(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-532053(P2017-532053A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(54)【発明の名称】シードプライミングの改良された方法
(51)【国際特許分類】
A01C 1/00 20060101AFI20171006BHJP
【FI】
A01C1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-522050(P2017-522050)
(86)(22)【出願日】2014年10月28日
(85)【翻訳文提出日】2017年6月20日
(86)【国際出願番号】EP2014073116
(87)【国際公開番号】WO2016066189
(87)【国際公開日】20160506
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515297261
【氏名又は名称】ロブスト シード テクノロジー エーアンドエフ アクチエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】シェン トンユン
【テーマコード(参考)】
2B051
【Fターム(参考)】
2B051AA01
2B051AB01
2B051BA04
2B051BB04
2B051BB05
(57)【要約】
乾燥した種子をプライミングする方法が開示される。種子はまず、種子が吸水の第二段階に入るのに必要な水の量の75%以上を吸水するように濡らされる。次に、種子の水分含有量は、一個1%以上低減され、また、種子の残りの水分含有量が25%以上であるように低減される。最後に、種子は、インキュベートされる。インキュベーション中の種子の重量は、インキュベーション前の種子の重量の80%以上、例えば90%又は95%以上であり、インキュベーション中の種子の水分含有量(乾燥重量ベース)が、インキュベーション時間の25%以上の間、25%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子のプライミング方法であって、該方法は、
前記種子が吸水の第二段階に入るのに必要な水の量の75重量%以上を吸収するように、プライムされる種子を水溶液で濡らすことと、
前記種子の水分含有量(重量%、乾燥種子ベース)を一個1パーセント以上低減し、前記種子の残りの水分含有量が25重量%以上となるように低減することと、前記種子を以下のようにインキュベートすることと、
インキュベーションの間の前記種子の重量が、前記インキュベーションの前の前記種子の前記重量の80%以上、例えば90%以上、又は95%以上に維持され、前記インキュベーションの間の前記種子の水分含有量(乾燥重量ベース)が、インキュベーション時間の25%以上の間、25重量%以上に維持されるように、前記種子をインキュベートすること、とを含む、種子のプライミング方法。
【請求項2】
プライムされる前記種子は、前記種子が吸水の第二段階に入るのに必要な水の95重量%以上、例えば97重量%以上、99重量%以上、又は99.5重量%以上を、前記種子が吸水するように濡らされる、請求項1に記載の種子のプライミング方法。
【請求項3】
プライムされる前記種子は、前記種子が前記吸水の第二段階に入るのに少なくとも十分な水を、前記種子が吸収するように濡らされる、請求項2に記載の種子のプライミング方法。
【請求項4】
濡らす継続時間は、前記吸水の第二段階に入るのに必要な時間よりも、1〜20%、例えば2〜10%、又は2〜5%長い、請求項3に記載の種子のプライミング方法。
【請求項5】
前記種子は、
トマトやコショウのような内胚乳種、
パインやトウヒのような裸子植物種、
レッドビートのような外胚乳種、及び/又は
人参や草等のような果皮(子嚢)を有する種子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の種子のプライミング方法。
【請求項6】
前記濡らす工程のために、乾燥したプライムされる前記種子を提供する工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の種子のプライミング方法。
【請求項7】
前記種子を濡らす工程は、前記種子を水溶液に浸漬することを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の種子のプライミング方法。
【請求項8】
前記水溶液は、通気され、そして前記濡らす工程の間、継続的に又は断続的に、選択的に撹拌される、請求項7に記載の種子のプライミング方法。
【請求項9】
前記種子の水分含有量は、前記種子の残りの水分含有量が、前記種子が発芽を完了させるのに十分でないように、低減される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の種子のプライミング方法。
【請求項10】
前記種子の前記水分含有量は、前記種子を濡らす間に増加した重量の1〜80%、例えば1〜60%、2〜30%、2〜20%、又は2〜8%が、濡らされた前記種子の水分を低減する工程で失われる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の種子のプライミング方法。
【請求項11】
前記種子の重量は、濡らされた前記種子の前記水分を低減する前記工程で、1〜10%、好ましくは2〜8%低減される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の種子のプライミング方法。
【請求項12】
前記水分は、前記種子に対して空気を吹き付けることで低減され、前記空気は40%未満の相対湿度及び摂氏25〜30度の間の気温を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の種子のプライミング方法。
【請求項13】
前記水分を低減する工程の継続時間は、発芽を完了させるのに十分な水分を有している場合、同じ種類の種子が発芽するのに必要な時間の1/10以下、例えば1/20以下、1/50以下又は1/100以下である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の種子のプライミング方法。
