(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-528428(P2017-528428A)
(43)【公表日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】骨髄由来抑制細胞の抑制及び免疫チェックポイント阻害の方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20170901BHJP
A61K 31/4406 20060101ALI20170901BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20170901BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20170901BHJP
A61K 35/742 20150101ALI20170901BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20170901BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20170901BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20170901BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20170901BHJP
【FI】
A61K45/06ZNA
A61K31/4406
A61K31/706
A61K39/395 N
A61K35/742
A61P43/00 121
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P31/04
A61P31/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2017-502263(P2017-502263)
(86)(22)【出願日】2015年7月13日
(85)【翻訳文提出日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】US2015040107
(87)【国際公開番号】WO2016010879
(87)【国際公開日】20160121
(31)【優先権主張番号】62/024,731
(32)【優先日】2014年7月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/069,881
(32)【優先日】2014年10月29日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】398076227
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】チョウ シビン
(72)【発明者】
【氏名】ボーゲルステイン バート
(72)【発明者】
【氏名】キンズラー ケネス ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】キム キベム
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA20
4C084MA52
4C084MA57
4C084MA59
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4C087ZB35
4C087ZC20
4C087ZC75
(57)【要約】
チェックポイント阻害抗PD−1または抗CTLA−4抗体で治療された患者において、印象的な応答が観察されている。しかしながら、免疫原性が低い癌に対する免疫療法は、未だ課題のままである。抗PD−1抗体及び抗CTLA−4抗体の両方による治療は、免疫原性が控えめな、大型CT26腫瘍または転移性4T1腫瘍を根絶することができなかった。しかしながら、エピジェネティック修飾薬及びチェックポイント阻害薬での同時治療は、治療結果を著しく改善し、それらのうちの80%超を治癒させた。機能研究は、エピジェネティック修飾薬の主要な標的は、骨髄由来抑制細胞(MDSC)であることを明らかにした。循環MDSCを減少させたPI3K−阻害薬もまた、免疫チェックポイント阻害薬と組み合わされたとき、転移性4T1腫瘍を有するマウスのうちの80%を治癒させた。故に、免疫チェックポイント阻害に対して抵抗性である癌は、MDSCの除去によって治癒させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
担腫瘍哺乳動物を治療する方法であって、
骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの第1の薬剤を投与する工程と、
免疫チェックポイントを阻害する少なくとも1つの第2の薬剤を投与する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害薬のp110αサブユニット、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の薬剤が、抗PD−1抗体、抗CTLA−4抗体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬であり、該ヒストンデアセチラーゼ阻害薬が、エンチノスタットである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の薬剤が、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬であり、該DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬が、5−アザシタジンである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の薬剤が、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害薬のp110αサブユニットであり、該ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害薬のp110αサブユニットが、J32である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の薬剤が、抗PD−1抗体と抗CTLA−4抗体との組み合わせである、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシタジンとの組み合わせである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシタジンとの組み合わせである、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシタジンとの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記腫瘍が、非小細胞肺癌(NSLC)ではない、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
クロストリジウム・ノビイ(Clostridium novyi)−NTの胞子を投与する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
単一パッケージ内に、
骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの第1の薬剤と、
少なくとも2つの免疫チェックポイントを阻害する少なくとも2つの第2の薬剤と
を含む、キット。
【請求項14】
前記第1の薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害薬のp110αサブユニット、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
前記少なくとも2つの第2の薬剤が、抗PD−1抗体及び抗CTLA−4抗体である、請求項13に記載のキット。
【請求項16】
前記第1の薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬であり、該ヒストンデアセチラーゼ阻害薬が、エンチノスタットである、請求項14に記載のキット。
【請求項17】
前記第1の薬剤が、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬であり、該DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬が、5−アザシタジンである、請求項14に記載のキット。
【請求項18】
前記第1の薬剤が、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害薬のp110αサブユニットであり、該ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害薬のp110αサブユニットが、J32である、請求項14に記載のキット。
【請求項19】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項15に記載のキット。
【請求項20】
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシタジンとの組み合わせである、請求項15に記載のキット。
【請求項21】
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシタジンとの組み合わせである、請求項13に記載のキット。
【請求項22】
クロストリジウム・ノビイ−NTの胞子を更に含む、請求項13に記載のキット。
【請求項23】
骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの第1の薬剤と、
少なくとも2つの免疫チェックポイントを阻害する少なくとも2つの第2の薬剤と
を含む、組成物。
【請求項24】
前記第1の薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害薬のp110αサブユニット、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記少なくとも2つの第2の薬剤が、抗PD−1抗体及び抗CTLA−4抗体である、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記第1の薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬であり、該ヒストンデアセチラーゼ阻害薬が、エンチノスタットである、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
前記第1の薬剤が、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬であり、該DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬が、5−アザシタジンである、請求項24に記載の組成物。
【請求項28】
前記第1の薬剤が、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害薬のp110αサブユニットであり、該ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害薬のp110αサブユニットが、J32である、請求項24に記載の組成物。
【請求項29】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項25に記載の組成物。
【請求項30】
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシタジンとの組み合わせである、請求項25に記載の組成物。
【請求項31】
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシタジンとの組み合わせである、請求項23に記載の組成物。
【請求項32】
クロストリジウム・ノビイ−NTの胞子を更に含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項33】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の薬剤が、MDSCの表面上に発現されるマーカーに結合するモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の薬剤が、MDSCの表面上に発現されるマーカーに結合するモノクローナル抗体である、請求項13に記載のキット。
【請求項36】
前記第1の薬剤が、MDSCの表面上に発現されるマーカーに結合するモノクローナル抗体である、請求項23に記載の組成物。
【請求項37】
前記腫瘍が、結腸直腸癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記腫瘍が、乳癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記腫瘍が、結腸直腸癌転移である、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記腫瘍が、乳癌転移である、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記第1の薬剤が、単独では腫瘍細胞増殖を阻害するのに不十分である用量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の薬剤が、1つ以上の単位投与量中に、単独では腫瘍細胞増殖を阻害するのに不十分である量で存在する、1つ以上の単位投与量を含む請求項13に記載のキット。
【請求項43】
前記第1の薬剤が、単独では腫瘍細胞増殖を阻害するのに不十分である単位投与量中に存在する、単位投与量である請求項23に記載の組成物。
【請求項44】
担腫瘍哺乳動物を治療する方法であって、
骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの第1の薬剤を投与する工程と、
少なくとも2つの免疫チェックポイントを阻害する少なくとも2つの第2の薬剤を投与する工程と
を含む、方法。
【請求項45】
前記2つの第2の薬剤が、抗PD−1抗体及び抗CTLA−4抗体である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
クロストリジウム・ノビイ−NTの胞子を投与する工程を更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
細菌またはウイルス感染症を有する哺乳動物を治療する方法であって、
骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの薬剤を投与する工程を含み、該薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害薬のp110αサブユニット、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【請求項48】
前記薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬であり、該ヒストンデアセチラーゼ阻害薬が、エンチノスタットである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記薬剤が、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬であり、該DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬が、5−アザシタジンである、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記薬剤が、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害薬のp110αサブユニットであり、該ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害薬のp110αサブユニットが、J32である、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記感染症が、慢性ウイルス感染症である、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記感染症が、関連する敗血症を伴う細菌性である、請求項47に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米国政府からの資金によってなされた。米国政府は、米国国立衛生研究所からの助成金CA062924及びCA043460の条件に従って、本発明において特定の権利を保持する。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、癌治療の分野に関する。より具体的には、それは、難治性腫瘍を克服するための組み合わせ療法に関する。
【背景技術】
【0003】
哺乳動物の免疫系は細かく制御され、これにより、最小のバイスタンダー被害をもって、細菌及びウイルスなどの外来性の侵入物に対して効果的な攻撃を開始することが可能となっている。これは、安全性を確保するために、機能的に余剰の制御機構を必要とする(1〜3)。癌は、これらの機構を乗っ取って、免疫破壊を回避することができるようである。癌によって利用される制御機構のうちのいくつかは特定されている。これらには、制御性T細胞(Treg)、循環MDSC、常在性腫瘍関連マクロファージ及び好中球、T−細胞上のチェックポイント阻害受容体、ならびに免疫抑制サイトカインが挙げられる(4〜8)。ごく最近では、PD−1受容体及びCTLA−4受容体によって保護されるチェックポイントが、それらの機能を阻害することができる抗体の有効性のために、精力的に研究されている。抗CTLA−4抗体、抗PD−1抗体、抗PD−L1モノクローナル抗体(mAb)による最近の臨床試験は際立った治療的応答を示し(9〜12)、免疫チェックポイントの破壊が治療的に有用であり得るという考えを強調した。しかし、客観的応答が観察されたのは、治療された患者及び腫瘍の種類のうちの少数においてであり、特定の腫瘍が応答し、他の腫瘍が応答しない理由は謎である。CT26及び4T1はとりわけ、新規の治療的アプローチを評価するために使用される最も一般的な同系腫瘍モデルである。CT26は、BALB/cマウスにおいてN−ニトロソ−N−メチルウレタンの頻回直腸内滴下によって誘導された未分化の結腸直腸癌に由来し、免疫原性が控えめであることが示されており(13、14)、一方、4T1は、BALB/cマウスにおける自発性乳腺腫瘍に起源を持つ(15)。4T1は、免疫原性が乏しく、非常に転移性であり、この特徴はヒトの進行癌と共有されるものである(16)。癌研究におけるこれらの腫瘍細胞株の広範な使用にも関わらず、それらのうちのいずれについても、遺伝子的特徴付けはほとんど得られていない。
【0004】
当該技術分野において、寛解がより持続性となり、治療される集団においてより広範に広がり得るような、治療不応性癌の問題を克服する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様に従うと、担腫瘍哺乳動物を治療する方法が提供される。骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの第1の薬剤が、哺乳動物に投与される。免疫チェックポイントを阻害する少なくとも1つの第2の薬剤が、哺乳動物に投与される。腫瘍は、非小細胞肺癌(NSLC)であっても、非小細胞肺癌(NSLC)ではなくてもよい。
【0006】
本発明の別の態様に従うと、キットが提供される。キットは、単一のパッケージを含み、骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの第1の薬剤を含有する。それは、少なくとも2つの免疫チェックポイントを阻害する少なくとも2つの第2の薬剤を更に含有する。
【0007】
本発明の更に別の態様において、組成物が提供される。組成物は、骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの第1の薬剤と、少なくとも2つの免疫チェックポイントを阻害する少なくとも2つの第2の薬剤とを含む。
【0008】
本発明の別の態様に従うと、担腫瘍哺乳動物を治療する方法が提供される。骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの第1の薬剤が、哺乳動物に投与される。少なくとも2つの免疫チェックポイントを阻害する少なくとも2つの第2の薬剤が、哺乳動物に投与される。
【0009】
本発明の更に別の態様において、細菌またはウイルス感染症を有する哺乳動物を治療する方法が提供される。骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの薬剤が、投与される。薬剤は、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)阻害薬のp110αサブユニット、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0010】
本明細書の閲読時に当業者に明らかになるであろう、これら及び他の実施形態は、当該技術分野に、治療困難な腫瘍を治療するための治療調製物及び方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】担腫瘍マウスの治療応答。異なる腫瘍を担時するBALB/cマウスを、示される様々な治療様式で治療した。IgG、IgG対照;P、抗PD−1抗体;C、抗CTLA−4抗体;AZA、5−アザシチジン;ENT、エンチノスタット。腫瘍体積(
図1A、
図1C、及び
図1E)ならびに動物生存率(
図1B、
図1D、及び
図1F)を記録した。(
図1A及び
図1B)中等度のサイズのCT26腫瘍を有するBALB/cマウス。(
図1C及び
図1D)大型CT26腫瘍を有するBALB/cマウス。(
図1E及び
図1F)転移性4T1腫瘍を有するBALB/cマウス。(
図1G)4T1担腫瘍マウスを、示されるように治療し、腫瘍移植の6週間後に安楽死させた。各マウスからの原発腫瘍を測定し、異なる器官の転移巣(転移)病変を計数した。平均及び標準偏差を示す。各実験群において使用された動物の数(n)及びP値もまた示す。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001、ns、有意ではない。
【
図2】免疫チェックポイント阻害及びエピジェネティック修飾後の免疫細胞の応答。転移性4T1腫瘍を担持するBALB/cマウスを、示される治療様式で治療し、その後、FACS分析及び免疫組織蛍光分析して、腫瘍浸潤細部及び循環免疫細胞を評価した。平均及び標準偏差を示し、P値が示される。(
図2A)腫瘍浸潤CD8
+T細胞のFACS結果。(
図2B)腫瘍浸潤CD8
+T細胞の代表的な免疫組織蛍光染色。スケールバー、50μm。(
図2C)腫瘍浸潤CD4
+CD25
+FoxP3
+TregのFACS結果。(
図2D)CD45
+CD3
+CD4
+依存性腫瘍浸潤細胞における、FoxP3及びCD25のダブル陽性細胞のパーセンテージを示す、代表的なFACSデータ。(
図2E)循環G−MDSCのFACS結果。(F)CD45
+CD11b
+F4/80
−MHC−II
−依存性循環細胞における、Ly6G
+Ly6C
lo細胞のパーセンテージを示す、代表的FACSデータ。(
図2G)腫瘍浸潤G−MDSCのFACS結果。(
図2H)腫瘍浸潤Ly6G
+細胞の代表的な免疫組織蛍光染色。スケールバー、50μm。
【
図3】骨髄由来Ly6G
+細胞は、免疫チェックポイント阻害に対する抵抗の原因である。(
図3A)4T1腫瘍を担持するBALB/cマウスを、示される様々な抗体または抗体の組み合わせで治療し、腫瘍体積を経時的に記録した。αLy6G、抗Ly6G抗体;αCD25、抗CD25抗体。(
図3B)異なる抗体または抗体の組み合わせで治療した後の、循環G−MDSCのFACS結果。(
図3C)4T1担腫瘍マウスを、抗PD−1/抗CTLA−4抗体プラス親和性精製によって4T1担腫瘍動物から単離されたMDSCの養子移入を有するまたは有しないエピジェネティック修飾薬で治療した。治療後、腫瘍体積を記録した。平均及び標準偏差を示し、P値が示される。
【
図4】培養細胞に対するエピジェネティック修飾薬の直接的効果。(
図4A及び
図4B)4T1細胞、精製したCD8
+T細胞、またはG−MDSCを、異なる濃度のエンチノスタット(
図4A)あるいはAZA(
図4B)で処理した。代謝に基づく比色アッセイを使用して、細胞生存能を評価した。(
図4C)異なる割合のG−MDSC及びCD8
+T細胞の共培養からのならし培地を、IFN−γ濃度について分析した。(
図4D)1:1の割合のG−MDSC対CD8
+T細胞の共培養からのならし培地を、漸増用量のエンチノスタットで24時間処理した後に採取し、IFN−γ濃度について分析した。少なくとも3連のウェルからのデータの平均及び標準偏差を示す。P値が示される。
【
図5】(S1)体重測定。4T1腫瘍を担持するBALB/cマウスを、示される治療様式で治療した。治療後、定期的にそれらの体重を測定し、記録した。データの平均及び標準偏差を示す。
【
図6】(S2)MHC−I提示に関与する遺伝子の発現。エピジェネティック修飾薬で処理した後、インビトロで培養された4T1腫瘍細胞及びCT26腫瘍細胞から、RNAを単離させた。MHC−I提示に関与する異なる遺伝子の発現を、RT−PCRによって評価した。β−アクチンをローディング対照として使用した。
図6A、未治療、
図6B、AZA治療、
図6C、エンチノスタット治療、
図6D、AZA/エンチノスタット治療。
【
図7】(S3)4T1腫瘍によって誘導される、G−MDSCレベルの上昇。(
図7A)4T1腫瘍移植後の示される時点で末梢血液を採取し、FACSによってG−MDSCのレベルについて分析した。(
図7B)健康なマウスから、または4T1腫瘍移植後18日目の担腫瘍マウスから、末梢血液、脾臓、及び腫瘍を回収し、FACSによってG−MDSCのレベルについて分析した。データの平均及び標準偏差を示す。
【
図8】(S4)PI3K阻害薬は、免疫チェックポイント阻害と組み合わされるとき、G−MDSCを枯渇させることによって、4T1腫瘍を根絶する。(
図8A)G−MDSC、CD8
+T細胞、及び4T1腫瘍細胞を、様々な濃度のJ32によってインビトロで処理した。代謝に基づく比色アッセイを使用して、細胞生存能を評価した。3連のウェルからのデータの平均及び標準偏差を示す。(
図8B)4T1腫瘍を担持するBALB/cマウスを、示される治療様式で治療した。FACS分析を実行して、循環G−MDSCを定量化した。(
図8C)4T1腫瘍を担持するBALB/cマウスを、J32、抗PD−1/抗CTLA−4抗体、または組み合わせで治療し、腫瘍体積を記録した。平均及び標準偏差を示し、P値が示される。
【
図9】組み合わせ治療のマイヤー・カプラン曲線。最の下の曲線から最も上の曲線へ:クロストリジウム・ノビイ(Clostridium novyi)−NT単独;抗PD−1/抗CTLA−4単独;抗PD−1/抗CTLA−4+クロストリジウム・ノビイ−NT;抗PD−1/抗CTLA−4+ENT/AZA;抗PD−1/抗CTLA−4+ENT/AZA+クロストリジウム・ノビイ−NT。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本発明者らは、MDSCなどの免疫系における宿主細胞に作用して、それらを減少させる、かつ/または抑制する薬剤に関与する治療的アプローチを開発した。そのような薬剤は、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬またはDNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬などのエピジェネティック修飾薬であり得る。免疫チェックポイント阻害と組み合わせて使用されるとき、エピジェネティック修飾薬は、腫瘍細胞をインビトロで死滅させるのに必要とされるよりもずっと低濃度で、MDSCを死滅させる。エピジェネティック修飾薬は、その使用される用量では、インビボの腫瘍細胞に対してわずかな効果しか有しない。MDSCを対象とする抗体を使用したMDSCの低減は、エピジェネティック修飾薬について観察される効果と類似した抗腫瘍効果を有する。養子移入実験において、未治療の担腫瘍マウスから精製されたMDSCは、エピジェネティック修飾の治療効果を無効にし得る。全く異なるクラスの薬剤(PIK3阻害薬)でのMDSCの阻害は、エピジェネティック修飾薬の効果と類似した効果を有する。
