(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-532909(P2017-532909A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(54)【発明の名称】アクティブ光ケーブルにおける受信器結合効率、リンクマージンおよびリンクトポロジーを決定する方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/073 20130101AFI20171006BHJP
H01L 31/0232 20140101ALI20171006BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20171006BHJP
【FI】
H04B10/073
H01L31/02 C
H01L31/10 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-520444(P2017-520444)
(86)(22)【出願日】2015年10月16日
(85)【翻訳文提出日】2017年6月14日
(86)【国際出願番号】US2015055913
(87)【国際公開番号】WO2016061442
(87)【国際公開日】20160421
(31)【優先権主張番号】62/065,130
(32)【優先日】2014年10月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/885,000
(32)【優先日】2015年10月16日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512322069
【氏名又は名称】サムテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Samtec,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(72)【発明者】
【氏名】コーネリアス ジョシュア アール.
(72)【発明者】
【氏名】ツビンデン エリック ジーン
(72)【発明者】
【氏名】コズロフスキー ウィリアム ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ラングザーム デヴィッド エイ.
【テーマコード(参考)】
5F849
5K102
【Fターム(参考)】
5F849BB01
5F849JA14
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5F849XB05
5K102AA52
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5K102PB14
5K102PB18
5K102PH31
5K102RD05
5K102RD28
(57)【要約】
受信器結合効率を決定する方法は、ハーフアクティブ光ケーブルに入力される光パワーを変化させて、TIAがスケルチする最大光パワーを決定すること、および、TIAがスケルチする最大光パワーに対する閾値光パワーの比を計算することにより受信器結合効率を決定することを含む。チャネル内のリンク損失を決定する方法は、光源の光パワーを変化させてTIAがスケルチする最大光パワーを決定すること、および、最大光パワーを閾値パワーから減算することによりチャネル内のリンク損失を決定することを含む。リンクトポロジーを決定する方法は、光パワーのパターンを選択すること、および、スケルチ出力および非スケルチ出力のパターンを、光パワーのパターンと照合することを含む。アクティブ光ケーブルは、アクティブ光ケーブルの初期リンク損失に関連する値を保存するメモリを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーフアクティブ光ケーブルの受信器結合効率を決定する方法であって、前記ハーフアクティブ光ケーブルは、光検出器と、前記光検出器の出力に接続されたトランスインピーダンス増幅器とを含み、前記トランスインピーダンス増幅器は、前記光検出器に入射した光パワーが閾値光パワー未満であるときにその出力をスケルチし、前記方法は、
前記ハーフアクティブ光ケーブルに入力される光パワーを変化させて、前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする最大光パワーを決定すること、および、
前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする前記最大光パワーに対する前記閾値光パワーの比を計算することにより、受信器結合効率を決定すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチするまで前記光パワーを減少させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トランスインピーダンス増幅器がその出力のスケルチを停止するまで前記光パワーを増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチすると、前記トランスインピーダンス増幅器はスケルチ信号を供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記光パワーを変化させることは、
可変光減衰器を用いること、
1以上のゴールデントランスミッタを用いること、または
バイアス電流を変化させることにより光源の光パワーを変化させること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記閾値光パワーを、前記光検出器および前記トランスインピーダンス増幅器の特性に基づいて計算する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
フルアクティブ光ケーブルのあるチャネルにおけるリンク損失を決定する方法であって、
光源と、前記光源に光学的に接続された光検出器と、前記光検出器の出力に接続されたトランスインピーダンス増幅器であって、前記光検出器に入射した光パワーが閾値光パワー未満であるときにその出力をスケルチするトランスインピーダンス増幅器と、を含むチャネル付きフルアクティブ光ケーブルを組み立てること、
前記フルアクティブ光ケーブルの組み立て中に、バイアス電流の関数としての前記光源の光パワーを決定すること、
前記フルアクティブ光ケーブルの組み立て後に、前記光源の光パワーを変化させて、前記光源の最大光パワーであって前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする最大光パワーを決定すること、および
前記閾値光パワーから、前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする前記光源の前記最大光パワーを減算することにより、前記チャネルにおけるリンク損失を決定すること、を含む方法。
【請求項8】
前記電流の関数としての前記光源の光パワーを決定することは、
前記光源のバイアス電流を変化させること、および
前記アクティブ光ケーブル内に前記光源を組み込む前に、前記光源の、前記バイアス電流の関数としての光パワーを測定すること、