【請求項14】
前記水分を低減する前記工程の継続時間は、前記インキュベーション工程の継続時間の1/10以下、例えば1/20、1/50、又は1/100以下である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の種子のプライミング方法。
【請求項15】
前記種子をインキュベートすることは、相対湿度95%以上100%未満の空気の雰囲気下で前記種子をインキュベートすることを含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の種子のプライミング方法。
【請求項16】
前記インキュベーション工程中の前記雰囲気の前記相対湿度は、80〜100%の間、例えば80%〜95%未満、95%以上100%未満、又は100%である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の種子のプライミング方法。
【請求項17】
前記種子は、水に自由に接触できる種子にとって、吸水の第二段階及び第三段階それぞれに入るのに必要な時間の差以上の時間、インキュベートされる、請求項1〜16のいずれか1項に記載の種子のプライミング方法。
【請求項18】
前記インキュベーションの継続時間は、水に自由に接触できる種子にとって、前記吸水の第二段階及び第三段階それぞれに入るのに必要な前記時間の前記差に少なくとも対応し、しかし前記差の3倍より長くなく、例えば2倍より長くない、請求項17に記載の種子のプライミング方法。
【請求項19】
前記種子は、前記インキュベーション工程の間回転される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の種子のプライミング方法。
【請求項20】
前記雰囲気は、前記インキュベーション工程の間、継続的に又は断続的に、入れ替えられる、請求項1〜19のいずれか1項に記載の種子のプライミング方法。
【請求項21】
前記インキュベーション中の前記種子の重量は、前記インキュベーション前の前記種子の前記重量の20%、例えば10%、5.0又は2.5%以内である、請求項1〜20のいずれか1項に記載の種子のプライミング方法。
【請求項22】
前記種子のインキュベーション工程の後に、前記種子の水分を低減する工程を含む、請求項1〜20のいずれか1項に記載の種子のプライミング方法。
【請求項23】
前記水分含有量は、前記種子のプライミング前と少なくとも同じか、好ましくはそれより低いレベルまで低減される、請求項21に記載の種子のプライミング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種子を水溶液に浸漬し、続いてインキュベート(定温で放置すること)を含むシードプライミングの方法に関する。さらに、本発明は、そのような方法で得られる種子及びそのような種子から育成される植物に関する。
【背景技術】
【0002】
種子の質が農作物の最終収量に影響を与えることはよく知られている。シードプライミングは、種子の生産性を上げるための自然で環境にやさしい方法である。それは、発芽能力の低い種子及び高い種子の両方に効果がある。シードプライミングにおいて、湿気が高く、十分な酸素と適切な温度の条件下で、種子を発芽させるためには、基本的な代謝反応が必要である。発芽のプロセスは、典型的には、根が発生する前、すなわち発芽のプロセスが完了する前に、プライミング処理された種子が乾燥すると中断される。乾燥に続いて、プライミング処理された種子は包装され、貯蔵され、流通して、処理されていない種子と同じように植えられる。
【0003】
実証されている通り、シードプライミングは農作物の生産及び植林にいくつかの利点を有する。プライムド・シードは、通常、プライミングされていない種子と比べて早く、均一に発芽する。さらに、プライムド・シードは、プライミングされていない種子よりも、広い範囲の温度で、塩分を含んだり、水の確保が制限されている等の不利な畑の状況でも、よく発芽する。プライミングは、多くの種子の野菜で、機能停止して休眠している種子に効果を示す。シードプライミングによって、最終収量が増加することにより、利益が高まり、多くの種でプライム処理を行う追加的な出費が正当なものとなる。このように、シードプライミング方法への需要がある。
【0004】
従来技術のプライミング方法には、水プライミング、浸透性プライミング、マトリックスプライミングがある。これらのプライミング方法の中で、水プライミングは、プライミングの間に用いられる化合物/マトリックスのコスト及び、プライミングの後にこれらの材料を除去する作業の両方を削減する利点を有する。しかしながら、水プライミングは、良い結果を生じさせ、プライミングの処理の間に種子が発芽することを防止する両方のことに、より正確な技術を必要としている。さらに、保存可能期間が改善されたプライム処理された種子を提供することが望ましい。
【0005】
プライミングの間に種子が発芽することを防止するために、種子に供給される水及び定温で放置する時間は、厳密に制御されなければならない。
【0006】
特許第7289021号は、種子の発芽開始時期を統一し、改良されて安定した発芽能力を有する、高いパフォーマンスの被覆された種子を提供する方法について開示している。開示された方法では、種子は水に浸漬されて、種子の水分量を、乾燥重量の30%以上にされる。種子の発芽開始時期を統一する方法を提供するため、準備された種子は、発芽の直前まで、50%相対湿度以上の気相環境に保持される。
【0007】
国際特許公報WO99/33331は、一以上の熱交換表面を含む閉じたチャンバ内で、流体を含む気体を利用した流体で種子を処理する方法に関する。処理する時間の長さが重要であり、長い時間だと望まない発芽に繋がり、短い処理だと適切でない共時性、すなわち多くの種子が十分に水を吸水していないため、まだ終端休眠段階にあるということに繋がると記載されている。
【0008】
