(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-532556(P2017-532556A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(54)【発明の名称】その粘度に基づく母材または管引抜のための機器及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 11/04 20060101AFI20171006BHJP
C03B 23/047 20060101ALI20171006BHJP
G01N 11/00 20060101ALI20171006BHJP
【FI】
G01N11/04
C03B23/047
G01N11/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-518316(P2017-518316)
(86)(22)【出願日】2014年10月14日
(85)【翻訳文提出日】2017年4月5日
(86)【国際出願番号】US2014060403
(87)【国際公開番号】WO2016060646
(87)【国際公開日】20160421
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515174489
【氏名又は名称】ヘレーウス テネーヴォ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】HERAEUS TENEVO LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジョージズ リヴォン ファッタル
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ イー. ビーバーズ ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】カイ フエイ チャン
(72)【発明者】
【氏名】エヴァン ピー. グリーン
(72)【発明者】
【氏名】チウリン マ
【テーマコード(参考)】
4G015
【Fターム(参考)】
4G015BA01
4G015BB05
(57)【要約】
下に引き抜かれるストランドの形成帯におけるガラス部材によって与えられる保持力を計算することによって求められる形成帯粘度を制御することに基づく、母材及び管引抜のための方法。保持力は、ストランドに加えられる重力と、引張装置によってストランドに加えられる引張力とを求めることによって計算してもよく、ここで、保持力は、重力及び引張力の代数和の正反対と等しい。保持力はまた、形成帯と引張装置との間の点でストランドの応力誘起複屈折を測定することと、複屈折に対応する点でストランドに加えられる力の量を求めることと、形成帯とその点との間でストランドの重量の重力効果に対する力の量を補正することによって保持力を計算することとによって計算してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス母材または管の加工プロセスの形成領域の粘度を測定する方法であって、前記加工プロセスは、加熱領域でバルクガラス部材を加熱することと、前記バルクガラス部材の前記形成領域から前記ストランドを引き抜くことと、前記ストランドを引き抜く速度を制御するために引張装置を使用することと、を含み、前記方法は、
形成領域によってストランドに加えられる保持力を計算することと、
前記保持力を前記形成領域の粘度と関連付けることと、
を含む方法。
【請求項2】
前記保持力が、前記保持力に基づいて前記バルクガラス部材の前記加熱を調整することによって、前記ガラス母材または管の加工プロセスを制御するために使用される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記保持力を計算することが、
前記ストランドに加えられる重力を求めることと、
前記引張装置によって前記ストランドに加えられる引張力を求めることと、
を含み、
前記保持力と、前記重力と、前記引張力と、の合計がゼロに等しい、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記重力を求めることが、
前記ストランドの長さを求めることと、
前記ストランドの質量を計算することと、
を含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記引張装置によって前記ストランドに加えられる前記引張力を求めることが、
前記引張装置に印加される電圧を測定することと、
前記引張装置によって前記ストランドに加えられるトルクを測定することと、
前記電圧及び前記トルクから前記引張力を計算することと、