【0013】
本発明の方法に従う治療、および/または本発明のキット及び/もしくは組成物を使用する治療に適している腫瘍の種類は、固形腫瘍及び血液がんの両方である。例示的な腫瘍としては、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、成人脳/中枢神経系腫瘍、小児脳/中枢神経系腫瘍、乳癌、男性乳癌、青年癌、小児癌、若年成人癌、原発不明癌、キャッスルマン病、子宮頸癌、結腸/直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング腫瘍ファミリー、眼癌、胆嚢癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、妊娠性絨毛病、ホジキン病、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭及び下咽頭癌、白血病、成人急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、小児白血病、肝臓癌、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肺カルチノイド腫瘍、リンパ腫、皮膚リンパ腫、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、小児非ホジキンリンパ腫、口腔及び口腔咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、下垂体部腫瘍、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫−成人軟部組織癌、皮膚癌、基底細胞及び扁平上皮細胞皮膚癌、黒色腫皮膚癌、メルケル細胞皮膚癌、小腸癌、胃癌、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ならびにウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0014】
本発明の方法に従って治療され得る細菌感染症の種類としては、バチルス・アントラシス(Bacillus anthracis)、ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ブルセラ・アボルタス(Brucella abortus)、ブルセラ・カニス(Brucella canis)、ブルセラ・メリテンシス(Brucella melitensis)、ブルセラ・スイス(Brucella suis)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、クラミドフィラ・シタッシ(Chlamydophila psittaci)、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)、クロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)、コリネバクテリウム・ジフテリエ(Corynebacterium diphtheriae)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、及びエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、大腸菌(Escherichia coli)(全般)、毒素原性大腸菌(Enterotoxigenic Escherichia coli)(ETEC)、腸管病原性大腸菌(Enteropathogenic E. coli)、大腸菌O157:H7、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)、ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、レプトスピラ・インターロガンス(Leptospira interrogans)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、ライ菌(Mycobacterium leprae)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、ナイセリア・ゴノレー(Neisseria gonorrhoeae)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、リケッチア・リケッチイ(Rickettia rickettsii)、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)、シゲラ・ソネイ(Shigella sonnei)、ならびにスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)が挙げられる。
【0015】
本発明に従って治療され得るウイルス感染症の種類としては、慢性感染症及び急性感染症の両方が挙げられる。例示的な感染症としては、アデノウイルス、トリインフルエンザ、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、麻疹、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ライノウイルス、SARS−CoVなどの呼吸器ウイルス;コクサッキーウイルス、エンテロウイルス、ポリオウイルス、ロタウイルスなどの胃腸ウイルス;B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス(サロゲート)などの肝炎ウイルス;単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型、ヒトサイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルスなどのヘルペスウイルス;ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)、ヒト免疫不全ウイルス2型(HIV−2)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、サルヒト免疫不全ウイルス(SHIV)などのレトロウイルス;トリインフルエンザ、デングウイルス、ハンタウイルス、出血熱ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、痘瘡ウイルスサロゲート、牛痘、サル痘、ウサギ痘、ワクチニアウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、ウエストナイルウイルス、黄熱ウイルスなどのウイルス選択薬剤/新興ウイルス病原体が挙げられる。
【0016】
免疫チェックポイントまたはMSDCを標的化するのに使用され得る抗体の種類は、いかなるアイソタイプのものであってもよい。それらは、ヒト化されてもよく、キメラまたは他の哺乳動物もしくは動物のものであってもよい。それらは、毒素などの他の部分にコンジュゲートされ得る。それらは、モノクローナルであっても、ポリクローナルであってもよい。それらは、一本鎖抗体、断片、または抗体の一部であってもよい。
【0017】
治療薬剤の投与様式は、当該技術分野において使用されるものであり得る。例としては、経口、局所、吸入、及び注射が挙げられる。投与部位としては、皮膚上または局所、経鼻投与、動脈内、関節内、心臓内、筋肉内、皮内、病巣内、骨内注入、腹腔内、くも膜下腔内、子宮内、腟内投与、静脈内、膀胱内注入、硝子体内、皮下、経皮、経粘膜、硝子体外(avitreal)、皮下、経皮、及び経粘膜が挙げられる。
【0018】
治療され得る哺乳動物としては、腫瘍、血液がん、細菌感染症、またはウイルス感染症になりやすい任意のものが挙げられる。それらには、アグーチ−ミヨプロクタ・アグーチ(Myoprocta acouchy)(前、プラッティ(pratti))、アルパカ−ラマ・パコス(Lama pacos)、オオアリクイ−ミルメコファガ・トリダクチラ(Myrmecophaga tridactyla)、マタコミツオビアルマジロ(前、ラプラタ(La Plata))−トリピューテス・マタカス(Tolypeutes matacus)、シママングース−マンゴス・マンゴ(Mungos mungo)、ナマケグマ−メラルサス・ウルシナス(Melursus ursinus)、アンデスまたはメガネグマ−トレマルクトス・オルナタス(Tremarctos ornatus)、アメリカビーバー−カスター・カナデンシス(Castor canadensis)、アメリカバイソン−バイソン・バイソン(Bison bison)(スミソニアン保全生物学研究所(SCBI)、Front Royalのみ)、カラカル−カラカル・カラカル(Caracal caracal)、スナドリネコ−プリオナイララス・ヴィヴェリナス(Prionailurus viverrinus)、イワテンジクネズミ−ケロドン・ルペストリス(Kerodon rupestris)、チーター−アキノニュクス・ユバトゥス(Acinonyx jubatus)、ウンピョウ−ネオフェリス・ネブローサ(Neofelis nebulosa)、ハナグマ−ナスア・ナリカ(Nasua narica)、白黒またはゲレザコロブス−コロブス・ゲレザ(Colobus guereza)、ヘレフォードウシ−ボース・タウルス・タウルスヘレフォード(Bos taurus taurus hereford)、ホルスタインウシ−ボース・タウルス・タウルスホルスタイン(Bos taurus taurus holstein)、ビルマ・ブロー(Burmese brow)・アントラーシカ(ターミンジカ)−セルヴァス・エルディ・ターミン(Cervus eldi thamin)(SCBI、Front Royalのみ)、マエガミジカ−エラフォダス・セファロファス(Elaphodus cephalophus)(SCBI、Front Royalのみ)、デグー−オクトドン・デグー(Octodon degus)、 ミニチュアロバ−エクウス・アシナス・アシナス・ミニチュレ(Equus asinus asinus miniature)、アジアゾウ−エレファス・マキシマス(Elephas maximus)、コミミハネジネズミ−マクロセリデス・プロボシデウス(Macroscelides proboscideus)、クロアシイタチ−マステラ・ニグリペス(Mustela nigripes)、ダマガゼル−ガゼラ・デマ(Gazella dama)、ホオジロテナガザル−ノマスカス・レウコゲニス(Nomascus leucogenys)、ナイジェリアコビトヤギ−キャプラ・ヒルカス・ヒルカス・ナイジェリアン・ドワーフ(Capra hircus hircus nigerian dwarf)、ヌビアヤギ−キャプラ・ヒルカス・ヒルカス・アングロ・ヌビアン(Capra hircus hircus anglo nubian)、サンクレメンテ島ヤギ−キャプラ・ヒルカス・ヒルカス・サン・クレメンテ(Capra hircus hircus san clemente)、西洋低地ゴリラ−ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ(Gorilla gorilla gorilla)、オサボウ島ブタ−スス・スクロファ・スクロファ(Sus scrofa scrofa)、プルツワルスキーウマ−エクウス・カバッルス・プルツワルスキーまたはエクウス・フェラス・プルツワルスキー(Equus caballus przewalskii or Equus ferus przewalskii)、ロックハイラックス−プロカヴィア(Procavia capensis)、ワオキツネザル−レマー・カッタ(Lemur catta)、アカビタイキツネザル(チャイロキツネザルの亜種)−レムール・ファルヴァス・ルファス(Lemur fulvus rufus)、アカエリマキキツネザル−ヴァレシア・ヴァリエガタ・ルブラ(Varecia variegata rubra)、アフリカライオン−パンセラ・レオ・レオ(Panthera leo leo)、クロザル(前、スラウェシ)−マカカ・ニグラ(Macaca nigra)、シシオザル−マカカ・シレナス(Macaca silenus)、ジェフロイマーモセット(シロビタイまたはシロミミマーモセット)−カリスリクス・ジェフロイイ(Callithrix geoffroyi)、ミーアキャット−スリカータ・スリカッタ(Suricata suricatta)、ダマラランドデバネズミ−クリプトミス・ダマレンシス(Cryptomys damarensis)、ハダカデバネズミ−ヘテロセファラス・グラベル(Heterocephalus glaber)、クロホエザル−アルーアッタ・カラヤ(Alouatta caraya)、コビトマングース−ヘロゲール・パーヴュラ(Helogale parvula)、ペルシャオナガー−エクウス・ヘミオナス・オナガー(Equus hemionus onager)(SCBI、Front Royalのみ)、ボルネオオランウータン−ポンゴ・ピグメウス(Pongo pygmaeus)、スマトラオランウータン−ボルネオ−ポンゴ・ピグメウス・アベリイ(Bornean−Pongo pygmaeus abelii)、シロオリックス−ホーンド・オリックス・ダッマー(horned−Oryx dammah)、アジアコツメカワウソ−アオニクス・シネレア(Aonyx