(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)の少なくとも1つのタンパク質構成要素、および少なくとも1つの細胞透過ペプチド(CPP)を含む組成物であって、RGENタンパク質構成要素とCPPとは、共有結合的に、または非共有結合的に互いに結合して、RGENタンパク質−CPP複合体を形成している組成物を開示する。RGENタンパク質−CPP複合体は、細胞の(i)細胞膜、または(ii)細胞壁および細胞膜を横断することができる。ある実施形態のRGENタンパク質−CPP複合体のRGENタンパク質構成要素は適切なRNA構成要素と結合して、特異的DNAターゲッティングが可能なRGENを提供することができる。さらに、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体の少なくとも1つのタンパク質構成要素、および少なくとも1つのCPPを含む組成物、RGENタンパク質を微生物細胞に輸送する方法、ならびにDNAをRGENでターゲッティングする方法を開示する。
前記RGENのタンパク質構成要素は、前記微生物細胞中の染色体またはエピソーム上の標的部位配列に相補的な配列を含む少なくとも1つのRNA構成要素と結合し、前記RGENは前記標的部位配列に結合し、場合によりDNA1本鎖または2本鎖を前記標的部位配列で切断することができる請求項1に記載の組成物。
前記RNA構成要素は、トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)に機能可能なように結合したCRISPR RNA(crRNA)を含むガイドRNA(gRNA)を含む請求項2に記載の組成物。
前記微生物細胞は、前記標的部位配列または前記標的部位配列近傍の配列と相同の少なくとも1つの配列を含むドナーポリヌクレオチドをさらに含み、かつ前記ドナーポリヌクレオチドは相同組み換えによって前記標的部位配列または前記標的部位配列近傍でインテグレートされる請求項14に記載の方法。
RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)のタンパク質構成要素、および少なくとも1つの細胞透過ペプチド(CPP)を含むRGENタンパク質−CPP融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、場合により、前記ヌクレオチド配列はプロモータ配列に機能可能なように結合されるポリヌクレオチド配列。
ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体の少なくとも1つのタンパク質構成要素と、少なくとも1つの細胞透過ペプチド(CPP)とを含む組成物であって、前記タンパク質組成物とCPPとは、共有結合的に、または非共有結合的に互いに結合して、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ−CPP複合体を形成しており、かつ前記ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ−CPP複合体は、微生物細胞の(i)細胞膜、または(ii)細胞壁および細胞膜を横断することができる組成物。
細胞のゲノムの標的部位を修飾する方法であって、ガイドポリヌクレオチド、細胞透過ペプチド(CPP)およびCasエンドヌクレアーゼを細胞に供給する工程を含み、前記ガイドポリヌクレオチド、CasエンドヌクレアーゼおよびCPPは、共有結合的に、または非共有結合的に互いに結合して、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ−CPPの複合体を形成しており、かつ前記ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ−CPP複合体は、微生物細胞の(i)細胞膜、または(ii)細胞壁および細胞膜を横断することができる方法。
【発明を実施するための形態】
【0033】
引用される全ての特許文献および非特許文献の開示は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0034】
本明細書中で用いられる用語「本発明」または「開示される本発明」は、限定することが意味されるのではなく、全般的に、特許請求の範囲において定義される、または本明細書中に記載されるあらゆる発明に当てはまる。これらの用語は、本明細書中で互換的に用いられる。
【0035】
本明細書中の用語「細胞」は、原核細胞または真核細胞などのあらゆる種類の細胞を指す。真核細胞は、核および他の膜で包まれた構造体(細胞小器官)を有し、一方、原核細胞は核を持たない。ある実施形態の細胞は、哺乳類または非哺乳類の細胞であり得る。本明細書中の非哺乳類細胞は、真核細胞であっても原核細胞であってもよい。例えば、本明細書中の非哺乳類細胞は、微生物細胞、または植物、昆虫、線虫、鳥類、両生類、爬虫類もしくは魚類などの非哺乳動物多細胞生物細胞を指し得る。
【0036】
本明細書中の微生物細胞は、例えば、真菌細胞(例えば、酵母細胞)、原核細胞、原生生物細胞(例えば、藻類細胞)、鞭毛虫細胞、黄色植物細胞、または卵菌細胞を指し得る。本明細書中の真核細胞は、例えば、細菌細胞または古細菌細胞を指し得る。真菌細胞(例えば、酵母細胞)、原生生物細胞(例えば、藻類細胞)、鞭毛虫細胞、黄色植物細胞、または卵菌細胞は、原核微生物細胞の例を示す。真核微生物細胞は、核および他の膜に包まれた構造体(細胞小器官)を有し、一方、原核細胞は核を持たない。
【0037】
本明細書中の用語「酵母」は、主に単細胞の形態で存在する真菌種を指す。酵母は、あるいは、「酵母細胞」とも呼ばれ得る。本明細書中の酵母は、例えば、従来型酵母および非従来型酵母のいずれかと見なし得る。
【0038】
本明細書中の用語「従来型酵母」(「モデル酵母」は、一般に、サッカロミケス(Saccharomyces)属酵母種またはシゾサッカロミケス(Schizosaccharomyces)属酵母種を指す。ある実施形態の従来型酵母は、非相同末端結合(NHEJ)により媒介される修復プロセスより、相同組み換え(HR)DNA修復プロセスを優先する酵母である。
【0039】
本明細書中の用語「非従来型酵母」は、サッカロミケス(Saccharomyces)属酵母種でもシゾサッカロミケス(Schizosaccharomyces)属酵母種でもないあらゆる酵母を指す。非従来型酵母は、Non−Conventional Yeasts in Genetics,Biochemistry and Biotechnology:Practical Protocols(K.Wolf,K.D.Breunig,G.Barth,Eds.,Springer−Verlag,Berlin,Germany,2003)、およびSpencer et al.(Appl.Microbiol.Biotechnol.58:147−156)に記載されており、これらの文献は参照によって本明細書に組み込まれる。ある実施形態の非従来型酵母は、さらに(あるいは)、HRによって媒介される修復プロセスより、NHEJ DNA修復プロセスを優先する酵母であり得る。当該ライン(HRよりNHEJを優先)に沿う非従来型酵母の定義が、Chen et al.(PLoS ONE 8:e57952)でさらに開示されており、この文献は参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書中で好ましい非従来型酵母は、ヤロウイア(Yarrowia)属のもの(例えば、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))である。
【0040】
本明細書中の用語「植物」は、全植物、植物器官、植物組織、植物細胞、種子、およびこれらの子孫を指す。植物細胞としては、限定はされないが、種子、懸濁培養物、胚、分裂組織領域、カルス組織、葉、根、新芽、配偶体、胞子体、花粉および小胞子由来の物細胞が挙げられる。植物部には、分化組織および未分化組織が含まれ、それらの組織としては、限定はされないが、根、茎、新芽、葉、花粉、種子、腫瘍組織、および様々な形態の細胞および培養物(例えば、単細胞、プロトプラスト、胚およびカルス組織)が挙げられる。植物組織は、植物であっても、植物の器官、組織、もしくは細胞培養物であってもよい。用語「植物器官」は、植物組織、または植物の形態的にも機能的にも独立した部分を構成する一群の組織を指す。用語「ゲノム」は、生物の各細胞、またはウイルスもしくは細胞小器官に存在する遺伝的材料(遺伝子および非コード配列)の構成要素全体;ならびに/あるいは1つの親から(ハプロイド)単位として受け継いだ一式の染色体を指す。「子孫」は、植物のその後の世代を含む。
【0041】
トランスジェニック植物としては、例えば、形質転換工程によって導入された異種ポリヌクレオチドをゲノム内に含む植物が挙げられる。異種ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが代々受け継がれるように、ゲノムに安定にインテグレートすることができる。ポリヌクレオチドは単独でゲノムに組み込まれてもよく、組み換えDNAコンストラクトの一部として組み込まれてもよい。トランスジェニック植物はまた、ゲノム内に複数の異種ポリヌクレオチドを含み得る。各異種ポリヌクレオチドは、トランスジェニック植物に異なる特性を付与してもよい。異種ポリヌクレオチドとしては、例えば、外来種を起源とする配列を挙げることができ、同種からの配列であれば、その天然形態を実質的に改変することができる。トランスジェニック植物材料としては、その遺伝子型を異種核酸を存在させることによって変化させたあらゆる細胞、細胞株、カルス、組織、植物部または植物((初期にそのように改変されたトランスジェニック体、および初期のトランスジェニック体から有性交配(sexual cross)または無性増殖によって作られたものを含む)を挙げることができる。従来の植物育種方法、外来ポリヌクレオチドが挿入されない本明細書に記載のゲノム編集手順、またはランダム交配、非組み換えウイルス感染、非組み換え細菌形質転換、非組み換え置換もしくは自然突然変異などの自然に発生する事象による植物ゲノム(染色体または染色体外の)の変化を、形質転換と見なすことは意図されていない。
【0042】
稔性植物体は、生存可能な雄性配偶子および雌性配偶子を産生する植物であり、自家稔性である。そのような自家稔性植物は、他の植物の配偶子や、それに含まれる遺伝的材料の貢献によらずに子孫植物を作ることができる。雄性不稔植物としては、生育可能な、または受精可能な雄性配偶子を産生しない植物が挙げられる。雌性不稔植物としては、生育可能な、または受精可能な雌性配偶子を産生しない植物が挙げられる。雄性不稔植物および雌性不稔植物はそれぞれ、雌性稔性および雄性捻性であり得ると認められている。さらに、雄性稔性(雌性捻性以外)植物は、雌性稔性植物と交配されると、成長可能な子孫を産生することができ、また、雌性稔性(雄性捻性以外)植物は、雄性稔性植物と交配されると、成長可能な子孫を産生することができと認められている。
【0043】
本明細書中の用語「RNA誘導型エンドヌクレアーゼ」(RGEN)は、少なくとも1つのCRISPR(クラスター化された、等間隔にスペーサが入った、短い回文リピート)関連(Cas)タンパク質、および少なくとも1つのRNA構成要素を含む複合体を指す。用語「RGENのタンパク質構成要素」および「RGENタンパク質構成要素」は、本明細書中で互換的に用いられ、RGENのエンドヌクレアーゼ構成要素であるCasタンパク質、またはその一部を形成するCasタンパク質を指す。ある実施形態のタンパク質構成要素は、完全エンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9)であり、そのようなタンパク質構成要素は、それに代えて、RGENの「エンドヌクレアーゼ構成要素」と呼ぶことができる。本明細書中のRGENは、通常、少なくとも1つのRNA構成要素と関連して与えられる、特定のDNAターゲティング活性を有する。
【0044】
簡潔に、RGENのRNA構成要素は、標的部位配列においてDNA配列と相補的である配列を含有する。この相補性に基づいて、RGENは、特定のDNA標的部位配列を特異的に認識し、かつ切断することができる。本明細書中でRGENは、4つの既知のCRISPR系(Horvath and Barrangou,Science 327:167−170)、例えばI型、II型、またはIII型CRISPR系のいずれかのCasタンパク質および適切なRNA構成要素を含んでよい。好ましい実施形態におけるRGENは、Cas9エンドヌクレアーゼ(CRISPR II系)および少なくとも1つのRNA構成要素(例えば、crRNAおよびtracrRNA、またはgRNA)を含む。
【0045】
用語「CRISPR」(クラスター化された、等間隔にスペーサが入った、短い回文リピート)は、例えば、外来DNAを破壊するために細菌細胞および古細菌細胞によって用いられる、クラスI、IIまたはIII DNA切断系の因子をコードする特定の遺伝子座を指す(Horvath and Barrangou,Science 327:167−170)。CRISPR系の構成要素は、本明細書中で異種の方法において、細胞におけるDNAターゲティングに利用される。
【0046】
用語「II型CRISPR系」および「II型CRISPR−Cas系」は、本明細書中で互換的に用いられ、Cas9エンドヌクレアーゼを、少なくとも1つのRNA構成要素と複合させて利用するDNA切断系を指す。例えば、Cas9は、CRISPR RNA(crRNA)およびトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)と複合させることができる。別の例において、Cas9は、ガイドRNAと複合させることができる。ゆえに、crRNA、tracrRNA、およびガイドRNAは、本明細書中で、RNA構成要素の非限定的な例である。
【0047】
用語CRISPR関連(「Cas」)エンドヌクレアーゼは、本明細書中で、Cas遺伝子によってコードされるCasタンパク質を指す。Casエンドヌクレアーゼは、適切なRNA構成要素と複合すると、ある実施形態において、特定のDNA標的配列の全て、または一部を切断することができる。例えば、特定のDNA標的配列中に一本鎖切断または二本鎖切断を導入することができる;これ以外にも、特定のDNA標的配列の一方の鎖または双方の鎖を切断することができると特徴付けられ得る。Casエンドヌクレアーゼは、Casと複合したcrRNAまたはガイドRNAによる標的配列の認識によって媒介されて、標的配列にてDNA二重鎖を解いて、少なくとも一本のDNA鎖を切断する。Casエンドヌクレアーゼによる標的配列のそのような認識およびカットは典型的には、正確なプロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)が、DNA標的配列の3’末端に位置決めされれば、またはDNA標的配列の3’末端に隣接すれば、生じる。これ以外にも、Casタンパク質は、本明細書中で、適切なRNA構成要素と複合化する場合、DNA切断活性またはニッキング活性を欠くかもしれないが、DNA標的配列に依然として特異的に結合することができる。好ましいCasタンパク質は、本明細書において、Cas9である。
【0048】
本明細書に開示の方法では、任意の誘導型エンドヌクレアーゼを使用することができる。そのようなエンドヌクレアーゼとしては、限定はされないが、Cas9エンドヌクレアーゼおよびCpf1エンドヌクレアーゼが挙げられる。特定のPAM配列を認識し、特定の位置で標的DNAを切断することができる多くのエンドヌクレアーゼが報告されている(例えば、2015年5月15日に出願された米国特許出願第62/162377号明細書、2015年5月15日に出願された米国特許出願第62/162353号明細書、およびZetsche B et al.2015.Cell 163,1013を参照)。当然のことながら、誘導型Cas系を使用する本明細書に記載の方法および実施形態に基づき、これらの方法が任意の誘導型エンドヌクレアーゼを使用することができるように適合可能である。
【0049】
「Cas9」(以前はCas5、Csn1、またはCsx12と呼ばれた)は、本明細書中で、crRNAおよびtracrRNAとの、またはガイドRNAとの複合体を形成して、DNA標的配列の全てまたは一部を特異的に認識して切断する、II型CRISPR系のCasエンドヌクレアーゼを指す。Cas9タンパク質は、RuvCヌクレアーゼドメイン、およびHNH(H−N−H)ヌクレアーゼドメインを含み、これらはそれぞれ、標的配列にて一本鎖DNAを切断する(双方のドメインが協調して作用すると、DNA二本鎖が切断されるが、一方のドメインの活性ではニックに至る)。一般に、RuvCドメインは、サブドメインI、II、およびIIIを含み、ドメインIは、Cas9のN末端近くに位置決めされ、そしてサブドメインIIおよびIIIは、タンパク質の中央に位置決めされて、HNHドメインにフランキングする(Hsu et al,Cell 157:1262−1278)。「Apo−Cas9」は、RNA構成要素と複合化しないCas9を指す。Apo−Cas9は、DNAに結合することができるが、非特異的であり、そしてDNAを切断することができない(Sternberg et al.,Nature 507:62−67)。
【0050】
本明細書中の用語「RNA構成要素」は、DNA標的配列の鎖と相補的なリボ核酸配列を含むRGENのRNA構成要素を指す。本明細書中では、この相補的配列を「ガイド配列」または「可変ターゲティングドメイン」配列と呼ぶ(
図5)。本明細書中の適切なRNA構成要素の例として、crRNAおよびガイドRNAが挙げられる。ある実施形態のRNA構成要素(例えば、ガイドRNA単独、crRNA+tracrRNA)は、RGENを特異的DNAターゲティングに適したものとすることができる。
【0051】
用語「CRISPR RNA」(crRNA)は、本明細書中で、1つまたは複数のCasタンパク質(例えばCas9)との複合体を形成することができるRNA配列を指し、複合体にDNA結合特異性を付与する。crRNAは、DNA標的配列の鎖と相補的である「ガイド配列」(「可変ターゲティングドメイン」[VT])を含有するので、DNA結合特異性を付与する。crRNAはさらに、crRNAが由来するCRISPR遺伝子座のリピート領域によってコードされる「リピート配列」(「tracrRNAメイト配列」)を含む。crRNAのリピート配列は、tracrRNAの5’末端の配列にアニールすることができる。本来のCRISPR系におけるcrRNAは、CRISPR遺伝子座から転写される「プレcrRNA」に由来する。プレcrRNAは、スペーサ領域およびリピート領域を含む;スペーサ領域は、DNA標的部位配列と相補的なユニーク配列を含有する。本来の系におけるプレcrRNAは、複数の異なるcrRNAにプロセシングされ、それぞれがガイド配列、およびリピート配列の一部を有する。CRISPR系は、例えば、DNAターゲティング特異性のために、crRNAを利用する。
【0052】
本明細書中で用語「トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)」は、II型CRISPR系に用いられる非コードRNAを指し、5’から3’の方向に、(i)CRISPR II型crRNAのリピート領域とアニールする配列、および(ii)ステムループ含有部分を含有する(Deltcheva et al.,Nature 471:602−607)。
【0053】
用語「ガイドRNA」(gRNA)および「単一ガイドRNA」(sgRNA)は、本明細書中で互換的に用いられる。gRNAは、本明細書中で、tracrRNAに機能可能なように結合するcrRNAを含有するキメラ配列を指し得る。これ以外にも、gRNAは、例えば、crRNAおよびtracrRNAの合成融合体を指し得る。gRNAはまた、ガイド配列(可変ターゲティングドメイン)に続いてCasエンドヌクレアーゼ認識(CER)ドメインを有する観点からも特徴付けられ得る。CERドメインは、tracrRNAメイト配列に続いてtracrRNA配列を含むことができる。
【0054】
「CRISPR DNA」(crRNA)は、任意選択により、RNA構成要素に代えて使用することができる。crDNAは、本明細書中に開示のcrRNAの配列に対応するDNA配列を有する。crDNAは、tracrRNAとcrDNA/tracrRNA複合体として使用され得、その複合体は、次にRGENタンパク質構成要素と関連付けられ得る。米国特許出願第61/953,090号明細書は、crDNA、およびRGEN媒介DNAターゲティングでのその使用を開示している。したがって、crRNAに関する本明細書中の開示は全て、crDNAの使用に同様に適用することができる。ゆえに、crDNAを組み込む本明細書中の実施形態は、それに代えて、「RNA誘導型エンドヌクレアーゼ」(RGEN)を、少なくとも1つのCasタンパク質と少なくとも1つのcrDNAを含む複合体と言うことができよう。
【0055】
本明細書で使用される用語「ガイドポリヌクレオチド」は、Casエンドヌクレアーゼと複合体を形成し、CasエンドヌクレアーゼがDNA標的部位を認識し、場合により切断することを可能にするポリヌクレオチド配列を指す。ガイドポリヌクレオチドは一本鎖分子であっても二本鎖分子であってもよい。ガイドポリヌクレオチド配列は、RNA配列であっても、DNA配列であっても、それらの組合せ(RNA−DNA組み合わせ配列)であってもよい。任意選択により、ガイドポリヌクレオチドは、限定はされないが、ロックド核酸(LNA)、5−メチルdC、2,6−ジアミノプリン、2’−フルオロA、2’−フルオロU、2’−O−メチルRNA、ホスホロチオエート結合、コレステロール分子への結合、ポリエチレングリコール分子への結合、Spacer18(ヘキサエチレングリコール鎖)分子への結合、または環化をもたらす5’から3’への共有結合などの、少なくとも1つのヌクレオチド、リン酸ジエステル結合または結合修飾を含み得る。リボ核酸のみを含むガイドポリヌクレオチドはまた、「ガイドRNA」と呼ばれる。
【0056】
ガイドポリヌクレオチドは、標的DNAのヌクレオチド配列に相補的な第1のヌクレオチド配列ドメイン(可変ターゲティングドメインまたはVTドメインとも呼ばれる)と、Casエンドヌクレアーゼポリペプチドと相互作用する第2のヌクレオチド配列ドメイン(Casエンドヌクレアーゼ認識ドメインまたはCERドメインとも呼ばれる)とを含む二本鎖分子(二本鎖ガイドポリヌクレオチドとも呼ばれる)であってよい。二本鎖ガイドポリヌクレオチドのCERドメインは、相補性領域とハイブリダイズする2つの別々の分子を含む。この2つの別々の分子は、RNA、DNAおよび/またはRNA−DNA組み合わせ配列であってよい。いくつかの実施形態では、CERドメインと、CERドメインに結合したVTドメインを含む二本鎖ガイドポリヌクレオチド(「crヌクレオチド」)の第1の分子を、「crDNA」(DNAヌクレオチドの連続ストレッチからなるとき)、「crRNA」(RNAヌクレオチドの連続ストレッチからなるとき)、または「crDNA−RNA」(DNAヌクレオチドとRNAヌクレオチドの組み合わせからなるとき)と呼ぶ。
【0057】
ガイドポリヌクレオチドはまた、標的DNAのヌクレオチド配列に相補的な第1のヌクレオチド配列ドメイン(可変ターゲティングドメインまたはVTドメインと呼ばれる)と、Casエンドヌクレアーゼポリペプチドと相互作用する第2のヌクレオチド配列ドメイン(Casエンドヌクレアーゼ認識ドメインまたはCERドメインとも呼ばれる)とを含む一本鎖分子(二本鎖ガイドポリヌクレオチドとも呼ばれる)であってもよい。「ドメイン」により、それは、RNA、DNAおよび/またはRNA−DNA組み合わせ配列であり得るヌクレオチドの連続ストレッチを意味する。一本鎖ガイドポリヌクレオチドのVTドメインおよび/またはCERドメインは、RNA配列、DNA配列、またはRNA−DNA組み合わせ配列を含み得る。いくつかの実施形態では、一本鎖ガイドポリヌクレオチドは、tracrヌクレオチド(CERドメインを含む)に結合したcrヌクレオチド(CERドメインに結合したVTドメインを含む)を含み、その結合はRNA配列、DNA配列、またはRNA−DNA組み合わせ配列を含むヌクレオチド配列である。crヌクレオチドおよびtracrヌクレオチド由来の配列からなる一本鎖ガイドポリヌクレオチドは、「一本鎖ガイドRNA」(RNAヌクレオチドの連続ストレッチからなるとき)、「一本鎖ガイドDNA」(DNAヌクレオチドの連続ストレッチからなるとき)、または「一本鎖ガイドRNA−DNA」(DNAヌクレオチドとRNAヌクレオチドの組み合わせからなるりとき)と呼ばれ得る。
【0058】
したがって、ある実施形態では、ガイドポリヌクレオチドとII型Casエンドヌクレアーゼは、互いに複合体を形成することができ(「ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体」と呼ばれ、あるいは、また、「ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ系」と呼ばれる)、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、Casエンドヌクレアーゼ複合体に細胞(例えば、植物細胞)のゲノム標的部位を標的とするよう指示し、場合により、Casエンドヌクレアーゼに、ゲノム標的部位へ一本鎖切断または二本鎖切断を導入させる。ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体は、少なくとも1つのCPPと結合することができ、そのような複合体は、細胞(例えば、植物細胞)のゲノム標的部位に結合し、場合により、一本鎖切断または二本鎖切断を行うことができる。
【0059】
用語「可変ターゲティングドメイン」または「VTドメイン」は、本明細書中で互換的に使用され、二本鎖DNA標的部位の一方の鎖(ヌクレオチド配列)に相補的なヌクレオチド配列を指す。第1のヌクレオチド配列ドメイン(VTドメイン)と標的配列との間の相補性率は、少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、63%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%であり得る。可変標的ドメインの長さは、少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチドであり得る。いくつかの実施形態では、可変ターゲティングドメインは12〜300ヌクレオチドの隣接するストレッチを含む。可変ターゲティングドメインは、DNA配列、RNA配列、修飾DNA配列、修飾RNA配列(例えば、本明細書に開示の修飾を参照)またはそれらの任意の組み合わせから構成され得る。
【0060】
ガイドポリヌクレオチドの「Casエンドヌクレアーゼ認識ドメイン」または「CERドメイン」という用語は、本明細書中で互換的に使用され、Casエンドヌクレアーゼポリペプチド(例えば、ガイドポリヌクレオチドの第2のヌクレオチド配列ドメイン)と相互に作用するヌクレオチド配列を指す。CERドメインは、DNA配列、RNA配列、修飾DNA配列、修飾RNA配列(例えば、本明細書に開示の修飾を参照)またはそれらの任意の組み合わせから構成され得る。
【0061】
用語「標的部位」、「標的配列」、「標的DNA」、「DNA標的配列」、「標的遺伝子座」、「プロトスペーサ」などは、本明細書中で互換的に用いられる。標的部位配列は、本明細書中のRGENが認識し、結合し、場合によってはニックを入れ、または切断することができる、細胞、エピソーム、またはゲノム中の他のあらゆるDNA分子上のポリヌクレオチド配列を指す。標的部位は、(i)細胞中の内在部位/在来部位であってもよいし、(ii)ゲノム中に自然に生じ得ない、細胞とは異種起源であってもよいし、(iii)本来生じる場所に対して非相同ゲノム位置に見出されてもよい。
【0062】
本明細書中で標的部位配列は、長さが少なくとも13ヌクレオチドであり、そして、(ある実施形態において、適切なPAMが、標的配列に隣接するならば)(crRNAまたはgRNAの)ガイド配列とハイブリダイズすることができ、かつ標的配列にCasタンパク質またはCasタンパク質複合体を配列特異的に直接結合することができるほど十分な、ガイド配列との相補性がある鎖を有する。切断/ニック部位(エンドヌクレオチド結合分解性CasまたはニッキングCasが該当する)は、標的配列内であってもよいし(例えば、Cas9が用いられる)、切断/ニック部位は、標的配列外であってもよい(例えば、非相同エンドヌクレアーゼドメイン、例えばFokI酵素に由来するものに融合するCas9が用いられる)。標的部位配列をRGEN欠失切断活性またはRGEN欠失ニッキング活性により結合させることも可能である。
【0063】
本明細書中で「人工標的部位」または「人工標的配列」は、細胞のゲノム中に導入された標的配列を指す。一部の実施形態における人工標的配列は、細胞のゲノム中の本来の標的配列と配列が同じでありながら、ゲノム中の異なる位置(非相同位置)に位置決めされてもよいし、細胞のゲノム中の同じ位置に位置決めされるならば本来の標的配列と異なってもよい。
【0064】
本明細書中で「エピソーム」は、細胞の染色体は別として、細胞中に自律的に存在することができる(複製して娘細胞に進むことができる)DNA分子を指す。エピソームDNAは、在来であってもよいし、細胞とは異種起源であってもよい。明細書中の在来エピソームの例として、ミトコンドリアDNA(mtDNA)およびクロロプラストDNAが挙げられる。本明細書中の異種起源エピソームの例として、プラスミドおよび酵母人工染色体(YAC)が挙げられる。
【0065】
本明細書中で「プロトスペーサ隣接モチーフ」(PAM)は、本明細書中のRGENによって認識される短い配列を指す。本明細書中でPAMの配列および長さは、用いられるCasタンパク質またはCasタンパク質複合体に応じて異なってよいが、典型的には、例えば、2、3、4、5、6、7、または8ヌクレオチド長である。
【0066】
用語「5’キャップ」および「7−メチルグアニル酸(m
7G)キャップ」は、本明細書中で互換的に用いられる。7−メチルグアニル酸残基は、真核生物においてRNAポリメラーゼII(Pol II)によって転写されたRNAの5’末端に位置決めされる。本明細書中、キャップRNAは5’キャップを有するが、未キャップRNAはそのようなキャップを有さない。
【0067】
「キャップ離脱」、「5’キャップを有さない」などの用語は、本明細書中では互換的に使用され、5’キャップを欠失し、場合により、5’キャップの代わりに、例えば5’−水酸基を有するRNAを指す。5’キャッピングされたRNAは核外に搬出されるため、キャップ離脱RNAは、転写後、核内により十分に蓄積することができる。
【0068】
用語「リボザイム」、「リボ核酸酵素」および「自己切断リボザイム」は、本明細書中で互換的に用いられる。リボザイムは、特定の部位にてRNAを切断することができる、二次、三次、および/または四次構造を形成する1つまたは複数のRNA配列、特にリボザイム配列に対するシス部位(すなわち、自己触媒的である、または自己切断する)を指す。リボザイム核酸分解活性の一般的な性質が解説されてきた(例えば、Lilley,Biochem.Soc.Trans.39:641−646)。「ハンマーヘッドリボザイム」(HHR)は、本明細書中で、触媒反応に関与する3つの塩基対形成されたステム、および高度に保存された、非相補的ヌクレオチドのコアで構成される小さな触媒的RNAモチーフを含んでよい。Pley et al.(Nature 372:68−74)、そしてHammann et al.(RNA 18:871−885)(これらの文献は参照によって本明細書に組み込まれる)が、ハンマーヘッドリボザイムの構造および活性を開示している。本明細書中でハンマーヘッドリボザイムは、例えば、Scott et al.(Cell 81:991−1002(参照によって本明細書に組み込まれる))によって開示される「最小のハンマーヘッド」配列を含んでよい。
【0069】
用語「ターゲティング」、「遺伝子ターゲティング」、「DNAターゲティング」、「編集」、「遺伝子編集」、および「DNA編集」は、本明細書中で互換的に用いられる。本明細書中でDNAターゲティングは、例えば細胞の染色体またはエピソーム中の、特定のDNA配列でのindel、ノックアウト、またはノックインの特異的な導入であってよい。一般に、DNAターゲティングは、本明細書中で、Casタンパク質が適切なRNA構成要素と関連して、細胞中の特定のDNA配列にて一方の鎖または双方の鎖を切断することによって、実行され得る。そのようなDNA切断は、二本鎖切断(DSB)の場合、標的部位にてindelを形成することができるNHEJプロセスを促進することができる。また、切断が一本鎖切断(SSB)であるかDSBであるかを問わず、適切なドナーDNAポリヌクレオチドがDNAニック部位またはDNA切断部位に提供される場合、HRプロセスが促進され得る。そのようなHRプロセスは、ドナーDNAポリヌクレオチドの配列に応じて、標的部位にてノックアウトまたはノックインを導入するのに用いられ得る。これ以外にも、本明細書中でDNAターゲティングは、標的DNA配列に対する本明細書中のCas/RNA構成要素複合体の特異的な関連を指し得、Casタンパク質は、(Casタンパク質のエンドヌクレオチド結合分解性ドメインの状態に応じて)DNA鎖をカットしたりカットしなかったりする。
【0070】
本明細書中で用語「indel」は、染色体またはエピソーム中の標的DNA配列中の1つまたは複数のヌクレオチド塩基の挿入または欠失を指す。そのような挿入または欠失は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の塩基のものであってよい。ある実施形態におけるindelは、さらにより大きくてよく、少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、または100塩基である。indelが遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)内に導入されれば、indelは多くの場合、フレームシフト突然変異を生じさせることによって、ORFによってコードされるタンパク質の野生型発現を分裂させる。
【0071】
用語「ノックアウト」、「遺伝子ノックアウト」および「遺伝的ノックアウト」は、本明細書中で互換的に用いられる。ノックアウトは、本明細書中で、Casタンパク質によるターゲティングによって部分的に、または完全に無効とされた、細胞のDNA配列を表す;ノックアウト前のそのようなDNA配列は、アミノ酸配列をコードしていてもよいし、例えば調節機能(例えばプロモータ)を有していてもよい。ノックアウトは、ターゲティング部位の配列、それに隣接する配列、もしくはその近傍の配列の機能を弱める、もしくは完全に破壊する、(Cas媒介切断またはニッキングによって促進されるNHEJによる)indelによって、または(適切なドナーDNAポリヌクレオチド配列もまた使用される場合、Cas媒介切断またはニッキングによって促進されるHRによる)配列の特異的な除去によってもたらされ得る。本明細書中では、代わりに、ノックアウトされたDNAポリヌクレオチド配列が、例えば、部分的に、または全体として、分裂または下方制御されると見なすことができる。
【0072】
用語「ノックイン」、「遺伝子ノックイン」および「遺伝的ノックイン」は、本明細書中で互換的に用いられる。ノックインは、(適切なドナーDNAポリヌクレオチド配列もまた使用される場合、Cas媒介切断またはニッキングによって促進されるHRによる)Casタンパク質によるターゲティングによる、細胞中の特定のDNA配列でのDNA配列の置換または挿入を表す。ノックインの例としては、遺伝子のコード領域中の異種アミノ酸コード配列の特異的な挿入、または遺伝子座中への転写調節要素の特異的な挿入がある。
【0073】
用語「ドナーポリヌクレオチド」、「ドナーDNA」、「ターゲティングポリヌクレオチド」、および「ターゲティングDNA」は、本明細書中で互換的に用いられる。ドナーポリヌクレオチドは、DNA標的部位(例えば、本明細書中で、Casタンパク質によって特異的に標的とされる配列)の配列、またはその近傍の配列に相同である少なくとも1つの配列を含むDNA配列を指す。DNA標的部位がSSBまたはDSBを含むなら、適切なドナーポリヌクレオチドはその標的部位とHRを行うことができる(例えば、適切なRNA構成要素と関連する本明細書中のCasタンパク質を用いて導入することができる)。本明細書中で、ドナーポリヌクレオチド内の「相同配列」は、例えば、標的部位もしくはその近傍の配列と100%の相同性を有する、または標的部位もしくはその近傍の配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の相同性を有する、少なくとも約25のヌクレオチドの配列を含んでもよく、またそのような配列からなってもよい。
【0074】
ある実施形態において、ドナーDNAポリヌクレオチドは、標的部位の配列と非相同である配列(または塩基対)によって分離される2つの相同配列を有してよい。そのようなドナーポリヌクレオチドのこれら2つの相同配列は、「相同アーム」と呼ぶことができ、これらは非相同配列にフランキングする。標的部位と、2本の相同アームを有するドナーポリヌクレオチドとのHRは典型的に、標的部位の配列の、ドナーポリヌクレオチドの非相同配列との置換を生じさせる(ドナーポリヌクレオチドの相同アームに相同なDNA配列間に位置決めされる標的部位配列は、ドナーポリヌクレオチドの非相同配列によって置換される)。2本の相同アームを有するドナーポリヌクレオチドにおいて、アームは1つまたは複数のヌクレオチドによって分離されてよい(すなわち、ドナーポリヌクレオチド中の非相同配列は、少なくとも1ヌクレオチド長であってよい)。本明細書中で細胞において実行され得る種々のHR手順が、例えば、DNA Recombination:Methods and Protocols:1st Edition(H.Tsubouchi,Ed.,Springer−Verlag,New York,2011)に開示されており、この文献は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0075】
用語「細胞透過ペプチド」(CPP)および「タンパク質形質導入ドメイン」(PTD)は、本明細書中で互換的に用いられる。CPPは、積み荷分子、特に、本明細書中の1つ以上のRGENタンパク質構成要素(例えば、Cas9タンパク質)の細胞取り込みを促進し得る、長さが通常約5〜60アミノ酸残基のペプチドを指す。そのような積み荷タンパク質は、1つ以上のCPPと共有結合または非共有結合により結合することができる。CPPはまた、ある実施形態では、脂質二重層、ミセル、細胞膜、オルガネラ膜、小胞膜または細胞壁の1つ以上を横断/貫通して積み荷分子の移動または横断を促進することができると見なすことができる。本明細書中のCPPは、ある実施形態では、カチオン性、両親媒性または疎水性であり得る。本明細書中で有用なCPPの例、および一般的なCPPのさらなる説明は、Schmidt et al.(FEBS Lett.584:1806−1813)、Holm et al.(Nature Protocols 1:1001−1005)、Yandek et al.(Biophys.J.92:2434−2444)、Morris et al.(Nat.Biotechnol.19:1173−1176)および米国特許出願公開第2014/0068797号明細書に開示されており、それらは参照によって本明細書に組み込まれる。
【0076】
「カチオン性」CPPまたは「ポリカチオン性」CPPは、本明細書中では、リシン(K)、アルギニン(R)および/またはヒスチジン(H)などの正電荷を有するアミノ酸の相対存在度が高い(少なくとも60%)CPPを指す。
【0077】
「両親媒性(amphipathic)」CPPまたは「両親媒性(amphiphilic)」CPPは、本明細書中では、極性/荷電残基と非極性の疎水性残基の交互パターンを含むアミノ酸配列を有するCPPを指す。あるいは、両親媒性CPPは、親水性および親油性の両特性を有すると見なすことができる。
【0078】
本明細書中の「疎水性」CPPまたは「親油性」CPPは、大部分が正味電荷の少ない非極性残基および/または疎水性アミノ酸基であるか、またはそのような基のみを含む。
【0079】
用語「共有結合した」、「共有結合的に付着した」、「共有結合的に結び付いた」、「共有結合」、「共有結合的相互作用」などは、本明細書中では互換的に使用される。本明細書中では、共有結合は、例えば、ペプチド結合または化学架橋によって行われ得る。共有結合は、例えば、直接的であり得、そこでは、RGENタンパク質構成要素とCPPとの間に直に共有結合がある(例えば、RGENタンパク質構成要素の原子とCPPの原子との間に[電子を共有する]化学結合がある)。あるいは、共有結合は、例えば、間接的であり得、そこでは、RGENタンパク質構成要素とCPPが少なくとも1つの中間因子を介して結合している。そのような中間因子、またはそれら自身共有結合している一群の中間因子は、RGENタンパク質構成要素とCPPに共有結合している。したがって、中間因子、または中間因子群は、RGENタンパク質構成要素とCPPとの間の橋であると見なすことができる。
【0080】
用語「融合タンパク質」、「タンパク質融合体」、「キメラタンパク質」などは、本明細書中で互換的に使用される。本明細書中の融合タンパク質は、単一ポリペプチド内で結合している少なくとも2つの異なる(非相同の)アミノ酸配列を含む。融合タンパク質は、一般に、遺伝子工学的プロセスによって作られる。そのプロセスでは、異なるアミノ酸配列を含む単一タンパク質をコードさせるため、異なるアミノ酸配列をコードするDNA配列を結合する。本明細書中の融合タンパク質の例としては、RGENタンパク質−CPP融合体(1つ以上のCPPアミノ酸配列に融合したRGENタンパク質アミノ酸配列)が挙げられる。
【0081】
用語「非共有結合した」、「非共有結合的に付着した」、「非共有結合的に結合した」、「非共有結合」、「非共有結合的相互作用」などは、本明細書中では互換的に使用される。本明細書中では、非共有結合は、電子を共有していない原子間の相互作用を指す。このタイプの相互作用は、共有結合に比べ弱い。疎水性相互作用は、RGENタンパク質構成要素と1つ以上のCPPの間に起こり得る非共有結合の一例である。本明細書中で適用され得る非共有結合の他の例としては、静電力(例えば、イオン結合、水素結合)およびファン・デル・ワールス力(ロンドン分散力)が挙げられる。
【0082】
本明細書中で使用される「RGENタンパク質−CPP複合体」は、RGENのタンパク質構成要素と少なくとも1つのCPPとの複合体を指し、RGENとCPPとは共有結合または非共有結合によって相互作用する。この複合体のRGEN構成要素およびCPP構成要素は、通常、本明細書に開示されているようなそれぞれの活性/機能の全て、またはいくらか(例えば、少なくとも50%)を保持している。例えば、RGENタンパク質構成要素はCas9である実施形態では、Cas9−CPP複合体中のCas9は、適切なRNA構成要素(例えば、gRNA)と結合し、細胞中のDNA標的部位にCas9−CPP複合体をターゲティングすることができる。
【0083】
用語「横断する」、「〜を通って移動する」、「横切る」、「〜を越えて行く」などは、本明細書中では互換的に使用される。
【0084】
用語「細胞膜」、「プラズマ膜」および「細胞質膜」は、本明細書中では互換的に使用され、細胞の内部を外部から分離する生体膜を指す。細胞膜は、通常、その内部にタンパク質が埋め込まれたリン脂質二重層を含む。いくつかの他の機能のうち、細胞膜は、細胞壁または細胞外被構造などの細胞外構造の付着面として機能し得る。細胞膜脂質二重層に関する詳細な情報は、Molecular Biology of the Cell.4th Edition(B.Alberts et al.,Eds.,Garland Science,New York,2002)に示されており、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
