(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-532225(P2017-532225A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(54)【発明の名称】切込形成時のウォールソーシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
B28D 1/04 20060101AFI20171006BHJP
B23D 45/02 20060101ALI20171006BHJP
【FI】
B28D1/04 B
B28D1/04 A
B23D45/02 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2017-513086(P2017-513086)
(86)(22)【出願日】2015年9月2日
(85)【翻訳文提出日】2017年4月24日
(86)【国際出願番号】EP2015069984
(87)【国際公開番号】WO2016037906
(87)【国際公開日】20160317
(31)【優先権主張番号】14003102.2
(32)【優先日】2014年9月8日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】カナイダー, ヴィルフリート
(72)【発明者】
【氏名】シュテフィク, ドラガン
(72)【発明者】
【氏名】ベロイター, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】リッコ, ペーター
【テーマコード(参考)】
3C040
3C069
【Fターム(参考)】
3C040AA01
3C040BB03
3C040DD01
3C040EE01
3C040JJ03
3C069AA01
3C069BA04
3C069BC02
3C069BC04
3C069CA10
3C069DA05
3C069EA01
(57)【要約】
本発明は、加工対象物に対し、第1端点及び第2端点の間に切込部を形成する際のウォールソーシステムの制御方法に関する。ウォールソーシステムは、ソーヘッド、揺動可能なソーアーム、ソーブレード、及びブレードガードを有したウォールソーを備える。切込作業は複数のメイン切込工程で実行され、メイン切込処理の開始前に、各メイン切込工程のパラメータ(メイン切込角)が設定される。ソーヘッドの移動は、それぞれの端点において、次のメイン切込工程用のメイン切込角にソーアームを揺動後の、端点側のウォールソーの境界が端点に一致するように制御される。非制限端点の場合、ウォールソーの境界はソーブレードの上方出口点により形成される。端点に障害物がある場合、ウォールソーの境界は、ブレードガードを用いなければ、ソーブレードのブレード縁部により、ブレードガードを用いれば、ブレードガードのブレードガード縁部により形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内軌道(11)と、ウォールソー(12)とを備え、前記ウォールソー(12)は、ソーヘッド(14)と、前記案内軌道(11)に沿った移動方向(28)に前記ソーヘッド(14)を移動させる動力式の駆動ユニット(15)と、前記ソーヘッド(14)に設けられて揺動軸(23)周りに揺動可能なソーアーム(17)に取り付けられ、回転軸(19)周りに回転駆動される少なくとも1つのソーブレード(16)と、厚さ(d)を有した加工対象物(24)に対し、第1端点(E1)と第2端点(E2)との間で最終深さ(T)を有した切込部(51)を形成する際に前記ソーブレード(16)を囲う、少なくとも1つの着脱可能なブレードガード(21)とを有するウォールソーシステム(10)の制御方法であって、
前記ウォールソー(12)のコントロールユニット(29)によって実行される切込制御の開始前に、前記ソーブレード(16)のブレード径(D)と、前記移動方向(28)における前記第1端点(E1)及び前記第2端点(E2)の位置と、前記切込部(51)の前記最終深さ(T)と、mを2以上としてm個のメイン切込工程によるメイン切込処理の手順とを少なくとも設定し、前記メイン切込処理が、前記ソーアーム(17)の揺動角を第1メイン切込角(α1)とし、使用ソーブレードの径を第1ブレード径(D1)とする第1メイン切込工程と、前記第1メイン切込工程の後に行われ、前記ソーアーム(17)の揺動角を第2メイン切込角(α2)とし、前記使用ソーブレードの径を第2ブレード径(D2)とする第2メイン切込工程とを少なくとも備え、
前記コントロールユニット(29)によって実行される前記切込制御の際に、
前記ソーアーム(17)を、負の揺動方向(54)に向けて、負の前記第1メイン切込角(−α1)に揺動し、
前記ソーヘッド(14)を、前記第2端点(E2)の方に向かう前進方向(56)に移動し、このとき前記ソーアーム(17)が引かれる状態となる
ウォールソーシステムの制御方法において、
前記コントロールユニット(29)によって実行される前記切込制御の際、前記第2端点(E2)側にある、前記ウォールソー(12)の第2境界(59,62,72)の位置が、前記第2端点(E2)の位置に一致するように、前記ソーヘッド(14)を移動し、
前記ウォールソー(12)の前記第2境界(59,62,72)は、
前記第2端点(E2)が障害物のない非制限端点の場合、前記加工対象物(24)の表面(53)における前記第2端点(E2)側の、前記使用ソーブレードの第2上方出口点(59)によって形成され、
前記第2端点(E2)に障害物があって、前記ブレードガード(21)を用いずに切込作業を行う場合、前記第2端点(E2)側の、前記使用ソーブレードの第2ブレード縁部(62)によって形成され、
前記第2端点(E2)に障害物があって、前記ブレードガード(21)を用いて切込作業を行う場合、前記第2端点(E2)側の、使用ブレードガードの第2ブレードガード縁部(72)によって形成される
ことを特徴とする制御方法。
【請求項2】
前記ウォールソー(12)の前記コントロールユニット(29)によって実行される前記切込制御の開始前に、前記ソーアーム(17)の前記揺動軸(23)と前記ソーブレード(16)の前記回転軸(19)との距離として規定される前記ソーアーム(17)のアーム長(δ)、及び前記揺動軸(23)と前記加工対象物(24)の前記表面(53)との距離(Δ)を設定することを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記切込制御の開始前に、前記第1メイン切込工程で用いる前記ブレードガード(21)に関する第1ブレードガード幅(B1)と、前記第2メイン切込工程で用いる前記ブレードガード(21)に関する第2ブレードガード幅(B2)とを定め、
前記第1及び第2ブレードガード幅(B1,B2)のそれぞれは、前記回転軸(19)から第1ブレードガード縁部(71)までの第1距離(B1a,B2a)と、前記回転軸(19)から前記第2ブレードガード縁部(72)までの第2距離(B1b,B2b)とからなる
ことを特徴とする請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記揺動軸(23)が前記第2端点(E2)に対し、
[h1・(D1−h1)]1/2+δ・sin(−α1)
で表される距離を有し、
h1=h(−α1)=D1/2−Δ−δ・cos(−α1)
が、前記負の第1メイン切込角(−α1)とするときの、前記使用ソーブレードの前記加工対象物(24)内への切込深さを示す場合、前記使用ソーブレードの前記第2上方出口点(59)の位置が前記第2端点(E2)の位置に一致し、
前記揺動軸(23)が前記第2端点(E2)に対し、
D1/2+δ・sin(−α1)
で表される距離を有する場合、前記使用ソーブレードの第2ブレード縁部(62)の位置が前記第2端点(E2)の位置に一致し、
前記揺動軸(23)が前記第2端点(E2)に対し、
B1b+δ・sin(−α1)
で表される距離を有する場合、前記使用ブレードガードの前記第2ブレードガード縁部(72)の位置が前記第2端点(E2)の位置に一致する
ことを特徴とする請求項2または3に記載の制御方法。
【請求項5】
前記ソーアーム(17)を、負の前記第2メイン切込角(−α2)に揺動した後の、前記ウォールソー(12)の前記第2境界(59,62,72)の位置が、前記第2端点(E2)の位置に一致するように、前記ウォールソー(12)を、前記前進方向(56)とは逆となる後進方向(57)に移動することを特徴とする請求項4に記載の制御方法。
【請求項6】
前記ソーアーム(17)を、前記負の第2メイン切込角(−α2)に揺動した後で、
前記揺動軸(23)が前記第2端点(E2)に対し、
[h2・(D2−h2)]1/2+δ・sin(−α2)
で表される距離を有し、
h2=h(−α2)=D2/2−Δ−δ・cos(−α2)
が、前記負の第2メイン切込角(−α2)とするときの、前記使用ソーブレードの前記加工対象物(24)内への切込深さを示す場合、前記使用ソーブレードの前記第2上方出口点(59)の位置が前記第2端点(E2)の位置に一致し、
前記揺動軸(23)が前記第2端点(E2)に対し、
D2/2+δ・sin(−α2)
で表される距離を有する場合、前記使用ソーブレードの前記第2ブレード縁部(62)の位置が前記第2端点(E2)の位置に一致し、
前記揺動軸(23)が前記第2端点(E2)に対し、
B2b+δ・sin(−α2)
で表される距離を有する場合、前記使用ブレードガードの前記第2ブレードガード縁部(72)の位置が前記第2端点(E2)の位置に一致する
ことを特徴とする請求項5に記載の制御方法。
【請求項7】
前記切込制御の際、前記第1端点(E1)側にある、前記ウォールソー(12)の第1境界(58,61,71)の位置が、前記第1端点(E1)の位置と一致するように、前記ソーヘッド(14)を移動し、
前記第1境界(58,61,71)は、
前記第1端点(E1)が障害物のない非制限端点の場合、前記加工対象物(24)の前記表面(53)における前記第1端点(E1)側の、前記使用ソーブレードの第1上方出口点(58)によって形成され、
前記第1端点(E1)に障害物があって、前記ブレードガード(21)を用いずに切込作業を行う場合、前記第1端点(E1)側の、前記使用ソーブレードの第1ブレード縁部(61)によって形成され、
前記第1端点(E1)に障害物があって、前記ブレードガード(21)を用いて切込作業を行う場合、前記第1端点(E1)側の、前記使用ブレードガードの第1ブレードガード縁部(71)によって形成される
ことを特徴とする請求項6に記載の制御方法。
【請求項8】
前記メイン切込処理は、前記第2メイン切込工程の後に行われる工程として、前記ソーアーム(17)の揺動角を第3メイン切込角(α3)、前記使用ソーブレードの径を第3ブレード径(D3)とし、前記使用ブレードガードの幅を、第1距離(B3a)及び第2距離(B3b)からなる第3ブレードガード幅(B3)とする第3メイン切込工程を備え、
