(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-527118(P2017-527118A)
(43)【公表日】2017年9月14日
(54)【発明の名称】二次元層状材料の量子井戸接合デバイス、多重量子井戸デバイス及び量子井戸デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/10 20060101AFI20170818BHJP
H01L 33/06 20100101ALI20170818BHJP
【FI】
H01L31/10 A
H01L33/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-511609(P2017-511609)
(86)(22)【出願日】2015年7月30日
(85)【翻訳文提出日】2017年4月25日
(86)【国際出願番号】US2015042913
(87)【国際公開番号】WO2016032680
(87)【国際公開日】20160303
(31)【優先権主張番号】62/043,196
(32)【優先日】2014年8月28日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】507031918
【氏名又は名称】コニカ ミノルタ ラボラトリー ユー.エス.エー.,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アマノ, ジュン
【テーマコード(参考)】
5F241
5F849
【Fターム(参考)】
5F241CA05
5F241CA46
5F241CA64
5F241CA98
5F849AA04
5F849AB01
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5F849FA04
5F849FA05
5F849GA02
5F849XB21
5F849XB37
(57)【要約】
量子井戸デバイスは、第1二次元材料の第1層と、第2二次元材料の第2層と、前記第1層と前記第2層の間に配置される第3二次元材料の第3層とを備える。前記第1層、前記第2層及び前記第3層は、主にファンデルワールス力によって付着している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1二次元材料の第1層と、
第2二次元材料の第2層と、
前記第1層と前記第2層の間に配置される第3二次元材料の第3層と、を備え、
前記第1層、前記第2層及び前記第3層は、主にファンデルワールス力によって付着していることを特徴とする量子井戸デバイス。
【請求項2】
前記第3層は、
印加バイアス電圧を受け、
前記印加バイアス電圧によって所定のエネルギー準位の光子を吸収し、
前記吸収された光子によって電流を発生させるように適合されることを特徴とする請求項1に記載の量子井戸デバイス。
【請求項3】
前記第1二次元材料は、n型半導体となるようドープされることを特徴とする請求項2に記載の量子井戸デバイス。
【請求項4】
前記第2二次元材料は、p型半導体となるようドープされることを特徴とする請求項2に記載の量子井戸デバイス。
【請求項5】
前記第3層は、前記第3二次元材料の複数の副層を備えており、前記複数の副層の各々は、主にファンデルワールス力によって付着していることを特徴とする請求項2に記載の量子井戸デバイス。
【請求項6】
前記第3層のバンドギャップは、前記第1層及び前記第2層のバンドギャップよりも小さく、前記第3層の前記副層の数を変えることで調節可能であることを特徴とする請求項5に記載の量子井戸デバイス。
【請求項7】
前記第3層は、
駆動電圧を受け、
前記駆動電圧によって前記第1層から前記第3層へ複数の電子を駆動し、
前記駆動電圧によって前記第2層から前記第3層へ複数のホールを駆動し、
前記複数の駆動された電子からの電子及び前記複数の駆動されたホールからのホールの再結合により複数の光子を生成するように適合されることを特徴とする請求項1に記載の量子井戸デバイス。
【請求項8】
前記第1二次元材料は、n型半導体となるようドープされることを特徴とする請求項7に記載の量子井戸デバイス。
【請求項9】
前記第2二次元材料は、p型半導体となるようドープされることを特徴とする請求項7に記載の量子井戸デバイス。
【請求項10】
前記第3層は、前記第3二次元材料の複数の副層を備えており、前記複数の副層の各々は、主にファンデルワールス力によって付着していることを特徴とする請求項7に記載の量子井戸デバイス。
【請求項11】
前記第3層のバンドギャップは、前記第1層及び前記第2層のバンドギャップよりも小さく、前記第3層の前記副層の数を変えることで調節可能であることを特徴とする請求項10に記載の量子井戸デバイス。
【請求項12】
