(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-527635(P2017-527635A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(54)【発明の名称】吸湿性複合材料
(51)【国際特許分類】
C09K 5/16 20060101AFI20170825BHJP
F25B 17/08 20060101ALI20170825BHJP
【FI】
C09K5/16
F25B17/08 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-574423(P2016-574423)
(86)(22)【出願日】2015年6月25日
(85)【翻訳文提出日】2017年1月17日
(86)【国際出願番号】EP2015064449
(87)【国際公開番号】WO2015197788
(87)【国際公開日】20151230
(31)【優先権主張番号】1411286.6
(32)【優先日】2014年6月25日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1417530.1
(32)【優先日】2014年10月3日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】510282000
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドゥ モンス
(71)【出願人】
【識別番号】510041278
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ リブル ドゥ ブリュッセル
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クルボン, エミリー
(72)【発明者】
【氏名】フレール, マルク
(72)【発明者】
【氏名】ハイマンス, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ダンス, ピエール
【テーマコード(参考)】
3L093
【Fターム(参考)】
3L093NN03
3L093PP14
(57)【要約】
複合材料、特に、家庭用暖房システムにおけるエネルギーの季節貯蔵のための複合材料は、多孔質材料内に配置された吸湿性塩の以下の組合せ(下表)の少なくとも1つを有する粒を含み、粒の中心ゾーン内の吸湿性金属濃度は、辺縁ゾーン内のものの少なくとも0.7倍である。本発明の一態様の複合材料は、特に1〜9カ月の期間中のエネルギーの長期貯蔵に特に適している。一用途は、夏の間に例えば、ソーラーコレクターによって生成される熱エネルギーの貯蔵、および冬の間に建築物を温めるためのこのエネルギーの後続の制御放出のためである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒を含む複合材料であって、前記粒は、多孔質材料内に配置された吸湿性塩の以下の組合せの少なくとも1つを含み、以下の水吸着および/または吸湿性塩の量を有し:
【化2】
前記粒は、辺縁ゾーンおよび中心ゾーンを有し、粒の前記辺縁ゾーンは、前記粒の直径の約1/10の距離にわたって前記粒の辺縁から前記粒の中心に向かって延在する前記粒の部分であり、粒の前記中心ゾーンは、前記粒の中心から前記粒の辺縁に向かって前記粒の直径の約1/10の距離にわたって延在する前記粒の部分であり;
前記辺縁ゾーンは、前記辺縁ゾーンにおけるi)前記活性炭の炭素またはii)前記シリカゲルのケイ素の質量パーセンテージHPpによって除された前記辺縁ゾーンにおける前記吸湿性塩(複数可)の金属(複数可)の質量パーセンテージHMpとして表現される辺縁ゾーン吸湿性金属濃度HMCp(すなわち、HMCp=HMp/HPp)を有し、
前記中心ゾーンは、前記中心ゾーンにおけるi)前記活性炭の炭素またはii)前記シリカゲルのケイ素の質量パーセンテージHPcよって除された前記中心ゾーンにおける前記吸湿性塩(複数可)の金属(複数可)の質量パーセンテージHMcとして表現される中心ゾーン吸湿性金属濃度HMCc(すなわち、HMCc=HMc/HPc)を有し、
