物質による減少した機械的な負荷しか加えられない。既に述べたように、強い負荷を受ける前側を、切削エレメントおよび硬質材料エレメントによって保護することができるので、ビットの長い耐用寿命を得ることができる。このように成形されたビットを、地面を通して容易に移動できることによって別の利点が得られる。これによって、切削ドラムの運動のために使用される出力が減少し、ひいてはエネルギを節約することができる。
【0010】
本発明の好適な変化形態によれば、切削エレメントは、ビットの前側に向かって方向付けられた固定部材と、固定部材からビットの後側に向かって方向付けられた付加部とによって形成されており、切削エレメントは、ビットヘッドの最も外側の端部において切削縁を形成しており、切削エレメントは、切削縁を起点として固定部材に向かって導出面を形成し、かつ付加部に向かって逃げ面を形成している。これによって、機械的に強い負荷を受ける切削縁と、切削縁に直接的に接続していて同様に機械的に強い負荷を受ける領域とが、硬質材料によって、高められた摩耗に対して保護される。そしてこれにより、ビットヘッドの耐用寿命は大幅に長くなる。
【0011】
保持部分に切削エレメントを確実に固定することができる実施形態では、固定部材は接触面を形成し、かつ付加部は支持部分を形成しており、切削エレメントは、素材結合式結合部を用いて、接触面と接触領域との間および/または支持部分と保持部分の支持領域との間において、保持部分に保持されている。素材結合式の結合部は、例えば接着によって、または好ましくはろう接によって形成することができる。特に堅固な結合部を形成するために、接触面と接触領域との間、および支持部分と支持領域との間にも、このような結合部が形成されている。このような両側における固定によって、切削エレメントに対する破損リスクをさらに減じることができる。
【0012】
ビットヘッドの耐用寿命を延ばすことができる実施形態では、ビットヘッドは、切削領域、エジェクト領域および/または変向領域において、摩耗防止被覆層によって、特に装甲溶接によって被覆されている。このように構成されていると、例えば機械的に特別な負荷を受ける切削領域において、側部の接続面および、切削エレメントの逃げ面の延長部に配置された接続面に、摩耗防止被覆層を設けることができ、ひいてはこれらの接続面を、研磨による摩耗に対して保護することができる。相応に、ビットヘッドのエジェクト領域における側部の接続面も、摩耗防止被覆層によって保護されていてよい。このような処置によって、切削エレメントの後側および硬質材料エレメントの後側における保持部分が侵食されること、およびこれによって切削エレメントまたは硬質材料エレメントが保持部分から解離することを阻止することができる。エジェクト領域に接続する変向領域は、ビットヘッドの前側に向かって摩耗防止被覆層を備えていて、これによって保護されていてもよい。このような処置によって、ビットヘッドの前側に向かって方向付けられていて廃土石物質に直接さらされる、ビットヘッドの凹部を、研磨による早期の摩耗に対して完全に保護することができる。好ましくは、最も強い負荷を受ける切削領域および同様に強い負荷を受けるエジェクト領域は、前側に向かって切削エレメントおよび硬質材料エレメントによって保護され、あまり負荷を受けない変向領域は、摩耗防止被覆層によって保護される。これによって、ビットヘッドのすべての領域のために比較的長い耐用寿命を得ることができ、その結果、ビットヘッドは、コンポーネントの故障によって早期に破損しなくなる。
【0013】
切削エレメントまたは硬質材料エレメントが被覆プロセス時に破損することを回避するために、または、切削エレメントまたは硬質材料エレメントが取り付けられる載置面が変形することを回避するために、別の実施形態では、摩耗防止被覆層は、少なくとも最低間隔によって、切削エレメントおよび/または保持部分の、硬質材料エレメントを保持する領域に対して間隔を空けて装着されている。特に摩耗防止被覆層を装甲溶接として設ける場合には、溶接領域において極めて高い温度が生じることがある。切削エレメント、硬質材料エレメントまたは保持部分におけるその載置面が高い温度にさらされ、これによって破損または変形してしまうことは、最低間隔によって回避される。
【0014】
高い切削性能と同時にビットヘッドに伝達される小さなねじり力を得ることができる実施形態では、切削エレメントの切削縁は、ビットの中心長手方向平面(M)に沿った方向に配置されていて、中心長手方向平面の面垂線がビットの前側の方向に延びており、特に切削縁は、ビットの中心長手方向平面(M)に沿って配置されている。
【0015】
