(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-531118(P2017-531118A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(54)【発明の名称】排ガス処理のためのゾーン化触媒
(51)【国際特許分類】
F01N 3/28 20060101AFI20170922BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20170922BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20170922BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20170922BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20170922BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20170922BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20170922BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20170922BHJP
B01D 53/92 20060101ALI20170922BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20170922BHJP
【FI】
F01N3/28 301P
F01N3/08 BZAB
F01N3/28 301D
F01N3/28 301G
F01N3/24 E
F01N3/08 A
F01N3/10 A
F01N3/022 C
F01N3/035 A
F01N3/035 E
B01J35/04 301L
B01D53/94 222
B01D53/94 400
B01D53/92 222
B01D53/14 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-506696(P2017-506696)
(86)(22)【出願日】2015年7月30日
(85)【翻訳文提出日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】IB2015055769
(87)【国際公開番号】WO2016020806
(87)【国際公開日】20160211
(31)【優先権主張番号】62/034,458
(32)【優先日】2014年8月7日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ゾンターク, オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ゲンショウ, ティム
(72)【発明者】
【氏名】ニューマン, アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ティンゲイ, イザベル
(72)【発明者】
【氏名】スメドラー, グドムント
【テーマコード(参考)】
3G091
3G190
4D002
4D020
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA18
3G091AB02
3G091AB05
3G091AB09
3G091AB13
3G091BA01
3G091BA14
3G091CA17
3G091GA06
3G091GA16
3G091GB01W
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3G091GB07W
3G091GB09X
3G091GB10W
3G091HA08
3G091HA09
3G091HA16
3G091HA18
3G190AA12
3G190BA02
3G190CA03
3G190CA13
3G190CB13
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3G190CB23
3G190CB26
3G190CB28
4D002AA12
4D002AC10
4D002BA03
4D002CA07
4D002DA01
4D002DA03
4D002DA04
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4D002DA21
4D002DA25
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4G169AA03
4G169BA07A
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4G169DA05
4G169EA18
4G169EC28
4G169EE09
4G169ZA14A
4G169ZA19A
4G169ZA39A
4G169ZA41A
4G169ZC04
4G169ZF05A
(57)【要約】
第1のアンモニア貯蔵能力を有する鉄担持中細孔又は大細孔モレキュラーシーブを含む第1のSCR触媒ゾーンと;第2のアンモニア貯蔵能力を有する銅担持小細孔モレキュラーシーブを含む第2のSCR触媒ゾーンとを含む、排ガスを処理するためのシステムであって、システムを通る通常の排ガスの流れに対して第1のSCR触媒ゾーンが第2のSCR触媒ゾーンの上流に配置されており、第2のアンモニア貯蔵能力が第1のアンモニア貯蔵能力よりも高い、システムが提供される。排ガスを処理するためのシステムの使用方法も提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. 第1のアンモニア貯蔵能力を有する鉄担持中細孔又は大細孔モレキュラーシーブを含む第1のSCR触媒ゾーンと;
b. 第2のアンモニア貯蔵能力を有する銅担持小細孔モレキュラーシーブを含む第2のSCR触媒ゾーンと
を含む、排ガスを処理するためのシステムであって、システムを通る通常の排ガスの流れに対して第1のSCR触媒ゾーンが第2のSCR触媒ゾーンの上流に配置されており、第2のアンモニア貯蔵能力が第1のアンモニア貯蔵能力よりも高い、システム。
【請求項2】
第1のアンモニア貯蔵能力が約1.5mmol/g触媒以下であり、第2のアンモニア貯蔵能力が少なくとも約1.2mmol/g触媒である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
第1のSCR触媒ゾーンと第2のSCR触媒ゾーンとの間に配置されている触媒を含まない、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
第1のSCR触媒ゾーンが銅を実質的に含まず、第2の触媒ゾーンが鉄を実質的に含まない、請求項1から3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
第1のSCR触媒ゾーンが、BEA骨格を有する鉄担持モレキュラーシーブを含む、請求項1から4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
第2のSCR触媒ゾーンが、CHA、AEI、AFX、及びAFTから選択される骨格を有する銅担持モレキュラーシーブを含む、請求項1から5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
第1のSCR触媒ゾーンのモレキュラーシーブ及び第2のSCR触媒ゾーンのモレキュラーシーブが独立に約10から約50のシリカ対アルミナ比を有する、請求項1から6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
第1及び第2のSCR触媒ゾーンが、入口端、出口端、及び入口端から出口端まで測定された軸長を有する流通型ハニカム基材上にコーティングされており、第1及び第2のSCR触媒ゾーンが隣接している又は少なくとも部分的に重なっている、請求項1から7の何れか一項に記載のシステム。
【請求項9】
第2のSCR触媒ゾーンの下流に酸化触媒ゾーンをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
第2のSCR触媒ゾーンが酸化触媒ゾーンに完全に重なっている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
第1のSCR触媒ゾーンが、入口端及び出口端を有するウォールフロー型フィルタ上にあり、第2のSCR触媒ゾーンが流通型ハニカム基材上にあり、ただし第1のSCR触媒ゾーンと第2のSCR触媒ゾーンとの間に介在する触媒がないことを条件とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
第1のSCR触媒ゾーンの上流に配置されている部分的NOx吸収剤をさらに含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
フィルタの上流で窒素系還元剤を導入するための第1の還元剤供給部、及びフィルタと流通型ハニカム基材との間で窒素系還元剤を導入するための第2の還元剤供給部をさらに含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
第2のSCR触媒ゾーンの下流にある流通型基材上にコーティングされているアンモニアスリップ触媒をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