請求項1に記載の量子井戸デバイスを少なくとも一つ備えることを特徴とする多重量子井戸デバイス。
【請求項13】
基板及び第1二次元材料の第1層が主にファンデルワールス力によって付着するように前記第1層を前記基板上に堆積する工程と、
前記第1層及び第2二次元材料の第2層が主にファンデルワールス力によって付着するように前記第2層を前記第1層上に堆積する工程と、
前記第2層及び第3二次元材料の第3層が主にファンデルワールス力によって付着するように前記第3層を前記第2層上に堆積する工程と、
前記第3層上に第1コンタクトを堆積する工程と、
前記第1層の一部を露出する工程と、
前記第1層上に第2コンタクトを堆積する工程と、を備えることを特徴とする量子井戸デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記第1層は、機械的剥離、化学蒸着又は原子層堆積のいずれかによって堆積されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第2層は、機械的剥離、化学蒸着又は原子層堆積のいずれかによって堆積されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記第3層は、機械的剥離、化学蒸着又は原子層堆積のいずれかによって堆積されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記第1二次元材料は、n型半導体となるようドープされることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記第3二次元材料は、p型半導体となるようドープされることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記第2層を堆積する工程は、前記第2二次元材料の複数の副層を堆積する工程を含み、前記複数の副層の各々は主にファンデルワールス力によって付着することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記第2層のバンドギャップは、前記第1層及び前記第3層のバンドギャップよりも小さいことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記第2層の前記副層の数を変えることで前記第2層のバンドギャップを調節する工程を更に備えることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2014年8月28日に提出された米国仮特許出願番号62/043,196号について特許協力条約8条及び米国特許法119条(e)に基づき優先権を主張し、当該出願の内容は、全て本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
一般的に、量子井戸は、異なるバンドギャップを有する異なる半導体材料の層を接合することによって形成されるヘテロ構造の一種である。例えば、量子井戸は、二つのヒ化アルミニウム層の間に井戸層であるヒ化ガリウム層を挟んで形成される。当該異なる層の間に生じる界面は接合部と呼ばれることがある。量子井戸の接合部では、電荷キャリアは井戸に閉じ込められ、エネルギー準位は量子化される。
【0003】
量子井戸構造は様々な実践上の用途を有する。例えば、量子井戸構造は、レーザーダイオード、光検出器及びバリスティック輸送トランジスタを含むがこれに限定されない様々な電子デバイス、光学デバイス又は光電子デバイスにおける性能を向上させるために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
量子井戸構造を成長させ、又は製造するための様々な公知の技術がある。構造の特性を調整するために、層厚さの精密な制御及び欠陥のない界面が重要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一の側面において、一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスは、第1二次元材料の第1層と、第2二次元材料の第2層と、前記第1層と前記第2層の間に配置される第3二次元材料の第3層とを備え、前記第1層、前記第2層及び前記第3層は、主にファンデルワールス力によって付着している。
【0006】
一の側面において、一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスの製造方法は、基板及び第1二次元材料の第1層が主にファンデルワールス力によって付着するように前記第1層を前記基板上に堆積する工程と、前記第1層及び第2二次元材料の第2層が主にファンデルワールス力によって付着するように前記第2層を前記第1層上に堆積する工程と、前記第2層及び第3二次元材料の第3層が主にファンデルワールス力によって付着するように前記第3層を前記第2層上に堆積する工程と、前記第3層上に第1コンタクトを堆積する工程と、前記第1層を露出する工程と、前記第1層上に第2コンタクトを堆積する工程とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