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記バイアス電流を変化させることは、前記バイアス電流にRF信号を適用することを含まない、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フルアクティブ光ケーブルの組み立て後に、品質保証ゲートとして前記リンク損失を用いる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記光検出器は、光ファイバケーブルによって前記光源に光学的に接続されている、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
光源と、前記光源に光学的に接続された光検出器と、前記光検出器の出力に接続されたトランスインピーダンス増幅器とを含む、フルアクティブ光ケーブルのチャネルにおけるリンク損失を決定する方法であって、前記トランスインピーダンス増幅器は、前記光検出器に入射した光パワーが閾値光パワー未満であるときにその出力をスケルチし、前記方法は、
前記光源の光パワーを変化させて、前記光源の最大光パワーであって前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする最大光パワーを決定すること、および
前記閾値光パワーから、前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする前記光源の前記最大光パワーを減算することにより、前記チャネルにおけるリンク損失を決定すること、
を含む、方法。
【請求項13】
前記光源の前記光パワーは、前記光源の前記バイアス電流の既知の関数であり、
前記光源の前記光パワーを変化させることは、前記光源の前記バイアス電流を変化させて既知の光パワーを生成することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アクティブ光ケーブルであって、
光源と、
前記光源に光学的に接続された光検出器と、
前記光検出器の出力に接続されたトランスインピーダンス増幅器であって、前記光検出器に入射した光パワーが閾値光パワー未満であるときにその出力をスケルチする前記トランスインピーダンス増幅器と、
前記アクティブ光ケーブルの初期リンク損失に関連する値を格納するメモリと、
を含むアクティブ光ケーブル。
【請求項15】
前記メモリに接続されたプロセッサをさらに含み、
前記メモリは、
前記閾値光パワーと、
バイアス電流の関数としての前記光源の光パワー値群と
を格納し、
前記プロセッサは、
前記光源の光パワーを変化させて、前記光源の最大光パワーであって前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする最大光パワーを決定することと、
前記閾値光パワーから、前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする前記光源の最大光パワーを減算することによりリンク損失を決定することと、
によって、リンク損失を計算する、請求項14に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項16】
前記プロセッサは、前記決定したリンク損失から元のリンク損失を減算することによりリンク損失の変化を計算する、請求項15に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項17】
前記メモリは前記プロセッサに含まれる、請求項14に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項18】
前記プロセッサは、前記光源のバイアス電流を変化させることにより前記光源の前記光パワーを変化させて、前記メモリに格納された前記光パワー値群に基づいて既知の光パワーを生成する、請求項14に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項19】
アクティブ光ケーブル群のシステムのリンクトポロジーを決定する方法であって、前記アクティブ光ケーブル群の各々はチャネルを含み、前記チャネルの各々は、光源と、前記光源に光学的に接続された光検出器と、前記光検出器の出力に接続されたトランスインピーダンス増幅器とを含み、前記トランスインピーダンス増幅器は、前記光検出器が検出した光パワーが閾値光パワー未満であるときにその出力をスケルチし、前記方法は、
送信器内の前記光源群の光パワーのパターンが前記閾値光パワーより高くなる、または低くなるよう、前記光源群の光パワーのパターンを選択する工程と、
受信器内のトランスインピーダンス増幅器のスケルチ出力および非スケルチ出力のパターンを、前記送信器内の前記光源群の光パワーのパターンと照合することにより、いずれの前記受信器が前記送信器に接続されているかを決定する工程と、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクティブ光ケーブル(AOC)に関する。より具体的には、本発明はAOCにおける受信器結合効率、リンクマージンおよびリンクトポロジーを決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
AOCは、その端部が、光変換器と呼ばれる少なくとも1つの光―電気変換器または電気―光変換器に接続可能な、光ファイバケーブルである。光ファーバーケーブルは1以上の光ファイバストランドを有し得る。フルAOCは、光ファイバケーブルの両端に、変換器を有する。ハーフAOCは光ファイバケーブルの一端に変換器を有し、他端は光コネクタに接続されている。フルAOCは2つの電気システム、例えばデータセンター内の2つのサーバ、を接続可能である。ハーフAOCは電気システムと光学システムとを接続可能である。AOCの端部は光変換器を含んでおり、AOCが電気システムとの間でデータを電気的に送受信しながら光ファイバケーブルを介してデータを光学的に送信および/または受信することができる。
【0003】
AOCは単方向または双方向のいずれであってもよい。単方向AOCは1方向にのみデータを送信し、双方向AOCは2方向にデータを送信し得る。AOCは光信号を受信する受信器、光信号を送信する送信器、または光信号を送受信するトランシーバを含み得る。フル単方向AOCは送信器と受信器とを含む。送信器は電気信号を受信し、電気信号を光信号に変換し、光ファイバケーブルを介して光信号を受信器に送信する。受信器は光ファイバケーブルから光信号を受信し、光信号を電気信号に変換し、電気信号を送信する。フル双方向AOCは2つのトランシーバを含んでおり、2方向に光信号を送受信可能である。
【0004】
フル双方向AOCは2つのトランシーバを含んでおり、2方向に光信号を送受信可能である。フルAOCは閉リンクまたは閉システムと考えられる。その理由は、光ファイバケーブルによって送信される光信号は、電気コネクタに接続するAOCの2つの端部によってのみ生成されるからである。いずれかが送信器でありいずれかが受信器である1対のハーフAOC、または2つのトランシーバである1対のハーフAOCは、光学コネクタによって互いに接続されて、開放可能な閉リンクを形成し得る。2つのハーフAOCを接続する理由の一つは、光ファイバケーブルの長さを延ばすことによってAOCの長さを増やすことができるからである。
