特表2017-529540(P2017-529540A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-529540(P2017-529540A)
(43)【公表日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】位相変調定常波混合装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20170908BHJP
【FI】
   G01N35/02 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-516352(P2017-516352)
(86)(22)【出願日】2015年9月16日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月16日
(86)【国際出願番号】US2015050492
(87)【国際公開番号】WO2016048760
(87)【国際公開日】20160331
(31)【優先権主張番号】62/056,194
(32)【優先日】2014年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】507269175
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS HEALTHCARE DIAGNOSTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】クルフカ、シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ハダッド、アントアーヌ
(72)【発明者】
【氏名】テイラー、 ジェフリー
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058FA01
2G058FB00
(57)【要約】
自動化分析器において成分の混合を行うのに適した混合装置を開示する。この混合装置は、結合液を収容するように構成された貯液槽と、所定の周波数で駆動され、この駆動が前記結合液へ伝播するように構成されたトランスデューサと、位相変調すべき駆動信号を前記トランスデューサへ供給するように構成された信号発生ユニットと、を備える。一実施形態によれば、患者検体と試薬の混合が改良される。他の態様としてシステム及び方法も提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合液を収容するように構成された貯液槽と、
所定の周波数で駆動され、この駆動が前記結合液へ伝播するように構成されたトランスデューサと、
位相変調すべき駆動信号を前記トランスデューサへ供給するように構成された信号発生ユニットと、
を備えた音波混合装置。
【請求項2】
搬送部から前記貯液槽へ入れられる反応容器をさらに備える、請求項1に記載の音波混合装置。
【請求項3】
前記貯液槽が環状凹部を含む、請求項1に記載の音波混合装置。
【請求項4】
前記信号発生ユニットは、ほぼ前記トランスデューサの共振周波数で駆動されるように構成される、請求項1に記載の音波混合装置。
【請求項5】
前記信号発生ユニットは、1つ以上の発振器を含む、請求項1に記載の音波混合装置。
【請求項6】
前記信号発生ユニットは、第1の位相角と第2の位相角との間で前記位相変調すべき駆動信号の位相を変調し、前記第2の位相角は前記第1の位相角とは異なる、請求項1に記載の音波混合装置。
【請求項7】
前記信号発生ユニットは、約200KHzと約4MHzとの間で動作可能な発振器を含む、請求項1に記載の音波混合装置。
【請求項8】
前記信号発生ユニットは、約0度と約180度との間で前記位相変調すべき駆動信号の位相を調節するように構成される、請求項1に記載の音波混合装置。
【請求項9】
前記信号発生ユニットは、変調信号を発生するように構成された波形発生器を有する位相変調回路を含む、請求項1に記載の音波混合装置。
【請求項10】
前記位相変調回路は、アナログマルチプレクサを含む、請求項9に記載の音波混合装置。
【請求項11】
前記信号発生ユニットは、ローパスフィルタを含む、請求項1に記載の音波混合装置。
【請求項12】
混合する成分が患者検体と試薬である、請求項1に記載の音波混合装置。
【請求項13】
分析装置に組み込まれた請求項1に記載の音波混合装置。
【請求項14】
成分を混合する方法であって、
混合する成分を入れた反応容器を準備し、
トランスデューサに駆動信号を供給して設定周波数の振動を生成することによって前記反応容器内に定常波を生成し、
