(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-531837(P2017-531837A)
(43)【公表日】2017年10月26日
(54)【発明の名称】アクティブデバイスの残り寿命を近似する方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20170929BHJP
【FI】
G02B6/42
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-522143(P2017-522143)
(86)(22)【出願日】2015年10月23日
(85)【翻訳文提出日】2017年6月21日
(86)【国際出願番号】US2015057059
(87)【国際公開番号】WO2016065228
(87)【国際公開日】20160428
(31)【優先権主張番号】62/067,570
(32)【優先日】2014年10月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/921,061
(32)【優先日】2015年10月23日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512322069
【氏名又は名称】サムテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Samtec,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(72)【発明者】
【氏名】コーネリアス ジョシュア アール.
(72)【発明者】
【氏名】ツビンデン エリック ジーン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルディエル ジャン‐マルク アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】コズロフスキー ウィリアム ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】バート ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】トラックセル トマス ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】リーロイ レスリー
(72)【発明者】
【氏名】ラングザーム デヴィッド エイ.
(72)【発明者】
【氏名】バクスター アンドリュー ジョン
【テーマコード(参考)】
2H137
【Fターム(参考)】
2H137AB05
2H137AB06
2H137BA15
2H137BB03
2H137BB12
2H137BB17
2H137BB25
2H137CA12A
2H137DA39
2H137DB12
2H137GA10
2H137HA05
(57)【要約】
光ファイバケーブルと、少なくとも一つの光変換器と、第1のメモリと、第2のメモリとを含むアクティブ光ケーブルの実効年齢を計算する方法は、定期的サブインターバルに分割された定期的インターバルの間、および各定期的サブインターバルの後に、アクティブ光ケーブルの動作パラメータを感知し、感知された動作パラメータに対応する値を第2のメモリに記録すること、各定期的インターバルの後に、第2のメモリに記録した値を第1のメモリに保存すること、および、第1のメモリに保存した値に基づいてアクティブ光ケーブルの実効年齢を計算することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブ光ケーブルであって、
光ファイバケーブルと、
少なくとも一つの光変換器と、
第1のメモリと、
第2のメモリと、
前記アクティブ光ケーブルの動作パラメータを感知するセンサと、
前記少なくとも一つの光変換器、前記第1のメモリ、前記第2のメモリ、および前記センサに接続されたプロセッサと
を含み、
前記プロセッサは、
定期的サブインターバルに分割された定期的インターバルの間、および各前記定期的サブインターバルの後に、感知された動作パラメータに対応する値を前記第2のメモリに記録し、
各前記定期的インターバルの後に、前記第2のメモリに記録した前記値を前記第1のメモリに保存する、アクティブ光ケーブル。
【請求項2】
前記定期的インターバルおよび前記定期的サブインターバルは、前記第1のメモリへの予測される書き込み回数と前記アクティブ光ケーブルの予測される寿命とに基づく、請求項1に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項3】
前記動作パラメータは温度である、請求項1に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項4】
前記第2のメモリは複数のビンを含み、
各前記ビンは前記感知された動作パラメータの値の範囲に対応する、請求項1に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記感知された動作パラメータの前記値の範囲であって、前記感知された動作パラメータの前記値を含む範囲に対応するビンのビン値を1だけインクリメントすることにより、前記感知された動作パラメータに対応する前記値を前記第2のメモリに記録する、請求項4に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項6】
前記第1のメモリは、前記第2のメモリ内の前記ビンに対応するビンを含む、請求項5に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記第2のメモリ内の各前記ビンのビン値を、前記第1のメモリ内の対応するビンにすでに保存されている対応ビン値に加算することにより、前記第2のメモリに記録した前記値を前記第1のメモリに保存する、請求項6に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記第1のメモリに保存した前記ビンの前記ビン値に基づいて前記アクティブデバイスの前記実効年齢を計算する、請求項7に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記第1のメモリに保存した前記ビンの前記ビン値のみに基づいて前記実効年齢を計算する、請求項8に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項10】
前記実効年齢が閾値より高い場合、前記プロセッサはインジケータ信号を供給する、請求項8に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項11】
前記動作パラメータは温度であり、各前記ビンは温度範囲を表し、
