(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-529092(P2017-529092A)
(43)【公表日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】バイオ製品における細菌エンドトキシンを除去する試薬キット、方法及びそのバイオ製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20170908BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20170908BHJP
【FI】
C12N15/00 A
C07K1/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-516785(P2017-516785)
(86)(22)【出願日】2015年9月24日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月12日
(86)【国際出願番号】CN2015090526
(87)【国際公開番号】WO2016045601
(87)【国際公開日】20160331
(31)【優先権主張番号】201410494101.9
(32)【優先日】2014年9月24日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517101414
【氏名又は名称】陳輝
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳輝
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA20
4H045DA70
4H045GA05
(57)【要約】
本発明は、バイオ製品における細菌エンドトキシンを除去する試薬キット、当該試薬キットによりバイオ製品における細菌エンドトキシンを除去する方法、並びに、エンドトキシンフリーバイオ製品の製造方法、及び得られるエンドトキシンフリーバイオ製品を開示している。本発明の試薬キットは、アニオン界面活性剤及びカリウム塩からなり、使用時、アニオン界面活性剤とバイオ製品におけるエンドトキシンとを十分に結合させて、結合物を形成し、さらにカリウム塩又はカリウム塩溶液を加えて結合物を沈殿させ、沈殿を濾過除去することにより、エンドトキシンが除去されたバイオ製品溶液を得、当該バイオ製品溶液からバイオ製品を分離すればよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ製品中の細菌エンドトキシンを除去する試薬キットであって、カリウム塩と前記カリウム塩の存在下で水に溶解できないアニオン界面活性剤を含むことを特徴とする。
エンドトキシンを含むバイオ製品とアニオン界面活性剤溶液とを混合し、得られた混合溶液を静置して、カリウム塩又はカリウム塩溶液を加えてアニオン界面活性剤を沈殿させ、静置後に遠心分離又は濾過して、細菌エンドトキシンが除去されたバイオ製品溶液を得る工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記アニオン界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、sec-アルキル硫酸ナトリウム、脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテル硫酸エステルナトリウム、オレイルアルコール硫酸ナトリウム、N-オレオイルポリペプチドナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、α-スルホモノカルボン酸エステル、スルホ脂肪酸アルキルエステル、コハク酸エステルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、石油スルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム及びアルキルグリセリルエーテルスルホン酸ナトリウムのうちの1種又はそれ以上であることを特徴とする請求項1に記載の試薬キット。
【請求項3】
前記アニオン界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム及び/又はデオキシコール酸ナトリウムであることを特徴とする請求項2に記載の試薬キット。
【請求項4】
前記アニオン界面活性剤は、エンドトキシンの除去過程において、エンドトキシンを除去したいバイオ製品のサンプルと混合した際の最終濃度がエンドトキシンの濃度より高いことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の試薬キット。
【請求項5】
前記アニオン界面活性剤の最終濃度は0.1wt%以上であり、すなわち、0.1wt%〜飽和であることを特徴とする、請求項4に記載の試薬キット。
【請求項6】
前記アニオン界面活性剤の最終濃度は0.1wt%-10wt%、0.1wt%-5wt%、0.1wt%-1wt%、1wt%-10wt%、1wt%-5wt%、5wt%-10wt%、0.1wt%、1wt%、5wt%或いは10wt%であることを特徴とする、請求項5に記載の試薬キット。
【請求項7】
前記カリウム塩が、塩化カリウム、酢酸カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム及び硝酸カリウムのうちの1種又はそれ以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の試薬キット。
【請求項8】
前記カリウム塩が、酢酸カリウムおよび/または塩化カリウム、であることを特徴とする請求項7に記載の試薬キット
【請求項9】
前記カリウム塩は、エンドトキシンの除去過程において、エンドトキシンを除去したいバイオ製品のサンプルと混合した際の最終濃度が前記アニオン界面活性剤を沈殿させるのに充分な濃度以上であり、前記混合溶液はアニオン界面活性剤とエンドトキシンを除去したいバイオ製品サンプルからなることを特徴とする、請求項7または8に記載の試薬キット。
【請求項10】
ドデシル硫酸ナトリウムを使用する際に、前記カリウム塩の最終濃度は0.3M以上、すなわち、0.3M〜飽和であることを特徴とする、請求項9に記載の試薬キット。
【請求項11】
前記カリウム塩は、エンドトキシンの除去過程において、混合溶液と混合する際の最終濃度は0.3M-0.5M、0.3M-0.55M、0.3M-0.69M、0.3M-0.86M、0.3M-1M、0.3M-1.1M、0.3M-1.65M、0.5M-0.55M、0.5M-0.69M、0.5M-0.86M、0.5M-1M、0.5M-1.1M、0.5M-1.65M、0.5M〜飽和、0.55M-0.69M、0.55M-0.86M、0.55M-1M、0.55M-1.1M、0.55M-1.65M、0.55M〜飽和、0.69M-0.86M、0.69M-1M、0.69M-1.1M、0.69M-1.65M、0.69M〜飽和、0.86M-1M、0.86M-1.1M、0.86M-1.65M、0.86M〜飽和、 1M-1.1M、1M-1.65M、1M〜飽和、1.1M-1.65M、1.1M〜飽和、1.65M〜飽和、0.3M、0.5M、0.55M、0.69M、0.86M、1M、1.1M、1.65M或いは飽和であることを特徴とする請求項9または10に記載の試薬キット。
【請求項12】
バイオ製品からエンドトキシンを除去する方法であって、請求項1〜11のいずれかに記載の試薬キットを使用し、前記エンドトキシンを含むバイオ製品と前記アニオン界面活性剤溶液を均一に混合して得られる混合溶液を静置し、その後前記カリウム塩を添加し、均一にかき混ぜて前記アニオン界面活性剤を完全に沈殿させる工程、および、静置後に遠心またはろ別し、沈殿を廃棄してバイオ製品におけるエンドトキシンの除去を完了させる工程、を含む。
【請求項13】
前記アニオン界面活性剤とエンドトキシンを含むバイオ製品からなる混合溶液において、前記アニオン界面活性剤の濃度はエンドトキシンのい濃度より高いことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アニオン界面活性剤の最終濃度は0.1wt%以上であり、すなわち、0.1wt%〜飽和であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アニオン界面活性剤の最終濃度は0.1wt%-10wt%、0.1wt%-5wt%、0.1wt%-1wt%、1wt%-10wt%、1wt%-5wt%、5wt%-10wt%、0.1wt%、1wt%、5wt%或いは10wt%であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記カリウム塩は前記混合溶液と混合する際の最終濃度が前記アニオン界面活性剤を沈殿させるのに充分な濃度以上であることを特徴とする、請求項12〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
ドデシル硫酸ナトリウムを使用する際に、前記カリウム塩の最終濃度は0.3M以上、すなわち、0.3M〜飽和であることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記カリウム塩が前記混合溶液と混合する際の最終濃度は0.3M-0.5M、0.3M-0.55M、0.3M-0.69M、0.3M-0.86M、0.3M-1M、0.3M-1.1M、0.3M-1.65M、0.5M-0.55M、0.5M-0.69M、0.5M-0.86M、0.5M-1M、0.5M-1.1M、0.5M-1.65M、0.5M〜飽和、0.55M-0.69M、0.55M-0.86M、0.55M-1M、0.55M-1.1M、0.55M-1.65M、0.55M〜飽和、0.69M-0.86M、0.69M-1M、0.69M-1.1M、0.69M-1.65M、0.69M〜飽和、0.86M-1M、0.86M-1.1M、0.86M-1.65M、0.86M〜飽和、 1M-1.1M、1M-1.65M、1M〜飽和、1.1M-1.65M、1.1M〜飽和、1.65M〜飽和、0.3M、0.5M、0.55M、0.69M、0.86M、1M、1.1M、1.65M或いは飽和であることを特徴とする請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記バイオ製品はタンパク質又は核酸であることを特徴とする請求項12から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
エンドトキシンフリーバイオ製品の製造方法であって、請求項1から11のいずれかに記載の試薬キットを使用し、エンドトキシンを含むバイオ製品と前記アニオン界面活性剤と均一に混合し、静置して、沈殿が生じなくなるまで前記カリウム塩を均一に混ぜ、静置後遠心またはろ別して、上澄み液、すなわちエンドトキシンを除去したバイオ製品サンプル溶液を回収して、前記バイオ製品をエンドトキシンを除去したバイオ製品サンプル溶液から分離することを特徴とする。