cinerea)、カナダカワウソ−ロントラ(Lontra)(前、ルトラ(Lutra))・カナデンシス(canadensis)、ジャイアントパンダ−アイルロポダ・メラノルカ(Ailuropoda melanoleuca)、レッサーパンダ−アイララス・ファルゲンス(Ailurus fulgens)、クビワペッカリー−タヤッス・タジャク(Tayassu tajacu)、オマキヤマアラシ−コエンドウ・プレヘンシリス(Coendou prehensilis)、クロオプレーリードッグ−シノミス・ルドヴィジアナス(Cynomys ludovicianus)、シルバーフォックスラビット−オリクトラガス・クニカラス(Oryctolagus cuniculus)、ギアナサキ(ペール・ヘデット・サキ)−ピセチア・ピセチア(Pithecia pithecia)、ハイイロアザラシ−ハリコエラス・グリパス(Halichoerus grypus)、フクロテナガザル−ヒロバテス・シンダクチラス(Hylobates syndactylus)、フタツユビナマケモノ−クロロエパス・ディダクチラス(Choloepus didactylus)、プレボーリス−カロシウラス・プレボスティ(Callosciurus prevosti)、ゴールデンライオンタマリン−レオントピセカス・ロサリア(Leontopithecus rosalia)、キンクロライオンタマリン−レオントピセカス・クリソメラス(Leontopithecus chrysomelas)グレートマダガスカルテンレック−センチフェル・セトサス(Setifer setosus)、スモールマダガスカルハリテンレック−エチノプス・テルファイリ(Echinops telfairi)、スマトラトラ−パンセラ・タイグリス・スマトラエ(Panthera tigris sumatrae)、ダスキーティティ(オラバッス(Orabussu)ティティ)−カリセバス・モノク(Callicebus moloch)、北部ツパイ−ツパイア・ベランゲリ(Tupaia belangeri)、タテガミオオカミ−クリソシオン・ブラキュラス(Chrysocyon brachyurus)、及びグレビーシマウマ−エクウス・グレビー(Equus grevyi)が挙げられ、ヒトだけでなく、ペット、家畜、及び野生動物が治療されてもよい。
【0019】
キットは、典型的には、複数の構成成分をパッケージ化もしくは含有する、分割された、または分割されていない容器である。構成成分は、分離されても、混合されてもよい。それらは、薬剤及び/または送達デバイス及び/または説明書であり得る。それらは、混合容器またはデバイスを含んでもよい。
【0020】
嫌気性クロストリジウム・ノビイの胞子はまた、本明細書に記載される他の薬剤と組み合わせて使用されてもよい。クロストリジウム胞子の添加は、それ単独では他の治療よりも効果的ではないものの、担腫瘍個体において更に一層高レベルの生存率を達成する。投与される胞子の量は、例えば、1匹のマウス当たり10
5〜10
9個、10
6〜10
8個、または1×10
7〜10
8個であり得る。一実施形態において、胞子の量は、1匹のマウス当たり5.0×10
7個である。Balb/cマウスは、平均約20〜30gである。胞子の量は、レシピエントの体重に従って調節され得る。
【0021】
胞子の作用の正確な機構は未だに知られていないが、クロストリジウム・ノビイ−NT感染が、クロストリジウム・ノビイ−NTが感染させた腫瘍に特異的に対するCD8+T細胞媒介適応免疫応答を誘発し得ることが既知である。更に、クロストリジウム・ノビイ−NTを治癒したマウスからのCD8
+T細胞が、腫瘍特異的な様式で養子免疫を与え得ることが既知である。故に、CD8
+T細胞は、有益な効果に関与する。Agrawal et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2004 Oct 19;101(42):15172−15177を参照されたい。1つの仮説は、細菌感染によって誘導される頑強な炎症応答が一般に、(細菌細胞及び腫瘍細胞の両方に対する)適応免疫応答を増強することである。
【0022】
出願人らは、作用の機構に関するいかなる理論にも拘束されることを望まないが、強力な抗腫瘍免疫応答を生成するために、2つの重要な構成成分、つまり、(a)(クロストリジウム・ノビイ−NT感染により提供され得るような)強力な腫瘍抗原が存在しない場合、適応抗腫瘍免疫応答を増強するための強力な腫瘍抗原または頑強な炎症応答、及び(b)(抗PD−1/抗CTLA/4抗体治療により提供され得るように)免疫チェックポイントにより不活化されていない、または(エンチノスタット/5−アザシチジンにより提供され得るように)MDSCにより不活化されていない細胞傷害性T細胞、があるべきであると仮定することは合理的である。
【0023】
最近の臨床研究は、エピジェネティック修飾が、非小細胞肺癌(NSCLC)を有するごく一部の患者に対して主要な治療効果をもたらすことを実証した(36)。他の研究は、5−アザシチジンが、自然免疫及び適応免疫の両方に関する遺伝子及び経路、ならびにNSCLC株において免疫回避に関する遺伝子を上方制御することを示している(35)。免疫チェックポイント阻害についてのこれらの重要な研究及び最近の臨床試験は、NSCLC患者においてPD−1抗体と、5−アザシチジンと、エンチノスタットとを組み合わせる臨床試験の開始につながっている(http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01928576?term=entinostat+pd−1&rank=1)。この試験において、腫瘍細胞における遺伝子発現の変化、及びMDSCの数及び機能の変化の両方の重要性を決定することは興味深い。本発明者らの観察は、いくつかの疑問点を提起した。例えば、エピジェネティック阻害薬及びPI3K阻害薬によるMDSCの選択的抑制の根底にある機構は何なのか?免疫抑制細胞を標的化する他のアプローチ(例えば、骨髄抑制薬剤)は、免疫チェックポイント阻害と協同して、固形腫瘍及び転移の根絶をもたらすのか?免疫チェックポイント阻害前のエピジェネティック阻害薬によるプライミングは、現在の研究においてなされる2つの同時投与と同程度に良好に機能するのか?これらの疑問点に対処する実験は、免疫力を利用するより効果的な治療法の開発につながり得る。
【0024】
上記の開示は、全体として本発明を説明する。本明細書に開示される全ての参考文献は、参照によって明確に組み込まれる。説明のみの目的で本明細書に提供され、本発明の範囲を限定することは意図されない、以下の具体的な実施例を参照することによって、より完全な理解を得ることができる。
【実施例】
【0025】
実施例1
材料及び方法
試薬。L−グルタミンを有するHyClone RPMI1640及びMcCoy’s5Aを、Invitrogen Life Technologiesから購入した。HyCloneウシ胎仔血清(FBS)を、Thermo Scientificから購入した。IV型クロストリジウム・ヒストリチクム(Clostridium histolyticum)由来のコラゲナーゼを、Sigma−Aldrichから購入した。以下の抗体及び試薬を、動物実験に使用した:mCD152(mCTLA−4)モノクローナル抗体(9H10、BioXCell)、mPD−1モノクローナル抗体(RMP1−14、BioXCell)、mCD25モノクローナル抗体(PC61.5.3、BioXCell)、mLy6Gモノクローナル抗体(RB6−8C5、BioXCell)、ポリクローナルハンプスターIgG(BioXCell)、エンチノスタット(BPS Bioscience)、5−アザシチジン(Invivogen)。
【0026】
細胞株。4T1(CRL−2539、マウス乳腺腫瘍細胞)及びCT26(CRL−2638、マウス結腸直腸腺癌)を、ATCCから購入した。両方の腫瘍細胞株を、37℃、10%のウシ胎仔血清、5%のCO2を補足したMcCoy’s5A中で増殖させた。
【0027】
IlluminaゲノムDNAライブラリの調製。Illuminaの(Illumina)提案プロトコルに従い、以下の修正をもって、ゲノムDNAライブラリを調製した。2〜3μgのゲノムDNAを、100μlの最終体積までTEで希釈し、Covaris超音波処理器(Covaris)内で200bpの平均サイズに剪断した。その後、DNAをNucleospinキット(Macherey−Nagel)で精製し、50μlの溶出緩衝液で溶出させた。別段記述しない限り、以下の工程に使用された全ての試薬は、New England Biolabs(NEB)からのものであった。その後、45μlの精製したDNAを、40μlのddH2O、10μlのエンドリペア緩衝液、及び5μlのエンドリペア酵素と混合した。混合物を20℃で30分間インキュベートし、Qiagen PCR精製キット(Qiagen)によって精製し、70℃まで温めた42μlの溶出緩衝液(EB)で溶出させた。その後、エンドリペア反応物を、42μlのエンドリペアしたDNA、5μlの10X dAテーリング反応緩衝液、及び5μlのクレノウ断片(3’〜5’エキソ−)を使用してAテーリングし、37℃で30分間インキュベートし、その後、MinElute PCR精製キット(Qiagen)で精製した。精製したDNAを、27μlの65℃のEBで溶出させた。25μlのAテーリングしたDNA、10μlのPE−アダプター(Illumina)、10μlの5X連結緩衝液、及び5μlのQuick T4リガーゼによってアダプター連結を実行した。連結混合物を、20℃で15分間インキュベートした。50μlの連結混合物を、NucleoSpin Extract IIキット(Clontech)からの200μlのNT緩衝液と混合することによって精製を行い、NucleoSpinカラム内に充填した。カラムを、卓上遠心機内、14,000gで1分間遠心分離し、600μlの洗浄緩衝液(ClontechからのNT3)で1回洗浄し、再度2分間遠心分離して、完全に乾燥させた。キット内に含まれる50μlの溶出緩衝液中で、DNAを溶出させた。精製され、連結したDNAを、以下の条件下、PCR増幅した。32.5μlのH2O、2.5μl(DMSO)、10μlの5X Phusion HF緩衝液、10mMの各dNTPを含有する1.0μlのdNTP混合物、0.5μlのIllumina PEプライマー番号1、0.5μlのIllumina PEプライマー番号2、0.5μlのHotstart Phusionポリメラーゼ、及び5μlの連結したDNAからなる、およそ10の反応物を準備した。使用したPCRプログラムは、98℃で1分間;98℃で20秒間、65℃で30秒間、72℃で30秒間を10〜16サイクル;72℃で5分間であった。その後、反応物を貯蔵し、PCR生成物とNucleoSpin Extract IIキットからのNT緩衝液との1:2混合物で精製し、キット内に含まれるプロトコルによって精製した。ライブラリDNAを70℃溶出で溶出させ、DNA濃度を、ナノドロップで、260nmでの吸光によって推定し、その後、試料をSureselectエキソーム単離へと進めた。
【0028】
エキソームキャプチャ。AgilentのSureSelect Paired−End Mouse Exome Kit(Agilent)からのプロトコルに従って、以下の修正をもって、マウスのエキソームをキャプチャした。(1)25μlのSureSelect Hyb番号1、1μlのSureSelect Hyb番号2、10μlのSureSelect Hyb番号3、及び13μlのSureSelect Hyb番号4を含有するハイブリダイゼーション混合物を調製した。(2)上記の3.4μl(0.5μg)のPE−ライブラリDNA、2.5μlのSureSelect阻害剤番号1、2.5μlのSureSelect阻害剤番号2、及び0.6μlの阻害剤番号3を、384ウェルのダイヤモンドPCRプレート(カタログ番号AB−1111、Thermo−Scientific)内、1つのウェルに充填し、2層のmicroAmp透明接着フィルム(カタログ番号4306311、ABI)で密封し、GeneAmp PCRシステム9700サーモサイクラー(Life Sciences Inc.)内に95℃で5分間置き、その後、(加熱蓋を付けて)65℃で保持した。(3)工程(1)からの25μlのハイブリダイゼーション緩衝液を、加熱蓋を付けた別の密封されたプレート内で、65℃で少なくとも5分間加熱した。(4)5μlのSureSelectオリゴキャプチャライブラリ、1μlのヌクレアーゼを含まない水、及び1μlの希釈したリボヌクレアーゼ阻害剤(1:1のリボヌクレアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼを含まない水の混合物)を、別の密封された384ウェルプレート内で混合し、65℃で2分間加熱した。(5)全ての反応物を65℃で維持しながら、工程(3)からの13μlのハイブリダイゼーション緩衝液、その後、工程(2)からのライブラリの全含有物(9μl)を、工程(4)からの7μlのSureSelectキャプチャライブラリ混合物に素早く添加した。混合物をピペットで10回上下させた。(6)384ウェルプレートを固く密封し、ハイブリダイゼーション混合物を、加熱蓋をして65℃で24時間インキュベートした。ハイブリダイゼーション後、5つの工程を実行して、キャプチャされたDNAライブラリを回収し、増幅した:(1)50μlのDynal MyOne Streptavidin C1磁気ビーズ(カタログ番号650.02、Invitrogen Dynal)を1.5mlの微量遠心管内に置き、ボルテックス混合機上で勢いよく再懸濁させた。200μlのSureSelect結合緩衝液を添加し、ボルテクサー上で5秒間混合し、その後、管をDynal磁気分離機内に置いてから、後で上清を除去することによって、ビーズを3回洗浄した。3回目の洗浄後、200μlのSureSelect結合緩衝液中にビーズを再懸濁させた。(2)キャプチャされたDNAを結合させるため、上記の全ハイブリダイゼーション混合物(29μl)をサーモサイクラーからビーズ溶液へと直接移動させ、直ちに4回反転させて、混合した。その後、ハイブリダイゼーション混合物/ビーズ溶液を、850rpmのEppendorf熱混合機内、室温で30分間インキュベートした。(3)ビーズを洗浄するために、Dynal磁気分離機を適用した後、ビーズから上清を除去し、ビーズを、ボルテックス混合機上で4秒間混合することによって、500μlのSureSelect洗浄緩衝液番号1中に再懸濁させ、室温で15分間インキュベートした。その後、磁気分離の後、ビーズから洗浄緩衝液番号1を除去した。65℃で10分間インキュベートした後、それぞれ500μlの予熱したSureSelect洗浄緩衝液番号2で、ビーズを更に3回洗浄した。最終洗浄の後、SureSelect洗浄緩衝液番号2を完全に除去した。(4)キャプチャされたDNAを溶出させるために、ビーズを50μlのSureSelect溶出緩衝液中に再懸濁させ、ボルテックス混合し、室温で10分間インキュベートした。磁気分離の後、上清を除去し、新たな1.5mlの微量遠心管中に採取し、50μlのSureSelect中和緩衝液と混合した。DNAをQiagen MinEluteカラムによって精製し、17μlの65℃の緩衝液EB中に溶出させて、15μlのキャプチャされたDNAライブラリを得た。(5)キャプチャされたDNAライブラリを以下の方法で増幅させた:9.5μlのH
