(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-528497(P2017-528497A)
(43)【公表日】2017年9月28日
(54)【発明の名称】長時間作用型医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4985 20060101AFI20170901BHJP
A61K 31/225 20060101ALI20170901BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20170901BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20170901BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20170901BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20170901BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20170901BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20170901BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20170901BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20170901BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20170901BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20170901BHJP
A61K 9/52 20060101ALI20170901BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20170901BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20170901BHJP
A61K 9/58 20060101ALI20170901BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20170901BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20170901BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20170901BHJP
【FI】
A61K31/4985
A61K31/225
A61P43/00 121
A61K31/505
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/44
A61K47/22
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/02
A61K9/52
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/58
A61K47/34
A61P31/18
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2017-516058(P2017-516058)
(86)(22)【出願日】2015年9月24日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月15日
(86)【国際出願番号】IB2015057360
(87)【国際公開番号】WO2016046786
(87)【国際公開日】20160331
(31)【優先権主張番号】62/055,779
(32)【優先日】2014年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】513110104
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、(ナンバー2)、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE INTELLECTUAL PROPERTY (NO.2) LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100180862
【弁理士】
【氏名又は名称】花井 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,ブライアン,アルビン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA30
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4C206NA05
4C206NA12
4C206ZB33
4C206ZC55
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症の治療又は予防に有用な、長時間作用型医薬組成物又は薬学的に許容されるその塩に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に許容される賦形剤、及び構造
【化1】
の第1の化合物又は薬学的に許容されるその塩を、構造
【化2】
の第2の化合物又は薬学的に許容されるその塩と組み合わせて含む、長時間作用型非経口(LAP)医薬組成物。
【請求項2】
薬学的に許容される賦形剤、及び構造
【化3】
の第1の化合物又は薬学的に許容されるその塩を、構造
【化4】
の第2の化合物又は薬学的に許容されるその塩と組み合わせて含む、長時間作用型非経口(LAP)医薬組成物。
【請求項3】
薬学的に許容される賦形剤、及び構造
【化5】
の第1の化合物又は薬学的に許容されるその塩を、
a)構造
【化6】
の第2の化合物又は薬学的に許容されるその塩、及び
b)構造
【化7】
の第3の化合物、TMC-278と組み合わせて含む、長時間作用型非経口(LAP)医薬組成物。
【請求項4】
薬学的に許容される賦形剤、及び構造
【化8】
の第1の化合物又は薬学的に許容されるその塩を、
a)構造
【化9】
の第2の化合物又は薬学的に許容されるその塩、及び
b)構造
【化10】
の第3の化合物と組み合わせて含む、長時間作用型非経口(LAP)医薬組成物。
【請求項5】
界面活性剤系を更に含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
界面活性剤系が、界面活性剤を、約0.1%(w/v)〜約3%(w/v)の範囲の界面活性剤量で含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
界面活性剤系が、界面活性剤を、約0.2%(w/v)〜約0.4%(w/v)の範囲の界面活性剤量で含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
界面活性剤系が、約0.4%(w/v)の界面活性剤を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項9】
界面活性剤系が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポロキサマー、脂肪酸のソルビタンエステル(SPAN)、ポリエトキシル化ヒマシ油及びその誘導体、トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート並びにポリビニルアルコールから成る群から選択される界面活性剤を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項10】
界面活性剤系が、ポリソルベートである界面活性剤を含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
界面活性剤系が、ポリソルベート80である界面活性剤を含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
界面活性剤系が、ポロキサマーを含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
界面活性剤系が、ポロキサマー338を含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項14】
界面活性剤系が、トコフェリルポリエチレングリコールスクシネートを含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項15】
界面活性剤系が、ポロキサマー338及びトコフェリルポリエチレングリコールスクシネートを含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項16】
界面活性剤系が、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、多糖類、ヒアルロン酸、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルピロリドン(PVP)から成る群から選択される安定剤を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項17】
界面活性剤系が、ポリエチレングリコールである安定剤を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
界面活性剤系が、PEG-3350である安定剤を含む、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
界面活性剤系が、安定剤を、約1%(w/v)〜約5%(w/v)の範囲の安定剤量で含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項20】
界面活性剤系が、約2%(w/v)の安定剤を含む、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
界面活性剤系が、緩衝塩を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項22】
界面活性剤系が、リン酸緩衝塩である緩衝塩を含む、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
界面活性剤系が、緩衝塩を約10mMの濃度で含む、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項24】
