特表2017-528434(P2017-528434A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-528434レチノールまたはレチノール誘導体を含むマイクロニードル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-528434(P2017-528434A)
(43)【公表日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】レチノールまたはレチノール誘導体を含むマイクロニードル
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/07 20060101AFI20170901BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20170901BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20170901BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20170901BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20170901BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170901BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20170901BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20170901BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20170901BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20170901BHJP
   A61K 8/85 20060101ALI20170901BHJP
   A61K 47/59 20170101ALI20170901BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20170901BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20170901BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20170901BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20170901BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20170901BHJP
【FI】
   A61K31/07
   A61M37/00 530
   A61K9/16
   A61K9/70
   A61P17/00
   A61P43/00 105
   A61K8/34
   A61K8/73
   A61K8/81
   A61K8/60
   A61K8/85
   A61K47/59
   A61K47/36
   A61K47/38
   A61K47/32
   A61K47/26
   A61K47/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-504077(P2017-504077)
(86)(22)【出願日】2015年4月23日
(85)【翻訳文提出日】2017年1月24日
(86)【国際出願番号】KR2015004070
(87)【国際公開番号】WO2016013755
(87)【国際公開日】20160128
(31)【優先権主張番号】10-2014-0094220
(32)【優先日】2014年7月24日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウ−ソン・シム
(72)【発明者】
【氏名】ドン−チャン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン−ミン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ソン−フワ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ネ−ギュ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ソン−ギュ・パク
(72)【発明者】
【氏名】チョン−ク・イ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C167
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA71
4C076AA94
4C076BB31
4C076CC18
4C076EE06
4C076EE07
4C076EE16
4C076EE24M
4C076EE32
4C076EE37
4C076FF31
4C076FF36
4C076FF63
4C076FF67
4C076FF68
4C083AC122
4C083AD071
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD191
4C083AD212
4C083AD271
4C083AD272
4C083AD331
4C083AD332
4C083AD621
4C083AD622
4C083CC03
