特表2017-531087(P2017-531087A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ センシエント フレーバーズ リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表2017531087-エッセンシャルオイル分画方法 図000002
  • 特表2017531087-エッセンシャルオイル分画方法 図000003
  • 特表2017531087-エッセンシャルオイル分画方法 図000004
  • 特表2017531087-エッセンシャルオイル分画方法 図000005
  • 特表2017531087-エッセンシャルオイル分画方法 図000006
  • 特表2017531087-エッセンシャルオイル分画方法 図000007
  • 特表2017531087-エッセンシャルオイル分画方法 図000008
  • 特表2017531087-エッセンシャルオイル分画方法 図000009
  • 特表2017531087-エッセンシャルオイル分画方法 図000010
  • 特表2017531087-エッセンシャルオイル分画方法 図000011
  • 特表2017531087-エッセンシャルオイル分画方法 図000012
  • 特表2017531087-エッセンシャルオイル分画方法 図000013
  • 特表2017531087-エッセンシャルオイル分画方法 図000014
  • 特表2017531087-エッセンシャルオイル分画方法 図000015
  • 特表2017531087-エッセンシャルオイル分画方法 図000016
  • 特表2017531087-エッセンシャルオイル分画方法 図000017
  • 特表2017531087-エッセンシャルオイル分画方法 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-531087(P2017-531087A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(54)【発明の名称】エッセンシャルオイル分画方法
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/02 20060101AFI20170922BHJP
【FI】
   C11B9/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-537014(P2017-537014)
(86)(22)【出願日】2015年9月29日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月24日
(86)【国際出願番号】EP2015072454
(87)【国際公開番号】WO2016050783
(87)【国際公開日】20160407
(31)【優先権主張番号】14187514.6
(32)【優先日】2014年10月2日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517115053
【氏名又は名称】センシエント フレーバーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリオット レイモンド
【テーマコード(参考)】
4H059
【Fターム(参考)】
4H059AA11
4H059BA12
4H059BA22
4H059BA30
4H059BC10
4H059BC23
4H059CA12
4H059CA14
4H059CA24
4H059CA72
4H059CA73
4H059DA09
4H059EA21
(57)【要約】
本発明は、フレーバーおよびフレグランスの調製成分として用いるエッセンシャルオイルの組成を、特定の担体と組み合わせた二酸化炭素および好適な溶媒を用いて変更する方法を開示する。本発明はまた、当該方法により生成される成分を含有するフレーバーおよびフレグランスならびに当該フレーバーおよびフレグランスを用いた用途も包含する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
持続可能なエッセンシャルオイル逐次分画方法であって、当該方法は、選択した担体との組み合わせで極性が増加する二酸化炭素溶媒に基づき行われ、
不活性かつ吸着性を有する担体を用意する第1ステップと、
前記担体に、エッセンシャルオイルを1〜70質量%のロード率でロードする第2ステップと、
前記エッセンシャルオイルの第1画分の分離を、完全な分離が達成されるまで、または、1時間あたりの収量が出発物質の初期質量の0.1%を下回り、当該画分が回収されるまで、液体または弱超臨界二酸化炭素を用いて、−10〜50°Cの第1温度、20〜85バールの第1圧力および毎分1〜25%をロードする第1流量で行う第3ステップと、
前記エッセンシャルオイルの第2画分の分離を、完全な分離が達成されるまで、または、1時間あたりの収量が出発物質の初期質量の0.1%を下回り当該画分が回収されるまで、超臨界二酸化炭素を用いて、少なくとも31℃の第2温度、少なくとも72.8バールの第2圧力および毎分1〜25%をロードする第2流量で行う第4ステップと、
前記超臨界二酸化炭素を用いた分離処理を、全ての所望の画分が分離されるまで、前記第2温度および/または前記第2圧力とは異なる、上昇する温度および/または圧力で継続する第5ステップと、
前記エッセンシャルオイルの新たな画分の分離を、完全な分離が達成されるまで、または、1時間あたりの収量が出発物質の初期質量の0.1%を下回り当該画分が回収されるまで、超臨界二酸化炭素を用いて、少なくとも31℃の温度、少なくとも72.8バールの圧力および毎分1〜25%をロードする流量で、かつ二酸化炭素の流量に対して0.05〜99.95体積%の流量で一定のまたは漸増する共溶媒を用いて行う第6ステップと、
