(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-527283(P2017-527283A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(54)【発明の名称】in vitro胆汁中排泄アッセイ
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20170825BHJP
C12N 5/077 20100101ALN20170825BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12N5/077
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2017-511986(P2017-511986)
(86)(22)【出願日】2015年9月2日
(85)【翻訳文提出日】2017年4月26日
(86)【国際出願番号】US2015048019
(87)【国際公開番号】WO2016036785
(87)【国際公開日】20160310
(31)【優先権主張番号】62/044,813
(32)【優先日】2014年9月2日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】510191218
【氏名又は名称】ヒューレル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ノビク, エリック
(72)【発明者】
【氏名】チョー, チェウル
(72)【発明者】
【氏名】パレーク, アミット
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ヤームッシュ, マーティン エル.
(72)【発明者】
【氏名】プルドウィンスキー, エリック
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA05
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4B065CA46
(57)【要約】
単一の肝細胞培養物を使用して化学実体の胆汁中排泄を特徴付けるin vitroの方法。少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む細胞培養物を提供するステップ;細胞培養物を第1の化学実体と、培養物の肝細胞による化学実体の取り込みを可能にするのに十分な時間、接触させるステップ;肝細胞を溶解させることなく少なくとも1つの胆細管を破壊し、少なくとも1つの胆細管によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量(あるならば)を検出するステップ;ならびに肝細胞を溶解させ、肝細胞によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出するステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学実体の胆汁中排泄を特徴付けるin vitroの方法であって、
a)少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む細胞培養物を提供するステップ、
b)前記細胞培養物を第1の化学実体と、前記培養物の肝細胞による前記化学実体の取り込みを可能にするのに十分な時間、接触させるステップ、
c)前記肝細胞を溶解させることなく前記少なくとも1つの胆細管を破壊し、前記少なくとも1つの胆細管によって放出される前記第1の化学実体および/またはその代謝産物の量(あるならば)を検出するステップ、ならびに
d)前記肝細胞を溶解させ、前記肝細胞によって放出される前記第1の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出するステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記細胞培養物が、固体基材の表面に配置される肝細胞および間質細胞を含む肝細胞−間質細胞共培養物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップc)で前記少なくとも1つの胆細管によって放出される前記第1の化学実体および/またはその代謝産物の量が、ステップd)で前記肝細胞によって放出される前記第1の化学実体および/またはその代謝産物の量より多い、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップc)で前記少なくとも1つの胆細管によって放出される前記第1の化学実体および/またはその代謝産物の量が、ステップd)で前記肝細胞によって放出される前記第1の化学実体および/またはその代謝産物の量より少ない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップc)および/またはd)における前記第1の化学実体および/またはその代謝産物の量が、LC−MS/MSを使用して検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の化学実体が標識を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの胆細管が、ラトランクリンA(LatA)を含む、および/またはカルシウムを含まない培地で前記培養物をインキュベートすることによって、前記培養物の肝細胞を溶解させることなく破壊される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞培養物で前記第1の化学実体について、固有の胆管クリアランス(CLbile)および/または胆汁中排泄指数(BEI)を決定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の化学実体のCLbileおよび/またはBEIを対照化学実体のCLbileおよび/またはBEIと比較し、前記比較に基づいて前記第1の化学実体の胆汁中排泄を特徴付けるステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質の活性が前記肝細胞で阻害される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ステップb)で前記細胞培養物を第2の化学実体と接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ステップc)で前記少なくとも1つの胆細管によって放出される前記第2の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップd)で前記肝細胞によって放出される前記第2の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
化学実体の胆汁中排泄を特徴付けるin vitroの方法であって、
a)少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む第1の細胞培養物を提供するステップであって、少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質の活性が前記第1の細胞培養物の肝細胞で阻害されるステップ、
b)前記第1の細胞培養物を第1の化学実体と接触させるステップ、
c)前記第1の細胞培養物の肝細胞を溶解させることなく前記第1の細胞培養物の前記少なくとも1つの胆細管を破壊し、前記少なくとも1つの胆細管によって放出される前記第1の化学実体および/またはその代謝産物の量(あるならば)を検出するステップ、
d)前記第1の細胞培養物の肝細胞を溶解させ、前記肝細胞によって放出される前記第1の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出するステップ、
e)少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む第2の細胞培養物を提供するステップであって、前記少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質の活性が前記第2の細胞培養物の肝細胞で阻害されないステップ、
f)前記第2の細胞培養物を前記第1の化学実体と接触させるステップ、
g)前記第2の細胞培養物の肝細胞を溶解させることなく前記第2の細胞培養物の前記少なくとも1つの胆細管を破壊し、前記少なくとも1つの胆細管によって放出される前記第1の化学実体および/またはその代謝産物の量(あるならば)を検出するステップ、ならびに
h)前記第2の細胞培養物の肝細胞を溶解させ、前記肝細胞によって放出される前記第1の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出するステップ
を含む方法。
【請求項15】
前記第1および第2の細胞培養物が、固体基材の表面に配置される肝細胞および間質細胞を含む肝細胞−間質細胞共培養物である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の細胞培養物で前記第1の化学実体についてCLbileおよび/またはBEIを決定するステップ、ならびに前記第2の細胞培養物で前記第1の化学実体についてCLbileおよび/またはBEIを決定するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の化学実体のCLbileおよび/またはBEIが、前記第2の細胞培養物におけるより前記第1の細胞培養物で低く、これにより、前記第1の化学実体の胆管クリアランスが前記少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質によって少なくとも一部媒介されることが示される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の化学実体のCLbileおよび/またはBEIが、前記第2の細胞培養物におけるより前記第1の細胞培養物で低くなく、これにより、前記第1の化学実体の胆管クリアランスが前記少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質によって少なくとも一部媒介されるわけではないことが示される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ステップc)および/またはd)および/またはe)および/またはh)における前記第1の化学実体および/またはその代謝産物の量が、LC−MS/MSを使用して検出される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
ステップb)および/またはf)における前記第1の化学実体および/またはその代謝産物が標識を含まない、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの胆細管が、ラトランクリンA(LatA)を含む、および/またはカルシウムを含まない培地で前記細胞培養物をインキュベートすることによって、前記細胞培養物の肝細胞を溶解させることなく前記第1および第2の細胞培養物において破壊される、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
ステップb)および/またはf)で前記第1および/または第2の細胞培養物を第2の化学実体と接触させることをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
ステップc)および/またはg)で前記少なくとも1つの胆細管によって放出される前記第2の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ステップd)および/またはh)で前記肝細胞によって放出される前記第2の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
試験化学実体の胆汁中排泄を特徴付けるin vitroの方法であって、
a)少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む細胞培養物を提供するステップ、
b)前記細胞培養物をマーカー化学実体および試験化学実体と同時に接触させるステップであって、前記マーカー化学実体が、決定されたCLbileおよび/またはBEIを有する少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質の公知の基質であるステップ、
c)前記肝細胞を溶解させることなく前記少なくとも1つの胆細管を破壊し、前記少なくとも1つの胆細管によって放出される前記マーカー化学実体および/またはその代謝産物の量を検出するステップ、ならびに
d)前記肝細胞を溶解させ、前記肝細胞によって放出される前記マーカー化学実体および/またはその代謝産物の量を検出するステップ
を含む方法。
【請求項26】