を含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記引張装置によって前記ストランドに加えられる前記引張力を求めることが、前記引張装置に加えられるロードセルの出力を測定することを含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記引張装置が、前記ストランドを締め付け、垂直に移動させる把持装置を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記保持力を計算することが、
前記加熱領域またはその下の点で前記ストランドの応力誘起複屈折を測定することと、
前記測定された応力誘起複屈折に対応する点で前記ストランドに加えられる力の量を求めることと、
前記加熱領域と前記点との間で前記ストランドの前記重量の重力効果に対する前記力の量を補正することによって前記保持力を計算することと、
を含み、
前記点が前記形成帯である場合、補正はゼロである、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ストランドの前記応力誘起複屈折を測定することが、
センサと偏光光源との間にストランドを設置することと、
前記偏光光源から前記ストランド上に偏光を発することと、
前記センサによって前記ストランドを通る前記偏光の透過の程度を測定することと、
を含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ストランドが、前記点で前記ガラスストランドのほぼアニール温度である、
請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ガラスの細長い部材を製作する方法であって、前記方法は、
ある温度で加熱領域におけるバルクガラス部材を加熱することと、
前記バルクガラス部材の形成領域で前記バルクガラス部材からストランドを引き抜くことと、
前記ストランドを前記バルクガラス部材から引き抜く速度を制御するために引張装置を使用することと、
前記形成領域によって前記ストランドに加えられる保持力を計算することと、
前記保持力が、前記形成領域の所望の粘度に基づく所望の保持力と等しいかどうかを判定することと、
前記保持力が前記所望の保持力と等しくない場合に前記加熱領域の前記温度を調整することと、
を含む方法。
【請求項12】
前記保持力を計算することが、
前記ストランドの長さを求めることと、前記ストランドの質量を計算することとによって、前記ストランドに加えられる重力を求めることと、
前記引張装置によって前記ストランドに加えられる引張力を求めることと、
を含み、
前記保持力と、前記重力と、前記引張力と、の合計がゼロに等しい、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記引張装置によって前記ストランドに加えられる前記引張力を求めることが、
前記引張装置に印加される電圧を測定することと、
前記引張装置によって前記ストランドに加えられるトルクを測定することと、
前記電圧及び前記トルクから前記引張力を計算することと、
を含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記引張装置によって前記ストランドに加えられる前記引張力を求めることが、前記引張装置に加えられるロードセルの出力を測定することを含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記引張装置が、前記ストランドを締め付け、垂直に移動させる把持装置を含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記保持力を計算することが、
前記加熱領域またはその下の点で前記ストランドの応力誘起複屈折を測定することと、
前記測定された応力誘起複屈折に対応する点で前記ストランドに加えられる力の量を求めることと、
前記加熱領域と前記点との間で前記ストランドの前記重量の重力効果に対する前記力の量を補正することによって前記保持力を計算することと、
を含み、
前記点が前記形成帯である場合、補正はゼロである、
請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記ストランドの前記応力誘起複屈折を測定することが、
センサと偏光光源との間に前記ストランドを設置することと、
前記偏光光源から前記ストランド上に偏光を発することと、
前記センサによって前記ストランドを通る前記偏光の透過の程度を測定することと、
を含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ガラス母材または管の加工プロセスの形成領域の粘度を測定するための機器であって、前記加工プロセスは、バルクガラス部材を加熱することと、前記バルクガラス部材からストランドを引き抜くことと、前記ストランドを引き抜く速度を制御するために引張装置を使用することと、を含み、前記システムは、