【0005】
受信器またはトランシーバの受信部内では、光ファイバケーブルから出た光は光検出器に向かう。光検出器は、典型的には電流値を入力光パワーで割って表される、すなわちA/Wとして表される、既知の応答特性を有している。光検出器はトランスインピーダンス増幅器(TIA)に接続されている。TIAは、光検出器が受け取った光によって生成される電流を、光検出器に入射した光の量に関連する電圧に変換する。TIAは数種類あり、例えば線形TIA、制限付きTIA、受信信号強度インジケータ(RSSI)出力を有する制限付きTIAなどがある。線形TIAの場合、光検出器に入射した光の量または光パワーは、線形TIAの既知のゲイン特性に基づいて決定され得る。受信器結合効率は、光ファイバから出て光検出器が受け取った光のパーセンテージである。制限付きTIAで受信信号強度インジケータ(RSSI)がない場合、受信器結合効率は測定困難または測定不可能である。光ファイバの端部と光検出器との間に焦点レンズを配置し得る。光ファイバがいかに良くレンズに位置合わせされているか、またはレンズがいかに良く光検出器に位置合わせされているかを測定することは困難または不可能である。フルAOCにもハーフAOCにもこの問題はある。
【0006】
送信器またはトランシーバの送信部において、レーザを用いて、または発光ダイオード(LED)などのその他の光源を用いて、電気信号が光に変換される。レーザとしては垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)を用い得る。VCSELは個々に制御されるレーザのアレイを含む。レーザからの光は光ファイバケーブルに向けられる。送信器結合効率は光ファイバに入射するレーザ光のパーセンテージである。光ファイバは受け取った光の量を示すメカニズムを有していない。光ファイバの端部とレーザとの間にレンズが配置され得る。フルAOCについては、光ファイバがいかに良くレンズに位置合わせされているか、またはレンズがいかに良くレーザに位置合わせされているかを測定することは困難または不可能である。送信器ハーフAOCにおいては、光結合を測定することができる。なぜなら、ファイバに結合されている光パワーを、商用パワーメータを用いて検出することができるからである。
【0007】
マージンとは、リンクが許容し得、それがあっても適切に機能し得る損失の量である。例えば、送信器が−1dBmのパワーを送信し、受信器が適切に機能するためには少なくとも−10dBmのパワーを必要とする場合、送信器と受信器との間には9dBのパワー損失が許容可能である。光ファイバの結合効率および減衰がその9dBのパワーの一部であり、残りはマージンである。マージンの量は、フルAOCまたは結合されたAOCの対を用いる閉リンクでは測定できない。なぜなら受信器結合効率が測定できるのはハーフAOCを用いてのみだからである。さらに受信器および送信器の結合効率はフルAOCまたは結合されたハーフAOCの対を用いる閉リンクでは測定できない。
【0008】
受信器結合効率を知るためには、光ファイバのパワーおよび光検出器に達するパワーが必要である。ある1つのハーフAOCが、結合されたAOC対状にされるまでは、このまだ未結合のAOCとしての光ファイバ内のパワーを測定することはできる。しかし実際に光検出器に達するパワーを知ることができないため、受信器結合効率を知ることができない。
【0009】
フルAOCは追加のコネクタがない閉リンクであるため、マージンはフルAOCでは測定できない。送信器上のレーザと光ファイバとの送信器結合効率はわからない。光ファイバ内の、受信器における光量も知られておらず、そのためファイバと受信器内の光検出器との間の受信器結合効率を知ることは不可能である。
【0010】
マージンは、2つのハーフAOCを対にする光コネクタが存在するハーフAOC対では、測定できない。受信器に結合される光の量を知るためには、レーザが発する光パワー、2つのハーフAOC間の光結合の送信、および受信器内での接続の後のファイバからのカップリングが既知でなければならない。しかし、最も重要な値である、どのくらいの量の光が実際に受信器に到達するかを決定する方法は、今のところ知られていない。
【0011】
システム内でAOCを使用する場合、2つのハーフAOC間には多くの異なる光ファイバおよびコネクションを配置し得る。AOCが実装された後にリンクにどの程度のマージンがあるかを知る方法は知られていない。リンクはただ機能するかしないかのどちらかである。
【0012】
リンクマージンの質的測定となり得るアイクオリティテストを用いることは可能であるが、アイクオリティテストはリンクマージンを大まかに推定するにすぎない。光減衰器を用いて光パワーを調整し、光パワーの関数としてエラーの頻度を測定することにより、ビットエラーレートを測定し得る。しかし、ビットエラーレートの測定は時間がかかり、またハーフAOCでしか行うことができない。ビットエラーレートの測定は、RF性能を維持したままで送信器の出力パワーを既知のレベルに調整することを必要とするため、フルAOCではできない。レーザの駆動電流を変更することが可能であり、これにより送信パワーを調整することはできるが、信号を送信しながら駆動電流を変更することは困難である。
【0013】
一部のTIAは、光検出器が供給する電流を測定する集積RSSI機能を有する。しかしすべてのTIAが集積RSSI機能を有している訳ではない。制限付きAOCに集積RSSI機能がない場合、光検出器の電流はTIAによっては測定できない。電流が測定できないため、光検出器がどの程度の光を受け取っているかを知るのは不可能である。
【0014】
多くのリンクを有するシステムでは、リンクのトポロジーを決定するのは困難であり得る。
【発明の概要】
【0015】
上記問題点を克服するため、本発明の好ましい実施形態は、AOCにおける受信器結合効率、リンクマージンおよびリンクトポロジーを決定する方法を提供する。
【0016】
本発明の好ましい実施形態は、ハーフアクティブ光ケーブルの受信器結合効率を決定する方法を提供する。前記ハーフアクティブ光ケーブルは、光検出器と、前記光検出器の出力に接続されたトランスインピーダンス増幅器とを含み、前記トランスインピーダンス増幅器は、前記光検出器に入射した光パワーが閾値光パワー未満であるときにその出力をスケルチする。前記方法は、前記ハーフアクティブ光ケーブルに入力される光パワーを変化させて、前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする最大光パワーを決定すること、および、前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする前記最大光パワーに対する前記閾値光パワーの比を計算することにより、受信器結合効率を決定することを含む。
【0017】