【請求項21】
バイオ製品がタンパク質である場合、具体的には、
1)エンドトキシンを含むタンパク質にアニオン界面活性剤溶液を加え、アニオン界面活性剤の最終濃度が1wt%以上となるまで混合し、得られた混合溶液を5min静置する工程と、
2)工程1)で得られた混合溶液に、沈殿が生じなくなるまでカリウム塩又はカリウム塩溶液を加えて、沈殿のある混合液を得、5min静置する工程と、
3)工程2)で得られた沈殿のある混合液を14000rpmで5min遠心分離して、沈殿を廃棄し、上澄液を得る、或いは、0.45μm孔径のPP濾過膜を経て、4000rpmで遠心濾過し、エンドトキシンが除去されたタンパク質溶液である澄液を得る工程と、
4)沈殿法又は透析法により、タンパク質を工程3)で得られたエンドトキシンが除去されたタンパク質溶液から分離して、エンドトキシンフリータンパク質を得る工程と、
を含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
バイオ製品がDNAである場合、具体的には、
1)エンドトキシンを含むDNAにアニオン界面活性剤溶液を加え、アニオン界面活性剤の最終濃度が0.1wt%以上となるまで混合し、得られた混合溶液を5min静置する工程と、
2)工程1)で得られた混合溶液に、沈殿が生じなくなるまでカリウム塩又はカリウム塩溶液を加えて、沈殿のある混合液を得、5min静置する工程と、
3)工程2)で得られた沈殿のある混合液を14000rpmで5min遠心分離して、沈殿を廃棄し、上澄液を得る、或いは、0.45μm孔径のPP濾過膜を経て、4000rpmで遠心濾過し、エンドトキシンが除去されたDNA溶液である澄液を得る工程と、
4)工程3)で得られたエンドトキシンが除去されたDNA溶液に等しい体積のイソプロパノールを加え混合した後、室温で30min静置した後、14000rpmで10min遠心分離し、上澄み液を廃棄し、沈殿を70%エタノールで洗浄してから、さらに14000rpmで10min遠心分離し、上澄み液を廃棄して、沈殿は一回洗浄及び遠心分離した後、エタノールを乾燥させ、エンドトキシンフリーDNAを得る工程と、
を含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
エンドトキシンの濃度が3.5EU/(mgタンパク質)以下である、請求項20または21に記載の方法により得られるエンドトキシンフリータンパク質
【請求項24】
エンドトキシンの濃度が1.1〜3.5EU/(mgタンパク質)である、請求項23に記載のエンドトキシンフリータンパク質。
【請求項25】
エンドトキシンの濃度が4.3EU/(mg DNA)以下である、請求項20または22に記載の方法により得られるエンドトキシンフリーDNA。
【請求項26】
エンドトキシンの濃度が1.1〜4.3EU/(mg DNA)である、請求項25に記載のエンドトキシンフリーDNA。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ製品の分離精製分野に関し、特に、バイオ製品における細菌エンドトキシンを除去する試薬キット、除去方法及びエンドトキシンフリーバイオ製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代バイオ技術が広く適用されるにつれて、バイオ製品の安全性がより重視されるようになり、特にバイオ製品における発熱原に対する制御がますます厳しくなっている。しかし、バイオ製品の生産過程において、原料・副原料、生産環境及び取扱の個人差等により発熱原が混入することがよくあり、発酵プロセスを採用する薬物の生産過程において菌種を破壁して活物質を放出する必要があり、大量の発熱原の混入が不可避であるため、活物質が汚染されてしまう。したがって、生産中で発熱原の源を減少させるために有効なプロセス制御と厳しい予防対策を採用する以外、バイオ製品における発熱原を如何に除去するかは、本分野における重要な研究課題となるが、これまで簡便で効率よい方法がなかった。
【0003】
発熱原(Pyrogen)とは、恒温動物の体温の異常上昇を引き起こすことができる発熱物質を指し、細菌性発熱原、内因性高分子発熱原、内因性低分子発熱原及び化学的発熱原等を含む。通常、「発熱原」といえば、主に細菌性発熱原のことを指し、一部細菌の代謝生成物、細菌の死体やエンドトキシンである。細菌エンドトキシン(Endotoxin、エンドトキシンと略す)は、グラム陰性菌の細胞壁外膜の主成分の1つであり、その本質はリポ多糖(Lipopolysaccharide、LPS)であり、化学構造的に、主に多糖(Polysaccharide)と脂質A(Lipid A)からなるものである。その特殊性として、それは細菌又は細菌の代謝生成物ではなく、細菌が死亡又は分解して初めて放出される、バイオ活性を有する物質であることにあり、脂質Aは、エンドトキシンの多種のバイオ活性又は毒性反応の主な基である。異なるグラム陰性菌のLPSの化学組成に一定の差があるが、いずれも脂質A部分を含有しており、すなわち、この基には種間特異性がない。そのため、発熱、血流動力学の変化、汎発性血管内凝固、循環性ショック等、各属の細菌エンドトキシンの毒性反応が類似している。したがって、バイオ製品の使用安全性を確保するために、エンドトキシンの濃度を安全な範囲まで低減させる必要がある
[1][2]。比較的、公に認められている注射剤のエンドトキシンの上限値は5EU/kg体重である
[3]。
【0004】
エンドトキシンの化学性質は非常に安定であり、100℃の煮沸条件でも破壊されず、250℃、30分以上、又は180℃、3時間以上で、或いは、濃度0.1M以上の強酸又は強アルカリに浸漬して初めて破壊される
[2]。エンドトキシンは、生理条件下で疎水性と負電荷を有し、一般に分子量が十数万〜百万以上ダルトンである。一般に採用される除去手段として、限外濾過、各種のカラムクロマトグラフィー(例えば、疎水クロマトグラフィー、イオン交換)、親和吸着(ポリミキシンB、L-ヒスチジン、ポリ-L-リジン、ポリγ-L-グルタミン酸架橋媒体)及び曇点抽出法(Triton X-114)等があり、これらの方法により一部のエンドトキシンを除去又は不活化することができるが、いずれも何らかの欠点がある。例えば、限外濾過法は、低分子薬物にしか適用できず、薬物分子(例えば、抗体)がエンドトキシン分子の大きさに近ければ、効果的に分離することができない。また、カラムクロマトグラフィーは、高コストで低効率、大規模生産におけるエンドトキシンの除去に適しない。また、アニオン交換樹脂は、同様に負の電荷を帯びたバイオ分子を分離できない。また、曇点抽出法(Triton X-114)
[4]も、例えば、取扱過程において数回抽出する必要があるため、プラスミドにおける活物質の損失を引き起こすこと、処理時に温度を転換する必要があること、相転移後Triton X-114が水相中で極微細な霧滴を形成し、高速遠心分離をする必要があり、工業化的な取扱及び制御が困難であることなどの、大きな欠点がある。
【0005】
以上をまとめると、効率よく、低コストでエンドトキシンを除去することができるだけでなく、バイオ製品の活性を最大限に保持することができる方法の研究開発は、現在本分野において重要な課題である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の主な目的は、従来技術に存在する技術的欠点に対して、第1側面として、取扱が簡単であり、バイオ製品における細菌エンドトキシンを効果的に除去できる試薬キットを提供することにある。本発明の試薬キットは、カリウム塩と、前記カリウム塩の存在下で水に不溶のアニオン界面活性剤とを含む。
【0007】
そのうち、前記アニオン界面活性剤はドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、sec-アルキル硫酸ナトリウム、脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテル硫酸エステルナトリウム、オレイルアルコール硫酸ナトリウム、N-オレオイルポリペプチドナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、α-スルホモノカルボン酸エステル、スルホ脂肪酸アルキルエステル、コハク酸エステルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、石油スルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム及びアルキルグリセリルエーテルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤のうちの1種又はそれ以上である。
【0008】
前記アニオン界面活性剤がドデシル硫酸ナトリウム及び/又はデオキシコール酸ナトリウムである。
【0009】
前記アニオン界面活性剤は、エンドトキシンの除去過程においてエンドトキシンを除去したいバイオ製品のサンプルと混合した最終濃度が、溶液における細菌エンドトキシンの濃度に依存しており、エンドトキシンの濃度よりも高ければよい。エンドトキシンの濃度が高い場合、前記アニオン界面活性剤の最終濃度も高めるべきである。一方、その逆の場合は、最終濃度の低い前記アニオン界面活性剤を使用できる。通常、前記アニオン界面活性剤の最終濃度は0.1wt%以上、すなわち、0.1wt%〜飽和である。
【0010】
バイオ製品がタンパク質又はDNAである場合、前記アニオン界面活性剤の最終濃度は、0.1wt%〜10wt%、0.1wt%〜5wt%、0.1wt%〜1wt%、1wt%〜10wt%、1wt%〜5wt%、5wt%〜10wt%、0.1wt%、1wt%、5wt%又は10wt%である。
【0011】
前記カリウム塩は、塩化カリウム、酢酸カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム及び硝酸カリウム等のカリウム塩のうちの1種又はそれ以上の組合せである。
【0012】
前記カリウム塩は、酢酸カリウム及び/又は塩化カリウムである。
【0013】
前記カリウム塩は、エンドトキシンの除去過程において混合溶液と混合したときの最終濃度が、前記アニオン界面活性剤を十分に沈殿させることができる濃度以上であり、すなわち、溶液における前記アニオン界面活性剤を完全に沈殿させることができればよい。前記混合溶液は、アニオン界面活性剤、及びエンドトキシンを除去したいバイオ製品のサンプルからなる。
【0014】
異なるアニオン界面活性剤の沈殿に用いられるカリウム塩の最低最終濃度が異なる。ドデシル硫酸ナトリウムを用いる場合、前記カリウム塩の最終濃度は、0.3M以上、すなわち、0.3M〜飽和である。
【0015】
前記アニオン界面活性剤及びカリウム塩は、固体であってもよく、溶液(水溶液)であってもよく、それぞれ独立して包装される。
【0016】