前記超臨界二酸化炭素を用いた分離処理を、全ての所望の画分が分離されるまで、先行する分離処理における温度および/または圧力および/または割合の共溶媒とは異なる、上昇する温度および/または圧力および/または割合の共溶媒を用いて継続する第7ステップと、
前記第6ステップまたは第7ステップを経た前記担体を、環境配慮型の溶媒に浸漬する第8ステップと、
前記担体の浸漬に供した環境配慮型の溶媒を、デカントまたはろ過し、続いて揮発または蒸留する第9ステップと、
分離されずに残った残留物を回収する第10ステップとのうち、
少なくとも前記第1、2、8および9ステップを順次実行するとともに、
前記第3ステップ、第4ステップおよび第6ステップのうち少なくとも2つを併せて順次実行し、
前記担体は、前記変更するエッセンシャルオイルの特性により、容積、界面化学および粒径の観点から選択される
ことを特徴とする持続可能なエッセンシャルオイル逐次分画方法。
【請求項2】
前記第3ステップ、第4ステップおよび第6ステップが実行される
ことを特徴とする請求項1に記載の持続可能なエッセンシャルオイル逐次分画方法。
【請求項3】
前記第3ステップが、超臨界二酸化炭素を用いることなく、液体二酸化炭素のみを用いて実行される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の持続可能なエッセンシャルオイル逐次分画方法。
【請求項4】
前記持続可能なエッセンシャルオイル逐次分画方法は、
不活性かつ吸着性を有する担体を用意する第11ステップと、
前記担体に、エッセンシャルオイルを1〜70質量%のロード率でロードする第12ステップと、
前記エッセンシャルオイルの第3画分の分離を、完全な分離が達成されるまで、または、1時間あたりの収量が出発物質の初期質量の0.1%を下回り当該画分が回収されるまで、液体二酸化炭素を用いて、−10〜50°Cの第3温度、20〜85バールの第3圧力および毎分1〜25%をロードする第3流量で行う第13ステップと、
前記液体二酸化炭素を用いた分離処理を、全ての所望の画分が分離されるまで、前記第3温度および/または第3圧力とは異なる、上昇する温度および/または圧力で継続する第14ステップと、
前記エッセンシャルオイルの新たな画分の分離を、完全な分離が達成されるまで、または、1時間あたりの収量が出発物質の初期質量の0.1%を下回り当該画分が回収されるまで、液体二酸化炭素を用いて、−10〜50°Cの第3温度、20〜85バールの第3圧力および毎分1〜25%をロードする流量で、かつ二酸化炭素の流量に対して0.05〜99.95体積%の流量で一定のまたは漸増する共溶媒を用いて行う第15ステップと、
前記液体二酸化炭素を用いた分離処理を、全ての所望の画分が分離されるまで、先行する分離処理における温度および/または圧力および/または割合の共溶媒とは異なる、上昇する温度および/または圧力および/または割合の共溶媒を用いて継続する第16ステップと、
前記第15または第16ステップを経た前記担体を、環境配慮型の溶媒に浸漬する第17ステップと、
前記担体の浸漬に供した環境配慮型の溶媒を、デカントまたはろ過し、続いて揮発または蒸留する第18ステップと、
分離されずに残った残留物を回収する第19ステップとのうち、
少なくとも前記第11、12、13、15、17、18および19ステップを順次実行し、
前記担体は、前記変更するエッセンシャルオイルの特性により、容積、界面化学および粒径の観点から選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の持続可能なエッセンシャルオイル逐次分画方法。
【請求項5】
前記エッセンシャルオイルは、
モミ科、ショウブ科、バンレイシ科、セリ科、サトイモ科、キク科、カバノキ科、カンラン科、ハンニチバナ科、ヒノキ科、ツツジ科、マメ科、フウロソウ科、シソ科、クスノキ科、ユリ科、アオイ科、フトモモ科、ニクズク科、モクセイ科、ラン科、マツ科、コショウ科、イネ科、バラ科、アカネ科、ミカン科、ビャクダン科、エゴノキ科、オミナエシ科、クマツヅラ科およびショウガ科に属する植物から得られたエッセンシャルオイルから選択される
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の持続可能なエッセンシャルオイル逐次分画方法。
【請求項6】
前記担体は、シリカ、アルミナ、モンモリロン石、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、ゼオライト、ポリスチレンビーズ、キトサン、多糖類、およびこれらの誘導体および/または組み合わせから選択される
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の持続可能なエッセンシャルオイル逐次分画方法。
【請求項7】
前記担体は、0.2〜1cm3/gの細孔容積、50〜1000m2/gの比表面積、5〜10mmの平均粒径、3〜11のpHおよび100〜1500g/lの密度を有する
ことを特徴とする請求項6に記載の持続可能なエッセンシャルオイル逐次分画方法。
【請求項8】
エッセンシャルオイルの前記担体へのロード率は、1〜30質量%であり、好ましくは5〜20質量%である
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の持続可能なエッセンシャルオイル逐次分画方法。
【請求項9】
前記環境配慮型の溶媒は、水または生物学的かつ持続可能な原料から得られる有機食用天然溶媒である
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の持続可能なエッセンシャルオイル逐次分画方法。
【請求項10】
前記環境配慮型の溶媒は、エタノール、乳酸エチル、アセトンおよびこれらの任意の組み合わせから選択される
ことを特徴とする請求項9に記載の持続可能なエッセンシャルオイル逐次分画方法。
【請求項11】
請求項1の第6ステップまたは請求項4の第5ステップに記載の共溶媒は、エタノールであり、1〜25体積%、好ましくは5〜15体積%の量で用いる
