特表2017-533255(P2017-533255A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-533255CD94/NKG2Aおよび/またはCD94/NKG2B抗体、ワクチンの組み合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-533255(P2017-533255A)
(43)【公表日】2017年11月9日
(54)【発明の名称】CD94/NKG2Aおよび/またはCD94/NKG2B抗体、ワクチンの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20171013BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20171013BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20171013BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20171013BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20171013BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20171013BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20171013BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20171013BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20171013BHJP
【FI】
   A61K39/395 T
   A61K39/00 H
   A61K39/395 D
   A61K39/395 N
   A61K39/395 E
   A61P35/00
   A61P37/04
   A61P17/00
   A61P11/00
   A61K35/17 Z
   A61P43/00 121
   A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2017-531443(P2017-531443)
(86)(22)【出願日】2015年8月28日
(85)【翻訳文提出日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】NL2015050600
(87)【国際公開番号】WO2016032334
(87)【国際公開日】20160303
(31)【優先権主張番号】14182708.9
(32)【優先日】2014年8月28日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517065965
【氏名又は名称】アカデミス・ジーケンハイス・ライデン・ハー・オー・デー・エヌ・エルユーエムセー
【氏名又は名称原語表記】ACADEMISCH ZIEKENHUIS LEIDEN H.O.D.N. LUMC
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】シュールト・ファン・デル・ブルフ
(72)【発明者】
【氏名】トルバルト・ファン・ハール
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZA591
4C084ZA891
4C084ZB021
4C084ZB091
4C084ZB261
4C084ZC751
4C085AA03
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB36
4C085CC01
4C085CC23
4C085EE03
4C087AA01
4C087BB37
4C087CA04
4C087MA02
4C087NA05
4C087ZA59
4C087ZA89
4C087ZB02
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZC75
(57)【要約】
CD94/NKG2Aおよび/またはCD94/NKG2B抗体、ワクチンの組み合わせ。本開示は、特に、ワクチンとCD94/NKG2Aおよび/またはCD94/NKG2B結合抗体との組み合わせであって、それを必要とする被験者の治療において使用するためのものであり、前記ワクチンは、抗原に対する免疫応答を誘発するための免疫原または前記免疫原をコードする核酸分子を含む、組み合わせを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワクチンとCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分との組み合わせであって、それを必要とする被験者の治療において使用するためのものであり、前記ワクチンは、抗原に対する免疫応答を誘発するための免疫原または前記免疫原をコードする核酸分子を含む、組み合わせ。
【請求項2】
前記免疫原は、腫瘍抗原である、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項3】
前記免疫原は、腫瘍特異的抗原である、請求項1または2に記載の組み合わせ。
【請求項4】
前記CD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分は、CD94/NKG2Aおよび/またはCD94/NKG2Bを発現するT細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞に結合すると、CD94/NKG2Aおよび/またはCD94/NKG2Bのシグナル伝達を減少させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項5】
前記CD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分は、CD94/NKG2Aおよび/またはCD94/NKG2Bを発現するT細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞へのCD94/NKG2Aおよび/またはCD94/NKG2BリガンドHLA−Eの結合を遮断する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項6】
前記CD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分は、ヒトもしくはヒト化抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分、好ましくはサブクラスIgG4の抗体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項7】
CLTA4結合抗体、PD−1結合抗体;PD−L1結合抗体;LAG−3結合抗体;VISTA抗体およびTIM3結合抗体から選択されるか、または前記抗体のCTLA4結合、PD−L1結合、LAG−3結合、VISTA結合もしくはTIM3結合部分から選択される少なくとも1つの抗体をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項8】
前記被験者は、癌患者である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項9】
前記被験者の癌は、癌、好ましくは卵巣癌、頭頸部癌、黒色腫、子宮頸癌、膵臓癌、腎細胞癌、肺癌、前立腺癌、ウイルス誘発癌および結腸直腸癌から選択される固形癌である、請求項8に記載の組み合わせ。
【請求項10】
前記被験者には、免疫細胞移植片がさらに提供される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項11】
ワクチンとCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分とを含む医薬組成物であって、前記ワクチンは、抗原に対する免疫応答を誘発するための免疫原または前記免疫原をコードする核酸分子を含む、医薬組成物。
【請求項12】
前記免疫原は、腫瘍抗原である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
ワクチン組成物とCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分を含む組成物とを含むパーツのキットであって、前記ワクチンは、抗原に対する免疫応答を誘発するための免疫原または前記免疫原をコードする核酸分子を含む、パーツのキット。
【請求項14】
移植用の細胞産物を含有する免疫細胞の製造における、CD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分と免疫原との使用。
【請求項15】
被験者における免疫応答を刺激するための方法であって、ワクチンとCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分とを、それを必要とする前記被験者に投与する工程を含み、前記ワクチンは、抗原に対する免疫応答を誘発するための免疫原または前記免疫原をコードする核酸分子を含み、前記被験者には、好ましくは免疫細胞移植片がさらに提供される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法の分野に関する。本発明は、特に、CD94/NKG2A/Bアンタゴニスト、好ましくは免疫応答を刺激するためにワクチンまたは免疫原と組み合わせたアンタゴニストCD94/NKG2A/B抗体に関する。本発明は、特に、ただし排他的にではなく、癌の治療において有用である。
【背景技術】
【0002】
腫瘍浸潤性T細胞上のCTLA−4およびPD−1に対する免疫チェックポイント遮断抗体は、末期癌患者において有意な臨床応答を生じさせてきた。CTLA−4は、負のフィードバックループの証拠として、いくつかのT細胞サブセット上および活性化細胞上で発現する。抗CTLA−4抗体は、画期的に新しい治療薬の一例を表す。抗PD1および抗PD−L1抗体を用いた臨床試験も臨床結果を証明している。
【0003】
本発明において、本発明者らは、活性化CD8 T細胞(CTL)およびナチュラルキラー(NK)細胞が阻害性受容体CD94/NKG2Aを発現することを観察した。そのリガンドは、保存されたHLA−E分子である。CD94/NKG2Aの固有の特徴は、いずれも直接的腫瘍管理に関係しているCTLおよびNK細胞上の負の調節因子であることである。本発明者らはさらに、腫瘍によるHLA−E発現が、他の場合には良好な生存率を示すCD8細胞浸潤性腫瘍における不良な生存率と相関することも観察した。
【0004】
実験の項において、本発明者らは、特に、CD94/NKG2Aの遮断が腫瘍に対する腫瘍内CTLおよびNK細胞による良好な応答を可能にする証拠を提供する。高いNKG2A陽性CTL数を有するVIN患者は、より良好な無増悪生存率を有する。頭頸部癌、卵巣癌および子宮頸癌の腫瘍浸潤性CTLの50%までがNKG2Aを発現する。これらのNKG2A陽性CTLのおよそ30%は、他の共阻害性受容体TIM3、CTLA−4またはPD−1を発現しない。腫瘍内のNKG2A陽性CTLの頻度は、治療的ワクチン接種後に増加する。腫瘍細胞上のNKG2Aリガンドの発現レベルは、治療的ワクチン接種後に増加する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ワクチンとCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分との組み合わせであって、それを必要とする被験者の治療において使用するためのものであり、前記ワクチンは、抗原に対する免疫応答を誘発するための免疫原または前記免疫原をコードする核酸分子を含む、組み合わせを提供する。
【0006】
本発明はさらに、ワクチンとCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分とを含む医薬組成物であって、前記ワクチンは、抗原に対する免疫応答を誘発するための免疫原または前記免疫原をコードする核酸分子を含む、医薬組成物を提供する。
【0007】
本発明はさらに、ワクチン組成物とCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分を含む組成物とを含むパーツのキットであって、前記ワクチンは、抗原に対する免疫応答を誘発するための免疫原または前記免疫原をコードする核酸分子を含む、パーツのキットを提供する。
【0008】
さらに、移植用の細胞産物を含有する免疫細胞の製造における、CD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分と免疫原との使用も提供される。
