特表2017-527723(P2017-527723A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-527723(P2017-527723A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(54)【発明の名称】衛生器具を固定するための固定装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/14 20060101AFI20170825BHJP
【FI】
   E03D11/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-515170(P2017-515170)
(86)(22)【出願日】2015年9月9日
(85)【翻訳文提出日】2017年3月17日
(86)【国際出願番号】EP2015001812
(87)【国際公開番号】WO2016041624
(87)【国際公開日】20160324
(31)【優先権主張番号】102014013697.3
(32)【優先日】2014年9月17日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】514271866
【氏名又は名称】フィッシャーヴェルケ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】fischerwerke GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】モレノ ミオット
(72)【発明者】
【氏名】ミケーレ マルティーニ
(72)【発明者】
【氏名】ダーフィト レーマン
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ズーヒー
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039CA01
2D039DB00
(57)【要約】
本発明は、セラミックから成る衛生器具を固定するための固定装置(1’)であって、収容通路(22)を備えた基体(5’)と、ねじ山付きロッドにねじ被せるためのねじ山付き孔(10)を備えたアダプタエレメント(4’)と、収容通路(22)内にアダプタエレメント(4’)を形状接続式に保持するための保持エレメント(23)とを備え、該保持エレメント(23)は、長手方向軸線(L)に対して横方向に移動可能に基体(5)内に配置されている、固定装置(1’)に関する。このような固定装置の組付けをより簡単かつ確実にするために、本発明は、基体(5)に、係合エレメント(31’)が配置されていて、該係合エレメント(31’)が、アダプタエレメント(4’)のアンダカットエレメント(14’)に自動的に係合することを提案する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックから成る衛生器具(2)を固定するための固定装置(1,1’,1’’)であって、長手方向軸線(L)に沿って延びる収容通路(22)を有する基体(5,5’,5’’)と、ねじ山付きロッド(7)にねじ被せるためのねじ山付き孔(10)を有する特にロッド状のアダプタエレメント(4,4’,4’’)とを備え、該アダプタエレメント(4,4’,4’’)が、前記収容通路(22)内に導入方向(E)で導入可能であり、さらに前記収容通路(22)内に前記アダプタエレメント(4,4’,4’’)を形状接続式に保持するための保持エレメント(23)、特にねじを備え、前記保持エレメント(23)は、特に前記長手方向軸線(L)に対して横方向に移動可能に前記基体(5)内に配置されている、固定装置(1,1’,1’’)において、
前記基体(5)に、係合エレメント(31,31’,31’’)が配置されており、該係合エレメント(31,31’,31’’)が、前記アダプタエレメント(4,4’,4’’)の導入時に、該アダプタエレメント(4,4’,4’’)のアンダカットエレメント(14,14’,14’’)内に自動的に係合することを特徴とする、セラミックから成る衛生器具(2)を固定するための固定装置(1,1’,1’’)。
【請求項2】