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の持続可能なエッセンシャルオイル逐次分画方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の持続可能なエッセンシャルオイル逐次分画方法により得られるフレーバーおよびフレグランス製品であって、
従来技術の製品と比較して、溶解性、安定性、純度および官能特性のうちの1以上が改善されている
ことを特徴とするフレーバーおよびフレグランス製品。
【請求項13】
請求項12に記載のフレーバーまたはフレグランス製品を1以上用いて調製する製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーバーおよびフレグランスの調製成分として、またはそのまま用いるエッセンシャルオイルの組成を、特定の担体と組み合わせた二酸化炭素および好適な溶媒を用いて変更する方法を開示する。本発明はまた、当該方法により生成される成分を含有するフレーバーおよびフレグランスならびに当該フレーバーおよびフレグランスを用いた用途も包含する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の目的は、エッセンシャルオイルの変更に、液体および/または超臨界二酸化炭素を溶媒として用いることである。
また、本発明の目的は、溶解性の高いエッセンシャルオイル画分を調製することである。
本発明の別の目的は、従来技術と比較して純度が改善されたエッセンシャルオイル画分を調製することである。
【0003】
本発明のさらに別の目的は、安定性に優れたエッセンシャルオイル画分を生成することである。
また、本発明の目的は、官能特性が改善されたエッセンシャルオイル画分を調製することである。
本発明の別の目的は、持続性が良好な方法を提供することである。
【0004】
本発明のさらなる目的は、エッセンシャルオイルから農薬および/またはアレルゲンを除去することである。
上記目的は、独立請求項の記載通り理解される。好ましい実施形態は従属請求項に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の第1の態様において、持続可能なエッセンシャルオイル逐次分画方法は、選択した担体との組み合わせで極性が増加する二酸化炭素溶媒に基づき行われ、不活性かつ吸着性を有する担体を用意する第1ステップと、前記担体に、エッセンシャルオイルを1〜70質量%のロード率でロードする第2ステップと、前記エッセンシャルオイルの第1画分の分離を、完全な分離が達成されるまで、または、1時間あたりの収量が出発物質の初期質量の0.1%を下回り、当該画分が回収されるまで、液体または弱超臨界二酸化炭素を用いて、−10〜50°Cの第1温度、20〜85バールの第1圧力および毎分1〜25%をロードする第1流量で行う第3ステップと、前記エッセンシャルオイルの第2画分の分離を、完全な分離が達成されるまで、または、1時間あたりの収量が出発物質の初期質量の0.1%を下回り当該画分が回収されるまで、超臨界二酸化炭素を用いて、少なくとも31℃の第2温度、少なくとも72.8バールの第2圧力および毎分1〜25%をロードする第2流量で行う第4ステップと、前記超臨界二酸化炭素を用いた分離処理を、全ての所望の画分が分離されるまで、前記第2温度および/または前記第2圧力とは異なる、上昇する温度および/または圧力で継続する第5ステップと、前記エッセンシャルオイルの新たな画分の分離を、完全な分離が達成されるまで、または、1時間あたりの収量が出発物質の初期質量の0.1%を下回り当該画分が回収されるまで、超臨界二酸化炭素を用いて、少なくとも31℃の温度、少なくとも72.8バールの圧力および毎分1〜25%をロードする流量で、かつ二酸化炭素の流量に対して0.05〜99.95体積%の流量で一定のまたは漸増する共溶媒を用いて行う第6ステップと、前記超臨界二酸化炭素を用いた分離処理を、全ての所望の画分が分離されるまで、先行する分離処理における温度および/または圧力および/または割合の共溶媒とは異なる、上昇する温度および/または圧力および/または割合の共溶媒を用いて継続する第7ステップと、前記第6ステップまたは第7ステップを経た前記担体を、環境配慮型の溶媒に浸漬する第8ステップと、前記担体の浸漬に供した環境配慮型の溶媒を、デカントまたはろ過し、続いて揮発または蒸留する第9ステップと、分離されずに残った残留物を回収する第10ステップとのうち、少なくとも前記第1、2、8および9ステップを順次実行するとともに、前記第3ステップ、第4ステップおよび第6ステップのうち少なくとも2つを併せて順次実行し、前記担体は、前記変更するエッセンシャルオイルの特性により、容積、界面化学および粒径の観点から選択される。
【0006】
前記方法において、前記第3ステップ、第4ステップおよび第6ステップの全てが実行される。あるいは、必要に応じて追加的ステップを間に実行することにより、前記第3ステップ、第4ステップおよび第6ステップのいずれかを省略できる。
本発明の好適な態様において、前記第3ステップ、第4ステップおよび第6ステップの全てを実行する。
【0007】
好適には、前記第3ステップは、液体二酸化炭素を用いて実行される。前記第3ステップが弱超臨界二酸化炭素を用いて実行される場合、前記第4ステップよりも低い温度および/または圧力で実行される。
前記第6ステップでは、共溶媒の量を定数として追加できる。または、共溶媒の量を、傾斜的にまたは段階的に徐々に増加させて追加できる。
【0008】
中間生成物は、減圧により回収される。