第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物が、微粒子中へカプセル化され界面活性剤系と合わせられる前に、結晶形態である、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物が、非晶質の微粒子の形態である、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物が、微粒子の形態であり、第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物の微粒子の粒径が、約0.05μm〜約100μmを範囲とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物が、微粒子の形態であり、第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物の微粒子の粒径が、約0.1μm〜約5μmを範囲とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物が、ポリマー中にカプセル化されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物が、乳酸-グリコール酸共重合体を含むポリマー中にカプセル化されている、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
それを必要とする対象におけるHIV感染症の予防又は治療の方法であって、薬学的に許容される賦形剤、及び構造
【化11】
の第1の化合物又は薬学的に許容されるその塩を、構造
【化12】
の第2の化合物又は薬学的に許容されるその塩と組み合わせて含む、治療有効量の長時間作用型非経口(LAP)医薬組成物を対象へ投与することを含む、方法。
【請求項31】
投与が、別々に行われ、各化合物が、長時間作用型非経口(LAP)医薬組成物で投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
投与が、1つの長時間作用型非経口(LAP)医薬組成物で同時に行われる、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
それを必要とする対象におけるHIV感染症の予防又は治療の方法であって、薬学的に許容される賦形剤、及び構造
【化13】
の第1の化合物又は薬学的に許容されるその塩を、構造
【化14】
の第2の化合物又は薬学的に許容されるその塩と組み合わせて含む、治療有効量の長時間作用型非経口(LAP)医薬組成物を対象へ投与することを含む、方法。
【請求項34】
投与が、別々に行われ、各化合物が、長時間作用型非経口(LAP)医薬組成物で投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
投与が、1つの長時間作用型非経口(LAP)医薬組成物で同時に行われる、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
それを必要とする対象におけるHIV感染症の予防又は治療の方法であって、薬学的に許容される賦形剤、及び構造
【化15】
の第1の化合物又は薬学的に許容されるその塩を、
a)構造
【化16】
の第2の化合物又は薬学的に許容されるその塩、及び
b)構造
【化17】
の第3の化合物と組み合わせて含む、治療有効量の長時間作用型非経口(LAP)医薬組成物を対象へ投与することを含む、方法。
【請求項37】
投与が、別々に行われ、各化合物が、長時間作用型非経口(LAP)医薬組成物で投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
投与が、1つの長時間作用型非経口(LAP)医薬組成物で同時に行われる、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
それを必要とする対象におけるHIV感染症の予防又は治療の方法であって、薬学的に許容される賦形剤、及び構造
【化18】
の化合物又は薬学的に許容されるその塩を、
a)構造
【化19】
の第2の化合物又は薬学的に許容されるその塩、及び
b)構造
【化20】
の第3の化合物と組み合わせて含む、治療有効量の長時間作用型非経口(LAP)医薬組成物を対象へ投与することを含む、方法。
【請求項40】
投与が、別々に行われ、各化合物が、長時間作用型非経口(LAP)医薬組成物で投与される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
投与が、1つの長時間作用型非経口(LAP)医薬組成物で同時に行われる、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
およそ週ごとから約6か月ごとの範囲の投与レジメンに基づき、第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物を含むLAP医薬組成物が対象に投与される、請求項30から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
LAP医薬組成物が、およそ週ごとから約3か月ごとの範囲の投与レジメンに基づき対象に投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
LAP医薬組成物が、およそ週ごとから約2か月ごとの範囲の投与レジメンに基づき対象に投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
LAP医薬組成物が、月ごとの投与レジメンに基づき対象に投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物が、微粒子の形態であり、第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物の微粒子の粒径が、約0.05μm〜約100μmを範囲とし、前記微粒子が、実質的に同じ粒径を有する、請求項1から41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項47】
第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物が、微粒子の形態であり、第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物の微粒子の粒径が、約0.05μm〜約100μmを範囲とし、前記微粒子が、対象への投与後により早い及びより遅い放出をもたらしてその場での吸収動態を多様化させる2種以上の実質的に異なる粒径を含む、請求項1から41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項48】
第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物が、微粒子の形態であり、第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物の微粒子の粒径が、約0.05μm〜約0.5μmを範囲とする、請求項1から41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項49】
第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物が、微粒子の形態であり、第1の化合物の微粒子の粒径が、約0.5μm〜約5μmを範囲とする、請求項1から41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項50】
第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物が、微粒子の形態であり、第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物の微粒子の粒径が、約5μm〜約25μmを範囲とする、請求項1から41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項51】
第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物が、微粒子の形態であり、第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物の微粒子の粒径が、約25μm〜約100μmを範囲とする、請求項1から41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項52】
第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物が、約20mg〜約100mgの範囲の量で存在する、請求項1から41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項53】
第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物が、約100mg〜約200mgの範囲の量で存在する、請求項1から41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項54】
第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物が、約200mg〜約400mgの範囲の量で存在する、請求項1から41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項55】
第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物が、約400mg〜約800mgの範囲の量で存在する、請求項1から41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項56】
第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物が、初期に400mg〜800mgを範囲とする量の負荷用量として対象に投与され、次いでその後、約20mg〜約300mgを範囲とする量の維持用量として投与される、請求項30から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
一般に承認された抗レトロウイルス剤レジメンを含む治療が対象に施された後にのみ、第1の化合物、第2の化合物又は第3の化合物を含むLAP組成物が対象に投与される、請求項30から45のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許及び特許出願の相互参照