前記係合エレメント(31’’)または前記アンダカットエレメント(14)は、前記アンダカットエレメント(14,14’’)に前記係合エレメント(31,31’’)が係合することなしに、前記アダプタエレメント(4,4’’)を前記収容通路(22)内から導出することおよび前記収容通路(22)内へ新たに導入することができるように、開放位置へと移動可能である、請求項1記載の固定装置。
【請求項3】
前記収容通路(22)から離れる方向への前記保持エレメント(23)の移動が前記開放位置への前記係合エレメント(31’’)の移動を生ぜしめるように、前記係合エレメント(31’’)が前記保持エレメント(23)に作用結合している、請求項2記載の固定装置。
【請求項4】
前記係合エレメント(31’)は、前記基体(5’)に導入方向(E)で規定された力(F)を加えることにより、前記アンダカットエレメント(14’)との係合を解除可能であり、前記収容通路(22)への前記アダプタエレメント(4’)の新たな導入時に、再び前記係合エレメント(31’)と係合する、請求項1記載の固定装置。
【請求項5】
前記係合エレメント(31’,31’’)は、前記長手方向軸線(L)に対して横方向に移動可能に、前記基体(5’,5’’)内にまたは前記基体(5’,5’’)に対して支持されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の固定装置。
【請求項6】
前記係合エレメント(31’)はワイヤ屈曲部材(36)である、請求項1から5までのいずれか1項記載の固定装置。
【請求項7】
前記係合エレメント(31)は、前記基体(5)に一体的に結合されたばね舌片(29)に形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の固定装置。
【請求項8】
前記アンダカットエレメント(14’,14’’)は、溝(34’,34’’)または鍔(40)である、請求項1から7までのいずれか1項記載の固定装置。
【請求項9】
前記アンダカットエレメント(14)は、前記アダプタエレメント(4)の軸部(9)に、特にクリップ結合部(33)を介して、前記アンダカットエレメント(14)が前記軸部(9)から引き抜かれ得るように、結合されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の固定装置。
【請求項10】
前記アンダカットエレメント(14’,14’’)および/または前記係合エレメント(31,31’,31’’)は、導入斜面(32,32’,32’’,41)を有しており、該導入斜面(32,32’,32’’,41)は、前記収容通路(22)内に前記アダプタエレメント(4,4’,4’’)が導入された状態において、前記長手方向軸線(L)に対して斜めに延びている、請求項1から9までのいずれか1項記載の固定装置。
【請求項11】
前記アンダカットエレメント(14’)および/または前記係合エレメント(31’)は、導出斜面(39,42)を有しており、該導出斜面(39,42)は、前記収容通路(22)内に前記アダプタエレメント(4’’)が導入された状態において、前記長手方向軸線(L)に対して斜めに延びている、請求項1から10までのいずれか1項記載の固定装置。
【請求項12】
前記アダプタエレメント(4,4’,4’’)は、前記アンダカットエレメント(14,14’,14’’)ではない、前記保持エレメント(23)の係合のための凹設部(12)を有している、請求項1から11までのいずれか1項記載の固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の特徴を備える、セラミックから成る衛生器具を固定するための固定装置に関する。
【0002】
欧州特許出願公開第01338711号明細書からは、セラミック製の衛生器具、特に便器を壁部に固定可能である、固定装置が公知である。この場合、通常はトイレの給水部・排水部の領域に配置されている2つのねじ山付きロッドを起点とする。ねじ山付きロッド上には、衛生器具を被せる前に、それぞれ1つのアダプタエレメントがねじ被せられる。このアダプタエレメントは、ロッド状であり、ねじ山付きロッドに対する雌ねじ山を有している。アダプタエレメントは、さらに側方の凹設部を有している。衛生器具には、基体が前組み付けされている。この基体は、アダプタエレメントのための収容通路を有している。この収容通路内に、アダプタエレメントが挿入されるか、もしくは衛生器具が基体と共に、前組み付けされたアダプタエレメント上に被せられる。アダプタエレメントを基体内で位置固定するためには、基体内の、収容通路に対して横方向に延びるねじ山付き孔にいもねじ(六角穴付き止めねじ)が配置されている。このいもねじの先端部は、深くねじ込むことによって、アダプタエレメントの側方の凹設部内に係合する。先端部も凹設部も傾斜しているので、いもねじを締めることは、基体内へのアダプタエレメントの引込みをもたらす。この場合、基体は、衛生器具の内壁において支持されており、衛生器具を壁部に対して押圧する。