本発明の別の態様において、前記持続可能なエッセンシャルオイル逐次分画方法は、不活性かつ吸着性を有する担体を用意する第11ステップと、前記担体に、エッセンシャルオイルを1〜70質量%のロード率でロードする第12ステップと、前記エッセンシャルオイルの第3画分の分離を、完全な分離が達成されるまで、または、1時間あたりの収量が出発物質の初期質量の0.1%を下回り当該画分が回収されるまで、液体二酸化炭素を用いて、−10〜50°Cの第3温度、20〜85バールの第3圧力および毎分1〜25%をロードする第3流量で行う第13ステップと、前記液体二酸化炭素を用いた分離処理を、全ての所望の画分が分離されるまで、前記第3温度および/または第3圧力とは異なる、上昇する温度および/または圧力で継続する第14ステップと、前記エッセンシャルオイルの新たな画分の分離を、完全な分離が達成されるまで、または、1時間あたりの収量が出発物質の初期質量の0.1%を下回り当該画分が回収されるまで、液体二酸化炭素を用いて、−10〜50°Cの第3温度、20〜85バールの第3圧力および毎分1〜25%をロードする流量で、かつ二酸化炭素の流量に対して0.05〜99.95体積%の流量で一定のまたは漸増する共溶媒を用いて行う第15ステップと、前記液体二酸化炭素を用いた分離処理を、全ての所望の画分が分離されるまで、先行する分離処理における温度および/または圧力および/または割合の共溶媒とは異なる、上昇する温度および/または圧力および/または割合の共溶媒を用いて継続する第16ステップと、前記第15または第16ステップを経た前記担体を、環境配慮型の溶媒に浸漬する第17ステップと、前記担体の浸漬に供した環境配慮型の溶媒を、デカントまたはろ過し、続いて揮発または蒸留する第18ステップと、分離されずに残った残留物を回収する第19ステップとのうち、少なくとも前記第11、12、13、15、17、18および19ステップを順次実行し、前記担体は、前記変更するエッセンシャルオイルの特性により、容積、界面化学および粒径の観点から選択される。
【0009】
本発明で使用可能なエッセンシャルオイルは、特に限定されず、国際標準化機構ISO4729:2009に列挙されているものを用いることができる。好ましくは以下に属する植物から得られたエッセンシャルオイルから選択されるが、これらに限定されない:モミ科(Abietaceae)、ショウブ科(Acoraceae)、バンレイシ科(Annonaceae)、セリ科(Apiaceae、保留名:Umbelliferae)、サトイモ科(Araceae)、キク科(Asteraceae、保留名:Compositae)、カバノキ科(Betulaceae)、カンラン科(Burseraceae)、ハンニチバナ科(Cistaceae)、ヒノキ科(Cupressaceae)、ツツジ科(Ericaceae)、マメ科(Fabaceae)、フウロソウ科(Geraniaceae)、シソ科(Lamiaceae、保留名:Labiatae)、クスノキ科(Lauraceae)、ユリ科(Liliaceae)、アオイ科(Malvaceae)、フトモモ科(Myrtaceae)、ニクズク科(Myristicaceae)、モクセイ科(Oleaceae)、ラン科(Orchidaceae)、マツ科(Pinaceae)、コショウ科(Piperaceae)、イネ科(Poaceae、保留名:Gramineae)、バラ科(Rosaceae)、アカネ科(Rubiaceae)、ミカン科(Rutaceae)、ビャクダン科(Santalaceae)、エゴノキ科(Styracaceae)、オミナエシ科(Valerianaceae)、クマツヅラ科(Verbenaceae)およびショウガ科(Zingiberaceae)。
【0010】
より好ましくは、セリ科(Apiaceae)、キク科(Asteraceae)、シソ科(Lamiaceae)、ニクズク科(Myristicaceae)およびミカン科(Rutaceae)から選択される。
出発物質に用いるエッセンシャルオイルは、供給業者から入手または好適な原材料から抽出される。当該出発物質はフレーバー含有量が変化するため、プロファイルを分析する必要がある。選択するフレーバー含有量の変化によって、エッセンシャルオイルごとに化学組成物が相違することは公知である。
【0011】
本発明に用いることのできる不活性かつ吸着性を有する担体は、中性、塩基性および酸性のいずれでもよく、当技術分野において公知のあらゆる担体材料から選択できるが、エッセンシャルオイルの成分に対して不活性でなければならない。また、当該担体は、エッセンシャルオイルの性質上求められる特定の容積、界面化学および粒径を有する、互いに分離した材料または材料群のうちの少なくとも一つに対して、親和性がなければならない。当該担体は、例えばガラスビーズでもよいが、表面積が大きいほうが好ましいため、細かく粉砕した状態もしくは多孔質の状態で提供される。
【0012】
当該担体はあらゆる多孔質材料から選択できる。一般的には以下から選択される:シリカ、アルミナ、モンモリロン石、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、ゼオライト、ポリスチレンビーズ、キトサン、多糖類、およびこれらの誘導体および/または組み合わせ。好適な担体材料は、例えば以下から選択できる:Celite Corporationが製造するCelite S(登録商標)、Celite 110(登録商標)、Celite 209(登録商標)、Celite 281(登録商標)、Celite 503(登録商標)、Celite 512M(登録商標)、Celite 545(登録商標)、Celite 545AW(登録商標)、Celite 560(登録商標)、Celite 577F(登録商標)およびCelite 535(登録商標)、酸性アルミナ(アルミナA)、塩基性アルミナ(アルミナB)、中性アルミナ(アルミナN)、Sigma−Aldrich Co. LLCが製造するAscarite(登録商標)およびFlorisil(登録商標)、ならびSigma−Aldrich Co. LLCが製造するベントナイト、カオリナイトおよび酸性白土。
【0013】
好ましくは、多孔質の担体材料は以下のような一般的な特性を有する:0.2〜1cm3/gの細孔容積;比表面積は特に限定されないが、一般的には50〜1000m2/g;5〜10mmの平均粒径;3〜11のpH;および100〜1500g/lの密度。
