特表2017-528110(P2017-528110A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-528110(P2017-528110A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(54)【発明の名称】交流電流の生成方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/493 20070101AFI20170825BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20170825BHJP
【FI】
   H02M7/493
   H02M7/48 R
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-515695(P2017-515695)
(86)(22)【出願日】2015年9月9日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月10日
(86)【国際出願番号】EP2015070536
(87)【国際公開番号】WO2016045963
(87)【国際公開日】20160331
(31)【優先権主張番号】102014219052.5
(32)【優先日】2014年9月22日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】ゲンジオール、アルプレヒト
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA05
5H770BA11
5H770CA04
5H770CA08
5H770CA10
5H770DA03
5H770DA22
5H770DA27
5H770DA30
5H770HA02Y
5H770HA02Z
5H770JA17Y
(57)【要約】
【課題】給電網に供給される複数の部分電流の総和としての全体電流の波形の理想的な正弦曲線からの過大なずれを可及的に単純かつ効率的な態様で阻止すること。
【解決手段】交流電流(i)を生成する方法であって、以下の工程:複数の部分電流(i、i、i)を生成すること、及び、前記複数の部分電流(i、i、i)を重ね合わせて全体電流(i)を生成することを含み、前記複数の部分電流(i、i、i)は、夫々、変調方法を用いて生成され、前記変調方法は、複数の許容限界(T、T)を有する許容バンド法を使用し、及び、前記複数の許容限界(T、T)は可変である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電流(i)を生成する方法であって、以下の工程:
・複数の部分電流(i、i、i)を生成すること、及び、
・前記複数の部分電流(i、i、i)を重ね合わせて全体電流(i)を生成すること
を含み、
前記複数の部分電流(i、i、i)は、夫々、変調方法を用いて生成され、
前記変調方法は、複数の許容限界(T、T)を有する許容バンド法を使用し、及び、
前記複数の許容限界(T、T)は可変である、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記複数の許容限界(T、T)は、生成された全体電流(i)に依存して変化される、
方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記変調方法の各々の許容限界(T、T)は、上側及び下側許容限界(T、T)を有する許容バンドを形成し、該上側及び下側許容限界(T、T)は、互いに対し独立に変化され、又は、許容バンドは、上側及び下側許容限界(T、T)の間の一定の距離を維持しつつ、シフトされる、
方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の方法において、
前記複数の部分電流(i、i、i)の変調方法の許容限界(T、T)は、全体電流(i)が予め設定される許容限界(TG1、TG2)内にあるように、その都度選択される、
方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の方法において、
前記許容限界(T、T)の調整のために、前記複数の部分電流(i、i、i)と前記全体電流(i)が測定される、
方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の方法において、
前記複数の部分電流(i、i、i)と前記全体電流(i)は、該全体電流(i)が予め設定される許容限界(TG1、TG2)内にあるよう、順守されるべき(許容)限界が予め設定される共通の座標系に変換される、