4C083DD12
4C083DD16
4C083EE01
4C083EE12
4C083FF01
4C167AA72
4C167CC01
4C167FF10
4C167GG02
4C167GG43
4C206AA01
4C206AA02
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4C206MA61
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4C206NA03
4C206NA06
4C206NA10
4C206NA12
4C206ZA89
4C206ZB21
(57)【要約】
本発明は、レチノールの安定性を確保し、レチノールの皮膚刺激を減らし、効果を持続的に発揮できるレチノール皮膚投与システムに関し、レチノールまたはレチノール誘導体を含有するマイクロパーティクルが含まれたマイクロニードルであることを技術的特徴とする。また、本発明は、皮膚刺激が減少し、レチノールの効果を長期間発揮でき、光、湿気、温度などに対し非常に不安定なレチノールの安定性を確保できるレチノール投与システムの製造方法を提供する。また、本発明は、このようなマイクロニードルを用いることを特徴とするレチノールの皮膚投与方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチノールまたはレチノール誘導体が含有されたマイクロパーティクルを含むマイクロニードル。
【請求項2】
前記マイクロニードルを形成する物質は皮膚内で溶解し、前記マイクロパーティクルは徐放性高分子を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項3】
前記マイクロニードルを形成する物質が、ヒアルロン酸、ナトリウム−カルボキシメチルセルロース、ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、糖類またはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項2に記載のマイクロニードル。
【請求項4】
前記マイクロニードルは、マイクロニードルを形成する物質に加え、可塑剤をさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載のマイクロニードル。
【請求項5】
前記徐放性高分子が、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコライド)、ポリ(ラクチドグリコライド)、ポリアンハイドライド、ポリオルトエステル、ポリエーテルエステル、ポリカプロラクトン、モノ−メトキシポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン(MPEG−PCL)、ポリエステルアミド、ポリ(ブチル酸)、ポリ(バレリアン酸)、ポリウレタン、ポリアクリレート、エチレン−ビニルアセテート重合体、アクリル置換セルロースアセテート、非分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン、ポリエチレンオキシド、またはこれらの共重合体、またはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項2に記載のマイクロニードル。
【請求項6】
前記徐放性高分子が、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコライド)及びポリ(ラクチドグリコライド)のいずれか一つ以上と、モノ−メトキシポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン(MPEG−PCL)との混合物であることを特徴とする、請求項5に記載のマイクロニードル。
【請求項7】
前記マイクロパーティクルが、マトリクスタイプまたはリザーバータイプであることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項8】
前記マイクロパーティクルの直径が、0.01〜10μmであることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項9】
前記レチノール誘導体が、レチニルアセテート、レチニルパルミテート、レチノールまたはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロニードル。
【請求項10】
(S1)徐放性高分子を用いて、レチノールまたはレチノール誘導体が含有されたマイクロパーティクルを製造する段階と、
(S2)皮膚内溶解性物質を用いて、前記マイクロパーティクルを含むマイクロニードルを製造する段階と、
を含む、レチノール含有マイクロニードルの製造方法。
【請求項11】
前記徐放性高分子が、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコライド)、ポリ(ラクチドグリコライド)、ポリアンハイドライド、ポリオルトエステル、ポリエーテルエステル、ポリカプロラクトン、モノ−メトキシポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン(MPEG−PCL)、ポリエステルアミド、ポリ(ブチル酸)、ポリ(バレリアン酸)、ポリウレタン、ポリアクリレート、エチレン−ビニルアセテート重合体、アクリル置換セルロースアセテート、非分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン、ポリエチレンオキシド、またはこれらの共重合体、またはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記皮膚内溶解性物質が、ヒアルロン酸、ナトリウム−カルボキシメチルセルロース、ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、糖類またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜9のうちいずれか一項に記載のマイクロニードルを用いることを特徴とする、レチノールの皮膚刺激を減らし、レチノールの徐放を達成するレチノールの皮膚投与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚紅斑などの副作用が減少し、レチノールの安定性が改善し、目的とする効果が長時間発揮されるレチノール皮膚投与システム、特に、レチノールを含むマイクロニードル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2014年7月24日出願の韓国特許出願第10−2014−0094220号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【0003】
レチノールは、ビタミンAの一種類であって、皮膚の表皮細胞が本来の機能を維持するのに重要な役割を果たす。具体的には、皮膚細胞に存在する細胞核のうち、DNAをしてRNAを発現させて細胞分化を促進し、動物の細胞の間に繊維状固体で存在する硬タンパク質であるコラーゲンと弾性繊維とで構成されたエラスチンなどの生合成を促進し、しわを減少させて皮膚の弾力を増大させる効能を有すると知られている。
【0004】
このため、レチノールは、早くからしわの除去や皮膚の老化を予防する化粧品として開発され始めており、1990年代末以降は世界の化粧品メーカーが相次いでレチノール含有化粧品を販売し、市場独占のための企業間の競争が激化していた。
【0005】
しかし、レチノール製品の場合、さまざまな問題点が現われた。具体的には、レチノールは、効果に優れた一方、光、温度、酸素などによって破壊されやすいため、化粧品の原料として用いられる場合、皮膚の奥まで到逹できる安定化が最も重要となる。外部要因によってレチノール成分が酸化して変質すれば、効果がなくなることは勿論、副作用まで生じ得るという問題点がある。これを解決するため、高価の特殊容器を使うか、使用条件を光のない場所に制限するか、または一旦使用し始めた化粧品は3ヶ月以内に使い切るように勧奨するなどのさまざまな不具合を伴っていた。
【0006】
かかる安定性についての問題点を解決するために、レチノールの代わりに、安定性に優れたレチニルアセテート及びレチニルパルミテートなどを用いることがあった。しかし、このようなレチノール誘導体は、レチノールのように皮膚深く浸透してタンパク質を合成できないため、安定性は高いが、効果が相対的に少ない。
【0007】
なお、レチノールは、皮膚への吸収時、紅斑などの皮膚刺激を誘発する問題を引き起こしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of Controlled Release 70(2001) 1−20
【非特許文献2】International Journal of PharmTech Research、3(2011) 1242−1254
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、レチノールの皮膚刺激が改善し、投与システム内におけるレチノールの安定性が確保され、レチノールの効果が長時間発揮されるレチノール投与システム及びこのシステムの製造方法、並びにこのシステムを用いたチノールの投与方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するため、本発明は、レチノールまたはレチノール誘導体を含有するマイクロパーティクルを含むマイクロニードルを提供し、より望ましくは、前記マイクロニードルを形成する物質は皮膚内で溶解され、マイクロニードルの皮膚適用時、マイクロニードルが溶解または崩壊することで、マイクロニードルの内部に含まれていたマイクロパーティクルが迅速に皮膚内へ出て、該マイクロパーティクルは徐放性高分子を含んでいるため、皮膚内でレチノールまたはこの誘導体を少量ずつ放出するようになる。
【0011】
本発明者は、多様な投与システムを研究したが、いかなるシステムも上述のレチノールのさまざまな問題点を同時に解決できなかった。本発明者は、鋭意研究の末、皮膚内溶解性(soluble)のマイクロニードル内に、徐放性高分子からなり、かつレチノール成分を含むマイクロパーティクルを含浸させることで、レチノールの安定性、皮膚刺激、効果の持続などを一度に解決できるという驚くべき発明をした。レチノール成分が封入されたマイクロパーティクルを溶解性マイクロニードルに含浸して皮膚に適用すれば、微細針によって痛症なく皮膚内へレチノール成分が透過し、微細針が皮膚内の水分によって溶解しながらレチノール成分の封入されたマイクロパーティクルが皮膚内へ伝達される。皮膚内へ伝達されたマイクロパーティクルからレチノール成分が徐々に放出されることで、レチノールによる皮膚刺激は緩和しながらレチノールの効果を極大化させることができる。
【0012】