前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチするまで前記光パワーを減少し得る。または前記トランスインピーダンス増幅器がその出力のスケルチを停止するまで前記光パワーを増加し得る。好ましくは、前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチすると、前記トランスインピーダンス増幅器はスケルチ信号を供給する。好ましくは、前記光パワーを変化させることは、可変光減衰器を用いること、1以上のゴールデントランスミッタを用いること、またはバイアス電流を変化させることにより光源の光パワーを変化させることを含む。好ましくは、前記閾値光パワーを、前記光検出器および前記トランスインピーダンス増幅器の特性に基づいて計算する。
【0018】
本発明の好ましい実施形態は、フルアクティブ光ケーブルのあるチャネルにおけるリンク損失を決定する方法を含む。前記方法は、光源と、前記光源に光学的に接続された光検出器と、前記光検出器の出力に接続されたトランスインピーダンス増幅器であって、前記光検出器に入射した光パワーが閾値光パワー未満であるときにその出力をスケルチするトランスインピーダンス増幅器とを含むチャネル付きフルアクティブ光ケーブルを組み立てること、前記フルアクティブ光ケーブルの組み立て中に、バイアス電流の関数としての前記光源の光パワーを決定すること、前記フルアクティブ光ケーブルの組み立て後に、前記光源の光パワーを変化させて、前記光源の最大光パワーであって前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする最大光パワーを決定すること、および、前記閾値光パワーから、前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする前記光源の前記最大光パワーを減算することにより、前記チャネルにおけるリンク損失を決定する工程とを含む。
【0019】
好ましくは、前記電流の関数としての前記光源の光パワーを決定することは、前記光源のバイアス電流を変化させること、および、前記アクティブ光ケーブル内に前記光源を組み込む前に、前記光源の、前記バイアス電流の関数としての光パワーを測定することとを含む。好ましくは、前記バイアス電流を変化させることは、前記バイアス電流にRF信号を適用することを含まない。好ましくは、前記フルアクティブ光ケーブルの組み立て後に、品質保証ゲートとして前記リンク損失を用いる。好ましくは、前記光検出器は、光ファイバケーブルによって前記光源に光学的に接続されている。
【0020】
本発明の好ましい実施形態は、光源と、前記光源に光学的に接続された光検出器と、前記光検出器の出力に接続されたトランスインピーダンス増幅器とを含む、フルアクティブ光ケーブルのチャネルにおけるリンク損失を決定する方法を提供する。前記トランスインピーダンス増幅器は、前記光検出器に入射した光パワーが閾値光パワー未満であるときにその出力をスケルチする。前記方法は、前記光源の光パワーを変化させて、前記光源の最大光パワーであって前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする最大光パワーを決定することと、および、前記閾値光パワーから、前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする、前記光源の最大光パワーを減算することにより、前記チャネルにおけるリンク損失を決定すること、を含む。
【0021】
好ましくは、前記光源の前記光パワーは、前記光源の前記バイアス電流の既知の関数であり、前記光源の前記光パワーを変化させることは、前記光源の前記バイアス電流を変化させて既知の光パワーを生成することを含む。
【0022】
本発明の好ましい実施形態は、アクティブ光ケーブルであって、光源と、前記光源に光学的に接続された光検出器と、前記光検出器の出力に接続されたトランスインピーダンス増幅器であって、前記光検出器に入射した光パワーが閾値光パワー未満であるときにその出力をスケルチする前記トランスインピーダンス増幅器と、前記アクティブ光ケーブルの初期リンク損失に関連する値を格納するメモリとを含むアクティブ光ケーブルを提供する。
【0023】
好ましくは、アクティブ光ケーブルは、前記メモリに接続されたプロセッサをさらに含み、前記メモリは、前記閾値光パワーと、バイアス電流の関数としての前記光源の光パワー値群とを格納し、前記プロセッサは、前記光源の光パワーを変化させて、前記光源の最大光パワーであって前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする最大光パワーを決定することと、前記閾値光パワーから、前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする前記光源の最大光パワーを減算することによりリンク損失を決定することとによって、リンク損失を計算する。
【0024】
好ましくは、前記プロセッサは、前記決定したリンク損失から元のリンク損失を減算することによりリンク損失の変化を計算する。好ましくは、前記メモリは前記プロセッサに含まれる。好ましくは、前記プロセッサは、前記光源のバイアス電流を変化させることにより前記光源の前記光パワーを変化させて、前記メモリに格納された前記光パワー値群に基づいて既知の光パワーを生成する。
【0025】
本発明の好ましい実施形態は、アクティブ光ケーブル群のシステムのリンクトポロジーを決定する方法を提供する。前記アクティブ光ケーブル群の各々はチャネルを含み、前記チャネルの各々は、光源と、前記光源に光学的に接続された光検出器と、前記光検出器の出力に接続されたトランスインピーダンス増幅器とを含み、前記トランスインピーダンス増幅器は、前記光検出器が検出した光パワーが閾値光パワー未満であるときにその出力をスケルチする。前記方法は、送信器内の前記光源群の光パワーのパターンが前記閾値光パワーより高くなる、または低くなるよう、前記光源群の光パワーのパターンを選択する工程と、受信器内のトランスインピーダンス増幅器のスケルチ出力および非スケルチ出力のパターンを、前記送信器内の前記光源群の光パワーのパターンと照合することにより、いずれの前記受信器が前記送信器に接続されているかを決定する工程とを含む。
【0026】
本発明の上記およびその他の特徴、要件、特性、工程および利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明を添付の図面を参照して読むことにより、より明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、ハーフAOCの受信器結合効率を測定するテストの模式図である。
【
図2】
図2は、減衰器を含まないハーフAOCの受信器結合効率を測定する方法を示す図である。
【
図3】
図3はリンクマージンテストを行う較正工程を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、トランシーバ用のプリント基板および成形された光学構造(molded optical structure)の分解平面図である。
【
図8A】
図8Aは、
図7に示すAOCと共に用い得る送信器のプリント基板および成形された光学構造の分解図である。
【
図8B】
図8Bは、
図7に示すAOCと共に用い得る受信器のプリント基板および成形された光学構造の分解図である。
【
図24】
図24は、y形状の2つのハーフAOCの平面図である。
【
図25】
