特表2017-529075(P2017-529075A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-529075ヒト造血細胞へのウイルス遺伝子導入を増強させるための化合物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-529075(P2017-529075A)
(43)【公表日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】ヒト造血細胞へのウイルス遺伝子導入を増強させるための化合物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20170908BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20170908BHJP
   A61K 35/51 20150101ALI20170908BHJP
   A61K 35/14 20150101ALI20170908BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20170908BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20170908BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20170908BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20170908BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170908BHJP
   A61K 35/766 20150101ALN20170908BHJP
   A61K 35/76 20150101ALN20170908BHJP
   C12N 7/00 20060101ALN20170908BHJP
【FI】
   C12N15/00 A
   A61K35/28
   A61K35/51
   A61K35/14 Z
   A61K48/00
   A61P7/00
   A61P7/06
   A61P3/00
   A61P43/00 111
   A61K35/766
   A61K35/76
   C12N7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】91
(21)【出願番号】特願2017-514553(P2017-514553)
(86)(22)【出願日】2015年9月17日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月15日
(86)【国際出願番号】CA2015050907
(87)【国際公開番号】WO2016041080
(87)【国際公開日】20160324
(31)【優先権主張番号】62/052,452
(32)【優先日】2014年9月18日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】303055165
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ ド モントリオール
(71)【出願人】
【識別番号】508108752
【氏名又は名称】ブリティッシュ コロンビア キャンサー エージェンシー ブランチ
(71)【出願人】
【識別番号】506139369
【氏名又は名称】フレッド ハッチンソン キャンサー リサーチ センター
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】ギー ソヴァゴー
(72)【発明者】
【氏名】キース リチャード ハンフリーズ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ピーター キエム
(72)【発明者】
【氏名】アイマン フェアーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジャリア チャグラウィ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065BA01
4B065BA02
4B065BD39
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA511
4C084ZA551
4C084ZC211
4C084ZC411
4C087BB34
4C087BB44
4C087BB59
4C087BC83
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZA51
4C087ZA55
4C087ZC21
4C087ZC41
(57)【要約】
レンチウイルス遺伝子導入などのウイルス遺伝子導入を増強し、かつ、原始造血細胞などの細胞への遺伝子送達効率を改善するための方法および組成物を開示する。これらの方法および組成物は、ピリミド[4,5−b]インドール誘導体の使用をベースとする。また、造血幹細胞治療を含む遺伝子治療を用いた処置に適する適応症に有用な細胞ベースの組成物および方法を記載する。
【選択図】図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞にウイルスベクターを形質導入する方法であって、
下記一般式Iで表される化合物またはその塩もしくはプロドラッグを前記細胞と接触させる工程、および
前記細胞にウイルスベクターを形質導入する工程を含む、方法。
【化1】
[式中、各Yは、独立してNおよびCHから選択され;
Zは、
1)-CN、
2)-C(O)OR1、
3)-C(O)N(R1)R3、
4)-C(O)R1、または
5)1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換されたヘテロアリール基であり、ここで、(R1)およびR3が窒素原子に結合する場合、任意で、(R1)およびR3は窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成し、当該環は、任意で、1または2以上のRAまたはR4で置換され;
Wは、
1)-CN、
2)-N(R1)R3、
3)-C(O)OR1、
4)-C(O)N(R1)R3、
5)-NR1C(O)R1、
6)-NR1C(O)OR1、
7)-OC(O)N(R1)R3、
8)-OC(O)R1、
9)-C(O)R1、
10)-NR1C(O)N(R1)R3、
11)-NR1S(O)2R1、
12)1、2または3つのRA置換基またはR1置換基で任意に置換された-ベンジル基、
13)-X-L-(X-L)n-N(R1)R3、
14)L基およびヘテロアリール基の一方または両方に結合する1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-X-L-(X-L)n-ヘテロアリール基、
15)L基およびヘテロシクリル基の一方または両方に結合する1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-X-L-(X-L)n-ヘテロシクリル基、
16)1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-X-L-(X-L)n-アリール基、
17)-X-L-(X-L)n-NR1RA、または
18)-(N(R1)-L)n-N+R1R3R5R6-であり、ここで、nは0、1、2、3、4または5に等しい整数であり、R1およびR3が窒素原子に結合する場合、任意で、R1およびR3は、窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成し、当該環は、任意で、1または2以上のRAまたはR4で置換され;
各Xは、独立して、O、SおよびNR1から選択され;
各Lは、独立して、
1)-C1-6アルキレン基、
2)-C2-6アルケニレン基、
3)-C2-6アルキニレン基、
4)N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する-C3-7シクロアルキレン基、または
5)N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する-C3-7シクロアルケニレン基であり、ここで、前記アルキレン基、前記アルケニレン基、前記アルキニレン基、前記シクロアルキレン基、および、前記シクロアルケニレン基は、それぞれ独立して、1または2つのR4置換基またはRA置換基で任意に置換され;
R1は、それぞれ独立して、
1)-H、
2)-C1-6アルキル基、
3)-C2-6アルケニル基、
4)-C2-6アルキニル基、
5)-C3-7シクロアルキル基、
6)-C3-7シクロアルケニル基、
7)-C1-5ペルフルオロ基、
8)-ヘテロシクリル基、
9)-アリール基、
10)-ヘテロアリール基、または
11)-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R2は、
1)-H、
2)1または2以上のRA置換基で任意に置換された-C1-6アルキル基、
3)-C(O)R4、
4)1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-L-ヘテロアリール基、
5)1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-L-ヘテロシクリル基、または
6)1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-L-アリール基であり;
R3は、それぞれ独立して、
1)-H、
2)-C1-6アルキル基、
3)-C2-6アルケニル基、
4)-C2-6アルキニル基、
5)-C3-7シクロアルキル基、
6)-C3-7シクロアルケニル基、
7)-C1-5ペルフルオロ基、
8)-ヘテロシクリル基、
9)-アリール基、
10)-ヘテロアリール基、または
11)-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R4は、それぞれ独立して、
1)-H、
2)-C1-6アルキル基、
3)-C2-6アルケニル基、
4)-C2-6アルキニル基、
5)-C3-7シクロアルキル基、
6)-C3-7シクロアルケニル基、
7)-C1-5ペルフルオロ基、
8)-ヘテロシクリル基、
9)-アリール基、
10)-ヘテロアリール基、または
11)-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R5は、それぞれ独立して、
1)-C1-6アルキル基、
2)N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する-C1-6アルキレン-C2-6アルケニル基、
3)N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する-C1-6アルキレン-C2-6アルキニル基、
4)1または2以上のRA置換基またはR4置換基を任意で有する-L-アリール基、
5)1または2以上のRA置換基またはR4置換基を任意で有する-L-ヘテロアリール基、
6)-C1-6アルキレン-C(O)O-、
7)-C1-6アルキレン-C(O)OR1、
8)-C1-6アルキレン-CN、
9)-C1-6アルキレン-C(O)NR1R3(R1およびR3は、任意で、窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成する)、または
10)-C1-6アルキレン-OHであり;
R6は、
1)ハロゲン、
2)OC(O)CF3、または
3)OC(O)R1であり;
RAは、それぞれ独立して、
1)-ハロゲン、
2)-CF3
3)-OR1、
4)-L-OR1、
5)-OCF3
6)-SR1、
7)-CN、
8)-NO2
9)-NR1R3、
10)-L-NR1R1、
11)-C(O)OR1、
12)S(O)2R4、
13)-C(O)N(R1)R3、
14)-NR1C(O)R1、
15)-NR1C(O)OR1、
16)-OC(O)N(R1)R3、
17)-OC(O)R1、
18)-C(O)R4、
19)-NHC(O)N(R1)R3、
20)-NR1C(O)N(R1)R3、または
21)-N3であり;
Rdは、それぞれ独立して、
1)-H、
2)-C1-6アルキル基、
3)-C2-6アルケニル基、
4)-C2-6アルキニル基、
5)-C3-7シクロアルキル基、
6)-C3-7シクロアルケニル基、
7)-C1-5ペルフルオロ基、
8)-ベンジル基、または
9)-ヘテロシクリル基である]
【請求項2】
前記化合物が下記式IAで表される化合物またはその塩もしくはプロドラッグである、請求項1に記載の方法。
【化2】
[式中、W、Y、ZおよびR2は請求項1と同義である]
【請求項3】
各Yが、独立してNおよびCHから選択され;
Zが、-CN、-C(O)OR1、-C(O)N(R1)R3、または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-ヘテロアリール基であり、
Wが、-CN、-N(R1)R3、1、2または3つのRA置換基またはR1置換基で任意に置換された-ベンジル基、-X-L-(X-L)n-N(R1)R3、-X-L-(X-L)n-NR1RA、または、-(N(R1)-L)n-N+R1R3R5R6-であり、ここで、nは0、1、2または3に等しい整数であり、R1およびR3が窒素原子と結合する場合、任意で、R1およびR3が、窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成し、当該環は任意で1または2以上のRAまたはR4で置換され;
各Xが、独立して、O、SまたはNR1であり;
Lが、それぞれ独立して、-C1-6アルキレン基、-C2-6アルケニレン基、-C2-6アルキニレン基、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する-C3-7シクロアルキレン基、または、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する-C3-7シクロアルケニレン基であり、ここで、前記アルキレン基、前記アルケニレン基、前記アルキニレン基、前記シクロアルキレン基、および、前記シクロアルケニレン基は、それぞれ独立して、1または2つのR4置換基またはRA置換基で任意に置換され;
R1が、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、-C3-7シクロアルキル基、-C3-7シクロアルケニル基、-C1-5ペルフルオロ基、-ヘテロシクリル基、-ヘテロアリール基、または、-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R2が、-H、1または2以上のRA置換基で任意に置換された-C1-6アルキル基、-C(O)R4、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-L-ヘテロアリール基、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-L-ヘテロシクリル基 、または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-L-アリール基であり;
R3が、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、または、-C1-5ペルフルオロ基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記ペルフルオロアルキル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R4が、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、-C3-7シクロアルキル基、-C3-7シクロアルケニル基、-C1-5ペルフルオロ基、-ヘテロシクリル基、-アリール基、-ヘテロアリール基、または、-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R5が、それぞれ独立して、-C1-6アルキル基、1または2以上のRA置換基またはR4置換基を任意で有する-L-アリール基、1または2以上のRA置換基またはR4置換基を任意で有する-L-ヘテロアリール基、-C1-6アルキレン-C(O)O-、-C1-6アルキレン-C(O)OR1、-C1-6アルキレン-CN、-C1-6アルキレン-C(O)NR1R3、または、-C1-6アルキレン-OHであり;
R6が、-ハロゲン、-OC(O)CF3、または、-OC(O)R1であり;
RAが、それぞれ独立して、-ハロゲン、-CF3、-OR1、-L-OR1、-OCF3、-SR1、-CN、-NO2、-NR1R3、-L-NR1R1、-C(O)OR1、S(O)2R4、-C(O)N(R1)R3、-NR1C(O)R1、-NR1C(O)OR1、-OC(O)N(R1)R3、-OC(O)R1、-C(O)R4、-NHC(O)N(R1)R3、-NR1C(O)N(R1)R3、または、-N3であり;
Rdが、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、-C3-7シクロアルキル基、-C3-7シクロアルケニル基、-C1-5ペルフルオロ基、-ベンジル基、または、-ヘテロシクリル基である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物が下記式IIAで表される化合物またはその塩もしくはプロドラッグである、請求項1に記載の方法。
【化3】
[式中、Z、WおよびR2は請求項1と同義である]
【請求項5】
Zが、-CN、-C(O)O-C1-6アルキル基、-C(O)NH-C1-6アルキル基、または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-ヘテロアリール基であり;
Wが、-N(R1)R3、-NR1-C1-6アルキレン-N(R1)R3、-O-C1-6アルキレン-N(R1)R3、-S-C1-6アルキレン-N(R1)R3、-NR1-C1-6アルキレン-NR1RA、-NR1-C1-6アルキレン-(NR1-C1-6アルキレン)n-NR1R3、または、-NR1-C1-6アルキレン-(NR1-C1-6アルキレン)n-NR1RAであり、ここで、nは0、1、2または3に等しい整数であり、R1およびR3が窒素原子に結合する場合、任意で、R1およびR3は、窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成し、当該環は、任意で、1または2以上のRAまたはR4で置換され;
R1が、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、-C3-7シクロアルキル基、-C3-7シクロアルケニル基、-C1-5ペルフルオロ基、-ヘテロシクリル基、-ヘテロアリール基、または、-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R2が、-H、-C1-6アルキル基、-C(O)R4、アルキレン基またはヘテロアリール基上で1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-C1-6アルキレン-ヘテロアリール基、1または2以上のRAまたはR4で任意に置換された-C1-6アルキレン-ヘテロシクリル基、または、アルキレン基またはヘテロアリール基上で1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-C1-6アルキレン-アリール基であり;
R3が、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、または、-C1-5ペルフルオロ基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記ペルフルオロアルキル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R4が、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、-C3-7シクロアルキル基、-C3-7シクロアルケニル基、-C1-5ペルフルオロ基、-ヘテロシクリル基、-アリール基、-ヘテロアリール基、または、-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
RAが、それぞれ独立して、-ハロゲン、-CF3、-OR1、-L-OR1、-OCF3、-SR1、-CN、-NO2、-NR1R3、-L-NR1R1、-C(O)OR1、S(O)2R4、-C(O)N(R1)R3、-NR1C(O)R1、-NR1C(O)OR1、-OC(O)N(R1)R3、-OC(O)R1、-C(O)R4、-NHC(O)N(R1)R3、-NR1C(O)N(R1)R3、または、-N3であり;
Rdが、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、-C3-7シクロアルキル基、-C3-7シクロアルケニル基、-C1-5ペルフルオロ基、-ベンジル基、または、-ヘテロシクリル基である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
Zが、CO2Meまたは2-メチル-2H-テトラゾール-5-イルであり;
R2がベンジル基またはHであり;
WがNH-L-N(R1)R3であり、ここで、LはC2-4アルキレン基またはC3-7シクロアルキレン基であり、R1およびR3はC1-4アルキル基またはHであるか;R1およびR3は、R1およびR3が結合する窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成し、当該環は、任意で、1または2以上のRAまたはR4で置換される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
Wが
【化4】
である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が下記式IIAで表される化合物またはその塩である、請求項1に記載の方法。
【化5】
[式中、Zは、-C(O)O-C1-4アルキル基、または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された、-ヘテロアリール基、好ましくは、NおよびOから選択される2〜4個のヘテロ原子を有する5員環ヘテロアリール基であり;
Wは、-N(R1)R3、-NR1-C1-6アルキレン-N(R1)R3、-O-C1-6アルキレン-N(R1)R3、-S-C1-6アルキレン-N(R1)R3、または、-NR1-C1-6アルキレン-(NR1-C1-6アルキレン)n-NR1R3であり、ここで、nは0、1、2または3に等しい整数であり、R1およびR3が同じ窒素原子に結合する場合、R1およびR3は、任意で、窒素原子と一緒になって、NおよびOから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する5〜6員環を形成し、当該環は、任意で、1または2以上のRAまたはR4で置換され;
R1は、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C3-7シクロアルキル基、または、-ヘテロシクリル基であり、ここで、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記ヘテロシクリル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R2は、-H、-C1-6アルキル基、アルキレン基またはヘテロアリール基上で1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-C1-6アルキレン-ヘテロアリール基;または、アルキレン基またはアリール基上で1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-C1-6アルキレン-アリール基であり;
R3は、それぞれ独立して、-Hまたは-C1-6アルキル基であり、ここで、前記アルキル基は、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R4は、それぞれ独立して、-Hまたは-C1-6アルキル基であり、ここで、前記アルキル基は、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
RAは、それぞれ独立して、-ハロゲン、-CF3、-OR1、-OCF3、-SR1、-CN、-NO2、-NR1R3、-C(O)OR1、S(O)2R4、-C(O)N(R1)R3、-NR1C(O)R1、-NR1C(O)OR1、-OC(O)N(R1)R3、-OC(O)R1、-C(O)R4、-NHC(O)N(R1)R3、または、-NR1C(O)N(R1)R3であり;
Rdは、それぞれ独立して、-Hまたは-C1-6アルキル基である]
【請求項9】
前記化合物が、
【化6】
あるいは、その塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞が幹細胞および/または前駆細胞を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記幹細胞が原始造血細胞を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記原始造血細胞が臍帯血、骨髄または末梢血に由来する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ウイルスベクターが組み込み欠損型ウイルスベクターである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記レンチウイルスベクターがシュードタイプレンチウイルスベクターである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記レンチウイルスベクターが、水疱性口炎ウイルスGタンパク質(VSV−G)またはRAD114エンベロープタンパク質でシュードタイプされている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞を前記形質導入前に前記化合物と接触させる、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞を前記形質導入前および前記形質導入前中に前記化合物と接触させる、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞を前記化合物と約2時間〜約22時間接触させる、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
(i)請求項1および10〜12のいずれか一項で定義された細胞、(ii)請求項1〜9のいずれか一項で定義された少なくとも1つの化合物、および、(iii)請求項1および13〜16のいずれか一項で定義されたウイルスベクターを含む、組成物。
【請求項21】
(iv)細胞増殖に適した培地を更に含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記細胞が幹細胞を含む、請求項20または21に記載の組成物。
【請求項23】
前記幹細胞が原始造血細胞を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記原始造血細胞が臍帯血、骨髄または末梢血に由来する、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法により得られた形質導入細胞集団。
【請求項26】
請求項25に記載の形質導入細胞集団を含む、医薬組成物。
【請求項27】
細胞遺伝子治療を必要とする対象の治療方法であって、
請求項25に記載の形質導入細胞集団または請求項26に記載の医薬組成物の有効量を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項28】
(i)請求項1〜9のいずれか一項で定義された一般式Iで表される化合物の存在下、前記対象からの細胞にウイルスベクターを形質導入して、形質導入細胞を含む集団を得るステップ、および、
(ii)ステップ(i)で得られた前記形質導入細胞を含む集団、または、前記形質導入細胞を含む集団を含む医薬組成物の有効量を前記対象に投与するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞が、請求項22〜24のいずれか一項に定義されたものである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記対象が血液病またはリソソーム蓄積症に罹患している、請求項27〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記血液病またはリソソーム蓄積症が、ウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)、異染性白質ジストロフィー(MLD)、白血球接着不全症、X連鎖性慢性肉芽腫症、ファンコニ貧血、副腎白質ジストロフィー、ムコ多糖症IIIA型、重症複合免疫不全症(SCID)、または、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