バルクガラス部材を加熱するための加熱帯であって、形成領域が前記加熱帯にまたは 前記加熱帯直下にある加熱帯と、
引張装置によってストランドに加えられる力を求めるためのシステムと、
前記ストランドの重量及び長さに基づいて前記ストランドの重量を求めるためのシステムと、
を備える機器。
【請求項19】
前記引張装置によって前記ストランドに加えられる力を求めるためのシステムが、前記引張装置のモータに印加される電圧を測定するための電圧計であり、
前記電圧が前記引張装置によって前記ストランドに加えられる前記力と相関している可能性がある、
請求項18に記載の機器。
【請求項20】
前記引張装置によって前記ストランドに加えられる前記力を求めるためのシステムが、前記引張装置に取り付けられる1つまたは複数のロードセルである、
請求項18に記載の機器。
【請求項21】
前記引張装置が、前記ストランドを締め付け、垂直に移動させる把持装置を含む、
請求項18に記載の機器。
【請求項22】
前記ストランドの前記重量を求めるためのシステムが、
カメラ視覚システム、
レーザシステム、または、
前記ストランドの端部の垂直位置を求める機械的装置、
を備える、
請求項18に記載の機器。
【請求項23】
前記ストランドの前記重量を求めるためのシステムが、前記ストランドの速度を測定し、前記ストランドの前記速度に基づいて前記ストランドの長さを求めるためのシステムを備える、
請求項18に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ガラス母材または管を加工すること、特に、母材または管の粘度を制御することに関するものであり、母材または管は、母材または管に加えられる保持力を測定かつ計算することによって引き抜かれる。
【背景技術】
【0002】
光学母材、石英ガラス管、またはロッドは、下端が軟化し、ストランドを形成し始めるように、石英ガラス部材(たとえば、シリンダ、インゴット、または、シリンダ内に挿入されるコアロッドを有するつぶれていないロッドインシリンダ(RIC)アセンブリ)を縦向きの加熱帯に導入することによって製作される。次いで、ストランドは、引張装置、たとえば1つまたは複数の組の引張ホイールを含む装置に配置される。ストランドの引き抜きの速度は、引張ホイールの速度によって制御され、それは、形成帯温度または粘度、及びホイールによって支持されるストランドの重量に依存する下向き力または上向き力を加えてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
繰り返し可能な製造プロセスを実現するために、形成帯における(すなわち、加熱帯での、または、加熱帯直下での)石英ガラス部材の粘度を、所定の母材または管寸法、スループット、及び部材形状のために制御しなければならない。炉温があまりに高いまたはあまりに低い(すなわち、ガラス粘度があまりに低いまたはあまりに高い)とき、コアロッドガラスは、光ファイバの用途に対して歪んだ許容できない導波路になるオーバークラッドガラスとは異なる速度で流れるため、これは特に、つぶれていないRICアセンブリからの母材引き抜きに適している。たとえば、ガラスが2000℃まで加熱されるとき、+/−10℃の変化は、粘度に大きな影響を与える。母材または管引抜を制御する現在の技術は、加熱帯より上のガラス温度、加熱帯より下のガラス温度、及び/または、加熱要素の外面の温度を測定する光高温計の使用を含む。しかしながら、測定される高温計温度は、高温計の観測におけるばらつき、高温計管上の障害、高温計レンズの清浄度、または、センサ自体の較正及び変動などの差異のために大きく変化する可能性があるため、母材または管引抜を制御する温度に基づく方法は信頼できない。粘度は温度と指数関係がある(たとえば、いくつかの場合においては、30℃の温度変化が200%の粘度変化をもたらす可能性がある)ため、測定温度における小さな誤差さえ、粘度、したがって形成挙動における大きなばらつきとなる。そのため、有効粘度、したがってより正確な絶対引抜温度を求めて、次いでそれを使用して母材または管引抜を制御することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ガラス母材または管の加工プロセスの形成領域の有効粘度を求めるための方法を提供する。加工プロセスの間、バルクガラス部材は加熱され、ストランドがバルクガラス部材から引き抜かれる。引張装置は、上向き力または下向き力をストランドに加えることによってストランドを引き抜く速度を制御するために使用される。本発明はさらに、ある温度で形成領域におけるバルクガラス部材を加熱することと、形成領域でバルクガラス部材からストランドを引き抜くことと、ストランドをバルクガラス部材から引き抜く速度を制御するために引張装置を使用することと、軟化領域によって加えられる保持力を計算することと、保持力が形成領域の所望の粘度に基づく所望の保持力と等しいかどうかを判定することと、保持力が所望の保持力と等しくない場合に形成領域の温度を調整することとを含む、ガラスの細長い部材を製作する方法を提供する。本方法において、粘度は、バルクガラス部材によってストランドに加えられる保持力を計算することと、保持力を形成領域の粘度と関連付けることとによって測定される。
