(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-532060(P2017-532060A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(54)【発明の名称】フィコビリタンパク質の合成を誘導する方法
(51)【国際特許分類】
C12P 21/00 20060101AFI20171006BHJP
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A23L 33/17 20160101ALI20171006BHJP
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A61P 17/00 20060101ALI20171006BHJP
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A61Q 19/00 20060101ALI20171006BHJP
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A61Q 19/02 20060101ALI20171006BHJP
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A61K 36/04 20060101ALN20171006BHJP
A61K 31/015 20060101ALN20171006BHJP
【FI】
C12P21/00 B
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A23L33/17
A61K38/02
A61P17/00
A61K8/64
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A61K8/9706
A61Q19/08
A61Q19/02
A61K35/748
A61K36/02
A61K36/04
A61K31/015
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-530439(P2017-530439)
(86)(22)【出願日】2015年8月28日
(85)【翻訳文提出日】2017年4月25日
(86)【国際出願番号】FR2015052294
(87)【国際公開番号】WO2016030644
(87)【国際公開日】20160303
(31)【優先権主張番号】14/01919
(32)【優先日】2014年8月28日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517067682
【氏名又は名称】アルゴビオテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベン ウアダ, ハテム
(72)【発明者】
【氏名】アマル, ジヘン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B064
4C083
4C084
4C087
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4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4B018MD20
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4H045AA10
4H045AA20
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4H045EA01
4H045FA72
4H045GA01
(57)【要約】
【課題】フィコビリタンパク質の合成を誘導する方法の提供。
【解決手段】本発明は、光合成微細藻類のバイオマスを調製する方法に関し、上記バイオマスは、その乾燥重量の少なくとも20%に等しいフィコビリタンパク質含量を有する。また、本発明は、フィコビリタンパク質が豊富なバイオマス、並びに、サプリメントとして又は機能性食品製剤及び化粧用製剤の成分としてのその使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光合成微細藻類、特にシアノバクテリア、より具体的にはアルスロスピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)のバイオマスを製造する方法であって、
上記バイオマスは、その乾燥重量の少なくとも20%に等しいフィコビリタンパク質含量を有し、
上記方法は、増殖が阻害されたバイオマスにおいてフィコビリタンパク質の合成を誘導する工程を含む方法。
【請求項2】
上記微細藻類のバイオマスの増殖は、上記バイオマスを誘導槽で濃縮することによって阻害され、
上記槽内の上記バイオマスの濃度は、培養液中での微細藻類の最適増殖を許す密度である0.4g/Lよりも3〜13倍高いことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記バイオマスの濃度は1g/L〜5g/Lであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