細胞遺伝子治療を必要とする対象を治療するための、請求項25に記載の形質導入細胞集団または請求項26に記載の医薬組成物の使用。
【請求項33】
細胞遺伝子治療を必要とする対象を治療するための薬剤を製造するための、請求項25に記載の形質導入細胞集団または請求項26に記載の医薬組成物の使用。
【請求項34】
前記対象が血液病またはリソソーム蓄積症に罹患している、請求項32または33に記載の使用。
【請求項35】
前記血液病またはリソソーム蓄積症が、ウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)、異染性白質ジストロフィー(MLD)、白血球接着不全症、X連鎖性慢性肉芽腫症、ファンコニ貧血、副腎白質ジストロフィー、ムコ多糖症IIIA型、重症複合免疫不全症(SCID)、または、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症である、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
細胞内で目的遺伝子を発現させる方法であって、
請求項1〜9のいずれか一項で定義された一般式Iで表される化合物を前記細胞と接触させるステップ、および、
前記目的遺伝子をコードする核酸を含むウイルスベクターを前記細胞に形質導入するステップを含む、方法。
【請求項37】
前記ウイルスベクターが請求項1および13〜16のいずれか一項で定義されたものである、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は米国仮特許出願第62/052,452号(2014年9月18日出願)の利益を主張するものであり、その全体を参照により本願明細書に援用する。
【0002】
本発明は、概してウイルス遺伝子導入に関し、より詳しくは、造血幹細胞(hematopoietic stem cells;HSC)などの細胞へのウイルス遺伝子導入およびその用途に関する。
【0003】
造血幹細胞(HSC)への遺伝子導入は、多くの遺伝子疾患の治療の魅力的なアプローチとなっている。近年、遺伝子治療分野の進展により、βサラセミアや鎌状赤血球貧血などの異常ヘモグロビン症に悩む患者が新規な治療アプローチの恩恵を受けられる期待が高まっている。βグロビン遺伝子を組み込んだレンチウイルスベクターで改変した造血細胞(hematopoietic cells;HC)の移植は、一部のマウスモデルでヘモグロビン疾患を長期的に改善したものの(非特許文献1〜4)、輸血が不要となったのは一人のβサラセミア患者だけである(非特許文献5)。
【0004】
一方、このような遺伝子治療の安全性や有用性は制限されている。十分な数の形質導入造血幹細胞を得ることがこれらの形質導入細胞の収量や機能性が悪いことに起因して困難だからである。様々な薬剤を使用してレトロウイルス遺伝子導入を増強することが報告されており、例えば、フィブロネクチン(特許文献1、非特許文献6,7)、HIV Tat(非特許文献8)、ベクトフシン-1(非特許文献9)、デオキシヌクレオシド(非特許文献10)、および、サイトカイン(非特許文献11,12)が使用されている。
【0005】
このように、特に造血疾患の治療または予防のための遺伝子治療法において、造血幹細胞への遺伝子導入を増強するための新規な化合物および方法に対するニーズがある。
【0006】
本出願では多くの文献が参照されるが、それらの内容全体は参照により本願明細書に援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,686,278号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Imren et al, Proc Natl Acad Sci USA. 2002;99: 14380-14385
【非特許文献2】Malik et al., Ann NY Acad Sci. 2005;1054:238-249
【非特許文献3】May et al, Nature. 2000;406:82-86
【非特許文献4】Pawliuk et al, Science. 2001;294: 2368-2371
【非特許文献5】Cavazzana-Calvo et al, Nature. 2010;467:318-322
【非特許文献6】Chono H et al. J Biochem. 2011 Mar;149(3):285-92
【非特許文献7】Lee HJ, Lee YS, et al. Biologicals. 2009 Aug;37(4):203-9
【非特許文献8】Nappi F, et al. J Gene Med. 2009 Nov;11(11):955-65
【非特許文献9】Fenard D, et al., Mol Ther Nucleic Acids. 2013 May 7;2:e90
【非特許文献10】Ravot E, et al., J Gene Med. 2002 Mar-Apr;4(2):161-9
【非特許文献11】Geronimi F et al.. Stem Cells. 2003;21(4):472-80
【非特許文献12】Kiem HP, et al., Blood. 1998 Sep 15;92(6):1878-86
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は下記[1]〜[37]に関する。
[1]細胞にウイルスベクターを形質導入する方法であって、
下記一般式Iで表される化合物またはその塩もしくはプロドラッグを前記細胞と接触させる工程、および
前記細胞にウイルスベクターを形質導入する工程を含む、方法。
【化1】

[式中、各Yは、独立してNおよびCHから選択され;
Zは、
1)-CN、
2)-C(O)OR1、
3)-C(O)N(R1)R3、
4)-C(O)R1、または
5)1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換されたヘテロアリール基であり、ここで、(R1)およびR3が窒素原子に結合する場合、任意で、(R1)およびR3は窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成し、当該環は、任意で、1または2以上のRAまたはR4で置換され;
Wは、
1)-CN、
2)-N(R1)R3、
3)-C(O)OR1、
4)-C(O)N(R1)R3、
5)-NR1C(O)R1、
6)-NR1C(O)OR1、
7)-OC(O)N(R1)R3、
8)-OC(O)R1、
9)-C(O)R1、
10)-NR1C(O)N(R1)R3、
11)-NR1S(O)2R1、
12)1、2または3つのRA置換基またはR1置換基で任意に置換された-ベンジル基、
13)-X-L-(X-L)n-N(R1)R3、
14)L基およびヘテロアリール基の一方または両方に結合する1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-X-L-(X-L)n-ヘテロアリール基、
15)L基およびヘテロシクリル基の一方または両方に結合する1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-X-L-(X-L)n-ヘテロシクリル基、
16)1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-X-L-(X-L)n-アリール基、
17)-X-L-(X-L)n-NR1RA、または
18)-(N(R1)-L)n-N+R1R3R5R6-であり、ここで、nは0、1、2、3、4または5に等しい整数であり、R1およびR3が窒素原子に結合する場合、任意で、R1およびR3は、窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成し、当該環は、任意で、1または2以上のRAまたはR4で置換され;
各Xは、独立して、O、SおよびNR1から選択され;
各Lは、独立して、
1)-C1-6アルキレン基、
2)-C2-6アルケニレン基、
3)-C2-6アルキニレン基、
4)N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する-C3-7シクロアルキレン基、または
5)N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する-C3-7シクロアルケニレン基であり、ここで、前記アルキレン基、前記アルケニレン基、前記アルキニレン基、前記シクロアルキレン基、および、前記シクロアルケニレン基は、それぞれ独立して、1または2つのR4置換基またはRA置換基で任意に置換され;
R1は、それぞれ独立して、
1)-H、
2)-C1-6アルキル基、
3)-C2-6アルケニル基、
4)-C2-6アルキニル基、
5)-C3-7シクロアルキル基、
6)-C3-7シクロアルケニル基、
7)-C1-5ペルフルオロ基、
8)-ヘテロシクリル基、
9)-アリール基、
10)-ヘテロアリール基、または
11)-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R2は、
1)-H、
2)1または2以上のRA置換基で任意に置換された-C1-6アルキル基、
3)-C(O)R4、
4)1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-L-ヘテロアリール基、
5)1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-L-ヘテロシクリル基、または
6)1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-L-アリール基であり;
R3は、それぞれ独立して、
1)-H、
2)-C1-6アルキル基、
3)-C2-6アルケニル基、
4)-C2-6アルキニル基、
5)-C3-7シクロアルキル基、
6)-C3-7シクロアルケニル基、
7)-C1-5ペルフルオロ基、
8)-ヘテロシクリル基、
9)-アリール基、
10)-ヘテロアリール基、または
11)-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R4は、それぞれ独立して、
1)-H、
2)-C1-6アルキル基、
3)-C2-6アルケニル基、
4)-C2-6アルキニル基、
5)-C3-7シクロアルキル基、
6)-C3-7シクロアルケニル基、
7)-C1-5ペルフルオロ基、
8)-ヘテロシクリル基、
9)-アリール基、
10)-ヘテロアリール基、または
11)-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R5は、それぞれ独立して、
1)-C1-6アルキル基、
2)N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する-C1-6アルキレン-C2-6アルケニル基、
3)N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する-C1-6アルキレン-C2-6アルキニル基、
4)1または2以上のRA置換基またはR4置換基を任意で有する-L-アリール基、
5)1または2以上のRA置換基またはR4置換基を任意で有する-L-ヘテロアリール基、
6)-C1-6アルキレン-C(O)O-、
7)-C1-6アルキレン-C(O)OR1、
8)-C1-6アルキレン-CN、
9)-C1-6アルキレン-C(O)NR1R3(R1およびR3は、任意で、窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成する)、または
10)-C1-6アルキレン-OHであり;
R6は、
1)ハロゲン、
2)OC(O)CF3、または
3)OC(O)R1であり;
RAは、それぞれ独立して、
1)-ハロゲン、
2)-CF3
3)-OR1、
4)-L-OR1、
5)-OCF3
6)-SR1、
7)-CN、
8)-NO2
9)-NR1R3、
10)-L-NR1R1、
11)-C(O)OR1、
12)S(O)2R4、
13)-C(O)N(R1)R3、
14)-NR1C(O)R1、
15)-NR1C(O)OR1、
16)-OC(O)N(R1)R3、
17)-OC(O)R1、
18)-C(O)R4、
19)-NHC(O)N(R1)R3、
20)-NR1C(O)N(R1)R3、または
21)-N3であり;
Rdは、それぞれ独立して、
1)-H、
2)-C1-6アルキル基、
3)-C2-6アルケニル基、
4)-C2-6アルキニル基、
5)-C3-7シクロアルキル基、
6)-C3-7シクロアルケニル基、
7)-C1-5ペルフルオロ基、
8)-ベンジル基、または
9)-ヘテロシクリル基である]
[2]前記化合物が下記式IAで表される化合物またはその塩もしくはプロドラッグである、[1]に記載の方法。
【化2】

[式中、W、Y、ZおよびR2は請求項1と同義である]
[3]各Yが、独立してNおよびCHから選択され;
Zが、-CN、-C(O)OR1、-C(O)N(R1)R3、または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-ヘテロアリール基であり、
Wが、-CN、-N(R1)R3、1、2または3つのRA置換基またはR1置換基で任意に置換された-ベンジル基、-X-L-(X-L)n-N(R1)R3、-X-L-(X-L)n-NR1RA、または、-(N(R1)-L)n-N+R1R3R5R6-であり、ここで、nは0、1、2または3に等しい整数であり、R1およびR3が窒素原子と結合する場合、任意で、R1およびR3が、窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成し、当該環は任意で1または2以上のRAまたはR4で置換され;
各Xが、独立して、O、SまたはNR1であり;
Lが、それぞれ独立して、-C1-6アルキレン基、-C2-6アルケニレン基、-C2-6アルキニレン基、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する-C3-7シクロアルキレン基、または、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する-C3-7シクロアルケニレン基であり、ここで、前記アルキレン基、前記アルケニレン基、前記アルキニレン基、前記シクロアルキレン基、および、前記シクロアルケニレン基は、それぞれ独立して、1または2つのR4置換基またはRA置換基で任意に置換され;
R1が、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、-C3-7シクロアルキル基、-C3-7シクロアルケニル基、-C1-5ペルフルオロ基、-ヘテロシクリル基、-ヘテロアリール基、または、-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R2が、-H、1または2以上のRA置換基で任意に置換された-C1-6アルキル基、-C(O)R4、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-L-ヘテロアリール基、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-L-ヘテロシクリル基 、または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-L-アリール基であり;
R3が、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、または、-C1-5ペルフルオロ基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記ペルフルオロアルキル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R4が、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、-C3-7シクロアルキル基、-C3-7シクロアルケニル基、-C1-5ペルフルオロ基、-ヘテロシクリル基、-アリール基、-ヘテロアリール基、または、-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R5が、それぞれ独立して、-C1-6アルキル基、1または2以上のRA置換基またはR4置換基を任意で有する-L-アリール基、1または2以上のRA置換基またはR4置換基を任意で有する-L-ヘテロアリール基、-C1-6アルキレン-C(O)O-、-C1-6アルキレン-C(O)OR1、-C1-6アルキレン-CN、-C1-6アルキレン-C(O)NR1R3、または、-C1-6アルキレン-OHであり;
R6が、-ハロゲン、-OC(O)CF3、または、-OC(O)R1であり;
RAが、それぞれ独立して、-ハロゲン、-CF3、-OR1、-L-OR1、-OCF3、-SR1、-CN、-NO2、-NR1R3、-L-NR1R1、-C(O)OR1、S(O)2R4、-C(O)N(R1)R3、-NR1C(O)R1、-NR1C(O)OR1、-OC(O)N(R1)R3、-OC(O)R1、-C(O)R4、-NHC(O)N(R1)R3、-NR1C(O)N(R1)R3、または、-N3であり;
Rdが、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、-C3-7シクロアルキル基、-C3-7シクロアルケニル基、-C1-5ペルフルオロ基、-ベンジル基、または、-ヘテロシクリル基である、[2]に記載の方法。
[4]前記化合物が下記式IIAで表される化合物またはその塩もしくはプロドラッグである、[1]に記載の方法。
【化3】


[式中、Z、WおよびR2は[1]と同義である]
[5]Zが、-CN、-C(O)O-C1-6アルキル基、-C(O)NH-C1-6アルキル基、または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-ヘテロアリール基であり;
Wが、-N(R1)R3、-NR1-C1-6アルキレン-N(R1)R3、-O-C1-6アルキレン-N(R1)R3、-S-C1-6アルキレン-N(R1)R3、-NR1-C1-6アルキレン-NR1RA、-NR1-C1-6アルキレン-(NR1-C1-6アルキレン)n-NR1R3、または、-NR1-C1-6アルキレン-(NR1-C1-6アルキレン)n-NR1RAであり、ここで、nは0、1、2または3に等しい整数であり、R1およびR3が窒素原子に結合する場合、任意で、R1およびR3は、窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成し、当該環は、任意で、1または2以上のRAまたはR4で置換され;
R1が、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、-C3-7シクロアルキル基、-C3-7シクロアルケニル基、-C1-5ペルフルオロ基、-ヘテロシクリル基、-ヘテロアリール基、または、-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R2が、-H、-C1-6アルキル基、-C(O)R4、アルキレン基またはヘテロアリール基上で1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-C1-6アルキレン-ヘテロアリール基、1または2以上のRAまたはR4で任意に置換された-C1-6アルキレン-ヘテロシクリル基、または、アルキレン基またはヘテロアリール基上で1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-C1-6アルキレン-アリール基であり;
R3が、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、または、-C1-5ペルフルオロ基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記ペルフルオロアルキル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R4が、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、-C3-7シクロアルキル基、-C3-7シクロアルケニル基、-C1-5ペルフルオロ基、-ヘテロシクリル基、-アリール基、-ヘテロアリール基、または、-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
RAが、それぞれ独立して、-ハロゲン、-CF3、-OR1、-L-OR1、-OCF3、-SR1、-CN、-NO2、-NR1R3、-L-NR1R1、-C(O)OR1、S(O)2R4、-C(O)N(R1)R3、-NR1C(O)R1、-NR1C(O)OR1、-OC(O)N(R1)R3、-OC(O)R1、-C(O)R4、-NHC(O)N(R1)R3、-NR1C(O)N(R1)R3、または、-N3であり;
Rdが、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、-C3-7シクロアルキル基、-C3-7シクロアルケニル基、-C1-5ペルフルオロ基、-ベンジル基、または、-ヘテロシクリル基である、[4]に記載の方法。
[6]Zが、CO2Meまたは2-メチル-2H-テトラゾール-5-イルであり;
R2がベンジル基またはHであり;
WがNH-L-N(R1)R3であり、ここで、LはC2-4アルキレン基またはC3-7シクロアルキレン基であり、R1およびR3はC1-4アルキル基またはHであるか;R1およびR3は、R1およびR3が結合する窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成し、当該環は、任意で、1または2以上のRAまたはR4で置換される、[5]に記載の方法。
[7]Wが
【化4】

である、[6]に記載の方法。
[8]前記化合物が下記式IIAで表される化合物またはその塩である、[1]に記載の方法。
【化5】

[式中、Zは、-C(O)O-C1-4アルキル基、または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された、-ヘテロアリール基、好ましくは、NおよびOから選択される2〜4個のヘテロ原子を有する5員環ヘテロアリール基であり;
Wは、-N(R1)R3、-NR1-C1-6アルキレン-N(R1)R3、-O-C1-6アルキレン-N(R1)R3、-S-C1-6アルキレン-N(R1)R3、または、-NR1-C1-6アルキレン-(NR1-C1-6アルキレン)n-NR1R3であり、ここで、nは0、1、2または3に等しい整数であり、R1およびR3が同じ窒素原子に結合する場合、R1およびR3は、任意で、窒素原子と一緒になって、NおよびOから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する5〜6員環を形成し、当該環は、任意で、1または2以上のRAまたはR4で置換され;
R1は、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C3-7シクロアルキル基、または、-ヘテロシクリル基であり、ここで、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記ヘテロシクリル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R2は、-H、-C1-6アルキル基、アルキレン基またはヘテロアリール基上で1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-C1-6アルキレン-ヘテロアリール基;または、アルキレン基またはアリール基上で1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-C1-6アルキレン-アリール基であり;
R3は、それぞれ独立して、-Hまたは-C1-6アルキル基であり、ここで、前記アルキル基は、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R4は、それぞれ独立して、-Hまたは-C1-6アルキル基であり、ここで、前記アルキル基は、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
RAは、それぞれ独立して、-ハロゲン、-CF3、-OR1、-OCF3、-SR1、-CN、-NO2、-NR1R3、-C(O)OR1、S(O)2R4、-C(O)N(R1)R3、-NR1C(O)R1、-NR1C(O)OR1、-OC(O)N(R1)R3、-OC(O)R1、-C(O)R4、-NHC(O)N(R1)R3、または、-NR1C(O)N(R1)R3であり;
Rdは、それぞれ独立して、-Hまたは-C1-6アルキル基である]
[9]前記化合物が、
【化6】

あるいは、その塩である、[1]に記載の方法。
[10]前記細胞が幹細胞および/または前駆細胞を含む、[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11]前記幹細胞が原始造血細胞を含む、[10]に記載の方法。
[12]前記原始造血細胞が臍帯血、骨髄または末梢血に由来する、[11]に記載の方法。
[13]
前記ウイルスベクターが組み込み欠損型ウイルスベクターである、[1]〜[12]のいずれかに記載の方法。
[14]前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、[1]〜[13]のいずれかに記載の方法。
[15]前記レンチウイルスベクターがシュードタイプレンチウイルスベクターである、[14]に記載の方法。
[16]前記レンチウイルスベクターが、水疱性口炎ウイルスGタンパク質(VSV−G)またはRAD114エンベロープタンパク質でシュードタイプされている、[15]に記載の方法。
[17]前記細胞を前記形質導入前に前記化合物と接触させる、[1]〜[16]のいずれかに記載の方法。
[18]前記細胞を前記形質導入前および前記形質導入前中に前記化合物と接触させる、[1]〜[16]のいずれかに記載の方法。
[19]前記細胞を前記化合物と約2時間〜約22時間接触させる、[1]〜[18]のいずれかに記載の方法。
[20](i)[1]および[10]〜[12]のいずれかで定義された細胞、(ii)[1]〜[9]のいずれかで定義された少なくとも1つの化合物、および、(iii)[1]および[13]〜[16]のいずれかで定義されたウイルスベクターを含む、組成物。
[21](iv)細胞増殖に適した培地を更に含む、[20]に記載の組成物。
[22]前記細胞が幹細胞を含む、[20]または[21]に記載の組成物。
[23]前記幹細胞が原始造血細胞を含む、[22]に記載の組成物。
[24]前記原始造血細胞が臍帯血、骨髄または末梢血に由来する、[23]に記載の組成物。
[25][1]〜[19]のいずれかに記載の方法により得られた形質導入細胞集団。
[26][25]に記載の形質導入細胞集団を含む、医薬組成物。
[27]細胞遺伝子治療を必要とする対象の治療方法であって、
[25]に記載の形質導入細胞集団または[26]に記載の医薬組成物の有効量を前記対象に投与するステップを含む、方法。
[28](i)[1]〜[9]のいずれかで定義された一般式Iで表される化合物の存在下、前記対象からの細胞にウイルスベクターを形質導入して、形質導入細胞を含む集団を得るステップ、および、
(ii)ステップ(i)で得られた前記形質導入細胞を含む集団、または、前記形質導入細胞を含む集団を含む医薬組成物の有効量を前記対象に投与するステップを含む、[27]に記載の方法。
[29]前記細胞が、[22]〜[24]のいずれかに定義されたものである、[28]に記載の方法。
[30]前記対象が血液病またはリソソーム蓄積症に罹患している、[27]〜[29]のいずれかに記載の方法。
[31]前記血液病またはリソソーム蓄積症が、ウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)、異染性白質ジストロフィー(MLD)、白血球接着不全症、X連鎖性慢性肉芽腫症、ファンコニ貧血、副腎白質ジストロフィー、ムコ多糖症IIIA型、重症複合免疫不全症(SCID)、または、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症である、[30]に記載の方法。
[32]細胞遺伝子治療を必要とする対象を治療するための、[25]に記載の形質導入細胞集団または[26]に記載の医薬組成物の使用。
