特表2017-527611(P2017-527611A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-527611脊髄損傷を有する患者において炎症を阻害するための組成物、及びそれを使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-527611(P2017-527611A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(54)【発明の名称】脊髄損傷を有する患者において炎症を阻害するための組成物、及びそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20170825BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20170825BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20170825BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20170825BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20170825BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20170825BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20170825BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20170825BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20170825BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20170825BHJP
   A61K 31/52 20060101ALI20170825BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20170825BHJP
   A61K 31/4412 20060101ALI20170825BHJP
   A61K 31/135 20060101ALI20170825BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20170825BHJP
   A61K 31/415 20060101ALI20170825BHJP
   A61K 31/365 20060101ALI20170825BHJP
   A61K 31/121 20060101ALI20170825BHJP
   A61K 31/65 20060101ALI20170825BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170825BHJP
【FI】
   A61K45/00
   A61P25/00
   A61P29/00
   A61K39/395 D
   A61K39/395 N
   A61K38/20
   A61K47/10
   A61K47/34
   A61K9/06
   A61K9/16
   A61K38/16
   A61K31/52
   A61K31/519
   A61K31/4412
   A61K31/135
   A61K31/192
   A61K31/415
   A61K31/365
   A61K31/121
   A61K31/65
   A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-528762(P2017-528762)
(86)(22)【出願日】2015年8月14日
(85)【翻訳文提出日】2017年3月28日
(86)【国際出願番号】US2015045199
(87)【国際公開番号】WO2016025789
(87)【国際公開日】20160218
(31)【優先権主張番号】62/037,628
(32)【優先日】2014年8月15日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517044867
【氏名又は名称】ピクサーバイオ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】クリシオーネ、ジェイソン、エム.
(72)【発明者】
【氏名】レイノルズ、フランシス、エム.
(72)【発明者】
【氏名】ダイ、へイニング
(72)【発明者】
【氏名】バーダー、レベッカ エー.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA29
4C076BB11
4C076CC01
4C076CC05
4C076CC19
4C076EE06
4C076EE23
4C076EE24
4C076EE49
4C076FF31
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA17
4C084BA44
4C084DA12
4C084DA16
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZB111
4C084ZC411
4C085AA13
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA17
4C086BC17
4C086BC36
4C086CB07
4C086CB09
4C086DA29
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA28
4C086MA43
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZB11
4C086ZC41
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB14
4C206DA24
4C206FA08
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA48
4C206MA63
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZB11
4C206ZC41
(57)【要約】
【解決手段】 本明細書においては、TNF−αシグナリングを特異的に低下させることが可能な1つまたはそれ以上の薬剤と、生分解性担体とを有する、脊髄損傷を有する患者において炎症を阻害するための組成物が提供される。本明細書においては、MCP−1シグナリングを調節することが可能な1つまたはそれ以上の薬剤と、生分解性担体とを有する、脊髄損傷を有する患者において炎症を阻害するための組成物がさらに提供される。脊髄損傷を有する患者において炎症を治療するための方法、及びその組成物を生産するためのキットもまた、開示される。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊髄損傷を有する患者において炎症を阻害するための組成物であって、
TNF−αシグナリングを特異的に低下させることが可能な1つまたはそれ以上の薬剤と、
生分解性担体と
を有する、組成物。
【請求項2】
請求項1記載の組成物において、前記1つまたはそれ以上の薬剤が、TNF−α阻害剤、TNF−αに特異的に結合するタンパク質、抗炎症性サイトカイン、またはこれらの任意の組合せを有するものである、組成物。
【請求項3】
請求項2記載の組成物において、前記TNF−αに特異的に結合するタンパク質が、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、またはこれらの任意の組合せである、組成物。
【請求項4】
請求項2記載の組成物において、前記特異的に結合するタンパク質が抗体である、組成物。
【請求項5】
請求項2記載の組成物において、前記TNF−α阻害剤が、ペントキシフィリン、メトトレキサート、ピルフェニドン、ブプロピオン、またはこれらの任意の組合せである、組成物。
【請求項6】
請求項2記載の組成物において、前記抗炎症性サイトカインが、IL−10、IL−4、またはこれらの任意の組合せである、組成物。
【請求項7】
前述の請求項のいずれか1つ記載の組成物において、前記1つまたはそれ以上の薬剤が、前記生分解性担体の表面上に露出し、前記生分解性担体内に組み込まれ、またはその両方である、組成物。
【請求項8】
請求項7記載の組成物において、前記1つまたはそれ以上の薬剤が、前記生分解性担体の表面上に露出する、組成物。
【請求項9】
請求項8記載の組成物において、前記1つまたはそれ以上の薬剤が、TNF−αに特異的に結合するタンパク質を有する、組成物。
【請求項10】
請求項7記載の組成物において、前記1つまたはそれ以上の薬剤が、前記生分解性担体内に組み込まれる、組成物。
【請求項11】
請求項7記載の組成物において、前記1つまたはそれ以上の薬剤が、前記生分解性担体内に組み込まれ、かつ前記生分解性担体の表面上に露出する、組成物。
【請求項12】
請求項11記載の組成物において、前記生分解性担体内に組み込まれる1つまたはそれ以上の薬剤が抗炎症性サイトカインであり、かつ前記生分解性担体の表面上に露出する1つまたはそれ以上の薬剤がTNF−αに特異的に結合するタンパク質である、組成物。
【請求項13】
請求項11記載の組成物において、前記生分解性担体内に組み込まれる1つまたはそれ以上の薬剤がTNF−α阻害剤であり、かつ前記生分解性担体の表面上に露出する1つまたはそれ以上の薬剤がTNF−αに特異的に結合するタンパク質である、組成物。
【請求項14】
前述の請求項のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、マイクロ粒子、ナノ粒子、ヒドロゲル、またはこれらの任意の組合せを有する、組成物。
【請求項15】
請求項14記載の組成物において、前記生分解性担体が、PLGA、ポリ(エチレングリコール)、PLGAとポリ(エチレングリコール)とのコポリマー、またはこれらの任意の組合せを有する、組成物。
【請求項16】
請求項14記載の組成物において、前記マイクロ粒子が乳化によって製造されるものである、組成物。
【請求項17】
請求項14記載の組成物において、前記マイクロ粒子が沈殿によって製造されるものである、組成物。
【請求項18】
請求項14記載の組成物において、前記マイクロ粒子が噴霧乾燥によって製造されるものである、組成物。
【請求項19】
請求項14記載の組成物において、前記ナノ粒子が乳化によって製造されるものである、組成物。
【請求項20】
請求項14記載の組成物において、前記ナノ粒子がナノ沈殿によって製造されるものである、組成物。
【請求項21】
請求項14記載の組成物において、前記ヒドロゲルが注射可能であり、in situで形成されるものである、組成物。
【請求項22】
請求項21記載の組成物において、前記ヒドロゲルが銅フリークリック化学反応架橋によってin situで形成されるものである、組成物。
【請求項23】
請求項21記載の組成物において、前記ヒドロゲルが還元型チオール/アルケンマイケル型付加架橋によってin situで形成されるものである、組成物。
【請求項24】
請求項21記載の組成物において、前記ヒドロゲルが剪断減粘ゲル化メカニズムによってin situで形成されるものである、組成物。
【請求項25】
請求項21記載の組成物において、前記ヒドロゲルが温度感受性ゲル化メカニズムによってin situで形成されるものである、組成物。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が前記患者への投与後に分解する、組成物。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約1日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項28】
請求項1〜26のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約2日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項29】
請求項1〜26のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約3日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項30】
請求項1〜26のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約4日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項31】
請求項1〜26のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約5日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項32】