前記第3メイン切込工程では、前記ソーアーム(17)を引かれる状態とし、前記ソーヘッド(14)を前記前進方向(56)に移動する
ことを特徴とする請求項7に記載の制御方法。
【請求項9】
前記ソーアーム(17)を、負の前記第3メイン切込角(−α3)に揺動した後の、前記ウォールソー(12)の前記第1境界(58,61,71)の位置が、前記第1端点(E1)の位置に一致するように、前記ソーヘッド(14)を前記前進方向(56)に移動することを特徴とする請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記ソーアーム(17)を、前記負の第3メイン切込角(−α3)に揺動した後で、
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
[h3・(D3−h3)]1/2−δ・sin(−α3)
で表される距離を有し、
h3=h(−α3)=D3/2−Δ−δ・cos(−α3)
が、前記負の第3メイン切込角(−α3)とするときの、前記使用ソーブレードの前記加工対象物(24)内への切込深さを示す場合、前記使用ソーブレードの前記第1上方出口点(58)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致し、
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
D3/2−δ・sin(−α3)
で表される距離を有する場合、前記使用ソーブレードの前記第1ブレード縁部(61)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致し、
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
B3a−δ・sin(−α3)
で表される距離を有する場合、前記使用ブレードガードの前記第1ブレードガード縁部(71)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致する
ことを特徴とする請求項9に記載の制御方法。
【請求項11】
前記第1及び第2メイン切込工程は、1つのソーブレード(16)と1つのブレードガード(21)とを用いて行われることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の制御方法。
【請求項12】
前記第1メイン切込工程は、第1のブレード径(D.1)を有した第1ソーブレード(16.1)、及び第1のブレードガード幅(B.1)を有した第1ブレードガード(21.1)を用いて行い、
前記第2メイン切込工程は、第2のブレード径(D.2)を有した第2ソーブレード(16.2)、及び第2のブレードガード幅(B.2)を有した第2ブレードガード(21.2)を用いて行う
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の制御方法。
【請求項13】
前記メイン切込処理の前記第1メイン切込工程は、予備切込工程であって、前記ソーヘッド(14)は、前記コントロールユニット(19)によって実行される前記切込制御の開始後に、前記移動方向(28)に沿って開始位置(XStart)に配置され、
前記開始位置(XStart)では、前記ソーアーム(17)を、前記負の第1メイン切込角(−α1)に揺動した後の、前記第1端点(E1)側にある、前記ウォールソー(12)の第1境界(58,61,71)の位置が、前記第1端点(E1)の位置に一致し、
前記ウォールソー(12)の前記第1境界(58,61,71)は、
前記第1端点(E1)が障害物のない非制限端点の場合、前記加工対象物(24)の前記表面(53)における、前記使用ソーブレードの第1上方出口点(58)によって形成され、
前記第1端点(E1)に障害物があって、前記ブレードガード(21)を用いずに切込作業を行う場合、前記使用ソーブレードの第1ブレード縁部(61)によって形成され、
前記第1端点(E1)に障害物があって、前記ブレードガード(21)を用いて切込作業を行う場合、前記使用ブレードガードの第1ブレードガード縁部(71)によって形成される
ことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の制御方法。
【請求項14】
前記開始位置(XStart)において、
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
[h1・(D1−h1)]1/2−δ・sin(−α1)
で表される距離を有し、
h1=h(−α1,D1)=D1/2−Δ−δ・cos(−α1)
が、前記負の第1メイン切込角(−α1)とするときの、前記使用ソーブレードの前記加工対象物(24)内への切込深さを示す場合、前記使用ソーブレードの前記第1上方出口点(58)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致し、
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
D1/2−δ・sin(−α1)
で表される距離を有する場合、前記使用ソーブレードの前記第1ブレード縁部(61)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致し、
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
B1a−δ・sin(−α1)
で表される距離を有する場合、前記使用ブレードガードの前記第1ブレードガード縁部(71)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致する
ことを特徴とする請求項13に記載の制御方法。
【請求項15】
前記ソーアーム(17)を、前記負の第1メイン切込角(−α1)に揺動した状態で、前記ソーヘッド(14)を、前記前進方向(56)に移動することを特徴とする請求項14に記載の制御方法。
【請求項16】
前記メイン切込処理は、前記第1メイン切込工程の前に行われる工程として、前記ソーアーム(17)の揺動角を零番目メイン切込角(α0)、前記使用ソーブレードの径を零番目ブレード径(D0)とし、前記使用ブレードガードの幅を、第1距離(B0a)及び第2距離(B0b)からなる零番目ブレードガード幅(B0)とする予備切込工程を備え、
前記予備切込工程では、前記ソーアーム(17)を引かれる状態とし、前記ソーヘッド(14)を後進方向(57)に移動する
ことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の制御方法。
【請求項17】
前記コントロールユニット(29)によって実行される前記切込制御の開始後、前記予備切込工程を行うために、前記ソーヘッド(14)を前記移動方向(28)に沿って開始位置(XStart)に配置し、
前記開始位置(XStart)では、前記ソーアーム(17)を正の前記零番目メイン切込角(+α0)に揺動した後の、前記第2端点(E2)側にある、前記ウォールソー(12)の前記第2境界(59,62,72)の位置が、前記第2端点(E2)の位置に一致する
ことを特徴とする請求項16に記載の制御方法。
【請求項18】
前記ソーアーム(17)を、前記正の零番目メイン切込角(+α0)に揺動した後で、
前記揺動軸(23)が前記第2端点(E2)に対し、
[h0・(D0−h0)]1/2+δ・sin(+α0)
で表される距離を有し、
h0=h(+α0,D0)=D0/2−Δ−δ・cos(+α0)
が、前記正の零番目メイン切込角(+α0)とするときの、前記使用ソーブレードの前記加工対象物(24)内への切込深さを示す場合、前記使用ソーブレードの前記第2上方出口点(59)の位置が前記第2端点(E2)の位置に一致し、
前記揺動軸(23)が前記第2端点(E2)に対し、
D0/2+δ・sin(+α0)
で表される距離を有する場合、前記使用ソーブレードの前記第2ブレード縁部(62)の位置が前記第2端点(E2)の位置に一致し、
前記揺動軸(23)が前記第2端点(E2)に対し、
B0b+δ・sin(+α0)
で表される距離を有する場合、前記使用ブレードガードの前記第2ブレードガード縁部(72)の位置が前記第2端点(E2)の位置に一致する
ことを特徴とする請求項17に記載の制御方法。
【請求項19】
前記ソーアーム(17)を、前記正の零番目メイン切込角(+α0)に揺動した状態で、前記ソーヘッド(14)を、前記後進方向(56)に移動することを特徴とする請求項18に記載の制御方法。
【請求項20】
前記ウォールソー(12)の第1境界(58,61,71)の位置が、前記第1端点(E1)の位置と一致するように、前記ソーヘッド(14)を移動し、
前記ウォールソー(12)の前記第1境界(58,61,71)は、
前記第1端点(E1)が障害物のない非制限端点の場合、前記加工対象物(24)の前記表面(53)における、前記使用ソーブレードの第1上方出口点(58)によって形成され、
前記第1端点(E1)に障害物があって、前記ブレードガード(21)を用いずに切込作業を行う場合、前記使用ソーブレードの第1ブレード縁部(61)によって形成され、
前記第1端点(E1)に障害物があって、前記ブレードガード(21)を用いて切込作業を行う場合、前記使用ブレードガードの第1ブレードガード縁部(71)によって形成される
ことを特徴とする請求項19に記載の制御方法。
【請求項21】
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
[h0・(D0−h0)]1/2−δ・sin(+α0)
で表される距離を有し、
h0=h(+α0,D0)=D0/2−Δ−δ・cos(+α0)
が、前記正の零番目メイン切込角(+α0)とするときの、前記使用ソーブレードの前記加工対象物(24)内への切込深さを示す場合、前記使用ソーブレードの前記第1上方出口点(58)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致し、
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
D0/2−δ・sin(+α0)
で表される距離を有する場合、前記使用ソーブレードの前記第1ブレード縁部(16)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致し、
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
B0a−δ・sin(+α0)
で表される距離を有する場合、前記使用ブレードガードの前記第1ブレードガード縁部(71)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致する
ことを特徴とする請求項20に記載の制御方法。
【請求項22】
前記ソーアーム(17)を負の前記零番目メイン切込角(−α0)に揺動した後の、前記ウォールソー(12)の第1境界(58,61,71)の位置が、前記第1端点(E1)の位置に一致するように、前記ソーヘッド(14)を移動し、
