(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
本発明は、突然変異タンパク質アミロイドβ(Aβ)アミノ酸配列に基づく免疫原性産物に関し、とりわけAβ突然変異タンパク質のオリゴマーに関し、またアミロイド症のような状態の診断、治療および防止における、ならびに前記産物に結合することができる作用物を同定するための前記産物の使用に関する。
PF−4に対するポリクローナル抗血清の交差反応性が、PF−4に対する参照抗PF−4抗体の交差反応性より少なくとも10倍、例えば、少なくとも20倍、少なくとも30倍または少なくとも50倍、より好ましくは少なくとも100倍、例えば、少なくとも200倍、少なくとも300倍または少なくとも500倍、さらにより好ましくは少なくとも1000倍、例えば、少なくとも2000倍、少なくとも3000倍または少なくとも5000倍、さらにより好ましくは少なくとも10000倍、例えば、少なくとも20000倍、少なくとも30000倍または少なくとも50000倍、最も好ましくは少なくとも100000倍小さい、請求項1から4のいずれか一項に記載の産物。
結合PF−4が、抗PF−4抗体に結合した標識抗IgG抗体として検出され、検出が、標識によって発せられたシグナルを測定することである、請求項7または8に記載の産物。
ポリクローナル抗血清が、モノマーAβ(1−42)、モノマーAβ(1−40)、フィブリロマーAβ(1−42)およびフィブリロマーAβ(1−40)からなる群から選択される少なくとも1つのAβ形態に対する抗血清の親和性より少なくとも2倍、例えば、少なくとも3倍または少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、例えば、少なくとも20倍、少なくとも30倍または少なくとも50倍、より好ましくは少なくとも100倍、例えば、少なくとも200倍、少なくとも300倍または少なくとも500倍、さらにより好ましくは少なくとも1000倍、例えば、少なくとも2000倍、少なくとも3000倍または少なくとも5000倍、さらにより好ましくは少なくとも10000倍、例えば、少なくとも20000倍、少なくとも30000倍または少なくとも50000倍、最も好ましくは少なくとも100000倍大きいAβグロブロマーに対する親和性を有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の産物。
ポリクローナル抗血清が、Aβ(1−42)グロブロマーおよびAβ(12−42)グロブロマーからなる群から選択される少なくとも1つのAβグロブロマーに対する抗血清の親和性より少なくとも2倍、例えば、少なくとも3倍または少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、例えば、少なくとも20倍、少なくとも30倍または少なくとも50倍、より好ましくは少なくとも100倍、例えば、少なくとも200倍、少なくとも300倍または少なくとも500倍、さらにより好ましくは少なくとも1000倍、例えば、少なくとも2000倍、少なくとも3000倍または少なくとも5000倍、さらにより好ましくは少なくとも10000倍、例えば、少なくとも20000倍、少なくとも30000倍または少なくとも50000倍、最も好ましくは少なくとも100000倍大きいAβ(20−42)グロブロマーに対する親和性を有する、請求項1から19のいずれか一項に記載の産物。
両親媒性物質が、SDS、ラウリン酸、N−ラウロイルサルコシン、tert−オクチルフェノールx9−10EO、ノニルフェノールx20EO、3−(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ−1−プロパンスルホネート、ドデシル−N,N−ジメチル−3−アミノ−1−プロパンスルホネートまたはドデシルアミンである、請求項32から36のいずれか一項に記載の産物。
オリゴマーが、トリプシン、キモトリプシン、サーモリシン、エラスターゼ、パパインおよびエンドプロテイナーゼGluCからなる群から選択される酵素により切断される、請求項40に記載の産物。
アミロイド症を有すると疑われる対象からの試料を準備すること、試料を請求項1から77のいずれか一項に記載の産物と、産物および抗体を含む複合体の形成に十分な時間および条件下で接触させることを含み、複合体の存在が、対象がアミロイド症を有することを示す、アミロイド症を診断する方法。
請求項1から77のいずれか一項に記載の産物に結合することができる作用物を同定する方法であって、a)目的の1つ以上の作用物を、1つ以上の作用物が産物に結合するのに十分な時間および条件下で、産物に曝露するステップならびにb)産物に結合する作用物を同定するステップを含む方法。
Yが、数33..43、33..42、33..41または33..40からなる群から選択される、請求項100または101に記載の分子またはそのクロスリンクされた誘導体。
(X−Y)が、(1−42)、(4−42)、(12−42)または(18−42)からなる群から選択される、請求項100から102のいずれか一項に記載の分子またはそのクロスリンクされた誘導体。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書で特に定義しない限り、本発明に関連して使用される科学および技術用語は、当業者により一般的に理解されている意味を有するものとする。用語の意味および範囲は、明確であるべきであるが、潜在的な曖昧性がある場合には、本明細書に示す定義は、辞書または外部のいかなる定義に対しても優先される。さらに、文脈により特に要求されない限り、単数形の用語は、複数状態を含むものとし、複数形の用語は、単数を含むものとする。本願において、「または」の使用は、特に述べない限り、「および/または」を意味する。さらに、「を含む(including)」という用語、ならびに「を含む(includes)」および「を含んだ(included)」のような他の形の使用は、非限定的である。また、「要素」または「成分」のような用語は、特に具体的に述べない限り、1つのユニットを含む要素および成分ならびに2つ以上のサブユニットを含む要素および成分の両方を包含する。
【0027】
一般的に、本明細書で述べる細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、タンパク質および核酸化学ならびにハイブリダイゼーションに関連して用いる術語およびそれらの技術は、当技術分野で周知であり、一般的に用いられているものである。本発明の方法および技術は、特に示さない限り、当技術分野で周知の通常の方法に従って、また本明細書を通して引用し、述べる様々な一般的およびより個別的参考文献に記載されている通りに一般的に実施される。酵素反応および精製技術は、当技術分野で一般的に遂行されているようにまたは本明細書で述べるように、製造業者の仕様書に従って実施される。本明細書で述べる分析化学、合成有機化学ならびに医薬および薬化学に関連して用いる術語ならびにそれらの実験室での手順および技術は、当技術分野で周知であり、一般的に用いられているものである。化学合成、化学分析、医薬品、製剤および送達ならびに患者の治療に標準的技術が用いられる。
【0028】
本発明は、一方でモノクローナル抗体7C6、モノクローナル抗体4D10またはモノクローナル抗体5F7のようなグログロマーエピトープに結合する抗体と反応性であり、他方でPF−4に対する交差反応性を全く有さないまたは低い交差反応性を有するポリクローナル抗血清を誘導することができる免疫原性産物を提供する。
【0029】
PF−4は、CXCケモカインファミリーに属し、ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド4(CXCL4)としても公知である小さい70アミノ酸サイトカインである。PF−4は、血小板凝集中の活性化血小板のアルファ顆粒から放出され、ヘパリン様分子の作用を調節することにより血液凝固を促進する。これらの機能により、創傷修復および炎症に関与することが予測されている(Eismannら、Blood、76巻(2号)、336−44頁、1990年)。PF−4は、通常プロテオグリカンとの複合体に見いだされ、血栓症の薬物治療として用いられている抗凝固剤ヘパリンと複合体を形成し得る。PF−4は、抗凝固剤ヘパリンの投与に対する特質体質性自己免疫反応である、ヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)における十分に記載された病理学機能を有し(Warkentin N.、Engl.J.Med.、356巻(9号)891−3頁、2007年)、この場合、ヘパリン:PF−4複合体が抗原である。PF−4自己抗体は、血栓症およびHITと類似した特徴を有するが、ヘパリンの事前の投与のない患者にも認められた(Warkentinら、Am.J.Med.、121巻(7号)、632−6頁、2008年)。ヘパリン誘発性血小板減少症は、血小板減少症(低血小板数)の発生を特徴とし、さらにHITは、血栓症に罹患しやすくする。病理学的過程におけるPF−4のこれらの機能および関与を考慮すると、対象に存在するPF−4に対する結合(例えば、交差反応性)を示すポリクローナル抗血清を誘導する抗原(例えば、ワクチン)の投与は、前記PF−4機能に影響を及ぼし、ひいては有害(副)作用をもたらし得ると結論することができる。そのような有害作用の程度および性質は、PF−4上のエピトープの場所およびサイズ、それぞれの抗血清の結合強度および性質のようなパラメーターによって異なり得る。
【0030】
本発明の免疫原性産物は、血小板因子4(PF−4)に対する交差反応性を全く有さないまたは低い交差反応性を有するポリクローナル抗血清を誘導することができる。したがって、PF−4交差反応性を有する産物による免疫化に起因し得るHITのような有害反応の発生は、対象の能動免疫のために本発明の免疫原性産物を用いる場合に避けることができる。
【0031】
本発明の一態様において、本明細書で述べた免疫原性産物により誘導されるPF−4に対する交差反応性を全く有さないまたは低い交差反応性を有するポリクローナル抗血清は、マウスまたはウサギに由来するポリクローナル抗血清である。好ましくは、ポリクローナル抗血清は、該産物に結合する抗体が富化された親和性精製抗血清である。
【0032】
本発明の異なる態様において、PF−4は、カニクイザル血漿中のPF−4およびヒト血漿中のPF−4から選択される。
【0033】
血小板因子4(PF−4)に対する交差反応性を全く有さないまたは低い交差反応性を有するポリクローナル抗血清を誘導する免疫原性産物の能力は、当技術分野で周知の標準的方法を用いて試験することができる。例えば、後にそのポリクローナル抗血清を得るために免疫原性産物を用いてマウスまたはウサギを免疫化することができる。一般的に公知のように、個々の抗血清において免疫化に用いられる免疫原性産物に対する抗体の量に関する変動があり得る。PF−4反応性に関するアッセイにおける偽陰性結果を避けるために、ポリクローナル抗血清は、したがって免疫原性産物に結合する抗体について富化することができる。そのような富化は、例えば、固体担体(例えば、セファロースビーズ)上に免疫原性産物を固定化すること、固定化免疫原性産物への抗体の結合を可能にするように担体を抗血清と接触させること、および担体から結合した抗体を溶出すること(例えば、酸性溶出緩衝液を用いて)を含む親和性精製の標準的方法を用いて達成することができ、その場合、溶出液は、免疫原性産物に結合する抗体が富化された親和性精製抗血清である。固定化産物が(切断型)Aβ突然変異タンパク質オリゴマーである場合、モノマーまたは繊維状形態のような非オリゴマーAβ形態にも結合し得るすべての抗Aβ抗体が親和性精製されることを保証するために、免疫原性産物に含まれるAβ突然変異タンパク質は、モノマー形で担体上にさらに固定化してもよい。
【0034】
本発明の特定の態様において、交差反応性は、血漿PF−4に対する、固定化されているポリクローナル抗血清の結合として決定され、ポリクローナル抗血清は、例えば、固定化抗IgG抗体に結合することにより固定化される。結合PF−4は、前記PF−4に結合した抗PF−4抗体として検出することができる。抗PF−4抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗血清であってよく、とりわけアミノ酸配列EAEEDGDLQCLCVKTTSQVRPRHITSLEVIKAGPHCPTAQLIATLKNGRKICLDLQAPLYKKIIKKLLES(配列番号12)を有するPF−4と反応性である。抗PF−4抗体は、標識抗体であってよく、検出は、標識によって発せられたシグナルを測定することである。あるいは、結合抗PF−4抗体は、抗PF−4抗体に結合した標識抗IgG抗体として検出することができ、検出は、標識によって発せられたシグナルを測定することである。
【0035】
別の特定の実施形態によれば、本発明の免疫原性産物により誘導された抗血清のPF−4に対する交差反応は、(i)ヒトまたはカニクイザル血漿ならびに結合タンパク質および参照抗PF−4抗体の希釈系列を用いた整列化サンドイッチELISAを実施し、(ii)検出シグナル(y軸)を抗血清または参照抗PF−4抗体の対数変換濃度(x軸)に対してプロットし、(iii)測定範囲内のこれらの非曲線当てはめデータから曲線下面積(AUCまたは総ピーク面積)を決定することによって得られる前記抗血清および参照抗PF−4抗体のAUC値の比を指す。
【0036】
「参照抗PF−4抗体」は、本明細書で用いているように、PF−4、とりわけヒト(HPF4)と特異的に反応性である、抗体、とりわけモノクローナル抗体である。そのような抗体は、ヒトPF−4、例えば、アミノ酸配列EAEEDGDLQCLCVKTTSQVRPRHITSLEVIKAPHCPTAQLIATLKNGRKICLDLQAPLYKKIIKKLLES(配列番号12)を有するヒトPF−4を含む抗原を準備し、抗体レパートリーを前記抗原に曝露し、前記抗体レパートリーからヒトPF−4に特異的に結合する抗体を選択することによって得られる。抗体は、免疫原(ヒトPF−4)を用いて親和性精製してもよい。そのような参照抗PF−4抗体は、市販されており、例えば、Abcamカタログ番号ab49735のモノクローナル抗HPF4抗体である。
【0037】
本発明の特定の態様において、本明細書で述べた免疫原性産物は、PF−4に対する参照抗PF−4抗体の交差反応性より少なくとも10倍、例えば、少なくとも20倍、少なくとも30倍または少なくとも50倍、より好ましくは少なくとも100倍、例えば、少なくとも200倍、少なくとも300倍または少なくとも500倍、さらにより好ましくは少なくとも1000倍、例えば、少なくとも2000倍、少なくとも3000倍または少なくとも5000倍、さらにより好ましくは少なくとも10000倍、例えば、少なくとも20000倍、少なくとも30000倍または少なくとも50000倍、最も好ましくは少なくとも100000倍小さいPF−4に対する交差反応性を有するポリクローナル抗血清を誘導することができる。
【0038】
さらに、本発明の免疫原性産物は、特定の抗体とのそれらの反応性を特徴とする。そのような抗体は、とりわけグロブロマーエピトープに結合する抗体、とりわけAβ(1−42)グロブロマーに対する抗体の結合親和性より大きいAβ(20−42)グロブロマーに対する結合親和性を有する抗体を含む。
【0039】
Aβ(1−42)グロブロマーに対する抗体の結合親和性より大きいAβ(20−42)グロブロマーに対する結合親和性を有する抗体は、参照により本明細書に組み込む、国際公開第2007/062852号に記載されており、例えば、7C6、4D10および5F7からなる群から選択されるモノクローナル抗体を含む。
【0040】
したがって、本発明の一実施形態によれば、本発明の免疫原性産物は、American Type Culture Collection寄託番号PTA−7240により示されるハイブリドーマから得られるモノクローナル抗体7C6またはAmerican Type Culture Collection寄託番号PTA−7405により示されるハイブリドーマから得られるモノクローナル抗体4D10またはAmerican Type Culture Collection寄託番号PTA−7241により示されるハイブリドーマから得られるモノクローナル抗体5F7からなる群から選択されるモノクローナル抗体と反応性である。
【0041】
本発明の一態様において、モノクローナル抗体7C6は、本明細書で述べた免疫原性産物に高い親和性で、例えば、1×10
−6MのK
Dもしくはより大きい親和性でまたは1×10
−7MのK
Dもしくはより大きい親和性で、例えば、3×10
−8MのK
Dもしくはより大きい親和性で、1×10
−8MのK
Dもしくはより大きい親和性で、例えば、3×10
−9MのK
Dもしくはより大きい親和性で、1×10
−9MのK
Dもしくはより大きい親和性で、例えば、3×10
−10MのK
Dもしくはより大きい親和性で、1×10
−10MのK
Dもしくはより大きい親和性で、例えば、3×10
−11MのK
Dもしくはより大きい親和性で、または1×10
−11MのK
Dもしくはより大きい親和性で結合する。
【0042】
本発明の別の態様において、モノクローナル抗体4D10は、本明細書で述べた免疫原性産物に高い親和性で、例えば、1×10
−6MのK
Dもしくはより大きい親和性でまたは1×10
−7MのK
Dもしくはより大きい親和性で、例えば、3×10
−8MのK
Dもしくはより大きい親和性で、1×10
−8MのK
Dもしくはより大きい親和性で、例えば、3×10
−9MのK
Dもしくはより大きい親和性で、1×10
−9MのK
Dもしくはより大きい親和性で、例えば、3×10
−10MのK
Dもしくはより大きい親和性で、1×10
−10MのK
Dもしくはより大きい親和性で、例えば、3×10
−11MのK
Dもしくはより大きい親和性で、または1×10
−11MのK
Dもしくはより大きい親和性で結合する。
【0043】
本発明のさらなる別別の態様において、モノクローナル抗体5F7は、本明細書で述べた免疫原性産物に高い親和性で、例えば、1×10
−6MのK
Dもしくはより大きい親和性でまたは1×10
−7MのK
Dもしくはより大きい親和性で、例えば、3×10
−8MのK
Dもしくはより大きい親和性で、1×10
−8MのK
Dもしくはより大きい親和性で、例えば、3×10
−9MのK
Dもしくはより大きい親和性で、1×10
−9MのK
Dもしくはより大きい親和性で、例えば、3×10
−10MのK
Dもしくはより大きい親和性で、1×10
−10MのK
Dもしくはより大きい親和性で、例えば、3×10
−11MのK
Dもしくはより大きい親和性で、または1×10
−11MのK
Dもしくはより大きい親和性で結合する。
【0044】
グロブロマー特異的抗体と反応する本発明の免疫原性産物は、少なくとも1つのグロブロマーエピトープを示すと考えられる。したがって、本発明の免疫原性産物は、Aβ(20−42)グロブロマーまたは他の切断型グロブロマーを免疫原として用いた場合に誘導される免疫反応と同様なプロファイルを有する免疫反応を誘導することができる。
【0045】
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に対する特異的結合の能力のあるあらゆるポリペプチド抗原決定基(polypeptide determinant)を含む。特定の実施形態において、エピトープ決定基(epitope determinants)は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリルまたはスルホニルのような分子の化学的に活性な表面基を含み、特定の実施形態において、特異的3次元構造特性および/または特異的電荷特性を有し得る。エピトープは、結合タンパク質、とりわけ抗体により結合される抗原の領域である。特定の実施形態において、結合タンパク質または抗体は、それがタンパク質および/または巨大分子の複雑混合物中のその標的抗原に優先的に結合する場合に抗原に特異的に結合すると言われる。
【0046】
特定の実施形態によれば、本発明の免疫原性産物は、例えば、哺乳動物、例えば、ウサギまたはマウスを本発明の免疫原性産物により免疫化した場合にそのような特定の免疫応答を誘発するそれらの能力を特徴とする。
【0047】
免疫応答は、抗原(免疫原)により宿主をチャレンジすること(免疫化すること)により生じる抗体の混合とみなすことができる。抗体の前記混合は、宿主から得ることができ、本明細書でポリクローナル抗血清と呼ぶ。
【0048】
一態様において、そのような特定の免疫応答、すなわち、対応するポリクローナル抗血清は、モノマーAβ(1−42)、モノマーAβ(1−40)、モノマーAβ(20−42)、フィブリロマーAβ(1−42)およびフィブリロマーAβ(1−40)からなる群から選択される少なくとも1つのAβ形態、好ましくは前記Aβ形態のすべてに対する抗体の結合親和性より大きい本発明の免疫原性産物またはAβグロブロマーに対する結合親和性を有する抗体を含むことを特徴とする。
【0049】
特定の実施形態によれば、免疫応答、すなわち、対応するポリクローナル抗血清は、モノマーAβ(1−42)、モノマーAβ(1−40)、モノマーAβ(20−42)、フィブリロマーAβ(1−42)およびフィブリロマーAβ(1−40)からなる群から選択される少なくとも1つのAβ形態、好ましくは前記Aβ形態のすべてに対する抗血清の結合親和性より少なくとも2倍、例えば、少なくとも3倍または少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、例えば、少なくとも20倍、少なくとも30倍または少なくとも50倍、より好ましくは少なくとも100倍、例えば、少なくとも200倍、少なくとも300倍または少なくとも500倍、さらにより好ましくは少なくとも1000倍、例えば、少なくとも2000倍、少なくとも3000倍または少なくとも5000倍、さらにより好ましくは少なくとも10000倍、例えば、少なくとも20000倍、少なくとも30000倍または少なくとも50000倍、最も好ましくは少なくとも100000倍大きい本発明の免疫原性産物またはAβグロブロマーに対する親和性を有することを特徴とする。
【0050】
本発明の関連態様において、前記Aβグロブロマーは、Aβ(1−42)グロブロマー、Aβ(12−42)グロブロマーおよびAβ(20−42)グロブロマーからなる群から選択される。
【0051】
本明細書で用いているように、省略記号A..Bは、両方を含め、AからBまでのすべての自然数を含むセットを意味し、したがって、例えば、「17..20」は、17、18、19および20という数の群を意味する。ハイフンは、アミノ酸の連続した配列を意味する。すなわち、「X−Y」は、両方を含めて、アミノ酸Xからアミノ酸Yまでの配列を含む。したがって、「A..B−C..D」は、これらの2つのセットのメンバーの間のすべての可能な組合せを含む。例えば、「17..20−40..42」は、以下のすべてを含む:17−40、17−41、17−42、18−40、18−41、18−42、19−40、19−41、19−42、20−40、20−41および20−42。特に述べない限り、すべての数は、成熟ペプチドの開始を指し、1は、N末端アミノ酸を示す。
【0052】
「Aβ(X−Y)」という用語は、本明細書で用いているようにXおよびYの両方を含むヒトアミロイドベータ(Aβ)タンパク質のアミノ酸位置Xからアミノ酸位置Yまでのアミノ酸配列を有するポリペプチド、とりわけアミノ酸配列D
1A
2E
3F
4R
5H
6D
7S
8G
9Y
10E
11V
12H
13H
14Q
15K
16L
17V
18F
19F
20A
21E
22D
23V
24G
25S
26N
27K
28G
29A
30I
31I
32G
33L
34M
35V
36G
37G
38V
39V
40I
41A
42T
43(配列番号1)(ヒトAβタンパク質のアミノ酸位置1から43に対応する)のアミノ酸位置Xからアミノ酸位置Yまでのアミノ酸配列を有するポリペプチド、またはその突然変異タンパク質を指す。
【0053】
本明細書における「Aβ(X−Y)モノマー」または「モノマーAβ(X−Y)」という用語は、単離された形態のAβ(X−Y)ペプチド、好ましくは他のAβペプチドとの本質的に非共有結合性相互作用に関与していない形態のAβ(X−Y)ペプチドを指す。実際に、Aβ(X−Y)モノマーは、通常水溶液の形態で提供される。本発明の特に好ましい実施形態において、水性モノマー溶液は、0.05%から0.2%、より好ましくは約0.1%NH
4OHを含有する。本発明の別の特に好ましい実施形態において、水性モノマー溶液は、0.05%から0.2%、より好ましくは約0.1%NaOHを含有する。用いる(例えば、本発明の結合親和性を決定するために)場合、前記溶液を適切な方法で希釈することが好都合であり得る。さらに、前記溶液を、その調製後2時間以内、とりわけ1時間以内、とりわけ30分以内に使用することが通常好都合である。
【0054】
より具体的には、ここにおける「Aβ(1−40)モノマー」という用語は、本明細書における参照例1に記載されているAβ(1−40)モノマー調製物を指し、本明細書における「Aβ(1−42)モノマー」という用語は、本明細書における参照例2に記載されているAβ(1−42)調製物を指す。
【0055】
ここにおける「フィブリル」という用語は、電子顕微鏡下で繊維状構造を示し、コンゴレッドに結合し、偏光下で複屈折を示し、そのX線回折パターンがクロスβ構造である、非共有結合の個別Aβ(X−Y)ペプチドのアセンブリーを含む分子構造を指す。
【0056】
本発明の別別の態様において、フィブリルは、24単位を超える、好ましくは100単位を超える凝集体の形成をもたらす、例えば、0.1M HCl中の界面活性剤の非存在下での適切なAβペプチドの自己誘導性ポリマー凝集を含む方法により得られる分子構造である。この方法は、当技術分野で周知である。便宜上、Aβ(X−Y)フィブリルは、水溶液の形で用いられる。本発明の特に好ましい実施形態において、水性フィブリル溶液は、Aβペプチドを0.1%NH
4OHに溶解し、それを20mM NaH
2PO
4、140mM NaCl、pH7.4で1:4に希釈し、その後、pHを7.4に再調整し、溶液を37℃で20時間インキュベートした後、10000gで10分間遠心分離し、20mM NaH
2PO
4、140mM NaCl、pH7.4中に再懸濁することによって作製される。
【0057】
ここにおける「Aβ(X−Y)フィブリル」という用語は、Aβ(X−Y)サブユニットから本質的になるフィブリルを指し、サブユニットの平均で少なくとも90%がAβ(X−Y)型のものである場合、より好ましくはサブユニットの少なくとも98%がAβ(X−Y)型のものである場合、最も好ましくは非Aβ(X−Y)ペプチドの含量が検出閾値を下回る場合にそれが好ましい。
【0058】
より具体的には、ここにおける「Aβ(1−42)フィブリル」という用語は、本明細書における参照例6で述べるAβ(1−42)フィブリル調製物を指す。
【0059】
別の態様において、そのような免疫応答は、Aβ(1−42)グロブロマーまたはAβ(12−42)グロブロマーに対する抗体の結合親和性より大きい本発明の免疫原性産物またはAβ(20−42)グロブロマーに対する結合親和性を有する抗体を含むことを特徴とする。
【0060】
したがって、本発明のさらなる態様において、本明細書で述べた免疫原性産物は、Aβ(1−42)グロブロマーおよびAβ(12−42)グロブロマーからなる群から選択される少なくとも1つのAβグロブロマーに対する抗血清の親和性より少なくとも2倍、例えば、少なくとも3倍または少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、例えば、少なくとも20倍、少なくとも30倍または少なくとも50倍、より好ましくは少なくとも100倍、例えば、少なくとも200倍、少なくとも300倍または少なくとも500倍、さらにより好ましくは少なくとも1000倍、例えば、少なくとも2000倍、少なくとも3000倍または少なくとも5000倍、さらにより好ましくは少なくとも10000倍、例えば、少なくとも20000倍、少なくとも30000倍または少なくとも50000倍、最も好ましくは少なくとも100000倍大きい本発明の免疫原性産物またはAβ(20−42)グロブロマーに対する親和性を有するポリクローナル抗血清を誘導することができる。
【0061】
所定の抗原(本発明の免疫原性産物など)に対する抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)の結合親和性は、ELISA、ドットブロットのような標準化インビトロイムノアッセイまたは表面プラズモン共鳴解析を用いて評価することができる。「表面プラズモン共鳴」という用語は、本明細書で用いているように、例えば、BIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、SwedenおよびPiscataway、NJ)を用いるバイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化の検出により実時間生物特異性相互作用の解析を可能にする光学現象を指す。さらなる説明については、Jonsson U.ら(1993年)Ann.Biol.Clin.、51巻、19−26頁;Jonsson U.ら(1991年)Biotechniques、11巻、620−627頁;Johnsson B.ら(1995年)J.Mol.Recognit.、8巻、125−131頁;およびJohnsson B.ら(1991年)Anal.Biochem.198、268−277を参照のこと。
【0062】
特定の実施形態によれば、本明細書で定義する親和性は、本明細書で述べるドットブロットを実施し、それを濃度測定により評価することにより得られる値を意味する。本発明の特定の実施形態によれば、ドットブロットによる結合親和性の決定は、以下の手順を含む:一定量の抗原(例えば、本発明の免疫原性産物;上で定義した、Aβ(X−Y)オリゴマー、Aβ(X−Y)モノマーまたはAβ(X−Y)フィブリル)または好都合には、例えば、100pmol/μl、10pmol/μl、1pmol/μl、0.1pmol/μlおよび0.01pmol/μlの抗原濃度への例えば、20mM NaH
2PO
4、140mM NaCl、pH7.4、0.2mg/ml BSAによる中その適切な希釈物をニトロセルロース膜上に滴下し、次いで非特異的結合を防ぐためにミルクで膜をブロックし、洗浄し、次いで目的の抗体または抗血清と接触させた後、酵素コンジュゲート二次抗体および比色反応により後者の検出を行い、規定の抗体濃度において、結合した抗体の量により親和性の決定が可能となる。したがって、1つの抗原に対する2つの異なる抗体もしくは抗血清の、または2つの異なる抗原に対する1つの抗体もしくは抗血清の相対親和性は、他の点では同じドットブロット条件下で2つの抗体/抗血清−抗原の組合せについて観測される抗原に結合した抗体のそれぞれの量の関係と本明細書で定義する。ウエスタンブロッティングに基づく同様のアプローチとは異なって、ドットブロットアプローチは、所定の抗原の自然立体配座における所定の抗原に対する抗体の親和性を決定し、またELISAアプローチとは異なって、ドットブロットアプローチは、異なる標的とマトリックスとの間の親和性の差の影響を受けず、それにより、異なる抗原の間のより精密な比較が可能となる。
【0063】
ここにおける「より大きい親和性」という用語は、一方で非結合抗体および非結合免疫原性産物またはグロブロマーと他方で抗体−免疫原性産物/グロブロマー複合体との間の平衡が複合体にさらに有利である、相互作用の程度を指す。同様に、ここにおける「より小さい親和性」という用語は、一方で非結合抗体および非結合免疫原性産物またはグロブロマーと他方で抗体−免疫原性産物/グロブロマー複合体との間の平衡が非結合抗体および非結合免疫原性産物/グロブロマーにさらに有利である、相互作用の程度を指す。「より大きい親和性」という用語は、「より高い親和性」という用語と同義であり、「より小さい親和性」という用語は、「より低い親和性」という用語と同義である。
【0064】
「K
D」(また「K