【0003】
本発明の課題は、このような固定装置の組付けをより簡単かつ確実にすることである。
【0004】
この課題は、本発明によれば請求項1に記載の特徴により解決される。本発明に係る固定装置は、洗面台、便器、小便器、ビデのようなセラミックから成る衛生器具の固定のために役立つ。固定装置は、特にプラスチックから成る、有利には一体的な基体を有している。基体は、長手方向軸線に沿って延びる収容通路を有している。収容通路は、有利には側方で閉じられているが、側方の開口を有していてもよい。収容通路内には、アダプタエレメントが導入方向に導入可能であり、該アダプタエレメントは特にロッド状であり、ねじ山付き孔によって、ねじ山付きロッドにねじ被せ可能である。これにより、アダプタエレメントを、前組付けの枠内で、壁部から突出しているねじ山付きロッド上にねじ被せることができる。固定装置は、さらに保持エレメントを有している。保持エレメントは、収容通路内におけるアダプタエレメントの形状接続式の保持のために働き、そのために特に収容通路の長手方向軸線に対して横方向に移動可能に基体内に配置されている。「横方向」とはこの場合、特に長手方向軸線に対してほぼ垂直であることを意味し、しかし長手方向軸線に対して傾斜した配置をも含む。保持エレメントは、特にねじであり、該ねじは特にいもねじ(六角穴付き止めねじ)として形成されている。固定装置は、特に位置固定手段を有している。この位置固定手段により、基体を、前組付けの枠内で、衛生器具において、たとえばアンダカットエレメント、クランプエレメントまたは接着装置の形態で固定することができる。しかし、たとえば衛生器具をアダプタエレメントに被せる場合に手で相応の箇所に保持する場合、本発明の思想から離れることなしに、固定装置はこのような位置固定手段を有していなくてもよい。固定すべき衛生器具およびねじ山付きロッドと一緒に、固定装置は固定アセンブリを形成する。
【0005】
本発明に係る固定装置は、係合エレメントにより特徴付けられている。係合エレメントは、基体に配置されており、アダプタエレメントの導入時に、アダプタエレメントのアンダカットエレメントに自動的に係合する。これにより、固定すべき衛生器具を被せた時に、自動的に基体とアダプタエレメントとの間で結合部が形成されることが達成される。「衛生器具を被せる」とは、この場合、衛生器具が基体と一緒にアダプタエレメントに対してガイドされ、アダプタエレメントがこの場合に基体の収容通路内に導入されることを意味する。係合エレメントにより、衛生器具は導入方向とは反対に向けられた動きに対してアダプタエレメントにおいて位置固定されている。つまり、組付けの段階における衛生器具の意図しない解除および脱落は阻止されており、これにより組付けはより確実となる。衛生器具の位置固定により、特に引き続き行われる保持エレメントの移動が容易にされている。この移動は、保持エレメントを、アダプタエレメントに形状接続式に保持するために必要である。つまり衛生器具を、被せられた後に解除することができる。組付け作業員は、保持エレメントを移動させるために、つまり保持エレメントとしていもねじが使用される場合には、このいもねじを工具で締めるために、両手を使うことができる。組付けはこれにより容易にされる。
【0006】