好ましくは、前記担体材料は、無水から最大4体積%までの範囲で含水率が低く、必要に応じて焼成できる。
【0014】
担体の性質は、エッセンシャルオイルから農薬を抽出する能力に影響を及ぼす。農薬が、窒素基、リン基およびヘテロ原子基などを含む広範囲の極性基を有することは公知である。これらの基を結合してエッセンシャルオイルから除去できるように、担体を選択しなければならない。
最大効率が発揮されるように、変更するエッセンシャルオイルの性質によって、表面化学、多孔性および粒径を選択する。担体の性質は、担体と吸着される材料との結合強度に影響を及ぼす。担体は、結合強度のほとんどない、セライトやベントナイトなどの錯体であってもよい。あるいは、結合力の強い、酸性、中性、または塩基性のアルミナであってもよい。したがって、担体は、所望の分離レベルや分離する材料の性質に応じて、選択または調整する。例えば、中性アルミナ担体から酸性アルミナ担体に移動すると、画分分布もより極性の画分の方にずれ、担体との相互作用が大きくなることが観察されている。
【0015】
エッセンシャルオイルの前記担体へのロード率は、1〜70質量%、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%である。
第1の分離では、液体二酸化炭素または弱超臨界二酸化炭素を、−10〜50℃の温度、20〜85バールの圧力および好適には毎分5〜15%ロードする流量で、45分〜1時間の間用いるのが好ましい。
【0016】
後続の分離では、液体二酸化炭素または弱超臨界二酸化炭素を用いる。次第により極性の高い条件を用いたり、温度および/または圧力を上昇させたりしながら、温度および圧力を選択して所望のアロマを分離する。
超臨界点を超えると、温度および/または圧力を選択および調整して、広範囲の分子を分画する。
【0017】
超臨界二酸化炭素はさらに、共溶媒を一定の割合で含むことができる。これにより、溶媒の極性が増加し、異なる分離生成物を得ることができる。追加する共溶媒の割合は、0.05〜99.95体積%、好ましくは1〜25体積%、より好ましくは5〜15体積%である。
本発明において用いることのできる環境配慮型の溶媒は、水または生物学的かつ持続可能な原料から得られる有機食用天然溶媒であり、例えばエタノール、乳酸エチル、アセトンおよびこれらの任意の組み合わせから選択される。本発明で用いる溶媒および二酸化炭素は、純度が99.9%であり、食用である。
【0018】
分画溶媒および抽出溶媒として超臨界二酸化炭素を用いることの重要な利点は、超臨界二酸化炭素を、その表面張力が「ゼロ」であるために容易に除去できること、そのため溶媒を含有しない製品を製造できることである。
本発明の別の利点は、農薬およびアレルゲンを選択的に除去できることである。
本発明はまた、前記本発明の方法により得られるフレーバーおよびフレグランス製品を開示する。当該製品は従来技術の製品と比較して、溶解性、安定性、純度および官能特性のうちの1以上が油でも水でも改善されている。
【0019】
本発明に係るフレーバーおよびフレグランス製品は、食用溶媒を用いて得られるため、不所望の汚染物質が残留してしまうという不利益を被ることがない。さらに、農薬は担体材料に結合されるため、実質的にはエッセンシャルオイルから除去されている。従来技術のフレーバーおよびフレグランス製品に典型的に見られる、パラシメンやシトラールジエチルアセタールのような不所望な化合物は、高温および/または酸性物質の存在により引き起こされる二次化学反応によって生じる。あるいは、以前行われた分離工程において必要とされていた、または存在していたものである。本発明の方法における温度範囲は、従来技術の温度範囲よりもはるかに低いため、転位反応は好ましくない。これにより、これらの不所望の化合物を実質的に含有しないフレーバーおよびフレグランスが生成されることとなる。
【0020】
本発明により調製される液体画分は、飲食品に使用したり、フレーバーおよびフレグランス製品に変換したりできる。あるいは、粉末形態に変換してカプセル化することもできる。そのような粉末カプセルは、直接的な使用や、食品産業および香料産業のフレーバーおよびフレグランス製品における使用ができる。
本発明は、さらに、前記本発明のフレーバーおよびフレグランス製品を用いて調製される製品を包含する。
【発明の効果】
【0021】
したがって、本発明は、エッセンシャルオイルを変更するために連続溶媒流を用いる逐次バッチ方法を開示する。当該方法は、特定の担体との組み合わせで極性が増加する二酸化炭素溶媒に基づき行われる。当該方法は、持続性が高く、組成物を変更した環境配慮型のアロマ製品を調製するために、従来技術の製品と比較して以下に示す1以上の項目において改善が見られる:水溶性または油溶性、安定性、農薬などの不所望な汚染物質のレベル、純度および官能品質。
【0022】
温度および/または圧力および/または共溶媒の添加量の増加とともに、二酸化炭素溶媒の極性は増加する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】液体二酸化炭素、超臨界二酸化炭素およびエタノールと混合した超臨界二酸化炭素をそれぞれ用いて得られたレモンオイルの収率を示す。
図2】テルペンレスレモンオイルについて、二酸化炭素を用いた分画工程と溶媒向流工程との比較を示す。
図3】レモンオイルの画分1、2および3のクロマトグラムであり、画分1は、圧力80バールおよび温度35℃で二酸化炭素を用いて得られ、画分2は、圧力300バールおよび温度45℃で二酸化炭素を用いて得られ、画分3は、圧力300バールおよび温度45℃で10体積%のエタノールと混合した超臨界二酸化炭素を用いて得られたものである。
図4】エタノールに6時間暴露した後にテルペンレスオイル画分を採取した、本発明の逐次方法を示すものであり、シトラールジエチルアセタールが存在しなかったことを表す。
図5図4と同一の逐次方法を示すものであるが、エタノールに24時間暴露した後にテルペンレスオイル画分を採取した点で相違し、シトラールジエチルアセタールが存在したことを表す。