方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
前記共通の座標系は、回転座標系である、
方法。
【請求項8】
給電網(22)に電流を供給する供給装置(1、41)であって、
該供給装置は、
・夫々1つの部分電流出力端(10)を有し、部分電流出力端(10)において部分電流(i、i、i)を夫々生成する複数のインバータ(2)、及び、
・複数の部分電流(i、i、i)を総和して全体電流(i)を生成する総和電流出力端(16)、但し、前記複数の部分電流出力端(10)は総和ノード(14)において該総和電流出力端(16)に接続されている、
を含み、
請求項1〜7の何れかに記載の電流生成方法が使用される、
供給装置。
【請求項9】
請求項8に記載の供給装置において、
前記複数のインバータ(2)は、並列接続されており、それらの部分電流出力端(10)に夫々1つのラインリアクトル(12)を有する、
供給装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の供給装置において、
前記夫々1つのラインリアクトル(12)をそれらの電流出力端(10)に有する複数のインバータ(2)は、追加的な出力端フィルタなしで作動し及び/又は前記総和電流出力端(16)に追加的なラインリアクトル(18)を備えずに作動する、
供給装置。
【請求項11】
請求項8〜10の何れかに記載の供給装置において、
許容限界(T、T)を設定するために、各部分電流出力端(10)に夫々の部分電流(i、i、i)を測定するための測定手段を有し、前記総和電流出力端(16)に全体電流(i)を測定するための測定手段を有する、
供給装置。
【請求項12】
請求項8〜11の何れかに記載の供給装置において、
前記複数のインバータ(2)又はそのうちの幾つかは、入力側において及び/又は出力側において、ガルバニックに分離されている、
供給装置。
【請求項13】
電流を生成しかつ給電網(22)に電流を供給する風力発電装置(100)であって、
請求項8〜12の何れかに記載の供給装置(1、41)を有する、
風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電網に供給するための交流電流を生成する方法に関する。更に、本発明は、相応の供給装置に関する。更に、本発明は、そのような供給装置を有する風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のインバータが夫々部分電流を生成し、これらの部分電流が重ね合わされて全体電流が生成され、この重ね合わせにより生じた全体電流が給電網に供給されるようにして、給電網に供給するための交流電流を生成することが、とりわけ風力発電装置について知られている。
【0003】
そのような部分電流は、パルス幅変調と称されることもある変調方法によって生成される。そのような交流電流を生成するための基本的方法の1つは、いわゆる三角変調(Dreiecksmodulation)である。この場合、少々単純化して言えば、所望の正弦曲線に鋸歯信号が重ね合わされ、そして、鋸歯信号と所望の正弦曲線の各交点において、相応の半導体スイッチを開閉して、電圧パルスをトリガ又は終了させる。そのような方法(これは本発明の対象ではない)は、単に、(単純)制御(Steuerung)と称することも可能である。なぜなら、予め設定される正弦信号も重ね合わせられる鋸歯(信号)も生成される結果に基づかない(影響を受けない)からである。
【0004】
他の方法の1つは、許容バンド法(Toleranzbandverfahren)である。この方法では、所望の電流に相当する正弦関数の周りに、許容バンド即ち下側偏位限界及び上側偏位限界が設けられる。生成された出力端電流は、検出され、この許容バンドと比較される。電流が下側許容バンド限界に達すると、スイッチングパルスがトリガされ、検出された電流が上側許容バンド限界に達すると、このパルスは終了される。最終的に、電流はこの許容バンド内において予め設定される理想化された正弦曲線の周りで変動する。
【0005】
生成される電流の質の改善は、とりわけ許容バンドの狭小化(狭幅化)によって行うことができる。即ち、このバンドがより狭くされると、理想的な正弦曲線の周りでの電流の変動はそれに応じてより小さくなるが、これにより、通常、スイッチング周波数が大きくなる。なぜなら、生成電流は、より狭い限界(複数)のために、これらの限界により迅速に到達し、そのため、より迅速にスイッチング操作を引き起こすからである。
【0006】
