(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-531005(P2017-531005A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(54)【発明の名称】アクリレート/メタクリレートプロセスにおけるポリマーの汚損および凝集の低減
(51)【国際特許分類】
C07C 67/48 20060101AFI20170922BHJP
C07C 69/54 20060101ALI20170922BHJP
C07C 67/20 20060101ALI20170922BHJP
【FI】
C07C67/48
C07C69/54 Z
C07C67/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-519855(P2017-519855)
(86)(22)【出願日】2015年10月13日
(85)【翻訳文提出日】2017年6月6日
(86)【国際出願番号】US2015055359
(87)【国際公開番号】WO2016061120
(87)【国際公開日】20160421
(31)【優先権主張番号】62/063,697
(32)【優先日】2014年10月14日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515050220
【氏名又は名称】エコラブ ユーエスエイ インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トン デイヴィッド ユウドン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC47
4H006AC48
4H006AD17
4H006BB17
(57)【要約】
本発明は全般的には、ポリマーの凝集または汚損を低減する方法、およびアクリレート、メタクリル酸またはメタクリレートを調製するためのプロセスにおけるその使用に関する。本発明によれば、試薬は、アルキルフタレート、アルキルアリールフタレート、アリールフタレートまたはフタル酸を含み、プロセスまたは貯蔵装置におけるポリマーの凝集または汚損を低減するように、ポリマー性の汚損物質前駆体が凝集するのを防ぐ、または存在するポリマー性の凝集体もしくは汚損物質を溶かすために、アクリレート、メタクリル酸またはメタクリレートの調製のためのプロセスに試薬を適用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリレート、メタクリル酸またはメタクリレートモノマーを調製するための処理装置と接触しているプロセス流体中の炭化水素汚損物質を、分散させるまたは溶かす方法であって、前記汚損物質を有効量の有機溶媒と接触させることを含み、前記有機溶媒がアルキルフタレート、アルキルアリールフタレート、アリールフタレート、フタル酸、またはこれらの組み合せを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記処理装置がメタクリル酸またはメチルメタクリレートの調製のためのものであることを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、メタクリル酸またはメチルメタクリレートを調製するための前記処理装置が、アセトンシアノヒドリンプロセスに適合していることを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法であって、前記プロセス流体が、硫酸、硫酸のアンモニウム塩、またはこれらの組み合せを含むことを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記プロセス流体が、アクリレート、メタクリル酸、メタクリレート、またはこれらの組み合せを含むことを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記プロセス流体が、メタクリル酸、メチルメタクリレート、またはこれらの組み合せを含むことを特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法であって、前記炭化水素汚損物質が、アクリル酸、メタクリル酸、アクリレート、メタクリレート、メタクリルアミドまたはこれらの組み合せのオリゴマーまたはポリマーを含むことを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記炭化水素汚損物質が、メタクリル酸、メチルメタクリレート、メタクリルアミドまたはこれらの組み合せのオリゴマーまたはポリマーを含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の方法であって、前記有機溶媒が式1の構造を備えることを特徴とする、方法。
【化1】
(式中、R
1およびR
2は、独立して、水素、アルキル、アルキルアリールまたはアリールである)