[33]細胞遺伝子治療を必要とする対象を治療するための薬剤を製造するための、[25]に記載の形質導入細胞集団または[26]に記載の医薬組成物の使用。
[34]前記対象が血液病またはリソソーム蓄積症に罹患している、[32]または[33]に記載の使用。
[35]前記血液病またはリソソーム蓄積症が、ウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)、異染性白質ジストロフィー(MLD)、白血球接着不全症、X連鎖性慢性肉芽腫症、ファンコニ貧血、副腎白質ジストロフィー、ムコ多糖症IIIA型、重症複合免疫不全症(SCID)、または、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症である、[34]に記載の使用。
[36]細胞内で目的遺伝子を発現させる方法であって、
[1]〜[9]のいずれかで定義された一般式Iで表される化合物を前記細胞と接触させるステップ、および、
前記目的遺伝子をコードする核酸を含むウイルスベクターを前記細胞に形質導入するステップを含む、方法。
[37]前記ウイルスベクターが[1]および[13]〜[16]のいずれかで定義されたものである、[36]に記載の方法。
【0010】
本発明の他の目的、利点および特徴は、添付の図面を参照して例示のみを目的として記載した、本発明の特定の実施形態の下記非限定的な記載を読むことによってより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、化合物1およびSR1で増殖したヒトCD34+臍帯血(cord blood;CB)細胞が、未操作細胞よりも効率的に形質導入されたことを示す。フレッシュなまたは8日間化合物1(35nM)およびSR1(500nM)で増殖させたCD34+CB細胞を24時間プレ刺激し、MOI:10のGFPコードVSV-Gレンチウイルスで16時間形質導入した。形質導入72時間後、細胞を洗浄し、FACS分析を行うために抗ヒトCD34抗体および抗ヒトCD45RA抗体で染色した。両方の条件(フレッシュvs化合物1+SR1で8日間培養)における、総集団(左バー)、CD34+集団(中央バー)およびCD34+CD45RA-集団(右バー)中のGFP形質導入細胞の割合(%)を示す。
図2図2は、化合物1処理細胞が、DMSO対照と比較してより高い割合(%)のGFP形質導入CD34+細胞およびGFP形質導入CD34+CD45RA-細胞を示したことを示す。CD34+CB細胞は、48時間プレ刺激し、ビヒクル(DMSO)または化合物1(35nM)の存在下、GFPをコードするVSV-GまたはRDT114レンチウイルス(MOI:50または100)で12時間形質導入した。次いで、細胞を洗浄し、DMSOまたは化合物1中で再び培養した。フローサイトメトリー分析を行って、形質導入3日後および10日後の集団内のGFP陽性細胞(暗灰色)を決定した。
図3図3Aおよび3Bは、GFP形質導入および増殖させた化合物1処理CD34+CB細胞が、対照と比較して、ヒトCD45生着のより良好な可能性を示したことを示す。化合物1(三角)またはDMSO(丸)対照で10日間形質導入・増殖させた1000個のCD34+CB細胞の子孫細胞(図2に記載)を、放射線を亜致死量(275cGy)照射したメスNSGマウスに移植した。NSG骨髄細胞のフローサイトメトリー分析を移植30週後に行った。図3A:全NSG骨髄細胞におけるヒトCD45+細胞の割合(%)。図3B:ヒトCD45細胞におけるGFP+細胞の割合(%)。
図4図4は、RD114およびVSV-Gでシュードタイプしたレンチウイルスベクターによる移植30週間後のインビボ・データの要約を示す。
図5図5Aは実験計画図を示す。FACSで単離した20,000個のCD34+臍帯血細胞を、100μlの無血清培地(ウシ血清アルブミン、インスリンおよびトランスフェリン(BIT、STEMCELL Technologies)、10μg/ mlの低密度リポタンパク質(LDL、STEMCELL Technologies)、10-4Mの2-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich)、10-4Mのglutamax 500(STEMCELLTechnologies)、ペニシリン、ストレプトマイシンを添加したIscove培地であって、さらに、ヒト成長因子(100ng/ml SCF、100ng/ml FLT3L、20ng/ml IL-3、20ng/ml IL-6、および、20ng/ml G-CSF)を添加したもの)中で、化合物1(35nM)および/またはSR1(0.75μM)の存在下または非存在下で16時間プレ刺激した。次いで、細胞を同じ培地中でGFPレンチウイルスベクター(106 iu/mL)に6時間暴露した。(レンチウイルスベクターおよび使用したウイルスストックの生成および力価測定の詳細は図5Cに示す)。形質導入期間の終わりに、細胞を洗浄し、DMSO、SR1(0.75μM)、化合物1(35nM)またはSR1+化合物1を添加した同じ培地中で72時間培養した。培養の終わりに、細胞を採取し、CD34に対して染色し、フローサイトメトリーで分析した。 図5Bは、GFP+(*p<0.05)であったCD34+細胞の比率を%で示す。 図5Cは、本願明細書に記載の実験で使用したレンチウイルスベクターおよびウイルスストックの生成および力価測定の詳細示す。これらの研究では、pCCl-c-MNDUSpgkGFPまたはpCCl-c-MNDUSpgkYFPレンチウイルスベクター骨格を使用した(Logan AC et al., Human Gene Therapy 2004)。MN1の4000bpのcDNAまたは1743bpのNUP98-HOXD13または1640bpのNUP98-HOXA10hd融合遺伝子をクローニングして、それぞれ、pCCl-c-MNDUSMN1pgkGFPまたはpCCl-c-MNDUSFND13pgkGFPまたはpCCl-c-MNDUSNA10hdpgkGFPを作製した。これらのベクター構築物を配列確認した。標準的な4プラスミドパッケージングシステムを使用して293T細胞の一過性トランスフェクションすることにより、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質Gでシュードタイプした高力価組換えウイルスを産生した。ウイルス含有上清を超遠心分離により濃縮して、0.5×109〜5×109感染単位/mlの力価を達成した。ウイルス力価は、HeLa細胞にレンチウイルスベクターの3つの希釈物を形質導入することによって決定した。
図6図6Aは実験設計の概略を示す。FACSで単離した20,000個のCD34+臍帯血細胞を、図5Aに記載の培養条件下、プレ刺激しGFPレンチウイルスベクターで形質導入した。プレ刺激期間中または形質導入期間中に化合物1(35nM)またはDMSOを添加した。細胞の形質導入は、105〜109ビリオン/mLの範囲の最終ウイルス濃度範囲を網羅するように希釈したGFPレンチウイルス(ウイルスの詳細は図5Cに示す)を用いて行った。 図6Bおよび6Cは、プレ刺激期間(図6B)または形質導入期間(図6C)中に化合物1(上のバー)またはDMSO(下のバー)に曝露した細胞で培養した後のCD34+細胞について評価した遺伝子導入率を、使用したウイルス濃度の関数として示す。 図6Dおよび図6Eは、プレ刺激期間(図6D)または形質導入期間(図6E)中に化合物1またはDMSOを用いたヒト造血細胞の様々なサブセット間の遺伝子導入効率を示す。 図6Fおよび図6Gは、プレ刺激期間(図6F)または形質導入期間(図6G)中に化合物1またはDMSOを用いたヒト造血サブセットの収量を示す。図6D図6Gのデータはウイルス濃度106 iu/mLで得られたものである。
図7図7Aは、インビトロおよびインビボで評価した、原始細胞の遺伝子導入および収量に対する化合物1の効果を評価するための実験設計を示す。細胞をGFPまたはYFPで形質導入しレシピエント免疫不全マウスに同時注射した場合(競合的再増殖)における、様々な条件下で形質導入した細胞のin vivo追跡を可能にした。用いた培養条件、細胞数およびウイルスは、それぞれ図5Aおよび図5Cに記載されている通りである。これらの実験では、化合物1を最終濃度35nMで添加し、GFPまたはYFPベクターのウイルス濃度は106 iu/mLとした。培養物は全てトリプリケートでセットアップした。 図7Bおよび図7Cは、化合物1の存在下または非存在下でのGFP(図7B)またはYFP(図7C)ウイルスによる形質導入3日後に回収した細胞におけるCD34発現およびGFPまたはYFP発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。 図7Dは、GFPベクター(左、暗灰色バー)またはYFPベクター(右、明るい灰色のバー)(n=3;エラーバーはSDを示す;*P<0.05)で形質導入したヒトCD34+CB細胞への遺伝子導入効率を示す。 図7Eは、3日間の培養の終了時に回収したCD34+細胞およびGFP標識CD34+細胞(左、暗灰色のバー)またはYFP標識されたCD34+細胞(右、明るい灰色のバー)の絶対数を示す(n=3;エラーバーはSDを示す;*P<0.05)。 図7F図7Gおよび図7Hは、化合物1の存在下または非存在下で形質導入した細胞のインビボ競合実験の結果を示す。プレ刺激期間および形質導入期間(22時間)の直後に、YFP標識細胞(化合物1の存在下で形質導入)およびGFP標識細胞(DMSOの存在下で形質導入)の等しいアリコート(20 000個)を洗浄し、亜致死量の放射線を照射したNSGマウスに注射した(n=8)。骨髄穿刺液中のリンパ球生着を30週間にわたってモニターした。図7F:移植NSGマウスの骨髄における全ヒトCD45+細胞(上の黒線)、YFP+細胞(中間の明るい灰色の線)またはGFP+細胞(下の濃い灰色の線)の検出。図7G:移植NSGマウスの骨髄におけるヒトCD33細胞+(骨髄球)細胞(上の黒バー)、YFP+細胞(中間の明灰色バー)またはGFP+細胞(下の暗灰色バー)の検出。図7H:移植NSGマウスの骨髄におけるヒトCD19/20(Bリンパ球)細胞(上の黒バー)、YFP+細胞(中間の明灰色バー)またはGFP+細胞(下の暗灰色バー)の検出。
図8図8A〜8Eは、ヒトCD34+CB細胞への遺伝子導入の化合物1による刺激増強(インビトロ)、および、NSGマウスにおけるヒトHSCへの遺伝子導入の化合物1による刺激増強(インビボ、n=2)を示す独立した実験(実験2)を示す。実験デザインは、図5に記載の培養条件下で図7に記載した通りとした。ウイルス濃度および化合物1の濃度は、図7に記載の通りとした(それぞれ106 iu/mlおよび35nM)。 図8Aは、GFPベクター(左、暗灰色バー)またはYFPベクター(右、明灰色バー)で形質導入したヒトCD34+CB細胞への遺伝子導入効率を示す。 図8Bは、3日間の培養の終わりに回収したCD34+細胞およびGFP標識CD34+細胞(左、暗灰色バー)またはYFP標識CD34+細胞(右、明灰色バー)の絶対数を示す。 図8Cは、移植NSGマウスの骨髄におけるヒトCD45+細胞(上の黒線)、GFP+細胞(中間の濃灰色線)またはYFP+細胞(下の明灰色線)の検出を移植後の時間の関数として示す。 図8Dは、移植NSGマウスの骨髄におけるヒトCD33(骨髄球)細胞(上の黒線)、GFP+細胞(中間の濃灰色線)またはYFP+細胞(下の明灰色線)の検出を示す。 図8Eは、移植NSGマウスの骨髄におけるヒトCD19/20(Bリンパ球)細胞(上の黒線)、GFP+細胞(中間の濃灰色線)またはYFP+細胞(下の明灰色線)の検出を示す。
図9図9A〜9Dは、ヒトCD34+CB細胞への遺伝子導入の化合物1による刺激増強(インビトロ)、および、NSGマウスのヒトHSCへの遺伝子導入の化合物1刺激による増強を示す独立した実験(実験3)を示す。 図9Aは実験計画図を示す。この実験の独特の特徴は、CD34+細胞の供給源として異なる臍帯血プールを使用したこと;異なるGFPレンチウイルス調製物を使用したこと;および、競合アッセイではなく限界希釈下インビボで細胞評価をしたことが含まれる。ウイルスおよび化合物1の濃度を含む他の培養条件は、先に記載したとおりである。 図9Bは、ヒトCD34+CB細胞への遺伝子導入効率を示す。 図9Cは、様々な細胞用量(全て出発細胞等価物(starting cell equivalents)として表す)での移植後30週のマウス骨髄におけるヒトCD45+細胞を示す。 図9Dは、様々な細胞用量で移植後30週における骨髄中のGFP発現ヒト細胞の比率を示す。
図10図10Aは、プレ刺激期間または形質導入期間中CD34+CB細胞を様々な期間Cmpd1に曝露した実験設計を示す。最小曝露時間は、プレ刺激期間の開始時あるいは形質導入期間の開始時または終了時の2時間である。 図10Bは、種々の条件下でのCD34+細胞への遺伝子導入および細胞収量を評価するために(化合物1の非存在下の)3日間の増殖培養の終わりに回収した細胞の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。 図10C〜10Pは、プレ刺激の最初の2時間の間に化合物1が存在する場合(図10C図10Hおよび図10M)、プレ刺激の最後の2時間の間に化合物1が存在する場合(図10D図10Iおよび図10N)、プレ刺激16時間の間に化合物1が存在する場合(図10E図10Jおよび図10O)、形質導入の最初の2時間に化合物1が存在する場合(図10F図10Kおよび図10P)、または、形質導入の最後の2時間に化合物1が存在する場合(図10G図10Lおよび図10Q)における、種々のCD34+サブコンパートメントに対する遺伝子導入効率および収量をまとめる。
図11図11Aは、示した持続時間の間、化合物1の存在下または非存在下、事前のプレ刺激なしで細胞をウイルスに直接曝露した実験設計を示す。 図11Bは、培養期間の終わりに回収した細胞の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。その後のパネルは、I、IIおよびIIIとラベルした様々な形質導入条件下でのCD34+細胞およびCD34+亜集団への遺伝子導入および収量をまとめたものである。
図12図12Aは、100ng/mL hSCF、100ng/mL hFLT3-L、100ng/mL hTPOおよび20ng/mL hIL3を添加した無血清培地中で、ヒト骨髄CD34+細胞およびヒトCD34+動員末梢血を化合物1(35nM)またはDMSO(0.01%)の存在下24時間プレ刺激し、かつ、24時間形質導入した実験設計を示す。その後細胞を洗浄し、さらに3日間培養して、遺伝子導入効率および培養物中のCD34+細胞およびCD34+サブセットの収量を評価した。 図12Bおよび12Cは、骨髄由来の原始ヒト造血細胞(図12B)および動員末梢血(図12C)の様々なサブセットについての形質導入細胞の遺伝子導入効率および収量を示す。
図13図13Aは、RD114シュードタイプレンチウイルスベクターを用いて形質導入したヒトCD34+CB細胞への遺伝子導入効率を示す。 図13Bは、VSV-Gシュードタイプレンチウイルスベクターを用いて形質導入したヒトCD34+CB細胞への遺伝子導入効率を示す。 図13Cは、非組込み型(インテグラーゼ欠損)レンチウイルスによるヒトCD34+CB細胞への遺伝子導入効率を試験するための実験設計を示す。 図13Dは、非組み込み型(インテグラーゼ欠損)レンチウイルス(パネルB)を用いた、化合物1の存在下または非存在下でのCD34+臍帯血細胞への遺伝子導入の結果を示す。
図14図14Aおよび図14Bは、様々な増殖因子の組み合わせ下で行った遺伝子導入実験の結果を示す。5つの増殖因子(100ng/ml SCF、100ng/ml FLT3L、20ng/ml IL-3、20ng/ml IL-6、20ng/ml G-CSF)または異なる3つの増殖因子(100ng/ml SCF、100ng/ml FLT3L、50ng/ml TPO)のカクテルを含む化合物1(35nM)またはDMSO(0.01%)を添加したSFM中で、20000個のCD34+CB細胞を先の全ての実験で用いた標準条件下でプレ刺激・形質導入した。細胞を洗浄し、同じ培地でさらに3日間培養して、5つの増殖因子(右パネル)条件下および3つの増殖因子(左パネル)条件下のCD34+細胞およびCD34+サブセットの遺伝子導入効率および収量を評価した。図14A:遺伝子導入効率(%GFP細胞)。図14B:絶対細胞数。
図15図15A図15Dは、一連のレンチウイルスベクターを用いて行った遺伝子導入実験の結果を示す。標準条件下、ヒトCD34+細胞を16時間プレ刺激し、化合物1の存在下または非存在下で様々なレンチウイルスベクターで6時間形質導入し、さらに72時間後にCD34+細胞への遺伝子導入を評価した。様々なインサート(LGB、NA10-HD、MN1、ND13;それぞれ、図15A〜15D)を含むレンチウイルスベクター作製し、示したウイルス濃度で試験した。
図16図16Aおよび図16Bは、化合物1のバリアントを用いて行った遺伝子導入実験の結果を示す。ヒトCD34+CB細胞を、DMSO、化合物1または様々な化合物1バリアントの存在下でプレ刺激し(16時間)、形質導入した(6時間)。次いで、細胞を洗浄し、さらに3日間培養し、FACSにより分析した。ヒトCD34+細胞の増殖に活性であることが知られている化合物1および他のバリアント(化合物3、化合物4、化合物5、化合物6)および非活性であることが知られている化合物1の他のバリアント(化合物7、化合物8)は、ヒトCD34+CB細胞(図16A)および様々なCD34+サブセット(図16B)に対する遺伝子導入効率を増加させる。
図17図17A図17Cは、化合物1、化合物2およびSR1の存在下または非存在下で共培養後のマカク臍帯血CD34+細胞の増殖および生着を示す。図17A:実験模式図。図17Bは、移植後の移植マウスの血液中の霊長類CD45+細胞の検出を示す。図17Cは、移植後10週目における生着データの要約(上パネル)および代表的なフローサイトメトリー分析(10週目)(下パネル)を示す。有意水準:* p<0.05
図18図18A図18Gは、マカク骨髄由来の遺伝子改変CD34+およびLT-HSC様細胞の形質導入および増殖に対する化合物1の効果を示す。図18A:実験模式図。図18Bは、CD34+細胞の増殖および化合物1/SR1で増殖させる前後のCFC(コロニー形成細胞)形成を示す。図18Cは、化合物1の存在下または非存在でCD34+細胞を形質導入後の細胞収量を示す。図18Dは、動員骨髄CD34+細胞の形質導入1週間後の遺伝子改変LT-HSC様細胞増殖の挙動を示す。図18Eは、化合物1/SR1の存在下または非存在下での形質導入の増殖倍率(上パネル;左バー=総GFP+;中央バー=CD34+GFP+;右バー=LT-HSC+GFP+)、および、化合物1/SR1の存在下または非存在下で増殖後の形質導入動員骨髄CD34+細胞のCFC能を示す(下パネル)。図18Fは、化合物1/SR1の組み合わせは、動員CD34+細胞の形質導入中に、SR1と比較して芽球を維持することを示す。図18Gは、図18Fに示されるデータの代表的なサイトスピン画像を示す。
図19図19A図19Eは、マカクにおける、SR1/化合物1存在下で増殖・形質導入したCD34+細胞の生着を示す。図19A:実験模式図。図19Bは、SR1(左バー)およびSR1+化合物1(右バー)を用いて形質導入したCD34+細胞における遺伝子導入を示す。図19Cは、SR1(左バー)およびSR1+化合物1(右バー)と共培養後の遺伝子改変CD34+細胞の増殖倍率を示す。図19Dは、細胞移植1ヶ月後の骨髄中および血液中の骨髄細胞およびリンパ細胞の検出を示す。図19Eは、移植後の遺伝子改変顆粒球およびリンパ球の検出を示す(GFP+顆粒球=明灰色の菱形;GFP+リンパ球=薄灰色の円;mCherry+顆粒球=濃灰色の菱形; mCherry+リンパ球=濃灰色の円)。
図20図20A図20Eは、化合物1とラパマイシンとが協同してヒト造血細胞へのレンチウイルス遺伝子導入効率を高めることを示す。 図20Aは、実験設計の模式図を示す。FACSで単離した20,000個のCD34+臍帯血細胞を、100μlの無血清培地+ヒト成長因子(100ng/ml SCF、100ng/ml FLT3L、20ng/ml IL-3、20ng/ml IL-6、および、20ng/ml G-CSF)中で、化合物1(35nM)および/またはラパマイシン(10μg/ mL)の存在下または非存在下で16時間プレ刺激した。次いで、細胞を同じ培地中でGFPレンチウイルスベクター(106 iu/mL)に6時間暴露した。形質導入期間の終わりに、細胞を洗浄し、成長因子を含む無血清培地中で72時間培養した。培養の終わりに、細胞を採取し、HSCの表面マーカーについて染色し、フローサイトメトリーで分析した。 図20Bは、ヒトHSCへの遺伝子導入効率を示す。左バー=DMSO;2番目のバー=化合物1;3番目のバー=ラパマイシン;4番目(右)のバー=化合物1+ラパマイシン(コンボ)。 図20Cは、培養終了時に回収した全細胞数を示す。左バー=DMSO;2番目のバー=化合物1;3番目のバー=ラパマイシン;4番目(右)のバー=化合物1+ラパマイシン(コンボ)。 図20Dは、培養物中で産生されたHSCの絶対数を示す。左バー=DMSO;2番目のバー=化合物1;3番目のバー=ラパマイシン;4番目(右)のバー=化合物1+ラパマイシン(コンボ)。 図20Eは、培養終了時に回収した細胞の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願明細書に記載する研究において、本発明者らは、ヒト造血細胞をピリミド[4,5−b]インドール誘導体(長期培養(12日間)後、ヒト造血細胞の増殖を刺激することが示されている)に短期間(例えば、約2時間〜約22時間)暴露すると、ウイルスを介した遺伝子導入が著しく増強されることを示した。かかるレンチウイルス介在遺伝子導入増強能は、原始ヒト造血細胞の増殖を刺激することが知られている他の小分子であるStemRegenin 1(SR1)では観察されなかった。かかる増強は、様々な由来(臍帯血、成体骨髄、成体動員末梢血を含む)かつ様々なフェノタイプ(バルクCD34+、および、幹細胞を高度に濃縮したものを含む高純度CD34+サブセット)の原始造血細胞において、様々なウイルス(組み込み欠損型レンチウイルスおよび様々なシュードタイプレンチウイルスを含む、様々なレンチウイルス)を用いて測定されたため、上記化合物が造血細胞などの細胞へのウイルス遺伝子導入の増強に広く適用され得ることが示された。
【0013】
したがって、第1の態様において、本発明は、細胞(幹細胞および/または前駆細胞などの初代細胞など)にウイルスベクター(レンチウイルスベクターなど)を形質導入する方法であって、本願明細書に定義される一般式Iで表される化合物またはその塩もしくはプロドラッグを前記細胞と接触させる工程、および、前記細胞にウイルスベクターを形質導入する工程を含む、方法を提供する。
【化7】
[式中、
各Yは、独立してNおよびCHから選択され;
Zは、-CN;-C(O)OR1;-C(O)N(R1)R3;-C(O)R1;または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-ヘテロアリール基であり、ここで、(R1)およびR3が窒素原子に結合する場合、任意で、(R1)およびR3は窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成し、当該環は、任意で、1または2以上のRAまたはR4で置換され;
Wは-CN;-N(R1)R3;-C(O)OR1;-C(O)N(R1)R3;-NR1C(O)R1;-NR1C(O)OR1;-OC(O)N(R1)R3;-OC(O)R1;-C(O)R1;-NR1C(O)N(R1)R3;-NR1S(O)2R1;1、2または3つのRA置換基またはR1置換基で任意に置換された-ベンジル基;-X-L-(X-L)n;-N(R1)R3;L基およびヘテロアリール基の一方または両方に結合する1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-X-L-(X-L)n-ヘテロアリール基;L基およびヘテロシクリル基の一方または両方に結合する1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-X-L-(X-L)n-ヘテロシクリル基;1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-X-L-(X-L)n-アリール基;-X-L-(X-L)n-NR1RA;または-(N(R1)-L)n-N+R1R3R5R6-であり、ここで、nは0、1、2、3、4または5に等しい整数であり、R1およびR3が窒素原子に結合する場合、任意で、R1およびR3は、窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成し、当該環は、任意で、1または2以上のRAまたはR4で置換され;
各Xは、独立して、O、SおよびNR1から選択され;
各Lは、独立して、-C1-6アルキレン基;-C2-6アルケニレン基;-C2-6アルキニレン基;N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する-C3-7シクロアルキレン基;または、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する-C3-7シクロアルケニレン基であり、ここで、前記アルキレン基、前記アルケニレン基、前記アルキニレン基、前記シクロアルキレン基、および、前記シクロアルケニレン基は、それぞれ独立して、1または2つのR4置換基またはRA置換基で任意に置換され;
R1は、それぞれ独立して、-H;-C1-6アルキル基;-C2-6アルケニル基;-C2-6アルキニル基;-C3-7シクロアルキル基;-C3-7シクロアルケニル基;-C1-5ペルフルオロ基;-ヘテロシクリル基;-アリール基;-ヘテロアリール基;または、-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R2は、-H;1または2以上のRA置換基で任意に置換された-C1-6アルキル基;-C(O)R4;1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-L-ヘテロアリール基;1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-L-ヘテロシクリル基;または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-L-アリール基であり;
R3は、それぞれ独立して、-H;-C1-6アルキル基;-C2-6アルケニル基;-C2-6アルキニル基;-C3-7シクロアルキル基;-C3-7シクロアルケニル基;-C1-5ペルフルオロ基;-ヘテロシクリル基;-アリール基;-ヘテロアリール基;または、-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R4は、それぞれ独立して、-H;-C1-6アルキル基;-C2-6アルケニル基;-C2-6アルキニル基;-C3-7シクロアルキル基;-C3-7シクロアルケニル基;-C1-5ペルフルオロ基;-ヘテロシクリル基;-アリール基;-ヘテロアリール基;または、-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R5は、それぞれ独立して、-C1-6アルキル基;N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する-C1-6アルキレン-C2-6アルケニル基;N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する-C1-6アルキレン-C2-6アルキニル基;1または2以上のRA置換基またはR4置換基を任意で有する-L-アリール基;1または2以上のRA置換基またはR4置換基を任意で有する-L-ヘテロアリール基;-C1-6アルキレン-C(O)O-;-C1-6アルキレン-C(O)OR1;-C1-6アルキレン-CN;C1-6アルキレン-C(O)NR1R3(R1およびR3は、任意で、窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成する);または、-C1-6アルキレン-OHであり;
R6は、ハロゲン;-OC(O)CF3;または、-OC(O)R1であり;
RAは、それぞれ独立して、-ハロゲン;-CF3;-OR1;-L-OR1;-OCF3;-SR1;-CN;-NO2;-NR1R3;-L-NR1R1;-C(O)OR1;-S(O)2R4;-C(O)N(R1)R3;-NR1C(O)R1;-NR1C(O)OR1;-OC(O)N(R1)R3;-OC(O)R1;-C(O)R4;-NHC(O)N(R1)R3;-NR1C(O)N(R1)R3;または、-N3であり;
Rdは、それぞれ独立して、-H;-C1-6アルキル基;-C2-6アルケニル基;-C2-6アルキニル基;-C3-7シクロアルキル基;-C3-7シクロアルケニル基;-C1-5ペルフルオロ基;-ベンジル基;または、-ヘテロシクリル基である]
【0014】
一実施形態によれば、前記化合物は下記式IAで表される化合物またはその塩もしくはプロドラッグである。
【化8】