添付の図面を参照して本発明のいくつかの実施形態を説明する。ただし、添付の図面は本発明のいくつかの側面又は実施例を例として示しているに過ぎず、特許請求の範囲を制限するものではない。
【0008】
【
図1】
図1(A)(B)は、一以上の実施形態に係る二次元材料を示す。
【0009】
【
図2】
図2(A)(B)は、一以上の実施形態に係る別の二次元材料を示す。
【0010】
【
図3】
図3(A)(B)は、一以上の実施形態に係る別の二次元材料を示す。
【0011】
【
図4】
図4(A)(B)は、一以上の実施形態に係る二次元材料間における力を示す。
【0012】
【
図5】
図5は、一以上の実施形態に係る層状の二次元材料を示す。
【0013】
【
図6】
図6は、一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスを示す。
【0014】
【
図7】
図7は、一以上の実施形態に係る別の量子井戸デバイスを示す。
【0015】
【
図8】
図8は、一以上の実施形態に係る別の量子井戸デバイスを示す。
【0016】
【
図9】
図9は、一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスの製造方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、具体的な実施形態について添付の図面を参照して説明する。以下の説明において、様々な細部が本願の例として記載される。本発明の一以上の実施形態がこれらの特定の細部なしでも実践されること及び本発明の範囲から逸脱しない範囲で様々な変更や修正が可能であることは当業者によって理解されるであろう。当業者に知られるいくつかの細部は、説明が分かりにくくなることを避けるため省略される。
【0018】
本発明の実施形態では、二次元の半導体材料を積層して形成される量子井戸デバイスを備える。上記二次元材料は、共有結合又はイオン結合によって結合している三次元の結晶パターンとは対照的に、単一の層からなる平坦な原子配列を有してもよい。グラフェンは、このような二次元材料の一例である。本発明の発明者は、このような二次元材料を積層することによって実現される量子井戸デバイスが、望ましい電気及び光学特性を示すことを発見した。
【0019】
本発明の一以上の実施形態において、上記二次元材料は、短い距離だけ互いに離れた二つの面を超えて自身との化学結合を形成しない層である。本発明の一以上の実施形態において、上記二次元材料は、イオン結合、共有結合又は金属結合などの他の付着方法とは対照的に、主にファンデルワールス力によって他の二次元材料層に付着する。一以上の実施形態において、このような二次元材料のバンドギャップは、例えば0.5eV未満から1.5eV超に調節可能である。一以上の実施形態に係るこのような二次元材料の例を
図1〜4を参照して以下に説明する。
【0020】
図1は、本発明の一以上の実施形態に係る二次元材料(100)の図を示す。具体的には、
図1(A)は上記二次元材料(100)の上面図を示し、
図1(B)は上記二次元材料(100)の側面図を示す。上記二次元材料(100)は、材料の原子(101)及び化学結合(102)を備える。
図1(B)から分かるように、全ての化学結合(102)は単一の平面にそって揃えられており、当該単一の平面の上下では化学結合は生じない。本発明の一以上の実施形態において、上記二次元材料はシリセン又は黒リンである。
【0021】
図2は、本発明の一以上の実施形態に係る二次元材料(200)の図を示す。具体的には、
図2(A)は上記二次元材料(200)の上面図を示し、
図2(B)は上記二次元材料(200)の側面図を示す。上記二次元材料(200)は、化学結合(203)によって結合している第1材料の原子(201)及び第2材料の原子(202)を備える。
図2(B)から分かるように、全ての化学結合(202)は単一の平面にそって揃えられており、当該単一の平面の上下では化学結合は生じない。本発明の一以上の実施形態において、上記二次元材料(200)は六方晶窒化ホウ素である。
【0022】
図3は、本発明の一以上の実施形態に係る二次元材料(300)の図を示す。具体的には、
図3(A)は上記二次元材料(300)の上面図を示し、
図3(B)は上記二次元材料(300)の側面図を示す。上記二次元材料(300)は、化学結合(302)によって結合している第1材料の原子(301)及び第2材料の原子(303)を備える。