請求項1〜26のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約6日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項33】
請求項1〜26のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約7日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項34】
請求項1〜26のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約8日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項35】
請求項1〜26のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約9日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項36】
請求項1〜26のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約10日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項37】
請求項1〜26のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約12日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項38】
請求項1〜26のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約14日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項39】
請求項1〜26のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約18日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項40】
請求項1〜26のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約21日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項41】
前述の請求項のいずれか1つ記載の組成物において、前記1つまたはそれ以上の薬剤が、細胞周期の調節とは独立にTNF−αシグナリングを低下させる、組成物。
【請求項42】
前述の請求項のいずれか1つ記載の組成物であって、さらに、薬学的に許容可能な担体または賦形剤を有する、組成物。
【請求項43】
脊髄損傷を有する患者において炎症を治療する方法であって、請求項1〜42のいずれか1つ記載の組成物を前記患者に投与する工程を有する、方法。
【請求項44】
請求項43記載の方法において、前記組成物は前記患者の脊髄に投与されるものである、方法。
【請求項45】
請求項43または44記載の方法において、前記組成物は前記脊髄への直接注射によって投与されるものである、方法。
【請求項46】
請求項1〜45のいずれか1つ記載の組成物を生産するためのキットであって、
a.TNF−αシグナリングを特異的に低下させることが可能な1つまたはそれ以上の薬剤と、
b.生分解性担体と、
c.前記組成物を生産するためのインストラクションと
を有する、キット。
【請求項47】
脊髄損傷を有する患者において炎症を阻害するための組成物であって、
MCP−1シグナリングを調節することが可能な1つまたはそれ以上の薬剤と、
生分解性担体と
を有する、組成物。
【請求項48】
請求項47記載の組成物において、前記1つまたはそれ以上の薬剤が、JNK阻害剤、TNF−α阻害剤、TNF−αに特異的に結合するタンパク質、MCP−1に特異的に結合するタンパク質、COX阻害剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、COX−2阻害剤、テトラサイクリン、抗炎症性サイトカイン、メトトレキサート、ピルフェニドン、またはこれらの任意の組合せである、組成物。
【請求項49】
請求項48記載の組成物において、前記JNK阻害剤がSP600125である、組成物。
【請求項50】
請求項48記載の組成物において、前記TNF−αに特異的に結合するタンパク質が、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、またはこれらの任意の組合せである、組成物。
【請求項51】
請求項48記載の組成物において、前記MCP−1に特異的に結合するタンパク質が抗体である、組成物。
【請求項52】
請求項51記載の組成物において、前記抗体がABN912である、組成物。
【請求項53】
請求項48記載の組成物において、前記TNF−α阻害剤が、ペントキシフィリン、メトトレキサート、ピルフェニドン、ブプロピオン、またはこれらの混合物である、組成物。
【請求項54】
請求項48記載の組成物において、前記COX阻害剤がNSAIDである、組成物。
【請求項55】
請求項54記載の組成物において、前記NSAIDがイブプロフェンもしくはナプロキセン、またはこれらの任意の組合せである、組成物。
【請求項56】
請求項48記載の組成物において、前記COX−2阻害剤が、セレコキシブ、ロフェコキシブ、クルクミン、またはこれらの任意の組合せである、組成物。
【請求項57】
請求項48記載の組成物において、前記テトラサイクリンが、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、またはこれらの任意の組合せである、組成物。
【請求項58】
請求項48記載の組成物において、前記抗炎症性サイトカインが、IL−10、IL−4、またはこれらの任意の組合せである、組成物。
【請求項59】
請求項47〜58のいずれか1つ記載の組成物において、前記1つまたはそれ以上の薬剤が、前記生分解性担体の表面上に露出し、前記生分解性担体内に組み込まれ、またはその両方である、組成物。
【請求項60】
請求項59記載の組成物において、前記1つまたはそれ以上の薬剤が前記生分解性担体の表面上に露出する、組成物。
【請求項61】
請求項60記載の組成物において、前記生分解性担体の表面上に露出する1つまたはそれ以上の薬剤が、TNF−αに特異的に結合するタンパク質、MCP−1に特異的に結合するタンパク質、またはその両方を有する、組成物。
【請求項62】
請求項59記載の組成物において、前記1つまたはそれ以上の薬剤が、前記生分解性担体内に組み込まれる、組成物。
【請求項63】
請求項59記載の組成物において、前記1つまたはそれ以上の薬剤が、前記生分解性担体内に組み込まれ、かつ前記生分解性担体の表面上に露出する、組成物。
【請求項64】
請求項63記載の組成物において、前記生分解性担体内に組み込まれる1つまたはそれ以上の薬剤は抗炎症性サイトカインであり、前記生分解性担体の表面上に露出する1つまたはそれ以上の薬剤はTNF−αに特異的に結合するタンパク質である、組成物。
【請求項65】
請求項63記載の組成物において、前記生分解性担体内に組み込まれる1つまたはそれ以上の薬剤は抗炎症性サイトカインであり、前記生分解性担体の表面上に露出する1つまたはそれ以上の薬剤はMCP−1に特異的に結合するタンパク質である、組成物。
【請求項66】
請求項63記載の組成物において、前記生分解性担体内に組み込まれる1つまたはそれ以上の薬剤はTNF−α阻害剤、COX阻害剤、COX−2阻害剤、またはテトラサイクリンであり、前記生分解性担体の表面上に露出する1つまたはそれ以上の薬剤はTNF−αに特異的に結合するタンパク質である、組成物。
【請求項67】
請求項63記載の組成物において、前記生分解性担体内に組み込まれる1つまたはそれ以上の薬剤はTNF−α阻害剤、COX阻害剤、COX−2阻害剤、またはテトラサイクリンであり、前記生分解性担体の表面上に露出する1つまたはそれ以上の薬剤はMCP−1に特異的に結合するタンパク質である、組成物。
【請求項68】
請求項47〜67のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、マイクロ粒子、ナノ粒子、ヒドロゲル、またはこれらの任意の組合せを有する、組成物。
【請求項69】
請求項68記載の組成物において、前記生分解性担体が、PLGA、ポリ(エチレングリコール)、PLGAとポリ(エチレングリコール)とのコポリマー、またはこれらの任意の組合せを有する、組成物。
【請求項70】
請求項68記載の組成物において、前記マイクロ粒子が乳化によって製造されるものである、組成物。
【請求項71】
請求項68記載の組成物において、前記マイクロ粒子が沈殿によって製造されるものである、組成物。
【請求項72】
請求項68記載の組成物において、前記マイクロ粒子が噴霧乾燥によって製造されるものである、組成物。
【請求項73】
請求項68記載の組成物において、前記ナノ粒子が乳化によって製造されるものである、組成物。
【請求項74】
請求項68記載の組成物において、前記ナノ粒子がナノ沈殿処理技法によって製造されるものである、組成物。
【請求項75】
請求項68記載の組成物において、前記ヒドロゲルが注射可能であり、in situで形成されるものである、組成物。
【請求項76】
請求項75記載の組成物において、前記ヒドロゲルが銅フリークリック化学反応架橋によってin situで形成されるものである、組成物。
【請求項77】
請求項75記載の組成物において、前記ヒドロゲルが還元型チオール/アルケンマイケル型付加架橋によってin situで形成されるものである、組成物。
【請求項78】
請求項75記載の組成物において、前記ヒドロゲルが剪断減粘ゲル化メカニズムによってin situで形成されるものである、組成物。
【請求項79】
請求項75記載の組成物において、前記ヒドロゲルが温度感受性ゲル化メカニズムによってin situで形成されるものである、組成物。
【請求項80】
請求項47〜79のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が前記患者への投与後に分解する、組成物。
【請求項81】
請求項47〜80のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約1日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項82】
請求項47〜79のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約2日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項83】
請求項47〜79のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約3日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項84】
請求項47〜79のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約4日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項85】
請求項47〜79のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約5日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項86】
請求項47〜79のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約6日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項87】
請求項47〜79のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約7日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項88】
請求項47〜79のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約8日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項89】
請求項47〜79のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約9日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項90】
請求項47〜79のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約10日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項91】
請求項47〜79のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約12日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項92】