【0009】
さらに、細胞産物を含有する免疫細胞を調製するための方法であって、免疫原とCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分との存在下でT細胞および/またはNK細胞を含む細胞集団を培養する工程を含み、前記培養する工程後にT細胞および/またはNK細胞を収集する工程をさらに含む、方法も提供される。
【0010】
本発明はさらに、被験者における免疫応答を刺激するための方法であって、ワクチンとCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分とを、それを必要とする被験者に投与する工程を含み、前記ワクチンは、抗原に対する免疫応答を誘発するための免疫原または前記免疫原をコードする核酸分子を含む、方法を提供する。
【0011】
本発明は、ワクチンとCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分との組み合わせであって、それを必要とする被験者の治療において使用するためのものであり、前記ワクチンは、抗腫瘍リンパ球;抗原に対する免疫応答を誘発するための免疫原;前記免疫原をコードする核酸分子またはそれらの組み合わせを含む、組み合わせを提供する。
【0012】
本発明はさらに、癌を有する個人を治療するための方法であって、ワクチンとCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分とを、それを必要とする個人に投与する工程を含み、そのワクチンは、抗腫瘍リンパ球;抗原に対する免疫応答を誘発するための免疫原;前記免疫原をコードする核酸分子またはそれらの組み合わせを含む、方法を提供する。
【0013】
ワクチンは、タンパク質もしくはそのタンパク質をコードする核酸分子、炭水化物、脂質またはそれらの組み合わせなどの生体分子を含み、その生体分子および/またはその生体分子を含有する細胞に対する免疫応答を改善する調製物である。ワクチンは、必然的にではないが典型的には特定疾患に対する免疫を改善する。ワクチンは、典型的には、疾患を引き起こす病原菌、タンパク質、細胞またはそれらの部分に類似している、免疫原またはその免疫原をコードする核酸分子を含有する。免疫原は、身体の免疫機構が疾患を誘発する物質を異物として認識し、それを破壊してその記録を維持するように刺激するため、免疫系は、身体が後に遭遇するあらゆる同一疾患を誘発する物質をより容易に認識して破壊または不活性化することができる。
【0014】
予防用ワクチンおよび治療用ワクチンがある。用語「ワクチン」は、典型的には被験者に投与される、すなわち、アジュバント(存在する場合)、担体タンパク質(存在する場合)、安定剤または他の賦形剤を含む生成物を意味する。本発明において、用語「ワクチン」には上記の生成物が含まれるが、さらにまた本質的に、免疫原および/またはその免疫原をコードする核酸分子を含有する調製物も含まれる。本明細書で使用する用語「ワクチン」は、市販で入手できるワクチンに限定されない。本明細書で使用する用語「ワクチン」は、その調製物が疾患を予防する、または疾患を治癒させることに有効であることを意味するものではない。用語「ワクチン」には、免疫原および/またはその免疫原をコードする核酸分子を含有する全ての調製物が含まれる。
【0015】
抗原は、免疫系の構成成分(抗体、リンパ球)によって特異的に結合され得るあらゆる物質である。全ての抗原は特定のリンパ球または抗体によって認識されるという事実にもかかわらず、あらゆる抗原が免疫応答を惹起するとは限らない。免疫応答を誘導できるそれらの抗原は免疫原性であると言われ、本発明では免疫原と呼ばれる。
【0016】
免疫原は、免疫寛容ではなくむしろ体液媒介性および/または細胞媒介性免疫応答を誘導できるあらゆる抗原である。この能力は免疫原性と呼ばれる。免疫原は、投与されると被験者が免疫原に対する体液性または細胞性応答を発現する場合に、被験者における抗原に対する免疫応答を誘発すると言われる。
【0017】
用語「免疫原」は、本明細書では、免疫応答を誘導できる高分子担体および1つ以上のエピトープ(決定因子)から構成される完全抗原であると規定される。
【0018】
高分子担体および1つ以上のエピトープは、タンパク質などの単一分子中に含有されていてよく、細胞などの粒子、またはそれらの一部もしくは断片中に存在していてよい。エピトープは、さらに別個の担体に提供されてもよい。非限定的な例は、ハプテンである。ハプテンは、抗体によって結合され得るが免疫応答を誘発することはできない低分子量化合物である。その結果として、ハプテン自体は非免疫原性であり、それらはより大きい担体である免疫原性分子と結合するまで免疫応答を惹起することはできない。ハプテン−担体複合体は、遊離ハプテンとは異なり、免疫原として機能することができ、免疫応答を誘導することができる。
【0019】
本発明は、本明細書に記載した手段、方法および使用を提供し、このとき、用語「ワクチン」は、語句「免疫原または免疫原をコードする核酸分子」と置換される。
【0020】
NKG2A、C、DおよびEと指名されたNKG2ファミリーの遺伝子は、最初はNK細胞およびT細胞特異的転写産物が豊富なサブトラクティブライブラリーをスクリーニングすることによって同定した。NKG2A遺伝子は、2つのアイソフォームNKG2AおよびNKG2Bをコードし、後者のNKG2Bにはステム領域が欠如している。cDNA配列の染色体マッピングおよび解析は、CD94と同様に、NKG2遺伝子がNK複合体内で12番染色体上に位置すること、およびこれらの遺伝子によってコードされたタンパク質がC型レクチンファミリーのメンバーであることを証明した。NKG2Aは、CD94のパートナーである。NKG2AおよびCD94は、NK細胞および他の免疫細胞の細胞表面上で発現するヘテロ二量体を形成する。NKG2BもCD94とのヘテロ二量体を形成する。CD94架橋結合後の阻害シグナルの伝播は、NK細胞クローンによるNKG2Aの発現と相関する。CD94/NKG2Aヘテロ二量体およびCD94/NKG2Bヘテロ二量体は、おそらくNKG2A/Bの細胞質ドメインによって媒介されるNKならびにその他のCD94/NKG2Aおよび/またはCD94/NKG2Bを発現する免疫細胞へ阻害シグナルを送達することができる(A.G.Brooks et al.(1997)J.Exp.Med.Volume 185,pp:795−800)。用語「CD94/NKG2A」は、ヒトにおけるヘテロ二量体および他の哺乳動物種におけるオルトログのヘテロ二量体を意味する。特異的哺乳動物オルトログは、様々な特定の名称下で公知の可能性がある。本明細書で使用するこの用語は、そのようなオルトログを含む。ヒトCD94/NKG2Aヘテロ二量体およびそのヒトCD94/NKG2Aヘテロ二量体に結合する抗体が好ましい。ヒトでは、CD94は、キラー細胞レクチン様受容体サブファミリーDメンバー1としても公知である(KLRD1;UniGene 1777996)。NKG2A/Bもキラー細胞レクチン様受容体サブファミリーCメンバー1として公知である(KLRC1;UniGene 903323)。用語「CD94/NKG2B」は、ヒトにおけるヘテロ二量体および他の哺乳動物種におけるオルトログのヘテロ二量体を意味する。特異的哺乳動物オルトログは、様々な特定の名称下で公知の可能性がある。本明細書で使用するこの用語は、そのようなオルトログを含む。ヒトCD94/NKG2Bヘテロ二量体およびヒトCD94/NKG2Bヘテロ二量体に結合する抗体が好ましい。
【0021】
NKG2A/Bと言及する場合、その言及にはNKG2A、NKG2Bまたはその両方が含まれる。
【0022】
CD94/NKG2A/B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分は、CD94/NKG2A/Bヘテロ二量体受容体の細胞外部分に結合する。抗体は、典型的にはその抗体の抗原結合部位を介して標的に結合する。抗原結合部位は、典型的には抗体の可変ドメインによって形成され、抗体の可変ドメイン内に存在する。可変ドメインは、抗原結合部位を含有する。抗原に結合する可変ドメインは、その抗原に結合する抗原結合部位を含む可変ドメインである。
【0023】
1つの実施形態では、本発明の抗体可変ドメインは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む。抗原結合部位は、結合VH/VL可変ドメイン内に存在してよいか、またはVH領域内のみもしくはVL領域内のみに存在してよい。抗原結合部位が可変ドメインの2つの領域のうちの1つ内にのみ存在する場合、対応する可変領域は結合可変領域のフォールディングおよび/または安定性に寄与できるが、抗原自体の結合には有意に寄与しない。
【0024】
本明細書で使用する「抗原結合」は、抗体のその抗原への典型的な結合能力を意味する。CD94/NKG2Aおよび/またはCD94/NKG2Bに結合する抗体はCD94/NKG2A/Bに結合するが、他の点では同一条件下で同一種のCD94/NKG2C受容体またはCD94/NKG2D受容体に少なくとも100分の1で結合する。CD94/NKG2A上のCD94/NKG2A抗体のエピトープは、典型的にはヘテロ二量体のNKG2A部分上に存在する。そのエピトープは、部分的にはCD94上に存在する場合もある。CD94/NKG2B上のCD94/NKG2B抗体のエピトープは、典型的にはヘテロ二量体のNKG2B結合部分上に存在する。そのエピトープも部分的にCD94上に存在する場合がある。NKG2Aに結合する抗体はさらにNKG2Bに結合することができ、その逆もあり得る。CD94/NKG2A/Bが細胞表面受容体であることを考えると、この結合は、典型的にはこれらの受容体を発現する細胞上で評価される。本発明の抗体は、CD94/NKG2Aおよび/またはCD94/NKG2Bヘテロ二量体の細胞外部分に結合する。抗体の抗原への結合は、様々な方法で評価することができる。抗体を抗原(好ましくは抗原を発現する細胞)とともにインキュベートする1つの方法は、未結合抗体を(好ましくは洗浄工程によって)除去する工程および結合抗体に結合する標識抗体によって結合抗体を検出する工程である。
【0025】
抗体による抗原結合は、典型的には、これら2つの構造が抗体の無作為の非特異的接着とは対照的に、正確に(錠と鍵とに類似する相互作用で)結合することを可能にする抗体の相補領域と、抗原および可変ドメインの両方の特異的三次元構造とを通して媒介される。抗体は典型的には抗原のエピトープを認識するため、およびそのようなエピトープは他の化合物中にも同様に存在する場合があるため、CD94/NKG2Aに結合する本発明による抗体は、そのような他の化合物が同一エピトープを含有する場合、他のタンパク質を同様に認識する可能性がある。そこで、用語「結合」は、抗体の同一エピトープを含有する別の1種以上のタンパク質への結合を排除しない。本発明に規定したCD94/NKG2A抗体は、典型的には出生後の、好ましくは成人における細胞膜上の他のタンパク質に結合しない。本発明による抗体は、典型的には、下記でより詳細に説明するように、少なくとも1×10e−6Mの結合親和性でCD94/NKG2Aに結合することができる。
【0026】
本明細書で使用する用語「結合を妨害する」は、抗体またはそのNKG2A/B結合部分がCD94/NKG2A/B上のエピトープに向けられること、および抗体またはそのNKG2A/B結合部分がCD94/NKG2A/Bに結合するためのリガンドと競合することを意味する。HLA−Eは、ヒトにおけるCD94/NKG2A/Bヘテロ二量体に対する認識されたリガンドである。マウスオルトログは、一般に名称Qa1の下で公知である。CD94/NKG2A/B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分は、好ましくはHLA−EのCD94/NKG2A/B受容体への結合を妨害する。抗体またはその結合部分は、リガンド結合を減少させ、これが既にCD94/NKG2A/Bに結合している場合、リガンドに置換することができるか、または例えば立体障害を通して、リガンドがCD94/NKG2A/Bに結合できることを少なくとも部分的に防止し得る。
【0027】
