特表2017-526845(P2017-526845A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-526845冷却が最適化されたタービンブレード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-526845(P2017-526845A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】冷却が最適化されたタービンブレード
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/18 20060101AFI20170818BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20170818BHJP
【FI】
   F01D5/18
   F02C7/18 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-569440(P2016-569440)
(86)(22)【出願日】2015年5月27日
(85)【翻訳文提出日】2017年1月6日
(86)【国際出願番号】FR2015051397
(87)【国際公開番号】WO2015181497
(87)【国際公開日】20151203
(31)【優先権主張番号】1454864
(32)【優先日】2014年5月28日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】505277691
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュジョル シャルロット マリー
(72)【発明者】
【氏名】エノー パトリス
(72)【発明者】
【氏名】ディガール ブル ド キュイッサール セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルブルグ マチュー ジャン‐リュック
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202CA07
3G202CB02
3G202JJ02
3G202JJ33
(57)【要約】
本発明は、ターボプロップやターボジェットなどのターボ機械のタービンブレード(51)において、上記ブレードが、根元(P)と、上記根元(P)によって担持され、スパン方向(EV)に延びて先端(S)で終端する羽根とを備え、上記羽根が、互いに横方向に隔置された正圧側の壁および負圧側の壁を備え、上記羽根が、上記根元(P)で冷却空気を取り込み上記羽根を冷却するために上記羽根内で上記冷却空気を循環させるように構成される少なくとも1つのダクト(53)と、上記冷却空気を上記羽根から排出するために上記羽根の上記各壁に作られた孔および/またはスロット(55、67)と、上記羽根の先端(S)を冷却するために上記羽根の上記先端に位置する内部の上内方キャビティ(52)とを備え、上記ダクト(53)の少なくとも1つが上記根元(P)で取り込まれた冷却空気を上記上内方キャビティに直接供給する、ブレードに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボプロップやターボエンジンなどのターボ機械のタービンブレード(31;51;71;91;111;131)において、
前記ブレードが、根元(P)と、前記根元によって担持されスパン方向(EV)に延びて先端(S)で終端する羽根とを備え、
前記羽根が、前縁と、前記前縁の下流に位置する後縁とを備え、
前記羽根が、互いに横方向に隔置された正圧側の壁および負圧側の壁を備え、
前記壁がそれぞれ、前記前縁と前記後縁を接続し、
前記羽根が、
前記ブレードの前記根元で冷却空気を取り込み前記羽根を冷却するために前記羽根内で前記冷却空気を循環させるように構成される少なくとも1つのダクト(32;42;53;73;93;113;133)と、
前記冷却空気を前記羽根から排出するために前記羽根の前記各壁に作られた孔および/またはスロット(55、67;75、86;95、106;115、126;135、146)と、
前記羽根の先端(S)を冷却するために前記羽根の前記先端に位置する上内方キャビティ(33;52;72;92;112;132)とを備え、
前記ダクト(32;53;73;93;113;133)の少なくとも1つが、前記根元(P)で取り込まれた冷却空気を前記上内方キャビティ(33;52;72;92;112;132)に直接供給する、ブレード(31;51;71;91;111;131)。
【請求項2】
前記上内方キャビティ(33;52;72;92;112;132)が、前記羽根の前記後縁の少なくとも1つの冷却スロット(55;75;95;115;135)に供給するために前記羽根の前部から後部まで延びている、請求項1に記載のブレード(31;51;71;91;111;131)。
【請求項3】
前記正圧側の壁が、前記上内方キャビティ(33;52;72;92;112;132)に通じる少なくとも1つの貫通孔または貫通スロットを備えている、請求項1または2に記載のブレード(31;51;71;91;111;131)。
【請求項4】
前記直接供給ダクト(53;73;93;113;133)を前記正圧側の壁から断熱する熱シールドを形成するために、前記直接供給ダクト(53;73;93;113;133)から分離されながら前記正圧側の壁に沿って延びる、第1内方側面キャビティ(54;74;94;114;134)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のブレード(51;71;91;111;131)。
【請求項5】
前記直接供給ダクト(53;73;93;113;133)を前記負圧側の壁から断熱する熱シールドを形成するために、前記直接供給ダクト(53;73;93;113)から分離されながら前記負圧側の壁に沿って延びる、第2内方側面キャビティ(56;76;96;116)をさらに備える、請求項4に記載のブレード(51;71;91;111)。
【請求項6】
前記内方側面キャビティ(54、56;74、76;94、96;114、116;134)が、熱交換を向上させるための乱流の促進体および/または偏向体を備え、前記直接供給ダクト(53;73;93;113)が圧力損失を抑制するための平滑な壁を有する、請求項4または5に記載のブレード(51;71;91;111)。
【請求項7】
前記上内方キャビティ(33)のうちの前記直接供給ダクト(32)が前記ブレードの前記前縁の上流冷却用傾斜部(32)である、請求項1から6のいずれか一項に記載のブレード(31)。
【請求項8】