請求項47〜79のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約14日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項93】
請求項47〜79のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約18日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項94】
請求項47〜79のいずれか1つ記載の組成物において、前記生分解性担体が、治療上有効な用量の前記1つまたはそれ以上の薬剤を最大約21日間にわたり提供するものである、組成物。
【請求項95】
請求項47〜94のいずれか1つ記載の組成物において、前記1つまたはそれ以上の薬剤が、細胞周期の調節とは独立にMCP−1シグナリングを調節する、組成物。
【請求項96】
請求項47〜95のいずれか1つ記載の組成物であって、さらに、薬学的に許容可能な担体または賦形剤を有する、組成物。
【請求項97】
脊髄損傷を有する患者において炎症を治療する方法であって、請求項47〜96のいずれか1つ記載の組成物を前記患者に投与する工程を有する、方法。
【請求項98】
請求項97記載の方法において、前記組成物は前記患者の脊髄に投与される、方法。
【請求項99】
請求項97または98記載の方法において、前記組成物は前記脊髄への直接注射によって投与される、方法。
【請求項100】
請求項47〜96のうちいずれか1つ記載の組成物を生産するためのキットであって、
a.MCP−1シグナリングを特異的に低下させることが可能な1つまたはそれ以上の薬剤と、
b.生分解性担体と、
c.前記組成物を生産するためのインストラクションと
を有する、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2014年8月15日出願の米国仮出願第62/037628号に対する優先権を主張し、その仮出願の全内容が本参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書においては、脊髄損傷を有する患者において炎症を阻害するための組成物、方法、及びキットが提供される。
【背景技術】
【0003】
世界中では毎年何万人もの人が、またアメリカ合衆国においては毎年12000人を超える人が、脊髄損傷(SCI)を発症する。一次的損傷後の何日から何週間という期間のうちに、二次的損傷プロセスが進行し、SCIの重度が増す。この結果、炎症及び酸化ストレスなどの合併症ゆえに、さらなる構造及び機能の損失が起こる。医学界は、炎症を低下させ、患者の脊髄組織を神経保護するための効果的な治療法を未だ見つけておらず、患者は顕著な長期的障害状態にさらされている。炎症性プロセス、具体的には、単球及びマクロファージの損傷領域への動員及び浸潤が、二次的損傷の発症及び進行において重要な役割を果たすことを、多くの研究が見いだしてきた[Ren et al., Neural Plasticity., 2013, 2013:945034;Gensel et al., Brain Research., 2015, 1619:1−11]。二次的損傷の進行の際には、サイトカイン及びケモカイン環境が、動員され活性化されるマクロファージのサブセットを規定する[Oyinbo, Acta Neurobiol Exp., 2011, 71:281−299; Lee et al., Neurochem Int., 2000, 36:417−425]。例えば、TNF−αにより調節されるJNKにより誘発される、ケモカインMCP−1の分泌は、損傷部位への単球及びマクロファージの動員を始動させるための最も有力な経路を象徴する[Gao et al., J Neuroscience., 2009, 29(13):4096−4108;Lee et al., Neurochem Int., 2000, 36:417−425; Perrin et al., Brain., 2005, 128:854−866;]。炎症性またはTh1サイトカイン(例えば、TNF−α、IL−1β)は、マクロファージ活性化を古典的M1フェノタイプへと傾倒させる。M1フェノタイプは、組織炎症、脱髄、及び変性を引き起こす原因となる[Ren et al., Neural Plasticity., 2013, 2013:945034;Gensel et al., Brain Research., 2015, 1619:1−11]。これに対し、抗炎症性またはTh2サイトカイン(例えば、IL−10、IL−4、TGF−β)はマクロファージ活性化をM2フェノタイプへと傾倒させる。M2フェノタイプは、創傷治癒、及び組織リモデリングを引き起こす原因となる[Ren et al., Neural Plasticity., 2013, 2013:945034;Gensel et al., Brain Research., 2015, 1619:1−11]。二次的損傷の重度は、損傷部位におけるM1マクロファージの残留により増強される。M1マクロファージの残留は、炎症反応を長期化し、リモデリング及び再生の適切な開始を阻害するからである。
【0004】
免疫調節はしばしば「諸刃の剣」であるが、SCI後の二次的損傷の場合は、局所的微小環境をTh1反応からTh2反応へと傾倒させるように設計された免疫治療的アプローチは、炎症を低下させ機能的回復を向上させるための魅力的手段となる。最近、炎症性サイトカイン及びケモカイン(例えば、それぞれTNF−α及びMCP−1)の標的化阻害は、SCIのための治療戦略としての可能性を示した[Ren et al., Neural Plasticity., 2013, 2013:945034;Esposito et al., Trends Pharmacol Sci., 2011, 32(2)107−115]。例えば、TNF−α阻害抗体(例えば、インフリキシマブ、エタネルセプト)を用いるTNF−αの遮断は、SCI後の機能的回復を向上させることが観察されている。これらの免疫治療的アプローチがSCIのための治療戦略としての有望性を示す一方、TNF−α阻害剤の全身性送達は、関連するリスク、及び望まれない多面的な副作用を有する。この結果、医師は、問題となる多面的な全身性副作用を引き起こさずには、望まれる抗炎症効果を得るのに十分な薬剤を、必ずしも投薬できない。開示される免疫治療剤の局所的送達は、これらの多面的な全身性副作用を抑止し、その治療介入がSCI後の二次的損傷を対処することを可能にするだろう。例えば、TNF−α阻害剤のデポ剤の局所的注射は、薬剤の全身性または経口投与に対して求められるであろうよりも、低い初期用量の使用を可能にするであろう。デポは、望まれる作用部位特異的に、治療上有効な濃度を確立するであろうからである。
【0005】
最近、これらのような道筋では、生分解性ナノ粒子が、SCIの治療において、アストロサイト成長の阻害を促進するための局所的送達を実現させる手段として探究されてきた[Ren et al., Biomaterials., 2014,35:6585−6594]。具体的には、細胞周期阻害剤フラボピリドールを組み込むPLGAナノ粒子の局所的送達による、SCIのヘミセクション齧歯類モデルにおけるアストロサイト成長の阻害は、SCI後の機能的回復向上をもたらした。
【0006】
そのような治療については多くの未知事項がなおも多く存在するが、神経保護を可能にするために炎症性プロセスを調節するように設計された免疫治療的アプローチは、二次的損傷の進行を制限し、これにより脊髄損傷の重度を低下させうると、多くの人が希望を抱いている。さらに、これらの免疫治療薬を損傷の部位に直接局所的送達をするように設計されたアプローチは、望ましくない多面的な副作用の抑止を可能にし、ゆえにSCIの治療におけるその有用性を拡大するだろう。
【0007】
開示される組成物、方法、及びキットは、これら及び他の重要な需要に取り組む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書においては、脊髄損傷を有する患者において炎症を阻害するための組成物であって、TNF−αシグナリングを特異的に低下させることができる1つまたはそれ以上の薬剤と、生分解性担体とを有する、組成物が開示される。
【0009】
本明細書においては、脊髄損傷を有する患者において炎症を阻害するための組成物であって、MCP−1シグナリングを調節することができる1つまたはそれ以上の薬剤と、生分解性担体とを有する、組成物もまた、開示される。
【0010】
脊髄損傷を有する患者において炎症を治療する方法であって、開示の組成物を投与する工程を有する方法、及び開示の組成物を生産するためのキットもまた提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
発明の概要、並びに以下の詳細な開示は、添付の図面とあわせて読まれると、より深く理解される。本発明を例証する目的で、図面においては本発明の代表的な実施例が示される。しかしながら、本発明は、開示される特定の組成物、方法、及びキットに限定されない。本図面においては:
図1図1は、図1A−1Bを有し、A)生分解性担体内に組み込まれる1つまたはそれ以上の薬剤、及びB)担体の分解に際するその薬剤の放出を有する、代表的な組成物を表わす。
図2図2は、図2A−2Bを有し、A)生分解性担体の表面上に露出する薬剤であって、TNF−αまたはMCP−1に特異的に結合可能な薬剤、及びB)その薬剤のTNF−αまたはMCP−1への結合を有する、代表的な組成物を表わす。
図3図3は、図3A−3Bを有し、A)生分解性担体の表面上に露出する1つまたはそれ以上の薬剤、及び生分解性担体内に組み込まれる1つまたはそれ以上の薬剤、並びにB)表面上に露出するその薬剤のTNF−αまたはMCP−1への結合、及び組み込まれるその薬剤の放出を有する、代表的な組成物を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0012】
例証的実施例の詳細な開示
開示される組成物、方法、及びキットは、本開示の一部を成す添付の図面との関連で把握される以下の詳細な開示への参照により、より容易に理解されうる。開示される組成物、方法、及びキットは、本明細書において開示されかつ/または示される特定の組成物、方法、及びキットに限定されず、また本明細書において使用される用語は、例として特定の実施例を開示する目的のためのみであって、特許請求の範囲の組成物、方法、及びキットを限定する意図はないことが理解されるべきである。また、文脈が明確に別に規定しない限り、添付の特許請求の範囲を含む明細書において使用される、単数形「a」、「an」、及び「the」は複数形を含み、また特定の数値への言及は少なくともその特定の値を含む。値の範囲が表現される場合、別の実施形態は、その1つの特定値から、及び/または、他方の特定値までを含む。さらに、範囲として述べられる値への言及は、その範囲内の各値いずれも含む。全ての範囲は、包括的かつ組合せ可能である。同様に、値がおおよその値として表現される場合、先行する「約」の使用により、その特定値はもう1つ別の実施形態を形成することが理解されるだろう。
【0013】
明確性のために本明細書においては別の実施形態の文脈で記述される開示の組成物、方法、及びキットの一定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせても提供されうることが認識されるべきである。反対に、簡潔性のために単一の実施形態の文脈で記述される開示の組成物、方法、及びキットの様々な特徴は、別々に、または任意の部分的組合せでも提供されうる。
【0014】
数的範囲、カットオフ値、または特定値への言及において使用される場合の用語「約」は、列挙される値がその記載値から最大25%ほど変動しうることを表わすために使用される。本明細書において使用される数値の多くは実験的に測定されたものであるため、そのような測定値は、異なる実験間で変動しうる、またしばしば変動するであろうことが、当業者により理解されるべきである。本明細書において使用される値は、この内在的な変動のために、不当に限定的とみなされるべきではない。用語「約」は、特定される値から±25%またはそれより小さい変動、±20%またはそれより小さい変動、10%またはそれより小さい変動、±5%またはそれより小さい変動、±1%またはそれより小さい変動、±0.5%またはそれより小さい変動、または±0.1%またはそれより小さい変動を包含するために使用される。
【0015】
本明細書において使用される「前記患者に投与する工程」、及び類似の用語は、患者の標的細胞、組織、または体の部分がその薬剤と接触させられるように、開示される薬剤または組成物のうち1つまたはそれより多くが、一緒にまたは別々に、患者に導入され、移植され、注射され、または適用される、手順を表わす。
【0016】
「薬学的に許容可能な」は、組成物、剤形、安定性、患者容認、及びバイオアベイラビリティーに関して、患者にとっては薬学的/毒学的視点から、また、製造する薬化学者にとっては物理的/化学的視点から、許容可能な、その特性及び物質を指す。
【0017】
