(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
FSHの生理活性、黄体形成ホルモン(LH)の生理活性、および絨毛性ゴナドトロピン(CG)の生理活性を増強する卵胞刺激ホルモン(FSH)リガンドであって、前記リガンドが抗体または抗体断片であり、
重鎖可変ドメインが次のCDRを含み、
‐配列GFTFSSSY(配列番号23)によって規定されるVH−CDR1、
‐配列IYAGTGGT(配列番号24)によって規定されるVH−CDR2、
‐配列ARHGSYFDY(配列番号25)によって規定されるVH−CDR3、且つ
軽鎖可変ドメインが次のCDRを含む
‐配列QSVDYDGDSY(配列番号26)によって規定されるVL−CDR1、
‐配列AASによって規定されるVL−CDR2、
‐配列QQSNEDPYT(配列番号27)によって規定されるVL−CDR3
ことを特徴とする前記リガンド。
前記リガンドがFab、Fab’、F(ab’)2、Fv、dsFv、scFv、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディおよびナノボディからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載のリガンド。
前記医薬品がメスの哺乳類動物において循環内在性プロゲステロンレベルを上昇させることを目的とするものである、請求項5に記載のリガンドまたは請求項7に記載の複合体。
メスの哺乳類動物において排卵または多排卵を誘導することを目的とする医薬組成物であって、請求項1から4の何れか一項に記載のリガンドおよび/または請求項6に記載の複合体および薬学的に許容可能な担体を含むことを特徴とする前記医薬組成物。
【実施例】
【0041】
実施例1:本発明のリガンドの獲得、およびそのリガンドの特徴解析
【0042】
(1)マウス免疫ストラテジー
注射は全て腹膜内注射でマウス(Balb/c)に行われた。5匹のマウスを使用した。
【0043】
CF12抗体向けのマウス免疫ストラテジー
組換えヒトFSH(rhFSH)の数回の注射によって免疫を行った。完全フロイントアジュバントと共に50μgのrhFSHを使用して1回目の注射(0日目)を行った。その後、次の順序で数回のブースター注射を行った。
‐21日目および35日目:不完全フロイントアジュバントと50μgのrhFSHのブースター注射、
‐55日目、56日目および57日目:アジュバント無しの30μgのrhFSH βサブユニットの注射、
‐58日目:融合。
【0044】
(2)アイソタイピング
RD Biotechが販売するFastElysaアイソタイピングキット(参照番号RDB3255)を製造業者の推奨に従って使用してCF12抗体のアイソタイピングを行った。
【0045】
CF12抗体はIgMクラスおよびκアイソタイプの免疫グロブリンである。得られた光学密度(OD)値はそれぞれ0.639および0.6であった。
【0046】
(3)シーケンシング
CNCM I−4803ハイブリドーマによって分泌されるCF12抗体の重鎖可変部分(VH)と軽鎖可変部分(VL)のヌクレオチド配列を以下のプロトコルに従ってそれらのメッセンジャーRNA(mRNA)から決定した。
【0047】
Nucleospin(登録商標)RNAキット(マッハライ・ナーゲル、ドイツ)を製造業者の推奨に従って使用して細胞からRNAを抽出した。260nmでの吸光度(A)を測定することによって精製RNAの濃度を推定し、A260nm/A280nm比によって、およびアガロースゲルでの電気泳動後に視覚的にそれらのRNAの品質を推定した。
【0048】
その後、製造業者の推奨に従ってM−MLV酵素(参照番号M1701、プロメガ、米国)を使用する逆転写反応によってoligo−dT
18を使用してそれらのmRNAの
相補性DNAを合成した。
【0049】
次のプロトコルに従うポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって第2DNA鎖の合成を行った。次のもの、すなわち反応緩衝液(1×最終濃度)、200μMの各dNTP、300nMのフォワードプライマーとリバースプライマー、1.25UのGoTaqポリメラーゼ(参照番号M3175、プロメガ、米国)を4μlの逆転写反応に加えて50μlの最終体積にする。
【0050】
軽鎖の可変部分の増幅のために5種類の異なるプライマーペア(MKRev2から8+MKC5For)を使用し、重鎖の可変部分には2種類のペア(VHRev1またはVHRev2+MμCFor)を使用した。
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
使用したPCRプログラムは、95℃で2分間の初期変性に続く30サイクルの95℃で30秒間の変性、47℃で30秒間のハイブリダイゼーションと72℃で1分間の増幅、および最後に72℃で5分間の最終増幅から構成される。得られたPCR産物をQIAquick(登録商標)ゲル抽出キット(参照番号28704、Qiagen GmbH、ドイツ)で脱塩し、その後、細菌に形質転換されるようにpGEMTイージー・ベクタープラスミド(参照番号A1360、プロメガ、米国)とライゲーションした。様々な細菌クローンから抽出されたプラスミドDNAをシークエンス解析に送った(マクロジェン・ヨーロッパ、オランダ)。
