(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-532749(P2017-532749A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(54)【発明の名称】多段光照射を用いた透明伝導性膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 13/00 20060101AFI20171006BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20171006BHJP
B32B 7/02 20060101ALI20171006BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20171006BHJP
B32B 38/18 20060101ALI20171006BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20171006BHJP
B82Y 30/00 20110101ALN20171006BHJP
【FI】
H01B13/00 503B
H01B5/14 A
B32B7/02 103
B32B7/02 104
B32B27/00 Z
B32B38/18 F
B82Y40/00
B82Y30/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-528746(P2017-528746)
(86)(22)【出願日】2015年8月11日
(85)【翻訳文提出日】2017年4月6日
(86)【国際出願番号】KR2015008400
(87)【国際公開番号】WO2016024793
(87)【国際公開日】20160218
(31)【優先権主張番号】10-2014-0103637
(32)【優先日】2014年8月11日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0071293
(32)【優先日】2015年5月21日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】517046872
【氏名又は名称】ティアンジン ナイボ テクノロジー カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】517211779
【氏名又は名称】エヌ アンド ビー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】キム ハク−スン
(72)【発明者】
【氏名】チュン ワン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ドン ヒュン
【テーマコード(参考)】
4F100
5G307
5G323
【Fターム(参考)】
4F100AA17B
4F100AA21B
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4F100AB17B
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5G307FA01
5G307FA02
5G307FB02
5G307FC09
5G323BA01
5G323BB02
(57)【要約】
本発明に係る透明伝導性膜の製造方法は、a)基材上に、光学的活性を有する伝導性ナノワイヤおよび有機バインダーを含有する伝導性ナノワイヤ分散液を塗布するステップと、b)塗布された伝導性ナノワイヤに第1紫外線(UV)を含む第1光を照射する第1光照射ステップと、c)伝導性ナノワイヤにパルス型第1白色光を含む第2光を照射する第2光照射ステップと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)基材上に、光学的活性を有する伝導性ナノワイヤおよび有機バインダーを含有する伝導性ナノワイヤ分散液を塗布するステップと、
b)塗布された伝導性ナノワイヤに第1紫外線(UV)を含む第1光を照射する第1光照射ステップと、
c)第1紫外線が照射された伝導性ナノワイヤにパルス型第1白色光を含む第2光を照射する第2光照射ステップと、を含む、透明伝導性膜の製造方法。
【請求項2】
前記光学的活性は、表面プラズモンまたは光触媒能である、請求項1に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項3】
前記有機バインダーは、分子量が5×105以下の天然または合成ポリマーである、請求項1に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項4】
a)ステップの後、少なくともb)ステップの前に、
塗布された伝導性ナノワイヤに赤外線(IR)を含む第3光を照射する第3光照射ステップをさらに含む、請求項1に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項5】
前記第2光は、第2紫外線をさらに含む、請求項1に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項6】
前記第1光は、パルス型第2白色光をさらに含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項7】
前記第1光によって、少なくとも、基材上に塗布された伝導性ナノワイヤ間の接触領域に存在する有機バインダーが一部または全部分解除去される、請求項1に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項8】
前記第1光の照射時に、伝導性ナノワイヤ間の接触領域に存在する有機バインダーが選択的に除去される、請求項7に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項9】
前記第1紫外線の強度は、下記の関係式1を満たす、請求項6に記載の透明伝導性膜の製造方法。
(関係式1)
IIR(exp)<IIR(0)
(関係式1中、IIR(exp)は、第1光を照射したときの第1紫外線の強度であり、IIR(0)は、純粋な前記有機バインダーの膜に第1紫外線を1分間照射したときに、関係式2による重量減少率が1%以下になる最大強度である。)
(関係式2)
(M0−M1)/M0*100
(関係式2中、M1は、第1紫外線の照射後に関係式1で定義された有機バインダー膜の重量であり、M0は、第1紫外線の照射前に関係式1で定義された有機バインダー膜の重量である。)
【請求項10】
前記第1白色光および第2白色光は、それぞれ前記伝導性ナノワイヤの紫外線−可視光線分光スペクトルで伝導性ナノワイヤの吸光ピークに相当する波長の光を含む、請求項6に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項11】
前記第2白色光は、下記の関係式3を満たす、請求項6に記載の透明伝導性膜の製造方法。
(関係式3)
IIPL2(exp)<IIPL2(0)
(関係式3中、IIPL2(exp)は、第1光を照射したときの第2白色光の強度であり、IIPL2(0)は、前記伝導性ナノワイヤ分散液と同一で、且つ有機バインダーを含有しない基準分散液が塗布および乾燥されて形成された基準体において、前記基準体に第2白色光を10msecのパルス幅で単一のパルスで印加したときに伝導性ナノワイヤ間の接触領域で融着が発生する最小強度である。)
【請求項12】
前記第2白色光の照射は、多重パルス(multi−pulse)照射である、請求項11に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項13】
前記第1白色光は、下記の関係式4を満たす、請求項1に記載の透明伝導性膜の製造方法。
(関係式4)
IIPL1(0)≦IIPL1(exp)<IIPL1(c)
(関係式4中、IIPL1(exp)は、第2光を照射したときの第1白色光の強度であり、IIPL1(0)は、前記伝導性ナノワイヤ分散液と同一で、且つ有機バインダーを含有しない基準分散液が塗布および乾燥されて形成された基準体において、前記基準体に第1白色光を10msecのパルス幅で単一のパルスで印加したときに伝導性ナノワイヤ間の接触領域で融着が発生する最小強度であり、IIPL1(c)は、前記基準体に第1白色光を10msecのパルス幅で単一のパルスで印加したときに伝導性ナノワイヤの長軸方向への部分的溶融によって一つの伝導性ナノワイヤが二つ以上のナノ構造に切断される最小強度である。)
【請求項14】
前記第1白色光は、単パルス照射される、請求項13に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項15】
前記第2光によって、伝導性ナノワイヤ間の接触領域で融着が行われる、請求項6に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項16】
前記第2光によって前記第1光の照射後に基材上に残留する有機バインダーが除去される、請求項5に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項17】
前記第2光の照射は、第2紫外線の照射と同時にまたは第2紫外線が照射される間に第1白色光が照射される、請求項5に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項18】
前記第1光の照射と第2光の照射は、互いに独立してまたは連続して行われる、請求項6に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項19】
前記第1紫外線または第2紫外線の強度は、互いに独立して0.1〜5mW/cm2である、請求項5に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項20】
前記第1紫外線または第2紫外線は、互いに独立して1秒〜100秒間照射される、請求項19に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項21】