「薬学的に許容可能な担体」は、有効成分の生物学的活性の有効性を妨げず、かつそれが投与されるホストに有毒でない媒体を指す。
【0018】
「治療上有効な用量」は、本明細書において開示され、記述され、または例示されされる生物学的または治療的成果などだがこれに限定されない、特定の生物学的または治療的成果を達成するのに効果的な、本明細書において開示されるような組成物の量を指す。治療上有効な用量は、個人の病態、年齢、性別、及び体重、並びに組成物の患者において望ましい反応を引き起こす能力により変動しうる。そのような成果は、当技術分野においてふさわしい任意の手段により決定される、脊髄損傷の治療を含みうるが、これに限定されない。
【0019】
用語「治療する」または「治療」は、損傷、病理、または病態の減弱または改善における、あらゆる成功または成功の徴候を指す。それは、緩解、寛解、症状の縮小化、または損傷、病理、もしくは病態を患者にとってより容認可能にすること、炎症の減速化、炎症の最終点での消耗性の低下、患者の身体的もしくは精神的な健康の向上、あるいは生存期間の延長などの、任意の客観的または主観的パラメーターを含む。治療は、客観的または主観的パラメーターにより評価されうる。これは、身体検査、神経学的検査、または精神医学的評価の結果を含む。
【0020】
本明細書において使用される用語「特異的に」は、他のタンパク質よりも高い選択性及び親和性でTNF−αと結合する、タンパク質の能力を指す。
【0021】
本明細書において使用される「表面上に露出する」は、1つまたはそれ以上の薬剤の少なくとも一部が、生分解性担体により覆われていず、または被包されていず、かつ生分解性担体の外部からアクセス可能であることを意味する。表面上に露出するその1つまたはそれ以上の薬剤は、その薬剤全体が生分解性担体の表面上に存在するように完全に露出してもよく、あるいは、その薬剤の一部のみが生分解性担体の表面上に存在するように部分的に露出してもよい。生分解性担体の表面上に露出する、その1つまたはそれ以上の薬剤は、例えば共有または非共有結合を介して、その生分解性担体の表面に結合していてもよく、あるいは、その薬剤の一部が表面上に露出するようにその生分解性担体内に組み込まれても良い。
【0022】
本明細書で使用される「内に組み込まれる」は、その1つまたはそれ以上の薬剤が、 少なくとも部分的に、生分解性担体により覆われ、生分解性担体内に含有され、生分解性担体中に被包され、あるいは生分解性担体により封入されることを意味する。そのような状況においては、その1つまたはそれ以上の薬剤は、生分解性担体の表面上に露出していてもよく、あるいは露出しなくてもよい。組成物中に存在する生分解担体の種類によっては、生分解性担体のコアなどの空所に配置されてもよく、あるいは、表面上に露出される可能性を伴いながら生分解性担体内に分散させられてもよく、あるいは、これらの任意の組合せでもよい。いくらかの実施形態においては、その1つまたはそれ以上の薬剤は、生分解性担体内に分散されまたは分配され、かつ、生分解性担体の表面上に部分的に露出しなくてもよい。別の実施形態においては、1つまたはそれ以上の薬剤は、生分解性担体の表面上に部分的に露出してもよい。別の実施形態においては、1つまたはそれよい多い薬剤は、生分解性担体内に分散されまたは分配され、かつ、生分解性担体の表面上に部分的に露出してもよい。さらに別の実施形態においては、1つまたはそれ以上の薬剤が、生分解性担体の空所中に配置されていてもよい。さらに別の実施形態においては、1つまたはそれ以上の薬剤が、生分解性担体の空所中には位置され、かつ生分解性担体の表面上に露出してもよい。
【0023】
本明細書において使用される「TNF−αシグナリングを低下させる」は、TNF−αシグナリングの完全または部分的阻害を含む。TNF−αシグナリングの低下は、例えばTNF−αの隔離及び/または分解の結果起こりうる。
【0024】
本明細書において使用される「MCP−1シグナリングを調節する」は、MCP−1シグナリングの完全または部分的低下を意味し、MCP−1シグナリングの直接的かつ間接的調節を含む。例えば、1つまたはそれ以上の薬剤は、MCP−1に直接的に結合し、MCP−1がその受容体と相互作用しかつ/またはその受容体を活性化させることを防ぎうる。あるいは、1つまたはそれ以上の薬剤は、MCP−1を生産または放出するように機能し、またはMCP−1シグナリングに関与する、他のタンパク質または因子を阻害することにより、MCP−1シグナリングを間接的に調節しうる。さらに、1つまたはそれ以上の薬剤は、今度はMCP−1シグナリングを不活性化するタンパク質または因子を活性化することにより、MCP−1シグナリングを間接的に調節しうる。
【0025】
TNF−αシグナリングを特異的に低下させることが可能な、1つまたはそれ以上の薬剤を有する組成物
本明細書においては、TNF−αシグナリングを特異的に低下させることが可能な1つまたはそれ以上の薬剤と、生分解性担体とを有する、脊髄損傷を有する患者において炎症を阻害するための組成物が開示される。
【0026】
適切な生分解性担体は、マイクロ粒子、ナノ粒子、ヒドロゲル、またはこれらの任意の組合せを含むが、これに限定されない。
【0027】
生分解性担体は、合成により得られるポリマーを有しても良く、そのポリマーは生分解性ポリマーを含む。代表的なポリマーは、ポリ(ラクチド)(PLA)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、またはこれらの任意の組合せを含むが、これに限定されない。いくらかの実施形態においては、合成により得られる生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)であってもよく、それは乳酸及びグリコール酸の各モノマーについて、0−100%の範囲にわたる含有量を有しうる。例えば、いくらかの態様においては、生分解性ポリマーは50:50PLGAであってもよく、ここで50:50は乳酸対グリコール酸の比を指す。いくらかの実施形態においては、生分解性担体は、コポリマーを有し、またはコポリマーからなる。例えば、いくらかの実施形態においては、生分解性ポリマーはポリ(エチレングリコール)(PEG)とポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)とのコポリマーであってもよく、それは乳酸及びグリコール酸の各モノマーについて、0−100%の範囲にわたる含有量を有しうる。さらに、いくらかの実施形態においては、生分解性担体は、50:50PLGAを有するマイクロ粒子、及び/またはナノ粒子でありうる。他の実施形態においては、生分解性担体は、PLGAとPEGとが50:50のコポリマーを有するマイクロ粒子、及び/またはナノ粒子でありうる。さらに他の実施形態においては、生分解性担体は、PEG、及び/またはPEGとPLGAとのコポリマーを有するヒドロゲルでありうる。
【0028】
代表的な生分解性マイクロ粒子、及び/またはナノ粒子は、乳化、沈殿、または噴霧乾燥を含むがこれに限定されない、当業者に知られている処理技術を使用して作製されうる。いくらかの実施形態においては、マイクロ粒子、及び/またはナノ粒子は、乳化により作製されうる。他の実施形態においては、マイクロ粒子、及び/またはナノ粒子は、それぞれ沈殿、またはナノ沈殿により作製されうる。さらに他の実施形態においては、マイクロ粒子、及び/またはナノ粒子は、噴霧乾燥により作製されうる。
【0029】
代表的な生分解性ヒドロゲルは、注射可能であり、かつ当業者に知られている方法及び架橋化学反応によりin situ形成可能であるように設計されうる。その方法及び架橋化学反応は、銅フリークリック化学反応による架橋、マイケル型付加による架橋、剪断減粘メカニズムによるゲル化、温度感受性メカニズムによるゲル化、またはこれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されない。いくらかの実施形態においては、注射可能なヒドロゲルは、銅フリークリック化学反応架橋によりin situで形成されうる。いくらかの実施形態においては、注射可能なヒドロゲルは、マイケル型付加架橋によりin situで形成されうる。他の実施形態においては、注射可能なヒドロゲルは、剪断減粘ゲル化メカニズムによりin situで形成されうる。他の実施形態においては、注射可能なヒドロゲルは、温度感受性ゲル化メカニズムによりin situで形成されうる。
【0030】
注射可能な生分解性ヒドロゲルは、銅フリークリック化学反応によりin situで形成されうる。その反応は、少なくとも2つの機能的アジド基部分を有する第一の親水性優勢ポリマーと、少なくとも2つの機能的アルキン基部分を含有する第二の親水性優勢ポリマーとを、第一ポリマーの官能基と第二ポリマーの官能基とが銅フリーのアジド−アルキン環化付加メカニズムにより反応し、in situ架橋ヒドロゲルを形成することを可能にするように、患者内に配置させる工程を有する。ここで、生じるヒドロゲルは、生理的に適切な条件下で加水分解または酵素切断を受ける。
【0031】
注射可能な生分解性ヒドロゲルは、マイケル型付加反応によりin situで形成されうる。その反応は、少なくとも2つの機能的アルケン基部分を有する第一の親水性優勢ポリマーと、少なくとも2つの機能的還元型チオール基部分を含有する第二の親水性優勢ポリマーとを、第一ポリマーの官能基と第二ポリマーの官能基とがマイケル型付加反応メカニズムにより反応し、in situ架橋ヒドロゲルを形成することを可能にするように、患者内に配置させる工程を有する。ここで、生じるヒドロゲルは、生理的に適切な条件下で加水分解または酵素切断を受ける。還元型チオール基は、必要であり、in situ反応の前または最中に還元剤(例えば、還元型グルタチオン)との反応により生成される。
【0032】
本ヒドロゲルを形成するための成分が、例えばヒトまたは動物患者中へ導入される場合、生じるヒドロゲルは、構造的サポート、作用剤の送達、またはその両者を望ましい期間にわたり提供しうる。材料及び本ヒドロゲルが形成される条件の選択により、ヒドロゲルの望ましい機能に最適な特定の分解特性を有するヒドロゲルをin situで形成することが可能である。ヒドロゲルが作用剤を含有する場合、ヒドロゲルの分解速度及び特性は、ヒドロゲルが送達される部位への作用剤の送達の特性に影響を及ぼすだろう。ヒドロゲルが送達部位に構造的サポートを提供することが意図される場合、その分解特性は構造的サポートが存在する期間を決定するだろう。従って、in situで自己集合し、かつ調節可能な分解特性を有するように設計されるこれらの生体適合性で生分解性の注射可能なヒドロゲルは、望ましい期間にわたり、作用剤を送達し、構造的サポートを提供し、またはその両方を実施する能力を有する。これらの特性は、脊髄損傷の治療に最適化された方法での、かつ期間にわたる、治療を可能にする。
【0033】
TNF−αシグナリングを特異的に低下させることが可能な適切な薬剤は、TNF−α阻害剤、TNF−αに特異的に結合するタンパク質、抗炎症性サイトカイン、またはこれらの任意の組合せを含む。いくらかの実施形態においては、TNF−αシグナリングを特異的に低下させることが可能な1つまたはそれ以上の薬剤は、TNF−α阻害剤を含む。いくらかの実施形態においては、TNF−αシグナリングを特異的に低下させることが可能な1つまたはそれ以上の薬剤は、TNF−αに特異的に結合するタンパク質を有する。いくらかの態様においては、TNF−αに特異的に結合するタンパク質は、抗体である。いくらかの実施形態においては、TNF−αシグナリングを特異的に低下させることが可能な1つまたはそれ以上の薬剤は、抗炎症性サイトカインを有する。
【0034】
適切なTNF−α阻害剤は、Etanercept(Enbrel(登録商標))、Infliximab(REMICADE(登録商標))、Adalimumab(HUMIRA(登録商標))、Certolizumab pegol(CIMZIA(登録商標))、Pentoxifylline(TRENTAL(登録商標))、メトトレキサート、ピルフェニドン、Bupropion(WELLBUTRIN(登録商標))、またはこれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されない。
【0035】
TNF−αに特異的に結合する適切なタンパク質は、Etanercept(Enbrel(登録商標))、Infliximab(REMICADE(登録商標))、Adalimumab(HUMIRA(登録商標))、Certolizumab pegol(CIMZIA(登録商標))、またはこれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されない。
【0036】
開示の組成物において使用される適切な薬剤は、細胞周期の調節とは独立にTNF−αシグナリングを低下させる薬剤を含む。
【0037】
