(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-528331(P2017-528331A)
(43)【公表日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】ガススプリングを有する打込装置
(51)【国際特許分類】
B25C 1/06 20060101AFI20170901BHJP
B25C 1/04 20060101ALI20170901BHJP
【FI】
B25C1/06
B25C1/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-516482(P2017-516482)
(86)(22)【出願日】2015年9月22日
(85)【翻訳文提出日】2017年4月27日
(86)【国際出願番号】EP2015071693
(87)【国際公開番号】WO2016046188
(87)【国際公開日】20160331
(31)【優先権主張番号】14186424.9
(32)【優先日】2014年9月25日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ,イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】グラツィオリ, マリオ
(72)【発明者】
【氏名】フランツ, カール
【テーマコード(参考)】
3C068
【Fターム(参考)】
3C068AA01
3C068BB01
3C068CC02
3C068CC07
3C068DD01
(57)【要約】
本発明は、打込装置に関し、当該打込装置は、1つの回転モータ(14)、具体的には電動モータと、弾性的に圧縮可能なガス量を有する1つのガススプリング(11)と、1つのピストン軸(8)と、を備え、当該ガススプリング(11)には、1つの張力機構(15,16)を介してモータ(14)によって張力を付与することができ、この張力を付与された状態から解放されて当該ピストン軸(8)を打込方向に加速することができ、当該ガススプリング(11)は、気密に実装された1つのピストン冠(10)を備え、当該ピストン冠には打込方向に当該ピストン軸(8)が分離された部品として接続されており、当該ピストン軸(8)が複数の平面に渡って旋回可能なスラスト軸受(9)を介して前記ピストン冠(10)と結合されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打込装置であって、
1つの回転モータ(14)、具体的には電動モータと、
弾性的に圧縮可能なガス量を有する1つのガススプリング(11)と、
1つのピストン軸(8)と、
を備え、
前記ガススプリング(11)には、1つの張力機構(15,16)を介して前記モータ(14)によって張力を付与することができ、この張力を付与された状態から解放されて前記ピストン軸(8)を打込方向に加速することができ、
前記ガススプリング(11)は、気密に実装された1つのピストン冠(10)を備え、当該ピストン冠には打込方向に前記ピストン軸(8)が分離された部品として接続されており、
前記ピストン軸(8)が複数の平面に渡って旋回可能なスラスト軸受(9)を介して前記ピストン冠(10)と結合されていることを特徴とする打込装置。
【請求項2】
前記スラスト軸受(9)は、前記ピストン冠(10)の1つの中心軸(Z)に対しそれぞれ回転対称な一対の押圧面(9a,9b)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の打込装置。
【請求項3】
前記押圧面(9a,9b)は、当該押圧面が設定されている領域においては、互いに異なる曲率半径を備えることを特徴とする、請求項2に記載の打込装置。
【請求項4】
前記押圧面(9a,9b)は、当該押圧面が設定されている領域において、同じ曲率半径を備えることを特徴とする、請求項2に記載の打込装置。
【請求項5】
前記押圧面(9a,9b)の内の少なくとも1つは、ピストン冠(10)またはピストン軸(8)の内の1つに固定された1つのパッド部品に形成されていることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の打込装置。
【請求項6】
前記ピストン軸(8)は、1つの金属、具体的には鋼鉄から成っていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の打込装置。
【請求項7】
前記ピストン冠(10)に、径方向内側に向かって、
特に曲面状の縁部(17)が形成されており、当該縁部を用いて前記ピストン軸(8)は、前記ピストン冠(10)によって径方向にガイドされることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の打込装置。