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
[h0・(D0−h0)]1/2−δ・sin(−α0)
で表される距離を有し、
h0=h(−α0,D0)=D0/2−Δ−δ・cos(−α0)
が、前記負の零番目メイン切込角(−α0)とするときの、前記使用ソーブレードの前記加工対象物(24)内への切込深さを示す場合、前記使用ソーブレードの第1上方出口点(58)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致し、
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
D0/2−δ・sin(−α0)
で表される距離を有する場合、前記使用ソーブレードの第1ブレード縁部(16)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致し、
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
B0a−δ・sin(−α0)
で表される距離を有する場合、前記使用ブレードガードの第1ブレードガード縁部(71)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致する
ことを特徴とする請求項19に記載の制御方法。
【請求項23】
前記ソーヘッド(14)を、少なくとも、
2・δ・|sin(−α0)|
の移動距離だけ前記前進方向(56)に移動し、
その後、前記ソーアーム(17)を前記負の第1メイン切込角(−α1)に揺動した後の、前記ウォールソー(12)の前記第1境界(58,61,71)の位置が、前記第1端点(E1)の位置に一致するように、前記ソーヘッド(14)の位置を定め、
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
[h1・(D1−h1)]1/2−δ・sin(−α1)
で表される距離を有し、
h1=h(−α1,D1)=D1/2−Δ−δ・cos(−α1)
が、前記第1ブレード径(D1)で、前記負の第1メイン切込角(−α1)とするときの、前記使用ソーブレードの前記加工対象物(24)内への切込深さを示す場合、前記使用ソーブレードの前記第1上方出口点(58)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致し、
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
D1/2+δ・sin(−α1)
で表される距離を有する場合、前記使用ソーブレードの前記第1ブレード縁部(61)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致し、
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
B1a+δ・sin(−α1)
で表される距離を有する場合、前記使用ブレードガードの前記第1ブレードガード縁部(71)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致する
ことを特徴とする請求項22に記載の制御方法。
【請求項24】
前記ソーアーム(17)を前記負の第1切込角(−α1)に揺動した後の、前記ウォールソー(12)の前記第1境界(58,61,71)の位置が、前記第1端点(E1)の位置に一致するように、前記ソーヘッド(14)を前記前進方向(56)に移動し、
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
[h1・(D1−h1)]1/2+δ・sin(−α1)
で表される距離を有し、
h1=h(−α1,D1)=D1/2−Δ−δ・cos(−α1)
が、前記第1ブレード径(D1)で、前記負の第1メイン切込角(−α1)とするときの、前記使用ソーブレードの前記加工対象物(24)内への切込深さを示す場合、前記使用ソーブレードの前記第1上方出口点(58)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致し、
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
D1/2−δ・sin(−α1)
で表される距離を有する場合、前記使用ソーブレードの前記第1ブレード縁部(61)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致し、
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
B1a−δ・sin(−α1)
で表される距離を有する場合、前記ブレードガード(21)の前記第1ブレードガード縁部(71)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致する
ことを特徴とする請求項22に記載の制御方法。
【請求項25】
前記ソーアーム(17)を前記負の第1切込角(−α1)に揺動した後の、前記ウォールソー(12)の第1境界(58,61,71)の位置が、前記第1端点(E1)の位置に一致するように、前記ソーヘッド(14)を移動し、
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
[h1・(D1−h1)]1/2−δ・sin(−α1)
で表される距離を有し、
h1=h(−α1,D1)=D1/2−Δ−δ・cos(−α1)
が、前記負の第1メイン切込角(−α1)とするときの、前記使用ソーブレードの前記加工対象物(24)内への切込深さを示す場合、前記使用ソーブレードの第1上方出口点(58)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致し、
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
D1/2−δ・sin(−α1)
で表される距離を有する場合、前記使用ソーブレードの第1ブレード縁部(61)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致し、
前記揺動軸(23)が前記第1端点(E1)に対し、
B1a−δ・sin(−α1)
で表される距離を有する場合、前記使用ブレードガードの第1ブレードガード縁部(71)の位置が前記第1端点(E1)の位置に一致する
ことを特徴とする請求項19に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の構成により切込作業を行う際の、ウォールソーシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第1端点と第2端点との間で加工対象物に切込作業を行う際の、ウォールソーシステムの制御方法は、特許文献1によって知られている。このウォールソーシステムは、案内軌道と、ソーヘッド、案内軌道に沿った移動方向にソーヘッドを移動させる動力式の駆動ユニット、及びソーヘッドのソーアームに取り付けられて回転用駆動モータにより回転軸周りに回転駆動される少なくとも1つのソーブレードを有したウォールソーとを備える。ソーアームは、揺動モータと揺動軸とを用いて揺動可能に構成される。揺動軸周りのソーブレードの揺動により、加工対象物に対するソーブレードの切込深さを変更する。動力式の駆動ユニットは、ガイドキャリッジと移動用駆動モータとを備え、ウォールソーがガイドキャリッジに取り付けられ、移動用駆動モータにより案内軌道に沿って移動する。ウォールソーシステムの作動を監視するため、揺動角センサと変位センサとを有したセンサ装置が設けられる。揺動角センサは、ソーアームの最新の揺動角を検出し、変位センサは、案内軌道上のソーヘッドの最新の位置を検出する。ソーアームの最新の揺動角の検出値、及びソーヘッドの最新の位置の検出値は、定期的にウォールソーのコントロールユニットに送信される。
【0003】
ウォールソーシステムの公知の制御方法は、準備段階と、コントロールユニットによる切込制御とに区分される。準備段階では、少なくとも、ソーブレードの径、移動方向における第1端点及び第2端点の位置、及び切込部の最終深さが、使用者によって設定され、追加しうるパラメータとしては、作業を行う加工対象物の素材や、埋め込まれている鉄筋の寸法がある。入力されたパラメータに基づき、コントロールユニットが、切込作業についての、いくつかのメイン切込工程からなるメイン切込処理の適切な手順を定め、このメイン切込処理は、ソーアームの揺動角を第1メイン切込角、使用ソーブレードの径を第1ブレード径とする第1メイン切込工程に加え、その後に行われる、ソーアームの揺動角を第2メイン切込角、使用ソーブレードの径を第1ブレード径とする第2メイン切込工程を備えている。
【0004】
切込制御を開始すると、ソーヘッドを開始位置に配置する。この開始位置では、ソーアームを、揺動軸周りに負の揺動方向に揺動し、揺動角を後進側に向かう負の第1メイン切込角とする。第2端点に向け案内軌道に沿って前進方向にソーヘッドを移動し、この作業の際に、ソーアームは引かれる状態となる。第2端点に達する前にソーヘッドを停止し、前進方向とは逆方向の後進方向に十分離れた状態までソーヘッドを戻す。負の揺動方向とは反対方向の正の揺動方向に向け、後進側に向かう負の第1メイン切込角から前進側に向かう正のメイン切込角にソーアームを揺動する。
【0005】
第1の状態では、負の第1メイン切込角から正の第1メイン切込角にソーアームを揺動し、第2端点に向けソーヘッドを前進方向に移動し、ソーアームは押される状態となる。第2端点に達すると移動方向を反転させ、第1端点に向けてソーヘッドを後進方向に移動し、ソーアームは引かれる状態となる。第1端点に達する前にソーヘッドを停止し、前進方向に十分離れた状態となるまでソーヘッドを戻す。ソーアームを正の第1メイン切込角から負の第1メイン切込角に揺動して、第1端点に向けソーヘッドを後進方向に移動し、ソーアームは押される状態となる。
【0006】
第2の状態では、ソーアームを負の第1メイン切込角から正の第2メイン切込角に揺動し、第2端点に向けソーヘッドを前進方向に移動し、ソーアームは押される状態となる。第2端点に達すると移動方向を反転させ、第1端点に向けてソーヘッドを後進方向に移動し、ソーアームは引かれる状態となる。
【0007】