本明細書で使用する用語「抗体」は、好ましくは免疫グロブリンクラスのタンパク質に属する、抗原上のエピトープに結合する1つ以上の可変ドメインを含有するタンパク性分子を意味し、このとき、そのようなドメインは抗体の可変ドメインとの配列相同性に由来するか、または抗体の可変ドメインとの配列相同性を共有する。治療使用のための抗体は、好ましくは可能な限り治療対象の被験者の自然抗体(例えば、ヒト被験者のためのヒト抗体)に近い。抗体結合は、特異性および親和性によって表現することができる。特異性は、いずれの抗原またはそのエピトープが結合ドメインによって特異的に結合されるかを決定する。親和性は、特定抗原またはエピトープへの結合の強度についての尺度である。結合または特異的結合は、少なくとも1×10e−6M、より好ましくは1×10e−7M、より好ましくは1×10e−9M超の親和性(KD)を備える結合であると規定される。典型的には、治療適用のための抗体は、1×10e−10M以上までの親和性を有する。CD94/NKG2A/B結合抗体は、単一特異性抗体または二重特異性抗体であってよい。二重特異性抗体では、VH/VL組み合わせの少なくとも1つはCD94/NKG2A/Bに結合する。本発明の二重特異性抗体のような抗体は、典型的には自然抗体の定常ドメインを含んでいる。本発明の抗体は、典型的には、好ましくはヒトIgGサブクラスの全長抗体である。本発明のCD94/NKG2A/B結合抗体は、好ましくはヒトIgG1サブクラスの抗体である。本発明のそのような抗体は、優れたADCCおよび/またはCDCC特性を有する。そのような抗体は、CD94/NKG2A/B発現細胞を殺滅するために使用することができ、それにより系からこれらの細胞の作用を抑制する免疫応答を除去することができる。1つの好ましい実施形態では、CD94/NKG2A/B結合抗体は、ADCCまたはCDCCを提示しないIgG2などのヒトIgG4サブクラスまたはさらなるIgGサブクラスの抗体である。さらに、減少したADCCおよび/またはCDCCを備えるIgG1の誘導体も利用できる。そのような抗体は、破壊するための結合細胞を効率的には標識しない。そのような抗体は、典型的には、本発明において、結合するとCD94/NKG2A/Bのシグナル伝達を少なくとも減少させるため、好ましい。
【0028】
1つの好ましい実施形態では、CD94/NKG2A/B抗体は、CD94/NKG2A/Bを発現するナチュラルキラー細胞上のCD94/NKG2A/Bのシグナル伝達を減少させる。1つの好ましい実施形態では、CD94/NKG2A/B抗体は、CD94/NKG2A/Bを発現するナチュラルキラー細胞上のCD94/NKG2A/Bのリガンド誘導性シグナル伝達を減少させる。ヒトに関連して、好ましいリガンドはHLA−Eであり、好ましくは、これに関連して、HLA−E発現細胞である。リガンド誘導性受容体シグナル伝達は、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30、40、50 60または少なくとも70%減少させられ、特に好ましい実施形態では、リガンド誘導性受容体シグナル伝達は、80%、より好ましくは90%減少させられる。この減少は、好ましくは本明細書で言及したようなCD94/NKG2A/B結合抗体の存在下でリガンド誘導性受容体シグナル伝達を決定することによって決定される。シグナル伝達は、好ましくは他の点では同一条件下で、抗体の非存在下のシグナル伝達と比較される。これらの条件は、少なくともHLA−Eリガンドの存在、または適用できる場合にはそれのオルトログを含んでいる。存在するリガンドの量は、好ましくはCD94/NKG2A/B陽性細胞系内で最大シグナル伝達の半分を誘導する量である。シグナル伝達は、好ましくは細胞活性化を決定することによって決定される。細胞活性化は、IFN−γを含むサイトカイン類の増殖、産生、またはCD69もしくはCD137を含む表面表示マーカーを用いて測定できる。1つの好ましい実施形態では、CD94/NKG2A/B抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/またはCD94/NKG2B結合部分は、CD94/NKG2A/Bを発現するナチュラルキラー細胞上のCD94/NKG2A/Bのシグナル伝達を阻害する。シグナル伝達の阻害は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%までのシグナル伝達の減少を意味する。シグナル伝達の減少は、好ましくは抗体の活性についての尺度としてNK細胞上で測定される。NK細胞上のシグナル伝達を減少させる抗体は、さらに他のCD94/NKG2A/Bを発現する免疫細胞上のシグナル伝達も減少させる。
【0029】
1つの好ましい実施形態では、CD94/NKG2A/B抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/またはCD94/NKG2B結合部分は、CD94/NKG2A/Bを発現するT細胞上のCD94/NKG2A/Bのシグナル伝達を減少させる。1つの好ましい実施形態では、CD94/NKG2A/B抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/またはCD94/NKG2B結合部分は、CD94/NKG2A/Bを発現するT細胞上のCD94/NKG2A/Bのリガンド誘導性シグナル伝達を減少させる。ヒトに関連して、好ましいリガンドは、好ましくは、HLA−E発現細胞に関連してHLA−Eである。リガンド誘導性受容体シグナル伝達は、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30、40、50、60%、または少なくとも70%減少させられ、特に好ましい実施形態では、リガンド誘導性受容体シグナル伝達は、80%、より好ましくは90%減少させられる。この減少は、好ましくは本明細書で言及したようなCD94/NKG2A/B結合抗体の存在下でリガンド誘導性受容体シグナル伝達を決定することによって決定される。シグナル伝達は、好ましくは他の点では同一条件下で、抗体の非存在下のシグナル伝達と比較される。これらの条件は、少なくともHLA−Eリガンドの存在、または適用できる場合にはそれのオルトログを含んでいる。存在するリガンドの量は、好ましくはCD94/NKG2A/B陽性細胞系内で最大シグナル伝達の半分を誘導する量である。シグナル伝達は、好ましくは細胞活性化を決定することによって決定される。細胞活性化は、IFN−γを含むサイトカイン類の増殖、産生、またはCD69もしくはCD137を含む表面表示マーカーを用いて測定できる。1つの好ましい実施形態では、CD94/NKG2A/B抗体は、CD94/NKG2A/Bを発現するT細胞上のCD94/NKG2A/Bのシグナル伝達を阻害する。シグナル伝達の阻害は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%のシグナル伝達の減少を意味する。シグナル伝達の減少は、好ましくは抗体の活性についての尺度としてT細胞上で測定される。T細胞上のシグナル伝達を減少させる抗体は、さらにCD94/NKG2A/Bを発現する他の免疫細胞上のシグナル伝達も減少させる。
【0030】
シグナル伝達を減少および/または阻害するCD94/NKG2A/B抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分は、CD94/NKG2Aヘテロ二量体に結合することについてリガンドと競合できるか、または競合できない。1つの好ましい実施形態では、CD94/NKG2A/B抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分は、CD94/NKG2A/Bヘテロ二量体に結合することについてリガンドと有意には競合しない。結合の競合は、リガンドの存在下または非存在下で抗体の結合試験によって決定することができる。
【0031】
1つの好ましい実施形態では、CD94/NKG2A抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分は、欧州特許第2628753号明細書(Novo Nordisk AS)に記載されたようにCD94/NKG2Aへの結合について抗体Z199と競合する。1つの好ましい実施形態では、抗体は、上述のZ199もしくはそのヒト化バージョンまたはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分である。さらなる好ましい実施形態では、CD94/NKG2A抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分は、CD94/NKG2Aヘテロ二量体に結合することについてリガンドと競合しない。1つの好ましい実施形態では、抗体またはそれの結合部分は、欧州特許第2628753号明細書(Novo Nordisk AS)に記載されたように、CD94/NKG2Aへの結合について抗体Z270と競合する。1つの実施形態では、抗体は、上述のZ270またはそのヒト化バージョンである。
【0032】
本発明の手段、方法および使用においては、CD94/NKG2Aに結合する抗体またはそのような抗体のCD94/NKG2A結合部分が好ましい。CCD94/NKG2Aに、好ましくは他の点では同一条件下でCD94/NKG2Aへ結合する抗体またはそのCD94/NKG2A結合部分は、CD94/NKG2Bへ少なくとも100分の1で結合する。
【0033】
結合分子は、抗体であってよい。本発明では、抗体は全長抗体またはその部分である。好適な部分は、必ずしも完全にではないが本質的に抗体の抗原結合能力を維持している。好適な抗体部分は、一本鎖Fv断片、モノボディ、VHHおよびFab断片である。そのような特異的結合分子に共通する特徴は、重鎖可変ドメインの存在と、多数についてはさらに対応する軽鎖可変ドメインの存在とである。抗体の一部分は、例えばそれに限定されないが、血流からそのような部分のさもなければ迅速な除去を減少させるための配列などのさらなるアミノ酸配列を含有する場合がある。一本鎖Fv断片のための好適な担体は、特にヒト血清アルブミンである。本発明の抗体は、好ましくは「全長」抗体である。本発明による用語「全長」は、本質的に完全であるが必ずしも無傷抗体の全機能は有していない抗体を含むと規定される。疑義を回避するため、全長抗体は、2本の重鎖および2本の軽鎖を含有している。各鎖は、CH1、CH2、CH3、VHおよびCL、VLと指定されたドメインに分解できる定常(C)領域および可変(V)領域を含有している。抗体は抗原にFab部分に含有される可変ドメインを介して結合し、結合後には、定常ドメインを通して、大部分はFc部分を通して免疫系の分子および細胞と相互作用することができる。用語「可変ドメイン」、「VH/VL対」、「VH/VL」は、本明細書では互換的に使用される。本発明による全長抗体は、所望の特性を提供する突然変異が存在する可能性がある抗体を含んでいる。そのような突然変異は、領域のいずれかの実質的な部分の欠失であってはならない。しかし、結果として生じる抗体の結合特性を本質的に変化させることなく1個または数個のアミノ酸残基が欠失している抗体は、用語「全長抗体」の範囲内に含まれる。例えば、IgG抗体は、定常領域内に1〜20個のアミノ酸残基の挿入、欠失またはそれらの組み合わせを有することができる。例えば、抗体のADCC活性は、抗体自体が低ADCC活性を有する場合に、その抗体の定常領域をわずかに修飾することによって改善することができる(Junttila,T.T.,K.Parsons,et al.(2010).“Superior In vivo Efficacy of A fucosylated Trastuzumab in the Treatment of HER2−Amplified Breast Cancer.”Cancer Research 70(11):4481−4489)。一方、ADCC活性は、その抗体の定常領域を修飾することによって減少させることができる。
【0034】
全長IgG抗体は、それらの好都合な半減期および免疫原性のために完全に自己(ヒト)分子にできるだけ接近して留まる必要があるために好ましい。ヒトにおけるあらゆる免疫原性を防止するために、本発明によるIgG抗体はヒトIgG4であることが好ましい。1つの好ましい実施形態では、IgG4は、減少したジスルフィド結合異種性および/または増加したFabドメイン熱安定性を有するように設計される(S.J Peters et al(2012).The J.of Biol.Chem.Vol.287:pp.24525−24533)。
【0035】
抗体は、様々な動物種に由来してよい。一部の抗体は、少なくとも重鎖可変領域に関してマウスのバックグラウンドを有する。そのような例えばマウス重鎖可変領域をヒト化することは一般的な方法である。これを達成できる様々な方法がある。マウス重鎖可変領域の3D構造に適合する3D構造を備えるヒト重鎖可変領域内にCDRを移植することが可能である。好ましくは、公知または疑わしいT細胞またはB細胞エピトープをマウス重鎖可変領域から除去することによって、マウス重鎖可変領域を脱免疫することができる。この除去は、典型的には、エピトープ内の1つ以上のアミノ酸を他の(典型的には保存)アミノ酸と置換し、それにより、そのエピトープの配列がもはやT細胞またはB細胞エピトープではなくなるようにすることによる。
【0036】
そのような脱免疫マウス重鎖可変領域は、最初のマウス重鎖可変領域よりもヒトでは低免疫原性である。好ましくは、本発明の可変領域またはドメインは、例えば化粧張り(veneered)などのようにさらにヒト化される。化粧張り技術を使用することによって、免疫系が容易に遭遇する外部残基は、弱免疫原性化粧張り表面または実質的に非免疫原性化粧張り表面のいずれかを含むハイブリッド分子を提供するためにヒト残基と選択的に置換される。本発明において使用する動物は、好ましくは哺乳動物、より好ましくは霊長類、最も好ましくはヒトである。