前記細胞培養物が、固体基材の表面に配置される肝細胞および間質細胞を含む肝細胞−間質細胞共培養物である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記試験化学実体の存在下において肝細胞−間質細胞共培養物で前記マーカー化学実体についてCLbileおよび/またはBEIを決定するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記マーカー化学実体のCLbileおよび/またはBEIが、前記試験化学実体の非存在下においてより前記試験化学実体の存在下において低く、これにより、前記試験化学実体の胆管クリアランスが前記少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質によって少なくとも一部媒介されることが示される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記マーカー化学実体のCLbileおよび/またはBEIが、前記試験化学実体の非存在下においてより前記試験化学実体の存在下において低くなく、これにより、前記試験化学実体の胆管クリアランスが前記少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質によって少なくとも一部媒介されるわけではないことが示される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
ステップc)および/またはd)における前記マーカー化学実体および/またはその代謝産物の量が、LC−MS/MSを使用して検出される、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1つの胆細管が、ラトランクリンA(LatA)を含む、および/またはカルシウムを含まない培地で前記細胞培養物をインキュベートすることによって、前記細胞培養物の肝細胞を溶解させることなく前記細胞培養物において破壊される、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質の活性が前記細胞培養物の肝細胞で阻害される、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
治療的な化学実体は、望ましくないことに肝臓での初回通過代謝によって動物の循環系からしばしば除去される。化学実体が肝細胞によって取り込まれ、胆細管を通して胆汁に排泄されるならば、その化学実体はその治療標的に決して到達しない。肝細胞に内因性である輸送タンパク質は、基質を、肝細胞の類洞膜を越えさらに胆細管の中へと移動させる役割を担う。胆細管は、肝細胞からの排泄成分を受け取り、動物体内からの除去のために胆汁を総胆管に輸送する、肝臓組織の中の構造である。したがって、基質の胆汁中排泄は、類洞膜を越える移行、細胞質を通る移動および細管膜を越える輸送が関与する複雑な過程である。
【0002】
親薬物またはそれらの代謝産物の肝胆汁性排泄が薬物の全体的クリアランスでしばしば重要な役割を演ずることが分かったため、製薬業界は、この方式のクリアランスを予測するためのより良いin vitroツールを探求せざるをえなくなった。この理由で、医薬としての使用のための化学実体の適合性の重要な決定因子は、それが胆汁中排泄を受ける程度、および他の化学実体の胆汁中排泄にそれが及ぼす影響の両方である。
【0003】
当技術分野は、化学実体の胆管クリアランスについてのin vitroアッセイの2つの一般的なタイプを教示している。第1のアッセイタイプは、肝細胞の2つの並行培養物を利用する2培養物アッセイフォーマットである(BI, Yi-anら、「Use of cryopreserved human hepatocytes in sandwich culture to measure hepatobiliary transport」、Drug Metab Dispos.、34巻、9号、1658〜65頁(2006年);ANSEDE, John H.ら、「An In Vitro Assay to Assess Transporter-Based Cholestatic Hepatotoxicity Using Sandwich-Cultured Rat Hepatocytes」、Drug metabolism and Disposition、38巻、276〜280頁(2010年))。第1の培養物では、肝細胞は正常な培養培地に曝露され、細管を形成し維持する。第2の培養物では、肝細胞は、カルシウムおよびマグネシウムを含まない培養培地などの、細管を破壊するように設計された培養培地に曝露される。次に化学実体を各培養物に曝露し、培養期間中、肝細胞と相互作用させる。次に、培養物を洗浄し、各培養物で細胞に会合している化学実体の量を評価する。第1の培養物では、細胞に会合している化学実体は、胆汁中排泄の後に細胞質に局在化するかまたは細管に存在する可能性がある。第2の培養物では、インタクトな細管がなく、したがって細胞に会合している化学実体はすべて細胞質に存在していなければならない。細胞質および細管(第1の培養物)に存在する化学実体の量から細胞質(第2の培養物)に存在する化学実体の量を引き算することによって、第1の細胞培養物の胆汁に排泄される化学実体の量を決定することが可能である。
2培養物アッセイフォーマットは、いくつかの欠点を有する。第1の欠点は、このアッセイフォーマットを使用して単一の胆汁中排泄データポイントを作成することが、初代肝細胞の2つの培養物を必要とするという単純な現実である。初代肝細胞は手に入れるのが困難であり、したがって、非常に高価である。したがって、より少ない初代肝細胞を使用して化学実体の胆汁中排泄を特徴付ける方法の必要性が、当技術分野にある。明らかに、1培養物方法はアッセイのために必要とされる初代肝細胞の数の50%の低減を達成し、したがって、非常に望ましい。第2の欠点は、2培養物アッセイフォーマットでは、胆管蓄積でない2つの値、すなわち全細胞蓄積(細胞質および胆汁)および細胞質蓄積を測定し、次にこれらの値の間の差を計算することによって、化学実体の胆管蓄積が必然的に計算されることである。この2培養物方法を利用して行われる測定は、胆管蓄積の単一の直接測定よりも多くの固有の変動性を必然的に有する。胆管蓄積の直接測定は、2培養物アッセイフォーマットでは可能でない。
当技術分野は、化学実体の胆管クリアランスのための単一培養物in vitroアッセイも教示している(米国特許第7,604,934号)。しかし、以前に教示されたアッセイは間接的である。具体的には、それは、単一の培養物をマーカー化合物(放射標識化合物など)に曝露し、試験化学実体の存在下および非存在下での放射性マーカーの胆管蓄積を比較することに頼る。そのようなアッセイは、試験化学実体の存在下でのマーカーの胆管蓄積の低下は、試験化学実体がマーカー化合物によって使用されるものと類似の経路によって排泄されることを示すと仮定する。このアッセイフォーマットは、低い精度を含むいくつかの欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,604,934号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】BI, Yi-anら、「Use of cryopreserved human hepatocytes in sandwich culture to measure hepatobiliary transport」、Drug Metab Dispos.、34巻、9号、1658〜65頁(2006年)
【非特許文献2】ANSEDE, John H.ら、「An In Vitro Assay to Assess Transporter-Based Cholestatic Hepatotoxicity Using Sandwich-Cultured Rat Hepatocytes」、Drug metabolism and Disposition、38巻、276〜280頁(2010年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上の全てのおよび他の理由のために、候補治療剤などの化学実体の胆汁中排泄を評価する、新しくて効率的な方法の必要性が当技術分野にある。本発明は、これらのおよび他の必要性を満たす、新しくて自明でない方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、化学実体の胆汁中排泄を特徴付ける、新しくて改善されたin vitroの方法を提供する。第1の態様では、本方法は、a)少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む細胞培養物を提供するステップ;b)細胞培養物を第1の化学実体と、培養物の肝細胞による化学実体の取り込みを可能にするのに十分な時間、接触させるステップ;c)肝細胞を溶解させることなく少なくとも1つの胆細管を破壊し、少なくとも1つの胆細管によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量(あるならば)を検出するステップ;ならびにd)肝細胞を溶解させ、肝細胞によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出するステップを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの洗浄ステップがステップa)とb)の間、ステップb)とc)の間および/またはステップc)とd)の間に含まれる。
【0008】
開示される方法の1つの特徴は、化学実体の胆管蓄積および化学実体の細胞質蓄積の両方が単一の肝細胞培養物、例えば組織培養プレートの単一のウェルを使用して測定されることである。驚くべきことに、および下で考察され、実施例で実証されるように、このアッセイフォーマットは精度が高く、再現性がある。
【0009】
本方法の一部の実施形態では、細胞培養物は、固体基材の表面に配置される肝細胞および間質細胞を含む肝細胞−間質細胞共培養物である。
【0010】
本方法の一部の実施形態では、ステップc)で少なくとも1つの胆細管によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量は、ステップd)で肝細胞によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量より多い。
【0011】
本方法の一部の実施形態では、ステップc)で少なくとも1つの胆細管によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量は、ステップd)で肝細胞によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量より少ない。
【0012】
本方法の一部の実施形態では、ステップc)および/またはd)における第1の化学実体および/またはその代謝産物の量は、LC−MS/MSを使用して検出される。
【0013】
本方法の一部の実施形態では、第1の化学実体は、標識を含まない。
【0014】
本方法の一部の実施形態では、少なくとも1つの胆細管は、ラトランクリンA(LatA)を含む、および/またはカルシウムを含まない培地で培養物をインキュベートすることによって、培養物の肝細胞を溶解させることなく破壊される。
【0015】
一部の実施形態では、本方法は、細胞培養物で第1の化学実体について、固有の胆管クリアランス(CL
bile)および/または胆汁中排泄指数(BEI)を決定するステップをさらに含む。
【0016】
一部の実施形態では、本方法は、細胞培養物で第1の化学実体について、固有の胆管クリアランス(CL
bile)および/または胆汁中排泄指数(BEI)を決定するステップをさらに含み;第1の化学実体のCL
bileおよび/またはBEIを対照化学実体のCL
bileおよび/またはBEIと比較し、この比較に基づいて第1の化学実体の胆汁中排泄を特徴付けるステップをさらに含む。
【0017】
本方法の一部の実施形態では、少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質の活性が、肝細胞で阻害される。
【0018】
一部の実施形態では、本方法は、ステップb)で細胞培養物を第2の化学実体と接触させることをさらに含む。
【0019】
一部の実施形態では、本方法は、ステップb)で細胞培養物を第2の化学実体と接触させることをさらに含み;本方法は、ステップc)で少なくとも1つの胆細管によって放出される第2の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出することをさらに含む。
【0020】
一部の実施形態では、本方法は、ステップb)で細胞培養物を第2の化学実体と接触させることをさらに含み;本方法は、ステップc)で少なくとも1つの胆細管によって放出される第2の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出することをさらに含み;本方法は、ステップd)で肝細胞によって放出される第2の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出することをさらに含む。
【0021】
