(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-532977(P2017-532977A)
(43)【公表日】2017年11月9日
(54)【発明の名称】微生物の決定のための改善された方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/68 20060101AFI20171013BHJP
【FI】
C12Q1/68 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-524000(P2017-524000)
(86)(22)【出願日】2015年10月27日
(85)【翻訳文提出日】2017年6月1日
(86)【国際出願番号】IB2015058278
(87)【国際公開番号】WO2016071805
(87)【国際公開日】20160512
(31)【優先権主張番号】1451333-7
(32)【優先日】2014年11月7日
(33)【優先権主張国】SE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パルッティ − ペリネン、キルシ
(72)【発明者】
【氏名】レセネン、ヤリ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルメレ、キエロ
(72)【発明者】
【氏名】ケットゥネン、アニュ
(72)【発明者】
【氏名】リーヒネン、カッレ − ユハニ
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA20
4B063QQ06
4B063QQ07
4B063QQ42
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4B063QS34
(57)【要約】
本発明は、パルプ製紙産業内でセルロースを含む材料中の微生物含有量の決定に関する。セルロースを含む材料は、酵素的に前処理され、微生物は、PCRに基づく技術を使用して決定される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含むパルプ製紙業界内でセルロースを含む材料中の微生物含有量の決定のための方法:
(a)セルロースを含む材料のサンプルの懸濁液を提供するステップ;および
(b)懸濁液を、セルロース活性を有する1つ以上の酵素調製物で処理するステップ;および
(c)酵素処理懸濁液から微生物を分離するステップ;および
(d)分離された微生物から核酸を単離するステップ;および
(e)単離された核酸についてPCR分析を実施するステップ、
ここで、PCR結果は、微生物含有量を示す。
【請求項2】
懸濁液は、溶液でサンプルを懸濁することによって提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
セルラーゼ活性は、セルラーゼ活性の混合物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
セルラーゼ活性は、少なくとも1つのエンドグルカナーゼ活性である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
酵素調製物は、ヘミセルラーゼ活性(複数可)をさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
微生物が、フィルターバッグ遠心分離を使用して懸濁液から分離される、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
PCRのためのプライマーは、細菌または他の微生物のための広範囲のプライマーである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
PCRのためのプライマーは、微生物の特定の種または属に特異的である、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
セルロースを含む材料は、消費者用ボード、好ましくは食品産業のためのボードである、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
