(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-532973(P2017-532973A)
(43)【公表日】2017年11月9日
(54)【発明の名称】幹細胞培養のための培地組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0775 20100101AFI20171013BHJP
【FI】
C12N5/0775
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-523488(P2017-523488)
(86)(22)【出願日】2015年10月28日
(85)【翻訳文提出日】2017年6月28日
(86)【国際出願番号】KR2015011424
(87)【国際公開番号】WO2016068596
(87)【国際公開日】20160506
(31)【優先権主張番号】10-2014-0148482
(32)【優先日】2014年10月29日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0190671
(32)【優先日】2014年12月26日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】508033465
【氏名又は名称】アール バイオ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】R BIO CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100194973
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 祐朗
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ラ ジョンチャン
(72)【発明者】
【氏名】カン ソングン
(72)【発明者】
【氏名】キム ソンミン
(72)【発明者】
【氏名】イ ミンスク
(72)【発明者】
【氏名】イ ジンファ
(72)【発明者】
【氏名】クォン スネ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BB02
4B065BB08
4B065BB12
4B065BB19
4B065BB25
4B065BB34
4B065BC03
4B065BC11
4B065BD15
4B065BD18
(57)【要約】
本発明は、幹細胞の培養のための培地組成物に関し、さらに詳しくは、様々な準完成培地(DMEM、a−MEM、IMDM、F12、DMEM/F12)とDefined Keratinocyte−SFMを混合した基本培地、L−アスコルビン酸2−リン酸、ウシ胎児血清、塩基性線維芽細胞成長因子(b−FGF)、インスリン、N−アセチル−L−システイン(N−acetyl−L−cysteine)、塩化カルシウムおよびヒドロコルチゾンを含有する間葉系の幹細胞培養のための培地組成物に関する。
本発明によると、間葉系幹細胞の分化能と増殖能を向上させることができ、従来の培養方法よりも安価で中葉幹細胞の培養が可能で、間葉系幹細胞を利用した細胞治療剤をより経済的に産生することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DMEM、α−MEM、IMDM、F12およびDMEM/F12で構成された群から選択される培地とDefined Keratinocyte−SFMが混合された基本培地、L−アスコルビン酸2−リン酸、ウシ胎児血清、塩基性線維芽細胞成長因子(b−FGF)、インスリン、N−アセチル−L−システイン(N−acetyl−L−cysteine)、塩化カルシウム、およびヒドロコルチゾンを含有する、間葉系幹細胞培養のための培地組成物。
【請求項2】
前記培地は、0.05〜1mMのアスコルビン酸2−リン酸、2〜20%ウシ胎児血清、10〜1ng/mlの塩基性線維芽細胞成長因子(b−FGF)、0.1〜100μg/mlのインスリン、0.2〜20mMのN−アセチル−L−システイン(N−acetyl−L−cysteine)、0.01〜1mMの塩化カルシウムおよび5ng/ml〜1μg/mlのヒドロコルチゾンを含有することを特徴とする請求項1に記載の培地組成物。
【請求項3】
DMEM、α−MEM、IMDM、F12およびDMEM/F12で構成された群から選択される培地とDefined Keratinocyte−SFMの混合比は、1:0.1〜10であることを特徴とする請求項1に記載の培地組成物。
【請求項4】
前記混合比は、1:0.25〜3であることを特徴とする請求項3に記載の培地組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の培地組成物で間葉系幹細胞を培養することを特徴とする間葉系幹細胞の培養方法。
