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特表2017-527760クランク軸アイソレーティングプーリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-527760(P2017-527760A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(54)【発明の名称】クランク軸アイソレーティングプーリ
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/36 20060101AFI20170825BHJP
   F16D 7/02 20060101ALI20170825BHJP
   F16F 15/126 20060101ALI20170825BHJP
   F16D 43/21 20060101ALI20170825BHJP
【FI】
   F16H55/36 H
   F16H55/36 Z
   F16D7/02 F
   F16F15/126 B
   F16D43/21
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-513543(P2017-513543)
(86)(22)【出願日】2015年8月7日
(85)【翻訳文提出日】2017年3月17日
(86)【国際出願番号】US2015044227
(87)【国際公開番号】WO2016039903
(87)【国際公開日】20160317
(31)【優先権主張番号】14/482,994
(32)【優先日】2014年9月10日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】504005091
【氏名又は名称】ゲイツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,ディーン
(72)【発明者】
【氏名】サーク,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ケミング
【テーマコード(参考)】
3J031
3J068
【Fターム(参考)】
3J031AA03
3J031BA19
3J031CA03
3J031CA04
3J068AA07
3J068BA01
3J068BB08
3J068CB03
(57)【要約】
慣性キャリアを有するハブを備え、慣性キャリアは内面を有し、ハブに軸支されたスプリングキャリアを備え、スプリングキャリアは慣性キャリアに解放可能に作動係合し、ハブに軸支されたプーリと、スプリングキャリアとプーリの間に作動的に係合するスプリングと、内面に摩擦係合するクラッチスプリングと備え、摩擦係合が、クラッチスプリングへのプーリの一時的な押圧接触において、部分的に開放可能であるアイソレーティングプーリ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
慣性キャリア(16)を有するハブ(1)を備え、前記慣性キャリアは内面(168)を有し、
前記ハブに軸支されたスプリングキャリア(14)を備え、前記スプリングキャリアは前記慣性キャリアに解放可能に作動係合し、
前記ハブに軸支されたプーリ(3)と、
前記スプリングキャリアと前記プーリの間に作動的に係合するスプリング(4)と、
前記内面に摩擦係合するクラッチスプリング(5)と備え、
摩擦係合が、前記クラッチスプリングへの前記プーリの一時的な押圧接触において、部分的に開放可能である
アイソレーティングプーリ。
【請求項2】
前記慣性キャリアに係合する慣性部材と、前記慣性キャリアと前記慣性部材の間に配置された減衰部材とをさらに備える請求項1に記載のアイソレーティングプーリ。
【請求項3】
前記ハブがさらに歯面を備える請求項1に記載のアイソレーティングプーリ。
【請求項4】
前記スプリングが巻き戻し方向に駆動される請求項1に記載のアイソレーティングプーリ。
【請求項5】
前記プーリが、前記クラッチスプリングに対する係合トルクを調整するために調整可能な解放部材を備える請求項1に記載のアイソレーティングプーリ。
【請求項6】
慣性キャリアを有するハブを備え、前記慣性キャリアは内面を有し、
前記ハブに軸支されたスプリングキャリアを備え、前記スプリングキャリアは前記慣性キャリアに解放可能に作動係合し、
前記ハブに軸支されたプーリを備え、前記プーリは前記クラッチスプリングに対する係合トルクを調整するために調整可能な解放部材を有し、
前記スプリングキャリアと前記プーリの間に作動的に係合するスプリングと、
前記内面に摩擦係合するクラッチスプリングと備え、
摩擦係合が、前記クラッチスプリングへの前記プーリの一時的な押圧接触において、部分的に開放可能である
アイソレーティングプーリ。
【請求項7】
前記慣性キャリアに係合する慣性部材と、前記慣性キャリアと前記慣性部材の間に配置された減衰部材とをさらに備える請求項6に記載のアイソレーティングプーリ。
【請求項8】
前記ハブがさらに歯面を有する請求項7に記載のアイソレーティングプーリ。
【請求項9】