本発明の好適な実施形態では、切断エレメントは前側に導出面を有していて、導出面は、膨らんだ形に、特に凸面状に成形されており、および/または導出面は、前側に向かって方向付けられた、第1の外角を備えた縁部を有しており、および/または切削縁は、第2の外角を備えた切削先端を有しており、および/または逃げ面は、第3の外角を備えた縁部を有しており、および/または外角は、前側から後側に向かって延びる、ビットの第2の中心長手方向平面に沿った方向に配置されている。膨らんだ形の導出面によって、切削エレメントは、特に強く研磨負荷を受ける領域において、切削エレメントの耐用寿命を大幅に高めることができるように補強される。同じことは、中心長手方向平面に沿って、前方に向かって突出した縁部を有する導出面に対しても言える。膨らんだ形状によって、廃土石物質はエジェクト領域に強く搬送される。縁部によって廃土石物質の運動は追加的に側部の成分を得るので、廃土石物質はエジェクト領域において均等に分配されて存在することになる。切削先端の形成によって、ビットは、比較的容易に、比較的硬質の地面および岩石内に進入する。このとき、搬出されない廃土石物質を、同様に外縁を備えた逃げ面によって側方へと押圧することができる。ビットの前側から後側に向かって延びる中心長手方向平面に沿って配置された縁部を備える切削エレメントは、比較的硬質の物質においてより良好な切削結果および除去結果を示し、これに対して凹面状に成形された切削エレメントは、軟質の地面および塑性変形可能な地面に、より良好に適している。従って、外縁を備えた切削エレメントを有するビットは、例えば、冬期に凍結した地面においても使用することができ、これに対して、膨らんだ形の切削縁を備えたビットは夏期に用いられる。
【0016】
先端に向かって先細になる回転対称のビットヘッドを備えたビットとは異なり、本発明に係るビットは、確定された前側および後側を有している。切削エレメントを備えた前側を運転中に送り方向に方向付けたままにしておくために、別の実施形態では、ビットシャンクは、丸形シャンクとして形成されており、ビットシャンクは、ビットホルダの形状結合対応エレメントと共働するのに適した少なくとも1つの形状結合エレメントを有しており、または、ビットホルダに固定可能なロック部材が形状結合対応エレメントとしてビットホルダに対応配置可能であり、かつビットは形状結合エレメントによって形状結合対応エレメントに回動不能に固定可能である。このようにして、ビットは、その円形のビットシャンクにもかかわらず、回動不能にビットホルダ内に保持される。好ましくは対称的なビットヘッドを備えていて運転時に中心長手方向軸線を中心にして回転する公知の丸形シャンクビットと同じビットホルダにおいて、ビットを保持することができる。これによって、切削ドラムには、破砕される物質に関連して、公知の回転するビットまたは本発明に係るロックされたビットを装着することができる。
【0017】
ビットをその軸線方向の位置においてロックするため、およびビットホルダを強くなる摩耗に対して保護するために、別の実施形態では、ビットヘッドは、ビットシャンクの側に支持体を有しており、支持体は、半径方向においてビットシャンクを越えて張り出している支持面によって終端している。このように構成されていると、支持面は、ビットホルダの、ビット収容部を取り囲む端面に載置されることになる。これによって、ビットヘッドとビットホルダとの間に大面積の載置面が得られるので、軸方向においてビットヘッドにもたらされる大きな力をも、載置面の変形なしにビットホルダに伝達することができる。支持体の張出しによって、廃土石物質はビットホルダに沿って通過するように導かれるので、ビットホルダに対する廃土石物質の摩耗作用を、小さく保つことができる。
【0018】
廃土石物質の流れは、ビットヘッドの凹部の形状付与によって決定的な影響を受ける。切削エレメントによって細かく砕かれた物質を効果的に搬出することができる実施形態では、変向領域を用いて、エジェクト領域からビットヘッドの前側へと延びる変向面が形成されており、変向面は、ビットヘッドの中央領域を起点として、ビットヘッドの前側に向かって、ビットシャンクの方向に下降している。変向面によって、その下に位置している支持体は覆われ、かつ保護されている。大きな機械的な保護は、変向面が摩耗防止被覆層を備えている場合に得られる。
【0019】
次に、図面に示した実施形態を参照しながら、本発明を詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】比較的軟質の物質を破砕するビットを示す側面図である。
図2】切削エレメントを備えた、図1に示したビットのビットヘッドの上端部を示す側面図である。
図3図1に示したビットを後側から見た斜視図である。
図4】比較的硬質の物質を破砕する第2のビットを示す側面図である。
図5図4に示した第2のビットを後側から見た斜視図である。
図6図1に示したビットを後側から見た別の斜視図である。
図7図1および図4に示した断面に相当してビットホルダを示す断面図である。
図8図1および図4に示したビットの、ロック部材の領域における一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には、比較的軟質の物質、特にオイルサンドまたはその他の塑性変形可能なまたは砂状の地面を破砕するビット10が側面図で示されている。
【0022】