図3(B)から分かるように、上記二次元材料(300)は、化学結合された3つの副層(304)〜(306)を含む。第1副層(304)及び第2副層(305)は上記第1材料の原子(301)からなるのに対し、第3副層(306)は上記第2材料の原子(303)からなる。第1副層(304)は第3副層(306)に化学結合され、第2副層(305)も第3副層(306)に化学結合される。第1副層(304)の下や第2副層(305)の上まで及ぶ化学結合はない。
【0023】
引き続き
図3を参照すると、本発明の一以上の実施形態において、上記二次元材料(300)はカルコゲニドである。あるいは、本発明の一以上の実施形態では、上記二次元材料(300)は、二硫化モリブデン、硫化タングステン、二セレン化モリブデン又は二セレン化タングステンである。あるいは、本発明の一以上の実施形態では、上記二次元材料(300)は、二セレン化ニオブ、二硫化ニオブ、硫化タンタル、硫化チタン又は硫化ニッケルである。あるいは、本発明の一以上の実施形態では、上記二次元材料(300)は、セレン化ガリウム、テルル化ガリウム、セレン化インジウム又はセレン化ビスマスである。
【0024】
図4は、本発明の一以上の実施形態に係る層状二次元材料(400)を示す。具体的には、
図4(A)はある二次元材料、例えば二次元材料(100)の側面図を示し、
図4(B)は別の二次元材料、例えば二次元材料(300)の側面図を示す。
図4(A)から分かるように、二次元材料(100)の複数の層が互いに重なりあって配置されると、当該層は、黒実線の両矢印で示すように、主にファンデルワールス力(404)によって適切な位置に保たれる。二次元材料層が主にファンデルワールス力(404)によって適切な位置に保たれるのならば、欠陥を生じずにいかなる二次元材料をいかなる他の二次元材料に積層してもよい。図示しないが、積層時に、異なる二次元材料の挙動が互いに同一であってもよい。
【0025】
図4(B)から分かるように、二次元材料(300)の複数の層が互いに重なりあって配置されると、当該層は、上述の他の二次元材料と同様に、主にファンデルワールス力(404)によって適切な位置に保たれる。二次元材料層が主にファンデルワールス力(404)によって適切な位置に保たれるのならば、欠陥を生じずにいかなる二次元材料をいかなる他の二次元材料に積層してもよい。
【0026】
次に、
図5は本発明の一以上の実施形態に係る二次元材料(500)のヘテロ積層の図を示す。
図5から分かるように、一以上の実施形態に従って二次元材料の複数の層を中間層とするとき、当該層は、主に各層間のファンデルワールス力(504)によって適切な位置に保たれる。
【0027】
一以上の実施形態によれば、
図1〜4を参照して上述したような二次元材料を使用して、量子井戸デバイスを作製することができる。例えば、
図6は、本発明の一以上の実施形態に係る量子井戸デバイス(600)を示す。量子井戸デバイス(600)は、第1二次元材料の第1層(601)、第2二次元材料の第2層(602)及び第1層(601)と第2層(602)の間に挟まれた第3二次元材料の第3層(603)を備える。一以上の実施形態において、第1二次元材料と第2二次元材料は同じである。第1層(601)及び第2層(602)は、第3層(603)のそれぞれ反対側に配置される。これらの3つの層は、黒実線の両矢印で示すように、ファンデルワールス力によって適切な位置に保たれる。
【0028】
本発明の一以上の実施形態において、第1二次元材料及び第2二次元材料のいずれも二硫化モリブデンである。本発明の一以上の実施形態において、第3層の材料は、六方晶窒化ホウ素又は黒リンである。本発明の一以上の実施形態において、第1層(601)は、例えば、電子を供給するためにn型半導体としてドープされた二硫化モリブデンである。本発明の一以上の実施形態において、第2層(602)は、例えば、ホールを供給するためにp型半導体としてドープされた二硫化モリブデンである。
【0029】
引き続き
図6を参照すると、本発明の一以上の実施形態において、量子井戸デバイス(600)は、第1層(601)に配置された第1コンタクト(604)及び第2層(602)に配置された第2コンタクト(605)を更に備える。第1コンタクト(604)及び第2コンタクト(605)は、外部のソース(図示しない)から電力を受けてもよい。本発明の一以上の実施形態において、第1コンタクト(604)及び第2コンタクト(605)は、金属である。本発明の一以上の実施形態において、第1コンタクト(604)及び第2コンタクト(605)は、銅、ニッケル又はアルミニウムである。本発明の一以上の実施形態において、第1コンタクト(604)及び第2コンタクト(605)は、酸化インジウムスズである。
【0030】