前記直接供給ダクトが、前記上内方キャビティ(52;72;92;112;132)への冷却空気の供給専用の中心ダクト(53;73;93;113;133)である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のブレード(51;71;91;111;131)。
【請求項9】
2つの前記側面キャビティ(74、76)が、前記直接供給ダクト(73)の長さのほぼ全体にわたって延び、前記直接供給ダクト(73)の周囲の4分の3を取り囲む単一のキャビティを形成するために前記直接供給ダクト(73)の下流に位置する接合ゾーンによって統合されている、請求項5に記載のブレード(71)。
【請求項10】
前記正圧側の壁に位置する前記後縁の冷却スロット(126;146)に供給するための下流傾斜部(127;147)と、前記下流傾斜部(127;147)の調整された空気の供給を行うための下流ダクト(128;148)とを備え、前記下流ダクト(128;148)が各側面キャビティ(114、116;134)によって断熱される、請求項4に記載のブレード(111;131)。
【請求項11】
前記前縁の冷却孔に空気を供給するための上流傾斜部(62;82;102;122;142)と、前記上流傾斜部(62;82;102;122;142)の調整された空気の供給を行う上流ダクト(63;83;103;123;143)とを備え、前記上流ダクト(63;83;103;123;143)が各側面キャビティ(54、56;74、76;94、96;114、116;134)によって断熱される、請求項4に記載のブレード。
【請求項12】
キャビティと、内部ダクト、傾斜部および場合によりシールドを形成する内方キャビティの形成を目的とした一組のコアとを備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載のブレードを製造するために成形する手段。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のブレードを備えるターボ機械のタービン。
【請求項14】
請求項13に記載のタービンを備えるターボ機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複流ターボエンジンや複流ターボプロップなど、ターボ機械タイプの航空機エンジンのブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
かかるエンジンでは、外気が、入口スリーブに取り込まれて、回転する一連の羽根を備えたブロワを通過してから、中心の主要流とその主要流を取り囲む副流とに分割される。
【0003】
次に、主要流は、圧縮されてから燃焼チャンバに達し、その後一連のタービンを通過することにより膨張してから、推力を発生させることによって後部に向かって放出される。副流は、追加の推力を発生させるために、上記ブロワによって直接後部に向かって推進される。
【0004】
タービン内での膨張により、圧縮器とブロワの駆動が可能になるが、その膨張は、燃焼の直後に引き起こされることから高温で行われる。したがって、このタービンは、過酷な温度、圧力および流体流の条件で動作するように設計、寸法決めされる。
【0005】
各タービンは連続する段を備え、各段は、エンジンの回転シャフトの周りに規則的に隔てられた径方向に延びる一連のブレードを備える。この中心シャフトはタービンの回転要素を支承し、圧縮器およびブロワの回転要素も支承する。
【0006】
具体的には、最も過酷な条件にさらされるタービンブレードは、このタービンの第1の膨張段、すなわち燃焼ゾーンに最も近い、一般に高圧段と呼ばれる段のブレードである。
【0007】
一般に、性能に対する要求が大きくなり、規制の変更が行われると、いっそう過酷な環境で動作する、より小さいサイズのエンジンを設計することになる。これは、高圧タービンブレードの耐性および性能を、特にその温度耐性に関して向上させることを意味する。
【0008】
しかしながら、こういったブレードの材料および被膜が、燃焼チャンバの下流の流れで達しうる高温に耐えうるようにするには、それに対する従来の改良では不十分である。こうした状況のため、ブレードをこの新しい動作条件に耐えうるように改良するよう、ブレードの冷却の見直しが行われる。
【0009】
ブレードの冷却は、燃焼の上流でターボエンジンに取り込まれた冷却空気を、そのブレードの内部で循環させることによって行われる。この空気は、ブレード根元で取り込まれて、ブレードを冷却するためにその内部回路に沿って搬送され、ブレードの壁一面に分散配置された、その壁を貫通する孔によって、ブレードの外部に放出される。こういった孔は、冷却空気の放出にも使用されるが、ブレードの外側表面に、燃焼から得られる空気よりも低温の空気の膜も作り出す。これもやはり、ブレードの温度の制限に寄与する。
【0010】
冷却効果を高めるために、冷却空気が循環するブレードの内部領域は、細工が施されている、すなわち冷却空気の流体流を妨害する内部凹凸を含んでいる。これは、ブレードの壁から、そのブレードの内部ダクト内を循環する冷却空気への、熱の伝達を向上させるためである。
【0011】
こういった従来の冷却構造は、ブレードの内部回路の長さのため、空気がその端に達したときに過度に熱せられてしまうことで不利になる。その結果、移動の端の領域、特に、冷却効果を高めることが求められるブレードの先端で、空気の冷却効果が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、このブレードの冷却効果の改善を可能にするブレード構造を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この趣旨で、本発明が目的とするのは、ターボプロップやターボエンジンなどのターボ機械のタービンブレードであって、上記ブレードが、根元と、上記根元によって担持され、スパン方向(EV)に延びて先端で終端する羽根とを備え、上記羽根が、前縁と、上記前縁の下流に位置する後縁とを備え、上記羽根が、互いに横方向に隔置された正圧側の壁および負圧側の壁を備え、上記壁がそれぞれ、上記前縁と上記後縁を接続し、上記羽根が、
上記ブレードの上記根元で冷却空気を取り込み上記羽根を冷却するために上記羽根内で上記冷却空気を循環させるように構成される、少なくとも1つのダクトと、
上記冷却空気を上記羽根から排出するための上記羽根の上記各壁に作られた孔および/またはスロットと、
上記羽根の先端を冷却するための上記羽根の上記先端に位置する内部の上内方キャビティとを備え、
上記ダクトの少なくとも1つが、上記根元で取り込まれた冷却空気を上記上内方キャビティに直接供給する、ブレードである。
【0014】
本発明はまた、上記上内方キャビティが、上記羽根の上記後縁の少なくとも1つの冷却スロットに供給するために上記羽根の前部から後部まで延びている、上記で定義したブレードに関する。
【0015】