2O、3μlの5X Phusion HF緩衝液、0.3μlの10mM dNTP、0.75μlのDMSO、0.15μlのIllumina PEプライマー番号1、0.15μlのIllumina PEプライマー番号2、0.15μlのHotstart Phusionポリメラーゼ、及び1μlのキャプチャされたエキソームライブラリをそれぞれ含むおよそ15のPCR反応物を準備した。使用したPCRプログラムは、98℃で30秒間;98℃で10秒間、65℃で30秒間、72℃で30秒間、72℃で5分間を14サイクルであった。PCR生成物を精製するために、(15のPCR反応物からの)225μlのPCR混合物を、NucleoSpin Extract IIキットからの450μlのNT緩衝液と混合し、上記のように精製した。最終ライブラリDNAを30μlの65℃溶出緩衝液で溶出させ、DNA濃度を、OD
260測定によって推定した。
【0029】
配列分析のためのcDNAの調製。製造者のプロトコル(Life Technologies)に従ってDynalオリゴ−dT磁気ビーズを使用するポリ−A選択を2回使用して、5〜10μgの全RNAからmRNAを調製し、13μlの溶出緩衝液で2回目を溶出させた。以下の修正をもって、SuperScript ds−cDNAキット(Invitrogen)を使用して、二本鎖(ds)cDNAを調製した。12μlの単離されたmRNAを2μlの50ng/μlランダムヘキサマーに添加し、70℃で10分間インキュベートし、その後、氷上に置いた。4.4μlの5X第1鎖緩衝液、2.2μlの0.1M DTT、及び1.1μlの10mM dNTPの混合物を管に添加し、45℃で2分間インキュベートし、その上に1.5μlのSSII酵素を添加し、全混合物を更に1時間インキュベートし、その後、氷上に置いた。第1鎖反応物に、90μlのddH
2O、30μlの5X第2鎖緩衝液、3μlの10mM dNTP、4μlのDNA Pol I、1μlのリボヌクレアーゼH、及び1μlの大腸菌DNAリガーゼを添加することによって、第2鎖cDNAを作製した。その後、混合物を16℃で2時間インキュベートし、その上に2μlのT4リガーゼを添加し、更に5分間インキュベートした。その後、Qiagen PCR精製キットを製造者の説明書に従って使用して、得られたcDNAを精製し、各回50μlの70℃の溶出緩衝液で2回溶出させた。100μlのcDNAを使用し、ゲノムDNAの代わりにcDNAを有するゲノムDNAライブラリプロトコルに従って、Illuminaライブラリを構築した。
【0030】
体細胞突然変異の特定。ライブラリをIllumina GAIIxまたはHiSeq Genome Analyzer上で配列決定した。配列決定の読み取りデータを分析し、CASAVA(Illumina)によってマウスゲノムmm9に整列させた。(i)不適正塩基が、順配向に少なくとも2つの読み取りデータ、及び逆配向に2つの読み取りデータを含有する、4つ以上の異なる対によって特定された場合、(ii)特定の不適正塩基を含有する異なるタグの数が、全ての異なるタグの少なくとも30%である場合のみ、不適正塩基を突然変異として特定した。
【0031】
推定発現H2−(d)エピトープの特定。特定された体細胞突然変異を、RNAseqデータに対して相互参照して、どの突然変異が発現されたのかを決定した。その後、正の突然変異に対応するアミノ酸変化を使用して、突然変異残基の上流及び下流の8個のアミノ酸を単離させることによって、突然変異エピトープを特定した。その後、この17個のアミノ酸配列を、H2−k(d)、H2−L(d)、及びH2−D(d)に対する潜在的な9個のアミノ酸バインダーについて、netMHCエピトープ特定アルゴリズム(netMHC v3.4)を使用してプロセシングした。使用されたカットオフは、中等度から高度の親和性バインダーに対応する、500nM以上の親和性であった。RNAseqデータの正規化計数(100万の読み取りデータ当たり長さに対して正規化)が0.5を超える場合、遺伝子が発現されると決定した。
【0032】
動物モデル。動物研究は、Johns Hopkins University Institutional Animal Care and Use Committeeによって承認され、監督された。全ての動物実験に、生後6〜8週齢のメスのBALB/Cマウス(Harlan Laboratories)を使用した。5×10
6個の4T1腫瘍細胞または5×10
6個のCT26腫瘍細胞を、各マウスの右側腹部の皮下に植え付けた。無作為化及び治療前に、腫瘍を11日間増殖させた。腫瘍移植の11、13、15、17、20、23、及び26日後、CT26を担持するマウスに、10mg/kgの抗PD−1抗体及び/または抗CTLA−4抗体を腹腔内に与え、腫瘍移植の11、13、15、及び17日後、4T1を担持するマウスに、10mg/kgの抗PD−1抗体及び/または抗CTLA−4抗体を腹腔内に与えた。細胞枯渇研究のため、腫瘍移植の12日後、4T1担腫瘍マウスに、単回用量の10mg/kgの抗CD25抗体または10mg/kgの抗Ly6G抗体を腹腔内に与えた。100μlのpH7.4無菌PBS(Invitrogen Life Technologies)で、全ての抗体を適切な濃度に希釈した。腫瘍移植の12日後、それぞれ20mg/kg及び0.8mg/kgの用量でエンチノスタット及び5−アザシチジン治療を開始した。12、14、16、及び18日目、4T1を担持するマウスに腹腔内注射した。J32は、4T1腫瘍移植の12、14、16、及び18日後、腹腔内注射によって22mg/kgで与えた。治療開始から30日間、結果の節に示される間隔で、腫瘍を測定した。腫瘍体積を、長さ×幅
2×0.5として計算した。
【0033】
転移分析。腫瘍移植の46日後、IACUCガイドラインに従って、4T1担腫瘍マウスを安楽死させた。肺、肝臓、及び脾臓を回収し、10%の中性緩衝液ホルマリン溶液(Sigma−Aldrich)中に固定し、1群当たり少なくとも3匹のマウスからの転移小結節を計数した。
【0034】
フローサイトメトリー。以下の抗体及び試薬をフローサイトメトリーに使用した:CD16/32(BD Biosciences)、CD3e Alexa Fluor488(14−C11、BD Biosciences)、CD4 Brilliant Violet421(GK1.5、BD Biosciences)、CD8a PerCP−Cy5.5(53−6.7、BD Biosciences)、CD25PE(PC61、BD Biosciences)、Foxp3Alexa Fluor647(MF23、BD Biosciences)、CD11b Alexa Fluor700(M1/70、BD Biosciences)、I−A/I−E Alexa Fluor488(M5/114.15.2、BD Biosciences)、Ly−6C PerCP−Cy5.5(AL−21、BD Biosciences)、CD11c PE(HL3、BD Biosciences)、F4/80APC(BM8、Biolegend)、Ly−6G Pacific Blue(1A8、Biolegend)、CD45 Pacific Orange(30−F11、Invitrogen Life Technologies)、及びLive/Dead Fixable Near IR Dead Cell Stain(Invitrogen Life Technologies)。フローサイトメトリーをLSR II(BD Biosciences)によって実行し、FACS Divaソフトウェア(BD Biosciences)によってデータを分析した。循環G−MDSC集団のレベルを評価するために、5−AZA/エンチノスタットを有するか、または有しない抗PD−1/抗CTLA−4抗体治療開始から7日後のマウスから血液試料を採取した。右または左の顔面静脈から、150μlの血液をK
2EDTA BD Microtainer(BD Biosciences)中に採取した。抗凝固血液試料からのRBCを、2mlの1X BD FACS Lyse(BD Biosciences)を使用して直ちに3分間溶解させ、試料を氷冷BD FACS緩衝液(BD Biosciences)中で2回洗浄した。Live/Dead Fixable Near IR Dead細胞染色とともに5分間インキュベートし、氷冷BD FACS緩衝液で2回洗浄した後、試料を適切な抗体で染色した。分析のために、本発明者らは、これらの細胞の既に確立された表現型基準をCD45
+CD11b
+Ly6G
+Ly6C
loF4/80
−MHCII
−細胞として使用し、全CD45陽性細胞を共通因子として使用した。腫瘍内CD8
+集団及び制御T細胞集団のレベルを評価するために、5−AZA/エンチノスタットを有するか、または有しない抗PD−1/抗CTLA−4抗体治療の開始から7日後に、マウスから切除した腫瘍試料から、リンパ球をまず精製した。簡潔には、原発腫瘍組織を回収し、秤量し、微細断片へと分割した。HBSS(Invitrogen Life Technologies)中、1mg/mlのコラゲナーゼIV(Sigma−Aldrich)を、200mgの腫瘍組織当たり1mlの割合で各試料に添加した。試料を、回転型振盪機上、37℃で、30分間インキュベートした。得られた組織破砕物を、0.4μmで濾過し、氷冷BD FACS緩衝液(BD Biosciences)で3回洗浄し、1試料当たり5×10
6個の細胞を抗体標識に使用した。CD45
+CD3
+CD8
+の既に確立された表現型基準を使用して、CD8
+T細胞レベルを評価し、全CD45
+CD3
+細胞を共通因子として使用した。CD45
+CD3
+CD4
+CD25
+FoxP3
+の既に確立された表現型基準を使用して、Treg細胞レベルを評価し、全CD45
+CD3
+CD4
+細胞を共通因子として使用した。
【0035】
細胞単離。Myeloid−Derived Suppressor Cell Isolation Kit、マウス(Miltenyi Biotec)及びBD FACS Aria III細胞選別機(BD Biosciences)を使用して、4T1担腫瘍動物からのMDSCを脾臓から単離させた。CD8a
+T Cell Isolation Kit II、マウス(Miltenyi Biotec)及びBD FACS Aria III細胞選別機(BD Biosciences)を使用して、抗PD−1及び抗CTLA−4抗体で治療された4T1を担持する動物の脾臓から、CD8
+細胞を単離させた。製造者のプロトコル及び公開されるプロトコルに従って、MDSC、Treg、及びCD8
+T細胞を単離させ、培養した(38、39)。G−MDSC(CD11b
+Ly6G
+Ly6C
loF4/80
−MHC−II
−)集団及びCD8
+(CD3
+CD8
+)集団の純度は、フローサイトメトリーによって決定されるところによると、95%超であり、これらの集団について、生存能は、トリパンブルー染色によって決定されるところによると、95%超であった。
【0036】
インビトロ生存率アッセイ。MDSC及びCD8
+T細胞を、10%のFBSを補足したRPMI1640培地中、2×10
6個の細胞/mlで96ウェルプレート上にプレーティングした。CD8
+T細胞培養物に、2000U/mlの組み換えインターロイキン−2(Invitrogen Life Technologies)を補足した。10%のFBSを補足したMcCoy5A中の4T1細胞を、96ウェルプレート上にプレーティングし、それらが70%超コンフルエンスに達するまで培養した。0μM〜50μMの範囲の濃度のエンチノスタット、5−アザシチジン、またはJ32とともに、37℃、5%のCO
2で細胞を24時間培養した。生細胞の比率を、細胞を10%(v/v)の細胞増殖試薬WST−1(Roche Applied Science)とともに、37℃で3時間インキュベートし、得られたホルマザン生成物のOD
450吸光度を測定することによって評価した。
【0037】
IFN−γアッセイ。新たに単離した4T1担腫瘍動物からのMDSC及びCD8
+T細胞を、2000U/mLの組み換えIL−2(Invitrogen Life Technologies)及びCD3/CD28抗体被覆ビーズ(Miltenyi)の存在下、5:1、2:1、1:1、1:2、及び1:5のMDSC対CD8
+T細胞の割合で培養した。MDSC及びCD8
+T細胞を1:1の割合で、0μM〜0.25μMの範囲の濃度のエンチノスタットとともに培養した。37℃で24時間インキュベートした後、Mouse IFN−γ DuoSet Elisa Development Kit(R&D Systems)を製造者の説明書に従って使用して、細胞を含まない上清を採取しIFN−γレベルをアッセイした。
【0038】