アンモニア及び内燃機関から生じる排ガスの混合物を、(a)アンモニア貯蔵能力が約1.5mmol NH3/g以下である鉄担持モレキュラーシーブを含む第1のSCRゾーン、及び(b)アンモニア貯蔵能力が少なくとも約1.2mmol NH3/g触媒である銅担持モレキュラーシーブを含む第2のSCRゾーンと、順に接触させる工程を含み、ただし鉄担持モレキュラーシーブが銅担持モレキュラーシーブと比較してより低いアンモニア貯蔵能力を有することを条件とする、排ガスの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゾーン化触媒のシステム及び燃焼排ガスの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン内の炭化水素系燃料の燃焼は、比較的無害な窒素(N
2)、水蒸気(H
2O)、及び二酸化炭素(CO
2)を主に含有する排ガスを生成する。しかし排ガスは、比較的少量の、有害及び/又は毒性の物質、例えば不完全燃焼による一酸化炭素(CO)、未燃燃料からの炭化水素(HC)、過剰な燃焼温度による窒素酸化物(NO
x)、及び粒子状物質(大部分はすす)なども含有する。排気筒及び雰囲気中に放出される排ガスの環境への影響を緩和するために、好ましくは同様に他の有害又は毒性の物質を生じさせないプロセスによって、望ましくない成分を除去する、又は望ましくない成分の量を減少させることが望ましい。
【0003】
典型的には、希薄燃焼ガスエンジンからの排ガスは、炭化水素燃料の適切な燃焼を確実にするために供給される高い割合の酸素に起因して、正味の酸化効果を有する。そのようなガスにおいて、除去するのに最も負荷の大きい成分の1つはNO
xであり、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO
2)、及び亜酸化窒素(N
2O)が含まれる。排ガスが、還元の代わりに酸化反応を好むのに十分な酸素を含有するため、NO
xからN
2への還元は特に問題となる。それにもかかわらず、NO
xは選択的触媒還元(SCR)として一般に知られるプロセスによって還元できる。SCR法は、触媒の存在下でアンモニアなどの還元剤を用いて、NOxを窒素元素(N
2)及び水に転化させることを含む。SCR法では、排ガスをSCR触媒と接触させる前に、アンモニアなどのガス状還元剤を排ガス流へ加える。還元剤は触媒上で吸収され、ガスが触媒化基材の中又は上を通るとNO
x還元反応が起こる。アンモニアを使用した化学量論的SCR反応の化学方程式は、
4NO+4NH
3+O
2−>4N
2+6H
2O
2NO
2+4NH
3+O
2−>3N
2+6H
2O
NO+NO
2+2NH
3−>2N
2+3H
2O
である。
【0004】
イオン交換された遷移金属を有するゼオライトはSCR触媒として有用であることが知られている。銅によりイオン交換された従来の小細孔ゼオライトは、低温での高いNO
x転化率を実現するのに特に有用である。しかし、NH
3とイオン交換ゼオライトの遷移金属上に吸収されたNOとの相互作用は、N
2Oを生成する望ましくない副反応を生じさせる場合がある。このN
2Oは排ガス流から除去するのに特に問題となる。したがって、NO
xの高い転化率をもたらしN
2Oの生成が最小限である、改善された方法が依然として必要とされている。本発明はとりわけこの必要性を満たす。
【発明の概要】
【0005】
出願人らは、触媒ゾーンのうちの1つが鉄担持モレキュラーシーブを含有しもう一方が銅担持モレキュラーシーブを含有する少なくとも2つのSCR触媒ゾーンの組み合わせは、鉄担持モレキュラーシーブが銅担持モレキュラーシーブの上流にある場合、また鉄担持モレキュラーシーブのアンモニア貯蔵能力が銅担持モレキュラーシーブと比較してより低い場合に、SCR反応における全体としての高いN
2選択性を維持しながら望ましくないN
2Oの生成を大幅に減少させることができることを見出した。例えば、鉄担持モレキュラーシーブのアンモニア貯蔵能力が約1.5mmol NH
3/g触媒以下であり、銅担持モレキュラーシーブのアンモニア貯蔵能力が少なくとも約1.2mmol NH
3/g触媒である場合、高いN
2選択性及び少ないN
2O副生成物を実現できる。好ましくは、上流のSCR触媒ゾーンは銅を含まず又は実質的に含まず、下流のSCR触媒ゾーンは鉄を含まない又は実質的に含まない。
【0006】
したがって、一態様において(a)第1のアンモニア貯蔵能力を有する鉄担持中細孔又は大細孔モレキュラーシーブを含む第1のSCR触媒ゾーンと、(b)第2のアンモニア貯蔵能力を有する銅担持小細孔モレキュラーシーブを含む第2のSCR触媒ゾーンとを含む、排ガスを処理するためのシステムであって、システムを通る通常の排ガスの流れに対して第1のSCR触媒ゾーンが第2のSCR触媒ゾーンの上流に配置されており、第2のアンモニア貯蔵能力が第1のアンモニア貯蔵能力よりも高い、システムが提供される。
【0007】
本発明の別の態様において、アンモニア及び内燃機関から生じる排ガスの混合物を、アンモニア貯蔵能力が約1.5mmol NH
3/g以下である鉄担持モレキュラーシーブを含む第1のSCR触媒ゾーン、及びアンモニア貯蔵能力が少なくとも約1.2mmol NH
3/g触媒である銅担持モレキュラーシーブを含む第2のSCR触媒ゾーンと順に接触させることにより、混合物を処理する工程を含み、ただし鉄担持モレキュラーシーブが銅担持モレキュラーシーブと比較してより低いアンモニア貯蔵能力を有することを条件とする、排ガスの処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ゾーン化SCR触媒の配置を用いた本発明の実施態様を示す図である。
【
図2】ゾーン化SCR触媒の別の配置を用いた本発明の実施態様を示す図である。
【
図3】ゾーン化SCR触媒の別の配置を用いた本発明の実施態様を示す図である。
【
図4】ゾーン化SCR触媒の別の配置を用いた本発明の実施態様を示す図である。
【
図4A】ゾーン化SCR触媒の別の配置を用いた本発明の実施態様を示す図である。
【
図5】ゾーン化SCR触媒及びアンモニア酸化触媒の配置を用いた本発明の実施態様を示す図である。
【
図6】2つの基材を含むゾーン化SCR触媒の別の配置を用いた本発明の実施態様を示す図である。
【
図6A】2つの基材及びASCゾーンを含むゾーン化SCR触媒の別の配置を用いた本発明の実施態様を示す図である。
【
図7】ゾーンの1つが押出触媒体中にある、ゾーン化SCR触媒の別の配置を用いた本発明の実施態様を示す図である。
【
図7A】ゾーンの1つが押出触媒体中にある、ゾーン化SCR触媒の別の配置を用いた本発明の実施態様を示す図である。
【
図7B】ゾーン(複数)が押出触媒体上にある、ゾーン化SCR触媒の別の配置を用いた本発明の実施態様を示す図である。
【
図8】ゾーンの1つが押出触媒体中にある、ゾーン化SCR触媒の別の配置を用いた本発明の実施態様を示す図である。
【
図9】ゾーン化SCR触媒を含む流通型ハニカム基材を示す図である。
【
図9A】流通型ハニカム基材のセルを示す図である。
【
図10】本発明の実施態様による、排ガスを処理するためのシステムを示す図である。
【
図11A】本発明の実施態様による、排ガスを処理するためのシステムを示す図である。
【
図11B】本発明の実施態様による、排ガスを処理するための別のシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
環境大気質を改善するため、特に発電所、ガスタービン、希薄燃焼内燃機関などにより生じる排出ガスを処理するためのシステム及び方法が提供される。排出ガスは、広い運転温度範囲にわたってNO
x濃度を低下させることによって、少なくとも部分的に改善される。NO
xの転化は、排ガスをゾーン内に配置された2つ以上の特定のNH
3−SCR触媒と接触させることによって実現される。
【0010】
一つには、システムは、第1のアンモニア貯蔵能力を有する鉄担持中細孔又は大細孔モレキュラーシーブを含む第1のSCR触媒ゾーン、及び第2のアンモニア貯蔵能力を有する銅担持小細孔モレキュラーシーブを含む第2のSCR触媒ゾーンの、2つのNH
3−SCR触媒ゾーンを含み、システムを通る通常の排ガスの流れに対して第1のSCR触媒ゾーンが第2のSCR触媒ゾーンの上流に配置されており、第2のアンモニア貯蔵能力が第1のアンモニア貯蔵能力よりも高い。一例において、鉄担持中細孔又は大細孔モレキュラーシーブは第1のゾーン内の流通型モノリスのチャネル壁上及び/又はチャネル壁内にコーティングされており、銅担持小細孔モレキュラーシーブは第2のゾーン内の流通型モノリスのチャネル壁上及び/又はチャネル壁内にコーティングされており、第1のゾーンは第2のゾーンの上流にある。特定の実施態様において、第1又は第2のゾーンは押出触媒体の形態であってもよく、他のゾーンは触媒体上のコーティングである。別の例において、鉄担持中細孔又は大細孔モレキュラーシーブはウォールフロー型フィルタの上及び/又は内部にコーティングされており、銅担持小細孔モレキュラーシーブはフィルタの下流に配置された流通型モノリスのチャネル壁上及び/又はチャネル壁内にコーティングされている。
【0011】
鉄担持モレキュラーシーブのアンモニア貯蔵能力は、例えば約1.0から約1.5、約1.0から約1.25、約1.25から約1.5、又は約1.35から約1.45mmolNH
3/g触媒であってもよい。
【0012】
