特表2017-532901(P2017-532901A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-532901電力線上での通信用のトランシーバー・フロントエンド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-532901(P2017-532901A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(54)【発明の名称】電力線上での通信用のトランシーバー・フロントエンド
(51)【国際特許分類】
   H04B 3/54 20060101AFI20171006BHJP
【FI】
   H04B3/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-516706(P2017-516706)
(86)(22)【出願日】2015年8月18日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月24日
(86)【国際出願番号】US2015045696
(87)【国際公開番号】WO2016053493
(87)【国際公開日】20160407
(31)【優先権主張番号】14/500,685
(32)【優先日】2014年9月29日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515061499
【氏名又は名称】ランディス・ギア テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】LANDIS+GYR TECHNOLOGIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】ペルティアー, デール, スコット
【テーマコード(参考)】
5K046
【Fターム(参考)】
5K046AA03
5K046PS17
5K046PS51
(57)【要約】
AC電力線上での通信用の各種の回路および方法を開示する。ある実施の形態では、電力線通信回路は、電力線通信システム内の一組のAC電力線との間で通信可能に通信信号を結合するよう構成されるデータ結合回路を有するアナログフロントエンドを含む。また、アナログフロントエンドは、データ結合回路に接続されたノイズ低減回路を含む。ノイズ低減回路は、通信周波数帯域外に存在しかつ当該通信周波数帯域内の高調波を有する少なくとも1の周波数を通信信号からフィルタリングすることにより、通信信号の通信周波数帯域中のノイズを軽減するよう構成される。受信回路は、ノイズ低減回路に接続されており、フィルタリングされた通信信号の通信周波数帯域からデータを復調するよう構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力線通信システムにおける使用のための電力線通信回路は、
アナログフロントエンド回路を備え、該アナログフロントエンド回路は、
データ結合回路であって、該データ結合回路と前記電力線通信システムの一組の交流電流(AC)電力線との間で通信可能に通信信号を結合するよう構成および配置され、これにより前記電力線通信システムによって伝送される前記通信信号の通信に用いられるものである、データ結合回路と、
前記データ結合回路に接続されたノイズ低減回路であって、前記通信周波数帯域外に存在しかつ該通信周波数帯域内に高調波を有する第1周波数に対応する信号、および前記通信周波数帯域外に存在する前記第1周波数の倍の第2周波数に対応する信号を、前記通信信号からフィルタリングすることにより、前記通信信号の通信周波数帯域内のノイズを軽減するよう構成および配置されるノイズ低減回路と、を含み、 該電力線通信回路は、前記ノイズ低減回路に接続された受信回路であって、前記通信周波数帯域内の前記フィルタリングされた通信信号を復調するよう構成および配置される受信回路を備える電力線通信回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電力線通信回路であって、
前記ノイズ低減回路は、前記通信周波数帯域外の前記第1周波数をフィルタリングするよう構成および配置される第1単同調シャントフィルタを含み、前記第1周波数は30kHzを含む範囲である、電力線通信回路。
【請求項3】
請求項2に記載の電力線通信回路であって、さらに、
前記ノイズ低減回路に接続されたバンドパスフィルタを備え、
前記ノイズ低減回路は、前記通信周波数帯域外の前記第2周波数をフィルタリングするよう構成および配置される第2単同調シャントフィルタを含む、電力線通信回路。
【請求項4】