本発明はまた、上記正圧側の壁が、上記上内方キャビティに通じる少なくとも1つの貫通孔または貫通スロットを備える、上記で定義したブレードに関する。
【0016】
本発明はまた、上記直接供給ダクトを上記正圧側の壁から断熱する熱シールドを形成するために上記直接供給ダクトから分離されながら上記正圧側の壁に沿って延びる第1内方側面キャビティを備える、上記で定義したブレードに関する。
【0017】
本発明はまた、上記直接供給ダクトを上記負圧側の壁から断熱する熱シールドを形成するために上記直接供給ダクトから分離されながら上記負圧側の壁に沿って延びる第2内方側面キャビティをさらに備える、上記で定義したブレードに関する。
【0018】
本発明はまた、各内部側面キャビティが、そこで熱交換を向上させるための乱流の促進体および/または偏向体を備え、各直接供給ダクトが負荷損を制限するための平滑な壁を有する、上記で定義したブレードに関する。
【0019】
本発明はまた、上記上内方キャビティの上記直接供給ダクトが上記ブレードの上記前縁の上流冷却用傾斜部である、上記で定義したブレードに関する。
【0020】
本発明はまた、上記直接供給ダクトが上記上内方キャビティへの冷却空気の供給専用の中心ダクトである、上記で定義したブレードに関する。
【0021】
本発明はまた、上記2つの側面キャビティが上記直接供給ダクトの長さのほぼ全体にわたって延びて上記直接供給ダクトの周囲の4分の3を取り囲む単一のキャビティを形成するために上記直接供給ダクトの下流に位置する接合ゾーンによって統合されている、上記で定義したブレードに関する。
【0022】
本発明はまた、上記正圧側の壁に位置する上記後縁の冷却スロットに供給するための下流傾斜部と、上記下流傾斜部の調整された供給を行うための下流ダクトとを備え、前記下流ダクトが各側面キャビティによって断熱されている、上記で定義したブレードに関する。
【0023】
本発明はまた、上記前縁の冷却孔に供給するための上流傾斜部と、上記上流傾斜部の調整された供給を行うための上流ダクトとを備え、前記上流ダクトが各側面キャビティによって断熱される、上記で定義したブレードに関する。
【0024】
本発明はまた、キャビティと、内部ダクト、傾斜部および場合によりシールドを形成する内側キャビティの形成を目的とした一組のコアとを備える、上記で定義したブレードを製造するために成形する手段に関する。
【0025】
本発明はまた、上記で定義したブレードを備えるターボ機械のタービンに関する。
【0026】
本発明はまた、上記で定義したタービンを備えるターボ機械に関する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】複流ターボエンジンの縦断面概略図である。
図2図1に示されているターボエンジンのタービンブレードの斜視図である。
図3】本発明の第1の実施形態によるタービンブレードの内部中空部分の斜視図である。
図4】本発明の第2の実施形態によるタービンブレードの内部中空部分の斜視図である。
図5】本発明の第3の実施形態によるタービンブレードの内部中空部分の斜視図である。
図6】本発明の第4の実施形態によるタービンブレードの内部中空部分の斜視図である。
図7】本発明の第5の実施形態によるタービンブレードの内部中空部分の斜視図である。
図8】本発明の第6の実施形態によるタービンブレードの内部中空部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1で確認できるように、複流ターボエンジン1の前部部分は、入口スリーブ2を備える。空気は、この入口スリーブ2で取り込まれてから、ブロワ3の羽根で吸引される。空気は、ブロワの領域を通過した後、中心の主要流とその主要流を取り囲む副流とに分割される。
【0029】
次に、空気の主要流は、ブロワ3の直後に位置する第1の圧縮器4を通過する。それと同時に、副流は後部に向かって推進されて、主要流の周りに吹き付けられることによって追加の推力を直接発生させる。
【0030】
次に、主要流は、燃料の噴射/気化後、第2の圧縮段6を通過してから、その燃焼が行われるチャンバ7に達する。この主要流は燃焼後、高圧タービン8、低圧タービン(図示せず)で順に膨張して圧縮段およびブロワを回転駆動してから、エンジンの後部に向かって排出されて推力を発生させる。
【0031】
エンジン1およびその構成部品は、長手方向の軸AXの周りに回転形状を有する。エンジン1は、詳細には外部ケーシング9を備えている。外部ケーシング9もやはり、回転形状を有し、空気入口スリーブを定義するエンジンの前部から、主要流と副流が放出されるダクトを定義する後部まで延びている。前部、後部は、このターボエンジンを備える航空機の進行方向に対するものとみなす。このケーシング9は、エンジンの中心に位置する回転構成部品を支持する。これらの回転構成部品は、ブロワの羽根と、ブレードを有する圧縮段およびタービンとを支承する、1本の回転シャフトを含む。
【0032】
図2に符号11で示したこのブレードは、タービンディスクと呼ばれる回転体(図示せず)に固定される根元Pと、この根元Pによって担持され、空気力学的部分を構成する羽根12とを備える。図2で確認できるように、ブレード11は、根元Pと羽根12の間に、プラットフォームと呼ばれる中間領域13を備える。
【0033】
この根元Pと羽根12によって形成されるユニットは、鋳造から得られる中空の、冷却空気が循環する内部ダクトを備える独自の一体部品である。これらの内部ダクト(図2には図示せず)は、根元Pの下面14に通じる吸気口を備え、その吸気口を介して、そのダクトに冷却空気が供給される。羽根12の中空の壁は、冷却空気が放出される貫通孔およびスロットを備える。
【0034】
羽根12は、平行六面体に似たほぼ矩形の輪郭をした左捩りの形状を有する。羽根12は土台16を備え、その土台16を介して根元Pに接続されている。土台16は回転軸AXとほぼ平行に延びている。羽根12はまた、軸AXに対して径方向に延びる前縁17を備えている。前縁17はブレードの上流AMに位置している。ブレードの上流AMとはすなわち、このブレードが設けられたエンジンの稼動中の進行方向に対して、ブレードの前方の領域になる。このブレードはまた、前縁17とほぼ平行な向きの後縁18を備えている。後縁18は、前縁17から軸AXに沿って、領域AVの下流またはブレードの後ろに位置するように隔置されている。このブレードはさらに、軸AXに対して径方向に土台16から隔置され、その土台16とほぼ平行な先端Sを備える。
【0035】
このブレードの2つの主要な壁は、図2で確認できる壁である正圧側の壁21と、正圧側の壁から隔置された反対側の壁である負圧側の壁である。負圧側の壁は、正圧側の壁21に隠れていることから、図2では確認できない。正圧側の壁と負圧側の壁は、前縁17のところと、後縁18のところと、ブレードの先端Sの領域のところで統合される。これらの壁は、羽根の内側領域に冷却空気を取り込むように、土台16のところで互いに隔置されている。