銅担持モレキュラーシーブのアンモニア貯蔵能力は、例えば約1.2から約2.5、約1.5から約2.5、約1.6から約2.0、又は約1.7から約1.9mmol NH
3/g触媒であってもよい。
【0013】
ここで、アンモニア貯蔵能力は熱重量分析(TGA)により測定される。より詳細には、最初に高温(例えば550℃)で触媒材料から水分をパージし、次いで触媒材料を100℃においてNH
3で飽和させ、続いてゆるく結合したNH
3を触媒材料から約10分間不活性ガスパージし、次いで毎分5℃の速度で温度を少なくとも550℃まで徐々に上昇させることにより、アンモニア貯蔵能力をTGAにより測定する。温度上昇中の全重量減少は、材料のアンモニア貯蔵能力に相当する。
【0014】
図1を見ると、流通型ハニカム基材(10)が第1の触媒ゾーン(20)及び第2の触媒ゾーン(30)を有する本発明の実施態様が示され、第1及び第2の触媒ゾーンは連続しており接触している。本明細書で使用する「第1のゾーン」及び「第2のゾーン」という用語は、基材上のゾーンの位置づけを示す。より詳細には、ゾーンは順に位置づけられているので、通常の運転条件下で、処理しようとする排ガスが第2のゾーンに接触する前に第1のゾーンに接触する。
【0015】
第1及び第2のSCR触媒ゾーンは連続して配置されうるので、途切れずに連続して一方が他方に続いている(すなわち、第1のSCR触媒ゾーンと第2のSCR触媒ゾーンとの間に触媒、又はフィルタなどの他の排ガス処理操作がない)。したがって、特定の実施態様において、1つの基材又は一連の基材の中又は上を通る通常の排ガスの流れに対して、第1のSCR触媒ゾーンは第2のSCR触媒ゾーンの上流にある。
【0016】
第1及び第2のSCR触媒ゾーンの触媒材料の違いによって、排ガスの異なる処理が得られる。例えば、第1のSCR触媒ゾーンはNO
xを還元するが副生成物(低温でのN
2O及び高温でのNO
xを含む)に対する選択性がより低く、第2のSCR触媒ゾーンは第1のSCR触媒ゾーンと比較してより高い選択性で効率的にNO
xを還元する。2つのSCR触媒ゾーンの組み合わせの相乗効果は、単一の触媒システム又は他のゾーン化配置と比較して触媒の全体としての性能を改善させる。好ましくは、第1及び第2のゾーンは接触している(すなわち、第1のSCR触媒ゾーンと第2のSCR触媒ゾーンとの間に介在する触媒活性層がない)。
【0017】
図9では、基材が、基材を通る排ガスの流れ(1)の通常の方向に対して入口端(110)及び出口端(120)を有するハニカム流通型モノリス(100)である、ゾーン化触媒基材(2)が示される。基材は入口端(110)から出口端(120)へ延びる軸長(190)を有する。
図9Aは排ガスが通ることができる開口チャネル(220)を画定するチャネル壁(210)を有するハニカム基材の1つのセル(200)を示す。
【0018】
一般に、チャネル壁は好ましくは、多孔性又は半多孔性である。
【0019】
典型的には、各ゾーンの触媒は、壁の表面上のコーティングであってもよく、壁に部分的若しくは完全に浸透するコーティングであってもよく、押出体として壁に直接取り込まれてもよく、又はそれらの何らかの組み合わせであってもよい。
【0020】
図1では、第1のSCR触媒ゾーン(20)が入口端(110)から第1の終点(29)まで延びている。
【0021】
一般に、第1の終点は軸長(190)の約10から90パーセント、例えば約80から90パーセント、約10から25パーセント、又は約20−30パーセントの位置にある。
【0022】
第2のSCR触媒ゾーン(120)は典型的には、出口端(120)から軸長(190)に沿った特定の距離にわたって、例えば軸長(190)の約20から90パーセント、例えば約60から約80パーセント、又は約50から約75パーセントにわたって延びている。好ましくは、第2のSCR触媒ゾーンは少なくとも第1の終点まで延びているので、第1及び第2のSCR触媒ゾーンは接触している。
【0023】
軸長は好ましくは24インチ未満、例えば約1から約24インチ、約3から約12インチ、又は約3から約6インチなどである。
【0024】
図2では、第1のSCR触媒ゾーン(20)が部分的に第2のSCR触媒ゾーン(30)に重なっている。
図3では、第2のSCR触媒ゾーン(30)が部分的に第1のSCR触媒ゾーン(20)に重なっている。
【0025】
重なりは好ましくは基材の軸長の90パーセント未満、例えば約80から約90パーセント、約40パーセント未満、約40から約60パーセント、約10から約15パーセント、又は約10から約25パーセントである。第2のSCR触媒ゾーンが第1のSCR触媒ゾーンに重なっている実施態様に関して、重なりは軸長の50パーセントを超えていてもよく、例えば80から90パーセントなどであってもよい。第1のSCR触媒ゾーンが第2のSCR触媒ゾーンに重なっている実施態様に関して、重なりは好ましくは軸長の50パーセント未満、例えば約10から20パーセントである。
【0026】
図4では、第1のSCR触媒ゾーン(20)は第2のSCR触媒ゾーン(30)に完全に重なっている。そのような実施態様に関して、排ガスは最初に第1のSCR触媒ゾーンに接触し、第1のSCR触媒ゾーンによって少なくとも部分的に処理される。排ガスの少なくとも一部は第1のSCR触媒ゾーンを透過し、そこで第2のSCR触媒ゾーンに接触し、さらに処理される。処理済み排ガスの少なくとも一部は第1のSCR触媒ゾーンを透過して戻り、開口チャネルに入り、基材から出る。
図4は、第1及び第2のSCR触媒ゾーンの両方が基材の全軸長にわたって延びている実施態様を示す。
【0027】
図4Aは、第2のSCR触媒ゾーンが出口端から基材の全軸長未満の長さまで延びており、第1のSCR触媒ゾーンが基材の全軸長にわたって延び、そのため第2のSCR触媒ゾーンに完全に重なっている、実施態様を示す。
【0028】
図5は本発明の別の実施態様を示す。ここで、第3の触媒ゾーンは、基材の出口端の近位にあり、好ましくは基材の出口端から延びている。
【0029】
第3の触媒ゾーンは、典型的には酸化触媒、好ましくはアンモニアを酸化するのに効果的な触媒を含む。
【0030】
一般に、触媒は、Pt、Pd、又はそれらの組み合わせなどの1つ又は複数の白金族金属(PGM)を、好ましくはアルミナなどの金属酸化物支持体上に含む。
【0031】
層状配置の第2及び第3の触媒ゾーンの組み合わせはアンモニアスリップ触媒として機能し、上流のSCR反応により消費されない過剰のアンモニアの少なくとも一部が第2のゾーンを通って第3の触媒ゾーンへ移動し、ここで酸化されてH
2O及び二次NO
xとなる。H
2O及び二次NO
xは第2の触媒ゾーンを通って戻り、ここで二次NO
xの少なくとも一部がSCR型反応により還元されてN
2及びH
2Oとなる。
【0032】
好ましくは、第1及び第2のSCR触媒ゾーンは連続して配置されているので、第1のSCR触媒ゾーンは第2のSCR触媒ゾーンに接触している。
【0033】
典型的には、第1及び第2のSCR触媒ゾーンは、排ガス処理システム中に配置されている別々の基材上にコーティング又は組み込まれているので、第1及び第2のSCR触媒ゾーンは連なっており、接触しているか又は介在する排ガス処理触媒がなく短い距離で隔てられている。
【0034】
2つの基材を使用する場合、基材は同じ又は異なる基材であってもよい。例えば、第1の基材がウォールフロー型フィルタ、第2の基材が流通型ハニカムであってもよく、又は第1及び第2の基材が流通型ハニカムであってもよい。
【0035】
2つの基材を使用する場合、好ましくは第1及び第2の基材が流通型ハニカムである場合、第1の基材の多孔性は第2の基材よりも高くてもよく、第1及び第2の基材は異なる組成物である又は異なるセル密度を有していてもよく、及び/又は第1及び第2の基材は異なる長さであってもよい。
【0036】
図6では、第1及び第2のSCR触媒ゾーンは排ガス処理システム中に配置されている別々の基材上に配置されているので、第1及び第2のSCR触媒ゾーンは連なっており隣接しているが、直接接触していない。
【0037】
第1の基材と第2の基材との間の最大距離は好ましくは2インチ未満、より好ましくは1インチ未満であり、好ましくは第1のSCR触媒ゾーンと第2のSCR触媒ゾーンとの間及び/又は第1の基材と第2の基材との間に、介在する基材、フィルタ、又は触媒材料がない。
【0038】
図6Aでは、第2の基材が基材の出口端から基材の全長未満の長さまで延びるアンモニア酸化触媒下層(40)をさらに含む。第2のSCR触媒ゾーンは完全に酸化触媒を覆っており、好ましくは基材の長さにわたって延びている。
【0039】
第1又は第2のSCR触媒ゾーンは押出触媒材料を含んでいてもよい。
図7に示される実施態様は、例えば、押出触媒基材の一部の上のコーティング及び/又は押出触媒基材の一部の内部のコーティングの形態である第1のSCR触媒ゾーン(26)を含む。押出触媒基材は、同様に、第2のSCR触媒ゾーン(16)を含む。第1のSCR触媒ゾーンは、排ガスの通常の流れ(1)に対して第2のSCR触媒ゾーンの上流にあるように基材上に配置されている。ゾーン(16)の触媒活性基材は本明細書に記載の他の第2のSCR触媒ゾーンと同様の触媒活性材料を含む。
【0040】
図7では、第1のSCR触媒ゾーンは入口端から基材の全長未満の長さまで延びている。
【0041】
図7Aでは、第1のSCR触媒ゾーン(26)が第2のSCR触媒ゾーンを含む触媒活性基材を完全に覆っている。
【0042】