有利には、係合エレメントまたはアンダカットエレメントは、係合エレメントがアンダカットエレメントに係合することなしに、アダプタエレメントの導出通路からの導出および収容通路内への新たな導入ができるように、開放位置へと移動可能である。つまり、係合機能は解除可能であることが望ましい。この場合、「移動可能」とは、可逆的であっても、係合エレメントが基体からもはや取外し可能ではないか、もしくはアンダカットエレメントがアダプタエレメントからもはや取外し可能でない限りは、非可逆的であってもよいことを意味している。しかし有利には、それぞれのエレメントは可逆的に取外し可能であるか、または基体もしくはアダプタエレメントに留まる。開放位置への移動可能性により、固定装置を、必要な場合には簡単な形式で再び取り外すことができる。このためには、まず、保持エレメントが、アダプタエレメントをもはや保持しないように移動させられる。開放位置への係合エレメントもしくはアンダカットエレメントの移動により、アダプタエレメントを、導入方向とは反対方向に収容通路内で動かすことができる。この場合に、係合エレメントにより引き止められることはない。したがって、衛生器具を備えた基体を、アダプタエレメントから解除することができる。
【0007】
有利には、保持エレメントの、収容通路から離れる方向への移動が、開放位置への係合エレメントの移動を生ぜしめるように、係合エレメントが保持エレメントに作用結合している。係合エレメントおよび保持エレメントは、特に機械的に連結されている。特に、係合エレメントおよび保持エレメントは、平行な移動軸線を有している。有利には、係合エレメントには、ばねエレメントにより、収容通路に向かう方向に負荷を加えられており、ストッパ面を有している。保持エレメントが収容通路から離れる方向に移動されると、このストッパ面に対して保持エレメントが押し当てられる。
【0008】
本発明の択一的で有利な態様では、係合エレメントが、基体に導入方向で規定された力を加えることにより、アンダカットエレメントから係合を解除されてもよい。収容通路内へのアダプタエレメントの新たな導入時に、係合エレメントは再びアンダカットエレメントに係合する。
【0009】
有利には、係合エレメントは、長手方向軸線(L)に対して横方向に可動に、基体内にまたは基体に対して支持されている。ここで「横方向」とは、特に長手方向軸線に対してほぼ垂直であることを意味するが、長手方向軸線に対して斜めの配置をも含む。動きは、たとえば線形にまたは回転として行われてもよい。本発明の対象から逸脱することなしに、係合エレメントが基体に不動に配置されていて、かつこのためにアンダカットエレメントがアダプタエレメントにおいて可動に配置されていてもよい。
【0010】
以下に記載の態様は、開放位置への上述の移動可能性も、規定された力による上述の係合解除も有していてもよい。
【0011】
特に単純かつコンパクトで安定的な構造は、ワイヤ屈曲部材として形成されている係合エレメントにより生じる。ワイヤ屈曲部材は、特にアンダカットエレメントに係合する保持区分と、基体内に支持されている支持区分とを有している。
【0012】
基体に一体的に結合されているばね舌片に形成されている係合エレメントにより、特に基体がプラスチックから成っている場合に、同様に単純な構造が生じる。
【0013】
有利には、アンダカットエレメントは、特に一体的なアダプタエレメントに加工されている環状に延びる溝または鍔である。したがってアンダカットエレメントを、アダプタエレメントの旋削加工製造の一部として極めて簡単かつ迅速に生ぜしめることができる。
【0014】
一体的なアダプタエレメントに対して択一的には、アンダカットエレメントが、アダプタの軸部に、特にクリップ結合部を介して、アンダカットエレメントを軸部から引き抜くことができるように、結合されていることが規定されていると有利である。アンダカットエレメントは、特に開放した弾性的に変形可能なリングとして形成されていてもよい。「クリップ結合部」とは、ここでは、弾性的に力に抗して係合し、しかし再び解除可能である結合部を意味する。アンダカットエレメントが引抜き可能であることにより、アンダカットエレメントを、固定装置を取り外す目的のために取り除くことができる。引抜き後に、アダプタエレメントを、導入方向とは反対に動かすことができ、この場合に係合エレメントにより引き止められることはない。クリップ結合部により、アンダカットエレメントは、引き続き再び軸部に取り付けられることができ、これにより固定装置は複数回組付け可能および取外し可能である。
【0015】
有利には、アンダカットエレメントおよび/または係合エレメントは、導入斜面を有している。導入斜面は、収容通路内にアダプタが導入された状態で、長手方向軸線に対して斜めに延びている。このことは、アンダカットエレメントに対する係合エレメントの自動的な相対運動を簡単な形式で可能にし、この場合にこのためにたとえば手間のかかる伝動装置を必要とすることはない。「および/または」という表現に相応して、導入斜面は、アンダカットエレメントおよび係合エレメントに設けられているか、または両エレメントのうちの一方のみに設けられていてもよい。