【0054】
その後、CF12抗体のVHおよびVLの5’末端ヌクレオチド配列は、前記cDNAのリーダー配列内に特異的なアンカープライマー(Fwプライマー)を設計することを介して決定された。これらのプライマーは、それまでに得られたVL配列およびVH配列とIMGT/V−QUESTソフトウェアのデータベースとの間のアラインメントによる相同性の特定(Brochet et al., Nucl. Acids Res., 36: W503-508, 2008; Giudicelli et al., Cold Spring Harb Protoc., 2011(6): 695-715, 2011)[3、4]、およびIMGT/GENE−DBからの目的のリーダー配列の抽出 (Giudicelli et al., Nucl. Acids Res., 33: D256-261, 2005)[5]の後に設計された。リバース(Rev)プライマーは、前記抗体の各々のそれまでに決定されたVH配列とVL配列のそれぞれの中に設計された。5’部分を得るために使用されたプロトコルは前段落において記載されたプロトコルと同じである。
【0055】
MultAlinソフトウェア(Corpet, Nucl. Acids Res., 16(22): 10881-10890, 1988) [6]を使用して配列のアラインメントからコンセンサスヌクレオチド配列を推定した。IMGT/V−QUESTソフトウェアを使用してポリペプチド配列への書き換えとCDRのアノテーションを行った。結果が表6および表7に示されている。
【0056】
【表6】
【0057】
【表7】
【0058】
(4)scFvの構築、作製、および特徴解析
(a)scFv抗体断片の構築
CF12抗体に由来する一本鎖可変断片(scFv)の合成遺伝子がATG:バイオシンセティクスGmbH(ドイツ)によって合成された。
【0059】
タンパク質の機能性を確保するペプチド(Gly
4Ser)
3をコードする配列によって連結されており、且つ、scFvの精製を可能にするHis
6ペプチド(Hisタグペプチド)をコードする配列で終わる重鎖可変部分と軽鎖可変部分(配列番号1/配列番号
3)の融合体から各配列を設計した。発現プラスミドへのそれらの挿入を可能にするため、それらの配列の両脇にPstIとSalIの制限酵素部位が付加された。所望によりHis
6ペプチドの除去を可能にする追加の配列をVLの3’末端とSalI部位との間に付加した。大腸菌での発現向けにコドンを最適化した。scFv合成遺伝子の構築を図によって表現したものが下に詳述されている。
【化1】
【0060】
組換え抗体断片の遺伝子と読み枠に合わせて融合されると合成されたタンパク質の細菌ペリプラズムへの輸送を可能にするPelBシグナル配列をLacZ誘導性プロモーターの制御下で含むE.S. Wardら(Ward et al., Nature, 341: 544-546, 1989) [7]によるpSW1発現プラスミド(ATG:バイオシンセティクスGmbH、ドイツ)のPstIとXhoIの酵素部位の間に前記抗体断片を挿入した。ペリプラズム内でこのシグナル配列はペプチダーゼによって除去される。
【0061】
それらの構築物の品質のシーケンシングによる検証の後、コンピテントセルにした(Li et al., Afr. J. Biotechnol., 9(50): 8549-8554, 2010) [8]HB2151細菌(T53040、Interchim、フランス)をヒートショックにより形質転換するためにpSW1−CA5プラスミド、pSW1−CH10プラスミドおよびpSW1−CF12プラスミドを使用した。
【0062】
【表8】
【0063】
(b)組換え抗体断片の作製
細菌培養物
50μg/mlのアンピシリンを含む5mlの2×YT培地に前培養物を37℃で一晩にわたって調製した。翌日、500μlのこの前培養物を500mlの同じ培地に接種し、1.4のOD
600nmが得られるまで150RPM、37℃で培養した。0.1mMのIPTGを添加することでscFvの合成を150RPM、16℃で16時間にわったって誘導した。
【0064】
抽出
その培養培地を4500g、4℃で30分間にわたって遠心分離した。調製の後の部分は4℃で実施した。細菌のペリプラズムを抽出するため、沈殿物を10mlのTES(0.2Mトリス、pH8、0.5M EDTA、0.5Mショ糖)に再懸濁し、30分間にわたってインキュベートし、その後で4分の1に希釈された15mlのTESをそれに添加し、続いて30分間にわたってさらにインキュベートした。その細菌抽出物を10000gで30分間にわたって遠心分離した。上清をPBSに対して一晩にわたって透析した。その透析された上清をscFvの精製のためにすぐに処理するか、または使用するまで−20℃で貯蔵した。
【0065】
抗HisタグHRP抗体(参照番号R93125、ライフテクノロジーズ、フランス)を製造業者の使用推奨に従って使用するウエスタンブロッティングによりペリプラズム内にあるscFvの生産量を分析した。