本願は、特許協力条約出願であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる2014年9月26日に出願された米国仮特許出願第62/055,779号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、長時間作用型非経口(LAP)製剤、並びに同製剤を使用したヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症及び後天性免疫不全症候群(AIDS)の治療の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、抗レトロウイルス薬剤でのウイルス複製の長期抑制は、HIV-1感染症を治療する選択肢として唯一のものである。今日までに、一部の承認された薬剤が、患者の生存率を大幅に向上させたことを示してきた。しかしながら、高活性抗レトロウイルス療法(HAART)として知られる治療レジメンは、薬剤耐性HIV-1変異体の急速な出現を回避するために異なる薬剤の組合せを患者に投与しなければならないため複雑であることが多い。そのようなレジメンは典型的に、有効な薬剤の血漿レベルを維持するために複数の薬物を高用量で何回も投与することを必然的に伴う。結果として、所定の治療が複数の且つ/又は大きい投薬形態の経口摂取を必要とすることがあり、このことが、患者の服薬率の低下をもたらして薬効の低下及びHIVの複数の薬剤耐性株の発現を招く恐れがある。したがって、患者の生存率に対するHAARTのプラスの影響にもかかわらず、薬剤の有効性及び耐性の問題は、依然として、時には致命的な結果を招く恐れがある。
【0004】
多剤耐性(MDR)HIV-1分離株の出現は深刻な臨床結果をもたらすことから、その救済療法として知られる新しい薬剤レジメンで抑制されなければならない。現行のガイドラインは、救済療法が、少なくとも2種の、好ましくは3種の十分な活性を有する薬剤を含むことを推奨している。典型的には、第1選択の療法では、ウイルス酵素である逆転写酵素(RT)及びプロテアーゼ(PR)を標的とする3〜4種の薬剤が組み合わせられる。救済療法の1つの選択肢は、耐性分離株に対して活性のままである同じ機序クラスからの異なる組合せの薬剤を投与することである。しかしながら、この手法の選択肢は、耐性変異が同一クラス内の異なる薬物への広範な交差耐性を付与することがよくあるために、制限されることが多い。近年、フュージョン阻害剤、エントリー阻害剤及びインテグラーゼ(IN)阻害剤の開発に伴い代替療法戦略が利用できるようになってきた。しかしながら、新しい薬剤の3クラス全てへの耐性が、インビトロとインビボとの双方において既に報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、服薬率の問題を軽減し、且つ耐性株に対して有効な、HIV-1感染患者治療の成功が継続的に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば月に1回、2か月に1回、3か月に1回、6か月に1回又は12か月に1回の投与に好適な長時間作用型非経口(LAP)組成物として、第1の化合物、第2の化合物及び/又は第3の化合物を含む特定のHIV阻害化合物を製剤化することによって、低い服用率の問題、並びにHIVの予防又は治療に対処する。
【0007】
例えば、本発明のLAP組成物は、薬学的に許容される賦形剤、及び構造
【化1】
の第1の化合物(「第1の化合物」)又は薬学的に許容されるその塩を、構造
【化2】
の第2の化合物(「第2の化合物」)又は薬学的に許容されるその塩と組み合わせて含んでもよく、場合により、構造
【化3】
の第3の化合物(「第3の化合物」)も組み合わせて含んでもよい。
【0008】
他の実施形態では、第1の化合物及び第2の化合物は、それらの異性体の形態を含んでもよく、その場合、本発明は、薬学的に許容される賦形剤、及び構造
【化4】
の第1の化合物又は薬学的に許容されるその塩を、構造
【化5】
の第2の化合物又は薬学的に許容されるその塩と組み合わせて含む、長時間作用型非経口(LAP)医薬組成物を提供する。
【0009】
本発明の第1の態様では、第1の化合物、第2の化合物及び/若しくは第3の化合物、又は薬学的に許容されるそれらの塩を含むLAP医薬組成物が提供される。
【0010】
本発明の第2の態様では、第1の化合物、第2の化合物及び/若しくは第3の化合物、又は薬学的に許容されるそれらの塩を含むLAP医薬組成物をヒトに投与することを含む、HIV感染症を有するヒトにおけるHIV感染症の治療又は予防の方法が提供される。
【0011】
本発明の第3の態様では、第1の化合物、第2の化合物及び/若しくは第3の化合物、又は薬学的に許容されるそれらの塩を含むLAP医薬組成物をヒトに投与することを含む、HIV感染症を有するヒトにおけるHIV感染症の治療又は予防の方法が提供される。
【0012】
本発明の第4の態様では、HIVの医学的療法における、第1の化合物、第2の化合物及び/若しくは第3の化合物、又は薬学的に許容されるそれらの塩を含むLAP医薬組成物の使用が提供される。
【0013】
本発明の第5の態様では、ヒトにおけるHIV感染症の治療又は予防における使用のための長時間作用型非経口薬物の調製における、第1の化合物、第2の化合物及び/若しくは第3の化合物、又は薬学的に許容されるそれらの塩の使用が提供される。
【0014】
本発明の第6の態様では、ヒトにおけるHIV感染症の治療又は予防における使用のための長時間作用型非経口薬物の調製における、第1の化合物、第2の化合物及び/若しくは第3の化合物、又は薬学的に許容されるそれらの塩の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の化合物のLAP平均濃度と、用量5mg/kg及び用量20mg/kgでのLAPラットPK試験時間とのプロットを示す図である。
【
図2】第1の化合物のLAP平均濃度と、用量2.5mg/kg及び用量5mg/kgでのLAPイヌPK試験時間とのプロットを示す図である。
【
図3】第1の化合物のLAP平均濃度と、様々な薬剤の微粒子製剤でのLAPラット(IM)PK試験時間とのプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
4つのタンパク質ドメイン[マトリックス(MA)、カプシド(CA)、ヌクレオカプシド(NC)及びp6]と2つのスペーサーペプチド、SP1及びSP2とから構成されているHIV Gagポリタンパク質前駆体(Pr55Gag)は、新しい療法上の標的の代表である。Gagポリタンパク質の開裂が、感染性ウイルス粒子の産生の進行に中心的な役割を果たしているにもかかわらず、今日まで、抗レトロウイルス薬剤はこの機序に関して承認を受けていない。
【0017】
ほとんどの細胞型では、原形質膜でアセンブリが起こり、GagのMAドメインが膜結合を媒介する。アセンブリは、細胞からの未熟な粒子の出芽によって完了する。粒子の放出に伴い、ウイルスによってコードされたPRは、Gagを、4つの成熟したタンパク質ドメイン、MA、CA、NC及びp6、並びに2つのスペーサーペプチド、SP1及びSP2に開裂させる。またGag-PolもPRによって開裂し、ウイルス酵素PR、RT及びINを放出する。Gagタンパク質分解プロセシングは粒子内の形態的再配列を誘導するが、これは成熟として知られている。成熟は、未成熟なドーナツ状の粒子を、成熟したビリオンに転換し、これは、NCと、ウイルス酵素RT及びINとの複合体中のウイルス性RNAゲノムを取り囲むCAシェルから構成される凝縮された円錐形のコアを含有する。成熟は、新しい細胞に感染するためのウイルスを準備し、これは、粒子の感染性にとって絶対的に必要不可欠である。
【0018】
ベビリマット(Bevirimat)(PA-457)は、Gagのプロセシングにおける最終ステップである、感染性ウイルス性粒子の形成に必要なカプシド-SP1(p25)からカプシドへの転換を阻害する成熟阻害剤である。ベビリマットは、ART耐性で野生型のHIVに対する活性を有し、全てのクラスからの抗レトロウイルス剤と相乗作用を示した。ベビリマットは、トラフレベル≧20μg/mlを達成してQ369、V370又はT371で重要な基準となるGag多型を一切有さない患者において、HIVウイルス負荷を平均1.3log
10/mLに低減させた。しかしながら、Q369、V370又はT371でGag多型を有するベビリマット使用者が示した負荷低減率は、これらの部位でGag多型を有していない患者が示したものよりも有意に低かった。
【0019】
成熟阻害剤の他の例は、PCT特許出願第WO2011/100308号「Derivatives of Betulin」、PCT特許出願第PCT/US2012/024288号「Novel Anti-HIV Compounds and Methods of Use Thereof」、中国のPCT出願第PCT/CN2011/001302号「Carbonyl Derivatives of Betulin」、中国のPCT出願第PCT/CN2011/001303号「Methylene Derivatives of Betulin」、中国のPCT出願第PCT/CN2011/002105号及び第PCT/CN2011/002159号「Propenoate Derivatives of Betulin」、並びに米国仮出願第61/576,448号「Derivatives of Betulin」に見出すことができる。成熟阻害剤の反復ごとに、多型単離の範囲を最適化して、タンパク質移行を最小限に抑えながら最大限の効力を達成する必要がある。今日まで、成熟阻害剤は、これらの3つの性質の最適なバランスを実現させていない。
【0020】
その全体が参照により本明細書に組み込まれる2011年12月16日に出願された米国仮特許第61/576448号に基づくPCT公開出願第WO2013090664号は、HIV感染症及びAIDSの治療に有用なベツリン誘導体である成熟阻害剤を開示している。こうしたベツリン誘導体としては、「第1の化合物」:
【化6】
である4-(((3aR,5aR,5bR,7aR,9S,11aR,11bR,13aS)-3a-((R)-2-((4-シクロベンジル)(2-(ジメチルアミノ)エチル)アミノ)-1-ヒドロキシエチル)-1-イソプロピル-5a,5b,8,8,11a-ペンタメチル-2-オキソ-3,3a,4,5,5a,5b,6,7,7a,8,9,10,11,11a,11b,12,13,13a-オクタデカヒドロ-2H-シクロペンタ[a]クリセン-9-イル)オキシ)-2,2-ジメチル-4-オキソブタン酸が挙げられ、これは、タンパク質移行を最小限に抑えながら最大限の効力を達成する多型単離の範囲の最適化をもたらすと考えられる成熟阻害剤である。この化合物は、HIV感染症及び関連する疾患状態の治療用に現在開発中である。
【0021】
「第2の化合物」は、カボテグラビルであり、GlaxoSmithKlineによって長時間作用型非経口薬として現在開発中のHIVインテグラーゼ阻害剤である。第2の化合物は、以下の構造
【化7】
を有する。当業者であれば、双方ともその全体が参照により本明細書に組み込まれる以下の公開されたPCT公開出願:PCT特許出願第PCT/US2006/016604号及びPCT特許出願第PCT/US2011/051713号から、カボテグラビルをどのように製造するかを理解していると予想される。
【0022】