【0036】
前縁17は、凸状の形状を有し、この領域のブレードの壁を貫通する一連の冷却孔22を備えている。後縁18は、テーパ状の形状を有し、一連の冷却スロット23を備えている。これらのスロット23は、互いに隔置された長さの短いスロットであり、後縁から少し隔たったところで互いの延長線上に位置することにより、スパン方向に沿って互いに隔置されて広がっている。
【0037】
各スロット23はブレードの壁を貫通している。これは、そのブレードの内部の冷却空気を取り出し、後縁の正圧側の壁に吹き付けるためである。さらに、後縁18が、上記のスロット23から得られる冷却空気を導くために、軸AXと平行な向きの外側リブを備えている。
【0038】
動作中、流体は、正圧側21および負圧側に沿って流れることによって、ブレード11に対して前縁17から後縁18まで移動する。動作中かなり熱せられる正圧側の壁は、前縁17の下流に位置してその前縁17とほぼ平行な一連の孔24と、後縁18とその後縁が備えるスロット23との上流に位置してその後縁18とほぼ平行な別の一連の孔26とを備えている。したがって、一連の孔24および26は共に、軸AXに対して径方向の、上記の羽根のスパン方向EVに広がる。
【0039】
ブレード11の先端Sの領域は、前縁17および後縁18とは異なり、一定の厚さを有し、さらに、タブと呼ばれる中空部分を定義する形状を有する。
【0040】
より具体的には、この先端Sは、正圧側の壁と負圧側の壁を接続する閉鎖壁を有している。この閉鎖壁は、正圧側の壁および負圧側の壁に対して全体的に垂直で、軸AXと平行な向きを有する。軸AXは、スパン方向EVに対して垂直な向きに対応する。図2では確認できないこの閉鎖壁は、正圧側の壁の自由縁および負圧側の壁の自由縁に対して軸AXの方に引っ込んだ位置にあり、その閉鎖壁がこれらの縁部と共同で、軸AXと反対の方向に開口した中空部分を構成するようになっている。
【0041】
正圧側の壁を貫通する一連の追加の孔27が、先端Sに沿って設けられている。これは、この羽根の先端を大幅に冷却できるようにするためである。羽根の先端は、流体に対して最高速度を有する部分を構成することから、大きな応力を受ける。
【0042】
一連の孔27は閉鎖壁と平行に広がっている。この羽根はさらに、羽根の先端にあるタブと呼ばれる中空部分に通じるように、閉鎖壁を貫通する孔(図2では確認できない)を備えている。
【0043】
上記で示したように、かかるブレードは、中空の一体部品である。このブレードは、金属材料を成形することによって製造される。この成形は、ブレードの中空部分の内部ダクトを形成するために一組のコアを使用し、ブレードの貫通孔を形成するためにロッド部分を使用することによって行われる。これらのコア、ロッド等は、成形の操作が完了すると、典型的にはエッチングの工程で除去される。この工程でそのような要素を、成形材料を変質させることなく溶解できる。
【0044】
以下の各図は、本発明によるブレードの内部領域を示す。この内部領域は、そのブレードの製造を可能にするコアの形状によって表されている。つまり、以下の各図の凹凸形状は、本発明によるブレードの中空の形状の表現となっている。
【0045】
本発明のベースになる考え方は、正圧側の壁の、ブレードの後縁および先端の近傍の領域における、ブレードの冷却を改善するということである。実際に、この領域は、ブレードの寿命を通じて最初に劣化するところである。
【0046】
この改善は、ブレードの先端の領域に、ブレードの前部から後部まで延びる上内方キャビティを設け、この上内方キャビティに、それ用の供給ダクトによって、ブレードの根元から得られる空気を直に供給することで実現される。
【0047】
したがって、根元で取り込まれた空気は、迂回することなく、ほぼ直接的な形で、上内方キャビティまで搬送される。したがって、この空気の、上内方キャビティに達するような供給ダクトにおける移動距離は、スパン方向EVに沿って、羽根の長さ以下の長さになる。つまり、直に供給を行うことによって、このダクトで、上内方キャビティに供給される空気の加熱を最小限にすることが可能になる。
【0048】
図3に対応する第1の実施形態では、上記供給ダクトは、上流に位置する前縁の冷却用傾斜部によって形成される。図4〜8に対応する他の実施形態では、この供給ダクトは、ブレードの中心、すなわちブレードの前縁と後縁のほぼ中間に位置するダクトによって構成される。
【0049】
したがって、本発明の第1の実施形態では、図3の符号31が付いたブレードが内部ダクトを備え、各内部ダクトは、ブレードの先端の正圧側の領域で冷却効果を向上させるように、その領域にできるだけ低温の冷却空気を供給するよう配置される。
【0050】
したがって、ブレード31の内部は、その符号AMが付いた上流領域に、スパン方向EVに沿った向きの、前縁に沿って延びる上流傾斜部32を備える。この上流傾斜部32は、冷却空気を、ブレードの前縁を形成する壁の部分を貫通する冷却孔に供給すると同時に、ブレードの上内方キャビティ33に直に供給する。上流傾斜部32は、符号Pが付いたブレードの根元から延び、その根元を介して空気が直に供給され、符号Sが付いたブレードの先端まで延びる。
【0051】
先端の近くに位置する上内方キャビティ33は、ブレード31の前部から符号AVが付いた後部まで、このブレードの閉鎖壁と正圧側の壁とに沿って延びている。これらの2つの壁は、図がこのブレードの中空領域の表現であることから、図3では確認できない。
【0052】
したがって、ブレード31の先端Sの、その長さのほぼ全体にわたって、詳細にはその先端Sの下流端まで、ブレード31の正圧側の側面に位置する部分全体に、上内方キャビティ33から空気が供給される。上内方キャビティ33それ自体には、ダクトを形成する上流傾斜部32から空気が供給される。
【0053】
上内方キャビティ33は、下流領域AVにある、ブレードの後縁に達している。これは、この後縁の少なくとも1つの冷却スロット、すなわち、先端に最も近い、ブレードの最も過酷に応力を受ける領域の1つに対応するスロットに、冷却空気を供給するためである。
【0054】
上内方キャビティ33は、羽根の幅または厚さより狭い幅にまたがって、正圧側の壁に沿って延びる。すなわち、上内方キャビティ33の厚さは、正圧側の壁と負圧側の壁を分離する距離より狭い幅を有する。上内方キャビティ33は、正圧側に沿って延びる第1の面34と、第1の面34から隔置された第2の面36とによって横方向に定義される。第1の面34と第2の面36は、この上内方キャビティの前部と後部で統合されている。
【0055】
上内方キャビティ33は、閉鎖壁と平行な、その閉鎖壁から隔置された底面37と、この閉鎖壁の下面である上面38とによって、縦方向に定義される。