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、R1およびR2が独立して水素およびC1〜C12アルキルであることを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、前記有機溶媒が、フタル酸、モノメチルフタレート、モノエチルフタレート、モノノニルフタレート、モノドデシルフタレート、モノウンデシルフタレート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジノニルフタレート、ジドデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、モノフェニルフタレート、モノベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジベンジルフタレート、またはこれらの組み合せを含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記有機溶媒が、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジノニルフタレート、ジドデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、またはこれらの組み合せを含むことを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、前記有機溶媒が、ジノニルフタレート、ジドデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、またはこれらの組み合せを含むことを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法であって、前記有機溶媒が、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、またはこれらの組み合せであることを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法であって、前記有機溶媒が、ジメチルフタレートを含むことを特徴とする、方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の方法であって、流体中の前記有機溶媒濃度が、約10重量ppm〜約1重量%であることを特徴とする、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記有機溶媒が、炭化水素汚損物質を分散させるため、または炭化水素汚損物質の凝集、沈殿もしくは堆積を防ぐために使用されることを特徴とする、方法。
【請求項18】
請求項16または17に記載の方法であって、前記有機溶媒濃度が、約100ppm〜約1000ppmであることを特徴とする、方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載の方法であって、前記有機溶媒がプロセス流体に連続的に添加されることを特徴とする、方法。
【請求項20】
請求項1から15のいずれか1項に記載の方法であって、前記有機溶媒濃度が約1000重量ppm〜約15重量%であることを特徴とする、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記有機溶媒が、炭化水素汚損物質を溶かすまたは除去するために使用されることを特徴とする、方法。
【請求項22】
請求項1から18、20、および21のいずれか1項に記載の方法であって、前記有機溶媒がプロセス流体に断続的に添加されることを特徴とする、方法。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか1項に記載の方法であって、第2の溶媒、分散剤、重合防止剤、またはこれらの組み合せである化学添加剤をさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項24】
硫酸水溶液、有機溶媒、およびアクリル酸、アクリレート、メタクリル酸、メタクリレート、メタクリルアミドまたはこれらの組み合せのポリマーを含む組成物であって、前記有機溶媒が式1の構造を備えることを特徴とする、組成物。
【化2】
(式中、R
1およびR
2は、独立して、水素、アルキル、アルキルアリールまたはアリールである)
【請求項25】
請求項24に記載の組成物であって、R1およびR2が独立して水素およびC1〜C12アルキルであることを特徴とする、組成物。
【請求項26】
請求項24に記載の組成物であって、前記有機溶媒が、フタル酸、モノメチルフタレート、モノエチルフタレート、モノノニルフタレート、モノドデシルフタレート、モノウンデシルフタレート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジノニルフタレート、ジドデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、モノフェニルフタレート、モノベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジベンジルフタレート、またはこれらの組み合せを含むことを特徴とする、組成物。
【請求項27】
請求項26に記載の組成物であって、前記有機溶媒が、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジノニルフタレート、ジドデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、またはこれらの組み合せを含むことを特徴とする、組成物。
【請求項28】
請求項26に記載の組成物であって、前記有機溶媒が、ジノニルフタレート、ジドデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、またはこれらの組み合せを含むことを特徴とする、組成物。
【請求項29】