d」または「KD」)という用語は、本明細書で用いているように、「平衡解離定数」を指すものとし、平衡状態における滴定測定で、または解離速度定数(k
off)を会合速度定数(k
on)で割ることにより得られる値を指す。会合速度定数(k
on)、解離速度定数(k
off)および平衡解離定数(K
D)は、抗原に対する結合タンパク質(例えば、抗体)の結合親和性を表すために用いられる。会合および解離速度定数を決定する方法は、当技術分野で周知である。蛍光ベースの技術を用いることは、平衡状態における生理的緩衝液中の試料を調べる高い感度および能力をもたらす。BIAcore(登録商標)(生体分子相互作用解析)アッセイのような他の実験アプローチおよび機器を用いることができる(例えば、BIAcore International AB、GE Healthcare company、Uppsala、Swedenから入手できる機器)。さらに、Sapidyne Instruments(Boise、Idaho)から入手できるKinExA(登録商標)(Kinetic Exclusion Assay)アッセイも用いることができる。
【0065】
特定の実施形態によれば、本発明の免疫原性産物は、可溶性、とりわけ水性媒体(例えば、5mM NaH
2PO
4および35mM NaClの水溶液、より具体的には下記のような濃度の両親媒性物質を含む5mM NaH
2PO
4および35mM NaClの水溶液または8から10、8.0から9.5もしくは8.0から9.0のpHを有する5mM NaH
2PO
4および35mM NaClの水溶液)に可溶性である。1mLの溶液当たり少なくとも0.1、1または5mgタンパク質の溶解度が好都合である。溶解度は、遠心分離により確認することができる。10000×gおよび10から40℃、例えば、37℃の温度での遠心分離により沈殿しない場合、免疫原性産物は可溶性である。
【0066】
さらに、本発明の免疫原性産物が、例えば、2から28種の本明細書で述べたAβアミノ酸配列を複数有することが好ましい。
【0067】
したがって、本発明の免疫原性産物は、切断および/またはクロスリンク結合していてもよい、とりわけ、Aβ突然変異タンパク質のオリゴマーである。
【0068】
「Aβオリゴマー」または「Aβ突然変異タンパク質オリゴマー」という用語は、本明細書で用いているように、上で定義したAβポリペプチドおよびAβ突然変異タンパク質の可溶性の、(意図的クロスリンク結合の非存在下)非共有結合性会合を指す。一態様によれば、Aβオリゴマーは、イオン性界面活性剤とのインキュベーションにより得られるAβ(突然変異タンパク質)ポリペプチドの安定な非繊維状アセンブリーである。「Aβグロブロマー」という用語は、本明細書で用いているように、3次元球状構造(「モルテングロビュール」、Barghornら、J Neurochem、95巻、834−847頁、2005年参照)を有するAβオリゴマーを指す。Aβ(突然変異タンパク質)オリゴマーは、以下の構造の1つ以上を特徴とし得る。
【0069】
・切断型のAβ(突然変異タンパク質)オリゴマーを生じる乱交雑プロテアーゼ(サーモリシンまたはエンドプロテイナーゼGluCのような)によるN−末端アミノ酸X−24の少なくとも部分的切断性;
・乱交雑プロテアーゼおよび抗体によるC末端アミノ酸25−Yの非接近性;
・これらのオリゴマーの切断型は、コアエピトープAβ(18−33)のより十分な接近性を有する前記オリゴマーの3次元コア構造を維持する。
【0070】
「切断型Aβオリゴマー」または「切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマー」という用語は、本明細書で用いているように、Aβオリゴマーを限定的タンパク質分解消化にかけることによって得ることができる切断された形態のAβ(突然変異タンパク質)オリゴマーを指す。より具体的には、切断型Aβ(X−Y)(突然変異タンパク質)オリゴマーは、適切なプロテアーゼによる処理によってAβ(1−Y)(突然変異タンパク質)オリゴマーを切断することにより得られる、Xが数2..24からなる群から選択され、Yが本明細書で定義した通りであるN末端が切断された形態を含む。例えば、Aβ(20−42)オリゴマーは、Aβ(1−42)オリゴマーをサーモリシンタンパク質分解にかけることにより得ることができ、Aβ(12−42)オリゴマーは、Aβ(1−42)オリゴマーをエンドプロテイナーゼGluCタンパク質分解にかけることにより得ることができる。タンパク質分解の所望の程度に到達したとき、一般的に公知の方法でプロテアーゼを不活性化する。得られたオリゴマーは、本明細書で既に述べた手順に従って単離し、必要な場合、さらなる後処理および精製ステップによりさらに処理することができる。
【0071】
本発明のオリゴマーは、Aβアミノ酸配列を含む対応するAβ突然変異タンパク質ペプチドのオリゴマー化により得られる。オリゴマー化は、本発明のオリゴマーが複数のAβ突然変異タンパク質ペプチドからなると推測することができるようにモノマーAβ突然変異タンパク質ペプチドの非共有結合性凝集を含む。
【0072】
出発物質、すなわち、Aβ突然変異タンパク質ペプチドは、公知のペプチド合成方法によりまたは組換えにより調製することができる。さらに、これらのタンパク質のいくつかは、市販されている。特定の実施形態において、Aβ突然変異タンパク質ペプチドは、合成Aβ突然変異タンパク質ペプチドである。
【0073】
前記ペプチドは、G.BaranyおよびR.B.Merrifield、「The Peptides:Analysis、Synthesis、Biology」;Volume 2−「Special Methods in Peptide Synthesis、Part A」、3−284頁、E.GrossおよびJ.Meienhofer編、Academic Press、New York、1980年ならびにJ.M.StewartおよびJ.D.Young、「Solid−Phase Peptide Synthesis」、第2版、Pierce Chemical Co.、Rockford、IL、1984年に記載されているような様々な固相技術を用いる化学合成により生産することができる。この戦略は、アミノ酸側鎖の一時的保護のためのtert−ブチル基と組み合わされた、α−アミノ基の一時的保護のためのFmoc(9−フルオレニルメチルメチル−オキシカルボニル)基に基づいている(例えば、E.AthertonおよびR.C.Sheppard、「The Fluorenylmethoxycarbonyl Amino Protecting Group」「The Peptides:Analysis、Synthesis、Biology」;9巻−「Special Methods in Peptide Synthesis、Part C」、1−38頁、S.UndenfriendおよびJ.Meienhofer編、Academic Press、San Diego、1987年参照)。
【0074】
ペプチドは、ペプチドのC末端から開始して不溶性ポリマー担体(「樹脂」とも呼ぶ)上で段階的に合成することができる。合成は、アミドまたはエステル結合の形成により樹脂にペプチドのC末端アミノ酸を付加することによって開始させる。これは、得られたペプチドのそれぞれC末端アミドまたはカルボン酸としての最終的放出を可能にする。あるいは、C末端アミノアルコールが存在する場合、本明細書で述べるようにC末端残基を2−メトキシ−4−アルコキシベンジルアルコール樹脂(SASRIN(商標)、Bachem Bioscience,Inc.、King of Prussia、PA)に結合させ、ペプチド配列アセンブリーの完結後に、得られたペプチドアルコールをTHF中でLiBH
4により放出させる(J.M.StewartおよびJ.D.Young、前出、92頁参照)。
【0075】
合成に用いられるC末端アミノ酸およびすべての他のアミノ酸は、α−アミノ保護基を合成中に選択的に除去することができるように示唆的に保護されたそれらのα−アミノ基および側鎖官能基(存在する場合)を有することが要求される。アミノ酸のカップリングは、そのカルボキシル基の活性化エステルおよび樹脂に付加されたN末端アミノ酸の非保護α−アミノ基とのその反応により行われる。全配列がアセンブルされるまで、α−アミノ基脱保護およびカップリングのシーケンスが反復される。次いでペプチドは、通常、副反応を制限するための適切な捕捉剤の存在下で、側鎖官能基の同時脱保護により樹脂から放出される。得られたペプチドは、逆相HPLCにより最終的に精製される。
【0076】
最終ペプチドの前駆体として必要なペプチジル樹脂の合成では、市販のクロスリンクポリスチレンポリマー樹脂(Novabiochem、San Diego、CA;Applied Biosystems、Foster City、CA)を利用する。好ましい固体担体は、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmoc−アミノメチル)−フェノキシアセチル−p−メチルベンズヒドリルアミン樹脂(RinkアミドMBHA樹脂);9−Fmoc−アミノ−キサンテン−3−イルオキシ−Merrifield樹脂(Sieberアミド樹脂);C末端カルボキサミド用4−(9−Fmoc)アミノメチル−3,5−ジメトキシフェノキシ)バレリル−アミノメチル−Merrifield樹脂(PAL樹脂)を含む。最初およびその後のアミノ酸のカップリングは、それぞれDIC/HOBT、HBTU/HOBT、BOP、PyBOPからまたはDIC/HOAT、HATU/HOATから生産したHOBTまたはHOAT活性化エステルを用いて達成することができる。好ましい固体担体は、保護ペプチド断片用の2−クロロトリチルクロリド樹脂および9−Fmoc−アミノ−キサンテン−3−イルオキシ−Merrifield樹脂(Sieberアミド樹脂)である。2−クロロトリチルクロリド樹脂上への最初のアミノ酸の負荷は、Fmoc保護アミノ酸をジクロロメタンおよびDIEA中で樹脂と反応させることによって最も良く達成される。必要な場合、アミノ酸の溶解を促進するために少量のDMFを加えることができる。
【0077】
合成は、Advanced Chemtech Multiple Peptide Synthesizer(MPS396)またはApplied Biosystems Inc.ペプチド合成装置(ABI433a)のようなペプチド合成装置を用いて実施することができる。
【0078】
あるいは、1)所望のペプチドをもたらす、ペプチド結合の酵素的または化学的切断のための適切な切断部位によって分離された所望のペプチドの複数のコピーの合成、2)当業者に公知で、アミノ酸配列を含む任意のシステムにおけるAPPの組換え発現とそれに続く所望のペプチドを生み出すための酵素的または化学的処理、3)当業者に公知の任意のシステムにおける融合タンパク質としての所望のペプチドの組換え発現、4)当業者に公知の任意のシステムにおける直接的な所望のペプチドの組換え発現を含む、当業者に公知の任意の他の適切な方法論を用いることもあり得る。
【0079】
アミロイドβペプチドの組換え発現は、国際公開第2007/064917号に記載されている。さらに、組換え宿主における異種タンパク質の発現、ポリペプチドの化学合成およびインビトロ翻訳の一般的方法は、当技術分野で周知であり、Maniatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1989年)、第2版、Cold Spring Harbor、N.Y.;BergerおよびKimmel、Methods in Enzymology、152巻、Guide to Molecular Cloning Techniques(1987年)、Academic Press,Inc.、San Diego、Calif.;Merrifield J.(1969年)J.Am.Chem.Soc.、91巻、501頁;Chaiken1.M.(1981年)CRC Crit.Rev.Biochem.11巻、255頁;Kaiserら(1989年)Science、243巻、187頁;Merrifield B.(1986年)Science、232巻、342頁;Kent.S.B.H.(1988年)Ann.Rev.Biochem.、57巻、957頁;ならびにOfford R.E.(1980年)Semisynthetic Proteins、Wiley Publishingにさらに記載されている。
【0080】
得られたペプチドは、次いでオリゴマーが生成することを可能にする条件にさらされる。オリゴマー形成に適する条件は、参照により本明細書に組み込む、例えば、国際公開第2004/067561号;国際公開第2006/094724号;S.Barghornら、J.Neurochem.、95巻、834頁(2005年)および国際公開第2007/064917号に記載されている。
【0081】
第1のステップにおいて、モノマーAβ突然変異タンパク質ペプチドを溶媒に溶解する。好ましくは、溶媒は、水素結合切断剤である。この処理の目的は、折りたたまれていないペプチドを得ることである。
【0082】
適切な水素結合切断剤は、当技術分野で公知である。これらは、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)のような有機化合物ならびに水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような塩基、ギ酸、2,2,2−トリフルオロエタノール(TFE)、尿素および塩化グアニジニウムの水溶液を含む。
【0083】
特定の実施形態によれば、水素結合切断剤は、HFIPである。
【0084】
Aβ突然変異タンパク質ペプチドの水素結合切断剤への溶解を促進するために、混合物を掻き混ぜることができる、例えば、振とうにかけることができる。温度が22から50℃である場合、溶解の時間は、数分から数時間まで、例えば、15分から5時間までで十分である。例えば、ペプチドは、それをHFIP中で約37℃で約2.5時間振とうすることによって好都合に溶解することができる。
【0085】
Aβ突然変異タンパク質ペプチドの量は、2mg/mLから50mg/mL、5mg/mLから40mg/mLまたは5mg/mLから30mg/mLのペプチドが水素結合切断剤に溶解するような量である。例えば、水素結合切断剤に溶解したAβ突然変異タンパク質ペプチドの濃度は、HFIP中約6mg/mLに好都合に調整することができる。
【0086】
Aβ突然変異タンパク質ペプチドを水素結合切断剤に溶解することにより透明な溶液が得られる場合、それは好都合である。
【0087】
次いで水素結合切断剤を例えば、蒸発により除去し、残留物を適切な溶媒、例えば、DMSOに再懸濁する。Aβ突然変異タンパク質ペプチドの量は、1mMから10mM、2mMから8mMまたは4mMから6mMのペプチドが溶媒に再懸濁されるようなものである。例えば、再懸濁Aβ突然変異タンパク質ペプチドの濃度は、DMSO中約5mMに好都合に調整することができる。
【0088】
さらなるステップにおいて、両親媒性物質をAβ突然変異タンパク質ペプチドの水素結合切断剤中溶液に加える。両親媒性物質の添加により、ペプチドのオリゴマー化が誘導されてオリゴマーが生じる。
【0089】
両親媒性物質は、脂肪酸または界面活性剤を含み、それらの一部は、参照により本明細書に組み込む、国際公開第2007064917号に示されている。
【0090】
例えば、硫酸塩、とりわけアルキル硫酸塩およびアルキルエーテル硫酸塩;スルホネート、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、脂肪酸、例えば、ラウリン酸のようなカルボン酸、サルコシン、例えば、N−ラウロイルサルコシン(サルコシルNL−30またはGardol(登録商標)としても公知)、オクチルフェノールポリオキシエチレンエーテル、例えば、tert−オクチルフェノールx9−10EO(Triton(登録商標)X100としても公知)のようなアルキルアリールアルコールポリオキシエチレンエーテルまたはアルキルアリールノニルフェノールポリオキシエチレンエーテル、例えば、ノニルフェノールx20EO(Tergitol(登録商標)NP−40としても公知)、3−(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ−1−プロパンスルホネート(CHAPS)、ドデシル−N,N−ジメチル−3−アミノ−1−プロパンスルホネート(DDAP)ならびにアミン、とりわけアルキルアミン、例えば、ドデシルアミンを本発明の方法に両親媒性物質として好都合に用いることができる。また、糖界面活性剤、とりわけ例えば、ポリエトキシル化ソルビトール脂肪酸エステル、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Polysorbat80またはTween(登録商標)80としても公知)のようなポリエトキシル化ソルビトールエステルを本発明の方法に両親媒性物質として好都合に用いることができる。
【0091】
特定の実施形態によれば、両親媒性物質は、両親媒性物質を含む水溶液の形で加える。前記溶液は、緩衝されていてよい。6.0から10.0、6.5から9.5または7.0から9.0の範囲のpH値が好都合であることがわかっている。例えば、約7.4のpH値を有する緩衝水溶液は、好都合に用いることができる。適切な緩衝水溶液は当技術分野で公知である。例えば、5mM NaH
2PO
4および35mM NaClを含む水溶液を好都合に用いることができる。
【0092】
水溶液を加えることによりAβ突然変異タンパク質ペプチドを希釈する。再懸濁Aβ突然変異タンパク質ペプチドの体積の5から50、7から30または8から25倍の範囲の加える水溶液の量が好都合であることがわかっている。例えば、加える水溶液の量は、好都合には再懸濁Aβ突然変異タンパク質ペプチドの体積の約10倍であり得る。
【0093】
選択される両親媒性物質の濃度は、用いられる作用物に依存する。SDSを用いる場合、インキュベーション混合物中0.05から0.7重量%、0.075から0.4重量%または0.1から0.3重量%の範囲の濃度が好都合であることがわかっている。例えば、約0.2重量%のSDSを含む緩衝水溶液を好都合に用いることができる。ラウリン酸またはN−ラウロイルサルコシンを用いる場合、例えば、0.1から1.0重量%、0.25から0.75重量%または0.4から0.6重量%の範囲の多少より高い濃度が好都合である。例えば、約0.5重量%のラウリン酸またはN−ラウロイルサルコシンを含む緩衝水溶液を好都合に用いることができる。ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(例えば、Tween(登録商標)80)を用いる場合、インキュベーション混合物中0.05から1重量%、0.075から0.5重量%または0.1から0.3重量%の範囲の濃度が好都合であることがわかっている。
【0094】
通常、再懸濁Aβ突然変異タンパク質ペプチドおよび緩衝水溶液を好都合には掻き混ぜながら、例えば、ボルテックスしながら混合する。
【0095】
混合物をインキュベートしてオリゴマー形成を完結する前に、混合物から固体を除去することが好都合であり得る。
【0096】
オリゴマー形成のためのインキュベーションの時間は、数分から数時間までの範囲であり得る。インキュベーションの温度が15から50℃、18から45℃または20から40℃である場合、1時間から48時間まで、2時間から36時間までまたは5時間から24時間までが十分である。例えば、オリゴマー形成は、混合物を約37℃で約24時間インキュベートする場合、完結する。
【0097】
便宜上、インキュベーションを2段階で行う。すなわち、インキュベーションの第1の期間の後に調製物を希釈し(例えば、水で)、インキュベーションの第2の期間を後続させる。
【0098】
第1の期間におけるインキュベーションの時間は、数分から数時間までの範囲であり得る。インキュベーションの温度が15から50℃、18から45℃または20から40℃である場合、1時間から24時間まで、2時間から12時間までまたは4時間から8時間までが十分である。例えば、混合物を約37℃で約6時間インキュベートする。
【0099】
インキュベーション混合物の希釈は、それ自体が公知の方法で実施することができる。特定の実施形態によれば、希釈は、水を加えることを含む。便宜上、インキュベーション混合物は、約2倍から20倍、3倍から15倍または4倍から10倍、例えば、4倍(1:3)希釈する。
【0100】
オリゴマー形成を完結するための第2の期間におけるインキュベーションの時間は、数分から数時間までの範囲であり得る。インキュベーションの温度が15から50℃、18から45℃または20から40℃である場合、1時間から36時間まで、2時間から24時間までまたは4時間から18時間までが十分である。例えば、オリゴマー形成は、混合物を約37℃で約18時間インキュベートする場合、完結する。
【0101】
オリゴマー形成が完結すると、インキュベーション混合物を遠心分離し、遠心分離インキュベーション混合物の上清を得ることが好都合であり得る。例えば、約3000xgで約20分間の遠心分離が好都合であることがわかっている。
【0102】
特定の実施形態によれば、遠心分離インキュベーション混合物の上清は、次に凍結することができる。例えば、遠心分離インキュベーション混合物の上清は、好都合には−30℃で30分間凍結することができる。凍結上清を次に解凍することができ、解凍上清を再び遠心分離し(例えば、10000xgで10分間)、遠心分離混合物の上清を得てもよい。
【0103】
この方法により得られるオリゴマー調製物は、そのまま用いるまたは例えば、オリゴマーを濃縮し、および/もしくは精製するためにさらなる後処理にかけることができる。
【0104】
特定の実施形態によれば、本発明の方法は、インキュベーション混合物を濃縮するステップを含む。
【0105】
インキュベーション混合物を濃縮することは、本質的に公知の方法で実施することができる。特定の実施形態によれば、濃縮は、超遠心分離により行われる。超遠心分離は、当技術分野で周知の方法である。10から100、20から80または25から50kDaカットオフを含む超遠心分離は、好都合であることがわかっている。例えば、本発明のオリゴマーは、約30kDaカットオフを含む超遠心分離により好都合に濃縮することができる。
【0106】
超遠心分離は、インキュベーション混合物中に存在するオリゴマーの量を維持しながらインキュベーション混合物の体積を減少させる。したがって、体積を1から40%、2から35または4から33%に減少させることは、好都合である。例えば、インキュベーション混合物の体積を超遠心分離により約32%、10%または5%に好都合に減少させることができる。
【0107】
特定の実施形態によれば、本発明の方法は、インキュベーション混合物または濃縮インキュベーション混合物の塩濃度を減少させるステップを含む。
【0108】
塩濃度(および両親媒性物質、その減少は、能動免疫に用いるのにとりわけ重要である)の減少は、本質的に公知の方法で実施することができる。特定の実施形態によれば、塩濃度は、インキュベーション混合物または濃縮インキュベーション混合物を透析にかけることによって減少させる。透析は、当技術分野で周知の方法である。例えば、インキュベーション混合物または濃縮インキュベーション混合物の透析は、5mM NaH
2PO
4および35mM NaClを含む溶液に対して好都合に実施することができる。溶液は、適量の両親媒性物質も含み得る。透析中に溶液を新たなものに置き換えることが好都合であり得る。
【0109】
透析は、塩の減少が完全になるまで実施する。例えば、約22℃で約2.5時間が好都合であることがわかっている。
【0110】
透析物を遠心分離し、遠心分離透析物の上清を得ることがさらに好都合であり得る。例えば、約10000xgで約10分間の遠心分離が好都合であることがわかっている。
【0111】
したがって、特定の実施形態によれば、本発明は、Aβ突然変異タンパク質オリゴマーを調製する方法であって、
(i)モノマーAβ突然変異タンパク質ペプチドを水素結合切断剤に溶解すること、
(ii)両親媒性物質を加え、混合し、インキュベートすること、
(iii)希釈し、インキュベートすること、ならびに
(iv)任意選択的に、遠心分離すること、透析により塩および/または両親媒性物質濃度を減少させること、超遠心分離により濃縮することのうちの1つ以上、ならびに
(v)上清を得ること
を含む方法に関する。
【0112】
特定の実施形態によれば、免疫原性産物は、切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーである。
【0113】
そのような切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーは、Aβ突然変異タンパク質オリゴマーを調製する方法であって、(d)オリゴマーをタンパク質分解的に切断するステップをさらに含む方法により得られる。エンドペプチダーゼが優先され、例えば、トリプシン、キモトリプシン、サーモリシン、エラスターゼ、パパインおよびエンドプロテイナーゼGluCからなる群から選択される酵素を用いる。オリゴマーをタンパク質分解的に切断するのに適する条件は、参照により本明細書に組み込む、例えば、国際公開第2004/067561号、国際公開第2006/094724号および国際公開第2007/064917号に記載されている。本発明の特定の切断型オリゴマーは、サーモリシンの作用により得られるものである。
【0114】
本発明の免疫原性産物は、配列番号1に示すアミノ酸配列Aβ(18−33)と62.5%以上の同一性を有するAβアミノ酸配列を含む。したがって、本明細書で述べる免疫原性産物は、アミノ酸配列V
18F
19F
20A
21E
22D
23V
24G
25S
26N
27K
28G
29A
30I
31I
32G
33[配列番号2;Aβ(18−33)]と62.6%以上、68.75%以上、75%以上、81.25以上、87.5%以上または93.75%の同一性を有するAβアミノ酸配列を含む。
【0115】
「同一性」という用語は、特定の比較ウィンドウまたはセグメントにわたるアミノ酸ごとの2つの配列の近縁性を指す。したがって、同一性は、2つのアミノ酸配列の間の同一性、一致または同等性の程度と定義される。「配列同一性の百分率」は、特定の領域にわたる2つの最適に整列させた配列を比較し、一致した位置の数を得るために同一のアミノ酸が両配列に存在する位置の数を決定し、そのような位置の数を比較しているセグメントにおける位置の総数で割り、結果に100を掛けることによって計算される。配列の最適な整列は、Smith & Waterman、Appl.Math.、2巻、482頁、1981年のアルゴリズムにより、Needleman & Wunsch、J.Mol.Biol.、48巻、443頁、1970年のアルゴリズムにより、Pearson & Lipman、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)、85巻、2444頁、1988年の方法により、および関連アルゴリズムを実行するコンピュータプログラム(例えば、Clustal Macaw pileup(http://cmgm.stanford.edu/biochem218/11Multiple.pdf;Higginsら、CABIOS.5L151−153、1989年)、FASTDB(Intelligenetics)、BLAST(National Center for Biomedical Information;Altschulら、Nucleic Acids Research、25巻、3389−3402頁、1997年)、PILEUP(Genetics Computer Group、Madison、WI)またはGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0、Genetics Computer Group、Madison、WI))により行うことができる。
【0116】
本発明の一実施形態によれば、本発明の免疫原性産物により含まれるアミノ酸配列は、ループ(同義語:ターン)を含む特定の二次構造を特徴とする。ループ(またはターン)は、本明細書で用いているように、少なくとも2つのCα原子の近距離接近(通常<7Å)を定義することを意味する。
【0117】
適切なループは、α、β、γおよびπループである。本発明の一実施形態によれば、ループは、βループである。βループは、本明細書で用いているように、ドナーおよびアクセプター残基が3つの残基により分離されている水素結合(複数可)(i→i+/−3H結合)を特徴とするループを定義することを意味する。
【0118】
本発明の特定の実施形態によれば、ループは、βヘアピンループである。βヘアピンループは、本明細書で用いているように、ペプチド主鎖の方向が逆であり、側面にある二次構造要素が相互作用する、ループを定義することを意味する。
【0119】
本発明の特定の実施形態によれば、好ましくはβヘアピンループであり得る、ループは、V
24G
25S
26N
27[配列番号10;Aβ(24−27)]およびD
23V
24G
25S
26N
27K
28[配列番号11;Aβ(23−28)]から選択される配列を含む。
【0120】
特に、本明細書で述べた免疫原性産物のアミノ酸配列は、分子内逆平行βシートを形成する。逆平行βシートは、本明細書で用いているように、一般的にねじれたひだ折れシートを形成する、3つ以上の水素結合により横方向に連結された少なくとも2つのβストランドのアセンブリーを定義することを意味する。βストランドは、ペプチド主鎖がほぼ完全に伸びた一般的に3−10アミノ酸を含むアミノ酸の連なりである。
【0121】
本発明の関連態様において、本明細書で述べた免疫原性産物は、逆平行βシートを形成するβストランドが、ループ、好ましくは本明細書で定義したβヘアピンループを介して連結されているアミノ酸配列を含む。
【0122】
前記態様の特定の実施形態によれば、F
19F
20A
21[配列番号8;Aβ(19−21)]およびA
30I
31I
32[配列番号9;Aβ(30−32)]に対応する産物のアミノ酸配列部分は、逆平行に配向している。
【0123】
突然変異タンパク質Aβペプチドのオリゴマーはさらに、2つ以上の突然変異タンパク質Aβペプチドの間の固有の相互作用を特徴とする。
【0124】
本発明の一態様において、本明細書で述べた免疫原性産物は、アミノ酸配列V
18F
19F
20A
21E
22D
23V
24G
25S
26N
27K
28G
29A
30I
31I
32G
33L
34M
35V
36G
37G
38V
39[配列番号3;Aβ(18−39)]と72%以上、77%以上、81%以上、86%以上、90%以上または95%以上の同一性を有するAβアミノ酸配列を含む。
【0125】
本発明の関連態様において、前記免疫原性産物は、第2のアミノ酸配列L
B34M
B35V
B36G
B37G
B38(配列番号5)と平行に配向している第1のアミノ酸配列L
A34M
A35V
A36G
A37G
A38[配列番号5;Aβ(34−38)]を含む。この場合、M
A35(NH)−V
B36(NH)、G
A37(NH)−G
B38(NH)、L
A34(NH)−L
B34(C
δH
3)、M
A35(NH)−V
B36(CγH
3)からなる群から選択される少なくとも1つの原子対のプロトン間距離は、1.8から6.5オングストロームであり得る。
【0126】
本発明のさらなる関連態様において、前記免疫原性産物は、第2のアミノ酸配列G
B33L
B34M
B35V
B36G
B37G
B38V
B39(配列番号6)と平行に配向している第1のアミノ酸配列G
A33L
A34M
A35V
A36G
A37G
A38V
A39[配列番号6;Aβ(33−38)])を含む。この場合、G
A33(NH)−G
B34(NH)、M
A35(NH)−V
B36(NH)、G
A37(NH)−G
B38(NH)、L
A34(NH)−L
B34(C
δH
3)、M
A35(NH)−V
B36(CγH
3)、G
A38(NH)−V
B39(CγH
3)およびV
A39(NH)−V
B39(CγH
3)からなる群から選択される少なくとも1つの原子対のプロトン間距離は、1.8から6.5オングストロームであり得る。
【0127】