微生物は、細菌に属する、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記細菌は、バチルス(Bacillus)種を表す、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
微生物は、真菌またはカビである、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
細胞が、プロピジウムモノアジドで処理される、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
PCRを使用して微生物の決定前に、パルプ製紙業界内でセルロースを含む材料の前処理におけるセルラーゼの使用。
【請求項15】
紙またはード材料は、微生物の定量前にエンドグルカナーゼ酵素で前処理される、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプ製紙業界内でセルロースを含む材料中の微生物含有量の決定のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙およびボードは、産業の多くの分野で使用される重要な包装材料である。紙またはボードを包装することは、封入された物(複数可)に物理的または化学的保護を提供することができ;それらはまた、例えば、情報を提供し、物のマーケティングおよび部分制御を強化する。紙およびボードは、包装を含む多数の使用において、食品産業において、長い歴史も有する。包装材料として、紙は、しばしば、食品と直接接触する。紙およびボード容器は、乾燥食品、液体および冷凍食品に使用される。紙ラッピングは、ファストフードおよびキャンディ、医薬品包装、たばこ包装、高級包装および高級グラフィック製品のために一般的に使用される。包装は、環境の危険因子の作用に対して内容を保護し、よって、包装内容物の有効寿命を延ばす。消費者包装ボード製品の衛生要件は、非常に高い。
【0003】
紙およびボードは、通常、主にセルロース繊維、炭酸カルシウム、デンプンおよびヘミセルロースからなる。全てこれらは、天然成分であり、微生物を汚染するための増殖培地として役立つことができる。栄養素とデンプンに高含有量を有する水の循環は、微生物感染の共通起点である。
【0004】
伝統的に、物質の微生物純度は、分析されるべき材料または表面のサンプルの培養を必要とする微生物学的方法を使用することによって評価されている。組成および培養条件(温度、時間、培地)は、本発明の方法の精度に影響を与える。定量分析のためのサンプルは、細胞によって形成された単一のコロニーを数えることができる程度に希釈されなければならない。調査したサンプルに、細胞の数十または最大で数百の細胞が存在し得る。平行サンプルでコロニー数は、大きく変動し得、その結果、再現性は悪い。したがって、精度または信頼性が低い。また、微生物法は、典型的には、労働集約的で、時間がかかり、よって、紙およびボードパッケージの純度を追跡(モニタリング)するのに最適ではない。
【0005】
紙シートを含む製紙プロセスにおいて微生物を同定する方法に基づくポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、例えば、米国特許第8613837号および米国特許第2013189152号から公知である。
【0006】
本発明の方法は、労働集約的であるので、時間がかかり、それらの正確性と感度が満足できるものではなく、紙およびボード材料の微生物学的純度を決定する改善された方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、パルプ紙産業内でセルロースを含む材料において、微生物を汚染する決定のための改善された方法を提供することである。この目的は、以下に記載され請求される本発明によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面は、パルプ製紙産業内でセルロースを含む材料中の微生物含有量の決定のための方法である。前記方法の特徴は、請求項1の特徴部分に記載される。
【0009】
本発明の第2の側面は、定量PCRを使用して微生物の決定前にパルプ製紙産業内でセルロースを含む材料の前処理におけるセルラーゼの使用である。
【0010】