請求項26に記載の組成物であって、前記有機溶媒が、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、またはこれらの組み合せを含むことを特徴とする、組成物。
【請求項30】
請求項26に記載の組成物であって、前記有機溶媒がジメチルフタレートを含むことを特徴とする、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般的には、ポリマーの汚損または凝集を低減する方法、およびアクリレート、メタクリル酸またはメタクリレートプロセスにおけるその使用に関する。本発明によれば、試薬は、アルキルフタレート、アルキルアリールフタレート、アリールフタレートまたはフタル酸を含み、プロセスまたは貯蔵装置におけるポリマーの凝集または汚損を低減するように、ポリマー性の汚損物質前駆体が凝集するのを防ぐ、または存在するポリマー性の凝集体および/もしくは汚損物質を溶かすために、アクリレート、メタクリル酸またはメタクリレートプロセスに試薬を適用する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年10月14日出願の米国特許仮出願62/063,697号に基づく優先権を主張し、その開示は全て本願に引用して援用する。
【0003】
アセトンシアノヒドリン−メチルメタクリレート(ACH−MMA)プロセスにおいては、アセトンシアノヒドリンを、反応物質および溶媒の両方として働く過剰の硫酸(1.4〜1.8モル/モルACH)に添加する。ACHと硫酸との反応によりα−スルファトイソブチルアミドが製造され、次にこれが加熱プロセス条件下で脱離反応を受け、硫酸メタクリルアミドを生み出す。
【0004】
【化1】
【0005】
次の段階において、硫酸は、硫酸メタクリルアミドがMMAおよびメチルアクリル酸(MAA)の混合物へ複合的に加水分解/エステル化する触媒として貢献する。
【0006】
【化2】
【0007】
1スキームでは、硫酸メタクリルアミドは、連続反応器または一連の反応器において、100〜150℃の温度で、水メタノールと反応する。
【0008】
メチルメタクリレート(MMA)製造の工業的プロセスにおいて、硫酸水溶液の廃棄物の流れ(廃酸)が生成される。この廃酸の流れには、硫酸(H
2SO
4)、重硫酸アンモニウム(NH
4HSO
4)および残渣の有機成分が濃縮されている。有機成分は一般に、高い割合の残渣およびタール、ならびに少量の軽質有機化合物を含む。
【0009】
MMA廃酸のひどく汚染された性質が原因で、酸の回収および濃縮に有用な現行の工業的処理方法は、再生を伴うものである。このプロセスでは、廃酸は、れんがを並べた炉で約1000℃にて分解される。この温度において、廃酸中の有機成分は二酸化炭素および水に酸化され、アンモニウム塩は窒素および二酸化硫黄に変換され、硫酸は二酸化硫黄に還元される。再生プロセスで生成される二酸化硫黄ガスの流れは、従来の接触酸プラントで硫酸に変換される前に、熱回収およびガス洗浄プロセスを通過する。
【0010】
アクリレート、メタクリル酸またはメタクリレートモノマーを調製するための製造プロセスにおいて、MMA、MAA、メタクリルアミドまたは他のビニルモノマーの重合は、望ましくなく、しかもごく普通のことである。MMA製造プロセスにおいて、MMA、MAAおよび他のビニルモノマーから形成されたポリマーは、廃酸とともにプロセスから流れ出す。形成される多くのポリマーは廃酸よりも低密度を有し、そのため酸性水溶液中で浮遊し、凝集すると廃酸から沈殿し、または装置に堆積し、プロセスの作動問題を起こす恐れがある。
【0011】
ポリマーの形成、凝集および汚損は、アクリレート、メタクリル酸またはメタクリレートモノマーを扱うプロセスにとって、一般に懸案事項である。硫酸を含有する廃棄物の流れは、多くの場合ポリマーを運ぶ。運転上の問題を低減しまたは防ぎ、しかも廃棄物の流れを処分することは、挑戦的で費用のかかる目標である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第2783271号明細書
【特許文献2】米国特許第4293347号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
いったん形成されたこれらポリマーの凝集または堆積を除去する方法、および形成される前にポリマーの凝集または堆積を防ぐ方法は、プロセスにとって必要なものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様は、アクリレート、メタクリル酸またはメタクリレートモノマーを調製するための処理装置と接触しているプロセス流体中の炭化水素汚損物質を、分散させるまたは溶かす方法であって、汚損物質を有効量の有機溶媒と接触させることを含み、有機溶媒は、アルキルフタレート、アルキルアリールフタレート、アリールフタレート、フタル酸、またはこれらの組み合せを含む。
【0015】
別の態様は、硫酸水溶液、有機溶媒、およびアクリル酸、アクリレート、メタクリル酸、メタクリルアミド、もしくはメタクリレート、またはこれらの組み合せのポリマーを含む組成物であり、有機溶媒は式1の構造を備える。
【0016】
【化3】
(式中、R
1およびR
2は、独立して、水素、アルキル、アルキルアリールまたはアリールである)
【0017】
他の対象および特徴については、以下で、部分的に明らかとなり、部分的に指摘する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】典型的なメチルメタクリレートプロセスで使用される装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