本明細書中の用語「細胞壁」は、いくつかの種類の非哺乳類細胞(例えば、細菌、植物、藻類、酵母などの真菌)を取り囲む、高強度で可撓性がある(しかし、ときにかなり強直である)層を指す。それは、細胞間に外に位置し、細胞を構造的に支持し保護する。ある実施形態での細胞壁の主な機能は、細胞の浸透圧の維持を助けることである。真菌細胞(例えば、酵母細胞)壁は、一般に、キチンを含み、藻細胞壁、一般に、糖タンパク質および多糖類を含む。植物細胞壁は、一般に、多糖類が大半で、他の構成成分(例えば、フェノールエステル、構造タンパク質)を少量含む。「一次細胞壁」および/または「二次細胞壁」を特徴付けるために使用され得、その二次細胞壁は一次細胞壁の内部に位置する。リグニンは、二次細胞壁の主要な構成成分である。細菌細胞壁は、一般に、主な構成成分としてペプチドグリカンを含む。細胞などの、ある態様では、細胞壁は、さらに、外層に、細胞外被を含み、それは、一般に、多糖類からなる被膜である。
【0086】
本明細書中の用語「ロイシンジッパードメイン」は、約35残基からなるストレッチの7残基毎にロイシン残基が存在することを特徴とする二量体ドメインを指す。ロイシンジッパードメインは、アルファヘリックスコイルドコイルによって一体に保たれたダイマーを形成する。コイルドコイルは1ターン当たり3.5個の残基を有し、これは、ヘリックス軸に対して、各7残基が等価の位置を占めることを意味している。コイルドコイル内のロイシンの規則的な配列は、疎水的相互作用およびファンデルワールス相互作用によってその構造を安定化させる。
【0087】
用語「容量パーセント(percent by volume)」、「容量パーセント(volume percent)」、「vol%」、および「v/v%」は、本明細書中で互換的に用いられる。溶液中の溶質の容量パーセントは、式:[(溶質の容量)/(溶液の容量)]×100%を用いて確定され得る。
【0088】
用語「重量パーセント」、「重量パーセンテージ(wt%)」、および「重量−重量パーセンテージ(%w/w)」は、本明細書中で互換的に用いられる。重量パーセントは、組成物、混合物、または溶液中に含まれるままの、質量ベースでの材料のパーセンテージを指す。
【0089】
用語「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、および「核酸配列」は、本明細書中で互換的に用いられる。これらの用語は、ヌクレオチド配列等を包含する。ポリヌクレオチドは、場合によっては合成の、非天然の、または変更されたヌクレオチド塩基を含有する、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAのポリマーであってよい。ポリヌクレオチドは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、またはそれらの混合物の1つまたは複数のセグメントで構成されてよい。ヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド)は、以下の一文字呼称によって呼ぶことができる:アデニル酸またはデオキシアデニル酸(それぞれRNAまたはDNAに関する)について「A」、シチジル酸またはデオキシチジル酸(それぞれRNAまたはDNAに関する)について「C」、グアニル酸またはデオキグアニル酸(それぞれRNAまたはDNAに関する)について「G」、ウリジル酸(RNAに関する)について「U」、デオキシチミジル酸(DNAに関する)について「T」、プリン(AまたはG)について「R」、ピリミジン(CまたはT)について「Y」、GまたはTについて「K」、A、C、またはTについて「H」、イノシンについて「I」、AまたはTについて「W」、そしてあらゆるヌクレオチドについて「N」(例えば、DNA配列に言及するならば、Nは、A、C、T、またはGであり得;RNA配列に言及するならば、Nは、A、C、U、またはGであり得る)。本明細書中に開示されるあらゆるRNA配列(例えば、crRNA、tracrRNA、gRNA)は、適切なDNA配列によってコードされ得る。
【0090】
本明細書中で用いられる用語「単離された」は、その本来の源から完全に、または部分的に精製されたポリヌクレオチドまたはポリペプチド分子を指す。場合によっては、単離されたポリヌクレオチドまたはポリペプチド分子は、より大きな組成物、バッファ系、または試薬混合物の一部である。例えば、単離されたポリヌクレオチドまたはポリペプチド分子は、細胞内または生物内に異種起源のものとして含まれてよい。RGENのタンパク質構成要素および細胞透過ペプチドを含む本明細書中の組成物は、単離された組成物と見なすことができる。これらの組成物は異種構成要素を含み、天然には生じない。
【0091】
本明細書中で用いられる用語「遺伝子」は、コード領域からRNAを発現するDNAポリヌクレオチド配列を指し(RNAは、DNAポリヌクレオチド配列から転写される)、当該RNAは、メッセンジャRNA(タンパク質をコードする)またはタンパク質非コードRNA(例えば、本明細書中でcrRNA、tracrRNA、またはgRNA)であってよい。遺伝子は、コード領域のみを指してもよいし、コード領域の上流かつ/または下流に調節配列(例えば、プロモータ、5’非翻訳領域、3’転写ターミネータ領域)を含んでもよい。タンパク質をコードするコード領域は代わりに、本明細書中で「オープンリーディングフレーム」(ORF)と呼ぶことができる。「在来の」または「内在性の」遺伝子は、自然界で見出されるような、自己調節配列を有する遺伝子を指す;そのような遺伝子は、宿主細胞のゲノム中の、その本来の位置に位置決めされている。「キメラ」遺伝子は、在来遺伝子でなく、自然界では一緒に見出されない調節配列およびコード配列を含む(すなわち、調節領域およびコード領域が互いに異種起源である)あらゆる遺伝子を指す。したがって、キメラ遺伝子は、様々な源に由来する調節配列およびコード配列を含んでもよいし、同じ源に由来するが、自然界で見出されるものとは異なるようにして配置される調節配列およびコード配列を含んでもよい。「外来の」または「異種起源」遺伝子は、遺伝子導入によって宿主生物中に導入される遺伝子を指す。外来/異種起源遺伝子は、非在来生物中に挿入される在来遺伝子、在来宿主内の新しい位置に導入される在来遺伝子、またはキメラ遺伝子を含んでよい。本明細書中に開示されるある実施形態におけるポリヌクレオチド配列は、異種起源である。「トランスジーン」は、遺伝子導入手順(例えば、形質転換)によってゲノム中に導入された遺伝子である。「コドン最適化」オープンリーディングフレームは、そのコドン使用頻度が、宿主細胞の好ましいコドン使用頻度を模倣するように設計されている。
【0092】
「変異遺伝子」は、ヒトが介入して改変された遺伝子である。そのような「変異遺伝子」は、少なくとも1つのヌクレオチドの付加、欠失または置換によって、対応する非変異遺伝子と異なる配列を有する。本開示のある実施形態では、変異遺伝子は、本明細書に開示のガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ系を使用してなされた改変を含む。変異植物は、少なくとも1つの変異遺伝子を含む植物である。
【0093】
本明細書中の細胞または生物に含まれる「非天然」のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列は、そのような細胞または生物の天然の(自然の)対応物では生じない。
【0094】
本明細書中で用いられる「調節配列」は、遺伝子の転写開始部位(例えばプロモータ)、5’非翻訳領域、および3’非コード領域の上流に位置決めされるヌクレオチド配列を指し、転写、プロセシングもしくは安定性、または遺伝子から転写されるRNAの翻訳に影響し得る。本明細書中の調節配列として、プロモータ、エンハンサ、サイレンサ、5’非翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクタ結合部位、ステム−ループ構造、および遺伝子発現の調節に関与する他の要素が挙げられ得る。本明細書中で1つまたは複数の調節要素は、本明細書中のコード領域とは異種起源であってよい。
【0095】
本明細書中で用いられる「プロモータ」は、遺伝子からのRNAの転写を制御することができるDNA配列を指す。一般に、プロモータ配列は、遺伝子の転写開始部位の上流にある。プロモータは、その全体が在来遺伝子に由来してもよいし、自然界に見出される様々なプロモータに由来する様々な要素から構成されてもよいし、合成DNAセグメントを含んでもよい。遺伝子を細胞においてあらゆる状況下において殆どの時点で発現させるプロモータは一般に、「構成プロモータ」と呼ばれる。本明細書中で1つまたは複数のプロモータは、本明細書中のコード領域とは異種起源であってよい。
【0096】
本明細書中で用いられる「強プロモータ」は、単位時間あたりに比較的多数の生産開始を導くことができるプロモータを指し得、かつ/または、細胞における遺伝子の平均転写レベルよりも高い遺伝子転写レベルを駆動するプロモータである。
【0097】
植物プロモータは、植物細胞において転写を開始することができるプロモータであり、植物プロモータについては、Potenza et al.,(2004)In Vitro Cell Dev Biol 40:1−22を参照されたい。構成プロモータとしては、例えば、国際公開第99/43838号パンフレットおよび米国特許第6072050号明細書に開示されたRsyn7プロモータおよび他の構成プロモータのコアプロモータ、コアCaMV 35Sプロモータ(Odell et al.,(1985)Nature 313:810−2);ライスアクチン(McElroy et al.,(1990)Plant Cell 2:163−71);ユビキチン(Christensen et al.,(1989)Plant Mol Biol 12:619−32;Christensen et al.,(1992)Plant Mol Biol 18:675−89);pEMU(Last et al.,(1991)Theor Appl Genet 81:581−8);MAS(Velten et al.,(1984)EMBO J 3:2723−30);ALSプロモータ(米国特許第5659026号明細書)などが挙げられる。他の構成プロモータは、例えば、米国特許第5608149号明細書、同第5608144号明細書、同第5604121号明細書、同第5569597号明細書、同第5466785号明細書、同第5399680号明細書、同第5268463号明細書、同第5608142号明細書および同第6177611号明細書に記載されている。いくつかの例では、誘導性プロモータが使用され得る。病原体の感染後に誘導される病原体誘導性プロモータとしては、限定はされないが、PRタンパク質、SAタンパク質、ベータ−1,3−グルカナーゼ、キチナーゼなどの発現を調節するものが挙げられる。
【0098】
外因性の化学調節剤の適用によって植物の遺伝子発現を調節するために、化学調節プロモータを使用することができる。プロモータは、化学物質の適用が遺伝子発現を誘導する化学誘導性プロモータであっても、化学物質の適用が遺伝子発現を抑制する化学抑制性プロモータであってもよい。化学誘導性プロモータとしては、限定はされないが、ベンゼンスルホンアミド除草剤解毒剤によって活性化されたトウモロコシIn2−2プロモータ(De Veylder et al.,(1997)Plant Cell Physiol 38:568−77)、発芽前除草剤として使用されている疎水性親電性化合物によって活性化されたトウモロコシGSTプロモータ(GST−II−27、国際公開第93/01294号パンフレット)、およびサリチル酸によって活性化されたタバコPR−1aプロモータ(Ono et al.,(2004)Biosci Biotechnol Biochem 68:803−7)が挙げられる。他の化学調節プロモータとしては、ステロイド応答性プロモータ(例えば、グルココルチコイド誘導プロモータ(glucocorticoid−inducible promoter)(Schena et al.,(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:10421−5;McNellis et al.,(1998)Plant J 14:247−257);テトラサイクリン誘導およびテトラサイクリン抑制プロモータ(tetracycline−inducible and tetracycline−repressible promoters)(Gatz et al.,(1991)Mol Gen Genet 227:229−37;米国特許第5814618号明細書および同第5789156号明細書)を参照)。
【0099】
特定の植物組織内での増強発現のため、組織好適プロモータを使用することができる。組織好適プロモータとしては、例えば、Kawamata et al.,(1997)Plant Cell Physiol 38:792−803;Hansen et al.,(1997)Mol Gen Genet 254:337−43;Russell et al.,(1997)Transgenic Res 6:157−68;Rinehart et al.,(1996)Plant Physiol 112:1331−41;Van Camp et al.,(1996)Plant Physiol 112:525−35;Canevascini et al.,(1996)Plant Physiol 112:513−524;Lam,(1994)Results Probl Cell Differ 20:181−96;およびGuevara−Garcia et al.,(1993)Plant J 4:495−505が挙げられる。葉好適プロモータとしては、例えば、Yamamoto et al.,(1997)Plant J 12:255−65;Kwon et al.,(1994)Plant Physiol 105:357−67;Yamamoto et al.,(1994)Plant Cell Physiol 35:773−8;Gotor et al.,(1993)Plant J 3:509−18;Orozco et al.,(1993)Plant Mol Biol 23:1129−38;Matsuoka et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:9586−90;Simpson et al.,(1958)EMBO J 4:2723−9;Timko et al.,(1988)Nature 318:57−8が挙げられる。根好適プロモータとしては、例えば、Hire et al.,(1992)Plant Mol Biol 20:207−18(ダイズ根特異的グルタミン合成酵素遺伝子);Miao et al.,(1991)Plant Cell 3:11−22(サイトゾルグルタミン合成酵素(GS));Keller and Baumgartner,(1991)Plant Cell 3:1051−61(インゲンマメのGRP 1.8遺伝子における根特異的調節要素);Sanger et al.,(1990)Plant Mol Biol 14:433−43(アグロバクテリウム・ツメファシエンス(A.tumefaciens)マンノピン合成酵素(MAS)の根特異的プロモータ);Bogusz et al.,(1990)Plant Cell 2:633−41(パラスポニア・アンデルソニイ(Parasponia andersonii)およびトレマ・トメントサ(Trema tomentosa)から単離された根特異的プロモータ);Leach and Aoyagi,(1991)Plant Sci 79:69−76(アグロバクテリウム・リゾゲネス(A.rhizogenes)rolCおよびrolD根誘導遺伝子);Teeri et al.,(1989)EMBO J 8:343− 50(アグロバクテリウム創傷誘導(Agrobacterium wound−induced)TR1’およびTR2’遺伝子);VfENOD−GRP3遺伝子プロモータ(Kuster et al.,(1995)Plant Mol Biol 29:759−72);およびrolBプロモータ(Capana et al.,(1994)Plant Mol Biol 25:681−91;ファゼオリン遺伝子(phaseolin gene)(Murai et al.,(1983)Science 23:476−82;Sengopta−Gopalen et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3320−4)が挙げられる。米国特許第5837876号明細書、同第5750386号明細書、同第5633363号明細書、同第5459252号明細書、同第5401836号明細書、同第5110732号明細書および同第5023179号明細書も参照されたい。
【0100】
種子好適プロモータには、種子発育中活性な種子特異的プロモータ、および種子発芽中活性な種子発芽プロモータの両プロモータが含まれる。Thompson et al.,(1989)BioEssays 10:108を参照されたい。種子好適プロモータとしては、限定はされないが、Cim1(サイトカイニン誘導メッセージ)、cZ19B1(トウモロコシ19kDaゼイン)およびmilps(ミオ−イノシトール−1−リン酸シンターゼ)(国際公開第00/11177号パンフレットおよび米国特許第6225529号明細書)が挙げられる。双子葉植物用の種子好適プロモータとしては、限定はされないが、インゲンマメ−ベータ−ファセオリン、ナピン(napin)、ベータ−コングリシニン、ダイズレクチン、クルシフェリンなどが挙げられる。単子葉植物用の種子好適プロモータとしては、限定はされないが、トウモロコシ15kDaゼイン、22kDaゼイン、27kDaガンマゼイン、ワキシー(waxy)、シュランケン(shrunken)1、シュランケン(shrunken)2、グロブリン1、オレオシンおよびnuc1が挙げられる。国際公開第00/12733号パンフレットも参照されたい。この文献には、END1およびEND2遺伝子由来の種子好適プロモータが開示されている。
【0101】
本明細書中で用いられる用語「3’非コード配列」、「転写ターミネータ」、および「ターミネータ」は、コード配列の下流に位置決めされるDNA配列を指す。これには、ポリアデニル化認識配列、および、mRNAプロセシングまたは遺伝子発現に影響を及ぼすことができる調節シグナルをコードする他の配列が挙げられる。
【0102】
本明細書中で用いられる用語「カセット」は、タンパク質コードRNAまたはタンパク質非コードRNAをコードするDNA配列に機能可能なように結合したプロモータを指す。カセットは場合によっては、3’非コード配列に機能可能なように結合してよい。
【0103】
ポリヌクレオチドに関して本明細書中で用いられる用語「上流」および「下流」はそれぞれ、「5’」および「3’」を指す。
【0104】
本明細書中で用いられる用語「発現」は、(i)コード領域からのRNA(例えば、mRNAまたはタンパク質非コードRNA、例えばcrRNA、tracrRNA、またはgRNA)の転写、または(ii)mRNAからのポリペプチドの翻訳を指す。
【0105】
遺伝子またはポリヌクレオチド配列の発現を記載するのに用いられる場合、用語「下方制御」、「分裂」、「阻害」、「不活化」、および「サイレンシング」は、ポリヌクレオチド配列の転写が引き下げられる、または除外される例に言及するために、本明細書中で互換的に用いられる。これにより、ポリヌクレオチド配列からのRNA転写産物の引下げまたは除外がもたらされ、結果として(遺伝子がORFを含むならば)ポリヌクレオチド配列に由来するタンパク質発現の引下げまたは除外がもたらされる。これ以外にも、下方制御は、ポリヌクレオチド配列によって生じる転写産物からのタンパク質の翻訳が引き下げられる、または除外される例に言及し得る。さらにこれ以外にも、下方制御は、ポリヌクレオチド配列によって発現されるタンパク質の活性が低下する例に言及し得る。細胞における上記プロセス(転写、翻訳、タンパク質活性)のいずれかの引下げは、適切なコントロール細胞の転写、翻訳、またはタンパク質活性に対して約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%であり得る。下方制御は、例えば、本明細書中に開示されるターゲティング事象(例えば、indel、ノックアウト)の結果であり得る。
【0106】
用語「コントロール細胞」および「適切なコントロール細胞」は、本明細書中で互換的に用いられ、特定の修飾(例えば、ポリヌクレオチドの過剰発現、ポリヌクレオチドの下方制御)がなされた細胞(すなわち、「実験細胞」)に対して参照され得る。コントロール細胞は、実験細胞の特定の修飾を有しもしなければ、これを発現もしないあらゆる細胞であり得る。ゆえに、コントロール細胞は、非形質転換野生型細胞であってもよいし、遺伝的に形質転換されているが、遺伝的形質転換を発現しないものであってもよい。例えば、コントロール細胞は、実験細胞の直接の親であってよく、この直接の親細胞は、実験細胞中に存在する特定の修飾を有していない。これ以外にも、コントロール細胞は、一世代または複数世代によって除かれる、実験細胞の親であってよい。さらにこれ以外にも、コントロール細胞は、実験細胞のきょうだいであってよく、このきょうだいは、実験細胞中に存在する特定の修飾を含まない。
【0107】
本明細書中で用いられる用語「増大」は、量または活性の増大が比較されることになる量または活性を、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、50%、100%、または200%超える量または活性に言及し得る。用語「増大」、「上昇」、「強化」、「超」、および「向上」は、本明細書中で互換的に用いられる。用語「増大」は、例えば、タンパク質をコードするポリヌクレオチドの発現を特徴付けるために用いられ得、「発現の増大」は、「過剰発現」を意味することもある。
【0108】
本明細書中で用いられる用語「機能可能なように結合」は、2つ以上の核酸配列について、一方の機能が他方によって影響されるような関連を指す。例えば、プロモータが、コード配列の発現に影響を及ぼすことができる場合、そのコード配列と機能可能なように結合している。すなわち、コード配列は、プロモータの転写制御下にある。コード配列は、例えば、調節配列に機能可能なように結合し得る。また、例えば、crRNAは、本明細書中で、crRNAのtracrRNAメイト配列が、tracrRNAの5’配列とアニールするように、tracrRNAに機能可能なように結合(融合)し得る。そのような機能可能な結合は、適切なループ形成配列、例えばGAAA(配列番号36)、CAAA(配列番号37)、またはAAAG(配列番号38)を含んでよい。また、例えば、RGENは、1つ以上のCPPに機能可能なように結合(融合)し得る。
【0109】
本明細書中で用いられる用語「組換え」は、例えば化学合成による、または、遺伝子工学技術による核酸の単離セグメントの操作による、配列の2つの、通常であれば分離しているセグメントの人工的な組合せを指す。
【0110】
本明細書中の組換え構築体/ベクター(例えば、本明細書中のRNA構成要素カセットをコードするDNAポリヌクレオチド、または本明細書中のCasタンパク質またはCas−CPP融合タンパク質をコードするDNAポリヌクレオチド)を調製する方法は、例えば、J.Sambrook and D.Russell(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,2001);T.J.Silhavy et al.(Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1984);およびF.M.Ausubel et al.(Short Protocols in Molecular Biology,5th Ed.Current Protocols,John Wiley and Sons,Inc.,NY,2002)によって記載されるような標準的な組換えDNA技術および分子クローニング技術に従ってよい。
【0111】
本明細書中で用いられる用語「形質転換」は、任意の方法による宿主生物中または宿主細胞中への核酸分子の運搬を指す。生物/細胞の形質転換された核酸分子は、生物/細胞中で自律的に複製するもの、生物/細胞のゲノムにインテグレートされるもの、または、複製もしくはインテグレートされずに細胞中に一時的に存在するものであり得る。形質転換に適した核酸分子の非限定的な例は、プラスミドおよび直鎖状DNA分子など、本明細書に開示されている。
【0112】
本明細書中の「トランスジェニック植物」としては、例えば、形質転換工程によって導入された異種ポリヌクレオチドをゲノム内に含む植物が挙げられる。異種ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが代々受け継がれるように、ゲノムに安定に組み込むことができる。異種ポリヌクレオチドは、ゲノムに単独で、または組み換えDNA構築体の一部として組み込むことができる。トランスジェニック植物はまた、ゲノム内に複数の異種ポリヌクレオチドを含み得る。各異種ポリヌクレオチドは、トランスジェニック植物に異なる特性を付与してもよい。トランスジェニック植物材料としては、その遺伝子型を異種核酸を存在させることによって変化させたあらゆる細胞、細胞株、カルス、組織、植物部または植物(初期にそのように改変されたトランスジェニック体、および初期のトランスジェニック体から有性交配(sexual cross)または無性増殖によって作られたものを含む)を挙げることができる。従来の植物育種方法、外来ポリヌクレオチドが挿入されない本明細書に記載のゲノム編集手順、またはランダム交配、非組み換えウイルス感染、非組み換え細菌形質転換、非組み換え置換もしくは自然突然変異などの自然に発生する事象による植物ゲノム(染色体または染色体外の)の変化を、形質転換と見なすことは意図されていない。
【0113】
「表現型マーカー」は、可視マーカー、および陽性選択マーカーであるか陰性選択マーカーであるかを選択可能なマーカーを含む、スクリーニングマーカーまたは選択マーカーである。任意の表現型マーカーを使用することができる。具体的には、スクリーニングマーカーまたは選択マーカーは、多くの場合、特定の条件下で、分子または分子を含む細胞を特定、またはそれに有利にもしくは不利に選択することを可能にするDNAセグメントを含む。これらのマーカーは、限定はされないが、RNA、ペプチドもしくはタンパク質などの活性をコードすることができ、あるいはまた、RNA、ペプチド、タンパク質、無機または有機の化合物または組成物などの結合部位を提供することができる。
【0114】
選択マーカーの例としては、限定はされないが、制限酵素部位を含むDNAセグメント;抗生物質(スペクチノマイシン、アンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、Basta、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NEO)、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(HPT)など)などの他の毒性化合物に耐性を示す産生物をコードするDNAセグメント;受容細胞において別に欠失している産物をコードするDNAセグメント(例えば、tRNA遺伝子、栄養要求性マーカー);容易に同定することができる産生物をコードするDNAセグメント(例えば、ベータ−ガラクトシダーゼ、GUS、などの表現型マーカー;緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン色蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)などの蛍光タンパク質;および細胞表面タンパク質など);新しいPCR用部位の世代(例えば、前に並置されていない2つのDNA配列の並列);制限エンドヌクレアーゼまたは他のDNA修飾酵素、化学物質などの作用を受けていない、または受けたDNA配列の含有物、ならびに、同定を可能にする特異的修飾(例えば、メチル化)に要求されるDNA配列の含有物が挙げられる。
【0115】
選択マーカーのさらなる例としては、グルホシネートアンモニウム、ブロモキシニル、イミダゾリノンおよび2,4−ジクロロフェノキシアセテート(2,4−D)などの除草化合物に耐性を付与する遺伝子が挙げられる。例えば、Yarranton,(1992)Curr Opin Biotech 3:506−11;Christopherson et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6314−8;Yao et al.,(1992)Cell 71:63−72;Reznikoff,(1992)Mol Microbiol 6:2419−22;Hu et al.,(1987)Cell 48:555−66;Brown et al.,(1987)Cell 49:603−12;Figge et al.,(1988)Cell 52:713−22;Deuschle et al.,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5400−4;Fuerst et al.,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2549−53;Deuschle et al.,(1990)Science 248:480−3;Gossen,(1993)Ph.D.Thesis,University of Heidelberg;Reines et al.,(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:1917−21;Labow et al.,(1990)Mol Cell Biol 10:3343−56;Zambretti et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3952−6;Baim et al.,(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:5072−6;Wyborski et al.,(1991)Nucleic Acids Res 19:4647−53;Hillen and Wissman,(1989)Topics Mol Struc Biol 10:143−62;Degenkolb et al.,(1991)Antimicrob Agents Chemother 35:1591−5;Kleinschnidt et al.,(1988)Biochemistry 27:1094−104;Bonin,(1993)Ph.D.Thesis,University of Heidelberg;Gossen et al.,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547−51;Oliva et al.,(1992)Antimicrob Agents Chemother 36:913−9;Hlavka et al.,(1985)Handbook of Experimental Pharmacology,Vol.78(Springer−Verlag,Berlin);Gill et al.,(1988)Nature 334:721−4を参照されたい。
【0116】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に関して本明細書中で用いられる用語「配列同一性」または「同一性」は、指定された比較ウィンドウ上で最大に一致するようにアラインされた場合に、2つの配列中の同じである核酸残基またはアミノ酸残基を指す。ゆえに、「配列同一性のパーセンテージ」または「パーセント同一性」は、比較ウィンドウ上の2つの最適にアラインされた配列を比較することによって確定される値を指し、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の一部は、基準配列(付加または欠失を含まない)と比較して、2つの配列の最適アラインメントについて、付加または欠失(すなわちギャップ)を含んでよい。パーセンテージは、双方の配列において、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が起こる位置の数を判定して、マッチする位置の数を得て、マッチする位置の数を、比較ウィンドウ中の位置の総数によって除して、結果に100を乗じることで配列同一性のパーセンテージを得ることによって、算出される。DNA配列とRNA配列との間で配列同一性を算出する場合、DNA配列のT残基が、RNA配列のU残基とアラインすると「同一である」と考えられ得ることが理解されるであろう。第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドとのパーセント相補性を確定する目的で、例えば、(i)第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドの相補体配列(またはその反対)との間のパーセント同一性、および/または(ii)規範的なワトソンおよびクリックの塩基対を生じさせることになる第1のポリヌクレオチドと第2のポリヌクレオチドとの間の塩基のパーセンテージを確定することによって、当該パーセント相補性を得ることができる。
【0117】
National Center for Biotechnology Information(NCBI)のウェブサイトにてオンラインで利用可能なBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)アルゴリズムが、例えば、本明細書中に開示される2つ以上のポリヌクレオチド配列間の(BLASTNアルゴリズム)、またはポリペプチド配列間の(BLASTPアルゴリズム)パーセント同一性を測定するのに用いられてよい。これ以外にも、配列間のパーセント同一性は、Clustalアルゴリズム(例えば、ClustalWまたはClustalV)を用いて実行されてもよい。アラインメントのClustal法を用いるマルチプルアラインメントについて、デフォルト値は、GAP PENALTY=10、そしてGAP LENGTH PENALTY=10に対応してよい。Clustal法を用いた、ペアワイズアラインメント、およびタンパク質配列のパーセント同一性の計算についてのデフォルトパラメータは、KTUPLE=1、GAP PENALTY=3、WINDOW=5、そしてDIAGONALS SAVED=5であってよい。核酸について、これらのパラメータは、KTUPLE=2、GAP PENALTY=5、WINDOW=4、そしてDIAGONALS SAVED=4であってよい。さらにこれ以外にも、配列間のパーセント同一性は、EMBOSSアルゴリズム(例えばneedle)を用いて実行されてよく、パラメータは例えば、BLOSUM matrix(例えばBLOSUM62)を用いて、GAP OPEN=10、GAP EXTEND=0.5、END GAP PENALTY=false、END GAP OPEN=10、END GAP EXTEND=0.5である。
【0118】
本明細書中で、第2の配列と「相補的な」第1の配列を、代わりに、第2の配列と「アンチセンス」の向きにあると呼ぶことができる。
【0119】
種々のポリペプチドアミノ酸配列およびポリヌクレオチド配列が、開示される本発明のある実施形態の特徴として、本明細書中に開示される。本明細書中に開示される配列と少なくとも約70〜85%、85〜90%、または90%〜95%同一である配列の変異体が用いられてよい。これ以外にも、種々のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列は、本明細書中に開示される配列と、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有し得る。種々のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列は、開示される配列と同じ機能/活性、または開示される配列の、少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の機能/活性を有する。
【0120】
本明細書中のCas9タンパク質の各アミノ酸位置の、本明細書中に開示される全てのアミノ酸残基は、例である。あるアミノ酸が互いに類似した構造的特徴および/または電荷の特徴を共有する(すなわち、保存されている)ならば、Cas9中の各位置のアミノ酸は、開示される配列に与えられるそのものであってもよいし、以下のように、保存アミノ酸残基で置換されてもよい(「保存的アミノ酸置換」):
1.以下の小さな、無極性の、または僅かに極性のある脂肪族残基は、互いに置換し得る:Ala(A)、Ser(S)、Thr(T)、Pro(P)、Gly(G);
2.以下の極性のある、負に帯電する残基、およびそれらのアミドは、互いに置換し得る:Asp(D)、Asn(N)、Glu(E)、Gln(Q);
3.以下の極性のある、正に帯電する残基は、互いに置換し得る:His(H)、Arg(R)、Lys(K);
4.以下の無極性の脂肪族残基は、互いに置換し得る:Ala(A)、Leu(L)、Ile(I)、Val(V)、Cys(C)、Met(M);そして
5.以下の大きな芳香族残基は、互いに置換し得る:Phe(F)、Tyr(Y)、Trp(W)。
【0121】
細胞内でRGEN媒介DNAターゲティングを行うための、細胞内のタンパク質構成要素およびRNA構成要素の発現が進歩してきている(例えば、米国仮特許出願第61/868,706号明細書および同第62/036,652号明細書)。そのような戦略では、一般に、標的細胞における組み換えDNA発現が必要である。RGEN媒介DNAターゲティングを媒介するため、細胞内でタンパク質構成要素およびRNA構成要素を提供するさらなる手段に関心が集まっている。
【0122】
開示する本発明の実施形態は、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)の少なくとも1つのタンパク質構成要素、および少なくとも1つの細胞透過ペプチド(CPP)を含む組成物であって、RGENタンパク質構成要素とCPPとは、共有結合的に、または非共有結合的に互いに結合して、RGENタンパク質−CPP複合体を形成している組成物に関する。RGENタンパク質−CPP複合体は、細胞の(i)細胞膜、または(ii)細胞壁および細胞膜を横断することができる。
【0123】
重要なことに、開示される本発明のある実施形態は、RNA構成要素に既に結合している(前結合している)RGENを細胞に輸送するために使用され得る。そのような実施形態は、RGEN RNA構成要素を発現させるために、細胞にDNA構築体を輸送する必要を回避することができ、それ故、細胞に外因性のDNAを導入することにより被るおそれのある影響を免れることができる。しかしながら、開示される本発明は柔軟性があり、他のある実施形態では、RGENタンパク質−CPP複合体を輸送する細胞内で、RNA構成要素を提供する(例えば、発現させる)ことができる。このように提供されるRNA構成要素は、RGENタンパク質−CPP複合体の細胞への輸送/侵入後に、RGENタンパク質構成要素と結合し得る。RNA構成要素の輸送モードにかかわらず、本明細書中のRGENタンパク質−CPP複合体は、RNA酵素要素と結合し、細胞内の特定のDNA配列をターゲティングし得るRGEN−CPP複合体を形成することができる。それ故、開示される本発明は、RGEN媒介DNAターゲティングを実行するために細胞内でRGENを提供する実質的柔軟性を提供する。
【0124】
ある実施形態で開示される組成物は、RGENの少なくとも1つのタンパク質構成要素を含む。本明細書中のRGENは、少なくとも1つのCasタンパク質と少なくとも1つのRNA構成要素を含む複合体を指す。したがって、RGENタンパク質構成要素は、Cas9などのCasタンパク質を指し得る。適切なCasタンパク質の例として、I型、II型、またはIII型CRISPR系の1つまたは複数のCasエンドヌクレアーゼが挙げられる(Bhaya et al.,Annu.Rev.Genet.45:273−297(参照によって本明細書に組み込まれる))。I型CRISPR Casタンパク質は、例えば、Cas3タンパク質またはCas4タンパク質であってよい。II型CRISPR Casタンパク質は、例えば、Cas9タンパク質であってよい。III型CRISPR Casタンパク質は、例えば、Cas10タンパク質であってよい。特定の好ましい実施形態において、Cas9タンパク質が用いられる。ある実施形態におけるCasタンパク質は、細菌タンパク質または古細菌タンパク質であってよい。本明細書中でI〜III型CRISPR Casタンパク質は典型的に、起源が原核生物である;例えば、I型およびIII型Casタンパク質は、細菌種または古細菌種に由来し得るが、II型Casタンパク質(すなわちCas9)は、細菌種に由来し得る。他の実施形態において、適切なCasタンパク質として、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、それらの相同体、またはそれらの修飾型の1つまたは複数が挙げられる。
【0125】
開示される本発明の他の態様において、本明細書中でCasタンパク質は、以下の属のいずれに由来してもよい:アエロピルム(Aeropyrum)属、ピロバキュラム(Pyrobaculum)属、スルフォロブス(Sulfolobus)属、アルカエオグロブス(Archaeoglobus)属、ハロアーキュラ(Haloarcula)属、メタノバクテリウム(Methanobacteriumn)属、メタノコッカス(Methanococcus)属、メタノサルシーナ(Methanosarcina)属、メタノピラス(Methanopyrus)属、ピロコッカス(Pyrococcus)属、ピクロフィルス(Picrophilus)属、サーモプラズマ(Thernioplasnia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、ストレプトミセス(Streptomyces)属、アクウィフェクス(Aquifrx)属、ポルフィロモナス(Porphvromonas)属、クロロビウム(Chlorobium)属、サームス(Thermus)属、バシラス(Bacillus)属、リステリア(Listeria)属、ブドウ球菌(Staphylococcus)属、クロストリディウム(Clostridium)属、サーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)属、マイコプラズマ(Mycoplasma)属、フゾバクテリウム(Fusobacterium)属、アザーカス(Azarcus)属、クロモバクテリウム(Chromobacterium)属、ナイセリア(Neisseria)属、ニトロソモナス(Nitrosomonas)属、デサルフォビブリオ(Desulfovibrio)属、ジオバクター(Geobacter)属、マイクロコッカス(Myrococcus)属、カンピロバクター(Campylobacter)属、ウォリネラ(Wolinella)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、エルウィニア(Erwinia)属、エシェリキア(Escherichia)属、レジオネラ(Legionella)属、メチロコッカス(Methylococcus)属、パスツレラ(Pasteurella)属、フォトバクテリウム(Photobacterium)属、サルモネラ(Salmonella)属、キサントモナス(Xanthomonas)属、エルシニア(Yersinia)属、連鎖球菌(Streptococcus)属、トレポネーマ(Treponema)属、フランシセラ(Francisella)属、またはテルモトガ(Thermotoga)属。これ以外にも、本明細書中のCasタンパク質は、例えば、米国特許出願公開第2010/0093617号明細書(この文献は参照によって本明細書に組み込まれる)に開示される配列番号462〜465、467〜472、474〜477、479〜487、489〜492、494〜497、499〜503、505〜508、510〜516、または517〜521のいずれによってコードされてもよい。