本発明のさらなる関連態様において、前記免疫原性産物は、2つのAβアミノ酸配列の間の分子間平行βシートを含む。本発明の特定の態様において、前記分子間平行βシートは、第1のアミノ酸配列G
A33L
A34M
A35V
A36G
A37G
A38V
A39[配列番号7;Aβ(33−39)]および第2のアミノ酸配列G
B33L
B34M
B35V
B36G
B37G
B38V
B39(配列番号7)を含む。この場合、原子対G
A33(CO)−L
B34(N)、L
B34(CO)−M
A35(N)、M
A35(CO)−V
B36(N)、V
B36(CO)−G
A37(N)およびG
B37(CO)−G
A38(N)は、3.3±0.5Åの距離にあり得る。COは、主鎖酸素原子を示し、残基のファイ(φ)角度は、−180から−30の範囲にあり、残基のプサイ(ψ)角度は、約60から180までまたは約−180から−150までの範囲にある。
【0128】
逆平行βシートの構造を定めるプロトン間距離は、主鎖アミド間ならびに主鎖アミドおよび側鎖間の分子内核オーバーハウザー効果(NOE)により決定することができる。
【0129】
平行βシートの構造を定めるプロトン間距離は、主鎖NH−NH間ならびに主鎖NHおよび側鎖のメチル基間の分子間NOEにより決定することができる。
【0130】
分子内NOEと分子間NOEは、例えば、参照により本明細書に組み込む、国際公開第2007/064917号、とりわけ実施例V、part G、NMR図に記載されているように、異なる同位体標識試料を用いて区別することができる。
【0131】
NMRデータの解析によるNOE由来の距離拘束を用いて、例えば、模擬アニーリングプロトコール[M.Nilgesら、FEBS Lett.229巻、317−324頁、(1988年)]を用いることによりプログラムCNX[A.T.Brungerら、Acta Crystallogr.D54(Pt5)、905−21頁、(1998年)]を用いて構造を計算し、それにより、さらに2つの原子間の分子内および/または分子間距離を得ることができる。
【0132】
本発明の一態様において、本明細書で述べた免疫原性産物は、アミノ酸配列V
12H
13H
14Q
15K
16L
17V
18F
19F
20A
21E
22D
23V
24G
25S
26N
27K
28G
29A
30I
31I
32G
33L
34M
35V
36G
37G
38V
39[配列番号4;Aβ(12−39)]の一部(X−Y)と62.5%以上、64%以上、67%以上、71%以上、75%以上、78%以上、82%以上、85%以上、89%以上、92%以上または96%以上の同一性を有するAβアミノ酸配列を含み、Xは、数12..18からなる群から選択され、Yは、数33..39からなる群から選択される。
【0133】
本発明の関連態様において、前記アミノ酸配列の少なくとも2つの非隣接残基は、例えば、直接共有結合によりまたはリンカーを介して互いに共有結合している。特に、[配列番号4の残基2−12;Aβ(12−39)]のV
12、H
13、H
14、Q
15、K
16、L
17、V
18、F
19、F
20、A
21、E
22またはD
23に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つおよび[配列番号4の残基17−28;Aβ(12−39)]のK
28、G
29、A
30、I
31、I
32、G
33、L
34、M
35、V
36、G
37、G
38、V
39に対応するアミノ酸残基の少なくとも1つが互いに共有結合している。
【0134】
2つのアミノ酸残基の間の共有結合は、当技術分野で周知の様々な手段により、例えば、ジスルフィド架橋形成またはクロスリンク技術により確立することができる。とりわけ、アミノ酸残基の側鎖を互いに結合させることができる。とりわけ官能基、例えば、チオール、アミノ、カルボキシルまたはヒドロキシル基を有する側鎖は、ジスルフィド架橋を形成する2つのシステイン残基のように、直接的に、またはリンカーを介して間接的に互いに結合させることができる。したがって、他のアミノ酸残基に共有結合するアミノ酸残基は、とりわけシステイン、リシン、アスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群から選択されるアミノ酸残基であり得る。
【0135】
タンパク質のクロスリンク結合は、長く、網羅的歴史を有し、大量の文献先例がある。特異的な共有結合性クロスリンクが天然または非天然アミノ酸側鎖間に作製されることを可能にする当業者に公知のあらゆる方法論は、本発明で想定される位置特異的クロスリンクを形成するために用いることができる。この方法論のいくつかの例を下に示す。
【0136】
当業者に公知である多数の化学クロスリンク剤が存在する。本発明のために、好ましいクロスリンク剤は、ホモ二官能性およびヘテロ二官能性クロスリンク剤を含み、段階的にアミノ酸を連結する適切性のためヘテロ二官能性クロスリンク剤が好ましい。
【0137】
また、ヘテロ二官能性クロスリンク剤は、より特異的結合を確立し、それにより、望ましくない副反応の発生を低減させる能力を備えている。
【0138】
様々なヘテロ二官能性クロスリンク剤が当技術分野で公知である。
【0139】
これらは、2つのアミノ(−NH
2)基、1つのアミノおよび1つのチオール(もしくはスルフヒドリル、すなわち、−SH)基または2つのチオール基間の結合を形成するためのヘテロ二官能性クロスリンク剤を含む。
【0140】
ヘテロ二官能性クロスリンク剤の一部として有用な1つの反応性基は、アミン反応性基である。一般的なアミン反応性基は、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルを含む。NHSエステルは、わずかに酸性から中性(pH6.5−7.5)条件下で遊離アミン(例えば、リシン残基)と数分で特異的に反応する。
【0141】
N−ヒドロキシスクシンイミド部分を有するクロスリンク剤は、一般的により大きい水溶解度を有する、それらのN−ヒドロキシスルホスクシンイミド類似体の形でも用いることもできることを注目されたい。
【0142】
ヘテロ二官能性クロスリンク剤の一部として有用な別の反応性基は、チオール反応性基である。一般的なチオール反応性基は、マレイミド、ハロゲンおよびピリジルジスルフィドを含む。マレイミドは、好ましくはわずかに酸性から中性(pH6.5−7.5)条件下で、遊離チオール基(例えば、システイン残基における)と数分で特異的に反応する。ハロゲン(ヨードアセチル官能基)は、−SH基と生理的pHで反応する。これらの反応性基の両方は、安定なチオエーテル結合の形成をもたらす。
【0143】
例えば、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)またはスルホ−SMCCは、例えば、Lys側鎖のアミンと例えば、Cys側鎖の遊離−SHとの間のクロスリンクを形成するために用いることができる。アミン反応性N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルは、アミノ基(例えば、Lys残基のアミノ基)と反応して、安定なアミド結合を形成する。得られるマレイミド活性化ペプチドは、次に同じペプチドのスルフヒドリル基(例えば、Cys残基のそれ)と反応して、ジスルフィド結合を形成し、それにより共有結合を確立する。この化学は、文献に十分に記載されている。例えば、以下を参照のこと。Uto I.ら(1991年)、J.Immunol.Methods、138巻、87−94頁;Bieniarz C.ら(1996年)、Extended Length Heterobifunctional Coupling Agents for Protein Conjugations、Bioconjug.Chem.、7巻、88−95頁;Chrisey L.A.ら(1996年)、Nucleic Acids Res.、24巻(15号)、3031−3039頁;Kuijpers W.H.ら(1993年)、Bioconjug.Chem.、4巻(1号)、94−102頁;Brinkley M.A.(1992年)、A survey of methods for preparing protein conjugates with dyes、haptens and crosslinking reagents、Bioconjugate Chem.、3巻、2−13頁;Hashida S.ら(1984年)、More useful maleimide compounds for the conjugation of Fab to horseradish peroxidase through thiol groups in the hinge、J.Appl.Biochem.、6巻、56−63頁;Mattson G.ら(1993年)、A practical approach to crosslinking、Molecular Biology Reports、17巻、167−183頁;Partis M.D.(1983年)、Crosslinking of proteins by omega−maleimido alkanoyl N−hydroxysuccinimide esters、J.Protein.Chem.、2巻、263−277頁;Samoszuk M.K.ら(1989年)、A peroxide−generating immunoconjugate directed to eosinophil peroxidase is cytotoxic to Hodgkin’s disease cells in vitro、Antibody、Immunoconjugates and Radiopharmaceuticals、2巻、37−45頁;Yoshitake S.ら(1982年)、Mild and efficient conjugation of rabbit Fab and horseradish peroxidase using a maleimide compound and its use for enzyme immunoassay、J.Biochem.、92巻、1413−1424頁。
【0144】
さらなるヘテロ二官能性クロスリンク剤、例えば、[N−ε−マレイミドカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル、N−[γ−マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミドエステル、N−[κ−マレイミドウンデカノイルオキシ]スクシンイミドエステル、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)またはそれらのスルホスクシンイミド類似体(例えば、スルホ−MBS)を同様な方法で用いることができる。
【0145】
例えば、Lys側鎖のアミンと例えば、Cys側鎖の遊離−SHとの間のクロスリンクを形成するために用いることができるヘテロ二官能性クロスリンク剤のさらなる例は、スクシンイミジル−6−[(3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート)−ヘキサノエート(LC−SPDP)またはスルホ−LC−SPDPである。アミン反応性N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルは、アミノ基(例えば、Lys残基のそれ)と反応して、安定なアミド結合を形成する。得られるペプチドは、次に同じペプチドのスルフヒドリル基(例えば、Cys残基のそれ)と反応して、ジスルフィド結合を形成し、それにより共有結合を確立するピリジルジスルフィド基を有する。この化学は、文献に十分に記載されている。例えば、以下を参照のこと。Carlsson J.ら(1978年)、Biochem.J.、173巻、723−737頁;Stan R.V.(2004年)、Am.J.Physiol.Heart Circ.Physiol.、286巻、H1347−H1353頁;Mader C.ら(2004年)、J.Bacteriol.、186巻、1758−1768頁。
【0146】
さらなるヘテロ二官能性クロスリンク剤、例えば、4−スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)−トルエン(SMPT)またはスルホ−SMPT、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート(SPDP)またはスルホ−SPDPを同様な方法で用いることができる。
【0147】
例えば、Lys側鎖のアミンと例えば、Cys側鎖の遊離−SHとの間のクロスリンクを形成するために用いることができるヘテロ二官能性クロスリンク剤のさらなる例は、N−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート(SATA)またはスルホ−SATAである。アミン反応性N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルは、アミノ基(例えば、Lys残基のそれ)と反応して、安定なアミド結合を形成する。得られるペプチドの保護−SH基は、次にヒドロキシルアミンによる処理により脱保護され、得られる遊離−SHは、次に同じペプチドのスルフヒドリル基(例えば、Cys残基のそれ)と反応して、ジスルフィド結合を形成し、それにより共有結合を確立する。
【0148】
さらなるヘテロ二官能性クロスリンク剤、例えば、N−スクシンイミジル−S−アセチルチオプロピオネートまたはそのスルホスクシンイミド類似体を同様な方法で用いることができる。
【0149】
さらなる適切なヘテロ二官能性クロスリンク剤は、N−スクシンイミジル−(4−ヨードアセチル)−アミノベンゾエート(SIAB)またはスルホ−SIABを含む。
【0150】
特異的で、段階的なクロスリンクもアミノ(−NH
2)およびカルボキシ(−COOH)基間に形成させることができる。
【0151】
例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)は、例えば、Lys側鎖のアミンと酸側鎖の遊離COOHとのクロスリンクを形成するために用いることができる。カルボキシ反応性カルボジイミドは、カルボキシ基(例えば、Asp、Glu、Dab(2,4−ジアミノ酪酸)、Dap(2,4−ジアミノプロピオン酸)またはオルニチン残基のそれ)と反応して、不安定o−アシルイソ尿素エステルを生成する。反応性o−アシルイソ尿素エステルは、次に同じペプチドのアミノ基(例えば、Lys残基のそれ)と反応して、アミド結合を形成し、それにより共有結合を確立する。あるいは、反応性o−アシルイソ尿素エステルは、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシスルホスクシンイミドまたはスルホ−N−ヒドロキシスルホスクシンイミドと反応させて、準安定性アミン反応性NHSエステルを得ることができ、これは、次に同じペプチドのアミノ基(例えば、Lys残基のそれ)と反応して、アミド結合を形成し、それにより共有結合を確立する。この化学は、文献に十分に記載されている。例えば、以下を参照のこと。DeSilva N.S.(2003年)、Interactions of Surfactant Protein D with Fatty Acids、Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.、29巻、757−770頁;Grabarek Z.およびGergely、J.(1990年)、Zerolength crosslinking procedure with the use of active esters、Anal.Biochem.、185巻、131−135頁;Sinz A.(2003年)、J.Mass Spectrum.、38巻、1225−1237頁;Staros J.V.、Wright R.W.およびSwingle D.M.(1986年)、Enhancement by N−hydroxysulfosuccinimide of water−soluble carbodiimide−mediated coupling reactions、Anal.Biochem.、156巻、220−222頁;Taniuchi M.ら(1986年)、Induction of nerve growth factor receptor in Schwann cells after axotomy、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、83巻、4094−4098頁。
【0152】
ヘテロ二官能性クロスリンク剤は、Lys(N3)およびプロパギルグリシンアミノ酸の反応も含む。この反応は、溶液中または樹脂上で行わせることができる(例えば、Jiang S.、(2008年)、Curr.Org.Chem.、12巻、1502−1542頁およびその中における参考文献に記載されているように)。
【0153】
特定のクラスのクロスリンク剤、とりわけヘテロ二官能性クロスリンク剤は、光反応性クロスリンク剤を含む。
【0154】
例えば、(SDA)は、例えば、Lys側鎖のアミンと例えば、別のLys側鎖のアミンとの間のクロスリンクを形成するために用いることができる。アミン反応性N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルは、アミノ基(例えば、Lys残基のそれ)と反応して、安定なアミド結合を形成する。得られるペプチドは、UV光への曝露により、同じペプチドのアミノ基(例えば、Lys残基のそれ)と反応して、安定な結合を形成し、それにより共有結合を確立する、感光性ジアジリン部分を有する。
【0155】
さらなる適切な光反応性クロスリンク剤は。ビス−[β−(4−アジドサリチルアミド)−エチル]−ジスルフィド(BASED)およびN−スクシンイミジル−6−(4’−アジド−2’−ニトロフェニルアミノ)−ヘキサノエート(SANPAH)を含む。
【0156】
ヘテロ二官能性クロスリンク剤に加えて、ホモ二官能性クロスリンク剤を含むいくつかの他のクロスリンク剤が存在する。
【0157】
これらは、2つのアミノ(−NH
2)基の間の結合を形成するためのホモ二官能性クロスリンク剤を含む。
【0158】
例えば、ジスクシンイミジルスベレート(DSS)は、例えば、Lys側鎖のアミンと例えば、別のLys側鎖のアミンとの間のクロスリンクを形成するために用いることができる。アミン反応性N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルは、アミノ基(例えば、Lys残基のそれ)と反応して、安定なアミド基を形成する。得られるペプチドは、次に同じペプチドの別のアミノ基(例えば、Lys残基のそれ)と反応して、さらなる安定なアミド基を形成し、それにより共有結合を確立する。
【0159】
さらなる適切なホモ二官能性クロスリンク剤は、ビスマレイミドヘキサン(BMH)およびピメルイミド酸ジメチル(DMP)を含む。
【0160】
さらなる適切なホモ二官能性クロスリンク剤は、2つのシステイン間のメチレンジチオエーテル結合を含む。ペプチドとTBAF(テトラブチルアンモニウムフルオリド)との反応は、部分的に脱保護されたペプチドを含有する樹脂上で行わせ、その後、切断することができる(例えば、Uekiら、(1999年)Bioorg.Med.Chem.Lett.、9巻、1767−1772頁およびUekiら、in Peptide Science、1999、539−541頁を参照)。
【0161】
さらなる適切なホモ二官能性クロスリンクシステムは、アリルグリシン(例えば、Wels B.ら、(2005年)Bioorg.Med.Chem.、13巻、4221−4227頁参照)または修飾アミノ酸、例えば、(S)−Fmoc−α(2’ペンテニル)アラニン(例えば、Walensky L.D.ら、(2004年)Science、305巻、1466−1470頁;Schafmeister C.E.ら、(2000年)J.Am.Chem.Soc.、122巻、5891−5892頁;Qiu W.ら、(2000年)Tetrahedron、56巻、2577−2582頁;Belokon Y.N.ら、(1998年)Tetrahedron:Asymmetry、9巻、4249−4252頁;Qiu W.、(2008年)Anaspec poster at 20th American Peptide Society Annual Meetingを参照)の間の閉環メタセシス反応を含む。これらの反応は、それぞれ保護ペプチド断片上または樹脂上で、溶液中で行わせることができる。
【0162】
ホモおよびヘテロ二官能性クロスリンク剤は、スペーサーアームまたは架橋を含み得る。架橋は、2つの反応性末端を連結する構造である。架橋の最も明らかな特性は、立体障害に対するその効果である。いくつかの場合に、より長い架橋は、2つのアミノ酸残基を連結するのに必要な距離により容易に橋架けすることができる。
【0163】
2つの非隣接アミノ酸残基の間の1つの共有結合は、十分な安定化をもたらし得るが、本発明の免疫原性産物は、2つ以上の共有結合を含み得る。
【0164】
結合が形成することを可能にする条件は、当然、形成する結合の種類に依存し、当業者により容易に決定され得る。本明細書に示す結合およびそれらの化学の説明に言及する。
【0165】
本発明の免疫原性産物が所望の二次構造を有することを保証するためにオリゴマーおよび結合の形成を独立に用いることができる。したがって、本発明は、そのような結合を含むAβ突然変異タンパク質オリゴマーおよびそのような結合を有するモノマーAβ突然変異タンパク質ペプチドを提供する。
【0166】
さらに、本発明の免疫原性産物が所望の二次構造を有することを保証するためにオリゴマーおよび結合の形成を用いることができる。例えば、結合形成は、適切なオリゴマー形成を促進する助けとなり、また逆の場合も同様であり得る。
【0167】
原則として、オリゴマー形成が結合形成に先行し得る。あらかじめ形成されたオリゴマーが、結合が形成されることを誘導または促進する場合、これは、有利である。あるいは、結合形成がオリゴマー形成に先行し得る。あらかじめ形成された結合がオリゴマー形成を誘導または促進する場合、これは、有利である。オリゴマー形成および結合形成は、同時にも起こり得る。
【0168】
Aβ突然変異タンパク質ペプチドおよびオリゴマーの両方は、最終免疫原性産物により含まれるアミノ酸配列と異なるペプチドを用いて調製することができる。例えば、出発ペプチドは、その後、合成中に例えば、タンパク質分解的切断により除去されるそのCおよび/またはN末端における付加的なアミノ酸を含み得る。
【0169】
本発明の一実施形態において、オリゴマーは、ペプチドにより形成され、その後1つ以上のペプチド内共有結合(複数可)により安定化される。
【0170】
本発明の別の実施形態において、オリゴマーは、ペプチドにより形成され、1つ以上のペプチド内共有結合(複数可)により安定化され、その後化学的または酵素的手段によって関連構造要素をより十分に示す切断型に処理される。あるいは、オリゴマーは、ペプチドにより形成され、化学的または酵素的手段によって関連構造要素をより十分に示す切断型に処理され、その後、1つ以上のペプチド内共有結合(複数可)により安定化される。
【0171】
本発明のさらなる別の実施形態において、ペプチドを用いて、関連構造要素を形成する。ここで、ペプチドは、オリゴマーにおける隣接するペプチドとの相互作用によるのではなく、1つ以上のペプチド内共有結合によって適切な立体配座に保持されることとなる。適切なペプチド内共有結合(複数可)により安定化された、これらの免疫原性産物は、関連構造要素をモノマーとして示すことが想定される。
【0172】
「Aβ突然変異タンパク質」という用語は、本明細書で用いているように、1つ以上のアミノ酸置換によりヒトアミロイドベータ(Aβ)タンパク質と異なる変異型Aβポリペプチドを指す。とりわけ、Aβ突然変異タンパク質は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれ以上の点突然変異により配列番号1に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドと異なるAβである。前記点突然変異は、好ましくはAβ(18−33)、Aβ(18−25)、Aβ(19−24)内、最も好ましくはAβ(20−22)内のホットスポットに位置する。
【0173】
本明細書で述べた免疫原性産物により含まれるAβアミノ酸配列に存在し得る例示的なアミノ酸置換を表1に要約する。
【0175】
本発明の一態様において、本明細書で述べた免疫原性産物により含まれるAβアミノ酸配列は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのアミノ酸が他のアミノ酸によって置換されていることにより配列番号2に示すアミノ酸配列と異なっているAβ(18−33)の変異体である。前記アミノ酸置換は、表1に示す点突然変異から選択することができる。例えば、本明細書で述べた免疫原性産物により含まれるAβアミノ酸配列が2つのアミノ酸置換を有することにより配列番号2のアミノ酸配列と異なっている場合、これらのアミノ酸置換の1つまたは両方を表1に示す点突然変異から選択することができる。前記2つのアミノ酸置換は、好ましくは配列2のアミノ酸位置E22/G25、F20/E22、F20/I31、A21/E22、A21/D23およびE22/S26に対応するホットスポットに、とりわけアミノ酸位置E22/G25およびF20/E22に対応するホットスポット存在する。本明細書で述べた免疫原性産物により含まれるAβアミノ酸配列が3つ、4つ、5つまたは6つのアミノ酸置換を有することにより配列番号2のアミノ酸配列と異なっている場合、これらのアミノ酸置換の1つ、2つ以上またはすべてを表1に示す点突然変異から選択することができる。
【0176】
本発明の特定の実施形態において、本明細書で述べた免疫原性産物により含まれるAβアミノ酸配列は、E22AおよびE22Vから選択される1つのアミノ酸置換を有することにより配列番号2のアミノ酸配列と異なっている。
【0177】
本発明のさらなる特定の実施形態において、本明細書で述べた免疫原性産物により含まれるAβアミノ酸配列は、二重突然変異F20G/E22AおよびE22A/G25Aから選択される2つのアミノ酸置換を有することにより配列番号2のアミノ酸配列と異なっている。
【0178】
本発明の関連態様において、本明細書で述べた免疫原性産物により含まれるAβアミノ酸配列は、異なるアミノ酸によって置換されている1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのアミノ酸によりアミノ酸配列V
18F
19F
20A
21E
22D
23V
24G
25S
26N
27K
28G
29A
30I
31I
32G
33(配列番号2;Aβ(18−33))と異なっている。前記アミノ酸配列の例は、
V
18に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、アスパラギン、セリン、トレオニン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンからなる群から選択され、
F
19に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、アスパラギン、セリン、トレオニン、グルタミン、アラニン、グリシン、プロリン、バリン、ロイシン、メチオニンおよびイソロイシンからなる群から選択され、
F
20に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、アスパラギン、セリン、トレオニン、グルタミン、プロリン、アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、メチオニンおよびイソロイシンからなる群から選択され、
A
21に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、グリシン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンからなる群から選択され、
E
22に対応するアミノ酸が、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アラニン、システイン、アスパラギン、セリン、トレオニン、プロリンおよびグルタミンからなる群から選択され、
D
23に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、システイン、アスパラギン、セリン、トレオニンおよびグルタミンからなる群から選択され、
V
24に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、アスパラギン、セリン、トレオニン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンからなる群から選択され、
G
25に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、アスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群から選択され、
S
26に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンからなる群から選択され、
N
27に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、アスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群から選択され、
K
28に対応するアミノ酸が、アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、システイン、アスパラギン、セリン、トレオニンおよびグルタミンからなる群から選択され、
G
29に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、アスパラギン、セリン、トレオニン、グルタミン、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンおよびプロリンからなる群から選択され、
A
30に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、アスパラギン、セリン、トレオニン、グルタミン、グリシン、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンおよびプロリンからなる群から選択され、
I
31に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、アスパラギン、セリン、トレオニン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンからなる群から選択され、
I
32に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、アスパラギン、セリン、トレオニン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンからなる群から選択され、
G
33に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、アスパラギン、セリン、トレオニン、グルタミン、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンおよびプロリンからなる群から選択され、
F
20に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、アスパラギン、セリン、トレオニン、グルタミン、プロリン、アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、メチオニンおよびイソロイシンからなる群から選択され、E
22に対応するアミノ酸が、アラニン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、イソロイシン、トリプトファン、システイン、アスパラギン、セリン、トレオニン、チロシンおよびロイシンからなる群から選択され、