【0066】
精製
前記ペリプラズムを5000g、4℃で20分間にわたって遠心分離した。その上清をHIS−Select(登録商標)ニッケルアフィニティーゲル(シグマ・アルドリッチ、ミズーリ州、米国)と共に4℃で1時間にわたって撹拌しながらインキュベートした。0に近いOD
280nmが得られるまで、0.3MのNaClを含むpH8の0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液でそのゲルを洗浄し、その次にそのゲルに添加された20mMのイミダゾールを含む同じ緩衝液で洗浄した。その後で0.3MのNaClと250mMのイミダゾールを含むpH8の0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液でscFvを溶出した。その溶離液をPBSに対して一晩にわたって透析した。その溶離液は−20℃で貯蔵されている。
【0067】
品質管理
その精製されたscFvを15%ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動によってクマシーブルーによる染色後に分析し、且つ、Sephadex(商標)75 10/300
GLカラム(参照番号17−5174−01、GEヘルスケア、ドイツ)上での排除クロマトグラフィーによって分析した。
【0068】
(5)特異性
CF12抗体の特異性およびその抗体のscFvの特異性をELISA法により検討した。評価される各ホルモンはpH9.6の0.1M炭酸ナトリウム緩衝液中に10μg/mlの濃度で調製され、ELISAプレート上でウェル当たり100μlの割合で分配された。吸着時間は+4℃で18時間であった。洗浄を5回行った後に0.1%ツイーンおよび1%BSAを添加した100μlのPBSでウェルを37℃で45分間にわたって処理し、その後、各抗体またはscFvを100μl/ウェルの割合で分配し、37℃で1時間にわたってインキュベートした。評価される各ホルモンに対して、抗体については10〜250μg/mlの範囲、scFvについては10〜150または200μg/mlの範囲に応じた様々な濃度でその抗体およびscFvを分配した。
【0069】
洗浄を5回行った後にペルオキシダーゼ(HRP)に結合した二次抗体を100μl/ウェルの割合で分配し、37℃で1時間にわたってインキュベートした。その二次抗体は検討するモノクローナル抗体のアイソタイプに応じて抗IgG1 HRP(参照番号115−035−205、ジャクソンイムノリサーチラボラトリーズ社)、抗IgG2a HRP(参照番号115−035−206、ジャクソンラボラトリーズ)または抗IgM HRP(参照番号115−035−075、ジャクソンラボラトリーズ)であった。scFvについては抗HisタグHRP(参照番号R93125、ライフテクノロジーズ、フランス)を使用した。洗浄を5回行った後に100μl/ウェルの割合で分配されたTMBによって酵素活性を発現させた。発現時間は反応速度に応じて外観温度において5分から30分までであった。その反応を1MのH
2SO
4(50μl/ウェル)によって停止させた後、ELISAプレート用の分光光度計を使用してその発色反応の強度(光学密度)を測定した。
【0070】
CF12 scFvの特異性
吸着されている様々なホルモンへの濃度を上げて(飽和状態(Bmax)まで)、用意された抗体の結合の発現に基づき、CF12 scFvによってELISA法で定量可能な結合を得ることができた。発現後に得られた光学密度単位として結果が表されている。
【0071】
表9は、ブタFSH(pFSH)とヒツジFSH(oFSH)、および様々なヒトFSHに対して200μg/mlの濃度でインキュベートされたCF12 scFvで得られた光学密度値を表している。
【0072】
【表9】
【0073】
CF12 scFvは吸着されているpFSHおよびoFSHに対して強い結合を示し、hFSHとhMG(メノピュール)に対してはそれより弱い結合を示している。
【0074】
表10はブタLH(pLH)、ヒツジLH(oLH)、ウシLH(bLH)、eCG、およびhCGであるコルロンとEndo5000に対して200μg/mlの濃度でインキュベートされたCF12 scFvで得られた光学密度値を表している。
【0075】
【表10】
【0076】
CF12 scFvの動物のLHへの結合は、吸着されているhCGおよびeCGへの結合と異なってかなりのものであり、後者のものへの結合はLHへの結合よりも弱い。
【0077】
したがって、CF12の結合とCF12 scFvの結合、特にヒトホルモンへの結合はエピトープの立体構造よって非常に制限されるようである。ヒトFSHの活性およびhCGであるコルロンとEndo5000の活性に対してCF12およびそのscFvによってインビトロおよびインビボで得られる顕著な生物学的作用を考慮すると(実施例2および実施例3の結果を参照されたい)、CF12 scFvの結合はちょうど完全抗体の結合のように前記ホルモンの立体構造に完全に依存すると思われる。CF12の結合とCF12 scFvの結合の減損はELISAプレートのプラスチックに吸着されている前記ホルモンの立体構造の変化に起因するという仮説によってこれらの結果を説明することができ、且つ、CF12およびそのscFvは非常に立体構造的なエピトープに特異的であるという仮説を補強することができる。