上記フィコビリタンパク質の合成を誘導する工程は、
上記光合成微細藻類のバイオマスを光束に暴露する工程であって、上記光束は、実質的に10μmol・m−2・s−1以上であって実質的に13μmol・m−2・s−1以下である光強度を有する、工程と、
上記バイオマス中のNaNO3濃度が2.5g/Lを超えるように窒素源を添加する工程
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記誘導工程を3時間、4時間又は5時間行うことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
a)上記バイオマスの増殖を阻害する工程と、
b)フィコビリタンパク質の合成を誘導する工程と
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
微細藻類のバイオマスを回収する事前工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
フィコビリタンパク質が豊富なバイオマスを回収する工程を更に含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
a)微細藻類のバイオマスを回収する工程と、
b)上記バイオマスの増殖を阻害する工程と、
c)フィコビリタンパク質の合成を誘導する工程と、
d)上記フィコビリタンパク質が豊富なバイオマスを回収する工程と
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
上記光合成微細藻類は、シアノバクテリア、紅色植物(Rhodophytes)又はクリプト植物(Cryptophytes)から選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
上記光合成微細藻類は、紅藻綱(Rhodophyceae)、クリプト藻綱(Cryptophyceae)及びシアノバクテリア、とりわけシアノバクテリア、更により具体的にはアルスロスピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)及びアファニゾメノン・フロスアクア(Aphanizomenon flos−aquae)、特にクラマス藻類(Klamath alga)から選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
上記フィコビリタンパク質は、フィコシアニン、アロフィコシアニン、フィコエリスリン又はフィコエリスロシアニン又はこれらのフィコビリタンパク質の少なくとも2種からなる混合物から選択されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
上記窒素は、最終濃度が2.5g/L超、5g/L未満のNaNO3を含有する培地、特にZarrouk培地によって供給される、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13に記載の方法によって得られる光合成微細藻類のバイオマスであって、その乾燥重量の少なくとも20%に等しいフィコビリタンパク質含量を有するバイオマス。
【請求項15】
アルスロスピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)である藻類から抽出される請求項14に記載のバイオマス。
【請求項16】
請求項1〜13に記載の方法によって得られる光合成微細藻類のバイオマスのサプリメントとして又は化粧用、皮膚科学的若しくは機能性食品製剤の成分としての使用であって、
上記バイオマスは、その乾燥重量の少なくとも20%に等しいフィコビリタンパク質含量を有する、使用。
【請求項17】
光合成微細藻類のバイオマスから製造された化粧用、皮膚科学的若しくは機能性食品組成物又はサプリメントとしての組成物であって、
上記バイオマスは、その乾燥重量の少なくとも20%に等しいフィコビリタンパク質含量を有する、組成物。
【請求項18】
アルスロスピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)である藻類のバイオマスから製造された請求項17に記載の化粧用、皮膚科学的若しくは機能性食品組成物又はサプリメントとしての組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類バイオマスからフィコビリタンパク質の合成を誘導する方法に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、光合成微細藻類のバイオマスを製造する方法であって、上記バイオマスは、その乾燥重量の少なくとも20%に等しいフィコビリタンパク質含量を有し、上記方法は、上記バイオマスの増殖を阻害する工程と、フィコビリタンパク質の合成を誘導する工程とを含む方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フィコビリタンパク質は、紅藻綱(Rhodophyceae)、クリプト藻綱(Cryptophyceae)及びシアノバクテリア(藍藻類)の群の微細藻類に存在する光合成色素タンパク質である。これらは、赤色から青色の範囲の発色能を有するタンパク質色素である。