図25は、y形状の2つのハーフAOCの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の好ましい実施形態は、AOCにおける受信器結合効率、リンクマージンおよびリンクトポロジーを決定する方法を提供する。好ましい実施形態による方法は以下のサブセットに分類される。
1)ハーフAOCの受信器結合効率を測定するために用い得るテスト、
2)フルAOCまたは結合されたハーフAOC対による閉リンクについてリンクマージンを測定するために用い得るテスト、および
3)所与の送信器に対していずれの受信器が対であるかを決定してリンクトポロジーを決定するために用い得るテスト。
【0029】
(受信器結合効率)
受信器結合効率は、本発明の好ましい実施形態による方法を用いて、既知の量の光パワーを注入し、いつTIAがスケルチ動作に入ったかを記録することにより測定し得る。
【0030】
光信号は典型的にはデジタル信号として、すなわち0および1として送信される。光信号0は低減されたパワーレベル、例えば光信号1の50%のパワーレベルで送信されるが、ゼロパワーレベルとして送信されるわけではない。ゼロパワーレベルとは光信号が全く送信されないことであり、光信号0が送信されることではない。
【0031】
受信器またはトランシーバの受信部において、TIAは光検出器の出力に接続されている。光検出器の平均出力が一定の閾値を超えない限り、TIAの出力はスケルチされる、または抑制される。例えば、AOCが送信することを意図していない場合、AOCはデータでないノイズ信号、すなわち1でも0でもない信号、を送信し得る。TIAの出力が抑制またはスケルチされなければ、ノイズ信号が誤ってデータと解釈され、システムエラーにつながり得る。
【0032】
受信器で用いられるほとんどのTIAはこのスケルチ機能を有する。光検出器が受信した受信した光パワーが低いために光検出器が生成する電流が小さすぎる場合、TIAは光検出器の出力をスケルチする。スケルチを用いた受信器結合効率の決定は、フルAOCとハーフAOCとの両方で行うことができ、非常に時間効率が良いという利点を有する。結合効率テストは、複雑かつ高価な高速変調装置を用いずに非常に迅速に行い得る。スケルチという機能はほとんどの受信器で用いられているTIAの標準的機能であるため、受信器は追加のハードウェアまたは機能を必要としない。
【0033】
ハーフAOCの受信器の受信器結合効率を決定する方法は、受信器がTIAの出力をスケルチするかどうかを切り替えるまで光入力パワーを調整することで行われる。TIAの出力がスケルチされるまで、すなわち非スケルチ状態からスケルチ状態に変化するまで、光入力パワーを減少させ得る。あるいはTIAの出力がスケルチされなくなるまで、すなわちスケルチ状態から非スケルチ状態に変化するまで、入力光パワーを増加させ得る。TIAの出力が非スケルチ状態からスケルチ状態に変化するとき、またはTIAの出力がスケルチ状態から非スケルチ状態に変化するときに、スケルチを引き起こす最大入力光パワーを決定し得る。スケルチ状態を引き起こさない最小入力光パワーも同様に決定し得る。
図1は、受信器結合効率を決定する方法の非限定的な例を示す。
【0034】
例えば、TIAが出力をスケルチするまで可変光減衰器を用いて受信器の入力光パワーを減少させることにより、受信器結合効率を決定し得る。TIAが出力をスケルチすると、TIAはスケルチ信号またはフラグを供給することでTIAの出力がスケルチされていることを示す。スケルチ信号によって、データ0信号をスケルチされた出力と区別できるようにすることにより、出力がスケルチされたと判断することが容易になる。スケルチ信号の検出により受信器結合効率の決定が可能になる。なぜなら、出力は、光検出器に入射する既知のレベルの入力光パワーにおいてスケルチされるからである。あるいは入力光パワーを減少させる代わりに、TIAがスケルチ信号の供給を停止するまで入力光パワーを増加させてもよい。
【0035】
TIAの閾値スケルチレベルが調整可能であるなら、閾値スケルチレベルを最高レベルに設定することが好ましい。最高閾値スケルチレベルは最大入力光パワーに対応し、これにより最も正確な測定が可能となる。TIAの閾値スケルチレベルが調整可能でなければ、TIAは固定された入力光パワーでスケルチする。
【0036】
例えば光検出器の応答性、線形TIAのTIAゲイン特性または制限付きTIAのRSSI、およびTIAの閾値スケルチレベルを知ることにより、TIAがスケルチを行うために必要な、光検出器に入射する光パワーを計算し得る。スケルチを引き起こす最大入力光パワーに対する、スケルチを引き起こす入力光パワーの既知の計算値の比を求めることによって結合効率を決定する。
【0037】
図2は、受信器結合効率を決定する他の方法を示す。この方法は光減衰器を用いず、既知のパワーレベルのゴールデントランスミッタを用いること、または結合効率を測定する前にソフトウェアのバイアス電流を調整して出力パワーレベルを記録することにより光源を既知のパワーレベルに較正することを必要とする。その後、既知のパワーレベルでTIAが出力をスケルチするか否かを記録する。パワーレベルは、異なるゴールデントランスミッタを設けること、またはバイアス電流を調整することにより増加または減少し得る。パワーレベルがスケルチ閾値未満まで降下すると、TIAがその出力をスケルチしてスケルチ信号を供給し、パワーレベルが記録される。あるいは、スケルチ信号が供給されなくなるまでパワーレベルを増加してもよい。その時点でのパワーレベルが記録される。
【0038】
本発明の好ましい方法は、上記のビットレートエラー測定よりも時間効率が良い。本発明の好ましい方法は光信号変調を必要とせず、RF変調光パワーではなく一定の光パワーを用い得るため、ビットレートエラー測定では必要となるRF性能レベルの維持を必要とせずに達成可能な光パワー範囲の面ではるかに柔軟である。スケルチ信号は一定または平均光入力パワーのレベルに依存する。変調がディスエーブルされても、受信器に達する光量を測定する能力が抑制されるわけではなく、光源または送信器の出力パワーに対する制御がより向上する。
【0039】
(リンクマージン)
総リンク損失は、本発明の好ましい実施形態による方法を用いて、注入電流の関数としてレーザの出力パワーを知ることによって測定し得る。この方法は、レンズをレーザに隣接して実装する前に、初期較正テストを行うことを必要とする。このテストは、
図5Aに示すように、VCSELをPCB102に実装したときであって成形された光学構造(molded optical structure;MOS)110を実装する前に行い得る。VCSELアレイ内の各レーザ近傍に積分球を載置し得る。積分球はVCSELから発光する光を捕捉し、それによりバイアス電流の関数としての総出力光パワーを記録し得る。総リンク損失の測定はフルAOCを用いた、または結合されたハーフAOCの対を用いた閉リンクで行い得る。総リンク損失はリンク内でどれほどの損失があるかに関し、マージンはリンクが適切に機能する範囲であとどれほどの損失が許容できるかに関する。
【0040】
この方法はフルAOCを含むすべての閉リンクで使用可能であるため、適切なリンク性能を保証する診断ツールとして用い得る。この方法はリンクマージンの決定を可能にするファームウェアとして実施し得る。例えば、いくつかのリンクを使用するシステムにおいては、リンクを乱さずに各リンク内のマージン量を知ることが望ましい。この方法を用いれば、物理的介入をすることなく各リンクに許容可能なマージン量を決定し得る診断ツールが提供される。この方法はリンクの初期システムセットアップ中に用いてもよく、ある期間に亘ってリンクの正常性をモニタするために用いてもよい。