【0005】
いくつかの実施形態において、保持力は、ストランドに加えられる重力を求めることと、引張装置によってストランドに加えられる引張力を求めることと、重力及び引張力に基づきバルクガラス部材によってストランドに加えられる保持力を計算することとによって計算される。保持力と、引張力と、重力との合計はゼロに等しい(一定の引抜速度で加速度がなく、したがって、ストランド上の正味の力がゼロであるため)。
【0006】
いくつかの他の実施形態において、保持力は、加熱領域と引張装置との間の点でストランドの応力誘起複屈折を測定することと、測定された応力誘起複屈折に対応する点でストランドに加えられる力の量を求めることと、加熱領域とその点との間でストランドの重量の重力効果に対する力の量を補正することによって保持力を計算することとによって計算される。
【0007】
形成領域の粘度に基づいて母材または管引抜を制御するための機器は、形成帯のすぐ上の、バルクガラス部材を加熱するための加熱帯と、引張装置によってストランドに加えられる力を求めるためのシステムと、ストランドの重量を求めるためのシステムとを含む。1つの実施形態において、引張装置によってストランドに加えられる力を求めるためのシステムは、引張装置のモータに印加される電圧を測定するための電圧計であり、ここで、電圧は引張装置によってストランドに加えられる力によって較正することができる。別の実施形態において、引張装置によってストランドに加えられる力を求めるためのシステムは、引張装置に取り付けられる1つまたは複数のロードセルである。
【0008】
本発明は、添付の図面とともに読まれるとき、以下の詳細な説明から最も理解される。共通の実施に従って、図面の種々の特徴はスケールによらないことが強調される。逆に、種々の特徴の寸法は、明瞭にするために、任意に拡大または縮小される。以下の図が図面に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態による、ガラス母材または管を形成するための機器の概略図である。
【
図2】本発明の実施形態による、
図1の機器によって形成されるガラスストランドに加えられるさまざまな力を示す図である。
【
図3A】保持力(
図3A)が、本発明の実施形態に従って、例示的な母材または管引抜プロセスの間、時間の関数としてどのように変化する可能性があるかを示すグラフである。
【
図3B】引張装置力(
図3B)が、本発明の実施形態に従って、例示的な母材または管引抜プロセスの間、時間の関数としてどのように変化する可能性があるかを示すグラフである。
【
図3C】ストランド長さ(
図3C)が、本発明の実施形態に従って、例示的な母材または管引抜プロセスの間、時間の関数としてどのように変化する可能性があるかを示すグラフである。
【
図3D】ガラス温度(
図3D)が、本発明の実施形態に従って、例示的な母材または管引抜プロセスの間、時間の関数としてどのように変化する可能性があるかを示すグラフである。
【
図3E】引抜速度(
図3E)が、本発明の実施形態に従って、例示的な母材または管引抜プロセスの間、時間の関数としてどのように変化する可能性があるかを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1を参照すると、機器10は、バルクガラス部材120(たとえば、ガラスシリンダまたはインゴット)からガラスストランド110を形成するために使用されてもよい。加熱帯200でガラス部材120を加熱することによって、ガラス部材120の下端が軟化し、ストランド110を形成する。ストランド110を、複数の引張ホイール310を駆動するモータ305を含む引張装置300に入れてもよく、ここで、引張ホイール310は下向き力または上向き力のいずれかをストランド110に加え、ガラス部材120からの引き抜きの速度を制御する。下向き力は引き抜きの速度を増大させ、その一方で、上向き力は引き抜きの速度を減少させる。
【0011】
図2を参照すると、実施形態は、ガラスストランド110上の形成領域210によって与えられる保持力F
hを計算することによって形成領域210の粘度を求めるために機器10を採用している。形成領域210の保持力F
hの大部分は、溶融ガラスの表面張力からの小さく、比較的一定の寄与を有するガラスの粘度による。粘度の温度に対する指数関数的な依存関係のため、形成領域の小さな絶対温度の変化でさえ、粘度の大きな変化をもたらし、その後、保持力F
hの大きな変化をもたらすことがある。したがって、母材または管引抜のために、特に、クラッド対コアの比の最小の変形を必要とする導波路または光ファイバの用途のために、形成領域で保持力F