【0004】
フィコビリタンパク質は、フィコシアニン、フィコエリスリン、アロフィコシアニン及びフィコエリスロシアニンに分けられる。
【0005】
フィコシアニンは、藍藻類(シアノバクテリア)のみに見られる天然の青色タンパク質色素である。フィコシアニンは、フィコビリソームに位置する電子伝達系の成分であり、その役割は、可視スペクトルの赤い部分の光エネルギーを集めて光合成複合体の光化学系IIの反応中心に伝達することである。光合成活動を阻害する特定のストレス条件下では、フィコシアニンは、蛍光によって過剰なエネルギーを散逸させる防御機構に関与する。このような条件では、該色素の合成が増加し、細胞の窒素貯蔵物質として蓄積される。
【0006】
シアノバクテリアのいくつかの種でのフィコシアニン合成を支配する必須要因は、窒素及び鉄の含量、光並びに温度である。シアノバクテリアは、それぞれの種に固有の変動範囲内で上記パラメータに応じてフィコシアニン含量を調節できることが明らかになっている(非特許文献1)。
【0007】
フィコシアニンは抗酸化特性及び蛍光特性を有するため、様々な医薬品及び医療用途で使用できる(非特許文献2及び3)。その治療特性及び独特な青色に加え、天然性であること、有機溶媒の非存在下、水溶液で抽出できることは全て利点であるため、食品及び治療市場に関する欧州及び米国規格の要求に対して容易に適合できる。
【0008】
また、フィコシアニンの水溶液中の安定性、高い光感受性及び保存の困難性に関する問題の解決によって、ここ数年にわたってフィコシアニン市場は世界的に好況を呈した。
【0009】
世界市場で販売されているフィコシアニンは、シアノバクテリアであるアルスロスピラ・プラテンシス(スピルリナ)のみから抽出される。スピルリナは、大規模に生産されるシアノバクテリアであり、文献によれば、特定の条件下ではその乾燥重量の最大25%に及ぶフィコシアニンを合成できるという利点を有する。
【0010】
フィコシアニン生産は、一般的に様々な環境要因の影響を受ける(非特許文献4、5)。特に窒素と光が最も重要な要因である。前者は、タンパク質及びフィコシアニンを含む他の細胞性化合物を構成するアミノ酸の合成に必要であり(非特許文献5及び6)、光はあらゆる光合成活動のエネルギー源である。
【0011】
最適値を通る放物線の関係によってバイオマス生産性が培養液の密度に関連していることが当業者に知られている。最適密度では一次代謝が促進されるため、エネルギーが光合成から増殖及び生殖に向けられる。密度が高くなって一定の閾値を超えると、増殖が停止し、光合成によって集められたエネルギーが二次代謝、結果として防御(又はストレス)代謝産物の合成に向けられる。特定のストレス条件下(過剰窒素、低輝度)では、フィコシアニンが最も合成される防御代謝産物となる(非特許文献7、8)。
【0012】
また、従来技術において、フィコシアニン合成を最適化できる培養条件と、バイオマスの増殖を最適化できる培養条件とは極めて相反する。これは、最適な微細藻類の増殖条件が、通常は100〜200μmol・m
−2・s
−1(3300〜6600ルクス)の範囲であるからである。最適な光強度で得られた微細藻類培養液はバイオマスの急速な増殖が可能だが、フィコシアニンの合成量はかなり低い。逆に、より低い光強度(10〜40μmol・m
−2・s
−1)で得られた微細藻類培養液は増殖が遅いため、バイオマス生産性は低くなる。しかしながら、同様に光強度が低い条件下では、フィコシアニンの含量は2倍又は3倍の値になり得る。
【0013】
また、窒素が過剰な状態、つまり、窒素含量が工業用培養液に投与される量を超える場合にフィコシアニン合成量が最大となる。
【0014】
ラグーンや湖でのいわゆる自然開放系や、フォトバイオリアクターからなるいわゆる閉鎖系といった微細藻類を生産するための様々なシステムが存在する。
【0015】
開放系は一般的には浅い湖(最大30cm)であり、使いやすくコストもあまり高くないため最も頻繁に利用される。しかしながら、気候条件の変化及び水分蒸発を受けるという欠点があり、培養液をかき混ぜても良好な光照射を行うには不充分であることが多い。したがって、開放系には、培養液の制御が欠如し、生産性が低いという2つの主な欠点がある。
【0016】
フォトバイオリアクターでの閉鎖系は、水や栄養素の面で制御された系である。しかしながら、非常にコストのかかる系であり、特に光へのアクセスに関して使いやすくない。
【0017】
異なる増殖培養液で得られた由来の異なるスピルリナ粉末又は新鮮なバイオマスについて本発明者らが行った分析によれば、湖又はフォトバイオリアクターのいずれであっても、得られたフィコシアニン最大含量はバイオマスの乾燥重量の12%である。含量は試料によって異なるが、バイオマスの乾燥重量の3%〜12%である。結果として、得られたフィコビリタンパク質含量はいずれも、バイオマスに元々存在するフィコビリタンパク質の最大値(乾燥重量の20〜25%)未満である。これらの最大値は長期増殖期間によってのみ達成可能である。
【0018】
フィコシアニン合成の増加を目的とした従来の研究は全て増殖期に行われてきた。また、フィコシアニン合成に関する科学文献全てにおいて、この合成を促進する様々なストレス要因がそれぞれ独立して研究されている。