【0056】
羽根の先端Sの領域では、正圧側の壁が貫通孔(図示せず)を備えうる。この貫通孔によって、上内方キャビティ33は、その先端領域の正圧側の壁の外面をさらに冷却することが可能になる。
【0057】
ブレード31の内部はさらに、下流傾斜部41を備える。下流傾斜部41は、根元Pから先端Sの領域まで後縁に沿って延び、上内方キャビティ33の後部の下で終端する。この下流傾斜部41は、後縁の一連の冷却スロット(図3では確認できない)に空気を供給する。
【0058】
したがって、後縁の冷却スロットの大部分は、下流傾斜部41から空気が供給される。最も大きな熱応力がかかる領域である、先端Sに最も近い1つまたは複数のスロットには上内方キャビティが空気を供給する。したがって、先端に近いスロットは、より低温の空気が供給され、かつ/または他のスロットより大きな流量を有する。
【0059】
図3のブレードはさらに、第1の中心ダクト42と、第2の中心ダクト43と、下流ダクト44を備えている。これらのダクトは、スパン方向に沿った向きで、いわゆるクリップの配置に従って互いに連通している。上流傾斜部32に沿って延びる第1の中心ダクト42は、ブレードの根元で空気を取り込み、第2の中心ダクト43に空気を供給するために先端Sで第2の中心ダクト43と連通している。
【0060】
この第2の中心ダクト43は、下流ダクト44に空気を供給するためにブレードの土台のところで下流ダクト44と接続されている。この下流ダクト44は、下流傾斜部41と平行に根元Pから先端Sまで直線状に延びている。下流ダクト44は、下流傾斜部41の上流に位置しその下流傾斜部41に沿って延びている。
【0061】
この図で確認できるように、下流ダクト44の端は、上内方キャビティ33を迂回するように上内方キャビティ33の第2の面36に沿って延びて、先端Sの領域で終端している。正圧側の壁は貫通孔を備えうる。この貫通孔によって、その正圧側の壁の外面に、ダクト42、43、44から冷却空気を供給することが可能になる。これは、その正圧側の壁の外面に冷却空気による外膜を形成することによって、そこを冷却するためである。
【0062】
正圧側の壁は、下流ダクト44のところに貫通孔を備えうる。この貫通孔を介して下流ダクト44は羽根の後縁の上流で正圧側の壁の外面を冷却する空気を供給する。
【0063】
こういった後縁の上流にある正圧側の壁の冷却孔に加えて、または別法として、下流ダクト44はスパン方向EVに沿って互いに規則的に隔置された一連の調整された通路(図示せず)によって下流傾斜部41に空気を供給するように構成してもよい。この場合、下流ダクト44には、第2のダクト43から空気が供給されるのではなく、下流傾斜部に供給する空気の温度ができるだけ低くなるように、ブレードの根元のところで冷却空気を直接取り込む。
【0064】
したがって、設計上の選択に応じて、下流傾斜部41には、下流ダクト44から調整された形で空気が供給されうる、あるいはこれに対し、ブレードの根元の領域で直に空気が供給されうる。
【0065】
このとき、上記の各通路は、後縁の各冷却スロット内で所望の空気流量を概ね得るように調整される。所定のスロットに必要な空気流量は、そのスロットによって冷却される領域における前縁の熱応力によって条件付けられる。
【0066】
図4に示されている本発明の第2の実施形態では、符号51のブレードが、中心ダクト53から直に供給される上内方キャビティ52を備える。中心ダクト53は完全にこの上内方キャビティ52専用である。したがって、図3の第1の実施形態と異なり、上内方キャビティの供給ダクトは前縁の冷却に関与しない。
【0067】
図4のこのブレード51では、さらに、正圧側の壁に沿って延びる第1の側面キャビティ54と、負圧側の壁に沿って延びる第2の側面キャビティ56が設けられる。これらの2つの側面キャビティは、羽根を取り囲む気体の流れによって熱せられる正圧側の壁および負圧側の壁から、中心ダクトと、ブレードの調整された供給を行うための上流ダクトを断熱する。
【0068】
このブレード51の上内方キャビティ52は、図3のブレード31のキャビティとほぼ同じ形状を有する。これは、先端Sの近くに位置し、羽根の前部から後部まで閉鎖壁と正圧側の壁に沿って延びている。この場合も、正圧側に位置する先端Sの部分全体に、その長さのほぼ全体にわたって後端まで、この上内方キャビティ52によって空気が供給される。上内方キャビティ52は、少なくとも先端Sに最も近い符号55のスロットに(場合によりそれに隣接する2、3個のスロットにも冷却空気を供給するために)後縁まで延びている。
【0069】
上内方キャビティ52の厚さは、この場合やはり羽根の厚さより薄い。上内方キャビティ52は、正圧側に沿って延びる第1の面57と、第1の面から隔置された第2の面58とによって横方向に定義され、これらの面は前部と後部で統合されている。縦方向には、上内方キャビティ52は、閉鎖壁と平行な底面59と、この閉鎖壁の下面61とによって定義される。
【0070】
羽根の先端Sの領域では、正圧側の壁はその先端の領域の正圧側の壁の外面を冷却するために貫通孔も備えうる。
【0071】
中心ダクト53は、空気が供給されるブレードの根元Pからこのブレードの先端まで延びており、上内方キャビティ52に空気を供給する。その先端で上内方キャビティ52の底面59に中心ダクト53全体がつながっている。
【0072】
ブレード51の前縁は、上流傾斜部62によって冷却される。上流傾斜部62は、羽根の土台から先端Sまで延びているが、空気の供給は根元から直にではなく、上流ダクト63から調整された形で行われる。この調整された供給は、ブレードのスパン方向EVに沿って規則的に隔置された調整された通路64によって行われる。通路64はそれぞれ、上流ダクト63を上流傾斜部62に接続している。各通路64は、調整された直径、すなわち、その通路64が供給する傾斜部62のゾーンで、この領域におけるブレードの熱応力によって条件付けられる所望の空気の流れを得るように設計時に選択された直径を有する。
【0073】
ブレードの壁は前縁の領域に孔(図示せず)を備え、その前縁の外面を冷却するために、傾斜部内で循環する空気がその孔を介して壁を通過する。
【0074】
図4で確認できるように、第1の側面キャビティ54は薄い厚さを有し、根元Pから先端Sの領域まで延び、全般に矩形の輪郭を有する。この第1の側面キャビティ54は、上内方キャビティ52を覆わないように、その上内方キャビティ52の下で終端する。第1の側面キャビティ54は、中心ダクト53と、この中心ダクト53に沿って延びる上流ダクト63を、遮蔽するまたは覆うのに十分な幅を有している。
【0075】
同様に、第2の側面キャビティ56もやはり、薄い厚さを有し、根元Pから先端Sの領域まで延び、上内方キャビティ52を覆う。この第2の側面キャビティは全般に矩形の輪郭を有し、中心ダクト53と、上流ダクト63および負圧側の上内方キャビティ52を、遮蔽するまたは覆うのに十分な幅を有する。