ビット10は、ビットヘッド20と、このビットヘッド20に一体に成形されたビットシャンク40とを有しており、このビットシャンク40は、ほぼ、円筒形の丸形シャンク42として形成されている。ビットヘッド20は、ビットシャンク40に向けられた側に支持体27を有しており、この支持体27は、保持部分23に移行している。保持部分23は、ビット10およびビットヘッド20の前側20.1に向けられたショベル形状の凹部20.6を形成している。ビットヘッド20は、ショベル形状の凹部20.6に沿って、双方向矢印によって示された3つの領域に、つまり前側の切削領域20.3、中間のエジェクト領域20.4および後側の変向領域20.5に分割されている。切削領域20.3には、図3における記載から明瞭に認識できるように、ビットヘッド20の前側20.1に向かって、互いに並んで配置された2つの切削エレメント30が保持部分23に固定されている。エジェクト領域20.4において、互いに並んで配置された2つのプレート状の硬質材料エレメント28は、その後に位置している保持部分23を覆っている。変向領域20.5には、摩耗防止被覆層29を備えた変向面24.5が配置されており、この変向面24.5は、軽く曲げられた相応の形状付与によって、エジェクト領域20.4の、硬質材料エレメント28によって形成された平面から、ビットヘッド20の前側20.1に向かって延びている。変向面24.5は、変向面24.5がエジェクト領域20.4への移行部からビットヘッド20の前側の終端部に向かって下降するように方向付けられている。
【0023】
切削エレメント30および硬質材料エレメント28の後側に接続して、保持部分23は上側および下側の側部の接続面25.1,25.2を形成している。図1および図3において認識できるように、側部の接続面25.1,25.2は摩耗防止被覆層29を備えている。側部の接続面25.1,25.2は、その前側領域において側部で切削エレメント30および硬質材料エレメント28に接続している。ビットヘッド20の両側において互いに反対側に位置している側部の接続面25.1,25.2の相互の間隔は、ビット10およびビットヘッド20の後側20.2に向かって減少している。
【0024】
図1にかつ図2に拡大されて示されているように、切削エレメント30はほぼL字形に、固定部材36と、この固定部材36にビットヘッド20の後側20.2に対して角度を成して一体成形された付加部32とから形成されている。前側20.1に向かって、固定部材36は、膨らんだ形に成形された導出面37を有することができ、この導出面37は、切削エレメント30の最も外側の端部、ひいてはビットヘッド20の最も外側の端部において切削縁31に移行している。切削縁31を起点として、付加部32によって斜めに下降する逃げ面33が形成されており、この逃げ面33は、ビット10の送り方向Vとは逆向きに方向付けられている。導出面37とは反対の側に、固定部材36は接触面35を有しており、この接触面35は、逃げ面33の反対側に配置された支持部分34に対して角度を成して位置している。接触面35および支持部分34は、保持部分23の接触領域24.2および支持領域24.1に接触していて、この接触領域24.2および支持領域24.1に、例えばろう接によって形成される素材結合式結合部によって結合されている。代替的に、素材結合式結合部は、接着によっても形成することができる。逃げ面33の延長線上に、保持部分23は、同様に摩耗防止被覆層29を備えた接続面26.1を有しており、この接続面26.1は、保持部分23の丸み付け領域26.2に移行している。この丸み付け領域26.2を介して、接続面26.1の斜めの方向付けは、支持体27の外側面の、中心長手方向平面Mの方向に沿って延びる方向付けへと変化する。
【0025】
直方体形状の硬質材料エレメント28は、切削エレメント30に直接的に接続して、ビットヘッド20の前側20.1に固定されている。そのために、硬質材料エレメント28はその後側で、保持部分23の固定平面24.4に素材結合式に、本実施形態ではろう接によって、または代替的に接着によって、結合されている。硬質材料エレメント28の正確な位置決めのために、接触領域24.2と固定平面24.4との間には、階段形状の位置決め縁24.3が設けられており、この位置決め縁24.3には、硬質材料エレメント28がその上側の端面で接触している。
【0026】
接続面26.1および変向面24.5の側部の接続面25.1,25.2の摩耗防止被覆層29は、切削エレメント30もしくは硬質材料エレメント28から最小間隔を空けて位置している。
【0027】
ビットヘッド20の、切削エレメント30とは反対側に位置する終端部は、円筒形の支持体27によって形成されており、この支持体27は、ビットシャンク40に一体に移行している。支持体27の、ビットシャンク40から半径方向に張り出している端部側の支持面27.1から、丸形シャンク42への移行部には、円筒形の丸形シャンク42を取り囲む円錐形のセンタリング部分41が設けられている。丸形シャンク42には、円錐形の先細領域43が接続しており、この先細領域43には、ロックピン44として形成された形状結合エレメントが一体成形されている。ロックピン44は、両方の側面および後側に、ピン面44.1を有し、かつ前側20.1にピン丸み部44.2を有している。ビットシャンク40は、端部側において、ディスク形状の端部材46によって終端しており、この端部材46は、溝45によってロックピン44から切り離されている。
【0028】
図1がさらに示すように、ビット10はそのビットシャンク40を介して、ビットホルダ50内に保持されている。図示を良好にするために、ビットホルダ50は断面図で示されている。
【0029】