図7は、本発明の一以上の実施形態に係る量子井戸デバイス(600)の一部及び当該量子井戸デバイス(600)のエネルギーバンド図を示す。エネルギーバンド図に示すように、第1層(601)と第3層(603)の界面及び第2層(602)と第3層(603)の界面には、バンドギャップが存在する。この二つのバンドギャップは量子化された許容エネルギー準位で量子井戸を生成し、これらのバンドギャップは所望の波長を実現するために調節してもよい。第3層(603)の厚さ(701)は、第1許容エネルギー準位(702)、第2許容エネルギー準位(703)及びより高い全てのエネルギー準位などの量子化された許容エネルギー準位の大きさを決定する。
【0031】
図8は、本発明の一以上の実施形態に係る量子井戸デバイス(800)及び当該量子井戸デバイス(800)のエネルギーバンド図を示す。量子井戸デバイス(800)は、第1二次元材料の第1層(801)、第2二次元材料の第2層(802)及び第3二次元材料の第3層(803)を備える。一以上の実施形態において、第1二次元材料と第2二次元材料は同じである。第3層(803)は、第3二次元材料の二つの副層を備える。第1層(801)及び第2層(802)は、第3層(803)のそれぞれ反対側に配置される。これらの3つの層は、黒実線の両矢印で示すように、主にファンデルワールス力によって適切な位置に保たれる。
【0032】
本発明の一以上の実施形態において、第1二次元材料及び第2二次元材料のいずれも二硫化モリブデンである。本発明の一以上の実施形態において、第3二次元材料は、六方晶窒化ホウ素又は黒リンである。本発明の一以上の実施形態において、第1層(801)は、例えば、電子を供給するためにn型半導体としてドープされた二硫化モリブデンである。本発明の一以上の実施形態において、第2層(802)は、例えば、ホールを供給するためにp型半導体としてドープされた二硫化モリブデンである。
【0033】
図8のエネルギーバンド図に示すように、第1層(801)と第3層(803)の界面及び第2層(802)と第3層(803)の界面にはバンドギャップが存在する。この二つのバンドギャップは量子化された許容エネルギー準位で量子井戸を生成する。第3層(803)の厚さ(804)は、第1許容エネルギー準位(805)、第2許容エネルギー準位(806)及びより高い全てのエネルギー準位などの量子化された許容エネルギー準位の大きさを決定する。第3層(803)の厚さ(804)は、
図7に示す量子井戸デバイス(600)の第3層(604)の厚さ(701)を2倍にしたものである。第3層(803)の厚さ(803)を変更することで、
図7に示す量子井戸デバイス(600)の第1エネルギー準位(702)と比較すると、量子井戸デバイス(800)の第1エネルギー準位(805)が増加する。
【0034】
本発明の一以上の実施形態において、量子井戸デバイス(800)は、第1層(801)に配置された第1コンタクト(807)及び第2層(802)に配置された第2コンタクト(808)を更に備える。第1コンタクト(807)及び第2コンタクト(808)は、外部のソース(図示しない)から電力を受ける。本発明の一以上の実施形態において、第1コンタクト(807)及び第2コンタクト(808)は、金属である。本発明の一以上の実施形態において、第1コンタクト(807)及び第2コンタクト(808)は、銅、ニッケル又はアルミニウムである。本発明の一以上の実施形態において、第1コンタクト(807)及び第2コンタクト(808)は、酸化インジウムスズである。
【0035】
本発明の一以上の実施形態において、
図7又は
図8の量子井戸デバイスは、光子検出器の一部である。例えば、第1コンタクトと第2コンタクトの間にバイアス電圧を印加する。印加された電圧は、上記許容エネルギー準位、例えば、第1許容エネルギー準位(805)、第1許容エネルギー準位(702)、第2許容エネルギー準位(806)等をシフトする。許容エネルギー準位を伝導帯に合わせてシフトすると、伝導帯に合わせた当該許容エネルギー準位の光子は、第3層、例えば、第3層(803)又は第3層(603)に効率良く吸収される。光子が吸収されると、電子が基底状態からより高い状態へ励起され、第1コンタクトと第2コンタクトの間に大きな光電流が流れる。
【0036】
本発明の一以上の実施形態において、
図7又は
図8の量子井戸デバイスは、発光ダイオード又はレーザーの一部である。例えば、第1コンタクトと第2コンタクトの間に駆動電圧を印加する。第1層、例えば、第1層(601)又は第1層(801)からの電子が第3層、例えば、第3層(603)又は第3層(803)内へ駆動される。第2層、例えば、第2層(602)又は第2層(802)からのホールが第3層内へ駆動される。第3層内で、電子及びホールのペアが再結合して光子を放出する。
【0037】
図9は、本発明の一以上の実施形態に係るフローチャート(900)を示す。
図9に示す方法は、本発明の一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスを作製するために使用してよい。
図9で示す一以上のステップは、異なる実施形態で、省略し、繰り返し、及び/又は異なる順序で行ってもよい。