前記駆動信号を位相変調して前記定常波を変動させ、前記成分の混合を促進する、ことを含む方法。
【請求項15】
結合液を収容した貯液槽に、搬送部から前記反応容器を入れることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記駆動信号が約200KHzと約4MHzとの間である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記位相変調は、第1の位相角と第2の位相角との間で変調することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の位相角と第2の位相角との間の変調は、約1Hz〜約50Hzの変調周波数で繰り返し行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記混合する成分が患者検体と試薬である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
結合液を収容するように構成された環状貯液槽と、
所定の周波数で駆動され、この駆動が前記結合液に伝播するように構成されたトランスデューサと、
混合する成分の入った反応容器を前記結合液に入れるように構成された搬送部と、
位相変調すべき駆動信号を前記トランスデューサへ供給し、変動する定常波を前記反応容器の少なくとも1つにおいて前記混合する成分に生成するように構成された信号発生ユニットと、
を備えた分析装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2014年9月26日出願の米国仮出願62/056,194、発明の名称「PHASE-MODULATED STANDING WAVE MIXING APPARATUS AND METHODS」の優先権を主張する。この出願の開示事項は本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、概して、液体どうし、あるいは液体と固体の化合など、各種成分を混合するのに適した方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
自動化臨床化学検査方法の実施において、液体検体(例えば患者検体)及び試薬、さらに場合によっては他の処理流体の化合が行われる。従来では、液体検体(例えば患者検体)、1つ以上の処理流体(例えば精製水)、及び試薬は、自動化臨床分析器において、プローブ(他にもピペットと呼ばれる)を使用するなどして反応容器(例えばキュベット)へ、吸引して分配される。患者検体内の分析物又は他の成分の存在を検査するために使用される臨床分析機器の中には、患者検体と試薬を混合するのが良いものもある。混合後、各種の後続処理過程が自動化臨床分析器で実行され、目的とする分析物(例えば核酸)が分離、定量化される。これら処理過程においてさらに混合操作が必要な場合もある。このような処理の一環として、均質な混合物を得るために迅速且つ徹底的な混合が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の混合方法には超音波混合があり、この方法では超音波成分の周波数が変調される。しかし、これら方法で、ある程度満足のいく混合は得られるけれども、システムが複雑で高価になる。
【0005】
したがって、成分混合を向上させ得る方法及びシステムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の態様により、混合装置が提案される。この混合装置は、結合液を収容するように構成された貯液槽と、所定の周波数で駆動されこの駆動が前記結合液に伝播するように構成されたトランスデューサと、該トランスデューサへ位相変調すべき駆動信号を供給するように構成された信号発生ユニットと、を含む。
【0007】
別の態様により、成分混合方法が提案される。この方法は、混合する成分を入れた反応容器を準備し、トランスデューサに駆動信号を供給して設定周波数の振動を生成することによって前記反応容器内に定常波を生成し、前記駆動信号を位相変調して前記定常波を変動させ前記成分の混合を促進すること、を含む。
【0008】
別の態様において、分析装置が提案される。この分析装置は、結合液を収容するように構成された環状貯液槽と、所定の周波数で駆動されこの駆動が前記結合液に伝播するように構成されたトランスデューサと、混合する成分の入った反応容器を前記結合液内へ入れるように構成された搬送部と、位相変調すべき駆動信号を前記トランスデューサへ供給して変動する定常波を前記反応容器の少なくとも1つにおいて前記混合する成分に生成するように構成された信号発生ユニットと、を含む。