前記プロセッサは下記式を用いて前記アクティブ光ケーブルの実効年齢t
effectiveを計算し、
【数10】
上記式において、
【数11】
であり、
mは定期的サブインターバルの長さ(単位:分)であり、bはビンの数であり、N
nはビンnに保存されている値であり、E
Aは活性化エネルギーであり、k
Bはボルツマン定数であり、T
nはビン温度であり、T
Rは基準温度である、請求項7に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項12】
各前記定期的インターバルの後に、前記プロセッサは前記第2のメモリに保存した前記値をリセットする、請求項1に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記第1のメモリに保存した前記値に基づいて前記アクティブ光ケーブルの実効年齢を計算する、請求項1に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項14】
前記第1のメモリは不揮発性メモリであり、前記第2のメモリは揮発性メモリである、請求項1に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項15】
前記第1のメモリはEEPROMである、請求項1に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項16】
光ファイバケーブルと、少なくとも一つの光変換器と、第1のメモリと、第2のメモリとを含むアクティブ光ケーブルの実効年齢を計算する方法であって、
定期的サブインターバルに分割された定期的インターバルの間、および各前記定期的サブインターバルの後に、前記アクティブ光ケーブルの動作パラメータを感知し、感知された動作パラメータに対応する値を前記第2のメモリに記録すること、
各前記定期的インターバルの後に、前記第2のメモリに記録した前記値を前記第1のメモリに保存すること、および、
前記第1のメモリに保存した前記値に基づいて前記アクティブ光ケーブルの前記実効年齢を計算すること、
を含む方法。
【請求項17】
前記定期的インターバルおよび前記定期的サブインターバルは、前記第1のメモリへの予測される書き込み回数と前記アクティブ光ケーブルの予測される寿命とに基づく、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記動作パラメータは温度である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のメモリは複数のビンを含み、
各前記ビンは前記感知された動作パラメータの値の範囲に対応する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記感知された動作パラメータに対応する前記値を前記第2のメモリに記録すること、は、前記感知された動作パラメータの前記値の範囲であって、前記感知された動作パラメータの前記値を含む範囲に対応するビンのビン値を1だけインクリメントすることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のメモリは、前記第2のメモリ内の前記ビンに対応するビンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2のメモリに記録した前記値を前記第1のメモリに保存すること、は、前記第2のメモリ内の各前記ビンのビン値を、前記第1のメモリ内の対応するビンにすでに保存されている対応ビン値に加算することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記アクティブ光ケーブルの前記実効年齢を計算すること、は、前記第1のメモリに保存した前記ビンの前記ビン値に基づく、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記実効年齢を計算すること、は、前記第1のメモリに保存した前記ビンの前記ビン値のみに基づく、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記実効年齢が閾値より高い場合、インジケータ信号を供給することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記動作パラメータは温度であり、各前記ビンは温度範囲を表し、
前記アクティブ光ケーブルの前記実効年齢を計算すること、は、下記式を用いることを含み、
【数12】
上記式において、
【数13】
であり、
t
effectiveは前記アクティブデバイスの実効年齢であり、mは定期的サブインターバルの長さ(単位:分)であり、bはビンの数であり、N
nはビンnに保存されている値であり、E
Aは活性化エネルギーであり、k
Bはボルツマン定数であり、T
nはビン温度であり、T
Rは基準温度である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
各前記定期的インターバルの後に、前記第2のメモリに保存した前記値をリセットすることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記第1のメモリは不揮発性メモリであり、前記第2のメモリは揮発性メモリである、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記第1のメモリはEEPROMである、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクティブデバイスの温度データを測定および記録する方法、ならびにアクティブデバイスの残り寿命を近似する方法に関する。より具体的には、本発明は書き込み能力が限定され容量が限定されたメモリを用いてアクティブデバイスの温度データを測定および記録する方法、ならびにその温度履歴に基づいてアクティブデバイスの残り寿命を近似する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いかなるアクティブデバイスの寿命すなわち故障するまでの時間も、温度、湿度などを含むアクティブデバイスの動作環境に依存する。平均故障時間(MTTF)とは、デバイスが故障するまでの予測される平均動作時間である。アクティブデバイスのMTTFもまたアクティブデバイスの動作環境に依存する。製造者は典型的には、所与の動作条件(温度、湿度、電流など)に対してMTTFを設ける。しかしアクティブデバイスの動作温度は用途によって大幅に変わり得る。
【0003】
