特表2017-532087(P2017-532087A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッドの特許一覧

特表2017-532087医療装置のためのエネルギー適応通信
<>
  • 特表2017532087-医療装置のためのエネルギー適応通信 図000003
  • 特表2017532087-医療装置のためのエネルギー適応通信 図000004
  • 特表2017532087-医療装置のためのエネルギー適応通信 図000005
  • 特表2017532087-医療装置のためのエネルギー適応通信 図000006
  • 特表2017532087-医療装置のためのエネルギー適応通信 図000007
  • 特表2017532087-医療装置のためのエネルギー適応通信 図000008
  • 特表2017532087-医療装置のためのエネルギー適応通信 図000009
  • 特表2017532087-医療装置のためのエネルギー適応通信 図000010
  • 特表2017532087-医療装置のためのエネルギー適応通信 図000011
  • 特表2017532087-医療装置のためのエネルギー適応通信 図000012
  • 特表2017532087-医療装置のためのエネルギー適応通信 図000013
  • 特表2017532087-医療装置のためのエネルギー適応通信 図000014
  • 特表2017532087-医療装置のためのエネルギー適応通信 図000015
  • 特表2017532087-医療装置のためのエネルギー適応通信 図000016
  • 特表2017532087-医療装置のためのエネルギー適応通信 図000017
  • 特表2017532087-医療装置のためのエネルギー適応通信 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-532087(P2017-532087A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(54)【発明の名称】医療装置のためのエネルギー適応通信
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/372 20060101AFI20171006BHJP
   A61N 1/39 20060101ALI20171006BHJP
   A61N 1/362 20060101ALI20171006BHJP
【FI】
   A61N1/372
   A61N1/39
   A61N1/362
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2017-511626(P2017-511626)
(86)(22)【出願日】2015年8月26日
(85)【翻訳文提出日】2017年3月28日
(86)【国際出願番号】US2015046940
(87)【国際公開番号】WO2016033177
(87)【国際公開日】20160303
(31)【優先権主張番号】62/043,123
(32)【優先日】2014年8月28日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】505003528
【氏名又は名称】カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】スターマン、ジェフリー イー.
(72)【発明者】
【氏名】ヒュールスカンプ、ポール
(72)【発明者】
【氏名】ケーン、マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】マイレ、キース アール.
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ02
4C053JJ03
4C053JJ05
4C053JJ06
4C053JJ18
4C053JJ23
4C053KK02
4C053KK05
(57)【要約】
医療装置間のエネルギー適応通信のためのシステムおよび方法が開示されている。一実施形態において、医療装置は患者の組織に複数のパルスを送達するように構成された通信モジュールを含み、各パルスはある量のエネルギーを有している。通信モジュールに動作可能に接続された制御モジュールは、送達される各パルスについて、送達されるパルスが患者についての望ましくない刺激を引き起こすか否かを決定するように構成することができるとともに、パルスについての望ましくない刺激の閾値に対応するエネルギーの量を特定するように、複数のパルスのエネルギーの量を経時的に変化させるように構成することができる。制御モジュールはその後、望ましくない刺激の閾値を下回る通信パルスについての最大エネルギー値を設定することができ、他の医療装置との通信において最大エネルギー値を下回る通信パルスを送達することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の組織に複数のパルスを送達するように構成された通信モジュールであって、各パルスがある量のエネルギーを有している通信モジュールと、
前記通信モジュールに動作可能に接続された制御モジュールとを含み、前記制御モジュールは、
送達される各パルスについて、送達される前記パルスが患者についての望ましくない刺激を引き起こすか否かを判定し、
前記パルスについての望ましくない刺激の閾値に対応するエネルギーの量を特定するように、複数の前記パルスのエネルギーの量を経時的に変化させ、
前記望ましくない刺激の閾値を下回る通信パルスについての最大エネルギー値を設定し、
他の装置との通信において前記最大エネルギー値を下回る通信パルスを送達する
ように構成される、医療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医療装置において、前記望ましくない刺激の閾値を下回る通信パルスについての前記最大エネルギー値を設定するため、前記制御モジュールは、前記最大エネルギー値を前記望ましくない刺激の閾値を下回る所定の安全マージンに設定するように構成される、医療装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の医療装置において、前記望ましくない刺激は患者の心臓の捕捉である、医療装置。
【請求項4】
請求項3に記載の医療装置において、前記医療装置はさらに、患者の組織にペーシングパルスを送達するためのパルス発生モジュールを含み、患者の組織に複数のパルスを送達するため、前記通信モジュールは、ペーシングパルスを送達する前記パルス発生モジュールの代わりにパルスを送達するように構成され、前記パルス発生モジュールはさらに、送達された前記パルスが心臓を捕捉しなかった場合に、安全ペーシングパルスを送達するように構成される、医療装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の医療装置において、前記望ましくない刺激は患者の神経の刺激である、医療装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の医療装置において、前記望ましくない刺激は患者の筋肉の刺激である、医療装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の医療装置において、各パルスのエネルギーの量は、少なくとも部分的に振幅、パルス幅、形態、または前記パルスが送達される特定のベクトルによって規定される、医療装置。
【請求項8】
請求項7に記載の医療装置において、複数の前記パルスのエネルギーの量を経時的に変化させるため、前記制御モジュールは、各パルスの振幅またはパルス幅のいずれかを変化させるように構成される、医療装置。
【請求項9】
請求項7に記載の医療装置において、複数の前記パルスのエネルギーの量を経時的に変化させるため、前記制御モジュールは、各パルスの振幅およびパルス幅の両方を変化させるように構成される、医療装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の医療装置において、前記医療装置はさらに、複数の前記パルスを送達し、複数の前記パルスのエネルギーの量を変化させ、前記望ましくない刺激の閾値を下回る通信パルスについての前記最大エネルギー値を設定することを、繰り返し実行するように構成される、医療装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の医療装置において、前記医療装置はさらに、複数の前記パルスを送達し、複数の前記パルスのエネルギーの量を変化させ、前記望ましくない刺激の閾値を下回る通信パルスについての前記最大エネルギー値を設定することを、トリガ事象に応じて実行するように構成される、医療装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の医療装置において、前記医療装置はリードレス心臓ペースメーカー(LCP)である、医療装置。
【請求項13】
請求項12に記載の医療装置において、他の医療装置は皮下植込み型除細動器(S−ICD)である、医療装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の医療装置において、前記医療装置はS−ICDである、医療装置。
【請求項15】
請求項14に記載の医療装置において、他の医療装置はLCPである、医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は一般に、情報を通信するためのシステム、装置、および方法に関する。より具体的には、本願は電力効率の良い方法で医療装置間において情報を通信するためのシステム、装置、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の監視および患者への治療の送達の少なくとも一方を行うための植込み型医療装置が、今日一般的に使用されている。例えば、植込み型センサは、心拍、心音、ECG、呼吸等の患者についての一つ以上の生理学的パラメータを監視するためによく使用される。別の例では、植込み型神経刺激装置を使用して、患者に神経刺激治療を提供することができる。さらに別の例では、ペーシング装置を使用して、心臓が患者の身体に十分な量の血液を送達する機能を低下させ得る様々な心臓の状態を有する患者を治療することができる。このような心臓の状態は、急速で不規則な、または非効率的な心臓の収縮をもたらし得る。このような状態の緩和を支援するため、様々な装置(例えばペースメーカー、除細動器等)を患者の体内に移植する場合がある。このような装置は心臓のより正常で効率的な、またはより安全な動作を支援するため、心臓を監視し、心臓に電気刺激を提供することができる。装置の種類にかかわらず、植込み型医療装置は別の医療装置と通信することが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願は一般に、情報を通信するためのシステム、装置、および方法に関する。より具体的には、本願はエネルギー適応方式で医療装置間において情報を通信するためのシステム、装置、および方法に関する。いくつかの場合において、医療装置間の通信に用いられる通信信号は、患者に望ましくない影響を及ぼす場合がある。例えば、通信信号は心臓の捕捉、筋肉の刺激、および神経の刺激の少なくとも一つを引き起こすほどのエネルギーを有する通信パルスである場合がある。いくつかの場合において、このような状況が生じる場合、最大エネルギーレベルテスト(MELT)を行うことにより、望ましくない刺激の閾値に対応するエネルギーの量を特定するように、通信パルスのエネルギーの量を変化させることができる。その後、望ましくない刺激の閾値を下回るように後続の通信パルスについての最大エネルギーレベルを設定することができ、医療装置間のその後の通信を進めることができる。経時的なエネルギー適応通信プロトコルを提供するため、随時、および検出されるトリガ事象に応じたタイミングの少なくとも一方で、望ましくない刺激の閾値の再評価を行うことができる。本願はまた、信頼性のある通信を達成しつつも通信中のエネルギーの量を削減するため、通信パルスのエネルギーレベルを調整する技術についても記載している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、医療装置は、患者の組織に複数のパルスを送達するように構成された通信モジュールであって、各パルスがある量のエネルギーを有している通信モジュールと、通信モジュールに動作可能に接続された制御モジュールとを含み、制御モジュールは、送達される各パルスについて、送達されるパルスが患者についての望ましくない刺激を引き起こすか否かを判定し、通信パルスについての望ましくない刺激の閾値に対応するエネルギーの量を特定するように、複数のパルスのエネルギーの量を経時的に変化させ、望ましくない刺激の閾値を下回る通信パルスについての最大エネルギー値を設定し、他の装置との通信において最大エネルギー値を下回る通信パルスを送達するように構成される。
【0005】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、望ましくない刺激の閾値を下回る通信パルスについての最大エネルギー値を設定するため、制御装置は、最大エネルギー値を望ましくない刺激の閾値を下回る所定の安全マージンに設定するように構成されていてもよい。
【0006】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、望ましくない刺激は患者の心臓の捕捉であってもよい。
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかはさらに、患者の組織にペーシングパルスを送達するためのパルス発生モジュールを含んでいてもよく、患者の組織に複数のパルスを送達するため、通信モジュールは、ペーシングパルスを送達するパルス発生モジュールの代わりにパルスを送達するように構成され、パルス発生モジュールはさらに、パルスが心臓を捕捉しなかった場合に、安全ペーシングパルスを送達するように構成される。
【0007】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、望ましくない刺激は患者の神経の刺激であってもよい。
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、望ましくない刺激は患者の筋肉の刺激であってもよい。
【0008】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、各パルスのエネルギーの量は、少なくとも部分的に振幅、パルス幅、形態、またはパルスが送達される特定のベクトルによって規定される。