【0037】
ワクチン中の免疫原の濃度は、好ましくは1ng/mL〜10mg/mL、好ましくは10ng/mL〜1mg/mL、より好ましくは100ng/mL〜100mcg/mL、例えば1mcg/mL〜100mcg/mLである。この濃度は、個人に投与された場合にタンパク質がその治療効果を発揮するために十分な濃度であることを保証するために、好ましくは少なくとも1ng/mLである。しかし、この濃度は、前記タンパク質の被験者への投与に関連する可能性のある副作用の発生を防止または減少させるために、好ましくは10mg/mLを超えてはならない。
【0038】
ワクチン中の免疫原をコードする核酸は、RNA、DNAまたはそれらのアナログであってよい。核酸分子は、細胞へ核酸分子を効率的に送達するために、ウイルスタンパク質、典型的には例えばウイルスカプシドと関連している可能性がある。
【0039】
ワクチンとCD95/NKG2A/B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分との組み合わせは、被験者に一緒に投与される1つの配合剤中に存在してよい。1つの実施形態では、このため本発明は、ワクチンとCD94/NKG2A/B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分とを含む医薬組成物であって、前記ワクチンは、抗原に対する免疫応答を誘発するための免疫原または前記免疫原をコードする核酸分子を含む、医薬組成物をさらに提供する。この医薬組成物は、好ましくはアジュバントおよび/または1種以上の好適な賦形剤、例えば安定剤、バッファー、塩などを含んでいる。1つの好ましい実施形態では、医薬組成物中の免疫原は腫瘍抗原である。
【0040】
1つの好ましい実施形態では、ワクチンおよび抗体は、別個の容器内にあり、被験者に別個に投与される。ワクチンおよび抗体は、本質的に同時にまたは連続的に投与されてよい。抗体は、ワクチンの前にまたは本質的に同時に投与されるのが好ましい。このため、本発明はさらに、ワクチン組成物とCD94/NKG2A/B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分を含む組成物とを含むパーツのキットであって、前記ワクチンは、抗原に対する免疫応答を誘発するための免疫原または前記免疫原をコードする核酸分子を含む、パーツのキットを提供する。ワクチン組成物の場合、この組成物はさらにアジュバントを含むことができる。両方の組成物は、1種以上の好適な賦形剤、例えば安定剤、バッファー、塩などをさらに含むことができる。
【0041】
治療対象の被験者は、好ましくはヒト被験者である。
【0042】
治療は癌治療を含むのが好ましい。この実施形態では、ワクチンが癌ワクチンであるのが好ましい。この実施形態では、免疫原が腫瘍抗原、好ましくは腫瘍特異的抗原であるのが好ましい。
【0043】
腫瘍抗原は、腫瘍細胞内で生成される抗原性物質である。腫瘍を含む宿主は、抗原に対する免疫応答を誘発することができるか、または抗原は、好ましくは本発明の方法によって宿主のワクチン接種後に免疫原性である可能性がある。腫瘍抗原は、診断テストを用いて腫瘍細胞を同定する際の有用な腫瘍マーカーであり、癌療法に使用される。最初の腫瘍抗原が発見されて以降、多数の様々なさらなる抗原が同定されてきた。腫瘍細胞による腫瘍抗原の産生を生じさせることのできる数種の機序が同定されている。身体内の正常タンパク質は、典型的には、必ずではないが、自己反応性細胞毒性Tリンパ球(CTLs)および自己抗体産生性リンパ組織(BM)が一次リンパ組織内では「中枢性」で、および二次リンパ組織内では「末梢性」で淘汰されるプロセスである自己免疫寛容のために、抗原性ではない(T細胞については大部分が胸腺およびB細胞については脾臓/リンパ節)。そこで、免疫系に曝露させないあらゆるタンパク質は免疫応答を始動させる。これには、免疫系から明確に隔離される正常タンパク質、通常は極めて少量で生成されるタンパク質、通常は特定の発達段階でのみ生成されるタンパク質、またはその構造が突然変異、様々なプロセッシング、様々なフォールディングなどのために修飾されているタンパク質を含む可能性がある。
【0044】
腫瘍抗原は、この発現パターンに基づいて大まかに2つのカテゴリー:腫瘍細胞中にのみ存在し、被験者が腫瘍を有する時点で被験者のいずれかの他の細胞上に存在しない腫瘍特異的抗原(TSA)、ならびに腫瘍細胞上およびさらに一部の正常細胞上に存在する腫瘍関連抗原(TAA)に分類することができる。腫瘍特異的抗原は、腫瘍を有している時点とは異なる時点で被験者において発現する(していた)可能性がある。例えば、一部の腫瘍特異的抗原は、胚形成中に発現する。現在、様々なクラスの腫瘍抗原が認識されている。変異腫瘍遺伝子および腫瘍抑制遺伝子の産物;他の変異遺伝子過剰発現または異常発現細胞タンパク質の産物;発癌性ウイルスにより産生した腫瘍抗原;腫瘍胎児抗原;変化した細胞表面糖脂質および糖タンパク質;細胞タイプ特異的分化抗原。このリストは、限定的であることを意図していない。
【0045】
突然変異;;様々な翻訳後修飾;フォールディングなどのために異常な構造を有する腫瘍細胞内で産生したあらゆるタンパク質は、腫瘍抗原として機能する可能性がある。そのような異常なタンパク質は、関係する遺伝子の突然変異または様々な産生量もしくは様々なプロセッシングの結果として産生する可能性がある。異常なタンパク質産生をもたらす原腫瘍遺伝子および腫瘍抑制因子の突然変異は、腫瘍の原因である可能性があり、そのような異常なタンパク質は腫瘍特異的抗原と呼ばれる。腫瘍特異的抗原の例には、rasおよびp53遺伝子の異常産物が含まれる。その他の例には、組織分化抗原、変異タンパク質抗原、発癌性ウイルス抗原、癌−精巣抗原および血管または間質特異的抗原が含まれる。組織分化抗原は、所定タイプの組織に対して特異的である抗原である。変異タンパク質抗原は、正常細胞がこれらのタンパク質を含有しているはずはないため、癌細胞に対してより特異的である可能性が高い。正常細胞はそれらのMHC分子上で正常タンパク質抗原を提示し、一方で、癌細胞は変異バージョンを提示するであろう。一部のウイルスタンパク質は、癌の形成に関係しており(腫瘍形成)、一部のウイルス抗原も癌抗原である。癌−精巣抗原は精巣の胚細胞上で主として発現する抗原であるが、胎児卵巣および栄養芽細胞内でも発現する。一部の癌細胞はこれらのタンパク質を異所性で発現するため、従って、これらの抗原を提示し、これらの抗原に特異的なT細胞による攻撃を許容する。このタイプの代表的な抗原は、CTAG1BおよびMAGEA1である。
【0046】
通常は極めて少量で産生されるが、腫瘍細胞中では劇的に増加するタンパク質は、免疫応答を始動させる。そのようなタンパク質の1つの例は、メラニン産生のために必要とされる酵素チロシナーゼである。通常、チロシナーゼはごくわずかな量で産生するが、そのレベルは黒色腫細胞中では非常に高く上昇する。
【0047】
腫瘍胎児抗原は、さらなる重要なクラスの腫瘍抗原である。例は、αフェトプロテイン(AFP)および癌胎児性抗原(CEA)である。これらのタンパク質は、通常、胚発生の初期に産生するが、免疫系が十分に発達する時点までに消失する。そこで、これらの抗原に対して自己寛容は発生しない。
【0048】
異常なタンパク質は、腫瘍ウイルス、例えばEBV、HBV、HCVおよびHPVによって感染および形質転換された細胞によっても産生する。これらのウイルスにより感染した細胞は、転写されるウイルスRNAおよび/またはDNAを含有しており、結果として生じるタンパク質は免疫応答を起こす。
【0049】
タンパク質に加えて、細胞表面糖脂質および糖タンパク質のような他の物質も腫瘍細胞内では異常な構造を有する可能性があるため、そこで免疫系の標的となるであろう。
【0050】
癌を治療するためのワクチン内の腫瘍抗原およびそれらの使用は、特にMelief et al(J.of Clinical Investigation 2015;Vol 9:pp3401−3412)およびLampen and van Hall(Current opinion in Immunology 2011;Vol 23:pp293−298)において概説されている。腫瘍抗原を調製および使用するために記載された手段および方法は、本明細書に参照により含まれる。
【0051】
1つの実施形態では、ワクチンは、免疫原を含む細胞を含む。1つの好ましい実施形態では、細胞は、腫瘍抗原、好ましくは腫瘍特異的抗原を含む。1つの実施形態では、ワクチンは、腫瘍細胞を含む。ワクチン内の細胞は、生細胞であってよいが、より一般的には、細胞はワクチン内に組み込まれる前に、または被験者に投与する前に不活化される。例えばホルムアルデヒドまたは照射などであるがそれらに限定されない、細胞を不活化する様々な方法が存在する。
【0052】
腫瘍ワクチン接種に関連して、CD94/NKG2Aを発現する細胞数がワクチンの提供後に腫瘍内で増加することが見いだされた。C94/NKG2Aを発現するNK細胞の数が増加する。特に、CD94/NKG2Aを発現するT細胞の数が増加する。CD94/NKG2Aを発現するT細胞の実質的画分はCTLA4、PD−1またはTIM3を発現しないことが見いだされた。NKG2AリガンドQa−1の発現レベルは、ワクチン接種後には腫瘍内で増加することが見いだされた。1つの好ましい実施形態では、ワクチンとCD94/NKG2A結合抗体との組み合わせは、CTLA4結合抗体、PD−1結合抗体、PD−L1結合抗体;LAG−3結合抗体;VISTA抗体およびTIM3結合抗体または前記抗体の抗原結合部分から選択される少なくとも1つの抗体をさらに含む。抗体またはその抗原結合部分は、好ましくはCTLA4、PD−1、PD−L1、LAG、VISTAおよび/またはTIM3のシグナル伝達を阻害する。様々なCTLA4、PD−1、PD−L1、LAG、VISTAおよび/またはTIM3シグナル伝達阻害抗体は、当技術分野において公知である。1つの好ましい実施形態では、ワクチンとCD94/NKG2A結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分との組み合わせは、CTLA4結合抗体、PD−1結合抗体およびTIM3結合抗体または前記抗体の抗原結合部分から選択される少なくとも1つの抗体をさらに含む。本明細書に記載したそのような抗体またはそれらの抗原結合部分の1つ以上とCD94/NKG2A/B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分との組み合わせは、改善された作用を示す。理論によって拘束されることなく、これはCTLA4、PD−1またはTIM3を有意には発現しない有意な数のCD94/NKG2A/Bを発現するT細胞に起因すると考えられる。
【0053】
被験者は、病原菌で感染した被験者であってよい。被験者は、特に、癌を有する被験者であってもよい。1つの好ましい実施形態では、被験者は、癌患者である。被験者の癌は、好ましくは固形癌である。癌は、好ましくは卵巣癌、頭頸部癌、黒色腫、子宮頸癌、膵臓癌、腎細胞癌、肺癌、前立腺癌、ウイルス誘発癌または結腸直腸癌である。これには、原発腫瘍および/または上述の癌の転移または前段階過形成の両方が含まれる。ウイルス誘発癌は、特に、ヒトパピローマウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスおよびエプスタイン・バー・ウイルス(各々、HPV、HBV、HCV、EBV)によって誘発される癌を含む。
【0054】
本発明は、移植用の細胞産物を含有する免疫細胞の製造における、CD94/NKG2A/B抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分と免疫原との使用も提供する。さらに、細胞産物を含有する免疫細胞を調製するための方法であって、免疫原とCD94/NKG2A/B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分との存在下でT細胞および/またはNK細胞を含む細胞集団を培養する工程を含み、さらに前記培養する工程後にT細胞および/またはNK細胞を収集する工程をさらに含む、方法も提供される。免疫細胞は、抗原提示細胞および免疫原と一緒にT細胞および/またはNK細胞の培養中でin vitroで製造することができる。免疫原は、それ自体で提供することができる。免疫原の抗原は、抗原提示細胞によって提示されるであろう。1つの好ましい実施形態では、培養は、癌細胞または免疫原を含むその部分を含む。好適な免疫細胞製造法は、特に以下の文献およびその中の参考文献に記載されている:Exploiting the curative potential of adoptive T−cell therapy for cancer.Hinrichs CS,Rosenberg SA.Immunol Rev.2014 Jan;257(1):56−71.doi:10.1111/imr.12132、Adoptive cell transfer:a clinical path to effective cancer immunotherapy.Rosenberg SA,Restifo NP,Yang JC,Morgan RA,Dudley ME.Nat Rev Cancer.2008 Apr;8(4):299−308.doi:10.1038/nrc2355、Clinical production and therapeutic applications of alloreactive natural killer cells.McKenna DH,Kadidlo DM,Cooley S,Miller JS.Methods Mol Biol.2012;882:491−507.doi:10.1007/978−1−61779−842−9_28。