対応する参照符号は、図を通して対応する部分を示す。
【0020】
本発明は、アクリレート、メタクリル酸またはメタクリレートモノマーを調製するためのプロセスにおいて生成されるポリマー汚損物質を、分散させるまたは溶かす方法を対象とする。アクリル酸、アクリレート、メタクリル酸、メタクリレート、メタクリルアミド、または他のビニルモノマーのポリマーは、副生物として生じる。ポリマーは不溶性になり、次にプロセス流れから沈殿する恐れがある。ポリマー沈殿物は、汚損物質としてプロセス装置の表面に堆積し、または大きなポリマー片に凝集し、それが沈殿してプロセス流体から分離する恐れがあり、プロセスの運転にマイナスに影響することもあり得る。本発明の方法は、液体プロセス流れ中の不溶性ポリマー凝集体を分散させ、または溶かす。ジメチルフタレートは、メチルメタクリレートプロセスの廃酸流れ中のポリマー凝集体に有効な溶媒であることが見出された。従って、本方法の有利な一態様は、ポリマーの凝集を低減もしくは防ぐために、または存在するポリマー凝集体を易流動性の液体中に溶かし、それによってプロセス装置のポリマー堆積もしくは汚損を低減するために、式1の溶媒を使用することである。
【0021】
本発明の一態様は、アクリレート、メタクリル酸またはメタクリレートモノマーを調製するための処理装置と接触しているプロセス流体中の炭化水素汚損物質を、分散させるまたは溶かす方法を対象とし、汚損物質を有効量の有機溶媒と接触させることを含み、有機溶媒は、アルキルフタレート、アルキルアリールフタレート、アリールフタレート、フタル酸、またはこれらの組み合せを含む。
【0022】
処理装置は、メチルメタクリレートの調製のためであり得る。メチルメタクリレートの調製のための処理装置は、アセトンシアノヒドリンプロセスに適合していることが好ましい。
【0023】
プロセス流体が硫酸またはそのアンモニウム塩を含む、本明細書に記載の方法。
【0024】
プロセス流体は、アクリレート、メタクリル酸もしくはメタクリレート、またはこれらの組み合せを含むことができる。好ましくは、プロセス流体は、メチルメタクリル酸、メチルメタクリレート、またはこれらの組み合せを含む。
【0025】
炭化水素汚損物質は、アクリル酸、アクリレート、メタクリル酸、メタクリレート、メタクリルアミドまたはこれらの組み合せのオリゴマーまたはポリマーであり得る。好ましくは、炭化水素汚損物質は、メタクリルアミド、メタクリル酸、メチルメタクリレートまたはこれらの組み合せのオリゴマーまたはポリマーを含む。
【0026】
有機溶媒が式1の構造を備える、本明細書に記載の方法。
【0027】
【化4】
(式中、R
1およびR
2は、独立して、水素、アルキル、アルキルアリールまたはアリールである)
【0028】
本発明の別の態様は、硫酸水溶液、有機溶媒、およびアクリル酸、アクリレート、メタクリレート、メタクリル酸、メタクリルアミドまたはこれらの組み合せのポリマーを含む組成物であり、有機溶媒は式1の構造を備える。
【0029】
【化5】
(式中、R
1およびR
2は、独立して、水素、アルキル、アルキルアリールまたはアリールである)
【0030】
R
1およびR
2が独立して水素およびC
1〜C
12アルキルである、方法または組成物。
【0031】
有機溶媒が、フタル酸、モノメチルフタレート、モノエチルフタレート、モノノニルフタレート、モノドデシルフタレート、モノウンデシルフタレート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジノニルフタレート、ジドデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、モノフェニルフタレート、モノベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジベンジルフタレート、またはこれらの組み合せを含む、本明細書に記載の方法または組成物。
【0032】
有機溶媒が、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジノニルフタレート、ジドデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、またはこれらの組み合せを含む、方法または組成物。
【0033】
有機溶媒が、ジノニルフタレート、ジドデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、またはこれらの組み合せを含む、本明細書に記載の方法または組成物。
【0034】
有機溶媒が、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、またはこれらの組み合せである、方法または組成物。
【0035】
有機溶媒が、ジメチルフタレートを含む方法または組成物。
【0036】
炭化水素汚損物質が、エチレン性不飽和もしくはビニルモノマーのオリゴマーまたはポリマーである、方法。
【0037】
炭化水素汚損物質が、アクリル酸、アクリレート、メタクリレート、メタクリル酸、メタクリルアミド、もしくはこれらの組み合せのオリゴマーまたはポリマーである、方法。
【0038】
流体中の有機溶媒濃度が、約10重量ppm〜約1重量%である、本明細書に記載の方法。
【0039】
炭化水素汚損物質を分散させる、または凝集、沈殿、もしくは堆積から防ぐために、有機溶媒を使用する場合、有機溶媒濃度が、約100ppm〜約1000ppmである、方法。