アクティブデバイスの一例は垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)である。VCSELはコヒーレント光を発光する半導体光源であり、光ファイバ用途においてシステムに組み込まれることが一般的である。このようなシステムの一例はアクティブ光ケーブル(AOC)である。AOCは、光変換器と呼ばれる電気−光および/または光−電気変換器を含む光ファイバケーブルである。VCSELは温度が高いほどより急速に消耗する傾向があり、AOCの最も可能性の高い故障の要因である。VCSELとは、単一のレーザまたは単一のダイ上に設けられたレーザアレイ(すなわちVCSELアレイ)のいずれでもあり得る。
【0004】
アクティブデバイスの問題点の一つはいつ故障するかが判らないことである。アクティブデバイスの動作環境条件を継続的に監視し記録するのが理想的であるが、これは必ずしも可能とは限らない。例えば、AOCの不揮発性メモリのへ書き込み可能回数は限られているため、AOCは継続的に温度を監視および記録することはできない。AOCのメモリとしてEEPROM(電気的に消去可能かつ書き換え可能なROM)半導体デバイスを用いた場合、メモリの書き込みサイクル回数は限定される。例えばATMEL(カリフォルニア州サンノゼ)製のある種のEEPROMは、85℃の動作温度で30,000回書き込みサイクルを行うと故障するものと規定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の好ましい実施形態は上記の問題点を解決するために、書き込み能力が限定され容量が限定されたメモリを用いてアクティブデバイスの温度データを測定および記録する方法、ならびにその温度データを用いてアクティブデータの年齢を近似する寿命近似方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好ましい実施形態では、AOCはVCSELと、揮発性および不揮発性メモリ素子と、プロセッサと、センサとを含む。センサは、アクティブデバイスの経時変化に影響を与える動作パラメータに関する情報を提供する。センサはプロセッサによって定期的サブインターバルで監視され、得られた情報が揮発性メモリに保存される。揮発性メモリに保存された情報はプロセッサによって転送され、定期的インターバルで不揮発性メモリに書き込まれる。1インターバルの長さは1サブインターバルの長さよりも長いことにより、不揮発性メモリに対する書き込みサイクル回数を減らしている。不揮発性メモリに保存された情報はアクティブデバイスの実効年齢を決定するために用いられる。
【0007】
本発明の好ましい実施形態は、光ファイバケーブルと、少なくとも一つの光変換器と、第1のメモリと、第2のメモリと、前記アクティブ光ケーブルの動作パラメータを感知するセンサと、前記少なくとも一つの光変換器、前記第1のメモリ、前記第2のメモリ、および前記センサに接続されたプロセッサとを含むアクティブ光ケーブルを提供する。プロセッサが、定期的サブインターバルに分割された定期的インターバルの間、および各前記定期的サブインターバルの後に、感知された動作パラメータに対応する値を前記第2のメモリに記録し、各前記定期的インターバルの後に、前記第2のメモリに記録した前記値を前記第1のメモリに保存する。
【0008】
好ましくは、前記定期的インターバルおよび前記定期的サブインターバルは、前記第1のメモリへの予測される書き込み回数と前記アクティブ光ケーブルの予測される寿命とに基づく。好ましくは、前記動作パラメータが温度である。
【0009】
好ましくは、前記第2のメモリがビンを含み、各前記ビンは前記感知された動作パラメータの値の範囲に対応する。好ましくは、前記プロセッサが、前記感知された動作パラメータの前記値の範囲であって、前記感知された動作パラメータの前記値を含む範囲に対応するビンのビン値を1だけインクリメントすることにより、前記感知された動作パラメータに対応する前記値を前記第2のメモリに記録する。好ましくは、前記第1のメモリが、前記第2のメモリ内の前記ビンに対応するビンを含む。好ましくは、前記プロセッサが、前記第2のメモリ内の各前記ビンのビン値を、前記第1のメモリ内の対応するビンにすでに保存されている対応ビン値に加算することにより、前記第2のメモリに記録した前記値を前記第1のメモリに保存する。好ましくは、前記プロセッサが、前記第1のメモリに保存した前記ビンの前記ビン値に基づいて前記アクティブデバイスの前記実効年齢を計算する。好ましくは、前記プロセッサが、前記第1のメモリに保存した前記ビンの前記ビン値のみに基づいて前記実効年齢を計算する。前記実効年齢が閾値より高い場合、好ましくは、前記プロセッサがインジケータ信号を供給する。好ましくは、前記動作パラメータが温度であり、各前記ビンが温度範囲を表し、前記プロセッサが下記式を用いて前記アクティブ光ケーブルの実効年齢t
effectiveを計算し、
【数1】
上記式において、
【数2】
であり、mが定期的サブインターバルの長さ(単位:分)であり、bがビンの数であり、N
nがビンnに保存されている値であり、E
Aが活性化エネルギーであり、k
Bがボルツマン定数であり、T
nがビン温度であり、T
Rが基準温度である。
【0010】
好ましくは、各前記定期的インターバルの後に、前記プロセッサが前記第2のメモリに保存した前記値をリセットする。好ましくは前記プロセッサが、前記第1のメモリに保存した前記値に基づいて前記アクティブ光ケーブルの実効年齢を計算する。前記第1のメモリが好ましくは不揮発性メモリであり、前記第2のメモリが好ましくは揮発性メモリである。好ましくは、前記第1のメモリがEEPROMである。
【0011】
本発明の好ましい実施形態は、光ファイバケーブルと、少なくとも一つの光変換器と、第1のメモリと、第2のメモリとを含むアクティブ光ケーブルの実効年齢を計算する方法であって、定期的サブインターバルに分割された定期的インターバルの間、および各前記定期的サブインターバルの後に、前記アクティブ光ケーブルの動作パラメータを感知し、感知された動作パラメータに対応する値を前記第2のメモリに記録する工程と、各前記定期的インターバルの後に、前記第2のメモリに記録した前記値を前記第1のメモリに保存する工程と、前記第1のメモリに保存した前記値に基づいて前記アクティブ光ケーブルの前記実効年齢を計算する工程とを含む方法を提供する。
【0012】
好ましくは、前記定期的インターバルおよび前記定期的サブインターバルは、前記第1のメモリへの予測される書き込み回数と前記アクティブ光ケーブルの予測される寿命とに基づく。好ましくは、前記動作パラメータが温度である。
【0013】