【0078】
検討した様々なFSH、LHおよびCGに対するscFvの解離定数Kdの推定値が、GraphPad Prism(GraphPadソフトウェア社、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国、バージョン5)上で飽和結合モデル(「飽和結合実験モデル」、GraphPad PRISMソフトウェア)内の「1サイト特異的結合」機能を使用して計算された。得られた様々な値が表11および表12に示されている。
【0079】
【表11】
【0080】
【表12】
【0081】
このように推定された解離定数Kdの比較により、ヒツジのFSH、ブタのFSHおよびヒトのFSH(ゴナールFおよびフォスティモン)に対する前記scFvのより強い親和性が示されており、Kd値はpFSHとhFSHであるフォスティモンに対する2.6μMからoFSHに対する3.77μMおよびhFSHであるゴナールFに対する4.87μMまでにわたる。
【0082】
動物のLH、eCGおよびhCGであるコルロンとEndo5000に対するKd値は比較的に一様であり、4.72μMと6.23μMの間で変化し、上のFSHと比較してわずかに弱いこれらのホルモンに対するCF12 scFvの親和性を証明する。
【0083】
hFSHであるピュレゴンとhMGであるメノピュールに対してCF12 scFvはさらに弱い親和性を示し、数十μMのKd、すなわち、それぞれ14μMと25.22μMのKdである。
【0084】
実施例2:FSHの生理活性に対する本発明のリガンドの増強作用のインビトロ測定
FSHの生理活性に対する本発明のリガンドの増強作用の証明が、FSH単独か、またはFSH/モノクローナル抗体(MAb)複合体のどちらかで刺激された様々な細胞種または細胞株を用いて得られた生物学的応答を比較することにより行われた。
【0085】
それらの事例の各々において、得られた用量応答曲線の比較により、複合体化されたFSHの生物活性に対する前記MAbのインビトロ増強作用を定量することが可能になった。Prismソフトウェア(GraphPadソフトウェア社、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国、バージョン5)を使用してそれらの結果の統計分析を行った。
【0086】
(1)ウシ顆粒膜細胞の初代培養物について
最初にヒトFSH(hFSH)に対するCF12 MAbの増強作用の特徴がウシFSH受容体を内在的に発現するウシ顆粒膜細胞上で解析された。
【0087】
CF12抗体の最終濃度が0.1μg/mlであるハイブリドーマ上清を3ng/mlから25ng/mlまでの範囲のヒトFSHと37℃で30分間にわたってインキュベートした。
【0088】
Chopineauら(Mol. Cell Endocrinol., 92(2): 229-39, 1993)[8]およびWehbiら(Endocrinology, 151(6): 2788-2799, 2010)[9]に記載のプロトコルに従ってウシ卵巣に対する卵巣穿刺により2〜6mmまでの範囲の直径を有する卵胞からウシ顆粒膜細胞を採取した。McCoyの5A培地(Lonza、ベルギー、参照番号BE12−688F)に懸濁状態の0.5ml当たり80000細胞の割合で調製したウシ顆粒膜細胞を3ng/mlから25ng/mlまでの範囲のFSH単独か、または上のプロトコルに従ってモノクローナル抗体と予め複合体化されたものによって48μg/mlのIBMX(シグマ・アルドリッチ、フランス、参照番号I5879)の存在下で37℃において3時間にわたって撹拌しながら刺激した。測定された生物学的応答はcAMP分泌であった。
【0089】
遠心分離後、ELISAキット(バイオメディカルテクノロジーズ社、マサチューセッツ州、米国、BT−730)を使用して、産生したcAMPを培養上清中にアッセイした。
【0090】
結果が
図1に示されている。
【0091】
それらの結果はヒトFSHの活性に対するCF12の2.5倍の増強を示している。二元配置分散分析(二元配置ANOVA、GraphPad PRISMソフトウェア)による統計分析によってCF12についてのp<0.01(
**)からp<0.001(
***)までの範囲の有意な効果が示されている。CF12抗体は検査されたhFSH濃度の全てに対して有意な効果を有している。
【0092】
(2)ヒトFSH受容体が安定的に形質移入されたHEK293細胞株について
様々な種のFSHに対する前記MAbの増強作用がヒトFSH受容体を安定的に発現するHEK293細胞上で測定された。この系により、37℃で1時間にわたるFSH単独か、またはFSH/MAb複合体による刺激の後のFSH受容体の活性化に続くcAMP産生を測定することが可能になった。
【0093】