第1端点に達する前にソーヘッドを停止し、前進方向に十分離れた状態までソーヘッドを戻す。ソーアームを正の第2メイン切込角から負のメイン切込角へと揺動し、第1端点に向け後進方向にソーヘッドを移動し、ソーアームは押される状態となる。第2のメイン切込工程が最終的なメイン切込作業である場合、負の第2メイン切込角にソーアームを揺動する。第3メイン切込角を用いて3度目の切込作業を行う場合は、正の第2メイン切込角から負の第3メイン切込角にソーアームを揺動する。これらの工程は、切込部に最終深さが得られるまで繰り返される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第1693173号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このようなウォールソーシステムの公知の制御方法は、ソーアームを押される状態にして切込作業を行う前に、ソーヘッドを十分離れた状態まで戻す必要があるという欠点がある。このような戻す作業の間は、ソーヘッドの位置変更のみが行われ、加工対象物の加工は行われない。従って、位置変更に要する時間は、非生産的な時間を増やすことになる。
【0010】
本発明の目的は、ソーヘッドやソーアームの位置変更に要する非生産的な時間を低減した、高い品質の切込作業を行うウォールソーシステムの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
最初に述べたウォールソーシステムの制御方法において、独立請求項に示す特徴を有した本発明により、このような目的が達成される。本発明の有用な具体的態様は、各従属請求項に示されている。
【0012】
本発明によれば、コントロールユニットによって実行される切込制御の際、第2端点側にある、ウォールソーの第2境界の位置が、第2端点の位置と一致するように、ソーヘッドを移動し、ウォールソーの第2境界は、第2端点が障害物のない非制限端点の場合、加工対象物の表面における第2端点側の、使用ソーブレードの第2上方出口点によって形成され、第2端点に障害物があって、ブレードガードを用いずに切込作業を行う場合、第2端点側の、使用ソーブレードの第2ブレード縁部によって形成され、第2端点に障害物があって、ブレードガードを用いて切込作業を行う場合、第2端点側の、使用ブレードガードの第2ブレードガード縁部によって形成される。
【0013】
本発明によるウォールソーシステムの制御方法は、引かれる状態と押される状態とに設定されるソーアームを用いた切込作業が可能となり、これに対応するソーヘッドの位置制御により、ソーヘッドの位置変更に要する非生産的な時間が低減されるという効果が得られる。基本的に引かれる状態のソーアームを用いて行われるメイン切込処理の第1メイン切込工程により、幅の狭い切れ目が得られ、その後の、押される状態のソーアームを用いたメイン切込工程では、第1メイン切込工程で形成された幅の狭い切れ目に沿って、ソーブレードが案内されることになる。ソーアームを、引かれる状態と押される状態とに切り換えるようにした切込作業では、引かれる状態のみに設定されるソーアームを用いた切込作業に比べ、ソーヘッドの位置を変え、ソーアームを揺動するのに要する非生産的な時間が低減されるという効果がある。
【0014】
コントロールユニットによって実行される切込制御の開始前に、ソーアームの揺動軸とソーブレードの回転軸との距離として規定されるソーアームのアーム長、及び揺動軸と加工対象物の表面との距離を設定するのが好ましい。切込制御のために、様々なパラメータをコントロールユニットに対して設定する必要がある。これらパラメータには、ソーアームのアーム長、及び加工対象物の表面に直交する方向における揺動軸と当該加工対象物の表面との直交方向距離が含まれ、アーム長は、ウォールソーの装置固有の固定的な寸法であり、直交方向距離は、ウォールソーの外形だけでなく、使用する案内軌道の外形にも依存する。
【0015】
特に好ましくは、切込制御の開始前に、第1メイン切込工程で用いるブレードガードに関する第1ブレードガード幅と、第2メイン切込工程で用いるブレードガードに関する第2ブレードガード幅とを定め、第1及び第2ブレードガード幅のそれぞれは、回転軸から第1ブレードガード縁部までの第1距離と、回転軸から第2ブレードガード縁部までの第2距離とからなる。端点に障害物がある場合に、ソーヘッドの位置制御は、障害物の側にある、使用ブレードガードのブレードガード縁部に基づき行われる。非対称形状のブレードガードの場合には、第1ブレードガード縁部までの回転軸の第1距離と、第2ブレードガード縁部までの回転軸の第2距離とが相違するが、対称形状のブレードガードの場合には、これら第1距離及び第2距離がブレードガードの幅の半分に相当するものとなる。
【0016】
好ましくは、揺動軸が第2端点に対し、
[h
1・(D
1−h
1)]
1/2+δ・sin(−α
1)
で表される距離を有し、
h
1=h(−α
1)=D
1/2−Δ−δ・cos(−α
1)
が、負の第1メイン切込角とするときの、使用ソーブレードの加工対象物内への切込深さを示す場合、使用ソーブレードの第2上方出口点の位置が第2端点の位置に一致し、揺動軸が第2端点に対し、
D
1/2+δ・sin(−α
1)
で表される距離を有する場合、使用ソーブレードの第2ブレード縁部の位置が第2端点の位置に一致し、揺動軸が第2端点に対し、
B
1b+δ・sin(−α
1)
で表される距離を有する場合、使用ブレードガードの第2ブレードガード縁部の位置が第2端点の位置に一致する。
【0017】
特に好ましくは、ソーアームを、負の第2メイン切込角に揺動した後の、ウォールソーの第2境界の位置が、第2端点の位置に一致するように、ウォールソーを、前進方向とは逆となる後進方向に移動する。このとき、ソーアームを負の第2メイン切込角に揺動した後で、揺動軸が第2端点に対し、
[h
2・(D
2−h
2)]
1/2+δ・sin(−α
2)
で表される距離を有し、
h
2=h(−α
2)=D
2/2−Δ−δ・cos(−α
2)
が、負の第2メイン切込角とするときの、使用ソーブレードの加工対象物内への切込深さを示す場合、使用ソーブレードの第2上方出口点の位置が第2端点の位置に一致し、揺動軸が第2端点に対し、
D
2/2+δ・sin(−α
2)
で表される距離を有する場合、使用ソーブレードの第2ブレード縁部の位置が第2端点の位置に一致し、揺動軸が第2端点に対し、
B
2b+δ・sin(−α
2)
で表される距離を有する場合、使用ブレードガードの第2ブレードガード縁部の位置が第2端点の位置に一致する。
【0018】
好ましい態様として、切込制御の第2メイン切込工程の際、第1端点側にある、ウォールソーの第1境界の位置が、第1端点の位置と一致するように、ソーヘッドを移動し、ウォールソーの第1境界は、第1端点が障害物のない非制限端点の場合、加工対象物の表面における第1端点側の、使用ソーブレードの第1上方出口点によって形成され、第1端点に障害物があって、ブレードガードを用いずに切込作業を行う場合、第1端点側の、使用ソーブレードの第1ブレード縁部によって形成され、第1端点に障害物があって、ブレードガードを用いて切込作業を行う場合、第1端点側の、使用ブレードガードの第1ブレードガード縁部によって形成される。
【0019】
第1の態様において、第2メイン切込工程は、メイン切込処理における最終のメイン切込工程であって、第2メイン切込工程の後、ウォールソーを終了位置に移動する。メイン切込工程の数は、特に、ソーブレードの仕様、加工材料の堅さ、ソーブレードに用いる回転用駆動モータの出力及びトルク、並びに切込部の最終深さに依存する。
【0020】
第2の態様において、メイン切込処理は、第2メイン切込工程の後に行われる工程として、ソーアームの揺動角を第3メイン切込角、使用ソーブレードの径を第3ブレード径とし、使用ブレードガードの幅を、第1距離及び第2距離からなる第3ブレードガード幅とする第3メイン切込工程を備え、この第3メイン切込工程では、ソーアームを引かれる状態とし、ソーヘッドを前進方向に移動する。
【0021】
ソーアームを、負の第3メイン切込角に揺動した後の、ウォールソーの第1境界の位置が、第1端点の位置に一致するように、ソーヘッドを前進方向に移動する。
【0022】
このとき、ソーアームを、負の第3メイン切込角に揺動した後で、揺動軸が第1端点に対し、
[h
3・(D
3−h
3)]
1/2−δ・sin(−α
3)
で表される距離を有し、
h
3=h(−α
3)=D
3/2−Δ−δ・cos(−α
3)
が、負の第3メイン切込角とするときの、使用ソーブレードの加工対象物内への切込深さを示す場合、使用ソーブレードの第1上方出口点の位置が第1端点の位置に一致し、揺動軸が第1端点に対し、
D
3/2−δ・sin(−α
3)
で表される距離を有する場合、使用ソーブレードの第1ブレード縁部の位置が第1端点の位置に一致し、揺動軸が第1端点に対し、
B
3a−δ・sin(−α
3)
で表される距離を有する場合、使用ブレードガードの第1ブレードガード縁部の位置が第1端点の位置に一致する。
【0023】
第1及び第2メイン切込工程は、1つのソーブレードと1つのブレードガードとを用いて行い、或いは、これに代えて、第1メイン切込工程は、第1のブレード径を有した第1ソーブレード、及び第1のブレードガード幅を有した第1ブレードガードを用いて行い、第2メイン切込工程は、第2のブレード径を有した第2ソーブレード、及び第2のブレードガード幅を有した第2ブレードガードを用いて行う。メイン切込工程の数、及びそれに伴って使用するソーブレード径の数は、特に、ソーブレードの仕様、加工材料の堅さ、ソーブレードに用いる回転用駆動モータの出力及びトルク、並びに切込部の最終深さに依存する。
【0024】
好ましい態様において、メイン切込処理の第1メイン切込工程は、予備切込工程であって、ソーヘッドは、コントロールユニットによって実行される切込制御の開始後に、移動方向に沿って開始位置に配置され、この開始位置では、ソーアームを負の第1メイン切込角に揺動した後の、第1端点側にある、ウォールソーの第1境界の位置が、第1端点の位置に一致し、ウォールソーの第1境界は、第1端点が障害物のない非制限端点の場合、加工対象物の表面における、使用ソーブレードの第1上方出口点によって形成され、第1端点に障害物があって、ブレードガードを用いずに切込作業を行う場合、使用ソーブレードの第1ブレード縁部によって形成され、第1端点に障害物があって、ブレードガードを用いて切込作業を行う場合、使用ブレードガードの第1ブレードガード縁部によって形成される。
【0025】
特に好ましくは、開始位置において、揺動軸が第1端点に対し、
[h
1・(D
1−h
1)]
1/2−δ・sin(−α
1)
で表される距離を有し、
h
1=h(−α
1,D
1)=D
1/2−Δ−δ・cos(−α
1)
が、負の第1メイン切込角とするときの、使用ソーブレードの加工対象物内への切込深さを示す場合、使用ソーブレードの第1上方出口点の位置が第1端点の位置に一致し、揺動軸が第1端点に対し、
D
1/2−δ・sin(−α
1)
で表される距離を有する場合、使用ソーブレードの第1ブレード縁部の位置が第1端点の位置に一致し、揺動軸が第1端点に対し、
B
1a−δ・sin(−α
1)
で表される距離を有する場合、使用ブレードガードの第1ブレードガード縁部の位置が第1端点の位置に一致する。
【0026】