好ましくは、前記第2のメモリがビンを含み、各前記ビンは前記感知された動作パラメータの値の範囲に対応する。好ましくは、前記感知された動作パラメータに対応する前記値を前記第2のメモリに記録する工程が、前記感知された動作パラメータの前記値の範囲であって、前記感知された動作パラメータの前記値を含む範囲に対応するビンのビン値を1だけインクリメントする工程を含む。好ましくは、前記第1のメモリが、前記第2のメモリ内の前記ビンに対応するビンを含む。好ましくは、前記第2のメモリに記録した前記値を前記第1のメモリに保存する工程が、前記第2のメモリ内の各前記ビンのビン値を、前記第1のメモリ内の対応するビンにすでに保存されている対応ビン値に加算する工程を含む。好ましくは、前記アクティブ光ケーブルの前記実効年齢を計算する工程が、前記第1のメモリに保存した前記ビンの前記ビン値に基づく。好ましくは、前記実効年齢を計算する工程が、前記第1のメモリに保存した前記ビンの前記ビン値のみに基づく。好ましくは、前記実効年齢が閾値より高い場合、インジケータ信号を供給する工程をさらに含む。好ましくは、前記動作パラメータが温度であり、各前記ビンが温度範囲を表し、前記アクティブ光ケーブルの前記実効年齢を計算する工程が、下記式を用いる工程を含み、
【数3】
上記式において、
【数4】
であり、t
effectiveが前記アクティブデバイスの実効年齢であり、mが定期的サブインターバルの長さ(単位:分)であり、bがビンの数であり、N
nがビンnに保存されている値であり、E
Aが活性化エネルギーであり、k
Bがボルツマン定数であり、T
nがビン温度であり、T
Rが基準温度である。
【0014】
好ましくは、各前記定期的インターバルの後に、前記第2のメモリに保存した前記値をリセットする工程をさらに含む。前記第1のメモリが好ましくは不揮発性メモリであり、前記第2のメモリが好ましくは揮発性メモリである。好ましくは、前記第1のメモリがEEPROMである。
【0015】
本発明の上記およびその他の特徴、要件、特性、工程および利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明を添付の図面を参照して読むことにより、より明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2に示すAOCと共に用い得るプリント回路基板および成形された光学構造(molded optical structure)の分解図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すプリント回路基板を下面側から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、別のAOCを上面側から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6に示すプリント回路基板および成形された光学構造の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
アクティブデバイスにどのくらい寿命が残っているかを知って、故障する前にアクティブデバイスまたはアクティブデバイスを含むシステムを早めに交換し得ることが望ましい。アクティブデバイスの動作環境に基づいて故障の可能性を決定するにはパッシブメカニズムおよび/または方法が必要である。そのため本発明の好ましい実施形態は以下を行う。
1)アクティブデバイスの動作パラメータに関する情報を定期的インターバルで保存し、それよりも短い定期的サブインターバルで動作パラメータを監視し記録する。
2)保存した情報からアクティブデバイスの実効年齢を決定する。
【0018】
本発明の様々な実施形態のうち特定の実施例は、書き込み能力が限定され容量が限定されたメモリを用いてアクティブデバイスの温度を測定および記録する方法、ならびにその温度データを用いてアクティブデバイスの実効年齢そしてひいては予測される残り寿命を近似する寿命近似方法を提供する。予測される残り寿命を用いて、アクティブデバイスまたはアクティブデバイスを含むシステム、すなわちAOCを故障前に早めに交換することができる。
【0019】
アクティブデバイスをある温度に置いた時間に関するデータを保存し適切な寿命近似方法を用いてアクティブデバイスの年齢を近似することはいくつかの利点を有する。第1に、寿命近似方法は用途に合わせて適切に変更し得る。第2に、新しい信頼性データが入手可能になると更新寿命近似値を計算し得る。第3に、近似年齢の計算をシステムプロセッサによって行う場合に比べて追加のオンボード演算パワーを低減し得る。
【0020】
アクティブデバイスの年齢そしてひいては残り寿命を、VCSELなどのアクティブデバイスが温度に対してどの程度の速度で経時変化するかを知ること、およびアクティブデバイスが各温度に置かれた時間の長さを知ることによって推定し得る。アクティブデバイスの製造者は典型的には経時変化の速度とアクティブデバイスの温度との関係性すなわち関数を提供する。アクティブデバイスの温度は、アクティブデバイスがオン状態にある限りいつでも近傍のセンサによって測定し記録し得る。温度センサを用いることによって、追加の回路を必要とせずにアクティブデバイスの寿命を受動的に近似し得る。適切な寿命近似方法を用いることにより、基準温度、例えば40℃で常に動作するアクティブデバイスに対する、対象アクティブデバイスの実効年齢を決定し得る。
【0021】
動作温度について上記した方法および装置は、アクティブデバイスの寿命に影響を与える他の関数にも適用し得る。デバイスにストレスを与える他の条件、例えば湿度、温度サイクル、動作電流などを考慮して同様の年齢推定を行う場合、アクティブデバイスが各ストレス条件下に置かれた時間の長さを測定する能力が必要である。例えば電流が大きいほどより急速に経時変化するアクティブデバイスの場合、アクティブデバイスの電流または電力損失をある期間に亘って監視することによりデバイス年齢を推定し得る。
【0022】
本発明の好ましい実施形態の特定の実施例ではアクティブデバイスとしてVCSELを用いるが、本発明は他のアクティブデバイスにも適用し得る。例えばAOCは典型的には多くのタイプのアクティブデバイスを含む。該多くのタイプのアクティブデバイスは、例えばトランスインピーダンス増幅器、光検出器、レーザドライバ、VCSEL以外の光光源などを含むがこれらに限られない。本発明の好ましい実施形態はこれらのアクティブデバイスのいずれにも適用可能である。VCSELは最も早く故障すると考えられるため本発明の好ましい実施形態において好適に用いられるが、他のアクティブデバイスが最初に故障すると考えられる場合は、そのアクティブデバイスが好適に用いられる。VCSELの年齢はその光出力を直接監視することなく近似し得る。直接の監視には追加の部品が必要である。他方、VCSELの温度は受動的に監視し得る。
【0023】
図2はAOCの分解図である。本願における
図2は米国特許出願第12/944,545号及び第12/944,562号における