第2の態様では、本方法は、a)少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む第1の細胞培養物を提供するステップであって、少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質の活性が第1の細胞培養物の肝細胞で阻害されるステップ;b)第1の細胞培養物を第1の化学実体と接触させるステップ;c)第1の細胞培養物の肝細胞を溶解させることなく第1の細胞培養物の少なくとも1つの胆細管を破壊し、少なくとも1つの胆細管によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量(あるならば)を検出するステップ;d)第1の細胞培養物の肝細胞を溶解させ、肝細胞によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出するステップ;e)少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む第2の細胞培養物を提供するステップであって、少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質の活性が第2の細胞培養物の肝細胞で阻害されないステップ;f)第2の細胞培養物を第1の化学実体と接触させるステップ;g)第2の細胞培養物の肝細胞を溶解させることなく第2の細胞培養物の少なくとも1つの胆細管を破壊し、少なくとも1つの胆細管によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量(あるならば)を検出するステップ;ならびにh)第2の細胞培養物の肝細胞を溶解させ、肝細胞によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出するステップを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの洗浄ステップがステップa)とb)の間、ステップb)とc)の間および/またはステップc)とd)の間に含まれる。一部の実施形態では、少なくとも1つの洗浄ステップがステップe)とf)の間、ステップf)とg)の間および/またはステップg)とh)の間に含まれる。
【0022】
本方法の一部の実施形態では、第1および第2の細胞培養物は、固体基材の表面に配置される肝細胞および間質細胞を含む肝細胞−間質細胞共培養物である。
【0023】
一部の実施形態では、本方法は、第1の細胞培養物で第1の化学実体についてCL
bileおよび/またはBEIを決定するステップ、ならびに第2の細胞培養物で第1の化学実体についてCL
bileおよび/またはBEIを決定するステップをさらに含む。
【0024】
一部の実施形態では、本方法は、第1の細胞培養物で第1の化学実体についてCL
bileおよび/またはBEIを決定するステップ、ならびに第2の細胞培養物で第1の化学実体についてCL
bileおよび/またはBEIを決定するステップをさらに含み;第1の化学実体のCL
bileおよび/またはBEIは第2の細胞培養物におけるより第1の細胞培養物で低く、これにより、第1の化学実体の胆管クリアランスが少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質によって少なくとも一部媒介されることが示される。
【0025】
一部の実施形態では、本方法は、第1の細胞培養物で第1の化学実体についてCL
bileおよび/またはBEIを決定するステップ、ならびに第2の細胞培養物で第1の化学実体についてCL
bileおよび/またはBEIを決定するステップをさらに含み;第1の化学実体のCL
bileおよび/またはBEIは第2の細胞培養物におけるより第1の細胞培養物で低くはなく、これにより、第1の化学実体の胆管クリアランスが少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質によって少なくとも一部媒介されるわけではないことが示される。
【0026】
本方法の一部の実施形態では、ステップc)および/またはd)および/またはe)および/またはh)における第1の化学実体および/またはその代謝産物の量は、LC−MS/MSを使用して検出される。
【0027】
本方法の一部の実施形態では、ステップb)および/またはf)における第1の化学実体および/またはその代謝産物は、標識を含まない。
【0028】
本方法の一部の実施形態では、少なくとも1つの胆細管は、ラトランクリンA(LatA)を含む、および/またはカルシウムを含まない培地で細胞培養物をインキュベートすることによって、細胞培養物の肝細胞を溶解させることなく第1および第2の細胞培養物において破壊される。
【0029】
一部の実施形態では、本方法は、ステップb)および/またはf)で第1および/または第2の細胞培養物を第2の化学実体と接触させることをさらに含む。
【0030】
一部の実施形態では、本方法は、ステップb)および/またはf)で第1および/または第2の細胞培養物を第2の化学実体と接触させることをさらに含み;ステップc)および/またはg)で少なくとも1つの胆細管によって放出される第2の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出することをさらに含む。
【0031】
一部の実施形態では、本方法は、ステップb)および/またはf)で第1および/または第2の細胞培養物を第2の化学実体と接触させることをさらに含み;ステップc)および/またはg)で少なくとも1つの胆細管によって放出される第2の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出することをさらに含み;ステップd)および/またはh)で肝細胞によって放出される第2の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出することをさらに含む。
【0032】
第3の態様では、本方法は、a)少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む細胞培養物を提供するステップ;b)細胞培養物をマーカー化学実体および試験化学実体と同時に接触させるステップであって、マーカー化学実体が、決定されたCL
bileおよび/またはBEIを有する少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質の公知の基質であるステップ;c)肝細胞を溶解させることなく少なくとも1つの胆細管を破壊し、少なくとも1つの胆細管によって放出されるマーカー化学実体および/またはその代謝産物の量を検出するステップ;ならびにd)肝細胞を溶解させ、肝細胞によって放出されるマーカー化学実体および/またはその代謝産物の量を検出するステップを含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの洗浄ステップがステップa)とb)の間、ステップb)とc)の間および/またはステップc)とd)の間に含まれる。
【0033】
本方法の一部の実施形態では、細胞培養物は、固体基材の表面に配置される肝細胞および間質細胞を含む肝細胞−間質細胞共培養物である。
【0034】
一部の実施形態では、本方法は、試験化学実体の存在下において肝細胞−間質細胞共培養物でマーカー化学実体についてCL
bileおよび/またはBEIを決定するステップをさらに含む。
【0035】
一部の実施形態では、本方法は、試験化学実体の存在下において肝細胞−間質細胞共培養物でマーカー化学実体についてCL
bileおよび/またはBEIを決定するステップをさらに含み;マーカー化学実体のCL
bileおよび/またはBEIは試験化学実体の非存在下においてより試験化学実体の存在下において低く、これにより、試験化学実体の胆管クリアランスが少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質によって少なくとも一部媒介されることが示される。
【0036】
一部の実施形態では、本方法は、試験化学実体の存在下において肝細胞−間質細胞共培養物でマーカー化学実体についてCL
bileおよび/またはBEIを決定するステップをさらに含み;マーカー化学実体のCL
bileおよび/またはBEIは試験化学実体の非存在下においてより試験化学実体の存在下において低くはなく、これにより、試験化学実体の胆管クリアランスが少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質によって少なくとも一部媒介されるわけではないことが示される。
【0037】
本方法の一部の実施形態では、ステップc)および/またはd)におけるマーカー化学実体および/またはその代謝産物の量は、LC−MS/MSを使用して検出される。
【0038】
本方法の一部の実施形態では、少なくとも1つの胆細管は、ラトランクリンA(LatA)を含む、および/またはカルシウムを含まない培地で細胞培養物をインキュベートすることによって、細胞培養物の肝細胞を溶解させることなく細胞培養物において破壊される。
【0039】
本方法の一部の実施形態では、少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質の活性が、細胞培養物の肝細胞で阻害される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、胆汁中のタウロコール酸塩の蓄積を示す。グラフは、胆汁に分泌される基質だけを含有する収集物4試料から得られたタウロコール酸塩の濃度を示す。バーは、Ca−緩衝液またはLatA緩衝液で細管を破壊することによって得られた試料を表す。全ての濃度は、LC−MS/MSを使用して決定した。
【0041】
【
図2】
図2は、細胞中のタウロコール酸塩の蓄積を示す。グラフは、細胞に蓄積される基質だけを含有する収集物5試料から得られたタウロコール酸塩の濃度を示す。バーは、収集物4においてCa−緩衝液またはLatA緩衝液で細管を破壊した後に得られた試料を表す。全ての濃度は、LC−MS/MSを使用して決定した。
【0042】
【
図3】
図3は、CSAによる阻害後の胆汁中のタウロコール酸塩の蓄積を示す。グラフは、輸送体阻害剤CSAとのインキュベーションの後の胆汁に蓄積される基質だけを含有する収集物4試料から得られたタウロコール酸塩の濃度を示す。バーは、収集物4において、Ca−緩衝液もしくはLatA緩衝液で細管を破壊した後、またはCSAとのインキュベーションおよびCa−緩衝液による破壊の後に得られた試料を表す。全ての濃度は、LC−MS/MSを使用して決定した。
【0043】
【
図4】
図4は、肝細胞−間質細胞共培養物で成長させた初代ヒト肝細胞によるタウロコール酸塩の胆管取り込みを示す。胆汁中の蓄積および細胞中の蓄積は、共培養プレートの単一のウェルで別々に測定した。胆汁蓄積および細胞蓄積の測定値は、グラフの左側のバーの別々に陰影をつけた部分として示し、グラフの右側のバーに示す測定した胆汁蓄積と比較する。タウロコール酸塩の67%のBEIを計算するために、測定値を使用した。
【0044】
【
図5】
図5は、培養したヒト肝細胞によるエストラジオール−グルクロニドの胆管取り込みを示す。胆汁中の蓄積および細胞中の蓄積は、共培養プレートの単一のウェルで別々に測定した。胆汁蓄積および細胞蓄積の測定値は、グラフの左側のバーの別々に陰影をつけた部分として示し、グラフの右側のバーに示す測定した胆汁蓄積と比較する。エストラジオール−グルクロニドの40%のBEIを計算するために、測定値を使用した。
【0045】
【
図6】
図6は、培養したヒト肝細胞によるジゴキシンの胆管取り込みを示す。胆汁中の蓄積および細胞中の蓄積は、共培養プレートの単一のウェルで別々に測定した。胆汁蓄積および細胞蓄積の測定値は、グラフの左側のバーの別々に陰影をつけた部分として示し、グラフの右側のバーに示す測定した胆汁蓄積と比較する。ジゴキシンの41%のBEIを計算するために、測定値を使用した。
【0046】
【
図7】
図7は、培養したヒト肝細胞によるロスバスタチンの胆管取り込みを示す。胆汁中の蓄積および細胞中の蓄積は、共培養プレートの単一のウェルで別々に測定した。胆汁蓄積および細胞蓄積の測定値は、グラフの左側のバーの別々に陰影をつけた部分として示し、グラフの右側のバーに示す測定した胆汁蓄積と比較する。ロスバスタチンの52%のBEIを計算するために、測定値を使用した。
【0047】
【
図8】
図8は、培養したヒト肝細胞によるプラバスタチンの胆管取り込みを示す。胆汁中の蓄積および細胞中の蓄積は、共培養プレートの単一のウェルで別々に測定した。胆汁蓄積および細胞蓄積の測定値は、グラフの左側のバーの別々に陰影をつけた部分として示し、グラフの右側のバーに示す測定した胆汁蓄積と比較する。プラバスタチンの14%のBEIを計算するために、測定値を使用した。
【0048】
【
図9】
図9は、培養したラット肝細胞によるタウロコール酸塩の胆管取り込みを示す。胆汁中の蓄積および細胞中の蓄積は、共培養プレートの単一のウェルで別々に測定した。胆汁蓄積および細胞蓄積の測定値は、グラフの左側のバーの別々に陰影をつけた部分として示し、グラフの右側のバーに示す測定した胆汁蓄積と比較する。タウロコール酸塩の60%のBEIを計算するために、測定値を使用した。
【0049】
【
図10】
図10は、培養したラット肝細胞によるロスバスタチンの胆管取り込みを示す。胆汁中の蓄積および細胞中の蓄積は、共培養プレートの単一のウェルで別々に測定した。胆汁蓄積および細胞蓄積の測定値は、グラフの左側のバーの別々に陰影をつけた部分として示し、グラフの右側のバーに示す測定した胆汁蓄積と比較する。ロスバスタチンの72%のBEIを計算するために、測定値を使用した。
【0050】
【
図11】
図11は、培養したラット肝細胞によるエストラジオール−グルクロニドの胆管取り込みを示す。胆汁中の蓄積および細胞中の蓄積は、共培養プレートの単一のウェルで別々に測定した。胆汁蓄積および細胞蓄積の測定値は、グラフの左側のバーの別々に陰影をつけた部分として示し、グラフの右側のバーに示す測定した胆汁蓄積と比較する。エストラジオール−グルクロニドの45%のBEIを計算するために、測定値を使用した。