前記中心ゾーン吸湿性金属濃度は、前記辺縁ゾーン吸湿性金属濃度の0.7倍超、または0.7倍に等しい(HMCc≧0.7HMCp)、
複合材料。
【請求項2】
20mbarで80℃と30℃との間で測定された前記複合材料の前記水吸着が、
− 活性炭および臭化ストロンチウムの組合せについて少なくとも0.19g/g
− 活性炭および塩化カルシウムの組合せについて少なくとも0.44g/g
− シリカゲルおよび臭化ストロンチウムの組合せについて少なくとも0.25g/g
− シリカゲルおよび塩化カルシウムの組合せについて少なくとも0.60g/g
− シリカゲルおよび塩化マグネシウムの組合せについて少なくとも0.35g/g
である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記中心ゾーン吸湿性金属濃度が、前記辺縁ゾーン吸湿性金属濃度の0.8倍超、または0.8倍に等しい(HMCc≧0.8HMCp)、いずれかの前記請求項に記載の複合材料。
【請求項4】
前記粒の総重量に対する前記粒中の前記複合材料の吸湿性塩の前記量が、X線蛍光によって決定される、いずれかの前記請求項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記粒中の前記多孔質材料の総孔容積に対する前記粒中の前記複合材料の吸湿性塩の前記量が、90%以下である、いずれかの前記請求項に記載の複合材料。
【請求項6】
− 活性炭および臭化ストロンチウム
− 活性炭および塩化カルシウム
− シリカゲルおよび塩化カルシウム
− シリカゲルおよび臭化ストロンチウム
− シリカゲルおよび塩化マグネシウム
の組合せから選択される、多孔質材料および前記多孔質材料内に配置された吸湿性塩の組合せを含み、
5回連続サイクル、好ましくは15回連続サイクルの間に12.5mbarまたは20mbarで80℃と30℃との間で測定された前記複合材料の水吸着の差異が、10%未満、好ましくは5%未満である、いずれかの前記請求項に特に記載の複合材料。
【請求項7】
いずれかの前記請求項に特に記載の、多孔質材料および前記多孔質材料内に配置された吸湿性塩の組合せを含む複合材料を製造する方法であって、
多孔質材料に吸湿性塩の溶液を含浸させて複合材料を形成することと;
次いで、水を除去するために前記複合材料を乾燥させることと;
次いで、前記複合材料に吸湿性塩の溶液を再含浸させて複合材料を形成することと
を含む、方法。
【請求項8】
それぞれ前記複合材料の乾燥によって隔てられた少なくとも3回の含浸を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記吸湿性塩および前記多孔質材料の前記組合せが、組合せ:
− 活性炭および臭化ストロンチウム
− 活性炭および塩化カルシウム
− シリカゲルおよび塩化カルシウム
− シリカゲルおよび臭化ストロンチウム
− シリカゲルおよび塩化マグネシウム
から選択される、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
含浸と含侵との間に前記複合材料を洗浄することを含まない、請求項7から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記粒中の前記複合材料の総重量に対する前記粒中の前記複合材料の吸湿性塩の量が、少なくとも25%wt、好ましくは少なくとも35%wtである、請求項7から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
熱エネルギーの貯蔵および回復の方法であって、
a)水和形態のi)請求項1から6のいずれかに記載の複合材料、またはii)請求項7から11のいずれかに記載の方法によって製造される複合材料を、少なくとも30分の期間にわたって30℃〜150℃の範囲内の温度に前記複合材料を曝すことによって少なくとも部分的に脱水することと;
b)次いで、前記少なくとも部分的に脱水された複合材料を少なくとも4時間の期間にわたって貯蔵することと;
c)次いで、前記少なくとも部分的に脱水された複合材料を、20℃〜80℃の範囲内の温度で前記複合材料から熱を除去しながら前記複合材料を少なくとも部分的に再水和させるために水に曝露することと
を含む、方法。