【請求項6】
前記間葉系幹細胞は、ヒト脂肪由来であることを特徴とする請求項5に記載の間葉系幹細胞の培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幹細胞の培養のための培地組成物に関し、さらに詳しくは、様々な準完成培地(DMEM、a−MEM、IMDM、F12、DMEM/F12)とDefined Keratinocyte−SFMを混合した基本培地、L−アスコルビン酸2−リン酸、ウシ胎児血清、塩基性線維芽細胞成長因子(b−FGF)、インスリン、N−アセチル−L−システイン(N−acetyl−L−cysteine)、塩化カルシウム、およびヒドロコルチゾンを含有する間葉系の幹細胞培養のための培地組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自己複製能力を維持しながら二つ以上の細胞に分化する能力を有する細胞を幹細胞(stem cell)という。幹細胞は、大きく万能幹細胞(totipotent stem cell)、分化万能性幹細胞(pluripotent stem cell)、多能性幹細胞(multipotent stem cell)に分類することができて、この中で組織及び器官に特異的な細胞だけに分化できる幹細胞で、胎児期、新生児期及び成体期の各組織及び臓器の発達、成体組織の恒常性維持および組織損傷時再生を誘導する機能に関与する細胞を総称して成体幹細胞という。
【0003】
近年、成体幹細胞は、各種病気や事故による機能障害や不調和に陥った生体組織及び臓器の再生及び機能回復など新しい再生医療治療手法の開発研究で注目を集めている。幹細胞を利用した治療法の開発研究は、従来の古典的な薬物治療や手術的治療方法を越えて、細胞・組織の代替治療法の開発への発展が予測されて、幹細胞の利用率はさらに高まるだろう。
【0004】
したがって、現状は幹細胞の様々な機能が研究されており、その中でも間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells)を利用した細胞治療技術が脚光を浴び始め、人体から分離された間葉系幹細胞を治療に適するように改善するための技術が開発されている(WO2006/019357、大韓民国登録特許第0795708号、大韓民国登録特許第0818214号)。
【0005】
現在成体幹細胞を利用した細胞治療剤に関する研究開発の過程は、患者からの幹細胞、血液由来単核細胞あるいは骨髄由来単核細胞を収集して、試験管培養を介して細胞増殖および/または分化を誘導して未分化(幹細胞および/または前駆細胞)および/または分化細胞の着床を誘導することにより、患者自身の体に導入する一連の過程を経て進行されている。しかし、間葉系幹細胞の幹細胞性(stemness)持続力、高い分裂能、コンパクトな形状(morphology)維持などに最適化されている現在使用されている間葉系の幹細胞培養培地は、高費用により、幹細胞治療剤の研究において、経済的な負担として作用しているのが実情である(大韓民国登録特許第0795708号)。
【0006】
そこで、本発明者等は、間葉系幹細胞の産生コストを削減し、培養効率をより強化できる幹細胞培養用培地を開発しようと鋭意努力した結果、現在幹細胞培養に使用されている高費用、高効率のKSFM−P培地を細胞培養に汎用的に使用される比較的低価の準完成品培地または完成品幹細胞培養培地と一定の割合で混合した培地を開発して、前記混合培地を利用して、間葉系幹細胞を培養した結果、幹細胞の培養効率が増加することを確認して、本発明の完成に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高い増殖率を持ちながら分化能を維持できる経済的な幹細胞培養用培地組成物を提供するところにある。
本発明の他の目的は、前記培地組成物を利用した間葉系幹細胞の培養方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、DMEM、a−MEM、IMDM、F12およびDMEM/F12で構成された群から選択される培地とDefined Keratinocyte−SFMが混合された基本培地、L−アスコルビン酸2−リン酸、ウシ胎児血清、塩基性線維芽細胞成長因子(b−FGF)、インスリン、N−アセチル−L−システイン(N−acetyl−L−cysteine)、塩化カルシウム、およびヒドロコルチゾンを含有する間葉系の幹細胞培養のための培地組成物を提供する。
【0009】
本発明はまた、前記培地組成物で間葉系幹細胞を培養することを特徴とする間葉系幹細胞の培養方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】準完成培地であるDMEMとの混合培地で脂肪由来の間葉系幹細胞の形態変化を示したものである。