【0009】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、複数のパルスのエネルギーの量を経時的に変化させるため、制御装置は、各パルスの振幅またはパルス幅のいずれかを変化させるように構成されていてもよい。
【0010】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、複数のパルスのエネルギーの量を経時的に変化させるため、制御装置は、各パルスの振幅およびパルス幅の両方を変化させるように構成されていてもよい。
【0011】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、医療装置はさらに、複数のパルスを送達し、複数のパルスのエネルギーの量を変化させ、望ましくない刺激の閾値を下回る通信パルスについての最大エネルギー値を設定することを、繰り返し実行するように構成されていてもよい。
【0012】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、医療装置はさらに、複数のパルスを送達し、複数のパルスのエネルギーの量を変化させ、望ましくない刺激の閾値を下回る通信パルスについての最大エネルギー値を設定することを、トリガ事象に応じて実行するように構成されていてもよい。
【0013】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、医療装置はリードレス心臓ペースメーカー(LCP)である。
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、他の医療装置は皮下植込み型除細動器(S−ICD)である。
【0014】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、医療装置はS−ICDである。
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、他の医療装置はLCPである。
【0015】
別の実施形態において、医療装置の通信パルスについてのエネルギーレベルを設定する方法は、患者の組織に複数のパルスを送達する工程であって、各パルスはある量のエネルギーを有している工程と、送達される各パルスについて、送達されるパルスが患者についての望ましくない刺激を引き起こすか否かを判定する工程と、パルスについての望ましくない刺激の閾値に対応するエネルギーの量を特定するように、複数のパルスのエネルギーの量を経時的に変化させる工程と、望ましくない刺激の閾値を下回る通信パルスについての最大エネルギー値を設定する工程とを含む。
【0016】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、最大エネルギー値は望ましくない刺激の閾値を下回る所定の安全マージンに設定される。
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、望ましくない刺激は患者の心臓の捕捉である。
【0017】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、患者の組織に複数のパルスを送達する工程は、ペーシングパルスの代わりにパルスを送達することと、パルスが心臓を捕捉しなかった場合に、安全ペーシングパルスを送達することとを含む。
【0018】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、望ましくない刺激は患者の神経の刺激である。
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、望ましくない刺激は患者の筋肉の刺激である。
【0019】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、各パルスのエネルギーの量は、少なくとも部分的に振幅、パルス幅、形態、またはパルスが送達される特定のベクトルによって規定される。
【0020】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかはさらに、送達工程、変化工程、および設定工程を、随時繰り返し実行することを含んでいてもよい。
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかはさらに、送達工程、変化工程、および設定工程を、トリガ事象に応じて繰り返し実行することを含んでいてもよい。
【0021】
さらに別の実施形態において、医療装置は、患者の組織に複数のパルスを送達するように構成された通信モジュールであって、各パルスがある量のエネルギーを有している通信モジュールと、通信モジュールに動作可能に接続された制御モジュールとを含み、制御モジュールは、送達される各パルスについて、送達されるパルスが患者についての望ましくない刺激を引き起こすか否かを判定し、パルスについての望ましくない刺激の閾値に対応するエネルギーの量を特定するように、複数のパルスのエネルギーの量を経時的に変化させ、望ましくない刺激の閾値を下回る通信パルスについての最大エネルギー値を設定し、他の装置との通信において最大エネルギー値を下回る通信パルスを送達するように構成される。
【0022】
さらに別の実施形態において、他の装置から通信信号を受信する時に使用する医療装置についての最小通信受信閾値を決定する方法は、最小通信受信閾値を第一レベルに設定する工程と、第一レベルにおける最小通信受信閾値で検出された通信信号の数を判定する工程と、最小通信受信閾値を第二レベルに変更する工程であって、第二レベルは第一レベルとは異なる工程と、第二レベルにおける最小通信受信閾値で検出された通信信号の数を判定する工程と、検出された通信信号について判定された数に基づいて最小通信受信閾値についての値を決定する工程と、最小通信受信閾値を決定された値に設定する工程と、医療装置と他の装置との間のその後の通信において、設定された最小通信受信閾値を使用する工程とを含む。
【0023】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、検出された通信信号の少なくともいくつかは、最小通信受信閾値が第二レベルに設定された時に、医療装置によって通信信号として解釈されるノイズ信号である。
【0024】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、検出された通信信号について判定された数に基づいて最小通信受信閾値についての値を決定する工程は、信号対雑音比に基づいて値を決定することを含む。
【0025】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかはさらに、第一レベルにおける最小通信受信閾値で検出された通信信号の数を判定することと、第二レベルにおける最小通信受信閾値で検出された通信信号の数を判定することとを、内因性心臓活動の存在しない期間中に実行することを含んでいてもよい。
【0026】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、第二レベルは第一レベルよりも小さい。
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、第二レベルは第一レベルよりも大きい。
【0027】
別の実施形態において、医療装置は、他の装置から複数の通信信号を受信するように構成された通信モジュールと、通信モジュールに動作可能に接続された制御モジュールとを含み、制御モジュールは、最小通信受信閾値を第一レベルに設定し、第一レベルにおける最小通信受信閾値で検出された通信信号の数を判定し、最小通信受信閾値を第一レベルとは異なる第二レベルに変更し、第二レベルにおける最小通信受信閾値で検出された通信信号の数を判定し、検出された通信信号について判定された数に基づいて最小通信受信閾値についての値を決定し、最小通信受信閾値を決定された値に設定し、医療装置と他の装置との間のその後の通信において、設定された最小通信受信閾値を使用するように構成される。
【0028】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、最大エネルギー値は、望ましくない刺激の閾値を下回る所定の安全マージンに設定される。
別の実施形態において、複数の医療装置間の通信プロトコルを調整する方法は、第一医療装置において一つ以上の第一パルスを送達する工程であって、各第一パルスは第一量のエネルギーを有している工程と、第二医療装置によって受信された一つ以上の第一パルスの数を判定する工程と、第一医療装置において一つ以上の第二パルスを送達する工程であって、各第二パルスは第二量のエネルギーを有している工程と、第二医療装置によって受信された一つ以上の第二パルスの数を判定する工程と、第二医療装置によって受信された一つ以上の第一パルスの数と第二医療装置によって受信された一つ以上の第二パルスの数とに基づいて、第二医療装置と通信する際の第一医療装置についての最小通信パルスエネルギーを調整する工程とを含む。
【0029】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、各パルスのエネルギーの量は、少なくとも部分的に振幅、パルス幅、形態、またはパルスが送達される特定のベクトルによって規定される。
【0030】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、第二医療装置と通信する際の第一医療装置についての最小通信パルスエネルギーを調整する工程は、第二医療装置と通信するために用いられる各通信パルスのパルス幅を調整することを含む。
【0031】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、第二医療装置と通信する際の第一医療装置についての最小通信パルスエネルギーを調整する工程は、第二医療装置と通信するために用いられる各通信パルスの振幅を調整することを含む。
【0032】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、第二医療装置と通信する際の第一医療装置についての最小通信パルスエネルギーを調整する工程は、第二医療装置と通信するために用いられる各通信パルスのパルス幅および振幅を調整することを含む。
【0033】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかにおいて、第二医療装置によって受信された一つ以上の第一パルスの数と第二医療装置によって受信された一つ以上の第二パルスの数とに基づいて、第二医療装置と通信する際の第一医療装置についての最小通信パルスエネルギーを調整する工程は、第二医療装置と通信する際の第一医療装置についての最小通信パルスエネルギーを、第二医療装置によって受信される許容可能な最小数のパルスにおける、一つ以上のパルスのエネルギーの量に設定することを含む。
【0034】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかはさらに、最小通信パルスエネルギーに所定の安全マージンを加算することを含んでいてもよい。
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかはさらに、調整された最小通信パルスエネルギーが最大エネルギー閾値と重なり合うか否かを判定することを含んでいてもよい。
【0035】
代替的または追加的に、上記実施形態のいずれかはさらに、第一医療装置によって、調整された最小通信パルスエネルギーが最大エネルギー閾値と重なり合うと判定された後に、安全通信モードに入ることを含んでいてもよい。
【0036】
上記概要は、本願の各実施形態またはすべての実施形態を説明することを意図するものではない。添付の図面と併せて以下の説明および特許請求の範囲を参照することによって、本願についてのより完全な理解とともに、本願の利点および到達点が明らかとなるであろう。
【0037】
本願は、添付の図面に関連する様々な例示的な実施形態についての以下の説明を考慮することによって、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本願の一実施形態に係る例示的なリードレス心臓ペースメーカー(LCP)の概略ブロック図である。
図2図1のLCPとともに使用可能な他の例示的な医療装置の概略ブロック図である。
図3】互いに通信する複数のLCPおよび他の装置を含む例示的な医療システムの概略図である。
図4】本願のさらに別の実施形態に係る、LCPおよび他の医療装置を含むシステムの概略図である。
図5】本願の別の実施形態に係る、LCPおよび他の医療装置を含むシステムの概略図である。
図6】本願の一実施形態に係る、通信パルスおよびノイズ信号を含む例示的な検出信号のグラフ表示である。
図7】本願の一実施形態に係る、通信パルスおよびノイズ信号を含む例示的な検出信号のグラフ表示である。
図8】本願の一実施形態に係る、通信パルスおよびノイズ信号を含む例示的な検出信号のグラフ表示である。
図9】本願の一実施形態に係る、通信パルスおよびノイズ信号を含む例示的な検出信号のグラフ表示である。
図10】本願の一実施形態に係る、通信パルスおよびノイズ信号を含む例示的な検出信号のグラフ表示である。
図11】本願の一実施形態に係る、通信パルスおよびノイズ信号を含む例示的な検出信号のグラフ表示である。
図12】本願の一実施形態に係る、例示的な通信パルスのグラフ表示である。
図13】本願の一実施形態に係る、強度−持続時間曲線のグラフ表示である。
図14図1〜2および図4〜5に関連して説明された例示的な医療装置および医療装置システムのような医療装置または医療装置システムによって実行可能な例示的な方法のフロー図である。
図15図1〜2および図4〜5に関連して説明された例示的な医療装置および医療装置システムのような医療装置または医療装置システムによって実行可能な例示的な方法のフロー図である。
図16図1〜2および図4〜5に関連して説明された例示的な医療装置および医療装置システムのような医療装置または医療装置システムによって実行可能な例示的な方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本願は様々な修正形態および代替形態に修正可能であるが、そのうちの特定の実施形態が例として図示されて詳細に説明されている。しかしながら、説明される特定の例示的な実施形態に本願の態様を限定する意図はないことを理解されたい。むしろ、本願の意図および範囲に含まれるすべての修正形態、均等形態、および代替形態を包含することが企図される。
【0040】