【請求項8】
前記ピストン軸(8)は、打込方向において、前記ピストン冠(10)と結合されていないことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の打込装置。
【請求項9】
前記ピストン軸(8)には、単一の材質でないパターン構造部(15)が固定されており、当該パターン構造部を用いて前記ピストン軸(8)は前記電動モータ(14)とカップリング可能となっていることを特徴とする、請求項1の上位概念部に記載の打込装置。
【請求項10】
前記パターン構造部(15)は、前記ピストン軸(8)に合わせたモールド部品として成形されていることを特徴とする、請求項9に記載の打込装置。
【請求項11】
前記ピストン軸(8)は、1つのボールヘッド(19)を前記スラスト軸受(9)の一部として備えることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の打込装置。
【請求項12】
前記ピストン軸(8)は、弾力性のあるスナップ結合部(21,22)を介して前記ピストン冠(10)と結合されていることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の打込装置。
【請求項13】
前記ピストン軸(8)は、1つの曲げ弾性のプラスチック(23)を介して前記ピストン冠(10)と結合されていることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の打込装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1つの打込装置に関し、具体的には請求項1の上位概念部に記載の1つの携帯型打込装置である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、1つの加工部材に釘を打ち込むための打込装置を記載しており、この打込装置では、1つの打込ピストンを打ち込むために、1つのガススプリングが1つの電動モータによって予圧される。このガススプリングのピストン部は、蝶番関節を介して、ほぼ直線形状の1つのピストン軸と結合されており、こうしてピストン部とピストン軸との間の角度バランシングは、1つの面内でのみ行われ得る。さらにこの蝶番関節の、蝶番軸の領域における負荷は、伝達可能な力の制限およびこれによる打込エネルギーの制限を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際出願公開第2009/046076A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、大きな打込エネルギーを可能とする打込装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、最初に述べた請求項1に示す特徴を有する本発明による打込装置により解決される。複数の平面で旋回可能なスラスト軸受を設けることにより、上記のピストン軸は、ピストン冠に対して理想的にずれることができ、こうして可能な限り小さなモーメントがこのピストン冠に作用する。
【0006】
これは最適かつ長寿命のピストン冠のシーリングを可能とし、こうして特に、高い予圧あるいは持続的な大きな圧力印加でガススプリングを用いることができる。
【0007】
このピストン冠は、通常は1つのシリンダ内でガイドされている。上記のピストン軸は、通常通りこのピストン冠より大幅に小さな直径を有する。このピストン軸は、本発明の目的のため、直接打込ピストンとして機能し、ここでこのピストン軸の釘側の端部は、これに対応して形成されている。しかしながら、要求仕様によっては、この打込ピストンは、このピストン軸に対して分離された可動な部品として、または分離されているがこのピストン軸としっかり結合している部品として形成されていてよい。
【0008】
上記のスラスト軸受は、本発明においては、打込方向に作用する力を受け、そしてこの力を上記のピストン軸に伝達する。他の方向に向いた力は、必ずしもこのスラスト軸受によって伝達可能でなくともよい。
【0009】
大きな力を理想的に伝達するために、上記のスラスト軸受は、好ましくはそれぞれ上記のピストン冠の中心軸の周りで回転対称な1対の押圧面を備える。この際1つの押圧面は、好適にはこのピストン冠に形成されており、そしてもう1つの押圧面は、上記のピストン軸に形成されている。
【0010】