【0016】
特に係合エレメントが、基体に導入方向とは反対に規定された力を加えることにより、アンダカットエレメントから係合解除可能である場合に、アンダカットエレメントおよび/または係合エレメントは有利には導出斜面を有している。導出斜面は、収容通路内にアダプタが導入された状態では、長手方向軸線に対して斜めに延びている。導出斜面は、両エレメントが係合解除されるように、係合エレメントとアンダカットエレメントとの間の相対運動を生ぜしめる。導出斜面により、単純な構造が付加的な構成部材なしに達成可能である。導入斜面も導出斜面も設けられている場合、これらの斜面は有利には互いに異なる角度を有している。特に導出斜面は、導入斜面に比べて、長手方向軸線に対して急勾配であり、これにより簡単で自動的な係合および意図しない係合解除に対する良好な保持を達成することができる。
【0017】
有利には、アダプタエレメントは、保持エレメントを係止するための凹設部を有している。この凹設部はアンダカットエレメントではない。本発明の思想から逸脱することなしに、凹設部はアンダカットエレメントであってもよいが、保持エレメントによる最終的な保持の機能および係合エレメントおよびアンダカットエレメントによる一時的な位置固定は、アンダカットエレメントが凹設部とは異なっている場合に簡単に形成され得る。
【0018】
本発明を以下に3つの実施の形態につき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施の形態の縦断面図である。
図2】第1の実施の形態のアンダカットエレメントを示す側面図である。
図3】第2の実施の形態を示す斜視的な分解図である。
図4】第2の実施の形態の、図3に示したIV−IV平面での断面図である。
図5】第3の実施の形態を上から見た平面図である。
図6】第3の実施の形態の、図5に示したVI−VI平面での断面図である。
図7】第3の実施の形態の、図5および図6に示したVII−VII切断面での断面図である。
図8】第3の実施の形態のアダプタエレメントを示す図である。
【0020】
図1に図示された固定装置1は、衛生器具2を壁部3に固定するために働く。固定装置1には、アダプタエレメント4、基体5およびねじ6が所属している。壁部3からは、メートル法のねじ山付きロッド7が突出している。このねじ山付きロッド7にアダプタエレメント4がねじ被せられている。ねじ山付きロッド7と一緒に、固定装置1は、固定アセンブリ8を形成する。この場合、衛生器具2および/または壁部3は固定アセンブリ8の一部であってもよい。アダプタエレメント4は、軸部9を有している。この軸部9は、十分に回転対称かつロッド状である。壁部3に面している後方の端部において、アダプタエレメント4はねじ山付き孔10を有している。このねじ山付き孔10により、アダプタエレメント4は、ねじ山付きロッド7上に螺合させられるので、後方の端部は壁部3に当て付けられている。「後方」および「前方」は、以降では常に基体5内へのアダプタエレメント4の導入方向Eに関する。導入方向Eは、壁部3から垂直方向に遠ざかる方向に向いている。アダプタエレメント4の前方の端部は、台形の導入先端部11と、導入先端部11のすぐ後方に位置する、半径方向に向けられた円錐状の凹設部12とを有しており、凹設部12は、側方の外側から、アダプタエレメント4の回転軸線Rを幾らか越えるまで延びている。軸部9の後方の3分の1には、環状に延びる方形溝13内に、アダプタエレメント4の一部としてアンダカットエレメント14が配置されている。このアンダカットエレメント14は、プラスチックから成るリング15であり、このリング15は、アダプタエレメント4において鍔40を形成し、その円周の約5分の1において開口16により中断されている。開口16とは反対の側には、引っ張りベルト17が配置されている。この引っ張りベルト17は、半径方向でリング15から突出している。図1の視点では、引っ張りベルト17は、図平面に対して垂直方向に突出している。凹設部12とアンダカットエレメント14との間で、アダプタエレメント4は、衛生器具2の壁部19の貫通孔18を貫通している。貫通孔18の手前でアダプタエレメント4は基体5のスリーブ20により取り囲まれている。