【0040】
有機溶媒がプロセス流体に連続的に添加される、本明細書に記載の方法。
【0041】
炭化水素汚損物質を溶かすまたは除去するために、有機溶媒を使用する場合、有機溶媒濃度が約100重量ppm〜約15重量%である、方法。
【0042】
有機溶媒がプロセス流体に断続的に添加される、方法。
【0043】
化学添加剤をさらに含み、化学添加剤が、第2の溶媒、分散剤、重合防止剤、またはこれらの組み合せである、本明細書に記載の方法。
【0044】
第2の溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、二塩化メチレン、またはこれらの組み合せを含む、本明細書に記載の方法。
【0045】
重合防止剤は、フェノール化合物、フェニレンジアミンもしくはその誘導体、フェノチアジンもしくはその誘導体、ニトロソフェノールもしくはその誘導体、窒素酸化物もしくはその誘導体、ヒドロキシルアミン、またはこれらの組み合せを含むことができる。
【0046】
図1は、反応器10、廃酸流れ30、廃酸貯蔵タンク50、廃酸回収装置70、および有機溶媒をプロセスに添加することができるいくつかの場所を示す。特に、有機溶媒を、廃酸貯蔵タンク循環流れ60に添加することができる。さらに、流れが酸再生装置または廃酸貯蔵タンクに到達する前に流れを処理するために、有機溶媒を、廃酸反応器底部流れ30に、投入位置40において添加することができる。最後に、処理系統におけるポリマーの凝集または堆積を防ぐために、有機溶媒を、反応器注入口20に、または系統に2つ以上の反応器が在る場合は反応器の間に、添加することができる。
【0047】
プロセス流体から沈殿するまたは装置に堆積する固体ポリマーを含有しない廃酸流れを提供するために、有機溶媒を処理系統に連続的または断続的に添加することができる。流れるポリマー流れを廃酸流れの内部に維持するために、有機溶媒を1つ以上の流れの中に添加することができる。
【0048】
本明細書において別途示さない限り、「アクリレート」はアクリル酸の塩またはエステルである。
【0049】
本明細書において別途示さない限り、「メタクリレート」はメタクリル酸の塩またはエステルである。
【0050】
本発明を詳細に記載してきたが、添付の特許請求の範囲に規定する発明の範囲から逸脱することなく、変形および変化が可能であることは明らかである。
【実施例】
【0051】
以下の非限定的実施例は、本発明をさらに説明するために提供される。
【0052】
実施例1:ジメチルフタレートは、ポリマーが凝集/沈殿することを防ぐ
典型的なメチルメタクリレートプラントでは、ポリマーは廃酸のプロセス流れから沈殿し、固体のポリマー凝集体を形成する傾向がある。ポリマー凝集体の小滴は、廃酸流れの表面に浮遊し、運転上の問題を引き起こし、洗浄および廃棄の費用が必要になる。
【0053】
以下の実験は、有機溶媒処理により、ポリマーの凝集または沈殿を防ぐことができることを示す。
【0054】
固体メチルメタクリレートプロセスポリマーの小片をTHF溶媒に溶かして、高濃度ポリマー溶液を調製した。10mLの廃酸液体(メチルメタクリレートプロセスからの硫酸水溶液の廃棄物の流れ)の入った試験管に、高濃度ポリマー溶液の一定分量を添加した。未処理試験では、添加および混合すると、ポリマーは液体からすぐに沈殿し、液体の表面に浮遊する固体ポリマーの小片に変わり、これは運転での経験と一致した。処理試験では、ポリマー溶液を添加する前に、ジメチルフタレートを廃酸液体試料に加えた。対照的に、ポリマー溶液を添加した時、凝集/沈殿は起きなかった。その代わり、(振盪後に)撹拌によりポリマーは液体中で完全に分散され、次に静置後にポリマーは液体の上面で液体層として次第に分離した。その後、液体層は撹拌により、廃酸中で容易に再分散された。この証拠は、ジメチルフタレート処理が、酸性プロセス流れ中でのポリマーの凝集または沈殿を妨げ、従ってプロセス装置をポリマーの汚損から守ることができることを示している。
【0055】
上の実験では、多く候補を含む群をふるいにかけた。いくつかの有機溶媒はポリマーを溶かすことができたが、そのいずれも、廃酸からのポリマーの沈殿を真に防ぐことはできなかった。ジメチルフタレートが好ましかった。
【0056】
実施例2:溶解の研究
この実験は、廃酸の環境において、存在する固体ポリマーを有機溶媒は溶かすこともできることを実証した。この実験では、廃酸貯蔵タンクポリマーの固体小片を、廃酸溶液に落とし、攪拌器で4〜6時間撹拌し、次に静置した。処理試料では、ジメチルフタレートを加え、未処理(いかなる添加物でも処理しない)試料および市販の分散剤で処理した試料と比較した。
【0057】
ジメチルフタレートで処理した溶液は、未処理または分散剤処理溶液よりはるかに黒く、ポリマーの廃酸溶液への顕著な溶解を示している。さらに、固体ポリマーはジメチルフタレート処理溶液に2〜3日浸漬後は柔らかくなり、一方、他の2つのポリマー試料(例えば、未処理試料および分散剤処理試料)は未変化のままであった。これらの結果は、ジメチルフタレートは廃酸貯蔵タンクポリマーに有効な溶媒であり、運転装置に堆積したポリマーを除去する有望な洗浄溶媒であることを示した。
【0058】
本発明またはその好ましい実施形態の要素を導入する場合、冠詞「1つ(a)」、「1つ(an)」、「その(the)」および「前記(said)」は1つ以上の要素が存在することを意味する意図である。用語「含む(comprising)」、「含有する(including)」および「有する(having)」は、包括的であり、列挙した要素以外に追加的要素が存在し得ることを意味する意図である。