【0051】
【
図12】
図12は、培養したラット肝細胞によるジゴキシンの胆管取り込みを示す。胆汁中の蓄積および細胞中の蓄積は、共培養プレートの単一のウェルで別々に測定した。胆汁蓄積および細胞蓄積の測定値は、グラフの左側のバーの別々に陰影をつけた部分として示し、グラフの右側のバーに示す測定した胆汁蓄積と比較する。ジゴキシンの67%のBEIを計算するために、測定値を使用した。
【0052】
【
図13】
図13は、培養したラット肝細胞によるプラバスタチンの胆管取り込みを示す。胆汁中の蓄積および細胞中の蓄積は、共培養プレートの単一のウェルで別々に測定した。胆汁蓄積および細胞蓄積の測定値は、グラフの左側のバーの別々に陰影をつけた部分として示し、グラフの右側のバーに示す測定した胆汁蓄積と比較する。プラバスタチンの58%のBEIを計算するために、測定値を使用した。
【0053】
【
図14】
図14は、タウロコール酸塩のBSEP媒介輸送のシクロスポリンAによる阻害を示す。データは、この系における0.46mMのIC
50値を示す。
【0054】
【
図15】
図15は、ロスバスタチンのBCRP媒介輸送のリトナビルによる阻害を示す。データは、この系における0.50mMのIC
50値を示す。
【0055】
【
図16】
図16は、タウロコール酸塩のBSEP媒介輸送およびロスバスタチンのBCRP媒介輸送のエリスロマイシン−エストレートによる阻害を示す。この実験では、BSEPは完全に阻害された。
【0056】
【
図17】
図17は、肝細胞−間質細胞共培養物で成長させた初代ヒト肝細胞によるタウロコール酸塩の胆管取り込みを測定した、3つの独立した実験の結果を比較する。胆汁中の蓄積および細胞中の蓄積は、共培養プレートの単一のウェルで別々に測定した。胆汁蓄積および細胞蓄積の測定値は、単一のバーの別々に陰影をつけた部分として示す。エラーバーは、単一の標準偏差を表す。実験のあらゆるペアワイズ組合せの分析は、結果の変動が統計的に有意でないことを示した。
【0057】
【
図18】
図18は、肝細胞−間質細胞共培養物で成長させた初代ヒト肝細胞によるプラバスタチンの胆管取り込みを測定した、3つの独立した実験の結果を比較する。胆汁中の蓄積および細胞中の蓄積は、共培養プレートの単一のウェルで別々に測定した。胆汁蓄積および細胞蓄積の測定値は、単一のバーの別々に陰影をつけた部分として示す。エラーバーは、単一の標準偏差を表す。実験のあらゆるペアワイズ組合せの分析は、結果の変動が統計的に有意でないことを示した。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明のin vitroの方法は、少なくとも1つの毛細胆管を形成した培養肝細胞を利用する。本方法の特徴は、本発明の方法での肝細胞の単一の培養物から2つの異なる直接的な測定が得られることである。第1に、培養物の毛細胆管に排泄される化学実体の量が、直接的に測定される。次に、肝細胞の細胞質に移入されるが、毛細胆管に排泄されない化学実体の量が直接的に測定される。直接的な測定および両方の測定のための単一の培養物の使用の特徴は、本発明の方法を先行技術の方法と区別し、この開示を考慮すると当業者に明らかになるいくつかの利点を提供する。
A.単一培養物胆汁中排泄アッセイ
【0059】
ある特定の実施形態では、本発明の方法は、a)少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む細胞培養物を提供するステップ;b)細胞培養物を第1の化学実体と、培養物の肝細胞による化学実体の取り込みを可能にするのに十分な時間、接触させるステップ;c)肝細胞を溶解させることなく少なくとも1つの胆細管を破壊し、少なくとも1つの胆細管によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量(あるならば)を検出するステップ;ならびにd)肝細胞を溶解させ、肝細胞によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出するステップを含む。本方法一部の実施形態では、少なくとも1つの洗浄ステップがステップa)とb)の間、ステップb)とc)の間および/またはステップc)とd)の間に含まれる。
【0060】
一般的に、ステップb)は、培養培地で第1の化学実体を希釈し、ステップa)で使用した培養培地を希釈した第1の化学実体を含む培地で置き換えることによって実行される。取り込みを可能にするのに十分な時間の後、ステップb)の培養培地を培養物から除去する。肝細胞は一般的に基質に接着しているので、これは、培養培地を除去し、次に新しい培地を加えるために、標準の組織培養吸引およびピペット操作技術または同等物を使用して一般的に達成される。当然ながら、当業者は、任意の適する方法を使用することができることを理解する。本方法のこのステージで、第1の化学実体を含まない培養培地の1回または複数回の交換によって、例えば1回の洗浄によって、2回の洗浄によってまたは3回の洗浄によって肝細胞培養物を洗浄することができる。
【0061】
一部の実施形態では、ステップb)に続いて、培養期間の間、少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む細胞培養物を新鮮な培地でインキュベートし、次に培養培地を収集する。この培養培地は、培養培地中の第1の化学実体の蓄積について分析することができる。この培養条件下で蓄積する第1の化学実体は、肝細胞の基底面輸送過程から生じるものであり、したがって、本方法の実施形態へのこのステップの組入れは、少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む単一の細胞培養物で、化学実体の基底面輸送、胆管蓄積および細胞質蓄積の測定を可能にする。
【0062】
ステップc)では、少なくとも1つの胆細管は、当技術分野で公知の任意の適する技術によって破壊される。例示的な方法は、培養培地を、カルシウムを含まないまたはカルシウムおよびマグネシウムを含まない培地と交換することによる。カルシウムを含まないまたはカルシウムおよびマグネシウムを含まない培地でのインキュベーションは密着結合を破壊して、胆細管の内容物を培養培地に放出させる。別の例示的な方法は、培養培地をLatAの有効濃度を含む培地と交換することによる。LatAの有効濃度を含む培地でのインキュベーションは密着結合を破壊して、胆細管の内容物を培養培地に放出させる。ステップc)での検出は、一般的に、細管の破壊の後に培地を収集すること、および収集した培地に存在する第1の化学実体の特徴付けによる。検出は、定性的および/または定量的であってよい。好ましい実施形態では、検出方法は、第1の化学実体を検出するためにLC−MS/MSの使用を含む。一部の実施形態では、LC−MS/MSは、少なくとも1つの胆細管の破壊の後に培地に存在する第1の化学実体の量を測定するために使用される。一部の実施形態では、細管から放出される物質を含む培地は、例えば、濾過、クロマトグラフィー、遠心分離および蒸発の少なくとも1つを含むことができるステップを使用して、望ましくない成分を除去するように処理される。
【0063】
ステップd)では、残りの細胞は、当技術分野で公知の任意の適する技術によって溶解される。例示的な方法は、脱イオン水への曝露による。ステップd)での検出は、一般的に、残りの細胞の溶解の後に培地を収集すること、および収集した培地に存在する第1の化学実体の特徴付けによる。検出は、定性的および/または定量的であってよい。好ましい実施形態では、検出方法は、第1の化学実体を検出するためにLC−MS/MSの使用を含む。一部の実施形態では、LC−MS/MSは、細胞溶解の後に培地に存在する第1の化学実体の量を測定するために使用される。一部の実施形態では、溶解細胞から放出される物質を含む培地は、例えば、濾過、クロマトグラフィー、遠心分離および蒸発の少なくとも1つを含むことができるステップを使用して、望ましくない成分を除去するように処理される。
【0064】
少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む細胞培養物は、任意の適する肝細胞培養物であってよい。一般的に、少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む細胞培養物は、肝臓スライスを含まない培養物構成である。少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む例示的な細胞培養物は、本開示のこの発明を実施するための形態のセクションのセクションD:「胆細管を形成している肝細胞を含む培養物」に記載される。この開示の方法では、胆細管を形成している肝細胞を含む任意の培養物を使用することができる。
【0065】
本方法の一部の実施形態では、細胞培養物は、固体基材の表面に配置される肝細胞および間質細胞を含む肝細胞−間質細胞共培養物である。
【0066】
本方法の一部の実施形態では、ステップc)で少なくとも1つの胆細管によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量は、ステップd)で肝細胞によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量より多い。
【0067】
本方法の一部の実施形態では、ステップc)で少なくとも1つの胆細管によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量は、ステップd)で肝細胞によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量より少ない。
【0068】
本方法の一部の実施形態では、ステップc)および/またはd)における第1の化学実体および/またはその代謝産物の量は、LC−MS/MSを使用して検出される。本方法の一部の実施形態では、ステップc)およびd)における第1の化学実体および/またはその代謝産物の量は、同等のLC−MS/MS技術を使用して検出される。
【0069】
本方法の一部の実施形態では、第1の化学実体は、標識を含まない。本明細書で使用する場合、「標識」は、アッセイで検出することができるシグナルを放出する部分である。例示的な標識は、蛍光性部分および放射性部分である。
【0070】
一部の実施形態では、本方法は化学実体の標識部分からのシグナルを検出するステップを含まない。
【0071】
本方法の一部の実施形態では、少なくとも1つの胆細管は、ラトランクリンA(LatA)を含む、および/またはカルシウムを含まない培地で培養物をインキュベートすることによって、培養物の肝細胞を溶解させることなく破壊される。
【0072】
一部の実施形態では、本方法は、細胞培養物で第1の化学実体について、固有の胆管クリアランス(CL
bile)および/または胆汁中排泄指数(BEI)を決定するステップをさらに含む。
【0073】
一部の実施形態では、本方法は、細胞培養物で第1の化学実体について、固有の胆管クリアランス(CL
bile)および/または胆汁中排泄指数(BEI)を決定するステップをさらに含み;第1の化学実体のCL
bileおよび/またはBEIを対照化学実体のCL
bileおよび/またはBEIと比較し、この比較に基づいて第1の化学実体の胆汁中排泄を特徴付けるステップをさらに含む。
【0074】
本方法の一部の実施形態では、少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質の活性が、肝細胞で阻害される。一部の実施形態では、少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質は、少なくとも1つの類洞膜輸送タンパク質および少なくとも1つの胆膜輸送タンパク質から選択される。一部の実施形態では、少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質は、NTCP、OATP1A1、OATP1A2、OATP1A4、OATPB2、OATP1B1、OATP1B3、OATP2B1、OAT2、OAT3、OAT4、OCT1、OCT3、OCTN1、OCTN2、BSEP、MRP1、MRP2、MRP3、MRP4、MRP5、MRP6、MRP7、MRP8、MRP9、MDR1、MDR1A/B、MDR2、MDR3、BCRP、ABCG5、ABCG8およびFIC−1から選択される。
【0075】
一部の実施形態では、本方法は、ステップb)で細胞培養物を第2の化学実体と接触させることをさらに含む。
【0076】
一部の実施形態では、本方法は、ステップb)で細胞培養物を第2の化学実体と接触させることをさらに含み;本方法は、ステップc)で少なくとも1つの胆細管によって放出される第2の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出することをさらに含む。
【0077】
一部の実施形態では、本方法は、ステップb)で細胞培養物を第2の化学実体と接触させることをさらに含み;本方法は、ステップc)で少なくとも1つの胆細管によって放出される第2の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出することをさらに含み;本方法は、ステップd)で肝細胞によって放出される第2の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出することをさらに含む。
B.肝細胞輸送体阻害による単一培養物胆汁中排泄アッセイ