このために60000個の細胞を96ウェルプレート(ベクトンディッキンソン、ニュージャージー州、米国、参照番号353072)のウェルに分配し、10%のSVF(Lonza、ベルギー、参照番号DE14−801F)、1%のペニシリン/ストレプトマイシン(シグマ・アルドリッチ、フランス、参照番号P−4333)および400μg/mlのG418(シグマ・アルドリッチ、フランス、参照番号A1720)を含む100μlのMEM培地(Ozyme、フランス、参照番号BE12−611F)の中において湿潤環境中、5%CO
2、37℃で24時間にわたってそれらの細胞を培養した。MEM培地中で2時間の休止の後、それらの細胞を37℃で1時間にわたって刺激した。培養上清を回収し、ELISAキット(バイオメディカルテクノロジーズ社、マサチューセッツ州、米国、BT−730)を使用してアッセイした。結果はエンドポイントにおけるcAMPの分泌量を表している。Prismソフトウェア(GraphPadソフトウェア社、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国、バージョン5)を使用してそれらの結果を分析した。
【0094】
図2はヒトFSH受容体が安定的に形質移入されたHEK293細胞上でのヒトFSHの生理活性に対するCF12モノクローナル抗体のインビトロでの増強作用を表している。このためにそれらの細胞を0.3ng/mlから3ng/mlまでの範囲のヒトFSH(ゴナールF、セローノ・ラボラトリー)か、またはそれらの細胞の刺激の前に前記モノクローナル抗体(0.1μg/mlの最終濃度)と37℃で30分間にわたって予めインキュベートされた同じレンジポイントのFSHのどちらかで刺激した。二元配置分散分析(二元配置ANOVA、GraphPad PRISMソフトウェア)により、FSH単
独か、またはFSH/モノクローナル抗体複合体を用いて得られた用量応答曲線を比較することが可能になった。組換えヒトFSH(ゴナールF、セローノ・ラボラトリー)を用いて得られた結果は、CF12抗体が0.5ng/mlで140%、および1ng/mlと3ng/mlの濃度でそれぞれ160%のホルモン活性増強作用を有していることを示している。この作用は対応のあるt検定(ウィルコクソン検定)によって3ng/mlのヒトFSHのポイントで有意(p<0.01)である。
【0095】
(3)ヒトFSH受容体とGlosensor(登録商標)システムが安定的に形質移入されたHEK293細胞株について
様々な種のFSHに対する前記MAbの増強作用がヒトFSH受容体およびGloSensor(商標)ベクター(プロメガ、フランス)を安定的に発現するHEK293細胞上でリアルタイムに測定された。この細胞系により、アゴニスト(FSHのみ、またはFSH/モノクローナル抗体複合体)でのFSH受容体の刺激の後のcAMP産生をリアルタイムでモニターすることが可能になった。GloSensor(商標)タンパク質へのcAMPの結合の後、GloSensor(商標)基質(プロメガ、フランス、参照番号E1291)が加水分解され、それによりPolarStar Optimaリーダー(BMG Labtech、ドイツ)によって測定され、且つ、RLU(相対発光単位)で表される発光が放射された。この安定株はフランス、37380、ヌジリー、ヴァル・ド・ロワールにあるINRA(フランス国立農学研究所)センターのシグナル伝達システムのバイオロジーおよびバイオインフォマティクスチームによって開発され、これらのアッセイのために利用可能とさせてもらった。
【0096】
このためにHEK293細胞を透明底白色96ウェルマイクロプレート(Dominique Dutscher、フランス、参照番号655903)のウェル当たり80000細胞の割合で、10%のSVF(Lonza、ベルギー、参照番号DE14−801F)、1%のペニシリン/ストレプトマイシン(シグマ・アルドリッチ、フランス、参照番号P−4333)、200μg/mlのハイグロマイシンB(ライフテクノロジーズ(商標)、フランス、参照番号10687010)および400μg/mlのG418(シグマ・アルドリッチ、フランス、参照番号A1720)を添加された100μlのMEM培地(Ozyme、フランス、参照番号BE12−611F)の中で一晩にわたって培養した。暗所での外界温度において2時間にわたる1%のBSA(PAA、フランス、参照番号K45012)が添加されており、且つ、4%のGloSensor(商標)基質を含む100μlのMEM培地の中での2時間の休止の後に細胞を含むそのプレートをPolarStar Optimaリーダーに配置し、基底レベルの発光を測定するために5分間にわたって最初の読取りを行った。その後、そのプレートをそのリーダーから取り出し、表示されている濃度を得るために11μlのリガンド(FSHのみ、またはFSH/モノクローナル抗体複合体)をそのプレートに添加した。その後、放射される発光を約1時間30分にわたって測定した。
【0097】
Prismソフトウェア(GraphPad Prismソフトウェア社、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国、バージョン5)を使用して、得られた結果を分析した。非線形関数「log(アゴニスト)対応答」を使用してFSH濃度の関数としての応答をプロットした。これによってFSH単独、および前記モノクローナル抗体と複合体化されたFSHのEC50を特徴解析し、且つ、比較することが可能になった。各例について、二本の曲線をそれらの全体にわたって比較することにより、FSH/増強抗体複合体の有意な効果を二元配置分散分析(二元配置ANOVA、GraphPad PRISMソフトウェア)によって評価した。