前記第2白色光の強度は300〜1000W/cm2である、請求項6に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項22】
前記第1白色光の強度は2000〜3000W/cm2である、請求項6に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項23】
前記伝導性ナノワイヤ分散液は、0.1〜5重量%の有機バインダーを含有する、請求項1に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項24】
前記有機バインダーは、グリコーゲン、アミロース、アミロペクチン、カロース、カンテン、アルギン、アルジネート、ペクチン、カラギーナン、セルロース、キチン、キトサン、カードラン、デキストラン、フルクタン(fructane)、コラーゲン、ゲランガム(gellan gum)、アラビアガム、デンプン、キサンタン、タラカントガム(gum tragacanth)、カラヤン(carayan)、カラビン(carabean)、グルコマンナンまたはこれらの組み合わせである多糖類;もしくはセルロースエステルまたはセルロースエーテルである多糖類誘導体;である、請求項3に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項25】
前記有機バインダーは、カルボキシ−C1−C3−アルキルセルロース、カルボキシ−C1−C3−アルキルヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース、C1−C3−アルキルセルロース、C1−C3−アルキルヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース、ヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース、混合されたヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロースまたはこれらの混合物であるセルロースエーテルである、請求項24に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項26】
前記有機バインダーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)およびこれらの混合物を含む、請求項3に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項27】
前記伝導性ナノワイヤは、金、銀、銅、リチウム、アルミニウムおよびこれらの合金から選択される一つまたは二つ以上である、請求項1に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項28】
前記伝導性ナノワイヤは、チタン酸化物を含む金属酸化物である、請求項1に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項29】
前記伝導性ナノワイヤのアスペクト比(aspect ratio)は50〜20000である、請求項1に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項30】
前記基材は、リジッド(rigid)基板またはフレキシブル(flexible)基板である、請求項1に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項31】
前記基材は、少なくとも二つ以上の互いに異なる物質が層をなして積層された積層体である、請求項30に記載の透明伝導性膜の製造方法。
【請求項32】
請求項1に記載の製造方法により製造された、透明伝導性膜。
【請求項33】
伝導性ナノワイヤが伝導性ナノワイヤ間の接触領域で溶融結着して結合した伝導性ナノワイヤネットワークを含み、少なくとも20mm×20mmの面積を有する大面積の伝導性ナノワイヤネットワークを基準として、下記の関係式6で規定されるシート抵抗均一度が90%以上である、透明伝導性膜。
(関係式6)
シート抵抗均一度(%)=[1−(シート抵抗標準偏差)/シート抵抗平均)]×100
【請求項34】
1cmの曲率半径で1000回の曲げ試験を行うときに、下記の関係式7で規定されるシート抵抗増加率が1.4以下である、請求項33に記載の透明伝導性膜。
(関係式7)
シート抵抗増加率=曲げ試験後のシート抵抗/曲げ試験前のシート抵抗
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明伝導性膜の製造方法に関し、詳細には、優れた電気伝導度と高い透明度を有し、大面積でも均一な電気的特性が確保され、繰り返しの物理的変形にも長期間安定して動作することができる透明伝導性膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明電極は、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、TFT)素子、太陽電池、タッチスクリーンなど、様々な事業分野において広く使用されている。
【0003】
従来、透明電極の素材としてインジウムスズ酸化物(ITO)が多く用いられてきたが、インジウム枯渇の問題および工程の複雑性が問題となっている。また、ITOは、ほとんどが薄膜蒸着工程により蒸着が行われ、工程コストが高く、結晶質構造を有する緻密な薄膜が形成され、クラックが生じるなどの問題があり、最近注目されているポリマー系を使用したフレキシブル基板を活用した透明電極には適していないという欠点があり、かかるITO透明物質を代替するための素材として、近年、銀ナノワイヤが注目されている。
【0004】
一方、フレキシブルな透明電極を製造する方法は、金属インクを使用してナノメッシュを活用した方法と、銀ナノワイヤに代表される金属ナノワイヤを使用して製造する方法とに大別される。そのうち、金属ナノワイヤをフレキシブル基板上に載置して透明電極を製造する場合の核心技術は、金属ナノワイヤを接合する方法である。
【0005】
一例として、従来、金属ナノワイヤを接合するために、不活性ガスの内部で高温(200〜350℃)の熱の印加、レーザーの照射または化学的方法を使用していたが、かかる方法は、多くの時間がかかるだけでなく、融点が低く、化学的反応を引き起こし得るポリマー基板では使用が不可能であるという欠点がある。また、韓国公開特許第2012−0092294号は、光焼結を用いて銀ナノワイヤを接合することで透明電極を製造する技術を提供しているが、シート抵抗均一度が劣り、商用化には限界がある。
【0006】
また、金属ナノワイヤを基板上にコーティングしフィルムを形成する時には均一に塗布することが重要である。一般的に、銀ナノワイヤをはじめ金属ナノワイヤは、自分どうしの凝集力が強くて水などの溶媒に金属ナノワイヤを分散させると均一な分散度を得ることが困難であり、特にこれを基板にコーティングして乾燥すると、溶媒が先に揮発して金属ナノワイヤ同士がくっつく現象が起こる。そのため、基板上の表面コーティング層をなす金属ナノワイヤが均一に形成されることが困難であり、結果として、全表面においてシート抵抗が均一な透明電極用フィルムを提供することが非常に困難であると知られている。
【0007】
したがって、ポリマー素材を活用したフレキシブルな透明電極として活用することができ、全表面において均一なシート抵抗を有する透明電極を提供するためには、化学的反応により他の構成要素に影響を及ぼさず、常温大気条件下でごく短時間で接合が可能で、且つシート抵抗均一度が向上した透明電極用フィルムに関する開発が必要となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、優れた電気伝導度と高い透明度を有し、大面積でも均一な電気的特性が確保され、繰り返しの物理的変形にも長期間安定して動作することができる透明伝導性膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る透明伝導性膜の製造方法は、a)基材上に、光学的活性を有する伝導性ナノワイヤおよび有機バインダーを含有する伝導性ナノワイヤ分散液を塗布するステップと、b)塗布された伝導性ナノワイヤに第1紫外線(UV)を含む第1光を照射する第1光照射ステップと、c)伝導性ナノワイヤにパルス型第1白色光を含む第2光を照射する第2光照射ステップと、を含む。
【0010】
本発明の一実施例による製造方法において、光学的活性は、表面プラズモンまたは光触媒能であってもよい。
【0011】
本発明の一実施例による製造方法において、有機バインダーは、分子量(Mw)が5×10
5以下の天然または合成ポリマーであってもよい。
【0012】
本発明の一実施例による製造方法は、a)ステップの後、少なくともb)ステップの前に、塗布された伝導性ナノワイヤに赤外線(IR)を含む第3光を照射する第3光照射ステップをさらに含んでもよい。
【0013】
本発明の一実施例による製造方法において、第2光は、第2紫外線をさらに含んでもよい。
【0014】
本発明の一実施例による製造方法において、第1光は、パルス型第2白色光をさらに含んでもよい。
【0015】
本発明の一実施例による製造方法において、第1光によって、少なくとも、基材上に塗布された伝導性ナノワイヤ間の接触領域に存在する有機バインダーが分解除去されてもよい。
【0016】
本発明の一実施例による製造方法において、第1光の照射時に、伝導性ナノワイヤ間の接触領域に存在する有機バインダーが選択的に除去されてもよい。
【0017】
本発明の一実施例による製造方法において、第1紫外線の強度は、下記の関係式1を満たしてもよい。
(関係式1)I
IR(exp)<I
IR(0)
関係式1中、I
IR(exp)は、第1光を照射したときの第1紫外線の強度であり、I
IR(0)は、純粋な前記有機バインダーの膜に第1紫外線を1分間照射したときに、関係式2による重量減少率が1%以下になる最大強度である。
(関係式2)
(M
0−M
1)/M
0*100
関係式2中、M
1は、第1紫外線の照射後に関係式1で定義された有機バインダー膜の重量であり、M
0は、第1紫外線の照射前に関係式1で定義された有機バインダー膜の重量である。
【0018】