F
20に対応するアミノ酸が、グリシンであり、E
22に対応するアミノ酸が、アラニンであり、
F
20に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、アスパラギン、セリン、トレオニン、グルタミン、プロリン、アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、メチオニンおよびイソロイシンからなる群から選択され、I
31に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、アスパラギン、セリン、トレオニン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンからなる群から選択され、
A
21に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、グリシン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンからなる群から選択され、E
22に対応するアミノ酸が、アラニン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、イソロイシン、トリプトファン、システイン、アスパラギン、セリン、トレオニン、チロシンおよびロイシンからなる群から選択され、
A
21に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、グリシン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンからなる群から選択され、D
23に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、システイン、アスパラギン、セリン、トレオニンおよびグルタミンからなる群から選択され、
E
22に対応するアミノ酸が、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アラニン、システイン、アスパラギン、セリン、トレオニン、プロリンおよびグルタミンからなる群から選択され、G
25に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、アスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群から選択され、
E
22に対応するアミノ酸が、バリン、ロイシン、メチオニン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アラニン、システイン、アスパラギン、セリン、トレオニン、プロリンおよびグルタミンからなる群から選択され、S
26に対応するアミノ酸が、ヒスチジン、アルギニン、リシン、プロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンからなる群から選択される
アミノ酸配列を含む。
【0179】
より具体的には、本発明の免疫原性産物は、
【0180】
【化3】
からなる群から選択されるアミノ酸配列の一部(X−Y)と同一であるアミロイドβ(Aβ)アミノ酸配列を含み、Xは、数1..18、4..18、12..18からなる群から選択されまたは18であり、Yは、数33..43、33..42、33..41または33..40からなる群から選択される。特定の実施形態において、(X−Y)は、(1−42)、(4−42)、(12−42)または(18−42)からなる群から選択される。
【0181】
本発明の免疫原性産物は、とりわけ、上で定義した複数の特定のアミロイドβ(Aβ)アミノ酸配列を含むオリゴマーである。
【0182】
本発明はまた、本発明の精製免疫原性産物に関する。本発明の一実施形態によれば、精製免疫原性産物は、総Aβペプチドの80重量%を超える、好ましくは総Aβペプチドの90重量%を超える、好ましくは総Aβペプチドの95重量%を超える純度を有するものである。
【0183】
本発明の免疫原性産物は、アミロイドβ由来のアミノ酸配列に加えて、1つ以上のさらなる部分を含むことが好都合であり得る。例えば、診断応用は、免疫原性産物を標識することを必要とし得る。また、能動免疫において、能動免疫応用において好都合であることがわかっている部分を結合させることは、有利であり得る。
【0184】
したがって、本発明はまた、検出を促進する共有結合した基、好ましくは蛍光色素分子、例えば、フルオレセインイソチオシアネート、フィコエリスリン、Alexa−488、オワンクラゲ(Aequorea victoria)蛍光タンパク質、ダイナンギンボ属(Dictyosoma)蛍光タンパク質またはいずれかの組合せもしくはその蛍光活性誘導体;発色団;化学発光団、例えば、ルシフェラーゼ、好ましくはホタル(Photinus pyralis)ルシフェラーゼ、ビブリオ・フィシェリ(Vibrio fischeri)ルシフェラーゼまたはいずれかの組合せもしくはその蛍光活性誘導体;酵素的に活性な基、例えば、ペルオキシダーゼ、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはそのあらゆる酵素的に活性な誘導体;高電子密度基、例えば、重金属含有基、例えば、金含有基;ハプテン、例えば、フェノール由来ハプテン;強抗原性構造、例えば、抗原性であると予測されるペプチド配列、例えば、KolaskarおよびTongaonkarのアルゴリズムにより抗原性であると予測される;免疫原性産物に対する免疫応答を誘発することを促進する分子、例えば、血清アルブミン、オボアルブミン、スカシガイヘモシアニン、サイログロブリン、破傷風トキソイドおよびジフテリアトキソイドのような細菌由来のトキソイド、天然に存在するT細胞エピトープ、天然に存在するTヘルパー細胞エピトープ;pan DRエピトープ(「PADRE」;国際公開第95/07707号)のような人工T細胞エピトープまたは別の免疫刺激作用物、例えば、マンナン、トリパルミトイル−S−グリセリンシステインおよび同類のもの;別の分子に対するアプタマー;キレート基、例えば、ヘキサヒスチジニル;さらなる特異的タンパク質間相互作用を媒介する天然または天然由来タンパク質構造、例えば、fos/jun対のメンバー;磁性基、例えば、強磁性基;または放射性基、例えば、1H、14C、32P、35Sもしくは125Iまたはそのいずれかの組合せを含む基を含む、本明細書で定義した、免疫原性産物に関する。不都合な炎症誘発免疫応答Th1経路を避けることを視野に入れて、抗炎症経路(Th2経路)に対する免疫応答を誘導することができる分子、例えば、PADREのようなB細胞エピトープを含む分子を含む免疫原性産物は、能動免疫における特別な利点をもたらすと予想される(Petrushina I.ら、The Journal of Neuroscience、2007年、27巻(46号)、12721−12731頁、Woodhouse A.ら、Drugs Aging、2007年、24巻(2号)107−119頁も参照)。
【0185】
そのような基およびそれらを免疫原性産物に結合させる方法は、当技術分野で公知である。
【0186】
本発明の免疫原性産物は、多くの有用性を有する。例えば、それらは、1)免疫化に基づく介入療法(例えば、免疫原性産物は、アミロイド症を治療または防止するための能動免疫に使用することができる。)、2)診断検査(例えば、免疫原性産物は、アミロイド症を診断するために用いることができる。)、3)免疫原性産物に結合する抗体およびアプタマーのような作用物を得ること、ならびに4)免疫原性産物に結合する抗体およびアプタマーのような作用物を開発するための結晶学またはNMRに基づく構造ベースの設計研究に用いることができる。
【0187】
能動免疫において、Aβ(20−42)グロブロマーは、アルツハイマー病トランスジェニックマウスにおける認知障害を反転させるのに有効であることが示された。本発明の免疫原性産物は、そのプロファイルがAβ(20−42)グロブロマーにより誘導される免疫応答のプロファイルと同様である免疫応答を誘導することができる。
【0188】
したがって、本発明はまた、治療用の本明細書で定義した免疫原性産物に関する。
【0189】
一態様において、本発明は、本明細書で開示した免疫原性産物を含む組成物、とりわけ、ワクチンである、すなわち、能動免疫に用いることができる組成物に関する。特定の実施形態によれば、前記組成物は、医薬として許容される担体をさらに含む医薬組成物である。組成物は、完全フロイントアジュバント(CFA)またはアルミニウム塩を含むアジュバントのような医薬として許容されるアジュバントをさらに含み得る。
【0190】
本発明はまた、有効量の本明細書で開示した免疫原性産物を対象に投与することを含む、それを必要とする対象におけるアミロイド症を治療または防止する方法に関する。好ましくは、該産物は、能動免疫用である。
【0191】
関連態様において、本発明は、アミロイド症を治療または防止するのに、またとりわけ能動免疫のために使用する本明細書で開示した免疫原性産物に関する。
【0192】
ここにおける「アミロイド症」という用語は、身体の種々の組織における特定のタンパク質(アミロイド、線維状タンパク質およびそれらの前駆体)の異常なフォールディング、クランピング、凝集および/または蓄積を特徴とするいくつかの障害を意味する。アルツハイマー病およびダウン症候群では、神経組織が侵され、脳アミロイド血管症(CAA)では、血管が侵される。本発明の特定の実施形態によれば、アミロイド症は、アルツハイマー病(AD)およびダウン症候群のアミロイド症からなる群から選択される。
【0193】
能動免疫に関連して、免疫原性産物が患者のCNSにかなりの量で入ることができないならば、それはとりわけ好ましい。
【0194】
免疫原性産物を含む医薬組成物がAβオリゴマーに対する強い免疫反応、好ましくはAβオリゴマーのみに対する強い免疫反応、より好ましくはAβオリゴマーのみに対する強い非炎症性抗体ベースの免疫反応を誘導することができるならば、それもとりわけ好ましい。したがって、本発明の一実施形態において、医薬組成物は、免疫学的アジュバント、好ましくは免疫反応を非炎症性で、抗体ベースの型に向けて導くアジュバントおよびシグナル伝達分子、例えば、サイトカインを含む。そのようなアジュバントおよびシグナル伝達分子は、当業者に周知である。
【0195】
能動免疫用の医薬組成物が静脈内経路、筋肉内経路、皮下経路、鼻腔内経路および吸入からなる群から選択される経路を経て投与されるならば、それはとりわけ好ましい。組成物が、それぞれが1回、反復してまたは定期的に実施され得る、注射、ボーラス注入および連続注入から選択される方法により投与されるならば、それもとりわけ好ましい。
【0196】
本発明の特定の実施形態において、長期連続注入は、埋め込み型装置を用いることによって達成される。本発明のさらなる特定の実施形態において、組成物は、埋め込み型持続放出または制御放出デポ製剤として適用される。適切な製剤および装置は、当業者に公知である。任意の所定の経路に用いられる方法の詳細は、対象の疾患の病期および重症度ならびに総合医療パラメーターに依存し、好ましくは主治医または獣医の裁量で個別に決定される。
【0197】
本発明のとりわけ好ましい実施形態において、能動免疫用の医薬組成物は、医薬として許容される保存剤、医薬として許容される着色剤、医薬として許容される保護コロイド、医薬として許容されるpH調整剤および医薬として許容される浸透圧調節剤からなる群から選択される1つ以上の作用物を含む。そのような作用物は、当技術分野で記載されている。
【0198】
本明細書で用いているように、「有効量」という用語は、障害の重症度および/もしくは持続期間もしくはその1つ以上の症状を低減もしくは改善するのに、障害の進展を防止するのに、障害の退行をもたらすのに、障害に伴う1つ以上の症状の再発、発現、発症もしくは進行を防止するのに、障害を検出するのに、または別の療法(例えば、予防もしくは治療剤)の予防もしくは治療効果(複数可)を増強もしくは改善するのに十分である療法の量を指す。
【0199】
グロブロマー仮説に沿って、アミロイド症に罹患している対象は、内因性グロブロマーエピトープに対する免疫反応を発現すると考えられる。本発明の免疫原性産物は、前記エピトープと特異的に反応性である抗体と反応するので、オリゴマーは、同一である、または非常に類似したエピトープを示すと考えられる。
【0200】
したがって、本発明はまた、診断用の本明細書で定義した免疫原性産物に関する。
【0201】
一態様において、本発明は、アミロイド症を有すると疑われる対象からの試料を準備すること、試料を本明細書で開示した免疫原性産物と、該産物および抗体を含む複合体の形成に十分な時間および条件下で接触させることを含み、複合体の存在が、対象がアミロイド症を有することを示す、アミロイド症を診断する方法に関する。特定の実施形態によれば、少なくとも試料を接触させるステップは、エクスビボで、とりわけインビトロで行う。
【0202】
関連実施態様において、本発明は、アミロイド症を診断するのに用いる本明細書で開示した免疫原性産物に関する。
【0203】
したがって、本発明の免疫原性産物は、様々な診断方法およびアッセイに用いることができる。
【0204】
一実施形態において、この疾患を有すると疑われた患者におけるアミロイド症を診断する方法は、a)患者からの生体試料を単離するステップ、b)生体試料を本発明の免疫原性産物と、抗体/産物複合体の形成に十分な時間および条件下で接触させるステップ、c)得られた抗体/産物複合体にコンジュゲートを加え、コンジュゲートが結合抗体に結合することを可能にするのに十分な時間および条件下で置くステップであって、コンジュゲートが、検出可能なシグナルを発生することができるシグナル発生化合物に結合した抗体を含む、ステップ、ならびにd)シグナル発生化合物により発生されるシグナルを検出することによって生体試料に存在し得る抗体の存在を検出するステップを含み、シグナルは、患者におけるアミロイド症の診断を示す。特定の実施形態によれば、ステップb)、c)およびd)の少なくとも1つは、エクスビボで、とりわけインビトロで行う。さらなる特定の実施形態によれば、方法は、ステップa)を含まない。
【0205】
さらなる実施形態によれば、この疾患を有すると疑われた患者におけるアミロイド症を診断する方法は、a)患者からの生体試料を単離するステップ、b)生体試料を試料中の抗体に対して特異的な抗抗体と、抗抗体/抗体複合体の形成を可能にするのに十分な時間および条件下で接触させるステップ、c)得られた抗抗体/抗体複合体にコンジュゲートを加え、コンジュゲートが結合抗体に結合することを可能にするのに十分な時間および条件下で置くステップであって、コンジュゲートが、検出可能なシグナルを発生することができるシグナル発生化合物に結合した本発明の免疫原性産物を含む、ステップ、ならびにd)シグナル発生化合物により発生されるシグナルを検出するステップを含み、シグナルは、患者におけるアミロイド症の診断を示す。特定の実施形態によれば、前記ステップb)およびc)の少なくとも1つは、エクスビボで、とりわけインビトロで行う。さらなる特定の実施形態によれば、方法は、ステップa)を含まない。
【0206】
より具体的には、本発明の免疫原性産物は、グロブロマーエピトープを示し、グロブロマーエピトープは、内因性免疫反応を生じさせる内因性抗体であると考えられるので、アミロイド症の診断は、本発明の免疫原性産物に特異的に結合する自己抗体の存在の判定に関連付けることができる。
【0207】
したがって、本発明はまた、免疫原性産物に結合する自己抗体を対象において検出するための組成物を調製するための本明細書で定義した免疫原性産物の使用に関する。したがって、本発明はまた、対象における自己抗体を検出する方法であって、対象に本明細書で定義した免疫原性産物を投与し、抗体および免疫原性産物により形成される複合体を検出することを含み、複合体の存在が自己抗体の存在を示す、方法に関する。特定の実施形態によれば、少なくとも試料を接触させるステップは、エクスビボで、とりわけインビトロで行う。本発明の特定の実施形態において、対象は、いずれかの形のアミロイド症、例えば、アルツハイマー病を有すると疑われ、自己抗体を検出することは、対象におけるいずれかの形のアミロイド症、例えば、アルツハイマー病の存在または非存在を診断するためである。
【0208】
「試料」という用語は、本明細書で用いているように、その最も広い意味で用いられる。「生体試料」は、本明細書で用いているように、生物または以前に生存していたものからの任意の量の物質を含むが、それに限定されない。そのような生物は、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ、ウサギおよび他の動物を含むが、それらに限定されない。そのような物質は、血液、血清、尿、滑液、細胞、臓器、組織、骨髄、リンパ節および脾臓を含むが、それらに限定されない。
【0209】
適切な試料は、特に、本明細書で述べる方法で試験することができる生体液を含む。これらは、血漿、全血、乾燥全血、血清、脳脊髄液または組織および細胞の水性もしくは有機水性抽出液を含む。
【0210】
アミロイド症を有すると疑われる対象がアミロイド症を有するまたはアミロイド症になる高いリスクを有する対象であるならば、それはとりわけ好ましい。
【0211】
本発明の特定の実施形態によれば、本明細書で述べた自己抗体を検出することは、自己抗体/抗原複合体の解離をもたらす調製物(試料)の前処理をさらに含む。抗原に依然として結合し得る自己抗体の量を決定するために前記前処理を含まない方法を用いることができるが、そのような前処理を含む方法は、したがって、調製物(試料)に存在する自己抗体の総量を決定するために用いることができる。さらに、両方法は、複合体化自己抗体の量を間接的に決定することを可能にする。
【0212】
自己抗体/抗原複合体の解離を誘発するのに適する条件は、当業者に公知である。例えば、例えば、得られる調製物(試料)のpHが1から5の範囲、好ましくは2から4の範囲、とりわけ2から3の範囲にあるような緩衝液を用いて、調製物(試料)を酸で処理することが好都合であり得る。適切な緩衝液は、生理的濃度の塩、例えば、NaClおよび酢酸を含む。抗体/抗原複合体の分離の方法は、その全体を本明細書に組み込む、国際公開第2005/037209号に記載された。
【0213】
手短に述べると、抗体/抗原複合体における抗原から抗体を解離することは、抗体/抗原複合体を含有する試料を解離緩衝液と接触させるステップ、試料をインキュベートするステップ、および試料を任意選択的に濃縮するステップを含む。
【0214】
解離緩衝液は、本明細書で示した範囲のpHを有するPBS緩衝液であり得る。例えば、約1.5%BSAおよび0.2Mグリシン−アセテートpH2.5または140mM NaClおよび0.58%酢酸を含有するPBS緩衝液が適切である。
【0215】
20から40℃の範囲の温度における例えば、10から30、例えば、20分間のような数分間のインキュベーションが十分であることがわかった。
【0216】
濃縮は、それ自体が公知の方法で、例えば、試料をCentriprep YM30(Amincon Inc.)上に通すことによって達成することができる。
【0217】
本発明の一実施形態において、本発明の免疫原性産物を固相上に被覆する。次いで試料(例えば、全血、脳脊髄液、血清等)を固相と接触させる。抗体、例えば、自己抗体が試料中に存在する場合、そのような抗体は、固相上の免疫原性産物に結合し、次いで直接的または間接的方法により検出される。直接的方法は、複合体自体の存在、ひいては抗体の存在を単に検出することを含む。間接的方法において、コンジュゲートを結合抗体に加える。コンジュゲートは、シグナル発生化合物または標識に結合させた、一次結合抗体に結合する、二次抗体を含む。二次抗体が、結合一次抗体に結合した場合、シグナル発生化合物は、測定可能シグナルを発生する。そのようなシグナルは、試料中の一次抗体の存在を示す。
【0218】
診断イムノアッセイに用いられる固相の例は、多孔性および非多孔性材料、ラテックス粒子、磁性粒子、微粒子(米国特許第5,705,330号参照)、ビーズ、膜、マイクロタイターウエルおよびプラスチックチューブである。固相材料およびコンジュゲートに存在する抗原または抗体の標識の方法の選択は、所望の場合、所望のアッセイ方式の性能特性に基づいて決定される。
【0219】
本明細書で述べたように、コンジュゲート(またはインジケータ試薬)は、シグナル発生化合物または「標識」に結合させた、抗体(またはアッセイによって、おそらく抗抗体)を含む。このシグナル発生化合物または標識は、それ自体検出可能である、または1つ以上の追加の化合物と反応して検出可能な生成物を生成し得る。シグナル発生化合物の例は、本明細書に記載されており、とりわけ発色団、放射性同位体(例えば、125I、131I、32P、3H、35Sおよび14C)、化学発光化合物(例えば、アクリジニウム)、粒子(可視または蛍光)、核酸、錯化剤または酵素のような触媒(例えば、アルカリホスファターゼ、酸ホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ベータガラクトシダーゼおよびリボヌクレアーゼ)を含む。酵素(アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ)を用いる場合、色素原、蛍光原または発光原基質の添加は、検出可能シグナルの発生をもたらす。時間分解蛍光法、内部反射蛍光法、増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応)およびラマン分光法のような他の検出システムも有用である。
【0220】
キットも本発明の範囲内に含まれる。より具体的には、本発明は、対象における自己抗体のような抗体の存在を判定するためのキットを含む。とりわけ、試料中の前記抗体の存在を判定するためのキットは、a)本明細書で定義した免疫原性産物、および任意選択的にb)検出可能シグナルを発生することができるシグナル発生化合物に結合させた抗体を含むコンジュゲートを含む。キットは、抗原に結合する試薬を含む対照またはキャリブレーターも含有し得る。
【0221】
本発明はまた、試料中の自己抗体のような抗体を検出するための別の種類のキットを含む。キットは、a)目的の抗体に対して特異的な抗抗体およびb)本明細書で定義した免疫原性産物を含み得る。免疫原性産物に結合する試薬を含む対照またはキャリブレーターも含有し得る。より具体的には、キットは、a)自己抗体に対して特異的な抗抗体およびb)免疫原性産物を含むコンジュゲートを含み得る。コンジュゲートは、検出可能シグナルを発生することができるシグナル発生化合物に結合されている。さらに、キットは、抗原に結合する試薬を含む対照またはキャリブレーターも含有し得る。
【0222】
キットは、それぞれの容器があらかじめ固定された固相を含む、バイアル、ビンまたはストリップのような1つの容器およびそれぞれのコンジュゲートを含有する他の容器も含み得る。これらのキットは、洗浄、処理およびインジケータ試薬のような、アッセイを実施するために必要な他の試薬のバイアルまたは容器も含有し得る。
【0223】
本発明の免疫原性産物は、免疫原性産物に結合することができる作用物を得るのにも有用である。そのような作用物は、例えば、抗体(以後、抗産物抗体とも呼ぶ)、非抗体結合分子(例えば、Handbook of Therapeutic Antibodies、Stefan Dubel編、II巻、7章、Wiley−VCH Verlag GmbH & Co.KGaA、Weinheim、2007年に記載されている、アフィボディ(affibodies)、アフィリン分子、AdNectins、Anticalins、DARPins、ドメイン抗体、エビボディ(evibodies)、ノチン(knotins)、Kunitz型ドメイン、マキシボディ(maxibodies)、テトラネクチン、トランスボディ(trans−bodies)およびV(NAR)sのような)、アプタマーまたは低分子量化合物を含む。
【0224】
一態様において、本発明は、したがって、免疫原性産物に結合することができる作用物をスクリーニングするための免疫原性産物の使用に関する。したがって、本発明はまた、本明細書で開示した免疫原性産物に結合することができる作用物を同定する方法であって、a)目的の1つ以上の作用物を、1つ以上の作用物が産物に結合するのに十分な時間および条件下で、産物に曝露するステップならびにb)産物に結合する作用物を同定するステップを含む方法に関する。
【0225】
前記作用物は、抗体、非抗体結合分子、アプタマーまたは低分子量化合物からなる群から選択することができる。
【0226】
別の態様において、本発明は、作用物を含む調製物中の免疫原性産物に結合することができる前記作用物を富化するための免疫原性産物の使用に関する。したがって、本発明はまた、前記作用物を含む調製物中のそのような作用物を富化する方法であって、a)免疫原性産物に結合することができる作用物を含む調製物を、作用物が免疫原性産物に結合するのに十分な時間および条件下で、免疫原性産物に曝露するステップならびにb)富化された形の作用物を得るステップを含む方法に関する。より具体的には、免疫原性産物を固定化することができ(例えば、樹脂上に)、これにより作用物が捕捉されることが可能となる。富化された形の作用物を得ることは、好ましくは捕捉剤を脱離させることが捕捉剤を高塩緩衝液または酸性溶液と接触させることを含むような方法で、捕捉剤を脱離させることを含み得る。この方法は、例えば、IVIGまたはOctagam(登録商標)(Octapharma Inc.、Vienna、Austria)のような市販の免疫グロブリン調製物をこの方法にかけることによって本明細書で述べた自己抗体を富化するために用いることができる。これらの免疫グロブリン調製物は、Aβに対する自己抗体を含有するので、対象を処置することによって、それらの体内の抗Aβ抗体のレベルが上昇すると考えられる。前記自己抗体が富化されている調製物は、より有効であると予想される。
【0227】
さらなる態様において、本発明は、免疫原性産物に結合する抗体を得るための免疫原性産物の使用に関する。したがって、本発明は、
i)産物を含む抗原を準備すること、
ii)抗体レパートリーを前記抗原に曝露すること、および
iii)前記レパートリーから産物に結合する抗体を選択すること
を含む、本発明の免疫原性産物に結合することができる抗体を得る方法を提供する。
【0228】
ここで「潜在的抗体レパートリー」は、アミノ酸もしくは対応する核酸配列の任意のライブラリー、コレクション、アセンブリーもしくはセットを、またはインビボもしくはインビトロで抗体レパートリーを生産するために用いることができるアミノ酸配列のそのようなライブラリー、コレクション、アセンブリーもしくはセットの任意のジェネレーターを指すことを理解すべきである。本発明の好ましい実施形態において、ジェネレーターは、動物の適応免疫系、とりわけ当業者に周知の組換え過程により抗体多様性を発生する哺乳動物の免疫系の抗原産生部である。本発明の別の好ましい実施形態において、ジェネレーターは、その後、適切な抗体フレームワークへの挿入により、インビトロで抗体レパートリーを生産するために用いることができるランダム核酸配列の生産のためのシステムである。
【0229】
本発明の好ましい実施形態において、抗原により生物体を免疫化することにより、抗体レパートリーまたは潜在的抗体レパートリーをインビボで抗原に曝露する。本発明の別の好ましい実施形態において、潜在的抗体レパートリーは、当技術分野で記載されているインビトロアフィニティースクリーニング、例えば、ファージディスプレイおよびパンニングシステムにより抗体に曝露される適切な核酸のライブラリーである。
【0230】
別の態様において、本発明はまた、本明細書で定義した免疫原性産物に結合する抗体を提供する。
【0231】
本発明の好ましい実施形態において、抗体は、本明細書で述べたレパートリーまたは潜在的レパートリーから抗体を選択することを含む方法により得られる。
【0232】
とりわけ好ましい実施形態によれば、本発明は、免疫原性産物特異的抗体を提供する。これらは、とりわけ、本発明の免疫原性産物に対するよりもモノマーおよびフィブリロマー型のAβペプチドの両方に対する比較的、より小さい親和性を有する抗体を含む。特定の実施形態において、抗体がタンパク質および/または巨大分子の複雑混合物中のその標的抗原を優先的に認識する場合、抗体は、抗原に特異的に結合すると言われる。
【0233】
本発明の好ましい実施形態において、免疫原性産物に対する抗体の親和性は、モノマーAβ(1−42)に対する抗体の結合親和性より少なくとも2倍、例えば、少なくとも3倍または少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、例えば、少なくとも20倍、少なくとも30倍または少なくとも50倍、より好ましくは少なくとも100倍、例えば、少なくとも200倍、少なくとも300倍または少なくとも500倍、さらにより好ましくは少なくとも1000倍、例えば、少なくとも2000倍、少なくとも3000倍または少なくとも5000倍、さらにより好ましくは少なくとも10000倍、例えば、少なくとも20000倍、少なくとも30000倍または少なくとも50000倍、最も好ましくは少なくとも100000倍大きい。
【0234】
本発明の好ましい実施形態において、免疫原性産物に対する抗体の親和性は、モノマーAβ(1−40)に対する抗体の結合親和性より少なくとも2倍、例えば、少なくとも3倍または少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、例えば、少なくとも20倍、少なくとも30倍または少なくとも50倍、より好ましくは少なくとも100倍、例えば、少なくとも200倍、少なくとも300倍または少なくとも500倍、さらにより好ましくは少なくとも1000倍、例えば、少なくとも2000倍、少なくとも3000倍または少なくとも5000倍、さらにより好ましくは少なくとも10000倍、例えば、少なくとも20000倍、少なくとも30000倍または少なくとも50000倍、最も好ましくは少なくとも100000倍大きい。
【0235】
好都合には、本発明の抗体は、1つのまたはより好ましくは、両方のモノマーに低い親和性で、最も好ましくは1×10
−8MのK
Dもしくはより小さい親和性で、例えば、3×10
−8MのK
Dもしくはより小さい親和性で、1×10
−7MのK
Dもしくはより小さい親和性で、例えば、3×10
−7MのK
Dもしくはより小さい親和性で、または1×10
−6MのK
Dもしくはより小さい親和性で、例えば、3×10
−5MのK
Dもしくはより小さい親和性で、または1×10
−5MのK
Dもしくはより小さい親和性で結合する。
【0236】
本発明の好ましい実施形態において、免疫原性産物に対する抗体の親和性は、フィブリロマーAβ(1−42)に対する抗体の結合親和性より少なくとも2倍、例えば、少なくとも3倍または少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、例えば、少なくとも20倍、少なくとも30倍または少なくとも50倍、より好ましくは少なくとも100倍、例えば、少なくとも200倍、少なくとも300倍または少なくとも500倍、さらにより好ましくは少なくとも1000倍、例えば、少なくとも2000倍、少なくとも3000倍または少なくとも5000倍、さらにより好ましくは少なくとも10000倍、例えば、少なくとも20000倍、少なくとも30000倍または少なくとも50000倍、最も好ましくは少なくとも100000倍大きい。
【0237】
本発明の好ましい実施形態において、免疫原性産物に対する抗体の親和性は、フィブリロマーAβ(1−40)に対する抗体の結合親和性より少なくとも2倍、例えば、少なくとも3倍または少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、例えば、少なくとも20倍、少なくとも30倍または少なくとも50倍、より好ましくは少なくとも100倍、例えば、少なくとも200倍、少なくとも300倍または少なくとも500倍、さらにより好ましくは少なくとも1000倍、例えば、少なくとも2000倍、少なくとも3000倍または少なくとも5000倍、さらにより好ましくは少なくとも10000倍、例えば、少なくとも20000倍、少なくとも30000倍または少なくとも50000倍、最も好ましくは少なくとも100000倍大きい。