ビットホルダ50は、ビットヘッド20に向かって、保持領域54と、それとは反対側に位置するベース部分56とを有している。ビットホルダ50は、円筒形の基本形状を有しており、この基本形状は、ビットヘッド20に向けられた領域において、傾斜部53によって先細になっている。傾斜部53は、丸く面取りされた縁部を介して、ビット10の中心長手方向軸線に対して横方向に方向付けられた端面51に移行しており、この端面51には、ビットヘッド20の支持面27.1が接触している。ビットシャンク40に向かって、端面51は、ビット10のセンタリング部分41に合わせられた傾斜部として形成されたセンタリング収容部52を有している。センタリング部分41は、ビットホルダ50の保持領域54に配置されたビット収容部55の終端部を形成している。ビット収容部55は、ビットシャンク40の丸形シャンク42の輪郭に従って、円筒孔として形成されている。
【0030】
図1から、かつ図3の後側から見た斜視図から分かるように、ビットホルダ50のベース部分56は、前側20.1に向かって方向付けられた前壁56.5と後側の取付け開口56.3とによって、取付け開口56.3によってかつビットホルダ50の端部側に向かって開放された、部分的に取り囲まれた中空室57を形成している。取付け開口56.3は、ほぼ半円形状の前壁56.5の終端面56.4によって画定されており、終端面56.4は、ビットホルダ50の保持領域54を起点としてベース部分56の下端部に向かってビットホルダ50の前側20.1に対して斜めに延びるように配置されている。
【0031】
中空室57自体は、前側20.1に向かって、前壁56.5のほぼ半円形の前壁面56.1によって画定されており、この前壁面56.1は、側部において、取付け開口56.3に向かって幾分開放していて直線的に延びている2つの側壁面56.2に移行している。これは、VIIによってマーキングされた切断線に沿って切断された図7の断面図に明瞭に示されている。
【0032】
図1がさらに示すように、ビットシャンク40のロックピン44は、断面図で示されたロック部材60において固定されている。このロック部材60は、ビットシャンク40の溝45に係合するクランプエレメント70によって、ビットシャンク40の軸線方向において保持されている。ロック部材60は、ビットホルダ50に対してもロックピン44に対しても形状結合式結合部を形成しており、この形状結合式結合部は、ビット10の中心長手方向軸線を中心にしたビット10の回転を阻止する。ロックピン44はそのために、ロック部材60の貫通孔64内に保持されている。
【0033】
ビットホルダ50は、その前側20.1で、切削ドラム(図示せず)に溶接されている。ビットホルダ50への取付けのために、ビット10のビットシャンク40が、ビットホルダ50のビット収容部55内に導入され、ロック部材60はロックピン44に差し嵌められ、クランプエレメント70は溝45に挟み込まれる。ロック部材60の方向付けは、その外輪郭と中空室57の輪郭とによって設定されている。ロックピン44とロック部材60の貫通孔64との構成によって、ビット10の方向付けも決定されているので、ビット10の前側20.1は、切削ドラム、ひいてはビット10の送り方向Vに向く。ビット10は、軸線方向において、ビットヘッド20がその支持面27.1でビットホルダ50の端面51に載置されること、およびクランプエレメント70が溝45に係合することによって決定されている。これによって、丸形シャンクビットとして形成されたビット10は、ビットホルダ50内に回動不能に保持される。
【0034】
運転時においてビット10は、送り方向Vにおける切削ドラムの回転によって、切削される地面を貫いて移動させられる。このときまず、前側の切削縁31が地面の中に係合して、地面を細かく砕く。公知の丸形シャンクビットのビット先端に比べて広幅の切削縁31によって、地面は、比較的広幅のラインに沿って破砕されて捕捉される。このようにして剥がされた廃土石物質は、切削エレメント30の導出面37の凸状の形状付与によって、ビットヘッド20のエジェクト領域20.4内に導かれる。そこで廃土石物質は、硬質材料エレメント28によって捕捉され、切削ドラムの回転に相応して連行される。特に、例えば岩石または非付着性の砂のような非粘稠性の廃土石物質では、変向面24.5は、廃土石物質が凹部20.6から流出することを阻止する。塑性変形可能な廃土石物質では、このような廃土石物質は、凹部20.6のショベル形状によって、切削領域20.3からエジェクト領域20.4を介して変向領域20.5に案内され、このときに球形状またはロール形状の凝塊に変形させられる。このように成形された物質は、凹部20.6において例えば排出部(Auswurf)に搬送され、そこから次いで、例えばチャージベルトシステム(図示せず)によって搬出される。
【0035】
切削領域20.3およびエジェクト領域20.4において凹部20.6を形成する、ビットヘッド20の表面は、本実施形態では切削エレメント30および硬質材料エレメント28によって形成されているが、このビットヘッド20の表面は、ほぼビット10の中心長手方向平面Mに沿って延びている。中心長手方向平面Mの面垂線は、ビット10の前側20.1の方向に延びている。中心長手方向平面Mの領域において、ビットヘッド20はその最大直径を有している。これによって、切削領域20.3およびエジェクト領域20.4を、送り方向Vに対して横方向に極めて広幅に形成することができ、これによって廃土石物質に対する高い搬送性能が発生する。従って、ビット10は特に、比較的軟質の物質、例えばオイルサンドの切削に適している。
【0036】