図7Bでは、触媒活性基材(300)、例えば押出触媒材料から形成される流通型ハニカム基材は、第1のSCR触媒ゾーン(310)及び第2のSCR触媒ゾーン(330)でコーティングされている。
【0043】
典型的には、第1のSCR触媒ゾーンは入口端(312)から、軸長(390)の約10から80パーセント、例えば約50−80パーセント、約10から25パーセント、又は約20−30パーセントに位置している第1の終点(314)まで延びている。
【0044】
第2のSCR触媒ゾーンは、典型的には出口端(344)から、軸長(390)の約20から80パーセント、例えば約20−40パーセント、約60から約80パーセント、又は約50から約75パーセントに位置している第2の終点(332)まで延びている。
【0045】
一般に、第1及び第2のSCR触媒ゾーン直接接触しておらず、そのためギャップ(320)が上流及び下流のゾーンの間に存在する。好ましくは、このギャップは触媒層を含まないが、代わりに処理しようとする排ガスに直接さらされている。排ガスはギャップにおいて触媒体に接触し、それにより例えば排ガス中のNO
xの一部を選択的に還元するように排ガスが処理される。
【0046】
ギャップは、第1の終点(314)及び第2の終点(332)によって画定され、好ましくは軸長の75パーセント未満、例えば軸長(390)の約40から約60、約10から約15パーセント、又は約10から約25パーセントである。
【0047】
任意選択のNH
3酸化触媒は、出口端(344)から入口端(312)に向かって下流のゾーンの長さ以下である長さで伸びているゾーンにおいて、基材(300)の上及び/又は内部にコーティングされうる。任意選択のNH
3酸化触媒は好ましくは下流のゾーンを成す触媒組成物によって完全に覆われている下層である。
【0048】
上流のゾーン、押出体、及び下流のゾーンのうち少なくとも2つが本明細書において規定される第1及び第2のゾーンの要件に適合するならば、すなわち第1のゾーンの鉄担持モレキュラーシーブのアンモニア貯蔵能力が約1.5mmol NH
3/g触媒以下であり、第2のゾーンの銅担持モレキュラーシーブのアンモニア貯蔵能力が少なくとも約1.2mmol NH
3/g触媒であり、銅担持モレキュラーシーブのアンモニア貯蔵能力が鉄担持モレキュラーシーブの対応するアンモニア貯蔵能力よりも高いならば、上流のゾーンの触媒の組成物、押出体、及び下流のゾーンは特に限定されない。
【0049】
一例において、上流のゾーンは第1のゾーンに対応し、下流のゾーンは第2のゾーンに対応する。押出触媒体は好ましくは、TiO
2などの金属酸化物上に好ましくは支持された、バナジウムなどの別の種類のSCR触媒を含み、任意選択的にタングステンなどの1つ又は複数のさらなる金属を含む。
【0050】
別の例において、押出触媒体は第1のゾーンに対応し、下流のゾーンは第2のゾーンに対応する。この例において、上流のゾーンは別の種類の触媒を含んでいてもよい。別の例において、上流のゾーンは第1のゾーンに対応し、押出体は第2のゾーンに対応する。この例において、この下流のゾーンは別の種類の触媒を含んでいてもよい。
【0051】
図8は、第1の触媒ゾーン(17)が押出触媒体の一部であり、第2のSCR触媒ゾーン(37)が押出触媒基材の一部の上のコーティング及び/又は押出触媒基材の一部の内部のコーティングである、別の実施態様を示す。この場合もやはり、第1のゾーンは排ガスの通常の流れ(1)に対して第2のゾーンの上流に配置され、ゾーン(17)の触媒活性基材は本明細書に記載の他の第1のゾーンと同様の触媒活性材料を含む。
【0052】
第1の触媒ゾーンは第1のNH
3−SCR触媒組成物を含む。第1のNH
3−SCR触媒は触媒活性成分として鉄担持モレキュラーシーブを含むが、他の成分、特にバインダーなどの触媒不活性成分を含んでいてもよい。
【0053】
本明細書で使用される場合、「触媒活性」成分は、NO
xの触媒還元及び/又はNH
3若しくは他の窒素系SCR還元剤の酸化に直接関与する成分である。必然的に、「触媒不活性」成分は、NO
xの触媒還元及び/又はNH
3若しくは他の窒素系SCR還元剤の酸化に直接関与しない成分である。
【0054】
有用なモレキュラーシーブは結晶性又は準結晶性物質であり、これは例えば、アルミノケイ酸塩(ゼオライト)又はシリコアルミノリン酸塩(SAPO)であってもよい。
【0055】
そのようなモレキュラーシーブは、例えば環状に互いに結合した繰り返しのSiO
4、AlO
4、及び任意選択的にPO
4の四面体単位で構成され、規則的な結晶内の空洞及び分子寸法のチャネルを有する骨格を形成する。四面体単位(環の構成要素)の特異的な配置がモレキュラーシーブの骨格を生じさせ、慣習により、各々の独自の骨格は国際ゼオライト協会(International Zeolite Association)(IZA)によって独自の3文字のコード(例えば、「CHA」)が割り当てられている。
【0056】
有用なモレキュラーシーブ骨格の例としては、大細孔骨格(すなわち、12員環の最小環サイズを有する)、中細孔骨格(すなわち、10員環の最小環サイズを有する)、及び小細孔骨格(すなわち、8員環の最小環サイズを有する)が挙げられる。骨格の例としては、BEA、MFI、CHA、AEI、LEV、KFI、MER、RHO、ERI、OFF、FER、及びAFXが挙げられる。モレキュラーシーブはまた、2つ以上の骨格(AEI及びCHAなど)の連晶であってもよい。特定の実施態様において、第1及び/又は第2のゾーンは独立に、2つ以上のモレキュラーシーブのブレンドを含んでいてもよい。好ましいブレンドはCHA骨格を有する少なくとも1つのモレキュラーシーブを有し、より好ましくは大部分がCHA骨格である。
【0057】
特に有用なモレキュラーシーブは小細孔ゼオライトである。本明細書で使用される場合、「小細孔ゼオライト」という用語は、8個の四面体の原子の最大環サイズを有するゼオライト骨格を意味する。好ましくは、モレキュラーシーブの主な結晶相は1つ又は複数の小細孔骨格で構成されるが、他のモレキュラーシーブ結晶相も存在してもよい。好ましくは、モレキュラーシーブ材料の全量を基準として、主な結晶相は少なくとも約90重量パーセント、より好ましくは少なくとも約95重量パーセント、さらにより好ましくは少なくとも約98又は少なくとも約99重量パーセントの小細孔モレキュラーシーブ骨格を含む。
【0058】
いくつかの例において、本発明で使用するための小細孔ゼオライトは少なくとも1つの寸法が4.3Å未満である細孔径を有する。
【0059】
小細孔ゼオライトは、典型的にはACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、及びZONから成る群から選択される骨格を有する。好ましいゼオライト骨格は、AEI、AFT、AFX、CHA、DDR、ERI、LEV、KFI、RHO、及びUEIから選択される。
【0060】
特定の用途において、好ましいゼオライト骨格はAEI、AFT、及びAFX、特にAEIから選択される。
【0061】
特定の用途において、好ましいゼオライト骨格はCHAである。特定の用途において、ERI骨格が好ましい。
【0062】
本発明で有用である特定のゼオライトとしては、SSZ−39、Mu−10、SSZ−16、SSZ−13、Sigma−1、ZSM−34、NU−3、ZK−5、及びMU−18が挙げられる。
【0063】
他の有用なモレキュラーシーブとしては、SAPO−34及びSAPO−18が挙げられる。
【0064】
小細孔ゼオライトは第2のNH
3−SCR触媒において特に有用である。
【0065】
好ましい実施態様において、第2のNH
3−SCR触媒は銅を担持するCHA骨格(例えば、SSZ−13)を有するアルミノケイ酸塩を含み、第1のNH
3−SCR触媒はBeta又は鉄−同形Betaなどの鉄担持大細孔ゼオライトを含む。
【0066】
好ましいアルミノケイ酸塩は約10対約50、例えば約15対約30、約10対約15、15対約20、約20対約25、約15対約18、又は約20対約30のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する。好ましいSAPOは2未満、例えば約0.1から約1.5、又は約0.5から約1.0のSARを有する。モレキュラーシーブのSARは従来の解析によって決定してもよい。この比はモレキュラーシーブ結晶の堅い原子骨格中の比を可能な限り厳密に表すことを意図しており、バインダー中の、又はチャネル内のカチオン形態若しくは他の形態のケイ素又はアルミニウムを除外することを意図している。モレキュラーシーブがバインダー材料(特にアルミナバインダー)と混合された後にモレキュラーシーブのSARを直接測定することは困難な場合があるので、本明細書に記載のSAR値は、モレキュラーシーブそれ自体のSARに関して、すなわちゼオライトを他の触媒成分と混合する前に関して表される。
【0067】
別の例において、第2のゾーンのモレキュラーシーブはSARが1未満であるSAPOである。
【0068】
モレキュラーシーブはアルミニウム以外の骨格金属を含んでいてもよい(すなわち、金属置換ゼオライト)。本明細書で使用される場合、モレキュラーシーブに関する「金属置換」という用語は、1つ又は複数のアルミニウム又はケイ素の骨格原子が置換金属によって置き換えられているモレキュラーシーブ骨格を意味する。対照的に、「金属交換」という用語は、ゼオライトに付随する1つ又は複数のイオン種(例えば、H
+、NH
4+、Na