前記スプリングが巻き戻し方向に駆動される請求項8に記載のアイソレーティングプーリ。
【請求項10】
慣性キャリアを有するハブを備え、前記慣性キャリアは内面を有し、
前記慣性キャリアに係合する慣性部材と、
前記慣性キャリアと前記慣性部材の間に配置された減衰部材と、
前記ハブに軸支されたスプリングキャリアとを備え、前記スプリングキャリアは前記ハブに解放可能に作動係合し、
前記ハブに軸支されたプーリを備え、前記プーリは前記クラッチスプリングの端部に対する係合トルクを調整するために調整可能な解放部材を有し、
前記スプリングキャリアと前記プーリの間に作動的に係合するスプリングと、
前記内面に摩擦係合するクラッチスプリングと備え、
摩擦係合が、巻き取り方向における、前記クラッチスプリングへの前記プーリの一時的な押圧接触において、部分的に開放可能である
アイソレーティングプーリ。
【請求項11】
前記スプリングキャリアが、前記ハブから突出する協働部材に係合可能な突出部材を備える請求項10に記載のアイソレーティングプーリ。
【請求項12】
前記ハブから突出する前記協働部材が弾性材料を備える請求項11に記載のアイソレーティングプーリ。
【請求項13】
前記プーリが、前記クラッチスプリングに対する係合トルクを調整するために調整可能な解放部材を備える請求項12に記載のアイソレーティングプーリ。
【請求項14】
前記スプリングが巻き戻し方向に駆動される請求項13に記載のアイソレーティングプーリ。
【請求項15】
前記ハブが歯面を備える請求項14に記載のアイソレーティングプーリ。
【請求項16】
前記プーリがマルチリブド面を備える請求項15に記載のアイソレーティングプーリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアイソレーティングプーリに関し、特に、プーリがクラッチスプリングに押圧接触するときに、慣性キャリアの内面に解放可能に係合するクラッチスプリングを有するアイソレーティングプーリに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車に利用されるディーゼルエンジンは、良好な燃費という利点により増加している。さらに、ガソリンエンジンは燃焼効率を改善するために圧縮比を増加させている。結果として、ディーゼルおよびガソリンエンジンのアクセサリドライブシステムは、前述したエンジンにおける違いにより、クランク軸からの大きい振動に打ち勝たなければならない。
【0003】
増加したクランク軸の高い振動と加減速度、およびオルタネータの大きな慣性により、エンジンアクセサリドライブシステムはしばしば、ベルトのスリップによるベルトの軋み音を経験する。これはまた、ベルトの寿命を縮める。
【0004】
クランク軸のアイソレータ・デカップラとオルタネータのデカップラ・アイソレータは、エンジンの運転範囲における振動を除去し、またベルトの軋み音を制御するために、高い角振動を伴うエンジンに広く使用されてきた。
【0005】
この技術の代表は米国特許出願番号第13/541216号であり、これは、巻き戻し方向においてラップスプリングワンウェイクラッチの端部に一時的に係合可能なプーリを有し、これにより、ラップスプリングワンウェイクラッチとプーリの間の一時的な接触がラップスプリングワンウェイクラッチのシャフトとの摩擦係合を一時的に減少させる、アイソレータ・デカップラを開示する。
【0006】
必要なものは、プーリがクラッチスプリングに押圧接触するときに、慣性キャリアの面に解放可能に係合するクラッチスプリングを有するアイソレーティングプーリである。本発明はこの必要性に合致する。
【発明の概要】
【0007】
本発明の主な特徴は、プーリがクラッチスプリングに押圧接触するときに、慣性キャリアの面に解放可能に係合するクラッチスプリングを有するアイソレーティングプーリである。
【0008】
本発明の他の特徴は、本発明の次の記述と添付した図面により説明され、明らかになる。
【0009】
本発明は、慣性キャリアを有するハブを備え、慣性キャリアは内面を有し、ハブに軸支されたスプリングキャリアを備え、スプリングキャリアは慣性キャリアに解放可能に作動係合し、ハブに軸支されたプーリと、スプリングキャリアとプーリの間に作動的に係合するスプリングと、内面に摩擦係合するクラッチスプリングと備え、摩擦係合が、クラッチスプリングへのプーリの一時的な押圧接触において、部分的に開放可能であるアイソレーティングプーリである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
この明細書に組み込まれその一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し、説明とともに本発明の原理を説明するために用いられる。
図1】本発明装置の正面斜視図である。
図2】本装置の断面図である。
図3】本装置の分解図である。
図4a】スプリングキャリアの正面図である。
図4b】スプリングキャリアの背面図である。
図5a】プーリの正面図である。
図5b】プーリの背面図である。
図6】本装置の内部の正面図である。
図7a】慣性質量部材の正面図である。
図7b】慣性質量部材の背面図である。
図8】慣性キャリアの内部の正面図である。