【0078】
ある特定の実施形態では、本発明の方法は、第1の化学実体の胆汁中排泄に及ぼす少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質の阻害の影響を特徴付けるために、(1)少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質の活性が肝細胞で阻害される培養肝細胞での第1の化学実体の胆汁中排泄を、(2)少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質の活性が肝細胞で阻害されない培養肝細胞での第1の化学実体の胆汁中排泄を比較するステップを含む。例えば、そのような方法は、a)少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む第1の細胞培養物を提供するステップであって、少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質の活性が第1の細胞培養物の肝細胞で阻害されるステップ;b)第1の細胞培養物を第1の化学実体と接触させるステップ;c)第1の細胞培養物の肝細胞を溶解させることなく第1の細胞培養物の少なくとも1つの胆細管を破壊し、少なくとも1つの胆細管によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量(あるならば)を検出するステップ;d)第1の細胞培養物の肝細胞を溶解させ、肝細胞によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出するステップ;e)少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む第2の細胞培養物を提供するステップであって、少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質の活性が第2の細胞培養物の肝細胞で阻害されないステップ;f)第2の細胞培養物を第1の化学実体と接触させるステップ;g)第2の細胞培養物の肝細胞を溶解させることなく第2の細胞培養物の少なくとも1つの胆細管を破壊し、少なくとも1つの胆細管によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量(あるならば)を検出するステップ;ならびにh)第2の細胞培養物の肝細胞を溶解させ、肝細胞によって放出される第1の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出するステップを含むことができる。一部の実施形態では、少なくとも1つの洗浄ステップがステップa)とb)の間、ステップb)とc)の間および/またはステップc)とd)の間に含まれる。一部の実施形態では、少なくとも1つの洗浄ステップがステップe)とf)の間、ステップf)とg)の間および/またはステップg)とh)の間に含まれる。
【0079】
一般的に、ステップb)およびf)は、培養培地で第1の化学実体を希釈し、ステップa)またはe)で使用した培養培地を希釈した第1の化学実体を含む培地で置き換えることによって実行される。取り込みを可能にするのに十分な時間の後、ステップb)またはf)の培養培地を培養物から除去する。肝細胞は一般的に基質に接着しているので、これは、培養培地を除去し、次に新しい培地を加えるために、標準の組織培養吸引およびピペット操作技術または同等物を使用して一般的に達成される。当然ながら、当業者は、任意の適する方法を使用することができることを理解する。本方法のこのステージで、第1の化学実体を含まない培養培地の1回または複数回の交換によって、例えば1回の洗浄によって、2回の洗浄によってまたは3回の洗浄によって肝細胞培養物を洗浄することができる。
【0080】
一部の実施形態では、ステップb)および/またはf)に続いて、培養期間の間、少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む細胞培養物を新鮮な培地でインキュベートし、次に培養培地を収集する。この培養培地は、培養培地中の第1の化学実体の蓄積について分析することができる。この培養条件下で蓄積する第1の化学実体は、肝細胞の基底面輸送過程から生じるものであり、したがって、本方法の実施形態へのこのステップの組入れは、少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む単一の細胞培養物で、化学実体の基底面輸送、胆管蓄積および細胞質蓄積の測定を可能にする。
【0081】
ステップc)およびf)では、少なくとも1つの胆細管は、当技術分野で公知の任意の適する技術によって破壊される。例示的な方法は、培養培地を、カルシウムを含まないまたはカルシウムおよびマグネシウムを含まない培地と交換することによる。カルシウムを含まないまたはカルシウムおよびマグネシウムを含まない培地でのインキュベーションは密着結合を破壊して、胆細管の内容物を培養培地に放出させる。別の例示的な方法は、培養培地をLatAの有効濃度を含む培地と交換することによる。LatAの有効濃度を含む培地でのインキュベーションは密着結合を破壊して、胆細管の内容物を培養培地に放出させる。ステップc)およびf)での検出は、一般的に、細管の破壊の後に培地を収集すること、および収集した培地に存在する第1の化学実体の特徴付けによる。検出は、定性的および/または定量的であってよい。好ましい実施形態では、検出方法は、第1の化学実体を検出するためにLC−MS/MSの使用を含む。一部の実施形態では、LC−MS/MSは、少なくとも1つの胆細管の破壊の後に培地に存在する第1の化学実体の量を測定するために使用される。一部の実施形態では、細管から放出される物質を含む培地は、例えば、濾過、クロマトグラフィーおよび遠心分離の少なくとも1つを含むことができるステップを使用して、望ましくない成分を除去するように処理される。
【0082】
ステップd)およびh)では、残りの細胞は、当技術分野で公知の任意の適する技術によって溶解される。例示的な方法は、脱イオン水への曝露による。ステップd)およびh)での検出は、一般的に、残りの細胞の溶解の後に培地を収集すること、および収集した培地に存在する第1の化学実体の特徴付けによる。検出は、定性的および/または定量的であってよい。好ましい実施形態では、検出方法は、第1の化学実体を検出するためにLC−MS/MSの使用を含む。一部の実施形態では、LC−MS/MSは、細胞溶解の後に培地に存在する第1の化学実体の量を測定するために使用される。一部の実施形態では、溶解細胞から放出される物質を含む培地は、例えば、濾過、クロマトグラフィーおよび遠心分離の少なくとも1つを含むことができるステップを使用して、望ましくない成分を除去するように処理される。
【0083】
少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む細胞培養物は、任意の適する肝細胞培養物であってよい。一般的に、少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む細胞培養物は、肝臓スライスを含まない構成の培養物である。少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む例示的な細胞培養物は、本開示のこの発明を実施するための形態のセクションのセクションD:「胆細管を形成している肝細胞を含む培養物」に記載される。この開示の方法では、胆細管を形成している肝細胞を含む任意の培養物を使用することができる。
【0084】
本方法の一部の実施形態では、第1および第2の細胞培養物は、固体基材の表面に配置される肝細胞および間質細胞を含む肝細胞−間質細胞共培養物である。
【0085】
一部の実施形態では、本方法は、第1の細胞培養物で第1の化学実体についてCL
bileおよび/またはBEIを決定するステップ、ならびに第2の細胞培養物で第1の化学実体についてCL
bileおよび/またはBEIを決定するステップをさらに含む。
【0086】
一部の実施形態では、本方法は、第1の細胞培養物で第1の化学実体についてCL
bileおよび/またはBEIを決定するステップ、ならびに第2の細胞培養物で第1の化学実体についてCL
bileおよび/またはBEIを決定するステップをさらに含み;第1の化学実体のCL
bileおよび/またはBEIは第2の細胞培養物におけるより第1の細胞培養物で低く、これにより、第1の化学実体の胆管クリアランスが少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質によって少なくとも一部媒介されることが示される。
【0087】
一部の実施形態では、本方法は、第1の細胞培養物で第1の化学実体についてCL
bileおよび/またはBEIを決定するステップ、ならびに第2の細胞培養物で第1の化学実体についてCL
bileおよび/またはBEIを決定するステップをさらに含み;第1の化学実体のCL
bileおよび/またはBEIは第2の細胞培養物におけるより第1の細胞培養物で低くはなく、これにより、第1の化学実体の胆管クリアランスが少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質によって少なくとも一部媒介されるわけではないことが示される。
【0088】
本方法の一部の実施形態では、ステップc)および/またはd)および/またはe)および/またはh)における第1の化学実体および/またはその代謝産物の量は、LC−MS/MSを使用して検出される。本方法の一部の実施形態では、ステップc)およびd)およびg)およびh)における第1の化学実体および/またはその代謝産物の量は、同等のLC−MS/MS技術を使用して検出される。
【0089】
本方法の一部の実施形態では、ステップb)および/またはf)における第1の化学実体および/またはその代謝産物は、標識を含まない。本明細書で使用する場合、「標識」は、アッセイで検出することができるシグナルを放出する部分である。例示的な標識は、蛍光性部分および放射性部分である。
【0090】
一部の実施形態では、本方法は化学実体の標識部分からのシグナルを検出するステップを含まない。
【0091】
本方法の一部の実施形態では、少なくとも1つの胆細管は、ラトランクリンA(LatA)を含む、および/またはカルシウムを含まない培地で細胞培養物をインキュベートすることによって、細胞培養物の肝細胞を溶解させることなく第1および第2の細胞培養物において破壊される。
【0092】
一部の実施形態では、本方法は、ステップb)および/またはf)で第1および/または第2の細胞培養物を第2の化学実体と接触させることをさらに含む。
【0093】
一部の実施形態では、本方法は、ステップb)および/またはf)で第1および/または第2の細胞培養物を第2の化学実体と接触させることをさらに含み;ステップc)および/またはg)で少なくとも1つの胆細管によって放出される第2の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出することをさらに含む。
【0094】
一部の実施形態では、本方法は、ステップb)および/またはf)で第1および/または第2の細胞培養物を第2の化学実体と接触させることをさらに含み;ステップc)および/またはg)で少なくとも1つの胆細管によって放出される第2の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出することをさらに含み;ステップd)および/またはhで肝細胞によって放出される第2の化学実体および/またはその代謝産物の量を検出することをさらに含む。
【0095】
本方法の一部の実施形態では、少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質は、少なくとも1つの類洞膜輸送タンパク質および少なくとも1つの胆膜輸送タンパク質から選択される。一部の実施形態では、少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質は、NTCP、OATP1A1、OATP1A2、OATP1A4、OATPB2、OATP1B1、OATP1B3、OATP2B1、OAT2、OAT3、OAT4、OCT1、OCT3、OCTN1、OCTN2、BSEP、MRP1、MRP2、MRP3、MRP4、MRP5、MRP6、MRP7、MRP8、MRP9、MDR1、MDR1A/B、MDR2、MDR3、BCRP、ABCG5、ABCG8およびFIC−1から選択される。
C.マーカー化学実体による単一培養物胆汁中排泄アッセイ
【0096】
ある特定の実施形態では、この開示の方法は、少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む細胞培養物をマーカー化学実体および試験化学実体に同時に曝露するステップ、ならびに試験化学実体の胆汁中排泄を特徴付けるために試験化学実体の存在下でマーカー化学実体の胆汁中排泄を特徴付けるステップを含む。特に、これらの方法は、マーカー化学実体および試験化学実体による一般的な輸送体の使用の検出を可能にする。
【0097】
例えば、そのような方法は、a)少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む細胞培養物を提供するステップ;b)細胞培養物をマーカー化学実体および試験化学実体と同時に接触させるステップであって、マーカー化学実体が、決定されたCL