その限りにおいて、この方法は、よく知られており、個々の部分電流に対しても利用可能であり、これらの部分電流は重ね合わされて全体電流を生成する。そして、そのように生成されたこの全体電流は、給電網に供給可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE4023207C1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
要するにこれらの部分電流の総和であるこの重ね合わせによって、基本的に、これらの電流は各時点において互いに加算される。即ち、これらの電流の瞬時値が夫々の時点において互いに加算される。かくして、重ね合わせにより生成された全体電流においてある程度の平滑化も起こり得る。これは、多数の個々の部分電流の理想的な正弦(曲線)からのその都度の正及び負の偏差が完全に又は部分的に強調されることによって行うことができる。これは、とりわけこれらの個々の正及び負の偏差が統計的に均等に分布している場合に妥当する。しかしながら、個々の部分電流の多数の正の又は多数の負の偏差が集まり、それに応じて格別に大きな全体偏差が生成されることも起こり得る。
【0009】
これを阻止するために、部分電流(複数)の各々のその都度の正の偏差の理論的な和も全体電流のための所望の最大値を上回らないように、個々の許容バンド(複数)を夫々狭くすることも可能である。
【0010】
しかしながら、これは、格別に狭い許容バンド(複数)が予め設定されること、これにより、格別に大きな周波数が生成されることを意味するであろう。夫々が部分電流を生成するインバータを10個使用する場合にこの方法でそのような信頼性のある限界設定(Begrenzung)を行おうとすれば、各許容バンドは、全体電流の許容可能な最大偏差に相当する幅の10分の1に設定する必要があるであろう。その結果、電流(複数)の変調の際、10倍のスイッチング周波数が生成し得るであろう。そのため、生成される全体電流が過大な値をとらないことをこの方法で保証するための手間ないしコストは莫大なものとなる。
【0011】
ドイツ特許商標庁は、本出願の優先権主張の基礎出願において以下の関連技術を調査した:DE4023207C1及びM.Lopez等“Control design for parallel-connected DC-AC inverters using sliding mode control”のパワーエレクトロニクス及び可変速ドライブ(Power Electronics and Variable Speed Drives)からの抜粋。
【0012】
それゆえ、本発明の課題は、上述の問題の少なくとも1つに取り組むことである。とりわけ、全体出力端電流が予め設定される正弦曲線からの過大な偏差を取ることを可及的に単純かつ効率的な態様で阻止する方策の提案が企図されている。少なくとも、既知の方策に対して、代替的な方策の提案が企図されている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に応じ、請求項1に記載の交流電流の生成方法が提案される。この方法は、複数の部分電流を生成するステップ及び部分電流を重ね合わせて全体電流を生成するステップを含む。各部分電流は、許容限界(複数)を有する許容バンド法を使用する変調方法を使用して生成される。更に、許容限界(複数)が可変であることが提案される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
かくして、まず、標準的な(基準的な)幅の許容バンド(複数)を使用することができる。そして例えば、全体電流が所望の最適な正弦曲線を上方で上回ると、これに対し、部分電流(複数)の1つ、複数又はすべてのための許容限界(複数)を例えば下降させる(下方にシフトする)ことによって、対抗作用する(その影響を打ち消す、抑制ないし阻止する)ことができる。この下降は様々な態様で行うことができる。この場合、不可避的により大きな周波数が発生することがないよう、下側限界も一緒に下降させてもよい。
【0015】
かくして、これらの許容限界は、生成される全体電流に依存して変化されると有利である。従って、制御の観点からいえば、間接的なフィードバックを達成することができるのであり、個別(部分)電流が夫々直接的にフィードバック制御される(geregelt)のではない。寧ろ、全体電流のこのフィードバックは、許容限界の変化を介して入力される。一実施形態に応じ、変調方法(複数)の各々の許容限界(複数)は、上側及び下側許容限界を有する(1つの)許容バンドを形成し、上側及び下側許容限界が互いに独立に変化されるか、或いは、許容バンドが下側許容限界と上側許容限界の間の一定の距離を維持したままシフトされることが提案される。
【0016】