米国特許6,421,956は、流体、特に流体を含む気体の使用を伴う水により種子を処理する方法及び装置を開示している。これにより、種子は、制御された量の流体を有する気体に接触し、種子は所定の期間この気体に接触し続け、一方、種子と液相の流体とが直接接触することは、実質的に不可能にされる。流体を含む気体に曝される前に、種子は種子の低い浸透圧に湿らされてもよい。
【0009】
米国特許公報5,119,589は、蒸気発生器から蒸気として導入されドラムの壁でミストとして凝縮する水か、又は表面にフィルムを形成するように複数の微細チューブを介してドラムの壁に噴出される液体の水によって、種子が回転ドラム内で、漸進的に水分補給されることでプライムされる方法を開示している。水量及び水の追加の速度は、種子が自由に浮遊できるように制御されている。プライム処理の制御を提供する一方、遅い吸水はプライミングの効率にマイナスに作用する。方法はさらに漸進的な水分補給の厳密な制御を必要とする。国際特許公報WO96/08132は、半透水性の部材を通して種子と水が接触する方法を開示している。その結果吸水は遅くなるが、それはプライミングにマイナスに作用し、水の浸透ポテンシャルの厳密な制御を必要とする。
【0010】
他の例示としては、米国特許公報5,232,465を含み、そこでは草の種子の個体群が、吸水と脱水を複数回交代する方法が開示されている。高い水分含有量によって繊細になっている種子が、低い湿度の空気によって定期的に、過酷に処理されるため、吸水/脱水期間の交代はリスクを有する。さらに、高い湿度(相対湿度93−98%)の期間は、種子が発芽しないように注意深い制御を必要とする。
【0011】
これらの方法では、種子が水/液体に接触して飽和すると、プライム中に種子が発芽することを防止するため、インキュベーション時間は、厳密に制御されなければならない。種子が濡れる前に、吸収が中断されると、水の制限により、特に胚乳や果皮の内側に位置する胚は、プライミング効果を制限する。種子を吸収から取り除くことが早すぎると、プライミングされていない種子よりも低い発芽パフォーマンスとなり得る。
【0012】
最後に、国際特許公報WO08/153388は、種子のプライミング方法を開示している。そこでは、水ではなく、部分的な酸素圧及び/又は部分的な二酸化炭素の圧力がプライム処理を制御するために用いられる。インキュベーション中の酸素の利用性を制限することは、プライミングにマイナスに作用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、従来技術における欠点を克服する種子のプライミング方法への需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明は、上記特定された一以上の先行技術における欠陥及び欠点を、種子のプライミング方法を提供することで単独で、又は組み合わせて、緩和し、和らげ、排除又は回避することを探求する。そこでは、種子が水の吸水の第二段階に入るのに必要な量の水の少なくとも75重量%を吸水するように湿らされて、プライムされるべき種子が濡らされる。種子をインキュベートする前に、種子の水分含有量(乾燥重量ベース)は、一個(ユニット)1パーセント以上であり、種子の残りの水分含有量が25%以上となるように低減される。その後種子は、インキュベーション前の種子の重量の80%以上、例えば90%、又は95%以上が、インキュベーション中に残るように、そして、インキュベーション時間の25%以上の間に、インキュベーション中の種子の水分含有量(乾燥重量ベース)が25%以上となるようにインキュベートされる。
【0015】
水で種子を濡らすことにより、種子は代謝のプロセスを開始し、進めるために十分な水を提供される。種子の発芽プロセスが完了することを防止するため、水分は低減される。
【0016】
本発明のさらなる側面は、そのような方法によって得ることができるプライミングされた種子及びプライミングされた種子によって育成され、得られた植物に関する。
【0017】
本発明のさらに有利な特徴は、従属項で規定される。また、本発明の有利な特徴は、ここに開示される実施形態で詳細に説明される。
【0018】
成熟して乾燥した種子による発芽プロセスの間の水の吸収は、三段階である。最初の段階の間(第一段階、吸収)、水の高速な吸収が、プラトー段階(第二段階、遅滞期)に達するまで起きる。遅滞期の間は、実質的に水は吸収されない。ある種の種子、例えば、麦の種子、セイヨウニラネギの種子にとって、遅滞期の間にも水は部分的に吸水される。しかし、最初の時期の間よりも非常に遅い。遅滞期が終わった後、第三段階(発芽、根の発毛)が始まり、水は再度種子によって早く吸水される。種子が水に接触すると、種子に発芽を準備させる一連の代謝プロセスが始まる。それは、吸水及び遅滞期(第二段階)の間の両方で起こる。発芽プロセス全体の間に最も活動的な器官は胚であり、よって、胚が十分に水を吸収することは、非常に重要である。
【0019】
種子が水に浸漬され、続いて高い相対湿度を有する大気下にインキュベート(定温放置)されるような、従来技術(特許第728901号及び米国特許第6,421,956参照)における発芽プロセスを避けるため、浸漬時間、水溶液の浸透圧及びインキュベーション時間を制御することは、最も重要な事項である。これらのいずれかのパラメーターが誤って制御されると、種子がプライミングプロセスの間に発芽するリスクがある。
【0020】
浸漬時間を短くすることで、水分含有量は種子が発芽を完了させるのに必要な水分含有量よりも低いレベル、好ましくは種子が発芽の第二段階に入るのに必要な水分含有量よりも低いレベルにさえ維持されるかもしれない。さらに、ある種の種子、例えばトマト、コショウ、玉ねぎ、トウゴマの実、及び麦等の内胚乳種からの種子、ヨーロッパアカマツ、トウヒ、イチョウ等の裸子植物からの種子、サトウダイコン、人参、多様な草の水類等の果皮の種類で、種子の内胚乳から胚へ、又は果皮から種子の果皮の内側へ、水が遅滞して移動する。浸漬時間を短くすると、胚(内胚乳の種子の場合)又は種子(果皮を有する種子の場合)による水の吸収が制限されることとなる。このことは、例えば胚のような種子の内側に位置する種子の器官が、発芽の第二段階に完全に入らないため、発芽の最中に起こる代謝反応を妨げるリスクを暗示する。もし短すぎる浸漬時間が用いられると、(長い発芽時間及び低い発芽率の両方を有する)プライミングされない種子よりも、種子は少なく発芽するかもしれない。