切削領域20.3は、ビット10の運転時に最も強く機械的な負荷を受ける。従って、この領域においてビット10は、その前側20.1に向かって、硬質材料、ここでは硬質合金から製造された切削エレメント30の導出面37を備えた固定部材36によって保護されている。固定部材36の膨らんだ形状付与によって、最大摩耗の領域には、切削エレメント30の最大材料強度が存在しており、この最大材料強度は、切削縁31に対する間隔の増大と共に、ひいては機械的な負荷の低下と共に減少する。このような最適化された材料使用によって、主として材料コストによって影響される、切削エレメント30の製造コストを低減することができる。互いに隣接する2つの切削エレメント30を使用することによって、切削エレメント30内に伝達される力、ひいてはその破損のおそれを、比較的広幅のただ1つの切削エレメント30に比べて減じることができる。
【0037】
送り方向Vに方向付けられた逃げ面33を介して、切削エレメント30の付加部(Ansatz)を、切削縁31に続いて、位置固定の地面に沿って通過するように案内することができる。逃げ面33は、大きな段部なしに、同方向に方向付けられた接続面26.1に移行するので、ここにおいても通過滑動する廃土石物質に対する係合点は発生しない。切断エレメント30は、接触面35および支持部分34におけるそのろう接結合部によって、保持部分23に不動に結合されている。このとき切削エレメント30への力作用は、ほぼ送り方向Vとは逆向きに行われ、ひいては圧着力として、切削エレメント30と保持部分23との間における境界面に対して作用する。この境界面に対して作用する大きな引張り力を、このようにして回避することができるので、切削エレメント30は保持部分23に確実に保持される。接続面26.1と、ビットヘッド20の互いに反対側に位置する側において切削エレメント30に接続している上側側部の接続面25.1とは、装甲溶接(Panzerschweissung)として形成された摩耗防止被覆層29を備えている。これによって、切削領域20.3は、摩耗防止被覆層29と切削エレメント30との間に設けられた最小間隔に到るまで完全に摩耗を防止されている。摩耗防止被覆層29によって特に、保持部分23の、切削エレメント30に接続する領域が、削り取られること、およびこれによって切削エレメント30が保持部分23から解離してしまうことが回避される。
【0038】
エジェクト領域20.4は、前側20.1に向かって硬質材料エレメント28によって保護されている。エジェクト領域20.4は切削領域20.3よりは強い負荷を受けないので、硬質材料エレメント28の材料厚は、切削エレメント30の材料厚に比べて減少している。硬質材料エレメント28は、ろう接によって形成された素材結合式結合部によって、保持部分23に結合されている。硬質材料エレメント28および変向面24.5に接続する下側側部の接続面25.2は、同様に装甲溶接によって摩耗防止被覆層29として、高められる摩耗に対して保護されているので、硬質材料エレメント28の後ろにおけるこの領域も削り取られることがない。保持部分23の後側は、エジェクト領域20.4および変向領域20.5において、丸み付け領域26.2によって残っている廃土石物質から後退させられているので、ここでは地面に沿ったビット10の通過滑動時に、ビットヘッド20に対する比較的小さな摩耗負荷しか発生しない。製造コストを低減するために、この領域には摩耗防止被覆層29は設けられていない。
【0039】
互いに反対側に位置する上側側部の接続面25.1の間および互いに反対側に位置する下側側部の接続面25.2の間における相互間隔は、切削エレメント30もしくは硬質材料エレメント28を起点としてビットヘッド20の後側20.2に向かって減少しているので、アンダカットが形成されている。これにより側部の接続面25.1,25.2は、廃土石物質のための作用点を形成しない。これによって一方では、側部の接続面25.1,25.2の摩耗が減少し、他方ではビット10を、切削される地面を通して比較的容易に引っ張ることができる。その結果、切削ドラムを駆動するのに必要な出力が減少し、ひいてはエネルギが節約される。
【0040】
変向領域20.5は、切削領域20.3およびエジェクト領域20.4に比べて、最も僅かしか、摩耗を生じさせる負荷を受けない。従って、変向面24.5に設けられた摩耗防止被覆層29は、変向領域20.5の十分な保護を提供する。ゆえに、変向領域20.5においては、高価な硬質材料エレメントを省くことができる。従って、摩耗防止処置は、すべての領域のためにほぼ等しい耐用寿命が得られるように、切削領域20.3,エジェクト領域20.4および変向領域20.5の種々異なる機械的な負荷に合わせられている。これによって、ビット10が、構造に起因した1つの領域における早期の摩耗に基づいて、早期に故障することが回避される。同時に、特に高価な硬質材料および摩耗防止被覆層29のための材料使用は、最適化されている。
【0041】
摩耗防止被覆層29は、最小間隔を残して、切削エレメント30および硬質材料エレメント28に接近させられている。これによって、切削エレメント30または硬質材料エレメント28が、被覆時に発生する高い温度によって損傷または破壊することが回避される。さらに切削エレメント30および硬質材料エレメント28のための支持領域が、熱に起因して変形することが回避される。
【0042】