各変調方法の、即ち部分電流(複数)の1つをその都度生成するための、許容バンドは、(1つの)上側許容限界及び(1つの)下側許容限界を有し、更に、上側及び下側許容限界が互いに独立に変化されることが提案される。例えば、上側許容限界が必要に応じて下降されるが、下側許容限界は変化されないことが可能であり、その反対も可能である。代替的に、許容バンドが全体としてシフトされることも提案される。許容バンドのシフトによって、とりわけ、スイッチング周波数を変化することなく、各部分電流の振幅に影響を及ぼす(作用する)ことができる。
【0017】
部分電流(複数)の個々の変調方法の許容限界(複数)は、全体電流が予め設定される許容限界内にあるよう、その都度選択されると、ないし、それによって変化されると有利である。これに応じて、(1つの)許容限界ないし(1つの)許容バンドが全体電流のために予め設定される。この場合、この許容限界の順守は、部分電流(複数)の個々の許容限界を適合化する(調節する)ことによって達成される。従って、全体電流がその許容限界に達したとき、個別電流の各々に対する許容バンド法の場合のように、直接的なスイッチング操作がトリガされるのではなく、個別部分電流の許容限界の変化を介して間接的に制御が行われる。
【0018】
尤も、これらの個々の許容限界の変化は、全体電流がその許容限界にないし許容バンドの2つの許容限界の1つに達することを待つ必要はない。その代わりにないし有利には、全体電流がその許容限界までまだ距離がある(離れている)場合であっても、個々の部分電流の変調方法の許容限界を変化すること、とりわけシフトすることが可能である。追加的に又は代替的に、到達されるべき最適な曲線、とりわけ最適な正弦曲線までの全体電流の距離が評価され、それに依存して部分電流(複数)の個々の変調方法の許容限界を変化することも可能である。従って例えば全体電流がその最適値を越えて増大すると、部分電流(複数)のための変調方法の上側限界を下降することができる。全体電流がその最適値を越えて更に増大すれば、各部分電流の各変調方法の許容限界ないしこの例の場合上側許容限界を更に下降することができる。同様のことは、最適値を下回って減少する場合に対しても相応に実行可能であることは勿論である。
【0019】
有利には、許容限界の設定(形成)のために、部分電流(複数)及び全体電流が測定される。そのため、個々の変調方法の各々が、各部分電流の測定のための入力として、全体電流の測定値を有する。これに関し、全体電流は、複数の、場合によっては極めて多数の変調方法のための測定パラメータとして同時に入力されることも分かる。提案に係る方法によって、例えば全体電流が過大な場合、突然すべての変調方法が応答し、丁度印加されている(anliegend)各パルスが終了するような場合に起こり得る過剰応答の発生可能性も回避することができる。有利には、個々の変調方法の許容限界は、最大で、夫々基礎をなす曲線の最適値まで、即ち、最適な正弦曲線までシフトされる。この基礎をなす最適曲線は、従って、許容バンド上限に対しては最小値を、許容バンド下限に対しては最大値を形成する。かくして、過大に偏位する全体電流に対し迅速に応答することができ、それにも拘らず、個々の部分電流は、その最適値の周りで、即ち、設定されるべき正弦曲線の近くで移動する(変化する)。
【0020】
部分電流(複数)及び全体電流を、全体電流が予め設定される許容限界内にあるよう、順守されるべき許容限界(複数)が予め設定される共通の座標系に変換することが、一実施形態に応じて提案される。有利には、そのような変換は、回転座標系への変換とすることができる。かくして、測定値及び最適値及び限界値は、とりわけ大きさ(ないし振幅:Betrag)及び位相に応じて予め設定することができる。かくて、最適値に対しては、位相のみが変化され、大きさは変化されないであろう。限界値は、回転座標系においては、より簡単に定義可能であろう。しかしながら、測定値は、毎回、換算される必要があるであろう。
【0021】
その限りにおいて、そのような変換には、部分電流(複数)が異なる値で重み付けされることも含まれる。従って、この重み付けは、一種の変換であり、例えば、異なる部分電流のための許容限界は全体電流に依存して異なるように変化されることを意味する。
【0022】
部分電流のそのような重み付けは、とりわけ、個々の部分電流の間に、即ち個々のインバータの間に、過渡電流(補償電流:Ausgleichsstroeme)が生成される場合、有利である。そのような過渡電流は、とりわけ、個々のインバータが更に入力端側において同じ直流電流入力端にガルバニックに(直流的に:galvanisch)接続されている場合、当該個々のインバータ間にも生成し得る。そのような過渡電流は、それらが既知である限り、夫々関連する部分電流には成分として(一緒に)含まれているが、全体電流には(一緒に)流入しない(含まれない)。従って、相応に測定された部分電流は、これは変調方法のためにもフィードバックされるものであるが、実際に全体電流を構成する部分電流には相当しない。これは、重み付けによって許容限界に相応に影響を及ぼす場合に、考慮することができる。従って、この場合、相応の部分電流は最早考慮されず、この重み付けによる変換が考慮される。