【0021】
種子が発芽を完了させるために十分な水を吸収することが許された種子のプライミングのプロセスでは、インキュベーション段階は、発芽を避ける必要のために厳密に制御される。典型的には、インキュベーションは、発芽のための代謝の準備が完了する前に中断される。よって、完全なプライミングは得られない。
【0022】
本発明は、水の吸水の第二段階に入るまで一度十分に濡らされた種子の水分含有量を低減することによって、プライミング中の発芽のリスクを最小化し得ることを発見した。そこでは、胚及び周囲の内胚乳が、発芽の準備プロセスを開始するのに十分な水を得る。しかし、発芽の完了は、種子の水分含有量が低減されることによって妨げられる。
【0023】
完全に濡れた後、水分を低減する間、水分が失われる主な部分は、例えば内胚乳(内胚乳及び裸子植物の場合)及び果皮(種子が結実部で囲まれていた場合)のような種子の表面の器官で起こる。種子の最も活動的で重要な器官である胚では、種子の器官の間の水の移動には時間がかかるため、水分含有量を低減させた後、長い間、完全な代謝プロセスに十分な水分が残る。種子が吸水の第二段階に入るのに必要な水の量の75%以上を吸水するように種子を濡らすことで、胚が発芽のための生物学的なプロセスを開始させるのに十分な水が提供され、一方、種子をインキュベートする前に種子の水分含有量を低減することで、完全な発芽は防止される。
【0024】
濡らした後に水分を低減する一つの利点は、発芽の代謝準備プロセスが、完了しそうなまでに進むが、発芽は完了しない、すなわち種子の表面を根が突き抜けることが抑制される。抑制は、種子の硬い表面を乾燥させることによるかもしれない。種子の水分含有量(乾燥重量ベース)を一個1パーセント以上低減することで、乾いた硬い表面が得られる。これにより、インキュベーションの間の発芽のリスクが低下する。このようにして、インキュベーション時間を注意深く制御することがさほど重要でなくなる。種子が吸水の第二段階に入るのに必要な水の量の75%以上を提供することで、種子が発芽の準備プロセスを開始するのに十分な水が提供される。一方、発芽の完了は、種子の水分含有量を低減し、種子の表面を硬化させることで防止される。どのような説にも縛られずに、種子の表面を硬化させることは、種子の圧ポテンシャルを増加させることに寄与する。
【0025】
実施形態によれば、種子が吸収の第二段階に入るのに必要な水の量の75重量%以上を吸水することができ、それに続くインキュベーション時間の厳密な制御を必要としない種子のプライミング方法が提供される。そのような方法では、濡らす工程に続いて種子の水分含有量は、低減される。水分含有量を低減すると、種子の表面が硬化する。さらに、水分含有量を低減すると、種子は、インキュベーション時間がいくらか多くなっても発芽しない。
【0026】
種子の水分含有量(乾燥重量ベース)は一個(ユニット)1パーセント以上低減される。さらに、水分含有量は、種子の残りの水分含有量が25重量%以上となるように低減される。水分含有量を25重量%より少なく低減すると、プライミングの効果が、あったとしても非常に低下する。加えて、水分含有量は、種子の残りの水分含有量が、種子が発芽を完了させるために十分でない程度に低減されることが好ましい。しかしながら、種子の表面が硬化しているため、その一個(ユニット)1パーセント以上、水分含有量を低減すれば、効果を得られる。
【0027】
そのような方法では、プライミングされる種子がまず提供される。典型的には、種子は乾燥しているか、少なくとも実質的に乾燥している。種子は水溶液によって濡らされる。濡らすこと(wetting)は、種子を水溶液に浸漬し、発芽を完了するのに十分な水を一度吸収したら、取り除かれることで行われる。種子を水溶液に浸漬させることは、種子を水で素早く濡らすために効率的な方法であると発見された。さらに、浸漬によれば、浸漬される全ての種子が無制限に水にアクセスできるため、効率的に水を吸収できることを暗示する。発芽の代謝準備プロセスは、このようにして非常に早く開始される。
【0028】
種子は、さらに濡らされたり、すすがれたり、振り掛けられたり、湿らされたり、つけられたり、浸されたり、飛沫で濡らされたり、スプレーされたり、種子が水溶液に直接接触する他の湿らせる方法を用いて濡らされてよい。その方法によって、種子が制限なく水に接触するようにされるべきである。接触が制限された、すなわち浸透のプライミング方法は、効果が薄いことが示されているため、水の迅速な吸水が重要である。
【0029】
種子が吸水の第二段階に入るのに必要な水量の75重量%以上を種子が吸水するように、種子は濡らされる。そのような水分含有量のレベルは、種子が吸水の第二段階に入るのに十分でないとしても、それが好ましい。種子の発芽を準備する多くの代謝の準備活動が始まり、種子のプライミングに重要でポジティブな効果が、このレベルの水分ですでに示される。
【0030】
実施形態によれば、種子が吸水の第二段階に入るのに必要な水の量の95重量%以上、例えば97重量%、99重量%又は99.5重量%以上吸収するような方法で湿らされる。さらに、種子は、種子が吸水の第二段階に入るのに十分なほど以上の水を吸水するように湿らされてもよい。
【0031】
インキュベーション時間及び水分含有量の両方が、種子の発芽にとって重要である。そしてこれらの二つの要因は、ネガティブに相互に関連しており、水分含有量が高いと、インキュベーション時間は短い。短いインキュベーション時間が最も頻繁に望まれるが、時間の長さが長ければ、インキュベーションの時間の長さを制御することは容易であろう。例えばレタスや麦のようないくつかの種にとって、発芽時間は極めて短く、ほんの数時間である。湿らせる時間と、代謝プロセスを完了させる時間、すなわちインキュベーション時間と、の両方ともが、とても短く、より繊細な制御が必要となることが暗示される。そのような種子にとって、濡らす継続時間は、吸水の第二段階に入るのに必要な時間よりも短いであろう。このように、インキュベーション時間の長さを延ばすことは、インキュベーション時間の制御が容易になり、中間の種子の乾燥によるダメージを最小化する。
【0032】