【0038】
ステップ9000において、第1二次元材料の第1層を基板上に堆積する。例えば、二次元材料の複数の層を備えているスラブから、接着材付きテープにより第1二次元材料の層を機械的に剥離(ME)し、これらの層を基板上に積み重ねることによって、第1層を堆積する。別の例として、熱及び/又はプラズマエネルギーを利用して、二次元材料を形成する前駆体を気相化学反応プロセスにより分解する化学蒸着(CVD)によって第1層を堆積してもよい。別の例として、熱及び/又はプラズマエネルギーを利用して、二次元材料を形成する前駆体を気相化学反応の逐次利用により分解する原子層堆積(ALD)によって第1層を堆積してもよい。
【0039】
ステップ9010において、第2二次元材料の第2層を第1層上に堆積する。本発明の一以上の実施形態では、第2層をME、CVD又はALDによって堆積する。本発明の一以上の実施形態において、ME、CVD又はALDによって第2層を第1層上に堆積することで、第1層と第2層は主にファンデルワールス力によって付着する。ステップ9020において、第3二次元材料の第3層を第2層上に堆積する。本発明の一以上の実施形態では、第3層をME、CVD又はALDによって堆積する。本発明の一以上の実施形態において、ME、CVD又はALDによって第3層を第2層上に堆積することで、第2層と第3層は主にファンデルワールス力によって付着する。一以上の実施形態において、第1二次元材料及び第3二次元材料は同じである。ステップ9030において、第1金属コンタクトを第3層上に堆積する。本発明の一以上の実施形態では、金属コンタクトを金属蒸着(MVD)又はCVDによって堆積する。ステップ9040において、第1層を露出する。本発明の一以上の実施形態では、基板を除去することで第1層を露出する。本発明の一以上の実施形態では、基板の一部を除去することで第1層を露出する。一以上の実施形態では、第2層及び第3層の一部を除去することによって第1層を露出する。ステップ9050において、第2金属コンタクトを第1層上に堆積する。本発明の一以上の実施形態では、金属コンタクトを金属蒸着(MVD)又はCVDによって堆積する。
【0040】
本発明の一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスは、一以上の以下の効果を提供する。一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスは、従来のエピタキシャル結晶成長技術に頼る必要のない二次元原子デバイスを提供する。よって、一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスは、従来の量子井戸デバイスと比較して、デザインがよりシンプルである。さらに、一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスは、低温で、ポリマーを含む様々な基板で作製してよい。PETやPENなどの典型的なポリマー基板材料は、強力な化学結合によって形成される高品質の従来の結晶性半導体材料を形成するのに必要な温度よりもはるかに低い150℃程度で分解する。一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスはまた、ファンデルワールス結合効果によりキャリアのための無欠陥界面を提供し、例えば、高速電子デバイスに適した高速キャリア移動度が提供される。この特徴はまた、光放出器又は光検出器における効率を向上させる。さらに、一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスは、調節可能なバンドギャップ及び複数の波長を提供する。強い光子放出で望ましい波長も実現する。さらに、一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスは、例えば、井戸のバンドギャップを調節したり、二次元層状井戸材料の数や井戸のドーピングを制御したりすることによって、放出及び検出する光子エネルギーの選択性の実現において、さらなる柔軟性を提供する。一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスはまた、互いに積み重ねられた複数の二次元材料層を備える複数の量子井戸を有することができ、このためにより高い利得又は感度が実現される。一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスは、性能向上のために様々な電子、光学又は光電子デバイスに用いてよい。
【0041】
本発明は限られた数の実施形態について記載されたが、当該開示の利益を受ける当業者は、ここに開示される発明の範囲から逸脱しない他の実施形態を考案できることを理解するだろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって制限される。