1つまたはそれ以上の薬剤は、生分解性担体の表面上に露出してもよく、生分解性担体内に組み込まれてもよく、あるいはその両方であってもよい。いくらかの実施形態においては、1つまたはそれ以上の前記薬剤は、生分解性担体の表面上に露出される。露出される薬剤は、TNF−αに結合し、また、可溶性TNF−αの隔離、及び/または分解によりTNF−αを不活性化させうる。例えば、露出される薬剤がTNF−αに結合し、次いで、生分解性担体が、エンドサイトーシスまたは当技術分野において既知の他の手段を介して細胞により内部移行させられうる。これにより、TNF−αは分解のためにリソソームへと送達されうる。いくらかの実施形態においては、生分解性担体の表面上に露出する薬剤は、抗体などの、TNF−αに特異的に結合するタンパク質である。
【0038】
いくらかの実施形態においては、1つまたはそれ以上の薬剤は、生分解性担体内に組み込まれる。
【0039】
他の実施形態においては、1つまたはそれ以上の前記薬剤は、生分解性担体の表面上に露出し、かつその生分解性担体内に組み込まれる。いくらかの態様においては、生分解性担体内に組み込まれる1つまたはそれ以上の薬剤は抗炎症性サイトカインであり、また生分解性担体の表面上に露出する1つまたはそれ以上の薬剤は、TNF−αに特異的に結合するタンパク質である。いくらかの態様においては、生分解性担体の表面上に露出する1つまたはそれ以上の薬剤、及び生分解性担体内に組み込まれる1つまたはそれ以上の薬剤は、TNF−αに特異的に結合するタンパク質、TNF−α阻害剤、またはそれらの任意の組合せである。いくらかの態様においては、生分解性担体の表面上に露出する1つまたはそれ以上の薬剤はTNF−αに特異的に結合するタンパク質であり、生分解性担体内に組み込まれる1つまたはそれ以上の薬剤はTNF−αに特異的に結合するタンパク質である。いくらかの態様においては、生体分解性担体の表面上に露出する1つまたはそれ以上の薬剤はTNF−α阻害剤であり、生分解性担体内に組み込まれる1つまたはそれ以上の薬剤はTNF−α阻害剤である。いくらかの態様においては、生分解性担体の表面上に露出する1つまたはそれ以上の薬剤はTNF−αに特異的に結合するタンパク質であり、生分解性担体内に組み込まれる1つまたはそれ以上の薬剤はTNF−α阻害剤である。いくらかの態様においては、生分解性担体の表面上に露出する1つまたはそれ以上の薬剤はTNF−α阻害剤であり、生分解性担体内に組み込まれる1つまたはそれ以上の薬剤はTNF−αに特異的に結合するタンパク質である。
【0040】
いくらかの実施形態においては、組成物は、1つまたはそれ以上の抗炎症性サイトカインをさらに有しうる。当業者には多くの抗炎症性サイトカインが知られており、それはIL−10、IL−4、またはTGF−βを含むが、これらに限定されない。いくらかの態様においては、1つまたはそれ以上の抗炎症性サイトカインはIL−10である。他の態様においては、1つまたはそれ以上の抗炎症性サイトカインはIL−4である。
【0041】
1つまたはそれ以上の抗炎症性サイトカインは、生分解性担体の表面上に露出され、生体分解性担体内に組み込まれ、あるいはその両方でありうる。いくらかの実施形態においては、1つまたはそれ以上の抗炎症性サイトカインは、生分解性担体内に組み込まれる。
【0042】
1つの態様においては、生分解性担体は組織工学目的のための3−D構造を提供し、一方で生分解性担体の表面上に露出される、あるいは生分解性担体内に組み込まれる、1つまたはそれ以上の薬剤は、TNF−αのクリアランスを可能にしうる。
【0043】
生分解性担体は、患者への組成物の投与後の任意の適切なタイムフレーム内に分解し始めるように設計されうる。いくらかの実施形態においては、生分解性担体は、患者に組成物が投与される時点から、投与後約21日までの間に、分解し始めうる。
【0044】
生分解性担体は、患者に投与されて約21日以内に分解し始めうる。生体分解担体は、患者に投与されて約14日以内に分解し始めうる。生体分解担体は、患者に投与されて約10日以内に分解し始めうる。生体分解担体は、患者に投与されて約7日以内に分解し始めうる。生体分解担体は、患者に投与されて約5日以内に分解し始めうる。生体分解担体は、患者に投与されて約3日以内に分解し始めうる。生体分解担体は、患者に投与されて約1日以内に分解し始めうる。生体分解担体は、患者に投与された時点で分解し始めうる。
【0045】
あるいは、生体分解担体は、短期間内で分解し始めうる。いくらかの場合においては、生体分解担体は、患者に投与されてたった48時間以内に分解し始めうる。いくらかの場合においては、生体分解担体は、患者に投与されてたった36時間以内に分解し始めうる。いくらかの場合においては、生体分解担体は、患者に投与されてたった24時間以内に分解し始めうる。いくらかの場合においては、生体分解担体は、患者に投与されてたった12時間以内に分解し始めうる。いくらかの場合においては、生体分解担体は、患者に投与されてたった6時間以内に分解し始めうる。いくらかの場合においては、生体分解担体は、患者に投与されると即座に分解し始めうる。
【0046】
生分解性担体の分解は、1つまたはそれ以上の薬剤の放出、及び/または送達につながりうる。こうして、患者に治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約21日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約18日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約14日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約12日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約10日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約9日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約8日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約7日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約6日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約5日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約4日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約3日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約2日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約1日間提供する。
【0047】
生分解性担体は、患者に投与されて約第1日から約第21日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。生分解性担体は、患者に投与されて約第1日から約第14日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。生分解性担体は、患者に投与されて約第1日から約第7日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。生分解性担体は、患者に投与されて約第1日から約第3日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。生分解性担体は、患者に投与されて約第3日から約第21日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。生分解性担体は、患者に投与されて約第3日から約第14日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。生分解性担体は、患者に投与されて約第3日から約第7日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。生分解性担体は、患者に投与されて約第7日から約第21日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。生分解性担体は、患者に投与されて約第7日から約第14日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。生分解性担体は、患者に投与されて約第7日から約第10日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。生分解性担体は、患者に投与されて約第14日から約第21日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。
【0048】
あるいは、生分解性担体は、短期間内に治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。いくらかの場合においては、患者に投与されてたった48時間以内に、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。いくらかの場合においては、患者に投与されてたった36時間以内に、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。いくらかの場合においては、患者に投与されてたった24時間以内に、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。いくらかの場合においては、患者に投与されてたった12時間以内に、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。いくらかの場合においては、患者に投与されてたった6時間以内に、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。いくらかの場合においては、患者に投与されてたった3時間以内に、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。いくらかの場合においては、患者に投与されてたった1時間以内に、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。いくらかの場合においては、患者に投与されて即座に、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。
【0049】
治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤は、損傷の部位へと送達されてもよく、全身性に放出されてもよく、あるいは損傷の部位へと送達されかつ全身性に放出されてもよい。例えば、いくらかの実施形態においては、1つまたはそれ以上の薬剤は、脊髄へと送達されうる。
【0050】
本明細書において開示される組成物中には、医薬物質が含められてもよい。いくらかの態様においては、医薬物質は、組成物を安定化させ、組成物が患者に容易に投与されることを可能にし、組成物のTNF−αシグナリングを特異的に低下させる能力を増大させ、あるいは、そうでなければ組成物を患者における治療用途に適切にする。従って、開示される組成物は、関連技術分野における当業者に既知であろうように、薬学的に許容可能な担体または賦形剤をさらに有しうる。開示される組成物のいくらかにおける医薬物質の含有については、本明細書においては、本明細書において提供される、TNF−αシグナリングを特異的に低下させることが可能な1つまたはそれ以上の薬剤と、生分解性担体とを有する、医薬組成物もまた開示される。開示される組成物の送達または注射のための開示の医薬組成物は、患者におけるTNF−αシグナリングを長期間にわたって特異的に低下させる能力を維持するために、投与されうる。例えば、TNF−αシグナリングを特異的に低下させることが可能な1つまたはそれ以上の薬剤の、組成物粘性及び濃度は、組成物の有効成分の半減期を増大させるために変更されうる。
【0051】
開示される医薬組成物は、本明細書で開示され、また例示される調製物を含む、当技術分野において既知であり適切な様々な調製物のうち任意の調製物として製剤化されうる。いくらかの実施形態においては、医薬組成物は水性製剤である。水性溶液は、開示の組成物を水または適切な生理的緩衝液中で混合する工程、さらに、任意で、適切な着色剤、保存剤、安定化剤及び増粘剤、カルシウムまたはマグネシウムなどのイオン、並びにこれらの類似物を望まれるように添加する工程により、調製されうる。開示の組成物を、水または生理的緩衝液中で、天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び他の周知の懸濁剤などの粘性材料とともに分散させる工程により、水性懸濁液が作製されてもまたよい。液剤、及び使用直前に液体調製物へと変換されることが意図される固形調製物もまた含められる。そのような液体は、溶液、懸濁液、シロップ、スラリー、及び乳状液を含む。液体調製物は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素化食用油脂)、乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア)、非水性媒体(例えば、アーモンドオイル、オイリーエステル、または分画ベジタブルオイル)、及び保存剤(例えば、メチルもしくはプロピル−p−ヒドロキシ安息香酸、またはソルビン酸)などの薬学的に許容可能な添加剤を用いて、従来型の手段により調製されうる。これらの調製物は、作用剤に加え、安定化剤、緩衝液、分散剤、増粘剤、安定化剤、及びこれらの類似物を含有しうる。組成物は、使用前に無菌水、生理的緩衝液、または生理食塩溶液などの適切な媒体で戻すための、粉末または凍結乾燥形態をとりうる。組成物は、患者中への注射のために製剤化されうる。注射のためには、開示の組成物は、水などの水性溶液で、または、ハンクス溶液、リンゲル溶液、生理的な生理食塩緩衝液、もしくは人工的脳脊髄液などの生理的適合性緩衝液で、製剤化されうる。溶液は、懸濁剤、安定化剤、または分散剤などの、1つまたはそれ以上の製剤化剤を含有しうる。注射製剤は、例えば無菌水、生理食塩溶液、または人工的脳脊髄液などの適切な媒体を用いて使用前に戻されることにより、使用直前に、注射に適切な液体型の調製物へと変換されることが意図される、固形調製物として作製されてもまたよい。