【0023】
更に、本発明に応じ、請求項8に記載の、給電網に電流を供給するための供給装置が提案される。そのような供給装置は、夫々1つの部分電流出力端を有する複数のインバータを有し、夫々1つの部分電流が該1つの部分電流出力端に生成され、ないしはそこに提供される。
【0024】
更に、複数の部分電流を加算して全体電流を生成する総和電流出力端が設けられ、複数の部分電流出力端が1つの総和ノードにおいて総和電流出力端に接続されている。更に、上記実施形態の何れかに応じた電流生成方法が提案される。有利には、インバータ(複数)は、並列接続され、それらの部分電流出力端に夫々1つのラインリアクトル(パワー(電源)チョーク:Netzdrossel)を有する。有利には、ラインリアクトルのみが設けられ、追加の出力端フィルタは設けられない。とりわけ、従来一般的なL−C−Lフィルタは使用されず、当該1つのネットワークインダクタ(Netzinduktivitaet)ないしラインリアクトルのみが使用される。従って、この方法の場合、そのようなフィルタは省略することができる。許容バンド(複数)の全体電流に依存する変化によって、そのような従来一般的なL−C−Lフィルタは不要とすることができる。従って、個別(部分)電流(複数)が重ね合わされて平均で可及的に好都合な、とりわけ可及的に最適値に近い波形を描く全体電流を生成するよう、これらの電流を特別に平滑化ないしフィルタリングすることは、省略することができる。
【0025】
有利には、各部分電流出力端と総和ノードの間に、夫々ただ1つのインダクタないしネットワークインダクタ(これはL−フィルタとも称される)が設けられる。通常は、部分電流出力端(複数)も3相的に構成されているが、この場合、インダクタとしては、有利には、3相ラインリアクトル(これらの相は例えば5脚コアを有するインダクタ(Drossel)を使用することにより磁気的に結合されている)が提案される。
【0026】
提案に係る方法は有利な態様で補い合って(加算されて)全体電流を生成する個別(部分)電流(複数)を既に生成しているため、有利には、総和電流出力端に対する追加的なラインリアクトルも省略することができる。
【0027】
更に、各部分電流出力端について許容限界を設定するために、夫々の部分電流を測定するための測定手段を設け、更には、総和電流出力端についても、全体電流を測定するための測定手段を設けることが提案される。後者の場合、測定手段は1つで十分であるが、その測定値は複数のインバータにフィードバックされる。
【0028】
複数の(すべての)インバータ又はそのうちの幾つかが、入力側において及び追加的又は代替的に出力側において、ガルバニックに(直流的に:galvanisch)分離されることが、更なる一実施形態に応じ提案される。入力側の分離は、例えば、入力側の電流バス(バー)ないし直流電流供給線(Gleichstromzufuehrungen)がガルバニックに分離されていることを意味し得る。このために、とりわけ風力発電装置の場合、例えば、直流電流の生成は、既に発電機において、複数の系においてガルバニックに分離されて実行され、相応に分離されて個々のインバータに供給されることができる。
【0029】
出力側では、ガルバニックな分離は、共通の変圧器においても実行可能である。1つの可能性は、変圧器が複数の異なるタップ(Abgriffe)を有することである。この場合、共通の変圧器のガルバニックに分離された部分巻線(複数)が供給される。ガルバニックな総和ノードの代わりに、磁気的な総和が行われる。この場合、変圧器は、総和ノードを構成することができる。そのような分離は、全体的な電流に依存する許容バンド適合化についての提案に係る方法ととりわけ良好に関連することができる。この場合、個別電流はとりわけ好ましく生成され、相応に良好に重ね合わされて全体電流を生成することができる。かくして、過渡電流を回避することができる。
【0030】
更に、本発明に応じ、電流を生成しかつ供給するよう構成されており、そのために上述の実施形態の何れかに応じた供給装置を含む風力発電装置が提案される。従って、風力発電装置は、給電網に供給するための風力発電装置のための全体電流を共同して生成する複数のインバータを有する。
【0031】