本発明の方法は、パルプ製紙産業内のセルロ−スを含む材料および消費者包装材料、特に食品包装材料など、得られる紙およびボード材料の微生物学的純度の単純でかつ正確な追跡を可能にする。これにより、可能な汚染が早期の段階で検出されることができるので、包装材料の衛生性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、緩衝液中で懸濁された接種されたボード中の細菌のqPCR分析の比較を示し、微生物の決定のために圧縮ろ過および伝統的な培養に供した。
【0012】
【
図2】
図2は、緩衝液中で懸濁された接種されたボード中の細菌のqPCR分析の比較を示し、微生物の決定のためにバッグ遠心分離ろ過および伝統的な培養に供した。
【0013】
【
図3】
図3aおよび3bは、2つの異なる紙またはボード中の微生物の決定において、本発明に係る方法と伝統的培養に基づく方法の間の比較を示す。
【0014】
【
図4】
図4は、第1に酵素前処理なしのqPCR、第2に本発明に係るおよび第3に伝統的培養に基づく方法を使用するボード中の微生物の決定のための方法の比較を示す。
【0015】
【
図5】
図5は、伝統的な培養、酵素前処理なしのqPCR、前処理として圧縮ろ過、前処理としてろ過バッグ遠心分離および2つの異なる混合商用セルロース調製物を使用する本発明に係る方法を使用する微生物決定の比較を使用する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、驚くべきことに、パルプ製紙産業内のセルロースを含む材料の微生物学的純度のPCRに基づく決定は、サンプルの酵素前処理によって著しく増強されることができることを見出した。酵素前処理は、微生物を汚染するレベルが非常に低い場合にも、PCRを使用する定量的検出を可能にする。
【0017】
本発明によると、パルプ製紙業界内でセルロースを含む材料中の微生物含有量の決定は、以下のステップを含む:
(a)セルロースを含む材料のサンプルの懸濁液を提供するステップ;および
(b)ステップ(a)の懸濁液を、セルラーゼ活性を有する1つ以上の酵素調製物(複数可)で処理するステップ;および
(c)ステップ(b)の酵素処理された懸濁液から微生物を分離するステップ;および
(d)ステップ(c)の分離された微生物から核酸を単離するステップ;および
(e)ステップ(d)の単離された核酸についてPCR分析を実施するステップ、
ここで、PCR結果は、サンプルの微生物含有量を示す。
【0018】
当該分野で公知のように、陽性PCR結果は、特定の核酸の存在を示し、よって、特定の微生物の存在を示すのに対し、qPCRは、微生物レベルの決定のために使用される。
【0019】
これに関連して、「微生物含有量」は、サンプルの定性的(例えば、微生物株を同定する)および定量的(例えば、細菌のコロニー形成単位の量)微生物含有量の両方を網羅すると理解されるべきである。サンプル材料中の定性的および定量的微生物含有量の決定は、独立してまたは一緒に行われることができる。定性的含有量は、特定の属または種に特異的なプライマーを使用して測定されることができる。PCR生成物の存在は、微生物の存在を示し、ゲル電気泳動または好ましくはqPCR装置の分析を使用して決定されることができる。定量的決定は、必要な場合、qPCR装置および既知の対照を使用して実施される。広範囲のプライマーまたは特異的プライマーのいずれかを使用することができる。
【0020】
本発明によると、語句「パルプ製紙産業内でセルロースを含む材料」は、原材料、製造プロセス中のセルロース系材料および最終生成物を含むパルプ製紙産業内で材料を含むセルロースを意味する。セルロース(セルロース系材料)を含むそのような材料の例は、これらに限定されないが、木材チップ、機械パルプ、および様々な紙およびボードである。パルプ、様々な紙およびボードが、好ましい材料である。消費者ボードが、特に好ましく、食品および液体のための包装ボードは、セルロースを含む最も好ましい材料である。
【0021】
これに関連して、用語「消費者ボード」は、一般的な包装ボード、食品および非食品包装ボード、液体包装ボード、医薬品包装ボード、たばこボードおよびグラフィックボードを含む。微生物学的純度を試験される紙またはボードは、単層または複数層並びに被覆または非被覆であることができる。紙またはボードは、セルロース系繊維および任意に、ヘミセルロースおよび任意に他の成分および/またはコーティングの各種量を含む。ヘミセルロース含有量またはコーティグは、酵素調製物の最適の組成に対する効果を有することができる。好ましい紙およびボード材料は、消費者包装ボード、特に液体および食品材料のための包装ボードである。