【手続補正書】
【提出日】2017年6月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1二次元材料の第1層と、
第2二次元材料の第2層と、
前記第1層と前記第2層の間に配置される第3二次元材料の第3層と、を備え、
前記第1層、前記第2層及び前記第3層は、主にファンデルワールス力によって付着していることを特徴とする量子井戸デバイス。
【請求項2】
前記第3層は、
印加バイアス電圧を受け、
前記印加バイアス電圧によって所定のエネルギー準位の光子を吸収し、
前記吸収された光子によって電流を発生させるように適合されることを特徴とする請求項1に記載の量子井戸デバイス。
【請求項3】
前記第1二次元材料は、n型半導体となるようドープされることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の量子井戸デバイス。
【請求項4】
前記第2二次元材料は、p型半導体となるようドープされることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の量子井戸デバイス。
【請求項5】
前記第3層は、前記第3二次元材料の複数の副層を備えており、前記複数の副層の各々は、主にファンデルワールス力によって付着していることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の量子井戸デバイス。
【請求項6】
前記第3層のバンドギャップは、前記第1層及び前記第2層のバンドギャップよりも小さく、前記第3層の前記副層の数を変えることで調節可能であることを特徴とする請求項5に記載の量子井戸デバイス。
【請求項7】
前記第3層は、
駆動電圧を受け、
前記駆動電圧によって前記第1層から前記第3層へ複数の電子を駆動し、
前記駆動電圧によって前記第2層から前記第3層へ複数のホールを駆動し、
前記複数の駆動された電子からの電子及び前記複数の駆動されたホールからのホールの再結合により複数の光子を生成するように適合されることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の量子井戸デバイス。
【請求項8】
前記第3層のバンドギャップは、前記第1層及び前記第2層のバンドギャップよりも小さく、前記第3層の前記副層の数を変えることで調節可能であることを特徴とする請求項7に記載の量子井戸デバイス。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の量子井戸デバイスを複数備えることを特徴とする多重量子井戸デバイス。
【請求項10】
基板及び第1二次元材料の第1層が主にファンデルワールス力によって付着するように前記第1層を前記基板上に堆積する工程と、
前記第1層及び第2二次元材料の第2層が主にファンデルワールス力によって付着するように前記第2層を前記第1層上に堆積する工程と、
前記第2層及び第3二次元材料の第3層が主にファンデルワールス力によって付着するように前記第3層を前記第2層上に堆積する工程と、
前記第3層上に第1コンタクトを堆積する工程と、
前記第1層の一部を露出する工程と、
前記第1層上に第2コンタクトを堆積する工程と、を備えることを特徴とする量子井戸デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記第1層は、機械的剥離、化学蒸着又は原子層堆積のいずれかによって堆積されることを特徴とする請求項10に記載の量子井戸デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記第2層は、機械的剥離、化学蒸着又は原子層堆積のいずれかによって堆積されることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の量子井戸デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記第3層は、機械的剥離、化学蒸着又は原子層堆積のいずれかによって堆積されることを特徴とする請求項10から請求項12までのいずれか一項に記載の量子井戸デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記第1二次元材料は、n型半導体となるようドープされることを特徴とする請求項10から請求項13までのいずれか一項に記載の量子井戸デバイスの製造方法。
【請求項15】
前記第2二次元材料は、p型半導体となるようドープされることを特徴とする請求項10から請求項14までのいずれか一項に記載の量子井戸デバイスの製造方法。
【請求項16】