「第3の化合物」は、リルピビリン、4-[[4-(2-シアノエテニル)-2,6-ジメチルフェニル]アミノ]-2-ピリミジニル]アミノ]ベンゾニトリルであり、これは、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)の非核酸系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)であり、治療を受けていない成人患者における、他の抗レトロウイルス薬剤との組合せでの、HIV-1感染症の治療について示唆されている。リルピビリンヒドロクロリドは、ヨーロッパ及び米国でフィルムコーティングされた錠剤(ブランド名Edurant)として上市された。当業者であれば、リルピビリンを、以下米国特許第6,838,464号、第7,067,522号、第7,125,879号、第7,638,522号、第8,080,551号及び第8,101,629号(それらの全てを、参照によりその全体を本明細書に組み込む)の1つ以上からどのように製造するかを理解していると予想される。リルピビリン(即ち第3の化合物)は、以下の構造
【化8】
を有する。
【0023】
HIV-1複製を阻害することによりAIDSの臨床症状を防ぐために過去10年間になされた主要な進歩にもかかわらず、HIV感染症に現在利用可能な治療はいずれも、該感染症を治癒させることができない。HAART又は少なくとも3種の抗レトロウイルス薬剤から構成される高活性抗レトロウイルス療法もまた、ウイルスの耐性の発現に追いつけないことがある。HIVの不完全な抑制と耐性の発現に寄与する要因としては、不十分な薬効、低い服薬率、限定された組織の浸透、薬剤耐性、及び幾つかの宿主要因、例えば宿主の遺伝子が挙げられる。したがって、血液中の薬剤の最小阻害濃度を確立させることによりウイルスの増殖及び耐性株の発現が阻害されることから、生涯にわたる治療の間の服薬率が重要である。
【0024】
本発明は、例えば週に1回、2週に1回、1か月に1回、2か月に1回、3か月に1回、6か月に1回又は12か月に1回の投与に好適な長時間作用型非経口(LAP)組成物又はデポ製剤として、第1の化合物、第2の化合物及び場合により第3の化合物を、各1種を別々に、又はそれらの2種又は3種を一緒にのいずれかで製剤化することによって、HIVの治療又は予防におけるこうした課題に対処する。
【0025】
第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物の長時間作用型非経口製剤は、低頻度の投与で、持続的で効果的な阻害濃度をもたらすことができ、且つ療法の順守を改善させることができる。従来の抗HIV療法後のウイルス抑制の維持を容易にすることの他に、長時間作用型製剤は、曝露前の予防法のための実用的な機会としても役立つことがある。
【0026】
本発明は、1か月以上に1回の投与に好適な、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物である活性成分、又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を特徴とする。
【0027】
本発明の更なる特徴は、これらの医薬組成物を使用する方法である。
【0028】
一実施形態では、本発明は、第1の化合物、第2の化合物並びに/若しくは場合により第3の化合物又は薬学的に許容されるその塩、並びに界面活性剤系を含む医薬組成物を特徴とする。
【0029】
他の実施形態では、本発明は、治療有効量の第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物又は薬学的に許容されるその塩、並びに界面活性剤系を含む医薬組成物を特徴とする。
【0030】
薬学的に許容される塩としては、2011年12月16日に出願された、米国仮出願第61/576448号に基づくPCT公開出願第WO2013090664号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
用語「治療有効量」は、本明細書で使用する場合、ヒト又は他の哺乳類における疾患を、和らげる又は回復させる又は治療するのに十分な量の、薬剤、化合物、組成物、製品又は医薬作用剤を意味する。
【0032】
本発明は、対象、例えばヒトに投与するための非経口医薬組成物を特徴とする。
【0033】
別の実施形態では、本発明は、毎週(週に1回)で投与するための、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物又は薬学的に許容されるそれらの塩、並びに界面活性剤系を含む長時間作用型非経口医薬組成物を特徴とする。
【0034】
別の実施形態では、本発明は、隔週(2週に1回)で投与するための、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物又は薬学的に許容されるその塩、並びに界面活性剤系を含む長時間作用型非経口医薬組成物を特徴とする。
【0035】
別の実施形態では、本発明は、毎月で投与するための、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物又は薬学的に許容されるその塩、並びに界面活性剤系を含む長時間作用型非経口医薬組成物を特徴とする。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、隔月(2か月に1回)で投与するための、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物又は薬学的に許容されるその塩、並びに界面活性剤系を含む長時間作用型非経口医薬組成物を特徴とする。
【0037】
別の実施形態では、本発明は、3か月ごと(3か月に1回)で投与するための、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物又は薬学的に許容されるその塩、並びに界面活性剤系を含む長時間作用型非経口医薬組成物を特徴とする。
【0038】
別の実施形態では、本発明は、6か月若しくは12か月ごと又はその範囲内の任意の時点で投与するための、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物又は薬学的に許容されるその塩、並びに界面活性剤系を含む長時間作用型非経口医薬組成物を特徴とする。
【0039】
本発明の組成物は、対象の体内で長期間にわたり第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物の徐放をもたらす。したがって、薬剤の療法レベルに到達するためには、およそ1〜3か月以内又はこの範囲内の任意の時点に組成物から第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物が放出されることが有利である。
【0040】
本発明の実施形態は、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物、並びに1週間〜3か月の期間にわたって第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物の放出をもたらすポリマーの組合せを含む界面活性剤系とを含む、非経口投与に好適な医薬組成物である。ポリマーの好適な組合せは、例えば、ポリソルベート80とポリビニルピロリドン(PVP)である。
【0041】
本発明の組成物は、筋肉内(IM)、静脈内(IV)又は皮下(SQ)を含む種々の経路によって対象に投与されてもよい。したがって、一実施形態では、本発明の組成物は、筋肉内経路によって対象に投与される。別の実施形態では、本発明の組成物は、静脈内経路によって対象に投与される。別の実施形態では、本発明の組成物は、皮下経路によって対象に投与される。
【0042】
本発明の目的では、「界面活性剤系」は、少なくとも1種の界面活性剤を含む、薬学的目的に好適な任意の配合物を意味する。例えば、本発明で使用可能な界面活性剤系としては、界面活性剤に加えて、緩衝剤、(薬剤粒子のための)ポリマー、湿潤剤、安定剤、浸透張力調節剤、及び水等の溶媒等の更なる成分が挙げられる。
【0043】
界面活性剤系は、それが薬学的用途と適合性がある限り、任意の界面活性剤を含んでもよい。例えば、好適な界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート、例えばポリソルベート20又は80)、ポロキサマー[例えばLUTROL(商標)F68、F108及びF127であり、これらはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマー、ドデシル硫酸ナトリウム及び/又はラウリル硫酸ナトリウムである]、脂肪酸のソルビタンエステル(SPAN)、ポリエトキシル化ヒマシ油及びその誘導体、トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート並びにポリビニルアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、界面活性剤系は、界面活性剤を、約0.01%(w/v)〜約5%(w/v)の界面活性剤量の範囲で含む。他の実施形態では、界面活性剤系は、界面活性剤を、約0.1%(w/v)〜約3%(w/v)の界面活性剤量の範囲で含む。さらに他の実施形態では、界面活性剤系は、約0.2%(w/v)の界面活性剤を含む。さらに他の実施形態では、界面活性剤系は、約0.4%(w/v)の界面活性剤を含む。他の実施形態では、界面活性剤系は、ポリソルベート-80(例えばTween-80)を含む。さらに他の実施形態では、界面活性剤系は、0.4%(w/v)のポリソルベート-80を含む。
【0044】
代表的な安定剤としては、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、多糖類、ヒアルロン酸、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、界面活性剤系は、安定剤を、約0.01%(w/v)〜約5%(w/v)の安定剤量の範囲で含む。他の実施形態では、界面活性剤系は、安定剤を、約1%(w/v)〜約5%(w/v)の安定剤量の範囲で含む。他の実施形態では、界面活性剤系は、安定剤を、約1%(w/v)〜約3%(w/v)の安定剤量の範囲で含む。さらに他の実施形態では、界面活性剤系は、約2%(w/v)の安定剤を含む。他の実施形態では、界面活性剤系は、ポリエチレングリコールを含む。他の実施形態では、界面活性剤系は、PEG-3350を含む。さらに他の実施形態では、界面活性剤系は、2%(w/v)のPEG-3350を含む。
【0045】
好適な緩衝塩としては、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩及び酒石酸塩等から選択される緩衝塩が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、界面活性剤系は、緩衝塩を、約1mM〜約100mMの緩衝塩量の範囲で含む。他の実施形態では、界面活性剤系は、緩衝塩を、約2mM〜約50mMの緩衝塩量の範囲で含む。他の実施形態では、界面活性剤系は、緩衝塩を、約3mM〜約25mMの緩衝塩量の範囲で含む。他の実施形態では、界面活性剤系は、緩衝塩を、約5mM〜約15mMの緩衝塩量の範囲で含む。さらに他の実施形態では、界面活性剤系は、約10mMの緩衝塩を含む。特定の実施形態では、緩衝塩のpHは、pH約6.0〜pH約8.0を範囲とするように調整される。他の実施形態では、緩衝塩のpHは、pH約6.5〜pH約7.5を範囲とするように調整される。他の実施形態では、緩衝塩のpHは、pH約6.7〜pH約7.3を範囲とするように調整される。一実施形態では、緩衝塩は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。別の実施形態では、緩衝塩は、リン酸緩衝生理食塩水を約10mMの濃度で含む。別の実施形態では、緩衝塩は、濃度が約10mMでpHが約6.9であるリン酸緩衝生理食塩水を含む。