【0098】
CF12モノクローナル抗体
CF12モノクローナル抗体の増強作用をヒト、ヒツジおよびブタのFSHの生理活性
に対して特徴解析した。
【0099】
図3はヒトFSH(ゴナールF、セローノ・ラボラトリー)の生理活性に対するCF12の顕著な増強作用を示している。この顕著な作用は、前記細胞系にとって飽和濃度ではないhFSHの0.01nMおよび0.03nMという低い濃度のときに完全に定量可能である(曲線AおよびB)。非常に有意(p<0.001)であるそれぞれ280%および341%という発光シグナルの増加が観察されている。より高い濃度(0.1nM、0.3nMおよび1nM)について、細胞応答の増加は、おそらく最大で46000RLUまでの発光シグナルの漸進的な飽和に起因して、それぞれ181%、147%および120%である(曲線C、DおよびE)。曲線C、DおよびEについて、その増加は依然として非常に有意なままである(p<0.001)。GraphPad Prismによって測定されたEC50値はhFSHについては4.25×10
−10Mであり、且つ、hFSH/CF12複合体については9.38×10
−11Mであり、前記ホルモンが増強抗体CF12と複合体化したときの前記ホルモンの生理活性の0.7単位のLogEC50の増加(それぞれ10
−9.37から10
−10。03まで)を反映している(曲線F)。
【0100】
CF12 scFv(40nM)の増強作用も0.01nMの濃度で調製されたヒトFSH(ゴナールF、セローノ・ラボラトリー)の活性に対して測定した(
図4)。CF12完全抗体(6nM)の作用を比較のために並行して測定した。hFSH/CF12 scFvまたは複合体hFSH/CF12抗体複合体を用いて得られた曲線が相互に完全に重なり合い、その一価抗体断片と同一の作用を示している。
【0101】
CF12が及ぼす増強作用は
図5に示されているようにヒツジFSHに対しても非常に有意であり、0.01nM、0.03nMおよび0.1nMのホルモン濃度について、CF12/oFSH複合体を用いる刺激の間に細胞応答の240%、300%および350%の増加が観察されている(曲線A、B、C)。CF12は10nMで調製された。hFSHと同様に、0.3nMおよび1nMというより高い濃度について(曲線DおよびE)、細胞応答の増加は、最大で40000RLUまでの発光シグナルの漸進的な飽和に起因して、それぞれ200%および130%である。GraphPad Prismによって測定されたEC50値はoFSHについては2.29×10
−9Mであり、且つ、oFSH/CF12複合体については1.98×10
−10Mであり、前記ホルモンが増強抗体CF12と複合体化したときの前記ホルモンの生理活性の1.06のLogEC50の増加(それぞれ8.64から9.7まで)を反映している(曲線F)。細胞応答について観察されたそれらの増強作用は全ての事例において非常に有意である(p<0.001)。
【0102】
図6の曲線は0.01nM、0.03nM、0.1nM、0.3nMおよび1nMの濃度で調製されたブタFSHに対するCF12(10nM)の増強作用を示している。この作用は、前記細胞系にとって飽和濃度ではないpFSHの0.01nM、0.03nMおよび0.1nMという非常に低い濃度のときに完全に定量可能である(曲線A、B、C)。そうしてそれぞれ220%、350%および330%という発光シグナルの非常に有意で大幅な増加が観察されている。より高い濃度(0.3nMおよび1nM)について、細胞応答の増加は小さく、最大でも40000RLUという限度までの発光シグナルの漸進的な飽和に起因して、それぞれ175%および114%である(曲線DおよびE)。GraphPad Prismによって測定されたEC50値はpFSHについては1.92×10
−9Mであり、且つ、pFSH/CF12複合体については3.69×10
−10Mであり、前記ホルモンが増強抗体CF12と複合体化したときの前記ホルモンの生理活性の0.717のLogEC50の増加(それぞれ10
−8.715から10
−9.432まで)を反映している(曲線F)。
【0103】
(4)ヒト顆粒膜細胞の初代培養物について
ヒト顆粒膜細胞がReverchonら (Reverchon et al., Human Reprod., 27(6): 1790-1800, 2012)[11]に記載されているように回収され、培養された。
【0104】