【0052】
本明細書においては、脊髄損傷を有する患者において炎症を治療する方法であって、TNF−αシグナリングを特異的に低下させることが可能な1つまたはそれ以上の薬剤と生分解性担体とを有する組成物を前記患者に投与する工程を有する方法もまた、提供される。
【0053】
いくらかの実施形態においては、その1つまたはそれ以上の薬剤は、TNF−αシグナリングを直接低下させることにより、TNF−αシグナリングを特異的に低下させることが可能である。例えば、いくつかの態様においては、その1つまたはそれ以上の薬剤は、TNF−αを直接阻害しうる。他の態様においては、その1つまたはそれ以上の薬剤は、TNF−αの上流のタンパク質及び/または因子を阻害しうる。他の態様においては、その1つまたはそれ以上の薬剤は、TNF−αの下流のタンパク質及び/または因子を阻害しうる。
【0054】
開示の組成物は、髄腔内、静脈内、動脈内、経皮、皮下、局所、またはこれらの任意の組合せを含むが、これに限定されない、多くの経路により患者に投与されうる。いくらかの実施形態においては、組成物は、患者の脊髄に投与されうる。例えば、組成物は、患者の脊髄中への直接注射により投与されうる。いくらかの態様においては、組成物は、組成物を患者の脊髄中へ外科的に移植することにより投与されうる。
【0055】
治療に適する損傷は、脊髄に影響する外傷性身体傷害を含むため、開示の方法は、体または脊柱部位の温度が低下させられたときに実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の組成物は、患者の脊髄が約96°Fから約85°Fであるときに投与されうる。いくらかの実施形態においては、開示の組成物は、患者の脊髄が約96°F、約95°F、約94°F、約93°F、約92°F、約91°F、約90°F、約89°F、約88°F、または約87°Fであるときに投与されうる。また、脊髄損傷に対しては迅速な治療がしばしば望ましいため、開示の方法は、患者の脊髄損傷から約2時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷から約4時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷から約6時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷から約12時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷から約18時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷から約24時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷から約36時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷から約48時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷から約72時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷のときから、患者の脊髄損傷後約1週間までの間に実施されうる。他の実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷のときから、患者の脊髄損傷後約72時間までの間に実施されうる。他の実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷のときから、患者の脊髄損傷後約48時間までの間に実施されうる。他の実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷のときから、患者の脊髄損傷後約24時間までの間に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷後約24時間から、患者の脊髄損傷後約1週間までの間に実施されうる。他の実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷後約24時間から、患者の脊髄損傷後約72時間までの間に実施されうる。他の実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷後約24時間から、患者の脊髄損傷後約48時間までの間に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷後約48時間から、患者の脊髄損傷後約1週間までの間に実施されうる。他の実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷後約48時間から、患者の脊髄損傷後約72時間までの間に実施されうる。
【0056】
いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始から約72時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始から約48時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始から約24時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始から約18時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始から約12時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始から約6時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始から約4時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始から約3時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始から約2時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始から約1時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始後1時間よりも早く実施されうる。
【0057】
本明細書においては、TNF−αシグナリングを特異的に低下させることが可能な1つまたはそれ以上の薬剤と、生分解性担体とを有する組成物を生産するための、キットもまた提供される。そのキットは、TNF−αシグナリングを特異的に低下させることが可能な1つまたはそれ以上の薬剤、生分解性担体、及び前記組成物を生産するためのインストラクションを有する。
【0058】
MCP−1シグナリングを調節することが可能な、1つまたはそれ以上の薬剤を有する組成物
本明細書においては、MCP−1シグナリングを調節することが可能な1つまたはそれ以上の薬剤と、生分解性担体とを有する、脊髄損傷を有する患者において炎症を阻害するための組成物が開示される。
【0059】
適切な生分解性担体は、マイクロ粒子、ナノ粒子、ヒドロゲル、またはこれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されない。
【0060】
生分解性担体は、合成により得られるポリマーを有しても良く、そのポリマーは生分解性ポリマーを含む。代表的なポリマーは、ポリ(ラクチド)(PLA)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、またはこれらの任意の組合せを含むが、これに限定されない。いくらかの実施形態においては、合成により得られる生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)であってもよく、それは乳酸及びグリコール酸の各モノマーについて、0−100%の範囲にわたる含有量を有しうる。例えば、いくらかの態様においては、生分解性ポリマーは50:50PLGAであってもよく、ここで50:50は乳酸対グリコール酸の比を指す。いくらかの実施形態においては、生分解性担体は、コポリマーを有し、またはコポリマーからなる。例えば、いくらかの実施形態においては、生分解性ポリマーはポリ(エチレングリコール)(PEG)とポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)とのコポリマーであってもよく、それは乳酸及びグリコール酸の各モノマーについて、0−100%の範囲にわたる含有量を有しうる。さらに、いくらかの実施形態においては、生分解性担体は、50:50PLGAを有するマイクロ粒子、及び/またはナノ粒子でありうる。他の実施形態においては、生分解性担体は、PLGAとPEGとが50:50のコポリマーを有するマイクロ粒子、及び/またはナノ粒子でありうる。さらに他の実施形態においては、生分解性担体は、PEG、及び/またはPEGとPLGAとのコポリマーを有するヒドロゲルでありうる。
【0061】
代表的な生分解性マイクロ粒子、及びナノ粒子は、乳化、沈殿、または噴霧乾燥を含むがこれに限定されない、当業者に知られている処理技術を使用して作製されうる。いくらかの実施形態においては、マイクロ粒子、及び/またはナノ粒子は、乳化により作製されうる。他の実施形態においては、マイクロ粒子、及び/またはナノ粒子は、それぞれ沈殿、またはナノ沈殿により作製されうる。さらに他の実施形態においては、マイクロ粒子、及び/またはナノ粒子は、噴霧乾燥により作製されうる。
【0062】
注射可能な生分解性ヒドロゲルは、銅フリークリック化学反応によりin situで形成されうる。その反応は、少なくとも2つの機能的アジド基部分を有する第一の親水性優勢ポリマーと、少なくとも2つの機能的アルキン基部分を含有する第二の親水性優勢ポリマーとを、第一ポリマーの官能基と第二ポリマーの官能基とが銅フリーのアジド−アルキン環化付加メカニズムにより反応し、in situ架橋ヒドロゲルを形成することを可能にするように、患者内に配置させる工程を有する。ここで、生じるヒドロゲルは、生理的に適切な条件下で加水分解または酵素切断を受ける。
【0063】
注射可能な生分解性ヒドロゲルは、マイケル型付加反応によりin situで形成されうる。その反応は、少なくとも2つの機能的アルケン基部分を有する第一の親水性優勢ポリマーと、少なくとも2つの機能的還元型チオール基部分を含有する第二の親水性優勢ポリマーとを、第一ポリマーの官能基と第二ポリマーの官能基とがマイケル型付加反応メカニズムにより反応し、in situ架橋ヒドロゲルを形成することを可能にするように、患者内に配置させる工程を有する。ここで、生じるヒドロゲルは、生理的に適切な条件下で加水分解または酵素切断を受ける。還元型チオール基は、必要であり、in situ反応の前または最中に還元剤(例えば、還元型グルタチオン)との反応により生成される。
【0064】
本ヒドロゲルを形成するための成分が、例えばヒトまたは動物の患者中へ導入される場合、生じるヒドロゲルは、構造的サポート、作用剤の送達、またはその両者を望ましい期間にわたり提供しうる。材料及び本ヒドロゲルが形成される条件の選択により、ヒドロゲルの望ましい機能に最適な特定の分解特性を有するヒドロゲルをin situで形成することが可能である。ヒドロゲルが作用剤を含有する場合、ヒドロゲルの分解速度及び特性は、ヒドロゲルが送達される部位への作用剤の送達の特性に影響を及ぼすだろう。ヒドロゲルが送達部位に構造的サポートを提供することが意図される場合、その分解特性は構造的サポートが存在する期間を決定するだろう。従って、in situで自己集合し、かつ調節可能な分解特性を有するように設計されるこれらの生体適合性で生分解性の注射可能なヒドロゲルは、望ましい期間にわたり、作用剤を送達し、構造的サポートを提供し、またはその両方を実施する能力を有する。これらの特性は、脊髄損傷の治療に最適化された方法での、かつ期間にわたる、治療を可能にする。
【0065】