【0009】
本発明に関する上記以外の態様、特徴、及び利点は、本発明を実施する上で考えられる最適例を含む実施形態及び実施例を複数示して以下に述べる詳細な説明から、容易に明らかとなる。本発明は、他の異なる実施形態も可能であるし、本発明の範囲を逸脱することなく種々の点でその細部に変更を加え得る。すなわち、図面及び説明は、本質的に例示であると見なされるべきであって、限定とみなされるべきではない。図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれてはいない。本発明は、発明の範囲に入る全ての変形、等価、代替の態様に及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る混合装置の要部を断面とした側面図。
図2】実施形態に係る、混合装置を含んだ吸引分配装置の平面図。
図3A】実施形態に係る、位相変調すべき駆動信号を発生するように構成された信号発生ユニットのブロック図。
図3B】実施形態に係る、位相変調すべき駆動信号を発生するように構成された信号発生ユニットから出力される駆動信号のグラフ。
図3C】実施形態に係る位相変調回路のブロック図。
図3D】実施形態に係る別の位相変調回路のブロック図。
図3E】実施形態に係る信号発生ユニットのデジタル式形態のブロック図。
図4A】実施形態に係る、定常波が起き始めた反応容器の要部断面図。
図4B】実施形態に係る、定常波が生じている反応容器の要部断面図。
図5】実施形態に係る成分混合方法を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
少なくとも前述の理由から、臨床分析物検査又は分析において成分混合、とりわけ1つ以上の試薬と患者検体の混合、の改良が望まれる。発明者は、成分を入れた反応容器(例えばキュベット)内に定常波を生成し、そして、該定常波を反応容器内で前後に変動させ(例えば振動させ)て成分を徹底的に混合するという、単純であるが効果的な方法を見出した。
【0012】
反応容器に結合液などの流体を介し結合された高周波トランスデューサを駆動することによって反応容器中に定常波(例えば上下指向の定常波)を起こすという本発明の実施形態によって、混合の改良が達成される。トランスデューサへ送る駆動信号は、混合を達成するために反応容器内で横方向前後に定常波の位置を変動させるべく、位相変調すべきである。
【0013】
本発明のこれら及びその他の形態と特徴について、図1図5を参照して説明する。
【0014】
図1に、本発明の1つ以上の実施形態に係る音波混合装置100(以下、「混合装置」)の構造が示されている。混合装置100は収容器102を含んでおり、この収容器102は、収容器壁(例えば内と外の収容器壁及び底)から形成された貯液槽104を含み、この貯液槽104が結合液106を収容するように構成される。1つ以上の実施形態において、貯液槽104は環状であり、上面開口を含んだ環状凹部が形成されている。結合液106は、貯液槽104に収容された結合液106内に入れられた(吊り下げられた)反応容器107へ振動(例えば圧力波)を伝達する能力をもった適切な液体である。結合液106は、水などの液体であるが、ゲル(例えば超音波ゲル)も含まれる。
【0015】
混合装置100は、トランスデューサ108も含む。トランスデューサ108は高周波駆動され、結合液106に伝播する波又は他の攪乱を生成する。一実施形態においてトランスデューサ108は、ほぼトランスデューサ108の共振周波数で駆動される。ここで使用する「伝播」は、結合液106において圧力波を引き起こす又は生成することを意味する。1つ以上の実施形態において、トランスデューサ108は結合液106に浸されており、結合液106に直接作用する1つ以上の表面を含む。別の実施形態においては、トランスデューサ108は、収容器102の貯液槽104の収容器側壁に接続される。トランスデューサ108は、一実施形態において圧電トランスデューサである。例えば、チタン酸ジルコン酸鉛圧電(PZT)セラミック材料をトランスデューサ108に使用できる。1つ以上の圧電材料(例えば結晶素子)を使用可能である。トランスデューサ108は、反応容器107に保持された混合する成分の全体に定常波を起こすのに十分広い適切な形状(例えば円形、矩形、正方形など)の有効駆動領域をもつ。有効駆動領域は、一実施形態において、約50mm〜約1000mm、又は、混合する成分の体積7mm7mm×7mm×15mmに対し175mmである。他の種類及び駆動領域の適切な高周波トランスデューサも使用可能である。トランスデューサ108は、1つ以上の実施形態において、ほぼ一定の周波数で駆動される。駆動周波数(ω)は、反応容器107内に生成しようとする定常波の数に従う。例えば、トランスデューサ108は、約200KHzかこれ以上、約500KHzを上回るかこれ以上、約1MHzを上回るかこれ以上、又は、約1.5MHzを上回るかこれ以上で、駆動される。一実施形態において、トランスデューサ108は、約200KHz〜約4MHz、約1MHz〜約3MHz、又は、約1.3MHz〜約2.6MHzで駆動される。1つの例では、約1.72MHzで駆動すると、7mm幅の反応容器に16個の上下指向定常波が生成される。