【0019】
生産過程では、各要因はそれぞれの強さに応じてフィコシアニン合成に関して相乗的又は拮抗的に交互作用する。この代謝産物の合成を最大にするには、複数要因のプロセスにおいてストレス要因の重要なポイントを見つけることが必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Hemlata,2009
【非特許文献2】Erikson,2008
【非特許文献3】Liu et al,2000
【非特許文献4】Niels T. Eriksen, 2008
【非特許文献5】Remziye Aysun Kepekci&Saadet Demirors Saygideger,2012
【非特許文献6】Samy Boussiba and Amos E.Richmond,1980
【非特許文献7】Chen et al.,1996
【非特許文献8】Tomaselli et al.,1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、微細藻類の増殖及びフィコビリタンパク質の合成の最適条件を特定することによって、バイオマスの増殖に悪影響を及ぼすことなく、光合成微細藻類バイオマスからのフィコビリタンパク質の合成を最適化することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記技術的課題は、バイオマスの増殖を阻害する工程と、フィコビリタンパク質の合成を誘導する工程とを含む本発明に係る方法によって解決される。微細藻類培養液の一部を取り除いた後に行うならば、該方法は、微細藻類を培養するための任意の従来の系に適用可能である。
【0023】
したがって、本発明の主要な主題は、光合成微細藻類、特にシアノバクテリア、より具体的にはアルスロスピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)のバイオマスを製造する方法であって、増殖が阻害されたバイオマスにおいてフィコビリタンパク質の合成を誘導する工程を含む方法である。本発明の方法で得られるバイオマスは、その乾燥重量の少なくとも20%に等しいフィコビリタンパク質含量を有する。
【0024】
上記光合成微細藻類は、特に、紅藻綱(Rhodophyceae)、クリプト藻綱(Cryptophyceae)及びシアノバクテリア、とりわけシアノバクテリア、更により具体的にはアルスロスピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)及びアファニゾメノン・フロスアクア(Aphanizomenon flos−aquae)、特にクラマス藻類(Klamath alga)から選択される。
【0025】
誘導の際、上記増殖が阻害されたバイオマスは誘導培地、特に誘導溶液と接触している。
【0026】
本発明の方法で得られるバイオマスは、特に、その乾燥重量の少なくとも21%、22%、23%、24%又は25%に等しいフィコビリタンパク質含量を有する。
【0027】
本発明の方法で得られるバイオマスは、特に、その乾燥重量の20%〜25%のフィコビリタンパク質含量を有する。
【0028】
本発明の方法は培養槽の外で行われるため、バイオマスの生産性に悪影響を及ぼさない。
【0029】
「バイオマス」とは、特定の時点での培養液中の生きた微細藻類の全質量を意味するものであり、g/Lで表される。
【0030】
「フィコビリタンパク質」とは、特定の微細藻類又はシアノバクテリアから単離された水溶性光合成色素タンパク質、例えばアロフィコシアニン(APC)、フィコシアニン類(C−PC及びR−PC)、フィコエリスリン類(R−PE及びC−PE)及びフィコエリスロシアニン(PEC)等を意味するものである。
【0031】
「合成を誘導する」とは、微細藻類バイオマスによるフィコビリタンパク質の産生を任意の手段で促すことを意味するものである。
【0032】
「誘導培地」とは、最適増殖に必要な塩の濃度と比較して1種以上の塩を過剰に含有する又は欠乏する任意の微細藻類培養培地を意味するものである。本発明において、この培地は窒素を過剰に含有するものであり、Zarrouk培地にNaNO
3を2.5g/Lを超える濃度、好ましくは3〜4g/Lの濃度で添加することで得られる。
【0033】
「増殖を阻害する」とは、微細藻類の増殖を停止することを意味するものである。増殖の阻害は可逆的である。増殖を阻害した後、バイオマスの一部を回収して濃度を低下させると、バイオマスは再び増殖できるからである。したがって、バイオマスに悪影響を及ぼすことはない。
【0034】
増殖の阻害(微細藻類の増殖の阻害)は、例えば、培養密度の関数として示した微細藻類の増殖速度の曲線によって判断される。微細藻類の増殖速度がゼロである場合、阻害が観察される。
【0035】
本発明の一実施形態において、本方法は、上記微細藻類、特にシアノバクテリア、より具体的にはアルスロスピラ・プラテンシスのバイオマスの増殖の阻害を誘導槽で行い、上記槽内の上記バイオマスの濃度は、培養液中での微細藻類の最適増殖を許す濃度よりも3〜13倍高いことを特徴とする。
【0036】