バイオ製品がタンパク質である場合、前記カリウム塩がエンドトキシンの除去過程において混合溶液と混合したときの最終濃度は、0.3M〜0.5M、0.3M〜0.55M、0.3M〜0.86M、0.3M〜1M、0.3M〜1.1M、0.3M〜1.65M、0.5M〜0.55M、0.5M〜0.86M、0.5M〜1M、0.5M〜1.1M、0.5M〜1.65M、0.5M〜飽和、0.55M〜0.86M、0.55M〜1M、0.55M〜1.1M、0.55M〜1.65M、0.55M〜飽和、0.86M〜1M、0.86M〜1.1M、0.86M〜1.65M、0.86M〜飽和、1M〜1.1M、1M〜1.65M、1M〜飽和、1.1M〜1.65M、1.1M〜飽和、1.65M〜飽和、0.3M、0.5M、0.55M、0.86M、1M、1.1M、1.65M又は飽和である。
【0017】
バイオ製品がDNAである場合、前記カリウム塩がエンドトキシンの除去過程において混合溶液と混合したときの最終濃度は、0.3M〜0.5M、0.3M〜0.55M、0.3M〜0.69M、0.3M〜0.86M、0.3M〜1M、0.3M〜1.1M、0.3M〜1.65M、0.5M〜0.55M、0.5M〜0.69M、0.5M〜0.86M、0.5M〜1M、0.5M〜1.1M、0.5M〜1.65M、0.5M〜飽和、0.55M〜0.69M、0.55M〜0.86M、0.55M〜1M、0.55M〜1.1M、0.55M〜1.65M、0.55M〜飽和、0.69M〜0.86M、0.69M〜1M、0.69M〜1.1M、0.69M〜1.65M、0.69M〜飽和、0.86M〜1M、0.86M〜1.1M、0.86M〜1.65M、0.86M〜飽和、1M〜1.1M、1M〜1.65M、1M〜飽和、1.1M〜1.65M、1.1M〜飽和、1.65M〜飽和、0.3M、0.5M、0.55M、0.69M、0.86M、1M、1.1M、1.65M又は飽和である。
【0018】
本発明の第2側面として、バイオ製品における細菌エンドトキシンを除去する方法であって、前記試薬キットを利用したものであり、エンドトキシンを含むバイオ製品と前記アニオン界面活性剤溶液とを均一に混合して得た混合溶液を静置し、さらに前記カリウム塩を加え、均一に混合して前記アニオン界面活性剤を完全に沈殿させ、静置後に遠心分離又は濾過し、沈殿を廃棄し、バイオ製品におけるエンドトキシンの除去を完成する工程を含む方法を提供することにある。
【0019】
前記アニオン界面活性剤が前記界面活性剤とエンドトキシンを含むバイオ製品からなる混合溶液中の最終濃度は、エンドトキシンの濃度よりも高い。
【0020】
前記アニオン界面活性剤の最終濃度は、0.1wt%以上、すなわち、0.1wt%〜飽和である。
【0021】
バイオ製品がタンパク質又はDNAである場合、前記アニオン界面活性剤の最終濃度は、0.1wt%〜10wt%、0.1wt%〜5wt%、0.1wt%〜1wt%、1wt%〜10wt%、1wt%〜5wt%、5wt%〜10wt%、0.1wt%、1wt%、5wt%又は10wt%である。
【0022】
前記カリウム塩の前記混合溶液と混合した際の最終濃度は、前記アニオン界面活性剤を充分沈殿させることが可能の濃度以上である。
【0023】
ドデシル硫酸ナトリウムを用いる場合、前記カリウム塩の前記混合溶液と混合したときの最終濃度は、0.3M以上、すなわち、0.3M〜飽和である。
【0024】
バイオ製品がタンパク質である場合、前記カリウム塩がエンドトキシンの除去過程において混合溶液と混合したときの最終濃度は、0.3M〜0.5M、0.3M〜0.55M、0.3M〜0.86M、0.3M〜1M、0.3M〜1.1M、0.3M〜1.65M、0.5M〜0.55M、0.5M〜0.86M、0.5M〜1M、0.5M〜1.1M、0.5M〜1.65M、0.5M〜飽和、0.55M〜0.86M、0.55M〜1M、0.55M〜1.1M、0.55M〜1.65M、0.55M〜飽和、0.86M〜1M、0.86M〜1.1M、0.86M〜1.65M、0.86M〜飽和、1M〜1.1M、1M〜1.65M、1M〜飽和、1.1M〜1.65M、1.1M〜飽和、1.65M〜飽和、0.3M、0.5M、0.55M、0.86M、1M、1.1M、1.65M又は飽和である。
【0025】
バイオ製品がDNAである場合、前記カリウム塩がエンドトキシンの除去過程において混合溶液と混合したときの最終濃度は、0.3M〜0.5M、0.3M〜0.55M、0.3M〜0.69M、0.3M〜0.86M、0.3M〜1M、0.3M〜1.1M、0.3M〜1.65M、0.5M〜0.55M、0.5M〜0.69M、0.5M〜0.86M、0.5M〜1M、0.5M〜1.1M、0.5M〜1.65M、0.5M〜飽和、0.55M〜0.69M、0.55M〜0.86M、0.55M〜1M、0.55M〜1.1M、0.55M〜1.65M、0.55M〜飽和、0.69M〜0.86M、0.69M〜1M、0.69M〜1.1M、0.69M〜1.65M、0.69M〜飽和、0.86M〜1M、0.86M〜1.1M、0.86M〜1.65M、0.86M〜飽和、1M〜1.1M、1M〜1.65M、1M〜飽和、1.1M〜1.65M、1.1M〜飽和、1.65M〜飽和、0.3M、0.5M、0.55M、0.69M、0.86M、1M、1.1M、1.65M又は飽和である。
【0026】
前記バイオ製品は、タンパク質又は核酸である。
【0027】
本発明の第3側面として、エンドトキシンフリーバイオ製品の製造方法であって、前記試薬キットによりエンドトキシンを含むバイオ製品と前記アニオン界面活性剤とを均一に混合し、静置し、前記カリウム塩を加え沈殿が生じなくなるまで均一に混合し、静置後に遠心分離又は濾過して、回収して得られた澄液すなわちエンドトキシンが除去されたバイオ製品のサンプル溶液である、さらに、前記バイオ製品を、エンドトキシンが除去されたバイオ製品溶液から分離して、エンドトキシンフリーバイオ製品を得る、エンドトキシンフリーバイオ製品の製造方法を提供することにある。
【0028】
バイオ製品がタンパク質である場合、具体的な工程としては、
1)エンドトキシンを含むタンパク質に、最終濃度が0.1wt%以上となるようにアニオン界面活性剤を加え、均一に混合して混合溶液を得た後、5min静置する工程と、
2)工程1)で得られた混合溶液に、沈殿が生じなくなるまでカリウム塩を加え、均一に混合した後沈殿のある混合液を得、5min静置する工程と、
3)工程2)で得られた沈殿のある混合液を14000rpmで5min遠心分離し、沈殿を除去し、上澄液を得、或いは、孔径0.45μmのPP濾過膜により、4000rpmで遠心濾過し、得られた澄液が、エンドトキシンが除去されたタンパク質溶液である工程と、
4)工程3)で得られたエンドトキシンが除去されたタンパク質溶液を、沈殿法又は透析法によりタンパク質を分離して、エンドトキシンフリータンパク質を得る工程である。
【0029】
バイオ製品がDNAである場合、具体的な工程としては、
1)エンドトキシンを含むDNAに、最終濃度が0.1wt%以上となるようにアニオン界面活性剤を加え、均一に混合して混合溶液を得た後、5min静置する工程と、
2)工程1)で得られた混合溶液に、沈殿が生じなくなるまでカリウム塩を加え、均一に混合した後沈殿のある混合液を得、5min静置する工程と、
3)工程2)で得られた沈殿のある混合液を14000rpmで5min遠心分離し、沈殿を除去し、上澄液を得、或いは、孔径0.45μmのPP濾過膜により、4000rpmで遠心濾過し、得られた澄液が、エンドトキシンが除去されたDNA溶液である工程と、
4)工程3)で得られたエンドトキシンが除去されたDNA溶液に等しい体積のイソプロパノールを加え、均一に混合した後室温で30min静置し、その後、14000rpmで10min遠心分離し、上澄液を除去し、沈殿を70%エタノールにより洗浄し、14000rpmで10min遠心分離し、上澄液を除去し、沈殿は洗浄と遠心分離を一回繰り返した後、エタノールを乾燥させて、エンドトキシンフリーDNAを得る工程である。
【0030】
本発明の第4側面として、エンドトキシンの濃度が3.5EU/mgタンパク質以下であり、好ましくは1.1EU/mgタンパク質〜3.5EU/mgタンパク質である、前記方法により得られたエンドトキシンフリータンパク質を提供することにある。
【0031】
本発明の第5側面として、エンドトキシンの濃度が4.3EU/mg DNA以下であり、好ましくは1.1EU/mg DNA〜4.3EU/mg DNAである、前記方法により得られたエンドトキシンフリーDNAを提供することにある。
【0032】
従来技術に比べて、本発明の有益な効果は、本試薬キットによりバイオ製品におけるエンドトキシンを簡便で、速やかに除去できることである。本発明のエンドトキシンを除去する方法は、取扱が容易であり、コストが低く、エンドトキシンの除去効果が従来の方法よりも顕著に優れており、かつバイオ製品のバイオ活性に影響を与えることがなく、本発明の方法により製造されたバイオ製品は、そのエンドトキシンの濃度が臨床用薬基準を満たしており、活物質の損失が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1に実験例1におけるエンドトキシンの濃度-吸光度の検量線図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、バイオ製品におけるエンドトキシンを除去する試薬キット、及び当該試薬キットによりバイオ製品におけるエンドトキシンを除去する方法、並びに、このようなエンドトキシンを除去する方法によりエンドトキシンフリーバイオ製品を製造する方法、及び製造されたエンドトキシンフリーバイオ製品を提供する。本発明の核心的な原理は、アニオン界面活性剤とエンドトキシンと結合性が良い一方、アニオン界面活性剤は、一定の濃度のカリウムイオンの存在下では溶解度が十分に小さくなるため、カリウムイオンを加えて、アニオン界面活性剤と結合しているエンドトキシンを一緒に水相から沈殿の形で析出させることにより、バイオ製品におけるエンドトキシンを除去することができ、さらに、従来技術の方法によりエンドトキシンが除去されたバイオ製品を水溶液から分離精製して、エンドトキシンフリーバイオ製品を得ることである。
【0035】
以下、添付図面及び具体的な実施例により、本発明の内容をより具体的に説明し、本発明についてさらに説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら制限されることは決してない。当業者が、本明細書の示唆により本発明の実施例に対して行ういかなる変更も、本発明の特許が請求する範囲に属する。
【0036】
実施例で用いられるバイオ材料の由来は広範囲に及び、法律及び道徳倫理に違反せずに入手できるいかなるバイオ材料も、実施例の示唆により差し替えて使用することができる。用いられる方法は、特に断りのない限り従来技術の方法である。特に断りのない限り、各実施例における同じ名称の材料又は試薬の内容は同じである。
【0037】
実験例1.バイオ製品のサンプルのエンドトキシンを除去する前の準備作業
一.エンドトキシン標準品の含有量-吸光度の検量線のプロット
1.実験材料
発色基質カブトガニ試薬キットは、厦門(アモイ)市カブトガニ試薬実験場有限公司から購入されたものであり、用いられる実験器材は、いずれもエンドトキシンがない。