ほぼ円筒形に形成された支持体27は、ビットホルダ50の上側領域を覆っていて、この上側領域が早期に摩耗することを防止する。これによって、ビットホルダ50および容易に交換可能なビット10自体のための大幅に長い耐用寿命が得られる。支持体27の、ビットシャンク40の周囲に配置された支持面27.1によって、ビットホルダ50の端面51における、ビットヘッド20の大面積の載置面が形成されており、その結果、この領域においては、ビットヘッド20を介してもたらされる力による変形を回避することができる。
【0043】
ビット収容部55は、ビット10の丸形シャンク42に対して、所定の遊びだけ大きな直径を有しており、これによりビットシャンク40は、取付け時にビット収容部55内に容易に挿入することができ、かつ取外し時に再び容易に取り出すことができる。センタリング部分41によって、センタリング載置部52と共働して、ビット収容部55に対するビット10およびビットシャンク40の正確な方向付けが達成される。
【0044】
ビットホルダ50は、保持領域54において、中央孔として形成されたビット収容部55の周囲において壁厚に形成されており、これによって、ビットシャンク40を通して伝達される横方向力を確実に受け止めることができる。そのためにビットホルダ50の直径は、ビットヘッド20に向けられた端面51を起点として傾斜部53によって拡大されている。この傾斜部53は、通過滑動する廃土石物質を、張り出した縁部なしにビットホルダ50に沿って導くので、ビットホルダ50のこの拡大領域において摩耗力は可能な限り小さく保たれる。
【0045】
ビットホルダ50のベース部分56はその前壁56.5で、形成された中空室57を前側20.1に向かって取り囲んでいる。このとき前壁56.5の外輪郭は、接続する保持領域54の外輪郭に合わせられているので、ビットホルダ50は、切削ドラムの相応の収容部に挿入され、かつそこで溶接されることができる。
【0046】
取付け開口56.3を通して、取付け時にロック部材60はロックピン44に押し嵌められ、クランプエレメント70によってビット10と一緒に固定することができる。ロック部材60とロックピン44との間における形状結合式結合部によって、ビット10はその中心長手方向軸線を中心にした回転を阻止されている。相応に、ロック部材60とベース部分56との間における第2の形状結合式結合部によって、ビット10の中心長手方向軸線を中心にしたロック部材60の回転がロックされている。このとき、ロック部材60とビット10のロックピン44との間およびロック部材60とベース部分56との間における形状結合式結合部は、次のように形成されている。すなわち、この場合、ロック部材60は半径方向の方向付けにおいてしか中空室57内に導入することができず、かつビット10は1つの回転方向においてしかロック部材60の貫通孔64内に導入することができないようになっている。ビットヘッド20のショベル形状の凹部20.6は、これによって常に前側20.1に、ひいては送り方向Vに向かって方向付けられている。
【0047】
ビット10を取り外すために、クランプエレメント70は溝45から引き出され、ロック部材60は除去される。ビット10は今や、場合によっては取出し工具を用いて、ベース部分56の、保持領域54に向かい合って位置する開口の側から取り出すことができる。
【0048】
図4には、比較的硬質の物質を破砕するための第2のビット11が側面図で示されている。図4においても、同一部材は図1図3に相応して同じに示されている。
【0049】
図1図3に示したビット10とは異なり、図4に示した第2のビット11は、単に切削領域20.3およびエジェクト領域20.4しか有していない。保持部分23は、切削領域20.3において、ビットヘッド20の前側20.1に向かって、ほぼL字形のただ1つの切削エレメント30によって覆われている。この切削エレメント30の固定部材36の延長部には、接続するエジェクト領域20.4に、直方体形状の硬質材料エレメント28が保持部分23の前側20.1に取り付けられている。
【0050】
代替的に、互いに並んで配置された2つ以上の硬質材料エレメント28が設けられていてもよい。
【0051】
図4に示すように、かつ特に図5における第2のビット11の後側から見た斜視図に示すように、導出面37は屋根形に成形されており、導出面37の、屋根の棟に相応して形成された縁部は、第2のビット11の、前側20.1から後側20.2に向かって延びる中心長手方向平面に沿って方向付けられている。切削エレメント30は、第2のビット11の中心長手方向軸線に対して斜めに方向付けられて、保持部分23に取り付けられていて、縁部がほぼ第2のビット11の送り方向Vに向くようになっている。付加部32によって形成された逃げ面33もまた屋根形に形成されており、ここでは面平面は、送り方向Vに沿って方向付けられている。逃げ面33の、屋根の棟に相応して延びる縁部もまた同様に、第2のビット11の、前側20.1から後側20.2に向かって延びる中心長手方向平面に沿って配置されている。これによって、導出面37から逃げ面33への移行領域には、中心長手方向平面に位置する切削先端38を備えた切削縁31が形成されている。代替的な実施形態では、切削領域20.3は、鏡像的に形成された2つの切削エレメント30を有していてもよく、両切削エレメント30は、中心長手方向平面において延びる切削縁に沿って互いに突き合わされている。