スリーブ20は、半径方向に入り込む雌ねじ山付き孔21を有している。スリーブ20の内部は、収容通路22を形成している。収容通路22は、基体5の長手方向軸線Lに沿って延びている。この場合、長手方向軸線Lは、組付け中の図示された状態では、アダプタエレメント4の回転軸線Rとほぼ合致している。雌ねじ山付き孔21内には、ねじ6が、いもねじ(六角穴付き止めねじ)24の形態の保持エレメント23として配置されている。この場合、いもねじ24の先端部25はアダプタエレメント4に向けられていて、該先端部25とは反対の側に位置する六角穴26は、収容通路22とは反対に向けられている。六角穴26を用いた保持エレメント23の回転により、保持エレメント23は、長手方向軸線Lに対して横方向で移動軸線VHに沿って移動可能である。スリーブ20から後方に向かって、複数の舌片状の位置固定エレメント27が突出する。位置固定エレメント27は、外方に向けられたフック28をその端部に有している。位置固定エレメント27のフック28は、貫通孔18の領域で壁部19に背後から係合する。位置固定エレメント27は、貫通孔18を、アダプタエレメント4に対して平行に貫通している。位置固定エレメント27のうちの1つには、一体的に後方に向かうばね舌片29が一体成形されており、ばね舌片29はその端部に係止フック30を有している。ばね舌片29は、基体5において、係合エレメント31を形成する。係止フック30は、長手方向軸線Lに対して斜めに後方に向かう、アダプタエレメント4に面した導入斜面32を有している。
【0021】
固定アセンブリ8の組付けのためには、前組付けにおいて、アダプタエレメント4が、図示されているように、ねじ山付きロッド7上に螺合させられる。基体5は、さらに前方から位置固定エレメント27と共に衛生器具2の貫通孔18を通じて差し込まれ、これにより、衛生器具2において位置固定される。その後に、衛生器具2は、基体5と共に、アダプタエレメント4上に被せられることができる。この場合、アダプタエレメント4は、収容通路22内に導入される。このことは、導入斜面32を備えた係止フック30が、アンダカットエレメント14に衝突するまで行われる。アダプタエレメント4のさらなる導入により、係止フック30は弾性的に外方に向かって、つまりアダプタエレメント4の回転軸線Rから離れる方向にかつ長手方向軸線Lに対して横方向に移動し、次いでアンダカットエレメント14が形成する鍔40の背後に係合する。このことは、アンダカットエレメント14への係合エレメント31の自動的な係合と解釈され得る。これにより、衛生器具2は、アダプタエレメント4からの誤った引抜きおよび脱落に対して位置固定されている。組付け作業員は、次のステップにおいて、いもねじ24を回転させ、これにより保持エレメント23を凹設部12と係合させるために、両手を使用することができる。いもねじ24の円錐状の先端部25と、円錐状の凹設部12とに基づいて、いもねじ24を締めることにより、壁部3に向かう方向で後方への、アダプタエレメント4に対する基体5の移動が生じる。これにより、スリーブ20は、衛生器具2を壁部3に向かって移動させる。
【0022】
固定アセンブリ8が再び取り外される場合、いもねじ24は、該いもねじ24がもはや収容通路22内に突出しなくなるまでねじ出される。衛生器具2は、次いで再び係合エレメント31およびアンダカットエレメント14により、脱落に対して位置固定されている。取外しのためには、アンダカットエレメント14を、引っ張りベルト17によりアダプタエレメント4から引き抜くことができる。開口16に基づいて、アンダカットエレメント14はアダプタエレメント4と共にクリップ結合部33を形成している。つまりリング15は、破壊されるのではなく、単に弾性的に変形し、新たな組付けのために再び方形溝13内に位置決めされることができる。リング15の引抜きは、アンダカットエレメント14の、開放位置への移動と解釈され得る。
【0023】