[式中、W、Y、ZおよびR2はそれぞれ本願明細書で定義したとおりである]
【0015】
一実施形態によれば、前記化合物は式Iまたは式IAで表される化合物であって、
各Yが、独立してNおよびCHから選択され;
Zが、-CN、-C(O)OR1、-C(O)N(R1)R3、または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-ヘテロアリール基であり;
Wが、-CN、-N(R1)R3、1、2または3つのRA置換基またはR1置換基で任意に置換された-ベンジル基、-X-L-(X-L)n-N(R1)R3、-X-L-(X-L)n-NR1RA、または、-(N(R1)-L)n-N+R1R3R5R6-であって、nは0、1、2または3に等しい整数であり、R1およびR3が窒素原子と結合する場合、任意で、R1およびR3が、窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成し、当該環は任意で1または2以上のRAまたはR4で置換され;
Xが、それぞれ独立して、O、SまたはNR1であり;
Lが、それぞれ独立して、-C1-6アルキレン基、-C2-6アルケニレン基、-C2-6アルキニレン基、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する-C3-7シクロアルキレン基、または、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する-C3-7シクロアルケニレン基であり、ここで、前記アルキレン基、前記アルケニレン基、前記アルキニレン基、前記シクロアルキレン基、および、前記シクロアルケニレン基は、それぞれ独立して、1または2つのR4置換基またはRA置換基で任意に置換され;
R1が、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、-C3-7シクロアルキル基、-C3-7シクロアルケニル基、-C1-5ペルフルオロ基、-ヘテロシクリル基、-ヘテロアリール基、または、-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R2が、-H、1または2以上のRA置換基で任意に置換された-C1-6アルキル基、-C(O)R4、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-L-ヘテロアリール基、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-L-ヘテロシクリル基 、または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-L-アリール基であり;
R3が、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、または、-C1-5ペルフルオロ基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記ペルフルオロアルキル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R4が、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、-C3-7シクロアルキル基、-C3-7シクロアルケニル基、-C1-5ペルフルオロ基、-ヘテロシクリル基、-アリール基、-ヘテロアリール基、または、-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R5が、それぞれ独立して、-C1-6アルキル基、1または2以上のRA置換基またはR4置換基を任意で有する-L-アリール基、1または2以上のRA置換基またはR4置換基を任意で有する-L-ヘテロアリール基、-C1-6アルキレン-C(O)O-、-C1-6アルキレン-C(O)OR1、-C1-6アルキレン-CN、-C1-6アルキレン-C(O)NR1R3、または、-C1-6アルキレン-OHであり;
R6が、ハロゲン、OC(O)CF3、または、OC(O)R1であり;
RAが、それぞれ独立して、-ハロゲン、-CF3、-OR1、-L-OR1、-OCF3、-SR1、-CN、-NO2、NR1R3、-L-NR1R1、-C(O)OR1、S(O)2R4、-C(O)N(R1)R3、-NR1C(O)R1、-NR1C(O)OR1、-OC(O)N(R1)R3、-OC(O)R1、-C(O)R4、-NHC(O)N(R1)R3、-NR1C(O)N(R1)R3、または、-N3であり;
Rdが、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、-C3-7シクロアルキル基、-C3-7シクロアルケニル基、-C1-5ペルフルオロ基、-ベンジル基、または、-ヘテロシクリル基である。
【0016】
一実施形態によれば、前記化合物は下記式IIAで表される化合物またはその塩もしくはプロドラッグである。
【化9】

[式中、Z、WおよびR2は本願明細書で定義したとおりである]
【0017】
一実施形態によれば、前記化合物は式I、式IAまたは式IIAで表され、
Zが、CN;-C(O)O-C1-6アルキル基;-C(O)NH-C1-6アルキル基;または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-ヘテロアリール基であり;
Wが、-N(R1)R3;-NR1-C1-6アルキレン-N(R1)R3;-O-C1-6アルキレン-N(R1)R3;-S-C1-6アルキレン-N(R1)R3;-NR1-C1-6アルキレン-NR1RA;-NR1-C1-6アルキレン-(NR1-C1-6アルキレン)n-NR1R3;または、-NR1-C1-6アルキレン-(NR1-C1-6アルキレン)n-NR1RAであり、ここで、nは0、1、2または3に等しい整数であり、R1およびR3が窒素原子に結合する場合、任意で、R1およびR3は、窒素原子と一緒になって1または2以上の他のヘテロ原子(N、OまたはS)を任意で有する3〜7員環を形成し、当該環は、任意で、1または2以上のRAまたはR4で置換され;
R1が、それぞれ独立して、-H;-C1-6アルキル基;-C2-6アルケニル基;-C2-6アルキニル基;-C3-7シクロアルキル基;-C3-7シクロアルケニル基;-C1-5ペルフルオロ基;-ヘテロシクリル基;-ヘテロアリール基;または、-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R2が、-H;-C1-6アルキル基;-C(O)R4;アルキレン基またはヘテロアリール基上で1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-C1-6アルキレン-ヘテロアリール基;1または2以上のRAまたはR4で任意に置換された-C1-6アルキレン-ヘテロシクリル基、または、アルキレン基またはヘテロアリール基上で1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-C1-6アルキレン-アリール基であり;
R3が、それぞれ独立して、-H;-C1-6アルキル基;-C2-6アルケニル基;-C2-6アルキニル基;または、-C1-5ペルフルオロ基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記ペルフルオロアルキル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R4が、それぞれ独立して、-H;-C1-6アルキル基;-C2-6アルケニル基;-C2-6アルキニル基;-C3-7シクロアルキル基;-C3-7シクロアルケニル基;-C1-5ペルフルオロ基;-ヘテロシクリル基;-アリール基;-ヘテロアリール基;または、-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
RAが、それぞれ独立して、-ハロゲン;-CF3;-OR1;-L-OR1;-OCF3;-SR1;-CN;-NO2;-NR1R3;-L-NR1R1;-C(O)OR1;S(O)2R4;-C(O)N(R1)R3;-NR1C(O)R1;-NR1C(O)OR1;-OC(O)N(R1)R3;-OC(O)R1;-C(O)R4;-NHC(O)N(R1)R3;-NR1C(O)N(R1)R3;または、-N3であり;
Rdが、それぞれ独立して、-H;-C1-6アルキル基;-C2-6アルケニル基;-C2-6アルキニル基;-C3-7シクロアルキル基;-C3-7シクロアルケニル基;-C1-5ペルフルオロ基;-ベンジル基;または、-ヘテロシクリル基である。
【0018】
他の一実施形態によれば、本開示は、原始造血細胞へのレンチウイルス遺伝子導入効率を向上させる方法であって、原始造血細胞を含む細胞集団に一般式I-VIで表される化合物を接触させるステップ、および、前記細胞にレンチウイルスベクターを形質導入するステップを含む方法が提供され、前記化合物は、式I、式IAまたは式IIAで表される化合物であり、
Zが、CN、-C(O)O-C1-6アルキル基、-C(O)NH-C1-6アルキル基、または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-ヘテロアリール基であり;
Wが、-N(R1)R3、-NR1-C1-6アルキレン-N(R1)R3、-O-C1-6アルキレン-N(R1)R3、-S-C1-6アルキレン-N(R1)R3、-NR1-C1-6アルキレン-NR1RA、-NR1-C1-6アルキレン-(NR1-C1-6アルキレン)n-NR1R3、または、-NR1-C1-6アルキレン-(NR1-C1-6アルキレン)n-NR1RAであり、ここで、nは0、1、2または3に等しい整数であり、R1およびR3が窒素原子に結合する場合、任意で、R1およびR3は、窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成し、当該環は、任意で、1または2以上のRAまたはR4で置換され;
R1が、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、-C3-7シクロアルキル基、-C3-7シクロアルケニル基、-C1-5ペルフルオロ基、-ヘテロシクリル基、-ヘテロアリール基、または、-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R2が、-H、-C1-6アルキル基、-C(O)R4、アルキレン基またはヘテロアリール基上で1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-C1-6アルキレン-ヘテロアリール基、1または2以上のRAまたはR4で任意に置換された-C1-6アルキレン-ヘテロシクリル基、または、アルキレン基またはヘテロアリール基上で1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-C1-6アルキレン-アリール基であり;
R3が、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、または、-C1-5ペルフルオロ基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記ペルフルオロアルキル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R4が、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、-C3-7シクロアルキル基、-C3-7シクロアルケニル基、-C1-5ペルフルオロ基、-ヘテロシクリル基、-アリール基、-ヘテロアリール基、または、-ベンジル基であり、ここで、前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記シクロアルキル基、前記シクロアルケニル基、前記ペルフルオロアルキル基、前記ヘテロシクリル基、前記アリール基、前記ヘテロアリール基、および、前記ベンジル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
RAが、それぞれ独立して、-ハロゲン、-CF3、-OR1、-L-OR1、-OCF3、-SR1、-CN、-NO2、-NR1R3、-L-NR1R1、-C(O)OR1、S(O)2R4、-C(O)N(R1)R3、-NR1C(O)R1、-NR1C(O)OR1、-OC(O)N(R1)R3、-OC(O)R1、-C(O)R4、-NHC(O)N(R1)R3、-NR1C(O)N(R1)R3、または、-N3であり;
Rdが、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C2-6アルケニル基、-C2-6アルキニル基、-C3-7シクロアルキル基、-C3-7シクロアルケニル基、-C1-5ペルフルオロ基、-ベンジル基、または、-ヘテロシクリル基である。
【0019】
一実施形態において、Zは、-C(O)OR1、または、1または2以上のRA置換基またはR1置換基で任意に置換された-ヘテロアリール基であり;R2は、-H、1または2以上のRA置換基で任意に置換された-C1-6アルキル基、または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-L-アリール基であり;WはN(R1)R3であり、ここで、R1はRAで置換されたC3-7シクロアルキル基であり、R3はHである。
【0020】
一実施形態において、Zは、-C(O)O-C1-4アルキル基、または、5員環ヘテロアリール基であって、当該ヘテロアリールは2〜4個のヘテロ原子(NまたはO)を含み;R2は、H、または、ハロゲン、OR1、RAで任意に置換されたC1-6アルキル基、C(O)R4、ヘテロシクリル基、C(O)OR4もしくはC2-6アルキニル基で任意に置換された-L-アリール基であり;Wは、-N(R1)R3であり、ここで、R1はRAで置換されたシクロヘキシル基であり、R3はHである。
【0021】
一実施形態において、Zは、COOMe、COOEt、テトラゾール、または、オキサジアゾールである。
【0022】
一実施形態において、R2は、H;または、ハロゲン、OR1、RAで任意に置換された-C1-6アルキル基、C(O)R4、ヘテロシクリル基、C(O)OR4もしくはC2-6アルキニル基で任意に置換された-CH2-アリール基であり、当該アリール基はフェニル基である。
【0023】
一実施形態において、R2は、H;または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された、-C1-6アルキレン-ヘテロアリール基もしくは-C1-6アルキレン-アリール基である。
【0024】
他の一実施形態において、前記化合物は式I、式IAまたは式IIAで表され、
Zは、CO2Meまたは2-メチル-2H-テトラゾール-5-イルであり;
R2は、ベンジル基またはHであり;
Wは、NH-L-N(R1)R3であり、ここで、LはC2-4アルキレン基またはC3-7シクロアルキレン基であり、R1およびR3はC1-4アルキル基またはHであるか;R1およびR3は、R1およびR3が結合する窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成し、当該環は、任意で、1または2以上のRAまたはR4で置換される。
【0025】
他の一実施形態において、前記化合物は式I、式IAまたは式IIAで表され、
Wは
【化10】

である。
【0026】
更なる一実施形態において、
前記化合物は、
【化11】
である。
【0027】
更なる一実施形態において、
前記化合物は、
【化12】
である。
【0028】
他の一実施形態によれば、
前記化合物は、
【化13】
あるいはその塩である。
[式I中の各Yは同一または別異であり、独立してNおよびCHから選択され、
Zは、-C(O)O-C1-4アルキル基、または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された、-ヘテロアリール基、好ましくは、NおよびOから選択される2〜4個のヘテロ原子を有する5員環ヘテロアリール基であり;
Wは、-N(R1)R3、-NR1-C1-6アルキレン-N(R1)R3、-O-C1-6アルキレン-N(R1)R3、-S-C1-6アルキレン-N(R1)R3、または、-NR1-C1-6アルキレン-(NR1-C1-6アルキレン)n-NR1R3であり、ここで、nは0、1、2または3に等しい整数であり、R1およびR3が同じ窒素原子に結合する場合、R1およびR3は、任意で、窒素原子と一緒になって、NおよびOから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する5〜6員環を形成し、当該環は、任意で、1または2以上のRAまたはR4で置換され;
R1は、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C3-7シクロアルキル基、または、-ヘテロシクリル基であり、ここで、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記ヘテロシクリル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R2は、-H、-C1-6アルキル基、アルキレン基またはヘテロアリール基上で1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-C1-6アルキレン-ヘテロアリール基;または、アルキレン基またはアリール基上で1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-C1-6アルキレン-アリール基であり;
R3は、それぞれ独立して、-Hまたは-C1-6アルキル基であり、ここで、前記アルキル基は、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R4は、それぞれ独立して、-Hまたは-C1-6アルキル基であり、ここで、前記アルキル基は、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
RAは、それぞれ独立して、-ハロゲン、-CF3、-OR1、-OCF3、-SR1、-CN、-NO2、-NR1R3、-C(O)OR1、S(O)2R4、-C(O)N(R1)R3、-NR1C(O)R1、-NR1C(O)OR1、-OC(O)N(R1)R3、-OC(O)R1、-C(O)R4、-NHC(O)N(R1)R3、または、-NR1C(O)N(R1)R3であり;
Rdは、それぞれ独立して、-Hまたは-C1-6アルキル基である]
【0029】
他の一実施形態によれば、前記化合物は
【化14】

またはその塩である。
[式中、Zは、-C(O)O-C1-4アルキル基、または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された、-ヘテロアリール基、好ましくは、NおよびOから選択される2〜4個のヘテロ原子を有する5員環ヘテロアリール基であり;
Wは、-N(R1)R3、-NR1-C1-6アルキレン-N(R1)R3、-O-C1-6アルキレン-N(R1)R3、-S-C1-6アルキレン-N(R1)R3、または、-NR1-C1-6アルキレン-(NR1-C1-6アルキレン)n-NR1R3であり、ここで、nは0、1、2または3に等しい整数であり、R1およびR3が同じ窒素原子に結合する場合、R1およびR3は、任意で、窒素原子と一緒になって、NおよびOから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する5〜6員環を形成し、当該環は、任意で、1または2以上のRAまたはR4で置換され;
R1は、それぞれ独立して、-H、-C1-6アルキル基、-C3-7シクロアルキル基、または、-ヘテロシクリル基であり、ここで、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記ヘテロシクリル基は、それぞれ独立して、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R2は、-H、-C1-6アルキル基、アルキレン基またはヘテロアリール基上で1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-C1-6アルキレン-ヘテロアリール基;または、アルキレン基またはアリール基上で1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-C1-6アルキレン-アリール基であり;
R3は、それぞれ独立して、-Hまたは-C1-6アルキル基であり、ここで、前記アルキル基は、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
R4は、それぞれ独立して、-Hまたは-C1-6アルキル基であり、ここで、前記アルキル基は、1、2または3つのRA置換基またはRd置換基で任意に置換され;
RAは、それぞれ独立して、-ハロゲン、-OR1、-NR1R3、-C(O)OR1、-C(O)N(R1)R3、-NR1C(O)R1、-NR1C(O)OR1、または、-NR1C(O)N(R1)R3であり;
Rdは、それぞれ独立して、-Hまたは-C1-6アルキル基である]
【0030】
他の一実施形態によれば、前記化合物は下記式IIAで表される化合物
【化15】
またはその塩である。
[式中、Zは、-C(O)O-C1-4アルキル基、または、5員環ヘテロアリール基であり、当該ヘテロアリール基はNおよびOから選択される2〜4個のヘテロ原子を有し;
R2は、-H;または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された、-C1-6アルキレン-ヘテロアリール基もしくは-C1-6アルキレン-アリール基であり;
Wは、-X-L-N(R1)R3(Xは独立してO、SおよびNR1から選択される)、または、好ましくは、-NR1-L-N(R1)R3であり、ここで、LはC2-4アルキレン基またはC3-7シクロアルキレン基であり、R1およびR3はC1-4アルキル基またはHであるか;R1およびR3は、R1およびR3が結合する窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成し、当該環は、任意で、1または2以上のRAまたはR4で置換される]
【0031】
他の一実施形態によれば、前記化合物は下記式IIAで表される化合物
【化16】
またはその塩である。
[式中、Zは、CO2Me、COOEt、テトラゾール、または、オキサジアゾールであり、好ましくは、Zは、CO2Meまたは2-メチル-2H-テトラゾール-5-イルであり;
R2は、H;または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された、-C1-6アルキレン-ヘテロアリール基もしくは-C1-6アルキレン-アリール基であり、好ましくは、R2はベンジル基またはHであり;
Wは、-X-L-N(R1)R3(Xは独立してO、SおよびNR1から選択される)、または、好ましくは、-NH-L-N(R1)R3であり、ここで、LはC2-4アルキレン基またはC3-7シクロアルキレン基であり、R1およびR3はC1-4アルキル基またはHであるか;R1およびR3は、R1およびR3が結合する窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成し、当該環は、任意で、1または2以上のRAまたはR4で置換される]
【0032】
他の一実施形態によれば、前記化合物は下記式IIAで表される化合物
【化17】
またはその塩である。
[式中、Zは、COOMe、COOEt、テトラゾール、または、オキサジアゾールであり、好ましくは、Zは、CO2Meまたは2-メチル-2H-テトラゾール-5-イルであり;
R2は、H;または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された、-C1-6アルキレン-ヘテロアリール基(当該ヘテロアリール基は、ピリジニル基、ピリミジニル基またはチエニル基)もしくは-C1-6アルキレン-アリール基であり、好ましくは、R2は任意で置換されたベンジル基またはHであり;
Wは、
【化18】
または好ましくは
【化19】
である]
【0033】
他の一実施形態によれば、前記化合物は下記式IIAで表される化合物
【化20】
またはその塩である。
[式中、Zは、CO2Meまたは2-メチル-2H-テトラゾール-5-イルであり;
R2は、H、-CH2-ヘテロアリール基(当該ヘテロアリール基は、ピリジニル基、ピリミジニル基またはチエニル基)、任意に置換されたベンジル基、または、Hであり;
Wは、
【化21】
または好ましくは
【化22】

である]
【0034】
他の一実施形態によれば、前記化合物は下記式IIAで表される化合物
【化23】
またはその塩である。
[式中、Zは、-C(O)OR1、または、1または2以上のRA置換基またはR1置換基で任意に置換された-ヘテロアリール基であり;
R2は、H、1または2以上のRA置換基で任意に置換された-C1-6アルキル基、または、1または2以上のRA置換基またはR4置換基で任意に置換された-L-アリール基であり、
Wは、X-L-N(R1)R3(Xは、独立してO、SおよびNR1から選択される)、または、好ましくは、-N(R1)R3であり、ここで、R1はRAで置換されたC3-7シクロアルキル基であり、R3はHである]
【0035】
他の一実施形態によれば、前記化合物は下記式IIAで表される化合物
【化24】
またはその塩である。
[式中、Zは、-C(O)O-C1-4アルキル基、または、5員環ヘテロアリール基であって、当該ヘテロアリールはNおよびOから選択される2〜4個のヘテロ原子を含み;R2は、H、または、ハロゲン、OR1、RAで任意に置換された-C1-6アルキル基、C(O)R4、-ヘテロシクリル基、C(O)OR4もしくはC2-6アルキニル基で任意に置換されたL-アリール基であり;Wは、X-L-N(R1)R3(Xは独立してO、SおよびNR1から選択される)、または、好ましくは、-N(R1)R3であり、ここで、R1はRAで置換されたシクロヘキシル基であり、R3はHである]
【0036】
他の一実施形態によれば、前記化合物は下記式IIAで表される化合物
【化25】
またはその塩である。
[式中、Zは、CO2Meまたは2-メチル-2H-テトラゾール-5-イルであり;R2は、ベンジル基またはHであり;Wは、X-L-N(R1)R3(Xは独立してO、SおよびNR1から選択される)、または、好ましくは、NH-L-N(R1)R3であり、ここで、LはC2-4アルキレン基またはC3-7シクロアルキレン基であり、R1およびR3はC1-4アルキル基またはHであるか;R1およびR3は、R1およびR3が結合する窒素原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1または2以上の他のヘテロ原子を任意で有する3〜7員環を形成し、当該環は、任意で、1または2以上のRAまたはR4で置換される
【0037】
他の一実施形態によれば、前記化合物は下記式IIAで表される化合物
【化26】

またはその塩である。
[式中、Zは、CO2Meまたは2-メチル-2H-テトラゾール-5-イルであり;R2は、ベンジル基またはHであり;W

【化27】
または好ましくは
【化28】
である]
【0038】
実施形態において、前記化合物は、下記表1に示す化合物番号1〜90の1または2以上である。
【0039】
本願明細書で開示される式I、式IIおよび式IIAで表される化合物(上述の代表的な化合物を含む)は、それらの調製および特性解析を含めて、国際公開第2013/110198号公報(その開示内容全体を本願明細書に参照により援用する)および後述の合成方法の項目に記載されている。以下、これらの化合物を「本願明細書で定義される化合物」という)。
【0040】