生殖補助医療(ART)の背景で体外受精(IVF)のために処置された女性における卵母細胞穿刺後に収集された卵胞液からこれらの細胞を回収した。これらの細胞を40%パーコール密度勾配上での遠心分離により単離し、McCoyの完全5A培地(Lonza、ベルギー、参照番号BE12−688F)に再懸濁し、その後で500μlの最終体積の中にウェル当たり30000細胞の割合で24ウェルプレート(ベクトンディッキンソン、ニュージャージー州、米国、参照番号353047)に播種し、そして48時間にわたって培養した。その後、それらの細胞をヒトFSH単独か、またはヒトFSH/MAb複合体のどちらかで48時間にわたって刺激した。使用したヒトFSHは主に製薬研究企業であるセローノ(セローノ・ヨーロッパ社)によって販売されている組換えホルモンであるゴナールFと製薬研究企業であるジェニエーブル(フランス)によって販売されている閉経期の女性の尿から抽出されたFSHであるフォスティモンである。刺激後に上清を回収し、遠心分離した。ELISAキット(バイオメディカルテクノロジーズ社、マサチューセッツ州、米国、BT−730)を使用して、各培養上清中の産生されたcAMPをアッセイした。
【0105】
上記の方法に従って23人の患者の細胞を別々に調製し、別々に培養した。一人の患者に由来する各細胞培養物を2つのバッチに分けた。一方のバッチを10
−11Mから10
−8Mまでの範囲のFSHで刺激し、他方のバッチをその範囲の様々な濃度のCF12モノクローナル抗体/hFSH複合体で刺激した。前記抗体を0.1nMまたは4nMの最終濃度で調製した。各患者について、使用した前記ヒトホルモンの生理活性に対する前記抗体の増強作用を評価するためにそれらの2つの条件下で得られた用量応答曲線を比較した。
【0106】
前記23人の患者の細胞培養物は、hFSHおよび/またはhFSH/抗体複合体を用いた刺激に対して非常に異なる応答を示した。総計で23人のうちの12人の患者の細胞だけが、使用したhFSHと無関係にFSH単独による刺激とFSH/抗体複合体による刺激に応答した(
図7、曲線A、B、C)。これらの結果が
図7に示されている。曲線AはゴナールFによる刺激とフォスティモンによる刺激に対する患者の細胞応答を表している。測定されたEC50値はそれぞれ7×10
−11および1×10
−9であった。曲線Bおよび曲線Cは、hFSH単独による刺激(曲線BについてはゴナールF、および曲線Cについてはフォスティモン)とCF12/hFSH複合体による刺激の両方に応答した顆粒膜細胞を有する患者を表す2つの事例を示している。曲線Bの場合、前記複合体を用いて得られた用量応答曲線のEC50値は前記ホルモンだけを用いて得られた用量応答曲線の値よりも大きい(2.42×10
−9Mに対する7.52×10
−10M)。曲線Cの場合、EC50値は似ている(3.61×10
−9Mに対する2.28×10
−9M)。
【0107】
11人の残りの患者のうち、そのうちの4人の細胞がFSHによる刺激にもFSH/CF12複合体による刺激にも応答しなかった。逆に、および驚くべきことに、他の7人の細胞がFSH/増強抗体複合体による刺激にのみ応答し、同じ濃度範囲にあるhFSH単独による刺激の後にcAMP分泌の増加が観察されなかった。これらの顕著な結果が、各曲線が異なる患者の顆粒膜細胞の応答を表す
図8の曲線Aから曲線Fによって示されている。それらの事例の各々においてCF12抗体を0.1nMで使用した。2人の患者が曲線Dによって表される同じ用量応答曲線を生じた。これらの結果は、これらの患者では、hFSHR受容体を活性化しないFSH単独の場合と異なり、hFSH/CF12抗体複合体だけがhFSHR受容体の機能的刺激を誘導することができることを非常に明確に示
している。hFSH/CF12抗体複合体を用いる刺激の下で得られた最大cAMP分泌レベルは、hFSHに対して正常に応答した細胞培養物を用いて得られた最大分泌レベルと等しい6pmol/mlと15pmol/mlの間にある(
図12)。前記用量応答曲線の各々についてGraphPad Prismによって測定されたEC50値が表13に示されている。
【0108】
【表13】
【0109】
hFSH/CF12抗体複合体はこのように新規のリガンドとして挙動し、組換型または抽出型のhFSHによる従来の刺激が元々無効である患者においてhFSHRを活性化することができる新規のアゴニストとして挙動する。hFSH/増強抗体混合物を使用することにより、ヒト生殖生物学において使用されている従来のホルモン療法に応答しない患者において排卵(単排卵または多排卵)を誘導するためのホルモン治療の新規代替法をこのように提供することができる。
【0110】
実施例3:ラットモデルにおけるFSHおよびLH/CGの生理活性に対する本発明のリガンドの増強作用のインビボ測定
インビトロで特徴解析された後、前記モノクローナル抗体の増強作用をFSHの生理活性に対するその抗体の作用についてはメスのラットにおいて、およびそれらが同じく認識するLH/CGの生理活性に対するその抗体の作用についてはオスのラットにおいてインビボで特徴解析した。
【0111】
FSH生理活性を測定するため、使用したプロトコルはSteelmanとPohley(Steelman SL, Pohley FM. Endocrinology, 53: 604-616. 1953) [12]によって記載された生物学的アッセイのプロトコルであった。LH生理活性を測定するため、使用したプロトコルはScobeyら(Scobey et al., Reprod. Biol. Endocr. 3: 61, 2005) [13]によって記載されたアッセイのプロトコルであった。