【請求項13】
a)前記複合材料を少なくとも部分的に脱水することが、少なくとも30分の期間にわたって70℃から100℃の範囲内の温度に前記複合材料を曝すことを含み;
b)前記複合材料を少なくとも部分的に水和させることが、30℃〜80℃の範囲内の温度で熱を除去することを含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
a)請求項1から6のいずれかに記載の複合材料、またはii)請求項7から11のいずれかに記載の方法によって製造される複合材料;
b)少なくとも30分の期間にわたって30℃〜150℃の範囲内の温度に前記複合材料を曝すことによって前記複合材料を少なくとも部分的に脱水するためのシステム;
c)前記少なくとも部分的に脱水された複合材料を少なくとも4時間にわたって貯蔵するためのシステム;
d)前記少なくとも部分的に脱水された複合材料を、20℃〜80℃の範囲内の温度で前記複合材料から熱を除去しながら前記複合材料を少なくとも部分的に再水和させるために水に曝露するためのシステム
を備える家庭用暖房システム。
【請求項15】
少なくとも3360時間(約140週間)の継続時間にわたって少なくとも2000kWhのエネルギーを貯蔵するように構成されている、請求項14に記載の暖房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質材料内に配置された吸湿性塩を含む複合材料、およびエネルギー貯蔵のためのこのような材料の使用に関する。
【0002】
本発明の態様の1つによれば、本発明は、請求項1に規定される複合材料を提供する。追加の態様は、他の独立請求項において規定されている。従属請求項は、好適な実施形態および/または代替の実施形態を規定する。
【0003】
本発明の一態様の複合材料は、特に1〜9カ月の期間中のエネルギーの長期貯蔵に特に適している。一用途は、夏の間に例えば、ソーラーコレクターによって生成される熱エネルギーの貯蔵、および冬の間に建築物を温めるためのこのエネルギーの後続の制御放出のためである。このシステムは、エネルギーを、少なくとも168時間(約1週間)、少なくとも672時間(約4週間)、少なくとも2016時間(約12週間)、または少なくとも4032時間(約24週間)の期間にわたってその後続の放出の前に貯蔵するのに使用することができる。
【背景技術】
【0004】
エネルギー収集の間、水和形態の吸湿性塩の加熱により、その脱水に至り、生成される水蒸気は、タンク内に凝縮および貯蔵され得る。エネルギー放出のために、脱水形態の吸湿性塩を水蒸気と接触させると、熱の形態で水和エネルギーが放出され、それは、キャリアガスを使用して移すことができる。脱水/水和サイクルの間、塩は、形態学的変化(例えば、塩粒子の部分的液化または凝集)を受ける可能性が高く、それは、貯蔵システムの信頼性に影響し得る。多孔質材料中に塩を組み込むと、関連した問題が軽減され、塩とその周囲雰囲気との間の接触が促進される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
多孔質材料は、好ましくは、吸湿性塩を支持するように作用し、および/または水蒸気の物理的な吸着剤として作用する。吸湿性塩は、好ましくは多孔質材料中に実質的に均質に、しかし多孔度を完全に満たすことなく分散され、それは、大量の塩が支持されることを可能にし、一方、塩とその周囲雰囲気との間の水蒸気の交換のためのアクセシビリティを促進する。
【0006】
粒の形態は、エネルギー貯蔵システム中の材料の組込みを促進し、やはり複合材料とその周囲雰囲気との間の接触を促進する大きい表面積をもたらす。粒は、少なくとも50μmおよび/または3mm未満の平均直径を有し得る。
【0007】
多孔質材料の平均孔径は、少なくとも1nmまたは2nmであり得、それは、30nm未満もしくは15nm未満、または30nmもしくは15nmに等しい場合がある。多孔質材料の総孔容積は、少なくとも0.2cm
3/gもしくは0.3cm
3/g、および/または2cm
3/g未満もしくは1.5cm
3/g未満、または2cm
3/gもしくは1.5cm
3/gに等しい場合がある。活性表面積は、200〜800m
2/g、好ましくは300〜550m
2/g、または1000〜1500m