+など)が金属(例えば、金属イオン又は遊離金属、例えば金属酸化物など)によって置き換えられているモレキュラーシーブを意味し、金属はモレキュラーシーブの骨格原子(例えば、T原子)として取り込まれないが、代わりに分子細孔の中又はモレキュラーシーブ骨格の外表面上に取り込まれる。交換された金属は一種の「骨格外金属」であり、これはモレキュラーシーブ内部及び/又はモレキュラーシーブ表面上の少なくとも一部に、好ましくはイオン種として存在する金属であり、アルミニウムを含まず、モレキュラーシーブの骨格を構成する原子を含まない。「金属を担持するモレキュラーシーブ」という用語は、1つ又は複数の骨格外金属を含むモレキュラーシーブを意味する。本明細書で使用される場合、「アルミノケイ酸塩」及び「シリコアルミノリン酸塩」という用語は、金属置換モレキュラーシーブを除外する。
【0069】
本発明の鉄担持又は銅担持モレキュラーシーブは、骨格外金属としてモレキュラーシーブ材料の上及び/又は内部に配置された金属を含む。好ましくは、鉄又は銅の存在及び濃度は、NO
x還元、NH
3酸化、及びNO
x貯蔵などのプロセスを含めた、排ガスの処理、例えばディーゼルエンジンからの排ガスなどの処理を促進し、一方でN
2Oの形成も抑制する。
【0070】
別段の指定がない限り、モレキュラーシーブ上に担持された鉄の量及び触媒中の鉄濃度は、対応するモレキュラーシーブの総重量あたりの鉄に関して言及され、したがって基材上の触媒ウォッシュコート担持物の量又は触媒ウォッシュコート中の他の物質の存在とは無関係である。同様に、モレキュラーシーブ上に担持された銅の量及び触媒中の銅濃度は、対応するモレキュラーシーブの全重量に対する銅に関して表され、したがって基材上の触媒ウォッシュコート担持物の量又は触媒ウォッシュコート中の他の物質の存在とは無関係である。
【0071】
骨格外の銅は、モレキュラーシーブの総重量を基準として約0.1から約10重量パーセント(wt%)、例えば約0.5wt%から約5wt%、約0.5から約1wt%、約1から約5wt%、約2.5wt%から約3.5wt%、及び約3wt%から約3.5wt%の濃度で、第2のゾーンのモレキュラーシーブ中に存在しうる。
【0072】
骨格外の鉄は、モレキュラーシーブの総重量を基準として約0.1から約10重量パーセント(wt%)、例えば約0.5wt%から約5wt%、約1から約5wt%、約3wt%から約4wt%、及び約4wt%から約5wt%の濃度で、第1のゾーンのモレキュラーシーブ中に存在してもよい。
【0073】
典型的には、第1のゾーンは第2のゾーンと比較して金属担持物の濃度(ゼオライトの重量を基準とする)がより高い。
【0074】
鉄及び銅の他に、モレキュラーシーブは1つ又は複数のさらなる骨格外金属をさらに含んでいてもよいが、ただしさらなる骨格外金属が鉄又は銅と比較して少量(すなわち、<50mol.%、例えば約1から30mol.%、約1−10mol.%又は約1−5mol.%など)で存在することを条件とする。
【0075】
さらなる骨格外金属は、金属交換モレキュラーシーブを形成するために触媒産業において使用される公認の触媒活性金属の何れか、特に燃焼プロセスから生じる排ガスの処理において触媒活性であることが知られている金属であってもよい。
【0076】
NO
x還元及び貯蔵プロセスにおいて有用な金属が特に好ましい。そのような金属の例としては、金属ニッケル、亜鉛、鉄、銅、タングステン、モリブデン、コバルト、チタン、ジルコニウム、マンガン、クロム、バナジウム、ニオブ、並びにスズ、ビスマス、及びアンチモン;白金族金属、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、インジウム、白金など、並びに貴金属、例えば金及び銀などが挙げられる。
【0077】
好ましい遷移金属は卑金属であり、好ましい卑金属としては、クロム、マンガン、鉄、銅、コバルト、ニッケル、及びそれらの混合物から成る群から選択されるものが挙げられる。
【0078】
本発明の特定の例において、鉄担持又は銅担持モレキュラーシーブは白金族金属を含まない。
【0079】
本発明の特定の例において、鉄担持又は銅担持モレキュラーシーブはアルカリ金属及びアルカリ土類金属を含まない。
【0080】
本発明の特定の例において、鉄担持モレキュラーシーブは鉄以外の遷移金属を含まず、銅担持モレキュラーシーブは銅以外の遷移金属を含まない。
【0081】
好ましくは、鉄及び銅は、好ましくは金属担持モレキュラーシーブの高温処理を行わなくともモレキュラーシーブ結晶内に高分散している。
【0082】
遷移金属の担持は好ましくは完全にイオン交換である、及び/又は好ましくはモレキュラーシーブ支持体の交換部位が収容できるよりも少ない。
【0083】
好ましくは、触媒はバルク酸化鉄又はバルク酸化銅を含まず若しくは実質的に含まず、外側のモレキュラーシーブ結晶表面上に鉄種又は銅種を含まず若しくは実質的に含まず、及び/又は、温度制御還元(TPR)解析及び/又は紫外−可視解析によって測定した場合に鉄又は銅の金属クラスターを含まず若しくは実質的に含まない。
【0084】
一例において、金属交換モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブ、例えばH型モレキュラーシーブ又はNH
4型モレキュラーシーブを、触媒活性金属(複数可)の可溶性前駆体を含有する溶液中に混合することによって作られる。溶液のpHは、モレキュラーシーブ構造の上又は内部(しかしモレキュラーシーブ骨格を含まない)への触媒活性金属カチオンの析出を生じさせるように調整してもよい。例えば、好ましい実施態様において、触媒活性金属カチオンをイオン交換によりモレキュラーシーブ構造に取り込ませるのに十分な時間、金属硝酸塩又は金属酢酸塩を含有する溶液中にモレキュラーシーブ材料を浸す。未交換の金属イオンは析出する。用途に応じて、未交換のイオンの一部は遊離金属としてモレキュラーシーブ材料中に残っていてもよい。次いで金属交換モレキュラーシーブを洗浄、乾燥、及び焼成してもよい。焼成した材料は、モレキュラーシーブの表面上又はモレキュラーシーブの空洞内に存在するそれぞれ酸化鉄又は酸化銅として一定の割合の鉄又は銅を含んでいてもよい。
【0085】
一般に、モレキュラーシーブの中又はモレキュラーシーブ上の触媒金属カチオンのイオン交換は、室温で又は約80℃までの温度で、約1から24時間の時間にわたり約7のpHにおいて行ってもよい。得られる触媒モレキュラーシーブ材料を好ましくは乾燥させ、次いで少なくとも約500℃の温度で焼成する。
【0086】
触媒組成物は鉄又は銅と少なくとも1つのアルカリ金属又はアルカリ土類金属との組み合わせを含むことができ、鉄又は銅及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属(複数可)はモレキュラーシーブ材料の上又は内部に配置されている。アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、又はそれらのいくつかの組み合わせから選択されてもよい。好ましいアルカリ金属又はアルカリ土類金属としては、カルシウム、カリウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0087】
あるいは、触媒組成物はマグネシウム及び/又はバリウムを本質的に含まない。特定の実施態様において、触媒はカルシウム及びカリウム以外のいかなるアルカリ金属又はアルカリ土類金属も本質的に含まない。特定の実施態様において、触媒はカルシウム以外のいかなるアルカリ金属又はアルカリ土類金属も含まない。特定の他の実施態様において、触媒はカリウム以外のいかなるアルカリ金属又はアルカリ土類金属も本質的に含まない。
【0088】
本明細書で使用される場合、「本質的に含まない」という用語は、材料が感知できる量の特定の金属を有していないことを意味する。すなわち、特定の金属は、特にNO
xを選択的に削減又は貯蔵する材料の能力に関する材料の基本的な物理特性及び/又は化学特性に影響を与えることになる量で存在しない。特定の実施態様において、モレキュラーシーブ材料のアルカリ金属含量は3重量パーセント未満、より好ましくは1重量パーセント未満、さらにより好ましくは0.1重量パーセント未満である。
【0089】
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属(集合的にA
M)は、モレキュラーシーブ中の鉄又は銅の量に対して相対的な量でモレキュラーシーブ材料中に存在してもよい。好ましくは、特にA
Mがカルシウムである場合、Fe又はCu及びA
Mはそれぞれ、約15:1から約1:1、例えば約10:1から約2:1、約10:1から約3:1、又は約6:1から約4:1のモル比で存在する。
【0090】
カルシウムなどのアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む特定の実施態様において、存在する鉄又は銅の量は、モレキュラーシーブの重量を基準として2.5重量パーセント未満、例えば2重量パーセント未満、又は1重量パーセント未満である。
【0091】
特定の実施態様において、第2のゾーンの銅担持モレキュラーシーブはアルカリ金属又はアルカリ土類金属、特にカルシウムを含有し、第1のゾーンの鉄担持モレキュラーシーブはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を本質的に含まない。そのような実施態様において、第2のゾーンのモレキュラーシーブ材料中に存在する鉄又は銅及びアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属(A