1つの第1の可能な実施形態では、ここで上記の押圧面(複数)は、それらの配置領域において互いに異なる曲率半径を備える。これによって斜め状態のバランシングのための上記のスラスト軸受の旋回が、とりわけ滑らかに行われる。好ましくは上記の押圧面(複数)の内の1つ、具体的には上記のピストン軸の押圧面は、凸状に形成されている。もう1つの押圧面は、これに対応してより大きな曲率半径を有する凹状、または平面に形成されていてよい。
【0011】
1つの代替の実施形態においては、上記の押圧面(複数)は、それらが設定されている領域において、同じ曲率半径を備える。これはたとえば上記のスラスト軸受の形成の際に球関節として用いることができる。このような構成では、上記の押圧面(複数)のとりわけ大きな接触はこれに対応した良好な力伝達をもたらす。このような構成は、平坦な押圧面を備えてもよく、この際にはこれに対応した、斜め状態のバランシングは、これに適合して選択されたピストン冠および/またはピストン軸の材料の弾性変形によって達成される。
【0012】
1つのとりわけ好ましい実施形態では、上記の押圧面(複数)の内の少なくとも1つは、ピストン冠またはピストン軸の内の1つに固定された1つのパッド部品に形成されている。こうしてこのパッド部品は、たとえば1つのとりわけ硬い材料、たとえば鋼鉄から成っていてよく、これに作用する力は、比較的小さな面接触により伝達することができる。他の部品、具体的には上記のピストン冠は、プラスチックまたはアルミニウム等の柔らかい材料から成っていてよい。一般的に有利には上記のピストン冠は、3.5g/cm
3より小さな密度を有する材料から成っていてよく、上記のピストン軸は、3.5g/cm
3より大きな密度を有する材料から成っていてよい。
【0013】
1つの一般的に有利な実施形態においては、上記のピストン軸は、1つの金属、具体的には鋼鉄から成っている。これは大きな力積を受容し、かつ大きなエネルギーを釘先端に伝達することを可能とする。上記のピストン冠は、プラスチックまたは軽金属等の柔らかい材料から成っていてよい。
【0014】
1つの好ましい詳細構成では、上記のピストン冠に、径方向内側に向かって、特に曲面状の縁部が形成されており、この縁部を用いて上記のピストン軸は上記のピストン冠によって径方向にガイドされる。このようなピストン軸のガイド部は、長寿命であり、そして上記のスラスト軸受と容易に協働する。ここには挿入ガイド斜面(Einlaufschraege)が設けられていてよく、この挿入ガイド斜面を用いて上記のピストン軸は、上記のピストン冠の軸に中心合わせされる。
【0015】
基本的には、上記のピストン軸は、打込方向においては上記のピストン冠と結合されていないと想定され得る。これは上記のピストン軸の打込方向における自在な前進あるいは後退を可能とし、これによってこのピストン冠は、たとえば空撃ちの場合にとりわけ保護される。
【0016】
通常好ましい打込装置では、上記のピストン軸には単一の材質でないパターン構造部が固定されており、これを用いてこのピストン軸は電動モータとカップリング可能となっている。このパターン構造部を分離して形成することで、たとえばピストン軸を回転対称に容易に形成することを可能とし、これはピストン軸の材料が高密度かつ高硬度である場合に利点をもたらす。とりわけ好ましくはこのパターン構造部は、ここでは、このピストン軸に合わせたモールド部品として成形されている。たとえばこのピストン軸は、鋼鉄または他の高強度の金属から成っていてよく、ここで上記のパターン構造部はプラスチックモールド部品としてまたは軽金属モールド部品としてこのピストン軸に合わせてモールドされている。
【0017】
本発明の1つの好ましい実施形態では、上記のピストン軸は、1つのボールヘッドを上記のスラスト軸受の一部として備える。これはとりわけ大きな動力伝達を可能とする。
【0018】
もう1つの好ましい実施形態においては、上記のピストン軸は、弾力性のあるスナップ結合部を介して上記のピストン冠と結合されている。これはこのスナップ結合部の弾力性のおかげで、上記のピストン軸の小さな角度の旋回を可能とする。
【0019】
もう1つの好ましい実施形態では、上記のピストン軸は、1つの曲げ弾性のプラスチックを介して上記のピストン冠と結合されている。上記のピストン軸の上記のピストン冠との持続的な形状嵌め結合を実現するために、このようなプラスチックが、たとえば射出成型されていてよい。このプラスチックの弾力性は、複数の平面におけるこのピストン軸の充分な旋回を可能とする。このプラスチックは、好ましくは適合した最適の硬さの熱可塑性のエラストマ(TPE)であってよい。
【0020】
概して本発明による打込装置は好ましくは大きな打込エネルギ用に構成されている。ここでこの打込エネルギの値は、30ジュールより大きく、好ましくは40ジュールより大きくてよい。
【0021】