前記第3層を堆積する工程は、前記第3二次元材料の複数の副層を堆積する工程を含み、前記複数の副層の各々は主にファンデルワールス力によって付着することを特徴とする請求項10から請求項15までのいずれか一項に記載の量子井戸デバイスの製造方法。
【請求項17】
前記第3層のバンドギャップは、前記第1層及び前記第2層のバンドギャップよりも小さいことを特徴とする請求項16に記載の量子井戸デバイスの製造方法。
【請求項18】
前記第3層の前記副層の数を変えることで前記第3層のバンドギャップを調節する工程を更に備えることを特徴とする請求項16又は請求項17に記載の量子井戸デバイスの製造方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
図2は、本発明の一以上の実施形態に係る二次元材料(200)の図を示す。具体的には、
図2(A)は上記二次元材料(200)の上面図を示し、
図2(B)は上記二次元材料(200)の側面図を示す。上記二次元材料(200)は、化学結合(203)によって結合している第1材料の原子(201)及び第2材料の原子(202)を備える。
図2(B)から分かるように、全ての化学結合(20
3)は単一の平面にそって揃えられており、当該単一の平面の上下では化学結合は生じない。本発明の一以上の実施形態において、上記二次元材料(200)は六方晶窒化ホウ素である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
図8のエネルギーバンド図に示すように、第1層(801)と第3層(803)の界面及び第2層(802)と第3層(803)の界面にはバンドギャップが存在する。この二つのバンドギャップは量子化された許容エネルギー準位で量子井戸を生成する。第3層(803)の厚さ(804)は、第1許容エネルギー準位(805)、第2許容エネルギー準位(806)及びより高い全てのエネルギー準位などの量子化された許容エネルギー準位の大きさを決定する。第3層(803)の厚さ(804)は、
図7に示す量子井戸デバイス(600)の第3層(60
3)の厚さ(701)を2倍にしたものである。第3層(803)の厚さ(80
4)を変更することで、
図7に示す量子井戸デバイス(600)の第1エネルギー準位(702)と比較すると、量子井戸デバイス(800)の第1エネルギー準位(805)が増加する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
本発明の一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスは、一以上の以下の効果を提供する。一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスは、従来のエピタキシャル結晶成長技術に頼る必要のない二次元原子デバイスを提供する。よって、一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスは、従来の量子井戸デバイスと比較して、デザインがよりシンプルである。さらに、一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスは、低温で、ポリマーを含む様々な基板で作製してよい。PETやPENなどの典型的なポリマー基板材料は、強力な化学結合によって形成される高品質の従来の結晶性半導体材料を形成するのに必要な温度よりもはるかに低い150℃程度で分解する。一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスはまた、ファンデルワールス結合効果によりキャリアのための無欠陥界面を提供し、例えば、高速電子デバイスに適した高速キャリア移動度が提供される。この特徴はまた、光放出器又は光検出器における効率を向上させる。さらに、一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスは、調節可能なバンドギャップ及び複数の波長を提供する。強い光子放出で望ましい波長も実現する。さらに、一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスは、例えば、井戸のバンドギャップを調節したり、二次元層状井戸材料の数や井戸のドーピングを制御したりすることによって、放出及び検出する光子エネルギーの選択性の実現において、さらなる柔軟性を提供する。一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスはまた、互いに積み重ねられた複数の二次元材料層を備える複数の量子井戸
(「多重量子井戸デバイス」という。)を有することができ、このためにより高い利得又は感度が実現される。一以上の実施形態に係る量子井戸デバイスは、性能向上のために様々な電子、光学又は光電子デバイスに用いてよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】