以下の説明は、図面を参照して読まれるべきである。図面においては、異なる図中における同様の要素には同様の参照符号が付されている。本明細書と、必ずしも一定の縮尺ではない図面とは、例示的な実施形態を示しており、本願の範囲を限定することを意図するものではない。
【0041】
本願は、情報を通信するためのシステム、装置、および方法に関する。より具体的には、本願はエネルギー適応方式で医療装置間において情報を通信するためのシステム、装置、および方法に関する。いくつかの場合において、医療装置間の通信に用いられる通信信号は、患者に望ましくない影響を及ぼす場合がある。例えば、通信信号は心臓の捕捉、筋肉の刺激、および神経の刺激の少なくとも一つを引き起こすほどのエネルギーを有する通信パルスである場合がある。いくつかの場合において、このような状況が生じる場合、最大エネルギーレベルテスト(MELT)を行うことにより、望ましくない刺激の閾値に対応するエネルギーの量を特定するように、通信パルスのエネルギーの量を変化させることができる。その後、望ましくない刺激の閾値を下回るように後続の通信パルスについての最大エネルギーレベルを設定することができ、医療装置間のその後の通信を進めることができる。経時的なエネルギー適応通信プロトコルを提供するため、随時、および検出されるトリガ事象に応じたタイミングの少なくとも一方で、望ましくない刺激の閾値の再評価を行うことができる。本願はまた、信頼性のある通信を達成しつつも通信中のエネルギーの量を削減するため、通信パルスのエネルギーレベルを調整する技術についても記載している。
【0042】
図1は、生理学的信号およびパラメータを検出し、患者の組織に一種類以上の電気刺激治療を送達することができる、患者内に移植可能な例示的なリードレス心臓ペースメーカー(LCP)の概念図である。例示的な電気刺激治療には、抗頻脈ペーシング(ATP)治療、心臓再同期治療(CRT)、徐脈治療、およびレート応答ペーシング治療を含む様々な種類のペーシング治療等のうちの少なくとも一つが含まれる。図1からわかるように、LCP100は、そのすべての構成要素がLCP100内に収容されているか、ハウジング120上に直接配置されているコンパクトな装置とすることができる。LCP100は通信モジュール102と、パルス発生モジュール104と、電気的検出モジュール106と、機械的検出モジュール108と、処理モジュール110と、エネルギー貯蔵モジュール112と、電極114とを含むことができる。
【0043】
図1に示すように、LCP100は、ハウジング120に対して固定可能であるが、LCP100の周囲の組織および血液の少なくとも一方に曝される電極114を含んでいてもよい。電極114は一般に、LCP100や、周囲の組織および血液の少なくとも一方の間で電気信号を伝導することができる。このような電気信号には、通信パルス、電気刺激パルス、および内因性心臓電気信号が含まれ得る。内因性心臓電気信号は心臓によって生成される電気信号から構成され、心電図(ECG)によって表すことができる。電極114は、人体内に移植しても安全であることが知られている様々な金属または合金等の、一つ以上の生体適合性を有する導電性材料で構成することができる。いくつかの実施形態において、電極114は一般にLCP100のいずれかの端部に配置することができ、モジュール102、104、106、108、および110のうちの一つ以上と電気的に通信することができる。電極114がハウジング120に直接固定されている実施形態において、電極114は、電極114を隣接する電極、ハウジング120、およびLCP100の他の部分の少なくとも一つから電気的に絶縁する絶縁部を有していてもよい。電極114のいくつか、またはすべてはハウジング120から離間しており、ハウジング120およびLCP100の他の構成要素の少なくとも一つに接続ワイヤを介して接続されていてもよい。このような実施形態において、電極114はハウジング120から延びるテールの上に配置されていてもよい。図1に示すように、いくつかの実施形態において、LCP100は電極114´をさらに含んでいてもよい。電極114´は、LCP100の側面に配置されることを除いて電極114と同様のものであり、LCP100が通信パルスおよび電気刺激パルスの送達、および内因性心臓電気信号、通信パルス、および電気刺激パルスの少なくとも一つの検出の少なくとも一方を実行することができる電極の数を増加させる。
【0044】
電極114および114´の少なくとも一つは、様々なサイズおよび形状の少なくとも一方を有しており、様々な距離で離間していてもよい。例えば、電極114は2〜20ミリメートル(mm)の直径を有していてもよい。しかしながら、別の実施形態において、電極114および114´の少なくとも一つは、2mm、3mm、5mm、7mm、または他の任意の適切な直径、寸法、および形状を有していてもよい。電極114および114´の少なくとも一つの例示的な長さには、0mm、1mm、3mm、5mm、10mm、または他の任意の適切な長さが含まれる。本明細書で使用される場合、長さとは、ハウジング120から延びる電極114および114´の寸法のことをいう。また、電極114および114´のうちの少なくともいくつかは、互いに対して20mm、30mm、40mm、50mm、または他の任意の適切な距離だけ離間していてもよい。単一の装置における電極114および114´は、互いに対して異なるサイズを有していてもよく、装置上の電極の間隔は均一でなくてもよい。
【0045】
通信モジュール102は電極114および114´の少なくとも一つに電気的に接続されるとともに、センサ、プログラマ、および他の医療装置等の他の装置と通信するため、患者の組織に通信パルスを送達するように構成することができる。本明細書で使用される場合、通信パルスとは、単独で、または一つ以上の他の変調信号と関連して、他の装置に情報を伝達する任意の変調信号とすることができる。いくつかの実施形態において、通信パルスは、情報を伝達するサブスレッショルド信号を含むもののみに限定される。他の装置は、患者の体内または体外のいずれかに配置することができる。通信モジュール102はさらに、LCP100の外部に配置された他の装置によって送達された通信パルスを検出するように構成することができる。位置にかかわらず、LCPおよび他の装置は互いに通信モジュール102を介して通信することにより、一つ以上の所望の機能を達成することができる。いくつかの例示的な機能には、通信データの格納、不整脈の発生を判定するための通信データの使用、電気刺激治療の送達の調整、および他の機能の少なくとも一つが含まれる。
【0046】
LCP100および他の装置は送達される通信パルスを使用して、生の情報、処理された情報、メッセージ、および他のデータの少なくとも一つを通信することができる。生の情報には、検出された電気信号(例えば、検出されたECG)、および接続されたセンサから収集された信号等の情報が含まれ得る。いくつかの実施形態において、生の情報には、一つ以上の信号処理技術を用いてフィルタリングされた信号が含まれ得る。処理された情報には、LCP100によって決定された任意の情報が含まれ得る。例えば、処理された情報には、決定された心拍数、決定された心拍のタイミング、他の決定された事象のタイミング、閾値交差の決定、監視期間の満了、および活動パラメータ、血液酸素パラメータ、血圧パラメータ、心音パラメータ等の決定されたパラメータが含まれ得る。メッセージには、他の装置にアクションをとるよう指示する命令、送信装置の差し迫ったアクションについての通知、受信装置からのデータの読み出し要求、または送信装置へのデータの書き込み要求が含まれ得る。
【0047】
少なくともいくつかの実施形態において、通信モジュール102(またはLCP100)はさらに、電極114および114´の一つ以上を通信モジュール102に選択的に接続して、どの電極114および114´を介して通信モジュール102が通信パルスを送達するかを選択するためのスイッチング回路を含んでいてもよい。また、通信モジュール102は、他の装置と通信するための一つ以上の方法を使用するように構成されていてもよい。例えば、通信モジュール102は、伝導信号、無線周波数(RF)信号、光信号、音響信号、誘導結合、および他の任意の通信に適した信号または方法の少なくとも一つを介して通信することができる。
【0048】
LCP100のパルス発生モジュール104はまた、電極114および114´の一つ以上に電気的に接続されていてもよい。パルス発生モジュール104は電気刺激パルスを生成するとともに、この電気刺激パルスを電極114および114´の少なくとも一つを介して患者の組織に送達することにより、一つ以上の電気刺激治療を達成するように構成することができる。本明細書で使用される場合、電気刺激パルスとは、任意の種類の疾患または異常の治療の目的で患者の組織に送達可能な任意の電気信号を包含することを意味する。心臓の疾患または異常を治療するために用いられる場合、電気刺激パルスは一般に、患者の心臓を捕捉するように、すなわち、送達される電気刺激パルスに応じて心臓を収縮させるように構成することができる。パルス発生モジュール104が除細動/電気除細動パルスと呼ばれる特定の種類の電気刺激パルスを生成するように構成される少なくともいくつかの実施形態において、パルス発生モジュール104は一つ以上のコンデンサ要素を含んでいてもよい。
【0049】
パルス発生モジュール104は、電気刺激パルスのパルス幅または振幅を調整すること等によって電気刺激パルスを修正し、送達される電気刺激パルスが一貫して心臓を捕捉することを保証する機能を含んでいてもよい。パルス発生モジュール104はエネルギー貯蔵モジュール112に貯蔵されたエネルギーを使用して、電気刺激パルスを生成することができる。少なくともいくつかの実施形態において、パルス発生モジュール104(またはLCP100)はさらに、電極114および114´の一つ以上をパルス発生モジュール104に選択的に接続して、どの電極114および114´を介してパルス発生モジュール104が電気刺激パルスを送達するかを選択するためのスイッチング回路を含んでいてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態において、LCP100は電気的検出モジュール106と、機械的検出モジュール108とを含むことができる。電気的検出モジュール106は、電極114および114´の少なくとも一つから電気的検出モジュール106に伝導される内因性心臓電気信号を検出するように構成することができる。例えば、電気的検出モジュール106は電極114および114´の一つ以上に電気的に接続されるとともに、電極114および114´を介して伝導された心臓電気信号を受信するように構成することができる。いくつかの実施形態において、心臓電気信号は、LCP100が移植されたチャンバからの局所的情報を表すことができる。例えば、LCP100が心室内に移植される場合、電極114および114´の少なくとも一つを介してLCP100によって検出される心臓電気信号は、心室の心臓電気信号を表すことができる。機械的検出モジュール108は、加速度計、血圧センサ、心音センサ、血液酸素センサ、および心臓や患者についての一つ以上の生理学的パラメータを測定する他のセンサの少なくとも一つ等の、様々なセンサを含むか、これに電気的に接続されていてもよい。機械的検出モジュール108は、様々な生理学的パラメータを示すセンサからの信号を収集することができる。電気的検出モジュール106および機械的検出モジュール108の両方はさらに、処理モジュール110に接続されるとともに、検出された心臓電気信号および生理学的信号の少なくとも一方を表す信号を処理モジュール110に提供することができる。別個の検出モジュールであるとして図1に関連して説明されたが、いくつかの実施形態において、電気的検出モジュール106および機械的検出モジュール108は単一のモジュールに統合することもできる。
【0051】
処理モジュール110は、LCP100の動作を制御するように構成することができる。例えば、処理モジュール110は、電気的検出モジュール106から心臓電気信号を受信するか、機械的検出モジュール108から生理学的信号を受信するか、またはその両方を実行するように構成することができる。受信された信号に基づいて、処理モジュール110は不整脈の発生および種類を判定することができる。処理モジュール110はさらに、通信モジュール102から情報を受信することができる。いくつかの実施形態において、処理モジュール110はさらに、このような受信された情報を使用して不整脈の発生および種類を判定することができる。しかしながら、別の実施形態において、LCP100は例えば、電気的検出モジュール106および機械的検出モジュール108の少なくとも一方から受信された信号よりも受信された情報の方が正確であった場合、あるいは、電気的検出モジュール106および機械的検出モジュール108の少なくとも一方が無効とされているか、LCP100から省略されている場合に、電気的検出モジュール106および機械的検出モジュール108の少なくとも一方から受信された信号の代わりに、このような受信された情報を使用することができる。
【0052】
判定された不整脈に基づいて、処理モジュール110はその後、パルス発生モジュール104を制御して、判定された不整脈を治療するための一つ以上の電気刺激治療に従った電気刺激パルスを生成することができる。例えば、処理モジュール110はパルス発生モジュール104を制御して、一つ以上の電気刺激治療を実現するための様々なパラメータおよびシーケンスを有するペーシングパルスを生成することができる。徐脈ペーシング治療を送達するようにパルス発生モジュール104を制御する場合、処理モジュール110はパルス発生モジュール104を制御して、患者の心臓が所定の閾値を下回らないように定期的な間隔で患者の心臓を捕捉するように設計されたペーシングパルスを送達することができる。ATP治療の場合、処理モジュール110はパルス発生モジュール104を制御して、内因性心臓電気信号ではなく送達されるペーシングパルスに応じて心臓を鼓動させるように、患者の内因性心拍数よりも速いレートでペーシングパルスを送達することができる。処理モジュール110はその後、パルス発生モジュール104を制御して、送達されるペーシングパルスのレートを安全なレベルまで低下させることができる。CRTの場合、処理モジュール110はパルス発生モジュール104を制御して、心臓をより効率的に収縮させるために他の装置と協調してペーシングパルスを送達することができる。また、パルス発生モジュール104が除細動/電気除細動治療のための除細動/電気除細動パルスを生成することができる場合、処理モジュール110はパルス発生モジュール104を制御して、このような除細動/電気除細動パルスを生成することができる。別の実施形態において、処理モジュール110はパルス発生モジュール104を制御して、検出された一つ以上の心臓不整脈を治療するように本明細書に記載された治療とは異なる電気刺激治療を提供するための電気刺激パルスを生成することができる。