【0016】
さらに詳細に説明すると、混合装置100は信号発生ユニット110も含んでおり、この信号発生ユニット110は、信号線111を通しトランスデューサ108へ位相変調すべき駆動信号を供給するように構成されている。信号発生ユニット110は、トランスデューサ108のほぼ共振周波数で駆動されるように構成される。信号発生ユニット110は、トランスデューサ108を駆動するため、信号線111で位相変調すべき駆動信号を供給するように動作する。ここで使用する「位相変調すべき」とは、駆動信号の位相を能動的に変化させることを意味する。信号発生ユニット110は、位相変調すべき駆動信号の位相を第1の位相角と第2の位相角との間で経時的に調節(例えば変調)するように構成される。第1の位相角と第2の位相角とは異なる。信号発生ユニット110は、一実施形態において、位相変調すべき駆動信号の位相を約0度と約180度との間で調節するように構成される。位相変化の大きさと直接的に相互関連して定常波が前後に変動することを踏まえれば、位相が経時的に大きく変化することで成分の迅速な混合が可能になるということが、発明者によって見出された。例えば、180度の位相角変化によって、定常波は、定常波を引き起こす波の波長の半分で前後に変動する。変動する定常波の生成によって、第1及び第2成分(例えば患者検体109と試薬112)の混合が促進される。0〜180以外の他の位相角間での変化も採用し得る。
【0017】
図1及び図2に示すように、反応容器107は、搬送部114に受け入れられる。例えば、反応容器107は、搬送部114に形成された開口に受け入れられる。搬送部114は同一の反応容器107を多数受け入れ、これら反応容器107は図2に示すように円形に配列され得る。搬送部114は駆動部115によって回転させられ、この駆動部115は適当な方式で搬送部114と連結される。例えば、駆動部115は、搬送部114の半径方向内側面に形成された歯117と噛み合う歯車である。その他の既知の適切な駆動機構が搬送部114を回転させるために使用される。搬送部114の回転は、駆動部115とモータシャフト等で連結されこれを駆動する駆動モータ116の制御による。搬送部114及び貯液槽104を形成する収容器102は、図2に示す臨床分析装置200内に含まれていてもよい。
【0018】
図2に良く表れているように、臨床分析装置20は、フレームその他の支持構造を中に備えたハウジング218を含む。収容器102及び駆動モータ116は、ハウジング218に対して固定される。臨床分析装置200は、患者検体109を入れた検体容器222を収容する1つ以上の検体ラック220(多重ラックを図示)を受け入れる。検体ラック220は、例えばトレイ上に受け入れられる。患者検体109は、尿、全血、血清又は血漿、泌尿生殖器;鼻咽頭;頬側;又は眼の標本(スワブ)からの標本抽出物、脳脊髄液、精液、便、母乳、唾液、たん、細胞培養物、羊水、腹水、気管支肺胞洗浄液(BAL)、捕集媒体、末梢血単核球(PBMC)、バフィーコート、その他である。
【0019】
ロボット及び接続ピペット(第1矢印224で集合的に表示する)と吸引/分配システム(図示せず)が、検体ラック220中の検体容器222から患者検体109を吸引し、該ピペットが移動して、搬送部114により搬送されている反応容器107へ患者検体109を分配する。患者検体109は、第1矢印224の線上にある患者検体分配位置へ連続して回転してくる反応容器107の1つ1つへ分配される。別の患者検体109を新たに分配する時ごとに、チップ供給部225からピペットへ新しいピペットチップが提供される。患者検体109の吸引及び分配と各種消耗品に関しては適切な吸引/分配システムを使用することができ、例えば、US5,777,221、US6,060,320、US6,158,269、US6,250,130、US6,463,969、US7,998,751、US7,205,158(米国特許公報)に開示されている。この他にも適した吸引/分配システムを使用し得る。
【0020】