【
図2】準完成培地であるa−MEMとの混合培地で脂肪由来の間葉系幹細胞の形態変化を示したものである。
【
図3】準完成培地であるIMDMの混合培地で脂肪由来の間葉系幹細胞の形態変化を示したものである。
【
図4】準完成培地であるF12との混合培地で脂肪由来の間葉系幹細胞の形態変化を示したものである。
【
図5】準完成培地であるDMEM/F12との混合培地で脂肪由来の間葉系幹細胞の形態変化を示したものである。
【
図6】準完成培地であるDMEMとの混合培地で脂肪由来の間葉系幹細胞の細胞取得率を示したものである。
【
図7】準完成培地であるa−MEMとの混合培地で脂肪由来の間葉系幹細胞の細胞取得率を示したものである。
【
図8】準完成培地であるIMDMとの混合培地で脂肪由来の間葉系幹細胞の細胞取得率を示したものである。
【
図9】準完成培地であるF12との混合培地で脂肪由来の間葉系幹細胞の細胞取得率を示したものである。
【
図10】準完成培地であるDMEM/F12との混合培地で脂肪由来の間葉系幹細胞の細胞取得率を示したものである。
【
図11】準完成培地であるDMEMとの混合培地で脂肪由来の間葉系幹細胞の培養後、細胞の大きさの変化を示したものである。
【
図12】各混合培地における脂肪由来の間葉系幹細胞の細胞取得率をKSFM−P培地における細胞取得率に対して百分率で表示した結果を示したグラフである。
【
図13】混合培地で幹細胞の表面マーカーの発現を確認した結果を示したものである。
【
図14】混合培地で幹細胞の表面マーカーの発現を確認した結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
他の方式で定義されない限り、本明細書において使用されたあらゆる技術的・科学的用語は、本発明が属する技術分野に熟練した専門家によって通常理解されるものと同じ意味を有する。通常、本明細書において使用された命名法及び以下で詳述する實驗方法は、本技術分野において周知であり、しかも汎用されるものである。
【0012】
本発明では、従来の間葉系幹細胞培養に使用されてきたKSFM−P培地(大韓民国登録特許0679642号)と準完成品の形で比較的安価で購入可能なDMEM(Dulbeco’s Modified Eagle’s Medium)、IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)、a−MEM(Alpha Modification of Eagle’s Medium)、F12(Nutrient Mixture F12)およびDMEM/F12(Dulbecco’s Modified Eagle Medium:Nutrient Mixture F12)培地を混合した各培地に、5%FBSを添加した環境で脂肪由来の間葉系幹細胞を培養した時、幹細胞の特性変化がほとんどなく、効果的に細胞が増殖されながらも、細胞の大きさを一定に維持させることができることを確認した。
【0013】
従って、一観点において、本発明は、DMEM、a−MEM、IMDM、F12およびDMEM/F12で構成された群から選択される培地とDefined Keratinocyte−SFMが混合された基本培地、L−アスコルビン酸2−リン酸、ウシ胎児血清、塩基性線維芽細胞成長因子(b−FGF)、インスリン、N−アセチル−L−システイン(N−acetyl−L−cysteine)、塩化カルシウム、およびヒドロコルチゾンを含有する間葉系の幹細胞培養のための培地組成物に関する。
【0014】
本発明で用いる用語「幹細胞(stem cell)」とは、自己複製能力を有すると共に、二つ以上の細胞に分化する能力を有する細胞をいう。また、「成体幹細胞」は、発生過程が進んで胚芽の各臓器が形成される工程或いは成体工程に現れる幹細胞を意味する。
【0015】
本発明で用いられる用語「間葉系幹細胞」とは、ヒトまたは哺乳類の組織から分離した未分化幹細胞であり、多様な組織から由来してもよい。特に、臍帯由来間葉系幹細胞、臍帯血由来間葉系幹細胞、骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪由来間葉系幹細胞、筋肉由来間葉系幹細胞、神経由来間葉系幹細胞、皮膚由来間葉系幹細胞、羊膜由来間葉系幹細胞及び胎盤由来間葉系幹細胞であってもよく、各組織から幹細胞を分離する技術は当業界にすでに公示されている。
【0016】
本発明で用いられる用語「脂肪由来幹細胞」とは、脂肪組織から分離した未分化成体幹細胞であり、その分離方法は、例えば次のとおりである。即ち、脂肪吸入術から得られる生理食塩水に浮遊された脂肪含有懸濁液(suspension)を培養した後、フラスコなど培養容器に付着した幹細胞層をトリプシンで処理した後回収したり、スクレーパーで掻いて少量の生理食塩水に浮遊されるものを直接回収したりする方法等を介して脂肪由来間葉系幹細胞を分離することができる。