【0126】
RGENタンパク質構成要素は、例えば、Cas9アミノ酸配列を含み得る。この型のタンパク質構成要素を含むRGENは、通常、RGENのエンドヌクレアーゼ構成要素としてCas9を有すると見なされ得る。本明細書中でCas9タンパク質、および本明細書中で他のCasタンパク質のアミノ酸配列は、例えば、連鎖球菌(Streptococcus)属種(例えば、化膿連鎖球菌(S.pyogenes)、肺炎球菌(S.pneumoniae)、サーモフィルス菌(S.thermophilus)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(S.agalactiae)、ストレプトコッカス・パラサングイニス(S.parasanguinis)、ストレプトコッカス・オラリス(S.oralis)、ストレプトコッカス・サリバリウス(S.salivarius)、ストレプトコッカス・マカカエ(S.macacae)、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ(S.dysgalactiae)、ストレプトコッカス・アンギノサス(S.anginosus)、ストレプトコッカス・コンステラトゥス(S.constellatus)、ストレプトコッカス・プセウドポルシヌス(S.pseudoporcinus)、ストレプトコッカス・ミュータンス(S.mutans))、リステリア(Listeria)属種(例えばリステリア・イノキュア(L.innocua))、スピロプラズマ(Spiroplasma)属種(例えばスピロプラズマ・アピス(S.apis)、スピロプラズマ・シルフィディコーラ(S.syrphidicola))、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcaceae)科種、アトポビウム(Atopobium)属種、ポルフィロモナス(Porphyromonas)属種(例えばポルフィロモナス・カトニアエ(P.catoniae))、プレボテーラ(Prevotella)属種(例えばプレボテラ・インテルメディア(P.intermedia)、ベイロネラ(Veillonella)属種、トレポネーマ(Treponema)属種(例えば、トレポネーマ・ソクランスキィ(T.socranskii)、トレポネーマ・デンティコラ(T.denticola))、カプノシトファガ(Capnocytophaga)属種、フィネゴルディア(Finegoldia)属種(例えばフィネゴルディア・マグナ(F.magna))、コリオバクテリア(Coriobacteriaceae)科種(例えばC.バクテリウム(C.bacterium))、オルセネラ(Olsenella)属種(例えばオルセネラ・プロフューザ(O.profusa))、ヘモフィルス(Haemophilus)属種(例えば、ヘモフィルス・スプトルム(H.sputorum)、ヘモフィルス・ピットマニエ(H.pittmaniae))、パスツレラ(Pasteurella)属種(例えばパスツレラ・ベッティアエ(P.bettyae))、オリビバクター(Olivibacter)属種(例えばオリビバクター・シティエンシス(O.sitiensis))、エピリソニモナス(Epilithonimonas)属種(例えばエピリソニモナス・テナックス(E.tenax))、メソニア(Mesonia)属種(例えばメソニア・モビリス(M.mobilis))、ラクトバシラス(Lactobacillus)属種、バシラス(Bacillus)属種(例えばセレウス菌(B.cereus))、アクイマリーナ(Aquimarina)属種(例えばアクイマリーナ・ムエレリ(A.muelleri))、クリセオバクテリウム(Chryseobacterium)属種(例えばクリセオバクテリウム・パルストレ(C.palustre))、バクテロイデス(Bacteroides)属種(例えばバクテロイデス・グラミニソルベンス(B.graminisolvens))、ナイセリア(Neisseria)属種(例えば髄膜炎菌(N.meningitidis))、フランシセラ(Francisella)属種(例えばフランシセラ・ノビシダ(F.novicida))、またはフラボバクテリウム(Flavobacterium)属種(例えば、フラボバクテリウム・フリギダリウム(F.frigidarium)、フラボバクテリウム・ソリ(F.soli))に由来してよい。本明細書中のある態様において、化膿連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9が好ましい。別の例として、Cas9タンパク質は、Chylinski et al.(RNA Biology 10:726−737)(この文献は参照によって本明細書に組み込まれる)に開示されるCas9タンパク質のいずれであってもよい。
【0127】
したがって、本明細書中でCas9タンパク質の配列は、例えば、GenBank登録番号G3ECR1(サーモフィルス菌(S.thermophilus))、WP_026709422、WP_027202655、WP_027318179、WP_027347504、WP_027376815、WP_027414302、WP_027821588、WP_027886314、WP_027963583、WP_028123848、WP_028298935、Q03JI6(サーモフィルス菌(S.thermophilus))、EGP66723、EGS38969、EGV05092、EHI65578(ストレプトコッカス・プセウドポルシヌス(S.pseudoporcinus))、EIC75614(ストレプトコッカス・オラリス(S.oralis))、EID22027(ストレプトコッカス・コンステラトゥス(S.constellatus))、EIJ69711、EJP22331(ストレプトコッカス・オラリス(S.oralis))、EJP26004(ストレプトコッカス・アンギノサス(S.anginosus))、EJP30321、EPZ44001(化膿連鎖球菌(S.pyogenes))、EPZ46028(化膿連鎖球菌(S.pyogenes))、EQL78043(化膿連鎖球菌(S.pyogenes))、EQL78548(化膿連鎖球菌(S.pyogenes))、ERL10511、ERL12345、ERL19088(化膿連鎖球菌(S.pyogenes))、ESA57807(化膿連鎖球菌(S.pyogenes))、ESA59254(化膿連鎖球菌(S.pyogenes))、ESU85303(化膿連鎖球菌(S.pyogenes))、ETS96804、UC75522、EGR87316(ストレプトコッカス・ディスガラクティエ(S.dysgalactiae))、EGS33732、EGV01468(ストレプトコッカス・オラリス(S.oralis))、EHJ52063(ストレプトコッカス・マカカエ(S.macacae))、EID26207(ストレプトコッカス・オラリス(S.oralis))、EID33364、EIG27013(ストレプトコッカス・パラサングイニス(S.parasanguinis))、EJF37476、EJO19166(連鎖球菌(Streptococcus)属種BS35b)、EJU16049、EJU32481、YP_006298249、ERF61304、ERK04546、ETJ95568(ストレプトコッカス・アガラクティエ(S.agalactiae))、TS89875、ETS90967(連鎖球菌(Streptococcus)属種SR4)、ETS92439、EUB27844(連鎖球菌(Streptococcus)属種BS21)、AFJ08616、EUC82735(連鎖球菌(Streptococcus)属種CM6)、EWC92088、EWC94390、EJP25691、YP_008027038、YP_008868573、AGM26527、AHK22391、AHB36273、Q927P4、G3ECR1、またはQ99ZW2(化膿連鎖球菌(S.pyogenes))(これらは参照によって組み込まれる)に開示されるCas9アミノ酸配列のいずれを含んでもよい。これらのCas9タンパク質配列のいずれの変異体が用いられてもよいが、本明細書中のRNA構成要素と関連する場合に、DNAに向けた、特異的な結合活性を、そして場合によっては切断またはニッキング分解活性を有するべきである。そのような変異体は、基準Cas9のアミノ酸配列と少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含んでよい。
【0128】
これ以外にも、本明細書中のCas9タンパク質は、例えば、米国特許出願公開第2010/0093617号明細書(参照によって本明細書に組み込まれる)に開示される、配列番号462(サーモフィルス菌(S.thermophilus))、474(サーモフィルス菌(S.thermophilus))、489(ストレプトコッカス・アガラクティエ(S.agalactiae))、494(ストレプトコッカス・アガラクティエ(S.agalactiae))、499(ストレプトコッカス・ミュータンス(S.mutans))、505(化膿連鎖球菌(S.pyogenes))、または518(化膿連鎖球菌(S.pyogenes))のいずれによってコードされてもよい。さらにこれ以外にも、本明細書中のCas9タンパク質は、例えば、配列番号3のアミノ酸配列、または配列番号3の残基1〜1368、2〜1368または2〜1379を含んでよい。さらにこれ以外にも、Cas9タンパク質は、例えば、前述のアミノ酸配列のいずれかと少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含んでよい。そのような変異体Cas9タンパク質は、本明細書中のRNA構成要素と関連する場合に、DNAに向けた特異的な結合活性を、そして場合によっては、切断またはニッキング活性を有するべきである。
【0129】
本明細書中で用いられるCasタンパク質(例えばCas9)の起源は、RNA構成要素が由来する同じ種であってもよいし、異なる種であってもよい。例えば、連鎖球菌(Streptococcus)属種(例えば、化膿連鎖球菌(S.pyogenes)またはサーモフィルス菌(S.thermophilus))に由来するCas9タンパク質を含むRGENは、同じ連鎖球菌(Streptococcus)属種に由来する配列(例えば、crRNA反復配列、tracrRNA配列)を有する少なくとも1つのRNA構成要素と複合化されてよい。これ以外にも、本明細書中で用いられるCasタンパク質(例えばCas9)の起源は、RNA構成要素が由来するのとは異なる種であってよい(Casタンパク質およびRNA構成要素は、互いに異種起源であってよい);そのような異種起源のCas/RNA構成要素RGENは、DNAターゲティング活性を有するはずである。
【0130】
特定の標的DNA配列に向けた、本明細書中のCasタンパク質の結合活性および/またはエンドヌクレオチド結合分解活性の判定は、例えば米国特許第8697359号明細書(この文献は参照によって本明細書に開示される)に開示されるような、当該技術分野において知られているあらゆる適切なアッセイによって評価されてよい。判定は、例えば、細胞中でCasタンパク質および適切なRNA構成要素を発現させてから、indelの存在が予測されるDNA標的部位を調査することによってなされてよい(Casタンパク質は、この特定のアッセイにおいて、典型的に完全なエンドヌクレオチド結合分解活性[二本鎖切断活性]を有することになる)。予測される標的部位での改変/修飾(例えば、indel)の存在についての調査は、例えば、DNA配列決定法を介して、または標的配列の機能の欠如についてアッセイすることにより改変/修飾形成を推測することによって、なされ得る。別の例において、Casタンパク質活性は、標的部位中の配列、またはその近くの配列に相同である配列を含むドナーDNAが提供された細胞において、Casタンパク質および適切なRNA構成要素を発現させることによって判定され得る。標的部位でのドナーDNA配列の存在(例えば、ドナーと標的配列との首尾良いHRによって予測されるであろう)により、ターゲティングが起こったことが示されることになる。さらに別の例において、Casタンパク質活性は、Casタンパク質および適切なRNA構成要素を適切な標的配列を含有するDNAポリヌクレオチドと混合するインビトロアッセイにより決定し得る。このアッセイは、切断活性が欠失したCasタンパク質による結合(例えば、ゲルシフト)、またはポリヌクレオチド鎖切断能のあるCasタンパク質による切断を検出するために使用することができる。
【0131】
本明細書中のCasタンパク質、例えばCas9は、ある態様では、さらに、異種の核局在化配列(NLS)を含む。本明細書中の異種NLSアミノ酸配列は、例えば、本明細書中の細胞の核内で検出可能な量のCasタンパク質またはCasタンパク質−CPP複合体の蓄積を駆動するのに十分な強度を有し得る。NLSは、塩基性の、正に帯電する残基(例えば、リシンおよび/またはアルギニン)の1つ(一分節)または複数(例えば、二分節)の短い配列(例えば、2〜20残基)を含んでよく、そして、タンパク質表面上に曝されるのであれば、Casアミノ酸配列中のどこに位置決めされてもよい。NLSは、例えば、本明細書中のCasタンパク質のN末端またはC末端に機能可能なように結合してよい。例えば、2つ以上のNLS配列が、Casタンパク質に、例えばCasタンパク質のN末端およびC末端に結合してよい。本明細書中の適切なNLS配列の非限定的な例としては、米国特許第6660830号明細書および同第7309576号明細書(例えば、その中の表1)に開示されるものが挙げられる(これらの文献はいずれも参照によって本明細書に組み込まれる)。本明細書中の有用なNLSの別の例としては、配列番号3のアミノ酸残基1373〜1379が挙げられる。本明細書中に開示されるCasタンパク質は、例えば、CPPと結合させることができる(CPPに共有結合したCasタンパク質の例)。そのようなCas−CPP融合タンパク質がまた上記のようなNLSを含むことができることは理解されよう。Casタンパク質が、異なる細胞小器官(例えば、ミトコンドリア)をターゲティングするアミノ酸配列と融合する実施形態においては、そのようなCasタンパク質が、通常、NLSを含まないこともまた理解されよう。
【0132】
ある実施形態において、Casタンパク質、およびその、Casタンパク質によるDNA特異的ターゲティングを導く各RNA構成要素(例えばcrRNA)は、細胞、特に非原核細胞と異種である。これらのRGEN構成要素の異種の本質は、Casタンパク質とそれらの各RNA構成要素が、原核生物(細菌および古細菌)中に存在することしか知られていないという事実によるものである。
【0133】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1つ以上の異種タンパク質ドメイン(例えば、Casタンパク質に加えて1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のドメイン)を含む融合タンパク質の一部である。これらの実施形態は、例えば、CPPに共有結合するCasタンパク質と、1つ以上のさらなる異種アミノ酸配列を包含する。他の実施形態は、CPPを含まない1つ以上のさらなる異種アミノ酸配列に共有結合するCasタンパク質を包含し得る(そのような実施形態では、CPPは、Cas融合タンパク質に非共有結合的に結合するであろう)。Casタンパク質を含む融合タンパク質は、任意のさらなるタンパク質配列を、そして場合によっては任意の2つのドメイン間に、例えばCasと第1の異種ドメインとの間にリンカー配列を含み得る。本明細書中でCasタンパク質に融合し得るタンパク質ドメインの例として、限定されないが、エピトープタグ(例えば、ヒスチジン[His、ポリ−ヒスチジン]、V5、FLAG、インフルエンザヘマグルチニン[HA]、myc、VSV−G、チオレドキシン[Trx])、リポータ(例えば、グルタチオン−5−トランスフェラーゼ[GST]、ホースラディッシュペルオキシダーゼ[HRP]、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ[CAT]、ベータ−ガラクトシダーゼ、ベータ−グルクロニダーゼ[GUS]、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質[GFP]、HcRed、DsRed、シアン色蛍光タンパク質[CFP]、黄色蛍光タンパク質[YFP]、青色蛍光タンパク質[BFP])、および以下の活性の1つまたは複数を有するドメインが挙げられる:メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性(例えば、VP16またはVP64)、転写抑制活性、転写終止因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性、および核酸結合活性。他の実施形態におけるCasタンパク質は、DNA分子または他の分子、例えばマルトース結合タンパク質(MBP)、S−タグ、Lex A DNA結合ドメイン(DBD)、GAL4A DNA結合ドメイン、および単純ヘルペスウィルス(HSV)VP16と結合するタンパク質と融合し得る。本明細書中でCasタンパク質を含む融合タンパク質の一部であってよい付加的なドメインが、米国特許出願公開第2011/0059502号明細書に開示されており、この文献は参照によって本明細書に組み込まれる。Casタンパク質が異種起源のタンパク質(例えば転写因子)に融合する実施形態において、Casタンパク質は、(本明細書中の適切なRNA構成要素と複合した場合に)DNA認識および結合活性を有するが、DNAニッキング活性も切断活性も有していない。本明細書中に開示されるCasタンパク質は、例えば、CPPと融合することができる(CPPに共有結合したCasタンパク質の例)。そのようなCas−CPP融合タンパク質はまた、必要に応じて、上記のような異種ドメインの1つ以上と融合し得ることは理解されよう。
【0134】
本明細書中のCasタンパク質に結合することができる異種ドメインの他の例としては、特定の細胞小器官にタンパク質をターゲティングするアミノ酸配列(すなわち、局在化シグナル)が挙げられる。ターゲティングされ得る細胞小器官の例としては、ミトコンドリアおよびクロロプラストが挙げられる。通常、そのようなターゲティングドメインは、エキストラ核DNA部位をターゲティングする場合、NLSに代えて使用される。ミトコンドリアターゲティング配列(MTS)は、例えば、Casタンパク質のN末端またはその近傍に位置し得る。MTSの例は、米国特許出願公開第2007/0011759号明細書および同第2014/0135275号明細書に開示されている(これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる)。クロロプラストターゲティング配列は、例えば、米国特許出願公開第2010/0192262号明細書および同第2012/0042412号明細書に開示されているものであり得る(これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0135】
RGENのタンパク質構成要素は、例えば、細胞の染色体またはエピソーム上の標的部位配列に相補的な配列を含む少なくとも1つのRNA構成要素と結合することができる(これにより、完全なRGENを構成する)。そのような実施形態のRGENは、標的部位配列に結合することができ、場合により、標的部位配列のDNA一本鎖または二本鎖を切断することができる。RGENは、例えば、DNA標的配列の一本鎖または二本鎖を切断することができる。他の例では、RGENは、DNA標的配列の二本鎖を切断することができる。これらの全ての実施形態において、RGENタンパク質構成要素は、RGENタンパク質−CPP複合体中の少なくとも1つのCPPに共有結合的に、または非共有結合的に結合することができることは理解されよう。本明細書中でのRGENタンパク質−CPP複合体とRNA構成要素との結合は、RGEN−CPP複合体の形成と見なされ得る。同様に、RGENに関する本明細書中の開示は、特に断らない限り、RGEN−CPP複合体のRGEN構成要素に適用することができる。
【0136】
DNA標的配列の双方の鎖を切断することができる本明細書中のRGENは典型的に、エンドヌクレアーゼドメインの全てを機能的な状態で有するCasタンパク質(例えば、各エンドヌクレアーゼドメインの一部または全ての活性を保持する野生型エンドヌクレアーゼドメインまたはその変異体)を含む。ゆえに、Casタンパク質の各エンドヌクレアーゼドメインの一部または全ての活性を保持する野生型Casタンパク質(例えば、本明細書中に開示されるCas9タンパク質)またはその変異体が、DNA標的配列の双方の鎖を切断することができるRGENの適切な例である。機能的なRuvCおよびHNHヌクレアーゼドメインを含むCas9タンパク質は、DNA標的配列の双方の鎖を切断することができるCasタンパク質の例である。本明細書中でDNA標的配列の双方の鎖を切断することができるRGENは典型的に、カット部位にて平滑末端(すなわち、ヌクレオチド突出部がない)が形成されるように、双方の鎖を同じ位置にてカットする。
【0137】
DNA標的配列の一本鎖を切断することができる本明細書中のRGENは、本明細書中で、ニッカーゼ活性(例えば、部分的切断能力)を有すると特徴付けられ得る。本明細書中でCasニッカーゼ(例えばCas9ニッカーゼ)は典型的に、CasがDNA標的配列の一本鎖のみを切断する(すなわち、ニックを入れる)ことを可能にする一機能的エンドヌクレアーゼドメインを含む。例えば、Cas9ニッカーゼは、(i)突然変異した、機能不全RuvCドメイン、および(ii)機能的HNHドメイン(例えば野生型HNHドメイン)を含んでよい。別の例として、Cas9ニッカーゼは、(i)機能的RuvCドメイン(例えば野生型RuvCドメイン)、および(ii)突然変異した、機能不全HNHドメインを含んでよい。
【0138】
本明細書中での使用に適したCas9ニッカーゼの非限定的な例が、Gasiunas et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.109:E2579−E2586)、Jinek et al.(Science 337:816−821),Sapranauskas et al.(Nucleic Acids Res.39:9275−9282)、および米国特許出願公開第2014/0189896号明細書に開示されており、これらの文献は参照によって本明細書に組み込まれる。例えば、本明細書中のCas9ニッカーゼは、Asp−31置換(例えば、Asp−31−Ala)(突然変異したRuvCドメインの例)、またはHis−865置換(例えばHis−865−Ala)、Asn−882置換(例えばAsn−882−Ala)、もしくはAsn−891置換(例えばAsn−891−Ala)(突然変異したHNHドメインの例)を有するサーモフィルス菌(S.thermophilus)Cas9を含んでよい。また例えば、本明細書中のCas9ニッカーゼは、Asp−10置換(例えばAsp−10−Ala)、Glu−762置換(例えばGlu−762−Ala)、もしくはAsp−986置換(例えばAsp−986−Ala)(突然変異したRuvCドメインの例)、またはHis−840置換(例えばHis−840−Ala)、Asn−854置換(例えば、Asn−854−Ala)、もしくはAsn−863置換(例えばAsn−863−Ala)(突然変異したHNHドメインの例)を有する化膿連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9を含んでよい。化膿連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9に関して、3つのRuvCサブドメインは概して、アミノ酸残基1〜59、718〜769、および909〜1098にそれぞれ位置決めされ、HNHドメインは、アミノ酸残基775〜908に位置決めされる(Nishimasu et al.,Cell 156:935−949)。
【0139】
本明細書中のCas9ニッカーゼは、必要に応じて、細胞において種々の目的で用いられ得る。例えば、Cas9ニッカーゼは、適切なドナーポリヌクレオチドとの、DNA標的部位配列での、またはその近くでのHRを誘発するのに用いられてよい。ニックが入ったDNAは、NHEJプロセス用の担体ではなく、HRプロセスによって認識されるので、特定の標的部位のニッキングDNAにより、部位は、適切なドナーポリヌクレオチドとのHRをより受け入れ易くなるはずである。
【0140】
別の例として、一対のCas9ニッカーゼが、DNAターゲティングの特異度を高めるのに用いられてよい。一般にこれは、2つのCas9ニッカーゼを与えることによってなされ得、これらが、ガイド配列が様々なRNA構成要素との関連により、所望のターゲティング領域における反対側の鎖のDNA配列近くを標的とし、かつそこにニックを入れる。各DNA鎖のそのような近くでの切断により、DSB(すなわち、一本鎖突出部を有するDSB)が生じ、これはその後、NHEJ(indel形成の原因となる)またはHR(提供されるならば、適切なドナーポリヌクレオチドとの組換えの原因となる)用の担体として認識される。これらの実施形態における各ニックは、例えば、互いと少なくとも約5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、または100(または5から100までのあらゆる整数)塩基離れてよい。先に記載されるように、本明細書中で1つまたは2つのCas9ニッカーゼタンパク質が、Cas9ニッカーゼ対に用いられてよい。例えば、突然変異したRuvCドメインを有するが、機能するHNHドメインのないCas9ニッカーゼ(すなわち、Cas9 HNH
+/RuvC
−)が用いられてよい(例えば、化膿連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9 HNH
+/RuvC
−)。各Cas9ニッカーゼ(例えば、Cas9 HNH
+/RuvC
−)は、各ニッカーゼをそれぞれの特定のDNA部位に標的として向けるガイドRNA配列を有する本明細書中の適切なRNA構成要素を用いることによって、互いに近い(最大で100塩基対離れている)特定のDNA部位に導かれることになる。
【0141】
ある実施形態におけるRGENは、DNA標的部位配列に結合することができるが、標的部位配列にていかなる鎖も切断しない。そのようなRGENは、全ヌクレアーゼドメインが、突然変異した、機能不全であるCasタンパク質を含んでよい。例えば、DNA標的部位配列に結合することができるが、標的部位配列にていかなる鎖も切断しない本明細書中のCas9タンパク質は、突然変異した、機能不全RuvCドメイン、および突然変異した、機能不全HNHドメインの双方を含んでよい。そのようなCas9タンパク質の非限定的な例は、先に開示されるRuvCヌクレアーゼドメイン突然変異およびHNHヌクレアーゼドメイン突然変異(例えば、Asp−10置換、例えばAsp−10−Ala、およびHis−840置換、例えばHis−840−Alaを有する化膿連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9)のいずれかを含む。標的DNA配列に結合するがこれを切断しない本明細書中のCasタンパク質は、遺伝子発現を調整するために用いられてよく、例えば、その場合には、Casタンパク質は、転写因子(またはその一部)(例えば、リプレッサまたは活性化因子、例えば本明細書中で開示されるもののいずれか)と融合し得る。例えば、Asp−10置換(例えばAsp−10−Ala)およびHis−840置換(例えばHis−840−Ala)を有する化膿連鎖球菌(S.pyogenes)Cas9を含むCas9は、VP16転写活性化因子ドメインまたはVP64転写活性化因子ドメインに融合し得る。そのようなRGENのRNA構成要素に用いられるガイド配列は、例えば、遺伝子プロモータまたは他の調節要素(例えばイントロン)中のDNA配列と相補的であることになる。
【0142】
本明細書中のRGENは、標的部位配列、および非従来型酵母の染色体、エピソーム、またはゲノム中の他のあらゆるDNA分子における標的部位配列の1本鎖または2本鎖に結合することができ、そして場合によってはこれを切断することができる。標的配列のこの認識および結合は、RGENのRNA構成要素が、標的配列の鎖と相補的である配列(ガイド配列)を含むならば、特異的である。ある実施形態における標的部位は、固有であってよい(すなわち、対象ゲノム中に標的部位配列が1つ存在する)。
【0143】
本明細書中で標的配列の長さは、例えば、少なくとも13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30ヌクレオチド;13から30ヌクレオチド;17から25ヌクレオチド;または17から20ヌクレオチドであってよい。この長さは、PAM配列を含んでも除いてもよい。また、本明細書中で標的配列の鎖は、ガイド配列とハイブリダイズし、かつCasタンパク質またはCasタンパク質複合体の、標的配列への配列特異的結合を導くのに十分な、(crRNAまたはgRNAの)ガイド配列との相補性を有する(適切なPAMが標的配列に隣接する場合、以下参照)。ガイド配列と、その対応するDNA標的配列の鎖との相補性の程度は、例えば、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。本明細書中で標的部位は、例えば、遺伝子産物(例えば、タンパク質またはRNA)をコードする配列中に位置決めされてもよいし、非コード配列(例えば、調節配列または「ジャンク」配列)中に位置決めされてもよい。
【0144】
PAM(プロトスペーサ隣接モチーフ)配列が、標的部位配列に隣接してよい。PAM配列は、本明細書中のRGENによって認識される短いDNA配列である。関連するPAM、およびDNA標的配列の最初の11のヌクレオチドは、Cas9/gRNAターゲティングおよび切断にとっておそらく重要である(Jiang et al.,Nat.Biotech.31:233−239)。本明細書中でPAM配列の長さは、用いられるCasタンパク質またはCasタンパク質複合体に応じて変動し得るが、典型的には、例えば、2、3、4、5、6、7、または8ヌクレオチド長である。PAM配列は、例えば、標的部位中で、RNA構成要素のガイド配列と相補的である鎖と相補的である標的部位配列から直ぐ下流にあり、またはその下流2または3ヌクレオチド以内にある。RGENが、RNA構成要素と複合化した、エンドヌクレオチド結合分解活性のあるCas9タンパク質である本明細書中の実施形態において、Cas9は、RNA構成要素によって導かれて標的配列に結合し、PAM配列の上流にある第3のヌクレオチド位置の直ぐ5’側の双方の鎖を切断する。標的部位の以下の例を考える:PAM配列:
【化1】
Nは、A、C、T、またはGであってよく、Xは、この例の配列において、A、C、T、またはGであってよい(Xは、N
PAMと呼ぶこともできる)。PAM配列は、この例において、XGGである(下線が引かれている)。適切なCas9/RNA構成要素複合体は、この標的を、二重下線が引かれたNの直ぐ5’側で切断することになる。配列番号43におけるNのストリングは、例えば、本明細書中のRNA構成要素中のガイド配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一の標的配列を表す(DNA標的配列のどのTも、RNAガイド配列の全てのUとアラインすることになる)。Cas9複合体のRNA構成要素のガイド配列は、この標的配列(本明細書中の標的部位を代表する)での認識および結合の際に、Nのストリングの相補体配列とアニールすることになる;ガイド配列と標的部位相補体とのパーセント相補性は、例えば、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。Cas9ニッカーゼがゲノム中の配列番号43を標的とするのに用いられる場合、ニッカーゼは、ニッカーゼ中のどのエンドヌクレアーゼドメインが機能不全であるかに応じて、相補鎖の、二重下線が引かれたNの直ぐ5’側、または同じ位置にニックを入れることになる。核酸分解活性を有していないCas9(RuvCドメインおよびHNHドメインの双方が機能不全)がゲノム中の配列番号43を標的とするのに用いられる場合、標的配列を認識してこれに結合することになるが、配列にいかなるカットも入れることはない。
【0145】
本明細書中でPAMは典型的に、利用されることになるRGENのタイプを考慮して選択される。本明細書中でPAM配列は、Cas、例えば、Casが由来し得る、本明細書中に開示されるあらゆる種に由来する、例えばCas9を含むRGENによって認識されるものであってよい。ある実施形態において、PAM配列は、化膿連鎖球菌(S.pyogenes)、サーモフィルス菌(S.thermophilus)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(S.agalactiae)、髄膜炎菌(N.meningitidis)、トレポネーマ・デンティコラ(T.denticola)、またはフランシセラ・ノビシダ(F.novicida)に由来するCas9を含むRGENによって認識されるものであってよい。例えば、化膿連鎖球菌(S.pyogenes)に由来する適切なCas9は、NGGのPAM配列(配列番号44;Nは、A、C、T、またはGであってよい)を有するゲノム配列を標的とするのに用いられ得る。他の例として、以下のPAM配列を有するDNA配列を標的とする場合、適切なCas9が、以下の種のいずれかに由来してよい:サーモフィルス菌(S.thermophilus)(NNAGAA[配列番号45])、ストレプトコッカス・アガラクティエ(S.agalactiae)(NGG[配列番号44])、NNAGAAW[配列番号46、Wは、AまたはTである]、NGGNG[配列番号47])、髄膜炎菌(N.meningitidis)(NNNNGATT[配列番号48])、トレポネーマ・デンティコラ(T.denticola)(NAAAAC[配列番号49])、またはフランシセラ・ノビシダ(F.novicida)(NG[配列番号50])(これらの特定の全PAM配列中のNは、A、C、T、またはGである)。本明細書中の有用なCas9/PAMの他の例として、Shah et al.(RNA Biology 10:891−899)およびEsvelt et al.(Nature Methods 10:1116−1121)に開示されるものが挙げられ、これらの文献は参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書中の標的配列の例は、配列番号43に従うが、「XGG」PAMは、前述のPAMのいずれか1つによって置換されている。
【0146】
本明細書中のRNA構成要素は、細胞の染色体またはエピソームの標的部位配列に相補的な配列を含み得る。RGENは標的部位配列に特異的に結合することができ、そして場合によっては、その標的部位配列の一本鎖または二本鎖を、この配列相補体に基づいて切断することができる。したがって、開示される発明のある実施形態では、RNA構成要素の相補配列は、ガイド配列または可変ターゲティングドメインと呼ぶこともできる。
【0147】
本明細書中のRNA構成要素のガイド配列(例えば、crRNAまたはgRNA)は、例えば、少なくとも13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30リボヌクレオチド長;13〜30リボヌクレオチド長;17〜25リボヌクレオチド長;または17〜20リボヌクレオチド長であってよい。一般に、本明細書中のガイド配列は、標的配列とハイブリダイズし、かつCasタンパク質またはCasタンパク質複合体の、標的配列への配列特異的結合を導くのに十分な、標的DNA配列の鎖との相補性を有する(適切なPAMが標的配列に隣接する場合)。例えば、ガイド配列と、その対応するDNA標的配列との相補性の程度は、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。ガイド配列は、細胞中のDNA標的配列にRGENを標的として向けるように、然るべく操作されてよい。
【0148】
本明細書中のRNA構成要素は、例えば、ガイド配列およびリピート(tracrRNAメイト)配列を含むcrRNAを含んでよい。ガイド配列は典型的に、crRNAの5’末端に、またはその近く(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の塩基以内)に位置決めされる。crRNAのガイド配列の下流には、tracrRNAの5’末端の配列と相補的であり、かつこれとハイブリダイズすることができる「リピート」配列または「tracrRNAメイト」配列がある。ガイド配列およびtracrRNAメイト配列は、直接隣接してもよいし、例えば、1、2、3、4、またはそれ以上の塩基によって分離されてもよい。tracrRNAメイト配列は、例えば、tracrRNAの5’末端に対する配列相補性が、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。一般に、相補性の程度は、2つの配列のうちのより短い方の全長に沿う、tracrRNAメイト配列およびtracrRNA配列の5’末端の最適アラインメントに関するものであってよい。本明細書中のtracrRNAメイト配列の長さは、例えば、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18リボヌクレオチド長であってよく、そしてtracrRNAの5’末端の同じ、または類似した長さ(例えば、プラスマイナス1、2、3、4、または5塩基)の配列とハイブリダイズする。本明細書中のtracrRNAメイト配列の適切な例が、配列番号51(guuuuuguacucucaagauuua)、配列番号52(guuuuuguacucuca)、配列番号53(guuuuagagcua)、もしくは配列番号54(guuuuagagcuag)、またはその変異体を含み、これらは、(i)少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有し、かつ(ii)tracrRNAの5’末端配列とアニールすることができる。本明細書中のcrRNAの長さは、例えば、少なくとも約18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、もしくは48リボヌクレオチド;約18〜48リボヌクレオチド;または約25〜50リボヌクレオチドであってよい。
【0149】
tracrRNAは、II型CRISPR系のCas9タンパク質がRGEN中に含まれる実施形態において、crRNAと共に含むことができる。本明細書中のtracrRNAは、5’から3’の方向に、(i)crRNAのリピート領域(tracrRNAメイト配列)とアニールする配列、および(ii)ステムループ含有部分を含む。(i)の配列の長さは、例えば、先に開示されるtracrRNAメイト配列長のいずれかと同じであってもよいし、類似(例えば、プラスマイナス1、2、3、4、または5塩基)であってもよい。本明細書中のtracrRNA(すなわち、配列構成要素[i]および[ii])の全長は、例えば、少なくとも約30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、または90(または30から90までのあらゆる整数)リボヌクレオチドであってよい。tracrRNAはさらに、3’末端に1、2、3、4、5、またはそれ以上のウラシル残基を含んでよく、これは、転写ターミネータ配列によるtracrRNAの発現によって存在し得る。
【0150】
本明細書中のtracrRNAは、例えば、Cas9配列が由来してよい、先に記載されるいずれの細菌種に由来してもよい。適切なtracrRNA配列の例として、米国特許第8697359号明細書、およびChylinski et al.(RNA Biology 10:726−737)に開示されるものが挙げられ、これらの文献は参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書中の好ましいtracrRNAは、連鎖球菌(Streptococcus)属種のtracrRNA(例えば、化膿連鎖球菌(S.pyogenes)、サーモフィルス菌(S.thermophilus))に由来してよい。本明細書中のtracrRNAの他の適切な例は、以下を含んでよく:
配列番号55:
uagcaaguuaaaauaaggcuaguccguuaucaacuugaaaaaguggcaccgagucggugc、
配列番号56:
uagcaaguuaaaauaaggcuaguccguuaucaacuugaaaaagug、または
配列番号57:
uagcaaguuaaaauaaggcuaguccguuauca、
これらは化膿連鎖球菌(S.pyogenes)のtracrRNAに由来する。本明細書中のtracrRNAの他の適切な例は、以下:
配列番号58:
uaaaucuugcagaagcuacaaagauaaggcuucaugccgaaaucaacacccugucauuuuauggcaggguguuuucguuauuuaa、
配列番号59:
ugcagaagcuacaaagauaaggcuucaugccgaaaucaacacccugucauuuuauggcaggguguuuucguuauuua、または
配列番号60:
ugcagaagcuacaaagauaaggcuucaugccgaaaucaacacccugucauuuuauggcagggugu、
を含んでよく、これらは、サーモフィルス菌(S.thermophilus)のtracrRNAに由来する。
【0151】
本明細書中のtracrRNAのさらに他の例は、これらのtracrRNA配列番号の変異体であって、(i)tracrRNA配列番号と少なくとも約80%、85%、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有し、かつ(ii)tracrRNAとして機能することができる変異体である(例えば、5’末端配列は、crRNAのtracrRNAメイト配列にアニールすることができ、5’末端配列から下流の配列は、1つまたは複数のヘアピンを形成することができ、変異体tracrRNAは、Cas9タンパク質と複合体を形成することができる)。
【0152】
本明細書中に開示されるRGENのRNA構成要素(または、別の言い方をすれば、RGENタンパク質構成要素と結合し得るRNA構成要素)は、例えば、tracrRNAに機能可能なように結合する、またはこれに融合するcrRNAを含むガイドRNA(gRNA)を含み得る。ある好ましい実施形態のgRNAのcrRNA構成要素は、tracrRNA構成要素の上流にある(すなわち、例えばgRNAは、5’から3’の方向に、tracrRNAに機能可能なように結合するcrRNAを含む)。本明細書(例えば、先の実施形態)中に開示されるあらゆるcrRNAおよび/またはtracrRNA(および/またはその一部、例えば、crRNAリピート配列、tracrRNAメイト配列、またはtracrRNAの5’末端配列)は、例えば、gRNA中に含まれてよい。
【0153】