【0076】
これらの2つの側方キャビティ54および56が形成する熱シールドのおかげで、中心ダクト53によって上内方キャビティ52に供給される空気が、そのダクト内における搬送の間低温のまま維持される。同様に、上流ダクト63から供給される空気もやはり、その上流ダクト内における搬送の間低温のまま維持される。
【0077】
上記に示したように、先端Sの領域に位置する後縁の1つまたは複数の冷却スロットには、上内方キャビティ52によって空気が供給される。後縁の符号67が付いた他のスロットは下流傾斜部66から供給される。下流傾斜部66には、根元Pを介して直接空気が供給される。下流傾斜部66は、その根元Pから先端Sの領域まで延び、上内方キャビティ52の後部の下で終端する。
【0078】
したがって、スロット67には下流傾斜部66から空気が供給されるが、上部キャビティ52が先端Sに最も近い1つまたは複数のスロットにより低温の、かつ/またはより大きな流量を有する空気を供給する上内方キャビティ。
【0079】
図5に示されている本発明の第3の実施形態では、符号71のブレードがやはり上内方キャビティ72を備え、上内方キャビティ72には、2つの側面キャビティ74および76によって断熱された専用の中心ダクト73から空気が供給される。これらの2つの側面キャビティはやはり、ブレード前縁の冷却用傾斜部の調整された空気の供給を行う上流ダクトも断熱する。しかし、この第3の実施形態では、2つの側面キャビティ74および76は、中心ダクト73をその周囲の4分の3にわたって取り囲むようにして、ブレードの後部または下流部分で統合される。これは、この中心ダクト73に対するより良好な断熱を実現するように行われる。
【0080】
上内方キャビティ72は、図3および4のブレードのキャビティとほぼ同じ形状を有する。これは、先端Sの近くに位置し、羽根の前部から後部まで閉鎖壁と正圧側の壁に沿って延びている。正圧側に位置する先端Sの部分全体に、その長さの全体にわたって後端まで、この上内方キャビティ72によって空気が供給される。上内方キャビティ72はやはり、少なくとも先端Sに最も近い符号75のスロットに、場合によりそれに隣接する2、3個のスロットにも空気を供給するために、後縁まで延びる。
【0081】
この上内方キャビティ72の厚さは、この場合やはり羽根の厚さより薄い。上内方キャビティ72は、正圧側に沿って延びる第1の面77と、第1の面から隔置された第2の面78とによって横方向に定義され、これらの面は前部と後部で統合される。縦方向には、上内方キャビティ72は、閉鎖壁と平行な底面79と、この閉鎖壁の下面81とによって定義される。羽根の先端Sの領域において、正圧側の壁はその先端の領域の正圧側の壁の外面を冷却するための貫通孔も備えうる。
【0082】
中心ダクト73は、空気が供給されるブレードの根元から先端Sまで延びることによって、上内方キャビティ72に空気を供給する。その先端Sで上内方キャビティの底面79に中心ダクト73全体がつながっている。
【0083】
ブレード71の前縁は上流傾斜部82によって冷却される。上流傾斜部82は羽根の土台から先端Sまで延び、上流ダクト83から調整された形で空気が供給される。この調整された空気の供給は、ブレードのスパン方向EVに沿って規則的に隔置された調整された通路によって行われる。この通路はそれぞれ、上流ダクトを上流傾斜部に接続する。ブレードの壁は前縁の領域に孔(図示せず)を備え、その前縁の外面を冷却するために、傾斜部の空気がその孔を介して壁を通過する。
【0084】
第1の側面キャビティ74は薄い厚さを有し、根元から先端Sの領域まで延び、全般に矩形の輪郭を有する。この第1の側面キャビティ74は、上内方キャビティ72を覆わないように、その上内方キャビティ72の下で終端している。第1の側面キャビティ74は、中心ダクト73とこの中心ダクトに沿って延びる上流ダクト83を遮蔽するまたは覆うのに十分な幅を有する。
【0085】
第2の側面キャビティ76もやはり、薄い厚さを有し、根元から先端Sの領域まで延び、上内方キャビティ72を覆っている。この第2の側面キャビティは全般に矩形の輪郭を有し、中心ダクト73と上流ダクト83および負圧側の上内方キャビティ72を遮蔽するまたは覆うのに十分な幅を有する。
【0086】
第2の実施形態と異なり、2つの側面キャビティ74および76はこの場合、分離されるのではなく、後部または下流部分で統合される。このように、これらの2つの側面キャビティは、外側環境からの中心ダクト73の断熱をさらに改良するように、中心ダクト73をその周囲の4分の3にわたって取り囲む。その結果、中心ダクト73は、それが供給する上内方キャビティ72に、いっそう低温の空気を供給できる。
【0087】
図5で確認できるように、上記の2つのキャビティは、中心ダクトに対して下流に位置する接合ゾーンによって統合されている。この接合ゾーンは、中心ダクトの高さのほぼ全体にわたって延びる。したがって、この接合ゾーンを有する2つのキャビティは、中心ダクトをその外側表面のほぼ全体にわたって取り囲む単一のキャビティを構成する。実際に、図5で確認できるように、スパン方向EVに沿った接合ゾーンの高さまたは長さは、スパン方向EVに沿った第1の側面キャビティの高さまたは長さに一致している。
【0088】
上記の2つの側面キャビティへの空気の供給は、空気をブレードの根元で別々に取り込む2つの供給ダクトによって別々に行われうる。その場合、これらの側面キャビティは羽根の領域だけで統合される。U字形に対応する形状を断面として有する、2つの側面キャビティからなる単一の供給路を設けることも考えられうる。
【0089】
先端Sの領域に位置する後縁の1つまたは複数の冷却スロットには、上内方キャビティ72から空気が供給される。後縁の符号86が付された他のスロットには下流傾斜部87から空気が供給される。下流傾斜部87には、根元を介して直接空気が供給され、その根元から先端Sの領域まで延びて上内方キャビティ72の後部の下で終端する。
【0090】
図6に示されている本発明の第4の実施形態では、符号91のブレードがやはり上内方キャビティ92を備え、上内方キャビティ92には2つの側面キャビティ94および96によって断熱された中心ダクト93から空気が供給される。しかしこの第4の実施形態では、後縁が下流ダクトから調整された形で供給される下流傾斜部によって冷却される。
【0091】
上内方キャビティ92は、図3〜5のブレードのキャビティとほぼ同じ形状を有する。これは、先端Sの近くに位置し、羽根の前部から後部まで閉鎖壁と正圧側の壁に沿って延びている。正圧側に位置する先端Sの部分全体に、その長さの全体にわたって後端まで、この上内方キャビティ92から冷却空気が供給される。上内方キャビティ92は、少なくとも先端Sに最も近い符号95のスロット、場合によりそれに隣接する2、3個のスロットに空気を供給するために後縁まで延びている。