【0055】
本発明はさらに、被験者における免疫応答を刺激するための方法であって、ワクチンとCD94/NKG2A/B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分とを、それを必要とする被験者に投与する工程を含み、前記ワクチンは、抗原に対する免疫応答を誘発するための免疫原または前記免疫原をコードする核酸分子を含む、方法を提供する。ワクチンとCD94/NKG2A/B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分とは、本質的に同時に提供/投与される。
【0056】
本発明は、免疫細胞移植片とCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合抗体またはそれらのCD94/NKG2Aおよび/もしくはCD94/NKG2B結合部分との組み合わせであって、それを必要とする被験者の治療において使用するためのものである、組み合わせをさらに提供する。この組み合わせは、好ましくは、抗原に対する免疫応答を誘発するための免疫原または前記免疫原をコードする核酸分子を含むワクチンをさらに含む。免疫細胞移植片は、好ましくは本明細書で上述した細胞産物を含有する免疫細胞である。免疫細胞移植片は、現在は癌を有する被験者の治療において主に使用されている。免疫細胞移植片は、T細胞および/またはNK細胞を含む細胞集団を含むことができる。T細胞移植片を調製するための手段および方法ならびにそれを用いた被験者の治療は、特にRosenberg and Restifo(2015;Science Vol 348:pp62−68)に記載されている。この参考文献およびその中で言及された参考文献は、本明細書に参照により組み込まれる。免疫細胞移植片中の細胞は、好ましくは腫瘍応答性リンパ球、好ましくはCD8T細胞である。そのような細胞は、自然に腫瘍応答性である可能性があるか、または遺伝子組換えを通して(追加の)腫瘍応答性を備えることができる。この遺伝子組換えは、典型的には、腫瘍特異的T細胞受容体または本明細書の上記で言及したRosenberg Restifoの参考文献に記載されたいわゆるキメラ抗原受容体(CARs)の異種発現を含んでいる。免疫細胞移植片は、さらに養子細胞療法とも呼ばれる。本発明における養子細胞療法は、好ましくは、癌の治療に使用される。好ましくは黒色腫、ウイルス誘発癌、卵巣癌、肺癌、結腸直腸癌、膵臓癌、リンパ腫、白血病、胆管癌および神経芽細胞腫の治療におけるものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】VIN病変では、NKG2Aにはより良好な臨床転帰が結び付いている。A.CD3(赤色)およびNKG2A(緑色)の免疫蛍光組織切片の染色。VIN病変内のCD8 T細胞上およびNK細胞上のNKG2A発現が可視化されている。B.NKG2A T細胞の数を組織切片染色により決定し、全T細胞数(「CD3NKG2A」)で割った。この比率は、無再発生存期間についてのこのVIN患者集団の予後予測の価値を有していた。悪性腫瘍におけるT細胞上の阻害性受容体の発現には予後予測の価値があり、局所T細胞の活性化状態を示すと思われる。
図2】頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)の腫瘍浸潤性リンパ球由来のCD8 T細胞上のNKG2Aの発現。A.健常被験者の血液中のCD94およびNKG2Aを発現するCD8 T細胞の頻度はおよそ5%である。この頻度は、HNSCCサンプルのTIL中でははるかに高い。B.リンパ球サブセット上の阻害性受容体共発現のプロファイルを決定するために設計された8色染色パネルのフローサイトメトリープロット。CD94NKG2ACD8 T細胞は、他の阻害性受容体TIM−3およびPD−1細胞の発現を解析するためのさらなる入口である。阻害性受容体はリンパ球上でモザイク状で発現し、増加した数の受容体を備える数種の異なるサブセットを作り出す。C.HNSCC患者サンプルのTIL(右の円グラフ)または健常被験者のPBMC(左の円グラフ)中の、阻害性受容体を発現しないか、または単一もしくは複数の阻害性受容体を発現するCD8 T細胞の頻度を示している、図Bからのデータの提示。これらの癌におけるNKG2ACD8 T細胞のおよそ30%は、TIM−3、PD−1またはCTLA−4を共発現しない。
図3】NKG2AおよびQa−1(=マウスHLA−E)は免疫療法後に強度に増加する。A.B16F10黒色腫の治療スキーム。gp100に対するトランスジェニックTCRを備える腫瘍特異的pmel T細胞を注入し、合成長鎖ペプチドを用いる2回のワクチン接種によりin vivo活性化した。B.担癌マウスの非処置群および免疫療法処置群についての腫瘍増殖曲線および生存率曲線を示した。C.マウスから除去し、フローサイトメトリーのために分散させて染色したB16F10黒色腫細胞上のQa−1(=マウスHLA−E)の発現レベル。免疫療法は強度に増加したレベルのQa−1をもたらした。D.阻害性受容体CD94/NKG2Aの発現についての腫瘍内CD8 T細胞(CTL)およびNK細胞のフローサイトメトリー。脾臓由来リンパ球は、コントロール染色と一緒に採取した。平均すると、マウスが免疫療法により処置されていた場合に60%のCTLは阻害性受容体を発現した。腫瘍は最大サイズに増殖した後に切除した。
図4】NKG2AおよびQa−1(=マウスHLA−E)は免疫療法後に強度に増加する。A.HPV誘導性TC−1癌の治療スキーム。担癌マウスを鉱油中に合成長鎖ペプチドを含むHPVにより1回ワクチン接種した。B.担癌マウスの非処置群および免疫療法処置群についての腫瘍増殖曲線および生存率曲線を示した。C.マウスから除去し、フローサイトメトリーのために分散および染色したTC−1癌細胞上のQa−1(=マウスHLA−E)の発現レベル。免疫療法は、強度に増加したレベルのQa−1をもたらした。D.パネルCに示したデータの定量化。平均蛍光値は、平均値の標準誤差とともに描出した。E.阻害性受容体CD94/NKG2Aの発現についての腫瘍内CD8 T細胞(CTL)およびNK細胞のフローサイトメトリー。脾臓由来リンパ球は、コントロール染色と一緒に採取した。平均すると、マウスが免疫療法により処置されていた場合に75%のCTLは阻害性受容体を発現した。腫瘍は、腫瘍接種の第19日に切除した。F.パネルEに示したデータの定量化。全CTLおよび全NK細胞のNKG2A細胞の頻度。G.CTL上のNKG2Aの発現は、HPV16 E7四量体(「HPV TM」)を用いて測定された腫瘍特異性に結び付いている。H.合成長鎖ペプチドを用いた治療的ワクチン接種は、CTLおよびNK細胞を腫瘍部位へ動員する。
図5】CD8 T細胞クローン上の阻害性受容体NKG2Aの遮断はin vitro応答性を増加させる。A.実験の構成。抗原特異的CD8 T細胞クローンを抗NKG2A抗体(マウスについては20d5;ヒトについてはZ199)とともにインキュベートし、高レベルのCD94/NKG2Aリガンド(マウスについてはLPS芽細胞;ヒトについてはB−LCL細胞)を発現するペプチド負荷抗原提示細胞とともにインキュベートした。応答性は20時間のインキュベーション時間後に測定した(マウスについてはIFNy遊離;ヒトについてはCD137の提示)。B.マウスCD8 T細胞クローンはCD94およびNKG2A鎖を一様に発現するため、濃度を増加させながら遮断性NKG2A抗体の存在下でコントロールペプチドまたは同種刺激ペプチドとともにインキュベートした。T細胞応答性は、ELISAによって決定されるIFNy遊離によって測定した。強力に増加したCTL応答性は、NKG2Aを遮断することによって観察できる。C.ヒトCD8 T細胞クローンは、CD94およびNKG2Aの異種発現を提示した。この混合集団をペプチド負荷B−LCL細胞とともにインキュベートし、細胞1個ずつベースでのCTLの応答性を細胞表面でのCD137(4−1BB)の誘導によりフローサイトメトリーで測定した。NKG2Aを発現するCTLの応答性は、遮断抗体によって増強できるが、NKG2A陰性CTLの応答性は増強できない。
図6】肺腺癌における腫瘍浸潤性CD8 T細胞、β2−マイクログロブリン、HLA−A、HLA−B/CおよびHLA−Eの染色。高い(A)および低い(B)間質および上皮内CD8 T細胞浸潤の例;高いβ2−マイクログロブリン発現を備える腫瘍(C);HLA−A(D)、HLA−B/C(E)およびHLA−E(F)染色の例。オリジナル倍率×200。
図7】CD8 T細胞浸潤およびHLA発現とOSとの関連。低いまたは高い上皮内CD8+ T細胞(A);間質CD8+ T細胞(B)および全CD8+ T細胞(C)を有する患者の生存率曲線。生存率曲線は、HLA−A(D)、HLA−B/C(E)およびHLA−E(F)の機能的(すなわち、HLAおよびβ2−M両方についての陽性染色)発現について提示した。低いHLA−E発現と改善された生存率(F)との間で有意な相関(p=0.042)が観察された。
図8】伝統的HLAクラスI発現およびCD8 T細胞浸潤がOSに及ぼす作用。(A、B)HLA−A発現に関連して、全CD8 T細胞浸潤は予後予測的影響を有していなかった。(C、D)高い全CD8 T細胞浸潤を備えるHLA−B/C陽性腫瘍はより良好なOSを示したが(D)、一方で、この作用は低いHLA−B/C発現を備える腫瘍では観察されなかった(C)。(E、F)改善されたOSは、高い全CD8 T細胞浸潤が存在した場合にHLA−AおよびHLA−B/Cの両方について高発現を備える腫瘍に対して確定されたが(F)、これとは反対に、この作用は低いHLA−AおよびHLA−B/Cを発現する腫瘍では見られなかった(E)。
図9】高いCD8 T細胞浸潤を備えるHLA−E陰性腫瘍における予後予測的有益性。(A、B)低いHLA−E発現を備える腫瘍では、高い間質CD8+ T細胞浸潤には良好なOSが強度に結び付いていた(A)。興味深いことに、高い間質CD8 T細胞浸潤物の臨床的有益性は高いHLA−E発現により無効にされた(B)。(C、D)これとは逆に、高い間質CD8 T細胞流入を備える患者では、高いHLA−E発現はより不良なOSをもたらした(C)。低存在の間質CD8 T細胞を有する患者では、HLA−E発現はOSに作用を及ぼさなかった(D)。
図10】間質CD8+ T細胞の三分位数に基づく分類およびOSに及ぼす影響。単一決定因子としての間質CD8+ T細胞浸潤は臨床転帰に正の大きい影響を及ぼしたが、統計的有意性はほぼ有していなかった(図7B、ログランク検定、p=0.068)。しかし、CD8 T細胞数/mm2(腫瘍)は平均値の代わりに三分位数に基づいて二分化した場合に、原発腫瘍における間質CD8+ T細胞の(すなわち、中および高い三分位数に分類して)高い存在を備える患者について有意な作用が観察された(ログランク検定、p=0.046)。
図11】原発腫瘍におけるHLA発現およびHLA発現と全CD8+ T細胞浸潤の関連。有意な関連(マン・ホイットニーU検定、p<0.05)は、多数のCD8 T細胞と伝統的HLA−AおよびHLA−B/Cとの間には存在するが、非伝統的HLA−Eとの間には存在しない。
【発明を実施するための形態】
【0058】
実施例1
材料および方法
腫瘍浸潤性リンパ球のフローサイトメトリー
切除した原発ヒト腫瘍を細かく刻み、gentleMACSを用いて消化した。腫瘍浸潤性リンパ球を7日間にわたりIL−2を用いて増殖させ、その後にフローサイトメトリーによって免疫表現型検査を実施した。次の抗ヒト抗体:抗CD3(DAKO;クローンUCHT1)、抗CD4(BD;クローンRPA−T4)、抗CD8(BD;SK1)、抗CD56(BD;クローンB159)、抗CD94(R&D systems;クローン131412)、抗NKG2A(Beckman Coulter;クローンz199)、抗CTLA−4(BD;クローンBN13)、抗PD1(Biolegend;クローンEH12.2H7)、抗TIM3(Biolegend;クローンF38−2E2)、抗CD69(BD;クローンL78)および抗CD137(BD;4B4−1)を使用した。サンプルはFortessaフローサイトメーター(BD Biosciences)を用いて取得し、FlowJoソフトウエア(TreeStar)を用いて解析した。多変量解析のために、FlowjoソフトウエアからのマルチパラメーターフローサイトメトリーデータをSPICEソフトウエア内にインポートした(Roederer 2011 Cytometry A)。