【0017】
本発明において、前記培地は、0.05〜1mMのアスコルビン酸2−リン酸、2〜20%ウシ胎児血清、10〜1ng/mlの塩基性線維芽細胞成長因子(b−FGF)、0.1〜100μg/mlのインスリン、0.2〜20mMのN−アセチル−L−システイン(N−acetyl−L−cysteine)、0.01〜1mMの塩化カルシウムおよび5ng/ml〜1μg/mlのヒドロコルチゾンを含有することを特徴とする。
【0018】
本発明において、前記準完成培地DMEM(Dulbeco’s Modified Eagle’s Medium)、IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)、a−MEM(Alpha Modification of Eagle’s Medium)、F12(Nutrient Mixture F12)およびDMEM/F12(Dulbecco’s Modified Eagle Medium:Nutrient Mixture F12)培地とDefined Keratinocyte−SFM培地の混合比は、1:0.1〜10であることが好ましく、1:0.25〜3であることがより好ましい。
【0019】
本発明の一態様では、準完成培地DMEM、IMDM、a−MEM、F12およびDMEM/F12培地とKSFM−P培地を1:0.5、1:1、1:2、1:3および1:4で混合した混合培地を使用した時、KSFM−P単独培地を使用して培養した場合と、類似の細胞形態が得られ、KSFM−P単独培地を使用した時より顕著に優れた細胞取得率を示した。
【0020】
他の観点において、本発明は、前記培地組成物で間葉系幹細胞を培養することを特徴とする間葉系幹細胞の培養方法に関する。
【0021】
本発明において、前記間葉系幹細胞は、ヒト脂肪由来であることを特徴とする。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例を挙げて詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当業者において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0023】
実施例1:ヒト脂肪組織由来の間葉系幹細胞の分離
脂肪吸引術(Liposuction)によって腹部の脂肪から得られたヒト脂肪組織を分離して、PBSで洗浄した。組織を細かく切った後、collagenase type1(1mg/ml)を添加したDMEM mediaを利用して37℃で2時間digestionした。PBSで洗浄後、1000rpmで5分間遠心分離した。上澄み液は、suctionして、底に残ったペレットはPBSで洗浄した後、1000rpmで5分間遠心分離した。100μm meshでフィルタリングしてdebrisを除去した後、PBSで洗浄した後、DMEM(10%FBS、2mM NAC、0.2mM ascorbic acid)培地で培養した。
【0024】
一晩経過した後付着されていない細胞は、PBSで洗浄して、5%FBS、2mM NAC、0.2mM ascorbic acid、0.09mM calcium、5ng/ml rEGF、5μg/ml インスリンおよび74ng/ml Hydrocortisoneを含有したKeratinocyte−SFM mediaを2日ごとに交換しながら継代培養して4継代の脂肪組織由来多分化能の間葉系幹細胞を準備した。
【0025】
実施例2:混合培地におけるヒト脂肪組織由来の間葉系幹細胞の培養
KSFM−P(表1)と準完成培地DMEM(Dulbeco’s Modified Eagle’s Medium)、IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium、Gibco、BRL)、a−MEM(Alpha Modification of Eagle’s Medium、Gibco、BRL)、F12(Nutrient Mixture F12、Gibco、BRL)およびDMEM/F12(Dulbecco’s Modified Eagle Medium:Nutrient Mixture F12、Gibco、BRL)培地単独または混合された培地で培養して、幹細胞の付着能、密度、形状、および取得率などを確認した。
【0026】
【表1】
【0027】
(1)準完成培地としてDMEMを使用した場合
1.KSFM−P(10%FBS)
2.DMEM(10%FBS)
3.DMEM(10%FBS)+KSFM−P(10%FBS);混合比率1:1
4.DMEM(10%FBS)+KSFM−P(10%FBS);混合比率1:2
5.DMEM(10%FBS)+KSFM−P(10%FBS);混合比率1:3