図6】エタノールとシトラールとの間で生じる反応により、シトラールジエチルアセタールが形成されたことを表す。
図7】クローブオイルGSL2066のスペクトルを表す。
図8】クローブオイル画分のクロマトグラムであり、画分1〜5は、圧力70バールおよび温度5℃で液体二酸化炭素を用いて得られ、画分6〜15は、圧力70バールおよび温度5℃で液体二酸化炭素を用いて得られ、最後の画分は、圧力300バールおよび温度45℃で超臨界二酸化炭素を用いて得られたものである。
図9】液体二酸化炭素、超臨界二酸化炭素およびエタノールと混合した超臨界二酸化炭素をそれぞれ用いて得られたクローブオイルの収率を示す。
図10】ペパーミントオイルRM3039のスペクトルを表す。
図11】ペパーミントオイル画分のクロマトグラムであり、画分1〜3は、圧力70バールおよび温度5℃で液体二酸化炭素を用いて得られ、画分4〜15は、圧力70バールおよび温度5℃で液体二酸化炭素を用いて得られ、画分16は、圧力300バールおよび温度45℃で超臨界二酸化炭素を用いて得られ、最後の画分は、圧力300バールおよび温度45℃で10体積%のエタノールと混合した超臨界二酸化炭素を用いて得られたものである。
図12】液体二酸化炭素、超臨界二酸化炭素およびエタノールと混合した超臨界二酸化炭素をそれぞれ用いて得られたペパーミントオイルの収率を示す。
図13】ゼラニウム(geranium)オイル(ブルボン)のスペクトルを表す。
図14】ゼラニウムオイル画分のクロマトグラムであり、圧力70バールおよび温度5℃で液体二酸化炭素を用いて得られた画分、圧力300バールおよび温度45℃で超臨界二酸化炭素を用いて得られた画分、ならびに圧力300バールおよび温度45℃で10体積%のエタノールと混合した超臨界二酸化炭素を用いて得られたものである。
図15】液体二酸化炭素、超臨界二酸化炭素およびエタノールと混合した超臨界二酸化炭素をそれぞれ用いて得られたゼラニウムオイルの収率を示す。
図16】アルミナを担体として、液体二酸化炭素、超臨界二酸化炭素およびエタノールと混合した超臨界二酸化炭素をそれぞれ用いて得られたレモンオイルの収率を示す。
図17】アルミナを担体として得られたレモンオイルのクロマトグラムであり、圧力70バールおよび温度5℃で液体二酸化炭素を用いて得られた画分、圧力350バールおよび温度45℃で超臨界二酸化炭素を用いて得られた画分、ならびに圧力350バールおよび温度45℃で10体積%のエタノールと混合した超臨界二酸化炭素を用いて得られた画分である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0024】
レモンオイル、クローブオイル、ペパーミントオイルおよびゲラニウムオイルは、Sensient Flavors Ltdから入手した。
シリカ担体としてのDavisil(登録商標)60は、W. Grace and Companyから入手した。比表面積(BET)は550m2/g、平均粒径は60μm、細孔容積は0.9cm3/g、pHは5.7、密度は720g/lである。
【0025】
アルミナ担体としてのACTAL−UG 1は、ALTANA AGから入手した。比表面積(BET)は200mm2/g、平均粒径は60〜80μm、細孔容積は0.25cm3/g、phは9.5〜10.5、密度は1000g/lである。液体二酸化炭素は、BOC(現Linde)から入手した。
エタノールは、発酵度が96%のものをHayman Ltd.から入手した。
【0026】
1000ml抽出器を用いてThar Process Inc.の抽出装置で抽出試験を実施した。
担体を以下の通り調製した:ゲラニウムオイル、ペパーミントオイルおよびクローブオイルなどの非柑橘系オイルをロードする10重量%の無機担体;およびレモンオイルなどの柑橘系オイルをロードする50重量%の無機担体。無機担体をリボンミキサーに収容して、飽和に達するまで徐々にオイルを追加した。
【0027】
次に、以下の通り抽出を行った。冷却機の温度を、CO2ポンプが0°C、冷却トラップが0℃となるように設定した。充填密度は、非柑橘系オイルについては460g/Lであり、柑橘系オイルについては600g/Lであった。ロングスパチュラを用いて粉末を流動化して抽出器の内容物を密集させ、内部リムおよびねじ山に付着した全ての粉末を除去して、抽出器を閉じた。CO2入口ライン上にある手動背圧レギュレータ(BPR)を用いて、シリンダ入口の圧力を50バールに設定した。インラインヒータおよび抽出器を停止し、液体二酸化炭素を抽出するために分離器を45℃まで加熱した。
【0028】
第1の抽出では、液体二酸化炭素を、温度5℃および圧力70バールで、非柑橘系オイルについては毎分10gの流量で、柑橘系オイルについては毎分15gの流量で導入した。当該圧力に到達すると、分離器の背圧を70バールに調整した。最後のサンプルを採取すると、冷却トラップの内容物を排水した。完了後はCO2ポンプを停止し、分離器の背圧を解除した。分離器および冷却トラップをエタノールで洗浄し、洗浄液を廃棄した。完全に乾燥させると、蓋を再装着して締めた。
【0029】
第2の抽出では、超臨界二酸化炭素を用いた。自動背圧レギュレータ(ABPR)を300バールに設定し、抽出器の温度を45℃まで上昇させた。当該温度に到達すると、二酸化炭素の導入を、非柑橘系オイルについては毎分10gの流量で、柑橘系オイルについては毎分15gの流量で行った。当該圧力に到達すると、分離された画分を採取した。完了後はCO2ポンプを停止し、背圧を解除し、分離器を排水した。洗浄液を廃棄し、トラップ内の揮発性物質を別の容器に回収した。トラップを開いてエタノールで洗浄し、洗浄液を廃棄した。そしてトラップおよび分離器を再度組み立てた。
【0030】