以下に、本発明を、例示的に実施例を用いて添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】風力発電装置の一例の斜視図。
図2】全体電流を生成するための複数のインバータの相互接続の一例の模式図。
図3】許容バンド法の一例の説明図。
図4】本発明の一実施例に応じた制御方法の一部分を説明するための構造例の模式図。
【実施例】
【0033】
図1は、タワー102とナセル(ゴンドラ)104を有する風力発電装置100の一例を示す。ナセル104には、3つのロータブレード108とスピナ110を有するロータ106が配設されている。ロータ106は、運転時、風によって回転運動し、これによって、ナセル104内の発電機を駆動する。
【0034】
図2の回路構成は、供給装置1を説明するものであり、更なるインバータを象徴する3つのインバータ2を示す。その限りで、これら3つのインバータ2は、部分電流i、i、iも生成する。インバータ2は、夫々、DC入力端とも称し得る直流電圧入力端4を有する。これらのDC入力端4を介して、インバータ2は、夫々の入力端電力を受け取る。インバータ2のこれらのDC入力端4は、DCバス6を介してカップリング(連結)されている。尤も、これらのDC入力端4は、カップリングされるのではなく、夫々専用のDC源8に接続されることも、一実施例に応じて提案可能である。図2は、これらの2つの可能性を示している。各DC入力端4が専用のDC源8を有することを可能にする複数のDC入力端4の分離は、例えば、1つの発電機が、とりわけ風力発電装置の1つの発電機が、分離された複数のDC源8を提供するようにして、実現することができる。
【0035】
インバータ2は、部分電流出力端10と称される夫々の出力端に、夫々、出力端電流i、i、iを生成する。各インバータの出力端は、更に、出力端インダクタ12を有する。各出力端インダクタの下流側では、各インバータ2が3相電流を生成することが示唆されている。従って、提案に係る方法の場合、各部分電流出力端10にはこの出力端インダクタ12で十分であり得ることも、図2から見出すことができる。更に加えて、従来一般的に使用されるフィルタ、とりわけL−C−Lフィルタは不可欠ではない。出力端部分電流i、i、iは、総和ノード14において重ね合わせられる、即ち加算され、総和電流出力端16に全体電流iとして導かれる。総和電流出力端は、共通のネットワークインダクタ18を有する。尤も、このインダクタ18は省略することも可能である。全体電流iは、次いで、変圧器20を介して、給電網22に供給可能である。
【0036】
更なる機能態様については、電流(複数)を考慮して説明する。この場合、各インバータ2の出力端における部分電流も、総和電流出力端16における全体出力端電流も3相であることに留意すべきである。尤も、更なる説明は、このような3相電流の1つの相のみについても妥当する。即ち、1つの相だけ考察すればよく、残りの相は同様な態様で機能する。
【0037】
部分電流i、i、iの各々に対し電流センサ24が設けられていることが図2から見出すことができる。同様に、全体電流iのための電流センサ26も設けられている。
【0038】
各インバータ2は、その部分電流即ちi、i又はiの測定値を使用し、更に、全体電流iの測定値を使用する。全体電流iは、インバータ2の各々に流れ込む。各インバータは、全体電流iに依存して相応の許容バンドないし許容バンドの相応の許容限界を設定(調整)し、そして、その部分電流に依存して相応の半導体スイッチを制御し、以って、相応の電流を変調する。
【0039】
かくして、電流i、i、iが生成されるが、これらは、その回路の態様に基づきかつ出力端インダクタ12に基づき振動の少ない好都合な状態を既に有し、そして、総和ノード14において重ね合わせられる。その結果として、全体電流iが得られるが、その測定値は、既述の通り、インバータ2の各々にフィードバックされる。
【0040】
図3は、許容バンド法のために、最適な正弦曲線30と、その周りに設けられた上側許容限界Tと下側許容限界Tを有する許容バンドを示す。説明の容易化のために、この許容バンドは極めて幅広に図示されているが、実際には、勿論、その幅は遥かにより狭い。
【0041】
許容限界TとTの間のこの許容バンド内には、ここで例として使用する生成された電流iがある。
【0042】
電流は、正パルスを生成するためのスイッチを閉じることによって生成される。この正パルスが適用されている間、電流は増大し、該電流が上側限界Tに到達すると、相応のスイッチが再び開かれ、該パルスは終了する。そして、電流が減少し、下側限界Tに到達すると、当該スイッチが再び閉じられる。なお、この説明はこのプロセスを単純化し一目瞭然化したものである。
【0043】