MDSC枯渇及び養子移入。MDSCのインビボ枯渇のため、4T1担腫瘍マウスを、腫瘍移植の11日後に腹腔内投与される、10mg/kgのmLy6Gモノクローナル抗体の単回ボーラスで治療した。MDSCの養子移入のため、4T1を担持するマウスから脾臓を採取し、Myeloid−Derived Suppressor Cell Isolation Kit、マウス(Miltenyi Biotec)によってMDSCを精製した。2回の連続カラム精製後、細胞を氷冷1X PBS(Invitrogen Life Technologies)中で2回洗浄し、細胞濃度を1×10
8個の細胞/mlに調節した。細胞生存能は、トリパンブルー染色によって確認されるところによると、95%超であり、細胞純度は、フローサイトメトリーによって決定されるところによると、90%超であった。単離の直後、1×10
8個の細胞/mlの100μlのMDSCを、4T1腫瘍移植の11、13、及び15日後に、尾静脈注射によって投与した。
【0039】
免疫蛍光。JHU IUCACガイドラインに従って、マウスを安楽死させ、無菌使い捨て手術用メス(Bard−Parker)を使用して、4T1担腫瘍マウスから原発腫瘍を切除した。切除した組織を、Tissue−Tek CRYO−OCT(Andwin Scientific)を充填したベース型内に置き、使用するまで−80℃で保管した。Leica CM3050 S Cryostat(Leica Biosystems)を使用して凍結した組織を切開し、1X PBS(Invitrogen Life Technologies)中、4%のパラホルムアルデヒド(Alfa Aesar)、0.3%のTriton X−100(Sigma−Aldrich)で組織を10分間固定した。1X PBS中、0.05%のTween−20(Sigma−Aldrich)でスライドを3回洗浄し、その後、1X PBS中、0.05%のTween−20で5分間3回洗浄した。1X PBS中、3%のBSA(Sigma−Aldrich)、0.05%のTween−20で組織を30分間ブロッキングし、その後、10%の正常ヤギ血清(Invitrogen Life Technologies)で更に30分間ブロッキングした。ブロッキングした組織を、1:50、1:100、及び1:200濃度の抗CD8(YTS169.4、Abcam)または抗Ly6G(RB6−8C5、Abcam)中で、4℃で一晩インキュベートした。一次抗体で一晩染色した後、スライドを、1X PBS中、0.05%のTween−20で3回洗浄し、1:500のヤギ抗ラットAF488(Invitrogen Life Technologies)またはヤギ抗ラットAF594(Invitrogen Life Technologies)二次抗体とともに20℃で1時間インキュベートした。スライドを、1X PBS中、0.05%のTween−20で5回洗浄し、カバーガラスを置く前に、組織試料に1滴のGold/DAPI(Invitrogen Life Technologies)を添加し、スライドを、暗所に4℃で保管した。撮像には、ECLIPSE TE2000−E microscope及びEZ−LIMO for Nikon C1 Confocal v.2.30を含むNikon C1 Laser Scanning Confocal Systemを使用した。
【0040】
逆転写PCR(RT−PCR)。5×10
6個のCT26細胞または4T1細胞を、0.75mlのTrizol LS試薬(Invitrogen Life Technologies)及び0.25mlのクロロホルム(Sigma−Aldrich)中に再懸濁させた。試料を15秒間ボルテックスし、20℃で10分間インキュベートした。4℃で15分間、12000gで遠心分離した後、上部水相を採取し、0.5mlの100%イソプロパノール(Sigma−Aldrich)を添加した。試料を20℃で10分間インキュベートした後、4℃で10分間、12000gで遠心分離した。得られたペレットを10分未満空気乾燥させ、リボヌクレアーゼを含まない水(Invitrogen Life Technologies)で再懸濁させて、500ng/μlの最終濃度をもたらした。SuperScript III One−Step RT−PCR System with Platinum Taq DNA Polymerase(Invitrogen Life Technologies)を使用して、PCRを実行した。アニーリング温度を、H−2D(d)、β2m、及びTAP1について55℃に設定し、β−アクチンについて60℃に設定した。試料を1%のアガロースゲル上で分析した。RT−PCRには、以下のプライマーを使用した:
【0041】
統計。全ての統計分析は、Prism5.0(GraphPad Software,Inc)によって実行した。原発腫瘍増殖曲線を、まず2元配置分散分析によって分析し、個々の群を、両側のウィルコクソン順位和検定と比較した。カプラン・マイヤー生存曲線をログランク検定によって分析した。転移巣の統計的有意性、フローサイトメトリー分析、及びインビトロアッセイを、両側のウィルコクソン順位和検定によって評価した。
【0042】
実施例2
遺伝子分析。本発明者らはまず、CT26細胞及び4T1細胞の両方のエキソーム(24,306個の遺伝子)を配列決定した。生成された配列のうちの80億塩基及び35億塩基を、CT26及び4T1のゲノムにそれぞれマッピングした。標的領域内の塩基のうちの83.5%(CT26)及び72.3%(4T1)は、腫瘍DNA中の少なくとも10個の特有な読み取りデータによって網羅された。エキソームの配列決定は、CT26及び4T1それぞれにおいて、683個及び47個の体細胞突然変異を明らかにした(データセットS1)。
【0043】
ヒト結腸直腸癌及び乳癌において、体細胞突然変異によって作製される突然変異アミノ酸のうちの約10%が、患者のMHC−I対立遺伝子によって認識されることが予想されるエピトープをもたらすことが示されている(17)。マウス結腸直腸腫瘍(CT26)及び乳腺腫瘍(4T1)についてこれが真であるかどうかを決定するために、本発明者らは、確立されたアルゴリズムを使用して、体細胞突然変異エピトープをBALB/c MHC−Iにマッピングした。そのような予想は、突然変異遺伝子が発現される場合にのみ有意義であるため、本発明者らは、RNA−Seqを使用して、2つの細胞株のトランスクリプトームを決定した。CT26において検出された683個の突然変異のうちの314個は、発現された遺伝子中に生じ、28個の突然変異したエピトープが、少なくとも中等度の親和性で、BALB/cマウスにおいて見られるH2−(d)MHC−I対立遺伝子に結合することが予想された(データセットS1及び表1)。4T1細胞は、発現された遺伝子中に27個の突然変異を内部に持っており、1個のみがH2−(d)MHC−I対立遺伝子に結合することが予想された。これらのデータは、CT26は4T1よりも免疫原性であり、これは前者がより多くの突然変異エピトープを有するためであるという提案と一貫する。それはまた、環境突然変異原(UV光及びタバコの煙など)に関連するヒト腫瘍は他の腫瘍よりも多くの突然変異を有するという観察とも一貫する(18)。
【0044】
(表1)ゲノム分析及びトランスクリプトーム分析から予想される、突然変異MHC−Iエピトープ
【0045】
実施例3
免疫チェックポイント阻害の効果。その後、本発明者らは、マウスにおいて、これらの細胞に由来する腫瘍に対する免疫チェックポイント阻害抗体の効果を試験した。中等度のサイズ(約400mm
3)の皮下CT26腫瘍を担持するBALB/cマウスを初期実験に使用した。単一薬剤としての抗CTLA−4抗体または抗PD−1抗体による頻回治療は腫瘍増殖を遅延させたが、腫瘍根絶は観察されなかった(
図1A及びB)。両方の抗体による組み合わせ療法は、大多数のマウスにおける腫瘍の根絶をもたらした。逆に、600mm
3よりも大きい腫瘍は、組み合わせ抗PD−1/抗CTLA4治療にも応答せず(
図1C)、11匹のうちの4匹の動物のみが長期の生存率を示した(
図1D)。
【0046】
次に、よく確立された4T1腫瘍(約400mm
3)を有するBALB/cマウスを評価し、これらの腫瘍は、肺及び他の器官へと自然転移した。4T1腫瘍モデルは、免疫療法を含むほとんどの治療薬剤に対して高度に不応性である(16)。原発腫瘍が手術により除去された場合ですら、動物は一般に、転移性疾患に屈する(19)。少数の原発腫瘍は、抗体治療に対する持続応答を示した。大型CT26腫瘍を有するマウスと類似して、10匹のうちの3匹の動物のみが、抗PD−1抗体及び抗CTLA−4抗体の両方で治療されたとき、それらの原発腫瘍の退縮を示し、これらが、唯一の長期生存者であった(
図1E及びF)。
【0047】
実施例4
エピジェネティック修飾。本発明者らは、動物内の治癒していない腫瘍が、腫瘍細胞におけるエピジェネティックサイレンシングを通して、MHC−I関連遺伝子の発現を下方制御している可能性があると仮定した。実際、この仮説は、DNAメチルトランスフェラーゼまたはヒストンデアセチラーゼ(HDAC)のいずれかの阻害薬を使用する、エピジェネティック修飾(20)に関与する治療法の基礎を形成する。この可能性を評価するために、本発明者らは、上記の大型CT26腫瘍(600mm
3超)を担持する動物を、抗PD−1/抗CTLA−4抗体、ならびに5−アザシチジン(AZA、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬)及びエンチノスタット(ENT、クラスI HDAC阻害薬)で治療した。腫瘍は、このレジメンに際立って良好に応答し、11匹のうちの10匹のマウスにおいて原発腫瘍が根絶され、腫瘍移植の60日後の生存率は100%であった(
図1D)。同様に、抗PD−1/抗CTLA−4プラスAZA/ENT治療に応答して、4T1腫瘍(約400mm
3)を有するマウスは、治療開始の3週間後、全ての原発腫瘍の完全な退縮、及び腫瘍移植の100日後に80%の生存率を示した(
図1E及びF)。エンチノスタットが使用されたとき、体重変化によって示される一時的な自己制御毒性が観察された(
図37)。しかしながら、抗PD−1/抗CTLA−4抗体の添加は、毒性を加えることはなかった。
【0048】
平行実験において、本発明者らは、4T1担腫瘍マウスを上記のように治療したが、それらを腫瘍移植の6週間後に屠殺した。その後、本発明者らは、それらの原発腫瘍ならびに肺及び他の器官を転移について検査した。原発腫瘍は、抗PD−1/抗CTLA−4抗体プラスAZA/エンチノスタットで治療した5匹全てのマウスにおいて根絶され、それらのうちのいずれも、いかなる転移も示さなかった(
図1G及び表2)。対照的に、抗PD−1/抗CTLA−4治療を単独で受けた5匹全てのマウスは、依然として大型の原発腫瘍及び平均で11個の肺転移を有した。本発明者らはまた、担腫瘍マウスを抗PD−1/抗CTLA−4抗体プラスエンチノスタットまたはAZAのいずれかでも治療した。抗PD−1/抗CTLA−4抗体プラスエンチノスタットで治療したマウスのうちのいずれにおいても、原発腫瘍または転移は見出されず、PD−1/CTLA−4二重阻害と組み合わされるとき、(DNAメチル化阻害薬を有しない)単独でのクラスI HDAC阻害薬が、原発腫瘍及び転移の両方を根絶するのに十分であることを示した(
図1G及び表2)。抗PD−1/抗CTLA−4抗体プラスAZAで治療したマウスにおいて、転移は観察されなかったものの、原発腫瘍は根絶されなかった。PD−1/CTLA−4阻害なしでは、エンチノスタットおよびAZAは単独または組み合わせであるかに関わらず、原発腫瘍または転移のいずれも根絶することができなかった(
図1G及び表2)。PD−1/CTLA−4阻害が適用されなかった場合、転移巣は、肺内のものに加えて複数の器官において観察された。
【0049】
(表2)4T1原発腫瘍及び転移巣
【0050】
実施例5
機構研究。上記の通り、本発明者らは、エピジェネティック修飾薬はMHC−I関連遺伝子の発現を増加させ、それにより癌細胞をT細胞によってより死滅させやすくしていると予想した。この予想を試験するために、本発明者らは、AZA、エンチノスタット、またはこれら2つの組み合わせで治療したCT26細胞及び4T1細胞における逆方向転写−ポリメラーゼ鎖反応(RT−PCR)によって、MHC−I提示に関与する遺伝子の発現を分析した。MHC−I、β−2ミクログロブリン(B2M)、及び抗原プロセシング1(TAP1)遺伝子に関連する輸送体の発現が、治療の不在下で、両方の腫瘍細胞株において検出された。しかしながら、エピジェネティック修飾薬に対する曝露は、有意には発現を増加させなかった(
図S2)。
【0051】
その後、本発明者らは、エピジェネティック修飾薬が腫瘍内のT細胞蓄積に影響を与えるのかを決定した。フローサイトメトリーによって評価されるように、腫瘍浸潤CD8
+T細胞は、PD−1/CTLA−4阻害後、およそ4倍だけ増加した(
図2A及びB)。AZA及びエンチノスタットの添加は、腫瘍浸潤CD8
+T細胞を更には増加させなかった。しかしながら、治療レジメンにAZA及びエンチノスタットを含めると、未治療腫瘍または抗PD−1/CTLA−4抗体で治療した腫瘍のいずれと比較しても、腫瘍浸潤FoxP3
+Tregの有意な低下がもたらされた(
図2C及びD)。
【0052】
次に、本発明者らは、フローサイトメトリーによってMDSCを分析したが、これは、これらの骨髄由来未熟細胞がしばしば担腫瘍宿主において増加し、強力な免疫抑制活性を有するためである(21、22)。本発明者らは、4T1担腫瘍マウスが、非担腫瘍動物と比較して、循環顆粒球MDSC(CD11b
+Ly6G
+Ly6C
loMHC−II
−として定義される、G−MDSC)において5〜7倍の増加を有することを見出した(
図2E、
図S3A、及びB)。多数のG−MDSCもまた、脾臓及び腫瘍において観察された(
図S3B)。PD−1/CTLA−4阻害にエンチノスタットまたはAZA/エンチノスタットを追加すると、循環G−MDSCの数の著しい減少がもたらされ、それらは非担腫瘍マウスにおいて観察されるレベルと類似するレベルとなった(
図2E及びF)。興味深いことに、エピジェネティック修飾薬単独またはAZAプラス抗PD−1/抗CTLA−4抗体は、G−MDSCを減ずることはできなかった。エピジェネティック修飾薬は、免疫チェックポイント阻害と組み合わされるとき、腫瘍浸潤G−MDSCの数も実質的に減少させた(
図2G及びH)。
【0053】