【0046】
好適な浸透張力調節剤としては、塩化ナトリウム、マンニトール、スクロース、マルトース及びデキストロース等が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、浸透張力調節剤は、塩化ナトリウムを含む。別の実施形態では、浸透張力調節剤は、塩化ナトリウムである。特定の実施形態では、界面活性剤系は、約0〜約350mMを範囲とする濃度の浸透張力調節剤を含む。特定の実施形態では、界面活性剤系は、約0〜約175mMを範囲とする濃度の浸透張力調節剤を含む。特定の実施形態では、界面活性剤系は、浸透張力が、約250〜約350mOsmol/kgを範囲とする。
【0047】
一実施形態では、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物は、界面活性剤系及び水性緩衝液中の微粒子として懸濁されうる。幾つかの実施形態では、第1の化合物は、非晶質形態又は結晶形態であってもよい。典型的には、薬剤の粒径(D
50)は、約0.05μm〜約100μmの範囲であると予想される。他の実施形態では、薬剤の粒径は、約0.1μm〜約50μmの範囲であると予想される。他の実施形態では、薬剤の粒径は、約0.1μm〜約20μmの範囲であると予想される。他の実施形態では、薬剤の粒径(D
50)は、約0.1μm〜約10μmの範囲であると予想される。他の実施形態では、薬剤の粒径(D
50)は、約0.1μm〜約5μmの範囲であると予想される。他の実施形態では、薬剤の粒径(D
50)は、約1μm〜約5μmの範囲であると予想される。他の実施形態では、薬剤の粒径(D
50)は、約0.05μm〜約0.05μmの範囲であると予想される。他の実施形態では、薬剤の粒径(D
50)は、約0.5μm〜約5μmの範囲であると予想される。他の実施形態では、薬剤の粒径(D
50)は、約5μm〜約25μmの範囲であると予想される。他の実施形態では、薬剤の粒径(D
50)は、約25μm〜約100μmの範囲であると予想される。
【0048】
さらに他の実施形態では、界面活性剤系における薬剤の粒径は、混合粒径であることができる。例えば、比較的大きい粒径から比較的小さい粒径までの実質的に異なる粒径を有することにより、小さい粒子は大きい粒子よりも迅速に吸収されて代謝されることから、製剤にとって許容される薬物動態パラメータを実現することができる。このタイプの混合粒径の製剤は、投与後早期において対象へのより迅速な薬剤の放出をもたらしつつ、投与から離れた時間において薬剤の長期作用型放出も維持することにより、本発明の長期作用性を強化することができる。したがって、一実施形態では、本発明のLAPは、第1の化合物及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物のより早い及びより遅い放出を可能にする2種以上の実質的に異なる粒径を有していてもよく、このような異なる吸収動態が、長時間作用型薬剤の長期曝露を強化する手段となりうる。一実施形態では、第1の化合物は、微粒子の形態であり、そこで第1の化合物の微粒子の粒径は、約0.05μm〜約100μmを範囲とし、そこで前記微粒子は、2種以上の実質的に異なる粒径を有する。
【0049】
さらに他の実施形態では、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物の薬剤粒子は、ポリマーベースの微粒子中へカプセル化され、その後場合により長期貯蔵のために凍結乾燥されてもよい。用語「カプセル化」が本発明に関して使用される場合、それは、幾つかの化合物が、カプセル化された化合物/ポリマーの構造体の表面上に依然として存在することがあっても、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物がポリマーに実質的に取り囲まれていることを意味する。使用直前に、乾燥している微粒子は、水性緩衝溶液中に場合により懸濁されていてもよい。そのような微粒子を調製するために使用されるポリマーは、乳酸-グリコール酸共重合体(M
w5〜200kD)及びその誘導体を含む生分解性ポリマーの系列から選択されることができ、例えばポリエチレングリコールベースの両親媒性ポリマー等である。微粒子の粒径(D
50)は、約1μm〜約100μmを範囲とすることができ、薬剤のカプセル化は、約10%〜約70%(w/w)を範囲とすることができる。一実施形態では、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物の薬剤粒子は、Resomer(商標)を含有するもの等のポリマーベースの微粒子中へカプセル化される。別の実施形態では、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物の薬剤粒子は、Resomer(商標)752Sを含有するもの等のポリマーベースの微粒子中へカプセル化される。
【0050】
他の実施形態では、その場のゲル(in-situ gel)が、第1の化合物をカプセル化するために使用されうる。これは、第1の化合物と、水に不溶性であるゲル形成ポリマーとの双方を含有する水混和性有機溶媒をベースとする溶液であることができる。一旦、投与されると(IM又はSC)、有機溶媒は消散し、水不溶性ポリマーは沈殿して第1の化合物を含有するゲルを形成する。次いで、体内でポリマーベースのゲルが分解するにつれて、第1の化合物は徐々に拡散する。その場のゲルを調製するために使用されるポリマーは、乳酸-グリコール酸共重合体(M
w5〜200kD)及びその誘導体、ポリエチレングリコールベースの両親媒性ポリマー等を含む生分解性ポリマーの系統から選択される。有機溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)等から選択される。有機溶媒中のポリマーの濃度は、1%(w/w)から50%(w/w)の間であることができ、第1の化合物の濃度は、1%(w/w)から50%(w/w)の間であることができる。
【0051】
代替法として、微粒子製剤は、噴霧乾燥法で作製されてもよい。同様に、第1の化合物と、本明細書に記載のように調製される選択されたポリマーとの双方を含有する有機溶液を噴霧乾燥法で処理し、そこで有機溶媒を窒素ガス流下で急速に蒸発させ、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物のカプセル化微粒子を形成する。乾燥温度は35℃以上であり、溶液の噴霧速度は0.1ml/分以上である。その場のゲル微粒子のために、第1の化合物と選択されたポリマーとは、好適な有機溶媒中へ共溶解させてもよく、このような場合、有機溶媒は、a)選択されたポリマーにとって溶解性が良好である、b)水性溶液との混和性が良好である、及びc)毒性が弱く、ヒトに使用するときに安全性を示す、という基準を満たす必要があり、例えばN-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)等である。第1の化合物と選択されたポリマーとの双方を含有する得られた溶液は、投与後のゲル形成速度と、その後の薬剤拡散速度とをコントロールするために、ポリマー濃度、すなわち溶媒中のポリマーと第1の化合物との比を変更することによって調合されてもよい。最後に、該溶液は、ドライアイス上でのγ線照射によって、最小線量25kGyで最終滅菌処理される。
【0052】
ポリマーの組合せの例としては、ポリソルベート、例えば湿潤剤としてのポリソルベート80、及びポリビニルピロリドン(PVP)、例えば安定剤としてのPlasdone K29/32が挙げられる。したがって、一実施形態では、本発明は、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、ポリソルベート80と、ポリビニルピロリドンであるPlasdone K29/32とを含む非経口医薬組成物を特徴とする。
【0053】
本発明の一実施形態は、ガンマ線照射、電子線照射及びオートクレーブ滅菌等の一般に知られる滅菌技術に好適な、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物と界面活性剤系とを含む非経口投与用の医薬組成物である。
【0054】
本発明の一実施形態は、無菌技術を用いて製造が可能な第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物と界面活性剤系とを含む非経口投与用の医薬組成物である。
【0055】
本発明の一実施形態は、ガンマ線照射滅菌に好適な、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物と界面活性剤系とを含む非経口投与用の医薬組成物である。
【0056】
本発明の一実施形態は、電子線照射及びオートクレーブ滅菌による滅菌技術に好適な、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物と界面活性剤系とを含む非経口投与用の医薬組成物である。
【0057】
本発明の一実施形態は、「すぐ使える」滅菌懸濁液又は再溶解用凍結乾燥物として提供可能な、非経口投与用の医薬組成物である。
【0058】
本発明の組成物は、皮下注射又は筋肉内注射によって投与されてもよい。本発明の組成物はまた、皮内注射若しくは硝子体内注射又はインプラントによって投与されてもよい。本発明の組成物はまた、他の非経口投与経路によって投与されてもよい。
【0059】
本発明の組成物の調製は、湿式ビーズミルを用いたミリングによって実施され、ガンマ線照射による滅菌によってなされてもよい。
【0060】
本発明の別の特徴は、治療有効量の第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含有する簡素化された投薬形態を提供することによって患者の服薬率を高めるという目標をもって、HIVのための治療レジメンを簡素化することである。
【0061】
本発明はまた、ヒトにおけるHIV感染症を治療する方法も特徴とし、この方法は、本発明による組成物を前記ヒトに投与することを含む。本発明は、HIV感染症の治療における本発明による医薬組成物の使用を特徴とする。本発明は、内科的療法での使用のための、本発明による薬品の製造を特徴とする。本発明は、HIV感染症の治療で使用するための、本発明による薬品の製造を特徴とする。
【0062】
本発明はまた、ヒトにおけるHIV感染症を治療する方法も特徴とし、この方法は、療法前に、療法中に又は療法後に、錠剤又は溶液の形態である第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物を有する本発明による組成物を前記ヒトに投与することを含む。
【0063】
当業者であれば、本明細書における「治療」への言及が、確立した疾患、感染症又はそれらの徴候の治療にまで及ぶことが理解されることになる。