図1と同じであり、これらの米国特許出願の全体を参考のためここに援用する。AOCはハウジング101と、光ファイバ112を有する光ケーブル111と、基板102と、基板102および光ファイバ112に連結または接続する成形された光学構造(molded optical structure;MOS)110と、オプティカルライザ108とを含む。基板102は光検出器107と、VCSEL109と、マイクロプロセッサ103とを含む。
図3は、基板102および
図2に示すAOCと共に用い得るMOS110の分解図である。
図4は、
図3に示す基板102の下面を示す。
図3は、MOS110下方のVCSEL109を示す。
図4は、好ましくは不揮発性メモリ(すなわちEEPROM)および揮発性メモリの両方を含む、基板102の下面上のマイクロプロセッサ103を示す。基板102はVCSEL109の温度を決定するために用い得る温度センサをさらに含む。温度センサは独立した部品であってもよいし、プリント回路基板上の他の部品に組み込まれていてもよいし、AOC内のうちVCSEL109近傍のどこかに設けられていてもよい。単一の半導体チップに複数の機能が組み込まれていることが好ましい。例えばマイクロプロセッサ、センサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリおよびVCSELドライバが単一の特定用途向け集積回路(ASIC)に組み込まれ得る。
【0024】
図5はAOC内で用い得る光受信器を示す。この受信器は米国特許出願第13/539,173号、第13/758,464号、第13/895,571号、第13/950,628号および第14/295,367号に示す光トランシーバの1つに似ており、これらの米国特許出願の全体を参考のためここに援用する。例えば本願の
図5から
図7に示す受信器は、米国特許出願第13/539,173号の
図15Aから
図17Bに示す光トランシーバに似ている。受信器は光ファイバ211と、基板202と、基板202と光ファイバ212とに連結または接続するMOS210と、マイクロプロセッサ203と、光ヒートシンク213とを含む。基板202はドライバ214と、VCSEL209と、マイクロプロセッサ203とを含む。
図6は、
図5に示す受信器の分解図である。
図7は、
図6に示す基板202およびMOS210の分解図である。
図7は、MOS210下方のVCSEL209とマイクロプロセッサ203とを示す。
図4に示すマイクロプロセッサ103同様、
図7に示すマイクロプロセッサ203も不揮発性メモリ(すなわちEEPROM)および揮発性メモリの両方を含むことが好ましい。
【0025】
本発明の好ましい実施形態の特定の実施例ではメモリデバイスとしてEEPROMを用いるが、本発明の好ましい実施形態は他の適切なタイプのメモリにも適用可能である。スタティックメモリ、例えばSRAMを用い得る。アクティブデバイスをシャットダウンしたときに揮発性メモリにデータを保存することが可能であれば、不揮発性メモリに代えて揮発性メモリを用いることもできる。
【0026】
(温度ビニング)
本発明の好ましい実施形態による温度ビニングは、EEPROMなどの、書き込み能力が限定され容量が限定されたメモリと共に用い得る。EEPROMには通常、正確な温度読み取り値を記録する十分なスペースがないため、温度値を「ビニング」して各ビンが異なる温度範囲を示すようにしなければならない。温度ビニング方法は、アクティブデバイスの年齢を推定するために用い得る温度ヒストグラムを作成するために用いる。その後、適切な寿命近似アルゴリズムを温度ヒストグラムに適用してアクティブデバイスの実効年齢を決定する。これによりアクティブデバイスの残り寿命を近似する。
【0027】
温度ヒストグラムを温度ビンに分け、各ビンが異なる温度範囲を表すようにする。例えば各温度ビンは5℃に亘る温度範囲を表し得る。各温度ビンがどの程度一杯になっているかが、アクティブデバイスがその温度範囲に置かれた時間の長さを表す。例えば25℃から30℃の温度ビンが35℃から40℃の温度ビンよりも満ちている場合、アクティブデバイスは35℃から40℃の温度範囲よりも25℃から30℃の温度範囲に置かれた時間が長い。
【0028】
各温度ビンはEEPROMにおけるあるバイト数、例えば3バイトであり得る。バイト数は単一のビンの最大値に応じて選択する。例えばこの例では、最大ビン値が約100万でなければならないため3バイトを選択した。アクティブデバイスが5年間に亘って一定の温度に維持されている場合、その温度に対するビンの最大値は525,600よりも大きくなければならない。なぜなら5年間では525,600のサブインターバルがあり得るからである(24[サブインターバル/2時間の期間]×12[2時間の期間/日]×365[日/年]×5[年]=525,600サブインターバル)。エンドユーザが初めてアクティブデバイスをオンにする前に、各温度ビンをゼロに設定する。すなわち各バイトをゼロに設定する。これは、アクティブデバイスが各温度範囲に置かれた時間がゼロであることを示す。温度がある温度範囲内にあることが測定されると、その温度範囲に対応する温度ビン用のバイトを適量だけインクリメントする。
【0029】
EEPROMへの書き込みのインターバル、すなわちメモリ書き込みインターバルは、アクティブデバイスの望ましい寿命と、EEPROMに書き込み可能な回数とに依存する。例えば、選択された特定のチップ内にあるEEPROMの所与のセルが85℃で動作する場合、故障するまでに約30,000回の書き込みが可能である。これは、EEPROMがその寿命に亘って85℃で動作すると予測される場合、各温度ビンへの書き込み回数は30,000回未満に抑えるべきだということを意味する。動作温度が上がるにつれて寿命中の書き込み可能回数は減少する。例えばEEPROMの動作温度が85℃を超えると、寿命中の書き込み可能回数は30,000回未満となり得る。時間インターバルは、EEPROMの動作寿命がVCSEL(または監視中の任意のアクティブデバイス)のそれよりも何らかの安全率ぶんだけ長くなるように選択する。これにより、EEPROMが動作寿命全体に亘ってVCSEL上の情報を記録し続け得ることが保証される。用いるべき適切な安全率は用途によって異なるが、概して例えば1.2から10の範囲内である。
【0030】
アクティブデバイスの寿命が5年間であると予測される場合、EEPROMを少なくともVCSELと同じだけ長く動作させることによって、システムデバイス全体がEEPROMの制限を受けないようにする必要がある。EEPROMが85℃以下の動作温度で5年間動作することを保証するためには、最悪の動作条件を考えた場合、EEPROMには2時間ごとに(2時間×30,000=60,000時間≒6.8年)書き込みを行うべきである。EEPROMの寿命は5年を超える可能性が高い。理由は(1)アクティブデバイスはその寿命全体に亘って同じ温度で動作することはなく、複数の温度ビンが更新されるから、および/または(2)アクティブデバイスはその寿命全体に亘って最高動作温度で動作することはなく、EEPROMの寿命が温度範囲全体を通じてVCSELの寿命より長いと仮定すると、EEPROMはより多くの書き込みサイクルを行うことができるからである。この2時間というメモリ書き込みインターバルは、可能性のあるインターバルの一例にすぎない。例えばEEPROMへの書き込み回数が増すと、メモリ書き込みインターバルは短くなり得る。アクティブデバイスの寿命がより長いと予測されると、メモリ書き込みインターバルは長くなり得る。メモリ書き込みインターバルは、EEPROMの寿命がVCSELのそれよりも長いことが保証されるように選択するのが好ましい。