本発明の一実施形態において、本方法は、上記微細藻類、特にシアノバクテリア、より具体的にはアルスロスピラ・プラテンシスのバイオマスの増殖の阻害を誘導槽で行い、上記槽内の上記バイオマスの濃度は、培養液中での微細藻類の最適増殖を許す濃度よりも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13倍高いことを特徴とする。
【0037】
「濃度」は「密度」と置き換えることができる。「バイオマス密度」、「バイオマス濃度」は区別せずに使用する。密度及び濃度はいずれもg/Lで表す。
【0038】
培養液中での微細藻類の最適増殖を許す密度/濃度は約0.4g/Lであると認められる。
【0039】
本発明において阻害は、濃度が1〜5g/Lの範囲のバイオマスを誘導槽に導入して行われるが、本発明においてこの手段に限定されず、バイオマスの増殖を阻害できる任意の手段を用いることができる。阻害時の上記バイオマス濃度は、1g/L、1.5g/L、2g/L、2.5g/L、3g/L、3.5g/L、4g/L、4.5g/L又は5g/Lに等しくてもよい。
【0040】
バイオマスの密度/濃度は様々な方法によって測定できる。
【0041】
・セッキ板:水培地で培養した細胞の密度を迅速に推定できる簡単な装置である。長さ30cmの目盛り付き定規からなり、ゼロの目盛りの付いた下端に直径5cmの白い円盤を備える。円盤を培地に浸してから該円盤を識別できなくなった深さ(センチメートル)を記録する。
【0042】
・顕微鏡でのカウント:この方法は時間がかかるが、フィラメント数とフィラメント当たりの巻数を推定できる。目盛り付きピペットを用いて一滴の試料をくぼみスライドに滴下して顕微鏡で観察し、一滴中のフィラメント数を評価する。我々のピペットで滴下した17滴の体積は1mLとなることが分かっている。培養液の濃度が非常に高い場合は試料を希釈する。ランダムに採取した30本のフィラメントから平均巻数を計算する。
【0043】
・665nmでの光学密度:この方法では、クロロフィルの吸収波長の一つである665nmの吸光度を用いてバイオマスを迅速に推定できる。一般的に、このインビボ吸収はクロロフィル濃度との相関性が高い。平行面を有する25cL容キュベットを備えた分光光度計を使用する。未接種の培地でゼロ調整を行う。
【0044】
誘導槽は、中間培養槽、回収槽等、生きた微細藻類を保管するための任意の閉鎖系であってもよい。本発明の好ましい一実施形態において、誘導槽内の上記バイオマス濃度は、実質的に1g/L以上であって実質的に5g/L以下である。この濃度は、誘導媒体を誘導槽に添加することで得られる。
【0045】
1g/L〜5g/Lの濃度は、回収時(すなわち、濃度が約0.4g/Lとなる最適増殖時)に増殖中のバイオマスの密度よりも3〜13倍高い密度に相当する。この濃度では、増殖が阻害されて微細藻類の防御代謝が促進される。
【0046】
バイオマスの増殖、例えば最適増殖、特に約0.4g/Lの濃度での増殖を阻害するには、上記バイオマスを濾過、デカンテーション又は遠心分離などによって1g/L〜5g/Lの濃度にすればよい。
【0047】
また、誘導槽に入れる前にバイオマスを洗浄してもよい。洗浄によって、培地に由来する過剰の塩を除去できる。これにより、誘導培地、特に誘導溶液の窒素濃度をより良好に制御できる。
【0048】
この場合、バイオマスは、生理食塩水又は新たに調製した誘導培地溶液を用いて3回洗浄する。
【0049】
これらの条件下では、元のバイオマスは上記方法の影響を受けず、フィコシアニン合成の誘導はバイオマスの培養条件に依存しない。
【0050】
上記手順は、従来のスピルリナ培養農場の生産ラインに容易に組み込むことができる点で有利である。中間培養槽又は回収槽で3時間、4時間又は最大5時間行うことができる。
【0051】
本発明の特定の一実施形態において、フィコビリタンパク質の合成を誘導する工程は、
1)上記光合成微細藻類、特にシアノバクテリア、より具体的にはアルスロスピラ・プラテンシスのバイオマスを光束に暴露する工程であって、上記光束は、実質的に10μmol・m
−2・s
−1以上であって実質的に13μmol・m
−2・s
−1以下である光強度を有する、工程と、
2)上記誘導培地中のNaNO
3濃度が2.5g/Lを超えるように窒素源を添加する工程
を含む。
【0052】
1平方メートル当たり1秒当たりの光子数(μmol)で表される光強度は、例えば、光合成に有効な放射量を測定する光度計を用いて求められる。
【0053】
なお、特に照明が蛍光灯、例えば「植物育成蛍光灯」タイプである場合、10μmol・m
−2・s
−1は330ルクスに相当し、13μmol・m
−2・s
−1は429ルクスに相当する。この場合、1平方メートル当たり1秒当たりの光子数1μmolは33ルクスに等しい。
【0054】
誘導培地中のNaNO
3濃度は、特に3〜4g/L又は3〜5g/Lである。
【0055】
10〜13μmol・m
−2・s
−1の範囲の光強度と、NaNO
3(窒素源)を3〜5g/L含有する培養溶液とを併用することによって、フィコシアニンを20%〜25%含有するバイオマスが得られる。この含量は、本発明の方法を適用せずに行う実験で得られる3%〜12%の範囲の含量と比較すると非常に高い。
【0056】
上記光は、単純な40W出力の白熱灯又は蛍光灯によって供給できる。
【0057】