【0053】
パルス発生モジュール104を制御して異なる種類およびシーケンスの電気刺激パルスを生成すること以外に、いくつかの実施形態において、処理モジュール110はパルス発生モジュール104を制御して、可変のパルスパラメータを有する様々な電気刺激パルスを生成することもできる。例えば、各電気刺激パルスはパルス幅およびパルス振幅を有することができる。処理モジュール110はパルス発生モジュール104を制御して、特定のパルス幅およびパルス振幅を有する様々な電気刺激パルスを生成することができる。例えば、処理モジュール110は、電気刺激パルスが心臓を効果的に捕捉しない場合、パルス発生モジュール104に電気刺激パルスのパルス幅およびパルス振幅の少なくとも一方を調整させることができる。様々な電気刺激パルスの特定のパラメータについてのこのような制御は、LCP100が電気刺激治療を効果的に送達することを保証することができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、処理モジュール110はさらに、通信モジュール102を制御して他の装置に情報を送信することができる。例えば、処理モジュール110は通信モジュール102を制御して、装置のシステムにおける他の装置と通信するための一つ以上の通信パルスを生成することができる。例えば、処理モジュール110は通信モジュール102を制御して、特定のシーケンスで通信パルスを生成することができ、この特定のシーケンスによって、他の装置に異なるデータが伝達される。通信モジュール102はまた、処理モジュール110による潜在的なアクションのため、受信された通信信号を処理モジュール110に伝導することもできる。
【0055】
さらなる実施形態において、処理モジュール110はまた、通信モジュール102およびパルス発生モジュール104が通信パルスおよび電気刺激パルスを患者の組織に送達するためのスイッチング回路を制御することができる。前述のように、通信モジュール102およびパルス発生モジュール104の両方が、電極114および114´の一つ以上を通信モジュール102およびパルス発生モジュール104に接続するための回路を含むことができ、これにより、これらのモジュールは通信パルスおよび電気刺激パルスを患者の組織に送達することができる。通信モジュール102およびパルス発生モジュール104が通信パルスおよび電気刺激パルスを送達するための一つ以上の電極についての特定の組み合わせは、通信パルスの受信および電気刺激パルスの有効性の少なくとも一方に影響を及ぼす。通信モジュール102およびパルス発生モジュール104の各々がスイッチング回路を含むことができると説明されたが、いくつかの実施形態において、LCP100は、通信モジュール102、パルス発生モジュール104、電極114および114´のすべてに接続された単一のスイッチングモジュールを含んでいてもよい。このような実施形態において、処理モジュール110は単一のスイッチングモジュールを制御して、モジュール102/104を電極114/114´に接続することができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、処理モジュール110は、超大規模集積(VLSI)チップまたは特定用途向け集積回路(ASIC)等の予めプログラミングされたチップを含むことができる。このような実施形態において、チップはLCP100の動作を制御するため、制御ロジックを用いて予めプログラミングされていてもよい。予めプログラミングされたチップを用いることにより、処理モジュール110は他のプログラミング可能な回路と比較して基本機能を維持しつつも電力を削減することができ、LCP100のバッテリ寿命を長くすることができる。別の実施形態において、処理モジュール110はプログラミング可能なマイクロプロセッサ等を含むことができる。このようなプログラミング可能なマイクロプロセッサは、製造後にユーザがLCP100の制御ロジックを調整することを可能にし、予めプログラミングされたチップを用いる場合と比較して、LCP100の柔軟性を向上させることができる。
【0057】
さらなる実施形態において、処理モジュール110はさらにメモリ回路を含むとともに、メモリ回路上に情報を格納し、メモリ回路から情報を読み出すことができる。別の実施形態において、LCP100は処理モジュール110と通信可能な別個のメモリ回路(図示略)を含むことができ、処理モジュール110は別個のメモリ回路との間で情報を読み書きすることができる。メモリ回路は、処理モジュール110の一部であろうと処理モジュール110とは別個のものであろうと、例えば8ビットのアドレス長を有することができる。しかしながら、別の実施形態において、メモリ回路は16ビット、32ビット、64ビット、または他の任意の適切なビットのアドレス長を有していてもよい。また、メモリ回路は揮発性メモリ、不揮発性メモリ、または揮発性メモリと不揮発性メモリとの組み合わせとすることができる。
【0058】
エネルギー貯蔵モジュール112は、LCP100にその動作のための電源を提供することができる。いくつかの実施形態において、エネルギー貯蔵モジュール112は非充電式リチウムベースバッテリであってもよい。別の実施形態において、非充電式バッテリは当該技術分野で知られている他の適切な材料で生成することもできる。LCP100は植込み型装置であるため、LCP100へのアクセスは制限される場合がある。このような状況において、数日、数週、数月、または数年のような長期間にわたって治療を送達するため、十分なエネルギー容量を有している必要がある。いくつかの実施形態において、エネルギー貯蔵モジュール112はLCP100の使用可能な寿命の延長を促進するため、充電式バッテリとすることもできる。さらに別の実施形態において、エネルギー貯蔵モジュール112は、コンデンサ等の他の種類のエネルギー貯蔵装置とすることもできる。
【0059】
患者の体内にLCP100を移植するため、操作者(例えば医師、臨床医等)はLCP100を患者の心臓組織に固定する場合がある。固定を容易にするため、LCP100は一つ以上のアンカー116を含んでいてもよい。アンカー116は、任意の数の固定機構または係止機構を含むことができる。例えば、アンカー116は、一つ以上のピン、ステープル、スレッド、ねじ、らせん、歯等を含むことができる。いくつかの実施形態において、図示されてはいないが、アンカー116はその外面に、アンカー116の少なくとも一部の長さに沿って延びるスレッドを含むことができる。スレッドは心臓組織とアンカーとの間に摩擦を生じさせることにより、アンカー116の心臓組織内における固定を支援することができる。別の実施形態において、アンカー116は、周囲の心臓組織との係合を容易にするためのかかり、スパイク等の別の構造を含むこともできる。
【0060】
図2は、生理学的信号およびパラメータを検出し、患者の組織に一種類以上の電気刺激治療を送達するように動作可能な別の医療装置(MD)200の一実施形態を示している。図示の実施形態において、MD200は通信モジュール202と、パルス発生モジュール204と、電気的検出モジュール206と、機械的検出モジュール208と、処理モジュール210と、エネルギー貯蔵モジュール218とを含むことができる。モジュール202、204、206、208、および210はそれぞれ、LCP100のモジュール102、104、106、108、および110と同様のものとすることができる。また、エネルギー貯蔵モジュール218は、LCP100のエネルギー貯蔵モジュール112と同様のものとすることができる。しかしながら、いくつかの実施形態において、MD200はハウジング220内でより大きな容積を有していてもよい。このような実施形態において、MD200はより大きなエネルギー貯蔵モジュール218を含むか、LCP100の処理モジュール110よりも複雑な動作を扱うことのできるより大きな処理モジュール210を含むか、またはその両方とすることができる。
【0061】
MD200は図1に示すような別のリードレス装置であってもよいが、いくつかの場合において、MD200はリード212のようなリードを含んでいてもよい。リード212は、電極214とハウジング220内に配置された一つ以上のモジュールとの間で電気信号を伝導する電気ワイヤを含むことができる。いくつかの場合において、リード212はMD200のハウジング220に接続するとともに、これから離れて延びていてもよい。いくつかの実施形態において、リード212は患者の心臓上、心臓内、または心臓に隣接して移植される。リード212は、リード212上の様々な位置に、ハウジング220から様々な距離で配置された一つ以上の電極214を含むことができる。いくつかのリード212は単一の電極214のみを含み、別のリード212は複数の電極214を含んでいてもよい。電極214は一般に、リード212が患者内に移植された時に、電極214のうちの一つ以上が所望の機能を果たすように配置されるように、リード212上に位置決めされる。いくつかの場合において、電極214のうちの一つ以上は患者の心臓組織に接触していてもよい。別の場合において、電極214のうちの一つ以上は皮下的であるが、患者の心臓に隣接するように配置されてもよい。電極214は、内因的に生成された電気心臓信号をリード212に伝導することができる。リード212は次に、受信された電気心臓信号をMD200のモジュール202、204、206、および208のうちの一つ以上に伝導することができる。いくつかの場合において、MD200は電気刺激信号を生成することができ、リード212は生成された電気刺激信号を電極214に伝導することができる。電極214はその後、電気刺激信号を患者の心臓組織に(直接的または間接的に)伝導することができる。MD200はまた、リード212上に配置されていない一つ以上の電極214を含んでいてもよい。例えば、一つ以上の電極214はハウジング220に直接接続されていてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態において、リード212はさらに、加速度計、血圧センサ、心音センサ、血液酸素センサ、および心臓や患者についての一つ以上の生理学的パラメータを測定するように構成された他のセンサの少なくとも一つを含んでいてもよい。このような実施形態において、機械的検出モジュール208はリード212に電気的に接続されるとともに、このようなセンサから生成された信号を受信することができる。
【0063】
必須ではないが、いくつかの実施形態において、MD200は植込み型医療装置とすることができる。このような実施形態において、MD200のハウジング220は、例えば患者の経気管領域に移植することができる。ハウジング220は一般に、人体内に移植しても安全であることが知られているいくつかの材料のうちのいずれかを含むことができ、移植された時に、MD200の様々な構成要素を患者の体液および組織から密封することができる。このような実施形態において、リード212は、患者の心臓内、患者の心臓に隣接した位置、患者の背骨に隣接した位置、または他の任意の所望の位置のような、患者内の一つ以上の様々な位置に移植することができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、MD200は植込み型心臓ペースメーカー(ICP)とすることができる。これらの実施形態において、MD200は、患者の心臓上または心臓内に移植される一つ以上のリード、例えばリード212を有していてもよい。一つ以上のリード212は、患者の心臓の組織および血液の少なくとも一方に接触する一つ以上の電極214を含むことができる。MD200は内因的に生成された心臓電気信号を検出し、検出された信号の分析に基づいて、例えば一つ以上の心臓不整脈を決定するように構成することができる。MD200は心臓内に移植されたリード212を介して、CRT、ATP治療、徐脈治療、および他の種類の治療の少なくとも一つを送達するように構成することができる。いくつかの実施形態において、MD200はさらに、除細動/電気除細動治療を提供するように構成されていてもよい。
【0065】
いくつかの場合において、MD200は植込み型除細動器(ICD)とすることができる。このような実施形態において、MD200は患者の心臓内に移植された一つ以上のリードを含んでいてもよい。MD200はまた、電気心臓信号を検出し、検出された電気心臓信号に基づいて不整脈の発生を判定し、頻脈性不整脈の発生の判定に応じて除細動/電気除細動治療を送達するように構成することもできる。別の実施形態において、MD200は皮下植込み型除細動器(S−ICD)とすることができる。MD200がS−ICDである実施形態において、リード212の一つは皮下的に移植されたリードとすることができる。MD200がS−ICDである少なくともいくつかの実施形態において、MD200は、皮下的であるが胸腔の外側に移植された単一のリードのみを含んでいてもよいが、これは必須ではない。
【0066】
いくつかの実施形態において、MD200は植込み型医療装置でなくてもよい。むしろ、MD200は患者の体外の装置であってもよく、電極214は患者の身体上に配置された皮膚電極とすることができる。このような実施形態において、MD200は表面電気信号(例えば、心臓によって生成される電気心臓信号、または患者の体内に移植された装置によって生成されて、身体を通して皮膚に伝導される電気信号)を検出することができる。このような実施形態において、MD200は例えば除細動治療を含む、様々な種類の電気刺激治療を送達するように構成することができる。
【0067】
図3は、医療装置システムと、医療装置システムの医療装置302、304、306、および310のうちの複数の医療装置が通信可能な通信経路とについての一実施形態を示している。図示の実施形態において、医療装置システム300はLCP302および304と、外部医療装置306と、他のセンサ/装置310とを含むことができる。外部装置306は、MD200に関連して前述したように、患者の体外に配置された装置とすることができる。他のセンサ/装置310は、ICP、ICD、およびS−ICD等の、MD200に関連して前述したような装置のいずれかとすることができる。他のセンサ/装置310ははまた、加速度計、血圧センサ等の、患者についての情報を収集する様々な診断センサを含んでいてもよい。いくつかの場合において、他のセンサ/装置310には、システム300の一つ以上の装置をプログラミングするために使用可能な外部プログラミング装置が含まれ得る。
【0068】