【0031】
温度はメモリ書き込みインターバル、例えば2時間のうちに大幅に変化し得るため、温度記録はより細かい(higer glanurality)ことが好ましい。温度記録の細かさを上げるために、温度ははるかに短いインターバル、例えば5分毎に測定し揮発性メモリに記録し得る。すなわちメモリ書き込みインターバルを細かく分割してサブインターバルにし得る。揮発性メモリに保存したデータは、アクティブデバイスをシャットオフする際に全て失われるため、温度ヒストグラムは揮発性メモリには保存できない。揮発性メモリはマイクロプロセッサに含まれ得、マイクロプロセッサはアクティブデバイスを含むシステムの一部である。例えばサブインターバルが5分間でメモリ書き込みインターバルが2時間である場合、EEPROMに書き込む際に24の温度測定値がそれぞれの温度ビンに追加される。
【0032】
本発明の好ましい実施形態による温度ビニング方法の一例を表Aおよび表Bに示す。この例では、メモリ書き込みインターバルは2時間であり、サブインターバルは5分間である。表Aは、まだ一度も電源を入れておらず全温度ビンのバイトがすべてゼロであるアクティブデバイスの、ヒストグラムを有するEEPROMを示す。表Bは、電源を入れてから2時間経過したアクティブデバイスの、ヒストグラムを有するEEPROMを示す。アクティブデバイスが最初のメモリ書き込みインターバル中に13℃で動作する場合、温度範囲10℃≦T<15℃のビン#4が24(Hex18)だけインクリメントされることにより、アクティブデバイスが24回すべての5分間サブインターバルにおいて10℃から15℃の間で動作したことを示す。これを表Bに示す。温度ビニング方法を表すフローチャートを
図1に示す。
【0035】
ヒストグラムは次の2時間後に更新され、例えば各温度ビンが5分間サブインターバル毎に1ずつインクリメントされ、アクティブデバイスはその温度範囲内で測定される。いずれの時点でも、温度ヒストグラムは、アクティブデバイスが各温度範囲に置かれた、5分間サブインターバル単位での時間の長さを示している。そしてこの温度ヒストグラムを用いて、アクティブデバイスの実効年齢を近似し得る。
【0036】
温度ビンは例えば3バイトより大きくても小さくてもよい。ビンの数は例えば22より多くても少なくてもよい。温度範囲は例えば5℃の範囲より広くても狭くてもよい。ビッグエンディアンまたはリトルエンディアンなどの適切なコーディングスキームを用いて、温度ビンのサイズを保存し得る。
【0037】
メモリ書き込みインターバル、サブインターバルおよびビンサイズは、アクティブデバイスの熱時定数と、予測されるアクティブデバイスの寿命と、EEPROMの寿命および容量に基づいて最適化し得る。例えばアクティブデバイスの熱時定数が大きくてアクティブデバイスの温度がゆっくりと変化する場合、メモリ書き込みインターバルおよびサブインターバルは長くなり得、温度ビンのサイズは小さくなり得る。予測される寿命が長いアクティブデバイスは、より長いメモリ書き込みインターバルおよびサブインターバルを用い得る。大容量EEPROMは大きいビンサイズをサポートし得る。上記で用いた5年間という寿命、2時間というメモリ書き込みインターバル、および5分間というサブインターバルは一例にすぎず、これらは様々な用途に応じて適切に変更および最適化し得る。
【0038】
(寿命近似アルゴリズム)
寿命近似方法の一例はアレニウスの式である。アレニウスの式は、化学反応の温度依存性を近似するために用い得る経験式である。これは、高温で動作する際の経時変化の加速の影響を決定する方法として信頼性の計算でも用い得る。すなわちアレニウスの式は、常に40℃または他の基準温度で動作するアクティブデバイスに対する、対象アクティブデバイスの実効経時変化加速関数を決定するために用い得る。アレニウスの式は式1で表される。式1において、kは速度定数であり、Aは比例定数であり、E
Aは活性化エネルギーであり、k
Bはボルツマン定数であり、Tは温度(単位:ケルビン)である。
【数5】
式1:アレニウスの式
【0039】
活性化エネルギーE
Aは典型的にはアクティブデバイスの製造者が信頼性試験で提供する。
【0040】
経時変化加速関数A
Fは、高温で経時変化が加速する割合を基準温度で動作した場合と比較したものとして定義され、式2で表される。式2において、t
Hは高温であり、t
Rはそれよりも低い基準温度である。
【数6】
式2:経時変化加速関数
【0041】
経時変化加速関数A
Fはt
Hとt
Rとによってアレニウスの式に関連するが、t
Hとt
Rとは、それぞれの温度レベルでアレニウスの式において決定される速度定数と同等である。アクティブデバイスの実効年齢を近似するために用いる方法は、基準温度T
Rに対する、各温度ビンT
nの経時変化加速関数A
Fを決定することに依存する。各温度ビンT
nでの経時変化加速関数A
Fは式3で表される。式3において、nはビン番号である。
【数7】
式3:n番目の温度ビンでの経時変化加速関数
温度ビンT
nは、例えばビン温度範囲のうち最も低い温度、ビン温度範囲における平均温度、およびビン温度範囲のうち最も高い温度を含むビン温度範囲のうちいずれかの温度に対応するように選択する。
【0042】
その後、アクティブデバイスが各温度に置かれた時間の長さN
nとその温度における対応経時変化加速関数A
Fnを乗算し、全ビンにおけるこの値を加算することによって、アクティブデバイスの実効年齢t
effective(単位:時間)を求める。近似実効年齢t
effective用の式は式4で表される。式4において、N
nはn番目のビンに保存された値であり、サブインターバルは5分間とする。
【数8】
式4:デバイスの実効年齢
【0043】
この式は一般化して、m分毎に温度読み取りを行い、読み取り値をb個のビンにビニングするシステムに適用し得る。
【数9】
式5:デバイス年齢を近似する一般式
【0044】
実効年齢t
effectiveが近似されると、アクティブデバイスのMTTFから実効年齢t
effectiveを減算することによりアクティブデバイスの残り寿命を近似することができる。実効年齢t
effectiveをデバイス寿命の他の尺度と比較することもできる。例えば、母集団の10%、5%または1%が故障するまでの時間をそれぞれ表すB10、B5またはB1を実効年齢t