M)の相対的累積量は、モレキュラーシーブ中のアルミニウムの量、すなわち骨格アルミニウムの量に対するものである。本明細書で使用される場合、(T
M+A
M):Al比は、対応するモレキュラーシーブ中の骨格Alモル量に対する遷移金属(T
M)(例えば、Cu又はFeの何れか)+A
Mの相対的モル量に基づいている。特定の実施態様において、特にA
Mがカルシウムである場合には第2のゾーンのモレキュラーシーブの(T
M+A
M):Al比は約0.6以下である。特定の実施態様において、(T
M+A
M):Al比は少なくとも0.3、例えば約0.3から約0.6である。そのような実施態様において、第1のゾーンの触媒のT
M:Al比は約0.1から約約0.375であるが、ただし第1のゾーンの触媒のT
M:Al比が第2のゾーンの触媒の(T
M+A
M):Al比よりも低いものとする。
【0092】
特定の実施態様において、鉄又は銅及びアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属(A
M)の相対的累積量は、モレキュラーシーブ中のアルミニウムの量、すなわち骨格アルミニウムの量に対する相対的な量で、第2のゾーンのモレキュラーシーブ材料中に存在する。本明細書で使用される場合、(T
M+A
M):Al比は、対応するモレキュラーシーブ中の骨格Alモル量に対するT
M+A
Mの相対的モル量に基づいている。特定の実施態様において、触媒材料の(T
M+A
M):Al比は約0.6以下である。特定の実施態様において、(T
M+A
M):Al比は0.5以下、例えば約0.05から約0.5、約0.1から約0.4、又は約0.1から約0.2である。
【0093】
アルカリ/アルカリ土類金属は、イオン交換、含浸、同形置換などの任意の既知の技術によってモレキュラーシーブへ加えることができる。鉄又は銅及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属は任意の順番でモレキュラーシーブ材料へ加えることができる(例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の前、後、又はそれと同時に金属を交換させることができる)が、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を鉄又は銅の前にあるいは鉄又は銅と同時に加える。
【0094】
本発明の触媒物品は不均一触媒反応系(すなわち、ガス反応物と接触している固体触媒)に適用可能である。接触面積、機械的安定性、及び/又は流体流動特性を改善するために、SCR触媒をハニカムコージェライト煉瓦などの基材の上及び/又は内部に配置する。
【0095】
一般に、触媒組成物の1つ又は複数をウォッシュコート(複数可)として基材に塗布する。
【0096】
あるいは、触媒組成物の1つ又は複数をフィラー、バインダー、及び補強剤などの他の成分と共に混練して、押出成形可能なペーストとし、次いでこれをダイに通して押出ししてハニカム煉瓦を形成させる。
【0097】
本発明の特定の態様は触媒ウォッシュコートを提供する。本明細書に記載の、鉄を担持した又は銅を担持したモレキュラーシーブ触媒を含むウォッシュコートは、好ましくは溶液、懸濁液、又はスラリーである。適切なコーティングとしては、表面コーティング、基材の一部に浸透するコーティング、基材に浸透するコーティング、又はそれらのいくつかの組み合わせが挙げられる。
【0098】
ウォッシュコートは、フィラー、バインダー、安定化剤、レオロジー改質剤、及び、アルミナ、シリカ、非モレキュラーシーブシリカアルミナ、チタニア、ジルコニア、セリアのうち1つ又は複数を含む他の添加剤などの、非触媒成分も含んでいてもよい。特定の実施態様において、触媒組成物はグラファイト、セルロース、デンプン、ポリアクリラート、及びポリエチレンなどの細孔形成剤を含んでいてもよい。これらのさらなる成分は所望の反応を必ずしも触媒しないが、代わりに例えばその運転温度範囲を上昇させること、触媒の接触面積を増大させること、触媒の基材への接着性を向上させることなどによって、触媒材料の有効性を改善する。好ましい実施態様において、ウォッシュコート担持量は>0.3g/in
3、例えば>1.2g/in
3、>1.5g/in
3、>1.7g/in
3、又は>2.00g/in
3など、及び好ましくは、<3.5g/in
3、例えば<2.5g/in
3などである。特定の実施態様において、ウォッシュコートは約0.8から1.0g/in
3、1.0から1.5g/in
3、1.5から2.5g/in
3、又は2.5から3.5g/in
3の担持量で基材に塗布される。
【0099】
特に可動式用途における好ましい基材としては、両端が開口しており一般に基材の入口面から出口面へ延びており典型的には、高い表面積対体積比をもたらす複数の隣接した平行なチャネルを含む、いわゆるハニカム形状を有する流通型モノリスが挙げられる。
【0100】
特定の用途において、ハニカム流通型モノリスは好ましくは、例えば約600から1000セル毎平方インチの高いセル密度、及び/又は平均約0.18−0.35mm、好ましくは約0.20−0.25mmの内壁厚さを有する。特定の他の用途において、ハニカム流通型モノリスは約150−600セル毎平方インチ、例えば約200−400セル毎平方インチなどの低いセル密度を有する。
【0101】
好ましくは、ハニカムモノリスは多孔性である。コージェライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、セラミック、及び金属に加えて、基材に使用できる他の材料としては、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム、α−アルミナ、ムライト、例えば、針状ムライト、ポルサイト、サーメット(Al
2OsZFe、Al
2O
3/Ni又はB
4CZFeなど)、又はそれらの任意の2つ以上の部分を含む複合材が挙げられる。好ましい材料としては、コージェライト、炭化ケイ素、及びアルミナチタン酸塩が挙げられる。
【0102】
好ましいフィルタ基材としてはディーゼル微粒子フィルタが挙げられ、可動式用途において使用するための好ましいディーゼル微粒子フィルタとしては、ウォールフロー型フィルタ、例えばウォールフロー型セラミックモノリスなどが挙げられる。他のフィルタ基材としては、流通型フィルタ、例えば金属又はセラミックフォーム又は繊維フィルタなどが挙げられる。
【0103】
コージェライト、炭化ケイ素、及びセラミックに加えて、多孔性基材に使用できる他の材料としては、限定はされないが、アルミナシリカ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム、α−アルミナ、ムライト、ポルサイト、ジルコン、ジルコニア、スピネル、ホウ化物、長石、チタニア、溶融シリカ、ホウ化物、セラミック繊維複合材、これらの任意のものの混合物、又はそれらの任意の2つ以上の部分を含む複合材が挙げられる。特に好ましい基材としては、コージェライト、炭化ケイ素、及びチタン酸アルミニウム(AT)が挙げられ、ATが優位の結晶相である。
【0104】
ウォールフロー型フィルタの多孔性壁は、壁を通る排ガス流の典型的な方向に対して、入口側及び出口側を有する。入口側は基材の前面に向かって開口しているチャネルにさらされている入口表面を有し、出口側は基材の背面に向かって開口しているチャネルにさらされている出口表面を有する。
【0105】
ディーゼルエンジン用のウォールフロー型フィルタ基材は典型的には約100−800cpsi(チャネル毎平方インチ)、例えば約100から約400cpsi、約200から約300cpsi、又は約500から約600cpsを含む。
【0106】
壁は典型的には、約0.1から約1.5mm、例えば約0.15から約0.25mm、約0.25から約0.35mm、又は約0.25から約0.50mmの平均壁厚さを有する。
【0107】
本発明で使用するためのウォールフロー型フィルタは好ましくは少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%の効率を有する。特定の実施態様において、効率は好ましくは約75から約99%、約75から約90%、約80から約90%、又は約85から約95%となる。
【0108】
フィルタの有用な多孔性及び平均細孔径の範囲は特に限定はされないが、触媒コーティングの粒径及び粘度と相関がある、又はそれらを決定するのに使用される。本明細書に記載されるように、フィルタ基材の多孔性及び平均細孔径は裸のフィルタ(例えば、触媒コーティングがない)に基づいて決定される。
【0109】
一般に、基材の多孔性は少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、例えば約50から約80%、約50から約70パーセント、又は約55から約65パーセントである。多孔性は、水銀多孔度測定法を含めた任意の適切な手段によって測定してもよい。
【0110】
一般に、基材の平均細孔径は約8から約40μm、例えば約8から約12μm、約12から約20μm、又は約15から約25μmである。特定の実施態様において、全細孔体積及び/又は全細孔数に基づき、少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約75%の細孔がこれらの範囲内にある。平均細孔径は、水銀多孔度測定法を含めた任意の許容可能な手段によって決定することができる。
【0111】
フィルタ基材は約12から約15μmの平均細孔径及び約50から約55%の多孔性を有することが好ましいことがある。