請求項2に記載の電力線通信回路であって、
前記バンドパスフィルタは、前記通信信号から周波数帯域100〜450kHzの外の周波数に構成される、電力線通信回路。
【請求項5】
請求項1に記載の電力線通信回路であって、
前記データ結合回路は、
一次巻線および二次巻線を有する変圧器と、
前記変圧器の前記一次巻線に直列に連結されたコンデンサであって、前記一次巻線と該コンデンサとがハイパスフィルタを形成するコンデンサとを含む、電力線通信回路。
【請求項6】
請求項1に記載の電力線通信回路であって、さらに、
前記通信周波数帯域内の信号を変調して出力通信信号を生成することにより、データを送信するよう構成される送信回路を備える、電力線通信回路。
【請求項7】
請求項6に記載の電力線通信回路であって、さらに、
前記送信器に接続されたローパスフィルタであって、前記送信回路により生成された前記出力通信信号をフィルタリングするよう構成および配置されるローパスフィルタを備える、電力線通信回路。
【請求項8】
請求項7に記載の電力線通信回路であって
前記ローパスフィルタは、450kHzのコーナー周波数を有する、電力線通信回路。
【請求項9】
請求項7に記載の電力線通信回路であって、さらに、
前記ノイズ低減回路に接続されたAC結合コンデンサであって、前記送信回路によって生成された前記出力通信信号を前記ノイズ低減回路へ通信するよう構成されるAC結合コンデンサを備える、電力線通信回路。
【請求項10】
請求項1に記載の電力線通信回路であって、
前記通信周波数帯域は、155kHzから403kHzまでの周波数帯域を含む、電力線通信回路。
【請求項11】
請求項1に記載の電力線通信回路であって、
前記通信周波数帯域は、160kHzから478kHzまでの周波数帯域を含む、電力線通信回路。
【請求項12】
請求項1に記載の電力線通信回路であって、
前記通信周波数帯域は、36kHzから90kHzまでの周波数帯域を含む、電力線通信回路。
【請求項13】
一組の交流電流(AC)電力線を介して通信する方法であって、
データ結合回路を用いて前記一組のAC電力線から通信信号を取得するステップと、
通信周波数帯域外に存在しかつ当該通信周波数帯域内に高調波を有する第1周波数に対応する信号、および前記通信周波数帯域外に存在する前記第1周波数の倍の第2周波数に対応する信号を、前記通信信号からフィルタリングすることにより、前記通信信号の前記通信周波数帯域内のノイズを軽減するステップと、
前記通信周波数帯域内の前記フィルタリングされた通信信号を復調して一組のデータを取得するステップとを含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
前記フィルタリングは、第1単同調シャントフィルタを用いて、前記通信信号から前記通信周波数帯域外に存在する30kHzを含む前記第1周波数を前記通信信号からフィルタリングすることを含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記フィルタリングは、さらに、
第2単同調シャントフィルタを用いて、前記通信周波数帯域外の前記第2周波数を前記通信信号からフィルタリングするステップと、
前記通信周波数帯域内の信号を変調して出力通信信号を生成することにより、データを送信するステップと、
ローパスフィルターを用いて、前記通信周波数帯域を超える周波数を前記出力通信信号からフィルタリングするステップと、
前記データ結合回路を用いて、前記フィルタリングされた出力通信信号を前記一組のAC電力線に供給するステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
配電網は、相互接続された電力網を用いて、消費者に電力を供給する。発電所/発電装置は、数多くの様々な電力源から電力を作り出す。この電力源としては、可燃性燃料、核分裂、水力、太陽エネルギー、風力などがあるがこれに限定されるものではない。送電線は、発電所から消費者の居所へと電力を供給するが、この居所には住宅および商業建築物が含まれる。長距離送電は、高圧交流電流(AC)(例えば、数百キロボルト程度)を用いて行うことができ、これはエネルギー損失の低減に役立つ。変電所は、その後ローカル地域へ送電するために電圧を(例えば、10000ボルト未満に)下げる変圧器を含む。電圧は、消費者の居所への送電のために、伝統的なドラム形状から変圧器ドラム/カンと呼ばれることも、または地上設置変圧器(パッドマウント)と呼ばれることもある地域の変圧器を用いて、さらに(例えば、120〜280ボルトまで)下げることができる。
【0002】