hまたは有効粘度を制御することは、より正確で繊細な方法であり、従来の高温計に基づく温度測定及びその多くの不正確さを有する制御を使用することよりも、製造における高い品質及び歩留りを達成する。保持力F
hが形成領域210の所望の粘度に基づく所望の保持力から逸脱する場合、加熱帯に供給する熱を補正して、形成領域210における所望の粘度を達成してもよい。
【0012】
保持力F
hを決定するために、ガラスストランド110に与えられる他のすべての力を考慮しなければならない。つまり、引張装置300によって加えられる引張力F
p、及び重力F
g(すなわち、形成領域210より下のストランド110の重量)である。引張力F
pは、保持力F
hと同方向の上向き力として
図2に示されるが、上述のように、引張装置300は、下向き力または上向き力のいずれかをストランド110に加えることができる。そのため、式で使用されるとき、F
pは、引張装置300が重力F
gの反対方向に上向き力をストランド110に加えるとき正であり、引張装置300が重力F
gと同じ方向に下向き力をストランド110に加えるとき負である(定義上、本明細書で負数である)ことが理解されよう。ガラスストランドがゼロ加速度の一定の速さで引き抜かれるため、ストランド110に加えられる正味の力がゼロであり(式1)、保持力は、ストランド110に作用する他の力の代数和の逆として計算されてもよい(式2)。
(1)F
h+F
p+F
g=0
(2)F
h=−(F
g+F
p)
したがって、保持力F
hは、ストランド110に加えられる重力F
gと引張力F
pとの代数和を求めることによって計算されてもよい。次いで、保持力F
hを計算することによって、形成領域210の有効粘度が求められてもよい。
【0013】
重力F
gは、ストランド110の質量mに重力定数g(たとえば、約−9.81m/s
2、ここで、負号は重力加速度または重力が下向きであることを示す)を乗じたものを求めることによって計算されてもよい(式4)。ストランド110の質量mは、その断面積Aにストランド110の密度ρを乗じたものに、ストランド110の長さLを乗じたものに等しい(式3)。
(3)m=L×A×ρ
(4)F
g=m×g=L×A×ρ×g
ストランド110の断面積A及び密度ρは、特定のプロセス及びガラス材料について、一定であり、あらかじめ決められている。いくつかの実施形態において、断面積Aは、ゲージ410、420で求めてもよい、または確認してもよい。例示的な実施形態において、断面積Aは、約1cm
2〜約400cm
2の範囲でもよい。シリカガラスストランドの密度ρは典型的に、約2.2g/cm
3である。しかしながら、たとえばシリカ以外の材料から作られるガラスストランドのために、より大きい、そしてより小さい断面積及び密度が明確に意図される。管について、断面積Aは管の中空内部を含まないことに留意されたい(たとえば、外径d
1及び内径d
2を有する管については、A=π[(d
1/2)
2−(d
2/2)
2])。ストランドの長さLは、ストランド110が形成される速度を測定すること、または、追跡システム510(
図1)を使用してストランド110の端部115の位置を求めることのいずれかによって、求められる。追跡システム510は、カメラ視覚システム、レーザシステム、または、ストランド110の端部115の垂直位置を求める機械的装置を含んでもよい。
図2は、追跡システム510を単一の構成部品のみ含むものとして示すが、追跡システム510は、複数の構成部品、たとえば、ストランド110に沿って垂直に配列される一連のカメラを含んでもよい。
【0014】
ここで、典型的な母材または管引抜プロセスにおいて、一定の引抜速度(及び、ガラスストランド上のゼロの正味の力)を維持するために、ガラスストランド(L)の長さ及びその重量(F
g)をどちらも増加させ、引張装置力(F
p)も増加させなければならない(すなわち、より多くの上向き力を加えるが、温度または粘度に依存する保持力F
hは一定にとどまる)ことに留意されたい。ストランド110は定期的に切られてもよく、その場合、引張力F
pに対するより大きな調整が必要である。
図3A〜3Eは、保持力(F
h)、引張装置力(F
p)、ストランド長さ(L)、ガラス温度、及び引抜速度が、母材または管引抜プロセスの間、時間の関数としてどのように変化する可能性があるかを例示的に示す。引張装置力(F
p)及びストランド長さ(L)についての鋸歯状の挙動は、(a)引き抜きの間、引張装置によって保持されるストランドの長さ及び重量の増加、(b)それを支持し、一定の引抜速度を維持するのに必要な引張装置力の増加、及び、(c)ストランド110の定期的な切断及び除去のためである。
【0015】
1つの実施形態において、引張力F