本願明細書中、用語「アルキル基」は、特定数の炭素原子を有する分枝鎖および直鎖の両方の飽和脂肪族炭化水素基を包含することが意図され、例えば、C1-6アルキル基におけるC1-6は、直鎖または分岐鎖の飽和構造において、1個、2個、3個、4個、5個または6個の炭素原子を有する基を含むものとして定義される。上記定義のC1-6アルキル基の例には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基が含まれるが、これらに限定されない。本願明細書中、用語「シクロアルキル基」は、その中に特定数の炭素原子を有する単環式飽和脂肪族炭化水素基を意味することが意図され、例えば、C3-7シクロアルキル中のC3-7は、単環式飽和構造において3個、4個、5個、6個または7個の炭素を有する基を含むものとして定義される。上で定義したC3-7シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基およびシクロヘプチル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本願明細書中、用語「アルケニル基」は、その中に特定の数の炭素原子を有する不飽和の直鎖または分枝鎖の炭化水素基であって、炭素原子の少なくとも2つが二重結合によって互いに結合しており、かつ、E配置またはZ配置およびそれらの組み合わせの立体化学配置を取るものを意味することが意図される。例えば、C2-6アルケニル基中のC2-6は、直鎖または分枝鎖の構造で2個、3個、4個、5個または6個の炭素を有し、炭素原子の少なくとも2つが二重結合によって互いに結合されている基を含むものと定義される。C2-6アルケニル基の例としては、エテニル(ビニル)基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本願明細書中、用語「アルキニル基」は、その中に特定の数の炭素原子を有し、少なくとも2つの炭素原子が三重結合によって互いに結合している不飽和直鎖炭化水素基を意味することが意図される。例えば、C2-4アルキニル基は、鎖中に2個,3個または4個の炭素原子を有し、その炭素原子の少なくとも2個が三重結合によって互いに結合している基を含むものとして定義される。このようなアルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本願明細書中、用語「シクロアルケニル基」は、その中に特定の数の炭素原子を有する単環式飽和脂肪族炭化水素基を意味することが意図され、例えば、例えば、C3-7シクロアルケニル基中のC3-7は、単環式配置において3個、4個、5個、6個または7個の炭素を有する基を含むものとして定義される。上記定義のC3-7シクロアルケニル基の例としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本願明細書中、用語「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味することが意図される。
【0045】
本願明細書中、用語「ハロアルキル基」は、各水素原子がハロゲン原子で連続的に置換されていてもよい、上記定義のアルキル基を意味することが意図される。ハロアルキル基の例としては、限定されないが、CHF、CHFおよびCFが挙げられる。
【0046】
本願明細書中、単独でまたは別の基と組み合わされて用いられる用語「アリール基」は、6個の炭素原子を含有する炭素環式芳香族単環式基であって、芳香族、飽和または不飽和であり得る第2の5員または6員の炭素環式基に更に縮合していてもよいものを意味する。アリール基の例としては、フェニル基、インダニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、テトラヒドロナフチル基などが挙げられるが、これらに限定されない。アリール基は、シクロアルキル環または芳香族環上の適切な位置で別の基に結合していてもよい。
【0047】
本願明細書中、用語「ヘテロアリール基」は、少なくとも1つの環が芳香族であり、O、NおよびSからなる群から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む、最大10個の原子の単環式または二環式環系を意味することが意図される。ヘテロアリール基は、環炭素原子またはヘテロ原子の1つを介して結合され得る。ヘテロアリール基の例としては、限定されないが、チエニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾ[b]チエニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、2H−ピロリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピラダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H−インドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、4H−キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、イソチアゾリル基、イソクロマニル基、クロマニル基、イソオキサゾリル基、フラザニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、チアゾロ[4,5−b]ピリジン基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、チエニル基、ピリミド−インドリル基、ピリド−インドリル基、ピリド−ピロロ−ピリミジニル基、ピロロ−ジピリジニル基、および、フルオロセイン誘導体が挙げられる。
【0048】
本願明細書中、用語「複素環」、「複素環式」または「ヘテロシクリル基」は、O、NおよびSからなる群から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む、3、4、5、6または7員の非芳香族環系を意味することが意図される。複素環の例には、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジル、3,5−ジメチルピペリジル、ピロリニル、ピペラジニル、イミダゾリジニル、モルホリニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、テトラヒドロ−1H−チエノ[3,4−d]イミダゾール−2(3H)−オン、ジアジリニルなどが挙げられ、環への結合は、以下に記載されるような環の窒素原子または炭素原子であり得る。
【化29】
【0049】
本願明細書中、用語「1または2以上の置換基で任意に置換され」またはそれと同等な用語「少なくとも1つの置換基で任意に置換され」は、その後に記載される事象が起こっても起こらなくてもよいことを意味し、またその記載は事象や状況が発生する場合および発生しない場合を含む。かかる定義は、0〜5個の置換基を意味することが意図される。
【0050】
本願明細書中、用語「対象」または用語「患者」は、ヒトや、霊長類、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ、ラット、マウスなどの非ヒト哺乳動物を意味することを意図される。
【0051】
置換基自体が本願明細書に記載の合成方法と不適合である場合、置換基は、これらの方法で使用される反応条件に対して安定な適切な保護基(protecting group;PG)で保護されてもよい。保護基を合成方法の反応シークエンスの適切な時点で除去して、所望の中間体または標的化合物を得てもよい。適切な保護基およびこのような適切な保護基を使用して様々な置換基を保護・脱保護する方法は当業者に周知であり、その例はT. Greene and P. Wuts, “Protecting Groups in Chemical Synthesis” (4th ed.), John Wiley & Sons, NY (2007)(その内容全体を本願明細書に参照により援用する)に見出することができる。全体を通して使用される保護基の例としては、Fmoc、Bn、Boc、CBzおよびCOCFが挙げられるが、これらに限定されない。場合によっては、置換基は、本願明細書に記載の方法で使用される反応条件下で反応性であるように特異的に選択することができる。これらの状況下で、反応条件は、選択された置換基を、本願明細書に記載の方法の中間体化合物において有用であるか、または標的化合物中の所望の置換基である別の置換基に変換する。
【0052】
本願明細書中、用語「薬学的に許容される塩」は、酸付加塩および塩基付加塩の両方を意味することが意図される。
【0053】
本願明細書中、用語「薬学的に許容される酸付加塩」は、生物学的にまたは他の点で望ましくないものではない、遊離塩基の生物学的有効性および性質を保持する塩であって、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸;および、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などの有機酸を用いて形成されるものを意味することが意図される。
【0054】
本願明細書中、用語「薬学的に許容される塩基付加塩」は、生物学的にまたは他の点で望ましくないものではない、遊離酸の生物学的有効性および特性を保持する塩を意味することが意図される。これらの塩は、無機塩基または有機塩基を遊離酸に添加することにより調製される。 無機塩基から誘導される塩には、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムの塩などが含まれるが、これらに限定されない。有機塩基から誘導される塩には、第一級、第二級および第三級アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン、ポリアミン樹脂の塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
本発明に係る化合物またはそれらの薬学的に許容される塩は、1または2以上の不斉中心、キラル軸およびキラル面を含んでもよく、そのため、エナンチオマー、ジアステレオマーおよび他の立体異性体を生じさせ得、(R)または(S)、あるいは、アミノ酸の場合、(D)または(L)などの絶対立体化学で定義され得る。本発明は、そのような可能性のある異性体の全て、ならびにそれらのラセミ体および光学的に純粋な形態を含むことが意図される。光学的に活性な(+)および(-)異性体、(R)および(S)異性体、または(D)および(L)異性体は、キラル合成素子またはキラル試薬を用いて調製したり、逆相HPLCなどの周知技術を用いて分割され得る。ラセミ混合物を調製し、その後個々の光学異性体に分離してもよく、またはこれらの光学異性体をキラル合成によって調製してもよい。エナンチオマーは当業者に公知の方法により分割され得、例えば、ジアステレオ異性体の塩を形成し、次いでこれを結晶化;気体、液体または液体クロマトグラフィー;1つのエナンチオマーとエナンチオマー特異的試薬との選択的反応によって分離し得る。また、所望のエナンチオマーを分離技術によって別の化学物質に変換する場合、当業者は、所望のエナンチオマーを形成するために追加の工程が必要であることを理解するであろう。あるいは、特定のエナンチオマーは、光学活性な試薬、基質、触媒または溶媒を使用する不斉合成によって、または、1つのエナンチオマーを非対称変換によって別のエナンチオマーに変換することによって合成することができる。
【0056】
本発明に係る所定の化合物は、エピマーの混合物として存在し得る。エピマーは、それぞれの化合物中に存在する2つ以上の立体中心のうちの1つのみにおいて反対の立体配置を有するジアステレオ異性体を意味する。
【0057】
発明に係る所定の化合物は、双性イオン形態で存在してもよく、本発明の化合物は、これらの化合物の双性イオン形態およびその混合物を含む。
【0058】
さらに、本発明に係る化合物は、水和形態および無水形態で存在し得る。本願明細書に記載の式のいずれの化合物の水和物が含まれる。更なる実施形態では、本願明細書に記載の式に係るいずれの化合物も一水和物である。本発明の実施形態では、本願明細書に記載の化合物は、約10重量%以下、約9重量%以下、約8重量%以下、約7重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、約0.1重量%以下の水を含む。他の実施形態では、本願明細書に記載の化合物は、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約2重量%以上、約3重量%以上、約4重量%以上、約5重量%以上、または約6重量%以上の水を含む。
【0059】
プロドラッグの形態で化合物を調製、精製および/または取り扱うことが好都合である場合や望ましい場合がある。よって、本願明細書中、用語「プロドラッグ」は、(例えば、インビボで)代謝されて所望の活性化合物を生じる化合物に関する。典型的には、プロドラッグは、不活性であるかまたは所望の活性化合物よりも活性が低いが、有利な取扱い、投与または代謝特性を提供し得る。特段特定しない限り、特定の化合物への言及には、そのプロドラッグも含まれる。
【0060】
本願明細書中、用語「EC50」は、ビヒクル培養物(DMSO)と比較してCD34+CD45RA-細胞数が50%増加する濃度を意味することが意図される。
【0061】
別の態様において、本発明は、細胞集団を本願明細書で定義される一般式I、IAまたはIIAの化合物と接触させるステップ、および、前記細胞をウイルスベクターで形質導入するステップを含む、細胞へのウイルス遺伝子導入効率を増強する方法を提供する。
【0062】
別の態様において、本発明はまた、ウイルスベクターと共に培養した細胞集団の形質導入効率を増加させる方法であって、前記形質導入効率を増加させるのに十分な時間、前記細胞集団および前記ウイルスベクターを本願明細書で定義される化合物の少なくとも1つを含む培地中で培養するステップを含む方法を提供する。ある態様では、細胞集団の少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%が本願明細書に記載の方法を用いて形質導入される。
【0063】
別の態様では、本発明は、目的の遺伝子(または目的のポリペプチド)を細胞中で発現させる方法であって、前記細胞を本願明細書に定義される化合物の少なくとも1つと接触させるステップ、および、前記目的の遺伝子(または目的のポリペプチド)をコードする核酸を含むウイルスベクターで前記細胞を形質導入するステップを含む方法を提供する。用語「目的の遺伝子」は、タンパク質(天然のまたは変異タンパク質)、または、その活性断片(すなわち目的のポリペプチド)をコードする任意の遺伝子をいう。目的の遺伝子は、例えば、所定の疾患に存在しないかまたは欠損している遺伝子であり得る。
【0064】
一実施形態では、本願明細書で定義される化合物の組み合わせが本願明細書に記載の方法および組成物において使用される。別の実施形態において、本願明細書で定義される化合物は、造血細胞への形質導入効率を高めることが知られている他の薬剤または方法、例えば、フィブロネクチンまたはフィブロネクチンフラグメント(CH-296)、レトロネクチン、HIV Tat、ベクトフシン-1、デオキシヌクレオシド、サイトカイン(例えば、IL-6、SCF、FLT-3リガンド)、PGE2(国際公開第2014/026110号公報参照)および/またはmTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン)などのプロスタグランジン・シグナル伝達を調節する化合物と併用され得る。
【0065】
一実施形態では、細胞は初代細胞、例えば、脳/ニューロン細胞、末梢血細胞(例えばリンパ球、単球)、臍帯血細胞、骨髄細胞、心臓細胞、内皮細胞、表皮細胞、上皮細胞、繊維芽細胞、肝細胞または肺細胞である。一実施形態では、細胞は骨髄細胞、末梢血細胞または臍帯血細胞である。
【0066】
一実施形態では、細胞は幹細胞である。本願明細書中、用語「幹細胞」は、自身を機能的成熟細胞に分化することを可能にする多能性を有する細胞をいう。これには、原始造血細胞、前駆細胞、ならびに、人体内の様々な組織に見出される未分化細胞であり、自身を再生し、当該細胞が由来する特殊な細胞型および組織を生じる成体幹細胞(例えば、筋肉幹細胞、皮膚幹細胞、脳または神経幹細胞、間葉系幹細胞、肺幹細胞、肝臓幹細胞)が含まれる。
【0067】
一実施形態では、細胞は原始造血細胞である。本願明細書中、原始造血細胞という用語は、自身を顆粒球(例えば、前骨髄球、好中球、好酸球、好塩基球)、赤血球(例えば網状赤血球)、血小板(例えば、巨核芽球、巨核球産生血小板)、および、単球(例えば、単球、マクロファージ)などの機能的成熟血液細胞に分化することを可能にする多分化能を有し、かつ、それらの多能性を維持しながら再生する能力(自己再生性)を有していても有さなくてもよい細胞をいう。これは、顆粒球、赤血球、血小板および単球などの機能的成熟細胞に分化することを可能にする多分化能と、それらの多能性を維持しながら再生する能力(自己再生性)の両方を有する細胞である「造血幹細胞(HSC)」、ならびに、自己再生能力を持たない多能性造血細胞を包含する。一実施形態では、細胞集団はHSCを含む。HSCは、造血起源の細胞を含む身体または身体器官から得られ得る。そのような供給源には、非分画骨髄(大腿骨、股関節、肋骨、胸骨および他の骨由来)、臍帯血、末梢血、肝臓、胸腺、リンパおよび脾臓が含まれる。前述の粗製または未分画の血液生成物の全ては、当業者に知られている方法でHSC特性を有する細胞を濃縮することができる。HSCは、小サイズ、系統(lin)マーカーの喪失、ローダミン123(rhodamineDULL、rho10とも呼ばれる)やHoechst 33342などの重要な色素による低染色(side population)、および、表面上の様々な抗原マーカー(その多くはCD34、CD38、CD90、CD133、CD105、CD45およびc-kitのようなクラスター分類(CD)系列に属する)の有無によって表現型的に同定される。
【0068】
一実施形態では、細胞集団は造血幹細胞(HSC)を含む。
【0069】
一実施形態では、細胞は哺乳動物細胞、例えばヒト細胞である。
【0070】
本願明細書中、用語「ウイルスベクター」は、細胞に形質導入し、その遺伝物質を細胞に導入することができる組換えウイルスを意味する。遺伝子治療で使用され得るウイルスベクターの例としては、レトロウイルス(レンチウイルス)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス)、アルファウイルス、および、ワクシニアウイルス(ポックスウイルス)が挙げられる。一実施形態では、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。
【0071】
用語「レンチウイルスベクター」は、レンチウイルスに主に由来するLTR外側に構造的および機能的な遺伝子エレメントを含むベクターをいう。レンチウイルスベクターは、インビトロおよびインビボの両方で、非分裂細胞へトランス遺伝子の効率的な送達、組込みおよび長期発現を提供することができる。多種類のレンチウイルスベクターが当該技術分野で知られている(Naldini et al, (1996a, 1996b, and 1998);Zufferey et al, (1997);米国特許第6,013,516号明細書、同5,994,136号明細書(Dull et al, 1998)を参照のこと)。これらのいずれも、本発明の方法および組成物において使用される適切なトランスファーベクターを産生するように適合され得る。例示的なレンチウイルスには、HIV(ヒト免疫不全ウイルス;HIV 1型およびHIV 2型を含む):visna-maediウイルス(VMV)ウイルス;ヤギ関節炎−脳炎ウイルス(CAEV);ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV);ネコ免疫不全ウイルス(FIV);ウシ免疫不全ウイルス(BIV);およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が含まれるが、これらに限定されない。一態様では、HIVに基づくベクター骨格が好ましい。一実施形態では、レンチウイルスベクターは複製欠損レンチウイルスである。
【0072】
当業者に明らかであるように、用語「レンチウイルスベクター」は、核酸導入を媒介するレンチウイルス粒子をいう。レンチウイルス粒子は、典型的には、様々なウイルス成分を含み、核酸に加えて宿主細胞成分も含むことがある。特定の態様において、用語「レンチウイルスベクター」および用語「レンチウイルス発現ベクター」は、レンチウイルストランスファープラスミドおよび/または感染性レンチウイルス粒子をいう。
【0073】
一実施形態では、レンチウィルススベクターは、シュードタイプレンチウイルスベクターである。シュードタイプレンチウイルスベクターは、他のエンベロープウイルスに由来するエンベロープタンパク質(糖タンパク質(glycoprotein);GP)を有するベクター粒子からなる。そのような粒子は、エンベロープタンパク質が由来するウイルスの向性を有する。レンチウイルスベクターのシュードタイピングに広く使用されている糖タンパク質の1つは、水疱性口炎ウイルスGP(VSV-G)である。得られるシュードタイプが非常に広い向性および安定性を有するからである。シュードタイプレンチウイルスベクターは当該分野で周知であり、いくつかの例が、例えば、Cronin et al., Curr. Gene Ther. 5(4):387-398に記載されており、これには、リザウイルスGP、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)GP、アルファウイルスGP(例えば、ロスリバーウイルス(RRV)、セムリキ森林ウイルス(SFV)およびシンドビスウイルスのGP)、フィロウイルスGP(例えば、マールブルグウイルスおよびエボラザイアウイルスのGP)、ガンマレトロウイルスGP(例えば、エコトロピックMLV、両親媒性4070A MLV、10A1MLV、ゼノトロピックNZB MLV、ミンク細胞フォーカス形成ウイルス、ギブボン猿白血病(GALV)ウイルス、RD114のGP)、および、バキュロウイルスGP(GP64)が含まれる。
【0074】
一実施形態では、ウイルスベクターは、非組み込み型アデノウイルスベクターまたはインテグラーゼ欠損レンチウイルス(integrase-deficient lentivirus;IDLV)などの組み込み欠損ウイルスベクターである。プロウイルスの組込みを最小限にする、インテグラーゼタンパク質の突然変異を使用してIDLVを産生することができる。得られたIDLVは形質導入された標的細胞において環状ベクターエピソームを生成し、これは、分裂細胞では希釈により徐々に失われる(一過性発現)が、静止細胞では安定である。内在的に、IDLVでは、組み込み型レンチウイルスよりも挿入変異誘発を引き起こすリスクが大幅に低減されている。したがって、IDLVは、一過性発現が必要な用途や、ワクチン接種、癌治療、部位特異的遺伝子挿入、遺伝子破壊戦略および細胞再プログラミングなどのために静止細胞などにおいて持続してエピソームを発現するために特に有用であり得る。IDLVの設計および用途は、例えば、Shaw and Cornetta, Biomedicines 2014, 2, 14-35に記載されている。
【0075】
別の態様では、本発明は、目的の遺伝子を細胞内で一過性発現させる方法であって、前記細胞を、本願明細書で定義される化合物の少なくとも1つと接触させるステップ、および、前記細胞を、前記目的の遺伝子をコードする核酸を含む非組み込み型ウイルスベクターで形質導入するステップを含む方法を提供する。
【0076】
別の態様では、本発明は、特定の細胞型または細胞系統において目的のポリヌクレオチドの発現を指示する発現制御配列を含むレンチウイルスベクターを提供する。細胞型または細胞系統発現制御配列を使用することにより、ポリヌクレオチドの発現を単一系統における細胞分化の所望の段階に制限する上で安全上の利点が得られる。そのため、本発明のベクターは、望まない細胞型におけるポリペプチドの異所発現の懸念を軽減する。
【0077】
一実施形態では、発現制御配列は、造血幹細胞、造血前駆細胞、骨髄細胞、リンパ系細胞、リンパ系細胞、血小板系列、マスト細胞、赤血球系統細胞、顆粒球系統細胞、および単球系統細胞において目的ポリヌクレオチドの発現を指示する細胞型または細胞系統特異的発現制御配列であり得る。一態様では、ベクターは、目的の遺伝子に作動可能に連結された、造血細胞プロモーター、エンハンサー、またはプロモーター/エンハンサーを含む。
【0078】
感染性ウイルス粒子およびウイルスストック溶液の製造は、従来の技術を用いて行うことができる。ウイルスストック溶液を調製する方法は、当該分野で公知であり、例えば、Y. Soneoka et al. (1995) Nucl. Acids Res. 23:628-633、および、N. R. Landau et al. (1992) J. Virol. 66:5110-5113で説明されている。
【0079】
特定の態様では、HIV-1ベースのウイルス粒子は、ビリオンパッケージングエレメントおよび伝達ベクターを産生細胞で同時発現させることによって生成され得る。これらの細胞は、多数のプラスミドで一過性にトランスフェクトされ得る。典型的には3〜4個のプラスミドが使用されるが、レンチウイルス成分を個々の単位に分割する程度に応じてその数はより大きくてもよい。例えば、1つのプラスミドが、HIV-1に由来するビリオンのコア成分および酵素成分をコードし得る。このプラスミドはパッケージングプラスミドと称される。別のプラスミドは、典型的には、その高い安定性および広い向性のために、エンベロープタンパク質、最も一般的には水疱性口炎ウイルス(VSV-G)のGタンパク質をコードする。このプラスミドは、エンベロープ発現プラスミドと称されることがある。更に別のプラスミドは、標的細胞に移入されるゲノム、すなわち、ベクターそのものをコードし、移入ベクターと呼ばれる。これらのパッケージングプラスミドは、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポフェクションまたはエレクトロポレーションなどの公知の技術によってヒト細胞株に導入することができる。この技術およびその変形法により、ミリリットルあたりの形質導入単位(transduction unit;TU)(TU/ml)または感染単位(infection unit;IU)が数百万である力価を有する組換えウイルスを産生することができる。超遠心分離後、約108TU/ml、約109TU/ml、約1010TU/ml、約1011TU/ml、約1012TU/ml、または、約1013TU/mlの濃縮ストックを得ることができる。
【0080】
伝染性ウイルス粒子は、周知の技術を用いてパッケージング細胞から回収され得る。例えば、当技術分野で知られているように、感染性粒子は、細胞溶解や細胞培養の上清の回収によって回収することができる。必要に応じて、回収したウイルス粒子を任意に精製してもよい。好適な精製技術は当業者に周知である。
【0081】
本願明細書中、用語「形質導入」は、ウイルス粒子(例えば、レンチウイルス)から細胞ゲノム(例えば、原始造血細胞ゲノム)への遺伝物質の安定した移入をいう。本用語はまた、ウイルスベクターに存在する目的の遺伝子の一過性発現またはエピソーム発現を導く、非組み込み型ウイルスベクターの細胞への導入を包含する。本願明細書中、用語「形質導入効率を増加させるのに十分な時間」は、細胞集団が本願明細書に定義される化合物と共培養され得る期間であって、当該細胞集団をウイルスベクターと接触させると、本願明細書に定義される化合物の非存在下で同様のウイルスベクターと接触させた同様の細胞集団と比較して、当該細胞がより高い形質導入効率(ウイルスベクターで形質導入された細胞の割合(%)として定義される)で、ウイルスベクターで形質導入される期間をいう。特定の実施形態では、形質導入効率の増加は、ウイルスベクター単独で処理した未処理細胞と比較して、本願明細書に記載の化合物で処理した形質導入細胞の少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、または、少なくとも100倍の純化を示す。
【0082】
当技術分野で周知の技術を用いて、インビボ、エクスビボまたはインビトロで細胞をウイルス感染させ得る。例えば、CD34+細胞または幹細胞などの細胞をエクスビボで形質導入する場合、ベクター粒子は、一般に1〜100または1〜50感染多重度(multiplicities of infection;MOI)程度の用量を用いて細胞とインキュベートとされ得、これは、細胞10個あたり1×10〜100または50×10形質導入ユニットのウイルスベクターに相当する。これには、もちろん、MOI:1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,15,20,25,30,35,40,45および50に対応するベクター量が含まれる。
【0083】
一実施形態では、細胞、例えば原始造血細胞を、ウイルスベクターの形質導入前および/または形質導入間に、本願明細書で定義される化合物と接触させ得る。一実施形態では、細胞、例えば原始造血細胞をウイルスベクターによる形質導入の前に本願明細書で定義される化合物と接触させる(プレ刺激)。特定の態様では、形質導入の前に少なくとも約1時間または約2時間、細胞を本願明細書に記載の化合物と培養する。他の態様において、形質導入の前に、少なくとも約2時間、約3時間または約4時間、細胞を本願明細書で定義される化合物と培養する。ある実施形態では、形質導入の前に、約1時間〜約24時間、約2時間〜約24時間、または約2時間〜約22時間、細胞を本願明細書に記載の化合物と培養する。さらなる実施形態において、形質導入の前に、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間または約22時間の期間、細胞を本願明細書で定義される化合物と培養する。
【0084】