本明細書中のgRNAのcrRNA構成要素のtracrRNAメイト配列は、tracrRNA構成要素の5’末端とアニールすることによって、ヘアピン構造を形成することができるべきである。(crRNA構成要素の)tracrRNAメイト配列と、(tracrRNA構成要素の)5’末端配列との長さ、およびパーセント相補性に関する先の開示はいずれも、例えば、gRNAのcrRNA構成要素およびtracrRNA構成要素を特徴付けることができる。このアニーリングを促進するために、crRNA構成要素およびtracrRNA構成要素の機能可能な結合または融合は好ましくは、適切なループ形成リボヌクレオチド配列を含む(すなわち、ループ形成配列が、crRNA構成要素およびtracrRNA構成要素をまとめて結合して、gRNAを形成し得る)。RNAループ形成配列の適切な例として、GAAA(配列番号36)、CAAA(配列番号37)、およびAAAG(配列番号38)が挙げられる。しかしながら、代わりのループ配列として、より長い、またはより短いループ配列が用いられてもよい。ループ配列は好ましくは、リボヌクレオチドトリプレット(例えば、AAA)を、そしてトリプレットのどちらかの末端に付加的なリボヌクレオチド(例えば、CまたはG)を含む。
【0154】
本明細書中のgRNAは、その(crRNA構成要素の)tracrRNAメイト配列部分およびtracrRNAの5’末端配列部分のアニーリングにより、ヘアピン(「第1のヘアピン」)を形成する。1つまたは複数(例えば、1、2、3、または4つ)の付加的なヘアピン構造が、gRNAのtracrRNA構成要素の配列に応じて、この第1のヘアピンから下流に形成されてよい。したがって、gRNAは、例えば、最大5つのヘアピン構造を有し得る。gRNAはさらに、例えば、gRNA配列の末端に続く、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、またはそれ以上の残基を含んでよく、これは、転写ターミネータ配列によるgRNAの発現によって存在し得る。これらの付加的な残基は、例えば、ターミネータ配列の選択に応じて、全てがU残基であってもよいし、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%がU残基であってもよい。
【0155】
開示される本発明に有用な、適切なgRNAの非限定的な例は、以下を含んでよい:
【化2】
【0156】
配列番号61〜67のそれぞれにおいて、一重下線が引かれた配列は、gRNAのcrRNA部分を表す。各「N」は、適切なガイド配列のリボヌクレオチド塩基(A、U、G、またはC)を表す。小文字の第1のブロックは、tracrRNAメイト配列を表す。小文字の第2のブロックは、gRNAのtracrRNA部分を表す。二重下線が引かれた配列は、tracrRNAメイト配列とアニールして、第1のヘアピンを形成するtracrRNA配列の部分に接近する。ループ配列(GAAA、配列番号36)は大文字で示され、これは、各gRNAのcrRNA部分およびtracrRNA部分と機能可能なように結合する。本明細書中のgRNAの他の例として、前述のgRNAの変異体であって、(i)前述のgRNAの配列と少なくとも約80%、85%、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%の配列同一性を有し(この計算において、ガイド配列は除外する)、かつ(ii)Cas9タンパク質を特異的に標的として、標的DNA配列と結合し、場合によってはこれにニックを入れ、またはこれを切断するgRNAとして機能し得る変異体が挙げられる。
【0157】
本明細書中のgRNAはまた、ガイド配列(VTドメイン)に続いてCasエンドヌクレアーゼ認識(CER)ドメインを有する観点から特徴付けられ得る。CERドメインは、tracrRNAメイト配列に続いてtracrRNA配列を含む。本明細書中の有用なCERドメインの例として、先の配列番号61〜67に含まれるものが挙げられる(それぞれにおけるCERドメインは、VTドメインのNに続く配列である)。CERドメインの別の適切な例が、配列番号24であり(実施例参照)、これは、5’から3’の方向に、配列番号53のtracrRNAメイト配列、配列番号36のループ形成配列(GAAA)、および配列番号55のtracrRNA配列を含む。
【0158】
RGENのRNA構成要素は、場合により、5’キャップ(7−メチルグアニル酸[m
7G]キャップ)を有していない(すなわち、例えば、RNA構成要素は、その5’末端にm
7Gキャップを有していない)。本明細書中のRNA構成要素の、5’キャップの代わりに、例えば、5’水酸基を有してよい。あるいは、本明細書中のRNA構成要素は、例えば、5’キャップの代わりに、5’リン酸を有してよい。これらの実施形態では、RNA構成要素は、(例えば、核内での転写後、または、核内へのRGEN媒介移行後、本明細書中でのRNA構成要素の提供の仕方に応じて)核中により十分に蓄積し得ると考えられる、というのも、5’キャッピングされたRNA(すなわち、5’m
7Gキャップを有するRNA)は、核外移行を受けるからである。本明細書中のキャップ離脱RNA構成要素の好ましい例としては、適切なgRNA、crRNA、および/またはtracrRNAが挙げられる。ある実施形態において、本明細書中のRNA構成要素は、5’キャップを欠き、場合によっては、RNA構成要素の前駆体の5’末端でのリボザイム配列によるRNA自動プロセシングによって、代わりとして5’水酸基を有する(すなわち、gRNAなどのRNA構成要素の上流にリボザイム配列を含む前駆体RNAは、リボザイム配列を除去するリボザイム媒介自動プロセシングを受け、それによって、RNA構成要素の下流は、5’キャップを欠いたままとなる)。ある他の実施形態において、本明細書中のRNA構成要素は、RNAポリメラーゼIII(Pol III)プロモータからの転写によって生じない。
【0159】
本明細書中の細胞透過ペプチド(CPP)の長さは、例えば、約5〜30、5〜25、5〜20、10〜30、10〜25または10〜20アミノ酸残基であり得る。他の例としては、CPPの長さは、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30アミノ酸残基であり得る。さらに、本明細書中のさらなる態様では、CPPの長さは、約35、40、45、50、55または60以下のアミノ酸残基であり得る。
【0160】
本明細書中に開示されるCPPは、例えば、カチオン性または両親媒性であり得る。本明細書中のカチオン性CPPは、通常、正電荷を持つアミノ酸、例えば、リシン(K)、アルギニン(R)および/またはヒスチジン(H)を少なくとも約60%含む。あるいは、カチオン性CPPは、例えば、正電荷を持つアミノ酸(例えば、R残基;K残基;KおよびR残基;K、RおよびH残基)を少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%含み得る。ある実施形態では、カチオン性CPPは、アルギニンリッチ(例えば、R残基を少なくとも70%または80%含む)、またはリシンリッチ(例えば、L残基を少なくとも70%または80%含む)であると特徴付けることができる。本明細書中で有用なカチオン性CPPの例は、Schmidt et al.(FEBS Lett.584:1806−1813)およびWender et al.(polylysine;Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:13003−13008)に開示されており、これらの文献は参照によって本明細書に組み込まれる。カチオン性CPPの他の例は、GRKKRRQRRR(配列番号68)、RKKRRQRRR(配列番号69)またはRKKRRQRR(配列番号70)(これらは、もとは、HIV Tatタンパク質に由来した)およびペネトラチン(RQIKIWFQNRRMKWKK、配列番号71)(これは、もとは、ショウジョウバエ(Drosophila)属のアンテナペディアホメオドメインタンパク質に由来した)。
【0161】
カチオン性CPPの他の例は、CPPおよびその積み荷(例えば、RGENタンパク質構成要素またはRGEN)の細胞へ侵入させるのに十分な、隣接する多くのアルギニンを有するポリアルギニン配列を含む。そのようなポリアルギニン配列における隣接するアルギニン残基の数は、たとえば、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10または10〜50のアルギニンであり得る。本明細書中のある態様では、CPPは6個以上の隣接するアルギニン残基(例えば、6〜7、6〜8、6〜9または6〜10のアルギニン残基)を有し得る。「PolyR」(GGGGRRRRRRRRRLLLL、配列番号15)は、必要なら、ポリアルギニンCPPに含まれ得る。他のポリアルギニンCPPの例には、THRLPRRRRRR(配列番号72)またはGGRRARRRRRR(配列番号73)が含まれる。いくつかの実施形態では、CPPは活性化CPP(「ACPP」)(Aguilera et al.,Integr Biol.(Camb)1:371−381;参照によって本明細書に組み込まれる)である。ACPPは、通常、マッチングポリアニオン(例えば、9個の隣接するグルタミン酸)に切断可能なリンカーにより結合したポリカチオン性CPP(例えば、9個の隣接するアルギニン)を含む。これは、正味荷電をほぼゼロにまで低下させ、それによって、CPPの細胞への接着および取り込みを阻害する。リンカーを切断すると、ポリアニオンは解放され、ポリカチオン部が部分的に露出し、本来の接着性が現れ、CPPの細胞への侵入が可能になる。本明細書中の他の例は、ポリリシンCPPであり、ポリアルギニンの上記実施形態はいずれも、RがKと置き換えられるが、本明細書中では、ポリリシンの例となる。
【0162】
本明細書中の両親媒性のCPPは、極性/荷電残基と非極性の疎水性残基の交互パターンを含むアミノ酸配列を含む。以下のCPPは、(両親媒性の用語が完全に該当するか否かにかかわらず)両親媒性であると考えられ、ある態様では有用である:トランスポータン−10(TP10)ペプチド(例えば、AGYLLGKINLKACAACAKKIL、配列番号14)、血管内皮カドヘリンタンパク質由来のCPP、例えば、pVECペプチド(例えば、LIILRRRIRKQAHAHSK、配列番号74;LLIILRRRIRKQAHAHSK、配列版号13)を含むCPP;エプスタイン・バールウイルスのゼブラトランスアクチベータタンパク質由来のCPP、例えば、ゼブラペプチド(例えば、ECDSELEIKRYKRVRVASRKCRAKFKQLLQHYREVAAAKSSENDRLRLLLKQMC、配列番号12)を含むCPP;(KFF)
3Kペプチド(例えば、KFFKFFKFFK、配列番号75)を含むCPP;MAPペプチド(KLALKLALKALKAALKLA、配列番号76)を含むCPP;RRQRRTSKLMKR(配列番号77)を含むCPP;KALAWEAKLAKALAKALAKHLAKALAKALKCEA(配列番号78)を含むCPP。本明細書中で適切な他の両親媒性CPPとしては、プロリンリッチCPP、例えば、VHLPPP(配列番号79)またはVRLPPP(配列番号80)の少なくとも3、4、5、6、7または8リピートを含むものが挙げられる。
【0163】
他の例としては、本明細書中のCPPは、MPGペプチド(例えば、GALFLGFLGAAGSTMGAWSQPKSKRKV、配列番号81);Pep−1ペプチド(例えば、KETWWETWWTEWSQPKKKRKV、配列番号82);またはヒトカルシトニンタンパク質由来のCPP、例えば、hCTペプチド(例えば、LGTYTQDFNKFHTFPQTAIGVGAP、配列番号83;CGNLSTCMLGTYTQDFNK、配列番号84)を含み得る。本明細書中のCPPのさらに他の例としては、Regberg et al.(Int.J.Pharm.464:111−116)に開示されるものが挙げられる。この文献は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0164】
あるいは、本明細書中で適切なCPPは、例えば、本明細書に開示されるCPPアミノ酸配列のいずれかと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含み得る。そのような変異体CPPタンパク質は、CPP活性、例えば、分子積み荷(例えば、1つ以上のRGENタンパク質構成要素[例えば、Cas9]を含むアミノ酸配列、またはRNA構成要素と結合した1つ以上のRGENタンパク質構成要素[例えば、Cas9]を含むアミノ酸配列)の細胞内への取り込みを媒介する能力を有するであろう。
【0165】
本明細書中のCPPは、必要に応じ、修飾して、細胞外から細胞内へRGENタンパク質積み荷をより一層効率的に運搬できるようにすることができる。例えば、N末端またはC末端に脂質基を有するように修飾することができる。本明細書中の適切な脂質基としては、ステアリル基、ミリスチル基などのアシル基が挙げられる。脂質基の他の例は、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18個の炭素原子を有するアシル基である。ペプチドを本明細書中で有用な脂質基で修飾する条件は、例えば、Regberg et al.(Int.J.Pharm.464:111−116)およびAnko et al.(Biochim.Biophys.Acta−Biomembranes 1818:915−924)に開示されており、これらの文献は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0166】
本明細書中のRGENタンパク質構成要素と少なくとも1つのCPPとは、本明細書中のある態様では、共有結合的に、または非共有結合的に互いに結合して、RGENタンパク質−CPP複合体を形成している。例えば、RGENタンパク質構成要素と少なくとも1つのCPPとは、融合して、単一のアミノ酸配列を形成することができる(すなわち、RGENタンパク質構成要素と少なくとも1つのCPPとは、融合タンパク質内に含まれ得る)。したがって、本明細書中の共有結合の例は、ペプチド結合によるものであり、そこでは、RGENタンパク質構成要素のアミノ酸配列がCPPのアミノ酸配列と、これらのアミノ酸配列の双方が単一のアミノ酸配列に含まれるように融合する。そのような融合タンパク質(または「キメラタンパク質」)は、本明細書中では、RGENタンパク質−CPP融合体と見なすことができる。RNA構成要素がRGENタンパク質構成要素と結合している実施形態では、そのような融合タンパク質はRGEN−CPP融合体と見なすことができる。
【0167】
1つ以上のCPPは、例えば、RGENタンパク質−CPP融合体のN末端またはC末端に位置させることができる。あるいは、1つ以上のCPPは、RGENタンパク質−CPP融合体のN末端およびC末端の双方に位置させることができる。あるいはさらに、1つ以上のCPPは、RGENタンパク質−CPP融合体のアミノ酸配列内に位置させることができる。複数のCPPを含む本明細書中の実施形態は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20のCPP、または5〜10、5〜20もしくは10〜20のCPPを含み得る。RGENタンパク質構成要素に融合したCPPは、同じであっても異なっていてもよい(例えば、2、3、4もしくはそれ以上の異なるタイプのCPP)。1つ以上のCPPは、RGENタンパク質のアミノ酸配列に直接融合することができ、かつ/または、RGENタンパク質と融合している異種ドメイン(例えば、NLS、または、MTSなどの他の細胞小器官ターゲティング配列)に融合することができる。
【0168】
本明細書中のCPPおよびRGENタンパク質構成要素間の融合は直接的であり得る(すなわち、CPPアミノ酸配列は、RGENアミノ酸配列にペプチド結合によって直接結合する)。あるいは、本明細書中のCPPおよびRGENタンパク質構成要素間の融合は、中間アミノ酸配列を介してあり得る(これは、CPPとRGENタンパク質構成要素が間接的に結合している一例である)。中間アミノ酸配列の例としては、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90または100のアミノ酸残基、例えば、グリシン、セリン、アラニンおよび/またはプロリンを含む適切なリンカー配列が挙げられる。適切なアミノ酸リンカーは、例えば、米国特許第8828690号明細書、同第8580922号明細書、および同第5990275号明細書に開示されており、これらの文献は参照によって本明細書に組み込まれる。他の中間アミノ酸配列の例は、1つ以上の他のタイプのタンパク質および/またはドメインを含み得る。例えば、マーカータンパク質(例えば、本明細書中に開示されている任意のものなどの蛍光タンパク質)は、中間アミノ酸配列に含まれ得る。
【0169】
RGENタンパク質構成要素と少なくとも1つのCPPとの共有結合性複合体、例えば、融合体タンパク質の形態のものを含む組成物は、本明細書中に開示される任意の細胞型で使用することができる。しかしながら、任意選択により、この組成物は、酵母、真菌および植物などの非哺乳類細胞で使用することができる。しかし、哺乳類細胞での使用は除く。
【0170】
本明細書中のRGENタンパク質−CPP融合タンパク質の例は、配列番号39(ゼブラCPP−Cas9−NLS融合タンパク質)、40(PolyR CPP−Cas9−NLS融合タンパク質)、41(TP10 CPP−Cas9−NLS融合タンパク質)、または42(pVEC CPP−Cas9−NLS融合タンパク質)を含み得る。配列番号39〜42は、Cas9−CPP融合タンパク質の例である。RGENタンパク質−CPP融合タンパク質の他の例は、配列番号39〜42のいずれかに、少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のアミノ酸配列を含む。そのような変異体融合タンパク質は、(i)融合タンパク質の細胞内取り込み媒介することができるCPPドメイン、および(ii)RNA構成要素と結合している場合、DNAに対し、特異的結合活性を有し、かつ場合により、切断またはニッキング活性を有するCas9タンパク質を有するであろう。配列番号39、40、41および42はそれぞれ、ゼブラCPP(配列番号12)、PolyR CPP(配列番号15)、TP10 CPP(配列番号14)およびpVEC CPP(配列番号13)を含み、場合により、Cas9(ストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes)−NLSタンパク質(配列番号3の残基2〜1379)に結合する。
【0171】
ある実施形態では、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ系のタンパク質構成要素はCPPに結合することができ、CPPは、
(i)エプスタイン・バールウイルスのゼブラトランスアクチベータタンパク質由来のCPP、
(ii)6個以上の隣接するアルギニン残基を有するCPP、
(iii)トランスポータン−10(TP10)CPP、
(iv)血管内皮カドヘリンタンパク質由来のCPP、または
(vi)合成ノナ−アルギニンCPP、ヒスチジンリッチノナ−アルギニンCPPおよびPasノナ−アルギニンCPPからなる群から選択されるCPP。
【0172】
合成ノナ−アルギニンCPP、ヒスチジンリッチノナ−アルギニンCPPおよびPasノナ−アルギニンCPPの例は、例えば、Liu et al.(Advanced Studies in Biology 5(2):71−88,HIKARI Ltd)に開示されており、この文献は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0173】
RGENタンパク質構成要素と少なくとも1つのCPPが共有結合し得る方法の他の例は、架橋(化学架橋)である。それ故、本明細書中のRGENタンパク質−CPP複合体は、少なくとも1つのCPPに架橋したRGENタンパク質を含み得る。本明細書中の架橋は、2以上の分子(この事例では、RGENタンパク質構成要素と少なくとも1つのCPP)を共有結合によって化学的に結合するプロセスを指す。架橋はこの分野で知られた多くの方法、例えば、米国特許出願公開第2011/0190813号明細書、米国特許第8642744号明細書、およびBioconjugate Techniques,2nd Edition(G.T.Hermanson,Academic Press,2008)に開示された方法で行うことができる。これらの文献は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0174】
通常、CPPは、CPPをRGENタンパク質構成要素に架橋させるため、適切なタンパク質結合基を、そのN末端、C末端、および/またはアミノ酸側鎖基に含有するよう、修飾および/または合成することができる。「タンパク質結合基」は、RGENタンパク質構成要素のアクセス可能な側鎖官能基と、適切な条件(例えば、水性条件)下で、自然にまたは活性化後(例えば、光に)に直接反応して、CPP−RGENタンパク質の共有結合を生成し得る基を指す。タンパク質結合基は、例えば、RGENタンパク質中のLys、Cys、Ser、Thr、Tyr、HisまたはArgアミノ酸残基の側鎖官能基と反応して、タンパク質に共有結合し得る。例えば、ホモ二官能性(例えば、アミンをアミンに結合することができる)またはヘテロ二官能性(例えば、アミンをチオールに結合することができる)のタンパク質結合基を使用することができる。ある実施形態では、CPPのタンパク質結合基はまた、RGENタンパク質の末端基(例えば、N末端)と反応することができる。本明細書中の適切なタンパク質結合基としては、アミノ反応性基(例えば、NHSエステルまたはイミドエステル)、チオール(スルフヒドリル)反応性基(例えば、BMOE、BMBまたはBMHなどのマレイミド)、ヒドロキシル反応性基、イミダゾリル反応性基、またはグアニジニル反応性基が挙げられる。本明細書中で有用なさらなる代表的なタンパク質結合基、およびそれらの使用方法は、例えば、Bioconjugate Techniques,2nd Edition(G.T.Hermanson,Academic Press,2008)に記載されている。
【0175】
本明細書中のタンパク質結合基は、通常、長さが20原子以下の骨格を有するCPPとRGENタンパク質との間で結合を形成することができる。例えば、そのような結合は、長さが1原子と20原子との間、または約1、2、3、4、5、6、8、10、12、14、16、18もしくは20炭素原子の間の結合であり得る。ある実施形態では、結合は、直鎖状、分岐状、環状または単一原子であってよい。ある事例では、リンカー骨格の1、2、3、4もしくは5、またはそれ以上の炭素原子が、硫黄、窒素子または酸素のヘテロ原子で置換されていてもよい。骨格原子間の結合は、飽和または不飽和であってよい(通常、リンカーの骨格に、1、2または3個を超える不飽和結合はない)。リンカーとしては、限定はされないが、オリゴ(エチレングリコール)、エーテル、チオエーテル、三級アミン、またはアルキル基が挙げられる。アルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよい(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、t−ブチル)。他のリンカー骨格の例としては、アリール基、ヘテロ環またはシクロアルキル基などの環状基(但し、環状基の2以上の原子(例えば、2、3または4原子)は骨格に含まれる)が挙げられ得る。
【0176】
ある実施形態では、2種以上のCPP(例えば、2、3、4またはそれ以上の異なる種類のCPP)を、RGENタンパク質構成要素と架橋させることができる。架橋時、使用し得るCPP:RGENタンパク質の比(モル比)は、例えば、少なくとも約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、30:1、40:1または50:1であり得る。他の態様では、RGENタンパク質に架橋したCPPの平均数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24もしくは25、または少なくとも5〜10、5〜15、5〜20もしくは5〜25であり得る。
【0177】
RGENタンパク質構成要素および少なくとも1つのCPPは、必要に応じて、さらに1つ以上の他のタンパク質/ペプチド/ドメインを含む複合体に架橋させることができる。そのような他の要素は、場合により、RGENタンパク質構成要素をCPPと架橋させるために使用することができ、そしてそのような他の要素として、前述したような中間アミノ酸配列を上げることができる。
【0178】
本明細書中のある対応では、本明細書中のRGENタンパク質構成要素と少なくとも1つのCPPとは、非共有結合的に互いに結合して、RGENタンパク質−CPP複合体を形成することができる。特定の理論や機構に縛られることを意図するものではないが、RGENタンパク質構成要素と少なくとも1つのCPPとの間の非共有結合的な結合が、静電気力、ファンデルワールス力および/または疎水性力によると考えられる。RNA構成要素がRGENタンパク質構成要素と結合するそれらの実施形態では、そのような実施形態は、RGEN−CPP複合体の少なくとも1つのCPPに非共有結合的に結合するRGENを含むと見なされ得る。非共有結合的に結合するRGENタンパク質構成要素およびCPPを含む組成物は、場合により、これらの構成要素の混合物と見なされ得る。
【0179】
ある実施形態では、RGENタンパク質構成要素は、少なくとも1つの、CPPアミノ酸配列のみからなるアミノ酸配列を有するCPPと非共有結合的に結合する。そのようなCPPは、いかなる「非CPP」アミノ酸配列を有しないが、場合により、本明細書中に開示の脂質基などの修飾を含み得る。
【0180】
あるいは、RGENタンパク質構成要素に非共有結合的に結合するCPPは、CPPアミノ酸と1つ以上の異種アミノ酸配列(非RGENタンパク質配列)を有する融合タンパク質に含まれ得る。そのような実施形態の異種配列はドメインまたはタンパク質(例えば、本明細書に開示されているものなどの蛍光タンパク質、または、Cas融合体に関する上の開示の中で挙げられているドメイン/タンパク質の配列であり得る。他の例は、CPPに二量化ドメインを融合させている。その二量化ドメインはRGENタンパク質構成要素に結合または融合した二量化ドメインに結合することができる。
【0181】
ロイシンジッパードメインは、本明細書の二量化ドメインの例である。ロイシンジッパードメインは、そのようなドメイン(例えば、転写因子)を含むと知られている天然タンパク質由来のものであり得、または合成的に設計することができる。CPPに結合したロイシンジッパードメインは、RGENタンパク質構成要素のロイシンジッパードメインと結合(「ジップ結合」)することによって、非共有結合的複合体としてCPPとRGENタンパク質構成要素を結合することができる。CPPとRGENタンパク質構成要素を非共有結合的に結合する1対のロイシンジッパードメインは、同じであっても(そのようなドメイン対はホモ二量体化ロイシンジッパーを形成する)、異なっていてもよい(そのようなドメイン対はヘテロ二量体化ロイシンジッパーを形成する)。ロイシンジッパードメインはの例としては、米国特許出願公開第2003/0108869号明細書および同第2004/0147721号明細書に開示されたものが挙げられる。ある態様では、ホモ二量体化ロイシンジッパーは、GCN4 転写因子由来のロイシンジッパードメインにより形成することができ、他の態様では、それぞれfosおよびjun転写因子由来のロイシンジッパードメインを用いてヘテロ二量体化ロイシンジッパーを形成することができる。
【0182】
RGENタンパク質構成要素と少なくとも1つのCPPとの非共有結合的複合体は、必要に応じて、さらに、1つ以上の他のタンパク質/ペプチド/ドメインを含むことができる。そのような他の要素は、場合により、RGENタンパク質構成要素とCPPとの架橋に使用することができ、そのような他の要素として、前に記載の中間アミノ酸配列を挙げることができる。
【0183】
ある実施形態では、2種以上のCPP(例えば、2、3、4またはそれ以上の異なる種類のCPP)を、RGENタンパク質構成要素と非共有結合的に結合させることができる。そのような複合体の調製に使用し得るCPP:RGENタンパク質の比(モル比)は、例えば、少なくとも約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、30:1、40:1または50:1であり得る。他の態様では、RGENタンパク質に結合したCPPの平均数は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24もしくは25、または少なくとも5〜10、5〜15、5〜20もしくは5〜25であり得る。
【0184】
ある実施形態では、RGENタンパク質構成要素と少なくとも1つのCPPとの非共有結合的複合体は、(例えば、上に開示したCPPとRGENタンパク質との比が得られるなどの)適切な量の各構成要素を水性媒体中で混合することによって調製することができる。適切な水性媒体は、例えば、PBSなどの緩衝液、またはDMEMなどの血清フリーの培地を含み得る。混合物を、例えば、約4〜45℃の温度で約30、60、90または120分間インキュベートして、非共有結合的RGENタンパク質−CPP複合体を形成することができる。この複合体を含む、適切な量(例えば、処理する細胞を十分に覆う/浸す最小量)のこの溶液を細胞の種類に適した方法で細胞に適用することができる。RNA構成要素がRGENタンパク質構成要素と結合する実施形態では、そのようなRGENの形成は、CPPをRGENタンパク質構成要素と共にインキュベートする前、インキュベートと同時に、またはインキュベート後に、RNA構成要素を加える工程を含むことができる。
【0185】
RGENタンパク質構成要素と少なくとも1つのCPPとの非共有結合的複合体を含む組成物は、本明細書中に開示される任意の細胞型で使用することができる。しかしながら、任意選択により、この組成物は、酵母、真菌および植物などの非哺乳類細胞で使用することができる。しかし、哺乳類細胞での使用は除く。
【0186】
RGENタンパク質−CPP複合体は、細胞に適用する前に組成物中に含まれ得るため、たとえば、約30%、40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%の純度であり得る。そのような純度は、ある実施形態では、タンパク質基準であり得る。一例として、複合体の純度が少なくとも80%であれば、これは、組成物中の全タンパク質の少なくとも80%が複合体によって構成されることを意味する。あるいは、複合体の純度は、タンパク質基準の純度のみならず、他の生体分子(例えば、脂質、糖、および/または核酸)もまた考慮することができる。一例として、複合体の純度が少なくとも80%であれば、これは、本明細書中の組成物における全生体分子の少なくとも80%が複合体によって構成されることを意味する。ある実施形態では、炭水化物、塩および/または脂質などの化合物は、本明細書中、パーセント純度の決定に影響しない。純度に関するこれらの開示は全て、RGEN−CPP複合体(すなわち、複合体のRGENタンパク質構成要素がRNA構成要素に結合している)にも適用することができる。
【0187】
本明細書中の組成物は、水性であって、RGENタンパク質−CPP複合体またはRGEN−CPP複合体が溶解している溶媒の少なくとも約70、75、80、85、90、95、98または99wt%が水であることが好ましい。組成物中の複合体の濃度は、例えば、少なくとも約0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0もしくは10.0μM、または約0.5〜5.0μM、0.5〜2.5μM、1.0〜5.0μM、1.0〜2.5μMもしくは2.5〜5.0μMであり得る。そのような組成物が液体状態であり得ることは理解されよう。
【0188】
ある実施形態の組成物のpHは、約4.0〜約10.0であり得る。あるいは、pHは、約4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5または10.0であり得る。pHは適切なバッファの添加または導入によって調節または制御することができ、バッファとしては、限定はされないが、HEPES、リン酸塩(例えば、PBS)、トリス、トリス−HCl、クエン酸、またはこれらの組み合わせが挙げられる。本明細書中の組成物のバッファ濃度は、例えば、0mM〜約100mM、または約10、20、もしくは50mMであり得る。ある態様では、HEPESバッファ(例えば〜25mM HEPES、例えば25mM HEPES/KOH pH7.5、200mM KCl、20%グリセロール、1mM DTT)が使用され得る。
【0189】
本明細書中の組成物は、任意選択により、RGENタンパク質−CPP複合体またはRGEN−CPP複合体に加えて、他の構成要素を含むことができる。例えば、ナトリウム塩(例えば、NaCl、Na
2SO
4)などの1種以上の塩を含むことができる。他の非限定的な塩の例としては、(i)アルミニウム、アンモニウム、バリウム、カルシウム、クロム(IIもしくはIII)、銅(IもしくはII)、鉄(IIもしくはIII)、水素、鉛(II)、リチウム、マグネシウム、マンガン(IIもしくはIII)、水銀(IもしくはII)、カリウム、銀、ナトリウム、ストロンチウム、スズ(IIもしくはIV)、または亜鉛カチオン、および(ii)酢酸塩、ホウ酸塩、臭素酸塩、臭化物、炭酸塩、塩素酸塩、塩化物、亜塩素酸塩、クロム酸塩、重クロム酸塩、リン酸二水素塩、ヘキサシアノ鉄酸塩、フェロシアン化物、フッ化物、炭酸水素塩、リン酸水素塩、硫酸水素塩、硫化水素、亜硫酸水素塩、水素化物、水酸化物、次亜塩素酸塩、ヨード酸塩、ヨウ化物、硝酸塩、亜硝酸塩、シュウ酸塩、酸化物、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、過酸化物、リン酸塩、リン化物、亜リン酸塩、ケイ酸塩、スズ酸塩、硫錫石、硫酸塩、硫化物、亜硫酸塩、酒石酸塩、またはチオシアン酸塩アニオンを含むものが挙げられる。したがって、例えば、上記(i)のカチオンおよび上記(ii)のアニオンを有する任意の塩が本明細書中の組成物に含まれ得る。塩は、例えば、約0.01〜約10.00wt%(または、0.01〜10.00の間で100分の1ずつ増加した任意の値)含まれ得る。
【0190】
RGENタンパク質−CPP複合体は、細胞の(i)細胞膜、または(ii)細胞壁および細胞膜を横断することができる。RGENタンパク質構成要素がRNA構成要素と結合している(これによって、完全RGENを構築する)実施形態では、RGEN−CPP複合体は同様に、この細胞膜/細胞壁横断能力を有する。RGENタンパク質−CPP複合体またはRGEN−CPP複合体は、本明細書中のある態様においては、細胞壁および細胞膜を横断することができる。
【0191】
本明細書中のRGENタンパク質−CPP複合体またはRGEN−CPP複合体は、場合により、グリコカリックス(被膜)を含む細胞壁を横断することができる。これらの実施形態は、典型的には、原核細胞(例えば、細菌)に関係しており、原核細胞の中には種および成長条件によってグリコカリックスを有するものがある。
【0192】
特定の理論や機構に縛られることを意図するものではないが、本明細書中のCPPは、エンドサイトーシスプロセスを経てRGENタンパク質構成要素を細胞内へ輸送すると考えられる。そのようなプロセスの例としては、マクロピノサイトーシス、クラスリン媒介エンドサイトーシス、カベオラ/脂質ラフト媒介エンドサイトーシス、および/または得レセプター媒介エンドサイトーシス機構(例えば、スカベンジャーレセプター媒介取り込み、プロテオグリカン媒介取り込み)を挙げ得るであろう。
【0193】
RGENタンパク質−CPP複合体またはRGEN−CPP複合体が細胞内に入ると、例えば、核膜またはミトコンドリア膜などのオルガネラ膜を横断することができる。この能力は、ある実施形態では、RGENタンパク質に付随する少なくとも1つのオルガネラを標的とする配列(例えば、NLS、MTS)の存在に依存する。さらに、他の実施形態では、核膜またはミトコンドリア膜などのオルガネラ膜を横断する能力は、オルガネラを標的とする配列の存在に依存しない(すなわち、そのような実施形態のCPPは、RGENの核またはミトコンドリアなどの細胞小器官への横断に関与し得る)。
【0194】
本明細書中の細胞は、哺乳類細胞であっても、非哺乳類細胞であってもよい。ある好ましい実施形態では、後者が使用される。ある他の態様では、本明細書中の細胞は、(i)インビボの生物/組織内、(ii)エクスビボの細胞組織もしくは細胞群内、または(iii)インビトロ状態に存在し得る。
【0195】
本明細書中の微生物細胞は、単離された状態(例えば、インビトロ細胞、培養細胞)、または単離されていない状態で存在し得る。
【0196】
ある実施形態の微生物細胞は酵母細胞のような真菌細胞である。本明細書中のある実施形態の酵母は、無性生殖で増殖する(アナモルフィック)ものであっても、有性生殖で増殖する(テレオモルフィック)ものであってもよい。本明細書中の酵母は、典型的には、単細胞の形態で存在し、これらの酵母のある型は、場合により、仮性菌糸(出芽細胞が連結した糸)を形成することができる。さらに他の態様では、酵母は1媒体もしくは2媒体であり得、かつ/またはこれらの倍数性のいずれの形態でも存在する能力を有し得る。
【0197】
本明細書中の酵母の例としては、従来型酵母および非従来型酵母が挙げられる。ある実施形態の従来型酵母は、相同組み換え(HR)DNA修復プロセスを非相同末端結合(NHEJ)によって媒介される修復プロセスより好む酵母である。本明細書中の従来型酵母の例としては、サッカロミケス(Saccharomyces)属の種(例えば、出芽酵母、パン酵母、および/または醸造酵母としても知られるサッカロミケス・セレビシエ(S.cerevisiae);サッカロミケス・ボウルアルディ(S.boulardii);サッカロミケス・ブルデリ(S.bulderi);サッカロミケス・カリオカヌス(S.cariocanus);サッカロミケス・カリオクス(S.cariocus);サッカロミケス・ケバリエリ(S.chevalieri);サッカロミケス・ダイレネンシス(S.dairenensis);サッカロミケス・エリプソイデウス(S.ellipsoideus);サッカロミケス・エウバヤヌス(S.eubayanus);サッカロミケス・エクシグウス(S.exiguus);サッカロミケス・フロレンティヌス);サッカロミケス・クルイベリ(S.kluyveri);サッカロミケス・マルチニアエ(S.martiniae);サッカロミケス・モナケンシス(S.monacensis);サッカロミケス・ノルベンシス(S.norbensis);サッカロミケス・パラドクスス(S.Paradoxus);サッカロミケス・パストリアヌス(S.pastorianus);サッカロミケス・スペンケロルム(S.spencerorum);サッカロミケス・トゥリケンシス(S.turicensis);サッカロミケス・ウニスポルス(S.unisporus);サッカロミケス・ウバルム(S.uvarum);サッカロミケス・ゾナツス(S.zonatus)およびシゾサッカロミケス(Schizosaccharomyces)属の種(例えば、分裂酵母としても知られるシゾサッカロミケス・ポンベ(S.pombe);シゾサッカロミケス・クリオフィルス(S.cryophilus);シゾサッカロミケス・ヤポニクス(S.japonicus);シゾサッカロミケス・オクトスポルス(S.octosporus))が挙げられる。
【0198】
本明細書中の非従来型酵母は、サッカロミケス(Saccharomyces)属(例えば、サッカロミケス・セレビシエ(S.cerevisiae))またはシゾサッカロミケス(Schizosaccharomyces)属(例えば、シゾサッカロミケス・ポンベ(S.pombe))などの従来型酵母ではない。ある実施形態における従来型酵母は、HRによって媒介される修復プロセスよりもNHEJ DNA修復プロセスを好む酵母であり得る。サッカロミケス・セレビシエ(S.cerevisiae)およびシゾサッカロミケス・ポンベ(S.pombe)などの従来型酵母は、通常、短フランキング相同アーム(30〜50bp)を有するドナーDNAの特異的な組み込みを示すが、効率はルーチン的に70%を超える。一方、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・スティピティス(Pichia stipitis)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、およびクルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)などの非従来型酵母は、通常、類似した構造のドナーDNAによる特異的組み込みを示すが、効率は1%未満である(Chen et al.,PLoS ONE 8:e57952)。したがって、HRプロセスの優先度は、例えば、酵母を適切なドナーDNAで形質転換して、ドナーDNAによって標的とされると予測されるゲノム部位と特異的に組み換えられる程度を判定することによって、測定され得る。例えば、そのようなアッセイにより、酵母ゲノムにおけるドナーDNAのランダムな組み込みの高い程度が得られるならば、NHEJの優先度(すなわちHRの低い優先度)は顕在化するであろう。酵母におけるDNAの特異的な(HR媒介)、かつ/またはランダムな(NHEJ媒介)組み込み率を判定するためのアッセイが、当該技術分野において知られている(例えば、Ferreira and Cooper,Genes Dev.18:2249−2254;Corrigan et al.,PLoS ONE 8:e69628;Weaver et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:6354−6358;Keeney and Boeke,Genetics 136:849−856)。
【0199】
低いレベルのHR活性を考えると、本明細書中の非従来型酵母は、(i)30〜50bpのフランキング相同アームを有する適切なドナーDNAによる、例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、もしくは8%未満の特異的なターゲティング率を示し得、かつ/または(ii)前述のドナーDNAの、例えば、約65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、もしくは75%超のランダムな組み込み率を示し得る。適切なドナーDNAのこれらの(i)特異的なターゲティング率、および/または(ii)ランダムな組み込み率は、本明細書中に開示されるRGENが提供されるよりも前から存在するため、非従来型酵母を特徴付けることができる。ある実施形態において、RGENを非従来型酵母に提供する目的は、酵母を特定の部位でのHRに偏らせるための部位特異的DNA一本鎖切断(SSB)または二本鎖切断(DSB)を生じさせることである。したがって、本明細書中で適切なRGENを含む非従来型酵母は、通常、特定のドナーDNAとのHR率の増大を示すであろう。そのような率の増大は、適切なコントロール(例えば、適切なRGENを欠く以外は同じドナーDNAで形質転換した同じ非従来型酵母)のHR率よりも少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍高くなり得る。
【0200】