第3の抽出では、超臨界二酸化炭素を用い、共溶媒としてエタノールを用いた。共溶媒ポンプにエタノールを差し、バルブを徐々に開放して圧力を超臨界二酸化炭素流と平衡させた。ABPRの設定を徐々に300バールまで減圧し、抽出器の温度を45℃まで下降させた。当該温度に到達すると、二酸化炭素の導入を、非柑橘系オイルについては毎分10gの流量で、柑橘系オイルについては毎分15gの流量で行った。10体積%相当のエタノールが、非柑橘系オイルについては毎分1gの流量、柑橘系オイルについては毎分1.5gの流量になるように、共溶媒ポンプを開放した。サンプルを採取し、分離器およびトラップの内容物を同一のフラスコに排出した。共溶媒ポンプを停止した後もCO2ポンプはしばらく稼働させて、これを最終画分に追加した。
【0031】
操作が終了すると、プラントを以下の通り十分に清掃した:プラントを減圧し、全ての加熱器を停止した。抽出器の内容物をプラスチックビーカーに投入し、抽出器を電気掃除機で清掃した。トラップおよび分離器をエタノールで洗浄し、乾燥させた。そしてプラントを再度組み立てた。
化合物の同定は、算出したコバッツ保持指数、マススペクトルライブラリ(NISTおよびAdams)との比較、および標準成分との比較とに基づき行った。
【実施例1】
【0032】
シリカ担体としてのDavisil(登録商標)(W. Grace and Company)に、冷加圧した50重量%のレモンオイルをロードした。
レモンオイルの3段階逐次抽出を、液体二酸化炭素、超臨界二酸化炭素、および10体積%のエタノールを混合した超臨界二酸化炭素を用いてそれぞれ行った。液体二酸化炭素を用いて分画した画分および超臨界二酸化炭素を用いて分画した画分は、いずれもテルペン炭化水素からなる。超臨界二酸化炭素を用いて分画した画分には、セスキテルペン炭化水素も残留した。10体積%のエタノールを混合した超臨界二酸化炭素を用いて分画した画分には明確に相違があった:すなわち、主にシトラールを含有し、モノテルペン炭化水素またはセスキテルペン炭化水素を含有しないことにより、テルペン炭化水素を含有しないオイルを生成できる。
【0033】
図1に、種々の二酸化炭素の分離による収率を示す。液体二酸化炭素を用いて分画した画分が主画分であり、出発物質の92.50%を占める。10体積%のエタノールを混合した超臨界二酸化炭素を用いて得られたテルペンレスオイルは、出発物質の約4.9%である。
図2は、二酸化炭素を用いた分画工程および従来技術による工業用の向流工程からそれぞれ得られるテルペンレスレモンオイルのクロマトグラムである。2つの工程では、分析的にも官能特性的にもほぼ同一であるテルペンレスオイルを生成した。テルペン炭化水素を除去して溶解性および安定性を向上させた。向流工程での溶媒は、ヘキサン、エタノールおよび水を含む。エタノールがレモンオイルと接触すると、ジエチルアセタール(DEA)が不所望に形成されることがある。エタノールへの高温での長時間の暴露を排除すれば、この副反応は回避できる。DEAの形成を2つの試験で検討した。
【0034】
図3に第1の試験を示す。温度35℃および圧力80バールと温度45℃および圧力300バールという2つの異なる条件で、超臨界二酸化炭素を用いた逐次的抽出を行った。また、温度45℃および圧力300バールで、10体積%のエタノールを混合した超臨界二酸化炭素を用いた抽出を行った。エタノールを混合した超臨界二酸化炭素を用いて分画した画分は、テルペンレスオイルからなる。
【0035】
図4は、6時間のうちに採取されたテルペンレスオイルを示し、シトラールDEAは観察されなかった。図5では、テルペンレスオイルは、24時間エタノールと接触したままであった。当該クロマトグラムには、シトラールDEAの存在を示す追加的なピークが現れている:図6で説明されるように、シトラールDEAは、エタノールとの副反応として形成される。このような不所望な反応は、本発明の連続的かつ逐次的処理によって回避できる。
【実施例2】
【0036】
シリカ担体であるダヴィシルに、10重量%のクローブオイルをロードした。
クローブオイルの2段階逐次抽出を、液体二酸化炭素および超臨界二酸化炭素を用いてそれぞれ行った。図7に示すように、出発物質としてのクローブオイルは、主にオイゲノール、カリオフィレンおよびカリオフィレン酸化物からなる。図8のクロマトグラムによれば、オイゲノールおよびカリオフィレンは明確に分離している。
【0037】
液体二酸化炭素を用いてカリオフィレンを分離した。超臨界二酸化炭素を用いて、オイルの単一成分としてオイゲノールを抽出した。さらに、この分離を拡張して、エタノールを混合した超臨界二酸化炭素を用いてカリオフィレン酸化物を除去することもできる。逐次抽出の最初の2時間で、ほぼ全てのカリオフィレンを除去した。
図9に、液体二酸化炭素、超臨界二酸化炭素およびエタノールを混合した超臨界二酸化炭素を用いてそれぞれ得られた収率を示す。
【0038】
出発物質としてのオイル、液体二酸化炭素および超臨界二酸化炭素それぞれの画分は全て、フレーバーおよびアロマにおいて明確な相違があったが、超臨界二酸化炭素の画分は、液体二酸化炭素の画分よりも出発物質の画分に類似していた。液体二酸化炭素の画分は、えぐ味(harsh)、ウッディ、スパイシー、クローブ様といった特徴を表した。一方、超臨界二酸化炭素の画分は、ウッディ、フローラル、スパイシー、フレッシュ、および典型的なクローブといった特徴を表した。
【実施例3】
【0039】
シリカ担体であるダヴィシルに、10重量%のペパーミントオイルをロードした。出発物質としてのペパーミントオイルの化学組成は、図10に示すように、主にメントン、メントールおよび酢酸メチルからなる。
メントフランは、ペパーミントオイル中に見出される共通分子であり、生物学的活性因子(BAP)に指定されており、香料および香料特性を有する特定の食品成分に関する規則(EC)第1334/2008号に基づいて食品用途が規制されている。
【0040】
ペパーミントオイルの3段階逐次抽出を、液体二酸化炭素、超臨界二酸化炭素および10体積%のエタノールを混合した超臨界二酸化炭素を用いてそれぞれ行った。抽出によって、この規制物質を選択的に除去した。