誘導培地は、Zarrouk培地で作製するのが好ましいが、スピルリナに適した他の任意の培地を使用できる。いずれにせよ、誘導培地、特に誘導溶液の窒素濃度は、硝酸ナトリウム(NaNO
3)を過剰に添加することで変更できる。最終濃度は、NaNO
3が3〜5g/Lの範囲でなければならない。これは、元のZarrouk培地中の濃度(2.5g/LのNaNO
3)よりも1.2〜2倍高い濃度である。
【0058】
上記培養条件下、誘導工程は3時間、4時間又は最大5時間行われるが、これにより、乾燥バイオマスの20%〜25%の含量を安定して得られるフィコビリタンパク質合成を充分に誘導できる。
【0059】
本発明の方法は、光合成微細藻類、特にシアノバクテリア、より具体的にはアルスロスピラ・プラテンシスのバイオマスを製造する方法であって、上記バイオマスは、その乾燥重量の少なくとも20%に等しいフィコビリタンパク質含量を有する、方法であるが、上記バイオマスの増殖を阻害する工程と、フィコビリタンパク質の合成を誘導する工程とを含む。
【0060】
有利な一実施形態において、バイオマスのフィコビリタンパク質含量は、該バイオマスの乾燥重量の少なくとも21%、22%、23%、24%又は25%に等しい。
【0061】
有利な一実施形態において、バイオマスのフィコビリタンパク質含量は、該バイオマスの乾燥重量の20%〜25%である。
【0062】
特定の一実施形態において、本発明の方法は、微細藻類、特にシアノバクテリア、より具体的にはアルスロスピラ・プラテンシスのバイオマスを回収する事前工程を含んでもよい。培養液が指数増殖期にあるとき、すなわちバイオマス生産性が最大であるとき、バイオマスを通常の培養槽に回収する。回収分をガーゼで濾過(又はデカンテーション又は遠心分離)して新鮮なバイオマスを得る。得られたバイオマスを誘導槽に移す。
【0063】
また、本発明の方法は、濃縮バイオマスを回収する最終工程を含んでもよい。
【0064】
したがって、本発明の方法は下記工程を含んでもよい。
・a)微細藻類、特にシアノバクテリア、より具体的にはアルスロスピラ・プラテンシスのバイオマスを回収する工程
・b)上記バイオマスの増殖を阻害する工程
・c)フィコビリタンパク質の合成を誘導する工程
・d)上記フィコビリタンパク質が豊富なバイオマスを回収する工程
【0065】
本発明の方法は、シアノバクテリア、紅色植物(Rhodophytes)又はクリプト植物(Cryptophytes)から選択される光合成微細藻類を用いる。
【0066】
本発明の方法を実施するために使用する光合成微細藻類は、アルスロスピラ・プラテンシス(スピルリナとも呼ばれる)であるのが好ましい。
【0067】
上記光合成微細藻類は、特に、紅藻綱、クリプト藻綱及びシアノバクテリア、とりわけシアノバクテリア、更により具体的にはアルスロスピラ・プラテンシス及びアファニゾメノン・フロスアクア、特にクラマス藻類から選択される。
【0068】
本発明において合成されたフィコビリタンパク質は、フィコシアニン、アロフィコシアニン、フィコエリスリン又はフィコエリスロシアニン又はこれらのフィコビリタンパク質の少なくとも2種からなる混合物であってもよい。
【0069】
また、本発明は、上述の方法によって得られる光合成微細藻類、特にシアノバクテリア、より具体的にはアルスロスピラ・プラテンシスのバイオマスに関し、該バイオマスは、その乾燥重量の少なくとも20%に等しいフィコビリタンパク質含量を有する。
【0070】
有利な一実施形態において、バイオマスのフィコビリタンパク質含量は、該バイオマスの乾燥重量の少なくとも21%、22%、23%、24%又は25%に等しい。
【0071】
有利な一実施形態において、バイオマスのフィコビリタンパク質含量は、該バイオマスの乾燥重量の20%〜25%である。
【0072】
とりわけ、本発明の光合成微細藻類のバイオマスは、アルスロスピラ・プラテンシスである藻類から抽出されるバイオマスである。
【0073】
上記光合成微細藻類は、特に、紅藻綱、クリプト藻綱及びシアノバクテリア、とりわけシアノバクテリア、更により具体的にはアルスロスピラ・プラテンシス及びアファニゾメノン・フロスアクア、特にクラマス藻類から選択される。
【0074】
本発明の方法によって得られる光合成微細藻類、特にシアノバクテリア、より具体的にはアルスロスピラ・プラテンシスのバイオマスは、機能性食品の製造においてサプリメントとして使用したり、化粧用製剤の成分として使用したりできる。
【0075】
機能性食品とは、食品物質を用いて製造された製品であるが、従来から食品に関連しない錠剤、散剤、飲料等の任意の医薬品形態で利用でき、病気に対する有益な生理学的効果又は保護効果を示すことが証明されている任意の製品を意味するものである。
【0076】
また、本発明は、光合成微細藻類、特にシアノバクテリア、より具体的にはアルスロスピラ・プラテンシスのバイオマス又はこれらのバイオマスの混合物から製造された化粧用若しくは機能性食品組成物又はサプリメントとしての組成物に関し、上記バイオマスは、その乾燥重量の少なくとも20%に等しいフィコビリタンパク質含量を有する。
【0077】
有利な一実施形態において、バイオマスのフィコビリタンパク質含量は、該バイオマスの乾燥重量の少なくとも21%、22%、23%、24%又は25%に等しい。
【0078】