本明細書中で非従来型酵母は、例えばNon−Conventional Yeasts in Genetics,Biochemistry and Biotechnology:Practical Protocols(K.Wolf,K.D.Breunig,G.Barth,Eds.,Springer−Verlag,Berlin,Germany,2003)、Yeasts in Natural and Artificial Habitats(J.F.T.Spencer,D.M.Spencer,Eds.,Springer−Verlag,Berlin,Germany,1997)、および/またはYeast Biotechnology:Diversity and Applications(T.Satyanarayana,G.Kunze,Eds.,Springer,2009)(これらの文献は全て、参照によって本明細書に組み込まれる)に記載される、当該技術分野において知られるあらゆる手段にしたがって培養することができる。
【0201】
本明細書中の非従来型酵母の非限定的な例としては、以下の属の酵母が挙げられる:ヤロウイア(Yarrowia)属、ピキア(Pichia)属、シュワニオミケス(Schwanniomyces)属、クルイベロミケス(Kluyveromyces)属、アルクスラ(Arxula)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、カンディダ(Candida)属、ウスティラゴ(Ustilago)属、トルロプシス(Torulopsis)属、チゴサッカロミケス(Zygosaccharomyces)属、トリゴノプシス(Trigonopsis)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、ファフィア(Phaffia)属、スポロボロミケス(Sporobolomyces)属、パキソレン(Pachysolen)属、およびモニリエラ(Moniliella)属。ヤロウイア(Yarrowia)属種の適切な例は、ヤロウイア・リポリティカ(Y.lipolytica)である。ピキア(Pichia)属種の適切な例としては、ピキア・パストリス(P.pastoris)、ピキア・メタノリカ(P.methanolica)、ピキア・スティピティス(P.stipitis)、ピキア・アノマーラ(P.anomala)、およびピキア・アングスタ(P.angusta)が挙げられる。シュワニオミケス(Schwanniomyces)属種の適切な例としては、シュワニオミケス・カステリィ(S.castellii)、シュワニオミケス・アルビウス(S.alluvius)、シュワニオミケス・ホミニス(S.hominis)、シュワニオミケス・オキシデンタリス(S.occidentalis)、シュワニオミケス・カプリオッティ(S.capriottii)、シュワニオミケス・エチェルシィ(S.etchellsii)、シュワニオミケス・ポリモルファス(S.polymorphus)、シュワニオミケス・プセウドポリモルファス(S.pseudopolymorphus)、シュワニオミケス・バンリジエ(S.vanrijiae)、およびシュワニオミケス・ヤマダエ(S.yamadae)が挙げられる。クルイベロミケス(Kluyveromyces)属種の適切な例としては、クルイベロミケス・ラクティス(K.lactis)、クルイベロミケス・マルキシアヌス(K.marxianus)、クルイベロミケス・フラギリス(K.fragilis)、クルイベロミケス・ドロソフィラルム(K.drosophilarum)、クルイベロミケス・サーモトレランス(K.thermotolerans)、クルイベロミケス・ファゼオロスポラス(K.phaseolosporus)、クルイベロミケス・バヌデニィ(K.vanudenii)、クルイベロミケス・ワルティ(K.waltii)、クルイベロミケス・アフリカヌス(K.africanus)、およびクルイベロミケス・ポリスポラス(K.polysporus)が挙げられる。アルクスラ(Arxula)属種の適切な例としては、アルクスラ・アデニニボランス(A.adeninivorans)およびアルクスラ・テレストレ(A.terrestre)が挙げられる。トリコスポロン(Trichosporon)属種の適切な例としては、トリコスポロン・クタネウム(T.cutaneum)、トリコスポロン・キャピタトゥム(T.capitatum)、トリコスポロン・インキン(T.inkin)、およびトリコスポロン・ビーメリ(T.beemeri)が挙げられる。カンディダ(Candida)属種の適切な例としては、カンディダ・アルビカンス(C.albicans)、カンディダ・アスカラフィダルム(C.ascalaphidarum)、カンディダ・アムフィキシエ(C.amphixiae)、カンディダ・アンタークティカ(C.antarctica)、カンディダ・アピコーラ(C.apicola)、カンディダ・アルゲンティア(C.argentea)、カンディダ・アトランティカ(C.atlantica)、カンディダ・アトモスファェリカ(C.atmosphaerica)、カンディダ・ブラッテ(C.blattae)、カンディダ・ブロメリアセアルム(C.bromeliacearum)、カンディダ・カルポフィラ(C.carpophila)、カンディダ・カルバジャリス(C.carvajalis)、カンディダ・セラムビシダルム(C.cerambycidarum)、カンディダ・チャウリオデス(C.chauliodes)、カンディダ・コリダリ(C.corydali)、カンディダ・ドッセイ(C.dosseyi)、カンディダ・デュブリニエンシス(C.dubliniensis)、カンディダ・エルガテンシス(C.ergatensis)、カンディダ・フルクトゥス(C.fructus)、カンディダ・グラブラタ(C.glabrata)、カンディダ・フェルメンタティ(C.fermentati)、カンディダ・ギリエルモンディ(C.guilliermondii)、カンディダ・ハエムロニィ(C.haemulonii)、カンディダ・インセクタメンス(C.insectamens)、カンディダ・インセクトルム(C.insectorum)、カンディダ・インテルメディア(C.intermedia)、カンディダ・イェフレシィ(C.jeffresii)、カンディダ・ケフィア(C.kefyr)、カンディダ・ケロセニエ(C.keroseneae)、カンディダ・クルセイ(C.krusei)、カンディダ・ルシタニエ(C.lusitaniae)、カンディダ・リキソソフィラ(C.lyxosophila)、カンディダ・マルトーサ(C.maltosa)、カンディダ・マリーナ(C.marina)、カンディダ・メンブラニファシエンス(C.membranifaciens)、カンディダ・ミレリ(C.milleri)、カンディダ・モギィ(C.mogii)、カンディダ・オレオフィラ(C.oleophila)、カンディダ・オレゴネンシス(C.oregonensis)、カンディダ・パラシローシス(C.parapsilosis)、カンディダ・クエルシトルーサ(C.quercitrusa)、カンディダ・ルゴサ(C.rugosa)、カンディダ・サケ(C.sake)、カンディダ・シャハテア(C.shehatea)、カンディダ・テムノキラエ(C.temnochilae)、カンディダ・テヌイス(C.tenuis)、カンディダ・テアエ(C.theae)、カンディダ・トレランス(C.tolerans)、カンディダ・トロピカリス(C.tropicalis)、カンディダ・ツチヤエ(C.tsuchiyae)、カンディダ・シノラボランティウム(C.sinolaborantium)、カンディダ・ソーヤ(C.sojae)、カンディダ・サブハシィ(C.subhashii)、カンディダ・ビスワナシィ(C.viswanathii)、カンディダ・ユティリス(C.utilis)、カンディダ・ウバトゥベンシス(C.ubatubensis)、およびカンディダ・ゼプリニナ(C.zemplinina)が挙げられる。ウスティラゴ(Ustilago)属種の適切な例としては、ウスティラゴ・アヴェナエ(U.avenae)、ウスティラゴ・エスクレンタ(U.esculenta)、ウスティラゴ・ホルデイ(U.hordei)、ウスティラゴ・マイジス(U.maydis)、ウスティラゴ・ヌーダ(U.nuda)、およびウスティラゴ・トリティク(U.tritic)が挙げられる。トルロプシス(Torulopsis)属種の適切な例としては、トルロプシス・ゲオチャレス(T.geochares)、トルロプシス・アジマ(T.azyma)、トルロプシス・グラブラータ(T.glabrata)、およびトルロプシス・カンディダ(T.candida)が挙げられる。
チゴサッカロミケス(Zygosaccharomyces)属種の適切な例としては、チゴサッカロミケス・バイリィ(Z.bailii)、チゴサッカロミケス・ビスポラス(Z.bisporus)、チゴサッカロミケス・シドリ(Z.cidri)、チゴサッカロミケス・フェルメンタティ(Z.fermentati)、チゴサッカロミケス・フロレンティヌス(Z.florentinus)、チゴサッカロミケス・コンブチャエンシス(Z.kombuchaensis)、チゴサッカロミケス・レントゥス(Z.lentus)、チゴサッカロミケス・メリス(Z.mellis)、チゴサッカロミケス・ミクロエリプソイデス(Z.microellipsoides)、チゴサッカロミケス・ムラキィ(Z.mrakii)、チゴサッカロミケス・プセウドルーキシィ(Z.pseudorouxii)、およびチゴサッカロミケス・ルーキシィ(Z.rouxii)が挙げられる。トリゴノプシス(Trigonopsis)属種の適切な例としては、トリゴノプシス・バリアビリス(T.variabilis)が挙げられる。クリプトコッカス(Cryptococcus)属種の適切な例としては、クリプトコッカス・ローレンティ(C.laurentii)、クリプトコッカス・アルビダス(C.albidus)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(C.neoformans)、クリプトコッカス・ガッティ(C.gattii)、クリプトコッカス・ユニグトゥラトゥス(C.uniguttulatus)、クリプトコッカス・アデリエンシス(C.adeliensis)、クリプトコッカス・アエリウス(C.aerius)、クリプトコッカス・アルビドシミリス(C.albidosimilis)、クリプトコッカス・アンタルクティカス(C.antarcticus)、クリプトコッカス・アクアティカス(C.aquaticus)、クリプトコッカス・アーテル(C.ater)、クリプトコッカス・ブータネンシス(C.bhutanensis)、クリプトコッカス・コンソルティオニス(C.consortionis)、クリプトコッカス・カルバトゥス(C.curvatus)、クリプトコッカス・フェノリカス(C.phenolicus)、クリプトコッカス・スキンネリ(C.skinneri)、クリプトコッカス・テレウス(C.terreus)、およびクリプトコッカス・ビシュニアッシ(C.vishniacci)が挙げられる。ロドトルラ(Rhodotorula)属種の適切な例としては、ロドトルラ・アケニオルム(R.acheniorum)、ロドトルラ・トゥラ(R.tula)、ロドトルラ・アクタ(R.acuta)、ロドトルラ・アメリカーナ(R.americana)、ロドトルラ・アラウカリエ(R.araucariae)、ロドトルラ・アークティカ(R.arctica)、ロドトルラ・アルメニアカ(R.armeniaca)、ロドトルラ・アウランティアカ(R.aurantiaca)、ロドトルラ・アウリクラリエ(R.auriculariae)、ロドトルラ・バカルム(R.bacarum)、ロドトルラ・ベンチカ(R.benthica)、ロドトルラ・ビオウルゲイ(R.biourgei)、ロドトルラ・ボゴリエンシス(R.bogoriensis)、ロドトルラ・ブロンキアリス(R.bronchialis)、ロドトルラ・ブフォニィ(R.buffonii)、ロドトルラ・カリプトゲナエ(R.calyptogenae)、ロドトルラ・チュングナメンシス(R.chungnamensis)、ロドトルラ・クラディエンシス(R.cladiensis)、ロドトルラ・コラリナ(R.corallina)、ロドトルラ・クレゾリカ(R.cresolica)、ロドトルラ・クロセア(R.crocea)、ロドトルラ・シクロクラスティカ(R.cycloclastica)、ロドトルラ・ダイレネンシス(R.dairenensis)、ロドトルラ・ディフルエンス(R.diffluens)、ロドトルラ・エベルグラディエンシス(R.evergladiensis)、ロドトルラ・フェルリカ(R.ferulica)、ロドトルラ・フォリオルム(R.foliorum)、ロドトルラ・フラガリア(R.fragaria)、ロドトルラ・フジサネンシス(R.fujisanensis)、ロドトルラ・フトロネンシス(R.futronensis)、ロドトルラ・ゲラティノーサ(R.gelatinosa)、ロドトルラ・グラシアリス(R.glacialis)、ロドトルラ・グルティニス(R.glutinis)、ロドトルラ・グラシリス(R.gracilis)、ロドトルラ・グラミニス(R.graminis)、ロドトルラ・グリンベルグシィ(R.grinbergsii)、ロドトルラ・ヒマライエンシス(R.himalayensis)、ロドトルラ・ヒヌレア(R.hinnulea)、ロドトルラ・ヒストリティカ(R.histolytica)、ロドトルラ・ヒロフィラ(R.hylophila)、ロドトルラ・インカルナタ(R.incarnata)、ロドトルラ・インゲニオサ(R.ingeniosa)、ロドトルラ・ジャバニカ(R.javanica)、ロドトルラ・コイシカウェンシス(R.koishikawensis)、ロドトルラ・ラクトーサ(R.lactosa)、ロドトルラ・ラメリブラキエ(R.lamellibrachiae)、ロドトルラ・ラリンギス(R.laryngis)、ロドトルラ・リグノフィラ(R.lignophila)、ロドトルラ・リニ(R.lini)、ロドトルラ・ロンギッシマ(R.longissima)、ロドトルラ・ルドウィギィ(R.ludwigii)、ロドトルラ・リシノフィラ(R.lysinophila)、ロドトルラ・マリーナ(R.marina)、ロドトルラ・マルチニエ−フラガンティス(R.martyniae−fragantis)、ロドトルラ・マトリテンシス(R.matritensis)、ロドトルラ・メリ(R.meli)、ロドトルラ・ミヌタ(R.minuta)、ロドトルラ・ムシラギノーサ(R.mucilaginosa)、ロドトルラ・ニテンス(R.nitens)、ロドトルラ・ノトファギ(R.nothofagi)、ロドトルラ・オリザエ(R.oryzae)、ロドトルラ・パシフィカ(R.pacifica)、ロドトルラ・パリダ(R.pallida)、ロドトルラ・ペネウス(R.peneaus)、ロドトルラ・フィリラ(R.philyla)、ロドトルラ・フィロプラナ(R.phylloplana)、ロドトルラ・ピラティ(R.pilatii)、ロドトルラ・ピリマネ(R.pilimanae)、ロドトルラ・ピニコラ(R.pinicola)、ロドトルラ・ピリカタ(R.plicata、)、ロドトルラ・ポリモルファ(R.polymorpha)、ロドトルラ・サイクロフェノリカ(R.psychrophenolica)、ロドトルラ・サイクロフィラ(R.psychrophila)、ロドトルラ・パストゥラ(R.pustula)、ロドトルラ・レティノフィラ(R.retinophila)、ロドトルラ・ロザケア(R.rosacea)、ロドトルラ・ロスラータ(R.rosulata)、ロドトルラ・ルベファシエンス(R.rubefaciens)、ロドトルラ・ルベラ(R.rubella)、ロドトルラ・ルベスセンス(R.rubescens)、ロドトルラ・ルブラ(R.rubra)、ロドトルラ・ルブロルゴサ(R.rubrorugosa)、ロドトルラ・ルフラ(R.rufula)、ロドトルラ・ルティラ(R.rutila)、ロドトルラ・サングイネア(R.sanguinea)、ロドトルラ・サニエイ(R.sanniei)、ロドトルラ・サルトリィ(R.sartoryi)、ロドトルラ・シルベストリス(R.silvestris)、ロドトルラ・シンプレックス(R.simplex)、ロドトルラ・シネンシス(R.sinensis)、ロドトルラ・スルーフィエ(R.slooffiae)、ロドトルラ・ソンクキィ(R.sonckii)、ロドトルラ・ストラミネア(R.straminea)、ロドトルラ・スベリコラ(R.subericola)、ロドトルラ・スガニィ(R.suganii)、ロドトルラ・タイワネンシス(R.taiwanensis)、ロドトルラ・タイワニアナ(R.taiwaniana)、ロドトルラ・テルペノイダリス(R.terpenoidalis)、ロドトルラ・テッレア(R.terrea)、ロドトルラ・テキセンシス(R.texensis)、ロドトルラ・トキョエンシス(R.tokyoensis)、ロドトルラ・ウルザメ(R.ulzamae)、ロドトルラ・バニリカ(R.vanillica)、ロドトルラ・ブイレミニィ(R.vuilleminii)、ロドトルラ・ヤロウィ(R.yarrowii)、ロドトルラ・ユナネンシス(R.yunnanensis)、およびロドトルラ・ゾルティ(R.zsoltii)が挙げられる。ファフィア(Phaffia)属種の適切な例としては、ファフィア・ロドジマ(P.rhodozyma)が挙げられる。
スポロボロミケス(Sporobolomyces)属種の適切な例としては、スポロボロミケス・アルボルベスセンス(S.alborubescens)、スポロボロミケス・バナエンシス(S.bannaensis)、スポロボロミケス・ベイジンゲンシス(S.beijingensis)、スポロボロミケス・ビスフォフィエ(S.bischofiae)、スポロボロミケス・クラバトゥス(S.clavatus)、スポロボロミケス・コプロスメ(S.coprosmae)、スポロボロミケス・コプロスミコーラ(S.coprosmicola)、スポロボロミケス・コラリヌス(S.corallinus)、スポロボロミケス・ディメネ(S.dimmenae)、スポロボロミケス・ドラコフィリィ(S.dracophylli)、スポロボロミケス・エロンガトゥス(S.elongatus)、スポロボロミケス・グラシリス(S.gracilis)、スポロボロミケス・イノシトフィルス(S.inositophilus)、スポロボロミケス・ジョンソニィ(S.johnsonii)、スポロボロミケス・コアラエ(S.koalae)、スポロボロミケス・マグニスポラス(S.magnisporus)、スポロボロミケス・ノボゼアランディカス(S.novozealandicus)、スポロボロミケス・オドラス(S.odorus)、スポロボロミケス・パタゴニカス(S.patagonicus)、スポロボロミケス・プロダクトゥス(S.productus)、スポロボロミケス・ロセウス(S.roseus)、スポロボロミケス・サシコーラ(S.sasicola)、スポロボロミケス・シバタヌス(S.shibatanus)、スポロボロミケス・シンギュラリス(S.singularis)、スポロボロミケス・スブルンネウス(S.subbrunneus)、スポロボロミケス・シンメトリカス(S.symmetricus)、スポロボロミケス・シジギィ(S.syzygii)、スポロボロミケス・タウポエンシス(S.taupoensis)、スポロボロミケス・ツガエ(S.tsugae)、スポロボロミケス・キサンツス(S.xanthus)、およびスポロボロミケス・ユナネンシス(S.yunnanensis)が挙げられる。パキソレン(Pachysolen)属種およびモニリエラ(Moniliella)属種の適切な例としてはそれぞれ、パキソレン・タノフィルス(P.tannophilus)およびモニリエラ・ポリニス(M.pollinis)が挙げられる。本明細書中の非従来型酵母のさらに他の例としては、プセウドジーマ(Pseudozyma)属種(例えば、プセウドジーマ・アンタルクティカ(P.antarctica))、トドトルラ(Thodotorula)属種(例えば、トドトルラ・ボゴリエンシス(T.bogoriensis))、ヴィッケルハミエラ(Wickerhamiella)属種(例えば、ヴィッケルハミエラ・ドメルクキアエ(W.domercqiae))、およびスタルメレラ(Starmerella)属種(例えば、ボムビコラスタルメレラ・ボムビコラ(S.bombicola))が挙げられる。
【0202】
ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)は、本明細書中に開示されるある実施形態において、好ましい。適切なヤロウイア・リポリティカ(Y.lipolytica)の例としては、米国菌培養収集所(American Type Culture Collection)(ATCC,Manassas,VA)から入手可能な、以下の単離物が挙げられる:株名称ATCC#20362、#8862、#8661、#8662、#9773、#15586、#16617、#16618、#18942、#18943、#18944、#18945、#20114、#20177、#20182、#20225、#20226、#20228、#20327、#20255、#20287、#20297、#20315、#20320、#20324、#20336、#20341、#20346、#20348、#20363、#20364、#20372、#20373、#20383、#20390、#20400、#20460、#20461、#20462、#20496、#20510、#20628、#20688、#20774、#20775、#20776、#20777、#20778、#20779、#20780、#20781、#20794、#20795、#20875、#20241、#20422、#20423、#32338、#32339、#32340、#32341、#34342、#32343、#32935、#34017、#34018、#34088、#34922、#34922、#38295、#42281、#44601、#46025、#46026、#46027、#46028、#46067、#46068、#46069、#46070、#46330、#46482、#46483、#46484、#46436、#60594、#62385、#64042、#74234、#76598、#76861、#76862、#76982、#90716、#90811、#90812、#90813、#90814、#90903、#90904、#90905、#96028、#201241、#201242、#201243、#201244、#201245、#201246、#201247、#201249、および/または#201847。
【0203】
本明細書中の真菌細胞は、酵母(例えば、上記されるような)、または、糸状菌などの他の真菌型の細胞であり得る。例えば、本明細書中の真菌は、担子菌(Basidiomycetes)、接合菌(Zygomycetes)、ツボカビ菌(Chytridiomycetes)、子嚢菌(Ascomycetes)があり得る。本明細書中の糸状菌の例としては、トリコデルマ(Trichoderma)属、クリソスポリウム(Chrysosporium)属、チエラビア(Thielavia)属、ネウロスポラ(Neurospora)属(例えば、ネウロスポラ・クラッサ(N.crassa))、ネウロスポラ・シトフィラ(N.sitophila)属、クリオネクトリア(Cryphonectria)属(例えば、クリオネクトリア・パラシチカ(C.parasitica))、アウレオバシジウム(Aureobasidium)属(例えば、アウレオバシジウム・プルランス(A.pullulans))、フィリバシジウム(Filibasidium)属、ピロミケス(Piromyces)属、クリプトコックス(Cryptococcus)属、アクレモモニウム(Acremonium)属、トリポクラジウム(Tolypocladium)属、スキタリジウム(Scytalidium)属、スキゾフィルム(Schizophyllum)属、スポロトリクム(Sporotrichum)属、ペニシリウム(Penicillium)属(例えば、ペニシリウム・ビライアエ(P.bilaiae)、ペニシリウム・カメムベルチ(P.camemberti)、ペニシリウム・カンディヅム(P.candidum)、ペニシリウム・クリソゲヌム(P.chrysogenum)、ペニシリウム・エクスパンスム(P.expansum)、ペニシリウム・フニクロスム(P.funiculosum)、ペニシリウム・グラウクム(P.glaucum)、ペニシリウム・マルネフェイ(P.marneffei)、ペニシリウム・ロケフォルチ(P.roqueforti)、ペニシリウム・ベルコスム(P.verrucosum)、ペニシリウム・ヴリジカツム(P.viridicatum))、ギベレラ(Gibberella)属(例えば、ギベレラ・アクミナタ(G.acuminata)、ギベレラ・アベナケア(G.avenacea)、ギベレラ・バカタ(G.baccata)、ギベレラ・キルキナタ(G.circinata)、ギベレラ・キアノゲナ(G.cyanogena)、ギベレラ・フジクロイ(G.fujikuroi)、ギベレラ・イントリカンス(G.intricans)、ギベレラ・プリカリス(G.pulicaris)、ギベレラ・スティボイデス(G.stilboides)、ギベレラ・トリキンクタ(G.tricincta)、ギベレラ・ゼアエ(G.zeae))、ミケリオフトラ(Myceliophthora)属、ムコール(Mucor)属(例えば、ムコール・ロウキシイ(M.rouxii,)、ムコール・キルキネロイデス(M.circinelloides))、アスペルギルス(Aspergillus)属(例えば、アスペルギルス・ニゲル(A.niger)、アスペルギルス・オリザエ(A.oryzae)、アスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)アスペルギルス・フラヴス(A.flavus)、アスペルギルス・レンツルス(A.lentulus)、アスペルギルス・テレウス(A.terreus)、アスペルギルス・クラバツス(A.clavatus)、アスペルギルス・フミガツス(A.fumigatus))、フサリウム(Fusarium)属(例えば、フサリウム・グラミネアルム(F.graminearum)、フサリウム・オキシスポルム(F.oxysporum)、フサリウム・ブディゲヌム(F.bubigenum)、フサリウム・ソラニ(F.solani)、フサリウム・オキシスポルム(F.oxysporum)、フサリウム・ベルチキルリオイデス(F.verticillioides)、フサリウム・プロリフェラツム(F.proliferatum)、フサリウム・ベネナツム(F.venenatum))、およびフミコーラ(Humicola)属、ならびに、そのアナモルフおよびテレモルフのものが挙げられる。本明細書中の真菌の属および種は、必要なら、Barnett and Hunter(Illustrated Genera of Imperfect Fungi,3rd Edition,Burgess Publishing Company,1972)に開示される形態学によって定義することができる。ある実施形態では、真菌は、場合によって、植物または動物(例えば、ヒト)の有害生物/病原体と見なされ得る。
【0204】
本明細書中のある態様におけるトリコデルマ(Trichoderma)属種としては、トリコデルマ・アグレッシバム(T.aggressivum)、トリコデルマ・アマゾニクム(T.amazonicum)、トリコデルマ・アスペレルム(T.asperellum)、トリコデルマ・アトロビリデ(T.atroviride)、トリコデルマ・アウレオビリデ(T.aureoviride)、トリコデルマ・アウストロコニンギィ(T.austrokoningii)、トリコデルマ・ブレビコンパクトゥム(T.brevicompactum)、トリコデルマ・カンディドゥム(T.candidum)、トリコデルマ・カリッベウム(T.caribbaeum)、トリコデルマ・カトプトロン(T.catoptron)、トリコデルマ・クレメウム(T.cremeum)、トリコデルマ・セラミクム(T.ceramicum)、トリコデルマ・セリヌム(T.cerinum)、トリコデルマ・クロロスポルム(T.chlorosporum)、トリコデルマ・クロロスペルマム(T.chromospermum)、トリコデルマ・シナモメウム(T.cinnamomeum)、トリコデルマ・シトリノビリデ(T.citrinoviride)、トリコデルマ・クラッスム(T.crassum)、トリコデルマ・クレメウム(T.cremeum)、トリコデルマ・ジングレエアエ(T.dingleyeae)、トリコデルマ・ドロテアエ(T.dorotheae)、トリコデルマ・エフスム(T.effusum)、トリコデルマ・エリナセウム(T.erinaceum)、トリコデルマ・エストニクム(T.estonicum)、トリコデルマ・フェルティル(T.fertile)、トリコデルマ・ゲラティノサス(T.gelatinosus)、トリコデルマ・グハネンセ(T.ghanense)、トリコデルマ・ハマトゥム(T.hamatum)、トリコデルマ・ハルジアヌム(T.harzianum)、トリコデルマ・ヘリクム(T.helicum)、トリコデルマ・イントリカトゥム(T.intricatum)、トリコデルマ・コニラングブラ(T.konilangbra)、トリコデルマ・コニンギィ(T.koningii)、トリコデルマ・コニンギオプシス(T.koningiopsis)、トリコデルマ・ロンギブラチアトゥム(T.longibrachiatum)、トリコデルマ・ロンギピレ(T.longipile)、トリコデルマ・ミヌティスポルム(T.minutisporum)、トリコデルマ・オブロギスポルム(T.oblongisporum)、トリコデルマ・オバリスポルム(T.ovalisporum)、トリコデルマ・ペテルセニィ(T.petersenii)、トリコデルマ・フィロスタヒディス(T.phyllostahydis)、トリコデルマ・ピルリフェルム(T.piluliferum)、トリコデルマ・プレウロティコラ(T.pleuroticola)、トリコデルマ・プレウロトゥム(T.pleurotum)、トリコデルマ・ポリスポルム(T.polysporum)、トリコデルマ・プセウドコニンギィ(T.pseudokoningii)、トリコデルマ・プベスセンス(T.pubescens)、トリコデルマ・レーセイ(T.reesei)、トリコデルマ・ロゲルソニィ(T.rogersonii)、トリコデルマ・ロシクム(T.rossicum)、トリコデルマ・サトゥルニスポルム(T.saturnisporum)、トリコデルマ・シネンシス(T.sinensis)、トリコデルマ・シヌオスム(T.sinuosum)、トリコデルマ・スピラレ(T.spirale)、トリコデルマ・ストラミネウム(T.stramineum)、トリコデルマ・ストリゴスム(T.strigosum)、トリコデルマ・ストロマティクム(T.stromaticum)、トリコデルマ・スロトゥンドゥム(T.surrotundum)、トリコデルマ・タイワネンセ(T.taiwanense)、トリコデルマ・タイランディクム(T.thailandicum)、トリコデルマ・テレフォリコルム(T.thelephoricolum)、トリコデルマ・セオブロミコラ(T.theobromicola)、トリコデルマ・トメントスム(T.tomentosum)、トリコデルマ・ベルティヌム(T.velutinum)、トリコデルマ・ビレンス(T.virens)、トリコデルマ・ビリデ(T.viride)、およびトリコデルマ・ビリデスセンス(T.viridescens)が挙げられる。本明細書中でトリコデルマ(Trichoderma)属種は、例えば、Trichoderma:Biology and Applications(P.K.Mukherjee et al.,Eds.,CABI,Oxfordshire,UK,2013)(この文献は参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されるように培養され、かつ/または操作され得る。
【0205】
ある実施形態における微生物細胞は、藻類細胞である。例えば、藻類細胞は、以下のいずれに由来してもよい:緑藻植物(Chlorophyta)門(緑藻類)、紅藻植物(Rhodophyta)門(紅藻類)、褐藻植物(Phaeophyceae)綱(褐藻類)、珪藻植物(Bacillariophycaeae)綱(珪藻類)、および渦鞭毛虫(Dinoflagellata)門(渦鞭毛虫類)。藻類細胞は、他の態様において、微細藻類(例えば、植物プランクトン、微細植物、またはプランクトン藻類)の細胞であっても大型藻類(ケルプ、海草)の細胞であってもよい。さらなる例として、本明細書中で藻類細胞は、アマノリ(Porphyra)属(アサクサノリ)、ダルス(Palmaria)属種、例えばダルス(P.palmata)、アルトロスピラ(Arthrospira)属種、例えばスピルリナ(A.platensis)、クロレラ(Chlorella)属(例えばクロレラ(C.protothecoides))、ツノマタ(Chondrus)属種、例えばトチャカ(C.crispus)、アファニゾメノン(Aphanizomenon)属、ホンダワラ(Sargassum)属、コチャユヨ(Cochayuyo)属、ボツリオコッカス(Botryococcus)属(例えばボツリオコッカス・ブラウニィ(B.braunii))、ドナリエラ(Dunaliella)属(例えばドナリエラ・テルティオレクタ(D.tertiolecta))、グラシラリア(Gracilaria)属、プレウロクリシス(Pleurochrysis)属(例えばプレウロクリシス・カルテレ(P.carterae))、アンキストロデスムス(Ankistrodesmus)属、キクロテラ(Cyclotella)属、ハンチア(Hantzschia)属、ナンノクロリス(Nannochloris)属、ナンノクロロプシス(Nannochloropsis)属、ニッチア(Nitzschia)属、フェオダクチルム(Phaeodactylum)属(例えばフェオダクチルム・トリコルヌトゥム(P.tricornutum))、セネデスムス(Scenedesmus)属、スティココッカス(Stichococcus)属、テトラセルミス(Tetraselmis)属(例えばテトラセルミス・スエシカ(T.suecica))、タラシオシラ(Thalassiosira)属(例えばタラシオシラ・プセウドナナ(T.pseudonana))、クリプテコディニウム(Crypthecodinium)属(例えばクリプテコディニウム・コーニィ(C.cohnii))、ネオクロリス(Neochloris)属(例えばネオクロリス・オレオアブンダンス(N.oleoabundans))、またはシゾキトリウム(Schiochytrium)属のものであってよい。本明細書中で藻類種は、例えば、Thompson(Algal Cell Culture.Encyclopedia of Life Support System(EOLSS),Biotechnology Vol 1、eolss.net/sample−chaptersインターネットサイトにて入手可能)(この文献は参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されるように培養され、かつ/または操作され得る。
【0206】
一実施形態において、本方法は、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)のタンパク質構成要素を微生物細胞へ輸送する方法であって、微生物細胞を、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)のタンパク質構成要素と少なくとも1つの細胞透過ペプチド(CPP)とを含む組成物と接触させる工程を含み、前記タンパク質構成要素とCPPとは共有結合的に、または非共有結合的に互いに結合して、RGENタンパク質−CPP複合体を形成しており、前記RGENタンパク質−CPP複合体は、細胞の(i)細胞膜または(ii)細胞壁および細胞膜を横断し、それにより微生物細胞に侵入する方法を含む。本明細書中に記載される方法および組成物に有用な微生物細胞は、フィトフトーラ・カプシキ(Phytophtora capsici)などのフィトフトーラ(Phytophtora)属種(Lamour et al.2012.The oomycete broad−host−range pathogen Phytophtora capsici.Mol.Plant Pathol.May13(4):329−337)、セプトリア・トリチキ(Septoria tritici)などのジーモセプトリア(Zymoseptoria)属種(Testa et al.2015.Overview of genomic and bioinformatics resources for Zymoseptoria tritici.Fungal Genet.Biol.Jun.79:13−16)、およびボトゥリチス・キネレア(Botrytis cinerea)などのボトゥリチス(Botrytis)属種(Hahn M.2014.The rising threat of fungicide resistance in plant pathogenic fungi:Botrytis as a case study.J.Chem.Biol 7:133−141)から選択される細胞が挙げられる。
【0207】
本明細書中の原生生物細胞は、例えば、繊毛虫(Ciliata)綱(例えば、テトラヒメナ(Tetrahymena)属、ゾウリムシ(Paramecium)属、コルピディウム(Colpidium)属、コルポダ(Colpoda)属、グラウコマ(Glaucoma)属、プラティオフリア(Platyophrya)属、ボルチセラ(Vorticella)属、ポトマカス(Potomacus)属、プセウドコニレンブス(Pseudocohnilembus)属、エウプロテス(Euplotes)属、エンゲルマニエラ(Engelmaniella)属、およびスチロニキア(Stylonichia)属、マスチゴフォラ(Mastigophora)亜門(フラゲラーテ(flagellates))、フィトマスチゴフォラ(Phytomastigophorea)綱(例えば、ミドリムシ(Euglena)属、アスタシア(Astasia)属、ヘマトコッカス(Haematococcus)属、およびクリプテコディニウム(Crypthecodinium))、鞭毛虫(Zoomastigophorea)綱、リゾポーザ(Rhizopoda)上綱、ロボセア(Lobosea)綱(例えば、アメーバ(Amoeba)属、ならびにエウミケトゾエア(Eumycetozoea)綱(例えば、ディクティオステリウム(Dictyostelium)属およびフィサルム(Physarum)属)から選択することができる。本明細書中のある原生生物種は、例えば、ATCC(登録商標)Protistology Culture Guide:tips and techniques for propagating protozoa and algae(2013,American Type Culture Collection internet siteで入手可能)(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されるようにして培養および/または操作することができる。ある実施形態では、原生生物は、場合によって、植物または動物(例えば、ヒト)の有害生物/病原体と見なされ得る。
【0208】
ある実施形態の細菌細胞は、球菌、桿菌、スピロヘータ、スフェロプラスト、プロトプラストなどの形態のものであり得る。細菌の他の非限定的な例としては、グラム陰性菌およびグラム陽性菌が挙げられる。細菌のさらに他の非限定的な例としては、サルモネラ(Salmonella)属(例えば、サルモネラ・ティフィ(S.typhi)、サルモネラ・エンテティジス(S.enteritidis)、シゲラ(Shigella)属(例えば、シゲラ・ディセンテリアエ(S.dysenteriae))、エケリキア(Escherichia)属(例えば、エケリキア・コリ(E.coli))、エンテロバクター(Enterobacter)属、セラチア(Serratia)属、プロテウス(Proteus)属、エルシニア(Yersinia)属、シトロバクター(Citrobacter)属、エドワードシエラ(Edwardsiella)属、プロビデンシア(Providencia)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、ハフニア(Hafnia)属、エウインゲラ(Ewingella)属、クライベラ(Kluyvera)属、モルガネラ(Morganella)属、プラノコッカス(Planococcus)属、ストマトコッカス(Stomatococcus)属、ミクロコッカス(Micrococcus)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属(例えば、スタフィロコッカス・アウレウス(S.aureus)、スタフィロコッカス・エピデルミディス(S.epidermidis))、ビブリオ(Vibrio)属(例えば、ビブリオ・コレラエ(V.cholerae)、アエロモナス(Aeromonas)属、プレシオモナス(Plessiomonas)属、ヘモフィルス(Haemophilus)属(例えば、ヘモフィルス・インフルエンザエ(H.influenzae))、アクチノバチルス(Actinobacillus)属、パスツレラ(Pasteurella)属、マイコプラズマ(Mycoplasma)属(例えば、マイコプラズマ・ニューモニア(M.pneumonia))、ウレアプラズマ(Ureaplasma)属、リケッチア(Rickettsia)属、コクシエラ(Coxiella)属、ロシャリメア(Rochalimaea)属、エーリキア(Ehrlichia)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属(例えば、ストレプトコッカス・ピオゲネス(S.pyogenes)、ストレプトコッカス・ミュータンス(S.mutans)、ストレプトコッカス・ニューモニア(S.pneumoniae))、エンテロコッカス(Enterococcus)属(例えば、エンテロコッカス・ファエカリス(E.faecalis))、アエロコッカス(Aerococcus)属、ゲメラ(Gemella)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属(例えば、ラクトコッカス・ラクチス(L.lactis))、ロイコノストック(Leuconostoc)(例えば、ロイコノストック・メセンテロイデス(L.mesenteroides))、ペディコッカス(Pedicoccus)属、バチルス(Bacillus)属(例えば、バチルス・セレウス(B.cereus)、バチルス・スブティリス(B.subtilis)、バチルス・ツリンギエンシス(B.thuringiensis))、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属(例えば、コリネバクテリウム・ジフテリアエ(C.diphtheriae))、アルカノバクテリウム(Arcanobacterium)属、アクチノミケス(Actinomyces)属、ロードコッカス(Rhodococcus)属、リステリア(Listeria)属(例えば、リステリア・モノシトゲネス(L.monocytogenes))、エリシペロリクス(Erysipelothrix)、ガードネレラ(Gardnerella)属、ナイセリア(Neisseria)属(例えば、ナイセリア・メニングギティディス(N.meningitidis)、ナイセリア・ゴノルホエアエ(N.gonorrhoeae))、カンピロバクター(Campylobacter)属、アクロバクター(Arcobacter)属、ウォリネラ(Wolinella)属、ヘリコバクター(Helicobacter)属(例えば、ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori))、アクロモバクター(Achromobacter)属、アキネトバクター(Acinetobacter)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属(例えば、アグロバクテリウム・ツメファキエンス(A.tumefaciens))、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、クリセオモナス(Chryseomonas)属、コマモナス(Comamonas)属、エイケネラ(Eikenella)属、フラビモナス(Flavimonas)属、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属、モラキセラ(Moraxella)属、オリゲラ(Oligella)属、プセウドモナス(Pseudomonas)属(例えば、プセウドモナス・アエルギノサ(P.aeruginosa))、シュワネラ(Shewanella)属、ウエークセラ(Weeksella)属、キサントモナス(Xanthomonas)属、ボルデテラ(Bordetella)属、フランシエセラ(Franciesella)属、ブルセラ(Brucella)属、レジオネラ(Legionella)属、アフピア(Afipia)属、バルトネラ(Bartonella)属、カリマトバクテリウム(Calymmatobacterium)属、カルディオバクテリウム(Cardiobacterium)属、ストレプトバチルス(Streptobacillus)属、スピリルム(Spirillum)属、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)属、ペプトコッカス(Peptococcus)属、サルキニア(Sarcinia)属、コプロコッカス(Coprococcus)属、ルミノコッカス(Ruminococcus)属、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)属、モビルンカス(Mobiluncus)属、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、ユーバクテリウム(Eubacterium)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属(例えば、ラクトバチルス・ラクチス(L.lactis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(L.acidophilus))、ロチア(Rothia)属、クロストリジウム(Clostridium)属(例えば、クロストリジウム・ボツリヌム(C.botulinum)、クロストリジウム・ペルフリンゲンス(C.perfringens))、バクテロイデス(Bacteroides)属、ポルフィロモナス(Porphyromonas)属、プレボテラ(Prevotella)属、フソバクテリウム(Fusobacterium)、ビロフィリア(Bilophila)、レプトトリキア(Leptotrichia)、ウォリネラ(Wolinella)属、アシダミノコッカス(Acidaminococcus)属、メガスフェラ(Megasphaera)属、ヴェイロネラ(Veilonella)属、ノルカルディア(Norcardia)属、アクチノマドゥラ(Actinomadura)属、ノルカルディオプシス(Norcardiopsis)属、ストレプトミケス(Streptomyces)属、ミクロポリスポラス(Micropolysporas)属、テルモアクチノミセス(Thermoactinomycetes)属、ミコバクテリウム(Mycobacterium)属(例えば、ミコバクテリウム・ツベルクロシス(M.tuberculosis)、ミコバクテリウム・ボヴィス(M.bovis)、ミコバクテリウム・レプラエ(M.leprae)、トレポネマ(Treponema)属、ボレリア(Borrelia)属(例えば、ボレリア・ブルグドrフェリ(B.burgdorferi)、レプトスピラ(Leptospira)、およびクラミジアエ(Chlamydiae)属が挙げられる。細菌は、場合によって、植物または動物(例えば、ヒト)の有害生物/病原体と見なされ得る。ある実施形態では、細菌は、混合微生物集団(例えば、他の細菌を含有、または酵母および/もしくは他の細菌を含有)に含まれ得る。