濡らす継続時間を第二段階に入るのに必要な時間よりも少しだけ長くすることは、中間の種子の乾燥によるダメージを最小化するために有利であろう。濡らす継続時間は、1〜20%、例えば2〜10%又は2〜5%、吸水の第二段階に入るのに必要な時間よりも長い時間であってよい。
【0033】
他の実施形態では、濡らす継続時間は50%まで、例えば40%まで、30%又は20%まで、吸水の第二段階に入るのに必要な時間よりも長い時間であってよい。
【0034】
ジベレリン、BAP等のホルモン刺激剤、マイクロプラン(Microplan)のような植物の栄養剤、及び/又は硝酸カリウムK2NO3, 塩化カルシウムCaCI2、塩化ナトリウムNaCI等の塩が、水溶液中に存在してよい。そのような添加物は、種子の休眠を覚まし、強くストレスに耐性のある苗を生み出す。
【0035】
水に制限なく接触させて、直接水溶液に接触させて種子を濡らすこと、例えば種子を水に浸漬させ、続いて水分を低減することで、サトウダイコンや人参等の果皮に存在する成長/発芽抑制因子を効果的に除去することができるだろう。
【0036】
濡らす時間は、吸水の第二段階に入るのに必要な水の量の75重量%を種子が吸水できるのに少なくとも十分であるべきだが、吸水の第三段階に入るのに必要な時間よりも短い。吸水の第三段階に入ることは、発芽の完了に対応するからである。
【0037】
所定の種子にとって、吸水の第二段階に入るための時間の長さは、実験に基づいて決定されてよい。例えば関心のある種類の乾燥した種子を浸漬し、続いてISTA規則等に沿って種子の水分含有量を決定する。一度種子が水に接触し、すなわち濡らすことが開始されると、これらの種子は、吸水の第二段階に入るまでに水を吸水する(このことは、種子の飽和を意味するだろう)。遅滞期(第二段階)の間にも水を吸水する種子にとって、初期段階の間の急速な吸水と遅滞期の間の遅い吸水の間の交わるところが、濡らす工程の下限を決定するために使用される。第三段階に入ることは、根の発毛に対応する。第三段階に入るのに必要な濡らす時間は、このようにして連続的に種子を濡らし、根の発毛を観察することで決定される。
【0038】
濡らす時間が長すぎると、水分含有量の中間の低減によって、代謝プロセスが行き過ぎて、種子が敏感になるため、種子がダメージを受けるかもしれない。そこで、濡らす時間は、同じ種類の種子が発芽するために連続的に水和するのに必要な時間、すなわち吸水の第三段階に入るのに必要な時間よりも50%、40%、30%、20%又は10%少なくあるべきである。根が一度出ると、発芽が起きたとみなされる。
【0039】
実施形態によれば、インキュベーション工程の継続時間は、水に自由に接触することができる種子にとって、水の吸水の第二段階及び第三段階にそれぞれ入るのに必要な時間の間の差に対応する。できるだけ発芽のための代謝準備を進めるために、インキュベーション時間は、発芽を完了するため自由に水に接触する種子に必要な時間と等しいか、少しだけ長いように選択されてよい。実施形態によれば、インキュベーションの継続時間は、水に自由に接触する種子にとって(水ポテンシャルゼロ)、吸水の第二段階及び第三段階にそれぞれ入るのに少なくとも必要な時間の間の差に対応する。しかしこの差の3倍よりも長くなく、この差の2又は1.5よりもよりも長くない。
【0040】
水溶液は、典型的に、浸漬工程の間に通気される。水以外では、酸素もまた種子が発芽を完了させるために必須である。水の吸水のように、酸素の吸入もまた三段階を有する。急速な酸素吸入段階(第一段階)は、増加する水和/吸水と同時である。この段階の間、酸素は、酵素の吸入の活性化に起因する。遅滞期(第二段階)の間、酸素の吸入は、第一段階よりも遅い。しかし新しく合成されたミトコンドリアの吸入に伴って全段階の間増加する。第二の急速な酸素の吸入(第三段階)は、根の発毛と同時である。
【0041】
発芽期間の間に酸素の供給が欠乏すると、エネルギーの生成が少なくなり、発芽の間の代謝プロセスが制限される。深刻な酸素の欠乏により、種子の発芽を抑制する発酵が導かれる。発芽プロセスの間に蓄積する二酸化炭素もまた、種子の呼吸を制限するか、深刻に抑制する。そしてこのために、プライミングの効果を制限する。二酸化炭素の分圧を増加させることで、プライミングを制御することは、プライミングにマイナスに影響するかもしれない。
【0042】
吸収の間の酸素の要請を満たすため、本実施形態による方法では、プライミングの効果を最適化するために、濡らす工程において通気した水溶液を使用する。
【0043】
濡らす工程に続いて、水分含有量が低減される。実施形態によれば、種子の水分は、種子を濡らしている間に増加した重量の1%〜80%、例えば1%〜60%、2%〜30%、2%〜20%、又は2%〜8%が、濡らされた種の水分を低減する工程で失われるように低減される。典型的には、種子の重量は1%〜10%、例えば2%〜8%低減される。種子の重量は例えば5%低減されてよい。
【0044】
例えば40%以下の低い相対湿度を有する空気で乾燥することが用いられる。さらに、真空、低圧又はRCF(相対遠心分離力)の500以下の低速の遠心分離、又はこれらの組み合わせが、水分を低減するために用いられる。乾燥は、気温25〜35度といったわずかに上げられた気温下で行われる。
【0045】
種子に硬化した表面を提供するため、水分含有量は、好ましくは種子に対して空気を吹き付けることで低減される。空気は、40%より少ない相対湿度及び摂氏25〜35度の間の温度であってよい。
【0046】
種子の水分含有量を低減する工程は、典型的には早い工程、すなわち短い継続時間の工程である。実施形態によれば、水分を低減する工程の継続時間は、水への接触が自由である場合、同じ種類の種子が発芽するのに必要な時間の1/10以下、例えば1/20以下、1/50以下、又は1/100以下である。さらに、水分を低減する工程の継続時間は、インキュベーション工程の1/10以下、例えば1/20以下、1/50以下、又は1/100以下である。
【0047】