サービスプロバイダは、消費者へのサービス提供をするために、それぞれのネットワークの適切な動作に依存している。多くの場合、提供されるサービスに関連する情報を確認することが望ましく、または必要となる。例えば、サービスプロバイダは、消費者によって消費または利用された資源について消費者に効率的に請求するため、毎日の利用量レポートへのアクセスを望むかもしれない。したがって、資源利用を特定するデータおよびその他の情報を、特定の間隔で確実に送信および/または受信することが重要である。
【0003】
電力線通信(PLC)ネットワークにおいて、ネットワーク内のエンドポイント(例えば、メータ、負荷制御スイッチ、遠隔サービススイッチ、およびその他エンドポイント)は、交流電流を流す配電線上でデータを送信することにより、アップデート情報(例えば、消費電力情報および/またはエンドポイント運転ステータス情報)を提供することができる。しかしながら、このようなデータを効果的、特にタイミング良く通信することは、達成が困難なことがある。また、エンドポイントおよびその他の通信機器の能力に制限があることもあり、PLCデータ転送の実施に適した伝送プロトコルの態様も同様である。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、AC電力線上での通信用の回路および方法に関するものである。例示的な実施の形態によれば、PLCシステムにおいて用いられるPLC回路が開示される。PLC回路は、PLCシステム内の一組のAC電力線との間で通信可能に通信信号を結合するよう構成されるデータ結合回路を有するアナログフロントエンドを含む。また、アナログフロントエンドは、データ結合回路に接続されたノイズ低減回路を含む。ノイズ低減回路は、通信周波数帯域外に存在しかつ該通信周波数帯域内に高調波を有する少なくとも1の周波数をフィルタリングすることにより、通信信号の通信周波数帯域内のノイズを軽減するよう構成される。受信回路は、ノイズ低減回路に接続されており、フィルタリングされた通信信号の通信周波数帯域からデータを復調するよう構成される。
【0005】
また、別の例示的な実施の形態によれば、一組の交流電流(AC)電力線を介して通信する方法が開示される。データ結合回路を用いて、一組のAC電力線から通信信号が受信される。通信周波数帯域外に存在しかつ当該通信周波数帯域内の高調波を有する少なくとも1の周波数をフィルタリングすることにより、通信信号の通信周波数帯域内のノイズが軽減される。フィルタリングされた通信信号の通信周波数帯域からデータが復調される。
【0006】
上記の説明/サマリーは、本開示の実施形態または実施例の全てを説明することを意図するものではない。以下の図面および詳細な説明もまた、各種の実施形態を例示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
各種の実施の形態は、添付の図面と合わせて以下の詳細な説明を鑑みることにより、より完全に理解することができる。
図1図1は、1以上の実施形態に共通する、PLCシステムでの通信用の第1回路を示す図である。
図2図2は、1以上の実施形態に共通する、PLCシステムでの通信用の第2回路を示す図である。
図3図3Aは、一組のAC電力線を介して通信することができる一組の通信信号の例を示す図である。 図3Bは、図3Aの一組の通信信号において、受信器の非線形伝達関数によって帯域外ノイズを処理することにより誘発される高調波歪みを含む例を示す図である。 図3Cは、図3Aの一組の通信信号において、ターゲット周波数でフィルタリングされた帯域外ノイズを含む例を示す図である。 図3Dは、受信器の非線形伝達関数によって図3Cの一組の通信信号を処理することにより得られる通信信号を示す図である。
【0008】
本明細書で説明する各種の実施形態は、修正または代替的な形態が可能であり、これら修正または代替的な形態での態様も例として図面に示されており、以下で詳細に説明する。ただし、説明された特定の実施形態に本発明を限定することを意図するものではないことは言うまでもない。むしろ、請求項に規定される態様を含む本開示の範囲に含まれるあらゆる修正例、等価例、代替例を網羅することを意図するものである。また、本願を通して用いられる「例」という語句は、限定ではなく説明のためのものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の態様は、PLCシステムにおけるAC電力線を介した通信に関わる様々な異なるタイプの装置、システム、および方法に適用することができると考えられる。必ずしもそのように限定されるものではないが、この文脈で諸例の説明を通して様々な態様を理解することができる。
【0010】