【0112】
フィルタ基材は約18から約20μmの平均細孔径及び約55から約65%の多孔性を有することが好ましいことがある。
【0113】
第1のSCR触媒ゾーンの触媒ウォッシュコートはフィルタの壁の入口側、フィルタの壁の出口側に担持されていてもよく、部分的又は完全にフィルタの壁に浸透してもよく、又はそれらのいくつかの組み合わせであってもよい。
【0114】
特定の実施態様において、フィルタは本明細書に記載の第1又は第2のSCR触媒ゾーンの基材である。例えば、ウォールフロー型フィルタは第1のゾーンの基材として使用でき、流通型ハニカムは第2のゾーンの基材として使用できる。別の例において、流通型ハニカムは第1のゾーンの基材として使用でき、ウォールフロー型フィルタは第2のゾーンの基材として使用できる。そのような実施態様において、ウォールフロー型基材は、ASCゾーンを形成するようにNH
3酸化触媒をさらに含んでいてもよい。
【0115】
特定の実施態様において、本発明は本明細書に記載のプロセスによって作られる触媒物品である。特定の実施態様において、触媒物品は、第2のSCR触媒組成物が好ましくはウォッシュコートとして基材に塗布される前又は後の何れの層として、第1のSCR触媒組成物を好ましくはウォッシュコートとして基材に塗布する工程を含むプロセスによって、製造される。
【0116】
特定の実施態様において、第2のSCR触媒組成物は最上層として基材上に配置され、酸化触媒、還元触媒、掃気成分、又はNO
x貯蔵成分などの別の組成物は、最下層として基材上に配置される。
【0117】
一般に、第1又は第2のSCR触媒組成物を含有する押出触媒体の製造は、モレキュラーシーブ及び鉄(別々に又は金属交換モレキュラーシーブとして一緒に)、バインダー、任意選択の有機粘度上昇化合物をブレンドして均質のペーストとし、次いでこれをバインダー/マトリックス成分又はその前駆体、並びに任意選択的に安定化セリア及び無機ファイバーの1つ又は複数へ加えることを含む。ブレンドは混合装置若しくは混練装置又は押出機の中でまとめられる。混合物は、濡れ性を高めそれにより均一なバッチを製造するための加工助剤として、バインダー、細孔形成剤、可塑剤、界面活性剤、潤滑剤、分散剤などの有機添加剤を有する。得られるプラスチック材料は次いで、特に押出ダイを含む押出プレス又は押出機を使用して成形され、得られる成形品を乾燥及び焼成する。有機添加剤は押出成形固体を焼成する間に「燃えきる」。金属促進ゼオライト触媒はまた、ウォッシュコート処理されていてもよく、あるいは、表面上に存在する又は押出固体中に完全に若しくは部分的に浸透している1つ又は複数の下塗り層として押出固体に塗布されていてもよい。あるいは、押出成形の前に金属促進ゼオライトをペーストへ加えることができる。好ましくは、鉄担持又は銅担持モレキュラーシーブは、押出触媒体全体にわたって、好ましくは均一に全体にわたって分散している。
【0118】
本発明による金属促進ゼオライトを含有する押出固体は一般に、その第1の端部から第2の端部へ延びる均一なサイズで平行なチャネルを有するハニカムの形態である単位構造を含む。チャネルを画定するチャネル壁は多孔性である。典型的には、外側の「皮」が押出固体の複数のチャネルを取り囲んでいる。押出固体は、円形、正方形、又は楕円形などの任意の所望の断面から形成することができる。複数のチャネルの中の個々のチャネルは正方形、三角形、六角形、円形などであってもよい。
【0119】
本明細書に記載の触媒物品は、窒素系還元剤、好ましくはアンモニアが、窒素酸化物と反応して窒素元素(N
2)及び水(H
2O)を選択的に生成するのを促進することができる。そのような窒素系還元剤の例としては、アンモニア及びアンモニアヒドラジン又は任意の適切なアンモニア前駆体、例えば尿素((NH
2)
2CO)、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、又はギ酸アンモニウムなどが挙げられる。本方法のSCRプロセスは、広い温度範囲(例えば、約150−700℃、約200−350℃、約350−550℃、又は約450−550℃)にわたって、少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%のNO
x(NO及び/又はNO
2)の転化を生じさせることができる。
【0120】
重大なことであるが、本発明によるゾーン化触媒の使用は従来のSCR触媒と比較して少量のN
2O副生成物を生じる。すなわち、本方法のSCRプロセスは、SCR入口におけるNO及び/又はNO
2を基準としてわずかなN
2Oの生成しか生じさせないことが可能である。
【0121】
例えば、広い温度範囲(例えば、約150−700℃、約200−350℃、約350−550℃、又は約450−550℃)にわたって、SCR触媒後の出口N
2O濃度と比較したSCR触媒における入口NO濃度の相対比は約25を超え、約30を超え(例えば約30から約40)、約50を超え、約80を超え、又は約100を超える。別の例において、広い温度範囲(例えば、約150−700℃、約200−350℃、約350−550℃、又は約450−550℃)にわたって、SCR触媒後の出口N
2O濃度と比較したSCR触媒における入口NO
2濃度の相対比は約50を超え、約80を超え、又は約100を超える。
【0122】
本明細書に記載の金属担持モレキュラーシーブ触媒は、アンモニアの貯蔵若しくは酸化を促進することができ、又はアルミナ上に支持される白金及び/又はパラジウムなどの酸化触媒と併用することができ、アンモニアの酸化を促進し酸化プロセスによる望ましくないNO
xの形成を制限することもできる(すなわち、アンモニアスリップ触媒(ASC))。
【0123】
本発明の触媒物品は基材の出口端にASCゾーンを含むことが好ましいことがある。
【0124】
さらに又はあるいは、アンモニアスリップ触媒はゾーン化SCR触媒の下流で別の煉瓦上に配置されることが可能である。これらの別々の煉瓦は、それらが互いにと流体連通しておりSCR触媒の煉瓦がアンモニアスリップ触媒の煉瓦の上流に配置されているならば、互いに隣接し接触していてもよく、又は特定の距離で隔てられていてもよい。
【0125】
典型的には、SCR及び/又はASCプロセスは少なくとも100℃の温度で行われる。
【0126】
一般に、プロセス(複数可)は約150℃から約750℃の温度で行われる。特定の実施態様において、温度範囲は約175から約550℃である。別の実施態様において、温度範囲は175から400℃である。さらに別の実施態様において、温度範囲は450から900℃、好ましくは500から750℃、500から650℃、450から550℃、又は650から850℃である。
【0127】
本発明の別の態様によれば、ガス中のNO
x化合物の還元及び/又はNH
3の酸化の方法であって、ガス中のNO
x化合物のレベルを低下させるのに十分な時間、ガスを本明細書に記載の触媒と接触させる工程を含む、方法が提供される。本発明の方法は以下の工程:(a)フィルタの入口に接触しているすすを蓄積及び/又は燃焼させる工程と;(b)好ましくはNO
x及び還元剤の処理を含む触媒工程を介在させずに、SCR触媒に接触する前に窒素系還元剤を排ガス流へ導入する工程と;(c)NO
x吸着触媒上又はリーンNO
xトラップ上でNH
3を生成させ、好ましくは下流のSCR反応における還元剤としてそのようなNH
3を使用する工程と;(d)排ガス流をDOCと接触させて、炭化水素系可溶性有機成分(SOF)及び/又は一酸化炭素を酸化してCO
2とする、及び/又はNOを酸化してNO
2とし、微粒子フィルタ中の粒子状物質を酸化させるのにこれを使用する;及び/又は排ガス中の粒子状物質(PM)を削減する工程と;(e)還元剤の存在下で排ガスを1つ又は複数の下流のSCR触媒デバイス(複数可)(フィルタ又は流通型基材)と接触させて排ガス中のNOx濃度を減少させる工程と;(f)排ガスを雰囲気中に排出する前に、又は排ガスがエンジンへ入る/再び入る前に排ガスを再循環ループに通す前に、排ガスを好ましくはSCR触媒の下流にあるアンモニアスリップ触媒と接触させて、アンモニアのすべてではないが大部分を酸化させる工程のうち、の1つ又は複数を含んでいてもよい。
【0128】
SCRプロセスで消費される窒素系還元剤(特にNH
3)のすべて又は少なくとも一部は、SCR触媒の上流に配置されるNO
x吸着触媒(NAC)、リーンNO
xトラップ(LNT)、又はNO
x貯蔵/還元触媒(NSRC)、(集合的にNAC)によって供給することができることが好ましいことがある。特定の実施態様において、NACはゾーン化SCR触媒と同じ流通型基材上にコーティングされている。そのような実施態様において、NAC及びSCR触媒は順にコーティングされており、NACはSCRゾーンの上流にある。
【0129】
本発明で有用なNAC成分としては、塩基性材料(アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、及びそれらの組み合わせを含めた、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は希土類金属など)、及び貴金属(白金など)、及び任意選択的にロジウムなどの還元触媒成分の触媒の組み合わせが挙げられる。NACに有用な塩基性材料の具体的な種類としては、酸化セシウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。貴金属は好ましくは約10から約200g/ft
3、例えば20から60g/ft