【0209】
ある実施形態では、古細菌細胞は、ユリ古細菌門、クレン古細菌門、ナノ古細菌門、コル古細菌門、アイガー古細菌門、タウム古細菌門など、任意の古細菌門に由来するものであってよい。本明細書中の古細菌は、例えば、好極限性(例えば、殆どの生命にとって有害となる、物理的または地球化学的に過酷な条件で成長および/または増殖することができる)であってよい。好極限性古細菌の例としては、好熱性(例えば、45〜122℃の温度で成長できる)、超好熱性(例えば、80〜122℃の温度で成長できる)、好酸性(例えば、3以下のpHレベルで成長できる)、好アルカリ性(例えば、9以下のpHレベルで成長できる)および/または好塩性(例えば、高塩濃度[20〜30% NaCl]で成長できる)のものが挙げられる。古細菌種の例としては、ハロバクテリウム(Halobacterium)属種(例えば、ハロバクテリウム・ウォルカニイ(H.volcanii))、スルフォロブス(Sulfolobus)属種(例えば、スルフォロブス・ソルファタリクス(S.solfataricus)、スルフォロブス・アシドカルダリウス(S.acidocaldarius))、テルモコッカス(Thermococcus)属種(例えば、テルモコッカス・アルカリフィルス(T.alcaliphilus)、テルモコッカス・セレール(T.celer)、テルモコッカス・キトノファグス(T.chitonophagus)、テルモコッカス・ガンマトレランス(T.gammatolerans)、テルモコッカス・ヒドロテルマリス(T.hydrothermalis)、テルモコッカス・コダカレンシス(T.kodakarensis)、テルモコッカス・リトラリス(T.litoralis)、テルモコッカス・ペプトノフィルス(T.peptonophilus)、テルモコッカス・プロフンドゥス(T.profundus)、テルモコッカス・ステッテリ(T.stetteri))、メタノカルドコッカス(Methanocaldococcus)属種(例えば、メタノカルドコッカス・テルモリトトロフィクス(M.thermolithotrophicus)、メタノカルドコッカス・ヤナシイ(M.jannaschii))、メタノコッカス(Methanococcus)属種(例えば、メタノコッカス・マリパルディス(M.maripaludis)、メタノテルモバクター(Methanothermobacter)属種(例えば、メタノテルモバクター・マルブルゲンシス(M.arburgensis)、メタノテルモバクター・テルマウトトロフィクス(M.thermautotrophicus))、アーケオグロブス(Archaeoglobus)属種(例えば、アーケオグロブス・フルギドゥス(A.fulgidus))、ニトロソプミルス(Nitrosopumilus)属種(例えば、ニトロソプミルス・マリティムス(N.maritimus))、メタロスファエラ(Metallosphaera)属種(例えば、メタロスファエラ・セドゥラ(M.sedula))、フェロプラズマ(Ferroplasma)属種、テルモプラズマ(Thermoplasma)属種、メタノブレビバクター(Methanobrevibacter)属種(例えば、メタノブレビバクター・スミチイ(M.smithii))、およびメタノスフェラ(Methanosphaera)属種(例えば、メタノスフェラ・スタットマナエ(M.stadtmanae))が挙げられる。
【0210】
本明細書中の昆虫細胞の例としては、例えば、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)細胞、カイコ(Bombyx mori)細胞などが挙げられる。スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞としては、例えば、Sf9およびSf21が挙げられる。イラクサギンウワバ(T.ni)子房細胞としては、例えば、HIGH FIVE細胞(別名 BTI−TN−5B1−4、Invitrogen製)が挙げられる。カイコ(B.mori)細胞としては、例えば、N4が挙げられる。本明細書中のある昆虫細胞は、例えば、Growth and Maintenance of Insect cell lines(2010,Invitrogen,Manual part no.25−0127,MAN0000030)(この文献は参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されるように培養され、かつ/または操作され得る。他の態様において、昆虫細胞は、ヨトウムシ、タマナヤガ、アメリカタバコガの幼虫、トウモロコシノミハムシ、トウモロコシアブラムシ、トウモロコシ根アブラムシ、ヨーロッパアワノメイガ、ヨトウガ、グラニュレートカットワーム、マメコガネ、モロコシマダラメイガ、トウモロコシゾウムシ、メラノータス・コムニス(melanotus communis)、シードコーンマゴット(seedcorn maggot)、ツトガ、ソルガムミッジ、ソルガムウェブワーム(sorghum webworm)、サザーンコーンビルバグ(southern corn billbug)、サザーンコーンルートワーム(southern corn rootworm)、サザーンコーンストークボーラー(southern cornstalk borer)、サザーンポテトワイアーワーム(southern potato wireworm)、ハダニ、ストークボーラー(stalk borer)、シュガーケーンビートル(sugarcane beetle)、タバコワイアワーム(tobacco wireworm)、ホワイトグラブ(white grub)、アブラムシ、ワタミゾウムシ、ボールワームコンプレックス(bollworm complex)、キャベッジルーパー(cabbage looper)、ターニシュドプラントバグ(tarnished plant bug)、アザミウマ、ナミハダニ、イエローストライプトアーミーワーム(yellow striped armyworm)、アルファルファタコゾウムシ、クローバーゾウムシ、クローバールートカーキュリオ(clover root curculio)、モロコシマダラメイガ、バッタ、ホソアワフキ、エンドウヒゲナガアブラムシ、ジャガイモヒメヨコバイ、ツトガ、ニセタマナヤガ、モロコシマダラメイガ、タバコアザミウマ、ハリガネムシ、穀類のハムシ、チンチバグ、イングリッシュグレインアフィド(English grain aphid)、ムギミドリアブラムシ、ヘシアンバエ、ビーンリーフビートル(bean leaf beetle)、シロイチモジヨトウ、ツチハンミョウ、グレープコラスピス(grape colaspis)、グリーンクローバーワーム(green cloverworm)、インゲンテントウ、アオムシ類、ソイビーンステムボーラー(soybean stem borer)、スティングバグ(stink bug)、スリーコーナードアルファルファホッパー(three−cornered alfalfa hopper)、ベルベットビーンケーターピラー(velvetbean caterpillar)、バドワーム(Budworm)、イラクサキンウワバ、カットワーム(Cutworm)、グリーンジューンビートル(green june beetle)、モモアカアブラムシ、ホーンワーム(hornworm)、ポテトチューバーワーム(potato tuberworm)、サザーンモールクリケット(southern mole cricket)、サックフライ(suckfly)、タバコフリービートル(tobacco flea beetle)、ベジタブルウィービル(vegetable weevil)またはホワイトフリンジドビートル(whitefringed beetle)などの植物の有害生物/病原体の細胞であり得る。あるいは、昆虫細胞は、動物(例えば、ヒト)の有害生物/病原体の細胞であり得る。
【0211】
線虫細胞は、例えば、以下の属のいずれか由来の線虫の細胞であり得る:
メロイドギネ(Meloidogyne)(ネコブセンチュウ)、プラティレンチュス(Pratylenchus)(リージョンネマトーダ(lesion nematode))、ヘテロデラ(Heterodera)(シストセンチュウ)、グローボデラ(Globodera)(シストセンチュウ)、ジチレンチュス(Ditylenchus)(ステムアンドバルブネマトーダ(stem and bulb nematode))、ティレンチュルス(Tylenchulus)(シトラスネマトーダ(citrus nematode))、シピネーマ(Xiphinema)(オオハリセンチュウ)、ラドフォルス(Radopholus)(ネモグリセンチュウ)、ロチレンチュルス(Rotylenchulus)(レニフォームネマトーダ(reniform nematode))、ヘリコティレンチュス(Helicotylenchus)(スパイラルネマトーダ(spiral nematode))またはベロノライムス(Belonolaimus)(スティングネマトーダ(sting nematode))。ある実施形態では、線虫は、場合によって、植物または動物(例えば、ヒト)の有害生物/病原体と見なされ得る。他の態様では、線虫は、カエノラブディティス・エレガンス(C.elegans)であり得る。
【0212】
魚類細胞は、例えば、米国特許第7408095号明細書および同第7217564号明細書、ならびにTissue Culture of Fish Cell Lines(T.Ott,NWFHS Laboratory Procedures Manual−Second Edition,Chapter 10,2004)(これらの文献は参照によって本明細書に組み込まれる)に開示されている細胞の任意のものであり得る。これらの文献は、また、魚類細胞の培養および/または操作に関する情報を開示している。魚類細胞の非限定的な例は、ゼブラフィッシュ、メダカ、ジャイアントレリオ(Giant rerio)またはフグなどの真骨魚類由来のものであり得る。
【0213】
本明細書の植物細胞は、例えば、単子葉植物細胞または双子葉植物細胞であり得る。本明細書中の単子葉植物の例としては、トウモロコシ(ゼアマイズ(Zea・mays))、アジアイネ(オリザ・サティバ(Oryza sativa))、ライムギ(セカレ・セレアレ(Secale cereale))、ソルガム(ソルガム・ビカラー(Sorghum bicolor)、ソルガム・ブルガレ(Sorghum vulgare))、トウジンビエ(例えばトウジンビエ、ペニセツム・グラウクム(Pennisetum glaucum))、キビ(パニクム・ミリアセウム(Panicum miliaceum))、アワ(セタリア・イタリカ(Setaria italica))、シコクビエ(エレウシネ・コラカナ(Eleusine coracana))、コムギ(トリティクム・アエスティバム(Triticum aestivum))、サトウキビ(サッカルム属(Saccharum spp.))、カラスムギ(アヴィーナ(Avena属))、オオムギ(ホルデウム属(Hordeum))、スイッチグラス(パニクム・ヴィルガツム(Panicum virgatum))、パイナップル(アナナス・コモスス(Ananas comosus))、バナナ(ムサ属(Musa spp.))、ヤシ、観賞植物および芝草が挙げられる。明細書中の双子葉植物の例としては、ダイズ(グリシン・マックス(Glycine max))、キャノーラ(ブラシカ・ナプス(Brassica napus)およびブラシカ・カンペストリス(B.campestris))、アルファルファ(メディカゴ・サティバ(Medicago sativa))、タバコ(ニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabacum))、シロイヌナズナ(アラビドプシス・タリアナ(A.thaliana))、ヒマワリ(ヘリアンツス・アナス(Helianthus annuus))、ワタ(ゴシピウム・アルボレウム(Gossypium arboreum))、ラッカセイ(アラキス・ヒポガエア(Arachis hypogaea))、トマト(ソラヌム・リコペルシクム(Solanum lycopersicum))およびジャガイモ(ソラヌム・チューベロスム(Solanum tuberosum))が挙げられる。植物細胞は、植物のいかなる部分から、かつ/または植物の生育のいかなる段階からのものであってよい。
【0214】
本明細書中の植物細胞は、従来の条件で植物に生育または再生させてもよい(例えば、McCormick et al.,(1986)Plant Cell Rep 5:81−4を参照)。再生植物をその後に生育してもよく、また同じ株で受粉させても異なる株で受粉させてもよく、そして得られる子孫は所望の特性(例えば、改変)を有し、かつ/または特定された導入ポリヌクレオチドまたはポリぺプチド含む。2代以上生育して、改変が安定に維持され、かつ受け継がれたことを確認して、種子を収穫してもよい。
【0215】
ある実施形態において、哺乳類細胞は、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、さる、類人猿)、齧歯動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット)、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギまたはヒツジの細胞であり得る。本明細書中の哺乳類細胞の他の例としては、初代上皮細胞(例えば、ケラチノサイト、子宮頸部上皮細胞、気管支上皮細胞、気管上皮細胞、腎臓上皮細胞、網膜上皮細胞);樹立細胞株(例えば、293胎児腎臓細胞、HeLa子宮頸部上皮細胞、PER−C6網膜細胞、MDBK、CRFK、MDCK、CHO、BeWo、チャン細胞、Detroit 562、Hep−2、KB、LS 180、LS 174T、NCI−H−548、RPMI 2650、SW−13、T24、WI−28 VA13、2RA、WISH、BS−C−I、LLC−MK2、Clone M−3、RAG、TCMK−1、LLC−PK1、PK−15、GH1、GH3、L2、LLC−RC 256、MH1C1、XC、MDOK、VSW、TH−I、B1細胞);任意の組織または器官からの任意の上皮、間葉(例えば、線維芽細胞)、神経、または筋肉細胞(例えば、皮膚、心臓;肝臓;腎臓;結腸;腸;食道;胃;脳または脊髄などの神経組織;肺;維管束組織;リンパ腺、アデノイド、扁桃腺、骨髄または血液などのリンパ系組織;脾臓);および線維芽細胞または線維芽細胞様細胞株(例えば、TRG−2、IMR−33、ドン細胞、GHK−21、シトルリン細胞、デンプシー細胞、Detroit 551、Detroit 510、Detroit 525、Detroit 529、Detroit 532、Detroit 539、Detroit 548、Detroit 573、HEL 299、IMR−90、MRC−5、WI−38、WI−26、MiCl1、CV−1、COS−1、COS−3、COS−7、Vero、DBS−FrhL−2、BALB/3T3、F9、SV−T2、M−MSV− BALB/3T3、K−BALB、BLO−11、NOR−10、C3H/IOTI/2、HSDM1C3、KLN205、McCoy細胞、マウスL細胞、SCC−PSA1、Swiss/3T3細胞、インドホエジカ細胞、SIR、ジェンセン(Jensen)細胞が挙げられる。哺乳類細胞株の培養および操作方法は当該技術分野で知られている。
【0216】
ある実施形態では、微生物細胞は、動物または植物の病原体および/または有害生物であり得る。そのような病原体および/または有害生物の例としては、様々な種類の細菌、真菌、酵母、原生生物、線虫および昆虫が挙げられる。当業者であれば、上に開示したそのような病原体および/または有害生物の例を認識しているであろう。
【0217】
本明細書中に開示されているように(実施例10を参照)、細胞透過ペプチドは、フィトフトーラ・カプシキ(Phytophthora capsici)、セプトリア・トリチキ(Septoria tritici)およびボトゥリチス・キネレア(Botrytis cinerea)を含む種々に真核種に積み荷を輸送することができた。
【0218】
一実施形態において、本明細書中に記載の方法は、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)のタンパク質構成要素を、フィトフトーラ・カプシキ(Phytophthora capsici)、セプトリア・トリチキ(Septoria tritici)およびボトゥリチス・キネレア(Botrytis cinerea)からなる群か選択される微生物細胞へ輸送する方法であって、微生物細胞を、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)のタンパク質構成要素と少なくとも1つの細胞透過ペプチド(CPP)とを含む組成物と接触させる工程を含み、前記タンパク質構成要素とCPPとは共有結合的に、または非共有結合的に互いに結合して、RGENタンパク質−CPP複合体を形成しており、前記RGENタンパク質−CPP複合体は、細胞の(i)細胞膜または(ii)細胞壁および細胞膜を横断し、それにより微生物細胞に侵入する方法である。
【0219】
本明細書中のある実施形態における組成物は、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体の少なくとも1つのタンパク質構成要素と、少なくとも1つの細胞透過ペプチド(CPP)とを含み得、タンパク質組成物とCPPとは、共有結合的に、または非共有結合的に互いに結合して、ポリヌクレオチド/エンドヌクレアーゼタンパク質−CPP複合体を形成しており、かつポリヌクレオチド/エンドヌクレアーゼタンパク質−CPP複合体は、細胞(例えば、微生物細胞)の(i)細胞膜、または(ii)細胞壁および細胞膜を横断することができる。ガイドポリヌクレオチドとCasエンドヌクレアーゼとは、CasエンドヌクレアーゼのDNA標的部位での二重鎖切断を可能にする複合体(「ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体」と呼ぶ)を形成することができる。
【0220】
開示される発明はまた、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)のタンパク質構成要素を細胞(例えば、微生物細胞)に輸送する方法に関する。この方法は、細胞を、RGENタンパク質構成要素と少なくとも1つの細胞透過ペプチド(CPP)とを含む組成物と接触させる工程を含み、RGENタンパク質構成要素とCPPとは共有結合的に、または非共有結合的に互いに結合して、RGENタンパク質−CPP複合体を形成している。この工程の結果として、RGENタンパク質−CPP複合体は、細胞の(i)細胞膜または(ii)細胞壁および細胞膜を横断し、それにより細胞への侵入を獲得することができる。RGENタンパク質構成要素がRNA構成要素と結合する(これによって、RGENを形成する)ある実施形態では、開示される方法は、RGEN−CPP複合体の細胞への輸送に関する。さらに、RGENはRGEN媒介DNAターゲティングに使用することができるため、この方法は、場合によって、細胞内でDNAをターゲティングする方法と見なすことができる。
【0221】
この方法は、方法の各特徴(例えば、細胞の種類、RGENタンパク質構成要素、CPP、細胞小器官を標的とする配列など,)に関し、上記実施形態または下記の実施例を使用して行うことができる。したがって、上に開示された特徴もしくは実施例中の特徴、またはこれらの特徴の任意の組み合わせを適切に使用して、本明細書中の輸送方法の実施形態を特徴付けることができる。以下の輸送方法の特徴は、例である。
【0222】
本明細書中の輸送方法の実施形態は、細胞(例えば、微生物細胞)をRGENタンパク質−CPP複合体を含む組成物と接触させる工程を含む。そのような接触により、複合体と細胞外表面(例えば、細胞膜、細胞壁)との相互作用が生じ、それによって複合体のCPP構成要素に複合体の(i)細胞膜または(ii)細胞壁および細胞膜の横断を開始させると考えられる。
【0223】
RGENタンパク質−CPP複合体を含む組成物の細胞(例えば、微生物細胞)との接触は、複合体を細胞に侵入させることができる温度で行われ得る。そのような接触は、例えば、約4〜45℃の間の任意の温度で行うことができる。非限定的な実施形態において、接触温度は約4、15、20、30、37または42℃であり得る。接触工程中、同じ温度または温度範囲を維持してもよく、適切に変化(例えば、2以上の異なる温度)させてもよい。
【0224】
RGENタンパク質−CPP複合体を含む組成物の細胞との接触は、複合体を細胞へ侵入させるのに適した時間、行われ得る。例えば、細胞をRGENタンパク質−CPP複合体と、少なくとも約15、30、45、60、75、90、105、120、135、150、165、180、240、300、360、420、480、540、600、660または720分間インキュベートすることができる。
【0225】
接触を行わせる環境(例えば、バッファ、水および塩の濃度、pH、RGENタンパク質−CPP複合体の純度)は、RGENタンパク質−CPP複合体を含む組成物について、上で記載された条件のいずれであってもよい。例えば、細胞を複合体と、HEPESバッファ(例えば、〜25mM HEPES、例えば、25mM HEPES/KOH pH7.5、200mM KCl、20%グリセロール、1mM DTT)、またはPBS(例えば、1×PBS、pH7)中で、インキュベートすることができる。
【0226】
1種以上の細胞(例えば、微生物細胞)をRGENタンパク質−CPP複合体を含む組成物と接触させてもよい。本明細書中の細胞は、(i)インビボの生物/組織内、(ii)エクスビボの細胞組織もしくは細胞群内、または(iii)インビトロ状態(例えば、培養細胞)に存在させ得る。
【0227】
本明細書中のRGENタンパク質−CPP複合体の細胞への侵入は、通常、細胞が(i)細胞膜または(ii)細胞壁および細胞膜を完全に横断し、少なくとも細胞の細胞質内に含まれる時を指す。特定の理論や機構に縛られることを意図するものではないが、非共有結合的結合により保持されたRGENタンパク質−CPP複合体は、完全複合体または部分的複合体で残るか、またはRGENタンパク質−CPP複合体への侵入を獲得した後、複合体のCPP構成要素からRGENタンパク質構成要素が分離すると考えられる。いずれの場合も、RGENタンパク質構成要素は、本明細書中の適切なRNA構成要素と結合することができる。そのような結合は、例えば、細胞質、核またはミトコンドリアで起こり得る。この能力は、共有結合によって保持されたRGENタンパク質−CPP複合体にも当てはまる。
【0228】
RGENタンパク質輸送方法のある実施形態では、本明細書中の組成物は、さらに、RGENタンパク質−CPP複合体のRGENタンパク質構成要素と結合する少なくとも1つのRNA構成要素を含む(すなわち、組成物はRGEN−CPP複合体を含む)。この実施形態のRNA構成要素は、本明細書中に開示されている通りであり、微生物細胞の染色体またはエピソーム上の標的部位配列に相補的な配列を含む。RGENは標的部位配列に結合することができ、そして、場合により、標的部位配列でDNAの一本鎖または二本鎖を切断することができる。そのような実施形態はまた、RGEN−CPP複合体の微生物細胞への輸送方法、あるいはRNAの微生物細胞への輸送方法と見なすことができる。
【0229】
この実施形態で使用するRNA構成要素(例えば、gRNA)は、当該技術分野で知られている多くの手段を用いて調製することができる。例えば、インビトロ転写プロセスを使用して、本明細書中のRNA構成要素を調製することができる。ある非限定的な実施形態においては、細菌RNAポリメラーゼ(例えば、T7、T3、SP6)を使用して、RNA構成要素をコードする適切なDNA構築体からRNA構成要素を転写すことができる。必要に応じて、他の生体分子(例えば、タンパク質、糖、脂質)に対する純度が少なくとも約 70%、80%、90%または95%にまでRNA構成要素にプロセッシングを行ってもよい。
【0230】
RNA構成要素およびRGENタンパク質−CPP複合体を含む組成物を調製するために、RGENタンパク質−CPP複合体を既に溶解した組成物にRNA構成要素を溶解させる、またはその逆を行うことができる(あるいは、これらの構成要素を同時に溶解させることができる。RNA構成要素とRGENタンパク質−CPP複合体の、これらの要素を混合する際のモル比には、例えば、少なくとも約0.5:1、1.0:1、1.5:1、2.0:1、2.5:1、3.0:1、3.5:1または4.0:1を使用することができる。これらおよび他の態様において、RNA構成要素と混合する際のRGENタンパク質−CPP複合体の濃度は、少なくとも約0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0もしくは10.0μM、または約0.5〜5.0μM、0.5〜2.5μM、1.0〜5.0μM、1.0〜2.5μM、または2.5〜5.0μMであり得る。RGEN−CPP複合体を形成するために、RNAをRGENタンパク質−CPP複合体に結合させる時間は、例えば、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、45または60分であり得る。RNA構成要素をRGENタンパク質−CPP複合体と結合させることができる他の条件(例えば、温度、バッファ、水および塩の濃度、pH、RGENタンパク質−CPP複合体の濃度)は、(i)RGENタンパク質−CPP複合体を含む組成物、または(ii)RGENタンパク質−CPP複合体の細胞との接触について上に開示した任意の条件であり得る。例えば、gRNAなどのRNA構成要素をRGENタンパク質−CPP複合体と、HEPESバッファ(例えば、〜25mM HEPES、例えば、25mM HEPES/KOH pH7.5、200mM KCl、20%グリセロール、1mM DTT)、またはPBS(例えば、1×PBS、pH7)中、室温(例えば、約20〜25℃)で約15分間接触させることができる。RGENタンパク質−CPP複合体が非共有結合によって保持されている実施形態では、RNA構成要素のRGENタンパク質への結合は、CPPをRGENタンパク質構成要素とインキュベートする前、同時または後にRNA構成要素を加えることを含む。
【0231】
例えば、RNA構成要素をRGENタンパク質−CPP複合体と結合させた後、得られたRGEN−CPP複合体(例えば、CPP−Cas9/gRNA)を含む組成物を細胞に直ちに接触させることができる。接触は、RNA構成要素とRGENタンパク質−CPP複合体が結合している環境下で(例えば、上記を参照)行うことができる。RGEN−CPP複合体 を含む組成物は、必要に応じて、後の使用のために、略室温で、4℃で、また凍結(例えば、−20℃もしくは−80℃)して保存することができる。RGEN−CPP複合体の安定性、および/または細胞へ侵入し、DNAターゲティングを行う能力は、たとえ複合体が1サイクル、2サイクルもしくはそれ以上の凍結融解サイクルを受けたとしても、変わらず維持されるか、または各活性の50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%を有することができる。
【0232】
RGENタンパク質−CPP複合体またはRGEN−CPP複合体を含む組成物には、細胞との接触のために、場合により、1種以上の、細胞と複合体の接触点を増大させる体積排除剤を含有させることができる。本明細書中の適切な体積排除剤の例としては、グリセロールおよびポエチレングリコール(PEG)が挙げられる。他の例としては、ポリアクリル酸塩、ポリメチルアクリ酸塩またはアニオン性多糖ポリマー(例えば、硫酸デキストラン)などのアニオン性ポリマーが挙げられる。体積排除剤のさらに他の例は、米国特許第4886741号明細書に開示されており、この文献は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0233】
RGENタンパク質輸送方法のある実施形態では、細胞(例えば、微生物細胞)は、RGENタンパク質−CPP複合体が細胞に侵入後、RGENタンパク質−CPP複合体のRGENタンパク質構成要素と結合する(すなわち、それによって、細胞内にRGEN−CPP複合体を形成する)RNA構成要素を含む。この実施形態のRNA構成要素は、本明細書中に開示されるように、細胞の染色体またはエピソーム上の標的部位配列に相補的な配列を含み得る。RGENは、標的部位配列に結合することができ、そして、場合により、標的部位配列でDNAの一本鎖または二本鎖を切断することができる。
【0234】
本明細書中の1つ以上のRNA構成要素は、例えば、RGENタンパク質−CPP複合体が導入される細胞(例えば、微生物細胞)で安定にまたは一時的に発現させることができる。一時的発現の例として、RGENタンパク質−CPP複合体を、(i)RNA構成要素を一時的に発現するように予め修飾した細胞に輸送、(ii)RNA構成要素と共に細胞に同時輸送、または(iii)細胞へ輸送後にRNAの一時的発現のために細胞を改変することができる。
【0235】
(i)プロモータ、および(ii)それが機能可能なように結合する、RNA構成要素をコードするヌクレオチド配列を含むDNAポリヌクレオチド配列は、典型的には、本明細書中の、RNA構成要素の安定した、かつ/また一時的な発現のために使用することができる。そのようなポリヌクレオチド配列は、例えば、プラスミド、酵母人工染色体(YAC)、コスミド、ファージミド、細菌人工染色体(BAC)、ウイルスまたは直鎖DNA(例えば、直鎖PCR産物)、あるいはポリヌクレオチド配列の細胞への運搬に有用な他のタイプのベクターまたは構築体に含まれ得る。このポリヌクレオチド配列は、細胞に一時的に(すなわち、ゲノムに組み込まれない)、または安定に(すなわち、ゲノムに組み込まれる)存在することができる。また、このポリヌクレオチド配列は、1つ以上の適切なマーカー(例えば、選択マーカ―または表現型マーカー)を含有または欠失することができる。
【0236】
本明細書中で、RNA構成要素発現用のポリヌクレオチド配列に含まれる適切なプロモータは、例えば、構成的であっても誘導可能であってもよい。ある態様におけるプロモータは、強プロモータを含んでよく、これは、単位時間あたり比較的多数の生産開始を導くことができるプロモータであり、かつ/または、この強プロモータを含む細胞の遺伝子の平均転写レベルよりも高い転写レベルを駆動するプロモータである。
【0237】
本明細書中のある態様(例えば、真菌細胞および/または酵母細胞)における有用な強プロモータの例としては、米国特許出願公開第2012/0252079号明細書(DGAT2)、米国特許出願公開第2012/0252093号明細書(EL1)、米国特許出願公開第2013/0089910号明細書(ALK2)、米国特許出願公開第2013/0089911号明細書(SPS19)、米国特許出願公開第2006/0019297号明細書(GPDおよびGPM)、米国特許出願公開第2011/0059496号明細書(GPDおよびGPM)、米国特許出願公開第2005/0130280号明細書(FBA、FBAIN、FBAINm)、米国特許出願公開第2006/0057690号明細書(GPAT)、および米国特許出願公開第2010/0068789号明細書(YAT1)に開示されるものが挙げられ、これらの文献は参照によって本明細書に組み込まれる。強プロモータの他の例としては、例えば、表2に記載されるものが挙げられ、これらもまた真菌細胞および/または酵母細胞に有用であり得る。
【0239】
本明細書中のある実施形態に有用な強プロモータの他の例としては、PGK1、ADH1、TDH3、TEF1、PHO5、LEU2およびGAL1プロモータ、ならびに、Velculescu et al.(Cell 88:243−251)(この文献は参照によって本明細書に組み込まれる)に開示の強酵母プロモータが挙げられる。
【0240】
本明細書中で、RNA構成要素の安定で、かつ/または瞬時の発現のためのプロモータは、例えば、RNAポリメラーゼII(Pol II)プロモータであり得る。上に列挙した全ての強プロモータは、適切なPol IIプロモータの例であると考えられる。Pol IIプロモータからの転写は、例えば、少なくとも約12のタンパク質(例えば、RPB1−RPN12タンパク質)のRNAポリメラーゼII複合体の形成を含んでよい。例えば、本明細書中でPol IIプロモータから転写されるRNAは、通常、5’キャッピングされ(例えば、5’末端にm
7G基を含有する)、かつ/またはポリアデニル酸(polyA)鎖を有する。Pol IIプロモータからRNA構成要素を発現する場合、必要なら、RNA構成要素から5’キャップおよび/またはpolyA鎖を除く手段を用いることができる。本明細書中でPol II転写RNA構成要素から5’キャップおよび/またはpolyA鎖を効率よく除去する適切な手段としては、例えば、1つまたは複数のリボザイム(下記を参照)、グループ1自己スプライシングイントロン、およびグループ2自己スプライシングイントロンの適切な使用が挙げられる。
【0241】
あるいは、本明細書中で、RNA構成要素の安定で、かつ/または瞬時の発現のためのプロモータは、例えば、RNAポリメラーゼIII(Pol III)プロモータであり得る。RNAポリメラーゼIIIによる転写の開始と終止は制御が可能であることから、そのようなプロモータは、通常、所定の5’末端および3’末端を有するRNA構成要素を発現させることができる。本明細書中で有用なPol IIIプロモータの例としては、U6およびH1プロモータが挙げられる。他の適切なPol IIIプロモータは、例えば、米国特許出願公開第2010/0160416号明細書に開示されており、この文献は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0242】
例えば、細胞内でRNA構成要素を発現させるためにPol IIプロモータが使用される実施形態では、1つまたは複数のリボザイム配列が、所定の5’末端および/または3’末端を作るために使用され得る。例えば、RNA構成要素をコードする本明細書中のヌクレオチド配列は、RNA構成要素をコードする配列の上流にあるリボザイムをさらにコードすることができる。それ故、ある実施形態では、細胞は、さらに、(i)プロモータ、そして(ii)このプロモータが機能可能なように結合する、5’から3’の方向にリボザイムおよびRNA構成要素をコードするヌクレオチド配列を含む。そのようなポリヌクレオチド配列から発現する転写産物は、自己触媒的にリボザイム配列を除去して所定の5’末端を有する(5’キャップは有していない)が、RNA構成要素配列を含むRNAを得る。この「自己プロセッシングされた」RNAは、例えば、crRNAまたはgRNAを含み得、そして、Cas9などのRGENタンパク質構成要素と複合化することによって、RGENを形成することができる。
【0243】
本明細書中のリボザイムは、例えば、ハンマーヘッド(HH)リボザイム、デルタ型肝炎ウィルス(HDV)リボザイム、グループIイントロンリボザイム、RnasePリボザイム、またはヘアピンリボザイムであってよい。本明細書中のリボザイムの他の非限定的な例として、Varkudサテライト(VS)リボザイム、グルコサミン−6−リン酸活性化リボザイム(glmS)、およびCPEB3リボザイムが挙げられる。Lilley(Biochem.Soc.Trans.39:641−646)は、リボザイムの構造および活性に関する情報を開示している。本明細書中で用いるのに適しているはずであるリボザイムの例として、EP0707638号明細書、ならびに米国特許第6063566号明細書、米国特許第5580967号明細書、米国特許第5616459号明細書および米国特許第5688670号明細書に開示されるリボザイムが挙げられ、これらの文献は参照によって本明細書に組み込まれる。さらに、所定の5’末端および/または3’末端を有するRNA構成要素を発現するためのリボザイムの使用に関する情報は、米国特許出願第62/036,652号明細書(2014年8月13日に出願)に開示されている。
【0244】
ある実施形態において、RNA構成要素を発現するカセットを含むDNAポリヌクレオチドは、RNA構成要素配列の下流に、適切な転写終止配列を含む。本明細書中で有用な転写終止配列の例は、米国特許出願公開第2014/0186906号明細書に開示されており、この文献は参照によって本明細書に組み込まれる。そのような実施形態は、通常、ターミネータ配列の選択に応じて、RNA構成要素配列の末端の後ろに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、またはそれ以上の残基を含む。これらの付加的な残基は、例えば、ターミネータ配列の選択に応じて、全てU残基であってもよいし、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%がU残基であってもよい。あるいは、リボザイム配列(例えば、ハンマーヘッドまたはHDVリボザイム)は、RNA構成要素配列の(下流の、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上のヌクレオチド)3’側にあってよい。3’リボザイム配列は、それ自体をRNA構成要素配列から切断するように然るべく位置が定められ得る。そのような切断により、転写産物は、例えば、RNA構成要素配列の末端にて正確に終止するか、または、RNA構成要素配列の末端に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、もしくはそれ以上の残基が続くことになる。
【0245】
他の実施例では、RNA構成要素は、RGENタンパク質−CPP複合体が輸送される細胞の核および/または細胞質に提供され得る。例えば、5’に位置するリボザイム配列を使用せずにPolIIプロモータから発現したRNA構成要素は、核および細胞質の双方に存在すると予想される。他の実施形態では、任意のタイプのプロモータ(例えば、Pol IIまたはPol IIIプロモータ)から、5’に位置するリボザイム配列を使用して発現されたRNA構成要素は、その大半が核に存在すると予想される。ある態様では、Pol IIIプロモータから発現されたRNA構成要素は、その大半が核に存在すると予想される。ある態様では、RNA構成要素は、キャッピングされておらず(例えば、Pol IIIプロモータからの発現、および/またはリボザイムの自己プロセッシングのため)、かつ通常、核内に存在するが、他の態様では、RNA構成要素は、キャッピングされ、かつ核および細胞質に存在する。一般に、RGENタンパク質−CPP複合体のRGENタンパク質構成要素は、一旦、細胞に輸送されると、細胞質および/または核において(RNA構成要素の位置に依る)、RNA構成要素と結合し得る(それによってRGENを形成する)。そのような核内における結合は、一般に、本明細書中のRGENタンパク質構成要素の、NLSに指示される核に局在する能力による。
【0246】
本明細書中のRGENは、RGEN媒介DNAターゲティングに有用である。RGENタンパク質構成要素の細胞への輸送に関する上記実施形態はいずれも、DNAターゲティング方法に適用することができる。例えば、RGENタンパク質−CPP複合体は、微生物細胞の外で少なくとも1つのRNA構成要素と接触し、細胞内でのDNAターゲティングのため、細胞への輸送用のRGEN−CPP複合体を形成することができる。他の例では、RGENタンパク質−CPP複合体は、微生物細胞内へ輸送後、微生物細胞内で少なくとも1つのRNA構成要素と接触して、その後にDNAターゲティングを媒介し得るRGEN−CPP複合体を細胞内で形成することができる。ターゲティング方法に関する以下の開示は、「RGEN−CPP複合体」の言及に対立するものとして「RGEN」に言及する。共有結合的または非共有結合的RGEN−CPP複合体が本明細書中のRGEN輸送に使用するか否かによって(また、非共有結合的RGEN−CPP複合体を使用する実施形態における非共有結合の結合強さによって)、下記のRGENへの言及が然るべくそのようなRGEN−CPP複合体への言及になることは理解されよう。