図9a】スプリングの詳細図である。
図9b】スプリングの詳細図である。
図9c】スプリングの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明装置の正面斜視図である。本装置は通常、内燃機関(図示せず)のクランク軸に取付けられる。
【0012】
図2は本装置の断面図である。本発明装置はハブ1を備える。ハブ1はさらに、歯面を有するクランク軸スプロケット110を備える。クランク軸スプロケット110はエンジンのタイミングベルト900を駆動するために使用される。タイミングベルト900は歯付きあるいは同期ベルトと呼ばれる。
【0013】
スラスト軸受2はハブ1の肩部60に係合する。プーリ3はブッシュ11においてハブ1に軸支される。プーリ3はマルチリブドベルト800に係合するための輪郭形状300を有する。マルチリブドベルトはエンジンアクセサリシステム(図示せず)を駆動するために使用されてもよい。スプリング4はプーリ3とスプリングキャリア14の間に係合する。クラッチスプリング5はスプリングキャリア14と慣性キャリア16の間に係合する。スプリングキャリア14はスラスト軸受6に当接する。スプリングキャリア14はブッシュ7においてハブ1に軸支される。慣性質量部材17は、ゴム部材8によって慣性キャリア16に取付けられる。ゴム部材8は、エンジンの作動によって生じる軸方向または捻り振動を減衰させるのに適した天然ゴム、合成ゴム、あるいは高分子弾性材料である。固定具9は慣性キャリア16をハブ1に取付ける。
【0014】
図3は本装置の分解図である。ハブ1はエンジンのクランク軸(図示せず)に固定的に取付けられる。ダウエルピン10はハブ1に固定的に取付けられる。スラスト軸受2はプーリ3とハブ1の間に配置される。ブッシュ11はプーリ3に固定される。
【0015】
図4aはスプリングキャリアの正面図である。図4bはスプリングキャリアの背面図である。スプリングキャリア14はスプリング受容部140を備える。スプリング端部45はスロット141に受容される。スプリング面46はスプリング受容部140に係合する。スプリング面46はスプリング支持部140に干渉する。
【0016】
クラッチスプリング5はスロット142に係合する。クラッチスプリング5の端部56はスロット141に係合し、これによりクラッチスプリング5が保持される。
【0017】
プーリ3はスプリング受容部30を備える。図5a参照。図5aはプーリの正面図である。図5bはプーリの背面図である。スロット31はスプリング4の端部40を受容する。スプリング面41はスプリング受容部30に干渉する。
【0018】
図6は本装置の内部の正面図である。リリース13はプーリ3のスロット32に係合し、固定具12によって所定位置に固定される。リリーストルクを調整するために、リリース部材13の位置がスロット32内において調整可能である。スロット32は、回転軸A−Aを中心とする一定半径の円弧形状である。
【0019】
バンパー15は、連結部材153によって結合された細長部151と細長部152を備える。バンパー19は、連結部材193によって結合された細長部191と細長部192を備える。
【0020】
図7aは慣性質量部材の正面図である。図7bは慣性質量部材の背面図である。バンパー15の連結部材153は、スロット167内であってタブ161の周囲に入れ子状に入る。細長部材151と細長部材152はタブ161の反対側の側面に配置される。バンパー19の連結部材193は、スロット166内であってタブ160の周囲に入れ子状に入る。細長部材191と細長部材192はタブ190の反対側の側面に配置される。バンパー15とバンパー19は、タブ33、34との係合力を吸収するために、適当な弾性、柔軟あるいは圧縮性材料である。タブ33、34は突出部材である。
【0021】
図8は慣性キャリアの内部の正面図である。慣性キャリア16はタブ160とタブ161を有する。タブ160とタブ161はそれぞれスロット166とスロット167を形成される。タブ160は面162と面163を備える。タブ161は面164と面165を備える。スプリングキャリアのタブ33、34はバンパー15、19に係合する。
【0022】
図9aはスプリングの詳細図である。スプリング4は第1端部にタブ45を、また第2端部にタブ40を備える。平面46はスプリングコイルの多くの部分がスプリングキャリアに着座することを許容し、これにより捻れを回避する。平面41はスプリングコイルの多くの部分がプーリに着座することを許容し、これにより捻れを回避する。平面41、46のそれぞれにより、スプリング4の各端部はテーパー形状を有する。
【0023】
図9bはスプリングの詳細図である。図9cはスプリングの詳細図である。スプリング4はコイルスプリングである。スプリング4は、巻き取り方向あるいは巻き戻し方向のいずれかに負荷をかけられてもよい。捻りスプリング係数は約2Nm/度から約5Nm/度の範囲内にある。
【0024】