bileおよび/またはBEIを有する少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質の公知の基質であるステップ;c)肝細胞を溶解させることなく少なくとも1つの胆細管を破壊し、少なくとも1つの胆細管によって放出されるマーカー化学実体および/またはその代謝産物の量を検出するステップ;ならびにd)肝細胞を溶解させ、肝細胞によって放出されるマーカー化学実体および/またはその代謝産物の量を検出するステップを含むことができる。一部の実施形態では、少なくとも1つの洗浄ステップがステップa)とb)の間、ステップb)とc)の間および/またはステップc)とd)の間に含まれる。
【0098】
一般的に、ステップb)は、培養培地でマーカー化学実体および試験化学実体を希釈し、ステップa)で使用した培養培地を希釈したマーカー化学実体および試験化学実体を含む培地で置き換えることによって実行される。取り込みを可能にするのに十分な時間の後、ステップb)の培養培地を培養物から除去する。肝細胞は一般的に基質に接着しているので、これは、培養培地を除去し、次に新しい培地を加えるために、標準の組織培養吸引およびピペット操作技術または同等物を使用して一般的に達成される。当然ながら、当業者は、任意の適する方法を使用することができることを理解する。本方法のこのステージで、マーカー化学実体および試験化学実体を含まない培養培地の1回または複数回の交換によって、例えば1回の洗浄によって、2回の洗浄によってまたは3回の洗浄によって肝細胞培養物を洗浄することができる。本方法の一部の実施形態では、試験化学実体による輸送体のプレロードを可能にするために、ステップb)は、培養物を試験化学実体と接触させ、マーカー化学実体と接触させないステップの後にくる。
【0099】
ステップc)では、少なくとも1つの胆細管は、当技術分野で公知の任意の適する技術によって破壊される。例示的な方法は、培養培地を、カルシウムを含まないまたはカルシウムおよびマグネシウムを含まない培地と交換することによる。カルシウムを含まないまたはカルシウムおよびマグネシウムを含まない培地でのインキュベーションは密着結合を破壊して、胆細管の内容物を培養培地に放出させる。別の例示的な方法は、培養培地をLatAの有効濃度を含む培地と交換することによる。LatAの有効濃度を含む培地でのインキュベーションは密着結合を破壊して、胆細管の内容物を培養培地に放出させる。ステップc)での検出は、一般的に、細管の破壊の後に培地を収集すること、および収集した培地に存在するマーカー化学実体の特徴付けによる。検出は、定性的および/または定量的であってよい。好ましい実施形態では、検出方法は、第1の化学実体を検出するためにLC−MS/MSの使用を含む。一部の実施形態では、LC−MS/MSは、少なくとも1つの胆細管の破壊の後に培地に存在するマーカー化学実体の量を測定するために使用される。一部の実施形態では、細管から放出される物質を含む培地は、例えば、濾過、クロマトグラフィーおよび遠心分離の少なくとも1つを含むことができるステップを使用して、望ましくない成分を除去するように処理される。
【0100】
ステップd)では、残りの細胞は、当技術分野で公知の任意の適する技術によって溶解される。例示的な方法は、脱イオン水への曝露による。ステップd)での検出は、一般的に、残りの細胞の溶解の後に培地を収集すること、および収集した培地に存在するマーカー化学実体の特徴付けによる。検出は、定性的および/または定量的であってよい。好ましい実施形態では、検出方法は、マーカー化学実体を検出するためにLC−MS/MSの使用を含む。一部の実施形態では、LC−MS/MSは、細胞溶解の後に培地に存在するマーカー化学実体の量を測定するために使用される。一部の実施形態では、溶解細胞から放出される物質を含む培地は、例えば、濾過、クロマトグラフィーおよび遠心分離の少なくとも1つを含むことができるステップを使用して、望ましくない成分を除去するように処理される。
【0101】
少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む細胞培養物は、任意の適する肝細胞培養物であってよい。一般的に、少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む細胞培養物は、肝臓スライスを含まない培養物構成である。少なくとも1つの胆細管を形成している肝細胞を含む例示的な細胞培養物は、本開示のこの発明を実施するための形態のセクションのセクションD:「胆細管を形成している肝細胞を含む培養物」に記載される。この開示の方法では、胆細管を形成している肝細胞を含む任意の培養物を使用することができる。
【0102】
本方法の一部の実施形態では、細胞培養物は、固体基材の表面に配置される肝細胞および間質細胞を含む肝細胞−間質細胞共培養物である。
【0103】
一部の実施形態では、本方法は、試験化学実体の存在下において肝細胞−間質細胞共培養物でマーカー化学実体についてCL
bileおよび/またはBEIを決定するステップをさらに含む。
【0104】
一部の実施形態では、本方法は、試験化学実体の存在下において肝細胞−間質細胞共培養物でマーカー化学実体についてCL
bileおよび/またはBEIを決定するステップをさらに含み;マーカー化学実体のCL
bileおよび/またはBEIは試験化学実体の非存在下においてより試験化学実体の存在下において低く、これにより、試験化学実体の胆管クリアランスが少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質によって少なくとも一部媒介されることが示される。
【0105】
一部の実施形態では、本方法は、試験化学実体の存在下において肝細胞−間質細胞共培養物でマーカー化学実体についてCL
bileおよび/またはBEIを決定するステップをさらに含み;マーカー化学実体のCL
bileおよび/またはBEIは試験化学実体の非存在下においてより試験化学実体の存在下において低くはなく、これにより、試験化学実体の胆管クリアランスが少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質によって少なくとも一部媒介されるわけではないことが示される。
【0106】
本方法の一部の実施形態では、ステップc)および/またはd)におけるマーカー化学実体および/またはその代謝産物の量は、LC−MS/MSを使用して検出される。本方法の一部の実施形態では、ステップc)およびd)におけるマーカー化学実体および/またはその代謝産物の量は、同等のLC−MS/MS技術を使用して検出される。
【0107】
本方法の一部の実施形態では、マーカー化学実体は、標識を含まない。本明細書で使用する場合、「標識」は、アッセイで検出することができるシグナルを放出する部分である。例示的な標識は、蛍光性部分および放射性部分である。
【0108】
一部の実施形態では、本方法は化学実体の標識部分からのシグナルを検出するステップを含まない。
【0109】
本方法の一部の実施形態では、少なくとも1つの胆細管は、ラトランクリンA(LatA)を含む、および/またはカルシウムを含まない培地で細胞培養物をインキュベートすることによって、細胞培養物の肝細胞を溶解させることなく細胞培養物において破壊される。
【0110】
本方法の一部の実施形態では、少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質の活性が、肝細胞で阻害される。一部の実施形態では、少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質は、少なくとも1つの類洞膜輸送タンパク質および少なくとも1つの胆膜輸送タンパク質から選択される。一部の実施形態では、少なくとも1つの肝細胞輸送タンパク質は、NTCP、OATP1A1、OATP1A2、OATP1A4、OATPB2、OATP1B1、OATP1B3、OATP2B1、OAT2、OAT3、OAT4、OCT1、OCT3、OCTN1、OCTN2、BSEP、MRP1、MRP2、MRP3、MRP4、MRP5、MRP6、MRP7、MRP8、MRP9、MDR1、MDR1A/B、MDR2、MDR3、BCRP、ABCG5、ABCG8およびFIC−1から選択される。
D.胆細管を形成している肝細胞を含む培養物
【0111】
胆細管は、肝細胞によって分泌される胆汁を収集する細いチューブである。胆細管は併合して胆小管を形成し、それは最終的に総肝管になる。肝細胞は形状が多面体であり、類洞に面する表面(類洞面と呼ばれる)および他の肝細胞に接触する表面(側面と呼ばれる)を有する。胆細管は、隣接肝細胞の側面の一部の上の溝によって形成される。適当な条件下で、培養肝細胞は細管を形成する能力を有する。
【0112】
この開示の方法は、少なくとも1つの胆細管を形成した肝細胞を含むin vitro細胞培養物を利用する。肝細胞は、初代肝細胞、肝細胞の細胞株および幹細胞(胚性幹細胞、成人幹細胞または誘導多能性幹細胞など)を肝細胞に分化させることによって形成される肝細胞を限定なしに含む、任意のタイプの肝細胞であってよい。肝細胞は、任意の哺乳動物からのものであってよい。一部の実施形態では、肝細胞は、ヒト、非ヒト霊長類(カニクイザルなど)、畜産動物(ブタ、ウマ、ウシおよびヒツジなど)、家畜哺乳動物(イヌ、ネコ、モルモットおよびウサギなど)および齧歯類(マウスおよびラットなど)から選択される哺乳動物からのものである。一部の実施形態では、肝細胞−間質細胞共培養物は、複数の哺乳動物種からの肝細胞を含む。
【0113】
好ましい実施形態では、肝細胞は初代肝細胞である。初代肝細胞は、低温保存された形態で供給される必要がないことがある。低温保存されたヒト肝細胞は、Life Technologies Corporationから得ることができる。低温保存された非ヒト霊長類肝細胞は、Life Technologies Corporationから得ることができる。低温保存されたイヌ肝細胞は、IVT Bioreclemationから得ることができる。低温保存されたラット肝細胞は、Life Technologies Corporationから得ることができる。
【0114】
一部の実施形態では、培養物は、3次元生体印刷構成で存在する肝細胞を含む。一部の実施形態では、培養物は、球状構成で存在する肝細胞を含む。一部の実施形態では、培養物は、ゲルサンドウィッチ構成で存在する肝細胞を含む。一部の実施形態では、培養物は毛細管床を含む。一部の実施形態では、培養物は、肝臓スライスを製作することを含まない方法によって作製される。一部の実施形態では、培養物は肝臓スライスを含まない。
【0115】
一部の実施形態では、培養物は、固体基材の表面に配置される肝細胞および少なくとも1つの間質細胞型を含む肝細胞−間質細胞共培養物である。肝細胞−間質細胞共培養物の一部の実施形態では、肝細胞および単一の間質細胞型は、共培養物の細胞の少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、少なくとも約99.9%または少なくとも約99.99%に相当する。
【0116】
一般的に、肝細胞および間質細胞は、1:10から10:1の比で共培養物中に存在する。一部の実施形態では、肝細胞および間質細胞は、2:10から10:2の比で共培養物中に存在する。一部の実施形態では、肝細胞および間質細胞は、2:10から4:10の比で共培養物中に存在する。一部の実施形態では、肝細胞および間質細胞は、4:10から6:10の比で共培養物中に存在する。一部の実施形態では、肝細胞および間質細胞は、6:10から8:10の比で共培養物中に存在する。一部の実施形態では、肝細胞および間質細胞は、8:10から1:1の比で共培養物中に存在する。一部の実施形態では、肝細胞および間質細胞は、1:1から10:8の比で共培養物中に存在する。一部の実施形態では、肝細胞および間質細胞は、10:8から10:6の比で共培養物中に存在する。一部の実施形態では、肝細胞および間質細胞は、10:6から10:4の比で共培養物中に存在する。一部の実施形態では、肝細胞および間質細胞は、10:4から10:2の比で共培養物中に存在する。一部の実施形態では、肝細胞および間質細胞は、約10:1、10:2、10:3、10:4、10:5、10:6、10:7、10:8、10:9、1:1、9:10、8:10、7:10、6:10、5:10、4:10、3:10、2:10または1:10の比で共培養物中に存在する。
【0117】
一部の実施形態では、肝細胞−間質細胞共培養物は、少なくとも2つの間質細胞型を含む。一部の実施形態では、肝細胞−間質細胞共培養物は、共培養物の細胞の少なくとも約0.01%、少なくとも約0.1%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%または少なくとも約10%に各々相当する2つの間質細胞型を含む。
【0118】
一部の実施形態では、間質細胞型は、肝細胞と同じ種類の哺乳動物からのものである。一部の実施形態では、間質細胞型は、肝細胞と異なる種類の哺乳動物からのものである。
【0119】
一部の実施形態では、肝細胞−間質細胞共培養物は、第3の細胞型を含む。一部の実施形態では、第3の細胞型は、間質細胞である。一部の実施形態では、第3の細胞型は、間質細胞ではない。一部の実施形態では、第3の細胞型は、実質細胞である。一部の実施形態では、第3の細胞型は、非実質細胞ではない。一部の実施形態では、第3の細胞型は、伊東細胞、内皮細胞、胆管細胞、免疫媒介性細胞および幹細胞から選択される。一部の実施形態では、免疫媒介性細胞は、マクロファージ、T細胞、好中球、樹状細胞、肥満細胞、好酸球および好塩基球から選択される。