【0247】
DNAターゲティング配列のDNA一本鎖または二本鎖を切断することができる本明細書におけるRGENは、例えば、DNAターゲティング法に使用することができる。そのようなDNAターゲティング法は、適切なドナーDNAが提供されるなら、HR媒介DNAターゲティングを含み得る。したがって、ある実施形態では、本明細書中のターゲティング法における微生物細胞は、標的部位配列の、またはその近傍の配列(本明細書中のRGENに特異的に標的とされる配列)に相同の少なくとも1つの配列を含むドナーポリヌクレオチドを含み得る。そのような実施形態は、場合によって、ターゲティング法がさらに微生物細胞に適切なドナーポリヌクレオチドを供給する工程を含むという特徴を有することができる。
【0248】
本明細書中のドナーポリヌクレオチドは、DNA標的部位がSSBまたはDSBを含むなら、その標的部位の配列、またはその近傍の配列とHRを行うことができる(例えば、本明細書中のRGENを用いて導入することができる)。本明細書中のドナーポリヌクレオチド内の「相同配列」は、例えば、標的部位もしくはその近傍の配列と100%の相同性を有する、または標的部位もしくはその近傍の配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の相同性を有する、少なくとも約25、50、75、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000もしくは10000のヌクレオチド、または約50〜500、50〜550、50〜600、50〜650もしくは50〜700のヌクレオチドの配列を含んでもよく、またそのような配列からなってもよい。
【0249】
本明細書中のドナーポリヌクレオチドは、例えば、標的部位配列の配列、またはその近傍の配列に非相同である配列によって分離される、2つの相同配列(相同アーム)を有してよい。そのようなドナーポリヌクレオチドと標的部位配列とのHRにより、通常、ドナーポリヌクレオチドの非相同配列との、標的部位の配列の置換が生じる(すなわち、ドナーポリヌクレオチドの相同アームに相同である標的部位配列間に位置する標的部位配列は、ドナーポリヌクレオチドの非相同配列によって置換される)。2本の相同アームを有するドナーポリヌクレオチドにおいて、アームは、例えば、少なくとも約1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、75、100、250、500、1000、2500、5000、10000、15000、20000、25000、または30000ヌクレオチドによって分離されてよい(すなわち、ドナーポリヌクレオチド中の非相同配列は、少なくとも約1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、75、100、250、500、1000、2500、5000、10000、15000、20000、25000、または30000ヌクレオチド長である)。各相同アームの長さ(例えば、相同配列について先に開示される長さのいずれか)は、同じであっても異なってもよい。標的部位の各相同配列、またはその近傍の各相同配列との各アームのパーセント同一性(例えば、相同配列について先に開示される%同一性のいずれか)は、同じであっても異なってもよい。
【0250】
ドナーポリヌクレオチド中の対応する相同配列に相同である標的部位配列の、またはその近傍の(あるいは、その場所にある、またはそれに近接する)DNA配列は、標的配列中の予測されるRGENカット部位(DSBまたはニック)から、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、450、500、750、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、20000、30000、40000、50000、もしくは60000(または、1〜60000の任意の整数)ヌクレオチド(例えば、約1〜1000、100〜1000、500〜1000、1〜500、まもしく100〜500ヌクレオチド)以内にあってよい。これらのヌクレオチド距離は、カット部位から上流方向に、または下流方向に進む、カット部位から相同配列の第1のヌクレオチドまでで評価されてよい。例えば、ドナーポリヌクレオチド中の対応する配列に相同である標的配列近傍の配列は、標的配列中の予測されるRGENカット部位の下流500ヌクレオチド塩基対から開始してよい。本明細書中の、2本の相同アーム(例えば、非相同配列によって分離される第1および第2の相同アーム)を有するドナーポリヌクレオチドを利用する実施形態において、相同配列(相同性においてドナーの第1の相同アームと対応する)は、例えば、予測されるRGENカット部位の上流にあってよく、相同配列(相同性においてドナーの第2の相同アームと対応する)は、予測されるRGENカット部位の下流にあってよい。これらの上流の相同配列および下流の相同配列のそれぞれの、予測されるカット部位からのヌクレオチド距離は、同じであっても異なってもよく、例えば、上で開示したヌクレオチド距離のいずれであってもよい。例えば、相同配列(相同性においてドナーの第1の相同アームと対応する)の3’末端は、予測されるRGENカット部位の上流600ヌクレオチド塩基対に位置してよく、相同配列(相同性においてドナーの第2の相同アームと対応する)の5’末端は、予測されるRGENカット部位の下流400ヌクレオチド塩基対に位置してよい。
【0251】
種々の態様において、ドナーポリヌクレオチドは、RGENタンパク質−CPP複合体が細胞(例えば、微生物細胞)に輸送される時、またはそれに近い時(例えば、1時間、2時間、3時間またはそれ以上の時間内)に、細胞に輸送され得る。そのような輸送は、使用される特定の細胞のタイプに適した、この技術分野で知られた手段によって行われてよい。これらの技術としては、例えば、形質転換(例えば、酢酸リチウム形質転換(Methods in Enzymology,194:186−187)、トランスフェクション、バイオリスティックインパクト、エレクトロポーレーション、およびマイクロインジェクションが挙げられる。例として、米国特許第4880741号明細書および同第5071764号明細書、ならびにChen et al.(Appl.Microbiol.Biotechnol.48:232−235)(これらの文献は参照によって本明細書に組み込まれる)が、ヤロウイア・リポリティカ(Y.lipolytica)のためのDNA運搬技術を記載している。植物に有用な運搬モードの例としては、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属媒介形質転換およびパーティクル・ガン法が挙げられる。
【0252】
本明細書中のDNAターゲティング法の他の非限定的な実施形態においては、DNA標的配列のDNA1本鎖または2本鎖を切断するRGENがindelを生じさせるために使用され得る。細胞でindelを形成する方法は、標的DNA部位にて、またはその近傍でHRを受け得るドナーDNAポリヌクレオチドをさらに提供することなく、HR媒介ターゲティングについて先に開示したようにして実行され得る。(すなわち、NHEJが当該方法において誘導される)。
生じ得るindelの例が、本明細書中に開示されている。indelのサイズは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の塩基であってよい。ある実施形態におけるindelは、さらに大きくてよく、例えば少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、または150塩基であってよい。さらに他の実施形態において、挿入または欠失は、少なくとも約500、750、1000、または1500塩基であってよい。ある実施形態においてindelを生じさせようとする場合、その代わりとして単一の塩基置換が、標的部位配列中に形成されてよい。ゆえに、本明細書中のターゲティング法は、例えば、単一の塩基置換を生じさせる目的で実行されてよい。
【0253】
indel形成を意図する本明細書中のターゲティング法のある実施形態において、非従来型酵母(例えば、酵母(Y.lipolytica))におけるindel形成の頻度は、従来型酵母、例えば出芽酵母(S.cerevisiae)において同じ、または類似のターゲティング戦略を用いて観察されるであろう頻度よりも、有意に高い。例えば、従来型酵母におけるindel形成の頻度は、約0.0001から0.001であり得(DiCarlo et al.,Nucleic Acids Res.41:4336−4343)、非従来型酵母における頻度は本明細書中で、少なくとも約0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、または0.80であり得る。ゆえに、非従来型酵母のindel形成の頻度は本明細書中で、例えば、従来型酵母において同じ、または類似のRGEN媒介ターゲティング戦略を用いて観察されるであろう頻度よりも、少なくとも約50、100、250、500、750、1000、2000、4000、または8000倍高くなり得る。
【0254】
ある実施形態におけるターゲティング法は、タンパク質または非コードRNAをコードする1つまたは複数のDNAポリヌクレオチド配列を分裂させるために実行されてよい。分裂のために標的とされてよいそのような配列の例が、マーカーをコードする配列(すなわち、マーカー遺伝子)である。本明細書中のマーカーの非限定的な例として、スクリーニング可能なマーカーおよび選択可能なマーカーが挙げられる。本明細書中のスクリーニング可能なマーカーとして、適切な条件下で細胞を視覚的に異ならせるものであってよい。スクリーニング可能なマーカーの例として、ベータ−グルクロニダーゼ(GUS)、ベータ−ガラクトシダーゼ(lacZ)、および蛍光タンパク質(例えば、GFP、RFP、YFP、BFP)をコードするポリヌクレオチドが挙げられる。本明細書中の選択可能なマーカーは、細胞を、選択剤または選択環境に対して耐性にするものであってよい。選択可能なマーカーの例として、栄養要求性マーカー、例えばHIS3、LEU2、TRP1、MET15、またはURA3があり、これらにより細胞、例えば、酵母細胞は、外因的に提供されるヒスチジン、ロイシン、トリプトファン、メチオニン、またはウラシルの不在下でそれぞれ生存することができる。選択可能なマーカーの他の例として、抗生物質または抗真菌耐性マーカー、例えば、細胞を、アンピシリン、クロラムフェニコール、ハイグロマイシンB、ノウルセオスリシン、フレオマイシン、ピューロマイシン、またはネオマイシン(例えばG418)に対して耐性にするものがある。これらの方法の例は、場合により、マーカーリサイクル法と見なすことができる。
【0255】
ある実施形態においてマーカーを分裂させる少なくとも1つの目的は、マーカーリサイクルのためであってよい。マーカーリサイクルは、例えば、(i)細胞をマーカーおよび非相同DNA配列で形質転換する工程と、(ii)マーカーおよび非相同DNA配列を含む形質転換された細胞を選択する工程(マーカー選択可能な細胞は典型的に、非相同DNA配列を含有する見込みがより高い)と、(iii)マーカーを分裂させる工程と、その後、細胞を、複数の非相同DNA配列で形質転換するために、工程(i)〜(iii)を必要なだけ繰り返す(同じ[または異なる]マーカーを用いるが、各サイクルで、異なる非相同DNA配列を用いる)工程を含むプロセスである。当該プロセスの1つまたは複数の非相同配列は、ドナーポリヌクレオチドの形態のマーカーそれ自体(例えば、特定の遺伝子座を標的とする相同アームがフランキングするマーカー)を含んでよい。本明細書中のマーカーリサイクルプロセスの例として、酵母(例えば、ヤロウイア・リポリティカ(Y.lipolytica)などの非従来型酵母)におけるような、URA3をマーカーとして用いるものが挙げられる。
【0256】
DNA標的部位配列に結合することができるが、標的部位配列の任意の鎖を切断することができない、本明細書中のRGENは、他の実施形態におけるDNAターゲティング法で使用することができる。機能不全ヌクレアーゼドメインのみを有するが、特異的なDNA結合活性を保持している、本明細書で開示する任意のRGENはこの種のターゲティング法で使用することができる。
【0257】
機能性ヌクレアーゼドメインを有しないRGENNを用いるDNAターゲティングのある実施形態では、RGENは標的部位に結合することができ、ポリヌクレオチド配列の転写(すなわち、遺伝子の転写)を調節することができる。通常、RGENは、ポリヌクレオチド配列の転写調節を行うために、プロモータ(転写開始点の上流側に、例えば、1〜1000、1〜500、1〜250、1〜125または1〜50以内の塩基)、5’−非翻訳RNA配列または第1イントロンなどの調節配列の標的にされる。
【0258】
一例を挙げれば、リプレッサー転写因子またはそのレプレッサードメインと結合または融合したRGENは、1つ以上のポリヌクレオチド配列の発現を抑制またはサイレンシングするために使用することができるが、これに限定されるものではない。ある代替実施形態におけるRGENは、それ自体(リプレッサーまたはそのドメインを有しない)が遺伝子発現を抑止することができ;そうしたRGENは標的にされることができ、そうして転写に必要なRNA転写装置の結合および/または移動を抑止する。任意の抑止RGENを組み込んだ方法は、任意選択により遺伝子サイレンシング法または転写サイレンシング法と特徴づけることができる。サイレンシング法における転写下方調節のレベルは、例えば、抑止RGENを適用する前の転写レベルと比べて、約100%(遺伝子は完全にサイレンシングされる)または少なくとも約30%(遺伝子は適度にサイレンシングされる)、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは95%(遺伝子は実質的にサイレンシングされる)にすることができる。
【0259】
アクチベーター転写因子またはそのアクチベータードメインに結合または溶融したRGENは、1つ以上のポリヌクレオチド配列の発現を上方調節するために使用することができる。そのような活性化RGENを組み込んだ方法は、任意選択により転写上方調節法または活性化法と特徴づけることができる。そうした方法における転写上方調節のレベルは、例えば、活性化RGENを適用する前の転写レベルと比べて、少なくとも約25%、50%、75%、100%、250%、500%または1000%にすることができる。
【0260】
ある実施形態では、DNA標的部位配列に結合することができるが、適合部位配列のどの鎖も好ましくは切断しないRGENは、診断具(例えば、DNA配列を検出するプローブ)として使用することができる。DNAプローブにおけるRGENタンパク質構成要素は、例えば、リポータータンパク質(例えば、GFPなどの蛍光タンパク)などのリポーター試薬に結合されることができる。RGENのRNA成分により規定される、RGENリポータータンパクの特異的なDNA結合は、したがって、リポーター試薬の活性を利用して検出システムに組み込まれることができる。フローサイトメトリー(例えば流れ活性化細胞選別[FACS])および蛍光in situハイブリダイゼーション[FISH]は、蛍光リポーターを使用する本明細書の適切な検出システムである。
【0261】
本明細書中のターゲティング法は、例えば、この方法で2つ以上のDNA標的部位が標的にされるような方法で行われることができる。そのような方法は、任意選択により、多重法として特徴づけられる。ある実施形態では、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはこれより多くの標的部位が同時に標的にされることができる。多重法は、通常、複数の異なるRNA成分(その各々がRGENを固有のDNA標的部位に導く)が提供される、本明細書中のターゲティング法により行われる。例えば、インビトロでRGEN−CPP複合混合物を調製する(例えば、RNA成分をRGENタンパク−CPP複合体に結合させるために、本明細書で開示された手順にしたがって)ために、2種以上の異なるRNA成分が使用され、その後この混合物は細胞と接触させられる。
【0262】
本明細書による多重ターゲティングの他の態様は、細胞に入り込んできたRGENタンパク−CPP複合体のRGENタンパク質構成要素と結合する、2種以上の異なるRNA成分を細胞内に提供することを含むことができる。そのような方法は、例えば、(i)特定のRNA成分を発現する個別のDNAポリヌクレオチド、および/または2つ以上のRNA成分をエンコードする少なくとも1つのDNAポリヌクレオチドを細胞に提供することを含むことができる(例えば、タンデムのリボザイム−RNA成分カセットについて開示した下記を参照)。
【0263】
多重法は任意選択により同一配列に極めて近いDNA部位(例えば、プロモーターまたはオープン・リーディング・フレーム)および/または互いに隔たっている部位(例えば、異なる遺伝子および/またはクロモソームで)を標的にすることができる。他の実施形態における多重法は、求められるターゲッティングの成果に応じて(エンドヌクレアーゼ−またはニッカーゼ−コンピテンとRGENが使われるならば)、適切なドナーDNAポリヌクレオチドを用いて(HR用)または用いずに(インデルおよび/または塩基置換を導くNHEJ用)行われることができる。さらに他の実施形態では、多重法は、本明細書中に開示したように、抑止または活性化RGENを用いて行われることができる。例えば、特定の代謝経路で関与する遺伝子などの遺伝子セットを下方調節する多重抑止RGENが提供されることができる。
【0264】
ある実施形態では、多重法は、1つより多くのリボザイム−RNA成分カセットを含む配列(ii)に結合することが可能なプロモーター(i)を含むDNAポリヌクレオチド(すなわちタンデムカセット)を細胞に提供することを含むことができる。そのようなDNAポリヌクレオチドから発現した転写産物は、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはこれより多くのカセットを有することができる。A3’リボザイムは、下流の転写産物配列からのRNA成分の開裂および分離を可能にするため、全てのまたは一部のRNA成分配列の後に、任意選択により含まれることができる(すなわち、タンデムカセットは1つ以上のリボザイム−RNA成分−リボザイムカセットを含み得る)。タンデムのリボザイム−RNA成分−リボザイムカセットを発現する、本明細書のDNAポリヌクレオチドは、各カセット間に約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれより多くのヌクレオチドが存在するよう設計されることができる(例えば、非コードスペーサ配列)。各カセット間の距離は同じであってもよく、異なってもよい。
【0265】
RNA成分をコードするDNAポリヌクレオチドを含む、本明細書に記載の任意のコンストラクトまたはベクターは、当該技術分野で知られており、使用される特定の型の細胞に適切な任意の手段によって細胞に導入されることができる。例えば、ドナーDNAを細胞内に送達するために先に開示した手段の任意のものが使用されることができる。
【0266】
本明細書中のある実施形態は、微生物細胞のゲノム中の標的部位を修飾または変更する方法に関し、この方法は、微生物細胞をガイドポリヌクレオチド、および共有結合的に、または非共有結合的にCPPと結合させたCasエンドヌクレアーゼと接触させることを含み、ガイドポリヌクレオチドおよびCPP−Casエンドヌクレアーゼは、Casエンドヌクレアーゼが微生物細胞のゲノム中の標的部位に二本鎖切断を導入することができる複合体を生成することができる。標的部位の修飾または変更は、(i)少なくとも1個のヌクレオチドの置換、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、または(iv)(i)〜(iii)の任意の組み合わせを含むことができる。
【0267】
本明細書のある実施形態は、RNAガイドエンドヌクレアーゼ(RGEN)のタンパク質成分および少なくとも1つの細胞膜透過性ペプチド(CPP)を含む融合タンパク質をコードする、ヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド配列に関する。例えば、本明細書で開示する任意の融合タンパク質は、ヌクレオチド配列によりコードされることができる。ヌクレオチド配列は、任意選択によりプロモーター配列との可能な結合部に存在し得る。ある実施形態は、例えば、本明細書で開示する任意のRGENタンパク質−CPP融合体をコードする、少なくとも1つのオープン・リーディング・フレームを含むポリヌクレオチド(例えばベクターまたはコンストラクト)を含む。そうしたコード領域は、任意選択により、例えば、細胞中(例えば、細菌細胞;酵母、昆虫または哺乳類などの真核細胞)またはインビトロのタンパク質発現システムにおけるRGENタンパク質−CPP融合体の発現に対して適切な、プロモーター配列に結合されることができる。ベクターまたはコンストラクトの例としては、環状(例えば、プラスミド)および非環状(例えば、増幅DNA配列などの直鎖DNA)ポリヌクレオチド分子が挙げられる。
【0268】
本明細書のある実施形態は、RGENタンパク質−CPP融合体タンパク質をコードし、ポリヌクレオチド配列からRGENタンパク質−CPP融合体タンパク質を発現させるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド配列を提供する工程を含むRGENタンパク質−CPP融合体タンパク質を生成する方法に関し、これによりRGENタンパク質−CPP融合体タンパク質を生成させる。そうした方法の中で発現工程は、任意選択により、細胞(例えば、大腸菌などの細菌;酵母などの真核細胞[例えば、出芽酵母(S.cerevisiae)]、昆虫または哺乳類の細胞)中で行われることができる。あるいは、RGENタンパク質−CPP融合体タンパク質の発現は、インビトロ・タンパク質発現システム(例えば、ウサギの網状赤血球溶血液またはコムギの胚芽抽出物を用いるものなどの無細胞タンパク質発現システム)中で行われることができる。さらにまた、発現工程で生成したRGENタンパク質−CPP融合体タンパク質は、任意選択により、単離されることができる。そのような単離は、例えば、先に開示した特徴(例えば、純度、pH、緩衝液および/または塩レベル)のうちの任意のものを有する構成を生み出すような仕方で行われることができる。
【0269】
本明細書中に開示される組成物および方法の非限定的な例としては以下のものが挙げられる:
1.RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)の少なくとも1つのタンパク質構成要素、および少なくとも1つの細胞透過ペプチド(CPP)を含む組成物であって、タンパク質構成要素とCPPとは、共有結合的に、または非共有結合的に互いに結合して、RGENタンパク質−CPP複合体を形成しており、かつRGENタンパク質−CPP複合体は、微生物細胞の(i)細胞膜、または(ii)細胞壁および細胞膜を横断することができる組成物。
2.RGENのタンパク質構成要素は、細胞中の染色体またはエピソーム上の標的部位配列に相補的な配列を含む少なくとも1つのRNA構成要素と結合し、RGENは標的部位配列に結合し、場合によりDNA1本鎖または2本鎖を標的部位配列で切断することができる実施形態1の組成物。
3.RNA構成要素は、トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)に機能可能なように結合したCRISPR RNA(crRNA)を含むガイドRNA(gRNA)を含む実施形態2の組成物。
4.RGENは、DNA1本鎖または2本鎖を標的部位配列で切断することができる実施形態2の組成物。
5.RGENは、CRISPR関連(Cas)タンパク質−9(Cas9)アミノ酸配列を含む実施形態1の組成物。
6.RGENタンパク質構成要素とCPPとは共有結合している実施形態1の組成物。
7.RGENタンパク質構成要素とCPPとは非共有結合的に結合している実施形態1の組成物。
8.CPPはカチオン性または両親媒性である実施形態1の組成物。
9.CPPは、
(i)エプスタイン・バールウイルスのゼブラトランスアクチベータタンパク質由来のCPP、
(ii)6個以上の隣接するアルギニン残基を有するCPP、
(iii)トランスポータン−10(TP10)CPP、または
(iv)血管内皮カドヘリンタンパク質由来のCPP
を含む実施形態1の組成物。
10.RGENタンパク質−CPP複合体は細胞の細胞壁および細胞膜を横断することができる実施形態1の組成物。
11.実施形態1の組成物を含む細胞。
12.RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)のタンパク質構成要素を細胞へ輸送する方法であって、
細胞を、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)のタンパク質構成要素と少なくとも1つの細胞透過ペプチド(CPP)とを含む組成物と接触させる工程
を含み、
タンパク質構成要素とCPPとは共有結合的に、または非共有結合的に互いに結合して、RGENタンパク質−CPP複合体を形成しており、
RGENタンパク質−CPP複合体は、細胞の(i)細胞膜または(ii)細胞壁および細胞膜を横断し、それにより細胞に侵入する方法。
13.(i)組成物は、さらに、少なくとも1つの、RGENタンパク質構成要素と結合するRNA構成要素を含む、または
(ii)細胞は、RNA構成要素を含み、ここで、RNA構成要素は、RGENタンパク質−CPP複合体が細胞に侵入した後、RGENタンパク質構成要素と結合し、
RNA構成要素は、細胞中の染色体またはエピソーム上の標的部位配列に相補的な配列を含み、RGENは標的部位配列に結合し、場合によりDNA1本鎖または2本鎖を標的部位配列で切断することができる実施形態12の方法。
14.RGENは、標的部位配列でDNA1本鎖または2本鎖を切断することができる実施形態13の方法。
15.細胞は、標的部位配列または標的部位配列近傍の配列と相同の少なくとも1つの配列を含むドナーポリヌクレオチドをさらに含む実施形態14の方法。
16.細胞は、非哺乳類細胞である実施形態12の方法。
17.ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体の少なくとも1つのタンパク質構成要素、および少なくとも1つの細胞透過ペプチド(CPP)を含み、タンパク質構成要素とCPPとは、共有結合的に、または非共有結合的に互いに結合して、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ−CPP複合体を形成しており、かつガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ−CPP複合体は、細胞の(i)細胞膜、または(ii)細胞壁および細胞膜を横断することができ、ここで、細胞は、場合により植物細胞である組成物。
18.Casエンドヌクレアーゼは、植物用に最適化されたCas9エンドヌクレアーゼである実施形態17の組成物。
19.ガイドポリヌクレオチドは、
(i)標的DNAのヌクレオチド配列に相補的な第1のヌクレオチド配列ドメイン、および
(ii)Casエンドヌクレアーゼと相互作用する第2のヌクレオチド配列ドメイン
を含み、
第1のヌクレオチド配列ドメインと第2のヌクレオチド配列ドメインは、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)またはこれらの組み合わせからなる実施形態17の組成物。
20.ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ−CPP複合体は、植物細胞の細胞壁を横断することができる実施形態17の組成物。
21.CPPは、
(i)エプスタイン・バールウイルスのゼブラトランスアクチベータタンパク質由来のCPP、
(ii)6個以上の隣接するアルギニン残基を有するCPP、
(iii)トランスポータン−10(TP10)CPP、
(iv)血管内皮カドヘリンタンパク質由来のCPP、または
(vi)合成ノナ−アルギニンCPP、ヒスチジン−リッチノナ−アルギニンCPPおよびPasノナ−アルギニンCPPからなる群より選択されるCPP
を含む実施形態17の組成物。
22.植物細胞は、単子葉植物または双子葉植物の細胞である実施形態20の組成物。
23.単子葉植物は、トウモロコシ、イネ、モロコシ、ライムギ、オオムギ、コムギ、キビ、カラスムギ、サトウキビ、シバおよびスイッチグラスからなる群より選択される実施形態22の組成物。
24.双子葉植物は、ダイズ、キャノーラ、アルファルファ、ヒマワリ、ワタ、タバコ、ピーナッツ、ジャガイモ、タバコ、シロイヌナズナおよびベニバナからなる群より選択される実施形態22の組成物。
25.細胞のゲノム中の標的部位を修飾する方法であって、ガイドポリヌクレオチド、細胞透過ペプチド(CPP)およびCasエンドヌクレアーゼを細胞に供給する工程を含み、ガイドポリヌクレオチド、CasエンドヌクレアーゼおよびCPPは、共有結合的に、または非共有結合的に互いに結合して、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ−CPP複合体を形成しており、かつガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ−CPP複合体は、細胞の(i)細胞膜、または(ii)細胞壁および細胞膜を横断することができ、ここで、細胞は、任意選択により植物細胞である方法。
26.標的部位に修飾を有する少なくとも1つの植物細胞を同定する工程をさらに含み、標的部位の修飾は、(i)少なくとも1つのヌクレオチドの置換、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、および(iv)(i)〜(iii)の任意の組み合わせからなる群より選択される実施形態25の方法。
27.植物細胞は、単子葉植物または双子葉植物の細胞である実施形態25の方法。
28.RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)の少なくとも1つのタンパク質構成要素、および少なくとも1つの細胞透過ペプチド(CPP)を含む組成物であって、タンパク質構成要素とCPPとは、共有結合的に、または非共有結合的に互いに結合して、RGENタンパク質−CPP複合体を形成しており、かつRGENタンパク質−CPP複合体は、微生物細胞の(i)細胞膜、または(ii)細胞壁および細胞膜を横断することができる組成物。
29.RGENのタンパク質構成要素は、微生物細胞中の染色体またはエピソーム上の標的部位配列に相補的な配列を含む少なくとも1つのRNA構成要素と結合し、RGENは標的部位配列に結合し、場合によりDNA1本鎖または2本鎖を標的部位配列で切断することができる実施形態28の組成物。
30.RGENタンパク質−CPP複合体は、微生物細胞の細胞壁および細胞膜を横断することができる実施形態28の組成物。
31.実施形態28の組成物を含む微生物細胞。
32.RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)のタンパク質構成要素を微生物細胞へ輸送する方法であって、
微生物細胞を、RNA誘導型エンドヌクレアーゼ(RGEN)のタンパク質構成要素と少なくとも1つの細胞透過ペプチド(CPP)とを含む組成物と接触させる工程を含み、
タンパク質構成要素とCPPとは共有結合的に、または非共有結合的に互いに結合して、RGENタンパク質−CPP複合体を形成しており、
RGENタンパク質−CPP複合体は、微生物細胞の(i)細胞膜または(ii)細胞壁および細胞膜を横断し、それにより微生物細胞に侵入することができる方法。
33.(i)組成物は、さらに、少なくとも1つの、RGENタンパク質構成要素と結合するRNA構成要素を含む、または
(ii)微生物細胞は、RNA構成要素を含み、ここで、RNA構成要素は、RGENタンパク質−CPP複合体が微生物細胞に侵入した後、RGENタンパク質構成要素と結合し、
RNA構成要素は、微生物細胞中の染色体またはエピソーム上の標的部位配列に相補的な配列を含み、RGENは標的部位配列に結合し、場合によりDNA1本鎖または2本鎖を標的部位配列で切断することができる実施形態32の方法。
34.RGENは、標的部位配列でDNA1本鎖または2本鎖を切断することができる実施形態33の方法。
34.微生物細胞は、標的部位配列または標的部位配列近傍の配列と相同の少なくとも1つの配列を含むドナーポリヌクレオチドをさらに含む実施形態34の方法。
36.微生物細胞は、酵母細胞である実施形態32の方法。
37.ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ複合体の少なくとも1つのタンパク質構成要素、および少なくとも1つの細胞透過ペプチド(CPP)を含み、タンパク質構成要素とCPPとは、共有結合的に、または非共有結合的に互いに結合して、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ−CPP複合体を形成しており、かつガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ−CPP複合体は、微生物細胞の(i)細胞膜、または(ii)細胞壁および細胞膜を横断することができる組成物。
38.ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ−CPP複合体は、微生物細胞の細胞壁を横断することができる実施形態37の方法。
39.微生物細胞のゲノム中の標的部位を修飾する方法であって、ガイドポリヌクレオチド、細胞透過ペプチド(CPP)およびCasエンドヌクレアーゼを細胞に供給する工程を含み、ガイドポリヌクレオチド、CasエンドヌクレアーゼおよびCPPは、共有結合的に、または非共有結合的に互いに結合して、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ−CPP複合体を形成しており、かつガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ−CPP複合体は、微生物細胞の(i)細胞膜、または(ii)細胞壁および細胞膜を横断することができる方法。
23.標的部位に修飾を有する少なくとも1つの微生物細胞を同定する工程をさらに含み、標的部位の修飾は、(i)少なくとも1つのヌクレオチドの置換、(ii)少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、(iii)少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、および(iv)(i)〜(iii)の任意の組み合わせからなる群より選択される実施形態39の方法。
【実施例】
【0270】
開示される本発明は、以下の実施例においてさらに明らかにされる。これらの実施例が、本発明のある好ましい態様を示す一方、単に説明の目的で示されていることは理解されるべきである。上記の考察およびこれらの実施例から、当業者であれば、本発明の必須の特徴を確認することができ、そして、その精神および範囲を逸脱しない範囲で、本発明の種々の変更および改変を行なって、種々の用途および条件に適合させることができる。
【0271】
実施例1
エケリキア・コリ(E.coli)におけるCas9−CPP(細胞透過ペプチド)融合タンパク質発現用ベクター
この実施例においては、Cas9タンパク質および細胞透過ペプチド(CPP)を含む翻訳融合タンパク質の誘導発現用に設計されたベクターを生成し、エケリキア・コリ(E.coli)における発現を試験した。Cas9−CPP融合タンパク質がエケリキア・コリ(E.coli)において予想通り発現することがわかり、その後、精製した。
【0272】
化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)M1 GAS(SF370)由来のCas9遺伝子のオープンリーディングフレームを、標準的な技術によって、ヤロウイア(Yarrowia)属における発現用にコドン最適化して、配列番号1を生成した。シミアンウィルス40(SV40)一分節核局在化シグナル(NLS)プラス短リンカー(4アミノ酸)をコードするDNA配列を、配列番号1の最後のセンスコドンの後ろに組み込んで、配列番号2とした。配列番号2は、配列番号3に示すアミノ酸配列をコードする。配列番号3の最後の7つのアミノ酸は、加えたNLSをコードする一方、配列番号3の位置1369〜1372の残基は、加えたリンカーをコードする。ヤロウイア(Yarrowia)属コドン最適化Cas9−NLS配列(配列番号2)を、標準的な分子生物学技術によって、ヤロウイア(Yarrowia)属構成プロモータ、FBA1(配列番号4)に融合した。FBA1構成プロモータ、ヤロウイア(Yarrowia)属コドン最適化Cas9、およびSV40 NLSが含有されるヤロウイア(Yarrowia)属コドン最適化Cas9発現カセット
が配列番号5に示される。このCas9発現カセット(配列番号13)を、プラスミドpZUF中にクローニングして、構築体pZUFCas9とした(
図1、配列番号6)。
【0273】
ヤロウイア(Yarrowia)属コドン最適化Cas9−NLS配列を、標準的な分子生物学技術によって、pZUFCas9(配列番号6)からPCR増幅した。PCR反応用プライマーは配列番号7(フォワード)および配列番号8(リバース)であり、それぞれ増幅DNA産物に5’EcoRI部位および3’HindIII部位を加えた。加えられた5’EcoRI部位は、増幅産物において、Cas9−NLSのオープンリーディングフレーム(ORF)のATG開始コドンと置き換わった。増幅産物(配列番号9)をEcoRIおよびHindIIIで消化し、その後、Zymoclean
TMおよび濃縮カラム(Zymo Research,Irvine,CA)を用いて精製した。精製したDNA断片を、Life Technologies(Carlsbad,CA)から入手したプラスミドpBAD/HisB(
図2A、配列番号10)にクローニングして、プラスミド構築体pRF48(
図2B、配列番号11)を生成した。プラスミドpRF48は、エケリキア・コリ(E.coli)において、N末端にヘキサヒスチジン(6×His)タグを含むCas9−NLSを発現させることができる。
【0274】
細胞透過ペプチド(CPP)配列をCas9−NLSに融合させるため、それぞれエケリキア・コリ(E.coli)における発現用にコドン最適化され、以下の特定のCPPアミノ酸配列に結合する6×Hisタグをコードする配列を含む個々のDNAポリヌクレオチド配列を調製した:エプスタイン・バールウイルスのゼブラトランスアクチベータタンパク質由来のゼブラペプチド(ECDSELEIKRYKRVRVASRKCRAKFKQLLQHYREVAAAKSSENDRLRLLLKQMC、配列番号12)、マウス内皮カドヘリンタンパク質由来のpVECタンパク質(LLIILRRRIRKQAHAHSK、配列番号:13)、神経ペプチドガラニンタンパク質由来のTP10ペプチド(AGYLLGKINLKACAACAKKIL、配列番号14)、および合成アルギニンリッチ「PolyR」タンパク質(GGGGRRRRRRRRRLLLL、配列番号15)。各DNAポリヌクレオチド配列は、以下のような構造のクローニング配列を生成する5’末端NcoI制限部位および3’末端EcoRI部位を含んだ:NcoI−6xHis−CPP−EcoRI(配列番号16〜19)。各配列番号16〜19は、個々にpRF48のNcoIおよびEcoRI部位にクローニングされ、それによって、エケリキア・コリ(E.coli)において、ある6×His−CPP−Cas9−NLS融合タンパク質を発現することができるプラスミド構築体を生成した、特に、6×His−ゼブラCPP−Cas9−NLS融合体発現用にプラスミド構築体pRF144(
図3A、配列番号20)を調製し、6×His−PolyR CPP−Cas9−NLS融合体発現用にプラスミド構築体pRF145(
図3B、配列番号21)を調製し、6×His−TP10 CPP−Cas9−NLS融合体発現用にプラスミド構築体pRF146(
図3C、配列番号22)を調製し、そして6×His−pVEC CPP−Cas9−NLS融合体発現用にプラスミド構築体pRF162(
図3D、配列番号23)を調製した。
【0275】
プラスミドpRF48、pRF144、pRF145、pRF146およびpRF162をそれぞれ個々にTOP10コンピテント細胞(Life Technologies)にトランスフォームした。グルコース0.4%(w/v)およびアンピシリン100μg/mLを含有するLブロス(Miller)中、振盪しながら(220rpm)、37℃で一晩増殖させた。各前培養物をアンピシリン100μg/mLを含有する2X YT培地で1:100に希釈し、振盪しながら(220rpm)、37℃でさらに増殖させた。培養物のOD600が0.5に達したところで、0.2%(w/v)の最終濃度までL−アラビノースを加えることによって、各プラスミドからのタンパク質発現を誘導した。培養物を振盪しながら(200rpm)、18℃でさらに18時間増殖させた。細胞を、5000×gで15分間、4℃でペレット化した。培地を棄て、細胞ペレットを−80℃で少なくとも4時間冷却し凍らせた。細胞ペレットを氷上で15分間解凍し、元の培養物1リットル当たり15mLの溶解バッファ(20mM トリス pH7.5、500mM NaCl、1mM MgCl
2、10mM イミダゾール、120単位/mL DNaseI、1mM PMSF、1mM DTT)に再懸濁した。細胞を大型フレンチプレッシャーセルに16000psiで2回通して溶解させた。細胞破砕物を、20000×gで30分間、4℃でペレット化した。上清を50mlのコニカルチューブに移し、発現した各融合タンパク質の6×Hisタグを結合させるため、Ni−NTA樹脂(Qiagen)の50%スラリーを2ml加えた。各チューブを4℃で1時間ゆっくり回転させた後、空のグラビティカラムを使用して上清を流出させた。各洗浄からサンプル(75μL)を取り、25μLの4×希釈Laemmeliバッファに加え、氷上で貯蔵した。各カラム中の樹脂を洗浄バッファ(20mM トリス pH7.5、500mM NaCl、10mM イミダゾール、1mM PMSF、1mM DTT)5mlで4回洗浄した。1mlアリコートの溶出バッファ(20mM トリス pH7.5、500mM NaCl、1mM MgCl
2、500mM イミダゾール、1mM PMSF、1mM DTT)を各カラムの樹脂に適用し、10分間インキュベートした。タンパク質の溶出を280nmの吸光度で監視した。各溶出液からサンプル(75PL)を取り、25μLの4×希釈Laemmeliバッファに加え、氷上で貯蔵した。各プラスミド発現実験では、溶出したタンパク質を含む画分をカラムから集め、10000 MWCO透析膜にロードし、4℃で少なくとも14時間、透析バッファ(25mM HEPES/KOH pH7.5、200mM KCl、20% グリセロール、1mM DTT)で透析した。各透析液のタンパク質濃度を、ブラッドフォード法、および565nmの吸光度により測定した。精製タンパク質を2アリコートに分け、その一方を−80℃で凍らせ、他方を4℃で、氷上で貯蔵した。各プラスミド発現実験では、カラム精製プロセス中に取り出したサンプルを95℃で5分間加熱し、4%(w/v)の濃縮ゲルを含む8%(w/v)のトリス−グリシンポリアクリルアミド分離ゲル上にロードした。タンパク質を電気泳動(200ボルト、30分間)で分離し、クマシーブルーで染色した。6×His−ゼブラ−Cas9−NLS精製プロセス用のゲルの一例を