通常の動作においてエンジンは、プーリからアクセサリドライブベルトおよびシステムへのトルク伝達によって、アクセサリドライブシステムを駆動する。このシステムは、オルタネータ、ウォーターポンプ、ACコンプレッサーまたはパワーステアリングとを備える。通常の動作の間、オーバオランとして知られている作動状態も発生する。オーバーランは、停止信号に近づいて減速する等のように、相対的に高い回転数からエンジンが減速するときに発生する。エンジンスピードは減速するが、アクセサリは少しの間、それに組合わされた装置の慣性力により、相対的に高い回転スピードにおける動作を継続する。オーバーラン状態はアクセサリベルトに、クランク軸における負荷を反転させて、クランク軸を一時的に駆動する。
【0025】
駆動動作において、本発明装置におけるトルク伝達は、ハブ1から慣性キャリア16へ、タブ160および161へ、バンパー15および19へ、そしてスプリング4を介してスプリングキャリア14へ、プーリ3へ、そしてベルトへ行われ、アクセサリ(図示せず)を駆動する。スプリング4は通常、巻き戻し方向に駆動されるが、同等な作用を伴って巻き取り方向に駆動されてもよい。タブ160および161はバンパー15および19に力をかけ、ひいてはタブ33および34を介してスプリングキャリア14に力をかける。タブ33、34はスプリングキャリア14から突出する。スプリングキャリア14は、スロット141に係合するタブ45を介してスプリング4に力をかける。スプリング4はタブ40のスロット31との係合によりプーリ3に力をかける。
【0026】
オーバーラン状態において、トルク伝達は逆転する。トルク伝達はプーリ3からスプリング4へ、スプリングキャリア14へ、クラッチスプリング5へ、慣性キャリア16へ、ハブ1へ行われる。
【0027】
オーバーラン状態において本装置は、プーリ3にかかるオーバーラントルクを、所定のリリース値、例えば15Nmを越えないレベルに制限する。プーリ3はスプリング4へトルクをかける。スプリング4はスプリングキャリア14へトルクをかけ、これはクラッチスプリング5へ力をかけ、ひいては慣性キャリア16へ力をかける。プーリ3の逆回転はリリース部材13を、クラッチスプリングのタブ55に向かって、接触するまで回転させる。そしてオーバーランの保護が、慣性キャリア16の内面168からクラッチスプリング5の係合を解放することによって達成される。内面168は円筒形状を有し、回転軸に向かって径方向の内側を向いている。
【0028】
クラッチスプリング5は、クラッチスプリングのタブ55によるリリース13の圧接によって、面168から解放される。これは、クラッチスプリング5が巻き取り方向に巻き取られて、クラッチスプリング5を径方向に収縮させ、ひいてはクラッチスプリング5を慣性キャリア16の面168から解放させるからである。この解放により、プーリ3、スプリング4、スプリングキャリア14およびクラッチスプリング5は、慣性キャリア16に対して同調して回転する。これは、ひいてはスプリングキャリアのタブ33および34のバンパー15およびバンパー19に対する接触を失う。しかし、クラッチスプリング5は慣性キャリア16から完全には解放されない。摩擦抵抗があるために、クラッチスプリング5を介して慣性キャリア16にかかるオーバーランあるいはリリーストルクが継続する。このトルクが所定のリリーストルクよりも小さくなると、スプリング5は面168をロックし、相対回転移動は停止する。
【0029】
リリース部材13の位置はスロット32内で調整可能である。リリース部材13の位置は、リリース部材13が端部55に係合するトルクを決定する。調整は、クラッチスプリング5の解放が生じるときのトルクの閾値を高めるか低めるために利用される。
【0030】
オーバートルクが継続すると、プーリ3とスプリング4とスプリングキャリア14とクラッチスプリング5が慣性キャリア16に対して回転する。相対運動は、駆動位置から約180°回転した後、スプリングキャリアのタブ33およびタブ34がバンパー15、19の反対側面に接触するまで継続する。タブ33、34とバンパー15、19の接触は本発明装置のオーバーラン回転の量を制限する。
【0031】
エンジンがアクセサリを駆動する通常の動作に復帰すると、慣性キャリア16は、スプリングキャリアのタブ33およびタブ34がバンパー15、19に再び接触するまで、プーリ3、スプリング4、スプリングキャリア14およびクラッチスプリング5に対して回転する。これはオーバーラン位置から約180°回転することを意味する。
【0032】
本装置の利点は、ノイズや振動のようなシステムの問題が著しく低減するような、エンジンの減速によるクランク軸プーリにおける全ての被駆動要素の有効慣性トルクの制御である。さらに、動的なベルトの滑り、スパン振動、およびテンショナアームの振動が減少あるいは除去される。さらに、制御されたオーバーランは、ベルトドライブシステムの初期の刺激である、クランク軸の回転振動あるいはスピード変動を減少させる。
【0033】
数値的な情報は例として挙げられており、本発明の範囲を制限することを意図していない。
【0034】
本発明の1つの形態が説明されたが、当業者がここに記載された発明の精神と範囲から逸脱することなく、構成と部分の関係と方法において変形を施すことは自明である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
【国際調査報告】