【0238】
好都合には、本発明の抗体は、1つのまたはより好ましくは、両方のフィブリルに低い親和性で、最も好ましくは1×10
−8MのK
Dもしくはより小さい親和性で、例えば、3×10
−8MのK
Dもしくはより小さい親和性で、1×10
−7MのK
Dもしくはより小さい親和性で、例えば、3×10
−7MのK
Dもしくはより小さい親和性で、または1×10
−6MのK
Dもしくはより小さい親和性で、例えば、3×10
−5MのK
Dもしくはより小さい親和性で、または1×10
−5MのK
Dもしくはより小さい親和性で結合する。
【0239】
「抗体」という用語は、本明細書で用いているように、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖の4つのポリペプチド鎖からなるあらゆる免疫グロブリン(Ig)分子、またはIg分子の本質的なエピトープ結合特性を保持している、そのあらゆる機能性断片、突然変異体、変異体もしくは誘導体を広く指す。そのような機能性断片、突然変異体、変異体もしくは誘導体型抗体は、当技術分野で公知である。その非限定的な実施形態を下文で述べる。「全長抗体」は、本明細書で用いているように、2つの重鎖および2つの軽鎖という4つのポリペプチド鎖を含むIg分子を指す。鎖は、通常ジスルフィド結合により互いに連結されている。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書で「可変重鎖」とも呼ぶ、または本明細書でHCVRもしくはVHと短縮する)および重鎖定常領域からなっている。重鎖定常領域は、CH1、CH2およびCH3という3つのドメインからなっている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書で「可変軽鎖」とも呼ぶ、または本明細書でLCVRもしくはVLと短縮する)および軽鎖定常領域からなっている。軽鎖定常領域は、CLという1つのドメインからなっている。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存的である領域によって散在させられた相補性決定領域(CDR)と呼ばれる、超可変性の領域にさらに細分することができる。各VHおよびVLは、次の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置されている、3つのCDRおよび4つのFRからなっている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。免疫グロブリン分子は、あらゆる種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスであり得る。
【0240】
抗体の「抗原結合部分(antigen−binding portion)」(または単に「抗体部分」)、「抗原結合部分(antigen−binding moiety)」(または単に「抗体部分」)という用語は、本明細書で用いているように、抗原(すなわち、本発明の免疫原性産物)に特異的に結合する能力を保持している抗体の1つ以上の断片を指すものであり、すなわち、抗体の機能的断片である。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の1つ以上の断片によって果たされ得ることが示された。そのような抗体実施形態はまた、二特異性、二重特異性、または多重特異性であり、2つ以上の異なる抗原に特異的に結合し得る。抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲内に包含される結合性断片の例は、(i)VL、VH、CHおよびCH1ドメインからなる一価断片である、Fab断片;(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab’)
2断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片;(v)可変ドメインを含むdAb断片(参照により本明細書に組み込む、Wardら、Nature、341巻、544−546頁、1989年;Winterら、WO90/05144A1;ならびに(vi)単離相補性決定領域(CDR)を含む。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは、別個の遺伝子によりコードされているが、それらは、VLおよびVH領域が一対となって一価分子を形成している単一タンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Birdら、Science、242巻、423−426頁、1988年;およびHustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85巻、5879−5883頁、1988年を参照)としてそれらが作製されることを可能にする合成リンカーにより、組換え法を用いて結合させることができる。そのような単鎖抗体も抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲内に包含される。ダイアボディのような、他の形の単鎖抗体も包含される。ダイアボディは、VHおよびVLドメインが単一ポリペプチド鎖上で発現するが、短すぎて、同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にすることができず、それにより、ドメインが別の鎖の相補的ドメインと対を形成することを余儀なくさせ、2つの抗原結合部位を生じさせるリンカーを用いる二価二特異性抗体である(例えば、Holligerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90巻、6444−6448頁、1993年;Poljakら、Structure、2巻、1121−1123頁、1994を参照)。そのような抗体結合部分は、当技術分野で公知である(KontermannおよびDubel編、Antibody Engineering、Springer−Verlag、New York、790頁、2001年、ISBN 3−540−41354−5)。
【0241】
「抗体」という用語は、本明細書で用いているように、抗体構築物も含む。「抗体構築物」という用語は、本明細書で用いているように、リンカーポリペプチドまたは免疫グロブリン定常ドメインに連結された本発明の1つ以上の抗原結合部分を含むポリペプチドを指す。リンカーポリペプチドは、ペプチド結合により結合した2つ以上のアミノ酸残基を含み、1つ以上の抗原結合部分を連結するために用いられる。そのような抗体結合部分は当技術分野で公知である。(例えば、Holligerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90巻、6444−6448頁、1993年;Poljakら、Structure、2巻、1121−1123頁、1994を参照)。
【0242】
免疫グロブリン定常ドメインは、重または軽鎖定常ドメインを指す。ヒトIgG重鎖および軽鎖定常ドメインアミノ酸配列は、当技術分野で公知である。
【0243】
またさらに、本発明の結合性タンパク質(例えば、抗体)は、本発明の結合性タンパク質と1つ以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合性または非共有結合性会合により形成されたより大きい免疫接着分子の一部であり得る。そのような免疫接着分子の例は、四量体scFv分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanovら、Human Antibodies and Hybridomas、6巻、93−101頁、1995年)ならびに二価およびビオチニル化scFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチドおよびC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanovら、Mol.Immunol.、31巻、1047−1058頁、1994年)を含む。FabおよびF(ab’)
2断片のような抗体部分は、全抗体のそれぞれパパインまたはペプシン消化のような、従来の技術を用いて全抗体から調製することができる。さらに、抗体、抗体部分および免疫接着分子は、本明細書で述べる標準的組換えDNA技術を用いて得ることができる。
【0244】
「単離抗体」は、本明細書で用いているように、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すものとする。しかし、本発明の免疫原性産物に特異的に結合する単離抗体は、Aβグロブロマー、例えば、Aβ(20−42)グロブロマーまたは他のAβ形態のような、他の抗原に対する交差反応性を有し得る。さらに、単離抗体は、他の細胞物質および/または化学物質および/または他の標的Aβ形態を実質的に含まないことがあり得る。
【0245】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書で用いているように、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する抗体を意味するものとする。本発明のヒト抗体は、例えば、CDR、とりわけCDR3におけるヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダムもしくは部位特異的突然変異誘発によりまたはインビボでの体細胞突然変異により導入された突然変異)を含み得る。しかし、「ヒト抗体」という用語は、本明細書で用いているように、マウスのような別の哺乳類種の生殖系列に由来するCDRがヒトフレーム配列上にグラフトされた抗体を含むものではない。
【0246】
「組換えヒト抗体」という用語は、本明細書で用いているように、宿主細胞中にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを用いて発現させた抗体(下文のB項でさらに述べる)、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(Hoogenboom、TIB Tech.、15巻、62−70頁、1997年;AzzazyおよびHighsmith、Clin.Biochem.、35巻、425−445頁、2002年;Gavilondo J.V.およびLarrick J.W.(2002年)Bio Techniques、29巻、128−145頁;Hoogenboom H.およびChames P.(2000年)Immunology Today、21巻、371−378頁)、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor L.D.ら(1992年)Nucl.Acids Res.、20巻、6287−6295頁;Kellermann S−A.およびGreen L.L.(2002年)Current Opinion in Biotechnology 13巻、593−597頁; Little M.ら、(2000)Immunology Today、21巻、364−370頁を参照)のような、組換え手段により調製され、発現させ、作製されもしくは単離されたすべてのヒト抗体、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含むあらゆる他の手段により調製され、発現させ、作製されもしくは単離された抗体を含むものとする。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する。しかし、特定の実施形態において、そのような組換えヒト抗体は、インビトロで突然変異誘発(または、ヒトIg配列についてトランスジェニックである動物を用いる場合、インビボでの体細胞突然変異誘発)を受け、したがって、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VHおよびVL配列に由来し、関連するが、インビボでのヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然で存在し得ない配列である。
【0247】
「キメラ抗体」という用語は、ヒト定常領域に連結されたマウス重および軽鎖可変領域を有する抗体のような、1つの種に由来する重および軽鎖可変領域配列ならびに別の種に由来する定常領域配列を含む抗体を指す。
【0248】
「CDRグラフト抗体」という用語は、マウス可変重および軽鎖領域の1つ以上がヒト可変重および軽鎖配列で置き換えられたマウスCDR(例えば、CDR3)を有する抗体のような、1つの種に由来する重および軽鎖可変領域配列を含むが、VHおよび/またはVLのCDR領域の1つ以上の配列が別の種のCDR配列で置き換えられている抗体を指す。
【0249】
「Kabat番号付け」、「Kabat定義」および「Kabatラベリング」という用語は、本明細書において互換的に用いられる。当技術分野で認識されている、これらの用語は、抗体の重および軽鎖可変領域またはその抗原結合部分における他のアミノ酸残基より可変(すなわち、超可変)であるアミノ酸残基を番号付けするシステムを指す(Kabatら(1971年)Ann.NY Acad.Sci.、190巻、382−391頁およびKabat E.A.ら(1991年)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S. Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242))。重鎖可変領域については、超可変領域は、CDR1のアミノ酸位置31から35、CDR2のアミノ酸位置50から65およびCDR3のアミノ酸位置95から102の範囲にある。軽鎖可変領域については、超可変領域は、CDR1のアミノ酸位置24から34、CDR2のアミノ酸位置50から56およびCDR3のアミノ酸位置89から97の範囲にある。
【0250】
本明細書で用いているように、「アクセプター」および「アクセプター抗体」という用語は、1つ以上のフレームワーク領域のアミノ酸配列の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または100%を備えたまたはコードする抗体または核酸配列を指す。いくつかの実施形態において、「アクセプター」という用語は、定常領域(複数可)を備えたまたはコードする抗体アミノ酸または核酸配列を指す。また別の実施形態において、「アクセプター」という用語は、1つ以上のフレームワーク領域および定常領域(複数可)を備えたまたはコードする抗体アミノ酸または核酸配列を指す。特定の実施形態において、「アクセプター」という用語は、1つ以上のフレームワーク領域のアミノ酸配列の少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または100%を備えたまたはコードするヒト抗体アミノ酸または核酸配列を指す。この実施形態によれば、アクセプターは、ヒト抗体の1つ以上の特定の位置において存在しない少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個または少なくとも10個のアミノ酸残基を含有し得る。アクセプターフレームワーク領域および/またはアクセプター定常領域(複数可)は、例えば、生殖系列抗体遺伝子、成熟抗体遺伝子、機能的抗体(例えば、当技術分野で周知の抗体、発達過程における抗体または市販の抗体)に由来し得るまたはから得ることができる。
【0251】
本明細書で用いているように、「CDR」という用語は、抗体可変配列内の相補性決定領域を指す。可変領域のそれぞれについて、CDR1、CDR2およびCDR3と呼ばれている、重鎖および軽鎖の可変領域のそれぞれに3つのCDRが存在する。「CDRセット」という用語は、本明細書で用いているように、抗原に結合することができる単一可変領域に存在する3つのCDRの群を指す。これらのCDRの正確な境界は、異なるシステムによって異なって定義された。Kabatにより記載されたシステム(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Istitute of Health、Betesda、Md.(1987年)および(1991年))は、抗体のあらゆる可変領域に適用可能な一義的な残基番号付けシステムを提供するだけでなく、3つのCDRを定義する正確な残基境界も提供する。これらのCDRは、Kabat CDRと呼ぶことができる。Chothiaおよび共同研究者ら(ChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol.、196巻、901−917頁(1987年)ならびにChothiaら、Nature、342巻、877−883頁(1989年))は、アミノ酸配列のレベルで大きい多様性を有するのにもかかわらず、Kabat CDR内の特定の下位部分がほぼ同じペプチド主鎖立体配座をとることを見いだした。これらの下位部分は、L1、L2およびL3またはH1、H2およびH3と呼ばれ、「L」および「H」は、それぞれ軽鎖および重鎖領域を意味する。これらの領域は、Kabat CDRと重複する境界を有する、Chothia CDRと呼ぶことができる。Kabat CDRと重複するCDRを定義する他の境界は、Padlan(FASEB J.、9巻、133−139頁(1995年))およびMacCallum(J Mol Biol、262巻(5号)、732−45頁(1996年))により記載された。さらなる他のCDR境界の定義は、上記のシステムの1つに厳密に従わないことがあり得るが、特定の残基または残基の群または全CDRさえも抗原結合に著しく影響を及ぼさないという予測または実験所見に照らして、それらが短縮または延長され得るが、それにもかかわらずKabat CDRと重複する。本明細書で用いた方法は、これらのシステムのいずれかに従って定義されるCDRを利用し得るものであり、特定の実施形態は、KabatまたはChothia定義のCDRを使用する。
【0252】
本明細書で用いているように、「規定」残基という用語は、Chothiaら(J.Mol.Biol.、196巻、901−907頁(1987年);ChothiaらJ.Mol.Biol.、227巻、799頁(1992年)、両方を参照により本明細書に組み込む)により定義された特定の規定CDR構造を定義するCDRまたはフレームワークにおける残基を指す。Chothiaらによれば、多くの抗体のCDRの重要な部分は、アミノ酸配列のレベルで大きい多様性を有するのにもかかわらず、ほぼ同じペプチド主鎖立体配座(confirmations)を有する。各規定構造は、ループを形成するアミノ酸残基の連続的セグメントの一連のペプチド主鎖ねじれ角を主として規定する。
【0253】
本明細書で用いているように、「ドナー」および「ドナー抗体」という用語は、1つ以上のCDRを備えている抗体を指す。一実施形態において、ドナー抗体は、フレームワーク領域が得られるまたは由来する抗体と異なる種からの抗体である。ヒト化抗体に関連して、「ドナー抗体」という用語は、1つ以上のCDRを備えている非ヒト抗体を指す。
【0254】
本明細書で用いているように、「フレームワーク」または「フレームワーク配列」という用語は、可変領域マイナスCDRの残存する配列を指す。CDR配列の正確な定義は、種々のシステムにより確定することができるので、フレームワーク配列の意味は、それに応じて異なる解釈を受ける。6つのCDR(軽鎖のCDR−L1、−L2および−L3ならびに重鎖のCDR−H1、−H2および−H3)も軽鎖および重鎖上のフレームワークを各鎖上の4つの亜領域(FR1、FR2、FR3およびFR4)に分割し、CDR1は、FR1とFR2との間に、CDR2は、FR2とFR3との間に、CDR3は、FR3とFR4との間に位置する。個々の亜領域をFR1、FR2、FR3またはFR4と規定しない場合、他者により言及された、フレームワーク領域は、単一の天然に存在する免疫グロブリン鎖の可変領域内の統合されたFR’sを表す。本明細書で用いているように、FRは、4つの亜領域の1つを表し、FRは、フレームワーク領域を構成する4つの亜領域の2つ以上を表す。
【0255】
ヒト重鎖および軽鎖アクセプター配列は、当技術分野で公知である。
【0256】
本明細書で用いているように、「生殖系列抗体遺伝子」または「遺伝子断片」という用語は、特定の免疫グロブリンの発現のための遺伝子再配列および突然変異につながる成熟過程を受けなかった非リンパ系細胞によりコードされる免疫グロブリン配列を指す(例えば、Shapiroら、Crit.Rev.Immunol.、22巻(3号)、183−200頁(2000年);Marchalonisら、Adv Exp Med Biol、484巻、13−30頁(2001年)を参照)。本発明の種々の実施形態によってもたらされる利点の1つは、生殖系列抗体遺伝子が成熟抗体遺伝子よりも当該種における個体に特有な必須アミノ酸配列構造を保存する可能性が高く、したがって、当該種において治療的に使用される場合に外来源に由来すると認識される可能性がより低いという認識から生じる。
【0257】
本明細書で用いているように、「基本(key)」残基という用語は、抗体、とりわけヒト化抗体の結合特異性および/または親和性に対するより大きい影響を有する可変領域内の特定の残基を指す。基本残基は、以下のものの1つ以上を含むが、それらに限定されない:CDRに隣接する残基、潜在的グリコシル化部位(N−またはO−グリコシル化部位であり得る)、希(rare)残基、抗原と相互作用することができる残基、CDRと相互作用することができる残基、規定残基、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間の接触残基、バーニアゾーン内の残基、および可変重鎖CDR1のChothia定義と第1の重鎖フレームワークのKabat定義との間で重複する領域における残基。
【0258】
本明細書で用いているように、「ヒト化抗体」という用語は、目的の抗原に免疫特異的に結合し、ヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有するフレームワーク(FR)領域および非ヒト抗体のアミノ酸配列を実質的に有する相補性決定領域(CDR)を含む抗体またはその変異体、誘導体、類似体もしくは一部である。本明細書で用いているように、CDRに関連する「実質的に」という用語は、非ヒト抗体CDRのアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%同じアミノ酸配列を有するCDRを指す。ヒト化抗体は、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリン(すなわち、ドナー抗体)のそれらに対応し、フレームワーク領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のそれらである少なくとも1つ、一般的に2つの可変ドメイン(Fab、Fab’、F(ab’)
2、FabC、Fv)の実質的にすべてを含む。一態様によれば、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、一般的にヒト免疫グロブリンのそれも含む。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖ならびに重鎖の少なくとも可変ドメインの両方を含有する。抗体は、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3およびCH4領域も含み得る。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト化軽鎖のみを含有する。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト化重鎖のみを含有する。特定の実施形態において、ヒト化抗体は、軽鎖および/または重鎖のヒト化可変ドメインのみを含有する。
【0259】
ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含む免疫グロブリンのいずれかのクラス、ならびに制限なくIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むいずれかのアイソタイプから選択することができる。ヒト化抗体は、1つを超えるクラスまたはアイソタイプの配列を含み得るものであり、特定の定常ドメインは、当技術分野で周知の技術を用いて所望のエフェクター機能を最適化するために選択することができる。
【0260】
ヒト化抗体のフレームワークおよびCDR領域は、親配列に正確に一致する必要はない。例えば、ドナー抗体CDRまたはコンセンサスフレームワークは、当該部位におけるCDRまたはフレームワーク残基がドナー抗体またはコンセンサスフレームワークに一致しないように少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、挿入および/または欠失により突然変異を起こさせることができる。一実施形態において、そのような突然変異は、しかしながら、広範囲に及ぶものでない。通常、ヒト化抗体残基の少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%は、親FRおよびCDR配列のそれらに一致するものとする。本明細書で用いているように、「コンセンサスフレームワーク」という用語は、コンセンサス免疫グロブリン配列におけるフレームワーク領域を指す。本明細書で用いているように、「コンセンサス免疫グロブリン配列」という用語は、関連免疫グロブリン配列のファミリーにおける最も高頻度で存在するアミノ酸(またはヌクレオチド)から形成される配列を指す(例えば、Winnaker、From Genes to Clones(Verlagsgesellschaft、Weinheim、Germany 1987年)参照)。免疫グロブリンのファミリーにおいて、コンセンサス配列における各位置は、ファミリーにおける当該位置に最も高頻度で存在するアミノ酸により占有されている。2つのアミン酸が同等の頻度で存在する場合、いずれかをコンセンサス配列に含めることができる。
【0261】
本明細書で用いているように、「バーニア」ゾーンは、FooteおよびWinter(1992年、J.Mol.Biol.、224巻、487−499頁;参照により本明細書に組み込む)により記載されたようにCDR構造を調整し、抗原への適合を微調節し得るフレームワーク残基のサブセットを指す。バーニアゾーン残基は、CDRに内在する層を形成し、CDRの構造および抗体の親和性に影響を及ぼし得る。
【0262】
「抗体」という用語は、本明細書で用いているように、多価結合タンパク質も含む。「多価結合タンパク質」という用語は、2つ以上の抗原結合部位を含む結合タンパク質を表すために本明細書で用いる。多価結合タンパク質は、3つ以上の抗原結合部位を有するように遺伝子操作され、一般的に天然に存在する抗体でない。「多重特異性結合タンパク質」という用語は、2つ以上の関連または非関連標的に結合することができる結合タンパク質を指す。二重可変ドメイン(DVD)結合タンパク質は、本明細書で用いているように、2つ以上の抗原結合部位を含む結合タンパク質であり、四価または多価結合タンパク質である。そのようなDVDは、単一特異性であり、すなわち、1つの抗原に結合する能力があり、または多重特異性であり、すなわち、2つ以上の抗原に結合する能力があり得る。2つの重鎖DVDポリペプチドおよび2つの軽鎖DVDポリペプチドを含むDVD結合タンパク質は、DVD Igを指す。DVD Igの各半分は、重鎖DVDポリペプチドおよび軽鎖DVDポリペプチドならびに2つの抗原結合部位を含む。各結合部位は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含み、抗原結合部位当たり抗原結合に関与する合計6つのCDRを有する。DVD結合タンパク質およびDVD結合タンパク質を作製する方法は、米国特許出願第11/507,050号に開示されており、参照により本明細書に組み込む。
【0263】
「標識結合タンパク質」という用語は、本明細書で用いているように、結合タンパク質の同定を可能にする組み込まれた標識を有する結合タンパク質を指す。同様に、「標識抗体」という用語は、本明細書で用いているように、抗体の同定を可能にする組み込まれた標識を有する抗体を指す。一態様において、標識は、検出可能マーカーであり、例えば、放射性標識アミノ酸の組込みまたは標示アビジンにより検出することができるビオチニル部分のポリペプチドへの結合である(例えば、光学的または比色法により検出することができる蛍光マーカーを含有するストレプトアビジンまたは酵素活性)。ポリペプチドの標識の例は、以下のものを含むが、それらに限定されない:放射性同位体または放射性核種(例えば、
3H、
14C、
35S、
90Y、
99Tc、
111In、
125I、
131I、
177Lu、
166Hoまたは
153Sm);蛍光標識(例えば、FITC、ドーダミン、ランタニドりん光体);酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ);化学発光マーカー;ビオチニル基;二次リポーターにより認識されるあらかじめ決定されたポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ);およびガドリニウムキレートのような磁性物質。
【0264】
「抗体」という用語は、本明細書で用いているように、抗体コンジュゲートも含む。「抗体コンジュゲート」という用語は、治療剤のような第2の化学的部分に化学的に連結された抗体のような、結合タンパク質を指す。
【0265】
本発明の抗体は、当技術分野で公知のいくつかの技術のいずれかにより作製することができる。
【0266】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え体およびファージディスプレイ技術またはそれらの組合せを含む当技術分野で公知の様々な技術を用いて調製することができる。例えば、モノクローナル抗体は、当技術分野で公知であり、例えば、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988年);Hammerlingら、Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas、563−681頁(Elsevier、N.Y.、1981年)(前記参考文献は、それらの全体を参照により組み込む)に教示されているものを含むハイブリドーマ技術を用いて生産することができる。「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で用いているように、ハイブリドーマ技術により生産される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、任意の真核生物、原核生物またはファージクローンを含む、単一クローンに由来する抗体を指し、それが生産される方法を指さない。
【0267】
ハイブリドーマ技術を用いる特異的抗体を生産し、スクリーニングする方法は、当技術分野で常用され、周知である。一実施形態において、本発明は、モノクローナル抗体を生成する方法ならびに本発明の抗体を分泌するハイブリドーマを培養することを含む方法により産生される抗体であって、例えば、ハイブリドーマは、本発明の抗原により免疫化したマウスから単離した脾細胞を骨髄腫細胞と融合させ、次いで、融合により得られたハイブリドーマを、本発明のポリペプチドに結合することができる抗体を分泌するハイブリドーマクローンについてスクリーニングすることによって生成する、方法ならびに抗体を提供する。手短に述べると、マウスは、本発明の免疫原性産物により免疫化することができる。特定の実施形態において、抗原をアジュバントとともに投与して、免疫応答を刺激する。そのようなアジュバントは、完全もしくは不完全フロイントアジュバント、RIBI(ムラミルジペプチド)またはISCOM(免疫刺激複合体)を含む。そのようなアジュバントは、ポリペプチドを局所沈着物中に隔離することによって急速な分散からポリペプチドを保護し得る。またはそれらは、宿主がマクロファージおよび免疫系の他のコンポーネントに対して化学走性である因子を分泌することを刺激する物質を含有し得る。好ましくは、ポリペプチドを投与する場合、免疫化スケジュールは、数週間にわたるポリペプチドの2回以上の投与を含むものとする。