図3および図4に図示された第2の実施の形態は、大幅に一致しているので、ここでは差異のみが言及される。同一の構成エレメントには、同一の符号が示されている。見やすくするために、壁部、ねじ山付きロッドおよび保持エレメントは図示されていない。アダプタエレメント4’は、アンダカットエレメント14’として別個の構成部材を有しているのではなく、V字形の、環状に延びる溝34’を有している。この溝34’は、アダプタエレメント4’の導入先端部11と、凹設部12との間に配置されている。基体5’は、位置固定エレメントを有していない。このためには、基体5’は、前方の領域においてU字形のスリット35により貫通されている。この場合、U字の側部は、収容通路22に対して割線方向に延びている。スリット35内には、ほぼU字形のワイヤ屈曲部材36が配置されている。このワイヤ屈曲部材36は、係合エレメント31’を形成する。U字形のワイヤ屈曲部材36の側部は、保持区分37を形成する。2つの保持区分37は、支持区分38を介して互いに結合されている。保持区分37は、収容通路22に対して割線方向に延びていて、組付け前には収容通路22内に突出し、この収容通路22をこれにより狭めている。これらの保持区分37は、互いから離れる方向で、長手方向軸線Lに対して横方向に、かつ保持エレメント(図示せず)の移動軸線VHに対して垂直方向に移動可能である。この場合、動きは弾性的に行われる。収容通路22内へのアダプタエレメント4’の導入時に、アダプタエレメント4’の導入先端部11は、導入斜面32’として作用する。ワイヤ屈曲部材36が丸い横断面を有しているので、導入斜面32’に対応する第2の導入斜面41が形成される。アダプタエレメント4’のさらなる導入により、係合エレメント31’の保持区分37は、長手方向軸線Lに対して横方向に互いに離れるように動き、係合エレメント31’は、最終的に溝34’内に係合する。いもねじ(図示せず)を締めることにより、第1の実施の形態と同様に、最終的な固定が形成される。壁部に対する引き寄せ時に、基体5’とアダプタエレメント4’との間でさらなる相対運動が行われるので、この場合に係合エレメント31’の保持区分37は、溝34’のV字形の形状に基づいて、さらに離れる方向に動く。固定装置1’を取り外す場合、やはりいもねじが外される。収容通路22からのアダプタエレメント4’の引出し時に、係合エレメント31’は、再び溝34’内に係合し、衛生器具2を落下に対して位置固定する。衛生器具2もしくは基体5’において導入方向Eに規定された力Fで引っ張ることにより、この位置固定は克服することができる。この場合、V字形の溝34’の前方の面は導出斜面39を形成し、この導出斜面39は、係合エレメント31’の保持区分37を導入方向Eに作用する力Fに基づいて半径方向外方に向かって押圧する。ワイヤ屈曲部材36は、丸い横断面を有しているので、導出斜面39に対応する第2の導出斜面42が形成される。アダプタエレメント4’は、繰り返し基体5’内に、かつ基体5’から出るようにガイドされてもよく、かつこの場合毎回自動的に係合エレメント31’により固定される。
【0024】
これに対して、図5図8に図示した固定装置1’’では、基体5’’がスリーブ20’’から突出してフック28を備えた位置固定エレメント27を有していることに関して、基体5’’は第1の実施の形態と類似の構造を有している。これに対して基体5’’は、第1の実施の形態とは、方形の横断面を備えた4つのガイド孔43により異なっている。これらのガイド孔43は、雌ねじ山付き孔21に対して平行に延びていて、対としてこの雌ねじ山付き孔21の前後に配置されている。ガイド孔43は、それぞれ対応する横断面を備えた係合エレメント31’’により貫通され、係合エレメント31’’は収容通路22内にまで突出する。収容通路22内で、係合エレメント31’’は斜め後方に向けられた導入斜面32’’を有している(図7参照)。係合エレメント31’’は、ガイド孔43のほぼ二倍の長さであり、収容通路22とは反対の側で基体5’’を越えて突出している。係合エレメント31’’は、端部においてプレート44を介して互いに結合されている。この場合、プレート44は、係合エレメント31’’の一部である。プレート44は、中心に円形の切欠き45を有している。この切欠き45を通じて、保持エレメント23の移動軸線が同心的に延びている。切欠き45は、六角穴26に対応する六角レンチ(図示せず)により、いもねじ24をねじ込みかつねじ出すことが可能である大きさである。いもねじ24には、したがって、切欠き45を貫通してアクセス可能なままである。他方では、切欠き45は、いもねじ24の、先端部25とは反対の側に位置する後方の端面46が、半径方向外方でねじ出し時にプレート44に載置するほど小さい。