【0022】
懸濁液は、製造プロセスの水相から直接得ることができる。しかしながら、懸濁液がプロセスまたは水性生成物に由来する場合、溶液は、以下のステップで酵素調製物の活性に適していることを保証されなければならない。必要な場合、緩衝液は、変更されなければならない。
【0023】
セルロースを含む潜在的に汚染された材料のサンプルは、溶液、典型的には、使用される酵素調製物の活性に適した緩衝溶液中に懸濁され得る。紙またはボード材料は、例えば、はさみを使用して、懸濁ステップの前にスライスされることができる。通常、紙またはボードの材料を懸濁するステップは、機械的粉砕および/または例えば、ボルテックスによって強化される。サンプルを懸濁する好ましい方法の1つの例は、乳製品の検査のための標準的方法、第17版、APHA刊行物に見出されることができる。パルプ化プロセスに由来するサンプルは、機械的粉砕なしで酵素処理に供され得る。しかしながら、いくつかの場合において、懸濁液緩衝液は、以下のステップで酵素活性の必要性を満たすために変更されなければならない。
【0024】
その後、好ましくは、均質化された懸濁液の重量測定量を、1つ以上のセルロースおよび任意にヘミセルラーゼ活性を含む酵素調製物と接触する。典型的には、酵素調製物は、懸濁液に添加される。
【0025】
懸濁液は、微生物および繊維性材料の分離を促進するために、セルロース分解酵素で処理される。本発明に係る酵素調製物は、セルラーゼ活性を有する少なくとも1つの酵素を含む。任意に、酵素調製物は、ヘミセルラーゼ活性をさらに含む。酵素調製物はまた、セルラーゼ活性および任意に1つ以上のヘミセルラーゼ活性を有する酵素の混合物であることができる。いくつかのセルラーゼ活性を含む酵素調製物は、好ましくは、1つ以上のエンドグルカナーゼ活性で富化される。セルラーゼ酵素は、エンドグルカナーゼ(EC 3.2.1.4)またはエキソ活性セロビオヒドロラーゼ(EC 3.2.1.91)などなどのエンドセルラーゼであることができ、これらに制限されないが、それらはまた、他のセルロース分解および/またはヘミセルロース分解活性またはそれらの任意の混合物を有することができる。エンドグルカナーゼが好ましい。cel5ファミリーのエンドグルカナーゼ活性は、特に有用である。ヘミセルラーゼは、例えば、キシラナーゼ(EC 3.2.1.8)またはマンナナーゼまたはそれらの任意の混合物であることができる。本発明で有用な市販の酵素混合物の例は、Ecostone L900 (AB Enzymes、フィンランド)であり、これは、cel5富化トリコデルマ(Trichoderma)セルラーゼ混合物である。
【0026】
酵素処理は、生きた微生物にとって穏やかであり、広範な機械的粉砕の必要性を減少させる。それは、紙またはボード基質中の微生物および繊維の分離を促進し、それにより、決定の感度および正確さが高められる。
【0027】
好ましくは、酵素調製物は、セルロースを含む材料中の微生物および繊維の適切な分離を確実にするために、わずかに過剰に投与される。例えば、酵素処理(上記ステップ(b)として定義される)pH、温度およびインキュベーション時間を含む条件は、酵素調製活性に適しているはずである。酵素処理はまた、浸軟の機械的方法よりも優れた再現性を示す。酵素処理の後、懸濁液は、例えば、ろ過バッグ遠心分離を使用してセルロース含有材料から微生物の分離を可能にする。
【0028】
適切に機能する製造プロセス、または適切に機能する製造工程を使用して得られる紙またはボードに由来するパルプ中の微生物学的不純物(微生物の量)の混入量は、典型的には、非常に低い。したがって、残りの繊維から微生物を分離する必要がある。原理的には、微生物を回収するための任意の既知の方法を使用することができるが、ろ過バッグ遠心分離が、最も好ましい。遠心分離機のろ過バッグは、生きた微生物を回収するだろうが、残りの残存繊維は、排出されるだろう。ろ過バッグの適切な細孔径は、当業者によって選択されることができ、例えば、50μmであり得る。
【0029】
その後、分離した細胞を、プロピジウムモノアジド(PMA)で処理することができる。PMAは、死細胞の膜を貫通し、核酸と反応し、PCRによって増幅することができないDNAを生じる。したがって、生細胞からのDNAのみを決定することができる。
【0030】
次に、分離された微生物の核酸が単離される。再度、任意の公知の方法が使用されることができる。適切なプロトコルの1つの例は、Rinttilaらに記載される。