effectiveと比較し得る。ある用途では、アクティブデバイスの実効年齢がこれら寿命の尺度の一つに達したときにシステムを交換することが適切であり得る。上記に明示した以外の寿命の尺度も用い得る。
【0045】
実効年齢t
effectiveと残り寿命とを決定することは様々な様式および場所で行い得る。本発明の好ましい実施形態では、
図4に示すマイクロプロセッサが不揮発性メモリと通信し、様々なメモリビンに問い合わせし、実効年齢t
effectiveを決定するために必要な計算を行い得る。実効年齢t
effectiveが何らかの閾値を超えると、マイクロプロセッサはユーザにインジケータ信号を送り得る。本発明の別の実施形態では、アクティブデバイスを含んでいるシステムの一部ではない外部デバイスが、不揮発性メモリと通信し、様々なメモリビンに問い合わせし、実効年齢t
effectiveを決定するために必要な計算を行い得る。実効年齢t
effectiveが何らかの閾値を超えると、外部デバイスがユーザにインジケータ信号を送り得る。
【0046】
実効年齢t
effectiveは他の任意の経時変化モデルを用いて近似し得る。これらのモデルは、アレニウスの式に基づくモデルおよびアレニウスの式由来ではないモデルを改変したものを含む。実効年齢t
effectiveは、アクティブデバイスの年齢に影響を与える任意の測定可能条件に基づいて近似し得る。測定可能条件は例えば、湿度、温度サイクル、電流、電力損失、UV曝露などを含む。例えばRodriguezのParametric Survival Models, Summer 2010、14頁に開示されたモデルを用い得る。上記文献の全体をここに援用する。実効年齢t
effectiveは、温度と他の任意の測定可能条件との組み合わせに基づいて近似してもよいし、温度を考慮することなく別の測定可能条件に基づいて近似してもよい。
【0047】
いくつかの用途では、アクティブデバイスの寿命全体に亘って固定バイアス電流をレーザに印加する。バイアス電流に基づく経時変化加速関数を用いて、アクティブデバイスの実効年齢を計算してもよい。バイアス電流に基づく経時変化加速関数と温度に基づく経時変化加速関数、例えば式3のA
Fnとの両方を用いて、アクティブデバイスの実効年齢を計算してもよい。
【0048】
別の用途では、アクティブデバイスの寿命全体に亘って可変バイアス電流をレーザに印加する。例えば半導体レーザの光出力パワーは概して温度と共に低下する。いくつかの用途では、光出力パワーを温度に対して比較的一定に維持することが望ましい。このような用途では、温度の上昇に伴ってレーザに印加するバイアス電流を増加させることによって、光出力パワーを比較的一定に維持してもよい。増加したバイアス電流で動作することは概して経時変化加速関数を増加させ、且つこの増加させかたは既知であるため、各温度ビンに対応して、バイアス電流に基づくエージング加速関数が存在する。バイアス電流に基づくエージング加速関数と温度に基づくエージング加速関数、例えば式3のA
Fnとの両方を用いて、アクティブデバイスの実効年齢を決定し得る。例えば式3の右辺と、各温度ビンに関連するバイアス電流に基づくエージング加速関数とを乗算することにより、各温度ビンの総エージング加速関数を計算することができる。
【0049】
本発明の好ましい実施形態の特定の実施例においては、温度を考慮する。なぜなら温度がVCSAELの年齢に最も影響を与える測定可能条件だからである。しかし他のアクティブデバイスにとっては、温度以外の測定可能条件がエージングに対してより影響を与えるかもしれない。
【0050】
上記記載は本発明の例示に過ぎないことを理解すべきである。アクティブデバイスをVCSELとし、システムをAOCとし、測定する動作パラメータを温度として本発明の好ましい実施形態を述べてきたが、これらは本発明の好ましい実施形態の特定の実施例にすぎない。本発明の好ましい実施形態は、寿命が何らかの測定可能動作パラメータに依存するアクティブデバイスを有する任意のシステムに適用可能である。いくつかの実施形態では、複数の動作パラメータを測定かつ記録し、これら2つのパラメータの効果の組み合わせに基づいて実効年齢を計算してもよい。当業者であれば本発明から逸脱することなく様々な変形および改変を着想し得る。したがって本発明は、添付の請求の範囲に含まれるそれら変形、改変、変更のすべてを含むことを意図する。
【手続補正書】
【提出日】2017年6月21日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブ光ケーブルであって、
光ファイバケーブルと、
少なくとも一つの光変換器と、
第1のメモリと、
第2のメモリと、
前記アクティブ光ケーブルの動作パラメータを感知するセンサと、
前記少なくとも一つの光変換器、前記第1のメモリ、前記第2のメモリ、および前記センサに接続されたプロセッサと
を含み、
前記プロセッサは、
定期的サブインターバルに分割された定期的インターバルの間、および各前記定期的サブインターバルの後に、感知された動作パラメータに対応する値を前記第2のメモリに記録し、
各前記定期的インターバルの後に、前記第2のメモリに記録した前記値を前記第1のメモリに保存する、アクティブ光ケーブル。
【請求項2】
前記定期的インターバルおよび前記定期的サブインターバルは、前記第1のメモリへの予測される書き込み回数と前記アクティブ光ケーブルの予測される寿命とに基づく、請求項1に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項3】
前記動作パラメータは温度である、請求項1または2に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項4】
前記第2のメモリは複数のビンを含み、
各前記ビンは前記感知された動作パラメータの値の範囲に対応する、請求項1から3のいずれかに記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記感知された動作パラメータの前記値の範囲であって、前記感知された動作パラメータの前記値を含む範囲に対応するビンのビン値を1だけインクリメントすることにより、前記感知された動作パラメータに対応する前記値を前記第2のメモリに記録する、請求項4に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項6】