プレート44は、したがってこの領域において、保持エレメント23のための係合エレメント31’’のストッパ面47を形成する。プレート44には、第1のブシュ48が配置されている。第1のブシュ48は、収容通路22に向かう方向で突出し、保持エレメント23を遊びを以て取り囲み、かつ基体に載置している。反対方向では、第1のブシュ48の軸方向の延長部に、第2のブシュ49が配置されている。この第2のブシュ49には、(図6ではなく)図7に図示されているように、チューブ50がクランプ式に被せ嵌められている。このチューブ50は、六角レンチ(図示せず)を保持エレメント23に対してガイドするために役立つ。図5および図6から判るように、プレート44から一体的に側方で、ベルト状の円弧状の舌片52の形態のばねエレメント51が突出している。このばねエレメント51は、係止突起53でそれぞれリブ54に背後から係合する。リブ54は、第2の実施の形態において図3に示されているように、長手方向軸線Lに対して平行に延びて外側で基体5’’に配置されている。円弧状の形状により、ばねエレメント51は、係合エレメント31’’が動く時に収容通路22から離れる方向で戻し力が作用することを生ぜしめる。
【0025】
アダプタエレメント4’’は、第2の実施の形態のアダプタエレメント4’と、溝34’’が導出斜面39の代わりに垂直方向の受け面55を有しているという事実を除いて同一である。
【0026】
アダプタエレメント4’’が収容通路22内に導入されると、係合エレメント31’’はまずアダプタエレメント4’’の導入先端部11により弾性的に押し退けられ、次いでアンダカットエレメント14’’としての溝34’’内に係合する。後方の両係合エレメント31’’によって、これによりアダプタエレメント4’’が基体5’’内に僅かにしか突出していない場合に既に脱落に対する位置固定が行われる。前方の係合エレメント31’’が到達されるや否や、この係合エレメント31’’はやはり到達した位置に位置固定される。第2の実施の形態とは異なり、基体5’’は、規定された力によってもアダプタエレメント4’’から再び引き出され得ない。本来の固定は、しかし保持エレメント23としてのいもねじ24の締付けにより以前と同様にここでも行われる。
【0027】
固定装置1’’の取外しのためには、いもねじ24が解除され、この場合に後方の端面46がストッパ面47に押し当てられるまで回転させられる。これによりばねエレメント51の力に抗して係合エレメント31’’が収容通路22から出るように動くので、係合エレメント31’’はもはや溝34’’内に係合されていない。次いでアダプタエレメント4’’を、収容通路22から引き出すことができる。
【符号の説明】
【0028】
1,1’,1’’ 固定装置
2 衛生器具
3 壁部
4,4’,4’’ アダプタエレメント
5,5’,5’’ 基体
6 ねじ
7 ねじ山付きロッド
8 固定アセンブリ
9 アダプタエレメント4の軸部
10 アダプタエレメント4,4’,4’’のねじ山付き孔
11 アダプタエレメント4,4’,4’’の導入先端部
12 アダプタエレメント4,4’,4’’の凹設部
13 方形溝
14,14’,14’’ アンダカットエレメント
15 リング
16 開口
17 引っ張りベルト
18 貫通孔
19 壁部
20,20’’ スリーブ
21 雌ねじ山付き孔
22 収容通路
23 保持エレメント
24 いもねじ
25 いもねじ24の先端部
26 いもねじ24の六角穴
27 位置固定エレメント
28 フック
29 ばね舌片
30 係止フック
31,31’,31’’ 係合エレメント
32,32’,32’’ 導入斜面
33 クリップ結合部
34’,34’’ 溝
35 スリット
36 ワイヤ屈曲部材
37 保持区分
38 支持区分
39 導出斜面
40 鍔
41 第2の導入斜面
42 第2の導出斜面
43 ガイド孔
44 プレート
45 切欠き
46 いもねじ24の後方の端面
47 係合エレメント31’’のストッパ面
48 第1のブシュ
49 第2のブシュ
50 チューブ
51 ばねエレメント
52 舌片
53 係止突起
54 リブ
55 受け面
E 導入方向
F 力
L 長手方向軸線
R アダプタエレメント4の回転軸線
VH 保持エレメント23の移動軸線
VE 係合エレメント31’’の移動軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】