本発明のさらなる利点および特徴は、以下に記載する実施形態例ならびにこれらに関連する請求項で明らかになる。
【0022】
以下に、本発明の複数の実施形態例が記載され、これに付随する図を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明による1つの打込装置の概略全体図を示す。
【
図2】本発明の1つの第1の実施形態例による、1つのピストン冠および1つのピストン軸の断面図を示す。
【
図3】
図2に示す実施形態例の1つの好ましい変形例を示す。
【
図4】本発明のもう1つの実施形態例の1つのピストン軸の概略上面図および線A−Aに沿った概略断面図を示す。
【
図5】
図4に示すピストン軸の1つの好ましい変形例を示す。
【
図6】スラスト軸受として1つのボールヘッドを有する、本発明のもう1つの実施形態例を示す。
【
図7】クリップとして形成された、ピストン軸の1つの収容部を有する、本発明のもう1つの実施形態例を示す。
【
図8】弾力性のある射出成型部として形成された、ピストン軸の1つの収容部を有する、本発明のもう1つの実施形態例を示す。
【0024】
図1に示す本発明による打込装置は、1つの携帯型ハウジング1内に収容されている。このハウジング1は、打込動作を始動するための1つのトリガスイッチ1bを備える1つの把持部1aを有する。ハウジング1内には、電気エネルギを貯蔵するための1つの蓄電池2、1つの制御電子回路3、および打込動作の安全な始動のための1つの安全センサ4が設けられている。
【0025】
釘マガジン5からそれぞれ1つの釘がこの打込装置のノズル6に装填される。この位置でこの釘は打込ピストン7の打撃によって加工部材に打込まれる。
【0026】
打込ピストン7は、ここでは打込方向における前側端部として形成されている。ピストン軸8は、その後側の端部で、スラスト軸受9を介してピストン冠10に接している。ピストン冠10は、ガススプリング11の可動な部品として、シリンダ12内でガイドされ、そして外周のシール部13によってシーリングされている。
【0027】
このガススプリング11は、最大の伸張状態(
図1)においても、ガスが加圧充填された状態に持続され、ストローク当たりのエネルギ取込み、すなわちばね定数を増大する。
【0028】
このガススプリングは、電動モータ14を用いてピストン軸8が打込方向と逆に移動されて張力を付与される。このためピストン軸8にパターン構造15が形成されており、このパターン構造部は、電動モータ14の回転する後退動作部品16と噛み合い、こうして全体として1つの張力機構を形成する。パターン構造部15は、実質的に1つのラックギヤの形状および機能を有する。この張力機構の他の部分は、たとえば1つの係止部品(Halteglied)を有し、この係止部品を用いて、張力を付与されたガススプリングを解放することができる(不図示)。
【0029】
図1に示すものは単に概略である。本発明においては、ここではピストン軸8とピストン冠10の組合せが特別な形状で形成されて、スラスト軸受9が、このピストン冠10に対して複数の平面で小さな旋回を行うことが可能となっている。具体的には、この旋回はあらゆる方向に行われ得る。このため様々な方法および詳細構造が提案され、これらは以下に詳細に説明される。
【0030】
図2に示す例によれば、スラスト軸受9は、2つの押圧面9a,9bによって構成されており、これらは、少なくともピストン軸が加速されている間は互いに押圧されている。ここでこれらの押圧面は、打込方向に延伸する中心軸Zに対して回転対称に形成されている。
【0031】
第1の押圧面9aは、ほぼ平坦な面(曲率半径無限大)でピストン冠10の1つの端面に形成されている。
図2に示す例においては、この第1の押圧面はピストン冠の材料から成っており、ここではプラスチックである。
【0032】
第2の押圧面9bは、凸形状の面(正の曲率半径)として、きのこ状に形成された、ピストン軸8の後ろ側の端部に形成されている。したがってこれらの押圧面9a,9bは、これらが設定されている領域において、異なる曲率半径を有し、したがって純粋に幾何的には、これらの面は一点でのみ接触している。これらの押圧面の実際の接触領域は、当然ながらもっと大きく、ここでこの大きさはこれらの面の材質の硬度の値および押圧力の値に依存している。
【0033】
ここで上記のピストン軸は、鋼鉄から成っており、40ジュールより大きな打込エネルギーを釘に伝達できるようになっている。
【0034】
上記のピストン冠には、径方向で内側に向いた外側縁部17が段状に下がっており、この縁部を用いて、少なくとも押圧面9a,9bが設定されている間は、ピストン軸8の後ろ側の端部は、径方向でガイドされる。さらにこの縁部17は、傾斜部を有し、この傾斜部を用いて、ピストン軸8は、自律的にセンタリングしつつガイドされ、打込動作の間においては、このピストン軸8のピストン冠10からの緩みが起こる。