【0052】
切削エレメント30の逃げ面33に接続して、保持部分23は、平らに形成された接続面26.1を有しており、この接続面26.1は、切断エレメント30の付加部32と同じ方向に方向付けられている。接続面26.1は、部分的に摩耗防止被覆層29を備えている。ビットヘッド20の後端部において、接続面26.1は、ビットヘッド20の、第2のビット11の中心長手方向軸線に対して等間隔を空けて延びる後側の表面に曲がっている。この後側の表面は、付加部なしに、支持体27の円筒形の領域に移行している。
【0053】
硬質材料エレメント28は、中心長手方向平面Mに対して幾分傾けられて、エジェクト領域20.4の前側20.1に向かって取り付けられている。硬質材料エレメント28を位置決めするための位置決め縁24.3は、エジェクト領域20.4の下端部における段部によって形成されており、この段部からビットヘッド20は前側20.1に向かって円筒形の外輪郭を成している。硬質材料エレメント28は、端面で位置決め縁24.3に接触している。
【0054】
第2のビット11のビットヘッド20は、図1図3に示したビット10の場合におけるように凹部20.6を形成していない。第2のビット11の保持部分23の、切削エレメント30の導出面37と硬質材料エレメント28とによって形成された前側の表面は、中心長手方向平面Mの領域に配置された切削縁31を起点として、ビットヘッド20の前側20.1に向かって案内されている。これによって、第2のビット11の保持部分23は、図1図3に示した第1のビット10の保持部分23に比べて、大幅に大きな材料厚を有している。支持体27、ビットシャンク40、ロック部材60、クランプエレメント70およびビットホルダ50は、両方のビット10,11のための機能が同じ場合、等しく構成されている。
【0055】
第2のビット11は、特に、硬質の物質、塑性変形不能な物質または砂状でない物質を切削するのに適している。さらに、第2のビット11は、好ましくは、冬期に、凍結した地面において、例えば凍結したオイルサンドにおいて使用することができ、これに対して図1図3に示したビット10は、融けた地面において使用される。
【0056】
形成された切削先端38によって、第2のビット11は、岩石または凍結した物質をも切削することができる。強化されて形成された保持部分23によって、比較的大きな力を廃土石物質に対して伝達することができ、このときにビットヘッド20が損傷することはないので、硬質の物質をも切削することができる。切削エレメント30の屋根形状の導出面37によって、硬質の廃土石物質は横方向に分配され、次いで硬質材料エレメント28によってエジェクト領域20.4において捕捉されて搬出される。従って、第2のビット11は、硬質で脆い物質のために高い切削性能および高い搬送性能を提供する。
【0057】
図6には、図1に示したビット10を後側から見た別の斜視図が示されている。この図面によって、取付け開口56.3を通してビット10の中空室57内を見ることができる。
【0058】
図6が示すように、ロック部材60は、ビットシャンク40(そのうちの端部材46が見える)に差し嵌められていて、ビットシャンク40の溝45に差し込まれたクランプエレメント70によって保持されている。
【0059】
ロック部材60は、ほぼU字形の外輪郭を示しており、この外輪郭でロック部材60は、相応に成形された前壁56.5の前壁面56.1および側壁面56.2に接触している。このU字形形状および側壁面56.2への接触によって、ロック部材60は、ビット10の中心長手方向軸線を中心にした回動に対してロックされている。ロック部材60は、ウェブ63が一体成形されているベース体61を有している。ウェブ63は、クランプ収容部62を、ビットホルダ50の取付け開口56.3の方向に向けられた領域を除いて取り囲んでいる。クランプエレメント70は、クランプ収容部62内に配置されていて、溝45において不動にクランプされている。
【0060】
クランプエレメント70は、長方形の基本形状を備えてプレート状に形成されている。前側の端面を起点として、2つのクランプジョー74によって取り囲まれたクランプ領域73が設けられており、このクランプ領域73には、ビットシャンク40の溝45がクランプされている。クランプ領域73を起点として、クランプエレメント70の中心には、拡大するクランプスリット72が設けられており、このクランプスリット72は、クランプジョー74を結合する湾曲部71において終端している。クランプエレメント70は、好ましくは、特にばね鋼製のばね弾性材料から製造されている。
【0061】
ビット10のビットシャンク40は、取付けのために、ビットホルダ50のビット収容部55に導入される。その後で、取付け開口56.3を通してロック部材60がビットシャンク40に差し嵌められ、クランプエレメント70によって固定される。そのために、クランプエレメント70のクランプ領域73は、溝45に対して押圧され、両クランプジョー74は、クランプスリット72に沿って互いに離れる方向に押圧され、これによって次いで溝45内においてビットシャンク40をしっかりと取り囲むように移動することができる。
【0062】
図7には、図1および図4の断面VIIに相応してビットホルダ50を切断した図が示されている。
【0063】