6.DMEM(10%FBS)+KSFM−P(10%FBS);混合比率1:4
7.DMEM(10%FBS)+KSFM−P(10%FBS);混合比率2:1
P4の脂肪由来の間葉系幹細胞1x10
4cells/wellを前記各培地が入っている6−well plateに接種、合計5日間培養し、培養2日と5日にわたって、各々幹細胞のmorphologyを測定した。培養5日後、培養された幹細胞をDPBSを使用して洗浄した後、TriPLE溶液200μlを添加して、37℃インキュベーターで5分間反応して細胞を脱着した。各wellに800μlのDMEM(10%FBS)を添加してTriPLE溶液を中和させた後、滅菌された1.5ml EP tubeに移し入れた後、800rpmで3分間遠心分離した。遠心分離後、上澄み液を除去し、500mlのDPBSを添加して分離された細胞を再浮遊させた。10μlの細胞が浮遊されたDPBSと10μlのtrypan blueを混合した後、細胞数、生存率、細胞の大きさを測定した。
【0028】
(2)準完成培地としてa−MEM、IMDM、F12とDMEM/F12を使用した場合
1.KSFM−P(5%FBS)
2.準完成培地(5%FBS)
3.準完成培地(5%FBS)+KSFM−P(5%FBS);混合比率1:1
4.準完成培地(5%FBS)+KSFM−P(5%FBS);混合比率1:2
5.準完成培地(5%FBS)+KSFM−P(5%FBS);混合比率1:3
6.準完成培地(5%FBS)+KSFM−P(5%FBS);混合比率1:4
7.準完成培地(5%FBS)+KSFM−P(5%FBS);混合比率2:1
P4の脂肪由来の間葉系幹細胞3x10
5cells/wellを前記各培地が入っているT75 plateに接種、90%densityを示すまで培養し、各々幹細胞のmorphologyを測定した。培養5日後、培養された幹細胞をDPBSを使用して洗浄した後、TriPLE溶液200μlを添加し、37℃インキュベーターで5分間反応して細胞を脱着した。各wellに800μlのDMEM(10%FBS)を添加してTriPLE溶液を中和させた後、滅菌された1.5ml EP tubeに移し入れた後、800rpmで3分間遠心分離した。遠心分離後、上澄み液を除去し、500mlのDPBSを添加して分離された細胞を再浮遊させた。10μlの細胞が浮遊されたDPBSと10μlのtrypan blueを混合した後、細胞数、生存率、細胞の大きさを測定した。
【0029】
(1)幹細胞の形態(morphology)
各培地で培養中の細胞の形態変化を培養中に撮影して観察した。その結果、
図1に示すように、細胞の初期付着能(培養2日)は、KSFM−PやDMEM培地に比べて二つの培養培地が混合されたグループ(グループ3、4)で優れることが確認されて、
図2〜5に示すように、細胞の増殖能は、KSFM−Pや各準完成培地に比べて二つの培養培地が混合されたグループ(グループ3〜7)で優れることが確認された。
【0030】
細胞の形態は、各準完成培地で培養した細胞が、他のグループの培地で培養した細胞に比べて細胞の大きさが比較的大きく、長くなる形で現れ、その他のグループでは、KSFM−P培地で培養された細胞と類似してに確認された。一方、KSFM−Pや各準完成培地単独培地で培養した場合に比べて、混合培地で培養した場合、細胞の密集度が大幅に増加するとの事実を確認した。したがって、KSFM−Pと準完成培地が混合された混合培地が細胞の大きさと生長により効果的であることを確認した。
【0031】
(2)幹細胞の取得率(number)と細胞の大きさ(size)
脂肪由来の間葉系幹細胞を各培地で5日間培養した後、TriPLE溶液を利用して、幹細胞を収集し、その数をtrypan blueを利用した手法で測定した。
培養した脂肪由来幹細胞の大きさは、幹細胞を収得した後、Luna
TM automated cell counter(Logos Biosystems,Inc.USA)を使用して、細胞の平均大きさを設定した。
その結果を表2〜4と
図11に示した。
【0032】
その結果、表2〜4に示すように、幹細胞の最適条件の培地であるKSFM−P培地における細胞の取得率は、準完成培地に比べて約2倍増加したことが示され、これはKSFM−P培地が幹細胞培養において、準完成培地に比べて適合することを確認することができる。
これと共に、KSFM−P培地と準完成培地を一定の割合で混合した培養培地で幹細胞を培養した結果、KSFM−P培地で回収された細胞数よりも2〜3倍程度大幅に増加した細胞取得率を示すとの事実を確認した。
【0033】
また、KSFM−P培地と、各混合培地の幹細胞増殖能を比較した時、準完成培地であるIMDM培地を混合した時に、他の培地で培養した幹細胞よりもはるかに高い細胞収得率を示すことが確認された。