【0038】
2.エンドトキシン溶液標準品の製造及び検量線のプロット
いずれも厦門市カブトガニ試薬実験場有限公司提供の発色基質カブトガニ試薬キットの取扱説明書に従って行う。
【0039】
光度測定法によりエンドトキシン標準品の吸光度(表1を参照)を測定した。吸光度をY軸、エンドトキシンの濃度をX軸としたとき、エンドトキシンの濃度-吸光度の検量線(
図1を参照)をプロットして、y=0.791X+0.084(R
2=0.994)である検量線の方程式を得た。
【0041】
二.高濃度エンドトキシン溶液の製造
購入したエンドトキシン溶液標準品の濃度が非常に低いため、実験に使用しやすくするために、高濃度エンドトキシン溶液を調製した。
【0042】
2mLの大腸菌DH5αを遠心管内で一晩培養した後、12000rpmで30s遠心分離し、上澄液を除去した、沈殿が菌体であった。沈殿に200μLのPA溶液(PA溶液は、50mMのTris-HCl及び10mMのEDTAを含み、pH=7.5である)を加え十分均一に混合した後、200μLのPB溶液(PB溶液は、0.2MのNaOH及び1wt%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む)を加え、均一に混合した後、室温で2〜3min静置し、さらに約70〜80μLのPC溶液(PC溶液は5Mの酢酸ナトリウム溶液であり、pH=4.8である)を加え、pHを7程度に調節し、15000rpmで5min遠心分離し、上澄液を得、高濃度エンドトキシン溶液を得た。当該高濃度エンドトキシン溶液におけるエンドトキシンの濃度は約50〜100万EU/mLである。
【0043】
三.エンドトキシンを除去したいバイオ製品のサンプルの製造
用いられる試薬は、いずれも市販の従来試薬である。
【0044】
1.エンドトキシンを除去したいタンパク質のサンプルの調整
100mgのヒト血清アルブミン(HSA)を1mLの水に溶解させてヒト血清アルブミン水溶液を調製し、ここに2〜10μLの本実験例の第二部分で得られた高濃度エンドトキシン溶液を加え、均一に混合して、エンドトキシンの濃度が約5000〜10000EU/mLである、エンドトキシンを除去したいタンパク質のサンプルを得た。実際操作では、当該高濃度エンドトキシン溶液の仕込量を増加又は減少させることにより、エンドトキシンを除去したいタンパク質のサンプル中のエンドトキシンの濃度の大まかな範囲を制御することができる。エンドトキシンの濃度範囲が小さいエンドトキシンを除去したいタンパク質のサンプル(例えば、エンドトキシンの濃度が約100〜1000EU/mL)を得ようとするならば、希釈の方法により実現することもできる。
【0045】
2.エンドトキシンを除去したいDNAのサンプルの調整
1mgのPUC19プラスミドDNAを1mLの水に溶解させてDNA溶液を調製し、ここに本実験例の第二部分で得られた高濃度エンドトキシン溶液を2〜10μL加え、均一に混合して、エンドトキシンの濃度が約5000〜10000EU/mgであるエンドトキシンを除去したいDNAのサンプルを得た。
【0046】
四.エンドトキシンを除去したいバイオ製品のサンプル中のエンドトキシンの濃度の測定
本発明によるバイオ製品におけるエンドトキシンの除去効果を比較するために、エンドトキシンを除去したいバイオ製品のサンプル中のエンドトキシンの濃度を測定した。エンドトキシンを除去したいバイオ製品のサンプル中のエンドトキシン(外部添加)の濃度が高すぎることにより、エンドトキシンの濃度と吸光度とが線形関係を満たさないため、エンドトキシンの濃度が本実験例の第一部分でプロットされた検量線のエンドトキシンの濃度範囲内に入るように、エンドトキシンを除去したいバイオ製品のサンプルを希釈する必要がある。
【0047】
1.エンドトキシンを除去したいタンパク質のサンプル中のエンドトキシンの濃度の測定
本実験例の第三部分で得られた、エンドトキシンを除去したいタンパク質のサンプル25μLを、エンドトキシンフリー水により20000倍希釈した後、厦門市カブトガニ試薬実験場有限公司が提供した発色基質カブトガニ試薬キットの取扱説明書記載の測定方法に従って、希釈後のエンドトキシンを除去したいタンパク質のサンプルの吸光度を測定し、得られた吸光度値を、本実験例の第一部分の方法により得られた検量線の方程式に代入して計算し、希釈前のエンドトキシンを除去したいタンパク質のサンプル中のエンドトキシンの濃度を換算して得た。
【0048】
2.エンドトキシンを除去したいDNAのサンプル中のエンドトキシンの濃度の測定
本実験例の第三部分で得られた、エンドトキシンを除去したいDNAのサンプル25μLを、エンドトキシンフリー水により20000倍希釈した後、厦門市カブトガニ試薬実験場有限公司が提供した発色基質カブトガニ試薬キットの取扱説明書記載の測定方法に従って、希釈後のエンドトキシンを除去したいDNAのサンプルの吸光度を測定し、得られた吸光度値を、本実験例の第一部分の方法により得られた検量線の方程式に代入して計算し、エンドトキシンを除去したいDNAのサンプル中のエンドトキシンの濃度を得た。
【0049】
実施例1.エンドトキシンを除去したいバイオ製品のサンプル中のエンドトキシンの除去
1)実験例1の第三部分の方法により得られた、エンドトキシンを除去したいバイオ製品のサンプルを取り、これに、アニオン界面活性剤の最終濃度が0.1wt%以上となるようにアニオン界面活性剤を加え(アニオン界面活性剤の最終濃度はエンドトキシンの濃度に依存しており、エンドトキシンの濃度が高いほど、アニオン界面活性剤の最終濃度が高くなる必要があり、一般に0.1wt%以上であり、5〜10wt%であることが最も好ましい)、均一に混合して混合溶液を得た後、5min静置した。アニオン界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、デオキシコール酸ナトリウム(SDC)、sec-アルキル硫酸ナトリウム、脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテル硫酸エステルナトリウム、オレイルアルコール硫酸ナトリウム、N-オレオイルポリペプチドナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、α-スルホモノカルボン酸エステル、スルホ脂肪酸アルキルエステル、コハク酸エステルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、石油スルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム及びアルキルグリセリルエーテルスルホン酸ナトリウム等の、カリウム塩の存在下で水に不溶の1種又はそれ以上のアニオン界面活性剤から選択することができ、固形アニオン界面活性剤を直接用いてもよく、アニオン界面活性剤の水溶液を用いてもよい。
【0050】
2)工程1)で得られた混合溶液に沈殿が生じなくなるまでカリウム塩を加え、均一に混合した後、沈殿のある混合液を得、5min静置した。工程1)で得られた混合溶液における、カリウム塩の最終濃度は、具体的に制限されず、アニオン界面活性剤を完全に沈殿させることができるものであればよい。カリウム塩としては、塩化カリウム(KCl)、酢酸カリウム(KAc)、炭酸カリウム(K
2CO
3)、炭酸水素カリウム(KHCO
3)、リン酸カリウム(K
3PO
4)、リン酸一水素カリウム(K
2HPO
4)、リン酸二水素カリウム(KH
2PO
4)又は硫酸カリウム(K
2SO
4)等のよく用いられるカリウム塩の固体又はカリウム塩の水溶液から選択することができる。
【0051】
3)工程2)で得られた沈殿のある混合液を14000rpmで5min遠心分離し、沈殿を除去し、澄液を取り、或いは、沈殿のある混合液を孔径0.45μmのPP濾過膜により、4000rpmで遠心濾過し、澄液を得た。得られた澄液は、エンドトキシンが除去されたバイオ製品のサンプル溶液である。
【0052】
以下、タンパク質及びDNAを例として、本発明により提供されるエンドトキシンを除去する方法を詳述する。
【0053】
実験例2.エンドトキシンの検出干渉試験
バイオ製品の吸光度によるエンドトキシンの吸光度に対する影響を解消するために、エンドトキシンの検出に対する干渉程度が最も小さいバイオ製品の濃度を選択して、干渉試験を行った。干渉試験の取扱過程は、厦門市カブトガニ試薬実験場有限公司提供の発色基質カブトガニ試薬キットの取扱説明書に記載の「供試品の干渉試験」に従って行われた。
【0054】
1.タンパク質のサンプル溶液によるエンドトキシンの検出に対する干渉試験
タンパク質のサンプル溶液には、エンドトキシンを除去する際に、カリウム塩を加える必要があるため、測定する前に一定の倍数まで希釈して干渉を解消する必要がある。
【0055】
エンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液、例えば、実施例1の工程3)で得られたエンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液(pH7〜8)を、それぞれ25倍、50倍及び100倍希釈して、3つの干渉試験サンプルを得た。それぞれ3つの干渉試験サンプルに1EU/mLのエンドトキシン溶液を0.5mL加えた。前記試薬キットの使用説明に従って干渉試験サンプルを測定し、
図1の検量線によりエンドトキシンの実測値を計算し、試験結果を表2に示した。
【0057】
表2の試験結果から分かるように、タンパク質のサンプル溶液が100倍又はそれ以上希釈された場合、計測が干渉されなかった。したがって、次のタンパク質のサンプル溶液のエンドトキシンの濃度測定の前に、いずれもサンプル溶液をエンドトキシンフリー水により100倍以上希釈して測定した。
【0058】
2.DNAのサンプル溶液によるエンドトキシンの検出に対する干渉試験
DNAサンプル溶液からの固体DNAの抽出は、タンパク質の抽出よりもはるかに容易であるため、DNAのサンプル溶液におけるエンドトキシンの濃度を測定する場合、まず、エンドトキシンが除去されたDNAのサンプル溶液、例えば、実施例1の工程3)で得られたエンドトキシンが除去されたDNAのサンプル溶液に、等しい体積のイソプロパノールを加え、均一に混合した後室温で30min静置し、その後、14000rpmで10min遠心分離し、上澄液を除去し、沈殿を適量の70%エタノールにより洗浄し、さらに14000rpmで10min遠心分離し、上澄液を除去し、沈殿は洗浄と遠心分離を一回繰り返した後、エタノールを乾燥させ、エンドトキシンフリーDNAを得た。
【0059】
さらに、得られたエンドトキシンフリーDNAをエンドトキシンフリー水に溶解させて、エンドトキシンの濃度の測定を行うことにより、他の物質による干渉を解消した。DNAそのものによるエンドトキシンの検出に対する影響を解消するために、測定する前にDNAを一定の濃度まで希釈して干渉を解消する必要がある。
【0060】