図3は、最適な正弦曲線30が中心にある即ち上側限界T及び下側限界Tに対し同じ大きさの距離を有する許容バンドを示す。例えば大きい全体電流を考慮する或いは対抗作用する(抑制する)ために、上側限界Tを下方にシフトして、最適正弦曲線30のより近くに接近させることができる。下側限界Tも、同様に、更に下方にシフトすることができる。或いは、下側限界Tはそのまま維持される。
【0044】
許容バンドのそのようなシフト即ち例示した上側限界Tのシフト後、基本的な許容バンド法は、図3に例示した部分電流iに対し、その他の点では変わることなく、更に続けられる。即ち、該方法は、立ち上りエッジを有する電流が上側限界T(但しこれは図示のものとは異なる位置にあるが)に到達したか否か、或いは立ち下りエッジを有する電流が下側限界Tに到達したか否かを引き続き検査する。
【0045】
上記の方法については、図4に、供給装置41を説明するないし単純化して示す模式的構造で示した。部分電流iの実際の生成は、図では模式的に直流電圧中間回路44を示すインバータ42において行われる。正のノードと負のノードの間に、2つのスイッチS及びSが配されている。これらのスイッチは、部分電流出力端50における部分電流iが出力端インダクタ52にも依存して生成するよう、電圧パルスパターンを生成する。この部分電流iは、複数の他の部分電流i〜iと加算されて全体電流iを生成する。ネットワークインダクタ58は、全体電流iに対して設けることができるが、省略することも可能である。
【0046】
この全体電流iは、全体電流測定器66によって測定され、許容ブロック70に入力される。そして、許容ブロック70は、全体電流に依存してかつ全体電流のための許容限界TG1及びTG2に依存して、図3に示した具体的な許容上限T及び許容下限Tを予設定ないし変化することができる。そして、これらの上側許容限界T及び下側許容限界Tは、制御ユニット72に入力される。制御ユニット72は、更に、実際の部分電流iを受け取り、次いで、図3について説明したように作動する。そして、上側許容限界T及び下側許容限界Tによって与えられている許容バンドにおける部分電流iの位置に依存して、インバータ42に与えられるスイッチ信号Sが生成される。そして、インバータ42は、相応にスイッチS及びSを切り替える。とりわけ、正のパルスに対しては、スイッチSは閉じられかつスイッチSは開かれ、正のパルスの終了ないし負のパルスに対しては、スイッチSは閉じられかつスイッチSは開かれる。
【0047】
そして、部分電流iが生成し、次の計算のためにフィードバックされる。全体電流iのための新たな値も、従って他の部分電流i〜iと一緒に、生成し、全体電流iのこの値は同様に既述の通りフィードバックされる。
【0048】
とりわけ図3及び図4に関連するこの原理的な模式的説明に加えて、順守(Einhaltung)を全体電流iによってより良く検査可能にするために及び/又はそこからのより良い反応、とりわけ上側許容限界T及び下側許容限界Tの変化の導出を可能にするために、許容範囲、とりわけ全体電流iのための確定された許容範囲、即ち図4に示した許容限界TG1及びTG2を適切な座標(系)において変換することも可能である。これに応じて、全体電流のためのこの許容範囲の順守を達成可能にする方法が提案される。
【0049】
かくして、複数のパワーエレクトロニクスシステムが一緒に、即ち直列及び/又は並列接続されて、運転され、(複数の)近似型スライディングモードコントローラ(approximierten Gleitregimereglern)(これは許容バンドコントローラと称されることもあり或いは当該コントローラを含み得る)によって互いに独立に制御される場合が考察される。これらのスライディングモードコントローラは、例えばヒステリシスコントローラとして構成することも可能である。かくして大抵は、各部分システムに対しスライディング関数(Gleitfunktion)の制御偏差が所定の許容バンド(複数)内に維持されることを保証することができる。
【0050】
尤も、個々の部分システムにおいてはスイッチ操作の同期は行われないので、相互接続(連系)されたシステム(複数)の制御偏差が同時に同じ方向にシフトし、その結果、不都合な重ね合わせが引き起こされることがあり得る。この問題に対しては、上述したような方策が提案される。
【0051】
電流又は電圧リップルの重ね合わせに対しても目的を定めて影響を及ぼすために、実用上、大抵は、パルス幅変調又は空間ベクトル変調(Raumzeigermodulation)を使用する方法が使用される。この方法では、スイッチング周波数は、通常、固定されており、相互接続(連系)されたシステム(複数)のスイッチング時点は、電流ないし電圧リップルの所望の重ね合わせを達成するために、目的を定めてずらされる。