【0120】
一部の実施形態では、第3の細胞型は、クッパー細胞である。一部の実施形態では、クッパー細胞は、共培養物の細胞の少なくとも約0.01%、少なくとも約0.1%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%または少なくとも約10%に相当する。
【0121】
一部の実施形態では、間質細胞型は、内皮細胞である。一部の実施形態では、間質細胞型は、線維芽細胞である。一部の実施形態では、間質細胞は、初代細胞である。一部の実施形態では、間質細胞は、細胞株から得られる。一部の実施形態では、間質細胞は、形質転換細胞である。一部の実施形態では、間質細胞は、in vitroで幹細胞、例えば胚性幹細胞、成人幹細胞または誘導多能性幹細胞から分化する。線維芽細胞などの間質細胞の多数の供与源が当技術分野で公知であり、肝細胞−間質細胞共培養物で利用することができる。一例は、NIH 3T3−J2細胞株である(例えば、US2013/0266939A1を参照)。
【0122】
細胞性島構成の第1ステップで肝細胞が基質に付着するように、固体基材の上に肝細胞および間質細胞を配置することによって、培養物での肝細胞機能の一部の態様が改善されることを当技術分野は教示する(US2013/0266939A1を参照)。具体的には、そのような方法は、基材の上での肝細胞の細胞性島、間質細胞型などの非実質細胞型に囲まれた肝細胞島の形成に頼る。肝細胞島は、最初に島パターンの固体基材の上に細胞外マトリックス成分または誘導体を置き、次に、肝細胞を細胞外マトリックス成分または誘導体に接着させることによって形成される。非実質細胞型を次に加え、肝細胞を含有しない基質の部分を「充填」させる。そのような系の基本的な特徴は、肝細胞が基材表面全体に分散していないことである。
【0123】
一部の実施形態では、本発明は、例えばUS2013/0266939A1に記載されているような細胞性島構成で分布している肝細胞を含む肝細胞−間質細胞共培養物を利用する。しかし、好ましい実施形態では、肝細胞は固体基材の表面全体に実質的に分散している。
【0124】
本明細書で使用する場合、肝細胞−間質細胞共培養物において固体支持体の上の肝細胞の配置に関して「表面全体に分散している」は、以下の基準の少なくとも1つが共培養物に適用されることを意味する:1)固体基材の表面の少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%または少なくとも約50%が少なくとも1つの肝細胞によって覆われる;2)共培養物の肝細胞の少なくとも約2%、少なくとも約5%または少なくとも約10%が、固体基材と接触している間質細胞の上部に位置する;および3)肝細胞は、固体基材に付着した肝細胞の島を製作するために少なくとも1つの細胞外マトリックス成分の島を含む固体基材に肝細胞を加えることによって固体基材の上に播種されなかった。単一の肝細胞が基準1および基準2を満たすとみなすことができることに、注意すべきである。
【0125】
本発明の方法で使用するために、共培養物は少なくとも1つの胆細管を含む。一部の実施形態では共培養物は単一の胆細管だけを含み、他の実施形態では共培養物は複数の細管を含む。
【0126】
好ましい実施形態では、肝細胞−間質細胞共培養物の代謝機能は、培養期間全体にわたって長く持続する。一部の実施形態では、培養期間は、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも5日、少なくとも7日、少なくとも10日、少なくとも14日、少なくとも21日または少なくとも28日間である。一部の実施形態では、肝細胞−間質細胞共培養物の代謝機能は、共培養物の肝細胞の、遺伝子発現、細胞機能、代謝活性、形態およびそれらの組合せから選択される活性を測定することによって決定される。一部の実施形態では、肝細胞−間質細胞共培養物の代謝機能は、少なくとも1つのCYP450酵素の発現および/または活性のレベルを測定することによって決定される。少なくとも1つのCYP450酵素の発現および/または活性のレベルは、CYP450酵素のmRNAの発現の測定によって、CYP450酵素タンパク質の発現の測定によって、またはCYP450酵素活性の機能的アッセイによって測定することができる。一部の実施形態では、代謝活性はCYP450酵素活性である。一部の実施形態では、CYP450酵素は、CYP1A2、CYP1B1、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C、CYP2D6、CYP2E1、CYP2F1、CYP2J2、CYP3A4、CYP4AおよびCYP4Bから選択されるCYP450酵素である。
【0127】
共培養物の代謝機能が対照肝細胞単一培養物の代謝機能より肝細胞−間質細胞共培養物で長く持続する場合は、肝細胞−間質細胞共培養物の代謝機能は長く持続すると考えられる。一部の実施形態では、共培養物の代謝機能は、少なくとも7日間持続する。一部の実施形態では、共培養物の代謝機能は、少なくとも14日間持続する。一部の実施形態では、共培養物の代謝機能は、少なくとも21日間持続する。一部の実施形態では、共培養物の代謝機能は、少なくとも28日間持続する。
【0128】
一部の実施形態では、共培養物は、無血清または本質的に無血清の培地で培養される。一部の実施形態では、共培養物は、血清を含有する培地で培養される。一部の実施形態では、培地は、約0.1%の血清、約0.2%の血清、約0.3%の血清、約0.4%の血清、約0.5%の血清、約0.6%の血清、約0.7%の血清、約0.8%の血清、約0.9%の血清、約1%の血清、約2%の血清、約3%の血清、約4%の血清、約5%の血清、約6%の血清、約7%の血清、約8%の血清、約9%の血清または約10%の血清を含む。一部の実施形態では、培地は、少なくとも約0.1%の血清、少なくとも約0.2%の血清、少なくとも約0.3%の血清、少なくとも約0.4%の血清、少なくとも約0.5%の血清、少なくとも約0.6%の血清、少なくとも約0.7%の血清、少なくとも約0.8%の血清、少なくとも約0.9%の血清、少なくとも約1%の血清、少なくとも約2%の血清、少なくとも約3%の血清、少なくとも約4%の血清、少なくとも約5%の血清、少なくとも約6%の血清、少なくとも約7%の血清、少なくとも約8%の血清、少なくとも約9%の血清または少なくとも約10%の血清を含む。一部の実施形態では、培地は、約0.1%もしくはそれ未満の血清、約0.2%もしくはそれ未満の血清、約0.3%もしくはそれ未満の血清、約0.4%もしくはそれ未満の血清、約0.5%もしくはそれ未満の血清、約0.6%もしくはそれ未満の血清、約0.7%もしくはそれ未満の血清、約0.8%もしくはそれ未満の血清、約0.9%もしくはそれ未満の血清、約1%もしくはそれ未満の血清、約2%もしくはそれ未満の血清、約3%もしくはそれ未満の血清、約4%もしくはそれ未満の血清、約5%もしくはそれ未満の血清、約6%もしくはそれ未満の血清、約7%もしくはそれ未満の血清、約8%もしくはそれ未満の血清、約9%もしくはそれ未満の血清または約10%もしくはそれ未満の血清を含む。
E.輸送体
【0129】
本発明の方法の一部の実施形態では、類洞膜輸送体および細管輸送体から選択される少なくとも1つの肝細胞輸送体が阻害される。多数の輸送体が当技術分野で公知であり、当業者は、任意の公知のまたはその後発見された輸送体を本発明の方法で使用することができることを理解する。例示的な輸送体には、これらに限定されないが、Na+−タウロコール酸塩同時輸送ポリペプチド(NTCP)または肝胆汁酸輸送体(LBAT)としても知られるナトリウム/胆汁酸共輸送体、ヒトにおいてSLC10A1(溶質担体ファミリー10のメンバー1)遺伝子によってコードされるタンパク質;有機アニオン輸送ポリペプチド、例えば、OATP1A1、OATP1A2、OATP1A4、OATPB2、OATP1B1、OATP1B3およびOATP2B1から選択されるもの;有機アニオン輸送体、例えば、OAT2、OAT3、OAT4から選択されるもの;有機カチオン輸送タンパク質、例えば、OCT1、OCT3、OCTN1およびOCTN2から選択されるもの;胆汁酸塩搬出ポンプ(BSEP)タンパク質、ヒトのABCB11遺伝子によってコードされるATP結合性カセット、サブファミリーBメンバー11(ABCB11)としても知られる;多剤耐性関連のタンパク質、例えば、MRP1、MRP2、MRP3、MRP4、MRP5、MRP6、MRP7、MRP8およびMRP9から選択されるもの;P糖タンパク質、例えば、MDR1、MDR1A/B、MDR2およびMDR3から選択されるもの;ATP結合性カセットサブファミリーGメンバー2(ABCG2)、BCRPとしても知られる、ヒトにおいてABCG2遺伝子によってコードされるタンパク質;ABCG5およびABCG8から選択されるABCタンパク質;ならびに、おそらく、リン脂質輸送ATPアーゼIC(ATP8B1)、FIC−1としても知られる、ヒトにおいてATP8B1遺伝子によってコードされる酵素が含まれる。
【0130】
これらの輸送体タンパク質の多数の阻害剤が当技術分野で公知であり、本発明の方法で使用することができる。Pgpタンパク質の例示的な阻害剤には、これらに限定されないが、リトナビル、シクロスポリン、ベラパミル、エリスロマイシン、ケトコナゾール(ketocoanzole)、イトラコナゾールおよびキニジンが含まれる。BCRPの例示的な阻害剤には、これらに限定されないが、エラクリダール、イマチニブおよびフミトレモルギンCが含まれる。Mate 1の例示的な阻害剤には、これに限定されないが、シメチジンが含まれる。BSEPの例示的な阻害剤には、これらに限定されないが、アトルバスタチン、セリバスタチン、クロファジミンおよびグリブリドが含まれる。MRP2の例示的な阻害剤には、これらに限定されないが、シクロスポリン、プロベネシド、フロセミドおよびラミブジンが含まれる。
【実施例】
【0131】
(実施例1)
肝細胞−間質細胞共培養物
低温保存されたヒト肝細胞を液体窒素から取り出して、解凍した。解凍後、細胞を培地に再懸濁し、トリパンブルー排除を使用して細胞数および細胞生存率を決定した。実験的なプレーティングのために使用するまで、間質細胞をCO
2インキュベーターの中で育てた。プレーティング当日に、細胞をプレートから剥がし、洗浄し、培地に再懸濁した。細胞数および生存率は、トリパンブルー排除を使用して決定した。
【0132】
コラーゲンでコーティングされた96ウェルプレートに、1ウェルにつき30,000個の肝細胞の密度で肝細胞および間質細胞を播種した。播種の前に、間質細胞の成長を停止させた。任意の胆汁中排泄アッセイの開始の前に、培養物を7日間維持した。実験を開始する前に、細管の形成を確実にするために、7日目に細胞をCDFDAで染色した。
(実施例2)
肝細胞−間質細胞共培養物における胆細管への試験化合物の排泄
【0133】
この実験では、実施例1により調製された肝細胞−間質細胞共培養物における胆細管の存在を評価した。共培養物を、5μMの5−(および−6)−カルボキシ−2’,7’−ジクロロ−フルオレセインジアセテート(CDFDA)と20分間インキュベートした。肝細胞によって取り込まれるCDFDAは肝細胞によって蛍光性の5−(および−6)−カルボキシ−2’,7’−ジクロロ−フルオレセイン(CDA)に加水分解され、次にMrp2輸送体を通してこの蛍光性の形態で細管に分泌される。共培養物は、顕微鏡の下で直ちに明らかであるいくつかの細管を含んでいた(データ示さず)。シクロスポリンA(CSA)は、Mrp2輸送体の公知の阻害剤である。以降の実験では、50μMのCSAの存在下で共培養物をCDFDAと20分間インキュベートした。CSAの存在下でのCDFDAとのインキュベーションの後に、蛍光性細管は見えなかった(データ示さず)。この結果は、実施例1により調製される共培養物中に胆細管が存在することを実証し、細管への化学実体の輸送体依存性排泄をこの系で評価することができることを実証する。
(実施例3)
細管の破壊
【0134】
肝細胞−間質細胞共培養物で胆汁中への化学実体の排泄を評価するには、共培養物の細管に存在する化学実体と共培養物の細胞の細胞質に存在し得る化学実体とを区別する方法が必要である。細管破壊の2つの方法を、試験した。第1の方法では、無カルシウム(Ca−)緩衝液に培養物を曝露した。カルシウムの欠乏は、細胞が密着結合を形成する能力を阻害し、細管に存在する胆汁を流出させる。細胞は、まずCa+のHBSS緩衝液で2回洗浄した。次に、細胞を、Ca−なしのHBSS緩衝液中の5μMのCDFDAと20分間インキュベートした。次に、細胞をCa−なしのHBSS緩衝液で2回洗浄した。Ca−緩衝液への曝露の後に、蓄積されたCDFが細管から流出したので、CDF染色は明瞭でなかった(データ示さず)。
【0135】
第2の方法では、ラトランクリンA(LatA)を含有する緩衝液に培養物を曝露した。LatAは、密着結合の形成における鍵となるステップであるマイクロフィラメント組織を破壊する働きをし、細管に存在する胆汁を流出させる。細胞は、まずCa+のHBSS緩衝液で2回洗浄した。次に、細胞を、Ca+のHBSS緩衝液中の5μMのCDFDAおよび10μMのLatAと20分間インキュベートした。次に、細胞をCa+のHBSS緩衝液で2回洗浄した。LatA含有緩衝液への曝露の後に、蓄積されたCDAが細管から流出したので、CDA染色は明瞭でなかった(データ示さず)。
(実施例4)
胆汁中排泄アッセイ
【0136】