PLCシステムでは、データは指定された周波数帯域で通信される。参照しやすいように、指定された周波数帯域内の周波数を帯域内周波数、指定された周波数帯域外の周波数を帯域外周波数と呼んでもよい。受信器での通信信号の処理において、帯域外周波数中のノイズが、受信器が見せる非線形伝達関数(non−linear transfer function)が1以上の帯域内周波数を歪ませることがある。例えば、帯域外信号(例えば、ノイズ)が受信器の非線形伝達関数により減衰させられた場合、データ通信に用いられる周波数帯域内の1以上の高調波周波数で高調波ノイズが誘発されることがある。加えて、または代替的に、複数の帯域外周波数信号の減衰により、様々な周波数で相互変調歪みが誘発されることがある。非線形性は、例えば、受信器の電圧範囲を超える振幅を有する信号をクリッピングした結果として、引き起こされることがある。別の例として、非線形性は、非理想増幅段によって引き起こされることがある。
【0011】
様々な周波数でのノイズの予測不可能性および複雑な相互作用により、帯域内歪みを引き起こすノイズのソースを特定することは、不可能ではないにしても、非常に難しいものとなっている。例えば、特定の帯域内周波数でのノイズの発生は、特定の周波数の要因である、非常に多数の様々な周波数の高調波に起因することがある。代替的に、特定の帯域内周波数でのノイズの発生は、帯域外周波数の数多くの考えられる組み合わせのいずれかによる高次モジュール間干渉に起因することがある。
【0012】
一般に、受信器のフロントエンドで帯域外信号をフィルタリングするアナログ回路の有効性には、限界があると考えられている。認識されているアナログフィルターの限界およびフィルタリング対象の帯域外周波数の範囲の広さにより、一般に、アナログフロントエンドのフィルタを用いて帯域外周波数をフィルタリングすることは非経済的であると考えられている。むしろ、ノイズの除去および信号品質の向上には、従来からデジタルフィルタリング技術が採用されている。
【0013】
ノイズ低減のための様々な信号処理技術の現在認識されている有効性についての説明として、Gao Hongjian、G. Bumiller著「OFDM受信器におけるデジタルフロントエンド構造の比較」(“Comparison of different digital front end structures at the OFDM receiver," Power Line Communications and Its Applications (ISPLC), 2013 17th IEEE International Symposium, vol., no., pp. 263,267, (24-27 March 2013))について述べる。この文献は、その全てを参照により本明細書に援用するものである。
【0014】
現在の設計に関する実施に反して、開示された様々な実施形態では、意外にもPLCシステムにおける帯域内周波数として高調波歪みの原因であることがわかっっている特定の帯域外周波数範囲から信号を除去するノイズ低減回路を用いている。特定の周波数範囲のターゲット・フィルタリングは、受信器の非線形伝達関数により通信周波数帯域内に誘発される高調波を低減する費用効果の高い方法を提供する。
【0015】
様々な実施形態例は、PLCシステムで用いられる回路に関するものである。この回路は、PLCシステム内の一組のAC電力線との間で通信可能に通信信号を結合するよう構成されるデータ結合回路を有するアナログフロントエンドを含む。また、アナログフロントエンドは、データ結合回路に接続されたノイズ低減回路を含む。ノイズ低減回路は、通信周波数帯域外に存在しかつ当該通信周波数帯域内の高調波を有する少なくとも1の周波数を通信信号からフィルタリングすることにより、通信信号の通信周波数帯域中のノイズを軽減するよう構成される。受信回路は、ノイズ低減回路に接続されており、フィルタリングされた通信信号の通信周波数帯域からデータを復調するよう構成される。
【0016】
いくつかの実施形態では、ノイズ低減回路は、通信周波数帯域外のそれぞれの周波数をフィルタリングするよう構成される。例えば、ノイズ低減回路は、特定の装置でノイズが見られる帯域外周波数をフィルタリングすることができる。例えば、意外なことに、電磁調理器など、発熱体を有する特定の機器では、30kHzおよび60kHzのかなり大きなノイズを示すことが発見されており、これは受信器の非線形伝達関数が帯域内周波数で歪みを発生させる原因となる可能性がある。別の例では、蛍光灯は80kHzのかなり大きなノイズを出すことがあり、これは同じく受信器の非線形伝達関数が帯域内周波数で歪みを発生させることがある。いくつかの実施形態では、ノイズ低減回路は、1以上の単同調シャントフィルタを含み、各フィルタは、それぞれの周波数の信号をフィルタリングするよう構成される。