pは、引張装置300に印加される電圧と、引張ホイール310のトルクとによって求められる。所定のモータについて、モータによって加えられるトルクは、モータに印加される電圧に基づいて求めることができる。トルクの大きさは、力の大きさと、トルクが測定されるところと力が加えられるところとの間の距離とに依存するため、トルクから、引張力F
pが引張ホイール310の直径に基づいて計算されてもよい。引張装置300に印加される電圧は、引張装置に取り付けられる電圧計で測定されてもよい。
【0016】
別の実施形態において、引張力F
pは、引張装置300のフレーム315に直接取り付けられるロードセル320の出力を測定することによって求められる。ロードセル320は、引張ホイール310によって各ロードセル320の歪ゲージ(図示せず)に加えられる力を電気信号に変換するトランスデューサである。次いで、電気信号が測定されて、歪ゲージに加えられる力と相関してもよい。例示的なロードセルは、油圧式ロードセル、空気圧式ロードセル、及び歪ゲージロードセルを含む。別の実施形態において、引張装置300は、ストランドを締め付け、加熱帯200の下に設置されるタワー上を垂直に移動するチャックまたはクランプ(図示せず)などの把持装置を含んでもよい。このような実施形態において、引張力F
pは、把持装置のアームまたは往復台にロードセル320を取り付けることで測定されてもよい。
【0017】
別の実施形態において、保持力F
hは、ストランド110内の応力誘起複屈折を測定することによって求めてもよい。機械的応力のために変形するとき、応力誘起複屈折はガラスなどの材料の屈折率の変化に関連する。機械的応力の程度が大きいほど、屈折率の変化は大きい。応力誘起複屈折の大きさを求めるために、センサ610を形成帯210に、またはその下、たとえば、形成帯210と引張装置300との間の距離xのところに設置してもよい。偏光光源(図示せず)により、ストランド110上に偏光を発し、ストランド110を通る透過の程度をセンサ610で測定してもよい。
【0018】
距離xは好ましくは、機械的引張応力誘起複屈折が測定されるとき、ストランド110がまだほぼアニール温度にあるだけ十分に小さく維持される。距離xがあまりに大きい場合、ストランド110は形成帯210においてアニール温度から冷え始め、冷却の程度によって引き起こされる熱及び残留応力がストランド110に生じて、それを考慮しなければならず、力F
h、F
p、及びF
gから機械的誘起応力のみを求めることが非常に複雑になる。
【0019】
上で論じられたように、ストランドは加速度のない一定の速さで引き抜かれるため、ストランド110上の正味の力はゼロである。そのため、ストランドに沿った各点で、上向き力と下向き力とは等しい大きさであるが、方向は反対である。反対の上向き力と下向き力とにより、2つの状況がもたらされる可能性がある。(1)ストランドが2つの端部でロープのように引っ張られて正応力になる引張。(2)ストランドが2つの端部で押されて負応力になる圧縮。引張であるか圧縮であるかにかかわらず、ストランド110がまだほぼアニール温度であるストランド110に沿った任意の点で、測定された機械的誘起応力Sの大きさにストランドの断面積Aを乗じたものは、その点でストランドに加えられる上向き力または下向き力の大きさに等しい。
(5)|S×A|=|上向き力|=|下向き力|
【0020】
形成帯210の下の距離xでの、形成帯210と引張装置300との間の点については、上向き力は、式(6)に従って、保持力F
hから、点より上のストランドの重量を引いたものに等しい。
(6)(上向き力)=F
h−(点より上のストランド重量)=F
h−|x×A×ρ×g|
【0021】
gが負である上記の符号付与方法により、以下のようになる。
(7)(上向き力)=F
h+(x×A×ρ×g)。
【0022】
ストランド上の正味の力がゼロであるため、上向き力の大きさは下向き力の大きさに等しく、式(7)は上向き力の式(5)に置換されて、式(8)としてもよい。式(8)を使用して、F
hを式(9)によって求めてもよい。
(8)S×A=F
h+(x×A×ρ×g)
(9)F
h=(S×A)−(x×A×ρ×g)
【0023】
式(8)に示されるように、xがゼロに近づくと、保持力F
hは単にS×Aになる。その他の場合には、保持力F
hは、S×Aに、点xより上のストランドの重量(すなわち、|x×A×ρ×g|)を加えたものである。
【0024】
各項目からもたらされる応力誘起複屈折の量は、ストランド110の材料の知られている特性であり、重力効果または補正(すなわち、|x×A×ρ×g|)は、すべての知られている、基本的には一定の値(すなわち、x、A、ρ、及びg)から容易に求められるため、保持力F
hは、測定された応力誘起複屈折(すなわち、S×A)をもたらす力の量を求めることによって導き出してもよい。換言すれば、本実施形態においては、保持力F
hは、連続的に変化するガラスストランド長さLまたは引張力F
pを直接測定する必要なしに、知られている距離xでのガラスストランド内の応力から求めてもよい。
【国際調査報告】