【0041】
フルAOCまたは結合されたハーフAOCの対を用いた閉システムでは、リンクマージンの測定は以下の2工程を必要とする。
1)送信器較正
2)リンクマージン測定
【0042】
較正工程は、所望のパワーレベルに達するのに必要なバイアス電流を測定し記録するために用いられる。
図3は較正工程を示す。較正工程は、焦点レンズを送信器に取り付ける前にAOC製造中に行うのが好ましい。レーザからの光は自由空間に発光され積分球に捕捉される。積分球を用いて測定した、バイアス電流の関数としての光出力パワーを記録し、これを後に用いるために格納する。較正工程を行った後、バイアス電流の関数としての発光パワーをAOCのファームウェア内のルックアップテーブルに保存し得る。ルックアップテーブルは例えば
図5Bに示すマイクロプロセッサ103内、および/またはAOCの製造に用いる製造テスト装置内に格納し得る。
【0043】
第2の工程はAOC製造後に行い得るリンクマージン測定である。フルAOCの場合、閉リンクであるため光パワーは可変光減衰器によっては調整できない。代わりに光パワーは、送信器上でレーザを駆動する電流量を変化させることによって既知のパワーレベルに調整し得る。所望のパワーレベルに達するのに必要な電流は、較正工程中にAOCのファームウェアに格納する。総リンク損失は、送信器からの最大光パワーであって受信器がスケルチする最大光パワーから、光検出器およびTIAの特性に基づいた光パワー計算値であって受信器がスケルチする光パワー計算値を減算することにより、計算し得る。AOCの初期リンクマージンは初期パワーレベルおよびTIAにスケルチを行わせるパワーレベルを用いて決定し得る。AOCリンクが機能するためには、受信器は受信器(Rx)感度と呼ばれる一定の最小パワーレベルを必要とする。Rx感度はTIAにスケルチを行わせるパワーレベルに比例し得る。そのため初期リンクマージンは、初期AOCパワーレベル、TIAにスケルチを行わせるパワーレベル、およびRx感度とTIAにスケルチを行わせるパワーレベルとの比例性とを知ることにより決定し得る。
【0044】
リンクマージンテストは製造中の品質保証段階で行い得、これにより販売されるいずれの商品にも十分なリンクマージンがあることが保証される。アクティブ光ケーブルは品質保証ゲートを通過するに十分なリンクマージンを有しなければならないというように、品質保証ゲートを設け得る。リンクマージンテストは、実装済みのAOCに対する自己診断テストとしても用い得る。受信器がスケルチする最大光パワーは、出力光パワーを調整して、既知のパワーレベル(較正工程中にAOCのファームウェアに保存される)にすることにより測定し得る。最大光パワーに基づけば、AOCの質が落ちて交換が必要であるかが明らかとなる。
【0045】
例えば初期の時点では、1mWの光パワーが、出力がスケルチされる最大光パワーであると決定され、後の時点では、2mWの光パワーが、出力がスケルチされる最大光パワーであると決定されたとする。すると、AOCが劣化して1mWの光パワーが失われたと判断し得る。これはパワーの50%の低下またはリンクマージンの3dBの低下を意味する。光パワーはdBmで同等に表現し得る。この例では初期の光パワーは0dBm(1mW)であり、最後の光パワーは3dBm(2mW)である。したがってリンク損失は3dBである。
【0046】
AOCの初期のリンク損失またはそれに関連する量をメモリに格納しておくと、AOCの使用が容易になる。多くのAOCは複雑なコンピュータおよび通信システムに集積され得る。上記の方法を用いると、これらのシステムによってシステム内の任意のAOCの任意のチャネルを調査して現在のリンク損失を決定し得る。初期のリンク損失はメモリに格納されているため、初期のリンク損失を現在のリンク損失と比較して、リンクマージンの発生し得る劣化を知らせることができる。この情報はシステムの手直しをする場合、および故障しかかっていると考えられるAOCを、先を見越して交換する場合に用い得る。
【0047】
(リンクトポロジー)
この方法は、いずれの送信器および受信器が互いに対であるかを決定するのにも用い得る。多くのAOCを有するシステムでは、いずれの送信器がいずれの受信器に接続されているかを判断することが困難なことがある。このようなシステムでは、多くのAOCの各々が光ケーブルによって接続された送信器と受信器とを含む。AOCはさらに、送信器と受信器との間に多くのチャネルを含み、各チャネルは送信器内にレーザを含み、受信器内に光検出器とTIAとを含む。スケルチを用いると、各送信器に固有の数および向きのレーザをイネーブルさせることにより、いずれの送信機が所与の受信器に接続されているかを決定することができる。AOCの全チャネルは、送信器がイネーブルした受信器以外であって送信器と対になっている受信器上でスケルチされる。その結果、いずれの送信器といずれの受信器が互いに接続されているかを推測することが可能となる。可能性のあるユニークパターンの数を超えるリンクがある場合は、送信器/受信器対のサブセットに対して順にこの方法を行い得る。
【0048】
例えば、システムが多くのマルチチャネルAOCを有しており、各送信器が対応する受信器に接続されていると仮定する。各送信器上の非スケルチチャネルのユニークパターンをイネーブルして、同一パターンの非スケルチチャネルを有する受信器が、該ユニークパターンの非スケルチチャネルを有する送信器と対をなすようにすることが可能である。12チャネルを有するAOCでは、送信器の外側の2チャネル(第1チャネルおよび第12チャネル)を非スケルチとし得る。その場合、対応する受信器の中間の10チャネルに達する光パワーがなく、これら中間の10チャネルはスケルチすべきである。別の送信器/受信器対では、別のユニークパターン、例えば第1および第2チャネルを非スケルチとするパターンを用いて、ある送信器とある受信器とが対となったと決定し得る。このようにして、12チャネルを有するAOCに対して4096(=2
12)のユニークパターンを提供することができる。
【0049】
別の例として、システムが、例えば受信用の4チャネルと送信用の4チャネルとを有するQSFPを含む多くの双方向AOCを含むと仮定する。双方向AOCは、接続されたホストおよびターゲットトランシーバが含まれている。この場合、ホストおよびターゲットトランシーバの両方において非スケルチチャネルのユニークパターンを提供することが可能である。このように、4双方向チャネルを有するAOCに対して256(=2
8)のユニークパターンを提供することができる。システムが計500リンクを含む場合、トポロジーは2工程でマッピングし得る。まず500リンクのうち256リンクをマッピングし、その後最後の144リンクをマッピングし得る。
【0050】
上記の本発明の好ましい方法は、
図4から
図25に示すAOCに適用し得る。
図4から
図25に示すAOCは本発明の好ましい方法を用い得るAOCの例であるが、他のAOCを用いることもできる。
【0051】
(本発明の好ましい実施形態による方法を実施する装置)
好ましい実施形態による方法は任意の適切なAOCに対して実施され得る。