エンドトキシンフリーDNAを、エンドトキシンフリー水により、DNAの濃度が0.2mg/mL、0.4mg/mL、0.6mg/mL、0.8mg/mL、1.0mg/mLとなる5つのDNA溶液を調製し、それぞれこの5つの0.5mLのDNA溶液に1EU/mLのエンドトキシン標準品を0.5mL加えて、5つのDNA干渉試験サンプルを得た。前記試薬キットの使用説明に従って干渉試験サンプルを測定し、
図1の検量線によりエンドトキシンの実測値を計算し、試験結果を表3に示した。
【0062】
表3の試験結果から分かるように、DNAの濃度が0.3mg/mLよりも低い場合、計測が干渉されなかった。したがって、次のエンドトキシンの濃度測定の前に、いずれもサンプルをエンドトキシンフリー水により、DNAの濃度が0.3mg/mL未満となるまで希釈した。
【0063】
実施例2.SDS水溶液及び塩化カリウム水溶液による、タンパク質のサンプル中のエンドトキシンの除去
1)実験例1の第三部分により製造された、エンドトキシンを除去したいタンパク質のサンプル(エンドトキシンの濃度が約8000EU/mL)を0.5mL取り、これにドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を加え、均一に混合して最終体積が1mLの混合溶液を得、5min静置した。混合溶液中のドデシル硫酸ナトリウムの最終濃度をそれぞれ1wt%、5wt%、10wt%とした。
【0064】
2)工程1)で得られた混合溶液にそれぞれ3Mの塩化カリウム溶液を0.4mL加え(pH=7.5、3Mはすなわち3mol/Lであり、塩化カリウムの混合溶液中の最終濃度は0.86Mである)、均一に混合した後沈殿のある混合液を得、5min静置した。
【0065】
3)工程2)で得られた沈殿のある混合液を14000rpmで5min遠心分離し、沈殿を除去し、上澄液を得、或いは、孔径0.45μmのPP濾過膜により、4000rpmで遠心濾過し、得られた澄液は、エンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液であった。
【0066】
エンドトキシンの濃度の測定:
工程3)で得られたエンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液を50μL取り、エンドトキシンフリー水により100倍希釈した後、厦門市カブトガニ試薬実験場有限公司提供の発色基質カブトガニ試薬キットの取扱説明書に記載の測定方法に従って、希釈後の、エンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液の吸光度を測定し、得られた吸光度値を実験例1の第一部分により得られた検量線の方程式に代入して計算し、希釈前の、エンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液におけるエンドトキシンの濃度を換算して得た。結果は、それぞれ3.5EU/mg、2.5EU/mg、1.1EU/mgであった。280nmの波長でエンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液におけるタンパク質の濃度を測定したところ、それぞれ91mg/mL(回収率91%)、86mg/mL(回収率86%)、79mg/mL(回収率79%)であった。
【0067】
本実施例の結果から分かるように、工程1)においてアニオン界面活性剤の最終濃度が高いほど、エンドトキシンを除去する効果がよくなり、アニオン界面活性剤とエンドトキシンを除去したいタンパク質のサンプルとを混合した最終濃度が1wt%に達した場合、タンパク質のサンプル中のエンドトキシンの濃度を臨床用薬標準になるように除去することができ(5〜10EU/mg未満(リコンビナントヒト成長ホルモンにおけるエンドトキシンの濃度が5EU/mg未満の必要があり、リコンビナントヒトインスリンにおけるエンドトキシンの濃度が10EU/mg未満の必要がある。『中国薬局方2005版二部』、第495ページ参照。))、かつ、回収率は、基本的にいずれも80%に達することができ、本発明の方法によりタンパク質のサンプル中のエンドトキシンを除去する効果が良好であり、タンパク質の損失が少ない。
【0068】
実施例3.SDS水溶液及び酢酸カリウム水溶液による、タンパク質のサンプル中のエンドトキシンの除去
1)実験例1の第三部分により製造された、エンドトキシンを除去したいタンパク質のサンプル(エンドトキシンの濃度が約8000EU/mL)を0.5mL取り、これに、最終濃度が5wt%となるように10wt%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を0.5mL加え、均一に混合して混合溶液を得た後、5min静置した。
【0069】
2)工程1)で得られた混合溶液に、酢酸カリウムの混合溶液中の最終濃度がそれぞれ0.3M、0.55M、1.1M、1.65Mとなるように、それぞれ3.3Mの酢酸カリウム溶液(pH=7.5)を0.1mL、0.2mL、0.5mL、1mL加え、均一に混合した後沈殿のある混合液を得、5min静置した。
【0070】
3)工程2)で得られた沈殿のある混合液を14000rpmで5min遠心分離し、沈殿を除去し、上澄液を得、或いは、孔径0.45μmのPP濾過膜により、4000rpmで遠心濾過し、得られた澄液は、エンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液であった。
【0071】
エンドトキシンの濃度の測定:
工程3)で得られたエンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液50μLを、エンドトキシンフリー水により100倍希釈した後、厦門市カブトガニ試薬実験場有限公司提供の発色基質カブトガニ試薬キットの取扱説明書に記載の測定方法に従って、希釈後の、エンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液の吸光度を測定し、得られた吸光度値を実験例1の第一部分により得られた検量線の方程式に代入して計算し、希釈前の、エンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液におけるエンドトキシンの濃度を換算して得た。結果、それぞれ1.5EU/mg、1.9EU/mg、1.2EU/mg、1.4EU/mgであり、エンドトキシンが除去されたタンパク質の回収率は、いずれも80%以上に達することができた。
【0072】
本実施例の結果から、沈殿剤であるカリウム塩の濃度変化が、タンパク質のサンプル中のエンドトキシンの除去に影響を与えず、本実施例の条件で、沈殿剤の濃度にかかわらず、完全に沈殿させることができれば、タンパク質のサンプル中のエンドトキシンの濃度を臨床用薬標準まで低減させることができ、このときの沈殿剤の最終濃度が0.3M以上である。かつ、エンドトキシンが除去されたタンパク質の回収率は、いずれも80%以上に達することができたことから、沈殿剤は、最終濃度が0.3M以上の条件で、タンパク質のサンプル中のエンドトキシンに対する除去効果が良好であり、タンパク質の回収率が高い。
【0073】
実施例4.SDC水溶液及び酢酸カリウム水溶液による、タンパク質のサンプル中のエンドトキシンの除去
1)実験例1の第三部分により製造された、エンドトキシンを除去したいタンパク質のサンプル(エンドトキシンの濃度が約500EU/mL)を0.5mL取り、これにデオキシコール酸ナトリウム(SDC)水溶液を加え、均一に混合して最終体積が1mLの混合溶液を得、5min静置し、混合溶液におけるデオキシコール酸ナトリウムの最終濃度を0.1wt%とした。
【0074】
2)工程1)で得られた混合溶液に3Mの酢酸カリウム溶液(pH=7.5)を0.4mL加え、均一に混合した後沈殿のある混合液を得、5min静置した。
【0075】
3)工程2)で得られた沈殿のある混合液を14000rpmで5min遠心分離し、沈殿を除去し、上澄液を得、或いは、孔径0.45μmのPP濾過膜により、4000rpmで遠心濾過し、得られた澄液は、エンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液であった。
【0076】
エンドトキシンの濃度の測定:
工程3)で得られたエンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液50μLを、エンドトキシンフリー水により100倍希釈した後、厦門市カブトガニ試薬実験場有限公司提供の発色基質カブトガニ試薬キットの取扱説明書に記載の測定方法に従って、希釈後の、エンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液の吸光度を測定し、得られた吸光度値を実験例1の第一部分の方法により得られた検量線の方程式に代入して計算し、希釈前の、エンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液におけるエンドトキシンの濃度を換算して得た。結果、それぞれ1.5EU/mgであった。
【0077】
実施例5.SDC水溶液及び酢酸カリウム水溶液による、タンパク質のサンプル中のエンドトキシンの除去
1)実験例1の第三部分により製造された、エンドトキシンを除去したいタンパク質のサンプル(エンドトキシンの濃度が約8000EU/mL)を0.5mL取り、これに、最終濃度が5wt%となるように10wt%のデオキシコール酸ナトリウム(SDC)水溶液を0.5mL加え、均一に混合して混合溶液を得た後、5min静置した。
【0078】
2)工程1)で得られた混合溶液に3Mの酢酸カリウム溶液(pH=7.5)を0.4mL加え、均一に混合した後沈殿のある混合液を得、5min静置した。
【0079】
3)工程2)で得られた沈殿のある混合液を14000rpmで5min遠心分離し、沈殿を除去し、上澄液を得、或いは、孔径0.45μmのPP濾過膜により、4000rpmで遠心濾過し、得られた澄液は、エンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液であった。
【0080】
エンドトキシンの濃度の測定:
工程3)で得られたエンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液50μLを、エンドトキシンフリー水により100倍希釈した後、厦門市カブトガニ試薬実験場有限公司提供の発色基質カブトガニ試薬キットの取扱説明書に記載の測定方法に従って、希釈後の、エンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液の吸光度を測定し、得られた吸光度値を実験例1の第一部分の方法により得られた検量線の方程式に代入して計算し、希釈前の、エンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液におけるエンドトキシンの濃度を換算して得た。結果は、それぞれ1.5EU/mgであった。
【0081】
実施例2と本実施例から、SDSとSDCは、タンパク質のサンプル中のエンドトキシンを除去する効果が同等であり、顕著な差がなかった。
【0082】
実施例6.SDS固体及び塩化カリウム固体による、タンパク質のサンプル中のエンドトキシンの除去