【0268】
本発明の免疫原性産物による動物の免疫化の後、抗体および/または抗体産生細胞を動物から得ることができる。抗産物抗体含有血清は、採血または動物を屠殺することによって得られる。血清は、それが動物から得られるときに用いることができ、免疫グロブリン画分は、血清から得ることができる。または抗産物抗体を血清から精製することができる。この方法で得られた血清または免疫グロブリンは、ポリクローナルであり、したがって、特性の異種アレイを有する。
【0269】
免疫応答が検出されたならば、例えば、本発明の免疫原性産物に対して特異的な抗体がマウス血清において検出されたならば、マウス脾臓を採取し、脾細胞を単離する。次いで脾細を、任意の適切な骨髄腫細胞、例えば、ATCCから入手できる細胞系SP20からの細胞に周知の技術により融合させる。ハイブリドーマを限界希釈により選択し、クローニングする。次いで、ハイブリドーマクローンを、当技術分野で公知の方法により本発明の免疫原性産物に結合することができる抗体を分泌する細胞についてアッセイする。一般的に高レベルの抗体を含有する、腹水は、陽性ハイブリドーマクローンによりマウスを免疫化することによって発生させることができる。
【0270】
別の実施形態において、抗体産生不死化ハイブリドーマは、免疫化動物から調製することができる。免疫化の後、動物を屠殺し、当技術分野で周知であるように脾B細胞を不死化骨髄腫細胞に融合させる(例えば、HarlowおよびLane、前出を参照)。特定の実施形態において、骨髄腫細胞は、免疫グロブリンポリペプチドを分泌しない(非分泌細胞系)。融合および抗生物質分泌の後、本発明の免疫原性産物もしくはその一部、または本発明の免疫原性産物を発現する細胞を用いてハイブリドーマをスクリーニングする。特定の実施形態において、最初のスクリーニングは、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA)を用いて実施する。ELISAスクリーニングの例は、参照により本明細書に組み込む、国際公開第00/37504に提供されている。
【0271】
下文でさらに述べるように、抗産物抗体産生ハイブリドーマを選択し、クローニングし、頑健なハイブリドーマの成長、高い抗体産生および望ましい抗体の特性を含む、望ましい特性についてさらにスクリーニングする。ハイブリドーマは、培養し、同遺伝子型動物において、免疫系を欠く動物、例えば、ヌードマウスにおいてインビボで、または細胞培養においてインビトロで拡大する。ハイブリドーマを選択し、クローニングし、拡大する方法は、当業者に周知である。
【0272】
特定の実施形態において、ハイブリドーマは、上述のようにマウスハイブリドーマである。別の特定の実施形態において、ハイブリドーマは、ラット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシまたはウマのような非ヒト、非マウス種において生産する。別別の実施形態において、ハイブリドーマは、ヒト非分泌骨髄腫を抗産物抗体を発現するヒト細胞と融合させる、ヒトハイブリドーマである。
【0273】
特定のエピトープを認識する抗体断片は、公知の技術により生成することができる。例えば、本発明のFabおよびF(ab’)
2断片は、パパイン(Fab断片を生産するため)またはペプシン(F(ab’)
2断片を生産するため)のような酵素を用いて免疫グロブリン分子のタンパク質分解的切断により生産させることができる。F(ab’)
2断片は、可変領域、軽鎖定常領域および重鎖のCH1ドメインを含有する。
【0274】
本発明の別の態様において、組換え抗体は、米国特許第5,627,052号、PCT国際公開第92/02551号およびBabcock J.S.ら(1996年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93巻、7843−7848頁に記載されているように、選択リンパ球抗体法(SLAM)と当技術分野で呼ばれている手順を用いて単一の単離リンパ球から生成する。この方法において、目的の抗体を分泌する単一細胞、例えば、1項に記載された免疫化動物のいずれか1つに由来するリンパ球を抗原特異的溶血プラークアッセイを用いてスクリーニングする。その場合、本発明の免疫原性産物またはそのサブユニットをビオチンのようなリンカーを用いてヒツジ赤血球に結合させ、本発明の免疫原性産物に対する特異性を有する抗体を分泌する単一細胞を同定するために用いる。目的の抗体分泌細胞の同定の後、重および軽鎖可変領域cDNAを逆転写酵素PCRにより細胞から救出し、次いで、これらの可変領域を、COSまたはCHO細胞のような哺乳類宿主細胞において、適切な免疫グロブリン定常領域(例えば、ヒト定常領域)との関連において、発現させることができる。選択されるリンパ球からインビボで得られた、増幅免疫グロブリン配列をトランスフェクトした宿主細胞は、次に、例えば、トランスフェクト細胞をパンニングして、Aβ(20−42)グロブロマーに対する抗体を発現する細胞を単離することにより、インビトロでのさらなる解析および選択にかけることができる。増幅免疫グロブリン配列は、PCT国際公開第97/29131号およびPCT国際公開第00/56772号に記載されているようなインビトロ親和性成熟法によるなどのように、インビトロでさらに操作することができる。
【0275】
本発明の別の実施形態において、抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の一部またはすべてを含む非ヒト動物を免疫原性産物抗原により免疫化することによって産生される。特定の実施形態において、非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の大断片を含み、マウス抗体産生に欠けている遺伝子操作されたマウス系統である、XENOMOUSEトランスジェニックマウスである。例えば、Greenら、Nature Genetics、7巻、13−21頁(1994年)ならびに米国特許第5,916,771号、第5,939,598号、第5,985,615号、第5,998,209号、第6,075,181号、第6,091,001号、第6,114,598号および第6,130,364号を参照のこと。1991年7月25日に公開された国際公開第91/10741号、1994年2月3日に公開された国際公開第94/02602号、両方が1996年10月31日に公開された国際公開第96/34096号および国際公開第96/33735号、1998年4月23日に公開された国際公開第98/16654号、1998年6月11日に公開された国際公開第98/24893号、1998年11月12日に公開された国際公開第98/50433号、1999年9月10日に公開された国際公開第99/45031号、1999年10月21日に公開された国際公開第99/53049号、2000年2月24日に公開された国際公開第00/09560号ならびに2000年6月29日に公開された国際公開第00/037504号も参照のこと。XENOMOUSEトランスジェニックマウスは、完全にヒト抗体の成体様ヒトレパートリーを産生し、抗原特異的ヒトモノクローナル抗体を生成する。XENOMOUSEトランスジェニックマウスは、ヒト重鎖遺伝子座およびx軽鎖遺伝子座のメガ塩基サイズの生殖系列コンフィギュレーションYAC断片の導入によりヒト抗体レパートリーの約80%を含有する。参照によりそれらの開示を組み込む、Mendezら、Nature Genetics、15巻、146−156頁(1997年)、GreenおよびJakobovits、J.Exp.Med.、188巻、483−495頁(1998年)を参照のこと。
【0276】
インビトロでの方法は、本発明の抗体を作製するためにも用いることができ、抗体ライブラリーをスクリーニングして、所望の結合特異性を有する抗体を同定する。組換え抗体ライブラリーのそのようなスクリーニングの方法は、当技術分野で周知であり、例えば、参照によりそれらの内容を本明細書に組み込む、Ladnerら、米国特許第5,223,409号;Kangら、PCT国際公開第92/18619号;Dowerら、PCT国際公開第91/17271号;Winterら、PCT国際公開第92/20791号;Marklandら、PCT国際公開第92/15679号;Breitlingら、PCT国際公開第93/01288号;McCaffertyら、PCT国際公開第92/01047号;Garradら、PCT国際公開第92/09690号;Fuchsら(1991年)Bio/Technology、9巻、1370−1372頁;Hayら(1992年)Hum Antibod Hybridomas、3巻、81−85頁;Huseら(1989年)Science、246巻、1275−1281頁;McCaffertyら、Nature(1990年)348巻、552−554頁;Griffithsら(1993年)EMBO J、12巻、725−734頁;Hawkinsら(1992年)J Mol Biol、226巻、889−896頁;Clacksonら(1991年)Nature、352巻、624−628頁;Gramら(1992年)PNAS、89巻、3576−3580頁;Garradら(1991年)Bio/Technology、9巻、1373−1377頁;Hoogenboomら(1991年)Nuc Acid Res、19巻、4133−4137頁;およびBarbasら(1991)PNAS、88巻、7978−7982頁、米国特許出願公開第20030186374ならびにPCT国際公開第97/29131号に記載された方法を含む。
【0277】
組換え抗体ライブラリーは、本発明の免疫原性産物または本発明の免疫原性産物の一部により免疫化された対象に由来し得る。あるいは、組換え抗体ライブラリーは、本発明の免疫原性産物により免疫化されなかったヒト対象に由来するヒト抗体ライブラリーのような、ナイーブ対象、すなわち、本発明の免疫原性産物により免疫化されなかった対象に由来し得る。本発明の抗体は、本発明の免疫原性産物を含むペプチドにより組換え抗体ライブラリーをスクリーニングし、それにより本発明の免疫原性産物を認識し、Aβ(1−40)およびAβ(1−42)モノマー、AβフィブリルおよびsAPPαのような他のAβ形態を識別する抗体を選択することによって選択される。そのようなスクリーニングおよび選択を行う方法は、先行するパラグラフにおける参考文献に記載されているなど、当技術分野で周知である。
【0278】
一態様において、本発明は、本発明の免疫原性産物に結合し、Aβ(1−40)およびAβ(1−42)モノマー、AβフィブリルおよびsAPPαを識別する単離抗体またはその抗原結合部分に関する。一態様によれば、抗体は、中和抗体である。様々な実施形態において、抗体は、組換え抗体またはモノクローナル抗体である。
【0279】
例えば、本発明の抗体は、当技術分野で公知の様々なファージディスプレイ法を用いて発生させることもできる。ファージディスプレイ法において、機能的抗体ドメインは、それらをコードするポリヌクレオチド配列を有するファージ粒子の表面上にディスプレイされる。とりわけ、そのようなファージは、レパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒトまたはマウス)から発現させた抗原結合ドメインをディスプレイするために利用することができる。目的の抗原を結合する抗原結合ドメインを発現するファージは、抗原により、例えば、固体表面またはビーズに結合させたまたは捕捉させた標識抗原もしくは抗原を用いて選択または同定することができる。これらの方法に用いられるファージは、一般的に、ファージ遺伝子IIIまたは遺伝子VIIIタンパク質に組換えにより融合させたFab、Fvまたはジスルフィド安定化Fv抗体ドメインを有するファージから発現されたfdおよびM13結合ドメインを含む繊維状ファージである。本発明の抗体を作製するために用いることができるファージディスプレイ法の例は、それぞれをその全体を参照により本明細書に組み込む、Brinkmanら、J.Immunol.Methods、182巻、41−50頁(1995年);Amesら、J.Immunol.Methods、184巻、177−186頁(1995年);Kettleboroughら、Eur.J.Immunnol.、24巻、952−958頁(1994年);Persicら、Gene、187巻、9−18頁(1997年);Burtonら、Advances in Immunology、57巻、191−280頁(1994年);PCT出願番号PCT/GB91/01134;PCT国際公開第90/02809号;国際公開第91/10737号;国際公開第92/01047号;国際公開第92/18619号;国際公開第93/11236号;国際公開第95/15982号;国際公開第95/20401号;ならびに米国特許第5,698,426号;第5,223,409号;第5,403,484号;第5,580,717号;第5,427,908号;第5,750,753号;第5,821,047号;第5,571,698号;第5,427,908号;第5,516,637号;第5,780,225号;第5,658,727号;第5,733,743号および第5,969,108号に開示されているものを含む。
【0280】
上記の参考文献に記載されているように、ファージの選択の後、ファージから抗体コーディング領域を単離し、ヒト抗体または任意の他の所望の抗原結合断片を含む全抗体を生成するために用い、また例えば、下文で詳細に述べるように、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母および細菌を含む任意の所望の宿主において発現させることができる。例えば、PCT国際公開第92/22324号;Mullinaxら、BioTechniques、12巻(6号)、864−869頁(1992年);およびSawaiら、AJRI、34巻、26−34頁(1995年);およびBetterら、Science、240巻、1041−1043頁(1988年)(前記参考文献はそれらの全体を参照により組み込む)に開示されている方法のような当技術分野で公知の方法を用いてFab、Fab’およびF(ab’)2断片を組換えにより生産する技術も用いることができる。単鎖Fvsおよび抗体を生産するために用いることができる技術の例は、米国特許第4,946,778号および第5,258,498号;Hustonら、Methods in Enzymology、203巻、46−88頁(1991年);Shuら、PNAS、90巻、7995−7999頁(1993年)およびSkerraら、Science、240巻、1038−1040頁(1988年)に記載されているものを含む。
【0281】
ファージディスプレイによる組換え抗体ライブラリーのスクリーニングの代替法、大コンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする当技術分野で公知の他の方法論は、本発明の二重特異性抗体の同定に適用することができる。1つの類型の代替発現システムは、SzostakおよびRobertsによるPCT国際公開第98/31700号ならびにRoberts R.W.およびSzostak J.W.(1997年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94巻、12297−12302頁に記載されているように、組換え抗体ライブラリーをRNA−タンパク質融合体として発現させるものである。このシステムにおいて、それらの3’末端にペプチジルアクセプター抗生物質であるピューロマイシンを有する合成mRNAのインビトロでの翻訳により、mRNAとそれがコードするペプチドまたはタンパク質との間の共有結合性融合体が生成する。したがって、特定のmRNAは、二重特異性抗原に対する抗体またはその一部の結合のような、コード化ペプチドまたはタンパク質、例えば、抗体またはその一部の特性に基づいてmRNAの複雑混合物(例えば、コンビナトリアルライブラリー)から富化することができる。そのようなライブラリーのスクリーニングにより回収された、抗体またはその一部をコードする核酸配列は、上述のような組換え手段により発現させることができ(例えば、哺乳類宿主細胞において)、さらに、突然変異が最初に選択された配列(複数可)に導入されたmRNA−ペプチド融合体の追加のラウンドのスクリーニングにより、または上述のように、組換え抗体のインビトロでの親和性成熟の他の方法により、さらなる親和性成熟にかけることができる。
【0282】
別のアプローチにおいて、本発明の抗体は、当技術分野で公知の酵母ディスプレイ法を用いて生成することもできる。酵母ディスプレイ法において、遺伝的方法を用いて、抗体ドメインを酵母細胞壁にテザーし、それらを酵母の表面上にディスプレイする。とりわけ、そのような酵素は、レパートリーまたはコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒトまたはマウス)から発現した抗原結合ドメインをディスプレイするために用いることができる。本発明の抗体を作製するために用いることができる酵母ディスプレイ法の例は、参照により本明細書に組み込む、Wittrupら、米国特許第6,699,658号に開示されているものを含む。
【0283】
本発明の抗体は、当技術分野で公知のいくつかのいずれかにより生産することができる。例えば、重および軽鎖をコードする発現ベクター(複数可)を標準的技術により宿主細胞にトランスフェクトする、宿主細胞からの発現。様々な形の「トランスフェクション」という用語は、原核または真核宿主細胞への外因性DNAの導入に一般的に用いられる様々な技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクションなどを包含するものとする。本発明の抗体を原核または真核宿主細胞で発現させることも可能である。本発明の特定の態様によれば、抗体の発現は、真核細胞、例えば、哺乳類宿主細胞を用いて実施する。その理由は、そのような真核細胞(およびとりわけ哺乳類細胞)は、原核細胞より、アセンブルし、適切に折りたたまれ、免疫学的に活性な抗体を分泌する可能性が高いからである。
【0284】
一態様によれば、本発明の組換え抗体を発現させるための哺乳類宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、R.J.KaufmanおよびP.A.Sharp(1982年)Mol.Biol.、159巻、601−621頁に記載されているようなDHFR選択可能マーカーとともに用いられる、UrlaubおよびChasin(1980年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77巻、4216−4220頁の記載されているdhfr−CHO細胞を含む)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞を含む。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳類宿主細胞に導入する場合、宿主細胞における抗体の発現または宿主細胞が成長している培地中への抗体の分泌を可能にするのに十分な時間にわたり宿主細胞を培養することによって抗体が産生される。抗体は、標準的なタンパク質精製法を用いて培地から回収することができる。
【0285】
宿主細胞は、Fab断片またはscFv分子のような機能的抗体断片を産生させるためにも用いることができる。上記の手順の変形形態が本発明の範囲内にあることが理解される。例えば、本発明の抗体の軽鎖および/または重鎖の機能的断片をコードするDNAを宿主細胞にトランスフェクトすることは、望ましいことであり得る。組換えDNA技術は、目的の抗原に結合するために必要でない軽および重鎖のいずれかまたは両方をコードするDNAの一部またはすべてを除去するためにも用いることができる。切断型DNA分子から発現された分子も本発明の抗体に包含される。さらに、1つの重鎖および1つの軽鎖が本発明の抗体であり、本発明の抗体を標準的化学的クロスリンク結合法により第2の抗体にクロスリンク結合させることによって、他の重および軽鎖が目的の抗原以外の抗原に対して特異的である、二官能性抗体を生産させることができる。
【0286】
本発明の抗体またはその抗原結合部分の組換え発現のための特定のシステムにおいて、抗体重鎖および抗体軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターをリン酸カルシウム媒介トランスフェクションによりdhfr−CHO細胞に導入する。組換え発現ベクター内で、抗体重および軽鎖遺伝子は、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節要素にそれぞれ作動可能に連結されて、遺伝子の高レベルの転写を駆動する。組換え発現ベクターは、メトトレキセート選択/増幅を用いてベクターをトランスフェクトしたCHO細胞の選択を可能にする、DHFR遺伝子も保有する。選択された形質転換宿主細胞を培養して、抗体重および軽鎖の発現を可能にし、完全な抗体を培地から回収する。標準的分子生物学技術を用いて、組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞をトランスフェクトし、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、培地から抗体を回収する。またさらに本発明は、本発明の組換え抗体が合成されるまで本発明の宿主細胞を適切な培地中で培養することによって本発明の組換え抗体を合成する方法を提供する。該方法は、培地から組換え抗体を単離することをさらに含み得る。
【0287】
キメラ抗体は、マウスモノクローナル抗体に由来する可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体のような、抗体の異なる部分が異なる動物種に由来する分子である。キメラ抗体を生産させる方法は、当技術分野で公知であり、本明細書で詳細に述べる。それらの全体を参照により本明細書に組み込む、例えば、Morrison、Science、229巻、1202頁(1985年);Oiら、BioTechniques、4巻、214頁(1986年);Gilliesら、(1989年)J.Immunol.Methods、125巻、191−202頁;米国特許第5,807,715号;第4,816,567号および第4,816,397号を参照のこと。さらに、適切な抗原特異性のマウス抗体分子からの遺伝子を適切な生物学的活性のヒト抗体分子からの遺伝子と一緒にスプライシングすることによる「キメラ抗体」の生産のために開発された技術(それらの全体を参照により本明細書に組み込む、Morrisonら、1984年、Proc.Natl.Acad.Sci.、81巻、851−855頁;Neubergerら、1984年、Nature、312巻、604−608頁;Takedaら、1985年、Nature、314巻、452−454頁)が使用され得る。
【0288】
本発明のCDRグラフト抗体は、ヒト抗体の重および軽鎖可変領域配列を含み、VHおよび/またはVLの1つ以上のCDR領域が本発明のマウス抗体のCDR配列で置き換えられている。任意のヒト抗体のフレームワーク配列は、CDR移植のための鋳型としての役割を果たし得る。しかし、そのようなフレームワーク上への直鎖置き換えは、抗原に対する結合親和性のある程度の損失をしばしばもたらす。最初のマウス抗体に対するヒト抗体の相同性が高いほど、マウスCDRとヒトフレームワークとの組合せが、親和性を低下させ得るCDRにおける歪みを導入する可能性が低くなり得る。したがって、CDRから離れたマウス可変フレームワークを置き換えるために選択されるヒト可変フレームワークは、マウス抗体可変領域フレームワークとの例えば、少なくとも65%の配列同一性を有する。CDRから離れたヒトおよびマウス可変領域は、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%の配列同一性、または少なくとも80%の配列同一性を有する。キメラ抗体を生産する方法は、当技術分野で公知であり、本明細書で詳細に述べる。(例えば、欧州特許第239,400号;PCT国際公開第91/09967号;米国特許第5,225,539号;第5,530,101号および第5,585,089号も参照)、ベニアリングまたはリサーフェシング(欧州特許第592,106号;欧州特許第519,596号;Padlan、Molecular Immunology、28巻(4/5号)、489−498頁(1991年);Studnickaら、Protein Engineering、7巻(6号)、805−814頁(1994年);Roguskaら、PNAS、91巻、969−973頁(1994年))および鎖シャフリング(米国特許第5,565,352号)。
【0289】
ヒト化抗体は、非ヒト種に由来する1つ以上の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子に由来するフレームワーク領域を有する所望の抗原に結合する非ヒト種抗体に由来する抗体分子である。
【0290】
公知のヒトIg配列は、開示されている。例えば、
【0292】
ヒトフレームワーク領域におけるフレームワーク残基は、抗原結合を変化させる、好ましくは改善するためにCDRドナー抗体の対応する残基で置換することができる。これらのフレームワーク置換は、当技術分野で周知の方法によって、例えば、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定するためのCDRおよびフレームワーク残基の相互作用のモデリングならびに特定の位置における異常なフレームワーク残基を同定するための配列比較によって同定される(例えば、それらの全体を参照により組み込む、Queenら、米国特許第5,585,089号;Riechmannら、Nature、332巻、323頁(1988年)を参照)。3次元免疫グロブリンモデルは、一般的に利用でき、当業者によく知られている。選択される候補免疫グロブリン配列の推定3次元立体配座構造を説明し、表示するコンピュータプログラムが入手できる。これらの表示の調査により、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性のある役割の解析、すなわち、その抗原に結合する候補免疫グロブリンの能力に影響を及ぼす残基の解析が可能となる。この方法で、標的抗原(複数可)に対する親和性の増大のような所望の抗体の特性が達成されるように、コンセンサスおよび移入配列からFR残基を選択し、組み合わせることができる。一般的に、CDR残基は、抗原結合に影響を及ぼすことに直接的に、そして最も実質的に関与する。抗体は、本明細書で引用した参考文献を含めた、それぞれを参照により本明細書に完全に組み込む、Jonesら、Nature、321巻、522頁(1986年);Verhoeyenら、Science、239巻、1534頁(1988年);Simsら、J.Immunol.、151巻、2296頁(1993);ChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol.、196巻、901頁(1987年);Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、89巻、4285頁(1992年);Prestaら、J.Immunol.、151巻、2623頁(1993年);Padlan、Molecular Immunology、28巻(4/5号)、489−498頁(1991年);Studnickaら、Protein Engineering、7巻(6号)、805−814頁(1994年);Roguskaら、PNAS、91巻、969−973頁(1994);PCT国際公開第91/09967号;PCT/:米国特許出願公開第98/16280号、米国特許出願公開第96/18978号、米国特許出願公開第91/09630号、米国特許出願公開第91/05939号、米国特許出願公開第94/01234号、英国特許出願公開第89/01334号、英国特許出願公開第91/01134号、英国特許出願公開第92/01755号、国際公開第90/14443号、国際公開第90/14424号、国際公開第90/14430号、欧州特許第229,246号、欧州特許第592,106号、欧州特許第519,596号、欧州特許第239,400号、米国特許第5,565,332号、第5,723,323号、第5,976,862号、第5,824,514号、第5,817,483号、第5,814,476号、第5,763,192号、第5,723,323号、第5,766,886号、第5,714,352号、第6,204,023号、第6,180,370号、第5,693,762号、第5,530,101号、第5,585,089号、第5,225,539号、第4,816,567号に記載されているもののような、ただし、それらに限定されない、当技術分野で公知の様々な技術を用いてヒト化することができる。
【0293】
特定の実施形態において、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMのような重鎖定常領域またはIgD定常領域を含む。一態様によれば、重鎖定常領域は、IgG1重鎖定常領域またはIgG4重鎖定常領域である。さらなる態様によれば、抗体は、軽鎖定常領域、カッパ軽鎖定常領域またはラムダ軽鎖定常領域を含む。一態様によれば、抗体は、カッパ軽鎖定常領域を含む。抗体部分は、例えば、Fab断片または単鎖Fv断片であり得る。
【0294】
抗体エフェクター機能を変化させるためのFc部分におけるアミノ酸残基の置き換えは、当技術分野で公知である(Winterら、米国特許第5,648,260号および第5,624,821号)。抗体のFc部分は、いくつかの重要なエフェクター機能、例えば、サイトカイン誘導、ADCC、食作用、補体依存性細胞傷害(CDC)ならびに抗体および抗原−抗体複合体の半減期/クリアランス速度を媒介する。ある場合には、これらのエフェクター機能は、治療用抗体について望ましいが、別の場合には、治療の目的によって不必要または有害でさえあり得る。特定のヒトIgGアイソタイプ、とりわけIgG1およびIgG3は、それぞれFcγRsおよび補体C1qへの結合によりADCCおよびCDCを媒介する。新生児Fc受容体(FcRn)は、抗体の循環半減期を決定する重要なコンポーネントである。さらなる別の実施形態において、抗体のエフェクター機能が変化するように、抗体の定常領域、例えば、抗体のFc領域における少なくとも1つのアミノ酸残基が置き換えられている。
【0295】
一実施形態は、本発明の抗体が誘導体化されているまたは別の機能的分子(例えば、別のペプチドもしくはタンパク質)に連結されている、標識抗体を提供する。例えば、本発明の標識抗体は、別の抗体(例えば、二特異性もしくはダイアボディ)、検出可能物質、医薬剤および/または抗体と別の分子(ストレプトアビジンコア領域もしくはポリヒスチジンタグ)との会合を媒介し得るタンパク質もしくはペプチドのような、1つ以上の分子実体に本発明の抗体を機能的に連結することによって(化学的結合、遺伝子融合、非共有結合性会合またはその他によって)誘導体化することができる。
【0296】
本発明の抗体を誘導体化することができる有用な検出可能物質は、蛍光化合物を含む。例示的な蛍光検出可能物質は、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5−ジメチルアミン−1−ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリスリンなどを含む。抗体は、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどのような検出可能酵素によっても誘導体化することができる。抗体を検出可能酵素により誘導体化する場合、それは、検出可能な反応生成物を生産するために酵素が用いる追加の試薬を加えることにより検出される。例えば、検出可能物質である西洋ワサビペルオキシダーゼが存在する場合、過酸化水素およびジアミノベンジジンの添加により、検出可能である着色反応生成物がもたらされる。抗体をビオチンで誘導体化して、間接的にアビジンまたはストレプトアビジンの結合を測定することによって検出することもできる。