【0017】
これらの回路および方法は、データを通信する様々な帯域内周波数範囲を用いることができる様々なPLC通信プロトコルでの使用に適合させることができる。
【0018】
例えば、日本では、PLCシステムは、154.6875kHz〜403.125kHzの周波数帯域でデータを通信する。別の例として、米国においては、PLCシステムは、159.4kHz〜478.1kHzの周波数帯域でデータを通信する。さらに別の例として、欧州では、PLCシステムは、35.9kHz〜90.6kHzの周波数帯域でデータを通信する。
【0019】
次に図面を参照すると、図1は、1以上の実施形態に共通する、PLCシステムでの通信用の第1PLC回路を示す図である。PLC回路100は、PLC回路100内の一組のAC電力線102との間で通信可能に通信信号を結合する(communicatively couple communication signals)よう構成されるデータ結合回路110を有するアナログフロントエンド104を含む。また、アナログフロントエンド104は、データ結合回路に接続されたノイズ低減回路120を含む。ノイズ低減回路120は、通信信号から通信周波数帯域外に存在する少なくとも1の周波数をフィルタリングすることにより、通信信号の通信周波数帯域中のノイズを軽減するよう構成される。
【0020】
受信回路150は、ノイズ低減回路120に通信可能に接続されており、フィルタリングされた通信信号の通信周波数帯域からデータを復調するよう構成される。いくつかの実施形態では、受信回路150は、バンドパスフィルタ130を介してノイズ低減回路120に通信可能に接続されている。バンドパスフィルタ130は、さらに受信回路150に提供される通信信号の帯域外周波数をフィルタリングするよう構成されてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、PLC回路100は、データ結合回路110およびノイズ低減回路120を介してAC電力線102上でデータを送信するよう構成される送信回路180を含む。送信回路製品には、帯域外周波数中に、データの送信先の装置に帯域内ノイズを引き起こす可能性があるノイズを示すものもある。
【0022】
いくつかの実施例では、アナログフロントエンド104は、ローパスフィルタおよび/または結合コンデンサ160を含み、これらは送信回路180をデータ結合回路110またはノイズ低減回路120に通信可能に接続する。ローパスフィルタは、例えば、送信回路180から出力される信号から通信周波数帯域以上の周波数をフィルタリングしてもよい。いくつかの実施例では、バンドパスフィルタ130、結合コンデンサ160、および/またはローパスフィルタ170を、ノイズ低減回路120に組み込まれてもよい。
【0023】
図2に、1以上の実施形態に共通する、PLCシステムでの通信用の第2回路を示す。PLC回路200は、受信回路250、送信回路280を有するアナログフロントエンド204を含み、アナログフロントエンド204は、一組のAC電力線202から受信回路250へ、また送信回路280から一組のAC電力線202へとデータを通信するよう構成される。アナログフロントエンド204は、それぞれ図1の対応する要素110、120、130、160、および170を参照して説明したように構成および配置されている、データ結合回路210、ノイズ低減回路220、バンドパスフィルタ230、結合コンデンサ260、およびローパスフィルタ270を含む。
【0024】
データ結合回路210、ノイズ低減回路220、バンドパスフィルタ230、結合コンデンサ260、およびローパスフィルタ270は、様々な回路およびフィルタを用いて実施することができる。図2の実施例では、データ結合回路210は、高圧側のAC電力線202に接続された一次巻線214と、低圧側のノイズ低減回路220に接続された二次巻線216とを有する変圧器を含む。いくつかの実施例では、データ結合回路210は、一次巻線214に直列に接続されてハイパスフィルタを形成するコンデンサ212を含む。
【0025】
ノイズ低減回路220は、それぞれ対応帯域外周波数をフィルタリングするよう構成される1以上のフィルタを含んでもよい。ノイズ低減回路220は、様々なタイプおよび構成のアクティブまたはパッシブフィルタを含んでもよい。図2に示す実施例では、ノイズ低減回路220は、対応帯域外周波数をフィルタリングするよう構成されるパッシブな単同調シャントフィルタ(shunt filter)を2個含む。この単同調シャントフィルタの1つ目は、インダクタ224に直列に接続されたコンデンサ222により形成される。2つ目の単同調シャントフィルタは、インダクタ228に直列に接続されたコンデンサ226により形成される。様々な実施例において、フィルタの数はこれよりも多くても少なくてもよく、他のタイプのフィルタおよび/または高次フィルタを含むことができる。