2/g、好ましくは1200〜1300m
2/gの範囲であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】連続サイクルにわたる水の吸着および脱着のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のある特定の態様の多孔質材料および吸湿性塩の組合せは、望ましいレベルの水の吸着および/もしくは脱着を実現し、ならびに/または望ましい量の吸湿性塩が複合材料によって担持されるのを可能にするのに特に適していることが判明した。
【0010】
特に、かなりの量の塩を粒の中心ゾーンに、またはそれに向けて、導入および/または保持することができることが意外にも判明した。理論によって束縛されることを望まないが、特に、粒の内部に(および粒の表面部分だけでなく)かなりの量の塩を担持させる一方、水蒸気の吸着および脱着のために粒の内部で塩にアクセスすることを可能にすることによって、この態様が高レベルの水吸着をもたらすことに寄与すると考えられる。粒の内部へのアクセスを制限する粒の表面における塩の層および/または閉塞した孔の形成を防止することにより、複合材料の性能が増強されることも考えられる。
【0011】
水吸着がg/gで表現されるとき、これは、脱水された複合材料1グラムあたりに吸着される水のグラムを表す。水吸着は、脱水形態の複合材料が吸着することができる水の量の目安である。放出されるエネルギーの量は、吸着される水の量および複合材料中に存在する吸湿性塩(複数可)の水和エネルギーの関数である。
【0013】
複合材料の水吸着は、吸着等温線を用いた熱重量測定によって測定され得る。脱水された複合材料が熱重量測定装置、例えば、Seratam TG−DSC 111の内部に置かれる。等温線が圧力ステージによって測定され、水蒸気が複合材料中にその後組み込まれる。等温線は一般に、100Pa〜1800Paで測定される。この分圧を超えると、水蒸気は一般に、装置内部で凝縮し、結果は、誤ったものになり得る。測定は、好ましくは、30℃、40℃、60℃、および80℃で行われる。ほとんどの用途において、水吸着は、10℃の飽和蒸気圧で30℃と80℃との間で測定される。
【0014】
吸湿性塩は、多孔質材料の微孔および/またはメソ孔中に捕捉することができ、これは、塩の安定性を増強し得る。好ましくは、多孔質材料の孔は、吸湿性塩によって完全に満たされない。これは、多孔質材料内の塩のアクセシビリティを促進し得、ならびに/または多孔質材料が水蒸気を吸着および脱着することによってエネルギー貯蔵プロセスに参加するのを可能にし得る。多孔質材料の総孔容積に対する複合材料の吸湿性塩の量は、95%以下、90%以下、85%以下、好ましくは80%以下であり得る。
【0015】
複合材料の総重量に対する複合材料の吸湿性塩の量は、
− 活性炭および臭化ストロンチウムの組合せについて、少なくとも20%wt、好ましくは少なくとも25%wt、より好ましくは少なくとも29%wt
− 活性炭および塩化カルシウムの組合せについて、少なくとも28%wt、好ましくは少なくとも30%wt、より好ましくは少なくとも32%wt
− シリカゲルおよび塩化カルシウムの組合せについて、少なくとも33%wt、好ましくは少なくとも35%wt、より好ましくは少なくとも38%wt
− シリカゲルおよび臭化ストロンチウムの組合せについて、少なくとも40%wt、好ましくは少なくとも45%wt、より好ましくは少なくとも47%wt
− シリカゲルおよび塩化マグネシウムの組合せについて、少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%、より好ましくは少なくとも38%
であり得る。
【0016】
複合材料の総重量に対する複合材料の吸湿性塩の量は、含浸前の多孔質材料と含浸された複合材料との間の重量の差異を測定することによって決定することができる。代わりに、吸湿性塩含有量は、X線蛍光または他の化学分析によって測定することができる。
【0017】