本発明の一実施例による製造方法において、第1白色光および第2白色光は、それぞれ伝導性ナノワイヤの紫外線−可視光線分光スペクトルで伝導性ナノワイヤの吸光ピークに相当する波長の光を含んでもよい。
【0019】
本発明の一実施例による製造方法において、第2白色光は、下記の関係式3を満たしてもよい。
(関係式3)
I
IPL2(exp)<I
IPL2(0)
関係式3中、I
IPL2(exp)は、第1光を照射したときの第2白色光の強度であり、I
IPL2(0)は、伝導性ナノワイヤ分散液と同一で、且つ有機バインダーを含有しない基準分散液が塗布および乾燥されて形成された基準体において、基準体に第2白色光を10msecのパルス幅で単一のパルスで印加したときに伝導性ナノワイヤ間の接触領域で融着が発生する最小強度である。
【0020】
本発明の一実施例による製造方法において、第2白色光の照射は、多重パルス(multi−pulse)照射であってもよい。
【0021】
本発明の一実施例による製造方法において、前記第1白色光は、下記の関係式4を満たしてもよい。
(関係式4)I
IPL1(0)≦I
IPL1(exp)<I
IPL1(c)
関係式4中、I
IPL1(exp)は、第2光を照射したときの第1白色光の強度であり、I
IPL1(0)は、伝導性ナノワイヤ分散液と同一で、且つ有機バインダーを含有しない基準分散液が塗布および乾燥されて形成された基準体において、基準体に第1白色光を10msecのパルス幅で単一のパルスで印加したときに伝導性ナノワイヤ間の接触領域で融着が発生する最小強度であり、I
IPL1(c)は、基準体に第1白色光を10msecのパルス幅で単一のパルスで印加したときに伝導性ナノワイヤの長軸方向への部分的溶融によって一つの伝導性ナノワイヤが二つ以上のナノ構造に切断される最小強度である。
【0022】
本発明の一実施例による製造方法において、第1白色光は、単パルス照射されてもよい。
【0023】
本発明の一実施例による製造方法において、第2光によって、伝導性ナノワイヤ間の接触領域で融着が行われてもよい。
【0024】
本発明の一実施例による製造方法において、第2光によって第1光の照射後に基材上に残留する有機バインダーが除去されてもよい。
【0025】
本発明の一実施例による製造方法において、第2光の照射は、第2紫外線の照射と同時にまたは第2紫外線が照射される間に第1白色光が照射されてもよい。
【0026】
本発明の一実施例による製造方法において、第1光の照射と第2光の照射は、互いに独立してまたは連続して行われてもよい。
【0027】
本発明の一実施例による製造方法において、第1紫外線または第2紫外線の強度は、互いに独立して0.1〜5mW/cm
2であってもよい。
【0028】
本発明の一実施例による製造方法において、第1紫外線または第2紫外線は、互いに独立して1秒〜100秒間照射されてもよい。
【0029】
本発明の一実施例による製造方法において、第2白色光の強度は300〜1000W/cm
2であってもよい。
【0030】
本発明の一実施例による製造方法において、第1白色光の強度は2000〜3000W/cm
2であってもよい。
【0031】
本発明の一実施例による製造方法において、伝導性ナノワイヤ分散液は、0.1〜5重量%の有機バインダーを含有してもよい。
【0032】
本発明の一実施例による製造方法において、有機バインダーは、グリコーゲン、アミロース、アミロペクチン、カロース、カンテン、アルギン、アルジネート、ペクチン、カラギーナン、セルロース、キチン、キトサン、カードラン、デキストラン、フルクタン(fructane)、コラーゲン、ゲランガム(gellan gum)、アラビアガム、デンプン、キサンタン、タラカントガム(gum tragacanth)、カラヤン(carayan)、カラビン(carabean)、グルコマンナンまたはこれらの組み合わせである多糖類;もしくはセルロースエステルまたはセルロースエーテルである多糖類誘導体;であってもよい。
【0033】
本発明の一実施例による製造方法において、前記有機バインダーは、カルボキシ−C1−C3−アルキルセルロース、カルボキシ−C1−C3−アルキルヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース、C1−C3−アルキルセルロース、C1−C3−アルキルヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース、ヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース、混合されたヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロースまたはこれらの混合物であるセルロースエーテルであってもよい。
【0034】
本発明の一実施例による製造方法において、有機バインダーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)およびこれらの混合物を含んでもよい。
【0035】
本発明の一実施例による製造方法において、伝導性ナノワイヤは、金、銀、銅、リチウム、アルミニウムおよびこれらの合金から選択される一つまたは二つ以上であってもよい。
【0036】
本発明の一実施例による製造方法において、伝導性ナノワイヤは、チタン酸化物を含む金属酸化物であってもよい。
【0037】
本発明の一実施例による製造方法において、伝導性ナノワイヤのアスペクト比(aspect ratio)は50〜20000であってもよい。
【0038】
本発明の一実施例による製造方法において、基材は、リジッド(rigid)基板またはフレキシブル(flexible)基板であってもよい。
【0039】
本発明の一実施例による製造方法において、基材は、少なくとも二つ以上の互いに異なる物質が層をなして積層された積層体であってもよい。
【0040】
本発明は、上述の製造方法で製造された透明伝導性膜を含む。
【0041】
本発明に係る透明伝導性膜は、伝導性ナノワイヤが伝導性ナノワイヤ間の接触領域で溶融結着して結合した伝導性ナノワイヤネットワークを含み、少なくとも20mm×20mmの面積を有する大面積の伝導性ナノワイヤネットワークを基準として、下記の関係式6で規定されるシート抵抗均一度が90%以上である。
(関係式6)
シート抵抗均一度(%)=[1−(シート抵抗標準偏差)/シート抵抗平均)]×100
【0042】
本発明の一実施例による透明伝導性膜は、1cmの曲率半径で1000回の曲げ試験を行うときに、下記の関係式7で規定されるシート抵抗増加率が1.4以下であってもよい。
(関係式7)
シート抵抗増加率=曲げ試験後のシート抵抗/曲げ試験前のシート抵抗
【発明の効果】
【0043】
本発明に係る製造方法は、90〜95%の優れたシート抵抗均一度を有する大面積の透明伝導性膜を提供することができ、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、TFT)素子、太陽電池、タッチスクリーン、フレキシブル透明電極など、様々な電子素子分野において商業的に有効に活用することができる。
【0044】
また、本発明に係る製造方法は、熱に非常に脆いポリマー基板が損傷を受けることなく、常温大気条件下でごく短時間で優れた透明度および低いシート抵抗を有する透明伝導性膜を製造することができ、ロールツーロール工程への適用が容易であり、フレキシブル透明電極の大量生産を可能にする。
【0045】
また、本発明に係る製造方法は、10mm半径の曲げ試験が1000回行われる場合にも極めて安定してシート抵抗が保持され、基板と伝導性ナノワイヤネットワークが強く結合しており、著しく向上した寿命を有する透明伝導性膜を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】バインダーを含有していない分散液、バインダーを0.07重量%含有する分散液、バインダーを0.15重量%含有する分散液およびバインダーを0.3重量%含有する分散液を塗布および乾燥して得られた乾燥膜の平均シート抵抗および偏差を図示した図である。
【
図2】実施例1において、近赤外線ランプの照射後の平均シート抵抗(
図2における非照射)を基準(100%)として、第1光の照射後の平均シート抵抗(
図2におけるUV照射)および第2光の照射後の平均シート抵抗(
図2におけるIPL照射)を測定し図示した図である。
【
図3】実施例2において、近赤外線ランプの照射後の平均シート抵抗(
図3における非照射)を基準(100%)として、第1光の照射後の平均シート抵抗および第2光の照射後の平均シート抵抗を測定し図示した図である。
【
図4】実施例2において、乾燥および第1光の照射のみが行われて得られた膜の曲げ試験結果(
図4において四角で図示)と実施例2により製造された透明伝導性膜の曲げ試験結果(
図4において丸で図示)を図示した図である。
【
図5】実施例2において、乾燥および第1光の照射のみが行われて得られた膜の光透過率と実施例2により製造された透明伝導性膜の光透過率を図示した図である。
【
図6】比較例で製造された銀ナノワイヤを観察した走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の透明伝導性膜の製造方法および透明伝導性膜について詳細に説明する。ここで使用される技術用語および科学用語において他の定義がない限り、この発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明および添付の図面において本発明の要旨を不明瞭にし得る公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0048】
本出願人は、ITO(インジウムスズ酸化物)に代表される従来の透明電極の代わりに伝導性ナノワイヤのネットワークを使用するための研究を行っていたところ、伝導性ナノワイヤネットワークが商業的に透明電極として用いられるためには、何よりも大面積でもシート抵抗均一性を有する伝導性ナノワイヤネットワークを製造することができる技術を開発する必要があることに注目した。かかる技術的動機に基づき、シート抵抗均一性を有するとともに、熱に脆いフレキシブル基板上において容易且つ迅速に製造することができ、基板との結着力に優れることで、繰り返しの高度の曲がりにも安定して電気伝導度が保持される伝導性ナノワイヤネットワークを製造するために長期間鋭意研究を重ねた。