システム300の様々な装置は、通信経路308を介して通信することができる。例えば、LCP302および304の少なくとも一方は、内因性心臓電気信号を検出し、この信号を通信経路308を介して、システム300の一つ以上の他の装置302/304、306、および310に通信することができる。一実施形態において、装置302/304の一つ以上はこのような信号を受信し、受信された信号に基づいて、不整脈の発生を判定することができる。いくつかの場合において、装置302/304はこのような判定を、システム300の一つ以上の他の装置306および310に通信することができる。いくつかの場合において、システム300の装置302/304、306、および310の一つ以上は、患者の心臓に適切な電気刺激を送達すること等によって、通信された不整脈の判定に基づいてアクションをとることができる。システム300の装置302/304、306、および310の一つ以上はさらに、通信経路を介してコマンドメッセージまたは応答メッセージを通信することができる。コマンドメッセージは受信装置に特定のアクションをとらせることができ、応答メッセージは要求された情報や、受信装置が実際に通信されたメッセージまたはデータを受信したことの確認を含むことができる。
【0069】
システム300の様々な装置が経路308を介して、RF信号、誘導結合、光信号、音響信号、または他の任意の通信に適した信号を用いて通信することができると考えられる。また、少なくともいくつかの実施形態において、システム300の様々な装置は経路308を介して、複数の信号タイプを用いて通信することができる。例えば、他のセンサ/装置310は外部装置306と第一の信号タイプ(例えばRF通信)を用いて通信することができるが、LCP302/304とは第二の信号タイプ(例えば伝導通信)を用いて通信することができる。さらに、いくつかの実施形態において、装置間の通信は制限される場合がある。例えば前述のように、いくつかの実施形態において、LCP302/304は外部装置306と他のセンサ/装置310を介してのみ通信することができ、この場合、LCP302/304は他のセンサ/装置310に信号を送信し、他のセンサ/装置310は受信された信号を外部装置306に送信する。
【0070】
いくつかの場合において、システム300の様々な装置は経路308を介して、伝導通信信号を用いて通信することができる。従って、システム300の装置は伝導通信を可能にする構成要素を含むことができる。例えば、システム300の装置は伝導通信信号(例えば、電流パルスおよび電圧パルスの少なくとも一方)を患者の体内に、送信装置の一つ以上の電極を介して送信するように構成することができ、受信装置の一つ以上の電極を介して伝導通信信号(例えばパルス)を受信することができる。患者の身体は伝導通信信号(例えばパルス)を、システム300における送信装置の一つ以上の電極から受信装置の電極に「伝導」することができる。このような実施形態において、送達される伝導通信信号(例えばパルス)は、ペーシングパルス、除細動/電気除細動パルス、または他の電気刺激治療信号とは異なっていてもよい。例えば、システム300の装置は、サブスレッショルドの振幅/パルス幅で電気通信パルスを送達することができる。すなわち、通信パルスは心臓を捕捉しないように設計された振幅/パルス幅を有している。しかしながら、いくつかの場合において、送達される電気通信パルスの振幅/パルス幅は心臓の捕捉閾値を上回っていてもよいが、必要に応じて、心臓の不応期中に送達するか、ペーシングパルスに対して組み込みまたは変調を行うか、またはその両方とすることもできる。
【0071】
送達される電気通信パルスは、通信される情報を符号化するための任意の適切な方法で変調することができる。いくつかの場合において、通信パルスはパルス幅変調されるか、振幅変調されるか、またはその両方とすることができる。代替的または追加的に、パルス間の時間を変調して所望の情報を符号化することもできる。いくつかの場合において、伝導通信パルスは必要に応じて、電圧パルス、電流パルス、二相電圧パルス、二相電流パルス、または他の任意の適切な電気パルスとすることができる。
【0072】
図4および図5は、本明細書に開示された技術に従って動作するように構成可能な例示的な医療装置システムを示している。例えばシステムは、患者内に移植されるとともに、生理学的信号を検出し、心臓不整脈の発生を判定し、検出された心臓不整脈を治療するために電気刺激を送達するように構成された複数の装置を含むことができる。図4において、LCP402は心臓410の左心室の内部に固定されて示されており、パルス発生器406は一つ以上の電極408a〜408cを有するリード412に接続されて示されている。いくつかの場合において、パルス発生器406は皮下植込み型除細動器(S−ICD)の一部とすることができ、一つ以上の電極408a〜408cは心臓に隣接して皮下的に配置されていてもよい。LCP402は、例えば通信経路308を介してS−ICDと通信することができる。図4に示すLCP402、パルス発生器406、リード412、および電極408a〜408cの位置は、単なる例示にすぎない。システム400の別の実施形態において、LCP402は必要に応じて、右心室、右心房、または左心房に配置することができる。さらに別の実施形態において、LCP402は心臓410に隣接した外部に、または心臓410から離れて移植することもできる。
【0073】
図5において、LCP502は心臓510の左心室の内部に固定されて示されており、パルス発生器506は一つ以上の電極504a〜504cを有するリード512に接続されて示されている。いくつかの場合において、パルス発生器506は植込み型心臓ペースメーカー(ICP)および植込み型除細動器(ICD)の少なくとも一方の一部とすることができ、一つ以上の電極504a〜504cは心臓510内に配置されていてもよい。いくつかの場合において、LCP502は、例えば通信経路308を介して植込み型心臓ペースメーカー(ICP)および植込み型除細動器(ICD)の少なくとも一方と通信することができる。図4と同様に、図5に示すLCP502、パルス発生器506、リード512、および電極504a〜504cの位置は、単なる例示にすぎない。システム500の別の実施形態において、LCP502は必要に応じて、右心室、右心房、または左心房に配置することができる。さらに別の実施形態において、LCP502は心臓510に隣接した外部に、または心臓510から離れて移植することもできる。また、いくつかの実施形態において、リード512および電極504a〜504cの少なくとも一つは、心臓510の異なるチャンバ内に配置することができ、あるいは、パルス発生器は、心臓510内、または心臓510に隣接して配置された追加のリードおよび電極の少なくとも一方を含むことができる。
【0074】
医療装置システム400および500はまた、外部支持装置420および520のような外部支持装置を含んでいてもよい。外部支持装置420および520は、装置の識別、装置のプログラミング、および本明細書に記載された通信技術の一つ以上を用いた装置間におけるリアルタイムデータおよび格納されたデータの少なくとも一方の送信の少なくとも一つのような機能を実行するために使用することができる。一実施形態として、外部支持装置420およびパルス発生器406間の通信はワイヤレスモードで実行され、パルス発生器406およびLCP402間の通信は伝導モードで実行される。いくつかの実施形態において、LCP402および外部支持装置420間の通信は、パルス発生器406を介して通信情報を送信することによって達成される。しかしながら、別の実施形態において、LCP402および外部支持装置420間の通信は、通信モジュールを介して行われてもよい。
【0075】
図4および図5は単に、本明細書に開示された技術に従って動作するように構成可能な医療装置システムのいくつかの実施形態を示しているにすぎない。別の例示的な医療装置システムは、追加の、または異なる医療装置および構成の少なくとも一方を含んでいてもよい。例えば、本明細書に開示された技術に従って動作するのに適した別の医療装置システムは、心臓内に移植された追加のLCPを含んでいてもよい。別の例示的な医療装置システムは、除細動治療を送達可能な少なくとも一つのLCPとともに、複数のLCPを含むことができ、パルス発生器406または506等の他の装置を有していても、有していなくてもよい。さらに別の実施形態は、経静脈的ペースメーカーとともに移植された一つ以上のLCPを含むことができ、移植されたSICDを有していても、有していなくてもよい。さらに別の実施形態において、医療装置、リード、および電極の少なくとも一つについての構成または配置は、図4および図5に示すものとは異なっていてもよい。従って、図4および図5に示すものとは異なる多くの他の医療装置システムが、本明細書に開示された技術に従って操作され得ると認識されるべきである。このように、図4および図5に示す例示的なシステムは、決して限定的であるとみなされるべきではない。
【0076】
さらに、開示された技術は、心臓不整脈の検出および治療を行うように構成されていない装置にも適用することができる。例えば、本明細書に開示された技術は、他の装置およびセンサの少なくとも一方と通信する任意の医療装置またはセンサに適用することができる。従って、以下の実施形態はLCP装置およびS−ICD装置に関連して説明されているが、本願はこれに限定されるものではない。また、以下で使用される「通信パルス」という用語は、RFパルス、音響パルス、光パルス、誘導パルス、および伝導パルスの少なくとも一つのような、前述の通信様式のいずれかのパルスに対応し得る。
【0077】
例示的な一実施形態として図4のシステムを使用する場合、LCP402およびS−ICD装置(パルス発生器406を含み得る)は、例えば心臓の異常を検出し、検出された心臓の異常を治療するために互いに通信することができる。前述のように、LCP402およびS−ICDは、通信パルスを送り合うことによって通信することができる。両装置の通信モジュールは通信パルスを常時監視し、さらなるアクションのため、受信された通信パルスを処理ユニットに伝送することができる。通信モジュールは常時監視状態にあるため、通信パルス以外の信号、例えばノイズ信号をも受信してしまう場合がある。この実施形態においては双方向通信が使用されているが、いくつかのシステムにおいては一方向通信のみが使用されてもよいと考えられる。
【0078】
装置が遭遇し得る一つの問題は、ノイズ信号を通信パルスとして解釈してしまうことである。ノイズ信号を通信パルスとして解釈してしまうことへの対策として、装置は最小通信受信閾値(MCRT)を使用することができる。MCRTは最小エネルギー閾値であってもよく、装置はMCRTを上回るエネルギーレベルで受信された信号のみを通信パルスとして解釈することができる。もちろん、装置は受信された信号の形態または他の特徴を分析すること等により、受信された信号が(ノイズ信号または他の信号ではなく)通信パルスであるか否かを判定するための他のメカニズムを使用することもできる。通信パルスとノイズ信号または他の信号とを区別するための他の例示的なメカニズムには、パルス位置パラメータを使用することが含まれ得る。例えば、通信パルスを送達する装置は、所定の時間または時間間隔でパルスを送達するように構成することができる。このような実施形態において、受信装置が通信パルスであるとも思われるが所定の時間または時間間隔の外で生じた信号を受信した場合、受信装置はこの受信された信号を通信パルス以外の信号であるとして解釈するであろう。このような他のメカニズムは、MCRTの代わりに、またはMCRTに加えて使用することができる。
【0079】
例えば受信された信号が装置のMCRTを上回るエネルギーレベルを有しているか、いくつかの実施形態において、受信された信号が通信パルスであるか否かの一つ以上の他のテストに合格したという理由により、受信された信号が通信パルスであると装置が判断した場合、装置は追加の処理のため、受信された信号を装置の一つ以上のモジュールに転送することができる。
【0080】
MCRTが低すぎる場合、ノイズがMCRTを上回り、通信パルスとして誤って解釈されてしまうことがある。これにより、通信データの信頼性および精度が低下する可能性がある。MCRTが高すぎる場合、すなわちMCRTが通信パルスを確実に受信するのに必要なレベルよりも高く設定された場合、送信医療装置は各通信パルスを送信するために余分なエネルギーを消費しなければならないことがある。多くの医療装置の電源(例えば、バッテリまたは他のエネルギー貯蔵モジュール)は限られているため、各通信パルスによって消費されるエネルギーを削減することは重要な考慮事項となり得、場合によっては医療装置の使用可能な寿命を実質的に延長することができる。
【0081】
従って、MCRTが適切なレベルに設定されることを確実にするため、例えばLCP402およびS−ICDの少なくとも一方は、周期的にMCRTテストを実行してもよい。MCRTテストを実行する典型的な間隔には、一日一回、週一回、月一回、または他の任意の適切な間隔が含まれる。別の実施形態において、装置はMCRTテストをトリガ事象に基づいて、例えば無視された通信試行、温度変化、電圧変化、または一つ以上の治療の送達についての閾値量の検出時に実行してもよい。第一装置は例えば、通常、第二装置に一つ以上の通信パルスに対する応答を生じさせる通信パルスを送信することができる。第一装置は、第一装置が第二装置からの応答を受信することなく通信を発行した回数をカウントすることができる。カウントが閾値量に達した後、第一装置は第二装置にトリガを与えて、MCRTテストを実行させることができる。このような実施形態において、第一装置は代替の通信方法を用いて第二装置にトリガを通信するか、通信パルスのエネルギーレベルを高いレベルに上げる等、第二装置にトリガを通信する前に、通信パルスの一つ以上のパラメータを調整することができる。前述のものに加えて、いくつかの場合において、トリガ事象には、装置パラメータ(例えばペーシングレート)の変化、患者の活動の変化(例えば血行動態の変化)、患者の姿勢の変化、検出された患者の事象(例えば除細動ショック)、通信パラメータ(例えば周波数)の変化等の他の事象が含まれ得る。装置はMCRTテストを移植時、定期的なタイミング、およびトリガ事象時の少なくとも一つにおいて実行することができる。
【0082】