【0297】
本発明の別の実施形態は、結晶化抗体を提供する。一態様によれば、本発明は、本明細書で開示した全抗Aβ(20−42)グロブロマー抗体およびその断片の結晶ならびにそのような結晶を含む製剤および組成物に関する。さらなる態様によれば、結晶化抗体は、該抗体の可溶性カウンターパートよりインビトロで大きい半減期を有する。さらなる態様によれば、抗体は、結晶化後に生物学的活性を保持している。
【0298】
本発明の結晶化抗体は、当技術分野で公知であり、参照により本明細書に組み込む、国際公開第02/072636号に開示されている方法により生産することができる。
【0299】
本発明の別の実施形態は、抗体が1つ以上の炭水化物残基を含む、グリコシル化抗体を提供する。新生インビボタンパク質産生は、翻訳後修飾として公知のさらなるプロセシングを受け得る。とりわけ、糖(グリコシル)残基は、グリコシル化として公知の過程であり、酵素的に加えることができる。共有結合オリゴ糖側鎖を担持する得られるタンパク質は、グリコシル化タンパク質または糖タンパク質として公知である。
【0300】
抗体は、Fcドメインならびに可変ドメインにおける1つ以上の炭水化物残基を有する糖タンパク質である。Fcドメインにおける炭水化物残基は、Fcドメインのエフェクター機能に対する重要な効果を有し、抗体の抗原結合または半減期に対しては軽微な効果を有する(R.Jefferis、Biotechnol.Prog.、21巻(2005年)、11−16頁)。これと対照的に、可変ドメインのグリコシル化は、抗体の抗原結合活性に対する効果を有し得る。可変ドメインのグリコシル化は、おそらく立体障害に起因して(Co M.S.ら、Mol.Immunol.(1993年)、30巻、1361−1367頁)、抗体結合親和性に対する負の効果を有し得る、または抗原に対する親和性の増大をもたらす(Wallick S.C.ら、Exp.Med.(1988年)、168巻、1099−1109頁;Wright A.ら、EMBO J.(1991年)、10巻、2717−2723頁)。
【0301】
本発明の一態様は、抗体のOまたはN結合型グリコシル化部位が突然変異したグリコシル化部位突然変異体の生成を対象とする。当業者は、標準的な周知の技術を用いてそのような突然変異体を生成することができる。生物学的活性を保持しているが、結合活性の増大または低下を有するグリコシル化部位突然変異体の作製は、本発明の別の目的である。
【0302】
さらなる別の実施形態において、本発明の抗体のグリコシル化を改変する。例えば、脱グリコシル化抗体を作製することができる(すなわち、抗体がグリコシル化を欠いている)。例えば、抗原に対する抗体の親和性を増加させるためにグリコシル化を変更することができる。そのような炭水化物の改変は、例えば、抗体配列内のグリコシル化の1つ以上の部位を変更することによって達成することができる。例えば、1つ以上の可変領域グリコシル化部位の除去をもたらす1つ以上のアミノ酸置換を行い、それにより、当該部位におけるグリコシル化を消失させることができる。そのような脱グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増加させ得る。そのようなアプローチは、それらのそれぞれをその全体を参照により本明細書に組み込む、国際出願公開番号WO03/016466A2ならびに米国特許第5,714,350号および第6,350,861号にさらに詳細に記載されている。
【0303】
さらにまたはあるいは、本発明の改変抗体フコシル残基量の低下を有する低フコシル化抗体またはバイセクティングGlcNAc構造の増加を有する抗体のような、異なる種類のグリコシル化を有する本発明の改変抗体を作製することができる。そのような変更されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増加させることが示された。そのような炭水化物の改変は、例えば、グリコシル化機構の変化を有する宿主細胞における抗体の発現によって達成することができる。グリコシル化機構の変化を有する細胞は、当技術分野で記載されており、本発明の組換え抗体を発現し、それによりグリコシル化の変化を有する抗体を産生する宿主細胞として用いることができる。例えば、それらのそれぞれをその全体を参照により本明細書に組み込む、Shields R.L.ら、(2002年)J.Biol.Chem.、277巻、26733−26740頁;Umanaら、(1999年)Nat.Biotech.、17巻、176−1頁、ならびに欧州特許番号EP1,176,195;国際出願公開番号WO03/035835およびWO99/5434280を参照のこと。
【0304】
タンパク質のグリコシル化は、目的のタンパク質のアミノ酸配列ならびにタンパク質が発現する宿主細胞に依存する。異なる生物体は、異なるグリコシル化酵素(例えば、グリコシルトランスフェラーゼおよびグリコシダーゼ)を産生し、利用可能な異なる基質(ヌクレオチド糖)を有する。そのような因子に起因して、タンパク質グリコシル化パターンおよびグリコシル残基の組成は、特定のタンパク質が発現する宿主系によって異なり得る。本発明において有用なグリコシル残基は、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、n−アセチルグルコサミンおよびシアル酸を含み得るが、これらに限定されない。一態様によれば、グリコシル化抗体は、グリコシル化パターンがヒトであるようなグリコシル残基を含む。
【0305】
異なるタンパク質グリコシル化が異なるタンパク質特性をもたらし得ることは、当業者に公知である。例えば、酵母のような微生物宿主において産生され、酵母内因性経路を用いてグリコシル化された治療用タンパク質の有効性は、CHO細胞系のような哺乳類細胞において発現した同じタンパク質の有効性と比較して低いことがあり得る。そのような糖タンパク質は、ヒトにおいて免疫原性でもあり、投与後にインビボで半減期の低下を示し得る。ヒトおよび他の動物における特異的受容体は、特異的グリコシル残基を認識し、血流からのタンパク質の速やかなクリアランスを促進し得る。他の有害な作用は、タンパク質フォールディング、溶解度、プロテアーゼに対する感受性、トラフィッキング、輸送、コンパートメント化、分泌、他のタンパク質もしくは因子による認識、抗原性またはアレルゲン性の変化、を含み得る。したがって、開業医は、グリコシル化の特定の組成およびパターン、例えば、ヒト細胞においてまたは意図した対象動物の種特異的細胞において産生されたそれと同一である、または少なくとも類似したグリコシル化の組成およびパターンを有する治療用タンパク質を好み得る。
【0306】
宿主細胞のそれと異なるグリコシル化タンパク質を発現させることは、異種グリコシル化酵素を発現するように宿主細胞を遺伝子操作することによって達成することができる。当技術分野で公知の技術を用いて、開業医は、ヒトタンパク質グリコシル化を示す抗体を生成することができる。例えば、酵母株において産生されたグリコシル化タンパク質(糖タンパク質)が動物細胞、とりわけヒト細胞のそれと同じタンパク質グリコシル化を示すように酵素株を遺伝子操作して、非天然グリコシル化酵素を発現させる(米国特許出願公開第20040018590号および第20020137134号ならびに国際公開第05/100584号)。
【0307】
別の実施形態は、本発明のそのような抗体に特異的な抗イディオタイプ(anti−id)抗体を対象とする。anti−id抗体は、別の抗体の抗原結合領域に一般的に関連する固有の決定基を認識する抗体である。anti−idは、抗体またはそのCDR含有領域により動物を免疫化することによって生産することができる。免疫化動物は、免疫抗体のイディオタイプ決定基を認識し、応答し、anti−id抗体を産生する。anti−id抗体は、また別の動物における免疫応答を誘導し、いわゆるanti−id抗体を産生する「免疫源」としても用いることができる。
【0308】
さらに、ライブラリーのメンバー宿主細胞が変異型グリコシル化パターンを有する目的のタンパク質を産生するように、様々なグリコシル化酵素を発現するように遺伝子操作された宿主細胞のライブラリーを用いて目的のタンパク質を発現させることができることは、当業者により十分に理解される。開業医は、特定の新規なグリコシル化パターンを有する目的のタンパク質を選択し、単離することができる。さらなる態様によれば、特別に選択された新規なグリコシル化パターンを有するタンパク質は、改善または変更された生物学的特性を示す。
【0309】
さらなる態様において、本発明はまた、免疫原性産物に結合するアプタマー(下文で抗産物アプタマーとも呼ぶ)を得るための本発明の免疫原性産物の使用に関する。したがって、本発明はまた、本明細書で定義した免疫原性産物に対する特異性を有するアプタマーを得るための方法であって、
a)免疫原性産物を含む結合標的を準備するステップ、
b)アプタマーレパートリーまたは潜在的アプタマーレパートリーを前記結合標的に曝露するステップ、および
c)前記レパートリーから前記免疫原性産物に特異的に結合するアプタマーを選択するステップ
を少なくとも含む方法に関する。
【0310】
「アプタマー」は、本明細書では、その標的に対する特異的な非共有結合性結合の能力のあるオリゴ核酸またはペプチド分子を指す。アプタマーは、1つの末端または両末端において、より大きい分子に、好ましくは生化学的機能を媒介するより大きい分子に、より好ましくは不活性化および/または分解を誘導するより大きい分子に、最も好ましくはユビキチンに、または好ましくは破壊を促進するより大きい分子に、より好ましくは酵素または蛍光タンパク質に結合し得る、好ましくはペプチド、DNAまたはRNA配列、より好ましくは約3から100個のモノマーのペプチド、DNAまたはRNA配列を含む。
【0311】
ここで「潜在的アプタマーレパートリー」は、アミノ酸配列または核酸配列の任意のライブラリー、コレクション、アセンブリーもしくはセットを、またはインビボもしくはインビトロでアプタマーレパートリーを生産するために用いることができるアミノ酸配列のそのようなライブラリー、コレクション、アセンブリーもしくはセットの任意のジェネレーターを指すことを理解すべきである。
【0312】
別の態様において、本発明はまた、本明細書で定義した免疫原性産物に結合するアプタマーを提供する。
【0313】
本発明の好ましい実施形態において、アプタマーは、本明細書で述べたレパートリーまたは潜在的レパートリーからアプタマーを選択することを含む方法により得られる。
【0314】
特に好ましい実施形態によれば、本発明は、免疫原性産物特異的アプタマーを提供する。これらは、とりわけ、本発明の免疫原性産物に対するよりもモノマーおよびフィブリロマー型のAβペプチドの両方に対して比較的、より小さい親和性を有するアプタマーを含む。
【0315】
本発明の免疫原性産物に結合することができる作用物も多くの潜在的な応用分野を有し、その一部を以下に述べる。それらは、治療および診断の目的のために特に有用である。
【0317】
【化4】
からなる群から選択されるアミノ酸配列の一部(X−Y)と同一のアミノ酸配列を含み、Xは、数1..18、4..18、12..18からなる群から選択されまたは18であり、Yは数33..43、33..42、33..41または33..40からなる群から選択される分子、またはアミノ酸配列の少なくとも2つの非隣接残基が互いに共有結合している、そのクロスリンクされた誘導体に関する。
【0318】
前記分子またはそのクロスリンクされた誘導体の特定の実施形態において、(X−Y)は、(1−42)、(4−42)、(12−42)または(18−42)からなる群から選択される。
【実施例】
【0319】
Aβ突然変異タンパク質ペプチドは、標準的な方法を用いて合成した。
【0320】
[実施例1]
Aβ突然変異タンパク質オリゴマーの調製
a)Aβ(1−42)E22A突然変異タンパク質オリゴマー:
ペプチド合成により得られたAβ(1−42)E22Aペプチド(MoBiTec GmbH、Gottingen、Germany)を6mg/mlで100%1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)に懸濁し、完全な可溶化のために37℃で2.5時間振とうしながらインキュベートした。HFIPは、水素結合切断剤として作用するので、Aβペプチドにおける先在性の構造的不均一性を解消するために用いられる。HFIPをSpeedVacで蒸発により除去し、Aβ(1−42)E22Aをジメチルスルホキシドに5mMの濃度で再懸濁し、20秒間超音波処理した。HFIP前処理Aβ(1−42)E22Aをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(20mM NaH
2PO
4、140mM NaCl、pH7.4)で400μMに希釈し、1/10容積の2%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(H
2O中)を加えた(0.2%SDSの最終濃度)。溶液を37℃で6時間インキュベートした。次に、溶液を3容積のH
2Oでさらに希釈し、37℃で18時間インキュベートした。これにより、Aβ(1−42)E22A突然変異タンパク質オリゴマーの生成がもたらされる。3000gで20分間の遠心分離の後、試料を透析管中で0.5lの緩衝液(5mMリン酸ナトリウム、35mM NaCl、pH7.4)に対して室温で2.5時間にわたり2回透析した。透析物を限外濾過(30kDaカットオフ)により15倍濃縮し、10000gで5分間遠心分離し、Aβ(1−42)E22A突然変異タンパク質オリゴマーを含む上清を抜き取った。
【0321】
b)切断型AβE22A突然変異タンパク質オリゴマー:
30μlの1mg/mlサーモリシンのH
2O中溶液(Sigma)を実施例1aに従って調製した0.8mlのAβ(1−42)E22A突然変異タンパク質オリゴマーに加えた。反応混合物を30℃で20時間振とうした。次いで、pH7.4の4μlの100mM EDTAの水中溶液を加え、混合物を、8μlの10%濃度のSDS溶液を用いて0.1%のSDS含量にさらに調整した。反応混合物を室温で10分間振とうし、次いで透析管中で0.5lの緩衝液(5mMリン酸ナトリウム、35mM NaCl、0.1%SDS、pH7.4)に対して室温で6時間、透析緩衝液の交換後にさらに20時間透析した。透析物を除去し、さらなる使用に備えて−80℃で保存した。
【0322】
c)エタノール沈殿切断型Aβ E22A突然変異タンパク質オリゴマー:
能動免疫における抗原の使用のために、実施例1bの切断型Aβ E22A突然変異タンパク質オリゴマーをエタノール沈殿させた。この目的のために、0.5−10mg/mlの濃度を有する1部(容積/容積;例えば、1ml)の切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーを室温で解凍した。次いで8部(容積/容積;例えば、8ml)の氷冷エタノールを試料に加えた。試料を短時間混合し、1部(容積/容積、切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーの最初の容積に基づく;例えば、1ml)の10x−PBS(Fa.Gibco、カタログ番号14200−067)を加えた。その後、試料を再び短時間混合し、氷浴中で30分間インキュベートした。試料を3000gで20分間遠心分離し、上清を捨てた。残存するペレットを適切な容積の5mM NaH
2PO
4、35mM NaCl、pH7.4を用いて1mg/mlの最終濃度に懸濁した。氷浴中で10分間冷却した後、試料を超音波処理器(UP200s Dr.Hielscher GmbH)で最大出力の50%で氷浴中で0℃で5×3秒間(氷上10秒間の中間冷却を含む)超音波処理した。このステップの後、試料を分割し、さらなる使用時まで−80℃で凍結した。
【0323】
実施例1a、1bおよび1cの手順を用いて、下の表2に示すAβ突然変異タンパク質オリゴマーを調製し、タンパク質分解消化にかけ、エタノールから沈殿させた。
【0324】
[実施例2]
切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーのAβペプチド組成物の表面増強レーザー脱離イオン化質量分析(SELDI−MS)半定量的判定
実施例1bからの1μlの切断型Aβ E22A突然変異タンパク質オリゴマーを249μlの50%アセトニトリル:0.5%TFA(500μlのアセトニトリル+500μlの1%TFA)で希釈した。1μlの試料をH4タンパク質チップアレイ(BioRad;カタログ番号C57−30028)上にスポットした。スポットを40℃の温インキュベータープレート上で乾燥させた。CHCA溶液を次のように調製した。5mgのCHCA(BioRad;カタログ番号C30−00001)を150μlのアセトニトリル+150μlの1%TFAに溶解した=保存溶液(−20℃で保存)。10μlの保存溶液を20μlのアセトニトリルおよび20μlの1%TFAで希釈して、作業CHCA溶液を得た。2μlの作業CHCA溶液をスポット上に加えた。スポットを40℃の温インキュベータープレート上で乾燥させ、以下のパラメーターを用いてSELDI−MS(表面増強レーザー脱離イオン化質量分析;BioRad、Protein Chip SELDI system enterprise edition)により分析した。質量範囲:500から10000Da;フォーカス質量:2220Da;マトリックス減衰:500Da;サンプリング速度:400MHz;ウォーミングショット:エネルギー1100njによる2;データショット:エネルギー1000njによる10;分割1/3。表2に示す切断型の他のAβ突然変異タンパク質オリゴマーを同じ処置に供した。
【0325】
切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーのAβペプチド組成が異なることが認められた。表2に、各切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーの特徴的なAβペプチド断片の量を示す。
【0326】
【表3】
【0327】
[実施例3]
切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーのサイズ排除クロマトグラフィー
サイズ排除クロマトグラフィーは、SECカラムSuperose 12HR 10/300GL(GE Health Care、カタログ番号17−5173−01)および0.5ml/分の流量を用いて実施した。移動相は、20mM NaH
2PO
4、140mM NaCl、0.5%SDS、pH7.4であった。実施例1bからの30μgの切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーを移動相で希釈して、200μg/mlの濃度を有する150μlを得た。100μlのこの混合物をカラム上に負荷した。215nmにおける消光を有するペプチドが検出された。
【0328】
切断型Aβ E22A突然変異タンパク質オリゴマーの得られたサイズ排除クロマトグラム(
図1B)は、26kDaに対応する11.37mlにおける主ピークならびに45kDa、120kDaおよび4kDaの微小ピークを示している。切断型Aβ F20G、E22A突然変異タンパク質オリゴマー(
図1C)は、32kDaに対応する10.83mlにおける主ピークおよび5kDaの小ピークのみを有するより均一なサイズ分布を示す。参考として、それぞれ30kDaおよび21kDaに対応する11.04mlおよび11.85mlにおける主二重ピークならびに150kDaおよび4kDaの微小ピークを有する野生型Aβ(20−42)グロブロマー(
図1A)のサイズ排除クロマトグラムを示す。総合すれば、サイズ排除クロマトグラフィーにより、切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーのオリゴマーとしての本質は、野生型Aβ(20−42)グロブロマーと類似していることが確認された。
【0329】
[実施例4]
切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーの直接ELISA
切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーがPF−4に対する望ましくないポリクローナル交差反応性を誘発する傾向を予測するためにマウスAβ(20−42)グロブロマー反応性モノクローナル抗体であるm7C6およびm4D10を用いることによって実施例1bからの切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーの免疫反応性をさらに特徴付けた。抗体m7C6は、PF−4と交差反応することが示されたが、m4D10は、PF−4と交差反応しないことが証明された。
【0330】
切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマー認識の判定のために用いた直接ELISAプロトコール:
試薬:
1. F96 Cert.Maxisorp NUNC−Immunoプレート カタログ番号:439454
2. 抗原:実施例1bからの切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマー
3. コーティング緩衝液:100mM炭酸水素ナトリウム;pH8.2
4. ELISA用ブロッキング試薬;Roche Diagnostics GmbH カタログ番号:1112589
5. PBST緩衝液:20mM NaH
2PO
4;140mM NaCl;0.05%Tween 20;pH7.4
6. PBST+0.5%BSA緩衝液:20mM NaH
2PO
4;140mM NaCl;0.05%Tween 20;pH7.4+0.5%BSA;Servaカタログ11926
7. 一次抗体:
抗Aβ mAbクローン7C6;濃度:2.83mg/ml OD280nm;−80℃で保存
抗Aβ mAbクローン4D10;濃度:8.60mg/ml OD280nm;−80℃で保存
8. 標識試薬:抗マウスPODコンジュゲート;Jackson ImmunoResearch Ltd. カタログ番号:715−035−150
9. 染色:TMB;Roche Diagnostics GmbH カタログ番号:92817060;DMSO中42mM;水中3%H
2O
2;100mM酢酸ナトリウム、pH4.9
10. 停止溶液:2Mスルホン酸
【0331】
試薬の調製に用いた方法
1. 抗原溶液:
12μgの切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーを12mlのコーティング緩衝液で1μg/mlに希釈した。
【0332】
2. ブロッキング試薬:
ブロッキング試薬を100mlの水に溶解して、ブロッキング保存溶液を調製し、10mlのアリコートを−20℃で保存した。各プレートをブロックするために3mlのブロッキング保存溶液を27mlの水で希釈した。
【0333】
3. 一次抗体の希釈:
A)抗Aβ mAbクローン7C6をPBST+0.5%BSAで100ng/mlの濃度に希釈した(=保存溶液A)。
【0334】
B)抗Aβ mAbクローン4D10をPBST+0.5%BSAで100ng/mlの濃度に希釈した(=保存溶液B)。
【0335】
【表4】
【0336】
4. 標識試薬
抗マウスPODコンジュゲート凍結乾燥物を0.5mlの水で再構成した。500μlのグリセロールを加え、100μlのアリコートをさらなる使用に備えて−20℃で保存した。濃縮標識試薬をPBST緩衝液で1/10000に希釈した。試薬は、直ちに用いた。
【0337】
5. TMB溶液:
20mlの100mM酢酸ナトリウムpH4.9を200μlのTMB溶液および29.5μlの3%H
2O
2溶液と混合した。溶液は、直ちに用いた。
【0338】
標準プレート設定:数は、ng/ml単位の最終抗体濃度を示す。各抗体の標準を2連で扱った。
【0339】
【表5】
【0340】
手順:
1. 1ウエル当たり100μlの抗原溶液を加え、4℃で一夜インキュベートした。
【0341】
2. 抗原溶液を捨て、ウエルを250μlのPBST緩衝液で3回洗浄した。
【0342】
3. 1ウエル当たり265μlのブロック溶液を加え、室温で2時間インキュベートした。
【0343】
4. ブロック溶液を捨て、ウエルを250μlのPBST緩衝液で3回洗浄した。
【0344】
5. 抗体曲線の作成の後、1ウエル当たり100μlの希釈系列をプレートに適用した。プレートを室温で2時間インキュベートした。
【0345】
6. 抗体溶液を捨て、ウエルを250μlのPBST緩衝液で3回洗浄した。
【0346】
7. 1ウエル当たり200μlの標識溶液を加え、室温で1時間インキュベートした。
【0347】
8. 標識溶液を捨て、ウエルを250μlのPBST緩衝液で3回洗浄した。
【0348】
9. 100μlのTMB溶液を各ウエルに加え、室温で5−15分インキュベートした。
【0349】
10. 色染色を観察し、1ウエル当たり50μlの停止溶液を加えた。
【0350】
11. 450nmにおける吸光度を測定した。
【0351】
結果:
アミノ酸位置20−23の領域に単一または二重アミノ酸点突然変異を導入することにより、抗体m7C6による得られた切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーの認識は、低下したのに対して、m4D10による認識は、低下しないまたは限定された程度に低下したに過ぎない(
図2参照)。これと対照的に、エピトープをさほど正確にマッピングできないが、非PF−4交差反応性抗体4D10によるAβ(20−42)オリゴマーの認識は、主としてアミノ酸位置27−30の領域における点突然変異により低下する。m7C6認識が低下しているが、m4D10認識は維持されている領域は、PF−4交差反応性を付随して誘発しないそれぞれのAβ(20−42)突然変異オリゴマーによる免疫化によりポリクローナル免疫応答を誘発するのに関係するホットスポットを含むと解釈することができる。
【0352】
[実施例5]
切断型Aβ E22A突然変異タンパク質オリゴマーは、Aβグロブロマー特異的免疫応答を誘導する
反応性Aβ突然変異タンパク質オリゴマーの抗原性をげっ歯類(ウサギ、マウス)の能動免疫により試験した。前記動物から得られたポリクローナル抗血清を親和性精製し、その後、ドットブロット法を用いて異なる型のAβに対するそれらの特異性について試験した。個々の型のAβを連続希釈でブロットし、免疫反応で産生された抗Aβ抗体を含有する対応する親和性精製マウス抗血清とともにインキュベートした。個々のドットブロットは、免疫化げっ歯類の異なる個体に対応する。
【0353】
[実施例5A]
切断型Aβ E22A突然変異タンパク質オリゴマーによるマウスの能動免疫
実施例1cに従って調製し、完全フロイントアジュバント、アラムアジュバントと混合したまたはアジュバントと混合していない、30μgのエタノール沈殿切断型Aβ E22A突然変異タンパク質オリゴマーを、マウス(Balb/cマウス)に、0日目に皮下に投与した。マウスを次のスキームに従って追加抗原刺激した。ブースト1:17日目、ブースト2:35日目およびブースト3:52日目。力価の決定のために、ブースト2および/または3の7−10日後に血漿を抜き取った。
【0354】
アジュバントの調製:
アラムアジュバントの調製:
pH7.4の1mlの1.4M NaCl溶液を9mlの水酸化アルミニウムゲル(Sigma;カタログ番号A8222−250ml)に加えた。混合物を使用前に室温で24時間インキュベートした。
【0355】
完全フロイントアジュバント(CFA):
CFAは、既製のアジュバント溶液として入手し、最初の免疫化のために用いた。すべてのその後の追加免疫のために不完全フロイントアジュバント(IFA)を用いた。
【0356】
アジュバント無し:
アジュバントを用いなかった場合、1/4PBS緩衝液(5mM NaH
2PO
4;35mM NaCl;pH7.4)を代わりに用いた。
【0357】
能動免疫の前に、100μlの切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマー(抗原)を等容積の各アジュバントと混合した。抗原/アジュバント混合物を室温で1時間インキュベートし、短時間振とうした。次いで、200μlの全量をマウスの頸部の皮下に注射した。CFAまたはIFAをアジュバントとして用いた場合、抗原およびCFAまたはIFAアジュバント溶液を、懸濁液が形成されるまで混合し、それを直ちに注射に用いた。
【0358】
[実施例5B−1]
セファロースビーズによるマウス血漿試料からのポリクローナル抗体の親和性精製
セファロースビーズ上へのAβ(20−42)突然変異タンパク質オリゴマーの固定化
試薬:
H
2O中1mM HCl中30%イソプロパノール(氷浴中0℃で予冷)
H
2O中1mM HCl(氷浴中0℃で予冷)
50mM NaHCO
3;pH7.5(氷浴中0℃で予冷)
1/4PBS(5mM NaH
2PO
4;35mM NaCl;pH7.4)
100%イソプロパノール中NHS活性化セファロースビーズ(Fa.GE#17−0906−01)
TBS:(25mMトリス;150mM NaCl;pH7.5)
【0359】
手順:
2mlのNHS活性化セファロースビーズ(=2.8mlイソプロパノール中懸濁液)を10mlのH
2O中1mM HCl中30%イソプロパノール(氷浴中0℃で予冷)で4回、10mlのH
2O中1mM HCl(氷浴中0℃で予冷)で4回および10mlの50mM NaHCO
3;pH7.5(氷浴中0℃で予冷)で4回洗浄した。実施例1bからの0.2mgの切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーを50mM NaHCO
3pH7.5+0.1%SDSで希釈して、0.5mg/mlの濃度を得た。切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマー溶液を0.2gの洗浄済みNHS活性化セファロースビーズに加え、混合物を室温で2時間振とうした。3000gで5分間の遠心分離の後、1mlの50mM NaHCO
3/250mMエタノールアミン、pH7.5+0.1%SDSをセファロースビーズに加え、混合物を室温で1時間振とうした。試料をPolyPrepクロマトグラフィーカラム(Fa.Biorad#731−1550)中に移し、1mlのPBS(5mM NaH
2PO
4;35mM NaCl;pH7.4)+0.1%SDSで5回、次いで1mlのTBSで5回洗浄した。最終洗浄ステップの後、固定化Aβ(20−42)突然変異タンパク質オリゴマーを有するセファロースビーズを1.5mlチューブ中に移し、さらなる使用に備えて6℃で保存した。
【0360】
セファロースビーズ上へのAβ(1−42)モノマーの固定化
試薬:
上記を参照のこと。
【0361】
手順:
2mlのNHS活性化セファロースビーズ(=2.8mlイソプロパノール中懸濁液)を10mlのH
2O中1mM HCl中30%イソプロパノール(氷浴中0℃で予冷)で4回、10mlのH
2O中1mM HCl(氷浴中0℃で予冷)で4回および10mlの50mM NaHCO
3;pH7.5(氷浴中0℃で予冷)で4回洗浄した。0.81mgのAβ(1−42)合成ペプチド(H−1368、Bachem、Bubendorf、Switzerland)を80μlのH
2O中0.1%NaOHに溶解した。50μlのこの10mg/ml Aβ(1−42)モノマー溶液を950μlの50mM NaHCO
3;pH7.5で希釈して、0.5mg/mlの濃度を得た。Aβ(1−42)モノマー溶液を0.5gの洗浄済みNHS活性化セファロースビーズに加え、混合物を室温で2時間振とうした。3000gで5分間の遠心分離の後、1mlの50mM NaHCO
3/250mMエタノールアミン、pH7.5をセファロースビーズに加え、混合物を室温で1時間振とうした。試料をPolyPrepクロマトグラフィーカラム中に満たし、1mlのPBS(5mM NaH