【0092】
この上内方キャビティ92は、正圧側に沿って延びる第1の面97と、第1の面から隔置された第2の面98とによって横方向に定義され、これらの面は前部と後部で統合される。縦方向には、上内方キャビティ92は、閉鎖壁と平行な底面99と、この閉鎖壁の下面101とによって定義される。先端Sの領域では、正圧側の壁は、その先端の領域の正圧側の壁の外面を冷却するために貫通孔も備えうる。中心ダクト93は、空気が供給されるブレードの根元から先端Sまで延びることによって、上内方キャビティ92に空気を供給する。その先端Sで底面99に中心ダクト93全体がつながる。
【0093】
ブレード91の前縁は上流傾斜部102によって冷却される。上流傾斜部102は、羽根の土台から先端Sまで延び、上流ダクト103から調整された形で空気が供給される。この調整された空気の供給は、ブレードのスパン方向EVに沿って規則的に隔置された調整された通路105によって行われる。この通路はそれぞれ、上流ダクト103を上流傾斜部102に接続している。ブレードの壁は前縁の領域に孔(図示せず)を備え、その前縁の外面を冷却するために傾斜部の空気がその孔を介して壁を通過する。
【0094】
第1の側面キャビティ94は薄い厚さを有し、根元から先端Sの領域まで延び、全般に矩形の輪郭を有する。この第1の側面キャビティ94は、上内方キャビティ92を覆わないように、その上内方キャビティ92の下で終端する。第1の側面キャビティ94は、中心ダクト93とこの中心ダクトに沿って延びる上流ダクト103を遮蔽するまたは覆うのに十分な幅を有する。
【0095】
第2の側面キャビティ96もやはり、薄い厚さを有し、根元から先端Sの領域まで延び、上内方キャビティ92を覆う。この第2の側面キャビティは全般に矩形の輪郭を有し、中心ダクト93と上流ダクト103および負圧側の上内方キャビティ92を遮蔽するまたは覆うのに十分な幅を有する。
【0096】
先端Sの領域に位置する後縁の1つまたは複数の冷却スロットには、上内方キャビティ92から空気が供給される。後縁の符号106が付いた他のスロットは下流傾斜部107から供給される。下流傾斜部107は根元から先端Sの領域まで延びている。
【0097】
この下流傾斜部107は、この場合、ブレードの根元からその先端Sの領域まで延びる下流ダクト108から調整された形で空気が供給される。下流ダクト108は、先端Sで上内方キャビティ92の後部を迂回している。この下流ダクト108は、中心ダクト93と下流傾斜部107の間に位置し、側面キャビティ94にも側面キャビティ96にも遮蔽されていない。この下流ダクト108による下流傾斜部107への調整された空気の供給は、スパン方向EVに沿って互いに規則的に隔置された一連の調整された通路109によって行われる。通路109はそれぞれ、下流ダクトを傾斜部107に接続している。
【0098】
図7に示されている本発明の第5の実施形態では、符号111のブレードがやはり上内方キャビティ112を備え、上内方キャビティ112には、2つの側面キャビティ114および116によって断熱された中心ダクト113から空気が供給される。後縁が、この場合やはり、下流ダクトから調整された形で供給される下流傾斜部によって冷却される。この下流ダクトは、より低温の後縁冷却用の空気を供給するように、ブレードの側面キャビティによって熱的に保護されている。
【0099】
上内方キャビティ112は、図3〜6のブレードのキャビティとほぼ同じ形状を有する。これは、先端Sの近くに位置し、羽根の前部から後部まで閉鎖壁と正圧側の壁に沿って延びている。正圧側に位置する先端Sの部分全体に、その長さの全体にわたって後端まで、この上内方キャビティ112から冷却空気が供給される。上内方キャビティ112はやはり、少なくとも先端Sに最も近い符号115のスロット、場合によりそれに隣接する2、3個のスロットに供給するために後縁まで延びている。
【0100】
この上内方キャビティ112は、正圧側に沿って延びる第1の面117と第1の面から隔置された第2の面118とによって横方向に定義され、これらの面は前部と後部で統合されている。縦方向には、上内方キャビティ112は、閉鎖壁と平行な底面119とこの閉鎖壁の下面121とによって定義される。中心ダクト113は、空気が供給されるブレードの根元から先端Sまで延びることによって、上内方キャビティ112に空気を供給する。その先端Sで底面119に、中心ダクト113全体がつながっている。
【0101】
ブレード111の前縁は上流傾斜部122によって冷却される。上流傾斜部122は、羽根の土台から先端Sまで延び、上流ダクト123から調整された形で空気が供給される。この調整された空気の供給は、ブレードのスパン方向EVに沿って規則的に隔置された調整された通路124によって行われる。この通路はそれぞれ、上流ダクト123を上流傾斜部122に接続している。
【0102】
ブレードの壁は前縁の領域に孔(図示せず)を備え、その前縁の外面を冷却するために傾斜部の空気がその孔を介して壁を通過する。第1の側面キャビティ114は薄い厚さを有し、根元から先端Sの領域まで延び、全般に矩形の輪郭を有する。この第1の側面キャビティ114は、上内方キャビティ112を覆わないようにその上内方キャビティ112の下で終端している。第1の側面キャビティ114は、中心ダクト113と、この中心ダクト113に沿って延びる上流ダクト123と、下流傾斜部の調整された供給を行うための下流ダクトを、遮蔽するまたは覆うのに十分な幅を有する。
【0103】
第2の側面キャビティ116もやはり、薄い厚さを有し、根元から先端Sの領域まで延び、上内方キャビティ112を覆う。この第2の側面キャビティは全般に矩形の輪郭を有し、中心ダクト113と、上流ダクト123および負圧側の上内方キャビティ112と、下流傾斜部の調整された供給を行うための下流ダクトを、遮蔽するまたは覆うのに十分な幅を有する。
【0104】
先端Sの領域に位置する後縁の冷却スロット115には、上内方キャビティ112から空気が供給される。後縁の符号126が付された他のスロットには下流傾斜部127から空気が供給される。下流傾斜部127は根元から先端Sの領域まで延びている。
【0105】
この下流傾斜部127には、この場合、ブレードの根元からその先端Sの領域まで延びる下流ダクト128から調整された形で空気が供給される。下流ダクト128は、先端Sで上内方キャビティ112を迂回して終端している。この下流ダクト128は、中心ダクト113と下流傾斜部127の間に位置している。この下流ダクト128による下流傾斜部127への調整された空気の供給は、互いに規則的に隔置された一連の調整された通路129によって行われる。通路129はそれぞれ下流ダクト128を傾斜部127に接続している。
【0106】