【0049】
かかる研究過程で、熱に脆いフレキシブル基板上において、基板の損傷を防止し、且つ低コストで短時間で大量生産するためには、光焼結が好ましく、大面積でのシート抵抗均一性を有するためには、必ずバインダーを介して基板上の伝導性ナノワイヤの均一な分散が誘導されなければならないことに注目した。
【0050】
しかし、バインダーにより基板上の伝導性ナノワイヤが分散結着した場合、キセノンランプを用いた光焼結のような従来公知の技術によっては、ナノワイヤが損傷しないとともにナノワイヤが互いに接触した領域が部分的に溶融結着される光焼結がほとんど行われず、目的とするシート抵抗均一度もまた確保されず、光焼結の前に、バインダーの前除去が必須として求められることを発見した。かかる発見を深化した結果、プラズマなどによりすべてのバインダーを前除去(前除去とは、光焼結の前のステップでバインダーを除去することを意味する)する場合、むしろナノワイヤが互いに接触した領域の溶融結着時に発生する熱応力および変形によってナノワイヤ間の接触が減少するだけでなく、基板との結着力も減少するという限界があり、多段光照射、好ましくは、複合光を用いた多段光照射によりバインダーを順次除去することにより、目的とするシート抵抗均一度を有し、優れた基板との結合力を有し、且つ優れた電気伝導度を有する伝導性ナノワイヤネットワークの製造が可能となり、熱的に非常に脆い基板上においても基板を損傷することなく伝導性ナノワイヤネットワークの製造が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0051】
本発明に係る透明伝導性膜の製造方法は、a)基材上に、光学的活性を有する伝導性ナノワイヤおよび有機バインダーを含有する伝導性ナノワイヤ分散液を塗布するステップと、b)塗布された伝導性ナノワイヤに第1紫外線(UV)を含む第1光を照射する第1光照射ステップと、c)第1紫外線が照射された伝導性ナノワイヤにパルス型第1白色光を含む第2光を照射する第2光照射ステップと、を含む。
【0052】
すなわち、本発明に係る製造方法において、光の照射は、多段(multi−stage)で行われ、多段光照射は、b)ステップにおける第1光の照射とc)ステップにおける第2光の照射の順次照射を含む。具体的に、多段光照射は、第1紫外線を含む第1光を照射し、少なくとも伝導性ナノワイヤが互いに接触する接触領域(伝導性ナノワイヤの交差領域を含む)に存在する有機バインダーを除去する前除去ステップと、第1白色光を含む第2光を照射して、伝導性ナノワイヤが互いに接触する接触領域を溶融させて互いに結着させる融着ステップとを含む。この際、第1光の照射と第2光の照射が互いに独立して順に行われる時、第1光の照射と第2光の照射との間に休止期が存在し得ることは言うまでもない。
【0053】
上述のように、本発明の一実施例による製造方法において、第1光を照射するときに照射される第1光は、第1紫外線(UV)光を含んでおり、第1紫外線によって伝導性ナノワイヤ分散液に含有されて伝導性ナノワイヤとともに基材上に塗布された有機バインダーが除去され得る。詳細には、第1光により、少なくとも、基材上に塗布された伝導性ナノワイヤ間の接触領域に存在する有機バインダーが一部もしくは全部分解除去されてもよい。
【0054】
第1紫外線(ultraviolet rays)は、波長が10nm〜400nmの範囲を有する光を意味し得、周知のように、紫外線は、非常に強い化学作用を引き起こし、化学線とも称する。第1紫外線は、320〜400nmの波長帯域のUV−A、280〜320nmの波長帯域のUV−B、100〜280nmの波長帯域のUV−Cまたはこれらの組み合わせを含んでもよい。この際、第1紫外線は、有機物の分解にさらに効果的なUV−Cを含んでもよい。この際、パルス型とともに特別に照射される光の照射形態について言及されていない限り、本発明で照射される光は、いずれも所定の時間に光が連続して照射される連続光の形態であってもよい。一例として、第1紫外線もまた、特に光の照射形態が限定されていないため、第1紫外線が連続光の形態で照射され得ることは言うまでもない。
【0055】
上述のように、基材上に伝導性ナノワイヤとともに塗布された有機バインダーが第1光によってすべて分解除去される場合、第2光による伝導性ナノワイヤの融着時に伝導性ナノワイヤの曲がりによって基板との結着力が減少することがあり、伝導性ナノワイヤネットワークのシート抵抗が増加し得る。これを防止するためには、第1光によって、伝導性ナノワイヤが互いに接触する接触領域に存在する有機バインダーが選択的に除去されることが好ましい。この際、接触領域に存在する有機バインダーの選択的除去は、第1光の照射後にも基材上に有機バインダーが残留することを意味し、さらに、接触領域以外の領域で、伝導性ナノワイヤが有機バインダーによって基板に結着した状態を意味し得る。
【0056】
接触領域に存在する有機バインダーの選択的除去は、第1光自体、具体的には、第1光に含まれる第1紫外線自体では有機バインダーが除去されない条件で第1紫外線を照射し、且つ表面プラズモンが発生するかまたは光触媒能を有する伝導性ナノワイヤの光学的活性と第1紫外線との結合によって初めて有機バインダーが除去され得る条件で第1紫外線を照射することで行われ得る。
【0057】
すなわち、光学的活性を有する伝導性ナノワイヤは、表面プラズモンが発生する伝導性ナノワイヤおよび/または光触媒能を有する伝導性ナノワイヤを意味し得、かかる伝導性ナノワイヤが提供する光学的活性が第1紫外線と結合することにより、接触領域に位置する有機バインダーが選択的に除去され得る。
【0058】
この際、プラズモンの分野において公知となっているように、表面プラズモンは、ナノ寸法を有する構造体である金属と光との相互作用によって、金属の自由電子の集団動きであるプラズモンが金属構造体の表面に集中して形成される現象を意味する。表面プラズモンを発生する伝導性ナノワイヤは、表面プラズモンが発生するものと知られたある金属のナノワイヤであってもよい。具体例として、表面プラズモンを有する伝導性ナノワイヤは、金、銀、銅、リチウム、アルミニウムおよびこれらの合金などから選択される一つまたは二つ以上の物質のナノワイヤであってもよく、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
光触媒能は、光エネルギーを受け、化学反応を促進させる能力を意味し、化学反応は有機物の分解反応であり得、光触媒能は有機物分解光触媒能であり得る。光触媒能を有する伝導性ナノワイヤは、電子または正孔の移動経路を提供することができ、光によって化学反応を促進させるものと知られたある物質のナノワイヤであってもよい。電子移動経路を提供し、光触媒能を有する伝導性ナノワイヤの具体例として、チタン酸化物、亜鉛酸化物およびスズ酸化物などから選択される一つ以上の金属酸化物のナノワイヤが挙げられ、金属であり、光触媒能を有する伝導性ナノワイヤの具体例として、金、銀、白金などを含む貴金属ナノワイヤが挙げられ、本発明はこれに限定されるものではない。
【0060】
また、表面プラズモンを有する伝導性ナノワイヤは、表面プラズモンおよび光触媒能の両方を有するものに解釈され得るが、これは、表面プラズモンを有する異方性(anisotropic)構造の物質が光触媒能を有するものと知られたことに相当する。
【0061】
第1光自体、具体的には、第1光に含まれる第1紫外線自体では有機バインダーが除去されず、伝導性ナノワイヤーが提供する光学的活性の存在下で初めて有機バインダーを除去するために、第1光の照射時に、第1紫外線の強度は、下記の関係式1を満たすことができる。
【0062】
(関係式1)
I
IR(exp)<I
IR(0)
【0063】
関係式1中、I
IR(exp)は、第1光を照射したときの第1紫外線の強度であり、I
IR(0)は純粋な前記有機バインダーの膜に第1紫外線を1分間照射する時に関係式2による重量減少率が1%以下になる最大強度である。この際、有機バインダーの膜は、重量減少率の測定に適する厚さを有する膜であればよく、非限定的な一例として、厚さが100〜800nmである膜であってもよい。
【0064】
(関係式2)
(M
0−M
1)/M
0*100
【0065】
関係式2中、M
1は、第1紫外線の照射後に関係式1で定義された有機バインダー膜の重量であり、M
0は、第1紫外線の照射前に関係式1で定義された有機バインダー膜の重量である。
【0066】
すなわち、関係式1および関係式2により提示されたように、第1紫外線の強度は、伝導性ナノワイヤ分散液に含有される有機バインダーが伝導性ナノワイヤと混在せず、純粋に有機バインダーの膜をなす時に、第1紫外線を1分間照射する光照射では有機バインダーの分解除去が実質的にほとんど行われない(関係式2による重量減少率が1%以下)強度で照射されることが好ましい。有機バインダーの種類に応じてある程度関係式1を満たす強度が決定され得るが、後述するように、かかる第1紫外線の強度によって、有機バインダーの選択的除去が可能となり、さらに、特に熱や化学的に脆い基板上に透明伝導性膜を製造しようとする場合、紫外線によって基板が損傷することを基本的に防止することができる。
【0067】
第1紫外線を含む第1光の照射によって、伝導性ナノワイヤの接触領域に存在する有機バインダー、具体的には、互いに接点をなす一つの伝導性ナノワイヤと他の一つの伝導性ナノワイヤとの接点に位置する有機バインダーができるだけ全部除去されることが好ましい。
【0068】
しかし、ナノワイヤによる遮光(shading)を無視できないため、二つのナノワイヤ間に挟まって位置する有機バインダーが完壁に除去され難いことがある。接触領域の有機バインダーをすべて除去するために、第1紫外線の照射時間が過剰に長くなる場合、生産性の低下とともに時間経過に伴い累積される光エネルギーによって基材が損傷する恐れが発生し得る。実質的にロールツーロール工程を含む連続工程の生産性に鑑みて、第1紫外線の照射時間が数分以上を超えることは好ましくない。
【0069】
そのため、第1紫外線と伝導性ナノワイヤの光学的活性を用いて接触領域に存在する有機バインダーを除去し、且つ短時間で第1紫外線を照射するとともに接触領域に位置する有機バインダーをより完壁に除去するために、第1光は、第1紫外線とともにパルス型第2白色光をさらに含んでもよい。