1)実験例1の第三部分により製造された、エンドトキシンを除去したいタンパク質のサンプル(エンドトキシンの濃度が約8000EU/mL)を0.5mL取り、これにドデシル硫酸ナトリウム固体(SDS)を0.3g加え、45℃に加熱した後10min保温し、室温に冷却するとSDS固体の析出が認められた、混合溶液を得た後、5min静置した。
【0083】
2)工程1)で得られた混合溶液に塩化カリウム固体を0.3g加え、十分に混合して塩化カリウム固体を十分に溶解させ、沈殿のある混合液を得(沈殿に塩化カリウム固体が含まれる)、5min静置した。
【0084】
3)工程2)で得られた沈殿のある混合液を14000rpmで5min遠心分離し、沈殿を除去し、上澄液を得、或いは、孔径0.45μmのPP濾過膜により、4000rpmで遠心濾過し、得られた澄液は、エンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液であった。
【0085】
エンドトキシンの濃度の測定:
工程3)で得られたエンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液50μLを、エンドトキシンフリー水により100倍希釈した後、厦門市カブトガニ試薬実験場有限公司提供の発色基質カブトガニ試薬キットの取扱説明書に記載の測定方法に従って、希釈後の、エンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液の吸光度を測定し、得られた吸光度値を実験例1の第一部分の方法により得られた検量線の方程式に代入して計算し、希釈前の、エンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液におけるエンドトキシンの濃度を換算して得た。結果は、それぞれ1.2EU/mgであった。
【0086】
本実施例から、工程1)で固体SDSを用いることによりSDSの最終濃度が飽和に達し、工程2)で固体カリウム塩を用いることによりカリウム塩の最終濃度も飽和に達した場合には、同様にエンドトキシンを効果的に除去でき、かつ、効果がSDS水溶液、カリウム塩の水溶液による効果と同等であり、顕著な差がなかった。また、固体SDSを用いた場合、SDSの最終濃度が飽和に達するか否か、またカリウム塩が固体であるか水溶液であるかどうかは、エンドトキシンの除去効果に影響を与えない。同様に、固体カリウム塩を用いる場合、カリウム塩の最終濃度が飽和に達するか否か、またSDSが固体であるか水溶液であるかも、エンドトキシンの除去効果に影響を与えない。
【0087】
以上をまとめると、タンパク質のサンプルに対しては、アニオン界面活性剤とエンドトキシンを除去したいタンパク質のサンプルを混合したときの最終濃度が0.1wt%以上であり、カリウム塩と工程1)で得られた混合溶液とを沈殿が生じなくなるまで混合するようにすれば、タンパク質のサンプル中のエンドトキシンの濃度を臨床用薬標準に達するようにすることができ(5〜10EU/mg未満(リコンビナントヒト成長ホルモンにおけるエンドトキシンの濃度が5EU/mg未満の必要があり、リコンビナントヒトインスリンにおけるエンドトキシンの濃度が10EU/mg未満の必要がある。中国薬局方2005版二部、第495ページ参照))、アニオン界面活性剤又はカリウム塩の種類は、除去効果に影響を与えない。特に、沈殿剤であるカリウム塩の最終濃度の変化は、タンパク質のサンプル中のエンドトキシンの除去に影響を与えず、完全に沈殿させることができればタンパク質のサンプル中のエンドトキシンの濃度を臨床用薬標準まで低減させることができる。他の種類のアニオン界面活性剤及び他の種類のカリウム塩の実験結果もこの結果に類似するため、すべての列挙を控える。
【0088】
実施例7.エンドトキシンを除去した後のタンパク質の分離
工程3)で得られたエンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液を、通常の沈殿法又は透析法によりタンパク質を分離して(例えば、『生物工程学報』第20巻第6期、第943〜947ページ、疎水クロマトグラフィーと冷アルコールとの組合せによるヒト血清アルブミンの沈殿精製において言及された方法)、エンドトキシンが除去されたタンパク質、又はエンドトキシンフリータンパク質と呼ばれるものを得ることができる。
【0089】
実施例8.SDS水溶液及び酢酸カリウム水溶液による、DNAのサンプル中のエンドトキシンの除去
1)実験例1の第三部分により製造された、エンドトキシンを除去したいDNAのサンプル(DNAの濃度が1mg/mL、エンドトキシンの濃度が約8000EU/mL)を0.5mL取り、これにドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を加え、均一に混合して最終体積が1mLの混合溶液を得、5min静置した。混合溶液中のドデシル硫酸ナトリウム水溶液の最終濃度をそれぞれ1wt%、5wt%、10wt%とした。
【0090】
2)工程1)で得られた各混合溶液にそれぞれ3Mの酢酸カリウム溶液(pH=5、酢酸カリウムの混合溶液中の最終濃度が0.69Mである)を0.3mL加え、均一に混合した後沈殿のある混合液を得、5min静置した。
【0091】
3)工程2)で得られた沈殿のある混合液を14000rpmで5min遠心分離し、沈殿を除去し、上澄液を得、或いは、孔径0.45μmのPP濾過膜により、4000rpmで遠心濾過し、得られた澄液は、エンドトキシンが除去されたDNAのサンプル溶液であった。
【0092】
エンドトキシンを除去した後のDNAの分離:
工程3)で得られたエンドトキシンが除去されたDNAのサンプル溶液に等しい体積のイソプロパノールを加え、均一に混合した後室温で30min静置し、その後、14000rpmで10min遠心分離し、上澄液を除去し、沈殿を適量の70%エタノールにより洗浄し、さらに14000rpmで10min遠心分離し、上澄液を除去し、沈殿は洗浄と遠心分離を一回繰り返した後、エタノールを乾燥させ、エンドトキシンが除去されたDNA、又はエンドトキシンフリーDNAと呼ばれるものを得た。
【0093】
エンドトキシンの濃度の測定:
DNAの濃度が0.3mg/mL未満となるまで、エンドトキシンフリーDNAをエンドトキシンフリー水に溶解させた。その後、厦門市カブトガニ試薬実験場有限公司提供の発色基質カブトガニ試薬キットの取扱説明書に記載の測定方法に従って、エンドトキシンフリーDNAの吸光度を測定し、得られた吸光度値を実験例1の第一部分により得られた検量線の方程式に代入して、エンドトキシンフリーDNAにおけるエンドトキシンの濃度を計算して得た。結果は、それぞれ4.3EU/mg、2.1EU/mg、1.1EU/mgであった。260nmの波長でDNAの濃度を測定したところ、それぞれ0.87mg/mL(回収率87%)、0.82mg/mL(回収率82%)、0.77mg/mL(回収率77%)であった。
【0094】
本実施例の結果から、タンパク質の結果に類似し、バイオ製品がDNAである場合、工程1)においてアニオン界面活性剤の最終濃度が高いほど、エンドトキシンを除去する効果がよくなり、アニオン界面活性剤とエンドトキシンを除去したいDNAのサンプルを混合した最終濃度が1wt%に達した場合、DNAのサンプル中のエンドトキシンの濃度を臨床用薬標準に満たすようにすることができる(中国国家食品薬品監督管理総局2003年3月20日発行、『予防用DNAワクチンの臨床前研究技術指導原則』参照。第五部分の9.発熱原実験より、主に製品における発熱原物質の有無を検出し、カブトガニ試薬により細菌のエンドトキシンを検出することができ、エンドトキシンの含有量が10EU/mg以下であることが要求される。)、かつ、DNAの回収率がいずれも75%以上であることから、本方法によるDNA中のエンドトキシンを除去する効果が良好であり、DNAの回収率が高い。
【0095】
実施例9.SDC水溶液及び酢酸カリウム水溶液による、DNAのサンプル中のエンドトキシンの除去
1)実験例1の第三部分により製造された、エンドトキシンを除去したいDNAのサンプル(DNAの濃度が1mg/mL、エンドトキシンの濃度が約8000EU/mL)を0.5mL取り、これに、最終濃度が5wt%となるように10wt%のデオキシコール酸ナトリウム(SDC)水溶液を0.5mL加え、均一に混合して混合溶液を得た後、5min静置した。
【0096】
2)工程1)で得られた混合溶液に、酢酸カリウムの混合溶液中の最終濃度がそれぞれ0.3M、0.55M、1.1M、1.65Mとなるように、それぞれ3.3Mの酢酸カリウム溶液(pH=5)を0.1mL、0.2mL、0.5mL、1mL加え、均一に混合した後沈殿のある混合液を得、5min静置した。
【0097】
3)工程2)で得られた沈殿のある混合液を14000rpmで5min遠心分離し、沈殿を除去し、上澄液を得、或いは、孔径0.45μmのPP濾過膜により、4000rpmで遠心濾過し、得られた澄液は、エンドトキシンが除去されたDNAのサンプル溶液であった。
【0098】
エンドトキシンを除去した後のDNAの分離:
工程3)で得られたエンドトキシンが除去されたDNAのサンプル溶液に等しい体積のイソプロパノールを加え、均一に混合した後室温で30min静置し、その後、14000rpmで10min遠心分離し、上澄液を除去し、沈殿を適量の70%エタノールにより洗浄し、さらに14000rpmで10min遠心分離し、上澄液を除去し、沈殿は洗浄と遠心分離を一回繰り返した後、エタノールを乾燥させ、エンドトキシンが除去されたDNA、又はエンドトキシンフリーDNAと呼ばれるものを得た。
【0099】
エンドトキシンの濃度の測定:
DNAの濃度が0.3mg/Ml未満となるまで、エンドトキシンフリーDNAをエンドトキシンフリー水に溶解させた。その後、厦門市カブトガニ試薬実験場有限公司提供の発色基質カブトガニ試薬キットの取扱説明書に記載の測定方法に従って、エンドトキシンフリーDNAのサンプルの吸光度を測定し、得られた吸光度値を実験例1の第一部分により得られた検量線の方程式に代入して、エンドトキシンフリーDNAにおけるエンドトキシンの濃度を計算して得た。結果は、それぞれ1.2EU/mg、1.5EU/mg、1.8EU/mg、1.4EU/mgであった。
【0100】
本実施例の結果から、沈殿剤であるカリウム塩の濃度変化が、DNAのサンプル中のエンドトキシンの除去に影響を与えないことが示された。本実施例の条件で、沈殿剤の濃度にかかわらず、完全に沈殿させることができればDNAのサンプル中のエンドトキシンの濃度を臨床用薬標準まで低減させることができ、このときの沈殿剤の最終濃度が0.3M以上であった。かつ、エンドトキシンを除去した後DNAの回収率がいずれも75%以上に達することができたことから、沈殿剤の最終濃度が0.3M以上の条件で、DNAのサンプル中のエンドトキシンに対する除去効果が良好であり、DNAの回収率が高い。
【0101】
実施例10.SDS水溶液及び酢酸カリウム水溶液による、DNAのサンプル中のエンドトキシンの除去