図4に示す。
【0276】
このように、4つの異なるCPP−Cas9融合タンパク質が発現し、単離された。これらの融合タンパク質は、本明細書中のRGENタンパク質−CPP複合体の例である。
【0277】
実施例2
インビトロ転写による短鎖ガイドRNA(sgRNA)の発現
この実施例では、リボザイムにそれぞれ5’末端および3’末端で融合するsgRNAをコードするDNA配列(「RGR」と呼ぶ)を設計した。このRGR配列により、正確に定義された末端を有するsgRNAのT7 RNAポリメラーゼによるインビトロ転写が可能になった。
【0278】
図5は、sgRNA分子を示す。それは、2つの領域、可変ターゲティングドメイン(VT)(ガイド配列)とCasエンドヌクレアーゼ認識(CER)ドメイン(配列番号24はCERの一例である)とを含む単一RNA分子である。VT領域は、例えば、標的とされる核酸分子と同一である20マーのRNAポリヌクレオチドであり得る。VTドメインは、PAMモチーフの5’側に存在する標的部位中の切断標的部位を特定する。CERドメインは、Cas9タンパク質と相互作用して、VTドメインを相互作用させ、Cas9タンパク質切断を導くことができる(Jinek et al.,Science 337:816−821)。VTおよびCERドメインはいずれも、sgRNAの機能に必要とされる。
【0279】
5’ハンマーヘッド(HH)リボザイムおよび3’デルタ肝炎ウイルス(HDV)リボザイムがsgRNA配列へ付加することによって、一部のRNAポリメラーゼの転写の要件を考慮せずとも、任意のプロモータからのsgRNAの発現が可能となる(例えば、T7 RNAポリメラーゼは、転写開始後、直接、1つの転写されたG残基を要求するが3つの転写されたG残基で最もよく機能する)。そのようなsgRNAが発現される場合、プレsgRNA転写産物中に存在するリボザイムをオートクレーブ処理することによって、転写産物から分離して、未修飾sgRNAにする。
【0280】
ヤロウイア・リポリティカ(Y.lipolytica)において、Can1−1遺伝子座(配列番号25)を標的とするsgRNAをコードするDNA配列を調製した。このsgRNAは、そのCERドメインに配列番号24を含む。sgRNAをコードする配列を、その5’末端でHHリボザイム(配列番号26)をコードする配列に結合し、その3’末端でHDVリボザイム(配列番号27)をコードする配列に結合して、HHリボザイムの最初の6塩基がsgRNAのVT領域の最初の6塩基の逆相補体であるようにした。この特定のRGR sgRNAは、配列番号28によってコードされる。配列番号28のRGR sgRNAを、その後、標準的な分子生物学技術によって、T7 RNAポリメラーゼプロモータ(配列番号29)に結合して、プラスミドpRF46(配列番号30)を生成した。
【0281】
T7−RGR sgRNAをコードする配列を、標準的な技術によって、プラスミドpRF46(配列番号30)からPCR増幅した。PCR反応用プライマーは、配列番号31(T7 フォワードプライマー)および配列番号32(gRNArev1リバースプライマー)であった。PCR産物をエタノール沈澱によって精製しddH
2Oに再懸濁し、このDNAをインビトロ転写反応の鋳型として使用した。鋳型DNAを、20μLのインビトロ転写反応液(MEGAshortscript
TM T7 Kit、Life Technologies)中に、最終濃度150nMとなるまで添加した。種々の時間(2時間、4時間、6時間、および一晩)反応を進行させ、インビトロ転写の適切な条件を決定した(
図6)。その後、反応液を10単位のDNaseIにより15分間、37℃で処理して、鋳型DNAを除去した。エタノールおよび標準的なプロトコールを使用してRNAを沈澱させた。各20μlのインビトロ反応液により、60〜100μgのRNAが得られた。
【0282】
このように、所定の5’末端および3’末端を有するsgRNAがインビトロで合成された。下記の実施例3で示すように、インビトロで転写されたsgRNAは、Cas9−CPP融合タンパク質に結合し、RGEN−CPP複合体を形成することができる。
【0283】
実施例3
sgRNA複合Cas9−CPP融合タンパク質を用いる標的DNA配列の特異的インビトロ切断
この実施例では、sgRNAと複合したゼブラCPP−Cas9融合タンパク質(配列番号39を含む)を試験して、CPPを有する複合体がCas9エンドヌクレアーゼ活性を阻害しないことを確認した。
【0284】
標準的な技術を用いて、配列番号25のCan1−1標的配列を含むインビトロCan1切断解析DNAポリヌクレオチド(配列番号35)をヤロウイア・リポリティカ(Y.lipolytica)細胞(ATCC 20362)からPCR増幅し、精製した。PCR反応用プライマーは配列番号33(IV−upフォワードプライマー)および配列番号34(IV−downリバースプライマー)であった。
【0285】
精製したゼブラCPP−Cas9融合タンパク質(600ng、実施例1で調製)、Can1−1標的部位を標的とするsgRNA(250ng、実施例2で調製)、NEBuffer 3.1(New England BioLabs,Ipswich,MA)、およびCan1切断解析DNA(150ng、配列番号35)を混合して、10μL反応液とした(ddH
2Oにより体積を最終体積となるようにした)。また、陰性対照として、ゼブラCPP−Cas9融合タンパク質またはsgRNAを欠いた反応液を調製した。陽性対照として、ゼブラCPP−Cas9の代わりに、反応液に野生型Cas9タンパク質(PNA Bio,Thousand Oaks,CA)を使用した。反応液を37℃で60分間インキュベートした。その後、各反応液にRNaseI(4μg)を加え、37℃で15分間インキュベートして、sgRNAを分解した。停止液(1μL;30%[w/v]グリセロール、1.2%[w/v]SDS、250mM EDTA、pH8.0)を添加して反応を停止させた。その後、この反応液を37℃で15分間さらにインキュベートした。各反応液を1.2%FlashGel
TM(Lonza,Basel,Switzerland)にロードし、200ボルトで10分間電気泳動させた(
図7)。ゼブラCPP−Cas9による標的DNA切断パターンは、野生型Cas9による切断パターンと一致しており(
図7)、それによりゼブラCPP−Cas9はインビトロにおいて正常に機能することが示された。さらに、この活性は2回の凍結融解サイクルを受けたゼブラCPP−Cas9/sgRNAによっても阻害されなかった。
【0286】
このように、適切なsgRNAと複合したCPP−Cas9融合タンパク質(すなわち、RGEN−CPP複合体の例)は特異的DNA切断活性を有していた。この活性が野生型Cas9−sgRNA複合体の活性と類似していることが示され、それにより、CPP融合体がCas9−sgRNAエンドヌクレアーゼ活性を阻害しないことが示された。この例のCPP−Cas9融合タンパク質は配列番号39(ゼブラCPP−Cas9)を含むが、例えば、配列番号40、41または42を含むCPP−Cas9融合タンパク質もまた、RNA構成要素としての適切なsgRNAに結合した場合に、切断活性を有すると考えられる。
【0287】
実施例4
酵母細胞へのCPP−Cas9/sgRNA複合体の輸送、および酵母細胞内での標的DNAの切断
この実施例では、sgRNAと複合したゼブラCPP−Cas9融合タンパク質(配列番号39を含む)(ゼブラCPP−Cas9/sgRNA)を酵母細胞と単に接触させた後の細胞への侵入能力を試験した。Can1−1に特異的なゼブラCPP−Cas9/sgRNAは、細胞に侵入し、Can1遺伝子を切断することによって細胞をカナバニン耐性とすることができた。
【0288】
ヤロウイア・リポリティカ(Y.lipolytica)酵母細胞(ATCC20362)を、YPD(2%グルコース、2%ペプトン、1%酵母エキス)液体培地中、振盪(220rpm)させながら30℃で、OD600=0.5(培地1mL当たり、約5×10
6個の細胞)になるまで増殖させた。精製ゼブラCPP−Cas9融合タンパク質(実施例1で調製)およびCan1−1標的部位を標的とするsgRNA(実施例2で調製)をそれぞれ、実施例1で使用した溶解バッファ中、1:3のモル比で混合し、室温で15分間、プレインキュベートして、sgRNAをゼブラCPP−Cas9と結合させた。5×10
5のヤロウイア・リポリティカ(Y.lipolytica)細胞を、ゼブラCPP−Cas9/sgRNA調製物に、ゼブラCPP−Cas9の最終濃度が1μM、2.5μMまたは5μMになるように混合した。また、陰性対照として、細胞を最終濃度5μMのゼブラCPP−Cas9単独(RNA構成成分としてのsgRNAを含まない)と混合した。全ての細胞−Cas9調製物を振盪(220rpm)しながら30℃で2時間インキュベートした。その後、細胞を1000倍および10000倍に順次希釈した。一連の各希釈液(100μL)をアルギニンを欠いた完全培地(CM−Arg)上に入れ、30℃で48時間回復させた。
【0289】
10
−3希釈プレートのコロニーを計数し、播かれた細胞総数を求めた。レプリカプレーティング技術によって、カナバニン(60μg/mL)を含むCM−Argプレートにコロニーを移した。カナバニン耐性コロニーの数を計数し、(カナバニンを含まないプレートからの)コロニー総数で除して、各例の変異頻度を求めた。コロニーは30℃で48時間増殖させた。細胞のゼブラCPP−Cas9/sgRNA複合体との接触により、全コロニーの約2%〜10%の頻度で、カナバニンに耐性のコロニーを得た(
図8)。このカナバニン耐性は、Can1遺伝子コード配列中の予測されたCas9切断部位/Cas9切断部位近傍でのindel形成によるCan1の欠失によるものと考えられる。しかしながら、細胞のゼブラCPP−Cas9単独(sgRNAを含まない)との接触では、カナバニンに耐性コロニーは得られず(
図8)、実験細胞におけるカナバニン耐性が、CPP−Cas9タンパク質に与えられたsgRNAに基づく特異性に依存することを示した。酵母細胞の特性を考慮すると、特異的なDNAターゲティングを媒介するためには、おそらく細胞壁および細胞膜の両構造を横断する必要があったであろう。
【0290】
このように、適切なsgRNAを複合したCPP−Cas9融合タンパク質(すなわち、RGEN−CPP複合体の一例)は、酵母細胞に侵入(細胞壁および細胞膜を横断)し、その中で特定のDNA配列を標的とすることができる。この例のCPP−Cas9融合タンパク質は配列番号39(ゼブラCPP−Cas9)を含むが、例えば、配列番号40、41または42を含むCPP−Cas9融合タンパク質もまた、RNA構成要素としての適切なsgRNAに結合した場合に、細胞侵入活性、および細胞での特異的DNAターゲティング活性を有すると考えられる。
【0291】
実施例5
植物細胞へのCPP促進Cas9/sgRNAの輸送、および植物細胞内での標的DNAの切断
ダイズ細胞へのCPP促進タンパク質輸送を、CPPに融合したDS−RED 蛍光タンパク質を含むダイズカルス細胞をインキュベートすることによって試験した。蛍光シグナルがCPP−DS−RED処理物では予期されるが、DS−REDタンパク質単独でインキュベートした対照では予期されない。このようにして各種のCPPを試験することにより、積み荷タンパク質の植物細胞の透過および輸送に最も効果的なCPPの特定を進めることができる。試験することができるCPPの例としては、以下のものが挙げられる:
(i)エプスタイン・バールウイルスのゼブラトランスアクチベータタンパク質由来のCPP、
(ii)6個以上の隣接するアルギニン残基を有するCPP、
(iii)トランスポータン−10(TP10)CPP、
(iv)血管内皮カドヘリンタンパク質由来のCPP、または
(vi)合成ノナ−アルギニンCPP、ヒスチジンリッチノナ−アルギニンCPPおよびPasノナ−アルギニンCPPからなる群から選択されるCPP。合成ノナ−アルギニンCPP、ヒスチジンリッチノナ−アルギニンCPPおよびPasノナ−アルギニンCPPの例は、Liu et al.(Advanced Studies in Biology 5(2):71−88,HIKARI Ltd)に開示されている。
【0292】
インビトロで翻訳されたCas9タンパク質および合成sgRNAは、それら自身で、または融合体(例えば、上記CPP−DS−RED)でCPPと混合し、ダイズカルスとインキュベートして、Cas9/sgRNAを細胞へ輸送することができるか否かを試験することができる。一旦細胞内に入ると、Cas9/sgRNA複合体は、sgRNAターゲティング配列によって特定されるゲノム標的を認識して、DNA二本鎖を切断(DSB)することができる。細胞機構による自然修復は、非相同末端結合(NHEJ)による変異、または、適切なドナーDNAが存在するなら、相同組み換えによる遺伝子の組み込みをもたらし得る。CPPはまた、潜在的により高い効率を得るために、Cas9タンパク質に共有結合させることができる。ダイズ細胞へのCPP−Cas9/sgRNAの輸送の成功、ひいてはCPP−Casエンドヌクレアーゼ複合体の植物細胞壁および植物細胞膜を横断した運搬の成功は、例えば、PCR分析により、特定の標的部位での変異または遺伝子組み込みを検出することによって確認することができる。
【0293】
実施例6
エケリキア・コリ(E.coli)由来のCPP−dsREDexpressタンパク質の発現および精製
所与の細胞透過ペプチドの特定の細胞型への侵入能力を迅速に評価するために、CPPとdsREDexpressタンパク質(配列番号85)との融合体を生成し、エケリキア・コリ(E.coli)において発現させ、精製した。CPP−dsREDexpressタンパク質融合体は、所与のCPPによる所与の細胞型への積み荷輸送の迅速な評価を可能にするツールである。これにより、細胞の蛍光を顕微鏡またはフローサイトメトリにより分析して評価することによって、積み荷の迅速かつハイスループットな輸送を最大にする、種、細胞型、または株特異性CPP分子を選択することが可能になる。
【0294】
エケリキア・コリ(E.coli)コドン最適化dsREDexpress遺伝子(配列番号86)を合成し(IDT DNA)、pBAD/HisB(配列番号87)のNcoI/HinDIII部位にクローニングして、pRF161(配列番号88)を得た。エケリキア・コリ(E.coli)コドン最適化dsREDexpress遺伝子は、NcoI/EcoRIを有するプラスミドの消化が、種々のhisタグ−CPP配列によりhisタグを置換させてhisタグ−CPP−dsREDexpress融合発現プラスミドを形成するように、内在のRcoRIを含んだ。種々のhisタグ−CPP融合体;TAT(配列番号89)、TLM(配列番号90)、MPG1(配列番号91)、pep1(配列番号92)、およびCFFKDEL(配列番号93)を、エケリキア・コリ(E.coli)用にコドン最適化し、インフレーム5’NcoIおよび3’EcoRI部位(それぞれ、配列番号94〜98)にフランキングし、標準的な技術によって、pRF161(配列番号88)のNcoI/EcoRI部位にクローニングし、hisタグ配列を対応するhisタグ−CPP融合体で置き換え、プラスミドpRF224(his−TAT−dsREDexpress 配列番号99)、pRF214(his−TLM−dsREDexpress 配列番号100)、pRF213(his−MPG1−dsREDexpress 配列番号101)、pRF217(his−pep1−dsREDexpress 配列番号102)、pRF216(his−CFFKDEL−dsREDexpress 配列番号103)を生成した。挿入された断片の配列を、標準的な配列決定法およびoligo 36(配列番号104)を用いて確認した。
【0295】
エケリキア・コリ(E.coli)コドン最適化His−ゼブラ(配列番号105)、His−tp10(配列番号106)、およびHis−pVEC(配列番号107)を、それぞれpRF144(配列番号108)、pRF162(配列番号109)、およびpRF146(配列番号110)から、標準的なPCR技術によりoligo 36(配列番号104)およびoligo 153(配列番号111)を用いてPCR増幅した。PCR断片をpRF161(配列番号88)のNcoI/EcoRI部位にクローニングし、プラスミドpRF186(his−ゼブラ−dsREDexpress 配列番号112)、pRF192(his−tp10−dsREDexpress 配列番号113)、およびpRF190(his−pVEC−dsREDexpress 配列番号114)を得た。配列をoligo 36(配列番号104)を用いて確認した。
【0296】
Hisタグ付きCPP−dsREDexpress融合タンパク質を標準的な技術によって発現させた。要約すると、細胞を、125mlフラスコ中の10mlのZYM−505(1%N−Zアミン、0.5%酵母エキス、5%グリセロール、1.0%デキストロース、25mM Na
2HPO
4、25mM KH
2PO
4、50mM NH
4Cl、5mM Na
2SO
4、1×微量金属(Teknova)、5×10
−5%チアミン、2mM
MgCl
2、100μg/mlアンピシリン)、または溶原培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%塩化ナトリウム、100μg/mlアンピシリン、0.4%デキストロース)で、37℃および220RPMで12〜16時間予備培養した。予備培養物を、500mlのZYM−5052(1%N−Zアミン、0.5%酵母エキス、5%グリセロール、0.5%デキストロース、2%L−アラビノース、25mM Na
2HPO
4、25mM KH
2PO
4、50mM NH
4Cl、5mM Na
2SO
4、1×微量金属(Teknova)、5×10
−5%チアミン、2mM MgCl
2、100μg/mlアンピシリン)で1:1000(ZYM−505)に希釈、または500mlの2xYT溶原培地(1.6%トリプトン、1%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、100μg/mlアンピシリン)で1:100(溶解培地)に希釈し、2.9Lのフェルンバッハフラスコ内で、37℃、220RPMで、OD
600が約0.5になるまで増殖させた。タンパク質を発現させるため、2xYT培養物にL−アラビノースを最終濃度が0.1%になるまで添加し、かつ全ての培養物を18℃、220RPMに20〜30時間シフトした。5000RPM、10分間で細胞を集め、使用した培地を棄て、細胞ペレットを−80℃で凍結した。
【0297】
細胞ペレットを解凍し、変性溶解バッファ(50mMトリス pH8.0、150mM NaCl、8M尿素、20mMイミダゾール)に再懸濁し、フレンチプレッシャーセルに16,000PSIで2回通して溶解させた。固形沈殿物を、10,000g、4℃、15分間の遠心分離により固形沈殿物を上清から除き、精製した抽出物20μlを、20μlの2×Laemmliバッファ(4%SDS、20%グリセロール、100mM DTT、0.004%ブロモフェノールブルー、125mMトリス pH6.8)と混合し、95℃まで5分間加熱し、−20℃で凍結させて、分析に備えた。精製した抽出物を、6mlの50%(v/v)ニッケル−NTA−アガローススラリーと1時間、室温で混合した。2000RPM、5分間で混合物からビーズをペレット化した。上清を除き、精製抽出物について20μlのサンプルを採取した。ペレット化したビーズを10mlの変性溶解バッファに再懸濁し、グラビティフロークロマトグラフィカラムに適用した。液体を流出させ、詰めたビーズ床を残した。ビーズ床を、洗浄バッファ1(50mMトリス pH8.0、150mM NaCl、8M尿素 20mMイミダゾール)および洗浄バッファ2(50mMトリス pH 8.0、500mM NaCl、20mMイミダゾール)をイナル割合で使用した一連の洗浄液で洗浄して、変性剤(尿素)の濃度を低下させ、NaClの濃度を上げて、カラムにタンパク質をリフォールディングした。要約すると、カラムを、(Buffer1:Buffer2)で、1:0(8M尿素 150mM NaCl)を10ml、7:1(7M尿素、194mM NaCl)を10ml、3:1(6M尿素、238mM NaCl)を10ml、5:3(5M尿素、281mM NaCl)を10ml、1:1(4M尿素、325mM NaCl)を10ml、3:5(3M尿素、369mM NaCl)を20ml、1:3(2M尿素、413mM NaCl)を20ml、3:13(1.5M尿素、434mM NaCl)を20ml、1:5(1M尿素、456mM NaCl)を20ml、1:15(0.5M尿素、478mM NaCl)を20ml、および 0:1(0M尿素、500mM NaCl)を30mlで洗浄した。タンパク質を、10×1ml画分で、ネイティブ溶出バッファ(50mMトリス pH8.0、500mM NaCl、10%グリセロール、500mMイミダゾール)により溶出した。溶出されたdsREDexpressまたはCPP−dsREDexpressタンパク質を含む画分は赤色を呈していた。赤色の画分を集め、MWCOが10,000の再生セルロース透析膜で、1000倍体積の容積バッファ(50mMトリス pH8.0、10%グリセロール)に対して、一晩、室温で透析した。タンパク質溶液を透析膜から除去し、0.22μMの Tuffryn(登録商標)膜を用いてフィルター滅菌した。精製細胞抽出物について、20μlのタンパク質溶液を処理した。
【0298】
Laemmeliバッファで精製中に採取したサンプルを95℃まで5分間加熱し、12.5%PAGEゲル上にロードした。ゲル上を一定の200ボルトで1時間ランさせ、ブルー染料のみで染色した。タグ付きのCPP−dsREDexpressタンパク質の精製での代表的なPAGEゲルの一例を
図9に示す。各精製タンパク質の全タンパク質濃度を、Pierce
TMクーマシープラスアッセイにより、ウシ血清アルブミンを基準として用いて測定した。各精製CPP−dsREDexpress融合体の濃度を表3に示す。
【0299】
【表8】
【0300】
実施例7
エケリキア・コリ(E.coli)由来の付加的CPP−Cas9タンパク質の発現および精製
異なる細胞型へのCas9の輸送は、異なるCPPのタグを付したCas9を必要とし得る。様々なCPP−Cas9融合タンパク質を単離するために、異なるCPPをエケリキア・コリ(E.coli)発現ベクターにおいてCas9に融合させた。Cas9/sgRNAリボヌクレオタンパク質複合体のCPPを媒介とした細胞への輸送に使用するため、これらのタンパク質を発現させ、エケリキア・コリ(E.coli)細胞から精製した。
【0301】
His−CFFKDEL−Cas9(配列番号115)融合発現カセットおよびHis−MPG1−Cas9(配列番号116)融合発現カセットを作るため、標準的な技術を使用して、pRF216(CFFKDEL 配列番号103)またはrpRF213(MPG1 配列番号101)のNcoI/EcoRI 断片を、Cas9タンパク質発現プラスミドpRF48(配列番号117)の同じ部位にクローニングして、それぞれプラスミドpRF243(his−CFFKDEL−Cas9 配列番号118)およびプラスミドpRF238(his−MPG1−Cas9、配列番号119)を生成した。MPG1−Cas9融合カセットまたはCFFKDEL−Cas9融合カセットの正確な構築を、サンガー法シークエンシングによりoligo36(配列番号104)を用いて確認した。
【0302】
Hisタグ付きCPP−Cas9融合タンパク質を標準的な技術によって発現させた。要約すると、細胞を、125mlフラスコ中の10mlのZYM−505(1%N−Zアミン、0.5%酵母エキス、5%グリセロール、1.0%デキストロース、25mM Na
2HPO
4、25mM KH
2PO
4、50mM NH
4Cl、5mM Na
2SO
4、1×微量金属(Teknova)、5×10
−5%チアミン、2mM MgCl
2、100μg/mlアンピシリン)、または溶原培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%塩化ナトリウム、100μg/mlアンピシリン、0.4%デキストロース)で、37℃および220RPMで12〜16時間予備培養した。予備培養物を、500mlのZYM−5052(1%N−Zアミン、0.5%酵母エキス、5%グリセロール、0.5%デキストロース、2%L−アラビノース、25mM Na
2HPO
4、25mM KH
2PO
4、50mM NH
4Cl、5mM Na
2SO
4、1×微量金属(Teknova)、5×10
−5%チアミン、2mM MgCl
2、100μg/mlアンピシリン)で1:1000(ZYM−505)に希釈、または500mlの2xYT溶原培地(1.6%トリプトン、1%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム、100μg/mlアンピシリン)で1:100(溶解培地)に希釈し、2.9Lのフェルンバッハフラスコ内で、37℃、220RPMで、OD
600が約0.5になるまで増殖させた。タンパク質を発現させるため、2xYT培養物にL−アラビノースを最終濃度が0.1%になるまで添加し、かつ全ての培養物を18℃、220RPMに20〜30時間シフトした。5000RPM、10分間で細胞を集め、使用した培地を棄て、細胞ペレットを−80℃で凍結した。タンパク質を実施例1に記載のように精製した。クーマシープラスアッセイ(Pierce
TM)により測定した精製CPP−Cas9タンパク質の最終濃度を表4に列挙する。
【0303】
【表9】
【0304】
実施例8
エケリキア・コリ(E.coli)細胞におけるCPP−Cas9/gRNA媒介遺伝子ターゲティング
この実施例は、エケリキア・コリ(E.coli)細胞の、sgRNAを有するCPP−Cas9/sgRNAリボヌクレオタンパク質複合体により処理により、エケリキア・コリ(E.coli)のgalK遺伝子がターゲティングされるのを示す。CPP−Cas9/sgRNAの細胞への侵入により、galK遺伝子でターゲティングおよび切断が起こり、誤りがちなDNA修復メカニズムにより遺伝子が不活性化する。これはガラクトースに対する耐性として表現型的に監視することができる。この方法は、CPP媒介輸送による細胞へのCas9/sgRNA積み荷の輸送に依存する。
【0305】
エケリキア・コリ(E.coli)のgalK遺伝子(配列番号120)は、糖ガラクトースの存在下、galE突然変異体に見られるガラクトース感受性表現型に関与している。ガラクトースが細胞に入ると、galK遺伝子(配列番号120)の産物であるガラクトキナーゼによってリン酸化される。リン酸ガラクトースは細胞に毒性がある。野生型細胞では、リン酸ガラクトースはgale(配列番号121)遺伝子およびgalT(配列番号122)遺伝子の産物によって代謝され、炭素源として使用される。galEまたはgalT機能喪失型突然変異体では、リン酸ガラクトースが蓄積し、細胞を死に至らしめる。したがって、galK遺伝子の機能喪失型突然変異体はガラクトースの存在下でコロニーを形成するため、galE変異体のバックグラウンドにおいて選択することができる。
【0306】
galK2−1標的部位(配列番号134)でgalK遺伝子(配列番号120)を標的とするsgRNA(配列番号135)を生成するため、インビトロ転写鋳型(配列番号131)を生成した。まず、標準的なPCR反応で、CERドメイン(配列番号123)をコードするDNAのPCR産物を、pRF291(配列番号125)から、CERフォワードプライマー(配列番号126)およびユニバーサルリバースプライマー(配列番号127)を用いて増幅した(配列番号124)。CERコードPCR産物(配列番号124)をZymo
TMclean and concentrate 25カラムを用いて精製し、35μlのddH
2Oに溶出した。sgRNAインビトロ転写鋳型の増幅に、4つのプライマー、T7プロモータを含むユニバーサルフォワードプライマー(配列番号128)、T7プロモータの一部および標的部位の一部を含む標的特異性フォワードプライマー(配列番号129)、標的部位およびCERドメインとの重複部の一部を含む標的リバースプライマー(配列番号130)、ならびにユニバーサルリバースプライマー(配列番号127)を含むマルチプレックスPCRを使用した。15nM CERドメインPCR産物(配列番号124)、それぞれ1μMのユニバーサルフォワードプライマー(配列番号128)およびユニバーサルリバースプライマー(配列番号127)、ならびにそれぞれ300nMの標的フォワードプライマー(配列番号129)および標的リバースプライマー(配列番号130)を含むPhusion flash master mixを使用して、PCR反応を行った。標準的な反応に関して、PCR反応を循環させた。sgRNAインビトロ転写鋳型(配列番号131)を、Zymo
TMclean and concentrate 25カラムを用いて精製し、35μlのddH
2Oに溶出した。sgRNAインビトロ転写鋳型(配列番号131)は、T7プロモータ(配列番号132)、可変ターゲティングドメインをコードするDNA(配列番号133)、およびCERドメインをコードするDNA(配列番号125)を含有した。galK2−1 sgRNA(配列番号135)を生成するインビトロ転写反応を実施例2に記載のようにして行った。
【0307】
galEを欠失したエケリキア・コリ(E.coli)株を、溶原培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%NACl)で、37℃、220RPMで一晩増殖させることによって、Cas9/sgRNA核タンパク質複合体のCPP輸送を行った。培養物を新しい溶原培地で1:100に希釈し、37℃、220RPMで2時間増殖させて、指数増殖期の細胞を得た。50μl体積中、10μMのgalK2−1 sgRNA(配列番号135)の存在下または非存在下、CPP−Cas9(pvEC−Cas9(配列番号144)、ゼブラ−Cas9(配列番号143)、MPG1−Cas9(配列番号116)、CFFKDEL−Cas9(配列番号115))を、10μMの最終濃度にて、室温で30分間インキュベートした。この処理後、1.2mlの細胞を、3000RPM、3分間の条件でペレット化し、上清を棄て、細胞を、2×ヌクレアーゼバッファ(200mM NaCl、100mMトリス−HCl、20mM MgCl
2、200μg/ml BSA pH7.9)を含有する600μlのLBに再懸濁した。50μlの細胞懸濁液を、各反応液、ならびにgRNAのみの対照および処理なしに混合した。試料を37℃、220RPMで4時間インキュベートした。処理終了時の生細胞数を計数するため、試料の10
−3、10
−4および10
−5希釈液100μlを溶原培地プレート上にプレーティングし、反応液の残りを溶原培地プレート上にプレーティングして、一晩37℃でインキュベートした。生細胞を10
−5希釈液で計数して、試料溶原培地プレートにプレーティングされた生存コロニー単位(CFU)の数を決定した。試料プレートを、標準的な技術によって、0.2%(w/v)グリセロールおよび0.2%(w/v)ガラクトースを炭素源として含有する1.5%(w/v)Bacto agarで固化した最小A培地(1g/L(NH
4)
2SO
4、4.5g/L KH
2PO
4、10.5g/L K
2HPO
4、0.5g/L クエン酸ナトリウム・2H
2O、1mM MgSO
4・7H
2O、5×10
−5%チアミン)にレプリカプレーティングした。プレートを37℃で24時間インキュベートし、その後、コロニーの形成を計数した。ガラクトースを含有するプレート上のgalE株の各CFUは、galK遺伝子の遺伝子不活性化事象を示す。レプリカプレーティングの結果を表5に示す。
【0308】
【表10】
【0309】
エケリキア・コリ(E.coli)細胞のCPP−Cas9/sgRNAリボヌクレオタンパク質複合体による処理により、いくつかの事例では、galK不活性化の頻度が、未処理の細胞のバックグラウンドの約4倍に高まった。この上昇は、CPP−Cas9のみ、またはsgRNAのみでは見られず、このことは、galK遺伝子の不活化の増大が、細胞に侵入して、galK遺伝子のgalK2−1標的部位でのDNAの二本鎖切断をしたCPP−Cas9/sgRNAリボヌクレオタンパク質複合体によるものであることを示唆している。
【0310】
実施例9
古細菌細胞へのCPP−dsREDexpressタンパク質の輸送
細胞透過ペプチドによる積み荷の古細菌への輸送を試験し、そして、細菌や真核生物の細胞壁(例えば、リン脂質)および細胞膜、ならびに明らかに古細菌である要素(例えば、S層)に類似した要素を含む、古細菌の細胞壁を横切るCPP候補を決定するために、古細菌をCPP−dsREDexpressタンパク質融合体で処理した。このスクリーニングで同定されたCPPは、他の積み荷(例えば、Cas9/sgRNAリボヌクレオタンパク質複合体)の古細菌への輸送にも使用できるであろう。
【0311】
古細菌ハロバクテリウム・サリナルム(Halobacterium salinarum)ATCC19700を、1.5%(w/v)Bacto agarで固化した培地213(250g/L NaCl、10g/L MgSO
4・7H
2O、5g/L KCl、0.2g/L CaCl
2・6H
2O、10g/L酵母エキス、2.5g/Lトリプトン)上、37℃で、コロニーが形成されるまで(4日)増殖させた。250mlフラスコ中の50mlの培地213に植菌するために単一コロニーを使用した。培養物を、37℃、220RPMで、OD
600が、指数増殖期を示す約0.5に到達するまで増殖させた。100μlの細胞を、24ウエルブロックにおいて、タンパク質なし、5μM dsREDexpress(配列番号85)、5μM MPG1−dsREDexpress(配列番号136)、5μM pVEC−dsREDexpress(配列番号137)、5μM CFFKDEL−dsREDexpress(配列番号138)、5μM TLM−dsREDexpress(配列番号139)5μM pep1−dsREDexpress(配列番号141)または5μM tp10 dsRED−express(配列番号142)と混合した。混合物を37℃、220RPMで、4時間インキュベートした。細胞を、トリプトンおよび酵母エキスを欠いた培地213で2回洗浄し、100μlのトリプトンおよび酵母エキスを欠いた培地213に再懸濁した。細胞を、Accuri C5 フローサイトメーターの赤色チャネルの蛍光で解析して、どのCPPタグがdsREDexpress積み荷をハロバクテリウム・サリナルム(H.salinarum)に輸送したかを調べた。未処理の細胞を使用して、フローサイトメトリーデータの非赤色細胞と赤色細胞の間の解析ゲートを、赤色ゲートに入る未処理の細胞が0.2%という偽陽性頻度を得るように作成した(表6)。
【0312】
【表11】
【0313】
古細菌へのdsREDexpress積み荷の輸送は、少なくとも3つの細胞透過ペプチド(pVEC、TLM、tp10)が、dsREDexpressタンパク質単独の50倍の効率で、古細菌へタンパク質積み荷を輸送できることを示し、これにより、これらの3つのCPPモチーフが他の積み荷(例えば、Cas9リボヌクレオタンパク質複合体)の古細菌への輸送に使用することができることが示唆される。さらに、CPPモチーフは全細胞集団の16%に積み荷を輸送しており、これにより、CPPによる古細菌へ積み荷輸送が効率的なプロセスであることが示唆される。
【0314】
実施例10
真核細胞へのCPP−dsREDexpressタンパク質の輸送
異なる真核生物種へ積み荷を輸送する細胞透過ペプチドの能力を試験するために、3種、フィトフトーラ・カプシキ(Phytophthora capsici)(卵菌(Oomycete))、セプトリ・トリチキ(Septori tritici)(真菌類)およびボトゥリチス・キネレア(Botrytis cinerea)(真菌類)を種々のCPP−dsREDexpress融合体で処理した。dsREDexpress積み荷の輸送をFACS解析により種々のCPP部分で監視して、積み荷が輸送された細胞の割合を求めた。CPPはdsREDexpress積み荷をこれらの細胞に輸送することができ、このことは、CPPがこれらの分類の真核細胞に他の積み荷(例えば、Cas9/sgRNAリボヌクレオタンパク質複合体)を輸送することができるであろうことを示唆している。
【0315】
フィトフトーラ・カプシキ(P.capsici)を、1.8%Bacto agarで固化したV8培地(20% V8ジュース、4.5g/L CaCO
3)上、23℃、暗所で、3日間増殖させた。その後、プレートを、23℃の明るい場所に、さらに7日間置いた。プレートを4℃で30分間冷却した。水をプレートに撒き、表面を覆い、30分間、室温でインキュベートした。液体を除き、遊走子を得た。遊走子を顕微鏡による分析で確認した。等体積の2×シスト化培地(40g/L トリプトン、10g/L 酵母エキス、200ml/L 10×SOC塩[5.84g/L NaCl、1.86g/L KCl、20.3g/L MgCl
2・6H
2O、24.6g/L MgSO
4・7H
2O、36g/L デキストロース]、36.4g/L ソルビトール、1.47g/L CaCl
2・2H
2O)を遊走子に加え、静かに混合した。シスト化培地中の遊走子を20分間室温でインキュベートした。シスト化を顕微鏡によって確認した。胞子をペレット化し、等体積のYMA培地(2g/L 酵母エキス、4g/L 麦芽エキス)に再懸濁し、血球計数器により計数した。遊走子をYMAで3×10
7胞子/mlにまで希釈した。100μlの遊走子を含むYMAを種々のdsREDexpress融合タンパク質(新実施例5、表N1)と混合して、タンパク質の最終濃度を5μMとした。混合物を25℃、400RPMで2時間インキュベートした。細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(8g/L NaCl、0.2g/L KCl、1.44g/L Na
2HPO
4・2H
2O、0.24g/L KH
2PO
4 pH6.8)で2回洗浄し、最終体積200μlのPBSに再懸濁した。ハロバクテリウム・サリナルム(Halobacterium salinarium)について、dsREDexpress融合タンパク質の摂取を フローサイトメトリーにより監視した(実施例9)。積み荷が首尾よく輸送された細胞の割合を、dsREDexpress処理細胞に任意のゲートを、集団の0.1%が偽陽性赤色事象として記録されるよう(1:1000細胞)ドローすることによって求めた。この処理の結果を表7に示す。pVEC、pep1およびtp10は、赤色細胞がdsREDexpress処理細胞単独の5.8倍、5.5倍および1.8倍あり、これらのCPP部が卵菌(Oomycete)への他の積み荷(例えば、Cas9/sgRNAリボヌクレオタンパク質複合体)を輸送する候補になる得ることを示唆している。
【0316】
【表12】
【0317】
ボトゥリチス・キネレア(B.cinerea)を、1.8%Bacto agarで固化したPDA培地(24g/L ポテトデキストロースブロス)上、暗所で、5〜10日間増殖させた。滅菌プラスチックスプレッダーで分生子を水に取り、2層のチーズクロスで濾過した。分生子を血球計数器で計数し、YMA培地に1ml当たり3×10
7個の分生子が含まれるように希釈した。分生子を含むYMA100μlを種々のdsREDexpress融合タンパク質(新実施例5、表N1)と混合して、タンパク質の最終濃度を5μMとした。混合物を25℃、400RPMで2時間インキュベートした。細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(8g/L NaCl、0.2g/L KCl、1.44g/L Na
2HPO
4・2H
2O、0.24g/L KH
2PO
4 pH6.8)で2回洗浄し、最終体積200μlのPBSに再懸濁した。ハロバクテリウム・サリナルム(Halobacterium salinarium)について、dsREDexpress融合タンパク質の摂取を フローサイトメトリーにより監視した(実施例8)。積み荷が首尾よく輸送された細胞の割合を、dsREDexpress処理細胞に任意のゲートを、集団の0.1%が偽陽性赤色事象として記録されるよう(1:1000細胞)ドローすることによって求めた。この処理の結果を表8に示す。
【0318】
【表13】
【0319】
セプトリ・トリチキ(S.tritici)を、1.8%Bacto agarで固化したYMA培地上、23℃、明るい所で増殖させた。5〜10日後、滅菌プラスチックスプレッダーおよび水で分生子を採取した。分生子を血球計数器で計数し、YMA培地に3×10
7個の分生子が含まれるように希釈した。分生子を含むYMA100μlを種々のdsREDexpress融合タンパク質(新実施例5、表N1)と混合して、タンパク質の最終濃度を5μMとした。混合物を25℃、400RPMで2時間インキュベートした。細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(8g/L NaCl、0.2g/L KCl、1.44g/L Na
2HPO
4・2H
2O、0.24g/L KH
2PO
4 pH6.8)で2回洗浄し、最終体積200μlのPBSに再懸濁した。ハロバクテリウム・サリナルム(Halobacterium salinarium)について、dsREDexpress融合タンパク質の摂取をフローサイトメトリーにより監視した(実施例9)。積み荷が首尾よく輸送された細胞の割合を、dsREDexpress処理細胞に任意のゲートを、集団の0.1%が偽陽性赤色事象として記録されるよう(1:1000細胞)ドローすることによって求めた。この処理の結果を表9に示す。pVEC、pep1およびtp10は、dsREDexpress25の輸送を、dsREDexpress単独の場合よりそれぞれ4倍、3倍および5倍上昇させた。このことは、これらのCPPが真菌類への他の積み荷(例えば、Cas9/sgRNAリボヌクレオタンパク質複合体)を輸送する良好な候補になるであろうことを示唆している。
【0320】
【表14】
【0321】
実施例11
7つの腸内細菌への7つのCPPs−dsREDおよび2つのCPPs−tagRFPの輸送
この実施例では、2つの積み荷タンパク質、dsREDおよびtagRFPの7つの腸内細菌(これらの宿主生理機能に対する有益な効果が明らかになっている)へのCPPの輸送効率を試験した。
【0322】
嫌気性テント(80%N
2、15%CO
2、および5%H
2)内で、細菌細胞をロータリーシェーカー(150rpm)により適切な培地(表10を参照)で、37℃で一晩増殖させた。分析のために、1×10
8個の細菌細胞を、最終濃度が5uMのCPPs−dsREDおよびCPPs−tagRFPタンパク質を、96ウエルプレートで混合し、37℃で2時間増殖させた。細胞におけるdsREDおよびRFP蛍光シグナルを測定するために、遠心分離(3,500×g、4℃、20分)により細菌細胞を得、リン酸緩衝生理食塩水(1ウエル当たり100μ)で2回洗浄した。バンド幅10nmの554nmの励起および586nmの放出フィルターを備えたTecan Spark 10Mプレートリーダ(Tecan,Maennedorf,Switzerland)で蛍光強度を定量した。生の蛍光値を未処理の細胞の値(バックグラウンド)から差し引いた。蛍光強度値7000を細胞内のCPPの輸送の最小カットオフとした。
【0323】
【表15】
【0324】
表11に示すように、これらの結果は、MPG、pVEC、TLM、ゼブラおよびpep1を含む5つのCPPが、フィルミクテス(Firmicutes)門およびバクテロイデス(Bacteroidetes)門に属する嫌気性腸内細菌へ効率的に輸送し、それにより、CPPがこれらの細胞膜を横断することができることを示すことを示している。
【0325】
【表16】