図11に示すように、第1の抽出では液体二酸化炭素を使用してメントフランを選択的かつ完全に抽出し、これにより以降の画分にメントールが含有されないようにした。10体積%のエタノールを混合した超臨界二酸化炭素を用いて抽出することにより、メントール性の高い画分を明確に分離できた。
【0041】
図12に、液体二酸化炭素、超臨界二酸化炭素および10体積%のエタノールを混合した超臨界二酸化炭素を用いて行った抽出による収率分布を示す。
【実施例4】
【0042】
シリカ担体であるダヴィシルに、10重量%のゼラニウムオイルをロードした。出発物質としてのゼラニウムオイルの化学組成は、図13に示すように、テルペンアルコール、炭化水素、ケトンおよびエステルの混合物からなる。リナロール、シトロネロールおよびゲラニオールは、ゼラニウムオイルの鍵分子であり、EUの化粧品指令、第7改訂(2003/15/EC)の付録III、第1部に基づき規制されたアレルゲンとして列挙されている。
【0043】
ゼラニウムオイルの3段階逐次抽出を、液体二酸化炭素、超臨界二酸化炭素および10体積%のエタノールを混合した超臨界二酸化炭素を用いてそれぞれ行った。これら3つの不要な分子を選択的に抽出した。液体二酸化炭素の画分には3つのアレルゲン全てが全く含まれていなかった。図14に示すように、エタノールを混合した超臨界二酸化炭素を用いて、これら3つのアレルゲンを選択的に抽出した。
【0044】
図15に、液体二酸化炭素、超臨界二酸化炭素および10体積%のエタノールを混合した超臨界二酸化炭素を用いてそれぞれ行った抽出による収率分布を示す。
【実施例5】
【0045】
冷加圧したレモンオイルは、Sensient Flavors Ltdから入手した。液体二酸化炭素は、BOC(現Linde)から入手した。エタノールは、Hayman Ltd.から入手した発酵度が96%のものを使用した。1000ml抽出器を用いてThar Process Inc.の抽出装置で抽出試験を行った。
担体には、ALTANA AG製のアルミナ担体であるACTAL−UG 1を用いて、以下の通り調製した:900gの無機担体をステンレスボウルに量り入れ、目に見える塊のない自由流動性粉末が得られるまで、100gのレモンオイルをオービタルミキサーで添加した。
【0046】
次に、以下の通り抽出を行った。冷却機の温度を、CO2ポンプが0°C、冷却トラップが5°Cとなるように設定した。担持状態にある990gのオイルを1000ml抽出器にロードした。ロングスパチュラを用いて粉末を流動化して抽出器の内容物を密集させ、内部リムおよびねじ山に付着した全ての粉末を除去して、抽出器を閉じた。CO2入口ライン上にある手動背圧レギュレータ(MBPR)を用いて、シリンダ入口の圧力を50バールに設定した。インラインヒータおよび抽出器を停止し、分離器を40℃まで加熱した。
【0047】
第1の抽出では、液体二酸化炭素を、温度5℃および圧力70バールで、毎分15gの流量で導入した。当該圧力に到達すると、分離器の背圧を15バールに調整し、画分の重さが1gを下回るまで15分ごとにサンプルを採取した。最後のサンプルを採取すると、冷却トラップの内容物を排水した。完了後はCO2ポンプを停止し、分離器の背圧を解除した。分離器および冷却トラップをエタノールで洗浄し、洗浄液を廃棄した。完全に乾燥させると、蓋を再装着して締めた。
【0048】
第2の抽出では、超臨界二酸化炭素を用いた。自動背圧レギュレータ(ABPR)を350バールに設定し、抽出器の温度を45℃まで上昇させた。当該温度に到達すると、二酸化炭素を毎分15gの流量で導入した。当該圧力に到達すると、分離器の背圧を15バールに調整し、60分後に画分を採取した。完了後はCO2ポンプを停止し、背圧を解除し、分離器をエタノールで洗浄した。洗浄液を廃棄し、トラップ内の揮発性物質を別の容器に回収した。トラップを開いてエタノールで洗浄し、洗浄液を廃棄した。そしてトラップおよび分離器を再度組み立てた。
【0049】
第3の抽出では、超臨界二酸化炭素を用い、共溶媒としてエタノールを用いた。共溶媒ポンプにエタノールを差し、バルブを徐々に開放して、圧力350バールおよび温度45℃という第2の抽出と同じ条件で、圧力を超臨界二酸化炭素流と平衡させ、二酸化炭素を毎分13.5gの流量で導入した。当該圧力に到達すると、分離器の背圧を15バールに調整し、10体積%相当のエタノールが毎分1.5gの流量になるように、共溶媒ポンプを開放した。3時間の間毎時間サンプルを採取し、30分ごとに分離器およびトラップの内容物を同一のフラスコに排出した。3時間後に共溶媒ポンプを停止した後もCO2ポンプをさらに30分稼働させて、これを最終画分に追加した。
【0050】
操作が終了すると、プラントを以下の通り十分に清掃した:プラントを減圧し、全ての加熱器を停止した。抽出器の内容物をプラスチックビーカーに投入し、抽出器を電気掃除機で清掃した。トラップおよび分離器をエタノールで洗浄し、乾燥させた。そしてプラントを再度組み立てた。
化合物の同定は、算出したコバッツ保持指数、マススペクトルライブラリ(NISTおよびAdams)との比較および標準成分との比較に基づき行った。
【0051】
図16に、種々の二酸化炭素を用いて分画した画分の収率を示す。液体二酸化炭素を用いて分画した画分が主画分であり、出発物質に用いるオイルの69.77%を占める。本実施例では、超臨界二酸化炭素を用いて分画した画分は、非常に小さな画分であり、液体二酸化炭素と組成がほぼ同一であり、この担体に対する大変強い結合を示す。
図17は、液体二酸化炭素を用いて分画した画分、超臨界二酸化炭素を用いて分画した画分および10体積%のエタノールを混合した超臨界二酸化炭素を用いて分画した画分のクロマトグラムである。後者の場合、アルデヒドおよびアルコールの両方を同一の画分で回収し、DEAの形成は観察されない。実施例1および5はいずれもレモンオイルについて行ったが、担体にはそれぞれシリカおよびアルミナを用いた。これら実施例を比較すれば、担体の重要性が理解できる。画分の収率の差は結合強度の差を表している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】