【0031】
最後に、単離された核酸材料は、PCR分析、通常、定量PCR(qPCR)に導かれる。qPCRは、汚染微生物(複数可)の定量的および定性的決定の両方を可能にする。当業者は、例えば、総細菌判定のための適切なPCRプライマーを選択することができ;例えば、16S rDNA領域を増幅するためのプライマーは、総細菌含有量の決定に使用可能である。微生物の特定の属または種に特異的なプライマーを使用することも可能である(定性分析、任意に定量的結果も伴う)。非テンプレート対照および有効な融解曲線の前の閾値サイクルを超える増幅を有するサンプルは、微生物の存在を示す。定量的PCR結果は、微生物の既知の量/濃度を有する標準を使用して計算される。
【0032】
培養の伝統的に使用される方法と比較する場合、qPCRは、著しく速く、培養と同じくらい労働集約的ではない。本発明の方法はまた、非常に精度が高く、材料の微生物の純度における小さな変化の検出を可能にする。例えば、液体包装材料のグラム当たりの総細菌数が250コロニー形成単位(cfu/g)未満である場合、液体包装材料は、微生物学的に純粋であるとみなされる(乳製品検査のための方法、第17版、APHA出版物)。したがって、感度および低検出限界が、本発明の方法の有用性のために不可欠である。
【0033】
決定方法の改善された精度、特異性および使いやすさは、包装材料を使用する前に、製造現場での生成される材料の継続的な追跡および簡単な追跡または無作為試験を可能にする。したがって、本発明に係る方法は、消費者包装の安全性および衛生性を改善する。また、製造プロセスにおける微生物学的不純物は、プロセスおよび得られる生成物に有害である。微生物数の可能な増加の早期検出は、例えば、微生物沈殿物の形成を防止することをより容易にする。
【0034】
本明細書に記載の方法は、微生物の任意のタイプの決定に適している。本発明の方法は、細菌、特にバチルス(Bacillus)属およびバチルス(Bacillus)D属内の種の決定に特に適する。汚染菌およびカビを検出することも可能である。
【0035】
定量的PCRを使用する微生物の決定前に、パルプ製紙産業内でセルロースを含む材料の前処理におけるセルラーゼ酵素の使用はまた、本発明の範囲内である。セルラーゼ酵素は、単独で、または他のセルラーゼ酵素および/または1つ以上のヘミセルラーゼ酵素(複数可)と組み合わせて使用されることができる。混合セルラーゼ調製物およびいくつかの加水分解活性を有するいわゆる全セルラーゼ調製物、並びに1つのみまたは2つの主な活性を有するセルラーゼは、本発明の範囲内で使用可能である。当該分野で公知のように、セルラーゼのタイプは、繊維性材料のタイプに依存する。最も好ましい使用において、紙またはボード材料は、微生物の定量的決定前に、エンドグルカナーゼ酵素で前処理される。
【0036】
本発明は、以下の非限定的な例によって例示される。上記の説明および実施例に示された態様は、例示的目的だけのためであり、様々な変更および修正は、本発明の範囲内で可能であることが理解されるべきである。
【実施例】
【0037】
実施例1:包装ボードの接種
バチルス(Bacillus)D群に属する細菌株を、+37℃で一晩TSB(トリプシン大豆ブロス)中で増殖させた。生存能力を保証するために、細菌を、指数増殖期の間に採取した。一次増殖ブロスから、5mlの体積を、500mlの新鮮なブロスに移し、+37℃で6時間インキュベートした。細菌細胞を、10×50mlファルコンチューブに分け、遠心分離により回収した。全ての10個のペレットを、5mlの滅菌クエン酸緩衝液(0.05M、pH5.0)中に再懸濁し、一緒に合わせて、200mlまで充填した(「細菌ストック」)。細菌ストックを、Lowについては20μlで、Mid−Low接種材料については200μlで、ボード−緩衝液混合物に添加した。
【0038】
包装ボードは、バチルス(Bacillus)D群に属するバチルス(Bacillus)株の2つのレベル(LowおよびMid−Low)を用いて接種された。培養は、FDA標準プロトコル(乳製品検査のための標準的方法、第17版、APHA刊行物)に従って実施された。上記で説明したように、バチルス(Bacillus)増殖の連続希釈は、接種材料に使用された;Highレベルは、1:10希釈であり、以下のMid−High、Mid−LowおよびLowをそれぞれ希釈して、低レベル接種物を1:100000に希釈した。