【0070】
すなわち、本発明の一実施例による製造方法において、第1光は、第1紫外線とともに、パルス型第2白色光をさらに含んでもよい。
【0071】
パルス型第2白色光は、第1紫外線による有機バインダーの分解をより促進させる役割を行うことができる。通常、バインダーとして目的とする役割をうまく行うためには、単分子有機物よりは分子量の大きい高分子有機物がバインダーとして好適であると知られている。かかる高分子有機物は、単分子に比べ非常に幅広い物性を有しており、かかる高分子特有の特性によって単分子に比べより徐々に分解除去されるしかない。
【0072】
伝導性ナノワイヤで提供する光学的活性の存在下で、第1紫外線によって有機バインダーが分解される過程において、パルス型第2白色光により、瞬間的に強いエネルギーを数回供給する場合、高分子有機バインダーであってもその分解速度を著しく向上させることができる。
【0073】
特に、伝導性ナノワイヤが、表面プラズモンが発生する金属ナノワイヤである場合、第1紫外線を含む第1光の照射時に、パルス型第2白色光が同時に照射される場合、伝導性ナノワイヤ間の接触領域であるホットスポット(hot spot)によって、伝導性ナノワイヤ間の接触領域に存在する有機バインダーがより完壁に除去されることができ、且つ接触領域以外に存在する有機バインダーが損傷(分解)することを防止することができる。この際、プラズモンの分野においてよく知られたように、ホットスポット(hot−spot)は、非常に強い局所電場が形成される領域を意味し、表面プラズモンが発生する金属のナノ構造体間の接点やナノギャップなどを意味し得る。
【0074】
第2白色光は、赤、緑および青を含む可視光を含む光を意味し得、少なくとも430〜600nm領域全体にわたり連続した波長を有する光、具体的には、少なくとも400nm〜800nm領域全体にわたり連続した波長を有する光、より具体的には、少なくとも350nm〜950nm領域全体にわたり連続した波長を有する光を意味し得る。一例として、第2白色光の光源はキセノンランプであってもよく、本発明は白色光の光源によって限定されるものではない。
【0075】
本発明の一実施例による製造方法において、第2白色光は、可視光、具体的には少なくとも430〜600nm領域全体、より具体的に少なくとも400nm〜800nm領域全体、さらに具体的に350nm〜950nm領域全体にわたる波長の光を基本とし、第2白色光は、伝導性ナノワイヤの紫外線−可視光線分光スペクトルで伝導性ナノワイヤの吸光ピークに相当する波長の光(以下、ナノワイヤ吸光波長)を含むことができる。具体的に、ナノワイヤ吸光波長が、可視光、具体的に430〜600nm、より具体的に400nm〜800nm、さらに具体的に350nm〜950nmの範囲の場合、白色光の光源だけでナノワイヤ吸光波長を含む第2白色光が形成され得、ナノワイヤ吸光波長が上述の白色光の波長と異なる場合、第2白色光は、白色光源とともにナノワイヤ吸光波長を発生する他の光源の組み合わせによって生成された光であってもよい。
【0076】
接触領域に位置する有機バインダーの分解を促進させて、より効果的で選択的に接触領域の有機バインダーを除去するためのパルス型第2白色光は、下記の関係式3を満たすことができる。
【0077】
(関係式3)
I
IPL2(exp)<I
IPL2(0)
【0078】
関係式3中、I
IPL2(exp)は、第1光を照射したときの第2白色光の強度であり、I
IPL2(0)は、伝導性ナノワイヤ分散液と同一で、且つ有機バインダーを含有しない基準分散液が塗布および乾燥されて形成された基準体において、基準体に第2白色光を10msecのパルス幅で単一のパルスで印加したときに伝導性ナノワイヤ間の接触領域で融着が発生する最小強度である。より具体的に、I
IPL2(0)は、伝導性ナノワイヤおよび分散媒からなる基準分散液が塗布および乾燥されて形成された基準体において、基準体に第2白色光を10msecのパルス幅で単一のパルスで印加したときに伝導性ナノワイヤ間の接触領域で融着が発生する最小強度である。
【0079】
すなわち、第1光によって接触領域に存在する有機バインダーが前分解除去された後、有機バインダーの分解とは別のステップであり、第2光によって接触領域での融着が行われることが好ましく、関係式3で表されたように、第1光に含まれるパルス型第2白色光の強度は、有機バインダーの分解は促進させ、伝導性ナノワイヤ間の接触領域で伝導性ナノワイヤの部分的溶融が発生しない強度が好ましい。
【0080】
第2白色光の照射は、多重パルス(multi−pulse)照射が好ましいが、これは、関係式3を満たす第2白色光のパールスが所定の間隔で2回以上照射されることで、単一パルスの照射に比べより速く有機バインダーの分解除去が行われ得るためである。多重パルスの照射は、2回以上、具体的には、2回〜50回のパルス、より具体的には2回〜20回のパルスが照射されることを意味し得、本発明における照射される第2白色光のパルス数に応じて限定されないことは言うまでもなく、有機バインダーの物質に応じて照射される第2白色光のパルス数が適宜調節され得ることは言うまでもない。
【0081】
上述のように、第1光は、第1紫外線とともにパルス型第2白色光を含んでもよい。第1光の照射時に、第1紫外線が連続して照射されるが、第1紫外線の照射と同時に、または第1紫外線の照射中に、または第1紫外線の照射が中断される直前にパルス型第2白色光の照射が行われ得る。この際、第1紫外線が照射される総時間がt
uv1のときに、第1紫外線が照射され始める時点を基準として、パルス型第2白色光が照射される時点は、第1紫外線の照射と同時〜0.9t
uv1以内であってもよい。
【0082】
第1紫外線とともにパルス型第2白色光を含む第1光を照射する場合、第1紫外線の照射時間を1〜100sec、具体的には1〜60sec、より具体的には1〜20sec(t
uv1)と著しく減少させることができ、且つ接触領域の有機バインダーをより完壁に除去することができる。
【0083】
塗布された伝導性ナノワイヤに第1紫外線(UV)光を含む第1光を照射する第1光照射ステップが行われた後、基材上の伝導性ナノワイヤにパルス型第1白色光を含む第2光を照射する第2光照射ステップが行われ得る。
【0084】
第2光照射ステップにより、伝導性ナノワイヤ間の接触領域が溶融されて結合されることで、伝導性ナノワイヤが物理的に一体に結合され得る。
【0085】
第1白色光は、上述の第2白色光とは別に、赤、緑および青を含む可視光を含む光を意味し得、少なくとも430〜600nm領域全体にわたり連続した波長を有する光、具体的には、少なくとも400nm〜800nm領域全体にわたり連続した波長を有する光、より具体的には、少なくとも350nm〜950nm領域全体にわたり連続した波長を有する光を意味し得る。一例として、第1白色光の光源は、キセノンランプであってもよく、本発明は白色光の光源によって限定されるものではない。
【0086】
また、第1白色光は、第2白色光で上述のものと類似もしくは同様に、伝導性ナノワイヤの紫外線−可視光線分光スペクトルで伝導性ナノワイヤの吸光ピークに相当する波長の光(ナノワイヤ吸光波長)を含んでもよい。
【0087】
伝導性ナノワイヤ間の接触領域での部分的溶融による結着(融着)を引き起こす第1白色光は、下記の関係式4を満たすことができる。
【0088】
(関係式4)
I
IPL1(0)≦I
IPL1(exp)<I
IPL1(c)
【0089】
関係式4中、I
IPL1(exp)は、第2光を照射したときの第1白色光の強度であり、I
IPL1(0)は、伝導性ナノワイヤ分散液と同一、且つ有機バインダーを含有しない基準分散液が塗布および乾燥されて形成された基準体において、基準体に第1白色光を10msecのパルス幅で単一のパルスで印加したときに伝導性ナノワイヤ間の接触領域で融着が発生する最小強度であり、I
IPL1(c)は、基準体に第1白色光を10msecのパルス幅で単一のパルスで印加したときに伝導性ナノワイヤの長軸方向への部分的溶融によって一つの伝導性ナノワイヤが二つ以上のナノ構造に切断される最小強度である。より具体的に、I
IPL1(0)は、伝導性ナノワイヤおよび分散媒からなる基準分散液が塗布および乾燥されて形成された基準体において、基準体に第1白色光を10msecのパルス幅で単一のパルスで印加したときに伝導性ナノワイヤ間の接触領域で融着が発生する最小強度であり、I
IPL1(c)は、伝導性ナノワイヤおよび分散媒からなる基準分散液が塗布および乾燥されて形成された基準体において、基準体に第1白色光を10msecのパルス幅で単一のパルスで印加したときに伝導性ナノワイヤの長軸方向への部分的溶融によって一つの伝導性ナノワイヤが二つ以上のナノ構造に切断される最小強度である。
【0090】
すなわち、関係式4により上述したように、第1白色光は、単パルスの照射によって接触領域の融着は発生するが、接触領域以外の領域で伝導性ナノワイヤの所望しない溶融など、伝導性ナノワイヤの損傷が発生しない強度で照射され得る。
【0091】
関係式4は有機バインダーを採択せず、伝導性ナノワイヤを分散媒に分散させた後、光焼結により伝導性ナノワイヤを融着させる従来の方法で既に確立された条件と同一もしくは類似であってもよい。しかし、上述のように、伝導性ナノワイヤの均一で均質な分散と接触のために有機バインダーを採択する場合、少なくとも接触領域で有機バインダーを前除去することなく光焼結を行う場合、関係式4の条件を満たす範囲内では光焼結が行われないこともある。すなわち、有機バインダーおよび伝導性ナノワイヤを含有する伝導性ナノワイヤ分散液を塗布および乾燥した後、本発明で提供する第1紫外線−第1白色光の多段光照射ではなく、従来のようにパルス型白色光を照射して光焼結を行おうとする場合、白色光の強度、パルス幅、パルス数、パルス間隔などを調節しても伝導性ナノワイヤ自体が部分的に溶融されるか変形され、伝導性ナノワイヤ自体が損傷するだけであって、目的とする伝導性ナノワイヤネットワークが製造されない。
【0092】
すなわち、上述の関係式4の条件は、有機バインダーおよび伝導性ナノワイヤを含有する伝導性ナノワイヤ分散液を用いる時に、第1紫外線−第1白色光の多段光照射の構成によって可能な条件である。
【0093】