実施例2および3で報告されるデータは、機能的細管を形成する肝細胞−間質細胞共培養系の能力、細管を破壊する能力、ならびにMrp2およびBSEP輸送体系の機能を阻害する能力を定性的に実証する。この実施例は、タウロコール酸塩(taurcholate)の肝胆汁性排泄を定量的に測定するこの系の能力を実証する。1つの共培養コンパートメントで肝胆輸送を評価するために、2μMのタウロコール酸塩を細胞培地に導入して、20分間インキュベートした。培地を次に取り出し(収集物#1)、残留タウロコール酸塩の分析のために保存した。培養物を緩衝液で2回洗浄し(収集物#2および#3)、各洗浄液を残留タウロコール酸塩の分析のために保存した。次に、培養物中に存在する細管を破壊する働きをするが共培養物の細胞を溶解しないCa−緩衝液またはLatA緩衝液に、細胞を30分間曝露した(収集物#4)。これにより、細管の胆汁に蓄積されていたタウロコール酸塩が放出される。次に、細胞膜を破壊して細胞コンパートメントに蓄積していた化合物を放出する働きをする脱イオン水に、細胞を曝露した(収集物#5)。細管に存在するタウロコール酸塩はすべて収集物#4に既に収集されているので、収集物#5は、細胞に存在するタウロコール酸塩はすべて含有するが、細管に存在するタウロコール酸塩は一切含まない。収集物#4(
図1)および収集物5(
図2)中のタウロコール酸塩の濃度は、LC−MS/MSを使用して決定した。実験は、3反復で実行した。LatAについて
図1に示す基礎データは、117.6nM、115.4nMおよび158.6nMであった。Ca−について
図1に示す基礎データは、204nM、150.2nMおよび158nMであった。LatAについて
図2、収集物#5に示す基礎データは、199nM、144.4nMおよび234nMであった。Ca−数について
図2、収集物#5に示す基礎データは、141nM、95.4nMおよび120.8nMであった。
【0137】
試料を1000×gで10分間遠心分離し、上清のアリコート(10mL)をLC−MS/MSによって分析した。LC−MS/MS系は、Shimadzu LC−10ADvpポンプ(Shimadzu、Columbia、MD)、HTS PAL CTCオートサンプラー(Leap Technologies、Carboro、NC)およびTurbo Ion Sprayプローブを備えたAPI 4000質量分析計(Applied Biosystems/MDS SCIEX、Ontario、Canada)で構成された。化合物の分離は、逆相定常相(Synergi Hydro、Phenomenex)を使用して達成した。移動相は、水中の0.15gmの酢酸アンモニウムによる0.1%ギ酸(A)およびアセトニトリル中の0.15gmの酢酸アンモニウムによる0.1%ギ酸(B)による勾配であり、流量は0.5mL/分であった。移動相の最初の組成は2%のBで0.3分間であり、続いて1.3分間にわたる100%のBまでの直線濃度勾配、および0.2分間で2%のBに戻り、2%のBをさらに0.2分間維持した。陰イオンモードでの多反応モニタリング(MRM)を使用して、タウロコール酸を検出した。分析物対内部標準の面積比は、Analyst1ソフトウェアv.1.4.1(Applied Biosystems)を使用して計算した。この系におけるタウロコール酸塩について、固有の胆管クリアランス(CLbile)[式1]および胆汁中排泄指数(BEI)[式2]を計算するために、胆汁中および細胞中のタウロコール酸塩の濃度を次に使用した。細管を破壊するためにCa−緩衝液を使用した方法のBEIは66.9%であり、細管を破壊するためにLatA緩衝液を使用した方法のBEIは40.4%であった。他も、タウロコール酸塩のBEIについて41〜63%の範囲の、類似の範囲を報告している。BI, Yi-anら、「Use of cryopreserved human hepatocytes in sandwich culture to measure hepatobiliary transport」、Drug Metab Dispos.、34巻、9号、1658〜65頁(2006年)。
【数1】
【0138】
この方法を使用して、タウロコール酸塩の胆管クリアランスに及ぼすCSAの影響を次に評価した。細胞培地へのタウロコール酸塩の添加の前に共培養物を阻害剤CSAに曝露したこと以外は、同じプロトコールに従った。2μMのタウロコール酸塩の添加の前に、50μMシクロスポリンAを有するHBSS緩衝液に細胞を20分間曝露した。次に、実施例3のように実験を続けた。この実験では、細管を破壊するためにCa−緩衝液を使用した。
図3に示すデータによって実証されるように、CSAとのインキュベーションは胆汁中に蓄積するタウロコール酸塩の濃度を激減させた。
(実施例5)
ヒト肝細胞共培養物での取り込みおよび胆汁中排泄
【0139】
5つの化合物:2μMのタウロコール酸(タウロコール酸塩)、2μMのエストラジオール−グルクロニド、2μMのジゴキシン(digonxin)、2μMのロスバスタチンおよび5μMのプラバスタチンの取込み速度を測定するために、実施例1による肝細胞−間質細胞共培養物を使用した。本発明の胆管クリアランスを評価する単一ウェル方法を使用した。
【0140】
培養培地中の指示濃度の各試験化合物に、共培養物を20分の間曝露した。培地を次に取り出し(収集物#1)、残留化合物の分析のために保存した。培養物を緩衝液で2回洗浄し(収集物#2および#3)、各洗浄液を残留タウロコール酸塩の分析のために保存した。次に、培養物中に存在する細管を破壊する働きをするが、共培養物の細胞を溶解しない、5μMの濃度のラトランクリンを含有するHEPES緩衝液に、細胞を30分間曝露した。これにより、細管の胆汁に蓄積していたタウロコール酸塩が放出される。インキュベーション期間の終わりに、培養培地を収集した(収集物#4)。次に、細胞膜を破壊して細胞コンパートメントに蓄積していた化合物を放出する働きをする脱イオン水に、細胞を曝露した(収集物#5)。細管に存在する化合物はすべて収集物#4に既に収集されているので、収集物#5は、細胞に存在する化合物をすべて含有するが、細管に存在する化合物は一切含まない。収集物#4および収集物5の中の化合物の濃度は、実施例4のように、LC−MS/MSを使用して決定した。
【0141】
この分析の結果は、
図4〜8に示す。各図で、胆汁中の化合物の測定量および細胞質中の化合物の測定量は、図の左側の単一のバーの2つの部分として一緒に提示される。胆汁の測定値も、図の右側のバーとして示す。右のバー(胆汁)の高さを複合の左バー(細胞質+胆汁の合計)の高さと比較することにより、胆汁に蓄積した化合物の部分を可視化できる。タウロコール酸(タウロコール酸塩)の結果を
図4に示し、エストラジオール−グルクロニドの結果を
図5に示し、ジゴキシンの結果を
図6に示し、ロスバスタチンの結果を
図7に示し、プラバスタチンの結果を
図8に示す。この系で各化合物のBEIを計算するために、式2を使用した。各試験化合物の胆管クリアランス(式1)およびBEI(式2)を計算するために、データを使用した。データを、表1に示す。
【0142】
タウロコール酸(タウロコール酸塩)、エストラジオール−グルクロニド、ジゴキシンおよびロスバスタチンについて得られた結果は、表1に示すように、2つの培養方法を使用して生成されYi-an BIら、「Use of Cryopreserved Human Hepatocytes in Sandwich Culture to Measure Hepatobiliary Transport」、Drug Metabolism and Disposition、34巻、9号、1658〜65頁(2006年)により報告されている公開データの範囲内である。
【表1-1】
【表1-2】
(実施例6)
ラット肝細胞共培養物での取り込みおよび胆汁中排泄。
【0143】
初代ラット肝細胞(Lifetech(登録商標))を使用して、実施例1による肝細胞−間質細胞共培養物を調製し、5つの化合物:タウロコール酸(タウロコール酸塩)、エストラジオール−グルクロニド、ジゴキシン、ロスバスタチンおよびプラバスタチンの取込み速度を測定するために使用した。本発明の胆管クリアランスを評価する単一ウェル方法を使用した。
【0144】
2μMのタウロコール酸(タウロコール酸塩)、2μMのエストラジオール−グルクロニド、2μMのジゴキシン、2μMのロスバスタチンおよび5μMのプラバスタチンの濃度の培養培地中の各試験化合物に、共培養物を20分間曝露した。培地を次に取り出し(収集物#1)、残留化合物の分析のために保存した。培養物を緩衝液で2回洗浄し(収集物#2および#3)、各洗浄液を残留タウロコール酸塩の分析のために保存した。次に、培養物中に存在する細管を破壊する働きをするが、共培養物の細胞を溶解しない、5μMの濃度のラトランクリンを含有するHEPES緩衝液に、細胞を30分間曝露した。これにより、細管の胆汁中に蓄積されていたタウロコール酸塩が放出される。インキュベーション期間の終わりに、培養培地を収集した(収集物#4)。次に、細胞膜を破壊して細胞コンパートメントに蓄積していた化合物を放出する働きをする脱イオン水に、細胞を曝露した(収集物#5)。細管に存在する化合物はすべて収集物#4に既に収集されているので、収集物#5は、細胞に存在する化合物はすべて含有するが、細管に存在する化合物は一切含まない。収集物#4および収集物5の中の化合物の濃度は、実施例4のように、LC−MS/MSを使用して決定した。データは、
図4〜8で使用したのと同じフォーマットを使用して、
図9〜13に示す。
【0145】
タウロコール酸(タウロコール酸塩)の結果を
図9に示し、ロスバスタチンの結果を
図10に示し、エストラジオール−グルクロニドの結果を
図11に示し、ジゴキシンの結果を
図12に示し、プラバスタチンの結果を
図13に示す。この系で各化合物のBEIを計算するために、式2を使用した。タウロコール酸(タウロコール酸塩)の測定したBEIは60%(
図9)であり、ロスバスタチンの測定したBEIは72%(
図10)であり、エストラジオール−グルクロニドの測定したBEIは40%(
図11)であり、ジゴキシンの測定したBEIは67%(
図12)であり、プラバスタチンの測定したBEIは58%(
図13)であった。
【0146】
これらのデータを、表2に要約する。in vitroのCL
bileについて提供された値は、200mgタンパク質/g肝臓および40g肝臓/kgに基づいて、固有のCl
int、bile値をml/分/kgに変換することによって計算された(Seglen、1976年を参照)。興味深いことに、in vivoデータが利用できる化合物については、この実施例の結果は、一方の化合物については4倍以内であり、他方については2倍以内である。これは、スケーリングされた数値にしてはin vivoとin vitroとの相関が良好であり、本方法のin vivo妥当性を実証する。
【表2】
(実施例7)
輸送体阻害アッセイ
【0147】
後天性胆汁うっ滞および薬物性肝臓損傷(DILI)につながる生体異物または薬物による流出輸送体の直接阻害は、薬物開発の主要な障害である。したがって、in vitro試験に基づく化合物の潜在的薬物−薬物相互作用の傾向を理解することが望ましい。この実験では、BSEPおよびBCRP阻害を特徴付けるために、実施例1により作製されたヒト初代肝細胞共培養物を、本発明の直接測定1培養物アッセイフォーマットで使用した。使用したプローブ基質は、2μMのタウロコール酸(BSEP流出輸送体)および2μMのロスバスタチン(BCRP流出輸送体)であった。シクロスポリンAは公知のBSEP阻害剤であり、0〜20μMで使用した。リトナビルは公知のBCRP阻害剤であり、0〜100μMで使用した。エリスロマイシンエストレートは公知の広域スペクトル阻害剤であり、50μMで使用した。阻害を評価するために、培養物をまず、示された阻害剤で20分間プレインキュベートし、次に基質および阻害剤の存在下でさらに20分間インキュベートした。次に、過剰な基質および阻害剤を除去するために培養物を2回洗浄し、実施例5のようにプロトコールを進めた。シクロスポリンAによるBSEP阻害に関するデータを、
図14に示す。シクロスポリンAは、0.46μMのIC
50で、タウロコール酸塩のBSEP媒介輸送を阻害した。リトナビルによるBCRP阻害に関するデータを、
図15に示す。リトナビルは、0.50μMのIC
50で、リトナビルのBCRP媒介輸送を阻害した。基質タウロコール酸塩およびリトナビルを一緒に加えたこと以外は、エリスロマイシンエストレートによる阻害を同様に実行した。
図16に示すように、エリスロマイシンエストレートはタウロコール酸塩のBSEP媒介輸送を完全に阻害し、リトナビルのBCRP媒介輸送を有意に阻害した。合わせて考えると、これらのデータは、生体異物または薬物による流出輸送体の阻害を特徴付けるための本発明の直接測定1培養物アッセイフォーマットの有用性を実証する。[EN:任意の追加の結論または解明を加えて下さい。]
(実施例8)
再現性
【0148】
従来技術の方法と対照的に、本発明の方法は、1培養物アッセイフォーマットでの化学実体の胆汁中排泄の直接測定を含む。このアッセイフォーマットの精度および再現性は、タウロコール酸塩およびプラバスタチンの各々について、実施例1によるヒト肝細胞間質細胞共培養物を使用する3つの独立したアッセイを実行することによって実証された。タウロコール酸のデータを、表3および
図17に示す。プラバスタチンのデータは、表4および
図18に示す。表5に示す統計分析は、各化合物の反復アッセイ結果の結果に統計的に有意な変動(P<0.05)がないことを示す。
【表3】
【表4】
【表5】
【国際調査報告】