【0059】
マウス腫瘍細胞および浸潤性リンパ球は、腫瘍が1,000mmを超えた時点(B16黒色腫)および腫瘍接種後の第19日(TC−1)に原発腫瘍から単離した。TC−1腫瘍は、消化前にフラッシュした。続いて、切除した腫瘍を切り刻み、Liberase(Roche)を用いて消化した。脾臓細胞は、赤血球溶解後に入手した。表面抗原は、Fc塊(BD;クローン2.4g2)後に蛍光標識抗体抗CD45.2(Biolegend;クローン104)、抗CD3(Biolegend;クローン145−2C11)、抗CD4(eBioscience;クローンGK1.5)、抗CD8(eBioscience;クローン53−6.7)、抗NK1.1(Biolegend;クローンPK136)、抗CD94(eBioscience;クローン18D3)、抗NKG2A/C/E(BD;クローン20D5)、抗NKG2A(Biolegend;クローン16A11)および抗Qa1(BD;クローン6A8.6F10.1A6)を使用して染色した。HPV16 E7(aa49−57)由来の免疫決定因子ペプチドを含有するMHC−I四量体は社内で製造した。サンプルはFortessaフローサイトメーター(BD Biosciences)を用いて取得し、FlowJoソフトウエア(TreeStar)を用いて解析した。
【0060】
NKG2A遮断アッセイ
ヒト免疫細胞上のNKG2A受容体を遮断するために、インフルエンザM1特異的CD8 T細胞は、M1由来ペプチドGILGFVFTFを含有するPE標識HLA−A2四量体を使用する磁気活性化細胞選別を使用して、HLA−A2陽性ドナーから単離した。これらのインフルエンザ特異的CD8系は、以前に記載されたようにin vitro増殖させた(Influenza matrix 1−specific human CD4 FOXP3 and FOXP3(−)regulatory T cells can be detected long after viral clearance.Piersma SJ,van der Hulst JM,Kwappenberg KM,Goedemans R,van der Minne CE,van der Burg SH.Eur J Immunol.2010 Nov;40(11):3064−74.doi:10.1002/eji.200940177)。NKG2A遮断実験のために、100,000個のM1特異的CD8 T細胞を、10,000個のHLA−A2 B−LCLおよび濃度を増加させながらz199抗体(Beckman Coulter)と共培養した。2時間のプレインキュベーション後、M1ペプチドを加え、一晩共インキュベートした。続いて細胞を蛍光標識抗体で染色し、フローサイトメトリーによって測定し、T細胞活性化のマーカーとしてのCD137の発現について解析した。
【0061】
マウス免疫細胞上のNKG2A受容体を遮断するために、Trh4抗原に対して特異的なCTLクローンを以前に記載されたように培養した(Peptide transporter TAP mediates between competing antigen sources generating distinct surface MHC class I peptide repertoires.Oliveira CC,Querido B,Sluijter M,Derbinski J,van der Burg SH,van Hall T.Eur J Immunol.2011 Nov;41(11):3114−24.doi:10.1002/eji.201141836)。抗体遮断のために、1ウエル当たり2,000個のCTLを1時間にわたり20D5ハイブリドーマ上清により前処理し、その後に5,000細胞/ウエルのペプチド負荷LPS芽細胞を標的細胞として加えた。24時間のインキュベーション後に培養上清を収集した。培養上清上でIFN−γ ELISAを以前に記載されたように実施した(Peptide transporter TAP mediates between competing antigen sources generating distinct surface MHC class I peptide repertoires.Oliveira CC,Querido B,Sluijter M,Derbinski J,van der Burg SH,van Hall T.Eur J Immunol.2011 Nov;41(11):3114−24.doi:10.1002/eji.201141836)。示したデータは、3つずつの試験ウエルから入手し、エラーバーはこれらの数値の標準偏差を表している。
【0062】
マウス、細胞系および試薬類
C57BL/6jicoマウスをCharles River(Lille、France)から購入し、8週齢時に使用した。Pmel−1 TCRトランスジェニックマウス(Thy1.1バックグラウンド)はgp10025−33/D特異的受容体を有しており、Leiden University Medical Centerの動物飼養施設に特定病原菌除去条件下で飼養および収容した。実験は、大学実験動物飼養実行委員会(local university committee for the care of laboratory animals(Dier Experimenten Commissie))により承認され、米国立衛生研究所の指針に従っていた。B16F10黒色腫細胞系は、最初はアメリカンタイプカルチャーコレクションから入手し、(Peptide vaccination after T−cell transfer causes massive clonal expansion,tumor eradication,and manageable cytokine stormLy LV,Sluijter M,Versluis M,Luyten GP,van Stipdonk MJ,van der Burg SH,Melief CJ,Jager MJ,van Hall T.Cancer Res.2010 Nov 1;70(21):8339−46.doi:10.1158/0008−5472.CAN−10−2288)に記載されたように組織培養中で維持した。TC−1癌細胞系はHPV16 E6およびE7癌遺伝子を含有しており、TC Wu(Johns Hopkins Medical Institute,Baltimore,USA)から入手した。
【0063】
腫瘍モデル
B16F10黒色腫モデル。致死量の3×10個のB16F10黒色腫細胞を同一遺伝子型C57BL/6マウスに皮下注射した。pmel−1 T細胞の移送および20マーの長鎖gp100ペプチドによるワクチン接種については、以前に確立されたプロトコルを適用した(Peptide vaccination after T−cell transfer causes massive clonal expansion,tumor eradication,and manageable cytokine storm.Ly LV,Sluijter M,Versluis M,Luyten GP,van Stipdonk MJ,van der Burg SH,Melief CJ,Jager MJ,van Hall T.Cancer Res.2010 Nov 1;70(21):8339−46.doi:10.1158/0008−5472.CAN−10−2288)。HPV16陽性TC−1モデル。腫瘍細胞は、同一遺伝子型C57BL/6マウスに皮下(1×10)注射した。IFA中に乳化した長鎖合成ペプチドを用いたワクチン接種は、以前に記載されたように腫瘍接種後の第8日に実施した(Vaccine−induced effector−memory CD8 T cell responses predict therapeutic efficacy against tumors.van Duikeren S,Fransen MF,Redeker A,Wieles B,Platenburg G,Krebber WJ,Ossendorp F,Melief CJ,Arens R.J Immunol.2012 Oct 1;189(7):3397−403)。1回のみのワクチン接種を適用した。腫瘍増殖は、三次元カリパスを用いる測定により週2回監視した。
【0064】
結果および考察
活性化T細胞のマーカーとしての阻害性受容体CD94/NKG2A。
当初、PD−1およびTIM−3を含む阻害性受容体のT細胞による発現は機能的に「疲弊した」T細胞を同定すると考えられた。しかし、この概念は、そのような阻害性マーカーが正常免疫調節の一部として活性化CTL上で主として発現することを証明している研究によって反証されてきた(Gros A,Robbins PF,Yao X,Li YF,Turcotte S,Tran E,Wunderlich JR,Mixon A,Farid S,Dudley ME et al:PD−1 identifies the patient−specific CD8 tumor−reactive repertoire infiltrating human tumors.In:J Clin Invest.2014.Legat A,Speiser DE,Pircher H,Zehn D,Fuertes Marraco SA:Inhibitory Receptor Expression Depends More Dominantly on Differentiation and Activation than ‘Exhaustion’ of Human CD8 T Cells.In:Front Immunol.vol.4;2013:455)。そこで活性化T細胞上の阻害性受容体は、慢性刺激の状態に限定されず、単に抗原を経験した状態を反映するものである。これらの受容体は、養子T細胞療法を成功させるために、効果的な腫瘍特異的CTLを富化させるためにさえ使用可能である(Inozume T,Hanada K−I,Wang QJ,Ahmadzadeh M,Wunderlich JR,Rosenberg SA,Yang JC:Selection of CD8PD−1 lymphocytes in fresh human melanomas enriches for tumor−reactive T cells.In:J Immunother.vol.33;2010:956−964)。NKG2AはTCR係合後にCTL上で発現するようになることが証明されており(Jabri B,Selby JM,Negulescu H,Lee L,Roberts AI,Beavis A,Lopez−Botet M,Ebert EC,Winchester RJ:TCR specificity dictates CD94/NKG2A expression by human CTL.In:Immunity.vol.17;2002:487−499)、これは、この受容体が真正CTLの正常調節フィードバック機序の一部であることを強調している。本発明者らは、43例のVIN病変内のNKG2A T細胞の浸潤をCD3に対する抗体(抗CD3、ウサギ、クローンab828;Abcam 1:100)およびNKG2Aに対する抗体(抗NKG2A、ヤギ、クローンN19;Santa Cruz 1:50)を使用する免疫蛍光法によって決定した(図1A)。これらの悪性腫瘍内では、NKG2A T細胞の相当に大きい上皮内および間質浸潤が観察された。重要なことに、全浸潤性T細胞に占める割合としてのNKG2A T細胞の列挙は、臨床転帰との関連を解明した。より高頻度のNKG2A T細胞を備えるそれらの病変については延長された無再発生存期間が観察され、これは、この阻害性受容体が活性化T細胞を反映するという考えを支持している(図1B)。TIM−3発現の決定は、極めて同等のプロファイルをもたらした(図示せず)。このため、NKG2Aは、活性化T細胞上で見いだされ、遮断抗体を用いて腫瘍応答性T細胞の全出力を遊離させるための標的とすることができる、阻害性受容体ファミリーの絶対的に重要なメンバーである。
【0065】