なお、内胚乳の種子及び裸子植物の種子では、肺は胚乳によって保護/取り囲まれている。例えば砂糖大根のような、外胚乳の種にとっては、胚は種子の内側を覆い/保護する死んだ部分である果皮によって保護されている。これらの種類の種子は、物理的なストレスにより耐性がある。さらに、浸漬時間は、典型的に相対的に短い。続いて、生物学的プロセスは、浸漬が一度中断されると、そう長くは進行しない。このため、適用された穏やかな水分の低減方法は、内胚乳の種子及び果皮を有する種子の両方にとって、続く発芽にネガティブな効果を示さなかった。
【0048】
水が染み込んだ種子の水分が低減されると、発芽を完了させる代謝準備のために、種子はインキュベートされる。実施形態によれば、種子は、相対湿度が80%〜100%、例えば80%〜95%未満、95%以上100%未満、又は100%下でインキュベートされる。相対湿度は100%であってもよいが、インキュベーション中の種子の水分含有量が、種子が発芽を完了するのに必要な水分含有量未満となるように、空気の雰囲気は好ましくは過飽和していないべきである。
【0049】
インキュベーション中、望ましい水分含有量を維持するために空気の雰囲気にとって重要なことは、相対湿度だけではなく、空気の流れである。インキュベーション中、空気の雰囲気は、連続して、又は断続的に、入れ替えられる。空気の雰囲気を断続的に入れ替えるということは、空気の流れが間欠的であるということである。
【0050】
よいプライミングを達成するために、インキュベーション中の種子の水分含有量が、インキュベーションの間適正に一定するように、インキュベーションは行われるべきである。好ましくは、インキュベーション中の種子の水分含有量は、種子が発芽を完了するために必要な水分含有量よりも少なく保持されるべきである。さらに、インキュベーション中の種子の重量は、インキュベーション前の種子の重量の80%以上、例えば90%以上、又は95%以上であるべきである。インキュベーションの全体を通して、種子の水分含有量(乾燥重量ベース)は25%以上であることが好ましいが、インキュベーション時間の25%の間、水分含有量(乾燥重量ベース)が25%以上を維持すれば十分である。
【0051】
実施形態によれば、インキュベーションの間の種子の重量は、インキュベーション前の種子の重量の20%内、例えば10、5.0、又は2.5%内を維持する。
【0052】
種子がインキュベートされる雰囲気中の空気は、酸素含有量15〜25体積%、好ましくは約21体積%である。
【0053】
上述した通り、水以外では、酸素もまた種子が発芽を完了させるために必須である。発芽期間の間に低い酸素レベルであったり、又は酸素の供給が欠乏すると、呼吸からエネルギーを少ししか生成できなくなり、代謝プロセスが制限される。深刻な酸素の欠乏により、種子の発芽を抑制する発酵が導かれる。このように、種子は空気の雰囲気下でインキュベートされ、呼吸プロセスのための酸素を種子に提供する。
【0054】
インキュベート工程で個々の種子に基本的に同等の条件を提供するために、もしいくつかの種子が同時にプライミングされる場合には、たいていの場合、インキュベート工程の間、回転ドラムに入れられる。そのような回転(タンブリング)は、板(バッフル)を有する回転する樽の中で実行される。一つの実施形態は、本方法による、種子をインキュベートするためのバッフル板が設けられた回転する樽に関する。
【0055】
様々な代謝プロセスが起きる初期段階(第一段階)及び遅滞期(第二段階)の間、酸素は種子によって消費される。さらに様々な気体状の物質が排出される。したがって、継続的に、又は非継続的に、インキュベーションの間、大気を入れ替えることが有利である。
【0056】
さらに、発芽の第一段階(吸水の第一段階)の間に開始する代謝プロセスの間、酸素は種子によって消費される。したがって、浸漬工程の間に水溶液を通気することも有利かもしれない。さらに、通気は浸漬工程の間に様々な成分の拡散を促し、種子が水をより均等に吸収することにも寄与するかもしれない。
【0057】
インキュベート工程に続いて、プライミングされた種子は、植えつけられる。しかしながら、より一般的には、プライミングされた種子を貯蔵したり輸送したりできるようにするため、プライミングされた種子の水分は、インキュベート工程の後低減される。種子は乾燥されてよく、すなわち、空気で種子を乾燥させることにより、水分は低減される。空気の相対湿度は、低く、例えば40%以下、例えば約25%である。さらに、乾燥はわずかに気温を上げて実行され、例えば25度から35度の間の温度である。種子の水分は、好ましくは、安全に貯蔵されるレベルに減少される。
【0058】
ここで開示されたプライミング方法を用いて、様々な種類の種がプライミングされる。方法は、たばこ、トマト、ピーマン、トウゴマの実、玉ねぎ、小麦のような特に内胚乳の種、松、トウヒ、イチョウのような裸子植物種、及びサトウダイコンのような果皮を有する/有さない外胚乳の種からの種子をプライミングするのに特に適している。
【0059】
実施形態によれば、プライムされるべき種子は:トマトやコショウ等の内胚乳種から、パインやトウヒ等の裸子植物から、レッドビートのような該胚乳種から、及び/又は人参や草等の果皮(子嚢)を有するものである。
【0060】
本発明の他の実施形態は、ここで開示された方法により得られた種子である、プライミングされた種子に関する。そのような種子は、発芽時間の平均が短くなり、発芽能力が向上し、及び/又は屋外の土での発芽及び現地性能が向上する。さらなる実施形態は、ここで開示された方法により得られたプライミングされた種子を育成して得られる植物に関する。
【0061】
さらなる詳細を必要とせずに、当業者であれば、これまでの記述を用いて本発明を完全な範囲まで利用することができると信じられる。ここで述べられた好ましい特定の実施形態は、したがって、説明的なものにすぎず、その他の記述をいかなる方法においても限定するものではないと理解される。さらに、本発明が特定の実施形態を参照して述べられているとしても、それはここで述べられた特定の形態に限定することを意図したものではない。むしろ、発明は添付のクレームによってのみ限定され、上記特定されたもの以外の他の実施形態は、例えば上記述べたものと異なっていても、添付されたこれらのクレームの範囲内で均等に可能である。
【0062】
クレームでは、「含む/含んでいる」は他の要素又は工程の存在を除外するものではない。また、個々の特徴が異なるクレームに含まれているかもしれないが、これらは有利に結合されることも可能であり、そして異なるクレームに含まれていることは、特徴の結合が実現不可能である及び/又は有利でないということを暗示するものではない。