【0064】
本発明はまた、ヒトにおけるHIV感染症を予防する方法も特徴とし、この方法は、本発明による組成物を前記ヒトに投与することを含む。本発明は、HIV感染症の予防における本発明による医薬組成物の使用を特徴とする。本発明は、予防医学的な療法での使用のための、本発明による薬品の製造を特徴とする。本発明は、HIV感染症の予防での使用のための、本発明による薬品の製造を特徴とする。
【0065】
本発明はまた、ヒトにおけるHIV感染症を治療する又は予防する方法も特徴とし、この方法は、療法前に、療法中に又は療法後に、錠剤又は溶液の形態である第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物を有する本発明による組成物を前記ヒトに投与することを含む。
【0066】
したがって、本発明の特定の実施形態では、構造
【化9】
の第1の化合物(「第1の化合物」)又は薬学的に許容されるその塩を、構造
【化10】
の第2の化合物(「第2の化合物」)又は薬学的に許容されるその塩と組み合わせて含み、場合により、非経口投与用の薬学的に許容される担体中に、構造
【化11】
の第3の化合物(「第3の化合物」)も組み合わせて含む、治療有効量の長時間作用型製剤を含む医薬組成物が提供される。
【0067】
他の実施形態では、皮下投与用に製剤化された、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0068】
他の実施形態では、筋肉内投与用に製剤化された、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0069】
他の実施形態では、1週又はそれより長い期間に1回で投与するために製剤化された、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0070】
他の実施形態では、週に1回で投与するために製剤化された、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0071】
他の実施形態では、月に1回で投与するために製剤化された、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0072】
他の実施形態では、2か月に1回で投与するために製剤化された、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物を含む医薬組成物が提供される。他の実施形態では、3か月に1回で投与するために製剤化された、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物を含む医薬組成物が提供される。他の実施形態では、30日から365日の間の任意の間隔で投与するために製剤化された、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0073】
他の実施形態では、結晶ナノ粒子の形態である組成物中に存在する第1の化合物及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0074】
他の実施形態では、組成物中にマトリックス放出粒子の形態で存在する第1の化合物及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0075】
他の実施形態では、ガンマ線照射によって最終滅菌されうる、第1の化合物及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0076】
他の実施形態では、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物又は薬学的に許容されるその塩を薬学的に許容される非経口投与用担体中に含む長期作用型製剤の治療有効量を含む単回治療用の医薬組成物をヒトに投与することを含む、HIV感染症を有するヒトにおけるHIV感染症の治療方法が提供される。
【0077】
他の実施形態では、HIV感染症を獲得するリスクのあるヒトに、薬学的に許容される非経口投与用担体中に、第1の化合物及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む長期作用型製剤の治療有効量を含む単回治療用の医薬組成物を投与することを含む、ヒトにおけるHIV感染症の予防方法が提供される。
【0078】
他の実施形態では、第1の化合物、第2の化合物並びに/若しくは第3の化合物又は薬学的に許容されるそれらの塩を含むLAP医薬組成物が提供される。
【0079】
他の実施形態では、第1の化合物、第2の化合物並びに/若しくは第3の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含むLAP医薬組成物をヒトに投与することを含む、HIV感染症を有するヒトにおけるHIV感染症の治療方法が提供される。
【0080】
他の実施形態では、第1の化合物、第2の化合物並びに/若しくは第3の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含むLAP医薬組成物をヒトに投与することを含む、HIV感染症を有するヒトにおけるHIV感染症の予防の方法が提供される。
【0081】
他の実施形態では、第1の化合物及び第2の化合物並びに/若しくは第3の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含み、界面活性剤系を更に含む、LAP医薬組成物が提供される。
【0082】
他の実施形態では、第1の化合物及び第2の化合物並びに/若しくは場合により第3の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含み、界面活性剤系を更に含み、そこで界面活性剤系が、界面活性剤を、約0.1%(w/v)〜約3%(w/v)の範囲の界面活性剤量で、若しくは0.2%(w/v)〜約0.4%(w/v)の界面活性剤を範囲とする量で含み、又は界面活性剤系が、約0.4%(w/v)の界面活性剤を含む、LAP医薬組成物が提供される。
【0083】
他の実施形態では、第1の化合物及び第2の化合物並びに/若しくは場合により第3の化合物を、ドルテグラビル及びリトナビル又は薬学的に許容されるその塩から成る群から選択される1種以上の更なる化合物と組み合わせて含む、LAP医薬組成物が提供される。
【0084】
他の実施形態では、第1の化合物及び第2の化合物並びに/若しくは場合により第3の化合物又は薬学的に許容されるその塩を、ドルテグラビル及びリトナビル又は薬学的に許容されるその塩から成る群から選択される1種以上の更なる化合物と組み合わせて含むLAP医薬組成物をヒトに投与することを含む、HIV感染症を有するヒトにおけるHIV感染症の治療方法が提供される。
【0085】
他の実施形態では、第1の化合物及び第2の化合物並びに/若しくは場合により第3の化合物又は薬学的に許容されるその塩を、任意の増強剤、例えばリトナビルと組み合わせて含むLAP医薬組成物が提供される。増強剤は、同一のIV若しくはSC用注射器で、第1の化合物と同時に投与してもよいし、又は増強剤は、経口の錠剤若しくはカプセル剤として別に投与してもよい。
【0086】
他の実施形態では、一般に承認された抗レトロウイルス剤(ARV)レジメンを含む治療が対象に施された後にのみ、第1の化合物及び第2の化合物並びに/若しくは場合により第3の化合物を含むLAP組成物が対象に投与される。初期のARVレジメンは、通常、NNRTI、PI[好ましくはリトナビル(RTV)で増強される]、INSTI又はCCR5拮抗薬[即ちマラビロック(MVC)]との組合せでの2種のNRTIから構成されている。臨床試験において、NNRTI、PI、INSTI又はCCR5拮抗薬をベースとするレジメンは全て、患者の大多数において、HIV RNAの減少、及びCD4細胞の増加をもたらした。例えば、一般に許容されるARVレジメンの1つは、抗レトロウイルス剤(ARV)未投薬患者用の以下のうちの任意のものから選択されうるものを含む:
エファビレンツ/フマル酸テノホビルジソプロキシル/エムトリシタビン(EFV/TDF/FTC)
リトナビルで増強したアタザナビル+フマル酸テノホビルジソプロキシル/エムトリシタビン(ATV/r+TDF/FTC)
リトナビルで増強したダルナビル+フマル酸テノホビルジソプロキシル/エムトリシタビン(DRV/r+TDF/FTC)
ラルテグラビル+フマル酸テノホビルジソプロキシル/エムトリシタビン(RAL+TDF/FTC)。
【0087】
本発明の医薬組成物は、非経口投与に好適な医薬組成物として提供される。また該組成物は、安全かつ有効な量の他の活性成分、例えば抗菌剤、抗ウイルス剤又は保存剤を含んでいてもよい。
【0088】
当業者であれば、治療で使用される場合に必要とされる活性成分の量は、治療される症状の特性、並びに患者の年齢及び状態を含む様々な要因に応じて変更が可能であり、最終的には担当の医師、獣医師又は医療実施者の裁量により決まることが理解されよう。
【0089】
本発明の組成物は、複数回の投薬レジメンから患者を大いに解放し、複雑な毎日の投与時間やスケジュールを覚える際に求められる勤勉さの必要性を緩和する。本発明の組成物は、月に1回、隔月に1回若しくは3か月に1回の投与、又は6か月若しくは12か月に1回の投与を含む、30日から365日の間の任意の間隔での1回の投与に、とりわけ好適である。
【0090】
有利には、本発明の組成物は、月に1回投与されてもよい。
【0091】
本発明の組成物は、複数回薬剤治療レジメンの構成要素である他の医薬製剤と組み合わせて使用してもよい。このような組合せは、固定用量の組合せ等の1つの投薬単位で対象に投与してもよいし、又はそれは、別の投薬単位で投与してもよい。
【0092】
本発明の組成物はまた、治療有効量の式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩と、治療有効量の、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤及びインテグラーゼ阻害剤のうちの1種以上とを含む製造品として包装されてもよい。
【0093】
包装材料はまた、その上に医薬組成物に関連するラベル及び情報が印刷されていてもよい。更に製造品はまた、製品情報を含む小冊子、レポート、通知書、パンフレット又はリーフレットを有してもよい。医薬品情報のこの形態は、製薬業界において「添付文書」と称される。添付文書は、製造物の医薬物品に貼りつけられてもよいし、又は中に含まれてもよい。添付文書及び製造物ラベルのあらゆる説明書きは、医薬組成物に関連する情報を提供するものである。該情報及びラベルは、医療専門家及び患者によって活用される種々の形態の情報を提供し、米国食品医薬品庁等の規制当局により求められる組成、その投薬量及び他の種々のパラメータを記載している。
【0094】
本発明は、以下の実施形態を更に提供する:
(a)少なくとも1週の時間間隔で断続的に投与される、HIV感染症の長期治療用の、又はHIVに感染するリスクのある個体におけるHIV感染症の予防用の、有効量の第1及び第2の化合物並びに/若しくは場合により第3の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む非経口医薬組成物。