複合材料の水吸着/脱着性能は、好ましくは、複数のサイクルにわたって実質的に一定のままである。これは、多数のサイクルにわたって、および/または長い継続時間にわたって、例えば、少なくとも5、10、もしくは15年の期間にわたって機能するように構成されたシステムにおける複合材料の使用を可能にする。吸着と後続の脱着の5回の連続サイクルの間、好ましくは15回のこのようなサイクルの間に、12.5mbarで30℃と80℃との間で測定された複合材料の水吸着の差異は、15%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満であり得る。これは、以前に使用されていない複合材料の最初の5回または15回のサイクルについて測定され得る。
【0018】
複合材料を製造する好適な方法は、
・ 多孔質材料に吸湿性塩の溶液を含浸させて複合材料を形成すること;
・ 次いで、水を除去するために複合材料を乾燥させること;
・ 次いで、複合材料に吸湿性塩の溶液を再含浸させて複合材料を形成すること
を含む。
【0019】
好ましくは、多孔質材料は、第1の含浸の前に水を除去するために乾燥される。複合材料を乾燥させ、次いで再含浸させる追加のステップを使用してもよく、その結果、方法は、3ステッププロセス(すなわち、3回の含浸ステップ、各含浸ステップは、乾燥ステップによって隔てられている)、4ステップ、5ステップ、6ステップ、7ステップ、もしくは8ステッププロセス、または8超のステップを含むプロセスを含む。
【0020】
吸湿性塩の溶液は、好ましくは水溶液である。水溶液中の吸湿性塩の濃度は、好ましくは、吸湿性塩の飽和濃度未満、特に、飽和濃度の95%以下または90%以下の濃度であり、これは、多孔質材料の表面部分での塩の過剰な堆積のリスク、および/または後続の含浸のための多孔質材料の内部の孔のアクセスを遮断するリスクを低減する。
【0021】
多孔質材料または複合材料の乾燥は、例えば、200℃で、オーブン内で加熱することを含み得る。多孔質材料または複合材料の質量を、乾燥中に定期的に測定することができ、2つの連続した測定間の質量の変化がないことを、材料が実質的に脱水されていることの目安として採用することができる。乾燥継続時間は、特に最初の含浸の前に少なくとも約4時間であり得、それは、特に後続の含浸間で少なくとも約2時間であり得る。乾燥継続時間は、調製される複合材料の量に依存する。
【0022】
含浸中、吸湿性塩の水溶液を脱水された多孔質材料を含有する容器に添加してもよい。好ましくは、水溶液の体積は、多孔質材料の孔容積に実質的に等しく、これは、多孔質材料の外表面の吸湿性塩の堆積を回避し、毛管凝縮による多孔質材料の孔内の堆積を促進するのに役立つ。好ましくは、吸湿性塩の水溶液および多孔質材料を含有する容器は、例えば、振盪または撹拌によって含浸中に混合され、これは、含浸の均質性に役立つ。
【0023】
含浸ステップは、周囲温度においてであり得る。含浸の継続時間は、少なくとも15分、30分、45分、60分、もしくは120分、および/または8時間未満もしくは4時間未満であり得る。
【0024】
各含浸は、同じ濃度の吸湿性塩の溶液および/または同じ吸湿性塩を使用することができる。
【0025】
複合材料は、暖房システム、例えば、家庭用暖房システム内の熱エネルギーの貯蔵および回復に使用され得る。使用中、少なくとも部分的に水和した複合材料は、少なくとも10分、30分、または45分の期間中に、30℃〜150℃、好ましくは40℃〜120℃、より好ましくは60℃〜110℃、さらにより好ましくは70℃〜100℃の範囲内の温度にそれを曝すことによって少なくとも部分的に脱水され得る。少なくとも部分的に脱水された複合材料は、その水和エネルギーを放出するために水と接触する前に、少なくとも30分、少なくとも1時間、少なくとも4時間、好ましくは少なくとも4日、より好ましくは少なくとも4週間、さらにより好ましくは少なくとも4カ月の期間にわたって貯蔵され得る。少なくとも部分的に脱水された複合材料複合体は、20℃〜80℃、好ましくは20℃〜60℃、より好ましくは30℃〜50℃の範囲内の温度で複合材料から熱を除去しながら複合材料を再水和させるために、蒸気形態の水に曝露することができる。
【0026】
非限定的な実施例を、以下:
図1:連続サイクルにわたる水の吸着および脱着のグラフ、および
図2:複合材料の粒を通る断面
を参照して以下に記載する。
【実施例】
【0027】
(実施例1〜5)
表1の複合材料を、