上述のように、第1光の照射によって接触領域に存在する有機バインダーを先に除去した後、パルス型第1白色光を用いて接触領域を融着させることによって、関係式4を満たす条件で伝導性ナノワイヤ間の融着が行われ得る。また、第1光の照射によって接触領域に存在する有機バインダーを先に除去した後、パルス型第1白色光を用いて接触領域を融着させることによって、第1白色光が単パルスで照射され得、単一のパルスで第1白色光を照射しても、大面積でも均質に接触領域の融着が行われ得る。
【0094】
関係式4を満たすパルス型第1白色光が単パルスで照射される時、パルスの幅は、伝導性ナノワイヤの安定した融着が行われるとともに基材が損傷しない幅であればよい。具体例として、パルスの幅は5msec〜15msecであってもよく、本発明が第1白色光のパルス幅によって限定されるものではない。
【0095】
関係式4を満たすパルス型第1白色光が照射される時、伝導性ナノワイヤの接触領域は瞬間的に非常に高温に加熱され、伝導性ナノワイヤ間の融着が行われ得る。第2光が照射される時、伝導性ナノワイヤは、第1光の照射後に残留する有機バインダーによって、接触領域以外の領域で基材に物理的に固定された状態であってもよい。かかる伝導性ナノワイヤが物理的に固定された状態で第2光が照射されることで、部分的に不均一に発生する熱応力(変形)によって伝導性ナノワイヤの反りや捻れが発生して伝導性ナノワイヤと基材との結着力が損傷(伝導性ナノワイヤの剥離)することを防止することができる。
【0096】
本発明の一実施例による製造方法において、第2光は、パルス型第1白色光とともに、第2紫外線をさらに含んでもよい。
【0097】
所定時間連続して照射される第2紫外線は、少なくとも、第1白色光の照射と同時に、第1白色光の照射前に既に伝導性ナノワイヤに照射されていることが好ましい。すなわち、パルス型第1白色光は、第2紫外線が照射される間に照射されてもよい。第1白色光と第2紫外線の同時照射によって伝導性ナノワイヤ間の融着が行われるだけでなく、第1光の照射後にも基材上(伝導性ナノワイヤを含む)に残留し得る有機バインダーが分解除去され、伝導性膜の透明度が向上することができる。
【0098】
また、第2紫外線と第1白色光を含む第2光が照射されることで、より低い強度の第1白色光を単パルスで照射した場合にも、接触領域で安定して再現性を持って融着が行われ得る。
【0099】
これと共に、第2紫外線と第1白色光を含む第2光が照射されることで、物理的に一体化した伝導性ナノワイヤのネットワークと基材との結着力が向上することができる。かかる伝導性ナノワイヤネットワークと基材との結着は、第2紫外線とともに照射される第1白色光を照射するときに接触領域で発生した熱が伝導性ナノワイヤを介して伝わることで行われ得る。
【0100】
上述のように、第2光の照射は、第2紫外線の照射と同時に、第2紫外線が照射される間にまたは第2紫外線の照射が中止する直前に第1白色光が照射され得る。
【0101】
詳細には、第2光の照射は、下記の関係式5を満たすことができる。
【0102】
(関係式5)0.5t
uv2≦t
p1<t
uv2
【0103】
関係式5中、t
uv2は、第2紫外線が照射される総時間(sec)であり、t
p1は、第2紫外線が照射され始める時点を基準とした第1白色光の照射時点である。この際、関係式5において、<t
uv2の意味は、第2紫外線の照射が中断される時点(中断される直前)に第1白色光が照射される条件を意味する。すなわち、第1白色光は、第2紫外線が少なくとも0.5t
uv2の間に既に照射された後に照射され得る。
【0104】
関係式5を満たす照射条件は、第1白色光による融着とともに、有機バインダーの除去によって伝導性膜の透明度を向上させることができ、互いに一体に結合した伝導性ナノワイヤと基材との結着力をさらに強化させることができる条件である。
【0105】
第2紫外線は、第1紫外線とは別に、波長が10nm〜400nm範囲の光を意味し得る。第2紫外線は、第1紫外線とは別に、320〜400nmの波長帯域のUV−A、280〜320nmの波長帯域のUV−B、100〜280nmの波長帯域のUV−Cまたはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0106】
第2紫外線の強度もまた、第1紫外線に基づいて上述したように、関係式1を満たす強度であることが好ましい。すなわち、第2紫外線の強度もまた、第2紫外線だけでは有機バインダー自体が除去されない強度であり、且つ第2白色光の照射時に発生する熱や伝導性ナノワイヤで提供される光学的活性とともに有機バインダーが除去され得る程度の強度であることが好ましい。伝導性ナノワイヤ分散液が塗布されていない基材に照射する時に、基材が損傷しない程度の時間であればよい。一例として、パルス型第1白色光とともに第2紫外線を含む第2光を照射する場合、第2紫外線の照射時間は1〜100sec、具体的には10〜60sec、より具体的には20〜60sec(t
uv1)であってもよい。この際、上述の関係式5により上述したように、第1白色光は、第2紫外線が最小0.5t
uv2以上の間に照射され続けた時点で照射されることが好ましい。
【0107】
本発明の一実施例による製造方法において、第1光と第2光は互いに独立して照射されてもよく、これとは異なり、第1光と第2光は連続して照射されてもよい。互いに独立して照射されることは、第1光が照射された後、基材上位置する伝導性ナノワイヤに光が照射されない休止期が存在することを意味し得る。第1光と第2光が連続して順次に照射されることは、第1光の照射と第2光の照射の間に意図的な休止期が存在しない場合を意味し得る。かかる独立したまたは連続した照射は、製造工程ラインの構築の際に設計によって変更可能である。この際、第2光が第2紫外線を含んでおり、第2紫外線の強度が第1紫外線と同一である場合、連続した照射は、t
uv1とt
uv2時間を合わせた時間の間に連続して紫外線を照射することで、第1光の第1紫外線と第2光の第2紫外線が具現され得る。第1光と第2光の照射時に、単一の紫外線ランプで紫外線を設定された時間(t
uv1+t
uv2)連続して照射する場合、工程ラインの構築が容易でコストダウンが可能であり、且つ工程変数の操作がより容易であるという利点がある。
【0108】
本発明の一実施例による製造方法は、伝導性ナノワイヤ分散液が基材に塗布された後(a)ステップの後)、少なくとも第1光が照射される前(b)ステップの前)に、基材に塗布された伝導性ナノワイヤに赤外線(IR)を含む第3光を照射する第3光照射ステップをさらに含んでもよい。赤外線は、0.75μm〜1mmの波長帯域の光を意味し、公知のように可視光線や紫外線に比べて強い熱作用を有するため熱線とも称する。第3光の赤外線は0.75〜3μm波長の近赤外線、3〜25μm波長の赤外線、25μm〜1mmの遠赤外線またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0109】
第3光は、伝導性ナノワイヤ分散液が塗布された後、塗布膜に存在する液状(溶媒)を揮発除去する役割を行う。すなわち、第3光照射ステップは、乾燥ステップであり得る。
【0110】
赤外線を含む第3光による乾燥は、基材による熱伝逹が不要で熱に脆い基材でも乾燥による基材の損傷を防止することができ、さらに、大面積の塗布膜であっても短時間で均質に乾燥することができ、ロールツーロールを含む連続工程に非常に適する。赤外線の強度および照射時間は、基材の損傷が防止され、且つ塗布膜に存在する液状が揮発除去される程度であればよい。具体例として、赤外線は、100〜1000W/cm
2で5〜50sec間照射されてもよく、本発明が照射される赤外線の強度および照射時間によって限定されないことは言うまでもない。
【0111】
本発明の一実施例による製造方法において、伝導性ナノワイヤ分散液は、伝導性ナノワイヤ、有機バインダーおよび溶媒を含んでもよい。
【0112】
上述のように、本発明の一実施例による製造方法は、多段光照射により、第1紫外線単独では有機バインダーが分解されない非常に弱いエネルギーの紫外線を用いて有機バインダーを部分的に除去した後、第1白色光により伝導性ナノワイヤを互いに融着させる。
【0113】
これにより、伝導性ナノワイヤ分散液に含有される有機バインダーは、分子量(重量平均分子量)が5×10
5以下、好ましくは2×10
5以下の低分子量の天然ポリマーまたは低分子量の合成ポリマーであることが好ましい。有機バインダーが提示した低分子量の範囲を超える高分子量ポリマーの場合、第1光の照射によって接触領域に存在する有機バインダーが除去されないこともあり、そのため、後続する第2光の照射時に伝導性ナノワイヤが互いに融着してネットワークを形成する、目的とする光焼結が行われないこともある。この際、実質的な一例として、有機バインダーは、分子量が3,000以上であってもよく、本発明が有機バインダーの分子量の下限によって限定されないことは言うまでもない。
【0114】
低分子量の有機バインダーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、多糖類および多糖類誘導体から選択される一つまたは二つ以上であってもよい。
【0115】
より好ましくは、有機バインダーは、分子量が3,000〜50,000、好ましくは3,000〜20,000の低分子量のポリエチレングリコール(PEG)、分子量が3,000〜60,000の低分子量のポリビニルピロリドン(PVP)、分子量が3,000〜50,000の低分子量のポリビニルアルコール(PVA)、分子量が3,000〜200,000、好ましくは3,000〜100,000の低分子量の多糖類および分子量が3,000〜200,000、好ましくは3,000〜100,000の低分子量の多糖類誘導体から選択される一つまたは二つ以上であってもよい。
【0116】
低分子量の多糖類は、グリコーゲン、アミロース、アミロペクチン、カロース、カンテン、アルギン、アルジネート、ペクチン、カラギーナン、セルロース、キチン、キトサン、カードラン、デキストラン、フルクタン(fructane)、コラーゲン、ゲランガム(gellan gum)、アラビアガム、デンプン、キサンタン、タラカントガム(gum tragacanth)、カラヤン(carayan)、カラビン(carabean)、グルコマンナンまたはこれらの組み合わせを含んでもよい。多糖類誘導体は、セルロースエステルまたはセルロースエーテルを含んでもよい。