図4から
図25は適切なAOCの例を示す。
【0052】
図4から
図5Bは、光信号の受信と送信とを共に行い得るトランシーバを有する双方向AOCを示す。
図5Aに示すように双方向トランシーバは、光信号を受信し得る光検出器107と光信号を送信し得るVCSEL109とを含む。
【0053】
トランシーバはハウジング101と、光ファイバ112を有する光ケーブル111と、基板102と、基板102および光ファイバ112に連結または接続する成形された光学構造(MOS)110と、オプティカルライザ(optical riser)108とを含む。基板102は、光検出器107と、VCSEL109と、マイクロプロセッサ103とを含む。
図5Aおよび
図5Bに示すように、光検出器107およびVCSEL109とマイクロプロセッサ103とは基板102の互いに反対の面上に設けられ得る。あるいは光検出器107、VCSEL109およびマイクロプロセッサ103を基板102の同一面上に設けることもできる。
【0054】
図6から
図8Bは、光信号を送信または受信し得る単方向AOCを示す。
図8Aは、VCSELとドライバとを有する送信器を示す。
図8Bは、光検出器とTIAとを有する受信器を示す。
【0055】
図6および
図7は、基板202上に設けられる部品次第で送信器、受信器またはトランシーバになり得る装置を示す。この装置は、光ケーブル211と、基板202と、基板202および光ファイバ212に連結または接続するMOS210と、マイクロプロセッサ203と、光ヒートシンク213とを含む。送信器を示す
図8Aに示すように、基板202はドライバ214と、VCSEL209と、マイクロプロセッサ203とを含む。受信器を示す
図8Aに示すように、基板202はTIA215と、光検出器207と、マイクロプロセッサ203とを含む。
【0056】
マイクロプロセッサ103および203を
図5Bおよび
図7〜
図8Bに示すが、マイクロプロセッサまたはFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)などの任意の適切な演算装置または処理装置を用い得る。マイクロプロセッサ102および203はプログラムされて上記方法を実施するために用いられ得る。
【0057】
受信器の結合効率を決定するために、受信器のマイクロプロセッサはプログラムされて、出力がスケルチされたことを示すスケルチ信号をTIAが供給したときにそれを記録または示すようにし得る。
【0058】
総リンク損失を決定するために、マイクロプロセッサが専用メモリを有しているか、マイクロプロセッサに接続されたメモリがある場合には、較正工程の結果、すなわちバイアス電流の関数としての光出力パワーを示すテーブルをマイクロプロセッサに格納し得る。レーザを駆動するバイアス電流の量を調整して受信器がスケルチする最大光パワーを決定することにより、総リンク損失を決定するよう、マイクロプロセッサはプログラムされ得る。マイクロプロセッサは、送信器からの最大光パワーであって受信器がスケルチする最大光パワーから、光検出器およびTIAの特性に基づいた光パワー計算値であって受信器がスケルチする光パワー計算値を減算することにより、総リンク損失を計算し得る。リンク損失または関連値、例えばリンクマージン、スケルチ閾値バイアス電流などをメモリに格納し得る。
【0059】
多くのAOCを有するシステムにおいてリンクトポロジーを決定するためには、各送信器のマイクロプロセッサを、一部チャネルの光パワーをスケルチ閾値より高く、他のチャネルの光パワーをスケルチ閾値より低くするようなレーザ用のバイアス電流のパターンを選択するように、プログラムし得る。そして各受信器のマイクロプロセッサは、バイアス電流のパターンをスケルチチャネルおよび非スケルチチャネルのパターンと照合することによりAOCのトポロジーが決定されるように、スケルチチャネルおよび非スケルチチャネルのパターンを提供するようプログラムし得る。
【0060】
図9から
図11はフルAOCを示し、
図12から
図25はハーフAOCを示す。
図9から
図25に示すAOCは特定の電−光コネクタおよび特定の光コネクタを含むが、他の電−光コネクタおよび光コネクタも用い得る。
【0061】
図9および
図10は、光ケーブル303によって接続された2つの端部301および302を含む標準的フルAOCの上面および底面を示す。2つの端部301および302は、受信器および送信器であってもよいし、2つのトランシーバであってもよい。端部301および302は
図6に示す装置に類似するが、他の受信器、送信器またはトランシーバも用い得る。
図11はループ型AOCを示す。ループ型AOCでは、端部301および302の一方が他端に対して反転している。
【0062】
図12および
図13は、端部301とメスMT端部304とを含むハーフAOCの上面および底面を示す。
図14および
図15は、端部301とオスMT端部305とを含むハーフAOCの上面および底面を示す。
図16および
図17は、端部301とメスMTP端部305とを含むハーフAOCの上面および底面を示す。
図18および
図19は、端部301と、底面に登録キー308が設けられたオスMTP端部307とを含むハーフAOCの上面および底面を示す。
図20および
図21は、端部301と、上面に登録キー308が設けられたオスMTP端部307とを含むハーフAOCの上面および底面を示す。
図22および
図23は、端部301とプリズムMT端部309とを含むハーフAOCの上面および底面を示す。
図22および
図23は、端部301と、上面に登録キー308が設けられたオスMTP端部307とを含むYケーブルの上面および底面を示す。メスMT端部304、オスMT端部305、メスMTP端部306、オスMTP端部307、およびプリズムMT端部309は光コネクタであり、端部301は光−電コネクタである。
【0063】
上記記載は本発明の例示に過ぎないことを理解すべきである。当業者であれば本発明から逸脱することなく様々な変形および改変を着想し得る。したがって本発明は、添付の請求の範囲に含まれるそれら変形、改変、変更のすべてを含むことを意図する。
【手続補正書】
【提出日】2017年6月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーフアクティブ光ケーブルの受信器結合効率を決定する方法であって、前記ハーフアクティブ光ケーブルは、光検出器と、前記光検出器の出力に接続されたトランスインピーダンス増幅器とを含み、前記トランスインピーダンス増幅器は、前記光検出器に入射した光パワーが閾値光パワー未満であるときにその出力をスケルチし、前記方法は、
前記ハーフアクティブ光ケーブルに入力される光パワーを変化させて、前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする最大光パワーを決定すること、および、