続いて、本発明者らは、腫瘍浸潤性リンパ球上のNKG2Aを含む阻害性受容体の分布について解析した。中咽頭癌の14〜21日齢TIL培養中での共阻害性受容体のCD8 T細胞サブセットを発現するコンビナトリアルプロファイルの頻度を決定するために、9種の抗体および生/死マーカーのフローサイトメトリーパネルを設計した。阻害性受容体NKG2Aの発現は腫瘍内CD8 T細胞の5〜60%(平均25%)の範囲に及んだが、一方で、血液頻度が5%を超えるのはまれである(図2A)。これらのリンパ球は、全てパートナーCD94を共発現して機能的受容体を生じさせた。これらの頻度は、子宮頸癌において本発明者らが以前に実施した試験において見いだされた頻度と極めて同等であった(Gooden MJM,Lampen M,Jordanova ES,Leffers N,Trimbos JB,van der Burg SH,Nijman H,van Hall T:HLA−E expression by gynecological cancers restrains tumor−infiltrating CD8 T lymphocytes.In:Proc Natl Acad Sci U S A.vol.108;2011:10656−10661)。マルチカラーフローサイトメトリー解析は、NKG2A CD8 T細胞集団内でおよそ35%が阻害性受容体CTL−A4、PD−1またはTIM3を発現しないことを明らかにし(図2BおよびC)、これは、これらの細胞がNKG2Aのチェックポイント遮断によってのみ標的とすることができ、試験された公知の他の免疫チェックポイントの標的にはできないことを示唆している。当然ながら、チェックポイント遮断薬の組み合わせは、高い可能性で代償機構に起因して、優れた臨床作用を媒介することが証明されている(Curran MA,Montalvo W,Yagita H,Allison JP:PD−1 and CTLA−4 combination blockade expands infiltrating T cells and reduces regulatory T and myeloid cells within B16 melanoma tumors.In:Proc Natl Acad Sci U S A.vol.107;2010:4275−4280.Wolchok JD,Kluger H,Callahan MK,Postow MA,Rizvi NA,Lesokhin AM,Segal NH,Ariyan CE,Gordon R−A,Reed K et al:Nivolumab plus ipilimumab in advanced melanoma.In:N Engl J Med.vol.369;2013:122−133)。このため、TILサブセットに関する本発明者らの予備データ解析は、抗腫瘍免疫の主要な負の調節因子としてNKG2A−HLA−E軸を適格と判定しており、癌クリニックのためのNKG2A遮断抗体を開発するための基礎である。
【0066】
HLA−EおよびNKG2A T細胞は、様々なマウス腫瘍モデルにおける免疫療法後に強力に増大した。
本発明者らの学部における免疫療法の臨床適用は、HPV誘発癌である子宮頸癌および中咽頭癌ならびに転移性黒色腫を対象とする。HPV誘発癌(TC−1)および黒色腫(B16F10)についてのマウスモデルは、これらの臨床イニシアチブの開発に貢献してきた。両方のマウスモデルにおいて、本発明者らは、ここで、CD94/NKG2AがT細胞免疫および療法誘導性腫瘍管理において果たす役割について研究した。確定されたB16F10黒色腫は、TCRトランスジェニックpmel T細胞の養子免疫伝達により処置し、これらのT細胞は続いてペプチドワクチン接種によってin vivo活性化した(図3A、B)。このプロトコルは、一部の動物において完全な腫瘍管理および他の動物では腫瘍増殖における明確な遅延を生じさせる。一方で、in vitro培養B16F10細胞およびin vivo増殖腫瘍由来のB16F10細胞上のQa−1(マウスHLA−Eホモログ)の発現を検出するのは困難であるが(図3C)、免疫療法により処置されていたマウス由来の腫瘍細胞は、明白に強化されたレベルのQa−1を提示した。これは、免疫活性化がPD−L1について見いだされるものに極めて類似するQa−1のアップレギュレーションを生じさせることを示した。そのような阻害性リガンドの増加は、免疫病理学のために組織を保護するための負のフィードバックの手段としてIFNgにより媒介される可能性が極めて高い。全く同一の腫瘍において、本発明者らは、浸潤性CTL上のNKG2AおよびCD94の発現について解析した。未処置コントロール腫瘍は、ヒトの癌において見いだされる範囲内のパーセンテージである10〜20%のNKG2A CD8 T細胞を含有していた(図3D)。しかし、免疫療法は、この頻度を65%まで強度に増加させた。NKG2A NK細胞の頻度は、免疫療法によっては変化しなかったが、既に50%を超えていた。注目すべきことに、これらの染色は、NKG2ファミリーの他のファミリーメンバーも検出する周知の「20d5」抗体を用いて実施したが、より多くのNKG2A特異性抗体16A11を用いて確証した。
【0067】
極めて同等のデータが、免疫療法の形態として合成長鎖ペプチドを用いたワクチン接種が適用されるHPV誘導性TC1腫瘍モデルにおいて得られた(図4)。TC1腫瘍細胞の表面上のQa−1のレベルは、免疫療法によって明白に増加し、NKG2A T細胞の頻度もこのモデルにおいて強度に増加した(図4A〜F)。治療的ワクチン接種は、腫瘍浸潤性CD8 T細胞の数を増加させただけではなく、大多数の腫瘍浸潤性CD8 T細胞上のNKG2Aの発現も生じさせ(図4F)、これは局所的免疫活性化および前炎症性サイトカインの遊離が抑制的フィードバック機序、その中でも特にNKG2Aを始動させることを示している。TC1腫瘍モデルにおいて、本発明者らはさらに、バイスタンダー活性化CD8 T細胞に比較して腫瘍特異的CD8 T細胞がNKG2Aを誘導する優先性、および最後に、治療的ワクチン接種が積極的に極めて多数のNKG2A NK細胞を腫瘍部位に動員することを観察した(図4G〜H)。
【0068】
これらのデータは、B16F10およびTC−1腫瘍モデルが、単剤としての、または数種の他の形態の(免疫)療法と併用してのNKG2A遮断の免疫療法としての潜在能力を試験するために適していることを証明している。一緒に、マウスモデルからのこれらのデータは、NKおよびCD8 T細胞の細胞傷害力を解放するために、特に強力なワクチンと併用して、NKG2Aへの遮断抗体の大きい治療潜在力を確固として強調している。
【0069】
NKG2A受容体の遮断は、in vitroでのCTL機能を増加させる
阻害性受容体NKG2Aの遮断が実際にCD8 T細胞活性化からのブレーキを外すかどうかの最初の徴候として、本発明者らは、公知の特異性を備えるマウスおよびヒトCTLクローンを選択した。これらのT細胞は、NKG2Aに対する遮断抗体の存在下または非存在下でTCR媒介性活性化のためのペプチド負荷標的細胞とともにin vitroインキュベートした(マウスに対しては20d5およびヒトに対してはZ199)。抗体20D5を用いたNKG2Aの遮断は、用量依存法でマウスCTL応答性を増加させた(図5A〜B)。最高濃度の遮断抗体は、IFNgの3倍の遊離を生じさせた。同様に、同種ペプチドを備えるヒトCTLクローンとNKG2Aに対する遮断抗体とのインキュベーションは、増加した応答性をもたらした。興味深いことに、ヒトCTLクローンはCD94/NKG2Aを均一に発現せず、フローサイトメトリーを用いた単一細胞レベルでのT細胞活性化の測定は、NKG2Aが遮断された時点で阻害性受容体を提示するCTLの応答性のみが増加できたことを証明した。この培養内のNKG2A陰性T細胞サブセットはこの系では影響を受けなかったが、これは抗体の適格な特異性を証明している(図5C)。そこで、これらのデータは、NKG2A CTLがNKG2A−CTLと比較して優れた活性化潜在能力を有することを示唆している。
【0070】
実施例2
HLA−A、BおよびCならびにHLA−Eに関連して、CD8腫瘍浸潤性T細胞の予後予測およびそれと全生存率(OS)との関連を調査するために、本発明者らは、非小細胞性肺癌(NSCLC)を有する患者197例の群を対象に遡及的に研究した。本発明者らは、肺腺癌がNSCLCにおける主要組織学的サブタイプであるためだけではなく(Herbst 2008,Alberg 2005)、HLA消失がNSCLCの他の主要サブタイプである扁平上皮癌より低頻度であり(Baba 2013,Hanagiri 2013a,Hanagiri 2013b,Kikuchi 2007,Korkolopoulou 1996)、このため活性T細胞媒介性免疫療法から最も利益が得られると予想されると報告されてきたために、肺腺癌に重点的に取り組んできた。本発明者らのデータは、腫瘍細胞によるHLA−Eの発現は、OSにとっての独立予後因子であることを明らかにした。HLA−Eの高発現は、NSCLCにおける高い間質CD8 T細胞浸潤の陽性予後予測を無効化した。
【0071】
材料および方法
試験集団
本発明者らは、Leiden University Medical Center(LUMC)において2000年〜2013年にかけて非小細胞性肺癌のサブタイプ腺癌であると診断された患者197例を遡及的に同定した。全患者は術前病期診断を受け、第I/II期NSCLCとして分類され、引き続いて全身性リンパ節切除を伴う原発腫瘍の外科的切除術を受けた。腫瘍およびその流入領域リンパ節の外科的切除術後、患者は無病状態であると考えられた。腫瘍組織、臨床データおよびフォローアップデータは、全患者から収集した。NSCLCの病期は、肺癌研究のための国際協会(IASLC)の更新された指針を使用してTNM(腫瘍、結節、転移)分類に従って決定した(Tanoue 2009)。保存用の腫瘍塊の使用は、Dutch Federation of Medical Research Associationからの指針に従っていた。この遡及的試験はヒトを含む医学研究に関する法律(Medical Research Involving Human Subjects Act:WMO)には該当しないため、医学倫理委員会による優先検討事項ではなく、文書によるインフォームドコンセントは入手されなかった。しかし、患者データは匿名扱いにした。
【0072】
抗体
HLAクラスI分子の遊離重鎖の発現を検出するために、マウスモノクローナル抗体HCA−2(抗HLA−A、1:1,000)およびHC−10(抗HLA−B/C、1:500)を使用した。軽鎖および非伝統的HLA−E重鎖各々を検出するため、ウサギ抗ヒトβ2−マイクログロブリン(抗β2M;クローンA−072、DAKO、1:2,000)抗体およびマウス抗ヒトHLA−E(クローンMEM−E/02;Serotec,Germany[1:200])抗体を使用した。CD8 T細胞を検出するため、マウスモノクローナルCD8抗体(クローンIA5、Leica Biosystems,Germany[1:500])を使用した。
【0073】
免疫化学
ホルマリン固定してパラフィン包埋した腫瘍塊は、ミクロトームを使用して4μmの切片に切削し、キシレン中で脱パラフィンした。内因性ペルオキシダーゼ活性は、0.3%の過酸化水素/メタノールを使用して20分間遮断した。サンプルを続いて70%および50%エタノール中で再水和させ、抗原回復はサンプルをクエン酸バッファー(pH9.0またはpH6.0のいずれか、DAKO,Glostrup,Denmark)中で10分間にわたり97℃へ加熱することにより実施した。抗体は、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝食塩液(PBS、Fresenius Kabi Bad Homburg,Germany)中に希釈し、室温で一晩インキュベートした。スライドは、室温で30分間、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合抗マウスIgG(DAKO envision)と免疫組織化学的に染色した。NovaRed(Vector、Burlingame,USA)を色原体として適用し、その後にマイヤーのヘマトキシリン(Klinipath)を用いて対染色した。全洗浄工程はPBSを用いて実施した。全スライドにはPertex封入剤(HistoLab,Sweden)を載荷した。
【0074】
HCA2、HC10、β2MおよびHLA−E染色の微視的評価および解析は、事前に臨床的パラメーターまたは組織病理学的パラメーターに関する知識を与えずに2名の独立観察者(第1観察者がコホートの100%、第2観察者がコホートの20%)によって実施された。観察者間一致は、実質的な観察者間一致を示している全染色に対して>0.70の係数を生じさせるコーエンのカッパ係数を計算することによって評価した。
【0075】
腫瘍の分化度は、免疫組織化学的染色スライドに基づいて決定し、低分化度、中分化度または高分化度のいずれかに分類した。以前に言及した抗体の発現パターンは、Ruiter et a(Ruiter 1998)により提案されたスコアリングシステムに従って評価した。この方法を使用して全スライドをスクリーニングし、陽性腫瘍細胞のパーセンテージを非存在0%、散在性1〜5%、局所性6〜25%、時折25〜50%、多数51〜75%および大多数76〜100%に分類した(1〜6)。さらに、このスコアは、陰性、低、中および高と分類される染色強度を含んでいる(0〜3)。この強度は、高強度が常に観察されたCD8を除いて全抗体について記録した。最終スコアは強度およびパーセンテージに基づき、1〜4(低発現)および5〜9(高発現)に分類した。
【0076】
浸潤性CD8 T細胞の定量化