【0117】
より好ましくは、有機バインダーは低分子量のセルロースエーテルであってもよく、セルロースエーテルは、カルボキシ−C1−C3−アルキルセルロース、カルボキシ−C1−C3−アルキルヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース、C1−C3−アルキルセルロース、C1−C3−アルキルヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース、ヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロース、混合されたヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロースまたはこれらの混合物を含んでもよい。
【0118】
一例として、カルボキシ−C1−C3−アルキルセルロースは、カルボキシメチルセルロースなどを含んでもよく、カルボキシ−C1−C3−アルキルヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロースは、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースなどを含んでもよく、C1−C3−アルキルセルロースは、メチルセルロースなどを含んでもよく、C1−C3−アルキルヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロースは、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースまたはこれらの組み合わせなどを含んでもよく、ヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロースは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはこれらの組み合わせを含んでもよく、混合されたヒドロキシ−C1−C3−アルキルセルロースは、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロースまたはアルコキシヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース(前記アルコキシ基は、直鎖または分岐鎖であり、2〜8個の炭素原子を含む)などを含んでもよい。
【0119】
本発明の一実施例による伝導性ナノワイヤ分散液は、0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜1重量%、より好ましくは0.1〜0.7重量%の有機バインダーを含有してもよい。かかる有機バインダーの含有量は、伝導性ナノワイヤ分散液の塗布時に、伝導性ナノワイヤが基材上に均一で均質に塗布されることができ、且つ接触領域で伝導性ナノワイヤ間に存在する有機バインダーを最小化して、上述の第1光の照射によって少なくとも接触領域に存在する有機バインダーが安定して除去されることができる含有量である。
【0120】
伝導性ナノワイヤ分散液に含有された伝導性ナノワイヤのアスペクト比および含有量は、透明度を損傷しないとともに伝導性ナノワイヤが互いに接して安定した電流移動経路を提供するネットワークを形成することができる程度であればよい。具体例として、伝導性ナノワイヤのアスペクト比は50〜20000であってもよい。より具体的な例として、伝導性ナノワイヤは、短軸平均直径が5〜100nmであってもよく、平均長さは5〜100μmであってもよい。具体例として、伝導性ナノワイヤ分散液は溶媒100重量部を基準として0.01〜70重量部の伝導性ナノワイヤを含有してもよい。
【0121】
伝導性ナノワイヤ分散液に含有された溶媒は有機バインダーを溶解することができ、伝導性ナノワイヤの分散媒として作用することができ、容易に揮発除去されることができる溶媒であれば使用可能である。具体例として、溶媒は、2−ブトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、2−エトキシエチルアセテート、エチレングリコールジアセテート、テルピネオール(terpineol)、イソブチルアルコール、水またはこれらの混合溶液が挙げられるが、本発明が伝導性ナノワイヤ分散液に含有された溶媒の種類によって限定されないことは言うまでもない。
【0122】
伝導性ナノワイヤ分散液の塗布は、半導体やディスプレイ製造分野において、固体が分散した液状(インクやスラリーを含む)を塗布および乾燥して均一な厚さの膜を製造するために既に使用されている如何なる方法を使用してもよい。一例として、コーティング、スプレイ(噴射)、印刷など様々な方法が挙げられるが、具体例として、スピンコーティング(Spin coating);スクリーンプリンティング(screen printing);インクジェットプリンティング(ink−jet printing);バーコーティング(Bar coating);グラビア−コーティング(Gravure coating);ブレードコーティング(Blade coating);ロール−コーティング(Roll coating);スロットダイ(slot die);もしくはスプレイ(spray)噴射法;などが挙げられるが、本発明は伝導性ナノワイヤ分散液の塗布方法によって限定されない。
【0123】
本発明の一実施例による製造方法において、基材は、絶縁性基材を意味し、物性的にリジッド(rigid)またはフレキシブル(flexible)な基材であってもよい。基材は、透明伝導性膜の用途によって適宜選択されてもよく、基材の一例として、ガラス、ポリカーボネート、アクリルポリエチレンテレフタレートのようなリジッド基材またはポリエステルナフタレートおよびポリカーボネートのようなポリエステル系基材、線形、分岐(brancned)、および環形ポリオレフィンのようなポリオレフィン系基材、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアセタール、ポリスチレンおよびポリアクリルのようなポリビニル系基材、セルローストリアセテート(cellulose triacetate)やセルロースアセテート(cellulose acetate)のようなセルロースエステル塩基基材、ポリエーテルスルホンのようなポリスルホン基材、ポリイミド基材またはシリコン基材のようなフレキシブル基材が挙げられる。
【0124】
本発明の一実施例による製造方法において、基材は、一つの物質が単一の層をなす単一層基材または互いに異なる二つ以上の物質が層をなして積層された積層型基材であってもよい。積層型基材は、主基材および主基材の表面に形成されたコーティング層を含んでもよい。
【0125】
以下、関係式1〜5に基づいて上述した多段光照射の具体例を提供する。以下で提示される一例は、上述の本発明の思想に基づいて導き出された一例であり、伝導性ナノワイヤを用いて透明電極を製造する分野に務める当業者は、本発明の思想に基づいて繰り返しの実験により、提示された一例から得られる効果と相応する効果を示す条件を導き出すことができる。
【0126】
有機バインダーが上述の低分子量の天然または合成高分子である場合、好ましくは、低分子量のポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、多糖類および多糖類誘導体から選択される一つまたは二つ以上である場合、第1光の第1紫外線は、0.1〜5mW/cm
2の強度で照射されてもよく、第1紫外線は、1〜100sec、具体例としては1〜60sec、より具体的には1〜20sec間照射されてもよい。
【0127】
有機バインダーが上述の低分子量の天然または合成高分子の場合、好ましくは、低分子量のポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、多糖類および多糖類誘導体から選択される一つまたは二つ以上のものであり、伝導性ナノワイヤが表面プラズモンを有する金属ナノワイヤの場合、第2白色光の強度は、300〜1000W/cm
2であってもよい。第2白色光のパルス幅、パルス間の間隔および照射されるパルスの数は、基材の損傷を防止することができ、有機バインダーの分解除去を促進させることができる範疇で適宜調節され得ることは言うまでもない。非限定的な一例として、第2白色光のパルス幅は、1msec〜10msecであってもよく、パルス間の間隔(パルスギャップ)は、パルス幅の1.5倍〜3倍であってもよく、照射されるパルスの数は2回〜30回であってもよい。
【0128】
伝導性ナノワイヤが表面プラズモンを有する金属ナノワイヤである場合、第2光のパルス型第1白色光の強度は2000〜3000W/cm
2であってもよく、5msec〜15msecのパルス幅で単パルスが照射され得る。
【0129】
有機バインダーが上述の低分子量の天然または合成高分子である場合、好ましくは、低分子量のポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、多糖類および多糖類誘導体から選択される一つまたは二つ以上である場合、第2光の第2紫外線は、第1紫外線とは別に、0.1〜5mW/cm
2の強度になることができ、第2紫外線は1〜100sec、具体的には10〜60sec、より具体的には20〜60sec間照射され得る。
【0130】
本発明は、上述の製造方法で製造された透明伝導性膜を含む。
【0131】
本発明に係る透明伝導性膜は、伝導性ナノワイヤが伝導性ナノワイヤ間の接触領域で溶融結着して一体に結合した伝導性ナノワイヤネットワークを含み、少なくとも20mm×20mmの面積を有する大面積の伝導性ナノワイヤネットワークを基準として、下記の関係式6で規定されるシート抵抗均一度が90%以上である上述の製造方法で製造された透明伝導性膜を含む。
【0132】
(関係式6)
シート抵抗均一度(%)=[1−(シート抵抗標準偏差)/シート抵抗平均)]×100
【0133】
この際、シート抵抗標準偏差とシート抵抗平均は、少なくとも20mm×20mmの面積を有する大面積の伝導性ナノワイヤネットワークを基準として、当該面積を9個以上の領域に均等に分割した後、分割領域別に最小10回以上ランダムにシート抵抗を測定して得られたものであり得る。