これらのデータは、免疫チェックポイント阻害が細胞傷害性エフェクターT細胞(Teff)の増大につながるという仮説と一貫するが、Teffは、エピジェネティック修飾薬での治療によって免疫抑制性細胞が減少しない限り、完全には機能しない。この仮説を更に試験するために、本発明者らは、4T1腫瘍を担持するマウスにおいて、CD25またはLy6Gに対する中和抗体を使用して、TregまたはG−MDSCをそれぞれ枯渇させた(23〜25)。本発明者らは、抗PD−1/抗CTLA−4抗体との組み合わせで使用されるとき、抗Ly6Gが、エピジェネティック修飾薬と同等に効果的であることを見出した(
図3A)。フローサイトメトリーは、抗Ly6G治療後、G−MDSCレベルの実質的減少を示した(
図3B)。対照的に、抗CD25治療は、免疫チェックポイント阻害と組み合わされるとき、有効性のわずかな改善しか示さなかった(
図3A)。しかしながら、抗CD25治療はまた、CD25を過渡的に発現させ得る活性化Teffにも影響を与え得ることに留意されたい。予想通り、免疫チェックポイント阻害なしでは、抗CD25及び抗Ly6Gは両方とも非効果的であった(
図3A)。
【0054】
腫瘍誘導G−MDSCが免疫チェックポイント阻害の効果に干渉する能力を直接評価するために、本発明者らは、親和性精製によってそれらを4T1担腫瘍マウスから単離させた。その後、本発明者らは、精製されたG−MDSCを、抗PD−1/抗CTLA−4抗体プラスAZA/エンチノスタットで治療した4T1担腫瘍マウスに注射した。G−MDSCの養子移入は、組み合わせ療法に対する応答を有意に減弱させた(
図3C)。上記の結果に基づいて、本発明者らは、エピジェネティック修飾の効果は、Tregの直接枯渇の結果であるよりも、G−MDSCの枯渇の結果である可能性が高いと結論付けた。
【0055】
エピジェネティック修飾がG−MDSCに直接影響を与えるのかを研究するために、本発明者らは、4T1担腫瘍マウスからのこれらの細胞を上記のように精製し、それらをインビトロでエンチノスタットまたはAZAで処理した。G−MDSCは、エンチノスタット治療後、用量依存的様式で、著しく減少した生存能を示した(
図4A)。逆に、AZAは、同等の濃度では効果を有しなかった(
図4B)。本発明者らはまた、4T1腫瘍細胞を同一の濃度のエンチノスタットまたはAZAでも処理し、それらが非応答性であることを見出した(
図4A及びB)。重要なことに、エンチノスタットは、CD8
+T細胞に対して控えめな効果しか有さず(
図4A)、CD8
+T細胞を残しながらG−MDSCを枯渇させ得る大きな治療機会を作り出す。最後に、本発明者らは、CD8
+T細胞をG−MDSCとともに共培養し、CD3抗体及びCD28抗体でのT細胞活性化後、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって、培養培地におけるインターフェロン−γ(IFN−γ)の濃度を分析した。G−MDSCは、IFN−γ分泌を阻害した(
図4C)一方で、培養培地にエンチノスタットを含めると、用量依存的様式で阻害が逆転した(
図4D)。これらのデータは、G−MDSCがCD8
+T細胞の機能を直接阻害し、エンチノスタットがG−MDSCを直接抑制することによって阻害を緩和するという考えを支持した。
【0056】
この結論を更に確認するため、ならびに同一の目的を達成するための更なる治療的アプローチを提供するために、本発明者らは、G−MDSC機能を抑制し得る他の治療薬剤を探索した。ホスファチジルイノシチド3−キナーゼ(PI3K)は、造血細胞生物学において重要な役割を果たすことが知られており、Gr1
+/CD11b
+骨髄細胞を活性化することができる(26)。本発明者らは、PI3K阻害薬の多様なアレイを以前に開発しており、高い細胞効能を有する1つ(J32)を選択して、試験した(27〜29)。J32は、ナノモル濃度でG−MDSCに対して細胞傷害性(14.3nMのEC
50)であり、CD8
+T細胞(94.6nMのEC
50)に対してずっと毒性が低いことが証明された(
図S4A)。抗PD−1/抗CTLA−4抗体と組み合わせた、比較的低用量のJ32(22mg/kg)での4T1担腫瘍マウスの治療は、循環G−MDSCの著しい減少(
図S4B)、及び動物のうちの80%において4T1腫瘍の根絶(
図S4C)をもたらした。単独では、J32は、4T1腫瘍増殖に対する明らかな効果は有しなかった。
【0057】
実施例5
4T1腫瘍細胞を、BALB/cマウスに皮下注射した。腫瘍細胞注射の10、12、14、及び16日後、抗PD−1(10mg/kg)抗体及び抗CTLA−4(10mg/kg)抗体を、第2、3、4、及び5群のマウスに腹腔内注射した。11、13、15、及び17日目、エンチノスタット(ENT、20mg/kg)及び5−アザシチジン(AZA、0.8mg/kg)を、第4及び5群のマウスに腹腔内注射した。13及び15日目、クロストリジウム・ノビイ−NT胞子(1匹のマウス当たり5000万個)を、第1、3、及び5群のマウスの4T1腫瘍皮下に直接注射した。その後、腫瘍細胞注射の100日後まで、マウス生存率を詳しく経過観察した。生存率曲線を、
図9に示す。病理学的評価のために解剖した死亡マウスは、広範な肺転移を一定に有した。
【0058】
この実験において示されるチェックポイント阻害(抗PD−1/抗CTLA−4)プラスエピジェネティック阻害(ENT/AZA)の有効性(50%の治癒率)は、前の実施例において示された有効性(80%の治癒率)よりもいくらか低かった。しかしながら、この実験における抗PD−1/抗CTLA−4単独の有効性もまた低かった(前の実施例における30%の治癒率に対して、ここでは10%の治癒率)。組み合わせ療法において観察された有効性の増強は、減少していない。有効性の変動は、異なる製造ロットからの抗体の質によるものである可能性が高い。
【0059】
参考文献
引用される各参考文献の開示は、本明細書に明確に組み込まれる。
【手続補正書】
【提出日】2017年2月16日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2017年7月7日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの第1の薬剤と、
免疫チェックポイントを阻害する少なくとも1つの第2の薬剤と
を含む、担腫瘍哺乳動物を治療するための薬学的組成物。
【請求項2】
前記第1の薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記第2の薬剤が、抗PD−1抗体、抗CTLA−4抗体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記第1の薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬であり、該ヒストンデアセチラーゼ阻害薬が、エンチノスタットである、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記第1の薬剤が、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬であり、該DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬が、5−アザシチジンである、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記第1の薬剤が、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬であり、該ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬が、J32である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記第2の薬剤が、抗PD−1抗体と抗CTLA−4抗体との組み合わせである、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシチジンとの組み合わせである、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシチジンとの組み合わせである、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシチジンとの組み合わせである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記腫瘍が、非小細胞肺癌(NSLC)ではない、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
クロストリジウム・ノビイ(Clostridium novyi)−NTの胞子と併用される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
単一パッケージ内に、
骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの第1の薬剤と、
少なくとも2つの免疫チェックポイントを阻害する少なくとも2つの第2の薬剤と
を含む、キット。
【請求項14】
前記第1の薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
前記少なくとも2つの第2の薬剤が、抗PD−1抗体及び抗CTLA−4抗体である、請求項13に記載のキット。
【請求項16】
前記第1の薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬であり、該ヒストンデアセチラーゼ阻害薬が、エンチノスタットである、請求項14に記載のキット。
【請求項17】
前記第1の薬剤が、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬であり、該DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬が、5−アザシチジンである、請求項14に記載のキット。
【請求項18】
前記第1の薬剤が、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬であり、該ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬が、J32である、請求項14に記載のキット。
【請求項19】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項15に記載のキット。
【請求項20】
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシチジンとの組み合わせである、請求項15に記載のキット。
【請求項21】
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシチジンとの組み合わせである、請求項13に記載のキット。
【請求項22】
クロストリジウム・ノビイ−NTの胞子を更に含む、請求項13に記載のキット。
【請求項23】
骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの第1の薬剤と、
少なくとも2つの免疫チェックポイントを阻害する少なくとも2つの第2の薬剤と
を含む、組成物。
【請求項24】
前記第1の薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記少なくとも2つの第2の薬剤が、抗PD−1抗体及び抗CTLA−4抗体である、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記第1の薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬であり、該ヒストンデアセチラーゼ阻害薬が、エンチノスタットである、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
前記第1の薬剤が、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬であり、該DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬が、5−アザシチジンである、請求項24に記載の組成物。
【請求項28】
前記第1の薬剤が、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬であり、該ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬が、J32である、請求項24に記載の組成物。
【請求項29】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項25に記載の組成物。
【請求項30】
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシチジンとの組み合わせである、請求項25に記載の組成物。
【請求項31】
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシチジンとの組み合わせである、請求項23に記載の組成物。
【請求項32】
クロストリジウム・ノビイ−NTの胞子を更に含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項33】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項34】
前記第1の薬剤が、MDSCの表面上に発現されるマーカーに結合するモノクローナル抗体である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項35】
前記第1の薬剤が、MDSCの表面上に発現されるマーカーに結合するモノクローナル抗体である、請求項13に記載のキット。
【請求項36】
前記第1の薬剤が、MDSCの表面上に発現されるマーカーに結合するモノクローナル抗体である、請求項23に記載の組成物。
【請求項37】
前記腫瘍が、結腸直腸癌である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項38】