− 多孔質材料を、多孔質材料の質量が一定になるまで、200℃で4時間、オーブン内で脱水し;
− 孔容積と等しい体積の吸湿性塩の水溶液を、30〜60分の間、脱水された多孔質材料に撹拌しながら含浸させ;
− 200℃で60分間、オーブン内で複合材料を脱水し(110℃で脱水した実施例5を除く);
− 表1に示したように含浸/乾燥サイクルを繰り返す
ことによって作製した。
【表1】
【0028】
使用した活性炭SRD 10034(AC)は、1250m
2/gの比表面積および0.42cm
3/gの孔容積を有する。使用したシリカゲルSG 100(SG)は、360m
2/gの比表面積および0.8cm
3/gの孔容積を有する。別のタイプのシリカゲル、例えば、320m
2/gの比表面積および1.15cm
3/gの孔容積を有するシリカゲルSG 62(SG)などを使用してもよい。
【0029】
再現性試験
実施例4の複合材料を、12.5mbarで30℃と80℃との間の5回連続吸着/脱着サイクルの間試験した。
図1に示した結果は、熱重量測定器TG−DSC 111によって測定した。これらは、
− 5%未満の5回連続サイクルの最初と最後の間の複合材料の水吸着の差異
− 5%未満の各サイクルにおける水吸着と後続の水脱着との間の差異
を示す。
【0030】
これは、家庭用暖房システムまたは他の暖房システム、例えば、非家庭用暖房システムに対する適性を示す。
【0031】
辺縁ゾーンおよび中心ゾーンにおける吸湿性金属濃度の決定
実施例3の複合材料(塩化カルシウムを伴ったシリカゲル)の粒の含浸を、走査型電子顕微鏡を使用して分析し、それを
図2に示す。
【0032】
複合材料の粒を不活性な樹脂またはマトリックス中に閉じ込めた。これを研磨して、電子顕微鏡を使用して分析することができる粒を通る断面をもたらした。化学分析は、走査型電子顕微鏡とともに準備されたEDX分析器を使用して得た。
【0033】
試料調製および分析中に、
− 表面の平坦性は、定量的化学分析をもたらすのに十分である;
− 調製技法により、化学分析を妨げるいずれの元素も生じない(すなわち、EDXの場合では、ピークは重ならないはずである)。例えば、導電性炭素層は、複合体が活性炭を含有する場合、画像化の前に堆積されないはずである;
− 複合材料は、任意の他の手段、例えば、研磨媒体によって汚染されない;
− 測定される元素のいずれも調製技法によって除去されない(すなわち、CまたはSi、OおよびSr、BrまたはCa、ClまたはMg、Cl)
ことが保証された。
【0034】
一旦試料が画像化されたら、塩の「クラスト」は、断面の外側エリアに存在しないことが検証された。このようなクラストは、不完全に含浸されたコアと外側エリアとの間の界面を暗示するはずである。EDXを使用する点検を、疑わしい場合行うことができる。
図2で、このような現象を観察することはできない。
【0035】
分析ゾーンを、粒の辺縁と接触した少なくとも3つの隅を有する内接矩形として、粒の幅にわたって定義した。分析ゾーンの長さは、粒の直径の少なくとも1/10であるはずであり、長さ/幅の比は10に等しいはずである。好ましくは、分析ゾーンは、粒の中心を通過する。その後、分析ゾーンを、
図2に示したように、1〜10に順次番号付けた10個の同一の並べられた正方形に分割した。
【0036】
正方形1(粒の辺縁における)は、辺縁ゾーンを画定し、粒の中心に向かう正方形5は、濃度を決定した中心ゾーンを画定する。表2は、分析した元素(任意の他の元素は、分析から除外した)および「含浸の高品質」を検証するために使用した条件を示す。
【表2】
【0037】
表2において、[x]は、元素xの質量パーセンテージを表し、添え字「1」および「5」は、それぞれ正方形1および5に対して実施した測定を表す。
【0038】
Ca、Cl、Si、およびOの質量パーセンテージを測定した。正方形1について、[Ca]/[Si]=0.3255であり、正方形5について、[Ca]/[Si]=0.6307である。
【0039】
好ましくは、測定を複数の粒に対して繰り返し、平均をとる。
【0040】
したがって、この実施例では、中心ゾーン吸湿性金属濃度は、辺縁ゾーン吸湿性金属濃度の1.94倍であった(HMCc=1.94HMCp)。これは、条件HMCc≧0.7HMCpを満たす。
【国際調査報告】