上記の課題を解決するために、マイクロニードルは、皮膚内において溶解性でなければならず、溶解性マイクロニードルを形成するために、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid)、ナトリウム−カルボキシメチルセルロース(Na−CMC,Sodium carboxymethyl cellulose)、ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体、ポリビニルアルコール(Poly vinyl alcohol)及びポリビニルピロリドン(Poly vinyl pyrrolidone)などの水溶性高分子;キシロース(Xylose)、スクロース(Sucrose)、マルトース(Maltose)、ラクトース(Lactose)、トレハロース(Trehalose)などの糖類;またはこれらの混合物を用いることができる。特に、マイクロニードルの皮膚透過強度、皮膚内における溶解速度などを総合的に考慮すれば、ヒアルロン酸(Oligo−Hyaluronic acid)、ナトリウム−カルボキシメチルセルロース(Na−CMC,Sodium carboxymethyl cellulose)、及び糖類(saccharide)(より望ましくは、トレハロース(Trehalose))の混合物が望ましく、後述のグリセリン(Glycerine)まで混合したものがさらに望ましい。
【0013】
望ましくは、本発明によるマイクロニードルは、レチノール成分を含むマイクロパーティクル及びマイクロニードルを形成する上述の成分に加え、可塑剤、界面活性剤、保存剤、抗炎症剤などをさらに含むことができる。
【0014】
前記可塑剤(plasticizer)としては、例えば、エチレングリコール(Ethylene glycol)、プロピレングリコール(Propylene glycol)、ジプロピレングリコール(Dipropylene glycole)、ブチレングリコール(Butylene glycol)、グリセリン(Glycerine)などのポリオールを単独または混合して用いることができる。
【0015】
本発明において、前記レチノール成分とともにマイクロパーティクルを形成する物質は、マイクロニードルの製造過程で溶解または分散して消えることなく、レチノール成分をマイクロパーティクル内に捕集できる物質であるとともに、皮膚内でレチノール成分の徐放(sustained release)を達成できるようにする物質でなければならない。
【0016】
このようなマイクロパーティクルを形成する物質としては、徐放性高分子を用いることができ、徐放性高分子としては、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコライド)、ポリ(ラクチド−グリコライド)、ポリアンヒドリド、ポリオルトエステル、ポリエーテルエステル、ポリカプロラクトン、モノ−メトキシポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン(MPEG−PCL)、ポリエステルアミド、ポリ(ブチル酸)、ポリ(バレリアン酸)、ポリウレタン、ポリアクリレート、エチレン−ビニルアセテート重合体、アクリル置換セルロースアセテート、非分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルクロリド、ポリビニルフルオライド、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefins)、ポリエチレンオキシド、またはこれらの共重合体のような非生分解性高分子を単独または混合して用いることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0017】
レチノール成分の安定化及び皮膚内における放出性などを総合的に考慮すれば、前記徐放性高分子としては、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコライド)及びポリ(ラクチドグリコライド)のいずれか一つ以上と、モノ−メトキシポリエチレングリコール−ポリカプロラクトン(MPEG−PCL)との混合物であることがさらに望ましい。
【0018】
このようなマイクロパーティクルは、本発明の目的を達成できれば、マトリクス(matrix)タイプであってもよく、リザーバー(reservoir)タイプであってもよい。
【0019】
本発明において使用可能なマイクロパーティクルとしては、本発明の属する分野における多様な公知の方法で製造することができる。例えば、溶媒交換法(Solvent exchange method)、溶媒蒸発法(Solvent evaporation method)、メンブレン透過法(Membrane dialysis method)、噴霧乾燥法(Spray drying method)などを用いて本発明で使用可能なマイクロパーティクルを製造できる。例えば、非特許文献Journal of Controlled Release 70(2001) 1−20及びInternational Journal of PharmTech Research、3(2011) 1242−1254に記載の方法を用いることができる。望ましくは、通常の乳化及び溶媒蒸発法 (emulsification and Solvent evaporation method)によって製造することができる。
【0020】
望ましくは、本発明によるマイクロパーティクルの直径は、0.01〜10 μmである。パーティクルのサイズが10μm超過であれば、マイクロニードルへの含浸時、ニドルの強度が弱くなり皮膚透過が困難となる。本発明によるマイクロパーティクルの直径は、レーザー光散乱法(LLS)によって測定され、例えば、Malvern社製のZetasizer 2000TMを用いて測定できる。
【0021】
望ましくは、本発明のマイクロパーティクルは、レチノールまたはレチノール誘導体をマイクロパーティクルの総重量に対し0.01〜10重量%含み、より望ましくは0.1〜5重量%を含む。また、本発明のマイクロニードルはこのようなマイクロパーティクルを、マイクロニードルの総重量に対し0.05〜10重量%を含むことが望ましく、さらに望ましくは、0.1〜5重量%を含む。