ソーアームを、負の第1メイン切込角に揺動した状態で、ソーヘッドを、前進方向に移動し、ソーアームを引かれる状態として、第1メイン切込工程を実行する。ソーアームを引かれる状態とすることにより、幅の狭い切れ目が得られ、このような切れ目によって、その後のメイン切込工程において押される状態とされたソーアームが案内される。
【0027】
別の好ましい態様において、メイン切込処理は、第1メイン切込工程の前に行われる工程として、ソーアームの揺動角を零番目メイン切込角、使用ソーブレードの径を零番目ブレード径とし、使用ブレードガードの幅を、第1距離及び第2距離からなる零番目ブレードガード幅とする予備切込工程を備え、当該予備切込工程では、ソーアームを引かれる状態とし、ソーヘッドを後進方向に移動する。ソーアームを引かれる状態とすることで、幅の狭い切れ目が得られ、この切れ目が、その後のメイン切込工程において押される状態とされたソーアームを案内する。
【0028】
コントロールユニットによって実行される切込制御の開始後、予備切込工程を行うために、ソーヘッドを移動方向に沿って開始位置に配置し、当該開始位置では、ソーアームを正の零番目メイン切込角に揺動した後の、第2端点側にある、ウォールソーの第2境界の位置が、第2端点の位置に一致する。ソーアームを、正の零番目メイン切込角に揺動した後で、揺動軸が第2端点に対し、
[h
0・(D
0−h
0)]
1/2+δ・sin(+α
0)
で表される距離を有し、
h
0=h(+α
0,D
0)=D
0/2−Δ−δ・cos(+α
0)
が、正の零番目メイン切込角とするときの、使用ソーブレードの加工対象物内への切込深さを示す場合、使用ソーブレードの第2上方出口点の位置が第2端点の位置に一致し、揺動軸が第2端点に対し、
D
0/2+δ・sin(+α
0)
で表される距離を有する場合、使用ソーブレードの第2ブレード縁部の位置が第2端点の位置に一致し、揺動軸が第2端点に対し、
B
0b+δ・sin(+α
0)
で表される距離を有する場合、使用ブレードガードの第2ブレードガード縁部の位置が第2端点の位置に一致する。
【0029】
ソーアームを、正の零番目メイン切込角に揺動した状態で、ソーヘッドを、後進方向に移動する。ソーアームを引かれる状態とすることにより、幅の狭い切れ目が得られ、このような切れ目によって、その後のメイン切込工程において押される状態とされたソーアームが案内される。
【0030】
ウォールソーの第1境界の位置が、第1端点の位置と一致するように、ソーヘッドを移動し、ウォールソーの第1境界は、第1端点が障害物のない非制限端点の場合、加工対象物の表面における、使用ソーブレードの第1上方出口点によって形成され、第1端点に障害物があって、ブレードガードを用いずに切込作業を行う場合、使用ソーブレードの第1ブレード縁部によって形成され、第1端点に障害物があって、ブレードガードを用いて切込作業を行う場合、使用ブレードガードの第1ブレードガード縁部によって形成される。そして、揺動軸が第1端点に対し、
[h
0・(D
0−h
0)]
1/2−δ・sin(+α
0)
で表される距離を有し、
h
0=h(+α
0,D
0)=D
0/2−Δ−δ・cos(+α
0)
が、正の零番目メイン切込角とするときの、使用ソーブレードの加工対象物内への切込深さを示す場合、使用ソーブレードの第1上方出口点の位置が第1端点の位置に一致し、揺動軸が第1端点に対し、
D
0/2−δ・sin(+α
0)
で表される距離を有する場合、使用ソーブレードの第1ブレード縁部の位置が第1端点の位置に一致し、揺動軸が第1端点に対し、
B
0a−δ・sin(+α
0)
で表される距離を有する場合、使用ブレードガードの第1ブレードガード縁部の位置が第1端点の位置に一致する。
【0031】
予備切込工程(零番目メイン切込工程)から第1メイン切込工程への切り換えは、様々な方法で行うことができる。それぞれの方法は、予備切込工程の切り残し部分をどのように切除するかによって相違する。第1の方法では、予備切込工程で全ての切り残し部分が切除される。第2の方法では、第1端点に到達する前に、ソーアームを負の第1メイン切込角に揺動し、切り残し部分を、完全に、または少なくとも部分的に切除する。第3の方法では、切り残し部分の切除を省略し、正の零番目メイン切込角から負の第1メイン切込角に、直ちにソーアームを揺動する。
【0032】
第1の方法においては、ソーアームを負の零番目メイン切込角に揺動した後の、ウォールソーの第1境界の位置が、第1端点の位置に一致するように、ソーヘッドを移動し、揺動軸が第1端点に対し、
[h
0・(D
0−h
0)]
1/2−δ・sin(−α
0)
で表される距離を有し、
h
0=h(−α
0,D
0)=D
0/2−Δ−δ・cos(−α
0)
が、負の零番目メイン切込角とするときの、使用ソーブレードの加工対象物内への切込深さを示す場合、使用ソーブレードの第1上方出口点の位置が第1端点の位置に一致し、揺動軸が第1端点に対し、
D
0/2−δ・sin(−α
0)
で表される距離を有する場合、使用ソーブレードの第1ブレード縁部の位置が第1端点の位置に一致し、揺動軸が第1端点に対し、
B
0a−δ・sin(−α
0)
で表される距離を有する場合、使用ブレードガードの第1ブレードガード縁部の位置が第1端点の位置に一致する。
【0033】
ソーアームを揺動した後、ソーヘッドを、少なくとも、
2・δ・|sin(−α
0)|
の移動距離だけ前進方向に移動し、その後、ソーアームを負の第1メイン切込角に揺動した後の、ウォールソーの第1境界の位置が、第1端点の位置に一致するように、ソーヘッドの位置を定め、揺動軸が第1端点に対し、
[h
1・(D
1−h
1)]
1/2−δ・sin(−α
1)
で表される距離を有し、
h
1=h(−α
1,D
1)=D
1/2−Δ−δ・cos(−α
1)
が、第1ブレード径で、負の第1メイン切込角とするときの、使用ソーブレードの加工対象物内への切込深さを示す場合、使用ソーブレードの第1上方出口点の位置が第1端点の位置に一致し、揺動軸が第1端点に対し、
D
1/2+δ・sin(−α
1)
で表される距離を有する場合、使用ソーブレードの第1ブレード縁部の位置が第1端点の位置に一致し、揺動軸が第1端点に対し、
B
1a+δ・sin(−α
1)
で表される距離を有する場合、使用ブレードガードの第1ブレードガード縁部の位置が第1端点の位置に一致する。
【0034】
第2の方法においては、ソーアームを負の第1メイン切込角に揺動した後の、ウォールソーの第1境界の位置が、第1端点の位置に一致するように、ソーヘッドを前進方向に移動し、揺動軸が第1端点に対し、
[h
1・(D
1−h
1)]
1/2+δ・sin(−α
1)
で表される距離を有し、
h
1=h(−α
1,D
1)=D
1/2−Δ−δ・cos(−α
1)
が、第1ブレード径で、負の第1メイン切込角とするときの、使用ソーブレードの加工対象物内への切込深さを示す場合、使用ソーブレードの第1上方出口点の位置が第1端点の位置に一致し、揺動軸が第1端点に対し、
D
1/2−δ・sin(−α
1)
で表される距離を有する場合、使用ソーブレードの第1ブレード縁部の位置が第1端点の位置に一致し、揺動軸が第1端点に対し、
B
1a−δ・sin(−α
1)
で表される距離を有する場合、使用ブレードガードの第1ブレードガード縁部の位置が第1端点の位置に一致する。
【0035】
第3の方法においては、ソーアームを負の第1メイン切込角に揺動した後の、ウォールソーの第1境界の位置が、第1端点の位置に一致するように、ソーヘッドを移動し、揺動軸が第1端点に対し、
[h
1・(D
1−h
1)]
1/2−δ・sin(−α
1)
で表される距離を有し、
h
1=h(−α
1,D
1)=D
1/2−Δ−δ・cos(−α
1)
が、負の第1メイン切込角とするときの、使用ソーブレードの加工対象物内への切込深さを示す場合、使用ソーブレードの第1上方出口点の位置が第1端点の位置に一致し、揺動軸が第1端点に対し、
D
1/2−δ・sin(−α
1)
で表される距離を有する場合、使用ソーブレードの第1ブレード縁部の位置が第1端点の位置に一致し、揺動軸が第1端点に対し、
B
1a−δ・sin(−α
1)
で表される距離を有する場合、使用ブレードガードの第1ブレードガード縁部の位置が第1端点の位置に一致する。
【0036】
本発明による制御方法は、メイン切込角が臨界揺動角以下となるあらゆるメイン切込工程に適用される。この臨界揺動角は、端点が障害物を有する場合、±90°に相当し、端点が障害物のない非制限端点の場合、
180°−arccos[Δ/(δ+D/2)]
に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】案内軌道とウォールソーとを有したウォールソーシステムを示す図である。
【
図2A】障害物のない非制限端点である第1端点と第2端点との間での切込作業を示す図である。
【
図2B】障害物のない非制限端点である第1端点と第2端点との間での切込作業を示す図である。
【
図3A】ブレードガードで囲っていないソーブレードを用いた、障害物のある第1端点と第2端点との間での切込作業を示す図である。
【
図3B】ブレードガードで囲っていないソーブレードを用いた、障害物のある第1端点と第2端点との間での切込作業を示す図である。
【
図4A】ブレードガードで囲ったソーブレードを用いた、障害物のある第1端点と第2端点との間での切込作業を示す図である。
【
図4B】ブレードガードで囲ったソーブレードを用いた、障害物のある第1端点と第2端点との間での切込作業を示す図である。
【
図5A】障害物のある第1端点と障害物のない非制限端点である第2端点との間での切込作業を行う場合の、
図1に示すウォールソーシステムを示す図である。
【
図5B】障害物のある第1端点と障害物のない非制限端点である第2端点との間での切込作業を行う場合の、
図1に示すウォールソーシステムを示す図である。
【
図5C】障害物のある第1端点と障害物のない非制限端点である第2端点との間での切込作業を行う場合の、
図1に示すウォールソーシステムを示す図である。
【
図5D】障害物のある第1端点と障害物のない非制限端点である第2端点との間での切込作業を行う場合の、
図1に示すウォールソーシステムを示す図である。
【
図5E】障害物のある第1端点と障害物のない非制限端点である第2端点との間での切込作業を行う場合の、
図1に示すウォールソーシステムを示す図である。
【
図5F】障害物のある第1端点と障害物のない非制限端点である第2端点との間での切込作業を行う場合の、
図1に示すウォールソーシステムを示す図である。
【
図5G】障害物のある第1端点と障害物のない非制限端点である第2端点との間での切込作業を行う場合の、
図1に示すウォールソーシステムを示す図である。
【
図5H】障害物のある第1端点と障害物のない非制限端点である第2端点との間での切込作業を行う場合の、
図1に示すウォールソーシステムを示す図である。
【
図5I】障害物のある第1端点と障害物のない非制限端点である第2端点との間での切込作業を行う場合の、
図1に示すウォールソーシステムを示す図である。
【