【0052】
この方策の欠点は、スライディングモードコントローラに本来的に備わっている利点、従ってとりわけある種の擾乱(干渉ないし障害)が大きく抑制されるという特性を放棄しなければならないことである。
【0053】
かくして、確立された許容範囲の順守が可及的に保証されるように、相互接続されたパワーエレクトロニクスシステムを近似型スライディングモードで駆動することが提案される。許容範囲を適切に選択することによって、上述した意味での高調波の「不都合な重ね合わせ」が回避又は大きく低減することができる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2017年7月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
以下に、本発明を、例示的に実施例を用いて添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明を図示の態様に限定することは意図していない。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
かくして、確立された許容範囲の順守が可及的に保証されるように、相互接続されたパワーエレクトロニクスシステムを近似型スライディングモードで駆動することが提案される。許容範囲を適切に選択することによって、上述した意味での高調波の「不都合な重ね合わせ」が回避又は大きく低減することができる。
以下に、本発明の好ましい実施の形態を付記する。
(形態1)本発明の第1の視点により、交流電流を生成する方法が提供される。該方法は、以下の工程:
・複数の部分電流を生成すること、及び、
・前記複数の部分電流を重ね合わせて全体電流を生成すること
を含み、
前記複数の部分電流は、夫々、変調方法を用いて生成され、
前記変調方法は、複数の許容限界を有する許容バンド法を使用し、及び、
前記複数の許容限界は可変である。
(形態2)上記の方法において、前記複数の許容限界は、生成された全体電流に依存して変化されることが好ましい。
(形態3)上記の方法において、前記変調方法の各々の許容限界は、上側及び下側許容限界を有する許容バンドを形成し、該上側及び下側許容限界は、互いに対し独立に変化され、又は、許容バンドは、上側及び下側許容限界の間の一定の距離を維持しつつ、シフトされることが好ましい。
(形態4)上記の方法において、前記複数の部分電流の変調方法の許容限界は、全体電流が予め設定される許容限界内にあるように、その都度選択されることが好ましい。
(形態5)上記の方法において、前記許容限界の調整のために、前記複数の部分電流と前記全体電流が測定されることが好ましい。
(形態6)上記の方法において、前記複数の部分電流と前記全体電流は、該全体電流が予め設定される許容限界内にあるよう、順守されるべき(許容)限界が予め設定される共通の座標系に変換されることが好ましい。
(形態7)上記の方法において、前記共通の座標系は、回転座標系であることが好ましい。
(形態8)本発明の第2の視点により、給電網に電流を供給する供給装置が提供される。該供給装置は、
・夫々1つの部分電流出力端を有し、部分電流出力端において部分電流を夫々生成する複数のインバータ、及び、
・複数の部分電流を総和して全体電流を生成する総和電流出力端、但し、前記複数の部分電流出力端は総和ノードにおいて該総和電流出力端に接続されている、
を含み、
上記形態1〜7の何れかの電流生成方法が使用される。
(形態9)上記の供給装置において、前記複数のインバータは、並列接続されており、それらの部分電流出力端に夫々1つのラインリアクトルを有することが好ましい。
(形態10)上記の供給装置において、前記夫々1つのラインリアクトルをそれらの電流出力端に有する複数のインバータは、追加的な出力端フィルタなしで作動し及び/又は前記総和電流出力端に追加的なラインリアクトルを備えずに作動することが好ましい。
(形態11)上記の供給装置において、許容限界を設定するために、各部分電流出力端に夫々の部分電流を測定するための測定手段を有し、前記総和電流出力端に全体電流を測定するための測定手段を有することが好ましい。
(形態12)上記の供給装置において、前記複数のインバータ又はそのうちの幾つかは、入力側において及び/又は出力側において、ガルバニックに分離されていることが好ましい。
(形態13)電流を生成しかつ給電網に電流を供給する風力発電装置であって、上記形態8〜12の何れかの供給装置を有する風力発電装置も有利に提供される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正の内容】
図4
【国際調査報告】