(b)隔週に1回投与される、(a)に記載の組成物。
(c)月に1回投与される、(a)に記載の組成物。
(d)有効量の第1及び第2の化合物並びに/若しくは場合により第3の化合物又は薬学的に許容されるそれらの塩の各々が、対象における第1及び第2の化合物並びに/又は場合により第3の化合物の血漿濃度が、重大な副作用を引き起こす血漿レベルである最大血漿レベルと、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物がHIV感染症の有効な治療又は予防をもたらす最も低い血漿レベルである最小血漿レベルとの間のレベルで長期にわたり維持されるように選択される、(a)から(c)のいずれか1つに記載の組成物。
(e)対象の血漿レベルが、約150ng/mlに等しい又はそれを超えるレベルに、特定には約600ng/mlに等しい又はそれを超えるレベルに維持される、(d)に記載の組成物。
(f)皮下又は筋肉内に投与される、(a)から(e)のいずれか1つに記載の組成物。
(g)上記のポリソルベート及び/又はポリビニルピロリドンを含む界面活性剤系を含む、(a)から(f)のいずれか1つに記載の組成物。
(h)上記の(a)から(g)のいずれか1つによる医薬組成物を含む、ヒトにおけるHIV感染症の治療又は予防の方法。
【0095】
本発明での使用のための非経口組成物中の化合物の量である、投与される第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物の用量は、対象における化合物の血漿濃度がより長い期間にわたり最小血漿レベルより高く維持されるように選択されてもよい。この関連での用語「最小血漿レベル」(又はC
min)は、最も低い有効血漿レベル、即ちHIV感染症の有効な予防又は治療をもたらす化合物の血漿レベルを指す。HIVに感染した個体からHIVに感染していない個体へのHIV伝播の事例の場合、最小血漿レベルは、前記伝播を阻害するのに有効な最も低い血漿レベルである。
【0096】
対象における第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物を含むLAP製剤の血漿レベルは、約170ng/ml、約700ng/ml又は約1000ng/mlの、最小血漿レベルを超えるレベルに維持されてもよい。これらのレベルより低いレベルでは薬剤がもはや有効でなくなるためにHIV感染症の伝播のリスクが上昇し、HIVに感染した対象を治療するには最適とはいえない状態になる可能性があることから、対象における化合物の血漿レベルを上記最小血漿レベルより高く維持してもよい。HIV変異の発現を回避するために、安全域を維持しながら化合物の血漿レベルをより高いレベルに維持してもよい。
【0097】
第1及び第2の化合物並びに(I)を含むLAP製剤の投与の方式の利点は、相応する高いC
maxが達成されていなくても高いC
minレベルが達成できることであり、それによりC
maxに関わる潜在的副作用を軽減することができる。
【0098】
投与される第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物の有効量は、対象における血漿濃度がより長い期間にわたり最大血漿レベル(又はC
max)と最小血漿レベル(又はC
min)との間のレベルに維持されるように選択されてもよい。
【0099】
幾つかの実施形態では、対象における化合物の血漿レベルは、化合物(I)の最小血漿レベル(又は上で特定したC
min)と、最大血漿レベル(又はC
max)との間に維持されてもよく、これは、化合物が治療的に作用する最も低い血漿レベルに相当するレベルと規定される。化合物が治療的に作用する最も低いレベルは、HIVに感染した個体におけるHIVの複製を阻害するのに有効である最も低い血漿レベルであり、それは、HIVのウイルス負荷が比較的低く、例えばウイルス負荷(特定の体積の血清中のウイルスRNAのコピー数として表される)が約200コピー/ml未満、特定には約100コピー/ml未満、より特定には50コピー/ml未満、とりわけHIVのアッセイの検出限界未満であるようなレベルである。
【0100】
上述したように、化合物の血漿レベルは、投与されるそれぞれの非経口投薬における活性成分の量に依る。しかしながら、化合物の血漿レベルはまた、投与の頻度(即ち各投与間の時間間隔)にも依る。血漿レベルを所望の値へ向けるためには、両方のパラメータを使用してもよい。投与があまり頻繁でない場合、用量を多くしてもよい。
【0101】
化合物の血漿レベルは、最大値より低いか又は最小値より高いレベルを維持するべきであるが、比較的短い時間であれば最大値より上昇させてもよいし、又は最小値より低下させてもよく、その時間を可能な限り短くしてもよい。したがって、最大血漿レベルと最小血漿レベルは、特定の期間中、平均血漿レベルとして表すことが可能である。
【0102】
幾つかの例では、投与直後に初期の小さい血漿濃度ピークが発生し、その後、血漿レベルが定常状態に達することがある。
【0103】
本発明の組成物は、例えば、1単位の投薬形態当たり約1mg〜約1000mg、約20mg〜約100mg、約20mg〜約300mg、約25mg〜約800mg、約25mg〜約100mg、約100mg〜約200mg、約200mg〜約400mg、約100mg〜約800mg、約100mg〜約600mg、約100mg〜約400mg、又は約400mg〜約800mgを含有する単位の投薬形態である第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物の投与を、好都合には可能にする。一実施形態では、単位用量は、約100mg〜約200mgであり、これは、月に1回対象に投与される。幾つかの実施形態では、後の維持用量よりも実質的に多い初期の負荷用量がありうる。したがって、一実施形態では、第1の化合物は、初期に400mg〜800mgを範囲とする量の負荷用量として対象に投与され、その後、約20mg〜約300mgを範囲とする量の維持用量として投与される。別の実施形態では、初期に800mgが対象に投与され、その後、100mgが投与される。
【0104】
製剤中の第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物の単位用量の濃度は、以下の範囲:0.05〜0.5μM、0.5〜1μM、1〜5μM、5〜25μM、25〜50μM、又は50〜150μMのいずれかから選択されてもよい。
【0105】
投与されることになる用量は、約1mg/日〜約50mg/日、好ましくは3mg/日〜約30mg/日に基づいて算出されてもよい。これは、週ごとの用量約7mg〜約350mg、好ましくは約20mg〜約200mgに相当し、又は月ごとの用量約30mg〜約1500mg、好ましくは約90mg〜約900mgに相当する。他の投与レジメンのための用量は、1日用量に、各投与間の日数を掛けることによって容易に算出されうる。
【0106】
投与されることになる用量は、約0.001mg/kg/日〜約1mg/kg/日、好ましくは0.05mg/kg/日〜約0.5mg/kg/日に基づいて算出されてもよい。これは、週ごとの用量約0.5mg〜約550mg、好ましくは約20mg〜約200mgに相当し、又は月ごとの用量約30mg〜約1500mg、好ましくは約90mg〜約900mgに相当する。他の投与レジメンのための用量は、1日用量に、各投与間の日数を掛けることによって容易に算出されうる。
【0107】
一旦投与されたら、対象における第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物の血漿レベルは、程度の差はあれど安定化することが可能である。初期の血漿レベル上昇の後、定常状態モードをより長期にわたり達成することが可能である。「定常状態」とは、対象の血漿中に存在する薬剤の量が、より長期にわたり、程度の差はあれど同じレベルに維持されている状態を意味する。次いで、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物の血漿レベルは、時間が経つと徐々に低下する可能性があり、その結果として最小血漿レベルに達したら、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物の次の用量を投与してもよい。用語「程度の差はあれど同じレベルに維持されている」は、例えば約30%以内、約20%以内又は約10%以内の許容される範囲内で血漿濃度の小さい変動がありうる場合も含まれる。
【0108】
第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物の非経口組成物は、静脈内注射によって、又は好ましくは皮下投与若しくは筋肉内投与によって投与されてもよい。
【0109】
本発明は、第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物を含む活性成分の非経口組成物の使用に基づいており、したがって担体の性質は、非経口投与に好適なように選択される。ほとんどの場合の担体は、滅菌水を含むことになり、しかし、例えば、溶解性を補助するための他の成分が含まれてもよい。そこで担体が生理食塩水、グルコース溶液、又は生理食塩水とグルコース溶液との混合物を含む、例えば注射可能な溶液又は懸濁液が調製されてもよい。更に、担体は、ポリソルベート及びポリエチレングリコール等の上に挙げた界面活性剤系を含有してもよい。
【0110】
本発明の第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物を含む非経口医薬組成物は、長時間作用型である。したがって、該組成物は、従来技術の組成物と比べて、又は化学構造が第1及び第2の化合物並びに場合により第3の化合物に類似した他の化合物と比べて、長い時間間隔での投与でのHIV感染症の治療又は予防に有用である。本発明の組成物は、例えば週に1回、月に1回、2か月に1回又は3か月に1回、断続的に患者に投与されうる。一実施形態では、本発明の組成物は、最初の1〜3か月の間、「負荷用量」として、より高い投薬量(例えば800mg)で投与され、一方で、その最初の1〜3か月の後に投薬量が減らされうる。
【0111】
したがって、本発明の組成物、及び同組成物を使用した皮下(SC)注射又は筋肉内(IM)注射による投与は、薬品(ピル)の負担又は患者の服薬率の困難さを著しく低下させることへつながる。更に、本発明の組成物のそのような断続的な投与は、薬剤耐性HIVの出現の防止につながるような適当な服薬率での療法を維持すること、及び長期間にわたる療法の有効性を維持することに寄与することができる。
【0112】
実施形態では、第1の化合物の製剤は、濃度が10mg/ml〜250mg/mlの範囲であり、注射容積が最大4ml(例えば2回分の注射剤、各2ml)のボーラス筋肉内投与又は皮下投与用の液状の懸濁液の形態である。
【実施例】
【0113】
以下の実施例において、本発明の範囲内の特定の実施形態を更に説明し例証する。実施例は単に例示のために記載され、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく多くの変形が可能なことから、限定と解釈されないものとする。