図6図8は、MCRTテスト中にLCP402等の装置によって受信される信号の一実施形態を示している。いくつかの実施形態において、LCP402は受信された信号のエネルギーレベルの尺度として、受信された信号の電圧を使用することができる。このような実施形態において、LCP402は電圧閾値604で表される電圧閾値を、MCRTとして設定することができる。しかしながら、別の実施形態において、LCP402は信号の電力または信号の電気エネルギーのような、MCRTテスト中にMCRTとして閾値を設定するためのエネルギーの別の尺度を使用することもできる。図6は、MCRTテスト中にLCP402によって受信される例示的な信号である信号600を示している。MCRTテストの間、LCP402は所定の期間中に患者の組織にパルスを送達するため、S−ICDと協調することができる。いくつかの実施形態において、パルスは通信パルスとすることができる。別の実施形態において、パルスはテストパルスであってもよい。テストパルスは、通信パルスと同様のパラメータ(例えば、パルス幅および振幅)を有していてもよい。しかしながら、テストパルスは受信装置に情報を伝達するように構成されていなくてもよく、S−ICDは情報を伝達するような組み合わせでテストパルスを送達しなくてもよい。パルスは、S−ICDが電気刺激治療の送達中に送達するように構成可能な刺激および除細動パルスの少なくとも一方とは異なっていてもよい。信号600は、この所定の期間中にLCP402によって受信することができる。所定の期間は、心拍間の心臓サイクルの一部、例えばT波の後で次のP波の前の期間であってもよい。別の実施形態において、所定の期間は、複数の心臓サイクルにまたがっていてもよい。例えば、所定の期間は、各期間が心拍間の心臓サイクルの一部である、複数の不連続な期間を含むことができる。
【0083】
いずれにしても、S−ICDは、所定の期間中にパルス602aおよび602bのような一つ以上のパルスを送達するように構成することができる。S−ICDは、パルスを送達するための多くの異なる方法で構成することができる。例えば、S−ICDは、所定の期間中に規則的な間隔またはランダムな間隔で、設定された量のパルスを送達するように構成することができる。あるいは、S−ICDは、所定の期間中に規則的な間隔またはランダムな間隔で、ランダムな、または有界乱数のパルスを送達するように構成することができる。いくつかの場合において、S−ICDがMCRTテスト中にパルスを送達するプロトコルは、LCP402にも知らされている。従って、LCP402は、MCRTテスト中にS−ICDが送達するパルスのタイミングおよび数の少なくとも一方について知ることができる。あるいは、S−ICDはMCRTテスト後にLCP402に、S−ICDがMCRTテスト中に送達したパルスの数を示す別個の通信を送信してもよい。
【0084】
MCRTテストの間、LCP402は、S−ICDによって送達されたパルスを含む信号や、様々なノイズ信号または他の信号を受信することができる。信号600において、パルスはパルス602aおよび602bによって表されており、ノイズまたは他の信号はパルス602aおよび602bの前、間、および後のギザギザの部分によって表されている。マーカー608で示すように、LCP402は、電圧閾値604の下部から電圧閾値604の上部に信号600が交差する回数をカウントすることができる。所定の期間が満了すると、LCP402は電圧閾値604に対して検出された交差の回数と、S−ICDによって送達されたパルスの数とを比較することができる。二つの数が許容可能であるとされた場合、LCP402は電圧閾値604を、将来の通信のためのMCRTとして使用することができる。いくつかの実施形態において、二つの数が一致した場合、例えば電圧閾値604の交差の回数が送達されたパルスの数と等しかった場合に、二つの数は許容可能であるとすることができる。しかしながら、別の実施形態においては、送達されたパルスの数と電圧閾値604に対して検出された交差の回数とが互いに5パーセント、10パーセント、15パーセント、20パーセント、または他の任意の適切なパーセント等の特定のパーセンテージ内にある場合に、二つの数は許容可能であるとすることができる。
【0085】
送達されたパルスの数が電圧閾値604に対して検出された交差の回数よりも少なかった場合、LCP402は新しくより高い電圧閾値を設定し、再びMCRTテストを実行することができる。LCP402は次のMCRTテストのため、電圧閾値を2ミリボルト、5ミリボルト、7ミリボルト、10ミリボルト、15ミリボルト、20ミリボルト、または他の任意の適切な値だけ上げることができる。別の実施形態において、LCP402は現在の電圧閾値に対して3パーセント、5パーセント、7パーセント、10パーセント、15パーセント、20パーセント、または他の任意の適切な値等の所定のパーセンテージだけ電圧閾値を上げることもできる。図7および図8は両方とも、パルス702aおよび702b、パルス802aおよび802bを含むMCRTテストを示しており、LCP402はそれぞれ連続的に高くなる電圧閾値704および804を使用している。図からわかるように、マーカー708および808で表す電圧閾値に対して検出された交差は、電圧閾値がそれぞれ連続的に増加するにつれて少なくなっている。図8の実施形態において、送達されたパルスの数は、電圧閾値804の下部から電圧閾値804の上部に対して検出された交差の回数と等しくなっている。従って、LCP402は、MCRTを電圧閾値804と等しい値に設定することができる。いくつかの場合において、MCRTは電圧閾値804よりも余裕分だけ上の値を設定することもできる。
【0086】
送達されたパルスの数がMCRTテスト中に電圧閾値に対して検出された交差の回数よりも多かった場合、LCP402は新しくより低い電圧閾値を設定し、別のMCRTテストを実行することができる。このような状況において、送達されるパルスの一つ以上がMCRT電圧閾値に達しないように、LCP402は電圧閾値を非常に高く設定することができる。いくつかの場合において、送信装置(例えば、本実施形態におけるSICD)は、送達されるパルスの数がMCRT中に電圧閾値に対して検出される交差の回数よりも多くなるように、数を軽減することを支援するため、MCRTテスト中に高いパルスを提供することができる。
【0087】
いくつかの実施形態において、LCP402は、送達されたパルスの数とMCRTテスト中に電圧閾値に対して検出された交差の回数とが許容可能であると判定した後も、依然として後続のMCRTテストを実行可能であるようなMCRTテストを採用することができる。例えば、このような実施形態において、LCP402はMCRTをより低く設定するとともに、ノイズ信号または他の信号の大部分を無視することもできる。このようにしてMCRTを低下させることにより、通信中に使用されるエネルギーの量を削減することができる。従って、送達されたパルスの数とMCRTテスト中に電圧閾値に対して検出された交差の回数とが許容可能であると判定された後に、LCP402は新しくより低い電圧閾値で別のMCRTテストを実行することができる。ステップダウンされた電圧閾値での追加のMCRTテストは、送達されるパルスの数とMCRTテスト中に電圧閾値に対して検出される交差の回数とが比較的に許容可能でなくなるまで繰り返すことができる。
【0088】
このような実施形態において、LCP402は、電圧閾値の最後の増加分よりも少ない分だけ後続のMCRTにおける電圧閾値を下げることができる。例えば、LCP402は、電圧閾値の最後の増加分に対して4分の1、3分の1、2分の1、3分の2、4分の3、または他の任意の適切な割合だけ電圧閾値を低下することができる。一実施形態として図7および図8を用いるとすると、電圧閾値704および電圧閾値804の間の電圧増加が10ミリボルトであった場合、LCP402は後続のMCRTテストにおいて、電圧閾値804よりも(例えば、電圧閾値704および電圧閾値804の間の電圧閾値の増加分の4分の1である)2.5ミリボルトだけ低い電圧閾値を新しく設定することができる。LCP402は、10ミリボルトに対する異なる割合だけ電圧閾値804よりも低く設定された(例えば、5ミリボルト、6と3分の2ミリボルト、7.5ミリボルト等)新しい電圧閾値で、送達されるパルスの数とMCRTテスト中に電圧閾値に対して検出される交差の回数とが許容可能でなくなるまで(例えば、二つの数が一致しなくなるか、互いの所定のパーセンテージ内に入らなくなるまで)、複数の追加のMCRTテストを実行することができる。この時点で、LCP402は、二つの数が許容可能であった最後の電圧閾値に等しい値に(時には余裕分だけ加算して)MCRTを設定することができる。図7および図8の実施形態において、送達されたパルスの数と電圧閾値に対して検出された交差の回数とが、電圧閾値804よりも2.5ミリボルトだけ低い電圧閾値ではMCRTテストにおいて許容可能であったが、電圧閾値804よりも5ミリボルトだけ低い電圧閾値ではMCRTテストにおいて許容可能でなかった場合、LCP402は電圧閾値804よりも2.5ミリボルトだけ低い電圧閾値と等しい値にMCRTを設定することができる。
【0089】
上記説明は、MCRTテストがどのように実行され得るかについての単なる一例にすぎない。別の実施形態において、比較的低い電圧閾値604から開始する代わりに、LCP402は比較的高い電圧閾値から開始し、後続のMCRTテストにおいて、電圧閾値を低下させてもよい。このような実施形態において、LCP402は、送達されたパルスの数と電圧閾値に対して検出された交差の回数とが許容可能となったテストにおける最も低い電圧閾値を特定し、この閾値に等しい値に(時には余裕分だけ加算して)将来の通信のためのMCRTを設定することができる。さらに別の実施形態において、LCP402は一つのMCRTテストを実行するが、異なる閾値を用いて結果を評価してもよい。この実施形態を図9に示す。図9からわかるように、単一のMCRTテストは結果として、パルス902aおよび902bを含む単一の信号900をもたらす。LCP402は、複数の電圧閾値904a〜904cを用いて信号900を分析することができる。各電圧閾値について、LCP402は、マーカー908a〜908cで示す電圧閾値の下部から電圧閾値の上部への交差の回数をカウントすることができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、MCRTテストは閾値の側面に加えて、タイミングの側面を含むことができる。閾値の側面のみを含むMCRTテストにおいて、送達されたパルスの電圧レベルが電圧閾値を下回る一方で、ノイズまたは他の信号の電圧レベルが電圧閾値を上回るという状況が生じ得る。このような状況において、受信装置は、送達されたパルスの数に等しい受信パルスの数のカウントを、誤って終了してしまう場合がある。このようなエラーへの対策として、送達装置は所定の時間に、または所定の周期でパルスを送達するように構成することができる。このような実施形態において、受信装置は、所定の時間または(所定の周期によって定まる)所定の間隔の終了時に生じた場合にのみ、電圧閾値に対する交差の回数をカウントすることができる。さらなる実施形態において、受信装置は、所定の時間または所定の間隔の終了時の前後にウィンドウを定義することができる。受信装置は、ウィンドウ内において生じた場合にのみ、閾値交差とすることができる。
【0091】
図10および図11は、少なくともいくつかのMCRTテストの追加の特徴を示している。図10は、パルス1002aおよび1002bを含む信号1000を示している。図10からわかるように、LCP402は電圧閾値1004を、パルス1002aおよび1002bのみが電圧閾値1004を上回るような値に設定することができていない。これらの実施形態において、LCP402は、電圧閾値に対して検出された交差の回数が許容可能となる電圧閾値を決定することができない。LCP402は、S−ICDが送達されるパルスのエネルギーレベルを増加させることを要求する通信を、S−ICDに送信することができる。この特定の実施形態において、これはS−ICDが送達されるパルスの電圧振幅を増加させることを意味するであろう。別の実施形態において、S−ICDはパルス幅、パルスの電力、パルスの電気エネルギー、または他の何らかのパラメータを増加させてもよい。図11は、通信パルス1102aおよび1102bを含む信号1100を示している。図11の実施形態において、S−ICDは、送達される通信パルス1102aおよび1102bのエネルギーレベルを上げている(例えば、電圧振幅を増加させている)。ここで、パルス1102aおよび1102bはマーカー1108で表すように、電圧閾値1104の下部から電圧閾値1104の上部に交差する。LCP402はその後、MCRTの決定を進めることができる。また、このような実施形態において、LCP402が将来の通信のためのMCRTを設定するのとは別に、S−ICDもまた、将来の通信のために送達される通信パルスのエネルギーレベルを変化させることができる。MCRTは、ノイズレベルよりも所望の信号対雑音(SN)比を示す分だけ上に設定することができる。
【0092】
いくつかの場合において、結果の確認を支援するため、同じ電圧閾値で複数のMCRTテストを繰り返してもよい。MCRTテストを繰り返すたびに電圧閾値の下部から電圧閾値の上部への信号交差の回数が変化する場合、最大カウント値、平均カウント値、または他の任意の適切な値を使用して、送達されたパルスの数が電圧閾値に対して検出された交差の回数と許容可能に一致するか否かを判定することができる。いくつかの場合において、同じ電圧閾値を用いた複数のMCRTテストにわたって信号交差の回数の標準偏差を算出することができ、標準偏差が閾値偏差を上回った場合、MCRTテストは失敗したとみなして、電圧閾値を増加させることができる。これは単なる一例にすぎない。
【0093】
上述のMCRTテストに関する記載はLCP402に関連してなされたが、医療装置システムの各装置が独自のMCRTを有していてもよい。従って、システムの各装置は独立してMCRTを決定することができる。いくつかの場合において、LCP402は、LCP402にパルスを提供する各医療装置に対して異なるMCRTを決定することができる。例えば、LCP402はS−ICDによって提供されるパルスに対して第一MCRTを決定し、別のLCPによって提供されるパルスに対して第二MCRTを決定し、診断専用センサ装置によって提供されるパルスに対して第三MCRTを決定することができる。これは単なる一例にすぎない。
【0094】
医療システムの装置は、エネルギー使用の削減を達成するため、通信の他の側面を調整することもできる。例えば、LCP402およびS−ICDの少なくとも一方のような装置は、通信中に使用される通信パルスのエネルギーレベルを調整することができる。MCRTテストの一部として、またはMCRTテストとは別個に、装置は定期的に通信パルスエネルギーレベル低減テスト(ELRT)を実行してもよい。このようなELRTテストを実行する典型的な間隔には、一日一回、週一回、月一回、または他の任意の適切な間隔が含まれる。別の実施形態において、装置はELRTテストをトリガ事象に基づいて、例えば無視された通信試行、温度変化、電圧変化、または一つ以上の治療の送達についての閾値量の検出時に実行してもよい。第一装置は例えば、通常、第二装置に一つ以上の通信パルスに対する応答を生じさせる通信パルスを送信することができる。第一装置は、第一装置が第二装置からの応答を受信することなく通信を発行した回数をカウントすることができる。カウントが閾値量に達した後、第一装置は第二装置にトリガを与えて、通信パルスELRTテストを実行させることができる。このような実施形態において、第一装置は代替の通信方法を用いて第二装置にトリガを通信するか、第二装置にトリガを通信する前に、通信パルスの一つ以上のパラメータを調整する(例えば、電圧閾値を高いレベルに増加させる)ことができる。前述のものに加えて、いくつかの場合において、トリガ事象には、装置パラメータ(例えばペーシングレート)の変化、患者の活動の変化(例えば血行動態の変化)、患者の姿勢の変化、検出された患者の事象(例えば除細動ショック)、通信パラメータ(例えば周波数)の変化等の他の事象が含まれ得る。装置はELRTテストを移植時、定期的なタイミング、およびトリガ事象時の少なくとも一つにおいて実行することができる。