【0039】
実施例2 プロピジウムモノアジド処理
プロピジウムモノアジド処理のために、細菌細胞を含むペレットを0.9%NaClの1980μlに手動ボルテックスで溶解した。得られた液体を、2mlのエッペンドルフチューブに移し、20μlのPMA(プロピジウムモノアジド)反応溶液を加えた。チューブを手で振ってサンプルを混合し、次に振盪せずに、暗所で、室温で、5分間インキュベートした。インキュベーション後、チューブを逆さにして、サンプルをホモジナイズし、500Wランプ下で冷たい要素の上に横に置き、5分間照射した。その後、サンプルを、10分間、+4℃で、20000×gで遠心分離し(Eppendorf Centrifuge 5804 R)、上清を流し捨てた。遠心分離後、ペレットを、20分間、+45℃で、真空デシケーターで乾燥し、1.5〜2時間、+55℃で、45μlのTris−EDTA緩衝液中に溶解した。
【0040】
実施例3:DNA抽出およびqPCR
繊維性材料から単離された細胞のDNA抽出は、Rinttilaら(2004年)によって記載されるように、本質的に実施された。要するに、溶解試薬を、ガラスビーズを有するチューブに添加し、FastPrepビースビータを、1分間、6.5m/sの速度で3回使用した。チューブを、20分間、65℃でインキュベートし、サーモミキサーで2分ごとにボルテックスした。800μlのフェノール−クロロホルム−イソアミルアルコール(24:23:1)を添加し、混合し、5分間、10000gで遠心分離した。600μlの液相を、新しいチューブに移し、クロロホルム:イソアミルアルコール(24:1)で抽出した。270μlの100%イソプロパノールを使用して、DNAを沈殿させ、液体を、15分間、+4℃で、20000gの遠心分離後に除去した。ペレットを、1ml(−20℃)70%エタノールで2回洗浄し、5分間、+4℃で、20000gで遠心分離した。遠心分離後、ペレットを、20分間、+45℃で、真空デシケーター中で乾燥させ、1.5〜2時間、+55℃で、45μlのTris−EDTA緩衝液中に溶解した。
【0041】
DNAサンプルを、qPCR分析のために、1:2、1:4および1:8に希釈した。Nadkarniら、2002年に記載されるような広範なプライマーを、60℃のアニーリング温度で40サイクルの間、使用した。サンプル結果を、10倍希釈標準に基づいて標準曲線によって計算した。
【0042】
実施例4:圧縮ろ過
包装ボードを、バチルス(Bacillus)D群の株の2つのレベルで接種した。実施例1で記載されるようなLowおよびMid−Lowを、Waringブレンダーで緩衝液中にホモジナイズし、圧縮ろ液で圧縮して固相および液相を分離した。圧縮ろ過から得られたろ液からのqPCR結果は、それぞれ、LowおよびMid−Low接種レベルについての培養結果の21および11%にすぎなかった、
図1参照。培養よりも圧縮ろ液の方がはるかに低い結果は、圧縮ろ過が、包装ボードからの微生物のための十分な分離方法でないことを示す。
【0043】
実施例5:ろ過バッグ遠心分離は、微生物に対する不適切な分離方法である。
包装ボード(10g)を、ボードサンプルの縁を除いて、滅菌はさみで小片に切断した。得られた小片を、300mlのクエン酸緩衝液(0.05M、pH5)と混合し、Waringブレンダー中でホモジナイズした。ホモジナイズした浸漬湿潤包装ボード(35±0.1g)の既知の重量測定量を、ろ過バッグを含む50mlファルコンチューブ(繊維およびインビトロ研究のためのF57ろ過バッグ、Ankom Technology)に移し、遠心ろ過した。理想的には、不溶性マトリックスは、ろ過バッグ中に捕捉され、細菌は、ペレット内に沈降するだろう。それにもかかわらず、qPCRの結果は、培養結果の27%を示し、唯一のろ過バッグ遠心分離は、溶液中に懸濁された包装ボードからの微生物に対する適切な分離方法ではないことを示す。qPCRおよび培養を使用する結果を、
図2に示す。
【0044】
実施例6:酵素処理