【0026】
受信回路250に通信される通信信号の帯域外周波数をさらにフィルタリングするために、バンドパスフィルタ230を含んでもよい。バンドパスフィルタ230は、様々な構成のアクティブまたはパッシブフィルタを用いて構築することができる。図2に示す実施例では、バンドパスフィルター230は、ノイズ低減回路220と受信回路250の間の信号線伝いに直列に接続されたレジスタ232、インダクタ234、およびコンデンサ236を含む。例示的なバンドパスフィルタ230もまた、受信回路250の2つの信号入力の間に並列に接続されたコンデンサ238およびインダクタ240を含む。
【0027】
送信回路280により出力される通信信号中の高周波歪みをさらにフィルタリングするために、ローパスフィルタ270を含んでもよい。例えば、ローパスフィルタ270は、通信周波数帯域を超える帯域外周波数をフィルタリングするよう構成されてもよい。ローパスフィルタ270は、様々な構成のアクティブまたはパッシブフィルタを用いて構築することができる。図2に示す実施例では、ローパスフィルタ270は、送信回路280からの第1出力に接続された第1端と結合コンデンサ260に接続された第2端とを有するインダクタを含む。また、ローパスフィルタ270は、インダクタ278の第2端と基準対地電圧との間に接続されたコンデンサ276を含む。ローパスフィルタ270は、インダクタ278の第2端と基準対地電圧との間に直列に接続されたコンデンサ272およびレジスタ274とさらに含む。
【0028】
アナログフロントエンド204内の様々な回路の周波数応答は、それぞれの回路内のコンデンサ、インダクタ、および/またはレジスタの値によって決定される。具体的な実施例として、150〜450kHzの通信周波数帯域でデータを通信するよう構成される送受信器において、バンドパスフィルタ230は、150〜450kHzの帯域の周波数のみを通過させるよう構成されてもよい。このような構成は、例えば、100Ωレジスタ232、4.7μHインダクタ234、10μFコンデンサ236、4700pFコンデンサ238、および47μHインダクタ240で実施することができる。150〜450kHzの通信周波数帯域の例では、データ結合回路210のハイパスフィルタは、150kHzのコーナー周波数を有するよう構成されてもよい。このような構成は、例えば、0.1μFコンデンサ212で実施することができる。150〜450kHzの通信周波数帯域の例では、ローパスフィルタ270は、450kHzのコーナー周波数を有するよう構成されてもよい。このような構成は、例えば、4.7μHインダクタ278、1μFコンデンサ276、1μFコンデンサ272、および100Ωレジスタ274で実施することができる。
【0029】
先に述べたように、この例のノイズ低減回路220は、単同調シャントフィルタを2つ含んでおり、それぞれが通信周波数帯域外の対応周波数をフィルタリングするよう構成されている。単同調シャントフィルタによりフィルタリングされた周波数は、各単同調シャントフィルタを形成するコンデンサおよびインダクタの値により決定される。150〜450kHzの通信周波数帯域の例で続けると、いくつかの実施例では、前記フィルタは、それぞれが20kHz〜60kHzの範囲の周波数の帯域外信号をフィルタリングするよう構成されてもよい。このような構成は、2.2μFコンデンサ222および22μHインダクタを有する第1単同調シャントフィルタと、1μFコンデンサ222および10μHインダクタを有する第2単同調シャントフィルタとを用いて実施することができる。
【0030】
図3A図3B図3Cおよび図3Dは、帯域内通信周波数に対する帯域外ノイズの効果を、ノイズ低減回路によって行われるターゲット帯域外フィルタリングを用いる場合と用いない場合で示す。図3Aは、一組のAC電力線を介して通信することができる一組の通信信号の例を示す図である。この例では、一組の通信信号は、帯域内周波数のノイズ信号310および2つのデータ信号320および330を含む。
【0031】