図5J】障害物のある第1端点と障害物のない非制限端点である第2端点との間での切込作業を行う場合の、
図1に示すウォールソーシステムを示す図である。
【
図5K】障害物のある第1端点と障害物のない非制限端点である第2端点との間での切込作業を行う場合の、
図1に示すウォールソーシステムを示す図である。
【
図5L】障害物のある第1端点と障害物のない非制限端点である第2端点との間での切込作業を行う場合の、
図1に示すウォールソーシステムを示す図である。
【
図5M】障害物のある第1端点と障害物のない非制限端点である第2端点との間での切込作業を行う場合の、
図1に示すウォールソーシステムを示す図である。
【
図5N】障害物のある第1端点と障害物のない非制限端点である第2端点との間での切込作業を行う場合の、
図1に示すウォールソーシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
いくつかの図面を用い、本発明の実施形態について以下に説明する。これらの図面は、必ずしも忠実な尺度で実施形態を図示するものではなく、説明する上で有効であれば、概要を図示したり、幾分変形して図示している。図面から直ちに明らかとなる教示を補足する部分については、関連する先行技術を参照するものとする。このとき、実施形態の詳細な構成に関する様々な調整や変更が、本発明の大要から逸脱することなく可能である。明細書、図面、及び特許請求の範囲に示される本発明の様々な特徴は、個々に重要であるばかりでなく、任意に組み合わせて本発明を展開する上でも重要である。更に、明細書、図面、及び特許請求の範囲のいずれかに示される本発明の少なくとも2つの特徴の組み合わせは、いずれも本発明の範囲内に含まれるものである。本発明の大要は、以下に示す好ましい実施形態の厳密な構成や詳細に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示す主題よりも減縮された主題に限定されるものでもない。指定する寸法上の範囲に関し、提示した限界内にある数値は、限界値として開示されたものであり、必要に応じ、適宜採用しうるものである。簡明化を目的とし、同一または類似の機能を有する同一または類似の部材には、同じ参照符号を用いる。
【0039】
図1は、案内軌道11と、案内軌道11上に移動可能に設けられた工作装置12と、リモートコントロールユニット13とを有したウォールソーシステム10を示している。工作装置は、ウォールソー12として構成され、切込ユニット14と、モータ駆動式の駆動ユニット15とを備えている。切込ユニットは、ソーヘッド14として構成されており、ソーブレード16として構成された加工具を備え、このソーブレード16が、ソーアーム17に取り付けられて、回転用駆動モータ18により回転軸19周りに回転駆動される。
【0040】
作業者を保護するため、ソーブレード16はブレードガード21で囲まれており、ブレードガード21は、ソーアーム17に取り付けられている。ソーアーム17は、揺動モータ22により、揺動軸23周りに揺動可能に構成されている。ソーブレード16の径方向に沿ったソーアーム17が形成する揺動角αにより、切込作業の対象となる加工対象物24にソーブレード16が入り込む切込深さの程度が定まる。回転用駆動モータ18及び揺動モータ22は、装置ハウジング25の中に設けられる。モータ駆動式の駆動ユニット15は、ガイドキャリッジ26と移動用駆動モータ27とを備え、本実施形態において、この移動用駆動モータ27は、装置ハウジング25の中に設けられる。ソーヘッド14は、ガイドキャリッジ26に取り付けられ、移動用駆動モータ27により、案内軌道11に沿って移動方向28に移動可能となっている。装置ハウジング25内には、回転用駆動モータ18、揺動モータ22、及び移動用駆動モータ27に加え、ソーヘッド14及び駆動ユニット15の制御を行うコントロールユニット29が設けられる。
【0041】
ウォールソーシステム10及び切込作業を監視するため、複数のセンサ素子を有したセンサ装置が設けられる。第1センサ素子は揺動角センサ32として構成され、第2センサ素子は変位センサ33として構成される。揺動角センサ32は、ソーアーム17の最新の揺動角を検出し、変位センサ33は、案内軌道11上のソーヘッド14の最新の位置を検出する。検出値は、揺動角センサ32及び変位センサ33により、コントロールユニット29に送信され、ウォールソー12の制御に用いられる。
【0042】
リモートコントロールユニット13は、ユニットハウジング35、入力部36、表示部37、及び制御部38を備え、制御部38は、ユニットハウジング35内に設けられている。制御部38は、入力部36への入力を、制御指令及びデータに変換し、これら制御指令及びデータは、第1通信リンクを介してウォールソー12に送信される。第1通信リンクは、無線通信リンク41または通信ケーブル42として構成される。本実施形態において、無線通信リンクは、電波通信リンク41として構成され、リモートコントロールユニット13の第1電波通信ユニット43と、ウォールソー12に設けられた第2電波通信ユニット44との間に形成される。これに代え、無線通信リンク41は、赤外線通信、ブルートゥース(登録商標)、無線LAN、またはWiFi(登録商標)リンクとして構成してもよい。
【0043】
図2A及び
図2Bは、厚さdを有した加工対象物24に切込部51を形成する場合の、
図1に示したウォールソーシステム10の案内軌道11及びウォールソー12を示している。切込部51は、最終深さTを有し、移動方向28に沿って、第1端点E
1と第2端点E
2との間に延在する。移動方向28に平行な方向を方向Xと定義し、第1端点E
1から第2端点E
2に向かう方向を、方向Xの前進方向とし、方向Xに直交して加工対象物24内に入る加工対象物24の厚み方向を方向Yと定義する。
【0044】
切込部の端点は、障害物のない非制限端点、または障害物のある端点とすることができる。従って、両方の端点が障害物のない非制限端点の場合や、両方の端点が障害物のある端点の場合もあり、また一方が非制限端点で他方が障害物のある端点の場合もある。障害物のない非制限端点では、端点を通り過ぎる切り込み(オーバーカット)を許容するようにしてもよい。オーバーカットを利用し、端点の切込深さが、切込部の最終深さTに達するようになる。
図2A及び
図2Bの実施形態では、第1端点E
1及び第2端点E
2が、障害物のない非制限端点となっており、第1端点E
1ではオーバーカットが許容されておらず、第2端点E
2ではオーバーカットが生じている。
【0045】
図2Aは、取付位置X
0にあるソーヘッド14と、揺動角が0°の基本位置にあるソーアーム17とを示している。ソーヘッド14は、作業者により、ガイドキャリッジ26を用い、案内軌道11上の取付位置X
0に配置される。ソーヘッド14の取付位置X
0は、第1端点E
1と第2端点E
2との間にあって、移動方向28における揺動軸23の位置により定まる。揺動軸23の位置は、当該揺動軸23の方向Xにおける位置が、ソーアーム17を揺動しても変化しないので、ソーヘッド14の位置を検知してウォールソー12を制御するための基準位置X
Refとして特に適している。これに代え、方向Xにおける別の位置を基準位置としてソーヘッド14に設定することも可能であり、この場合には、方向Xにおける揺動軸23までの距離を把握しておく必要がある。
【0046】
本実施形態において、方向Xにおける第1端点E
1及び第2端点E
2の位置は、部分長を設定することにより定まる。取付位置X
0と第1端点E
1との距離は第1部分長L
1により定まり、取付位置X
0と第2端点E
2との距離は第2部分長L
2により定まる。これに代えて、部分長の一方(第1部分長L
1または第2部分長L
2)、及び第1端点E
1と第2端点E
2との距離として全長Lを与えることにより、方向Xにおける第1端点E
1及び第2端点E
2の位置を設定するようにしてもよい。
【0047】
切込部51は、所望の切込深さTが得られるまで、複数回に分けた切込工程によって形成される。第1端点E
1と第2端点E
2との間の切込部分をメイン切込部とし、メイン切込部の切込処理をメイン切込処理とする。切込部の各端点では、障害物に対応した障害物側切込作業と称する補助的な端部切込作業と、非制限端点に対応し、オーバーカットを伴うオーバカット作業とを行うことができる。
【0048】
メイン切込処理の手順は、作業者が設定を行うことが可能であり、様々な規定条件に応じ、ウォールソーシステムのコントロールユニットが定めることも可能である。予備切込工程とされる場合もある第1メイン切込工程は、減少させた切込深さと減少させた駆動モータの出力により実行し、ソーブレードの摩耗を防止するのが一般的である。更なるメイン切込工程は、同じ切込深さで実行するのが一般的であるが、様々な切込深さで行うことも可能である。規定条件は、作業者によって設定され、予備切込工程における切込深さ、予備切込工程における駆動出力、及び更なるメイン切込工程における最大切込深さが含まれる。これらの規定条件に基づき、コントロールユニットがメイン切込処理の手順を定めることができる。
【0049】
切込作業におけるメイン切込工程は、単一のブレード径または2以上のブレード径で実行される。複数のソーブレードを用いる場合、切込作業は、最も小さいブレード径のソーブレードを用いて開始するのが一般的である。ソーアーム17へのソーブレード16の組付けを可能とするため、加工対象物24の上方のソーアーム17の基本位置にソーブレード16を配置する必要がある。この規定条件が満たされているか否かは、ウォールソーシステム10の2つの装置固有パラメータ、即ち、ソーアーム17の揺動軸23と加工対象物24の上面53との垂直方向の距離Δ、及びソーブレード16の回転軸19とソーアーム17の揺動軸23との距離であるソーアーム17のアーム長δに依存する。これら2つの装置固有パラメータの合計が、ソーブレード16のブレード径Dの半分(D/2)より大きければ、加工対象物24の上方のソーアーム17の基本位置にソーブレード16が配置される。アーム長δが、ウォールソー12の一定値の装置固有パラメータである一方、揺動軸23と上面53との垂直方向の距離Δは、ウォールソー12の外形形状に加え、使用する案内軌道11の外形形状にも依存する。
【0050】
ソーブレード16は、ソーアーム17の端部に取り付けられ、切込作動の際に、回転用駆動モータ18により回転軸19周りに回転駆動される。
図2Aに示すソーアーム17の基本位置では、揺動角が0°となり、ソーブレード16の回転軸19が、切込深さ方向52において、揺動軸23の上方にある。ソーブレード16は、揺動軸23周りにソーアーム17を揺動することにより、揺動角が0°の基本位置から移動し、加工対象物24の中に入っていく。ソーアーム17を揺動する際、ソーブレード16は、回転用駆動モータ18により回転軸19周りに回転駆動される。
【0051】
作業者を保護するため、作業中は、ソーブレード16をブレードガード21で囲うようになっている。ウォールソー12は、ブレードガード21を有した状態で作動するか、或いはブレードガード21のない状態で作動する。第1端点E