【0095】
図12は、通信パルスの様々な特徴を含む、例示的な通信パルスの一実施形態を示している。図12の実施形態において、通信パルス1202は、正極性電圧振幅1204、負極性電圧振幅1206、正パルス幅1208、負パルス幅1210、および総パルス幅1212を有する二相通信パルスである。通信パルス1202は、装置が使用可能な通信パルスの単なる一例であるとして解釈されるべきである。別の例示的な通信パルスは、正の極性または負の極性のいずれかのみを有する単相性であり、任意の適切な形態を有することができる。また、少なくともいくつかの実施形態において、必要に応じて、正パルス幅1208および負パルス幅1210の間に期間を設けることもできる。
【0096】
通信パルス1202は総エネルギーレベルを有しており、通信パルス1202の総エネルギーレベルは、通信パルス1202の振幅、パルス幅、および形態(または形状)等の通信パルス1202のパラメータに関連していてもよい。簡略化のため、上記実施形態は、通信パルス1202の振幅およびパルス幅の少なくとも一方を変更することによって通信パルス1202のエネルギーを変化させることに焦点を当てていてもよいが、別の実施形態において、通信パルス1202の形態、または送達装置が通信パルス1202を送達する特定のベクトルを変更することによって通信パルス1202のエネルギーレベルを変化させることもできる。
【0097】
LCP402またはS−ICDのような装置が通信パルスを送達する時、通信パルスは送達時において第一エネルギーレベルを有しているであろう。伝導通信が使用される場合、通信パルスが患者の組織を通って進むにつれて、通信パルスは減衰し、より低い第二エネルギーレベルで受信装置に到達するであろう。従って、通信パルスが受信装置に到達した時に、受信装置が通信パルスを通信パルスとして認識し、ノイズから区別することができるほど十分大きなエネルギーを通信パルスが依然として有していることとなるように、送達装置は、送達時の通信パルスのエネルギーレベルが十分大きいものであることを保証する必要がある。図6図9の実施形態において、これは通信パルスが受信装置のMCRTよりも高い電圧レベルを有する必要があることを意味するであろう。しかしながら、送達装置が受信装置のMCRTよりも高いエネルギーレベルで通信パルスを送達する場合、通信パルスの生成の際、典型的にはバッテリまたは他のエネルギー貯蔵モジュールのような有限のエネルギー源に貯蔵されたエネルギーが消費されるため、送達装置は必要とされるよりも多くの貯蔵エネルギーを使用する可能性がある。従って、通信パルスELRTテストを実行することによって、装置は通信パルスを生成するために使用されるエネルギーの量を削減することにより、通信中に使用されるエネルギーの量を削減することができる。
【0098】
装置、例えばLCP402は、比較的高いエネルギーレベルでパルスを送達することによって通信パルスELRTテストを開始することができる。送達されるパルスは、図12に関連して示されたような通信パルス、または通信パルス1202と同様の特徴を有するが、受信装置に情報を伝達することはできないテストパルスとすることができる。図12の実施形態において、これはLCP402が所定の期間中に一つ以上のパルス1202の第一シーケンスを送達することができ、パルスは比較的高い正極性電圧振幅1204および負極性電圧振幅1206の少なくとも一方を有するということを意味し得る。受信装置、例えばS−ICDは、(例えば、エネルギーまたは他の閾値を交差した信号の数に留意することによって)所定の期間中にS−ICDが通信パルスとして判定した信号の数をカウントすることができる。所定の期間は、心拍間の心臓サイクルの一部、例えばT波の後で次のP波の前の期間であってもよい。別の実施形態において、所定の期間は、複数の心臓サイクルにまたがっていてもよい。例えば、所定の期間は、各期間が心拍間の心臓サイクルの一部である、複数の不連続な期間を含むことができる。
【0099】
通信パルスELRTテストにおいて、LCP402は、MCRTテストに関連して前述されたS−ICDと同様に、所定の期間中に規則的な間隔またはランダムな間隔で、設定された量のパルスを送達するように構成することができる。あるいは、LCP402は、所定の期間中に規則的な間隔またはランダムな間隔で、ランダムな、または有界乱数のパルスを送達するように構成することができる。いくつかの場合において、LCP402が通信パルスエネルギーレベル低減テスト中にパルスを送達するプロトコルは、S−ICDにも知らされている。従って、S−ICDは、通信パルスELRTテスト中にLCP402が送達するパルスのタイミングおよび数の少なくとも一方について知ることができる。あるいは、LCP402は通信パルスELRTテスト後にS−ICDに、LCP402が通信パルスELRTテスト中に送達したパルスの数を示す別個の通信を送信してもよい。
【0100】
送達されたパルスの数とS−ICDによって識別されたパルスの数とが許容可能であった場合、LCP402およびS−ICDは通信パルスELRTテストを繰り返すことができ、LCP402はより低いエネルギーレベルでパルスを送達する。前述のように、パルスのエネルギーレベルは、例えば通信パルス1202の正極性電圧振幅1204のような正極性電圧振幅に関連していても、例えば通信パルス1202の負極性電圧振幅1206のような負極性電圧振幅に関連していても、通信パルス1202のパルス幅1208および1210(または総パルス幅1212)のようなパルス幅に関連していてもよい。従って、より低いエネルギーレベルでパルスを生成するため、LCP402は、送達されるパルスの正極性電圧振幅、送達されるパルスの負極性電圧振幅、パルスのパルス幅、またはこれらのパラメータの任意の組み合わせを低減することができる。LCP402およびS−ICDはこのプロセスを、送達されたパルスの数とS−ICDによって識別されたパルスの数とが許容可能でなくなるまで繰り返すことができる。二つの数が許容可能でなくなると、LCP402は将来の通信のために使用する通信パルスのエネルギーレベルを、二つの数が許容可能であった最も低いエネルギーレベルと等しい値に(時には余裕分だけ加算して)設定することができる。例えば、LCP402は、二つの数が許容可能であった最も低いエネルギーレベルを有する送達パルスのパラメータと等しいパラメータで(時には余裕分だけ加算して)、将来の通信における通信パルスを生成することができる。テストの最初のシーケンスにおいて二つの数が許容可能でなかった場合、送達されるパルスのエネルギーレベルを低下させた後にプロセスを繰り返す代わりに、LCP402は送達されるパルスのエネルギーレベルを増加させることができる。このような状況において、送達されるパルスの最初のエネルギーレベルは、S−ICDのMCRTを満たすほど高くない場合がある。
【0101】
もちろん、通信パルスELRTテストについての上記説明は、LCP402およびS−ICDが通信パルスELRTテストを実行可能な単なる一つの方法にすぎない。別の実施形態において、LCP402は通信パルスエネルギーレベル低減テストを、比較的低いエネルギーレベルでパルスを送達することによって開始することもできる。送達されたパルスの数とS−ICDによって識別されたパルスの数とが当初許容可能でなかった場合、LCP402はパルスのエネルギーレベルを増加させて、送達シーケンスを繰り返すことができる。
【0102】
前述のように、通信パルスELRTテストは、将来の通信に使用される通信パルスのエネルギーレベルに安全マージンを加算することを含んでいてもよい。例えば、送達される通信パルスの減衰は、患者の呼吸サイクルまたは他の生物学的プロセスの関数に従って変化し得る。従って、LCP402が将来の通信で使用するための通信パルスのエネルギーレベルを決定した後であっても、そのエネルギーレベルで送達される通信パルスが、S−ICDのMCRTのエネルギーレベルに達しない場合がある。この変動性への対策として、LCP402は通信パルスELRTテストに基づいて決定された通信パルスのエネルギーレベルに、安全マージンを加算することができる。例えば、LCP402は将来の通信のため、通信パルスELRTテストによって決定されたエネルギーレベルよりも5パーセント、10パーセント、15パーセント、20パーセント、または他の任意の適切なパーセンテージレベルだけ高いエネルギーレベルの通信パルスを使用することができる。
【0103】
上記実施形態は、LCP402による通信の際に使用するための通信パルスのエネルギーレベルを設定する観点から説明された。いくつかの実施形態において、医療装置システムの各装置は、将来の通信のための通信パルスのエネルギーレベルを設定するため、同様のテストを実行することができる。しかしながら、各通信パルスELRTテストは、一対の装置間の通信において使用するための通信パルスに対して適切なエネルギーレベルを決定することができる。例えば、装置に到達した時に通信パルスが有しているエネルギーの量は、送達装置と受信装置との間の距離、装置間の組織の種類、患者の呼吸サイクル、および他の生理学的要因や他の因子についての関数を構成し得る。従って、単一の装置によって送達された通信パルスは、異なる複数の装置において異なるエネルギーレベルで到達する場合がある。各装置はその後、システムの互いの装置に対してMCRTおよび通信パルスELRTテストの少なくとも一方を実行することができる。各テストは、送達装置/受信装置の各対間の通信において使用するための通信パルスのエネルギーレベルを決定することができる。いくつかの実施形態において、各装置は各テストの結果、例えば特定の装置と通信パルスのエネルギーレベルとの間の関連性を格納することができる。その後、装置が他の装置に情報を通信する際、送達装置は、自身のメモリに格納された受信装置に関連するエネルギーレベルを有する通信パルスを送達することができる。装置が複数の装置と同時に通信する場合、送達装置は、受信装置に関連するエネルギーレベルのうち最も高いエネルギーレベルを有する通信パルスを使用することができる。別の実施形態において、装置は、システムにおける互いの装置についての通信パルスエネルギーレベル低減テストの実行後に、通信パルスについての最も高いエネルギーレベルのみを格納してもよい。これにより、エネルギーレベルの関連性を格納するために要求されるメモリ量を削減しつつも、送達装置がシステムの他の装置と通信可能であることを保証することができる。
【0104】
いくつかの医療装置システムは、MCRTテストおよび通信パルスELRTテストの両方を行うことができる。これらのシステムにおいて、装置はまず、適切な最小通信受信閾値(MCRT)を決定するためにMCRTテストを実行することができる。MCRTを適切なレベルに設定すると、まず通信パルスエネルギーレベルのフロアが確立される。いくつかの場合において、これらのMCRTテストは、移植時、スケジューリングされた時間、検出されたトリガ事象に応じたタイミング、および他の任意の適切な時間で実行することができる。MCRTテストの後、システムの装置は通信パルスELRTテストを実行することができる。これらの通信パルスELRTテストは、送達されて受信装置に受信される通信パルスのエネルギーレベルが受信装置のMCRTに近いが、依然としてこれよりも高くなるように、送達される通信パルスのエネルギーレベルを確立することができる。
【0105】
いくつかの追加の、または代替の実施形態において、装置は最大エネルギー閾値テストを行うことができる。最大エネルギー閾値テスト(MELT)は、装置が送達するように構成可能な通信パルスの最大エネルギーレベルを確立することができる。最大エネルギー閾値とは、最大エネルギー閾値を上回るエネルギーレベルを有する通信パルスの送達によって患者についての望ましくない刺激(例えば心臓の捕捉、筋肉の刺激、神経の刺激等)を引き起こし得る、エネルギーレベルの閾値であってもよい。他のテストと同様に、装置は定期的にMELTテストを実行することができる。MELTテストを実行する典型的な間隔には、一日一回、週一回、月一回、または他の任意の適切な間隔が含まれ得る。別の実施形態において、装置はMELTテストをトリガ事象に基づいて、例えば送達された通信パルスによって引き起こされた心臓捕捉事象の閾値量の検出時、除細動パルスの送達後、ATP治療の送達後、エネルギー貯蔵モジュールに現在貯蔵されているエネルギーの量について検出された閾値変化の後、または温度について検出された閾値変化の後に実行してもよい。例えば、通信パルスを送達する装置は、送達される通信パルスが心臓を捕捉するか否かを監視することができる。捕捉事象の閾値量が検出されると、装置はMELTテストを実行することができる。別の実施形態において、他の装置は捕捉事象を監視し、捕捉事象の閾値量の検出後に通信パルスを送達した装置にトリガを通信することができる。前述のものに加えて、いくつかの場合において、トリガ事象には、装置パラメータ(例えばペーシングレート)の変化、患者の活動の変化(例えば血行動態の変化)、患者の姿勢の変化、検出された患者の事象(例えば除細動ショック)、通信パラメータ(例えば周波数)の変化等の他の事象が含まれ得る。いくつかの場合において、装置はMELTテストを移植時、定期的なタイミング、およびトリガ事象時の少なくとも一つにおいて実行することができる。
【0106】
いくつかの実施形態において、装置の一つ以上は、心臓が一つ以上の通信パルスによって捕捉されたか否かを判定するため、誘発される応答を監視することができる。代替的または追加的に、装置の一つ以上は、内因性事象の消失または遅延を監視することができる。心臓が捕捉されたか否かを判定するための他の方法は、その全体が参照として本明細書に組み込まれた、「複数の通信モードを有する医療装置システムおよび方法(Medical Device Systems and Methods with Multiple Communication Modes)」と題される2014年8月7日出願の米国仮特許出願第62/034494号(BSCファイル番号:14−0109PV01、STW:1001.3572100)を参照されたい。開示された一つ以上の方法に基づいて、装置によって送達された通信パルスが心臓を捕捉したと装置が判定した場合、装置はMELTテストを実行することができる。