MCP−1シグナリングを調節することが可能な適切な薬剤は、JNK阻害剤、TNF−α阻害剤、TNF−αに特異的に結合するタンパク質、MCP−1に特異的に結合するタンパク質、非選択的COX阻害剤、選択的COX阻害剤、COX−2阻害剤、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、テトラサイクリン、抗炎症性サイトカイン、メトトレキサート、ピルフェニドン、またはこれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されない。
【0066】
JNK阻害剤は、以下のうち1つまたはそれより多くを含むが、これらに限定されない。SP600125、Bentamapimod、RWJ67657、TCSJNK60、SU3327、CC−401、またはBI78D3。いくらかの実施形態においては、JNK阻害剤は、SP600125である。
【0067】
TNF−αに特異的に結合する適切なタンパク質は、Etanercept(Enbrel(登録商標))、Infliximab(REMICADE(登録商標))、Adalimumab(HUMIRA(登録商標))、Certolizumab pegol(CIMZIA(登録商標))、またはこれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されない。
【0068】
TNF−α阻害剤は、Pentoxifylline(TRENTAL(登録商標))、メトトレキサート、ピルフェニドン、Bupropion(WELLBUTRIN(登録商標))、またはこれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されない。
【0069】
MCP−1に特異的に結合するンパク質は、抗体を含む。いくらかの実施形態においては、MCP−1に特異的に結合するタンパク質はABN912である。
【0070】
COX阻害剤は、以下のうち1つまたはそれより多くを含むが、これらに限定されない。セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、Vioxx(登録商標)、Bextra(登録商標)、Prexige(登録商標)、Arcoxia(登録商標)、クルクミン、Deguelin、ニフルム酸、イブプロフェン(Advil(登録商標))、またはナプロキセン(Aleve(登録商標))。いくらかの実施形態においては、COX阻害剤は、COX−2阻害剤である。いくらかの実施形態においては、COX−2阻害剤は、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))である。他の実施形態においては、COX−2阻害剤はクルクミンである。いくらかの実施形態においては、COX−2阻害剤はVioxxである。
【0071】
COX阻害剤は、NSAIDでありうる。例えば、いくらかの態様においては、NSAIDはイブプロフェンでありうる。他の態様においては、NSAIDはナプロキセンでありうる。さらに他の態様においては、NSAIDは、イブプロフェン及びナプロキセンの組合せでありうる。
【0072】
適切なテトラサイクリンは、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0073】
開示の組成物における使用のための適切な薬剤は、細胞周期の調節とは独立にMCP−1シグナリングを調節する薬剤を含む。
【0074】
MCP−1シグナリングを調節可能な1つまたはそれ以上の薬剤は、生分解性担体の表面上に露出してもよく、生分解性担体内に組み込まれてもよく、あるいはその両方であってもよい。いくらかの実施形態においては、1つまたはそれ以上の前記薬剤は、生分解性担体の表面上に露出される。例えば、いくらかの態様においては、生分解性担体の表面上に露出する1つまたはそれ以上の薬剤は、抗体などのTNF−α結合タンパク質でありうる。他の態様においては、生分解性担体の表面上に露出する1つまたはそれ以上の薬剤は、MCP−1結合タンパク質でありうる。他の態様においては、生分解性担体の表面上に露出する1つまたはそれ以上の薬剤は、TNF−α結合タンパク質、及びMCP−1結合タンパク質であってもよい。露出するTNF−α結合タンパク質は、TNF−αに結合し、また、循環性TNF−αの隔離、及び/または分解によりTNF−αを不活性化させうる。これは、例えば、TNF−α結合及びそれに続く内部移行、並びに、生分解性担体のリソソームへの輸送による。いくらかの態様においては、MCP−1シグナリングを調節することが可能な1つまたはそれ以上の薬剤は、TNF−α阻害剤を有する。
【0075】
他の実施形態においては、1つまたはそれ以上の薬剤は、生分解性担体内に組み込まれうる。
【0076】
さらに他の実施形態においては、1つまたはそれ以上の薬剤は、生分解性担体の表面上に露出し、かつその生分解性担体内に組み込まれる。例えば、いくらかの態様においては、生分解性担体内に組み込まれる1つまたはそれ以上の薬剤は抗炎症性サイトカインであってもよく、また生分解性担体の表面上に露出する1つまたはそれ以上の薬剤は、TNF−αに特異的に結合するタンパク質であってもよい。例えば、いくらかの態様においては、IL−10が生分解性担体内に組み込まれてもよく、また抗体などのTNF−αに特異的に結合するタンパク質が生分解性担体の表面上に露出されてもよい。他の実施形態においては、生分解性担体内に組み込まれる1つまたは他の薬剤は抗炎症性サイトカインであってもよく、また生分解性担体の表面上に露出される1つまたはそれ以上の薬剤はMCP−1に特異的に結合するタンパク質であってもよい。さらに他の実施形態においては、生分解性担体内に組み込まれる1つまたはそれ以上の薬剤は、TNF−α阻害剤、COX阻害剤、COX−2阻害剤、またはテトラサイクリンであってもよく、また生分解性担体の表面上に露出される1つまたはそれ以上の薬剤はTNF−αに特異的に結合するタンパク質であってもよい。さらに他の実施形態においては、生分解性担体内に組み込まれる1つまたはそれ以上の薬剤は、TNF−α阻害剤、COX阻害剤、COX−2阻害剤、またはテトラサイクリンであってもよく、また生分解性担体の表面上に露出される1つまたはそれ以上の薬剤はMCP−1に特異的に結合するタンパク質であってもよい。
【0077】
いくらかの実施形態においては、組成物は、1つまたはそれ以上の抗炎症性サイトカインをさらに有しうる。当業者には多くの抗炎症性サイトカインが知られており、それはIL−10、IL−4、またはTGF−βを含むが、これらに限定されない。いくらかの態様においては、1つまたはそれ以上の抗炎症性サイトカインはIL−10である。他の態様においては、1つまたはそれ以上の抗炎症性サイトカインはIL−4である。
【0078】
いくらかの態様においては、生分解性担体は組織工学目的のための3−D構造を提供してもよく、一方で生分解性担体の表面上に露出される、または生分解性担体内に組み込まれる1つまたはそれ以上の薬剤は、MCP−1の調節を可能にしてもよい。
【0079】
生分解性担体は、患者への組成物の投与後の任意の適切なタイムフレーム内に分解し始めるように設計されうる。いくらかの実施形態においては、生分解性担体は、患者に組成物が投与される時点から、投与された後約21日までの間に、分解し始めうる。
【0080】
生分解性担体は、患者に投与されて約21日以内に分解し始めうる。生体分解担体は、患者に投与されて約14日以内に分解し始めうる。生体分解担体は、患者に投与されて約10日以内に分解し始めうる。生体分解担体は、患者に投与されて約7日以内に分解し始めうる。生体分解担体は、患者に投与されて約5日以内に分解し始めうる。生体分解担体は、患者に投与されて約3日以内に分解し始めうる。生体分解担体は、患者に投与されて約1日以内に分解し始めうる。生体分解担体は、患者に投与された時点で分解し始めうる。
【0081】
あるいは、生体分解担体は、短期間内で分解し始めうる。いくらかの場合においては、生体分解担体は、患者に投与されてたった48時間以内に分解し始めうる。いくらかの場合においては、生体分解担体は、患者に投与されてたった36時間以内に分解し始めうる。いくらかの場合においては、生体分解担体は、患者に投与されてたった24時間以内に分解し始めうる。いくらかの場合においては、生体分解担体は、患者に投与されてたった12時間以内に分解し始めうる。いくらかの場合においては、生体分解担体は、患者に投与されてたった6時間以内に分解し始めうる。いくらかの場合においては、生体分解担体は、患者に投与されると即座に分解し始めうる。
【0082】
生分解性担体の分解は、1つまたはそれ以上の薬剤の放出、及び/または送達につながりうる。こうして、患者に治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約21日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約18日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約14日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約12日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約10日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約9日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約8日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約7日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約6日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約5日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約4日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約3日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約2日間提供する。いくつかの実施形態においては、生分解性担体は、治療上有効な用量の薬剤を最大で約1日間提供する。
【0083】
生分解性担体は、患者に投与されて約第1日から約第21日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。生分解性担体は、患者に投与されて約第1日から約第14日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。生分解性担体は、患者に投与されて約第1日から約第7日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。生分解性担体は、患者に投与されて約第1日から約第3日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。生分解性担体は、患者に投与されて約第3日から約第21日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。生分解性担体は、患者に投与されて約第3日から約第14日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。生分解性担体は、患者に投与されて約第3日から約第7日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。生分解性担体は、患者に投与されて約第7日から約第21日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。生分解性担体は、患者に投与されて約第7日から約第14日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。生分解性担体は、患者に投与されて約第7日から約第10日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。生分解性担体は、患者に投与されて約第14日から約第21日までの間、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。
【0084】
あるいは、生分解性担体は、短期間内に治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。いくらかの場合においては、患者に投与されてたった48時間以内に、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。いくらかの場合においては、患者に投与されてたった36時間以内に、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。いくらかの場合においては、患者に投与されてたった24時間以内に、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。いくらかの場合においては、患者に投与されてたった12時間以内に、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。いくらかの場合においては、患者に投与されてたった6時間以内に、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。いくらかの場合においては、患者に投与されてたった3時間以内に、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。いくらかの場合においては、患者に投与されてたった1時間以内に、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。いくらかの場合においては、患者に投与されて即座に、治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤を送達しうる。