【0035】
ここで注意すべきは、
図2に示す例では、ピストン軸8とピストン冠10との間が引張力に対する結合とはなっておらず、むしろ単に押圧されていることである。このため、このピストン軸は、打込方向において、このピストン冠と結合されていない。
【0036】
図3は、
図2に示す実施形態例の1つの変形例を示す。ここでただ1つ異なるところは、押圧面9aがピストン冠10の部分でパッド部品18に形成されていることであり、このパッド部品は、このピストン冠10の端面へ嵌めこまれており、鋼鉄のような非常に高強度の材料から成っている。これは大きな加速エネルギーを、摩耗無しにかつ小さな摩擦で伝達することを可能とする。このピストン冠の残りの部分は、プラスチックまたは軽金属のような柔らかくかつ軽い材料から成っている。
【0037】
パターン構造部15は、
図2および
図3の例においては、凹部の列として形成されており、これらの凹部は鋼鉄のピストン軸8に取り付けられている。
【0038】
図4に示す実施形態では、このパターン構造部15は、プラスチックから成るパターン構造部としてピストン軸8の鋼鉄のコア上に射出成型されている。このためこのピストン軸8は薄肉部(Verjuengung)を有し、この薄肉部によってパターン構造部15が形状嵌めで保持されている。
【0039】
図5は、
図4に示す例の1つの変形実施例を示し、ここでこのパターン構造部15は少なくとも2つの反対側にある面上に噛み込み用の歯(複数)を備える。これによりとりわけ強い圧力嵌めを実現することができる。
図4に示す例では、ピストン軸の一方の側にのみこれらの歯が形成されている。
【0040】
図6は、本発明のもう1つの実施形態例を示す。ここではピストン軸8は、1つのボールヘッド19を介してピストン冠10と結合されている。凸形状のボールヘッド19は、これに対応した、ピストン冠10に合わせた形状の、同じ曲率半径を有するボールソケット20に食い込んでいる。これに応じて押圧面9a,9bは特に大きくなっている。このボールソケット20の円周角によっては、この球関節は包み込まれているか、あるいは開かれていてよい。これに応じて、上記のピストン軸は移動方向において形状嵌めで保持されるか、または移動方向において上記のピストン冠から外れて可動となっていてよい。
【0041】
ピストン軸8は、どの平面においてもピストン冠10に対して角度Wだけ旋回可能である。
図6においては、この角度Wは過度に強調して大きく示されている。実際には典型的な旋回角は、遊びを補償するためであり、殆ど1度より小さい。
【0042】
図6に示す形態では、さらにパターン構造部15が、
図4におけるように、ピストン軸8に射出成型されている。
【0043】
ピストン冠のシール部13は、
図6においては3つのリングの構造で示されている。打込方向で前側のリングは、ワイパーリング(Abstreifring)として形成されており、中央のリングは、オイルを含浸したフェルトリング(Filzring)で形成されており、そして後側のリングは、耐圧シールとして形成されている。
【0044】
図7に示す実施形態例は、1つの変形例を示し、この変形例ではピストン軸8は、周回する膨らみ21を備え、この膨らみは、弾力性のある周回する保持リング(Rastring)22によって打込方向において形状嵌めで保持されている。以上によりピストン軸はスナップ結合のように、ピストン冠10と結合されており、こうして引張方向においても力を伝達することができる。ここで押圧面9a,9bは、それぞれ平坦に実装されており、この際あらゆる平面における旋回は、ピストン材料あるいは少なくともスナップリング22の材料の弾力性によって実現される。
【0045】
図8は、
図7に類似した例を示し、この例では、上記のスナップリングの部位で、ピストン冠10の前側部分が、曲げ弾性のあるプラスチック、ここでは熱可塑性エラストマから成るリング23として一体的に形成されている。以上によりこのピストン軸8は、持続的に形状嵌めでピストン冠と結合されており、こうしてここでも力の伝達が行われる。このリング23は、たとえば射出成型技術によって、ピストン冠10およびピストン軸8に成形することができる。ピストン軸8の旋回は、あらゆる平面において、ここでは特にこのリング23の弾力性によってもたらされる。
【0046】
図7および
図8の例の押圧面9a,9bの内の少なくとも1つは、凸形状の曲面を備えてよい。
【0047】
概して上記の様々な実施形態例の個別の特徴は必要に応じて互いに組み合わせることができる。特に
図4および
図5に示すパターン構造部15の形成は、全ての実施形態例で用いられ得る。
【国際調査報告】