前記第1のメモリは、前記第2のメモリ内の前記ビンに対応するビンを含む、請求項4または5に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記第2のメモリ内の各前記ビンのビン値を、前記第1のメモリ内の対応するビンにすでに保存されている対応ビン値に加算することにより、前記第2のメモリに記録した前記値を前記第1のメモリに保存する、請求項6に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記第1のメモリに保存した前記ビンの前記ビン値に基づいて前記アクティブデバイスの前記実効年齢を計算する、請求項7に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記第1のメモリに保存した前記ビンの前記ビン値のみに基づいて前記実効年齢を計算する、請求項7または8に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項10】
前記実効年齢が閾値より高い場合、前記プロセッサはインジケータ信号を供給する、請求項8または9に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項11】
前記動作パラメータは温度であり、各前記ビンは温度範囲を表し、
前記プロセッサは下記式を用いて前記アクティブ光ケーブルの実効年齢t
effectiveを計算し、
【数10】
上記式において、
【数11】
であり、
mは定期的サブインターバルの長さ(単位:分)であり、bはビンの数であり、N
nはビンnに保存されている値であり、E
Aは活性化エネルギーであり、k
Bはボルツマン定数であり、T
nはビン温度であり、T
Rは基準温度である、請求項
5から10のいずれかに記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項12】
各前記定期的インターバルの後に、前記プロセッサは前記第2のメモリに保存した前記値をリセットする、請求項1から11のいずれかに記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記第1のメモリに保存した前記値に基づいて前記アクティブ光ケーブルの実効年齢を計算する、請求項1から12のいずれかに記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項14】
前記第1のメモリは不揮発性メモリであり、前記第2のメモリは揮発性メモリである、請求項1から13のいずれかに記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項15】
前記第1のメモリはEEPROMである、請求項1から14のいずれかに記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項16】
光ファイバケーブルと、少なくとも一つの光変換器と、第1のメモリと、第2のメモリとを含むアクティブ光ケーブルの実効年齢を計算する方法であって、
定期的サブインターバルに分割された定期的インターバルの間、および各前記定期的サブインターバルの後に、前記アクティブ光ケーブルの動作パラメータを感知し、感知された動作パラメータに対応する値を前記第2のメモリに記録すること、
各前記定期的インターバルの後に、前記第2のメモリに記録した前記値を前記第1のメモリに保存すること、および、
前記第1のメモリに保存した前記値に基づいて前記アクティブ光ケーブルの前記実効年齢を計算すること、
を含む方法。
【請求項17】
前記定期的インターバルおよび前記定期的サブインターバルは、前記第1のメモリへの予測される書き込み回数と前記アクティブ光ケーブルの予測される寿命とに基づく、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記動作パラメータは温度である、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2のメモリは複数のビンを含み、
各前記ビンは前記感知された動作パラメータの値の範囲に対応する、請求項16から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記感知された動作パラメータに対応する前記値を前記第2のメモリに記録すること、は、前記感知された動作パラメータの前記値の範囲であって、前記感知された動作パラメータの前記値を含む範囲に対応するビンのビン値を1だけインクリメントすることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のメモリは、前記第2のメモリ内の前記ビンに対応するビンを含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2のメモリに記録した前記値を前記第1のメモリに保存すること、は、前記第2のメモリ内の各前記ビンのビン値を、前記第1のメモリ内の対応するビンにすでに保存されている対応ビン値に加算することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記アクティブ光ケーブルの前記実効年齢を計算すること、は、前記第1のメモリに保存した前記ビンの前記ビン値に基づく、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記実効年齢を計算すること、は、前記第1のメモリに保存した前記ビンの前記ビン値のみに基づく、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記実効年齢が閾値より高い場合、インジケータ信号を供給することをさらに含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記動作パラメータは温度であり、各前記ビンは温度範囲を表し、
前記アクティブ光ケーブルの前記実効年齢を計算すること、は、下記式を用いることを含み、
【数12】
上記式において、
【数13】
であり、
t
effectiveは前記アクティブデバイスの実効年齢であり、mは定期的サブインターバルの長さ(単位:分)であり、bはビンの数であり、N
nはビンnに保存されている値であり、E
Aは活性化エネルギーであり、k
Bはボルツマン定数であり、T
nはビン温度であり、T
Rは基準温度である、請求項
20から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
各前記定期的インターバルの後に、前記第2のメモリに保存した前記値をリセットすることをさらに含む、請求項16から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記第1のメモリは不揮発性メモリであり、前記第2のメモリは揮発性メモリである、請求項16から27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記第1のメモリはEEPROMである、請求項16から28のいずれかに記載の方法。
【国際調査報告】