【0022】
本発明において使用可能なレチノール誘導体としては、レチニルアセテート、レチニルパルミテート、レチノールまたはこれらの混合物があるが、本発明は、かかるレチノール誘導体の具体的種類に限定されない。
【0023】
また、本発明は、前記マイクロニードルが接触しているレチノール成分の投与用(伝達用)マイクロニードルパッチ(patch)システムを提供する。
【0024】
また、本発明は、(S1)上述の徐放性高分子を用いて、レチノールまたはレチノール誘導体が含有されたマイクロパーティクルを製造する段階と、(S2) 皮膚内で溶解性である物質を用いて、前記マイクロパーティクルを含むマイクロニードルを製造する段階と、を含み、レチノール成分の刺激が改善し、レチノール成分の安定性が確保され、効果が持続的に発揮できるレチノール含有マイクロニードルの製造方法を提供する。
【0025】
また、本発明は、本発明によるマイクロニードルを用いることを特徴とする、レチノールの皮膚刺激を減らし、レチノールの徐放を達成できるレチノール皮膚投与方法を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、レチノールの安定性が確保され、レチノールの皮膚刺激が減少し、効果が持続的に発揮できるレチノール皮膚投与用マイクロニードルを提供する。また、本発明は、皮膚刺激が減少し、レチノールの効果を長期間発揮でき、光、湿気、温度などに非常に不安定なレチノールの安定性を確保できるレチノール投与システムの製造方法を提供する。さらに、本発明は、このようなマイクロニードルを用いることを特徴とするレチノールの皮膚投与方法を提供する。
【0027】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明によるマイクロニードルを製造する多くの方法の一例を示す図である。溶解性マイクロニードルは、溶媒キャスト法(solution casting)により製造することができ、溶液をモールドにキャストして真空及び遠心機(centrifuge)により微細モールドに液を満たした後、乾燥させることで製造することができる。マイクロニードル構造体を形成する材料としては、通常の合成及び天然水溶性高分子を用いることができる。
図2】本発明によるマイクロニードルのレチノール放出の動きを評価するためのフランツ型拡散セル(Franz diffusion cell)を示す。
図3】豚皮膚を載置したフランツ型拡散セルを用いて評価した、マイクロニードルからのレチノール放出の評価結果を示すグラフである。
図4】レチノール自体(エマルションの形態で添加される)を含むマイクロニードル、本発明によるレチノールマイクロパーティクルを含むマイクロニードル、及びレチノールマイクロパーティクルを含む通常のクリーム剤形を皮膚に適用した後に現われる皮膚刺激の程度を示す写真である。
図5】レチノール自体(エマルションの形態で添加される)を含むマイクロニードル、本発明によるレチノールマイクロパーティクルを含むマイクロニードル、及びレチノールマイクロパーティクルを含む通常のクリーム剤形を皮膚に反復的に使用した場合に現われる皮膚刺激指数を示すグラフである。
図6】本発明によるレチノールマイクロパーティクルを含むマイクロニードル及びレチノールマイクロパーティクルを含む通常のクリーム剤形を長期間使用した後に現われるしわの改善程度を示す実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例】
【0030】
<レチノールマイクロパーティクルの製造>
ポリ乳酸(PLA)10gと、モノ−メトキシポリエチレングリコール−ポリカプロラクトンジブロック共重合体(MPEG−PCL diblock copolymer)10gをメチレンクロライド100gに溶かした後、レチノール50C(BASF社,レチノール50%)5gを混合することで、ポリマー−レチノール溶液を製造した。精製水500mLに、ポリビニルアルコール(PVA)2.5gを溶解し、PVA水溶液を製造した。PVA水溶液500mLを700rpmで攪拌しながら、ポリマー−レチノール溶液を徐々に添加して水中油型エマルション溶液(oil in water emulsion solution)を製造した。700rpmで24時間攪拌して有機溶媒であるメチレンクロライドを蒸発させることで、安定したレチノールマイクロパーティクルを製造した。ロータリーエバポレーター(Rotary evaporator)を用いて残留するメチレンクロライドを完全に除去しながら、レチノールの含量が全体の3%となるよう有機溶媒とともに水を蒸発させて濃縮した。
【0031】
液体クロマトグラフィーで分析した結果、レチノールの含量は2.9%であると確認され、粒径分析器(Zetasizer 2000TM、Malvern社製)で分析した結果、マイクロパーティクルの平均サイズは450nmであった。
【0032】
<レチノールまたはレチノールマイクロパーティクルが含有されたマイクロニードルの製造>
下記の表1に示したように、レチノール(エマルション形態で添加される。)またはレチノールマイクロパーティクルが含有されたマイクロニードルを製造した。
【表1】
【0033】
具体的には、レチノールが含浸された溶解性(soluble)マイクロニードル(R MN)を、次のように製造した。Oligo−HA(Hyaluronic acid)、Na−CMC及びトレハロースを精製水に溶解した後、グリセリン、HCO−40及びレチノール 50C(BASF社製,レチノール50%,Tween 20 50%)を添加し、オイル相のレチノールエマルション溶液を製造した。製造したレチノールエマルション溶液をシリコーンマイクロニードルモールドにキャストした後、3000rpmで10分間遠心分離して微細モールドに溶液を充填した。溶液の充填後、乾燥オーブン(70℃)で3時間乾燥し、接着フィルムを用いてマイクロニードルをシリコーンモールドから型抜きした。