1)実験例1の第三部分により製造された、エンドトキシンを除去したいDNAのサンプル(DNAの濃度が1mg/mL、エンドトキシンの濃度が約500EU/mL)を0.5mL取り、これにドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を加え、均一に混合して最終体積が1mLの混合溶液を得、5min静置した。混合溶液中のドデシル硫酸ナトリウム水溶液の最終濃度を0.1wt%とした。
【0102】
2)工程1)で得られた各混合溶液にそれぞれ3Mの酢酸カリウム溶液(pH=5、酢酸カリウムの混合溶液中の最終濃度が0.69Mである)を0.3mL加え、均一に混合した後沈殿のある混合液を得、5min静置した。
【0103】
3)工程2)で得られた沈殿のある混合液を14000rpmで5min遠心分離し、沈殿を除去し、上澄液を得、或いは、孔径0.45μmのPP濾過膜により、4000rpmで遠心濾過し、得られた澄液は、エンドトキシンが除去されたDNAのサンプル溶液であった。
【0104】
エンドトキシンの濃度の測定:
DNAの濃度が0.3mg/mL未満となるまで、エンドトキシンフリーDNAをエンドトキシンフリー水に溶解させた。その後、厦門市カブトガニ試薬実験場有限公司提供の発色基質カブトガニ試薬キットの取扱説明書に記載の測定方法に従って、エンドトキシンフリーDNAのサンプルの吸光度を測定し、得られた吸光度値を実験例1の第一部分により得られた検量線の方程式に代入して、エンドトキシンフリーDNAにおけるエンドトキシンの濃度を計算して得た。結果は2EU/mgであった。
【0105】
実施例11.SDS水溶液及び塩化カリウム水溶液による、DNAのサンプル中のエンドトキシンの除去
1)実験例1の第三部分により製造された、エンドトキシンを除去したいDNAのサンプル(DNAの濃度が1mg/mL、エンドトキシンの濃度が約8000EU/mL)を0.5mL取り、これに10wt%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を加え、均一に混合して最終体積が1mLの混合溶液を得、5min静置した。混合溶液中のドデシル硫酸ナトリウムの最終濃度を1wt%とした(ドデシル硫酸ナトリウム水溶液の体積が不十分の場合、水で1mLまで補充した)。
【0106】
2)工程1)で得られた混合溶液に、塩化カリウムの混合溶液中の最終濃度が0.5Mとなるように3Mの塩化カリウム溶液(10mMでTris-HClを含む溶液から調整されたもの、pH=7.5)を0.2mL加え、均一に混合した後沈殿のある混合液を得、5min静置した。
【0107】
3)工程2)で得られた沈殿のある混合液を14000rpmで5min遠心分離し、沈殿を除去し、上澄液を得、或いは、孔径0.45μmのPP濾過膜により、4000rpmで遠心濾過し、得られた澄液は、エンドトキシンが除去されたDNAのサンプル溶液であった。
【0108】
エンドトキシンを除去した後のDNAの分離:
工程3)で得られたエンドトキシンが除去されたDNAのサンプル溶液に等しい体積のイソプロパノールを加え、均一に混合した後室温で30min静置し、その後、14000rpmで10min遠心分離し、上澄液を除去し、沈殿を適量の70%エタノールにより洗浄し、さらに14000rpmで10min遠心分離し、上澄液を除去し、沈殿は洗浄と遠心分離を一回繰り返した後、エタノールを乾燥させ、エンドトキシンが除去されたDNA、又はエンドトキシンフリーDNAと呼ばれるものを得た。
【0109】
エンドトキシンの濃度の測定:
DNAの濃度が0.3mg/mL未満となるまで、エンドトキシンフリーDNAをエンドトキシンフリー水に溶解させた。その後、厦門市カブトガニ試薬実験場有限公司提供の発色基質カブトガニ試薬キットの取扱説明書に記載の測定方法に従って、エンドトキシンフリーDNAのサンプルの吸光度を測定し、得られた吸光度値を実験例1の第一部分により得られた検量線の方程式に代入して、エンドトキシンフリーDNAにおけるエンドトキシンの濃度を計算して得た。結果は1.9EU/mgであった。
【0110】
実施例6と本実施例から、沈殿剤である、塩化カリウムと酢酸カリウムは、DNAのサンプル中のエンドトキシンを除去する効果が同等であり、顕著な差がなかったことがわかった。
【0111】
実施例12.SDC水溶液及び酢酸カリウム水溶液による、DNAのサンプル中のエンドトキシンの除去
1)実験例1の第三部分により製造された、エンドトキシンを除去したいDNAのサンプル(DNAの濃度が1mg/mL、エンドトキシンの濃度が約8000EU/mL)を0.5mL取り、これに、最終濃度が5wt%となるように10wt%のデオキシコール酸ナトリウム(SDC)水溶液を0.5mL加え、均一に混合して混合溶液を得た後、5min静置した。
【0112】
2)工程1)で得られた混合溶液に、酢酸カリウムの混合溶液中の最終濃度が0.86Mとなるように、3Mの酢酸カリウム溶液(pH=5)を0.4mL加え、均一に混合した後沈殿のある混合液を得、5min静置した。
【0113】
3)工程2)で得られた沈殿のある混合液を14000rpmで5min遠心分離し、沈殿を除去し、上澄液を得、或いは、孔径0.45μmのPP濾過膜により、4000rpmで遠心濾過し、得られた澄液は、エンドトキシンが除去されたDNAのサンプル溶液であった。
【0114】
エンドトキシンを除去した後のDNAの分離:
工程3)で得られたエンドトキシンが除去されたDNAのサンプル溶液に等しい体積のイソプロパノールを加え、均一に混合した後室温で30min静置し、その後、14000rpmで10min遠心分離し、上澄液を除去し、沈殿を適量の70%エタノールにより洗浄し、さらに14000rpmで10min遠心分離し、上澄液を除去し、沈殿は洗浄と遠心分離を一回繰り返した後、エタノールを乾燥させ、エンドトキシンが除去されたDNA、又はエンドトキシンフリーDNAと呼ばれるものを得た。
【0115】
エンドトキシンの濃度の測定:
DNAの濃度が0.3mg/mL未満となるまで、エンドトキシンフリーDNAをエンドトキシンフリー水に溶解させた。その後、厦門市カブトガニ試薬実験場有限公司提供の発色基質カブトガニ試薬キットの取扱説明書に記載の測定方法に従って、エンドトキシンフリーDNAのサンプルの吸光度を測定し、得られた吸光度値を実験例1の第一部分により得られた検量線の方程式に代入して、エンドトキシンフリーDNAにおけるエンドトキシンの濃度を計算して得た。結果は1.2EU/mgであった。
【0116】
実施例5と本実施例から、SDSとSDCは、DNAのサンプル中のエンドトキシンを除去する効果が同等であり、顕著な差がなかったことがわかった。
【0117】
実施例13.SDS固体及び塩化カリウム固体による、DNAのサンプル中のエンドトキシンの除去
1)実験例1の第三部分により製造された、エンドトキシンを除去したいDNAのサンプル(DNAの濃度が1mg/mL、エンドトキシンの濃度が約8000EU/mL)を0.5mL取り、これにドデシル硫酸ナトリウム固体(SDS)を0.3g加え、45℃に加熱した後10min保温し、室温に冷却してSDS固体の析出が認められ、混合溶液を得た後、5min静置した。
【0118】
2)工程1)で得られた混合溶液に塩化カリウム固体を0.3g加え、十分に混合して塩化カリウム固体を十分に溶解させ、沈殿のある混合液を得(沈殿には、溶解していない塩化カリウム固体が含まれる)、5min静置した。
【0119】
3)工程2)で得られた沈殿のある混合液を14000rpmで5min遠心分離し、沈殿を除去し、上澄液を得、或いは、孔径0.45μmのPP濾過膜により、4000rpmで遠心濾過し、得られた澄液は、エンドトキシンが除去されたDNAのサンプル溶液であった。
【0120】
エンドトキシンを除去した後のDNAの分離:
工程3)で得られたエンドトキシンが除去されたDNAのサンプル溶液に等しい体積のイソプロパノールを加え、均一に混合した後室温で30min静置し、その後、14000rpmで10min遠心分離し、上澄液を除去し、沈殿を適量の70%エタノールにより洗浄し、さらに14000rpmで10min遠心分離し、上澄液を除去し、沈殿は洗浄と遠心分離を一回繰り返した後、エタノールを乾燥させ、エンドトキシンが除去されたDNA、又はエンドトキシンフリーDNAと呼ばれるものを得た。
【0121】
エンドトキシンの濃度の測定:
DNAの濃度が0.3mg/mL未満となるまで、エンドトキシンフリーDNAをエンドトキシンフリー水に溶解させた。その後、厦門市カブトガニ試薬実験場有限公司提供の発色基質カブトガニ試薬キットの取扱説明書に記載の測定方法に従って、エンドトキシンフリーDNAのサンプルの吸光度を測定し、得られた吸光度値を実験例1の第一部分により得られた検量線の方程式に代入して、エンドトキシンフリーDNAにおけるエンドトキシンの濃度を計算して得た。結果は1.1EU/mgであった。
【0122】
本実施例から、工程1)で固体SDSを用いることによりSDSの最終濃度が飽和に達し、工程2)で固体カリウム塩を用いることによりカリウム塩の最終濃度も飽和に達した場合には、同様にエンドトキシンを効果的に除去でき、かつ効果がSDS水溶液、カリウム塩の水溶液による効果と同等であり、顕著な差がなかったことがわかった。また、固体SDSを用いる場合、SDSの最終濃度が飽和に達するか否か、またカリウム塩は固体か水溶液かは、エンドトキシンの除去効果に影響を与えない。同様に、固体カリウム塩を用いる場合、カリウム塩の最終濃度が飽和に達するか否か、またSDSが固体か水溶液かは、エンドトキシンの除去効果に影響を与えない。
【0123】
以上をまとめると、DNAのサンプルに対しては、アニオン界面活性剤とエンドトキシンを除去したいDNAのサンプルを混合したときの最終濃度が0.1wt%以上であり、カリウム塩と工程1)で得られた混合溶液とを沈殿が生じなくなるまで混合するようにすれば、DNAのサンプル中のエンドトキシンの濃度を臨床用薬標準に満たすようにすることができる(中国国家食品薬品監督管理総局2003年3月20日発行、『予防用DNAワクチンの臨床前研究技術指導原則』参照。第五部分の9.発熱原実験より、主に製品における発熱原物質の有無を検出し、カブトガニ試薬により細菌のエンドトキシンを検出することができ、エンドトキシンの含有量が10EU/mg以下であることが要求される)。アニオン界面活性剤又はカリウム塩の種類は、除去効果に影響を与えない。特に沈殿剤であるカリウム塩の最終濃度の変化は、DNAのサンプル中のエンドトキシンの除去に影響を与えることがなく、完全に沈殿させることができればDNAのサンプル中のエンドトキシンの濃度を臨床用薬標準まで低減させることができる。他の種類のアニオン界面活性剤及び他の種類のカリウム塩の実験結果は、この結果に類似するため、すべての列挙を控える。
【0124】
RNAは、性質がDNAの性質に類似しているので、前記方法によりエンドトキシンを除去することもできる。
【0125】
実験例3.異なるバイオ製品の濃度のサンプルによる、エンドトキシンの除去効果に対する影響