他の態様において、形質導入の間、細胞を本願明細書で定義される化合物の存在下で培養する(共刺激)。一態様では、形質導入の間、少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間または24時間の期間、細胞を本願明細書に定義される化合物の存在下で培養(共刺激)する。特定の他の態様において、形質導入の最初の24時間、または形質導入の最初の36時間または48時間、細胞を本願明細書で定義される化合物の存在下で培養する。細胞は、形質導入の最初の時間(すなわち、最初の2時間、3時間または4時間)、形質導入の終了時(最後の2時間、3時間または4時間)、および/または、形質導入期間の途中など、形質導入期間の任意の時点で、本願明細書で定義される化合物の存在下で培養され得る。
【0085】
別の態様では、形質導入の前(プレ刺激)および形質導入中(共刺激)の両方で、細胞を本願明細書に定義された化合物の存在下で培養し得る。 特定の態様では、形質導入後、細胞集団を洗浄し、または他の方法で処理して、本願明細書で定義される化合物の一部または全部を除去してもよい。
【0086】
出発細胞集団(すなわち、本願明細書で定義される化合物と接触させられ、形質導入される細胞集団)は、当技術分野で周知の方法を使用して、CD34、CD38および/またはCD45RAなどの特異的な細胞表面マーカーの発現に基づいて純化(enrich)することができる。したがって、出発細胞集団は、例えば、CD34+細胞、CD34+CD45RA-細胞またはCD34+CD38-細胞が純化され得る。また、出発細胞集団は、そのまま使用しても、後に使用するために凍結保存してもよい。
【0087】
したがって、細胞集団は、まず、出発細胞集団、例えばHSCに富んだ出発細胞集団を提供するために、特異的な細胞マーカー(CD34、CD38および/またはCD45RA)に基づいた細胞の陰性選択および/または陽性選択を含む、純化工程または精製工程に供され得る。特異的な細胞マーカーに基づいて前記出発細胞集団を単離する方法では、蛍光活性化細胞選別(FACS)技術、または、特異的な細胞表面マーカーと相互作用する抗体またはリガンドが結合した固体または不溶性の基材を使用し得る。例えば、抗体を含む固体基材(例えば、ビーズ、フラスコ、磁性粒子のカラム)に細胞を接触させ、全ての結合していない細胞を除去する。磁性ビーズまたは常磁性ビーズを備える固体基材を使用する場合、ビーズに結合した細胞は、磁気分離器(磁気セルソーティング、MACS(登録商標))によって容易に単離することができる。一実施形態では、出発細胞集団はCD34+細胞が純化されている。血液細胞集団においてCD34+細胞を純化する方法には、Miltenyi Biotec(登録商標)により市販されているキット(CD34+ direct isolation(登録商標)キット、Miltenyi Biotec(登録商標)、ベルギッシュ・グラードバッハ、ドイツ)、または、Baxter(登録商標)により市販されているキット(Isolex(登録商標)3000)が含まれる。骨髄または血液由来ヒト造血前駆細胞純化用キットも市販されている(例えば、StemSep(商標)Human Hematopoietic Progenitor Cell Enrichment Kit)。
【0088】
一実施形態では、出発細胞集団は、CD34+細胞が純化された新生臍帯血細胞に由来する。関連する一実施形態において、出発細胞集団は1または2つの臍帯血ユニットに由来する。
【0089】
他の一実施形態では、出発細胞集団は、CD34+細胞が純化されたヒト動員末梢血細胞に由来する。一実施形態では、出発細胞集団は、好ましくは、少なくとも50%のCD34+細胞、いくつかの実施形態では、60%、70%、80%、90%または95%を超えるCD34+細胞を含有し得る。
【0090】
形質導入前、形質導入中および/または形質導入後に、細胞を細胞の維持、成長または増殖に適した培地で培養してもよい。細胞集団の培養条件は、様々な因子、特に、出発細胞集団に依存して変化するであろう。好適な培地および条件は、当技術分野で周知である。本発明の方法は、天然培地、半合成培地または合成培地の組成で実施され得、また、培地は固体培地、半固体培地または液体培地であり得、HSCおよび/または造血前駆細胞培養に使用される任意の栄養培地であり、これには上記の因子の1または2以上が添加されていてもよい。このような培地は、典型的には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、アミノ酸、ビタミン、サイトカイン、ホルモン、抗生物質、血清、脂肪酸、糖類などを含む。培養物に、必要に応じて、他の化学成分または生物学的成分を単独でまたは組み合わせて導入してもよい。培地に導入されるこのような成分としては、ウシ胎児血清、ヒト血清、ウマ血清、インスリン、トランスフェリン、ラクトフェリン、コレステロール、エタノールアミン、亜セレン酸ナトリウム、モノチオグリセロール、2−メルカプトエタノール、ウシ血清アルブミン、ピルビン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、各種ビタミン、各種アミノ酸、寒天、アガロース、コラーゲン、メチルセルロース、各種サイトカイン、各種増殖因子等が挙げられる。HSCの増殖方法に適切なこのような基礎培地の例としては、限定されないが、StemSpan(商標)Serum-Free Expansion Medium(SFEM)(StemCell Technologies(登録商標)、バンクーバー、カナダ)、StemSpan(商標)H3000-Defined Medium(StemCell Technologies(登録商標)バンクーバー、カナダ)、CellGro(商標)、SCGM(CellGenix(商標)、フライブルク、ドイツ)、StemPro(商標)-34 SFM(Invitrogen(登録商標))、Dulbecco's Modified Eagles's Medium (DMEM)、Ham's Nutrient Mixture H12 Mixture F12、McCoy's 5A medium、Eagles's Minimum Essential Medium (EMEM)、αMEM medium(alpha Modified Eagles's Minimum Essential Medium)、RPMI1640 medium、Isocove's Modified Dulbecco's Medium(IMDM)、StemPro34(商標)(Invitrogen(登録商標))、X-VIVO(商標)10(Cambrex(登録商標))、X-VIVO(商標)15(Cambrex(登録商標))および、Stemline(商標) II (Sigma-Aldrich(登録商標))が挙げられる。
【0091】
形質導入後、形質導入された細胞は、それらの維持、成長および/または増殖に適した条件下で培養され得る。 特定の態様において、形質導入された細胞は、移植の前、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、または、約14日間培養される。
【0092】
HSCなどの原始造血細胞を維持および/または増殖させるための培養条件は、当技術分野で周知である。典型的には、培養条件は、サイトカインおよび成長因子などの因子の使用を含み、これらはHSC増殖用として当技術分野で一般的に知られている。このようなサイトカインや成長因子には、生物製剤または小分子であり、限定されないが、IL-1、IL-3、IL-6、IL-11、G-CSF、GM-CSF、SCF、FlT3-L、トロンボポエチン(TPO)、エリスロポエチン、および、それらの類似体(アナログ)が含まれる。本願明細書中、「類似体」は、天然に存在する形態として生物学的活性を有するサイトカインおよび成長因子の任意の構造的バリアントを含み、限定されるものではないが、天然に存在する形態またはTPOレセプター対するアゴニスト抗体などのサイトカイン受容体アゴニスト(例えば、国際公開第2007/145227号公報に詳述されているようなVB22B sc(Fv)2など)と比較して、生物活性が増強または低下したバリアントを含む。サイトカインおよび成長因子の組み合わせは、最終分化細胞の産生を制限しつつ、HSCおよび前駆細胞を維持/増殖するように選択される。 1つの特定の実施形態では、1または2以上のサイトカインおよび成長因子は、SCF、Flt3-LおよびTPOからなる群から選択される。培地には、SR1を含む、HSC増殖を促進する因子が添加されてもよい。さらに、本願明細書で定義される化合物がHSC増殖を促進することが示されていることを考慮すると(国際公開第2013/110198号公報参照)、当該化合物を増殖期間中に培地に更に添加してもよい。
【0093】
B細胞刺激因子2としても知られているヒトIL-6またはインターロイキン-6は、Kishimoto、Ann。review of 1mm。23:1 2005に記載され、また市販されている。ヒトSCFまたは幹細胞因子(c-kitリガンド、マスト細胞増殖因子またはスチール因子としても知られる)はSmith, M A et al., ACTA Haematologica, 105, 3:143, 2001に記載され、また市販されている。Flt3-LまたはFLT-3リガンド(FLとも呼ばれる)は、flt3受容体に結合する因子である。これは、Hannum C, Nature 368(6472): 643-8に記載され、また市販されている。巨大メラノサイト成長因子(MGDF)またはc-Mplリガンドとしても知られているTPOまたはトロンボポエチンはKaushansky K (2006). N. Engl. J. Med. 354 (19): 2034-45)に記載され、また市販されている。
【0094】
上記の化学成分および生物学的成分は、培地に添加するだけでなく、培養に用いる基材または支持体の表面に固定化して(具体的には、使用する成分を適切な溶媒に溶解し、得られた溶液を基材または支持体に塗布し、次いで過剰の成分を洗い流して)使用され得る。このような成分は、当該成分に結合する物質を予めコーティングした基材または支持体に添加してもよい。
【0095】
HSCなどの原始造血細胞は、シャーレ、フラスコ、プラスチックバッグ、テフロン(商標)バッグのような動物細胞培養に一般的に使用される培養容器中、任意でこれらを予め細胞外マトリックスまたは細胞接着分子でコーティングした後、培養することができる。このようなコーティングの材料は、コラーゲンI〜XIX、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン1〜12、窒素、テネイシン、トロンボスポンジン、フォンビルブラント因子、オステオポニン、フィブリノーゲン、各種エラスチン、各種プロテオグリカン、各種カドヘリン、デスモコリン、デスモグレイン、各種インテグリン、E-セレクチン、P-セレクチン、L-セレクチン、免疫グロブリンスーパーファミリー、マトリゲル(登録商標)、ポリ-D-リジン、ポリ-L-リジン、キチン、キトサン、セファロース(登録商標)、アルギン酸ゲル、ヒドロゲルまたはそのフラグメントであり得る。このようなコーティング材料は、人為的に改変されたアミノ酸配列を有する組換え材料であってもよい。HSCなどの原始造血細胞は、培地組成、pHなどを機械的に制御し、高密度培養物を得ることができるバイオリアクターを用いて培養され得る(Schwartz R M, Proc Natl. Acad. Sci. U.S.A., 88:6760, 1991; Koller M R, Bone Marrow Transplant, 21:653, 1998; Koller, M R, Blood, 82: 378, 1993; Astori G, Bone Marrow Transplant, 35: 1101, 2005)。
【0096】
次いで、細胞集団を洗浄して、本発明の化合物または組成物および/または細胞培養物の全て他の成分を除去し、短期使用のために適切な細胞懸濁培地中に再懸濁したり、長期保存用培地、例えば、40%FCSおよび10%DMSOを含むDMEMなどの凍結保存に好適な培地中に再懸濁され得る。培養細胞用の凍結ストックを調製するための他の方法も、当業者に利用可能である。
【0097】
本発明はまた、本願明細書に記載の方法によって得られた形質導入細胞集団を提供する。 本発明はまた、本願明細書に記載の方法によって得られた形質導入細胞を含む細胞集団を提供する。一実施形態では、細胞集団は、少なくとも約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%または約75%の形質導入細胞を含む。すなわち、細胞集団は、ウイルスベクターを含みかつ/またはウイルスベクターに存在する目的の遺伝子を発現する。
【0098】
本発明はさらに、ウイルスベクターと本願明細書で定義される化合物の少なくとも1つとを含む培地中の細胞の培養物を含む細胞ベースの組成物を意図している。本願明細書全体にわたって議論されるように、特定の態様において、本発明の組成物および方法は、エクスビボおよびインビボの細胞ベース遺伝子治療に有用である。いくつかの態様において、細胞培養培地は、薬学的に許容される細胞培養培地である。
【0099】
本発明の製剤および組成物は、単独でまたは1または2以上の他の治療モダリティと組み合わせて細胞、組織、器官または動物へ投与のために薬学的に許容されるかまたは生理学的に許容される溶液(例えば、培地)中に製剤化された、任意の数の形質導入細胞または非形質導入細胞またはそれらの組み合わせ、ウイルスベクター、ポリペプチド、ポリヌクレオチドおよび1または2以上の化合物(例えば、本願明細書に定義される化合物)を含み得る。
【0100】
本発明はさらに、本願明細書に記載の方法に従って生成された形質導入細胞と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を含む。他の態様では、本発明は、ウイルスベクターと本願明細書で定義される1または2以上の化合物とを含む医薬組成物を提供する。
【0101】
「薬学的に許容される」との語句は、ヒトに投与されたときにアレルギー反応または同様の有害反応を生じない分子的実体および組成物をいう。タンパク質を有効成分として含有する水性組成物の調製は、当技術分野において十分に理解されている。典型的には、そのような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとして注射剤として調製され、注射前の液体中の溶液または懸濁液に適した固体形態も調製することができる。製剤は乳化されていてもよい。
【0102】
本願明細書中、「担体」には、あらゆる溶媒、分散媒体、ビヒクル、コーティング剤、希釈剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、緩衝剤、担体溶液、懸濁剤、コロイドなどが含まれる。医薬活性物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒体または薬剤が有効成分と適合しない場合を除いて、治療組成物におけるその使用が意図されている。補助活性成分も組成物に組み込むことができる。
【0103】
本願明細書中、「薬学的に許容される担体」には、薬学的に許容される細胞培養培地を含む、生理学的に適合するあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。一態様では、担体を含む組成物は、非経口投与、例えば、血管内(静脈内または動脈内)投与、腹腔内投与または筋肉内投与に適している。 薬学的に許容される担体には、滅菌注射溶液または滅菌注射分散液の即時調製のための滅菌水溶液および滅菌分散液や、滅菌粉末が含まれる。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の培地または薬剤が形質導入された細胞と適合しない場合を除いて、本発明の医薬組成物にそれらを使用することが意図されている。
【0104】
本発明の組成物は、単独でまたは1または2以上の他の治療モダリティと組み合わせて細胞または動物へ投与するために薬学的に許容されるかまたは生理学的に許容される溶液中に製剤化された、本願明細書に記載の1または2以上のポリペプチド、ポリヌクレオチド、当該ポリヌクレオチドを含むベクター、化合物および形質導入細胞などを含み得る。所望であれば、本発明の組成物を、例えばサイトカイン、成長因子、ホルモン、小分子または種々の薬学的に活性な薬剤などの他の薬剤と組み合わせて投与することもできることが理解されよう。
【0105】
特定の態様では、本発明のウイルスベクターで形質導入された宿主細胞または標的細胞は治療用ポリペプチドを発現し、疾患、障害または症状を治療および/または予防するために対象に投与される。
【0106】
形質導入された細胞および対応するウイルスベクターは、遺伝子治療の改善方法を提供する。本願明細書中、用語「遺伝子治療」は、細胞のゲノムに遺伝子を導入することを意味する。様々な態様において、本発明のウイルスベクターは、単一遺伝子疾患、障害または症状、あるいは、造血幹細胞療法に適した疾患、障害または症状を有すると診断されたかまたはそれと疑われる対象に、治癒的、予防的または改善的利益を提供するポリペプチドをコードする治療的導入遺伝子を発現する造血発現制御配列を含む。
【0107】
本発明は、本発明のベクター、ウイルス粒子および形質導入細胞を用いて、対象における単一遺伝子疾患、障害または症状、あるいは、異常ヘモグロビン症などの造血系の疾患、障害または症状を治療、予防、および/または改善することを意図する。異常ヘモグロビン症は、血液中に異常なモグロビン分子が存在することを伴う疾患をいう。異常ヘモグロビン症の例には、限定されないが、ヘモグロビンC疾患、ヘモグロビン鎌状赤血球症(SCD)、鎌状赤血球貧血、および、サラセミアが含まれる。HSCベースの遺伝子治療に適した他の疾患の治療、予防および/または改善もまた意図されており、例えばウィスコット・アルドリッチ症候群(WAS)(Aiuti et al., Science 341(6148));異染性白質ジストロフィー(MLD)(Biffi et al, Science 341(6148));白血球接着不全症;X連鎖性慢性肉芽腫症;ファンコニ貧血;副腎白質ジストロフィー;ムコ多糖症IIIA型;重症複合免疫不全症(SCID)およびアデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症などの免疫不全症;ならびに、HIVなどの感染性疾患(Watts et al, Cytotherapy 13(10): 1164-71)などの所定の血液疾患およびリソソーム蓄積症が含まれる。これらの治療のために、ウイルスベクターは、当該疾患において欠損している1または2以上のタンパク質をコードする核酸を含む。ウイルスベクター(例えば、組み込み欠陥ウイルスベクター)はまた、例えば、抗原または免疫原(ワクチン接種用)または1または2以上の分化因子(細胞再プログラミング用)をコードする核酸を含んでもよい。
【0108】
本発明はまた、細胞遺伝子治療による治療を必要とする対象の治療方法であって、本願明細書に定義される形質導入細胞集団または形質導入細胞集団を含む医薬組成物の有効量を前記対象に投与するステップを含む治療方法を提供する。一実施形態では、前記方法は、(i)本願明細書で定義される一般式Iで表される化合物の存在下、前記対象からの細胞にウイルスベクターを形質導入して、形質導入細胞を含む集団を得るステップ;および、(ii)ステップ(i)で得られた前記形質導入細胞を含む集団、または、前記形質導入細胞を含む集団を含む医薬組成物の有効量を前記対象に投与するステップを含む。
【0109】
本発明はまた、細胞遺伝子治療による治療を必要とする対象を治療するための、本願明細書で定義される方法により得られた形質導入細胞を含む集団(またはこれを含む医薬組成物)の使用を提供する。本発明はまた、細胞遺伝子治療を必要とする対象を治療するための薬剤を製造するための、本願明細書で定義される方法により得られた形質導入細胞を含む集団(またはこれを含む医薬組成物)の使用を提供する。一実施形態では、前記使用は、(i)本願明細書で定義される、細胞へウイルスベクターを形質導入する方法を実施して形質細胞を含む集団を得るステップ、および、(ii)細胞遺伝子治療による治療を必要とする対象を治療するために、ステップ(i)で得られた前記形質導入細胞を含む集団(またはこれを含む医薬組成物)を使用するステップを含む。
【0110】
形質導入細胞を含む医薬組成物は、本願明細書に記載の方法で使用するために任意の従来の手法で製剤化される。投与は、当業者によって有効であることが知られている任意の経路を介して行われる。例えば、組成物は、経口投与、非経口(例えば、静脈内)投与、筋肉内注射、腹腔内注射、経皮投与、体外投与、鼻腔内投与または局所投与される。
【0111】
好ましい投与方法は、静脈内注入である。注入する細胞の数は、性別、年齢、体重、疾患または障害のタイプ、障害の段階、細胞集団における所望の細胞の割合および治療上の恩恵を得るために必要な細胞の量などの因子を考慮する。1つの特定の実施形態では、組成物は静脈内注入によって投与され、CD34+細胞を少なくとも0.3×105個/kg、または、臍帯血の場合>2×106個、骨髄または動員末梢血液細胞の場合2.5×105個/kg以上含む。
【0112】
また、本願明細書に記載される1または2以上の成分で満たされた1または2以上の容器を含むキットが提供される。そのようなキットは、必要に応じて、または所望により、溶液および緩衝液を任意に含む。キットは、任意に、細胞集団(例えば、上記の方法によって作製された幹細胞)を含むか、または、HSCの集団を作製するための容器または組成物を含み得る。特に、本発明は、原始造血細胞(例えば、造血幹細胞)などの細胞をエクスビボで形質導入するためのキットであって、本願明細書で定義される化合物;当該化合物を細胞形質導入法で使用するための説明書;および、任意で、1または2以上の細胞因子または細胞成長のための培地、特に、HSC成長のための上述の培地を含むキットを提供する。キットは、細胞を形質導入するための、例えば目的の遺伝子を含むウイルスベクターを更に含み得る。キットは、抗CD34、抗CD38および/または抗CD45RA抗体などの、細胞の産生をモニターするための抗体を更に含み得る。1つの特定の実施形態では、そのようなキットは、IL6、FLT3-L、SCFおよびTPOからなる群から選択される1または2以上の細胞増殖因子を更に含む。
【0113】
本発明の方法および組成物は、インビトロ研究(例えば、遺伝子の機能研究、特定の機能を有する遺伝子のスクリーニング、遺伝子発現分析、遺伝子編集)やインビボ研究(例えば、機能的研究、遺伝子治療アプローチの評価)など、高い遺伝子導入率が重要な様々な用途に有用であり得る。
【0114】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、本発明の組成物および方法によってより顕著に少ないウイルスでより顕著に多くの細胞を形質導入することにより、治療細胞ゲノム中のゲノム改変および/または癌原遺伝子の挿入活性化のリスクを最小限に抑えることができると考えられる。治療細胞中の癌原遺伝子の挿入活性化および他のゲノム改変のリスクを最小化することが適切な遺伝子治療プロトコルを考案する上で重要な考慮事項である。これにより、癌様の特徴を有する形質導入細胞がインビボでクローン増殖して、異常な細胞増殖を伴う癌や腫瘍などの疾患を生じる可能性が最小限となるからである。さらに、大量のウイルスによる形質導入は、一般的に形質導入細胞に対して細胞傷害性を示すことがあることが指摘されている。そのため、本発明の組成物および方法は、形質導入細胞の生存性を更に向上させる。したがって、本発明は、より安全でより効率的な遺伝子治療を提供する。
【0115】
本願明細書中の値の範囲の記載は、本願明細書中に別段の指示がない限り、範囲内の各別個の値を個別に指す簡略な方法とすることを意図しており、各個別の値は本願明細書に個別に記載されているかのように、本願明細書に組み込まれている。範囲内の値のすべてのサブセットは、個別に記載されているかのように本願明細書に組み込まれている。
【0116】
同様に、本願明細書中、種々の置換基およびこれらの置換基について列挙された種々の基を有する一般的な化学構造は、全てのこれらの置換基について全ての基を組み合わせて得られた全ての分子を個別に指す簡略な方法とすることを意図する。各個々の分子は、本願明細書に個別に記載されているかのように、明細書に組み込まれている。さらに、一般的な化学構造内の分子のすべてのサブセットも、個別に記載されているかのように本願明細書に組み込まれている。
【0117】
ここで、用語「約」は、その通常の意味を有する。用語「約」は、ある値が、当該値を決定するために使用される装置または方法についての誤差の固有の変動を含むこと、または、記載された当該値に近い値(例えば、記載された値(または値の範囲)の10%または5%以内の値)を包含することを示すために使用される。
【実施例】
【0118】
本発明を以下の非限定的な実施例によって更に詳細に説明する。
【0119】
実施例1(図1〜4)に関する材料および方法
ヒトCD34+臍帯血細胞の回収
RosetteSep(商標)CD34 pre-enrichment cocktailを用いて、ヒトCD34+臍帯血(CB)細胞を単離し、次いで、EasySep(商標)(StemCell Technologies)を用いてCD34陽性選択を行った。
【0120】
CD34+細胞の培養
100ng/mlヒト幹細胞因子(SCF、R&D Systems)、100ng/mlFMS様チロシンキナーゼ3リガンド(FLT3、R&D Systems)、50ng/mlトロンボポエチン(TPO、R&D Systems)および10μg/ml低密度リポタンパク質(StemCell Technologies)を添加したStemSpan SFEM(StemCell Technologies)からなるHSC増殖用培地でヒトCD34+細胞を培養した。
【0121】
化合物
化合物1[35nM]、SR1(Alichem、41864)[750nM]、または、化合物1[35nM]とSR1[500nM]の組み合わせ
【0122】
レンチウイルスベクターの調製
HEK293細胞のコトランスフェクションを下記プラスミドを用いて行った。pCCL-c-MNDU-eGFP、pCMV-Gag/Pol(PLP1;シグマ)、pRSV-Rev(PLP2;シグマ)およびpCMV-VSV/G(PLP;シグマ)またはpCMV-RDT。レンチウイルスのスープを、トランスフェクション48時間後に回収した。レンチウイルス粒子をPEG-it(商標)(System Biosciences)沈殿で濃縮した。ウイルスの力価測定をHEK293細胞で行った。レンチウイルスの遺伝子導入を増強するために、メーカーのガイドラインに従って、レンチウイルスをRetroNectin(Takara)被覆プレートにプレロードした。
【0123】
ヒトCD34+CB細胞の形質導入
フレッシュな(24時間または48時間のプレ刺激)CD34+CB細胞または培養CD34+CB細胞を、10、50または100のMOIで、12時間または16時間、VSVエンベロープまたはRDTエンベロープのGFPウイルスで形質導入した。次いで、細胞を洗浄し、感染後3日間または10日間培養物中に保持した。FACS分析を行って、全細胞集団、CD34+集団またはCD34+CD45RA-集団におけるGFP形質導入細胞の割合(%)をモニターした。
【0124】
フローサイトメトリー
フローサイトメトリー分析をBD LSR IIサイトメーターで行った。フレッシュなまたは培養したGFP形質導入CD34+CB細胞を、APC標識抗ヒトCD34(BD Biosciences)およびPE標識抗ヒトCD45RA(BD Biosciences)を用いて、4℃で15分間、2%ウシ胎仔血清(FBS)を添加したPBS中で染色した。データ分析は、BD FACSDiva(商標)ソフトウェアを用いて行った。
【0125】
異種移植
動物を用いた全ての実験は、モントリオール大学のアニマルケア委員会によって承認されたプロトコル下で行った。ビヒクル(DMSO)または化合物1[35nM]と共に10日間GFP形質導入した1000個のCD34+CB細胞の子孫細胞または未増殖CD34+CB細胞を亜致死的に放射線照射した(250cGy、移植前24時間未満)8〜12週齢のメスNSGマウス(NODScidIL2Rvnull、Jackson Laboratory)に尾静脈注射で移植した。NSG骨髄(bone marrow;BM)中のヒト細胞を移植30週後にフローサイトメトリーによりモニターした。NSG骨髄細胞を、2本の大腿骨、脛骨および臀部をフラッシュすることによって収集した。次いで、細胞を1×赤血球溶解緩衝液(StemCell Technologies)で処理し、pacific blue標識抗ヒトCD45(BioLegend)、APC-eFluo標識780抗マウスCD45(eBioscience)で染色して、NSG BM細胞におけるヒト血液の再構成をモニターした。
【0126】
実施例1〜9(図5〜20)に関する材料および方法
ウイルスベクターおよびウイルスの産生