セルロース分解活性を含む4つの酵素調製物(いわゆる「全セルラーゼ」または「混合セルラーゼ」)を、緩衝液中に懸濁したボードサンプルを分解するそれらの能力に関して試験した。試験された酵素は、Ecostone L900 (AB Enzymes)、Optimase(登録商標) CX40L、Optimase(登録商標) CX60LおよびMultifect(Genencor)であった。製造業者の発表および他の公的に利用可能な情報による主な活性は、次の通りである:Ecostone L900は、cel5富化Trichodermaセルラーゼ調製物である。OPTIMASE(登録商標)CX 40L酵素調製物は、主な酵素活性としてセルラーゼおよびヘミセルラーゼを含む。Optimase CX60Lは、複数の酵素活性を含むが、カルボキシメチルセルロース(CMC)に対するその活性に基づいて標準化される。キシラーゼは、Multifectに対する主な活性である。
【0045】
酵素活性が、ボード基質の分解を制限しないことを保証するために、ボード質量に対する酵素体積の比が、5〜15×10
−5の範囲である以下の一連の試験設定(表1参照)を行った。ボード当たりより多くの酵素が提供されたにもかかわらず、効率は変化しなかった。これは、既に最小の体積に非常に多くの酵素が含まれており、酵素活性はボードの破壊を制限しなかったことを示す。
【0046】
【表1】
【0047】
全ての酵素を、最大体積として適用したので、酵素活性は、ボード基質の分解を制限しなかっただろう。インキュベーション温度、pHおよび他の条件は、製造業者の推奨に従って、各酵素の最適範囲に調整した。ボード基質を分解する酵素の能力を目視で評価し、主な活性としてセルロースとの2つの酵素は、他の2つより優れており、セルラーゼは、ヘミセルラーゼよりも好ましいことを示す。
【0048】
実施例7:qPCRを用いたスパイク包装ボードの分析
2つの異なる包装ボードは、実施例1で記載されるように、バチルス(Bacillus)D群の株の4つのレベル(Low、Mid−Low、Mid−HighおよびHigh)で接種された。培養を、FDA標準プロトコル(乳製品の検査のための標準的方法、第17版、APHA刊行物)に従って実施した。qPCR分析のために、包装ボード(10g)を、ボードサンプルの縁を除いて滅菌はさみで小片に切断した。得られた小片を、300mlのクエン酸緩衝液(0.05M、pH5)と混合し、Waringブレンダー中でホモジナイズした。ホモジナイズした浸漬湿潤包装ボード(35±0.1g)の既知の重量測定量を、貯蔵ボトルに移し、セルラーゼ酵素(AB Enzymes、Ecostone L900)を用いて40℃でインキュベーターシェーカー中でインキュベートした。サンプルを、ろ過バッグを含む50mlのファルコンチューブ中に移し、遠心ろ過した。不溶性マトリックスは、ろ過バッグ中に捕捉され、細菌は、ペレット中に沈殿した。生存細胞が測定されるべきサンプルを、溶解試薬が添加される前に、ペレット段階でプロピジウムモノアジドで処理した。
図3aおよび3bに示されるqPCR結果は、複製サンプルの間の優れた直線性および低い標準偏差を示した。それらはまた、培養結果と一致し、すなわち、良好な回収率および正確性を示した(それぞれ、90および97%)。実験は、接種なしで様々なボードを使用して数回繰り返された。酵素処理およびqPCRを使用して得られた結果は、それぞれの培養結果と一致した。内在性微生物の非常に低いレベルにより、統計学的に有意な細は観察できなかった。データは、示されない。
【0049】
実施例8:セルラーゼ前処理を用いたおよび用いない培養およびqPCRによる決定の比較
酵素前処理をDNA抽出およびqPCR分析前に適用しない場合、ボードサンプルを懸濁した後の培養は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応よりも高い微生物レベルを示した。しかしながら、DNA抽出およびqPCR分析前のセルロースでの前処理は、培養結果と良好に一致を示した。ろ過バッグ遠心分離を、qPCR前に微生物の分離のめに使用した。結果を、
図4に示す。
【0050】
実施例9:他の前処理と比較した酵素前処理
包装ボードサンプルの培養を、FDA標準プロトコル(乳製品の検査の標準的方法、第17版、APHA刊行物)に従って実施した。圧縮ろ過を、実施例1に記載したように実施し、実施例5に記載のろ過バッグ遠心分離を実施した。市販のEcostone L900を使用する酵素処理は、実施例7で記載のように実施した。
【0051】
セルラーゼ前処理サンプルは、培養に対するレベルを示したが(同等またはわずかに高い)、他の前処理(圧縮ろ過およびろ過バッグ遠心分離)および前処理なしのサンプルは、培養と比較してより低いレベルを示した。結果を
図5に示す。
【国際調査報告】