有利な一実施形態において、バイオマスのフィコビリタンパク質含量は、該バイオマスの乾燥重量の20%〜25%である。
【0079】
上記光合成微細藻類は、特に、紅藻綱、クリプト藻綱及びシアノバクテリア、とりわけシアノバクテリア、更により具体的にはアルスロスピラ・プラテンシス及びアファニゾメノン・フロスアクア、特にクラマス藻類から選択される。
【0080】
上記化粧用若しくは機能性食品組成物又はサプリメントとしての組成物は、アルスロスピラ・プラテンシスである藻類のバイオマスから製造されることが好ましい。
【0081】
本発明の化粧用組成物は強力なシワ防止特性を有し、深いシワ、肌の弛み及び肌のくすみに対処することができる。
【0082】
本発明の化粧用組成物は、抗酸化化合物が豊富であり、フリーラジカルに対して作用し、細胞の酸素化を促す。継続的な使用により、顔の輪郭が変わり、深いシワが減り、肌の色がより均一になる。また、本発明の化粧用組成物は、目袋及び目のクマを軽減することができ、乾燥を防いでより快適にできる。
【0083】
また、本発明の化粧用組成物は、シミ消し効果を有し、細胞の解毒を促し、太陽及び汚染の影響を防ぎ、過剰メラニンを特徴とするシミに対処する能力を高める。
【0084】
シミの濃さに応じて、1日当たり2〜4回投与する必要がある。薄く広がったシミは数週間で消えるが、輪郭がはっきりした濃いシミは完全に消えるまでに6〜12ヶ月かかることもある。また、本発明の化粧用組成物は、重度のニキビの発症による痕跡に対しても推奨される。また、しなやかで柔らかい肌となるよう保湿効果を示す。
【0085】
本発明の方法によるバイオマス処理の終了時に、上記フィコビリタンパク質が豊富なバイオマスを濾過し、洗浄してもよい。生産ラインの脱水・乾燥回路に組み込んでもよい。例えば幼児の免疫系を強化するためのサプリメントや抗酸化力の高い化粧品等の準医薬製剤(para−pharmaceutical formulations)として販売することもできる。
【0086】
また、上記バイオマスを利用して1種以上のフィコビリタンパク質の抽出及び清澄化を行うことができる。例えば、得られたフィコシアニンを濃縮及び安定化して、食品、化粧用又は医薬製剤に導入することもできる。
【0087】
また、本発明は、有効成分として上述の光合成微細藻類、特にシアノバクテリア、より具体的にはアルスロスピラ・プラテンシスのバイオマス又はこれらのバイオマスの混合物と、薬学的に許容される担体とを含む皮膚科学的組成物に関し、上記バイオマスは、その乾燥重量の少なくとも20%に等しいフィコビリタンパク質含量を有する。
【0088】
有利な一実施形態において、バイオマスのフィコビリタンパク質含量は、該バイオマスの乾燥重量の少なくとも21%、22%、23%、24%又は25%に等しい。
【0089】
有利な一実施形態において、バイオマスのフィコビリタンパク質含量は、該バイオマスの乾燥重量の20%〜25%である。
【0090】
上記光合成微細藻類は、特に、紅藻綱、クリプト藻綱及びシアノバクテリア、とりわけシアノバクテリア、更により具体的にはアルスロスピラ・プラテンシス及びアファニゾメノン・フロスアクア、特にクラマス藻類から選択される。
【0091】
また、本発明は、上述の光合成微細藻類、特にシアノバクテリア、より具体的にはアルスロスピラ・プラテンシスのバイオマス又はこれらのバイオマスの混合物の抗酸化剤としての使用に関し、上記バイオマスは、その乾燥重量の少なくとも20%に等しいフィコビリタンパク質含量を有する。
【0092】
有利な一実施形態において、バイオマスのフィコビリタンパク質含量は、該バイオマスの乾燥重量の少なくとも21%、22%、23%、24%又は25%に等しい。
【0093】
有利な一実施形態において、バイオマスのフィコビリタンパク質含量は、該バイオマスの乾燥重量の20%〜25%である。
【0094】
上記光合成微細藻類は、特に、紅藻綱、クリプト藻綱及びシアノバクテリア、とりわけシアノバクテリア、更により具体的にはアルスロスピラ・プラテンシス及びアファニゾメノン・フロスアクア、特にクラマス藻類から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【
図1】誘導時間が3時間の場合の光強度(μmol・m
−2・s
−1)及び窒素濃度(g/L)の関数としてフィコシアニン合成の等収率曲線を表す。
【
図2】誘導時間が24時間の場合の光強度(μmol・m
−2・s
−1)及び窒素濃度(g/L)の関数としてフィコシアニン合成の等収率曲線を表す。
【
図3】誘導時間が3日間の場合の光強度(μmol・m
−2・s
−1)及び窒素濃度(g/L)の関数としてフィコシアニン合成の等収率曲線を表す。
【
図4】表1は本発明において使用できる誘導溶液の組成を表す。該溶液は4g/LのNaNO
3を含有する。
【
図5】表2は実験マトリックスを表す。すなわち、2要因(輝度及び窒素濃度)に対応する3水準の組み合わせと、得られたフィコビリタンパク質収率(乾燥重量に対する%で表す)を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0096】
実施例1:フィコシアニン合成
様々な窒素濃度及び光強度でフィコシアニン合成収率の変化を調べる。
【0097】
この試験は、交互作用のある3水準の要因計画(Goupy,2001)を用いて実験計画法に従って行う。