特段断わりの無い限り、これらの研究では、pCCl-c-MNDUSpgkGFPまたはpCCl-c-MNDUSpgkYFPレンチウイルスベクター骨格を使用した(Logan AC et al, Human Gene Therapy 2004)。ベクター構築物を配列確認した。標準的な4プラスミドパッケージングシステムを使用した293T細胞の一過性トランスフェクションにより、水疱性口炎ウイルス糖タンパク質Gでシュードタイプした高力価組み換えウイルスを産生した。ウイルスを含む上清を超遠心分離により濃縮して、0.5×109〜5×109感染単位/mlの力価とした。ウイルスの力価は、HeLa細胞にレンチウイルスベクターの3つの希釈液を形質導入することによって決定した。非組み込みレンチウイルスの試験用に、改変骨髄増殖性肉腫ウイルスLTRの制御下でGFPを発現するレンチウイルスベクター(MND-GFP-IDLV)用のウイルス上清(カリフォルニア大学ロサンゼルス校、免疫学・分子遺伝学科および小児科学科のドナルドコーン博士の贈与)を触媒的に不活性なインテグラーゼを用いて作製した(Joglekar AV et al., Mol Ther. 2013 Sep;21(9):1705-17, PMID 23857176)。
【0127】
ヒトの臍帯血、動員末梢血および成体骨髄細胞の単離および培養
ブリティッシュ・コロンビア大学の研究倫理委員会によって承認された手順に従って、臍帯血(cord blood; CB)細胞および動員末梢血(mobilized peripheral blood; mPB)細胞を、同意を得て収集した。CD34+豊富な成体骨髄細胞はSTEMCELL Technologiesから購入した。まず、RosetteSep(商標)CD34 PreEnrichment Cocktail(STEMCELL Technologies)を使用してCD34+CB細胞およびCD34+mPB細胞を純度>90%に純化し、続いて、磁気ビーズ(EasySep kit、STEMCELL Technologies)を用いて陽性選択した。場合によっては、Influx IIソーター(BD Bioscience)を使用してCD34+細胞を選別することにより、更に純化した。CD34+CB細胞を、100ng/mL FLT3-ligand(FL)、100ng/mL steel因子(SF)、20ng/mL IL-3、IL-6および顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)(全てSTEMCELL Technologies)を添加した無血清培地(SFM;ウシ血清アルブミン、インスリンおよびトランスフェリン(BIT、STEMCELL Technologies)、10mg/ml低密度リポタンパク質(LDL、STEMCELL Technologies)、10-4M 2-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich)、10-4M glutamax 500(STEMCELL Technologies)、ペニシリンおよびストレプトマイシンを添加したIscove培地)中で16時間プレ刺激した。一実験では、CB細胞を3種の増殖因子(100ng /mL FL、100ng/mL SFおよび50ng/mL TPO(STEMCELL Technologies))のみの存在下でプレ刺激した。成体BM CD34+細胞およびmPB CD34+細胞を、100ng/mL FL、100ng/mL Steel因子SF、100ng/mL TPOおよび20ng/mL IL-3を添加したSFM中で24時間プレ刺激した。これらの細胞は化合物1(35nM)、SR1(0.75μM)またはDMSO(0.01%以下)の存在下または非存在下でプレ刺激した。一実験では、化合物1(35nM)の存在下または非存在下で、プレ刺激段階(10μg/mL)中にラパマイシンを加えた。
【0128】
ヒトCD34+細胞の形質導入
プレ刺激の終わりに、細胞を、濃縮レンチウイルス(GFPまたはYFP、一実験では、グロビン、NA10HD、MN1およびND13ウイルスも用いた)および5μg/mL硫酸プロタミンを含む、成長因子を添加した新鮮なSFM中に再懸濁し、CB細胞については6時間、BM細胞およびmPB細胞については24時間、1×106または1×107 IU/mLのウイルス濃度で、37℃でインキュベートし、次いで、5μg/cm2フィブロネクチン(Sigma-Aldrich)でコートした96ウェルプレートに入れた。細胞を、化合物1(35nM)、SR1(0.75μM)またはDMSO(0.01%以下)の存在下または非存在下で形質導入した。一実験では、細胞を、化合物1(35nM)の存在下または非存在下で、ラパマイシン(10μg/ mL)の存在下で形質導入した。感染後、細胞をPBSで数回洗浄し、インビボ実験に使用して、成長因子を添加した新鮮なSFM中で更に72時間培養した。種々のCD34+細胞サブセットへの遺伝子導入効率を、細胞を以下の抗ヒト特異的抗体(記載がない限り、eBioscienceから入手したもの)で染色した後に決定した:CD34-APC(clone 8G12、STEMCELL Technologies)、CD38-PECy7(clone HIT2)、Thy1-PE(clone eBio5E10)、CD45RA-APC780(clone HI100)、および、CD49f-EF450(clone eBioGoH3)。すべてのフローサイトメトリー分析は、LSRII Fortessa(登録商標)(BD Biosciences)を用いて行った。
【0129】
マウス
ブリティッシュ・コロンビア・ガン研究所(British Columbia Cancer Research Center)の動物資源センターで、NOD.Cg-Prkdcscid Il2rγtm1Wj1/SzJ (NOD/SCID-IL-2rγ-CNull, NSG)マウス(Jackson Labsから元々入手したもの)を飼育した。全てのマウス実験手順は、ブリティッシュ・コロンビア大学の承認を得てカナダ動物衛生委員会ガイドラインに従って実施した。
【0130】
マウスへの形質導入ヒト細胞の異種移植およびインビボ追跡
異種移植研究では、移植の24時間前に、8〜12週齢のNSGマウスに対して亜致死的に放射線(315cGyの137Cs γ線)を照射した。競合的再増殖アッセイにおいて、各マウスに、化合物1の存在下で形質導入した20,000個のCD34+CB子孫細胞およびDMSOの存在下で形質導入した20,000個のCD34+CB子孫細胞を静脈内注射した。限界希釈実験としては、化合物1またはDMSOの存在下で形質導入した20,000個、4,000個または800個のCD34+CB子孫細胞をマウスに投与した。移植後3週間、12週間、20週間、25週間および30週間の時点で骨髄を吸引し、GFPおよびYFPを発現するヒト細胞をFACS解析することにより、NSG骨髄におけるヒトリンパ−骨髄再増殖を30週間にわたってモニターした。赤血球溶解後、BM細胞をブロッキング試薬(2%FBS、5%ヒト血清、抗CD16/CD32抗体(2.4G2)を含むPBS)と共にインキュベートし、以下の抗ヒト特異的抗体で染色した:CD45-Alexa Fluor(登録商標)700(clone HI30, Biolegend)、CD33-PECY7(clone WM-53, eBioscience)、CD19-PE(clone, HIB19, Biolegend)、CD20-PE(clone L27, StemCell Technologies)。マウス一匹あたり最低200,000個のBM細胞を分析した。すべてのフローサイトメトリー分析は、LSRII Fortessa(登録商標)(BD Biosciences)を用いて行った。すべてのフローサイトメトリーデータは、FlowJo(登録商標)ソフトウェア(バージョン8.8, TreeStar)を用いて分析した。
【0131】
形質導入マカク(macaque)動員BM細胞の移植およびin vivo追跡
G-CSF/SCFで動員したBM CD34+細胞を2つの分画に分けた。第1の分画をSR1(1μM)およびサイトカイン(Steel因子、FLT3-LおよびTPO)の存在下、mCherry発現レンチウイルスで形質導入し;第2の分画をSR1および化合物1(40nM)と同じサイトカインの存在下、GFP発現レンチウイルスで形質導入した。化合物1(40nM)の存在下または非存在下で10日間増殖後、2つの遺伝子改変細胞分画を、元のHSCマカクドナーに、骨髄破壊プレコンディショニング(1020cGy照射)を行った後、同時に注入した。
【0132】
統計解析
結果は、平均±SEMまたはSD、および、幾何平均±SDとして示した。グループ間の差異は、プリズムグラフパッドで直接計算したスチューデントt検定(適宜、対応のあるt検定または対応の無いt-検定とした)を用いて評価した。*P値<0.05を有意と見なした。
【0133】
実施例1:化合物1はヒト造血細胞に対するレンチウイルス遺伝子導入効率を高める
図1は、化合物1およびSR1で増殖させたヒトCD3+臍帯血(CB)細胞が、非操作細胞よりも効率的に形質導入されたことを示す。化合物1で処理した細胞は、形質導入3日後および10日後の両方において、DMSO対照と比較して、GFP形質導入されたCD34+細胞およびCD34+CD45RA-細胞の割合(%)が高かった(図2)。図3および図4は、GFP形質導入・増殖CD34+CB細胞(化合物1処理)が、DMSO対照と比較して、ヒトCD45生着のより良好な可能性を示したことを示す。また、図5Aおよび図5Bに示すデータは、臍帯血由来のCD34+幹/前駆細胞を豊富に含む細胞について感染3日後に評価されるように、ヒト造血細胞の化合物1への短時間の暴露がレンチウイルス介在遺伝子導入を約70%まで上昇させることができることを示している。この差は統計的に有意であり、原始ヒト造血細胞の増殖刺激能を有する他の小分子であるSR1では観察されなかった。
【0134】
実施例2:プレ刺激期間中または形質導入期間中のみの化合物1への短期曝露が、広範な力価にわたる原始ヒト造血細胞へのレンチウイルス介在性遺伝子導入の増強に十分であった
図6A〜6Gに示す結果は、化合物1の遺伝子導入刺激効果が広範なウイルス力価にわたって存在することを示している。その効果はウイルス濃度が低いほど強い。例えば、ウイルス濃度105での遺伝子導入は、化合物1非存在下の場合の約100倍高いウイルス濃度で達成された遺伝子導入と同等である。使用した中で最も高いウイルス濃度であってさえも、プレ刺激期間中または形質導入期間中に細胞を化合物1に曝露すると、遺伝子導入が増強される。重要なことに、この効果は、HSCを含む、CD34+CD38-およびCD34+CD45RA-を有する造血細胞の高純度サブセットで明白である。さらに興味深いことに、この短期間の化合物1への曝露であっても、形質導入細胞を含む様々なCD34+亜集団の収量が更に上昇する。
【0135】
実施例3:化合物1への短期間暴露(22時間)は、ヒトHSCへの遺伝子導入を増強する
図7A〜7Hに示すデータは、化合物1が真のリンパ系−骨髄系長期再増殖(long-term repopluating)細胞(HSC)への遺伝子導入を増強することを示している。競合的移植法を用いることにより、化合物1を用いてまたは用いずに形質導入した細胞を、直接、同じレシピエントにおいてインビボ再増殖について評価したところ、前例に無い程に相違を解消した。化合物1による増強の大きさは、造血亜集団のインビトロ分析から明らかなものと比較して約9倍以上であった。これは、後の細胞よりも真のHSCへの遺伝子導入に対して化合物1がより大きな影響を及ぼすことと、短い(22時間)培養期間であってもHSCの収量が向上し得るためであると思われる。
【0136】
実施例4:化合物1は、ヒトCD34+CB細胞(インビトロ)およびNSGマウスにおけるヒトHSCへの遺伝子導入の増強を刺激する
図8A〜8Eおよび図9A〜9Dに示す結果は、ヒト臍帯血HSCへの遺伝子導入刺激に対する化合物1の著しい影響を確認するものである。図9A〜9Dは、インビトロおよび移植後に評価した、様々な供給源の臍帯血およびウイルスを用いたCB細胞への遺伝子導入の増強を確認するものである。細胞を化合物1に暴露したか否かにかかわらず、移植レシピエントにおいてキメリズムの総レベルが等価であることが観察されたことから、化合物1がHSCの収量に顕著な影響を及ぼさないことがわかる。しかし、GFP標識細胞からのキメラリズムの評価により、細胞を化合物1の存在下で形質導入した場合、その有意な増加が確認された。この増加は、一連の移植量範囲にわたって明らかであった。この実験で評価したHSCへの遺伝子導入の全体的な増加は約16倍であった。
【0137】
実施例5:化合物1への短時間の曝露は、わずか2時間で、原始ヒト造血細胞への遺伝子導入効率を増加させる
図10A〜10Qは、CD34+細胞およびCD34+サブセットへの遺伝子導入の有意な増加が、形質導入期間の開始時(条件IV)または終了時(条件V)において2時間細胞を曝露するだけで観察されたことを示す。形質導入細胞の最大遺伝子導入および最大収量は、形質導入期間の終了時の2時間の曝露により達成され、全プレ刺激期間(16時間、条件III)曝露した場合と同等であった。重要なことに、これらの結果は、バルクのCD34+細胞、および、HSC/前駆細胞(CD34+CD38-CD45RA-CD90+)が高度に濃縮されたサブセットで観察された。また、図11Aおよび11Bに示すデータは、形質導入期間の最初の2時間または最後の2時間の間のわずか2時間の曝露を含む、プレ刺激をしない化合物1への曝露の全ての条件下で、遺伝子導入および収量の増加が観察されたことを示す。
【0138】
実施例6:化合物1の遺伝子導入増加能は、成体骨髄および成体動員末梢血起源の原始造血細胞に及ぶ。
図12Aおよび12Bに示すデータは、化合物1の遺伝子導入増強能が、臍帯血の場合に加えて、成体骨髄および成体動員末梢血起源の原始造血細胞を含むという証拠を提供する。
【0139】
実施例7:化合物1への曝露は、様々なエンベロープを有するレンチウイルスベクター、非組み込み型レンチウイルスおよび様々な条件でCD34+CB細胞への遺伝子導入効率を増加させる
化合物1は、VSV-GおよびRD114でシュードタイプされた(エンベロープ担持)レンチウイルスを用いた遺伝子導入を増強し(図13Aおよび図13B)、化合物1がより広い範囲のシュードタイプウイルスに対して遺伝子導入を増強できることが示唆される。図13Dはさらに、化合物1が、触媒的に不活性なインテグラーゼを用いて産生され非組み込み型とされたレンチウイルス(組み込み欠損型レンチウイルス、IDLV)の一過性遺伝子導入効率を増強することを示す。図14Aおよび図14Bの結果は、原始ヒト造血細胞への遺伝子導入を刺激する化合物1の能力は、特定の増殖因子カクテルに限定されず、様々な成長因子の組み合わせの存在下で培養された細胞において生じることを示している。さらに、図15A図15Dに示すデータは、原始ヒト造血細胞への遺伝子導入を刺激する化合物1の能力が複数のレンチウイルスベクターに及び、したがって固有のベクターに限定されないことを示す。
【0140】
実施例8:原始ヒト造血細胞への遺伝子導入の増強は、細胞増殖の刺激に対して活性な化合物1のバリアントと相関する
図16Aおよび16Bは、ヒトCD34+細胞の増殖に対して活性であることが知られている化合物1および化合物1の他のバリアント(化合物3〜6)が、ヒトCD34+CB細胞および様々なCD34+サブセットへの遺伝子導入効率を増加させることを示す。また、この増強効果は、化合物1のより活性の低いバリアント(化合物7および8)では観察されなかった。
【0141】
以下の表は、化合物、および、ヒトCD34+細胞の増殖におけるそれらの有効性を例示する。これらの化合物のいくつかは、国際公開第2013/110198号公報およびPCT/CA2015/050330に示されている。
表1:実施例の構造、分析HPLC保持時間、LCMSデータおよび生物学的データ。
【0142】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
EC50は、ビヒクル培養(DMSO)と比較してCD34+CD45RA-細胞数が50%増加する濃度として定義される。 *EC50:A>1000nM; B=500-1000nM; C=250-500nM; D=100-250 nM;E=<100nM;F=増殖率>1.3を示した化合物
【0143】
実施例9:化合物1は、マカク骨髄からの遺伝子改変CD34+細胞およびLT-HSC様細胞の形質導入および増殖を促進する。
図17A〜17Cは、移植後のマウス血液中の霊長類CD45+細胞の割合が、化合物1の存在下で増加するという、SR1では得られない効果を示す。図18A図18Gおよび図19A図19Eは、化合物1の存在下で形質導入後の標識サル細胞の顕著な割合(%)の増加を示す。次いで化合物1の存在下、細胞を感染させ次いで7日間培養すると形質導入CD34+細胞の収量が増加し、また、化合物1の存在下インビトロで形質導入・増殖させた細胞を移植したサルにおいて、標識細胞の比率が増えた。
【0144】
実施例10:化合物1は、ラパマイシンと共同してヒト造血細胞へのレンチウイルス遺伝子導入効率を高める
図20A〜20Eは、CD34+細胞およびCD34+サブセットへのレンチウイルス遺伝子導入の増加が、化合物1のみでまたはラパマイシンのみで処理した細胞と比較して、化合物1およびラパマイシンの組み合わせで処理した細胞においてより高いことを示し、これらの2つの化合物が協同して、ヒト造血細胞へのレンチウイルス遺伝子導入効率を高めることを示している。
【0145】
実施例11:合成方法論
化合物1〜4の合成方法は、国際公開第2013/110198号公報に示されている。化合物5〜8については、下記の合成方法が適用される。以下に概説する合成方法論は、置換基Zがピリミドインドール核の7位にある本発明の実施形態に関する。当業者に理解されるように、置換基Zが異なる位置にある本発明の実施形態(例えば、5位、8位または6位、特に6位)については、当業者に自明な変形を伴って同様の合成方法を実施することができる。
【0146】
スキーム1は、本発明の化合物に対する共通の前駆体(1-VI)の合成を記載する。第1段階では、フッ化アリール1-Iを、限定されないが、水素化ナトリウムなどの塩基の存在下、シアノ酢酸アルキル1-IIで処理する。次いで、得られた生成物1-IIIを酢酸中の亜鉛粉などの還元剤で処理してアミノインドール1-IVを得て、ホルムアミドおよびギ酸アンモニウムで処理してピリミジン1-Vに変換する。化合物1-Vを塩化ホスホリルまたは臭化ホスホリルなどの試薬で処理して反応性中間体1-VIを得て、アミン1-VIIで処理して本発明の化合物1-VIIIを得る。
【0147】
スキーム1
【化30】

実施例
【0148】
総論
記録したHPLC保持時間(RT)は、以下の条件を用いた逆相HPLC(Agilent、1200 series)のものである。溶媒A:MeOH:H2O:TFA(5:95:0.05);溶媒B:MeOH:H2O:TFA(95:5:0.05);流速:3.0mL/分; 2.0分で0〜100%B勾配;カラム:ZorbaxC18、3.5ミクロン、4.6×30mm:波長220nm
【0149】
質量スペクトルは、Agilent Technologiesの6210G1969A LC/MSD TOF分光計またはAgilent TechnologiesのQuadrupole LC/MS Model G6120Bを用いて以下のLC条件を用いて記録した。溶媒A:AcCN:H2O:HCOOH(5:95:0.05 );溶媒B:AcCN:H2O:HCOOH(95:5:0.05);2.0分で0〜100%B勾配;流速:0.3mL/分;カラム:ZorbaxC18、3.5ミクロン、2.1×30mm;波長220nm
【0150】
【化31】
【0151】
4-フルオロベンゾルニトリル(5g、41.3mmol)、ジブチルスズオキシド(2.055g、8.26mmol)およびトリメチルシリルアジド(8.22mL、61.9mmol)のトルエン(165mL)混合液を100℃に加熱、16.5時間攪拌した。室温に冷却した後、有機層を1M NaOH(83mL)で抽出し、水層をEtOAc(2×85mL)で洗浄した。水層を2M HCl(41.3mL)でpH2に酸性化した。水性混合物をEtOAcで2回抽出し(200mL、次いで100mL)、合わせた有機層をブライン(60mL)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮乾固して、白色固体として中間体1A(5-(4-フルオロフェニル)-2H-テトラゾールを得た(6.61g、収率98%)。1H NMR(400MHz,DMSO-d6) δppm 7.42-7.53 (m,2H) 8.04-8.14 (m,2H); MS m/z 165.2 (M+H)+; HPLC >99.5%, RT = 1.96分
【0152】
中間体1A(6.61g、40.3mmol)、K2CO3(6.68g、48.3mmol)およびヨードメタン(3.02mL、48.3mmol)のアセトニトリル(115mL)混合液を1時間加熱還流(約82℃)させた。冷却後、混合物を濃縮乾固し、残渣を水(75mL)とEtOAc(100mL)とに分けた。これらの層を分離し、水層をEtOAc(50mL)で逆抽出し、合わせた有機層を水(50mL)およびブライン(50mL)で洗浄した。有機層を無水MgSO4で乾燥させた。次いで濾過、濃縮すると9.5gの無色油状物が得られ、放置すると固化した。残渣をフラッシュクロマトグラフィーで精製して以下の2つの主生成物を得た。
【0153】
中間体1B(N2異性体):白色固体として5-(4-フルオロフェニル)-2-メチル-2H-テトラゾール(5.09g、収率70.9%)。4.42ppmのメチル基と芳香族プロトンとの間にNOEは観察されなかった。1H NMR(400MHz,DMSO-d6) δppm 4.42 (s,3H) 7.33-7.45 (m,2H) 8.03-8.14 (m,2H); MS m/z 179.2 (M+H)+; HPLC>99.5%, RT = 1.75分
【0154】
N1異性体:白色固体として5-(4-フルオロフェニル)-1-メチル-1H-テトラゾール(1.87g、収率26.1%)。4.16ppmのメチル基と7.89-7.97ppmの2つの芳香族プロトンとの間で観察されたNOEにより構造を確認した。1H NMR(400MHz, DMSO-d6) δppm 4.16 (s,3H) 7.43-7.53 (m,2H) 7.89-7.97 (m,2H); MS m/z 179.2 (M+H)+; HPLC>99.5%, RT = 1.29分
【0155】
硫酸(16.45mL、309mmol)中の中間体1B(1g、5.61mmol)の溶液を0℃に冷却し、次いで発煙硝酸(0.288mL、6.17mmol)を滴下した。2.5時間後、さらに発煙硝酸を添加し(0.065mL、1.403mmol)、混合物を20℃に温めた。5時間後、混合物を2:1の氷水混合物(150mL)に注ぎ、白色懸濁液を得た。30分後、固体を濾過し、水で洗浄し(洗浄液が中性pHになるまで4×10mL)、25℃の高真空下で一定重量になるまで乾燥して、5-(4-フルオロ-3-ニトロフェニル)-2-メチル-2H-テトラゾールを灰白色の固体として得た(1.16g、収率93%)。1H NMR(400MHz, DMSO-d6) δppm 4.47 (s,3H) 7.81 (dd,J=11.2,8.8 Hz,1 H) 8.44 (ddd,J=8.7,4.2,2.3Hz,1H) 8.68 (dd,J=7.2,2.2Hz,1H); MS m/z 224.2 (M+H)+; HPLC 98.3%, RT = 1.72分
【0156】
水素化ナトリウム(0.443g、11.08mmol;鉱油中60重量%)のDMF(5.67mL)冷懸濁液(0℃)に、2-シアノアセトアミド(0.888g、10.56mmol)のDMF(2.268mL)溶液を添加した(注:水素ガスの発生)。得られた混合物を0℃で30分間撹拌した。次いで、5-(4-フルオロ-3-ニトロフェニル)-2-メチル-2H-テトラゾール(1.15g、5.15mmol)のDMF(2.3mL)溶液を添加して、深紫色の溶液を得た。3時間後、反応混合物を氷水混合物(33.0mL)および濃塩酸(0.952mL)にゆっくりと注いた。得られた黄色のスラリーを30分間撹拌し、固体を濾過し、水で洗浄し(3×5mL)、次いでヘキサンで洗浄し(2×5mL)、40℃の高真空下で一定重量になるまで乾燥させて、中間体1C(2-シアノ-2-(4-(2-メチル-2H-テトラゾール-5-イル)-2-ニトロフェニル)アセトアミド)を黄色固体として得た(1.41g、収率95%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δppm 4.49 (s,3 H) 5.77 (s,1H) 7.77 (s,1H) 7.95 (d,J=8.2 Hz,1H) 8.03 (s,1H) 8.51 (dd, J=8.2, 1.8 Hz, 1H) 8.70 (d, J=1.8 Hz, 1 H); MS m/z 288.1 (M+H)+; HPLC 96.4% @220 nm, RT = 1.31分
【0157】
塩化第二鉄6水和物(2.82g、10.44mmol)および亜鉛(2.276g、34.8mmol)を、DMF(8.71mL)および水(8.71mL)中の2-シアノ-2-(4-(2-メチル-2H-テトラゾール-5-イル)-2-ニトロフェニル)アセトアミド(1g、3.48mmol))の混合液に少量ずつ添加して黄色の懸濁液を得、これを100℃に1.25時間加熱した。次いで、混合物を20℃に冷却し、MeOH(50.0mL)で希釈し、セライトで濾過し、減圧下で約1時間、約20mLまで濃縮した(MeOHの大部分を除去するため)。次いで、混合物を水(50mL)およびEtOAc(100mL)で希釈し、激しく撹拌し、濾過した。水層をEtOAcで抽出し(2×50mL)、合わせた有機層を飽和NaHCO3(50mL)およびブライン(50mL)で洗浄した。有機層を無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して489mgの紫色固体を得、これをフラッシュクロマトグラフィーで精製して、中間体1D(2-アミノ-6-(2-メチル-2H-テトラゾール-5-イル)-1H-インドール-3-カルボキサミド)を紫色固体として得た(356mg、収率39.7%)。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δppm 4.38 (s,3H) 6.57 (s,2H) 7.01 (s,2H) 7.61-7.69 (m,2H) 7.81 (s,1H) 10.77 (s,1H); MS m/z 258.2 (M+H)+; HPLC 約78%, RT = 1.34分
【0158】
中間体1D(2-アミノ-6-(2-メチル-2H-テトラゾール-5-イル)-1H-インドール-3-カルボキサミド、0.35g、1.361mmol)、メチル2-フェニルアセテート(0.288mL、 2.041mmol)およびMeOH(0.467mL)中のナトリウムメトキシド(25重量%)のメタノール混合液(3.03mL)を電子レンジ中で140℃まで1時間加熱した。室温に冷却し、水(1mL)およびAcOH(4mL)で希釈した後、混合物を30分間撹拌して結晶化させた。固体を濾過し、MeOHで洗浄し(5×1mL)、40℃、高真空下で一定重量になるまで乾燥させて、2-ベンジル-7-(2-メチル-2H-テトラゾール-5-イル)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-4-オールを褐色固体として得た(220mg、収率45.2%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δppm 4.03 (s,2H) 4.43 (s,3H) 7.24-7.29 (m,1H) 7.34 (t,J=7.8 Hz,2H) 7.37-7.43 (m, 2H) 7.92 (dd, J=8.0, 1.4 Hz, 1H) 8.04-8.10 (m,2H) 12.38 (s,1H) 12.47 (s,1H); MS m/z 358.2 (M+H)+; HPLC 82.9%, RT = 1.89分
【0159】
2-5mLのマイクロウェーブバイアルに、粗生成物2-ベンジル-7-(2-メチル-2H-テトラゾール-5-イル)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-4-オール(0.220g, 0.616mmol)およびPOCl3(3.90mL、41.9mmol)を添加して褐色の懸濁液を得た。このバイアルを電子レンジに入れ、175℃に15分間加熱し、次いで放冷した。次いで、反応混合物を氷水混合物(80ml)に注ぎ、NaOH 50重量%(11ml)、次いでEtOAc(80ml)をゆっくり添加してpH8に塩基性化した。固体の一部を濾過し、層分離した。水層をEtOAc(80mL)で抽出し、有機層を無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮乾固して下記の対応するクロロ誘導体を得た:2ベンジル-4-クロロ-7-(2-メチル-2H-テトラゾール-5-イル)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール(褐色固体;189 mg、収率82%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δppm 4.31 (s,2 H) 4.46 (s,3H) 7.20-7.26 (m,1H) 7.28-7.39 (m,4H) 8.09 (dd, J=8.2, 1.2 Hz, 1H) 8.21-8.25 (m, 1H) 8.39 (d,J=8.2 Hz,1H) 12.93 (s,1H); MS m/z 376.2 (M+H)+; HPLC 95.6%, RT = 2.30分