【0063】
さらに単数で参照されたものは、複数を除外されない。用語の「一つの」、「第一の」「第二の」等は、複数を除外しない。
【実施例】
【0064】
次の実施例は、実施例にすぎず、いかなる場合も発明の範囲を制限ように解釈されてはならない。むしろ、発明は添付のクレームによってのみ限定される。
【0065】
浸漬時間の決定
浸漬時間は、ISTA規則(国際種子検査協会、種子の検査のための国際規則における水分含有量の決定)に沿って、種子の水分含有量の増加が非常に遅くなるまで、決められた間隔の水分含有量決定によって決定される。ナガハグサでは、種子の水分含有量は135分の後、非常に遅くなる。そこで、浸漬時間は、135分と決定された。浸漬後、種子の水分含有量がまた決定され、ナガハグサでは50%だった。
【0066】
決められた間隔で水分含有量を決定することで、それぞれ異なる飽和の度合いに必要な浸漬時間がまた規定される。
【0067】
インキュベーション時間の決定
一度水に浸漬された種子が発芽するまでに必要な時間は、最初にその水分を低減せずにインキュベートすることで決定される。ナガハグサでは、一度水に浸漬された種子が発芽するまでに必要な時間は、84時間であると決定された。
【0068】
浸漬
種(パプリカ20g、小麦500g、ヨーロッパアカマツ100g、ナガハグサ400g)が、バケツの中で、手で断続的に水(種子の重量パーセント量w/wの5倍)をかき混ぜながら浸漬され、所定の浸漬時間(上記参照)、例えばナガハグサでは135分、新鮮な空気の泡で通気された。
【0069】
中間での水の減量
種子の水分は、RCF500で6分間遠心分離により低減され、その後、種子の水分含有量が浸漬前の水分含有量より低い、ユニットの2〜5%の水分含有量となるまで、例えばナガハグサでは45%となるまで、相対湿度35%の周囲条件で乾燥させた。
【0070】
インキュベーション
水分を低減した後、種子は、回転装置に置かれて、決定されたインキュベーション時間(上記参照)、例えばガハグサでは84時間、相対湿度が95%の新鮮な空気の雰囲気下でインキュベートされた。
【0071】
乾燥
インキュベーションの後、種子の水分含有量が浸漬する前と同じ水分となるよう、例えばナガハグサでは8.9%、水分含有量が低減されるまで、種子は、約摂氏30度で相対湿度30%の環境で乾燥された。
【0072】
種子のプライミング
4種類(パプリカ、小麦、ヨーロッパアカマツ、ナガハグサ)に対して上記述べられた方法に沿ってプライミングが実施された。
インキュベート時間、種子のインキュベート水分(MC)量、及び乾燥した種子の水分含有量(MC)、及び浸漬時間は、上記述べられ、表1に要約された方法に沿って決定された。
【0073】
【表1】
【0074】
結果−プライミングパフォーマンス
平均発芽時間(MGT)を減らすこと、様々な種子の種のための、実生発生時間、苗長さ及び苗の生体重や発芽能力(GC)を向上させることに対するプライミングの効果が表2に示される。
表2で提供される苗の寸法(苗長さ及び苗の生体重)は、様々な苗の重量や苗の長さが、以下に示される様々な期間の後に記録されたものである。
パプリカ、長さ 16日、重さ 30苗
小麦、長さ 8日、重さ 10苗
ヨーロッパアカマツ、長さ 15日、重さ 30
苗ナガハグサ、長さ 15日、重さ 40苗。
【0075】
【表2】
【0076】
表2に示されるように、本プライミング方法は、意義深く平均発芽時間を低減させ、発芽能力(発芽能力がプライミングされない種子と同じである小麦を除く)が向上した。
本プライミングはまた、短縮された発芽時間や苗の寸法が大きくなるなど、屋外での発芽パフォーマンスも意義深く向上させた。
【0077】
実施例2〜6 −一般的注記
浸漬及びインキュベーション時間は、実施例1と同様に決定された。
【0078】
実施例2〜6において、種子は、容器を通して水及び気体が自由に交換することができるステンレス鋼製の容器に入れられた。種子が入れられた容器は、水を含んだタンクに置かれ、種子が水に浸漬された。容器は全ての種子が均一に濡らされるように、継続して回転された。浸漬タンク内の水は、新鮮な空気の泡で継続的に通気された。種子は、決定された浸漬時間の間、浸漬された(上記参照)。
【0079】
浸漬後、種子の水分含有量は、RCF500で6分間、遠心分離により低減され、水分を完全に吸収した種子の水分含有量よりも低い、種子の水分含有量がユニットの2〜5%となるまで、35%の相対湿度の周囲条件で乾燥させた。
【0080】
中間の水分の低減の後、種子は浸漬に関連した容器に戻された。容器は、所定のインキュベーション時間の間98〜100%の相対湿度下で、インキュベーター装置に入れられて継続して回転された。
【0081】
インキュベーションの後、種子は摂氏約30度の相対湿度30%下で、種子の水分含有量が浸漬前と同じ水分含有量となるまで低減された。
【0082】
実施例2−水分含有量(MC)のレベルを低減する効果
種子の処理プロセス(吸収、水分含有量低減、インキュベーション及び乾燥)の中で、中間の水分含有量の低減は非常に重要である。水分含有量低減工程の理解を深めるため、次の例の実験が行われた。
1.種子を水に浸漬するために、所定時間20度の水で、25gの種子に水分を吸収させた。
2.続いて、種子の水分含有量は、水分を吸収した種子が、以下の水分含有量に30分以内で到達するような方法で(相対湿度/空気流及び摂氏25度で)低減された。
a. 浸漬した種子の1〜5%未満
b. 約25%の水分含有量(乾燥重量ベース)まで
3.水分含有量を低減された種子は、種子の水分含有量が減少しないか、1〜5%を越えて増加するような環境でインキュベートされた。この工程は、約1.5リットルの容積の容器で行われた。容器はステンレス鋼の網で製造された。容器は約99%の湿度のインキュベーターに置かれた。容器の網は、容器及びインキュベーターの間の空気の交換を可能にした。
4.インキュベーションの後、安全に貯蔵できるように、種子は吸収前の最初の水分含有量に戻るまで乾燥された。