【0098】
光合成シアノバクテリアであるアルスロスピラ・プラテンシス(Arthrospira platensis)の指数増殖期の培養液から新鮮なバイオマスを得て、5倍に濃縮する。使用した誘導溶液はZarrouk培地を改変したものであり、窒素源としてのNaNO
3濃度は1〜4g/Lである。誘導培地で濃縮されたバイオマスを10〜50μmol・m
−2・s
−1の範囲の様々な光強度に晒す。
【0099】
実験を11回行う。そのうち9回は、両要因に対応する3水準(最小、最大、中央)の組み合わせである。残りの3回は中心点であり、実験誤差を評価できる。実験マトリックスを表2に示す。
【0100】
各条件下、異なる処理時間(3時間、1日、3日)で3つの試料を採取する。
【0101】
11の実験条件のそれぞれの終了時にフィコシアニンを抽出する。全てのフィコシアニンが抽出されるように抽出を2回繰り返す。次に、フィコシアニン収率(乾燥物1グラム当たりのフィコシアニン%)を算出する。
【0102】
NaNO
3窒素濃度(N)及び光強度(Lum)の関数としてフィコシアニン合成収率(RenPhy)をモデル化する。
【0103】
様々な処理を行った結果、3時間の誘導によって最も高い収率が得られることが分かる。これらの条件で得られたモデルは下記式で表される。
RenPhy%
(2)=65−45
*Lum+458
*N+1.02
*Lum
2−51
*N
2−3.14
*Lum
*N
【0104】
上記モデルの有効性は95%、相関係数(R
2)は95%、標準誤差は15%である。
【0105】
本発明の方法に従って3時間処理した後に得られたフィコシアニン合成の等収率曲線(iso yield curves)を光強度(μmol・m
−2・s
−1)及びNaNO
3濃度(g/L)の関数として
図1に示す。光強度が10μmol・m
−2・s
−1、NaNO
3濃度が4g/Lである場合、乾燥物1グラム当たり22%〜24%のフィコシアニン収率を得ることができる。
【0106】
合成の誘導を1日に延長すると、フィコシアニン収率は最大でも18%以下となる(
図2)。3日間の処理では、12%未満の最大収率しか得られない(
図3)。
【0107】
実施例2:シワ防止クリーム
下記組成を有するシワ防止クリームが得られる。
水:59%
甘扁桃油:18%
グリセリンに溶解したフィコビリタンパク質:7%
パーム油:5%
ヒマシ油:3%
藻類抽出物:3%(β−カロチン)
蜜蝋:2%
キサンタンガム:1.7%
香料:1%
エチルパラベン:0.1%
メチルパラベン:0.1%
ベンジルパラベン:0.1%
【0108】
実施例3:シミ消しクリーム
下記組成を有するシミ消しクリームが得られる。
シミ消しクリーム:
水:59%
甘扁桃油:19.5%
グリセリンに溶解したフィコビリタンパク質:7%
パーム油:5%
ヒマシ油:3%
藻類抽出物:1.5%(β−カロチン)
蜜蝋:2%
キサンタンガム:1.7%
香料:1%
エチルパラベン:0.1%
メチルパラベン:0.1%
ベンジルパラベン:0.1%
【0109】
引例
Erikson N.T,2008,production of phycocyanin,a pigment with applications in biology,biotechnology,foods and medicine.Appl Microbiol Biotechnol,80,1−14.
Hemlata T.F,2009,Screening of cyanobacteria for phycobiliproteins and effect of different environmental stress on its yield.Bull Environ Contam Toxicol,83,509−515.
Liu Y,Xu L,Cheng N,Lin L,Zheng Ch,2000,Inhibitory effect of phycocyanin from Arthrospira platensis on the growth of human leukemia K562 cells.Journal of applied phycology,12,125−130.
Chen F,Zhang Y and Guo S,1996.Growth and phycocyanin formation of Spirulina platensis in photoheterotrophic culture.Biotechnology Letters,18,Issue 5,pp603−608.
Remziye Aysun Kepekci&Saadet Demirors Saygideger,2012.Enhancement of phenolic compound production in Spirulina Platensis by two−step batch mode cultivation.J Appl Phycol,24:897−905.
Goupy,J.,2001,Introduction aux plans d’experiences,[Introduction to experimental designs]second Edition,Dunod.
【国際調査報告】