【0034】
また、レチノールマイクロパーティクルが含浸された溶解性マイクロニードル(R−MP MN)は、次のように製造した。Oligo−HA、Na−CMC及びトレハロースを精製水に溶解した後、グリセリン、HCO−40及びレチノールマイクロパーティクル(レチノール3%)を添加することで溶液を製造した。製造した溶液をシリコーンマイクロニードルモールドにキャストした後、3000rpmで10分間遠心分離して微細モールドに溶液を充填した。溶液の充填後、乾燥オーブン(70℃)で3時間乾燥し、接着フィルムを用いてマイクロニードルをシリコーンモールドから型抜きした。
【0035】
<レチノール放出の動き>
豚皮膚を載置したフランツ型拡散セルを用いて、前記製造したマイクロニードルからのレチノールの放出を評価した(図2参照)。受容体溶液(acceptor solution)としては、1重量%のTween 20が含有されたPBS溶液を用いた。
【0036】
即ち、フランツ型拡散セルを用いて、時間の経過による豚皮膚組職及び受容体溶液のレチノールの含量を液体クロマトグラフィーによって測定した。豚皮膚にレチノール(エマルション)またはレチノールマイクロパーティクルが含浸されたマイクロニードルを接触させ、マイクロニードルを豚皮膚内へ浸透させて溶かした後(接触時間:2時間、温度:32℃)、マイクロニードルを除去した。マイクロニードルによってレチノールが吸収された豚皮膚をフランツ型拡散セルに入れ、レチノールが時間の経過により豚皮膚から受容体溶液に放出される動きを確認した。その結果を図3に示した。
【0037】
図3に示したように、レチノール(エマルション)が含浸されたマイクロニードルによってレチノールが浸透した豚皮膚は、時間が経過するによって豚皮膚内のレチノールの含量が急減し、受容体溶液のレチノールの含量が速く増加するのに対し、レチノールマイクロパーティクルが含浸されたマイクロニードルによってレチノールが浸透した豚皮膚は、豚皮膚内のレチノールの含量が徐々に減少し、受容体溶液でも徐々に増加することを確認した。これは、豚皮膚内に浸透したレチノール−マイクロパーティクルからレチノールが徐々に放出するためである。
【0038】
<皮膚刺激試験>
レチノールが含有されたマイクロニードルと、レチノールマイクロパーティクルが含浸されたマイクロニードルと、レチノールマイクロパーティクルを含有したクリームを、それぞれ腕の内側に毎日2週間適用して皮膚刺激をテストした。マイクロニードルは1時間ずつ接触させ、クリームは塗布して皮膚刺激の程度を確認した(N=20、レチノールの含量:2500IU)。その結果を図4及び図5に示した。
【0039】
レチノールが含浸されたマイクロニードルの場合、紅斑及び浮腫を伴った激しい刺激が現われるのに対し、レチノールマイクロパーティクルが含浸されたマイクロニードルの場合、皮膚刺激が通常の機能性化粧品の水準(皮膚刺激指数:約0.1、因みに、皮膚刺激指数が0.2以上の場合、皮膚刺激があると認められ、通常の機能性化粧品の場合は0.05〜0.1の水準である。)であって微々たる水準であり、レチノールマイクロパーティクルを含有したクリームよりも低い皮膚刺激を示した。
【0040】
レチノールが含浸されたマイクロニードルに比べ、レチノールマイクロパーティクルが含浸されたマイクロニードルにおける皮膚刺激がより低く現われたことは、皮膚内のレチノールが浸透した後、マイクロパーティクルからレチノールが徐々に放出するためであり、これはフランツ型拡散セルの実験結果から類推できる。但し、本発明がこのような理論的メカニズムに限定されることではない。
【0041】
また、レチノールマイクロパーティクルが含浸されたクリームよりも、レチノールマイクロパーティクルの含浸されたマイクロニードルにおける皮膚刺激がより小さく現われることは、実際使用において、クリームは長時間塗布されていることに対し、マイクロニードルは短時間(1時間)の使用後に除去されることから、皮膚がレチノールに接触する時間が短いためであると判断される。但し、本発明が、このような理論的メカニズムに限定されることではない。
【0042】
<しわの改善效果>
レチノールマイクロパーティクルを含んだクリームと、レチノールマイクロパーティクルを含んだマイクロニードルを、目じりのしわに対して12週間毎日処理した後、しわの改善程度を評価した。しわの改善程度は、シリコーン模写板(silicone replica)及びしわの画像分析方法により確認した(N=20)。その結果を図6に示した。
【0043】
本発明によるレチノールマイクロパーティクル含有マイクロニードルは、クリーム剤形に比べ、しわの改善効果において二倍以上に優れた効果を奏し、これは、マイクロニードルによって薬物の皮膚透過が容易となり、透過したレチノールはマイクロパーティクルから徐々に放出されることで、皮膚刺激が低くかつ効果が高いことを確認した。
【0044】
レチノールを含有したマイクロニードルの場合、皮膚刺激が高いため、ヒトを対象としてしわの改善効果を得にくく、通常のクリーム内にレチノールエマルションを含ませる場合、クリーム内でレチノールが不安定であって、通常のレチノールを適用することが効能及び効果の面で無意味であった。このことから、対照群としてレチノールマイクロパーティクルを含んだクリームを用いたのである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】