5.種子のインキュベーションの水分含有量(MC)、インキュベーション時間、及び平均発芽時間(MGT)の減少及び発芽能力(GC)の増加のプライミング効果が、上記述べられた方法に沿って決定された。
【0083】
【表3】
【0084】
結果−水分含有量(MC)のレベルを低減する効果
水分含有量(MC)(乾燥種子ベース)の低減の異なるレベルに関する、平均発芽時間(MGT)及び発芽能力(GC)のプライミング効果が表3に示される。表3に示されるように、種子が発芽を完了するまでに必要となる水のすぐ下から25%までに亘る範囲の試験で、中間の水の低減がされたとき、平均発芽時間(MGT)(時間)の重要な低下が観察された。
【0085】
実施例3−インキュベーション中の水分含有量(MC)の緩やかな低減の効果
種子の処理プロセス(吸収、水分含有量低減、インキュベーション及び乾燥)の中で、気体の湿度及び気体の流れは、インキュベーション中の水分含有量に影響を与える。種子の水分含有量は、種子の水分含有量が相対的に低く、気体の相対湿度が十分高ければ、インキュベーション中に増加するだろう。しかし、現在のプライミングの技術に関しては、インキュベーション前の種子の水分含有量は相対的に高く、ほとんどの場合、種子の水分含有量は、気体の相対湿度が十分に高くない場合、減少しがちである。続くインキュベーション中に水分含有量が減少する影響を説明するため、次の例の実験が行われた。
1.10gの種子を含むそれぞれの試験体に、種子を飽和させるために以前述べられた所定時間、摂氏20度の水を吸収させた。
2.種子の水分含有量はインキュベーション中に徐々に減少した。種子の水分含有量は、インキュベーションの期間の間3つの異なるスピードで、(インキュベーション前の水分含有量の減少及びインキュベーション中の水分含有量の減少の両方を通して)25%(乾燥種子ベース)低減された。種子の水分含有量が25%(乾燥種子ベース)減少したスピードは、通常のインキュベーション時間の約10%、通常のインキュベーション時間の約25%、通常のインキュベーション時間の約50%だった。
3.水分含有量の減少の後、所定のインキュベーション時間満了となるまで、水分含有量が減少したまま、インキュベーションは続けられた。
4.種子は、安全に貯蔵できるように、インキュベーションの後、浸漬前の最初の水分含有量となるまで乾燥された。
5.種子のインキュベーションの水分含有量、インキュベーション時間、及び平均発芽時間(MGT)の減少及び発芽能力(GC)の増加のプライミング効果が、上記述べられた方法に沿って決定された。
【0086】
【表4】
【0087】
結果−水分含有量(MC)の段階的な減少の効果
表4に示されるように、平均発芽時間(MGT)及び発芽能力(GC)のプライミング効果は、水分が1〜5%低減されたときに最も効果的である。しかし、インキュベーション時間の25%以上の間、インキュベーション中の種子の水分含有量(乾燥種子ベース)が25%以上であれば、まだポジティブな効果が示される。他の例では、インキュベーション中の水分含有量の早い減少は、プライミングのポジティブな効果を制限するか、妨げる。
【0088】
実施例4−吸収の程度からの効果
吸収する工程の重要性を示すために、次の例の実験が行われた。
1.10gの種子の試験体に、吸収の後、種子の水分含有量が25%(乾燥種子ベース)、完全に吸収した種子の50%、完全に吸収した種子の75%、となるように、異なる時間の期間で水分を吸収させた。
2.異なる吸収の度合いの種子は、通常のインキュベートされた種子に関しては次の同じ手順でインキュベートされた。しかし、吸収後のそれぞれの水分含有量は、インキュベーションの間維持された(中間の乾燥工程はなかった)。
3.種子はインキュベーションの後、吸収前の最初の水分含有量となるまで乾燥された。
4.種子のインキュベーションの水分含有量(MC)、インキュベーション時間、及び平均発芽時間(MGT)の減少及び発芽能力(GC)の増加のプライミング効果が、上記述べられた方法に沿って決定された。
【0089】
【表5】
【0090】
結果−吸収の度合いからの効果
平均発芽時間(MGT)及び発芽能力(GC)に関するプライミング効果で、吸収の効果が表5に示される。表5に示されるように、吸収が悪いと、プライミングのポジティブな効果を妨げる。すなわち、種子はプライミングによって十分に水和されなかった。種子が発芽を完了させるのに必要な水分含有量まで初期に届くことが重要であり、さもなければ続くプライミング処理は、種子の発芽時間(MGT)及び発芽能力(GC)の増加を改善させるのに助けとならないだろうということが結論づけられる。しかしながら、改善は吸収の75%程度で認められる。このポジティブな効果は、発芽の第二段階を完了させるのに十分な水の75%しか吸収していなくても、種子は発芽の第二段階に入るまでに十分な水を有しているためである。
【0091】
実施例5−延長したインキュベーションからの効果
水分の低減工程のポジティブな効果を示すために、インキュベーションの継続時間を延長した一連の実験が設定された。
1.種子10gの試験体に、水分含有量が低減された後、本発明のこの方法に沿って、水分を吸収させた。
2.種子の一部は、通常のインキュベーション時間の間インキュベートされ、他の種子は延長された時間の間インキュベートされた。
3.種子はインキュベーションの後、吸収する前の最初の水分含有量まで乾燥された。
4.種子のインキュベーションの水分含有量(MC)、インキュベーション時間、及び平均発芽時間(MGT)の減少及び発芽能力(GC)の増加のプライミング効果が、上記述べられた方法に沿って決定された。
【0092】
【表6】
【0093】
結果−延長されたインキュベーションからの結果
実施例はインキュベーション前の水分低減工程の重要性を説明する。水分低減工程の後、延長されたインキュベーションにより、種子が第三段階(発芽、根の発毛)に入るリスクをはるかに少なくすることができる。プライミングの最中にもし種子が発芽の第三段階に入ってしまい、その後乾燥して貯蔵されたら、種子の活力、種子の生存能力は、貯蔵性(示さず)とともに損なわれていただろう。表6に示されるように、本発明の方法でプライムされた実施例の種子は、ほとんどネガティブな効果なく、インキュベーションを延長させることができた。
【国際調査報告】