2PO
4;35mM NaCl;pH7.4)で5回、次いで1mlのTBSで5回洗浄した。最終洗浄ステップの後、Aβ(1−42)モノマーを有するセファロースビーズを1.5mlチューブ中に移し、さらなる使用に備えて6℃で保存した。
【0362】
マウス血漿試料からのポリクローナル抗体の親和性精製:
試薬:
TBS(25mMトリス;150mM NaCl;pH7.5)
Complete;プロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤;Roche、カタログ番号11697498001
1/10TBS(2.5mMトリス;15mM NaCl;pH7.5)
溶出緩衝液:0.58%CH
3COOH/140mM NaCl
中和緩衝液:2Mトリス/HCl;pH8.5
固定化切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーを有するセファロースビーズ
Aβ(1−42)モノマーを有するセファロースビーズ
切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーによるマウスの免疫化により生成された抗原特異的抗体を、親和性捕捉タンパク質としてのそれぞれの切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーおよびモノマーAβ(1−42)ペプチドの混合物を用いて親和性精製した。モノマーAβ(1−42)ペプチドは、抗血清中に存在する可能性がある、非グロブロマーエピトープに、例えば、sAPPα、モノマーまたは繊維状Aβペプチドに結合する抗体を含む、すべての抗Aβ抗体が親和性精製されることを保証するために用いた。
【0363】
手順:
250μlの各マウス血漿試料を250μlのTBS+1/50 Complete(1mlのH
2Oに溶解した1錠剤)と混合し、溶液を10000gで10分間遠心分離した。上清を除去し、マウスの免疫化に用いた抗原に対応する切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーを有する50μlのセファロースビーズを加えた。室温で5分間振とうした後、Aβ(1−42)モノマーを有する12.5μlのセファロースビーズを加えた。混合物をEppendorf Thermomixer Comfort中で室温で1100rpmで20時間振とうした。次いで、セファロースビーズを2×100μl TBSを用いて、PolyPrepクロマトグラフィーカラム中に移し、250μlのTBSで4回、250μlの1/10TBSで2回洗浄した。最終洗浄ステップの後、ビーズを100μlの0.58%CH
3COOH/140mM NaClで2回、次いで120μlの0.58%CH
3COOH/140mM HClで1回溶出した。溶出液(約250−270μl)を、22μlの2Mトリス/HCl、pH8.5を前負荷した1.7mlチューブに収集した。溶出ステップの後、試料を直ちに混合し、次いでさらなる使用に備えて−80℃で保存した。マウス血漿からの親和性精製ポリクローナル抗体のタンパク質濃度は、TBSのみの参照ブランクと対照して280nmにおける各親和性精製溶出液の吸収を測定することによって決定した。Aβグロブロマーに対する親和性精製ポリクローナル抗体の結合は、直接ELISAにより確認した。
【0364】
[実施例5B−2]
磁性ダイナビーズによるマウス血漿試料からのポリクローナル抗体の親和性精製
トシル活性化ダイナビーズ上への切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーの固定化:
試薬:
ダイナビーズM−280トシル活性化、Invitrogen、カタログ番号142−04;2×1E09ビーズ/ml
100mMホウ酸ナトリウム、pH9.5
100mMホウ酸ナトリウム、pH9.5+0.5%BSA
PBS(20mM NaH
2PO
4;140mM NaCl;pH7.4)
PBS(20mM NaH
2PO
4;140mM NaCl;pH7.4)+0.1BSA
PBS(20mM NaH
2PO
4;140mM NaCl;pH7.4)+0.1BSA+0.02%アジ化ナトリウム
【0365】
手順:
ダイナビーズの保存懸濁液を発泡を防ぐために注意深く振とうすることによって均一化した。66μlの懸濁液を除去し、1.5ml反応バイアルに移した。ダイナビーズを200μlの100mMホウ酸ナトリウム、pH9.5で2×2分洗浄した。洗浄手順において、磁気セパレータスタンド(MSS)を用いて反応バイアルの壁にダイナビーズを固定化すると同時に上清を注意深く除去した。洗浄済みダイナビーズを100mMホウ酸ナトリウム、pH9.5中で100μgの切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーとともにインキュベートした。試料を37℃で20分間振とうした。次いで、試料を100mMホウ酸ナトリウム、pH9.5+0.5%BSAで1:2に希釈し、37℃で一夜振とうした。固定化切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーを有するダイナビーズを200μlのPBSで2×5分(再びMSSを用いて)、200μlのPBS、0.1%BSAで2×5分洗浄し、最後に0.2mlのPBS、0.1%BSA、0.02%アジ化ナトリウムに再懸濁し、短時間遠心分離した。固定化切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーを有する洗浄済みダイナビーズをさらなる使用まで4℃で保存した。
【0366】
マウス血漿試料からのpMAbの親和性精製:
試薬:
PBS(20mM NaH
2PO
4;140mM NaCl;pH7.4)
PBST(PBS+0.05%Tween20)
PBST+0.5%BSA
溶出緩衝液:0.58%CH
3COOH/140mM NaCl
中和緩衝液:2Mトリス/HCl;pH8.5
固定化切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーを有するダイナビーズ
【0367】
手順:
10μlのマウス血漿試料を80μlのPBST+0.5%BSAで希釈した。固定化切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーを有する、10μlのダイナビーズを加えた。室温で一夜(約20時間)振とうすることによって免疫沈降を行った。MSSを用いてダイナビーズを固定化した。上清を注意深く除去し、捨て、ダイナビーズを500μlのPBSTで1×5分、500μlのPBSで1×5分および500μlの2mM NaH
2PO
4、14mM NaCl;pH7.5で1×3分洗浄した。洗浄緩衝液の最終除去の後、反応バイアルを再度遠心分離し、残存する液体を注意深く、完全に除去した。ダイナビーズを25μlの溶出緩衝液に懸濁し、室温で2分間振とうした。反応バイアル4000rpmで15秒間遠心分離し、MSSに戻し、上清(すなわち、溶出液)を注意深く除去し、975μlのPBST+0.5%BSAに加えた。1μlの中和緩衝液を加え、試料を直ちに約2−3秒間混合した。Aβグロブロマーに対する親和性精製ポリクローナル抗体の結合は、ELISAにより確認した。
【0368】
[実施例5C]
ドットブロットによる抗体選択性の解析
Aβ(20−42)突然変異タンパク質グロブロマー誘導性免疫応答の選択性を特徴付けるために、親和性精製ポリクローナル抗血清を種々のAβ形態に対する結合について試験した。この目的のために、0.2mg/mlのBSAを補充したPBS中100pmol/μlから0.00001pmol/μlの範囲の個々のAβ形態の連続希釈物を調製した。各希釈物1μlをニトロセルロース膜上にブロットした。検出は、対応する親和性精製ポリクローナル抗体(0.2μg/ml)とともにインキュベートした後、ペルオキシダーゼ−(POD−)コンジュゲートIgG(マウスの抗血清については抗マウス−POD、ウサギ抗血清については抗ウサギ−POD)およびBM Blue POD基質(Roche)で免疫染色することによって行った。
【0369】
ドットブロット用のAβ標準
1. Aβ(12−42)グロブロマー
Aβ(12−42)グロブロマーは、参照例4に記載されている通りに調製した。
【0370】
2. Aβ(1−42)グロブロマー
Aβ(1−42)グロブロマーは、参照例3に記載されている通りに調製した。
【0371】
3. Aβ(20−42)グロブロマー
Aβ(20−42)グロブロマーは、参照例5に記載されている通りに調製した。
【0372】
4. Aβ(1−40)モノマー、0.1%NaOH
Aβ(1−40)モノマーは、参照例1に記載されている通りに調製した。
【0373】
5. Aβ(1−42)モノマー、0.1%NaOH
Aβ(1−42)モノマー、0.1%NaOHは、参照例2に記載されている通りに調製した。
【0374】
6. Aβ(1−42)フィブリル
Aβ(1−42)フィブリルは、参照例6に記載されている通りに調製した。
【0375】
7. sAPPα
sAPPαは、参照例7に記載されている通りに調製した。
【0376】
ドットブロット用の材料
100pmol/μl、10pmol/μl、1pmol/μl、0.1pmol/μl、0.01pmol/μl、0.001pmol/μl、0.0001pmol/μlおよび0.00001pmol/μlの濃度を得るための20mM NaH
2PO
4、140mM NaCl、pH7.4+0.2mg/ml BSA中Aβ標準(上記の1.から7.参照)の連続希釈物
【0377】
ニトロセルロース:Trans−Blot転写媒体、純ニトロセルロース膜(0.2μm);BIO−RAD
抗マウス−POD:カタログ番号:715−035−150(Jackson Immuno Research)
検出試薬:BM Blue POD基質、沈殿、カタログ番号:11442066001(Roche)
ウシ血清アルブミン(BSA):カタログ番号:11926(Serva)
ブロッキング試薬:TBS中5%低脂肪乳
緩衝溶液:
TBS:25mMトリス/HCl緩衝液pH7.5+150mM NaCl
TTBS:25mMトリス/HCl緩衝液pH7.5+150mM NaCl+0.05%Tween 20
PBS+0.2mg/ml BSA:20mM NaH
2PO
4緩衝液pH7.4+140mM NaCl+0.2mg/ml BSA
抗体溶液I:20mlのTBS中1%低脂肪乳中0.2μg/ml抗体
抗体:
抗Aβマウスモノクローナル抗体クローン6E10;濃度:1mg/ml;カタログ番号:SIG39320(Covance);−80℃で保存
実施例5B−1からの親和性精製マウスポリクローナル抗Aβ抗体、−80℃で保存
抗体溶液II:マウス抗体の検出用:TBS中1%低脂肪乳中抗マウスPODの1:5000希釈物
ドットブロットの手順:
1) 8つの濃度の異なるAβ標準(連続希釈により得られた)のそれぞれの1μlをニトロセルロース膜上の互いから約1cmの距離の箇所に滴下した。
【0378】
2) Aβ標準のドットをニトロセルロース膜上で室温で少なくとも10分間風乾した(=ドットブロット)。
【0379】
3) ブロッキング:ドットブロットを30mlのTBS中5%低脂肪乳とともに室温で1.5時間インキュベートした。
【0380】
4) 洗浄:ブロッキング溶液を捨て、ドットブロットを20mlのTTBSとともに振とうしながら室温で10分間インキュベートした。
【0381】
5) 抗体溶液I:洗浄緩衝液を捨て、ドットブロットを抗体溶液Iとともに室温で2時間インキュベートした。
【0382】
6) 洗浄:抗体溶液Iを捨て、ドットブロットを20mlのTTBSとともに振とうしながら室温で10分間インキュベートした。洗浄溶液を捨て、ドットブロットを20mlのTTBSとともに振とうしながら室温で10分間インキュベートした。洗浄溶液を捨て、ドットブロットを20mlのTBSとともに振とうしながら室温で10分間インキュベートした。
【0383】
7) 抗体溶液II:洗浄緩衝液を捨て、ドットブロットを抗体溶液IIとともに室温で1時間インキュベートした。
【0384】
8) 洗浄:抗体溶液IIを捨て、ドットブロットを20mlのTTBSとともに振とうしながら室温で10分間インキュベートした。洗浄溶液を捨て、ドットブロットを20mlのTTBSとともに振とうしながら室温で10分間インキュベートした。洗浄溶液を捨て、ドットブロットを20mlのTBSとともに振とうしながら室温で10分間インキュベートした。
【0385】
9) 展開:洗浄溶液を捨てた。ドットブロットを7.5mlのBM Blue POD基質により5分間展開した。展開は、H
2O pH5.3(pHはリン酸二水素ナトリウム結晶で調整)によるドットブロットの強い洗浄により停止した。
【0386】
10) 定量的評価は、GS800濃度計(BioRad)およびソフトウエアパッケージQuantity one、Version 4.5.0(BioRad)を用いてドット強度の濃度測定解析に基づいて行った。最後の光学的に明確に同定されたAβ(20−42)グロブロマーのドットの相対密度の20%を超える相対密度を有するドットのみを評価した。この閾値は、すべてのドットブロットについて独立に決定した。計算値は、所定の抗体についてのAβ(20−42)グロブロマーおよびそれぞれのAβ形態の認識の間の関係を示す。
【0387】
ドットブロット分析は、異なるマウスモノクローナル(m6E10)およびポリクローナル抗Aβ抗体を用いて行った。ポリクローナル抗Aβ抗体は、切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーによるマウスの能動免疫とその後の親和性精製によって得た(実施例5参照)。個々のAβ形態を連続希釈に適用し、免疫反応のために各抗体とともにインキュベートした(1=Aβ(1−42)グロブロマー;2=Aβ(20−42)グロブロマー;3=Aβ(1−40)モノマー、0.1%NaOH;4=Aβ(1−42)モノマー、0.1%NaOH;5=Aβ(1−42)フィブリル調製物;6=sARPα(Sigma)(第1のドット:1pmol);7=Aβ(12−42)グロブロマー)。結果を表3に示す。
【0388】
【表6】
【0389】
【表7】
【0390】
【表8】
【0391】
【表9】
【0392】
【表10】
【0393】
【表11】
【0394】
【表12】
【0395】
【表13】
【0396】
ドットブロット結果から、切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーによるマウスの免疫化により、野生型Aβ(20−42)グロブロマーについても以前に示された、Aβグロブロマーエピトープに対する高度に選択的な免疫応答が誘導されることがわかる。ドットブロットにおいて、ポリクローナル免疫応答の認識を、アルツハイマー病患者の脳に存在するグロブロマーエピトープを提示する野生型Aβ(20−42)グロブロマーと対照して試験した。我々は、切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーは、ヒト体内で生じないと推測している。しかし、切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーによる免疫化により、所望の通りに、野生型Aβグロブロマーエピトープをまだ認識することができた免疫応答が誘導された。したがって、切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーによる能動免疫は、アルツハイマー病トランスジェニックマウスモデルにおける認知障害を反転するのに有効であると予期することができる。その理由は、誘発された抗体反応のポリクローナル抗血清ドットブロットプロファイルが、インビボでのグロブロマーエピトープの認識に関して野生型Aβ(20−42)グロブロマーによる能動免疫により誘発された反応のそれと同等であるからである。後者は、物体認識課題における認知障害を反転することが証明された。
【0397】
[実施例6]
整列化サンドイッチELISAによるカニクイザル血漿中のPF−4との交差反応の判定
【0398】
[実施例6A]
セファロースビーズにより親和性精製したポリクローナルマウス抗体のPF−4交差反応性
材料:
F96 Cert.Maxisorp NUNC−Immunoプレート:カタログ番号439454
実験における結合抗体:
・実施例5B−1からの種々の切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーによる免疫化後のマウス血漿試料からセファロースビーズにより親和性精製したポリクローナル抗体
・市販の参照抗PF−4抗体:モノクローナル抗HPF4抗体(Abcamカタログ番号ab49735)
コーティング緩衝液:100mM炭酸水素ナトリウム:pH9.6
ELISA用ブロッキング試薬;Roche Diagnostics GmbH カタログ番号:1112589
PBST緩衝液:20mM NaH
2PO
4;140mM NaCl;0.05%Tween 20;pH7.4
PBST+0.5%BSA緩衝液:20mM NaH
2PO
4;140mM NaCl;0.05%Tween 20;pH7.4+0.5%BSA;Servaカタログ番号11926
カニクイザル血漿:13匹の異なるドナーからのカニクイザルEDTA血漿プール;−30℃で保存
トリプシン阻害剤:Sigmaカタログ番号T7902
整列化抗体:抗マウスIgG(Fc特異的;ヤギにおいて産生;Sigmaカタログ番号:M3534;2.3mg/ml;−20℃で保存
検出抗体:ポリクローナルウサギ抗PF−4抗体pRAb−HPF4;0.5mg/ml;Abcamカタログ番号:ab9561
標識試薬:抗ウサギPODコンジュゲート;Jackson ImmunoResearch Ltd. カタログ番号:111−036−045
染色溶液:DMSO中42mM TMB(Roche Diagnostics GmbH カタログ番号:92817060);水中3%H
2O
2;100mM酢酸ナトリウム、pH4.9
停止溶液:2Mスルホン酸
試薬の調製:
整列化抗体:整列化抗体をコーティング緩衝液で10μg/mlに希釈した。
【0399】
ブロッキング溶液:ブロッキング試薬を100mlの水に溶解して、ブロッキング保存溶液を調製し、10mlのアリコートを−20℃で保存した。ブロックする各プレートについて3mlのブロッキング保存溶液を27mlの水で希釈した。
【0400】
各結合抗体をPBST+0.5%BSA緩衝液で3.16μg/mlに希釈した(保存溶液)。各親和性精製ポリクローナル抗体調製物の希釈系列を以下のように調製した。
【0401】
【表14】
【0402】
カニクイザル血漿:
5mlのカニクイザル血漿プールを10000gで10分間遠心分離した。4.5mlの上清を除去し、40.5mlのPBST+0.5%BSAで希釈した(=1:10希釈)。次いで450μlのH
2O中10mg/mlトリプシン阻害剤を加えた。室温で10分間のインキュベーションの後、試料を0.22μmフィルター(Milliporeカタログ番号SLGS0250S)を通して濾過した。
【0403】
標識試薬:
凍結乾燥された抗ウサギPODコンジュゲートを0.5mlの水で再構成した。500μlのグリセロールを加え、100μlのアリコートをさらなる使用に備えて20℃で保存した。濃縮標識試薬をPBST緩衝液で希釈した。希釈係数は、1:5000であった。試薬は、直ちに使用した。
【0404】
結合抗体プレートの設定:数は、結合抗体の最終濃度をng/mlの単位で示す。各結合抗体の各濃度を2連で扱った。
【0405】
【表15】
【0406】
手順:
1. 1ウエル当たり100μlの整列化抗体溶液を加え、6℃で一夜インキュベートした。
【0407】
2. 抗体溶液を捨て、ウエルを250μlのPBST緩衝液で3回洗浄した。
【0408】
3. 1ウエル当たり265μlのブロッキング溶液を加え、室温で2時間インキュベートした。
【0409】
4. ブロッキング溶液を捨て、ウエルを250μlのPBST緩衝液で3回洗浄した。
【0410】
5. 各結合抗体の希釈系列の調製の後、1ウエル当たり100μlのこれらの抗体希釈物をプレートに加えた。プレートを室温で2時間インキュベートした。
【0411】
6. 抗体溶液を捨て、ウエルを250μlのPBST緩衝液で3回洗浄した。
【0412】
7. 1ウエル当たりカニクイザル血漿の1:10希釈物100μlを加え、室温で2時間インキュベートした。
【0413】
8. 血漿溶液を捨て、ウエルを250μlのPBST緩衝液で3回洗浄した。
【0414】
9. 1ウエル当たり100μlの一次抗体溶液を加え、室温で1時間インキュベートした。
【0415】
10. 一次抗体溶液を捨て、ウエルを250μlのPBST緩衝液で3回洗浄した。
【0416】
11. 1ウエル当たり200μlの標識試薬を加え、室温で1時間インキュベートした。
【0417】
12. 標識試薬を捨て、ウエルを250μlのPBST緩衝液で3回洗浄した。
【0418】
13. 100μlのTMB溶液を各ウエルに加えた。
【0419】
14. 展開中(周囲温度で5−15分)プレートの色をモニターし、適切な色が発現した場合に50μl/ウエルの停止溶液を加えることにより反応を終結させた。
【0420】
15. 450nmにおける吸光度を測定した。
【0421】
データ解析:
結合抗体濃度(X値)を式X=log(X)を用いて対数変換した。データは、抗体の量(ng/mlで表した)として表したX軸上に対数変換X値を用いてプロットした。行HにおけるそれぞれのPBSTブランクのOD(450nm)値を行A−Gにおける各縦列のポリクローナルマウス抗体希釈系列の値から差し引いた。得られたバックグラウンド補正OD(450nm)値をY軸上にプロットした。濃度効果曲線は、データ解析ソフトウエアパッケージGraphPadPrism(Version 5.03;GraphPad Software Inc.)を用いて、「最小二乗(通常)適合」適合法(「S字形用量反応(可変勾配)適合法」に等しい)による非線形回帰「四パラメーターロジスティック式」を用いた曲線当てはめによりこれらのデータポイントから計算した。曲線当てはめは、データの視覚化の目的のためにのみ実施したのであって、さらなる計算、すなわち、曲線下面積の計算のための基礎としては一切用いていない。曲線下面積(AUC、または総ピーク面積)は、測定範囲(3.16ng/mlから3160ng/mlの最終血漿希釈物)における非曲線当てはめデータである対数変換X値およびOD(450nm)値に基づいて決定した。以下の計算設定をデータ解析ソフトウエアパッケージGraphPadPrism(Version 5.03;GraphPad Software Inc.)内で用いた。
【0422】
・ベースラインをY=0.0に設定した。
【0423】
・最小ピーク高:最小値から最大値Yまでの距離の10%未満であるピークを無視する。
【0424】
・ピークの方向:定義により、すべてのピークは、ベースラインより上に行かなければならない。
【0425】
各抗体について、PF4認識についての参照抗体としての市販の抗HPF4抗体(Abcamカタログ番号ab49735)を用いてPF4識別係数(discrimination factor)を計算した。
【0426】
【数1】
【0427】
実施例6Aの結果を表4A、4Bおよび4Cに示す。
【0428】
【表16】
【0429】
【表17】
【0430】
【表18】
【0431】
[実施例6B]
磁性ダイナビーズにより親和性精製したポリクローナルマウス抗体のPF−4交差反応性
材料および試薬の調製は、以下の実験における結合抗体を除いて、実施例6Aにおけるものに対応している。
【0432】
・実施例5B−2からの各種切断型Aβ突然変異タンパク質オリゴマーによる免疫化後のマウス血漿試料から活性化ダイナビーズにより親和性精製したポリクローナル抗体
・市販の参照抗PF−4抗体:モノクローナル抗HPF4抗体(Abcamカタログ番号ab49735)
磁性ダイナビーズによるマウス血漿の親和性精製後に実施例5B−2で得られた試料は、1:100の前希釈を有していた。この親和性精製血漿保存溶液は、ここでさらなる希釈系列に用いた。各親和性精製ポリクローナル抗体調製物の希釈系列は、以下のように調製した。
【0433】
【表19】
【0434】
カニクイザル血漿および標識試薬は、実施例6Aと同様に調製した。
【0435】
結合抗体プレートの設定:数は、結合抗体の希釈度を示す。各結合抗体の各濃度を2連で扱った。
【0436】
【表20】
【0437】
手順は、実施例6Aの手順に対応している。
【0438】
データ解析:
結合抗体の希釈係数(X値)を式X=log(X)を用いて対数変換した。データは、血漿の希釈度(1:X)として表したX軸上に対数変換X値を用いてプロットした。それぞれのPBSTブランクのOD(450nm)値を各縦列の血漿希釈系列の値から差し引いた。得られたバックグラウンド補正OD(450nm)値をY軸上にプロットした。希釈度効果曲線は、データ解析ソフトウエアパッケージGraphPadPrism(Version 5.03;GraphPad Software Inc.)を用いて、「最小二乗(通常)適合」適合法(「S字形用量反応(可変勾配)適合法」に等しい)による非線形回帰「四パラメーターロジスティック式」を用いた曲線当てはめによりこれらのデータポイントから計算した。曲線当てはめは、データの視覚化の目的のためにのみ実施したのであって、さらなる計算、すなわち、曲線下面積の計算のための基礎としては一切用いていない。曲線下面積(AUC、または総ピーク面積)は、測定範囲(1:100から1:12500の最終血漿希釈係数)における非曲線当てはめデータである対数変換X値およびOD(450nm)値に基づいて決定した。以下の計算設定をデータ解析ソフトウエアパッケージGraphPadPrism(Version 5.03;GraphPad Software Inc.)内で用いた。
【0439】
・ベースラインをY=0.0に設定した。
【0440】
・最小ピーク高:最小値から最大値Yまでの距離の10%未満であるピークを無視する。
【0441】
・ピークの方向:定義により、すべてのピークは、ベースラインより上に行かなければならない。
【0442】
[参照例1]
Aβ(1−40)モノマー(0.1%NaOH)
1mgのAβ(1−40)(Bachem Inc.、カタログ番号H−1194)を232.6μlのH
2O中0.1%NaOH(新たに調製した)に溶解し(=4.3mg/ml=1nmol/1μl)、直ちに室温で30秒間振とうして、透明な溶液を得た。試料をさらなる使用に備えて−20℃で保存した。
【0443】
[参照例2]
Aβ(1−42)モノマー(0.1%NaOH)
1mgのAβ(1−42)(Bachem Inc.、カタログ番号H−1368)を222.2μlのH
2O中0.1%NaOH(新たに調製した)に溶解し(=4.5mg/ml=1nmol/1μl)、直ちに室温で30秒間振とうして、透明な溶液を得た。試料をさらなる使用に備えて−20℃で保存した。
【0444】
[参照例3]
Aβ(1−42)グロブロマー
Aβ(1−42)合成ペプチド(H−1368、Bachem、Bubendorf、Switzerland)を100%1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)に6mg/mlで懸濁し、完全な可溶化のために振とうしながら37℃で1.5時間インキュベートした。HFIPは、水素結合切断剤として作用するので、Aβペプチドにおける先在性の構造的不均一性を解消するために用いられる。HFIPをSpeedVacで蒸発により除去し、Aβ(1−42)をジメチルスルホキシドに5mMの濃度で再懸濁し、20秒間超音波処理した。HFIP前処理Aβ(1−42)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(20mM NaH
2PO
4、140mM NaCl、pH7.4)で400μMに希釈し、1/10容積の2%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)(H
2O中)を加えた(0.2%SDSの最終濃度)。37℃での6時間のインキュベーションにより16/20kDaのAβ(1−42)グロブロマー中間体がもたらされた。3容積のH
2Oでさらに希釈し、37℃で18時間インキュベートすることによって38/48kDaのAβ(1−42)グロブロマーが生成された。3000gで20分間の遠心分離の後に試料を限外濾過(30kDaカットオフ)により濃縮し、5mM NaH
2PO
4、35mM NaCl、pH7.4に対して透析し、10000gで10分間遠心分離し、38/48kDaのAβ(1−42)グロブロマーを含む上清を抜き取った。
【0445】
[参照例4]
Aβ(12−42)グロブロマー
参照例3の2mlのAβ(1−42)グロブロマー調製物を38mlの緩衝液(5mMリン酸ナトリウム、35mM塩化ナトリウム、pH7.4)および150μlの水中1mg/ml GluCエンドプロテイナーゼ(Roche)と混ぜ合わせた。反応混合物を室温で6時間撹拌し、続いてさらなる150μlの水中1mg/ml GluCエンドプロテイナーゼ(Roche)を加えた。反応混合物を室温でさらに16時間撹拌した後、8μlの5M DIFP溶液を加えた。反応混合物を15mlの30kDa Centriprepチューブにより約1mlに濃縮した。濃縮物を9mlの緩衝液(5mMリン酸ナトリウム、35mM塩化ナトリウム、pH7.4)と混ぜ合わせ、再び1mlに濃縮した。濃縮物を透析管中で1lの緩衝液(5mMリン酸ナトリウム、35mM NaCl)に対して6℃で16時間透析した。透析物は、1%濃度のSDSの水中溶液を用いて0.1%のSDS含量に調整した。試料を10000gで10分間遠心分離し、Aβ(12−42)グロブロマー上清を抜き取った。
【0446】
[参照例5]
Aβ(20−42)グロブロマー
参照例3の1.59mlのAβ(1−42)グロブロマー調製物を38mlの緩衝液(50mM MES/NaOH、pH7.4)および200μlの1mg/mlサーモリシン水中溶液(Roche)と混ぜ合わせた。反応混合物を室温で20時間撹拌した。次いで80μlの100mM EDTA水中溶液、pH7.4を加え、混合物を400μlの1%濃度のSDS溶液を用いて0.01%のSDS含量にさらに調整した。反応混合物を15mlの30kDs Centriprepチューブにより約1mlに濃縮した。濃縮物を9mlの緩衝液(50mM MES/NaOH、0.02%SDS、pH7.4)と混ぜ合わせ、再び1mlに濃縮した。濃縮物を透析管中で1lの緩衝液(5mMリン酸ナトリウム、35mM NaCl)に対して6℃で16時間透析した。透析物は、2%濃度のSDSの水中溶液を用いて0.1%のSDS含量に調整した。試料を10000gで10分間遠心分離し、Aβ(20−42)グロブロマー上清を抜き取った。
【0447】
[参照例6]
Aβフィブリル
1mgのAβ(1−42)(Bachem Inc.、カタログ番号H−1368)を500μlの水性0.1%NH
4OH(Eppendorff管)に溶解し、試料を室温で1分間撹拌した。試料を10000×gで5分間遠心分離し、上清を抜き取った。100μlのこの新たに調製したAβ(1−42)溶液を300μlの20mM NaH
2PO
4;140mM NaCl、pH7.4で中和した。pHを1%HClでpH7.4に調整した。試料を37℃で24時間インキュベートし、遠心分離した(10000gで10分)。上清を捨て、フィブリルペレットを400μlの20mM NaH
2PO
4;140mM NaCl、pH7.4で2回洗浄し、次いで最後に400μlの20mM NaH
2PO
4;140mM NaCl、pH7.4を用いて1分間ボルテックス混合することによって再懸濁した。
【0448】
[参照例7]
sAPPα
Sigmaから供給された(カタログ番号S9564;20mM NaH
2PO
4;140mM NaCl、pH7.4中25μg)。sAPPαは、20mM NaH
2PO
4;140mM NaCl、pH7.4、0.2mg/ml BSAで0.1mg/ml(=1pmol/μl)に希釈した。