3などで存在する。あるいは、触媒の貴金属は平均濃度によって特徴づけられ、平均濃度は約40から約100グラム/ft
3であってもよい。
【0130】
特定の条件下で、定期的なリッチ再生イベントの間に、NH
3をNO
x吸着触媒上で生成させてもよい。NO
x吸着触媒の下流にあるSCR触媒はシステム全体のNO
x還元効率を改善することができる。組み合わせシステムでは、SCR触媒はリッチ再生イベントの間にNAC触媒からの放出されたNH
3を貯蔵することが可能であり、貯蔵されたNH
3を利用して、通常のリーン運転条件の間にNAC触媒をすり抜けるNO
xの一部又はすべてを選択的に低減する。
【0131】
特定の態様において、本発明は、燃焼プロセスにより、例えば内燃機関(可動式か固定式かに関わらず)、ガスタービン、及び石炭又は石油火力発電所などから生じる排ガスを処理するためのシステムである。そのようなシステムは、本明細書に記載のゾーン化SCR触媒物品及び排ガスを処理するための少なくとも1つのさらなる成分を含み、ゾーン化SCR触媒物品及び少なくとも1つのさらなる成分は一体のユニットとして機能するように設計されている。ゾーン化SCR触媒物品及び少なくとも1つのさらなる成分は、任意選択的にシステムを通して排ガスを誘導するための導管の1つ又は複数の区分によって、流体連通している。
【0132】
排ガス処理システムは、排ガス中の一酸化窒素を酸化して二酸化窒素とするための酸化触媒(例えば、ディーゼル酸化触媒(DOC))を含んでいてもよく、これは窒素系還元剤を排ガス中に量り入れるポイントの上流に配置することができる。
【0133】
酸化触媒は、例えば200℃から550℃である酸化触媒入口の排ガス温度において、NO対NO
2の体積比が約4:1から約1:20であるSCRゼオライト触媒に入るガス流を得るように適合されうる。酸化触媒は、好ましくは流通型モノリス基材上にコーティングされている、白金、パラジウム、又はロジウムなどの少なくとも1つの白金族金属(又はこれらのいくつかの組み合わせ)を含んでいてもよい。好ましくは、少なくとも1つの白金族金属は白金、パラジウム、又は白金及びパラジウム両方の組み合わせである。
【0134】
白金族金属は、高表面積ウォッシュコート成分の上、例えばアルミナ、ゼオライトなどの上、例えばアルミノケイ酸塩ゼオライト、シリカ、非ゼオライトシリカアルミナ、セリア、ジルコニア、チタニア、又はセリア及びジルコニアの両方を含有する混合酸化物若しくは複合酸化物などの上に支持させることができる。
【0135】
排ガス処理システムは第2の流通型モノリス上又はウォールフロー型フィルタ上にさらなるSCR触媒を含んでいてもよく、さらなるSCRを含有する第2の流通型モノリス又はウォールフロー型フィルタは、本明細書に記載の第1及び第2のSCR触媒ゾーンの上流又は下流に配置され、第1及び第2のSCR触媒ゾーンと流体連通している。さらなるSCR触媒は、好ましくは金属交換ゼオライト、例えばFe−Beta、Fe−鉄−同形Beta、Fe−ZSM5、Fe−CHA、Fe−ZSM−34、Fe−AEI、Cu−Beta、Cu−ZSM5、Cu−CHA、Cu−ZSM−34、又はCu−AEIなどである。
【0136】
排ガス処理システムは、触媒物品の上流に配置されたNAC及び/又は窒素系還元剤の外部供給源(例えば、アンモニア又は尿素噴射装置)を含んでいてもよい。
【0137】
システムは、例えば100℃を超え、150℃を超え、又は175℃を超える温度でSCR触媒ゾーンが所望の効率で又は所望の効率を超えてNO
x還元を触媒することが可能であると認められる場合にのみ、外部窒素系還元剤を流れる排ガス中に計り入れるための制御装置を含んでいてもよい。窒素系還元剤の計量は、1:1 NH
3/NO及び4:3 NH
3/NO
2で計算して、SCR触媒に入る排ガス中に60%から200%の理論量のアンモニアが存在するように設定することができる。
【0138】
排ガス処理システムは、ウォールフロー型フィルタなどの適切な微粒子フィルタを含んでいてもよい。適切なフィルタとしては、排ガス流からのすすを除去するのに有用なフィルタが挙げられる。フィルタは裸で受動的に再生されてもよく、又はすす燃焼触媒若しくは加水分解触媒を含んでいてもよい。フィルタは排ガス処理システムにおいてSCR触媒の上流又は下流の何れかに配置することができる。好ましくは、DOCが存在する場合はフィルタはDOCの下流に配置される。裸のフィルタ(すなわち触媒コーティングがない)、及びゾーン化SCR触媒の上流にあるアンモニア噴射装置を含む実施態様において、噴射装置は、ゾーン化SCR触媒の上流に配置されているならば、フィルタの上流又は下流に配置されてもよい。加水分解触媒を含有するフィルタ及び下流のゾーン化SCR触媒を有する実施態様において、アンモニア噴射装置は好ましくはフィルタの上流に配置される。
【0139】
図10を見ると、内燃機関(501)、排ガス処理システム(502)、システムを通る排ガスの流れの方向(1)、任意選択のDOC510及び/又は任意選択のNAC(520)、任意選択の微粒子フィルタ(570)、任意選択のアンモニアの外部供給源及び噴射装置530、ゾーン化SCR触媒(540)、任意選択のさらなるSCR触媒(550)、並びに任意選択のASC(560)を含む、排ガス処理システムが示される。
【0140】
図11Aは、好ましくはフィルタの出口側からコーティングされている第1のSCR触媒ゾーンを含有するウォールフロー型フィルタ(620)の上流に、受動的NOx吸収剤(PNA)(610)を含む、排ガス処理システムを示す。PNAは、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属、例えばバリウム、ストロンチウム、カリウムなど、並びに金属酸化物、例えばBaO、TiO
2、ZrO
2、CeO
2、及びAl
2O
3などを含有していてもよい。好ましくはPNAは、PGM、例えばロジウム、パラジウム、白金など、又はパラジウム及び白金などの金属の組み合わせを含み、金属酸化物、例えば酸化バリウム、酸化セリウム、又はセリウム若しくはバリウムを含有する混合金属酸化物など;並びに少なくとも1つの他の遷移金属も含有する。適切なPGM担持量は例えば1−120g/ft
3であってもよい。PNAの個々の成分は、層状であるか又は単一のウォッシュコート中で組み合わされていてもよい。
【0141】
図11Aに示されるシステムは、フィルタの下流に配置される第2のSCR触媒ゾーンを含有する流通型基材をさらに含む。システムは好ましくは、
図6Aに示される配置と同様に、流通型基材の下流にある別の煉瓦として又は流通型基材の背面上にアンモニアスリップ触媒を含む。システムは、SCR還元剤(620)の供給源、例えばアンモニア又はアンモニア前駆体をシステム中に導入するための噴射装置などを任意選択的に含んでいてもよい。
【0142】
図11Aのウォールフロー型フィルタは好ましくは流通型基材の近位であるが、2つの間の距離は特に限定されない。好ましくは、ユニット(630)と(640)との間又は(610)と(630)との間に介在する触媒又はフィルタがない。好ましくは、第2のSCR触媒ゾーンとASCとの間に介在する触媒がない。好ましくは、エンジンとPNAとの間又は第2のSCR触媒ゾーン若しくはASCの下流に介在する排ガス処理触媒がない。
【0143】
別の構成が
図11Bに示され、PNA及び第1のSCR触媒ゾーンがウォールフロー型フィルタ(635)上にコーティングされている。ここで、PNAは壁表面上のウォッシュコートとしてフィルタの入口側からコーティングされ及び/又は部分的に壁に浸透しており、第1のSCR触媒ゾーンは壁表面上のウォッシュコートとしてフィルタの出口側からコーティングされ及び/又は部分的に壁に浸透している。システムは、フィルタの下流に配置された第2のSCR触媒ゾーンを含有する流通型基材をさらに含む。システムは好ましくは、
図6Aに示される配置と同様に、第1及び第2のSCR触媒ゾーンの下流にある別の基材上又は第2のSCR触媒ゾーンを含有する流通型基材の背面上にアンモニアスリップ触媒を含む。第1の還元剤供給部(例えば、噴射装置)はフィルタの上流に配置され、PNAによる還元剤の酸化を引き起こさない条件下で(例えば、400℃未満の温度で)還元剤をシステムに供給する。任意選択の第2の還元剤供給部(例えば、噴射装置)は第1のSCR触媒ゾーンと第2のSCR触媒ゾーンとの間に配置され、第1の還元剤供給部とは独立に、又は連動して動作する。
【0144】
図11Bのウォールフロー型フィルタは好ましくは流通型基材の近位であるが、2つの間の距離は特に限定されない。好ましくは、ユニット(635)と(640)との間に介在する触媒又はフィルタがない。好ましくは、第2のSCR触媒ゾーンとASCとの間に介在する触媒がない。好ましくは、エンジンとPNAとの間又は第2のSCR触媒ゾーン若しくはASCの下流に介在する排ガス処理触媒がない。
【0145】
本明細書に記載の排ガスの処理方法は、燃焼プロセスから、例えば内燃機関(可動式か固定式かに関わらず)、ガスタービン、及び石炭又は石油火力発電所などから生じる排ガスに対して実施することができる。この方法は、精製などの工業プロセスから、精油所のヒータ及びボイラ、炉、化学処理工業、コークス炉、都市ゴミ処理プラント及び焼却炉などからのガスを処理するのにも使用してもよい。特定の実施態様において、この方法は、ディーゼルエンジン、希薄燃焼ガソリンエンジン、又は液化石油ガス若しくは天然ガスで駆動するエンジンなどの、自動車希薄燃焼内燃機関からの排ガスを処理するのに使用される。
【国際調査報告】