バイオ製品のサンプルにおいて、バイオ製品濃度がエンドトキシンの除去に与える影響具合を比較するために、実験例1及び実施例1の方法に従ってバイオ製品のサンプル中のエンドトキシンを除去する実験を複数平行して行い、ここで、バイオ製品のサンプル中のバイオ製品のみが異なる(例えば、バイオ製品がヒト血清アルブミンであれば、バイオ製品のサンプルはタンパク質のサンプルであり、バイオ製品がDNAであれば、バイオ製品のサンプルはDNAのサンプルである)、実験結果を表4及び表5に示した(エンドトキシンの除去前の濃度とエンドトキシンの除去後の濃度は、それぞれ、エンドトキシンを除去する前と除去した後のバイオ製品のサンプル中のエンドトキシンの濃度を指し、希釈されたものは、既に希釈前の濃度に換算している)。
【0126】
実施例1の工程1)において、アニオン界面活性剤としてSDSを選択し、最終濃度は5wt%であって、工程2)においては、カリウム塩として酢酸カリウムを選択し、最終濃度は0.7Mであった。
【0127】
DNAのサンプルの回収率は、エンドトキシンが除去されたDNAのサンプル溶液を従来技術の方法によりDNAを溶液から分離抽出し、その重量を秤量して、エンドトキシンを除去したいDNAのサンプルに加えられたDNAの重量と比較することにより得られた。タンパク質のサンプルの回収率は、エンドトキシンが除去されたタンパク質のサンプル溶液を紫外分光光度計により280nmで溶液におけるタンパク質の濃度を測定して、エンドトキシンを除去したいタンパク質のサンプルにおけるタンパク質の濃度と比較することにより得られた。
【0130】
表4及び表5のデータから分かるように、DNA又はタンパク質の濃度は、エンドトキシンの除去に影響を与えることがなく、すなわち、エンドトキシンを除去したいバイオ製品のサンプル中のバイオ製品の濃度が高くても低くても、本発明の方法によりエンドトキシンを効果的に除去して、エンドトキシンの濃度が臨床用薬標準に達するようにすることができ、かつバイオ製品の損失が少ない。したがって、本発明の方法によりバイオ製品におけるエンドトキシンを除去する過程において、適用されるバイオ製品の濃度範囲が広い。
【0131】
1.蔡慧麗、バイオ技術薬品分離精製過程におけるエンドトキシンの除去 Strait Pharmaceutical Journal 18(2), 2006, P157〜9。
【0132】
2.Magalhaes PO, Methods of endotoxin removal from biological preparations:a review., J Pharm Pharm Sci. 2007 10(3):388〜404
3.Daneshian M, Guenther A, Wendel A, Hartung T, Von Aulock S. In vitro pyrogen test for toxic or immunomodulatory drugs. Journal of Immunological Methods 313:169〜175.
4.Matt Cotten, et al, lipopolysaccharide is a frequent contaminant of plasmid DNA preparations and can be toxic to primary human cells in the presence of adenovirus. Gene Therapy 1(4), 1994、239〜45.
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明により提供される試薬キットは、バイオ製品中のエンドトキシンを簡便で速やかに除去でき;エンドトキシンを除去する方法は、取扱が容易であり、コストが低く、エンドトキシンの除去効果が従来の方法よりも顕著に優れ、バイオ製品のバイオ活性に影響を与えることがなく;本発明の方法により製造されたバイオ製品は、そのエンドトキシンの濃度が臨床用薬基準を満たしており、活物質の損失が少なく、産業上の適用に好ましい。
【手続補正書】
【提出日】2017年5月31日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ製品中の細菌エンドトキシンを除去する方法であって、エンドトキシンを含むバイオ製品とアニオン界面活性剤溶液とを混合し、得られた混合溶液を静置して、カリウム塩又はカリウム塩溶液を加えてアニオン界面活性剤を沈殿させ、静置後に遠心分離又は濾過して、細菌エンドトキシンが除去されたバイオ製品溶液を得る工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記アニオン界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、sec-アルキル硫酸ナトリウム、脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテル硫酸エステルナトリウム、オレイルアルコール硫酸ナトリウム、N-オレオイルポリペプチドナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、α-スルホモノカルボン酸エステル、スルホ脂肪酸アルキルエステル、コハク酸エステルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、石油スルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム及びアルキルグリセリルエーテルスルホン酸ナトリウムのうちの1種又はそれ以上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カリウム塩が、塩化カリウム、酢酸カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸カリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム及び硝酸カリウムのうちの1種又はそれ以上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アニオン界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム及び/又はデオキシコール酸ナトリウムであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記カリウム塩は酢酸カリウム及び/又は塩化カリウムであり、前記カリウム塩溶液は酢酸カリウム溶液及び/又は塩化カリウム溶液であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記混合溶液における前記アニオン界面活性剤の濃度が0.1wt%以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記混合溶液における前記アニオン界面活性剤の濃度は0.1wt%〜10wt%であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
カリウム塩が加えられた溶液において、前記カリウム塩の濃度は前記アニオン界面活性剤を充分に沈殿させる濃度以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記アニオン界面活性剤がドデシル硫酸ナトリウムである場合、前記カリウム塩の濃度は0.3M以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記混合溶液における前記アニオン界面活性剤の濃度は前記エンドトキシンの濃度よりも高いことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記バイオ製品はタンパク質又は核酸であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の、バイオ製品中の細菌エンドトキシンを除去する方法により、細菌エンドトキシンが除去されたバイオ製品溶液を得、前記バイオ製品を、エンドトキシンが除去されたバイオ製品溶液から分離して、エンドトキシンフリーバイオ製品を得ることを特徴とするエンドトキシンフリーバイオ製品の製造方法。
【請求項13】
前記バイオ製品がタンパク質であって、
1)エンドトキシンを含むタンパク質にアニオン界面活性剤溶液を加え、アニオン界面活性剤の最終濃度が0.1wt%以上となるまで混合し、得られた混合溶液を5min静置する工程と、
2)工程1)で得られた混合溶液に、沈殿が生じなくなるまでカリウム塩又はカリウム塩溶液を加えて、沈殿のある混合液を得、5min静置する工程と、
3)工程2)で得られた沈殿のある混合液を14000rpmで5min遠心分離して、エンドトキシンが除去されたタンパク質溶液である上澄液を得る、或いは、4000rpmで遠心濾過し、エンドトキシンが除去されたタンパク質溶液である澄液を得る工程と、
4)沈殿法又は透析法により、タンパク質を工程3)で得られたエンドトキシンが除去されたタンパク質溶液から分離して、エンドトキシンフリータンパク質を得る工程と、を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記バイオ製品がDNAであって、
1)エンドトキシンを含むDNAにアニオン界面活性剤溶液を加え、アニオン界面活性剤の最終濃度が0.1wt%以上となるまで混合し、得られた混合溶液を5min静置する工程と、
2)工程1)で得られた混合溶液に、沈殿が生じなくなるまでカリウム塩又はカリウム塩溶液を加えて、沈殿のある混合液を得、5min静置する工程と、
3)工程2)で得られた沈殿のある混合液を14000rpmで5min遠心分離して、エンドトキシンが除去されたDNA溶液である上澄液を得る、或いは、4000rpmで遠心濾過し、エンドトキシンが除去されたDNA溶液である澄液を得る工程と、
4)工程3)で得られたエンドトキシンが除去されたDNA溶液に等しい体積のイソプロパノールを加え混合した後、室温で30min静置した後、14000rpmで10min遠心分離し、沈殿を70%エタノールで洗浄し、さらに14000rpmで10min遠心分離し、沈殿は一回洗浄及び遠心分離した後、エタノールを乾燥させ、エンドトキシンフリーDNAを得る工程と、を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0110
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0110】
実施例
10と本実施例から、沈殿剤である、塩化カリウムと酢酸カリウムは、DNAのサンプル中のエンドトキシンを除去する効果が同等であり、顕著な差がなかったことがわかった。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0116
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0116】
実施例
11と本実施例から、SDSとSDCは、DNAのサンプル中のエンドトキシンを除去する効果が同等であり、顕著な差がなかったことがわかった。
【国際調査報告】