【0059】
以上を鑑みると、本発明のいくつかの目的は達成され、他の有利な結果が獲得されると考えられる。
【0060】
本発明の範囲から逸脱することなく、上記方法において様々な変更を成し得るので、上の記載に含まれ付随する図に示される全ての事項は、例証的であって限定的な意味ではないと解釈すべきであることが意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2017年6月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリレート、メタクリル酸またはメタクリレートモノマーを調製するための処理装置と接触しているプロセス流体中の炭化水素汚損物質を、分散させるまたは溶かす方法であって、前記汚損物質を有効量の有機溶媒と接触させることを含み、前記有機溶媒がアルキルフタレート、アルキルアリールフタレート、アリールフタレート、フタル酸、またはこれらの組み合せを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記処理装置がメタクリル酸またはメチルメタクリレートの調製のためのものであること、又はメタクリル酸またはメチルメタクリレートを調製するための前記処理装置が、アセトンシアノヒドリンプロセスに適合していることを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、前記プロセス流体が、硫酸、硫酸のアンモニウム塩、またはこれらの組み合せを含むことを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、前記プロセス流体が、アクリレート、メタクリル酸、メタクリレート、またはこれらの組み合せを含むことを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法であって、前記炭化水素汚損物質が、アクリル酸、メタクリル酸、アクリレート、メタクリレート、メタクリルアミドまたはこれらの組み合せのオリゴマーまたはポリマーを含むことを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか1項に記載の方法であって、前記有機溶媒が式1の構造を備えることを特徴とする、方法。
【化1】
(式中、R
1およびR
2は、独立して、水素、アルキル、アルキルアリールまたはアリールである)
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、R1およびR2が独立して水素およびC1〜C12アルキルであることを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法であって、前記有機溶媒が、フタル酸、モノメチルフタレート、モノエチルフタレート、モノノニルフタレート、モノドデシルフタレート、モノウンデシルフタレート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジノニルフタレート、ジドデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、モノフェニルフタレート、モノベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジベンジルフタレート、またはこれらの組み合せを含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記有機溶媒が、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジノニルフタレート、ジドデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、またはこれらの組み合せを含むことを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法であって、前記有機溶媒が、ジノニルフタレート、ジドデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、またはこれらの組み合せを含むことを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法であって、前記有機溶媒が、ジメチルフタレートを含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の方法であって、前記プロセス流体中の前記有機溶媒濃度が、前記プロセス流体の約10重量ppm〜約1重量%であることを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記有機溶媒濃度が、約100ppm〜約1000ppmであることを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の方法であって、前記有機溶媒がプロセス流体に連続的に添加されることを特徴とする、方法。
【請求項15】
硫酸水溶液、有機溶媒、およびアクリル酸、アクリレート、メタクリル酸、メタクリレート、メタクリルアミドまたはこれらの組み合せのポリマーを含む組成物であって、前記有機溶媒が式1の構造を備えることを特徴とする、組成物。
【化2】
(式中、R
1およびR
2は、独立して、水素、アルキル、アルキルアリールまたはアリールである)
【国際調査報告】