患者検体109が反応容器107に分配されると、搬送部114は試薬添加位置へ回転し、1つ以上の試薬112が第2のロボット及びピペット(第2矢印228で集合的に表示する)により試薬供給部226から添加される。この試薬添加位置には、トランスデューサ108(図2に点線で拡大して示す)が配置されている。トランスデューサ108は、臨床分析装置200のコントローラ230の一部である信号発生ユニット110から信号線111で入力される駆動信号によって駆動される。コントローラ230は、各ロボット、搬送部114のモータ、及び臨床分析装置200のその他の機能を統合管理する役割を担う。コントローラ230は、プログラムを記憶し命令を実行するのに適したマイクロプロセッサ及びメモリを含む。一実施形態において、第2の試薬供給部229から別の試薬添加がある。この第2の試薬供給部229から添加される試薬を、その前にトランスデューサ108によって混合された成分(例えば患者検体109及び1つ以上の試薬112)と混合するために、当該添加位置にもう一つのトランスデューサを追加することができる。
【0021】
駆動されたトランスデューサ108が結合液106に振動を生成するように働き、これによって図4Bに示すように反応容器107内に定常波が起きる。図4Aは、位相が一定に維持されている動作周波数(ω)でトランスデューサ108が振動することにより、患者検体109が試薬112の中へ引き上げられていることを示している。第2のロボット及びピペット(第2矢印228で表す)によって試薬112が添加されるときに混合が既にいくらか始まっているのは明らかなので、図示のパターンは、形成されている定常波を説明するだけのものである。一実施形態において、信号線111における駆動信号は、信号発生ユニット110からの電圧信号V(t)であり、次の式1で表すことができる。
[式1] V(t)=Asin(ωt+θ(t))
A:駆動信号の振幅(電圧)
ω:駆動信号の周波数(ヘルツ)
t:時間(秒)
θ:位相角(度)
【0022】
まず、信号線111における駆動信号は純粋な正弦信号であり、位相角θはゼロであるから、駆動信号V(t)は次の式2で表せる。
【0023】
[式2] V(t)=Asin(ωt)
【0024】
図4B(例えば上下指向定常波を例示)に示すように完全に定常波432形成されると、次に、信号線111における駆動信号V(t)は位相変調される。ただし、この位相変調は、定常波432が完全に発達するまで待つ必要はなく、一実施形態においては定常波が未発達や部分的にのみ発達しただけであっても開始できる。信号線111における駆動信号の位相変調は、混合方向矢印444で示す方向において前後に定常波を、信号線111の駆動信号に加えられる位相変化の量(Δ位相角)にほぼ比例して、変動させる。位相角は、例えば、0度から180度までのΔ位相角で変化させる。あるいは、他のΔ位相角も使用可能である。
【0025】
図3Aに示す信号発生ユニット110の1つの実施形態では、発振器346が含まれている。発振器346は図3Bに示す正弦波347を発生する。正弦波347は、例えば、上述した周波数をもつ。発振器346は、調波又は線形発振器(例えば、コルピッツ発振器、ハートレー、アームストロング発振器(マイスナー発振器としても知られる)、クラップ発振器、及びウィーンブリッジ発振器)である。発振器346は、一実施形態において、振幅Aを調節可能である。
【0026】
信号発生ユニット110は位相変調回路348を含んでおり、この位相変調回路348は、設定された周波数(ω)の正弦波347を受信してその位相角θを例えば式1にしたがって調節する。これにより、位相変位した信号351(図3Bに点線で示す)が得られる。1つ以上の実施形態において、位相変調回路348は、位相角θを急速に、例えば衝撃的に変化させる。位相角は、第1の位相角と第2の位相角との間において変調周波数で変調される。変調周波数は、一実施形態において、約1Hzを上回り、約1Hz〜約50Hz(位相変位の間の約20ミリ秒〜約1秒)、又は、約5Hz〜約20Hz(位相変位の間の約50ミリ秒〜約200ミリ秒)である。1つ以上の実施形態において、出力線349の信号出力はフィルタ350で濾波される。フィルタ350は、適切なローパスフィルタである。例えば、フィルタ350のカットオフ周波数は、発振器346の設定駆動周波数(ω)以上に設定される。位相変調回路348から出力される信号の強さによっては、出力線349の信号を増幅器352で増幅する必要がある。クラスA,B又はDクラスの増幅器など、適切な増幅器が使用される。増幅後の信号は、トランスデューサ108を駆動する信号線111の駆動信号となり、反応容器107内に定常波を生成させる。
【0027】