したがって、KSFM−P培地と準完成培地を混合することにより、細胞の成長に必要な培養条件がKSFM−P培地単独より効果的な結果を示すことが分かる。
その結果、表2〜3に示すように、各培養培地で培養された幹細胞の大きさには大きな差がなく、15〜17μm程度の平均を示した。つまり、各培養培地は、目視する細胞の性状とは異なるように取得した時の細胞の大きさに大きな影響を及ぼさないことを知ることができた。
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
(3)幹細胞の表面マーカー(surface marker)の発現
脂肪由来の間葉系幹細胞を各培地で5日間培養した後、TriPLE溶液を利用して幹細胞を収集した後、各表面マーカー抗体(negative marker、CD31、CD34、CD45;positive marker、CD90、CD105、CD166)を利用して染色した。表面抗体は、FITC conjugated二次抗体で標識した後、FACs機器を使用して、表面抗体を発現する細胞の分布を測定した。
【0038】
その結果、
図13及び
図14に示すように、KSFM−P培地で培養した幹細胞が示す幹細胞特異的な表面マーカーを発現する幹細胞の分布は、negative markerであるCD31、CD34、CD45は、ほとんどの場合0.5%以下の発現分布を示したのに対して、幹細胞positive markerであるCD90、CD105、CD166の発現分布はほとんどの場合99%以上示されることが確認された。
【0039】
また、各混合条件(代表例として1:2の混合)でも、KSFM−P培地で培養した幹細胞と類似するように、幹細胞特異的な表面マーカーを発現する幹細胞の分布がnegative markerであるCD31、CD34、CD45は、0.5%以下と確認され、positive markerであるCD90、CD105、CD166は、またほとんどの場合99%以上の発現分布を示すことが確認された。すなわち、各混合培地における培養条件が、幹細胞の特異的な表面マーカーの発現には全く影響を与えず、幹細胞の分化や特性には影響を及ぼさないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によると、間葉系幹細胞の分化能と増殖能を向上させることができ、従来の培養方法よりも安価で中葉幹細胞の培養が可能であり、それと同時に幹細胞性を維持して、間葉系幹細胞を利用した細胞治療剤をより経済的に産生することができる。
【手続補正書】
【提出日】2017年6月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本培地、L−アスコルビン酸2−リン酸、ウシ胎児血清、塩基性線維芽細胞成長因子(b−FGF)、インスリン、N−アセチル−L−システイン(N−acetyl−L−cysteine)、塩化カルシウム、およびヒドロコルチゾンを含有し、前記基本培地が、DMEM(Dulbeco’s Modified Eagle’s Medium)、α−MEM(Alpha Modification of Eagle’s Medium)、IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)、F12(Nutrient Mixture F−12)およびDMEM/F12(Dulbecco’s Modified Eagle Medium:Nutrient Mixture F−12)で構成された群から選択される培地と、Defined Keratinocyte−SFMとの混合物である、間葉系幹細胞培養のための培地組成物。
【請求項2】
前記培地は、0.05〜1mMのアスコルビン酸2−リン酸、2〜20%ウシ胎児血清、10〜1ng/mlの塩基性線維芽細胞成長因子(b−FGF)、0.1〜100μg/mlのインスリン、0.2〜20mMのN−アセチル−L−システイン(N−acetyl−L−cysteine)、0.01〜1mMの塩化カルシウムおよび5ng/ml〜1μg/mlのヒドロコルチゾンを含有することを特徴とする請求項1に記載の培地組成物。
【請求項3】
DMEM、α−MEM、IMDM、F12およびDMEM/F12で構成された群から選択される培地とDefined Keratinocyte−SFMの混合比は、1:0.1〜10であることを特徴とする請求項1に記載の培地組成物。
【請求項4】
前記混合比は、1:0.25〜3であることを特徴とする請求項3に記載の培地組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の培地組成物で間葉系幹細胞を培養する工程を含むことを特徴とする間葉系幹細胞の培養方法。
【請求項6】
前記間葉系幹細胞は、ヒト脂肪由来であることを特徴とする請求項5に記載の間葉系幹細胞の培養方法。
【国際調査報告】