前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする前記最大光パワーに対する前記閾値光パワーの比を計算することにより、受信器結合効率を決定すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチするまで前記光パワーを減少させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トランスインピーダンス増幅器がその出力のスケルチを停止するまで前記光パワーを増加させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチすると、前記トランスインピーダンス増幅器はスケルチ信号を供給する、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記光パワーを変化させることは、
可変光減衰器を用いること、
1以上のゴールデントランスミッタを用いること、または
バイアス電流を変化させることにより光源の光パワーを変化させること、
を含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記閾値光パワーを、前記光検出器および前記トランスインピーダンス増幅器の特性に基づいて計算する、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
フルアクティブ光ケーブルのあるチャネルにおけるリンク損失を決定する方法であって、
光源と、前記光源に光学的に接続された光検出器と、前記光検出器の出力に接続されたトランスインピーダンス増幅器であって、前記光検出器に入射した光パワーが閾値光パワー未満であるときにその出力をスケルチするトランスインピーダンス増幅器と、を含むチャネル付きフルアクティブ光ケーブルを組み立てること、
前記フルアクティブ光ケーブルの組み立て中に、バイアス電流の関数としての前記光源の光パワーを決定すること、
前記フルアクティブ光ケーブルの組み立て後に、前記光源の光パワーを変化させて、前記光源の最大光パワーであって前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする最大光パワーを決定すること、および
前記閾値光パワーから、前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする前記光源の前記最大光パワーを減算することにより、前記チャネルにおけるリンク損失を決定すること、を含む方法。
【請求項8】
前記電流の関数としての前記光源の光パワーを決定することは、
前記光源のバイアス電流を変化させること、および
前記アクティブ光ケーブル内に前記光源を組み込む前に、前記光源の、前記バイアス電流の関数としての光パワーを測定すること、
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記バイアス電流を変化させることは、前記バイアス電流にRF信号を適用することを含まない、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記フルアクティブ光ケーブルの組み立て後に、品質保証ゲートとして前記リンク損失を用いる、請求項7から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記光検出器は、光ファイバケーブルによって前記光源に光学的に接続されている、請求項7から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
光源と、前記光源に光学的に接続された光検出器と、前記光検出器の出力に接続されたトランスインピーダンス増幅器とを含む、フルアクティブ光ケーブルのチャネルにおけるリンク損失を決定する方法であって、前記トランスインピーダンス増幅器は、前記光検出器に入射した光パワーが閾値光パワー未満であるときにその出力をスケルチし、前記方法は、
前記光源の光パワーを変化させて、前記光源の最大光パワーであって前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする最大光パワーを決定すること、および
前記閾値光パワーから、前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする前記光源の前記最大光パワーを減算することにより、前記チャネルにおけるリンク損失を決定すること、
を含む、方法。
【請求項13】
前記光源の前記光パワーは、前記光源の前記バイアス電流の既知の関数であり、
前記光源の前記光パワーを変化させることは、前記光源の前記バイアス電流を変化させて既知の光パワーを生成することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アクティブ光ケーブルであって、
光源と、
前記光源に光学的に接続された光検出器と、
前記光検出器の出力に接続されたトランスインピーダンス増幅器であって、前記光検出器に入射した光パワーが閾値光パワー未満であるときにその出力をスケルチする前記トランスインピーダンス増幅器と、
前記アクティブ光ケーブルの初期リンク損失に関連する値を格納するメモリと、
を含むアクティブ光ケーブル。
【請求項15】
前記メモリに接続されたプロセッサをさらに含み、
前記メモリは、
前記閾値光パワーと、
バイアス電流の関数としての前記光源の光パワー値群と
を格納し、
前記プロセッサは、
前記光源の光パワーを変化させて、前記光源の最大光パワーであって前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする最大光パワーを決定することと、
前記閾値光パワーから、前記トランスインピーダンス増幅器がその出力をスケルチする前記光源の最大光パワーを減算することによりリンク損失を決定することと、
によって、リンク損失を計算する、請求項14に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項16】
前記プロセッサは、前記決定したリンク損失から元のリンク損失を減算することによりリンク損失の変化を計算する、請求項15に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項17】
前記メモリは前記プロセッサに含まれる、請求項15に記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項18】
前記プロセッサは、前記光源のバイアス電流を変化させることにより前記光源の前記光パワーを変化させて、前記メモリに格納された前記光パワー値群に基づいて既知の光パワーを生成する、請求項15から17のいずれかに記載のアクティブ光ケーブル。
【請求項19】
アクティブ光ケーブル群のシステムのリンクトポロジーを決定する方法であって、前記アクティブ光ケーブル群の各々はチャネルを含み、前記チャネルの各々は、光源と、前記光源に光学的に接続された光検出器と、前記光検出器の出力に接続されたトランスインピーダンス増幅器とを含み、前記トランスインピーダンス増幅器は、前記光検出器が検出した光パワーが閾値光パワー未満であるときにその出力をスケルチし、前記方法は、
送信器内の前記光源群の光パワーのパターンが前記閾値光パワーより高くなる、または低くなるよう、前記光源群の光パワーのパターンを選択する工程と、
受信器内のトランスインピーダンス増幅器のスケルチ出力および非スケルチ出力のパターンを、前記送信器内の前記光源群の光パワーのパターンと照合することにより、いずれの前記受信器が前記送信器に接続されているかを決定する工程と、
を含む方法。
【国際調査報告】