【0134】
本発明の一実施例による透明伝導性膜は、1cmの曲率半径で1000回の曲げ試験(2点曲げ試験)の際、下記の関係式7で規定されるシート抵抗増加率が1.4以下であり、物理的な柔軟性を有し、且つ繰り返しの変形にも安定して電気伝導度が保持されることができる。
【0135】
(関係式7)
シート抵抗増加率=曲げ試験後のシート抵抗/曲げ試験前のシート抵抗
【0136】
また、本発明の一実施例による透明伝導性膜は、極めて均一な電気的特性を有し、且つ70〜100ohm/sqの低いシート抵抗を有することができ、90%以上の優れた光透過率を有することができる。
【0137】
(実施例1)
伝導性ナノワイヤとして銀ナノワイヤ(平均直径20nm、平均長さ25μm)を使用した。紫外線−可視光線分光スペクトル結果、銀ナノワイヤの吸光ピークは355.2nmであった。バインダーとして重量平均分子量が8万6千のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を使用しており、溶媒として脱イオン水を使用した。分散液が0.15重量%の銀ナノワイヤおよび0.15重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するように溶媒に銀ナノワイヤおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを投入し混合した。基材として、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板を用いており、スピンコーティングを用いて製造された分散液を基板に塗布した。次に、近赤外線ランプ(Adphos L40)を用いて塗布膜に350Wの強度で10sec間近赤外線を照射し、塗布膜を乾燥した。
【0138】
紫外線ランプ(LUMATEC SUV−DC、UV−C)を用いて、0.31mW/cm
2、0.69mW/cm
2または2.78mW/cm
2の強度で60秒間紫外線(第1紫外線)を照射した。次に、キセノンランプ(first light、350〜950nm波長)を用いてパルス幅10msec、2600W/cm
2の強度で1回パルス型白色光(第1白色光)を照射して、透明伝導性膜を製造した。この際、2.78mW/cm
2の強度で厚さが500nmである純粋なHPMCの膜に1分間紫外線を照射したときに、重量減少が実質的に発生しないことを確認した。
【0139】
(実施例2)
実施例1と同様に行うが、乾燥した塗布膜に紫外線ランプおよびキセノンランプを用いて2.78mW/cm
2の紫外線(第1紫外線)を10秒間照射しており、紫外線の照射と同時にパルス幅5msec、パルスギャップ10msec、666W/cm
2の強度で15回パルス型白色光(第2白色光)を照射した。次に、2.78mW/cm
2の紫外線(第2紫外線)を50秒間照射しており、紫外線(第2紫外線)照射の完了直前にパルス幅10msec、2600W/cm
2の強度で1回パルス型白色光(第1白色光)を照射して、透明伝導性膜を製造した。
【0140】
(実施例3)
実施例2と同様に行うが、2.78W/cm
2の紫外線を60秒間連続して照射し、紫外線の照射と同時にパルス幅5msec、パルスギャップ10msec、666W/cm
2の強度で15回パルス型白色光(第2白色光)を照射した後、紫外線の照射の完了直前にパルス幅10msec、2600W/cm
2の強度で1回パルス型白色光(第1白色光)を照射して、透明伝導性膜を製造した。
【0141】
実施例において、透明伝導性膜の面積は20mm×20mmであり、当該面積を9個の領域に均等分割した後、4−Pointプローブを用いて分割した領域ごとに10回ずつランダムにシート抵抗を測定し、すべての分割領域の測定結果をまとめてシート抵抗平均およびシート抵抗偏差を得た。
【0142】
図1は実施例1と同様に銀ナノワイヤ分散液を塗布および乾燥し、且つバインダーを含有せずに銀ナノワイヤが塗布された基準分散液を用いて塗布および乾燥して得られた乾燥膜の場合(0wt%HPMC)、0.07重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する分散液を塗布および乾燥して得られた乾燥膜の場合、実施例1と同様に0.15重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する分散液を塗布および乾燥して得られた乾燥膜の場合、および0.3重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する分散液を塗布および乾燥して得られた乾燥膜の場合、シート抵抗平均とシート抵抗偏差を図示した図である。
【0143】
図1に示すように、有機バインダーを含有していない分散液の場合、極めて高いシート抵抗を示すだけでなく、シート抵抗の偏差も非常に大きく、シート抵抗均一度が著しく劣ることが分かる。
【0144】
図2は実施例1において、近赤外線ランプの照射後の平均シート抵抗(
図2における非照射)を基準(100%)として、第1光の照射後の平均シート抵抗(
図2におけるUV照射)および第2光の照射後の平均シート抵抗(
図2におけるIPL照射)を測定し図示した図である。
【0145】
図2に示すように、有機バインダーを含有する銀ナノワイヤ分散液を塗布した場合にも、第1光の照射によって接触領域で有機バインダーが除去されシート抵抗が減少し、第2光の照射によって安定して銀ナノワイヤ間の光接合が発生し、さらにシート抵抗が減少することを確認することができた。実施例1で製造された透明伝導性膜のシート抵抗均一度は、98.2%(0.31mW/cm
2の第1紫外線の照射)、98.3%(0.69mW/cm
2の第1紫外線の照射)または98.5%(2.78mW/cm
2の第1紫外線の照射)であり、平均シート抵抗は、88.2ohm/sq(0.31mW/cm
2の第1紫外線の照射)、87.3ohm/sq(0.69mW/cm
2の第1紫外線の照射)、84.6ohm/sq(2.78mW/cm
2の第1紫外線の照射)で、20mm×20mmの大面積でも非常に均一で低いシート抵抗を有する透明伝導性膜が製造されることを確認した。
【0146】
図3は実施例2で製造された透明伝導性膜の近赤外線ランプの照射後の平均シート抵抗(
図3における非照射)を基準(100%)として、第1光の照射後の平均シート抵抗(
図3におけるUV−IPL(多重))および第2光の照射後の平均シート抵抗(
図3におけるUV−IPL(単一))を測定し図示した図である。
図3の第1光の照射後に得られた膜の平均シート抵抗から分かるように、紫外線とともにパルス型白色光を照射する場合、ごく短時間で銀ナノワイヤの接触領域に存在する有機バインダーが除去され、より低いシート抵抗を有することが分かり、第2光を照射したときの銀ナノワイヤの接触領域でより安定した融着が行われ、シート抵抗もまた低くなることが分かる。また、実施例2で製造された透明伝導性膜は、実施例1で製造された透明伝導性膜より優れたシート抵抗特性を有し、且つ実施例1で製造された透明伝導性膜と同等なシート抵抗均一度を有することを確認した。
【0147】
走査型電子顕微鏡により、実施例1および実施例2において、第1光の照射時に基板の損傷および銀ナノワイヤの結着が行われなかったことを確認し、第2光の照射によって銀ナノワイヤが互いに結着して物理的に一体化した銀ナノワイヤーネットワークが形成されることを確認した。また、X線光電子分光法(XPS;X−ray photoelectron spectroscopy)を含む表面分析法を用いて、有機バインダーが、第1光の照射が行われた後にも基板上に残留することを確認した。
【0148】
製造された透明伝導性膜の界面特性および伝導度劣化をテストするために、曲げ(bending)試験を行った。詳細には、曲げ試験は、2点曲げ試験により10mmの曲げ半径下で1000回実施した。
図4は実施例2において、乾燥および第1光の照射のみが行われて得られた膜の曲げ試験結果(
図4において四角で図示)と実施例2により製造された透明伝導性膜の曲げ試験結果(
図4において丸で図示)である。
図4から分かるように、10mmの曲率半径で1000回の曲げ試験を行っても透明伝導性膜のシート抵抗増加率が1.4以下であり、繰り返しの物理的変形にも安定して低いシート抵抗が保持されることが分かる。しかし、第2光の照射による銀ナノワイヤの融着が行われない場合、繰り返しの曲げにより銀ナノワイヤ間の接触が損傷し、シート抵抗が急激に増加することが分かる。
【0149】
図5は実施例2において、乾燥および第1光の照射のみが行われて得られた膜の光透過率(
図5において点線で図示)と実施例2により製造された透明伝導性膜の光透過率(
図5において実線で図示)を図示した図である。
図5から分かるように、第2光の照射によって第1光の照射後に残留する有機バインダーが除去され、光透過度が向上することが分かる。
【0150】
紫外線を連続して照射し、実施例2と同様に行った実施例3で製造された透明伝導性膜もまた、実施例2と同一もしくは類似の電気的特性、曲げ試験結果および光透過率特性を示した。
【0151】
比較例において、実施例2と同様に行うが、第1光の照射条件として第2白色光のみを照射し、第2光の照射条件として第1白色光のみを照射した場合、光焼結が発生しないことを確認し、第2白色光の強度を933W/cm
2に増加させて15回照射した後、第1白色光を照射した場合にも、
図6に示す走査型電子顕微鏡観察写真のように、光漏れが発生しないことを確認した。
【0152】
以上、本発明では、特定の事項と限定された実施例および図面により説明されているが、これは、本発明のより全般的な理解を容易にするために提供されたものであって、本発明は前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、かかる記載から様々な修正および変形が可能である。
【0153】
したがって、本発明の思想は、上述の実施例に限定して定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形があるすべてのものなどは、本発明の思想の範疇に属すると言える。
【国際調査報告】