前記腫瘍が、乳癌である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項39】
前記腫瘍が、結腸直腸癌転移である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項40】
前記腫瘍が、乳癌転移である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項41】
前記第1の薬剤が、単独では腫瘍細胞増殖を阻害するのに不十分である用量を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項42】
前記第1の薬剤が、1つ以上の単位投与量中に、単独では腫瘍細胞増殖を阻害するのに不十分である量で存在する、1つ以上の単位投与量を含む請求項13に記載のキット。
【請求項43】
前記第1の薬剤が、単独では腫瘍細胞増殖を阻害するのに不十分である単位投与量中に存在する、単位投与量である請求項23に記載の組成物。
【請求項44】
骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの第1の薬剤と、
少なくとも2つの免疫チェックポイントを阻害する少なくとも2つの第2の薬剤と
を含む、担腫瘍哺乳動物を治療するための薬学的組成物。
【請求項45】
前記2つの第2の薬剤が、抗PD−1抗体及び抗CTLA−4抗体である、請求項44に記載の薬学的組成物。
【請求項46】
クロストリジウム・ノビイ−NTの胞子と併用される、請求項44に記載の薬学的組成物。
【請求項47】
骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの薬剤を含む、細菌またはウイルス感染症を有する哺乳動物を治療するための薬学的組成物であって、該薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、前記薬学的組成物。
【請求項48】
前記薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬であり、該ヒストンデアセチラーゼ阻害薬が、エンチノスタットである、請求項47に記載の薬学的組成物。
【請求項49】
前記薬剤が、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬であり、該DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬が、5−アザシチジンである、請求項47に記載の薬学的組成物。
【請求項50】
前記薬剤が、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬であり、該ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬が、J32である、請求項47に記載の薬学的組成物。
【請求項51】
前記感染症が、慢性ウイルス感染症である、請求項47に記載の薬学的組成物。
【請求項52】
前記感染症が、関連する敗血症を伴う細菌性である、請求項47に記載の薬学的組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の更に別の態様において、細菌またはウイルス感染症を有する哺乳動物を治療する方法が提供される。骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの薬剤が、投与される。薬剤は、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)
p110αサブユニット阻害薬
、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本明細書の閲読時に当業者に明らかになるであろう、これら及び他の実施形態は、当該技術分野に、治療困難な腫瘍を治療するための治療調製物及び方法を提供する。
[本発明1001]
担腫瘍哺乳動物を治療する方法であって、
骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの第1の薬剤を投与する工程と、
免疫チェックポイントを阻害する少なくとも1つの第2の薬剤を投与する工程と
を含む、方法。
[本発明1002]
前記第1の薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記第2の薬剤が、抗PD−1抗体、抗CTLA−4抗体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、本発明1001の方法。
[本発明1004]
前記第1の薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬であり、該ヒストンデアセチラーゼ阻害薬が、エンチノスタットである、本発明1002の方法。
[本発明1005]
前記第1の薬剤が、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬であり、該DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬が、5−アザシタジンである、本発明1002の方法。
[本発明1006]
前記第1の薬剤が、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬であり、該ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬が、J32である、本発明1002の方法。
[本発明1007]
前記第2の薬剤が、抗PD−1抗体と抗CTLA−4抗体との組み合わせである、本発明1003の方法。
[本発明1008]
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシタジンとの組み合わせである、本発明1007の方法。
[本発明1009]
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシタジンとの組み合わせである、本発明1003の方法。
[本発明1010]
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシタジンとの組み合わせである、本発明1001の方法。
[本発明1011]
前記腫瘍が、非小細胞肺癌(NSLC)ではない、本発明1001の方法。
[本発明1012]
クロストリジウム・ノビイ(Clostridium novyi)−NTの胞子を投与する工程を更に含む、本発明1001の方法。
[本発明1013]
単一パッケージ内に、
骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの第1の薬剤と、
少なくとも2つの免疫チェックポイントを阻害する少なくとも2つの第2の薬剤と
を含む、キット。
[本発明1014]
前記第1の薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、本発明1013のキット。
[本発明1015]
前記少なくとも2つの第2の薬剤が、抗PD−1抗体及び抗CTLA−4抗体である、本発明1013のキット。
[本発明1016]
前記第1の薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬であり、該ヒストンデアセチラーゼ阻害薬が、エンチノスタットである、本発明1014のキット。
[本発明1017]
前記第1の薬剤が、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬であり、該DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬が、5−アザシタジンである、本発明1014のキット。
[本発明1018]
前記第1の薬剤が、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬であり、該ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬が、J32である、本発明1014のキット。
[本発明1019]
前記抗体が、モノクローナル抗体である、本発明1015のキット。
[本発明1020]
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシタジンとの組み合わせである、本発明1015のキット。
[本発明1021]
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシタジンとの組み合わせである、本発明1013のキット。
[本発明1022]
クロストリジウム・ノビイ−NTの胞子を更に含む、本発明1013のキット。
[本発明1023]
骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの第1の薬剤と、
少なくとも2つの免疫チェックポイントを阻害する少なくとも2つの第2の薬剤と
を含む、組成物。
[本発明1024]
前記第1の薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、本発明1023の組成物。
[本発明1025]
前記少なくとも2つの第2の薬剤が、抗PD−1抗体及び抗CTLA−4抗体である、本発明1023の組成物。
[本発明1026]
前記第1の薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬であり、該ヒストンデアセチラーゼ阻害薬が、エンチノスタットである、本発明1024の組成物。
[本発明1027]
前記第1の薬剤が、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬であり、該DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬が、5−アザシタジンである、本発明1024の組成物。
[本発明1028]
前記第1の薬剤が、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬であり、該ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬が、J32である、本発明1024の組成物。
[本発明1029]
前記抗体が、モノクローナル抗体である、本発明1025の組成物。
[本発明1030]
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシタジンとの組み合わせである、本発明1025の組成物。
[本発明1031]
前記第1の薬剤が、エンチノスタットと5−アザシタジンとの組み合わせである、本発明1023の組成物。
[本発明1032]
クロストリジウム・ノビイ−NTの胞子を更に含む、本発明1023の組成物。
[本発明1033]
前記抗体が、モノクローナル抗体である、本発明1007の方法。
[本発明1034]
前記第1の薬剤が、MDSCの表面上に発現されるマーカーに結合するモノクローナル抗体である、本発明1001の方法。
[本発明1035]
前記第1の薬剤が、MDSCの表面上に発現されるマーカーに結合するモノクローナル抗体である、本発明1013のキット。
[本発明1036]
前記第1の薬剤が、MDSCの表面上に発現されるマーカーに結合するモノクローナル抗体である、本発明1023の組成物。
[本発明1037]
前記腫瘍が、結腸直腸癌である、本発明1001の方法。
[本発明1038]
前記腫瘍が、乳癌である、本発明1001の方法。
[本発明1039]
前記腫瘍が、結腸直腸癌転移である、本発明1001の方法。
[本発明1040]
前記腫瘍が、乳癌転移である、本発明1001の方法。
[本発明1041]
前記第1の薬剤が、単独では腫瘍細胞増殖を阻害するのに不十分である用量で投与される、本発明1001の方法。
[本発明1042]
前記第1の薬剤が、1つ以上の単位投与量中に、単独では腫瘍細胞増殖を阻害するのに不十分である量で存在する、1つ以上の単位投与量を含む本発明1013のキット。
[本発明1043]
前記第1の薬剤が、単独では腫瘍細胞増殖を阻害するのに不十分である単位投与量中に存在する、単位投与量である本発明1023の組成物。
[本発明1044]
担腫瘍哺乳動物を治療する方法であって、
骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの第1の薬剤を投与する工程と、
少なくとも2つの免疫チェックポイントを阻害する少なくとも2つの第2の薬剤を投与する工程と
を含む、方法。
[本発明1045]
前記2つの第2の薬剤が、抗PD−1抗体及び抗CTLA−4抗体である、本発明1044の方法。
[本発明1046]
クロストリジウム・ノビイ−NTの胞子を投与する工程を更に含む、本発明1044の方法。
[本発明1047]
細菌またはウイルス感染症を有する哺乳動物を治療する方法であって、
骨髄由来抑制細胞(MDSC)を抑制する少なくとも1つの薬剤を投与する工程を含み、該薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
[本発明1048]
前記薬剤が、ヒストンデアセチラーゼ阻害薬であり、該ヒストンデアセチラーゼ阻害薬が、エンチノスタットである、本発明1047の方法。
[本発明1049]
前記薬剤が、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬であり、該DNAメチルトランスフェラーゼ阻害薬が、5−アザシタジンである、本発明1047の方法。
[本発明1050]
前記薬剤が、ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬であり、該ホスホイノシトール3キナーゼ(PI3K)p110αサブユニット阻害薬が、J32である、本発明1047の方法。
[本発明1051]
前記感染症が、慢性ウイルス感染症である、本発明1047の方法。
[本発明1052]
前記感染症が、関連する敗血症を伴う細菌性である、本発明1047の方法。
【国際調査報告】