図3Cは、位相変調回路348の第1実施形態を示す。図示の実施形態の場合、演算増幅器353とアナログマルチプレクサ355の組み合わせが位相変調された駆動信号を生み出すために使用される。演算増幅器353はインバータとして機能し、入力信号に−1を乗算して第2線354における信号を180度位相変位させる。アナログマルチプレクサ355は、発振器346から直接受信される第1線356の第1信号(例えば正弦波)と、第2線354の第2位相変位信号との間で変調を行うために使用される。アナログマルチプレクサ355は適切な手段によりスイッチングされる。例えば、アナログマルチプレクサ355は、波形発生器359による変調信号358に従うタイミングでスイッチされる。波形発生器359は、例えば、無安定モードとした555タイマーである。第1及び第2線356,354間の切り換えは、例えば、波形発生器359により発生される矩形波信号に基づく。波形発生器の変調周波数は上述の通り選択、設定又は提供される。他の適切な変形例も使用され得る。
【0028】
別の実施形態において、図3Dに示すように、多重発振器346A,346Bからの入力を受ける位相変調回路348Dが設けられる。#1発振器346Aが第1波(例えば正弦波)を発生し、#2発振器346Bは、第1波とは位相のずれた(図3B参照)第2波を発生する。一実施形態において、第2波は第1波に対し180度位相がずれている。その他の位相差も可能である。位相同期回路360は、特定の位相差を設定又は維持(もしくは設定及び維持)するために含まれる。位相同期回路360は、一実施形態において、位相同期ループである。上述したアナログマルチプレクサ355などのスイッチング手段が、#1発振器及び#2発振器からの入力を切り換えるために使用される。同様に、そのスイッチング速度は波形発生器359からの変調信号によって制御される。#1発振器及び#2発振器からの入力をスイッチングすることにより、出力線349の信号が位相変調される。
【0029】
他の実施形態において、トランスデューサ108に位相変調すべき駆動信号を供給して定常波432の変動を促進するように構成される信号発生ユニットは、全体的にデジタル式の信号発生ユニット310として実施される。例えば、図3Eに示すように、信号発生ユニット310はデジタル信号プロセッサ(DSP)365を含み、このデジタル信号プロセッサ365がダイレクトデジタルシンセサイザ370と通信する。当該通信は、SPI、I2Cなどの適切な通信プロトコルを利用する。DSP365は、動作周波数ω及び変調周波数をダイレクトデジタルシンセサイザ370へ供給する。例えば、Analog Devices製のAD9833を使用可能である。一実施形態において、プログラマブル波形発生器をダイレクトデジタルシンセサイザ370の代わりに使用することもできる。信号発生ユニットのその他の全デジタル実施形態も使用され得る。
【0030】
図5は、臨床分析装置(例えば臨床分析装置200)における反応容器(例えば反応容器107)の中などで成分(例えば患者検体109及び試薬112)を混合する方法を説明する。この方法500は、混合する成分(例えば患者検体109及び試薬112)を入れた反応容器(例えば反応容器107)を準備するステップ502を含む。
【0031】
さらに、方法500は、ステップ504において、トランスデューサ(例えばトランスデューサ108)に駆動信号(例えば信号線111で)を供給し、設定された周波数(例えば周波数ω)の振動を生成して反応容器内に定常波(例えば定常波432)を生じさせる。
【0032】
方法500は、ステップ506において、駆動信号を位相変調して定常波を変動させ、成分の混合を促進する。位相変調は、1つ以上の発振器(例えば発振器346,346A,346B)及び位相変調回路(例えば位相変調回路348,348D)を使用して達成される。
【0033】
特定の実施形態に基づいて本発明を例示し説明してきたが、本発明は提示した細部に限定されるものではない。本発明から逸脱することなく、特許請求の範囲及びこれと等価の範囲において、細部に関し種々の変形をなし得る。
【符号の説明】
【0034】
100 音波混合装置
102 収容器
104 貯液槽
106 結合液
107 反応容器
108 トランスデューサ
109 患者検体
110 信号発生ユニット
111 信号線
112 試薬
114 搬送部
115 駆動部
116 駆動モータ
117 歯
200 臨床分析装置
220 検体ラック
222 検体容器
225 チップ供給部
226 試薬供給部
229 第2の(別の)試薬供給部
230 コントローラ
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図5
【国際調査報告】