図7で確認できるように、側面キャビティ114および116はこの場合、上流ダクト123と中心ダクト113を覆い、さらに下流ダクト128も覆うように配置され、これらの3つの要素を正圧側の壁と負圧側の壁から断熱するために共同で覆うように構成されている。
【0107】
図8に示されている本発明の第6の実施形態では、符号131のブレードがやはり、中心ダクト133から供給される上内方キャビティ132を備え、中心ダクト133は正圧側に位置する単一の側面キャビティ134によって断熱されている。これにより、実際には正圧側の壁が負圧側の壁よりも大幅に昇温する傾向があることから、満足な冷却効果を実現しながら、ブレードの製造を簡略化することが可能になる。
【0108】
上内方キャビティ132は、図3〜7のブレードのキャビティとほぼ同じ形状を有する。これは、先端Sの近くに位置し、羽根の前部から後部まで閉鎖壁と正圧側の壁に沿って延びている。正圧側に位置する先端Sの部分全体には、その長さの全体にわたって後端まで、この上内方キャビティ132から冷却空気が供給される。上内方キャビティ132はやはり、少なくとも先端Sに最も近い符号135のスロット、場合によりそれに隣接する2、3個のスロットに空気を供給するために後縁まで延びる。
【0109】
この上内方キャビティ132は、正圧側に沿って延びる第1の面137と、第1の面から隔置された第2の面138とによって横方向に定義され、これらの面は前部と後部で統合されている。縦方向には、上内方キャビティ132は、閉鎖壁と平行な底面139と、この閉鎖壁の下面141とによって定義される。中心ダクト133は、空気が供給されるブレードの根元から先端Sまで延び、上内方キャビティ132に空気を供給する。その先端Sで底面139に、中心ダクト133全体がつながっている。
【0110】
ブレード131の前縁は上流傾斜部142によって冷却される。上流傾斜部142は羽根の土台から先端Sまで延び、上流ダクト143から調整された形で空気が供給される。この調整された空気の供給は、ブレードのスパン方向EVに沿って規則的に隔置された調整された通路144によって行われる。この通路はそれぞれ、上流ダクト143を上流傾斜部142に接続する。ブレードの壁は前縁の領域に孔(図示せず)を備え、その前縁の外面を冷却するために傾斜部の空気がその孔を介して壁を通過する。
【0111】
側面キャビティ134は薄い厚さを有し、根元から先端Sの領域まで延び、全般に矩形の輪郭を有する。この側面キャビティ134は、上内方キャビティ132を覆わないように、その上内方キャビティ132の下で終端している。側面キャビティ134は、中心ダクト133とこの中心ダクト133に沿って延びる上流ダクト143を遮蔽するまたは覆うのに十分な幅を有する。
【0112】
先端Sの領域に位置する後縁の冷却スロット135には、上内方キャビティ132から空気が供給される。後縁の符号146が付いた他のスロットには下流傾斜部147から供給される。下流傾斜部147は根元から先端Sの領域まで延びている。
【0113】
この下流傾斜部147には、この場合、ブレードの根元からその先端Sの領域まで延びる下流ダクト148から調整された形で空気が供給される。下流ダクト148は、先端Sで上内方キャビティ132を迂回して終端している。この下流ダクト148は、中心ダクト133と下流傾斜部147の間に位置している。この下流ダクト148による下流傾斜部147への調整された空気の供給は、スパン方向EVに沿って互いに規則的に隔置された一連の調整された通路149によって行われる。通路149はそれぞれ下流ダクト148を傾斜部147に接続している。
【0114】
図8で確認できるように、側面キャビティ134は、上流キャビティダクト143も、中心ダクト133および下流ダクト148も覆い、これらの3つの要素が搬送する空気の加熱を低減するために、それらを正圧側の壁から断熱するようになっている。
【0115】
すでに分かったように、本発明の各実施形態全般において、先端の領域への空気の供給は、その正圧側に沿って広がる部分全体に対して、上内方キャビティによって行われる。先端の他の部分への空気の供給は、詳細には上流傾斜部および場合により上流ダクトや、下流傾斜部および場合により下流ダクト、該当する場合は正圧側に沿って延びる第2の側面キャビティなどの、ブレードの他のダクト、傾斜部またはキャビティによって行われる。
【0116】
説明した例では、上内方キャビティの厚さは、羽根の厚さよりも、すなわち正圧側と負圧側を分離する距離よりも薄い。実際に、このキャビティの厚さは、羽根の厚さの半分未満まで低減されうる。
【0117】
本発明の各種実施形態では、上内方キャビティにより、ブレードの先端の領域の冷却を大幅に改善することが可能になる。これは詳細には、先端に最も近い後縁のスロットに、極めて低温の空気を供給することによって行う。またこの上内方キャビティにより、それを定義する、例えばブレードの閉鎖壁などのブレードの壁の熱伝導による冷却も可能になる。
【0118】
さらに、熱シールドを形成する内部側面キャビティの中で最適な空気循環を確立するために、ブレードの壁を貫通してそのキャビティに通じる孔が設けられうる。この各孔は有利なことに、空気の循環を促進するために低圧域に位置する。ブレードの根元で取り込まれ熱シールドを形成するキャビティ内で搬送される空気は、この各孔があることでそのキャビティ内での搬送が完了してからブレードから吸い出されるようになる。
【0119】
本発明の各種実施形態ではブレードの冷却がさらに最適化されている。この最適化は、各内部ダクトでは熱交換を低減させるためにその中の圧力損失を最小限にすることによって行い、それに対して各側面キャビティでは熱交換を向上させるためにその中に乱流の促進体を設けることによって行う。
【0120】
したがって各側面キャビティは、それが沿って延びる外側壁からの熱をその各側面キャビティが吸収することにより熱シールドとして向上した効果を有し、各内部ダクトではその中を循環する空気をできるだけ昇温させないよう高速で循環させるためにその空気の圧力損失がほとんど生じない。
【0121】
したがって、上流ダクトや、中心ダクト、下流ダクトなどの内部ダクトは、冷却空気とその空気が搬送されるダクトの壁との熱交換を最小限にして冷却空気の高速循環を促進する目的で、平滑な内側壁を有する。各側面キャビティは、好ましくは、キャビティ全域の空気循環を促進する偏向体を備える。さらに、このキャビティの内側面は、空気とそれが沿って流れる壁との間における高水準の熱交換を促進する目的で、空気循環に乱流を生成するように、妨害物および/またはトリッパ(tripper)を備える。
【0122】
一般に、説明したブレードは、直接的な製造、付加的な製造、または鋳造によって実施されうる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】