ベース部分56の前壁56.5によって、半円形の前壁面56.1が、前壁面56.1に両側で接続していて直線的に延びる側壁面56.2と共に形成されている。ほぼU字形のロック部材60の外輪郭は、前壁面56.1および側壁面56.2の形状に合わせられており、これによってロック部材60は、前側20.1に向かって方向付けられた丸み部65.2で前壁面56.1に接触し、かつ側部において丸み部65.2に接続する2つのロック面65.1で、前壁面56.5の両側壁面56.2に接触している。
【0064】
ロック部材60の貫通孔64の輪郭は、ロックピン44の外輪郭に合わせられている。そのために、貫通孔64は、後側20.2に向かってかつ側部に、各1つの貫通孔面64.1を有しており、これらの貫通孔面64.1は、それぞれロックピン44のピン面44.1に接触している。前側20.1に向かって貫通孔64は、凹面状の貫通孔丸み部64.2を有しており、この貫通孔丸み部64.2は、ロックピン44のピン丸み部44.2に接触している。
【0065】
図1および図4に示された段付けられた切断形状によって、取付け開口56.3に向かってクランプ収容部62の端部領域をクランプエレメント70の湾曲部71と共に認識することができる。
【0066】
前壁面56.1および側壁面56.2の形状へのロック部材60の外輪郭の適合によって、ロック部材60の方向付けが不動に所定されている。ビット10,11の中心長手方向軸線を中心にしたロック部材60の回転は、側壁面56.2に接触するロック面65.1によってロックされる。
【0067】
ビットシャンク40のロックピン44もまた、ピン丸み部44.2およびそれに対応する貫通孔丸み部64.2に基づいて、1つの方向付けにおいてしかロック部材60の貫通孔64に導入することができない。ビット10,11の方向付け、ひいてはビットヘッド20の方向付けは、これによって決定される。ビット長手方向軸線を中心にしたビット10,11の回転は、貫通孔面64.1に接触しているピン面44.1によってロックされている。
【0068】
図8には、図1および図4に示したビット10,11がロック部材60の領域における部分断面図で示されている。ロック部材60は、ロックピン44を取り囲むベース体61から形成されており、このベース体61は、ビットホルダ50の保持領域54の方向に向かって当接面61.1を形成している。当接面61.1は、半径方向においてビット収容部55の周りに配置されている、保持領域54の相応の対応面54.1に対して小さな間隔を空けて配置されている。貫通孔64を直接取り囲むように、ベース体61にはガイドウェブ66が一体成形されており、このガイドウェブ66はその内輪郭がロックピン44に倣っていて、かつその外輪郭がビットホルダ50のビット収容部55に倣っている。ガイドウェブ66は、ビット収容部55の端部領域に導入されており、これによって、ロック部材60は、半径方向において固定されている。取付け時における傾倒を回避するために、ガイドウェブ66は周囲に面取り部66.1を有している。ロックピン44は、ロック部材60の貫通孔64に導入されており、ロック部材60と共にロックピン44は、ビット10,11の回動を阻止する形状結合式結合部を形成する。
【0069】
ベース体61は、外周部に向かって環状の面取り部61.2を有しており、この面取り部61.2は、前壁56.5に向かって、ビットホルダ50のベース部分56の突出部56.6に向かい合って位置している。
【0070】
ロック部材60の、保持領域54に向かい合って位置する側において、ベース体61にはウェブ63が一体成形されている。ウェブ63は、クランプ収容部62を、ビットホルダ50の取付け開口56.3に向かって方向付けられた領域を除いて取り囲んでいる。クランプエレメント70は、クランプ収容部62内に配置されていて、ロックピン44と端部材46との間に形成された溝45において不動にクランプされている。
【0071】
これによって、ロック部材60は、ビット10,11の回転運動をロックし、かつクランプエレメント70と共働して、僅かな遊びを除いて、軸方向におけるビット10,11の運動をロックする。この僅かな遊びは、当接面61.1と対応面54.1との間における小さな間隔に基づいて生じる。この遊びは、ビット10,11の取付けもしくは取外しを容易にし、かつ誤差を補償する。当接面61.1によって、軸方向でビット10,11に作用する引張り力を、対応面54.1を介してビットホルダ50に伝達することができる。クランプエレメント70は、ビット10,11の迅速な取付け・取外しを可能にする。クランプエレメント70はロック部材60のクランプ収容部62内に収容されているので、クランプエレメント70は、侵入する廃土石物質による損傷に対して十分に保護されている。
【0072】
ビットホルダ50は、回転がロックされているビット10,11を収容することも、回転が望まれている丸形シャンクビットを収容することも可能である。後者の場合には例えばロックピン44、ロック部材60およびクランプエレメント70が省かれていて、これらの部材の代わりに、軸方向における丸形シャンクビットの運動をロックする公知の保持エレメントを設けることができる。切削ドラムには、使用分野に応じて種々様々なビット10,11を設けることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】