1及び第2端点E
2の領域で切込部を形成するため、例えば、ブレードガード21を取り外すようにしてもよい。切込部を形成するために様々な径のソーブレードを用いる場合、ブレードガードも、それぞれのブレード径に対応した様々なブレードガード幅のものを用いるのが一般的である。
【0052】
図2Bは、後進側に向かう負の揺動方向54に揺動して負の揺動角−αにあるソーアーム17を示している。ソーアーム17は、負の揺動方向54で0°〜−180°の揺動角の範囲に、また前進側に向かい負の揺動方向54とは反対方向となる正の揺動方向55で0°〜+180°の揺動角の範囲に、それぞれ揺動位置を調整可能である。ソーヘッド14が前進方向56に移動する場合、
図2Bに示す揺動状態のソーアーム17は引かれる状態となる。一方、ソーヘッド14が、前進方向56とは逆の後進方向57に移動する場合、
図2Bに示す揺動状態のソーアーム17は押される状態となる。
【0053】
揺動角が±180°のときに、加工対象物24内へのソーブレード16の最大の切込深さが得られる。揺動軸23周りのソーアーム17の揺動によって、方向X及び方向Yにおける回転軸19の位置が変化する。従って、回転軸19の変動は、ソーアーム17のアーム長δ及び揺動角αに応じて生じ、方向Xの変動距離δ
Xは、δ・sin(±α)となり、方向Yの変動距離δ
Yは、δ・cos(±α)となる。
【0054】
加工対象物24に対し、ソーブレード16は、高さh、及び切込幅bを有した弓形の形状で切欠を形成する。弓状部分の高さhは、加工対象物24内へのソーブレード16の切込深さに相当する。切込深さhについて、式
D/2=h+Δ+δ・cos(α)
が成立し、式中、Dはソーブレード16のブレード径、hはソーブレード16の切込深さ、Δは揺動軸23と加工対象物24の上面53との垂直方向の距離、δはソーアーム17のアーム長、αは第1メイン切込角である。また、切込幅bについては、式
b
2=(D/2)・8・h−4・h
2=4・D・h−4・h
2=4・h・(D−h)
が成立し、式中、hはソーブレード16の切込深さ、Dはソーブレード16のブレード径である。
【0055】
切込作業の際のウォールソー12の制御は、それぞれの端点が、障害物のある端点か否か、更に、障害物のある端点の場合には、切込作業でブレードガード21を用いるか否かに応じて行われる。障害物のない非制限端点の場合、本発明に係る制御方法において、ウォールソー12の制御は、加工対象物24の上面53におけるソーブレード16の上方出口点に基づいて行われる。このソーブレード16の上方出口点の位置は、方向Xにおける揺動軸23の基準位置X
Ref、方向Xにおける回転軸19の変動距離δ
X、及び切込幅bに基づいて算出することができる。第1端点E
1側の上方出口点を第1上方出口点58とし、第2端点E
2側の上方出口点を第2上方出口点59とする。第1上方出口点58については、
X(58)=X
Ref+δ
X−b/2
が成立する一方、第2上方出口点59については、
X(59)=X
Ref+δ
X+b/2
が成立し、このとき、
b=[h・(D−h)]
1/2,h=h(α,D)
である。
【0056】
第1端点E
1や第2端点E
2が障害物のある端点の場合には、ウォールソー12が第1端点E
1や第2端点E
2を通り越すことは不可能である。このような場合、本発明に係る制御方法では、揺動軸23の基準位置X
Ref、及びウォールソー12の境界に基づいてウォールソー12が制御される。このため、ブレードガード21を用いずに切込作業を行う場合と、ブレードガード21を用いて切込作業を行う場合とでは、制御が相違することになる。
【0057】
図3A及び
図3Bは、それぞれ障害物のある端点として規定された第1端点E
1と第2端点E
2との間に切込部を形成する場合の、ウォールソーシステム10を示しており、この切込作業はブレードガード21を用いずに行われる。ブレードガード21を用いずに切込作業を行う場合、第1端点E
1側の第1ブレード縁部61と、第2端点E
2側の第2ブレード縁部62とが、ウォールソー12の境界を形成する。
【0058】
方向Xにおける第1ブレード縁部61及び第2ブレード縁部62のそれぞれの位置は、揺動軸23の基準位置X
Ref、回転軸19の変動距離δ
X、及びブレード径Dに基づき算出可能である。
図3Aは、ソーアーム17が負の揺動方向54に揺動して負の揺動角−α(0°〜−180°)の状態にあるウォールソー12を示している。第1ブレード縁部61については、
X(61)=X
Ref+δ
X・sin(−α)−D/2
が成立する一方、第2ブレード縁部62については、
X(62)=X
Ref+δ
X・sin(−α)+D/2
が成立する。一方、
図3Bは、ソーアーム17が正の揺動方向55に揺動して正の揺動角α(0°〜+180°)の状態にあるウォールソー12を示している。第1ブレード縁部61については、
X(61)=X
Ref+δ
X・sin(α)−D/2
が成立する一方、第2ブレード縁部62については、
X(62)=X
Ref+δ
X・sin(α)+D/2
が成立する。
【0059】
図4A及び
図4Bは、それぞれ障害物のある端点として規定された第1端点E
1と第2端点E
2との間に切込部を形成する場合の、ウォールソーシステム10を示しており、この切込作業はブレードガード21を用いて行われる。ブレードガード21を用いて切込作業を行う場合、第1端点E
1側の第1ブレードガード縁部71と、第2端点E
2側の第2ブレードガード縁部72とが、ウォールソー12の境界を形成する。
【0060】
方向Xにおける第1ブレードガード縁部71及び第2ブレードガード縁部72のそれぞれの位置は、揺動軸23の基準位置X
Ref、回転軸19の変動距離δ
X、及びブレードガード幅Bに基づき算出可能である。
図4Aは、負の揺動角−α(0°〜−180°)にあるソーアーム17と、ブレードガード幅Bを有して装着されたブレードガード21とを有するウォールソー12を示している。非対称のブレードガードを用い、切込制御を開始する前に、回転軸19から第1ブレードガード縁部71及び第2ブレードガード縁部72のそれぞれまでの距離が求められているものとし、回転軸19から第1ブレードガード縁部71までの距離を第1距離B
a、回転軸19から第2ブレードガード縁部72までの距離を第2距離B
bとする。
【0061】
第1ブレードガード縁部71については、
X(71)=X
Ref+δ
X・sin(−α)−B
a
が成立する一方、第2ブレードガード縁部72については、
X(72)=X
Ref+δ
X・sin(−α)+B
b
が成立する。一方、
図4Bは、正の揺動角α(0°〜+180°)にあるソーアーム17と、ブレードガード幅Bのブレードガード21とを有したウォールソー12を示している。第1ブレードガード縁部71については、
X(71)=X
Ref+δ
X・sin(α)−B
a
が成立する一方、第2ブレードガード縁部72については、
X(72)=X
Ref+δ
X・sin(α)+B
b
が成立する。
【0062】
図2A及び
図2Bは、それぞれが障害物のない非制限端点とされた第1端点E
1及び第2端点E
2の間の切込部を示し、
図3A及び
図3Bは、それぞれが障害物のある端点とされた第1端点E
1及び第2端点E
2の間の切込部を示している。実際には、一方の端点が障害物のない非制限端点とされ、他方の端点が障害物のある端点とされた場合の切込作業も可能であり、この場合、非制限端点についてのウォールソーの制御は、ソーブレードの上方出口点に基づいて行われ、障害物のある端点についてのウォールソーの制御は、ブレード縁部(ブレードガード21を伴わない切込作業)、またはブレードガード縁部(ブレードガード21を伴う切込作業)に基づいて行われる。
【0063】
第1上方出口点58、第1ブレード縁部61、及び第1ブレードガード縁部71は、一括してウォールソー12の「第1境界」と称し、第2上方出口点59、第2ブレード縁部62、及び第2ブレードガード縁部72は、一括してウォールソー12の「第2境界」と称する。
【0064】
図5A〜
図5Nには、障害物のある端点とされた第1端点E
1と、障害物のない非制限端点とされた第2端点E
2との間の加工対象物24の部分に、最終深さTを有する切込部を形成する際の、案内軌道11及びウォールソー12を有した
図1のウォールソーシステム10が示されている。
【0065】
切込作業は、本発明に係るウォールソーシステムの制御方法により行われる。この切込作業は、所望の最終深さTが得られるまで、複数のメイン切込工程からなるメイン切込処理により行われる。このメイン切込処理は、ソーアーム17の揺動角を第1メイン切込角α
1とし、使用ソーブレードの径を第1ブレード径D
1とし、第1切込深さh
1とする第1メイン切込工程と、ソーアーム17の揺動角を第2メイン切込角α
2とし、使用ソーブレードの径を第2ブレード径D
2とし、第2切込深さh
2とする第2メイン切込工程と、ソーアーム17の揺動角を第3メイン切込角α
3とし、使用ソーブレードの径を第3ブレード径D
3とし、第3切込深さh
3とする第3メイン切込工程とを備える。
【0066】
本実施形態において、第1、第2、及び第3メイン切込工程は、ブレード径Dのソーブレード16と、ブレードガード幅Bのブレードガード21とを用いて行われ、それぞれのメイン切込工程で用いる第1、第2、及び第3ブレード径D
1、D
2、及びD
3がブレード径Dに相当し、それぞれのメイン切込工程で用いる第1、第2、及び第3ブレードガード幅B
1、B
2、及びB
3がブレードガード幅Bに相当する。
【0067】
本発明に係る制御方法において、メイン切込工程は、引かれる状態と押される状態とに切り換えられるソーアーム17を用いて行われる。ソーアーム17を引かれる状態とすることにより、切込作業の際のソーブレードの安定した案内が可能となり、切れ目幅を小さくすることができる。ソーアーム17を引かれる状態と押される状態とに切り換える切込作業では、引かれる状態のみとするソーアーム17を用いた切込作業に比べ、ソーヘッド14の位置変更及びソーアーム17の揺動に要する非生産的な時間が低減できるという効果が得られる。本実施形態の場合、第1メイン切込工程及び第3メイン切込工程では、引かれる状態のソーアーム17と共に、ソーヘッド14を前進方向56に移動し、これら2つの工程間の第2メイン切込工程では、押される状態のソーアーム17と共に、ソーヘッド14を後進方向57に移動する。これら3つのメイン切込工程のそれぞれにおいて、ソーアーム17は、後進方向に向かう負の揺動方向54に揺動する。
【0068】
切込作業は、第1端点E
1側で開始される。本発明に係る制御方法を開始した後、ソーヘッド14は開始位置X
Startに配置され、このとき、揺動軸23は、第1端点E
1までの距離が、
[h
1・(D
1−h
1)]
1/2−δ・sin(−α
1)
となっており、この式中、
h
1=h(−α
1,D
1)=D