線340は受信器の最大振幅を示し、これより大きいものには信号のクリッピングが行われることがある。クリッピングにより、初めはシステムが高調波を生じさせないように見えるが、データ信号システムを調べる必要がある。実際の高調波問題に直交周波数分割多重(OFDM)信号が関わっていることは見落とされがちである。OFDM方式の信号システムにおいて、ピーク対平均電力比が極めて大きくなる場合がある。例示的な一例として、OFDMシステムのピーク対平均電力比は7:1となることがある。高いピークは、異なる周波数の複数の信号からのピークが時間領域でそろったときに生じる。費用対効果、フルダイナミックレンジの使用効率、およびそのほかの理由により、システム設計者は比較的高い受信ゲインを維持する。このように、(ノイズがなくても)ピークが高いとクリッピングされることがある。データ信号は高調波を生成することがあるが、ピークが発生すると、生成された高調波(主に奇数次高調波)が対象の帯域から外れることになる。ただし、(上述したような)様々な機器によりノイズが生じると、ノイズの奇数次高調波が対象の帯域に含まれることもある。例えば、60kHzの第3高調波が180kHz、80kHzの第3高調波が240kHzとなり、両者ともに対象の帯域に含まれる。ノイズレベルを下げることにより、この問題が軽減される。
【0032】
図3Bに、受信器の非線形伝達関数による処理後の、図3Aの一組の通信信号を示す。図3Aを参照して説明したとおり、信号310、320、および/または330のピークが揃って、(例えば、受信器の最大振幅を超える振幅の)高いピークを生じることがある。受信器によって処理されると、高ピークがクリッピングされ、非線形伝達関数(non−linear transfer function)となる。クリッピングの結果、ノイズ信号350および360が元のノイズ信号310の高調波周波数として取り入れられることがある。この例では、ノイズ信号の一つが通信に利用される帯域内周波数範囲に含まれ、これにより性能が劣化する。
【0033】
図3Cに、1以上の実施形態にかかる、ターゲット帯域外フィルタリングを行った後の、図3Aの一組の通信信号を示す。図3Cに示すように、フィルタリングはノイズ信号310の振幅を減衰させる。
【0034】
図3Dは、受信器による処理に続いて図3Cの一組の通信信号を処理することにより得られる通信信号を示す図である。図3Dに示すように、帯域外ノイズ信号310の振幅が減少するため、クリッピングが起こらず、高調波歪みも発生しない。なお、受信器は、クリッピングが起こらない時でも非線形伝達関数を示すことがある。例えば、前述したように、受信器の増幅器は、非理想要素により非線形性を示すことがある。ただし、非線形伝達関数によって発生する歪みの量は、減衰した帯域外ノイズ信号310の振幅に比例する。そのため、ターゲット帯域外フィルタリングおよびその結果としてのノイズ信号310の振幅の低減により、実質的に帯域内周波数範囲に導入されるノイズ量が減少する。このようにして、PLCシステムの性能が向上する。
【0035】
様々なブロック、モジュール、またはその他の回路を実施して、本明細書に記載のおよび/または図に示す、1以上の作業および動作を行ってもよい。この文脈では、「ブロック」(ときに「論理回路」または「モジュール」とも呼ぶ)は、1以上の上記または関連する作業/動作を行う回路(例えば、ノイズ低減回路)である。例えば、上記の実施形態のあるものでは、1以上のモジュールは、図1および図2に示す回路モジュールのように、上記または関連する作業/動作を行うよう構成され配置される、独立した論理回路またはプログラム可能な論理回路である。ある実施形態では、このようなプログラム可能な回路は、一組の(または複数組の)インストラクション(および/またはコンフィギュレーション・データ)を実行するようプログラムされた1以上のコンピューター回路である。インストラクション(および/またはコンフィギュレーション・データ)は、メモリ(回路)に格納されてアクセス可能なファームウェアまたはソフトウェアの形としてもよい。一例として、第1モジュールおよび第2モジュールは、中央処理装置(CPU)ハードウェアベース回路とファームウェアとしての一組のインストラクションとの組み合わせを含む。第1モジュールは、第1CPUハードウェア回路と一組のインストラクションを含み、第2モジュールは、第2CPUハードウェア回路ともう一組のインストラクションを含む。
【0036】
上記の説明および図面に基づくと、本明細書に図示および説明された例示的実施形態および応用例に厳密に従わずとも、様々な実施形態に種々の修正および変更が可能であることは、当業者には容易に認められるであろう。例えば、態様および特徴が個別の図に示されている場合もあるが、ある図の特徴を他の図の特徴と組み合わせることは、その組み合わせがはっきりと図示されたりその組み合わせとして説明されたりしていなくても、可能であることは言うまでもない。このような修正も、請求の範囲に記載の態様を含む本発明の様々な態様の真の精神と範囲から逸脱するものではない。
図1
図2
図3
【国際調査報告】