【0114】
第1の化合物は、HIV感染症及びAIDSの治療に有用な1つのクラスの化合物を開示している、2011年12月16日に出願された、米国仮出願第61/576448号に基づくPCT公開出願第WO2013090664号の教示に準拠することによって当業者により合成されてもよい。
【0115】
Thermo Orion 9110DJWP微小電極、及びMetrohmn 827 pHメーターを、pH測定に使用した。Advanced Micro-Osmometer 3320を、浸透圧測定に使用した。Retsch PM400プラネタリーミルを、湿式ビーズミリングに使用した。
【0116】
[実施例1]
LAP媒体の調製
0.5Lのメスフラスコに、ポリソルベート80、1.0gを加えた。溶解するために、フラスコに注射用水(WFI)約100mLを加えた。フラスコに、Plasdone K29/32、8.5gを追加のWFI300mLと共に加えた。内容物を撹拌棒で撹拌して溶解させた。リン酸緩衝液:NaH
2PO
4、0.11039g、NaH
2PO
4:H
2O、0.27598g、及びNa
2HPO
4、0.22572gを、等張化剤としてのNaCl、4.16389gと共に加えた。混合物を再撹拌して溶解させ、適宜500mLにした。溶液を0.22マイクロメートルのCorning社のフィルターを通して濾過した。得られたLAP媒体は、リン酸緩衝液(0.004M NaH
2PO
4、及び0.006M Na
2HPO
4)中、1.7w/v%のPlasdone K29/32、及び0.2w/v%のポリソルベート80であった。
【0117】
[実施例2]
均質化懸濁液組成物
(a)皮下注射(SQ)用LAP媒体中の第1の化合物の均質化溶液2.5mg/ml
クリンプキャップを備えた10mlの透明な滅菌バイアルに、第1の化合物17.5mgを加えた。LAP媒体(実施例1で調製したもの)を重量7グラムまで加えた。溶液を、手持ち式のPolytron PT1200Fホモジナイザを用いて1〜2分、速度をローからマックス近くまで上げて均質化した。次いで、溶液を周囲室温で撹拌した。得られた標題溶液は、モル浸透圧濃度が299mOsm/kgであり、pHが6.92であった。該溶液を、5mg/kgのSQ注射剤に利用した。
【0118】
(b)SC注射及びIM(筋肉内)注射用LAP媒体中の第1の化合物の均質化溶液10.0mg/ml
クリンプキャップを備えた10mlの透明な滅菌バイアルに、第1の化合物80mgを加えた。LAP媒体(実施例1で調製したもの)を重量8グラムまで加えた。溶液を、手持ち式のPolytron PT1200Fホモジナイザを用いて1〜2分、速度をローからマックス近くまで上げて均質化した。次いで、溶液を周囲室温で撹拌した。得られた標題溶液は、モル浸透圧濃度が300mOsm/kgであり、pHが7.25であった。該溶液を、5mg/kgのIM注射剤、及び20mg/kgのSQ注射剤に利用した。
【0119】
(c)SC注射及びIM(筋肉内)注射用LAP媒体中の第1の化合物の均質化溶液25.0mg/ml
第1の化合物250mgを、クリンプキャップを備えた20mlの透明な滅菌バイアルへ加えた。LAP媒体(実施例1で調製したもの)を重量10グラムまで加えた。溶液を、手持ち式のPolytron PT1200Fホモジナイザを用いて1〜2分、速度をローからマックス近くまで上げて均質化した。次いで、溶液を周囲室温で撹拌した。得られた標題溶液は、モル浸透圧濃度が323mOsm/kgであり、pHが7.68であった。該溶液を、2.5mg/kgのIM注射剤、及び2.5mg/kgのSQ注射剤に利用した。
【0120】
(d)IM注射用LAP媒体中の第1の化合物の均質化溶液40.0mg/ml
第1の化合物160mgを、クリンプキャップを備えた5mlの透明な滅菌バイアルへ加えた。LAP媒体(実施例1で調製したもの)を重量4グラムまで加えた。溶液を、手持ち式のPolytron PT1200Fホモジナイザを用いて1〜2分、速度をローからマックス近くまで上げて均質化した。次いで、溶液を周囲室温で撹拌した。得られた標題溶液は、モル浸透圧濃度が329mOsm/kgであり、pHが7.87であった。該溶液を、20mg/kgのIM注射剤に利用した。
【0121】
[実施例3]
湿式ビーズミリング製剤
(a)LAP媒体中の第1の化合物の湿式ビーズミリング済みストック懸濁液の調製
第1の化合物500mgを、50mLのミリング容器中へ秤量する。クリンプキャップを備えた10mlの透明な滅菌バイアルに、式Iの化合物を加えた。LAP媒体(実施例1で調製したもの)を重量10グラムまで加え、それによって100mg/mlの懸濁液を得た。ビーズを、4倍の懸濁液体積で加え、ミリング容器をセキュリティテープで密封した。ミリングを、プラネタリーミルPM400を用いて250rpmで、15分間隔で3時間、開始した。3時間後、ミリング容器を、周囲室温で一晩、プラネタリーミル中に放置した。ビーズを、25mmのEasy Pressure Syringe Filter Holder(スクリーンサイズは149マイクロメートル)を用いて濾過した。乳白色の懸濁液を回収し、撹拌棒で撹拌して消泡させた。得られた湿式ビーズミリング済み(WBM)懸濁液は、モル浸透圧濃度が303mOsm/kgであり、pHが7.2であった。該溶液を、以下のWBM懸濁液を調製するために利用した。
【0122】
(b)IM注射用LAP媒体中の第1の化合物のWBM懸濁液10.0mg/ml
実施例3(a)のWBM懸濁液0.426gを、クリンプキャップを備えた5mlの透明な滅菌バイアルへ加えた。LAP媒体(実施例1で調製したもの)を重量2グラムまで加えた。内容物を、旋回させて混合した。得られた標題溶液は、pHが6.87であった。該溶液を、5mg/kgのIM注射剤に利用した。
【0123】
(c)SQ注射用LAP媒体中の第1の化合物のWBM懸濁液2.5mg/ml
クリンプキャップを備えた10mlの透明な滅菌バイアルに、実施例3(a)のWBM懸濁液0.266gを加えた。LAP媒体(実施例1で調製したもの)を重量5グラムまで加えた。内容物を、旋回させて混合した。得られた標題溶液は、pHが6.78であった。該溶液を、5mg/kgのSQ注射剤に利用した。
【0124】
注射剤を、スプラーグドーリーラットSQ及びIMにおいて、用量5mg/kg及び20mg/kgで、T
1/2、C
max、T
max及びAUCを測定して、作製した。結果を、表1及び
図1に示す。
図1では、ヒトタンパク質調節済みIC
90=4.31ng/mLであり、y軸はLAP濃度平均(n=IM/SQ経路で3)であり、T
1/2IV=3.4時間であり、AUC
0〜24IV=2.96hr
*マイクログラム/mLであった。
【0125】
【表1】
【0126】
注射剤はまた、ビーグル犬SQ及びIMにおいて、用量5mg/kg及び20mg/kgで、T
1/2、C
max、T
max及びAUCを測定して、作製した。結果を、表2及び
図2に示す。
図2では、ヒトタンパク質調節済みIC
90=4.31ng/mLであり、y軸はLAP濃度平均(n=IM/SQ経路で3)であり、T
1/2IV=6.9時間であり、AUC
0〜24IV=4.15hr
*マイクログラム/mlであった。
【0127】
【表2】
【0128】
[実施例4]
ラットLAP試験の実験手順
第1の製剤法では、粒径(D
50)>1μmが所望である場合、薬剤(第1の化合物)は、水性緩衝溶液中へ直接懸濁するか、又は最初に空気ミリングによってミリングしてより望ましい粒径にし次いでその後に懸濁液にするか、のいずれかとする。そのような事例では、懸濁液は、薬剤及び緩衝溶液成分を好適な容器中へ秤量してその後に注射用水を加えることによって調製した。次いで、混合物を、均一な懸濁液が視覚可能な凝集体なしに形成されるまで、渦流撹拌した。次いで、追加の注射用水を、標的体積まで加えた。代替法として、粒径(D
50)<1μmが所望である場合、薬剤は、上述したように最初に緩衝溶液中へ懸濁させ、次いで、粒径をμm未満の範囲へ減じるためにビーズミリング又はミクロ流動化法へ供する。次いで、調製済み懸濁液を、γ線照射により、最小線量25kGyで最終滅菌処理する。
【0129】
第2の製剤法では、薬剤(第1の化合物)と、選択されたカプセル化ポリマーとを、好適な有機溶媒中で共溶解させ、そこで該有機溶媒は、a)第1の化合物及び選択されたポリマーにとって溶解性が良好であった、b)水と混和性でなかった、c)沸点が低く、そのため揮発性が良好であった、という基準に合っていた。好適な有機溶媒は、例えば、塩化メチレン(この実施例で使用している)、クロロホルム、酢酸エチル、ギ酸エチル等である。次いで、溶液を、ポリビニルアルコール(PVA-この実施例で使用している1%PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポロキサマー、ポリソルベート、ポリエトキシル化ヒマシ油、トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート等から選択される0.1〜10%(w/v)の界面活性剤を含有する水と、体積比1:2〜1:100で混合させて、均一のエマルションを形成した。次いで、エマルションを、例えばロータリーエバポレーター(rotorvap)中で、真空蒸発処理して揮発性有機溶媒を完全に取り除いた。次いで、均一な懸濁液を遠心分離し、得られたペレットを注射用水で3回洗浄して界面活性剤を取り除いた。次いで、洗浄済みペレットを、好適な容器中、注射用水で再懸濁させ、続いて凍結乾燥させて第1の化合物をカプセル化した粉末状微粒子にした。次いで最後に、微粒子を、ドライアイス上でのγ線照射により、最小線量25kGyで最終滅菌処理した。
微粒子A:(薬剤:Resomer 752S 1:1)
微粒子B:(薬剤:Resomer 752S 1:2)
【0130】
試験の日に、微粒子A(第1の化合物:Resomer 752S 1:1)、及び微粒子B(第1の化合物:Resomer 752S 1:2)を、それぞれ媒体0.912ml、及び媒体0.945mlと、見たところ大きい凝集体を含まない均一な懸濁液が得られるまで渦流撹拌して混合した。薬剤の懸濁液は、1mlの均一な懸濁液として既に製剤化し、見たところ大きい凝集体を含まない均一な懸濁液が得られるまで渦流撹拌して再懸濁した。1製剤当たり3匹の雄Crl:CDラットに、第1の化合物を筋肉内投与経路で投与してサンプリングした。第1の化合物の筋肉内用量を、単回用量20mg/kg、用量体積0.5ml/kgで投与した。投与後、血液サンプルを、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間及び24時間に、且つ1680時間まで、採取した。投与後の各時点で、およそ0.1mlの血液サンプルを、尾スニップ法により採取し、直ちに凍結し、分析まで-70℃で貯蔵した。次いで、ラットの血液サンプルを、タンパク質沈殿に基づく方法を用いて、続いてLC-MS/MS分析を用いて、第1の化合物の濃度について分析した。この実施例の結果は、表3に示し、
図3でグラフ化している。
【0131】
【表3】
【国際調査報告】