【0085】
治療上有効な用量の1つまたはそれ以上の薬剤は、損傷の部位へと送達されてもよく、全身性に放出されてもよく、あるいは損傷の部位へと送達されかつ全身性に放出されてもよい。例えば、いくらかの実施形態においては、1つまたはそれ以上の薬剤は、脊髄へと送達されうる。
【0086】
本明細書において開示される組成物中には、医薬物質が含められてもよい。いくらかの態様においては、医薬物質は、組成物を安定化させ、組成物が患者に容易に投与されることを可能にし、組成物のMCP−1シグナリングを調節する能力を増大させ、あるいは、そうでなければ組成物を患者における治療用途に適切にする。従って、開示される組成物は、関連技術分野における当業者に既知であろうように、薬学的に許容可能な担体または賦形剤をさらに有しうる。開示される組成物のいくらかにおける医薬物質の含有については、本明細書においては、本明細書において提供される、MCP−1シグナリングを調節することが可能な1つまたはそれ以上の薬剤と、生分解性担体とを有する、医薬組成物もまた開示される。開示される組成物の送達または注射のための開示の医薬組成物は、患者におけるMCP−1シグナリングを長期間にわたって調節する能力を維持するために、投与されうる。例えば、MCP−1シグナリングを調節することが可能な1つまたはそれ以上の薬剤の、組成物粘性及び濃度は、組成物の有効成分の半減期を増大させるために変更されうる。
【0087】
開示される医薬組成物は、本明細書で開示され、また例示される調製物を含む、当技術分野において既知であり適切な様々な調製物のうちあらゆる調製物として製剤化されうる。いくらかの実施形態においては、医薬組成物は水性製剤である。水性溶液は、開示の組成物を水または適切な生理的緩衝液中で混合する工程、さらに、任意で、適切な着色剤、保存剤、安定化剤及び増粘剤、カルシウムまたはマグネシウムなどのイオン、並びにこれらの類似物を望まれるように添加する工程により、調製されうる。開示の組成物を、水または生理的緩衝液中で、天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び他の周知の懸濁剤などの粘性材料とともに分散させる工程により、水性懸濁液が作製されてもまたよい。液剤、及び使用直前に液体調製物へと変換されることが意図される固形調製物もまた含められる。そのような液体は、溶液、懸濁液、シロップ、スラリー、及び乳状液を含む。液体調製物は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素化食用油脂)、乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア)、非水性媒体(例えば、アーモンドオイル、オイリーエステル、または分画ベジタブルオイル)、及び保存剤(例えば、メチルもしくはプロピル−p−ヒドロキシ安息香酸、またはソルビン酸)などの薬学的に許容可能な添加剤を用いて、従来型の手段により調製されうる。これらの調製物は、作用剤に加え、安定化剤、緩衝液、分散剤、増粘剤、安定化剤、及びこれらの類似物を含有しうる。組成物は、使用前に無菌水、生理的緩衝液、または生理食塩溶液などの適切な媒体で戻すための、粉末または凍結乾燥形態をとりうる。組成物は、患者中への注射のために製剤化されうる。注射のためには、開示の組成物は、水などの水性溶液で、または、ハンクス溶液、リンゲル溶液、生理的な生理食塩緩衝液、もしくは人工的脳脊髄液などの、生理的適合性緩衝液で製剤化されうる。溶液は、懸濁剤、安定化剤、または分散剤などの、1つまたはそれ以上の製剤化剤を含有しうる。注射製剤は、例えば、無菌水、生理食塩溶液、または人工的脳脊髄液などの適切な媒体を用いて使用前に戻されることにより、使用直前に、注射に適切な液体型の調節物へと変換されることが意図される、固形調製物として作製されてもまたよい。
【0088】
本明細書においては、脊髄損傷を有する患者において炎症を治療する方法であって、MCP−1シグナリングを調節することが可能な1つまたはそれ以上の薬剤と生分解性担体とを有する組成物を前記患者に投与する工程を有する方法もまた、提供される。
【0089】
開示の組成物は、髄腔内、静脈内、動脈内、経皮、皮下、局所、またはこれらの任意の組合せを含むが、これに限定されない、多くの経路により患者に投与されうる。いくらかの実施形態においては、組成物は、患者の脊髄に投与されうる。例えば、組成物は、患者の脊髄中への直接注射により投与されうる。いくらかの態様においては、組成物は、組成物を患者の脊髄中へ外科的に移植することにより投与されうる。
【0090】
治療に適する損傷は、脊髄に影響する外傷性身体傷害を含むため、開示の方法は、体または脊柱部位の温度が低下させられたときに実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の組成物は、患者の脊髄が約96°Fから約85°Fであるときに投与されうる。いくらかの実施形態においては、開示の組成物は、患者の脊髄が約96°F、約95°F、約94°F、約93°F、約92°F、約91°F、約90°F、約89°F、約88°F、または約87°Fであるときに投与されうる。また、脊髄損傷に対しては迅速な治療がしばしば望ましいため、開示の方法は、患者の脊髄損傷から約2時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷から約4時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷から約6時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷から約12時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷から約18時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷から約24時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷から約36時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷から約48時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷から約72時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷のときから、患者の脊髄損傷後約1週間までの間に実施されうる。他の実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷のときから、患者の脊髄損傷後約72時間までの間に実施されうる。他の実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷のときから、患者の脊髄損傷後約48時間までの間に実施されうる。他の実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷のときから、患者の脊髄損傷後約24時間までの間に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷後約24時間から、患者の脊髄損傷後約1週間までの間に実施されうる。他の実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷後約24時間から、患者の脊髄損傷後約72時間までの間に実施されうる。他の実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷後約24時間から、患者の脊髄損傷後約48時間までの間に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷後約48時間から、患者の脊髄損傷後約1週間までの間に実施されうる。他の実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷後約48時間から、患者の脊髄損傷後約72時間までの間に実施されうる。
【0091】
いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始から約72時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始から約48時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始から約24時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始から約18時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始から約12時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始から約6時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始から約4時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始から約3時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始から約2時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始から約1時間以内に実施されうる。いくらかの実施形態においては、開示の方法は、患者の脊髄損傷に対する治療の開始後1時間よりも早く実施されうる。
【0092】
本明細書においては、MCP−1シグナリングを調節することが可能な1つまたはそれ以上の薬剤と、生分解性担体とを有する組成物を生産するための、キットもさらに提供される。そのキットは、MCP−1シグナリングを調節することが可能な1つまたはそれ以上の薬剤、生分解性担体、及び前記組成物を生産するためのインストラクションを有する。
【実施例】
【0093】
溶媒抽出/蒸発、単一水中油型乳化による、マイクロカプセル化されたTNF−α阻害剤。生分解性ポリマーマイクロ粒子は、溶媒抽出/蒸発、単一水中油型(o/w)乳化法を使用して作製された。カルボキシル基末端PLGA(0−20wt%)及びピルフェニドン(0−20wt%)が、適切な揮発性有機溶媒(例えば、ジクロロメタン、酢酸エチル)中に溶解された。生じたポリマー溶液分散剤相が、0.5−5%(w/v)の界面活性剤(PVA)を含有する水性の連続相に一定剪断速度の攪拌下で添加され、単一o/wマイクロ乳状液を作製した。効率的に有機溶媒を効果的に抽出かつ蒸発させるため、生じた安定なマイクロ乳状液は、次いで、微小濃度(0−0.5%(w/v))の界面活性剤(PVA)を含有する脱イオン水200mLを含有する蒸発槽に、350rpmでの攪拌下で3時間かけて添加された。それから、硬化したマイクロ粒子が回収され、脱イオン水を用いて精製され、また凍結乾燥させられた。
【0094】
銅フリークリック化学反応による、PLGA−g−PEGナノ粒子の調製、及びそれに続く抗TNF−α抗体の表面バイオコンジュゲーション。様々な比のPLGA−g−PEGとPLGA−g−PEG−アジドとのジブロックコポリマー(0−1重量%)が、水混和性溶媒(例えば、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン)中に溶解された。ポリマー溶液が非溶媒である水中へと沈殿させられ、様々な割合のPEG−アジド官能性を有するPEG化された表面を有するナノ粒子を生成させた。生じたナノ粒子懸濁液は、十分な溶媒拡散を可能にするため、3−6時間攪拌された。それからナノ粒子懸濁液は精製され、限外濾過により濃縮され、凍結乾燥された。アジド官能性ナノ粒子、及びジベンジルシクロオクチン官能性の抗TNF−α抗体(末端アジド0.5−1モル当量)が緩衝性生理食塩(pH7.4)懸濁液中に独立に再懸濁され、次いで30分間混合され、銅フリークリック化学反応によって抗体をナノ粒子表面に共有結合により結合させた。
【0095】
当業者は、本発明の好ましい実施形態に多くの変更や修正がなされうること、またそのような変更や修正は本発明の真髄から逸脱せずになされうることを認識するだろう。従って、添付の特許請求の範囲は、そのような同等なバリエーション全てが本発明の真の真髄及び範囲に入るとして、それカバーすることが意図される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】