【0107】
望ましくない刺激の例として本明細書では心臓の捕捉が用いられているが、望ましくない刺激には、望ましくない神経または筋肉の刺激のような、任意の適切な望ましくない刺激事象が含まれ得ると考えられる。例えば、LCP402において加速度計等を使用することによって、通信パルスによって横隔膜神経についての望ましくない刺激が引き起こされたことによる横隔膜の動きまたは望ましくないしゃっくりを検出することができる。このような実施形態において、望ましくない神経または筋肉の刺激はLCP402を移動させ、これに伴って加速度計を移動させ得るため、通信パルスを送達した後の時間ウィンドウにおける加速度計の動きは、望ましくない刺激を示し得る。
【0108】
MELTテストを実行する際、LCP402またはS−CIDのような装置は、心臓の捕捉をもたらすパルス(例えば、通信パルスまたはテストパルス)についてのパラメータの複数の組み合わせを決定し、心臓についての複数の捕捉閾値を決定することができる。決定されたパラメータの複数の組み合わせを用いて、LCP402は、例えば一つ以上の回帰法を用いて、心臓の捕捉をもたらしたパラメータの組み合わせを表す曲線または関数を決定することができる。図6図9に示す実施形態について続けると、LCP402は伝導パルスを用いることができ、パルスのエネルギーレベルはパルスの電圧振幅およびパルス幅パラメータに関連し得る。図13は、ミリボルトおよびミリ秒の単位によるパルス振幅対パルス幅のグラフであり、このような曲線または関数がどのように見えるかについての例示的な実施形態を含む。曲線1302は心臓の捕捉をもたらし得るパルスのパラメータの組み合わせを表しており、例えば曲線1302は捕捉閾値曲線を表すことができる。曲線1302はさらに、患者の組織に送達された時に患者の心臓の捕捉をもたらし得る伝導パルスのパラメータの組み合わせと、患者の心臓の捕捉をもたらし得ないものとの間の分割線を表している。例えば、曲線1302の上または上部で曲線1302の右側にあるパルス振幅およびパルス幅についての組み合わせはいずれも、捕捉をもたらすであろう。曲線1302の左下部にあるパルス振幅およびパルス幅についての組み合わせはいずれも、捕捉をもたらさないであろう。この領域は、安全ゾーン1310として定義される。
【0109】
いくつかの実施形態において、LCP402は、安全マージン分だけ曲線1302に関連してシフトされた曲線を決定することができる。シフトされた曲線は、曲線1308で表される。このような実施形態において、安全ゾーン1310は、シフトされた曲線1308の左下部にあるパルス振幅およびパルス幅の組み合わせとすることができる。LCP402が曲線1302をシフトさせる量は、安全マージン1306で表される。安全マージン1306は、曲線1302が時間または他の因子の関数として変化する場合、曲線1302が曲線1308の左下部にドリフトしない、または統計的にドリフトしないであろうような量を表すことができる。曲線1308は、LCP402の最大エネルギー閾値と考えることができる。LCP402は、曲線1308の上または上部で曲線1308の右側にあるパラメータの組み合わせでは、伝導通信パルスを送達しないように構成されていてもよい。いくつかの実施形態において、曲線1302および曲線1308の少なくとも一方は、望ましくない刺激閾値とみなすことができる。
【0110】
MELTテストの間、LCP402は患者の組織に、心臓の捕捉を引き起こす通信パルスを送達することができる。従って、LCP402が電気刺激治療を提供している期間中のいくつかのMELTテストにおいて、LCP402はペーシングパルスの代わりに通信パルスを送達することができる。例えば送達された通信パルスに続く期間中に誘発された応答が検出されなかったことによって、送達された通信パルスが心臓の捕捉を引き起こさなかったとLCP402が判定した場合、LCP402はその後、安全ペーシングパルスを送達することができる。ペーシングパルスと同様のものとすることができる安全ペーシングパルスは、心臓の捕捉を確実に引き起こすように設計される。このように、LCP402は患者の心臓を捕捉する通信パルスを用い、追加のパルス、例えば安全ペーシングパルスのみを用いることによって、送達された通信パルスが心臓を捕捉できなかった場合、通信パルスおよびペーシングパルスの両方を送達するよりも、エネルギーを節約することができる。また、安全通信パルスのみを用いることによって、LCP402は、通信パルスおよびペーシングパルスの両方から心臓の捕捉が複数引き起こされるという問題を回避することができる。
【0111】
LCP402が最大エネルギー閾値を決定する実施形態において、LCP402はさらに、最大エネルギー閾値と、通信パルスエネルギーレベル低減テストに基づいて決定されたエネルギーレベルとを比較することができる。例えば、図12の実施形態において、LCP402は、LCP402が他の装置と通信する時に患者の組織に送達可能な通信パルスについての、一つ以上の電圧振幅パラメータの値および一つ以上のパルス幅パラメータの値の少なくとも一方を決定する。通信パルスのパラメータについて決定された組み合わせの一つ以上が曲線1308の上または上部かつ右側にあるとLCP402が判定した場合、LCP402は一つ以上のアクションをとることができる。例えば、LCP402は、関連付けられた一つ以上の電圧振幅パラメータおよび一つ以上のパルス幅パラメータの少なくとも一方が曲線1308の上または上部かつ右側にある任意の装置と通信するための通信パルスの送達を停止することができる。別の実施形態において、LCP402は、「複数の通信モードを有する医療装置システムおよび方法(Medical Device Systems and Methods with Multiple Communication Modes)」と題される2014年8月7日出願の米国仮特許出願第62/034494号(BSCファイル番号:14−0109PV01、STW:1001.3572100)に記載されるような、LCP402の通信機能を制限し得る安全通信モードに入ることができる。通常の通信モードにある時、LCP402は、各心臓サイクル中の一つ以上の第一通信ウィンドウ内において通信パルスを送達するように構成することができる。安全通信モードにおいて、LCP402は、各心臓サイクル中の一つ以上の第二通信ウィンドウ内において通信パルスを送達するように構成することができる。一つ以上の第二通信ウィンドウは、一つ以上の第一通信ウィンドウよりも短くすることができる。代替的または追加的に、一つ以上の第二通信ウィンドウは、心臓サイクルにおいて一つ以上の第一通信ウィンドウとは異なる時間に生じるものとすることもできる。
【0112】
追加的または代替的に、任意の前述の実施形態は、開示されたテストを装置の利用可能な各ベクトルに対して実行することを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、システムの一つ以上の装置は異なるベクトルを介して通信パルスの送達および受信の少なくとも一方を行うことができ、ベクトルは少なくとも二つの電極の組み合わせである。ベクトルは、装置上に見出される移植された電極または経皮的な電極の組み合わせのうちの二つを含むことができる。例えば、装置は二つよりも多くの電極を含んでいてもよく、従って、電極の異なる組み合わせを介して通信パルスの送達および受信の少なくとも一方を行ってもよい。装置について利用可能な受信ベクトルはそれぞれ、異なるレベルのノイズまたは他の信号を受信する場合がある。また、通信パルスのエネルギーレベルまたは通信パルスの減衰レベルは、装置が通信パルスを送達する特定のベクトルによる影響を受ける場合がある。従って、いくつかの実施形態において、装置はMCRTテスト、ELRテスト、またはMELTテストを、装置の利用可能な各ベクトルに対して実行することができる。装置はその後、適切な受信ベクトルおよび適切な送達ベクトルを選択することができる。適切な受信ベクトルは、最も低いMCRT値を有するベクトルであってもよい。適切な送達ベクトルは、他のベクトルのすべてについて決定されたすべての通信パルスのうち、最も低いエネルギーレベルを有していた、将来の通信に使用するための通信パルスを装置が決定したベクトルであってもよい。いくつかのELRテストの実施形態において、通信パルスのパラメータのいずれかを調整する代わりに、受信ベクトルおよび送達ベクトルの少なくとも一方を選択することができる。
【0113】
図14は、図1および図2に示すような植込み型医療装置、または図4および図5に示すような医療装置システムによって実行可能な例示的な方法のフロー図である。図14の方法はLCP100およびS−ICDに関連して説明されるが、図14の例示的な方法は、任意の適切な医療装置または医療装置システムを用いて実行されてもよい。図14は、例示的なMELTテストの一つを示している。
【0114】
図14に示す方法によると、医療装置は、医療装置がLCP、ICP、ICD、S−ICDである場合等には患者内に移植されてもよく、医療装置が外部医療装置である場合等には患者の近くに配置されてもよい。1402に示すように、医療装置は患者の組織に複数の通信パルスを送達するように構成することができ、各通信パルスはある量のエネルギーを有しており、送達される各通信パルスについて、送達される通信パルスが患者についての望ましくない刺激を引き起こすか否かを判定することができる。いくつかの場合において、通信パルスを送達した医療装置は、送達された通信パルスが患者についての望ましくない刺激を引き起こすか否かを判定することができる。別の場合において、受信医療装置またはいくつかの他の医療装置(例えば加速度計、音響センサ等)のような他の医療装置は、送達された通信パルスが患者についての望ましくない刺激を引き起こすか否かを判定することができる。1404に示すように、医療装置は、通信パルスについての望ましくない刺激の閾値に対応するエネルギーの量を特定することができるように、複数の通信パルスのエネルギーの量を経時的に変化させることができる。1406に示すように、医療装置はその後、特定された望ましくない刺激の閾値を下回る、後続の通信パルスについての最大エネルギー値を設定することができる。
【0115】
図15は、図1および図2に示すような植込み型医療装置、または図4および図5に示すような医療装置システムによって実行可能な例示的な方法のフロー図である。図15の方法はLCP100およびS−ICDに関連して説明されるが、図15の例示的な方法は、任意の適切な医療装置または医療装置システムを用いて実行されてもよい。
【0116】
図15に示す例示的な方法によると、第一医療装置は、第一医療装置がICP、ICD、S−ICDである場合等には患者内に移植されてもよく、第一医療装置が外部医療装置である場合等には患者の近くに配置されてもよい。第一医療装置は、LCP100のような第二医療装置とともに医療装置システムの一部とすることができる。このような医療装置システムにおいて、1502に示すように、第一医療装置は一つ以上の第一通信パルスを送達することができ、各第一通信パルスは第一量のエネルギーを有している。1504に示すように、第二医療装置はその後、第二医療装置によって受信された一つ以上の第一通信パルスの数を判定することができる。1506に示すように、第一医療装置はその後、一つ以上の第二通信パルスを送達することができ、各第二通信パルスは第二量のエネルギーを有している。1508に示すように、第二医療装置はその後、第二医療装置によって受信された一つ以上の第二通信パルスの数を判定することができる。最後に、1510に示すように、第一医療装置は、第二医療装置によって受信された一つ以上の第一通信パルスの数と、第二医療装置によって受信された一つ以上の第二通信パルスの数とに基づいて、その後に第一医療装置が第二医療装置と通信する際の最小通信パルスエネルギーを調整することができる。もちろん、別の実施形態において、LCP100は第一医療装置であってもよく、第二医療装置はICP、ICD、S−ICD、または外部医療装置のいずれかであってもよい。
【0117】
図16は、図1および図2に示すような植込み型医療装置、または図4および図5に示すような医療装置システムによって実行可能な例示的な方法のフロー図である。図16の方法はLCP100およびS−ICDに関連して説明されるが、図16の例示的な方法は、任意の適切な医療装置または医療装置システムを用いて実行されてもよい。
【0118】
図16に示す例示的な方法によると、医療装置は、第一医療装置がLCP、ICP、ICD、S−ICDである場合等には患者内に移植されてもよく、第一医療装置が外部医療装置である場合等には患者の近くに配置されてもよい。医療装置は、他の装置からの通信信号を受信した時に使用するための最小受信閾値を決定するように動作することができる。例えば、1602に示すように、医療装置は最小通信受信閾値を第一レベルに設定することができる。1604に示すように、医療装置はその後、第一レベルにおける最小通信受信閾値で検出された通信信号の数を判定することができる。通信信号は例えば、他の装置によって患者の組織に送達することができ、医療装置によって受信される。他の医療装置は例えば、LCP、ICP、ICD、S−ICD、または外部医療装置とすることができる。1606に示すように、医療装置はその後、最小通信受信閾値を第二レベルに変更することができ、第二レベルは第一レベルとは異なっている。次に、1608に示すように、医療装置は、第二レベルにおける最小通信受信閾値で検出された通信信号の数を判定することができる。ここでも、通信信号は他の医療装置によって送達することができる。1610に示すように、医療装置はその後、検出された通信信号について判定された数に基づいて、最小通信受信閾値についての値を決定する。最後に、1612に示すように、医療装置は最小通信受信閾値を決定された値に設定することができ、1614に示すように、医療装置と他の医療装置との間のその後の通信において、設定された最小通信受信閾値を使用することができる。
【0119】
当業者であれば、本願が本明細書に記載されて企図されている特定の実施形態以外の様々な形態で実現可能であることを認識するであろう。例えば、本明細書で説明するように、様々な実施形態が、様々な機能を実行するとして説明された一つ以上のモジュールを含む。しかしながら、別の実施形態は、記載された機能を本明細書に記載されたよりも多くのモジュールに分割する、追加のモジュールを含んでいてもよい。また、別の実施形態は、記載された機能をより少ないモジュールに統合することもできる。従って、添付の特許請求の範囲に記載されている本願の範囲および意図から逸脱することなく、形態および詳細についての変更を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】