1/2−Δ−δ・cos(−α
1)
は、ブレード径Dに相当する第1ブレード径D
1で、負の第1メイン切込角−α
1とするときの、使用ソーブレードの加工対象物24内への切込深さを示している。この開始位置X
Startにおいて、揺動角0°の基本位置から負の第1メイン切込角−α
1へと、負の揺動方向54に向けてソーアーム17を揺動する。負の第1メイン切込角−α
1への揺動の後、ブレードガード21の第1ブレードガード縁部71は、第1端点E
1の障害物に接する。その後、ソーアーム17を負の第1メイン切込角−α
1に揺動した状態のソーヘッド14を、ソーブレード16が回転した状態で、前進方向56に移動する(
図5A)。この移動の際、ソーヘッド14の位置が、変位センサ33によって定期的に計測される。
【0069】
第2端点E
2までの揺動軸23の距離が、
[h
1・(D
1−h
1)]
1/2+δ・sin(−α
1)
となるときに、ソーヘッド14を停止し(
図5B)、この式中、
h
1=h(−α
1,D
1)=D
1/2−Δ−δ・cos(−α
1)
は、ブレード径Dに相当する第1ブレード径D
1で、負の第1メイン切込角−α
1としたときの、使用中のソーブレード16の加工対象物24内への切込深さを示している。この位置において、第2端点E
2側にある、ソーブレード16の第2上方出口点59の位置が、第2端点E
2の位置に一致し、第1メイン切込工程が終了する(
図5B)。
【0070】
第2メイン切込工程を行うため、第2端点E
2までの揺動軸23の距離が、
[h
2・(D
2−h
2)]
1/2+δ・sin(−α
2)
となるように、移動方向28におけるソーヘッド14の位置を定め(
図5C)、この式中、
h
2=h(−α
2,D
2)=D
2/2−Δ−δ・cos(−α
2)
は、ブレード径Dに相当する第2ブレード径D
2で、負の第2メイン切込角−α
2としたときの、使用中のソーブレード16の加工対象物24内への切込深さを示している。この位置において、ソーヘッド14を、負の第1メイン切込角−α
1から負の第2メイン切込角−α
2に揺動する(
図5D)。
図5Cに示す配置を行う際には、ソーアーム17を負の第2メイン切込角−α
2に揺動した後の、第2端点E
2側にある、ソーブレード16の第2上方出口点59の位置が、第2端点E
2の位置に一致するように、距離が調整されている。
【0071】
次に、第1端点E
1に向け、ソーヘッド14を後進方向57に移動し、このとき、移動中のソーヘッド14の位置が、変位センサ33によって定期的に計測される。そして、第1端点E
1までの揺動軸23の距離が、
B/2−δ・sin(−α
2)
となるときに、ソーヘッド14を停止する。この位置において、第1ブレードガード縁部71が第1端点E
1の障害物に接し、第2メイン切込工程が終了する(
図5E)。
【0072】
本実施形態の場合、負の第2メイン切込角−α
2から負の第3メイン切込角−α
3への揺動が、第1中間揺動角−β
1を介して2段階で行われる。揺動を少なくとも2段階に分けて行うことにより、ソーブレード16の摩耗が抑制される。揺動角をより小さくすることで、加工対象物と係合するソーブレード16の円弧の長さが短縮することになる。
【0073】
本実施形態の場合、負の第1メイン切込角−α
1から負の第2メイン切込角−α
2への揺動が1段階で行われる一方、負の第2メイン切込角−α
2から負の第3メイン切込角−α
3への揺動が2段階で行われるが、これに代えて、負の第2メイン切込角−α
2への揺動を複数段階で行ってもよいし、負の第3メイン切込角−α
3への揺動を単一段階で行ってもよい。この段階数については、特に、ソーブレードの仕様、素材の堅さ、及びソーブレードに用いる回転用駆動モータの出力やトルクに応じて決定する必要がある。中間揺動角は、作業者が設定してもよいし、様々な規定条件に応じてウォールソーシステムのコントロールユニットが定めるようにしてもよい。本発明に係る制御方法では、メイン切込工程におけるメイン切込角及び適用する場合の中間揺動角が、ウォールソーの制御に用いる入力変数となっている。
【0074】
ソーアーム17を第1中間揺動角−β
1に揺動する前に、ソーヘッド14の位置を定める。障害物のある第1端点E
1で揺動が行われ、第1中間揺動角−β
1の絶対値が90°より大きいので、第1中間揺動角−β
1に揺動した後に第1ブレードガード縁部71が第1端点E
1の障害物に接するように、ソーヘッド14の位置を定めることはできない。そこで、−90°の臨界揺動角α
kritに基づいてソーヘッド14を移動し(
図5F)、その後、ソーアーム17を第1中間揺動角−β
1に揺動する(
図5G)。−90°の臨界揺動角α
kritの場合は、第1端点E
1までの揺動軸23の距離が、
B/2−δ・sin(−90°)=B/2+δ
となる。揺動の際には、第1端点E
1を越えることができないので、−90°の臨界揺動角α
kritを考慮する必要がある。
【0075】
ソーアーム17を第1中間揺動角−β
1に揺動した後、ソーブレード16の緩和切込作業が行われる。この作業を行うため、ソーアーム17を第1中間揺動角−β
1に揺動した状態のソーヘッド14を、ソーブレード16が回転した状態で、
[h
3・(D
3−h
3)]
1/2
の移動距離だけ前進方向56に移動し(
図5H)、この式中、
h
3=h(−α
3,D
3)=D
3/2−Δ−δ・cos(−180°)=D
3/2−Δ+δ
は、ブレード径Dに相当する第3ブレード径D
3で、負の第3メイン切込角−α
3としたときの、使用中のソーブレード16の加工対象物24内への切込深さを示している。
【0076】
次に、第1端点E
1に向け、後進方向57にソーヘッド14を移動する。そして、第1端点E
1までの揺動軸23の距離が、
B/2−δ・sin(−β
1)
となるときに、ソーヘッド14を停止する。この位置では、ブレードガード21の第1ブレードガード縁部71が、第1端点E
1の障害物に接する(
図5I)。次に、−90°の臨界揺動角α
kritに基づき、移動方向28におけるソーヘッド14の位置を定め(
図5J)、ソーアーム17を、第1中間揺動角−β
1から負の第3メイン切込角−α
3に揺動する(
図5K)。
【0077】
これに代わる実施形態として、
図5I及び
図5Jの作業を併せて行うこともできる。この場合、第1端点E
1に向け、後進方向57にソーヘッド14を移動し、第1端点E
1までの揺動軸23の距離が、
B/2−δ・sin(−β
1)
となるときに、ソーヘッド14を停止する。この位置において、ソーアーム17を、第1中間揺動角−β
1から負の第3メイン切込角−α
3に揺動する。
【0078】
第3メイン切込工程は、メイン切込処理の最終メイン切込工程となっているので、この最終メイン切込工程に先立ち、第1端点E
1の部分の端部切込作業が行われる。この作業を行うため、ブレードガード21の第1ブレードガード縁部71が第1端点E
1の障害物に接するまで、ソーアーム17を第3メイン切込角−α
3に揺動した状態のソーヘッド14を、後進方向57に移動する(
図5L)。ブレードガード21を取り外し、ブレードガードを使用せずに端部切込作業を行えば、第1端点E
1の部分の端部切込作業が改善される。この場合、ソーアーム17を第3メイン切込角−α
3に揺動した状態で、ソーブレード16の第1ブレード縁部61の位置が第1端点E
1の位置に一致するまで、ソーヘッド14を後進方向57に移動する。
【0079】
加工対象物24が硬質の素材の場合、または低出力の回転用駆動モータ18の場合、第1端点E
1の部分の端部切込作業も、中間揺動角を用いて複数段階に分けて行うことができる。この場合、負の第3メイン切込角−α
3への揺動の後、ソーアーム17を作業開始位置に移動し、この作業開始位置で、第1中間揺動角にソーアーム17を揺動する。作業開始位置は、端部切込作業における中間揺動角への揺動が、いずれも第1端点E
1を越えずに第1端点E
1の手前で行われるように算出される。そして、ソーアーム17を第1中間揺動角に揺動した状態で、第1端点E
1までの揺動軸23の距離がB/2となり、第1ブレードガード縁部71が第1端点E
1の障害物に接するまで、ソーヘッド14を後進方向57に移動する。次に、ソーヘッド14を作業開始位置に戻して、ソーアーム17を次の中間揺動角に揺動し、第1ブレードガード縁部71が第1端点E
1の障害物に接するまで、ソーヘッド14を後進方向57に移動する。負の第3メイン切込角−α
3にソーアーム17を揺動した状態のソーヘッド14を移動して、第1ブレードガード縁部71が第1端点E
1に接するようになるまで、このような作業を繰り返す。端部切込作業は、ブレードガード21を用いず、複数段階に分けて行うことも可能である。
【0080】
第1端点E
1の部分の端部切込作業を行った後、ソーアーム17を負の第3メイン切込角−α
3に揺動した状態で、前進方向56に向け、第3メイン切込工程が行われる(
図5M)。第2端点E
2までの揺動軸23の距離が、
[h
3・(D
3−h
3)]
1/2+δ・sin(−α
3)
となるときに、ソーヘッド14を停止し、この式中、
h
3=h(−α
3,D
3)=D
3/2−Δ−δ・cos(−180°)
は、ブレード径Dに相当する第3ブレード径D
3で、負の第3メイン切込角−α
3としたときの、使用中のソーブレード16の加工対象物24内への切込深さを示している。
【0081】
第2端点E
2でのオーバーカットが許容される場合は、第2端点E
2の部分の端部切込作業が、第3メイン切込工程の後で行われる(
図5N)。加工対象物24が硬質の素材の場合、または低出力の回転用駆動モータ18の場合、第2端点E
2の部分の端部切込作業も、中間揺動角を用いて複数段階に分けて行うことができる。この場合は、第3メイン切込工程の終了後に、ソーヘッド14を作業開始位置に移動し、作業開始位置において、ソーアーム17を第1中間揺動角に揺動する。作業開始位置は、端部切込作業における中間揺動角への揺動が、いずれも第2端点E
2を越えずに第2端点E
2の手前で行われるように設定される。ソーブレード16の第2上方出口点59が作業終了位置に達するまで、ソーアーム17を第1中間揺動角に揺動した状態で、ソーヘッド14を前進方向56に移動し、この作業終了位置における第2上方出口点59の第2端点E
2までの距離は、
[h
3・(D−h
3)]
1/2−[Δh・(D−Δh)]
1/2
であり、この式中、
h
3=h(−α
3,D)=D/2−Δ−δ・cos(−α
3)
は、負の第3メイン切込角−α
3として、Δh=h
3−Tを切込深さh
3と最終深さTとの差としたときの、ソーブレード16の加工対象物24内への切込深さである。次に、ソーヘッド14を作業開始位置に戻し、ソーアーム17を次の中間揺動角に揺動し、揺動したソーアーム17と共にソーヘッド14を、前進方向56に作業終了位置に向けて移動する。ソーアーム17を負の第3メイン切込角−α
3に揺動した状態のソーヘッド14が終了位置に達するまで、このような作業が繰り返し行われる。
【国際調査報告】