【0160】
上記で調製した2-ベンジル-4-クロロ-7-(2-メチル-2H-テトラゾール-5-イル)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール(0.865g、2.302mmol)および3,3'-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン(2.60mL、16.11mmol)のMeOH(17.4mL)混合溶液を電子レンジで140℃まで30分間加熱した。冷却し、溶媒を蒸発させた後、残渣をフラッシュクロマトグラフィーで精製して、N1-(3-アミノプロピル)-N3-(2ベンジル-7-(2-メチル-2H-テトラゾール-5-イル)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-4-イル)-N1-メチルプロパン-1,3-ジアミンを黄色固体として得た(832mg、収率74%)。1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δppm 1.52 (quin,J=6.85 Hz,2H) 1.80 (quin,J=6.85 Hz,2H) 2.18 (s,3H) 2.36 (t,J=7.24 Hz,2H) 2.41 (t,J=6.65 Hz,2H) 2.53-2.61 (m,2H) 3.64 (q,J=6.52 Hz,2H) 4.04 (s,2H) 4.43 (s,3H) 7.14-7.23 (m,1H) 7.28 (t,J=7.43 Hz,2H) 7.38 (d,J=7.43 Hz, 2H) 7.49 (t,J=5.09 Hz,1H) 7.91 (d,J=8.22 Hz, 1H) 8.08 (s,1H) 8.32 (d,J=8.22 Hz,1H); HPLC 99.4% @254 nm, RT 1.608分; HRMS m/z 485.2884 (M+H)+
【0161】
2,2-ジメチル-4,7,10-トリオキソ-3-オキサ-5,8,11-トリアザトリデカン-13-オイック酸(0.224g、0.774mmol)のDMF(3.00mL)溶液に、HATU(0.294g、0.774mmol)およびDIPEA(0.270ml、1.548mmol)を添加した。この溶液を10分間撹拌した後、N1-(3-アミノプロピル)-N3-(2-ベンジル-7-(2-メチル-2H-テトラゾール-5-イル)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-4-イル)-N1-メチル-プロパン-1,3-ジアミン(0.300g、0.619mmol)を添加し、20℃で3時間撹拌した。2,2-ジメチル-4,7,10-トリオキソ-3-オキサ-5,8,11-トリアザトリデカン-13-オイック酸(0.112g、0.387mmol)、HATU(0.147g、0.387mmol)およびDIPEA(0.135ml、0.774mmol)を加え、20℃で16時間攪拌した。反応混合物を水(30mL)に注いだ。水層をEtOAc(2×30mL)で抽出した。合わせた有機層を水(20mL)で洗浄し、次いでブライン(20mL)で洗浄した。有機層を無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して、764mgの黄色泡状物を得た。残渣をフラッシュクロマトグラフィーで精製して、tert-ブチル(16-((2ベンジル-7-(2-メチル-2H-テトラゾール-5-イル)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-4-イル)アミノ)-13-メチル-2,5,8-トリオキソ-3,6,9,13-テトラアザヘキサデシル)カルバメートを黄色固体として得た(380mg、収率81%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δppm 1.36 (s,9H) 1.52-1.65 (m,2H) 1.73-1.86 (m,2H) 2.18 (br. s.,3H) 2.33 (br. s.,2H) 2.41 (br. s.,2H) 3.02-3.14 (m,2H) 3.57 (d,J=5.87 Hz,2H) 3.65 (m,J=5.50 Hz,4H) 3.72 (d,J=5.48 Hz,2H) 4.05 (s,2H) 4.43 (s,3H) 7.01 (t,J=5.48 Hz,1H) 7.15-7.22 (m,1H) 7.28 (t,J=7.63 Hz, 2H) 7.37 (d,J=7.43 Hz,2H) 7.43 (t,J=5.28 Hz,1H) 7.72 (br. s.,1H) 7.91 (dd,J=8.22, 1.17 Hz,1H) 8.08 (s,3H) 8.33 (d,J=8.22 Hz,1H) 12.00 (s,1H); HPLC 98.1% @254 nm, Rt 1.74分; MS m/z 756.4 (M+H)+
【0162】
tert-ブチル(16-((2ベンジル-7-(2-メチル-2H-テトラゾール-5-イル)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-4-イル)アミノ)-13-メチル-2,5,8-トリオキソ-3,6,9,13-テトラアザヘキサデシル)カルバメート(0.380g、0.503mmol)のCH2Cl2(8.00 ml)溶液に、トリフルオロ酢酸(2.000ml、26.0mmol)を添加した。反応混合物を30分間撹拌した。トルエン(5mL)を加え、混合物を濃縮乾固して、580mgの黄色泡状物を得た。残渣をフラッシュクロマトグラフィーで精製して、2-アミノ-N-(2-((2-((3-((3-((2-ベンジル-7-(2-メチル)-2H-テトラゾール-5-イル)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-4-イル)アミノ)プロピル)(メチル)アミノ)プロピル)アミノ)-2-オキソエチル)アミノ)-2-オキソエチル)アセトアミドを黄色の泡状物として得た(340mg、収率100%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δppm 1.63 (dt,J=14.28, 6.95 Hz,2H) 1.87 (dt,J=13.99, 6.90 Hz,2H) 2.33 (s,3H) 2.52-2.56 (m,2H) 2.61 (br. t,J=6.70, 6.70 Hz,2H) 3.05-3.14 (m,2H) 3.55 (s,2H) 3.60-3.71 (m,4H) 3.83 (d,J=5.48 Hz,2H) 4.05 (s,2H) 4.43 (s,3H) 7.15-7.23 (m,1H) 7.28 (t,J=7.43 Hz,2H) 7.38 (d,J=7.43 Hz,2H) 7.43 (t,J=5.48 Hz,1H) 7.87 (t,J=5.67 Hz,1H) 7.91 (dd,J=8.22,1.17 Hz,1H) 8.08 (d,J=1.20 Hz,1H) 8.22 (t,J=5.67 Hz,1H) 8.35 (d,J=8.22 Hz,1H) 8.55 (t,J=5.48 Hz,1H) 12.02 (br. s.,1H); HPLC 99.4% @254 nm, Rt 1.57分; HRMS m/z 656.3529 (M+H)+
【0163】
【化32】
【0164】
THF(14.83ml、181mmol)中の1-(3-クロロプロピル)ピペリジン塩酸塩(0.500g、2.52mmol)の懸濁液にトリイソプロピルシランチオール(1.092ml、5.05mmol)およびヨウ化テトラブチルアンモニウム(0.093g、0.252mmol)を加えた。水素化ナトリウム(0.252g、6.31mmol;鉱油中60重量%)を少量ずつ加えた。得られた白色懸濁液を50℃に加熱し、18.5時間撹拌した。20℃に冷却し、反応混合物を水(15mL)で希釈した。混合物をEtOAcで抽出した(4×15mL)。合わせた有機層を水で洗浄し(2×15mL)、次いでブライン(15mL)で洗浄した。有機層を無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して1.51gのオレンジ色油状物を得た。残渣をフラッシュクロマトグラフィーで精製して、中間体2Aである1-(3-((トリイソプロピルシリル)チオ)プロピル)ピペリジンを無色油状物として得た(714mg、収率90%)。1H NMR (400 MHz,DMSO-d6) δppm 1.06 (d,J=7.0 Hz,18H) 1.14-1.29 (m,3H) 1.36 (m,J=5.1 Hz,2H) 1.46 (quin,J=5.4 Hz,4H) 1.65 (quin,J=7.0 Hz,2H) 2.29 (m,J=6.7 Hz,6H) 2.53 (t,J=7.3 Hz,2H); MS m/z 316.2 (M+H)+; HPLC>95%, RT = 2.19分
【0165】
2-シアノアセトアミド(7.18g、85mmol)のDMF(53mL)冷溶液に、NaH(3.41g、85mmol;鉱油中60重量%)を少量ずつ加えた。室温で30分後、メチル4-フルオロ-3-ニトロベンゾエート(8.5g、42.7mmol)のDMF(15mL)溶液を滴下した。3時間後、氷、水およびHCl(10%)12mLの混合物を添加した。得られた固体を濾過し、水でリンスし、高真空下で乾燥させて、9.1gのメチル4-(2-アミノ-1-シアノ-2-オキソエチル)-3-ニトロベンゾエートを得た。1H NMR (400 MHz,DMSO-d6) δppm 3.93 (s,3H) 5.78 (s,1H) 7.77 (s,1H) 7.91 (d,J=7.83 Hz,1H) 8.04 (s,1H) 8.39 (dd,J=8.02,1.76 Hz,1H) 8.56 (d,J=1.56 Hz,1H)
【0166】
DMF(4.75mL)および水(4.75mL)中の上記で調製した粗シアノアミド(0.5g、1.900mmol)の溶液に、塩化第二鉄六水和物(1.540g、5.70mmol)および亜鉛(1.242g、19.00mmol)添加して黄色懸濁液を得た。発熱後、混合物を100℃に45分間加熱し、次いで20℃までゆっくりと冷却し、22時間撹拌した。固体を濾過し、DMFで洗浄し(3×3mL)、濾液を0℃で撹拌しながら水(40mL)で希釈した。固体を濾過し、ケーキを水で洗浄した(2×5mL)。固体は主に不純物を含む。水層をEtOAcで抽出し(3×50mL)、合わせた有機層を水(50mL)で洗浄し、次いでブライン(30mL)で洗浄した。有機層を無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して287mgの褐色固体を得て、これをアセトン(6mL)で処理して固体懸濁液とし、ヘキサン(5mL)で希釈した。次に固体を回収し、一定重量になるまで40℃、高真空下で乾燥させて、中間体2Cであるメチル-2-アミノ-3-カルバモイル-1H-インドール-6-カルボキシレートを灰白色固体として得た(162mg、収率36.6%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δppm 3.80 (s,3H) 6.62 (br. s.,2H) 7.04-7.18 (m,2H) 7.53-7.63 (m,2H) 7.72 (s,1H) 10.80 (s,1H); MS m/z 232.2 (M+H)+; HPLC 約96%, RT = 1.37分
【0167】
中間体2C(0.100g、0.429mmol)、メチル2-フェネチルアセテート(0.302mL、2.14mmol)およびMeOH中の30重量%ナトリウムメトキシド(0.402mL、2.14mmol)のメタノール(1.0mL)混合液を電子レンジに入れ140℃に30分間加熱した。冷却後、AcOH(0.125mL、2.19mmol)を加え、得られたスラリーを20℃で1時間撹拌した。固体を濾過し、MeOHで洗浄し(3×0.5mL)、一定重量になるまで20℃、高真空下で乾燥させて、中間体2D(メチル2-ベンジル-4-ヒドロキシ-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレート)を黄褐色固体として得た(91mg、収率63.7%)。1H NMR (400 MHz,DMSO-d6) δppm 3.87 (s,3H) 4.03 (s,2H) 7.22-7.29 (m,1H) 7.29-7.42 (m,4H) 7.83 (dd,J=8.2,1.6 Hz,1H) 7.98-8.04 (m,2H) 12.46 (br. s,1H) 12.50 (br. s.,1H); MS m/z 334.2 (M+H)+; HPLC 88.5% @ 220 nmおよび86.3% @ 254 nm, RT = 1.96分
【0168】
メチル2-ベンジル-4-ヒドロキシ-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキレート(0.685g、2.05mmol)のPOCl3(12.64mL、136mmol)混合液を90℃に16時間加熱した。冷却後、反応混合物を濃縮乾固した。得られた固体を飽和NaHCO3(50mL)およびEtOAc(75mL)に懸濁した。15分間激しく攪拌し、次いで混合物を濾過した。層を分離し、水層をEtOAcで抽出した(2×50mL)。合わせた有機層を無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮乾固して、黄褐色固体としてメチル2-ベンジル-4-クロロ-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレートを得た(621mg、収率86%)。1H NMR (400 MHz,DMSO-d6) δppm 3.92 (s,3H) 4.31 (s,2H) 7.19-7.26 (m,1H) 7.28-7.39 (m,4H) 7.99 (dd, J=8.2,1.2 Hz,1H) 8.14 (d,J=1.2 Hz,1H) 8.34 (d,J=8.2 Hz,1H) 12.97 (s,1H); MS m/z 352.2 (M+H)+; HPLC 92%, RT = 2.39分
【0169】
メチル2-ベンジル-4-クロロ-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレート(0.050g、0.142mmol)および1-(3-((トリイソプロピルシリル)チオ)プロピル)ピペリジン(0.058g、0.185mmol)のNMP(0.750ml)溶液にフッ化テトラブチルアンモニウム三水和物(0.056g、0.178mmol)を加え、20℃で6時間攪拌した。追加の1-(3-((トリイソプロピルシリル)チオ)プロピル)ピペリジン(0.033g、0.104mmol)およびフッ化テトラブチルアンモニウム三水和物(0.029g、0.092mmol)を加え、4日間攪拌を続けた。反応混合物をCH2Cl2(25mL)で希釈し、水で洗浄した(3×7.5mL)。有機層を無水MgSO 4で乾燥させ、濾過し、濃縮乾固した。残渣をフラッシュクロマトグラフィーで精製して化合物6であるメチル2-ベンジル-4-((3-(ピペリジン-1-イル)プロピル)チオ)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレートを黄褐色固体として得た(53mg、収率79%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δppm 1.30-1.44 (m,2H) 1.51 (br. s.,4H) 1.81-1.96 (m,2H) 2.17-2.47 (m,6H) 3.43 (t,J=7.2 Hz,2H) 3.90 (s,3H) 4.26 (s,2H) 7.17-7.25 (m,1H) 7.30 (t,J=7.6 Hz,2H) 7.34-7.41 (m,2H) 7.95 (dd,J=8.2,1.6 Hz,1H) 8.07-8.14 (m,2H) 12.56 (s,1H); HPLC 95.1% @254 nm, RT 2.02分;HRMS m/z 475.2155 (M+H)+
【0170】
【化33】
【0171】
エチル2-シアノアセテート(10.9mL、102mmol)を、水素化ナトリウム(4.10g、102mmol;鉱油中60重量%)のDMF(125mL)懸濁液に0℃でゆっくり加えた。得られた混合物を0℃で15分間撹拌し、メチル4-フルオロ-3-ニトロベンゾエート(10.2g、51mmol)のDMF(125mL)溶液を添加した。得られた濃赤色混合物を0℃で30分間、次いで室温で3時間攪拌した。反応混合物を1N HCl(40mL)およびEtOAc(40mL)で希釈した。分離した水層をEtOAcで抽出した(3×50mL)。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮して残渣(26g)を得、これをフラッシュクロマトグラフィーで精製して、メチル4-(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチル)-3-ニトロベンゾエートを得た(14.9g、収率100%)。1H NMR (400 MHz,DMSO-d6) δppm 1.19 (t,J=7.0 Hz,3H) 3.93 (s,3H) 4.23 (q,J=7.0 Hz,2H) 6.38 (s,1H) 7.87-7.99 (m,1H) 8.42 (d,J=7.8 Hz,1H) 8.64 (br. s.,1 H); LCMS m/z 291.0 (M-H)-, HPLC>95%, RT 1.76分
【0172】
メチル4-(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチル)-3-ニトロベンゾエート(14.9g、51.0mmol)の酢酸(255mL)溶液に、亜鉛末(16.7g、255mmol)を少量ずつ35分間で添加した。混合物を100℃に15時間加熱した。混合物を室温に冷却し、セライトで濾過し、酢酸エチルでリンスした。溶媒を蒸発させて残渣を得て、これをジクロロメタンとヘキサンの混合溶液中で粉体化した。固体を濾過し、ヘキサンで洗浄し(3×15mL)、一定重量になるまで20℃、高真空下で乾燥させて、中間体3A(3-エチル6-メチル-2-アミノ-1H-インドール-3,6-ジカルボキシレート)を紫色固体として得た(6.3g、収率47.1%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δppm 1.32 (t,J=7.0 Hz,3H) 3.81 (s,3H) 4.24 (q,J=7.0 Hz,2H) 6.99 (s,2H) 7.55-7.64 (m,2H) 7.74 (s,1H) 10.84 (s,1H); LCMS m/z 263.2 (M + H)+, HPLC 70%, RT=1.90分
【0173】
3-エチル6-メチル-2-アミノ-1H-インドール-3,6-ジカルボキシレート(1.1g、4.19mmol)およびギ酸アンモニウム(0.53g、8.39mmol)のホルムアミド(16.7mL、419mmol)懸濁液を165℃に12時間加熱した。混合物を室温に冷却し、水を加えた。得られた沈殿物をろ過し、風乾し、高真空下で乾燥させて、メチル4-ヒドロキシ-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレートを灰色固体として得た(1.1g、収率108%)。1H NMR (400 MHz,DMSO-d6) δppm 3.89 (s,3H) 7.86 (dd,J=8.2,1.6 Hz,1H) 8.05-8.08 (m,2H) 8.21 (d,J=3.9 Hz,1H) 12.36 (br. s.,1H) 12.51 (br. s,1H); LCMS m/z 244.2 (M + H)+; HPLC 71%, RT = 1.51分
【0174】
メチル4-ヒドロキシ-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレート(1.1g、4.5mmol)およびオキシ塩化リン(15mL、161mmol)の混合物を90℃に16時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、減圧下で蒸発させた。残渣をCH2Cl2(20 mL)に懸濁し、セライトで濾過した。濾液を濃縮乾固して、メチル4-クロロ-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレートをオレンジ色の固体として得た(360mg、収率30.4%)。1H NMR (400 MHz,DMSO-d6) δppm 3.93 (s,3H) 8.02 (dd,J=8.20, 1.20 Hz,1H) 8.19 (s,1H) 8.40 (d,J=8.22 Hz,1H) 8.86 (s,1H) 13.07 (s,1H); LCMS m/z 262.0 (M+H)+, HPLC 71%, RT = 2.02分
【0175】
メチル4-クロロ-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレート(86mg、0.33mmol)、トリエチルアミン(0.09mL、0.66mmol)および3-(ピペリジン-1-イル)プロパン-1-アミン(0.078mL、0.49mmol)のメタノール(2mL)溶液を、マイクロ波反応器中、140℃に15分間加熱した。混合物を室温に冷却し、減圧下で蒸発させた。粗物質をフラッシュクロマトグラフィーで精製し、中間体3B(メチル4-((3-(ピペリジン-1-イル)プロピル)アミノ)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレート)を灰白色固体として得た(40mg、収率33.1%)。1H NMR (400 MHz,DMSO-d6) δppm 1.38 (m,J=4.70 Hz,2H) 1.49 (quin,J=5.48 Hz,4H) 1.82 (quin, J=7.04 Hz,2H) 2.21-2.45 (m,6H) 3.64 (q,J=6.52 Hz,2H) 3.89 (s,3H) 7.42 (t,J=5.67 Hz,1H) 7.84 (dd,J=8.20,1.20 Hz,1H) 8.04 (d,J=1.20 Hz,1H) 8.38 (s,1H) 8.41 (d,J=8.22 Hz,1H) 12.15 (br. s.,1H); LCMS m/z 368.2 (M+H)+, HPLC 96.8% @254 nm; RT = 1.38分
【0176】
メチル4-((3-(ピペリジン-1-イル)プロピル)アミノ)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレート(40mg、0.109mmol)およびH2SO4(87μL、1.633mmol)のプロパノール(1mL)混合液を70℃に3日間加熱した。約0.5mLに濃縮し、EtOAc(10mL)および水(10mL)で希釈した。固体K2CO(約100mg)でpH7-8に中和した。層を分離し、水層をEtOAc(10mL)で抽出した。合わせた有機層を無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮乾固して化合物7であるプロピル4-((3-(ピペリジン-1-イル)プロピル)アミノ)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレートを白色固体として得た(17mg、収率40%)。1H NMR (400 MHz,Methanol-d4) δppm 8.36 (s, 1H), 8.24 (d,J = 8.2 Hz,1H), 8.19 (s,1H), 7.97 (dd,J = 8.2,1.2 Hz,1H), 4.33 (t,J = 6.7 Hz,2H), 3.74 (t,J = 6.8 Hz,2H), 2.41-2.59 (m,6H), 1.93-2.05 (m,2H), 1.78-1.92 (m,2H), 1.56-1.68 (m,4H), 1.49 (br. s.,2H), 1.08 (t,J = 7.4 Hz,3H); HPLC>95% @254 nm, Rt = 1.67分; LCMS m/z 396.2 (M+H)+.
【0177】
【化34】
【0178】
中間体2C(80mg、0.343mmol)およびベンズアルデヒド(70μL、0.686mmol)の酢酸(1mL)混合液を110℃に22時間加熱した。反応混合物を20℃に冷却し、ジエチルエーテル(10mL)で希釈した。固体を濾過し、Et2Oで洗浄し(3×1mL)、一定重量になるまで20℃、高真空下で乾燥させて、中間体4Aであるメチル4-ヒドロキシ-2-フェニル-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレートを黄褐色固体として得た(47mg、収率42.9%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δppm 3.89 (s,3H) 7.53-7.65 (m,3H) 7.87 (dd,J=8.22,1.56 Hz,1H) 8.06-8.12 (m,2H) 8.18-8.24 (m,2H) 12.55 (br. s.,2H); LCMS m/z 320.2 (M+H)+
【0179】
メチル4-ヒドロキシ-2-フェニル-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレート(0.050g、0.157mmol)のPOCl3(1mL、10.73mmol)混合液を95℃に16時間加熱した。冷却後、反応混合物を濃縮乾固した。得られた固体を飽和NaHCO3(10mL)に懸濁し、30分間撹拌した。固体を濾過し、Et2Oで洗浄し(3×1mL)、一定重量になるまで20℃、高真空下で乾燥させて、メチル4-クロロ-2-フェニル-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレートを黄褐色固体として得た(40mg、収率75%)。1H NMR (400 MHz,DMSO-d6) δppm 3.93 (s,3H) 7.51-7.64 (m,3H) 7.95-8.06 (m,1H) 8.13-8.20 (m,1H) 8.38 (d,J=8.22 Hz, 1H) 8.42-8.51 (m,2H) 13.08 (s,1H); MS m/z 338.2 (M+H)+; HPLC 99.2% @254 nm, RT = 2.48分
【0180】
メチル4-クロロ-2-フェニル-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレート(0.043g、0.127mmol)、トリエチルアミン(35μL、0.255mmol)および3-(ピペリジン-1-イル)プロパン-1-アミン(32μL、0.191mmol)のメタノール(0.6 ml)溶液を電子レンジで140℃に25分間加熱した。20℃に冷却し、濃縮乾固した。
【0181】
分取HPLCで精製して、化合物8であるメチル2-フェニル-4-((3-(ピペリジン-1-イル)プロピル)アミノ)-9H-ピリミド[4,5-b]インドール-7-カルボキシレート2,2,2-トリフルオロアセテートを淡黄色固体として得た(32mg、収率45.0%)。1H NMR (400 MHz,DMSO-d6) δppm 1.35 (br. s.,1H) 1.51-1.70 (m,3H) 1.70-1.85 (m,2H) 2.08-2.28 (m,2H) 2.76-2.97 (m,2H) 3.33-3.50 (m,2H) 3.50-3.66 (m,2H) 3.79-3.98 (m,5H) 7.40-7.58 (m,3H) 7.63 (br. s.,1H) 7.77-7.95 (m,1H) 8.06 (br. s.,1H) 8.40-8.56 (m,3H) 8.89-9.24 (m,1H) 12.28 (br. s.,1H); HPLC 99.9% @254 nm, Rt = 1.82分; HRMS m/z 444.2435 (M+H)+
【0182】
特許請求の範囲は、実施例に記載された好ましい実施形態によって限定されるべきではなく、発明の詳細な説明と一致する最も広い解釈が与えられるべきである。特許請求の範囲において、「含む」という語は、「含むがこれに限定されない」という語句と実質的に同等のオープンエンドな用語として使用される。単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、対応する複数のものへの参照を含む。
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【国際調査報告】