CD8 T細胞浸潤は、各スライドの5枚の無作為に取り込んだ高分解能(200X)画像をスクリーニングすることによって評価した。腫瘍巣の領域および間質領域をマーキングし、NIH−ImageJソフトウエア(v1.48)を使用して計算した。CD8 T細胞は面積によって計数し、上皮内および間質CD8 T細胞間を区別した腫瘍領域1mm2当たりの細胞数として表示した。上皮内、間質および総数の腫瘍浸潤性CD8 T細胞の平均数を計算し、患者は、全患者についての平均CD8 T細胞浸潤に基づいて、高いまたは低いCD8 T細胞浸潤について二分した。
【0077】
統計解析
ノンパラメトリックマン・ホイットニーU検定を使用して、患者群間の連続変量を比較し、両側χ二乗検定によってカテゴリーデータの群比較を実施した。全生存期間(OS)は、手術日から何らかの原因に起因する死亡日または5年間の最高フォローアップ期間を含む最終フォローアップ日までと規定した。HLA発現に基づいて生存期間を評価すると、HLAの低および高発現は、機能的HLA分子の存在、すなわちβ2MならびにHLA−A、HLA−B/CおよびHLA−EのHLA重鎖各々の両方の高発現を示している。生存率は、カプラン・マイヤー法を使用して推定し、ログランク検定を使用して2本の曲線を比較した。単変量コックス比例ハザードモデルを使用して、単一決定因子のOSへの作用を試験した。多変量コックス回帰解析は、単変量解析において統計的有意性に達する変量を用いて実施した。段階的回帰を使用して最終モデルを推定した。<0.05の両側P値は統計的有意と見なされた。複数の試験のためにボンフェローニ補正を適用した。データ解析のために統計ソフトウエアパッケージSPSS 20.0(SPSS、Chicago,IL)を使用した。生存率曲線を推定するため、GraphPad Prism 6.02(Graphpad Software、LA Jolla,CA)を使用した。
【0078】
結果および考察
間質CD8 T細胞浸潤は、全生存率と最高に相関する。
肺腺癌を有する患者197例のコホートを評価した。腫瘍による分化度は、低(50%)、中(33%)または高分化度(17%)のいずれかに分類した。31%の症例では、患者は、術前診断様式に基づいて第I/II病期と分類されたにもかかわらず、進行性疾患(第III/IV病期)を有していた(表1)。平均年齢は66歳(範囲、37〜90歳)であり、男性(n=99)および女性(n=98)の数は均一に分布していた。
【0079】
CD8 T細胞浸潤の程度は、腫瘍切片中での上皮内および間質CD8 T細胞の列挙によって試験した。CD8 T細胞の代表的な免疫組織化学的染色は、図6に提示した。全上皮内CD8 T細胞浸潤は7〜1,460cells/mm2(腫瘍)(平均194;メジアン150)、間質CD8 T細胞は35〜1,332cells/mm2(腫瘍)(平均348;メジアン320)および全CD8 T細胞、32〜1,008cells/mm2(腫瘍)(平均271;メジアン246)の範囲に及んだ。男性と女性との間で全CD8 T腫瘍細胞浸潤に差は見られなかった(χ二乗検定、p=0.267)。患者は、全患者について平均CD8 T細胞数に基づいて、低いまたは高いCD8 T細胞浸潤を備える2群に分割し、OSとの関連をプロットした。相当に強力な間質CD8 T細胞浸潤は、有益な臨床転帰との最良の関連を提示した(ログランク検定、p=0.068;図7A〜C)。低い間質CD8 T細胞浸潤の負の効果は、患者を三分位数に基づいて分割した時点で拡大され、低い三分位数にある患者は低CD8間質T細胞浸潤を有すると規定され、以前に報告されたものと同様に、他の患者は高い間質CD8 T細胞浸潤を有すると規定された(p=0.046、図10)(Al−Shibli 2008,Bremnes 2011,Djenidi 2015,Donnem 2015,Hiraoka 2006)。
【0080】
伝統的HLAクラスI発現とCD8 T細胞との相互作用。
a)40%を超えるNSCLC患者はチェックポイント阻害剤療法に応答する(Garon 2015,Gettinger 2015,Jia 2015);およびb)特に腫瘍がCD8 T細胞に対する新規抗原を生成しているそれらの患者は応答する可能性が高い(Rizvi 2015)という事実によって例示されたように、CD8 T細胞によるNSCLCの攻撃の成功を支配する因子を同定することは極めて興味深い可能性がある。このプロセスにおいて重要な分子の1つは、T細胞に腫瘍特異的ペプチドを提示するために必要とされるHLA分子の発現である。汎HLAクラスI抗体を用いて測定すると、HLAの消失は肺腺癌を有する患者のほぼ半数で観察される(Baba 2013,Hanagiri 2013a,Hanagiri 2013b,Kikuchi 2007,Kikuchi 2008)。本発明者らは、HLA消失をより詳細に図表化する目的で、抗体を使用してHLA−AおよびHLA−B/Cの発現を識別した。伝統的HLAクラスI分子の発現の評価は、β2−M、HLA−AおよびHLA−B/Cに対する抗体を用いて実施した(図6)。β2−Mは症例の76%において発現したが、HLA−AおよびHLA−B/Cは症例の各々56%および25%のみで発現した(表1)。そこで、本発明者らは、HLA−Aが患者の約40%において減少するが、一方で、HLA−B/C発現の減少は、NSCLCにおけるHLA−B/Cの消失に関して詳細に報告している唯一の他の試験(Ramnath 2006)と一致している75%という高さであることを見いだした。
【0081】
続いて、腫瘍病期、HLAクラスI分子およびCD8 T細胞浸潤の間の関連を評価した(表3)。HLA−Aの高発現は高発現のHLA−B/Cと強度に相関していた(p=0.0001)。機能的HLAクラスI発現の存在または非存在と腫瘍浸潤性CD8 T細胞の総数との間には明白な相関が存在した。HLA−A(p=0.012)またはHLA−B/C(p=0.018)のダウンレギュレーションを備える腫瘍は平均するとより少数の全腫瘍浸潤性T細胞を提示した(表3および図11)。
【0082】
患者をHLA−AまたはHLA−B/Cの低または高発現に従って群分類すると、カプラン・マイヤー曲線は臨床転帰に伝統的HLAクラスI発現が及ぼす直接的影響を全く明らかにしなかった(図7Dおよび7E)。しかし、腫瘍組織内の伝統的HLA発現と全CD8 T細胞浸潤との間の相互作用解析は、OSに関してHLA−B/C陽性腫瘍(HR0.212、95% CI:0.074−0.606、p=0.004)またはHLA−AおよびHLA−B/C陽性腫瘍(HR0.215、95% CI:0.069−0.673、p=0.008)における高密度のCD8 T細胞浸潤の明白に有益な作用を明らかにした(表2および図8)。これは、CD8 T細胞浸潤をHLA−A発現単独に関連して解析した場合には該当しなかった。そこで、HLA発現およびCD8 T細胞浸潤間の相互作用解析は、高密度CD8 T細胞腫瘍浸潤の予後予測作用が、腫瘍が高発現の伝統的HLAクラスI、特にHLA−B/Cの高発現を提示する場合にのみ保持されているという新規な観察をもたらした(図8)。
【0083】
HLA−Eの発現はOSに対する強力な負の決定因子である。
NSCLCにおけるT細胞の攻撃の成功を支配する他の重要な分子は、いわゆるチェックポイントである(Pan 2015)。非伝統的HLA−E分子は、阻害性受容体CD94/NKG2Aにとってのリガンドであり、重要な免疫学的チェックポイントを表す(Kochan 2013,van Hall 2010)。肺腺癌症例の70%超では、HLA−Eの高発現が観察された(図6Fおよび表1)。HLA−Eの高発現にはより不良なOSが結び付いていた(HR0.632、95% CI:0.406−0.984、p=0.042;表2および図7F)。この試験は、非伝統的HLA−E分子の高発現がNSCLCにおける全生存率に影響を及ぼすことを証明するために最初にすべき試験である。
【0084】
間質CD8 T細胞浸潤およびHLA−Eの発現の両方が単一決定因子としての全生存率に最強の影響を提示したため(図7Bおよび7F、図10)、これら2つの因子間の相互作用を試験するためにその後の解析を実施した。明白に、高密度間質CD8 T細胞浸潤はHLA−E陰性腫瘍における強力な正の予後予測値であることを証明した(HR0.303、95% CI:0.124−0.741、p=0.009;図9Aおよび9B)。しかし、高密度間質CD8 T細胞浸潤の有益な作用はHLA−Eの高発現を備える患者では消失する(HR1.004、95% CI:0.550−1.835、p=0.989;図9Cおよび9D)。結論として、腫瘍浸潤性間質CD8 T細胞により提示される有益な作用は、HLA−Eが腫瘍によって高度に発現した場合に妨害される。HLA−Eの発現は、CD94/NKG2Aと係合した場合にTリンパ球およびナチュラルキラー(NK)細胞の機能を阻害することができ(Kochan 2013,van Hall 2010,Ulbrecht 1999)、ならびにHLA−EがCD94/NKG2Cと係合した場合にこれらの細胞を活性化することができる(Guma 2005)。乳癌および子宮頸部腺癌における少数の研究は、HLA−Eを発現する腫瘍についての生存率有益性を報告しているが(de Kruijf 2010,Spaans 2012)、一方で、他の研究者は、本発明者らと同様に、卵巣癌、結腸直腸癌および胃癌におけるOSへのHLA−Eの負の効果を報告した(Gooden 2011,Bossard 2012,Ishigami 2015,Zhen 2013)。潜在的に、CD8 T細胞によって発現したHLA−Eに対する受容体のタイプは、この差異の根底にある。卵巣癌および結腸直腸癌では、T細胞は阻害性受容体CD94/NKG2Aを発現することが証明された(Gooden 2011,Bossard 2012)。NSCLCにおける以前の研究と一致して、高密度間質CD8 T細胞浸潤物は、より長いOSと関連していた(図7および図10)(Al−Shibli 2008,Bremnes 2011,Djenidi 2015,Donnem 2015,Hiraoka 2006,Schalper 2015)。本発明者らの研究では、腫瘍細胞によるHLA−Eの高発現は、明白にCD8 T細胞への負の効果を有していた。OSへの間質CD8 T細胞が及ぼす正の予後予測作用は、それらの腫瘍細胞上でHLA−Eの低発現を備える患者においてのみ明白であった。HLA−Eの抗腫瘍発現は、CD8 T細胞浸潤物の予後予測作用を完全に無効にした(表2および図9)。
【0085】
HLA−E発現は、肺腺癌におけるOSの独立決定因子である。
相対死亡リスクに各単一変量が及ぼす効果を評価するために、生存率差を定量するために単変量および多変量コックス比率ハザード解析を実施した(表2)。腫瘍病期および男性は、以前に肺腺癌におけるOSにとって負のリスク因子であると報告されており[32]、実際に本発明者らのコホートにおいても高病期腫瘍(第I/II病期対第III/IV病期、HR0.619、95% CI:0.399−0.961、p=0.033)ならびに男性(HR1.834、95% CI;1.184−2.839、p=0.007)にはより不良なOSが結び付いていた。単変量解析では、腫瘍細胞による非伝統的HLA−Eの低発現にはこのコホート内の強度に減少した死亡リスクが結び付いていた(HR0.632、95% CI:0.406−0.984、p=0.042)。高い間質CD8 T細胞の存在は改善されたOSと相関して近有意性に達したため(HR1.560、95% CI:0.962−2.530、p=0.072)、そこで腫瘍病期、性別およびHLA−E発現と一緒に多変量解析に含めた。
【0086】
単変量解析に類似して、間質CD8 T細胞がOSに及ぼす正の効果は、多変量解析において統計的有意性(HR1.613、95% CI:0.993−2.620、p=0.054)に近付いた。腫瘍病期および性別に加えて、HLA−Eの増加した発現はOSと有意に関連しており(HR0.612、95% CI:0.392−0.956、p=0.031)、これは低いHLA−E発現が肺腺癌においてOSのための独立した正の予後予測因子であることを示している。
【0087】
本発明者らの結果は、肺腺癌の約70%がHLA−Eの高発原を提示することを証明した(表1)。T細胞およびNK細胞療法に及ぼすその作用を考慮すると、HLA−Eおよび/またはそのCD94−NKG2A阻害性受容体を遮断する工程は、NSCLCの免疫療法についての重要な標的を形成する可能性がある。抗NKG2Aモノクローナル抗体を用いた治療は、in vitroの抗腫瘍細胞傷害性のHLA−E媒介性抑制を告白することが証明されており(Levy 2009,Derre 2006)、これは進行性頭頸部癌を有する患者が抗NKG2Aモノクローナル抗体を用いて治療される現在進行中の第I/II臨床試験を生じさせた(ClinicalTrials.gov,Identifier:NCT02331875)。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
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【国際調査報告】