【0112】
ヒトFSHを使用してFSH活性に対するそれらの抗体の作用を評価した。LH活性に対するそれらの抗体の作用をhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の2種類の調製物に対して評価した。
【0113】
GraphPad Prismソフトウェア(GraphPadソフトウェア社、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国、バージョン5)を使用して統計分析を行った。結果は5匹の動物からなるバッチに対して行われた実験に関連するものであったので、Dunn補正付きのノンパラメトリック一元分散分析(クラスカル・ウォリス検定)、またはノンパラメトリックt検定(マン・ホイットニー検定)を適用した。数回のバイオアッセイをまとめたことによって数が大きくなった(n>30)ものに関する結果についてはボンフェローニ補正付きのパラメトリック検定(対応のないスチューデントのt検定)を適用した。
【0114】
(1)メスのラットにおけるFSHの生理活性に対する抗体の増強作用
CF12抗体およびそのscFvの増強作用を生殖補助医療治療の背景でヒトの生殖において使用されているヒトFSHの様々な調製物、すなわちゴナールFとピュレゴン(そ
れぞれメルクセローノ・ラボラトリーとメルクシェリングプラウ・ラボラトリーに由来する組換えFSH)、およびフォスティモンとメノピュール(それぞれラボラトワール・ジェニエーブルとメルクシェリングプラウによって販売されている抽出型FSH)に対して検討した。
【0115】
SteelmanとPohleyのプロトコルに記載されているように、21日齢の未成熟なメスのラットが、一定量のhCG(3.5IU)を含み、ヒトFSH(ゴナールF、ピュレゴン、フォスティモン、メノピュール)については0.5〜1.5IUまでの範囲で変えることができる量のFSHを添加された100μlのhCGとFSHの混合物からなる注射を連続3日間にわたって朝と晩に2回受けた。うなじに皮下注射を行った。各実験は最小でも4つのバッチから構成された。1つのバッチは生理食塩水(血清Φ)で処置され、1つのバッチは抗体またはscFv単独で処置され、1つのバッチはhCG+FSH混合物で処置され、1つのバッチは2μgの精製されたscFvまたは抗体を添加したhCG+FSH混合物で処置された。
【0116】
ホルモン/抗体またはscFvの複合体を用いる処置の場合、区別なく注射の前にそのFSH+抗体混合物を37℃または外界温度で20分間にわたってプレインキュベートし、その後でhCGに添加した。そのhCGを前記複合体の保温時に区別なくFSHと混合することができる。
【0117】
4日目にそれらのメスのラットの体重を測定し、それらの卵巣を取り出し、解剖し、そしてそれらの重量を量った。結果が体重100グラム当たりのミリグラム単位の卵巣として表されている。卵巣重量の増加は注射した生理活性FSHの量に比例している。これにより、単独で、または抗体との複合体として注射された同量のホルモンの生理活性を定量し、比較することができる。
【0118】
単独で、または前記抗体もしくはscFvと複合体化されて注射されたFSHの生理活性の比較により、応答の差異を測定し、そうして前記抗体またはそのscFvの増強作用を定量することが可能になる。
【0119】
CF12抗体およびそのscFvの増強作用
ヒトFSHに対して作製されたCF12抗体のインビボ作用をヒトFSHの様々な調製物の生理活性とヒツジFSHの生理活性に対して評価した。
【0120】
図9AはヒトFSHの3種類の異なる調製物に対してCF12抗体が及ぼす顕著な増強作用を示している。それらの結果は5匹のメスからなるバッチより構成される代表的なバイオアッセイの結果である。ノンパラメトリックt検定(マン・ホイットニー検定)を用いてバッチ間の統計分析を行った。hFSHであるゴナールFの活性について、卵巣の平均重量の210%の増加(100gの体重当たり74mgに対して155mg、p<0.001)を含むかなりの有意な増強作用が記録された。同様に、ピュレゴンについて190%の増加が得られ(141mgに対して224mg、p<0.05)、フォスティモンについても卵巣の平均重量の160%の増加が記録された(85mgに対して161mg、p<0.05)。
【0121】
これらの実験を5回から7回繰り返し、それらの結果をまとめた(バッチhCG+hFSH ゴナールFおよびバッチhCG+hFSH ゴナールF+CF12についてn=40と47のメスのラット)。ボンフェローニ補正付きのパラメトリック検定(対応のないスチューデントのt検定)を適用した。表14に示されているように、hCG+hFSH(ゴナールF)混合物で従来通りに処置されたメスの卵巣の平均重量とhFSH ゴナールF/CF12複合体で処置されたメスにおいて測定された卵巣の平均重量との間に非常
に有意な170%の増加が示されており、平均重量がそれらのメスにおいて100gの体重当たり79.51±2.178mgの卵巣から100gの体重当たり134.8±4.985mgの卵巣まで増加している(
***、p<0.001)。
【0122】
【表14】
【0123】
ヒツジ起源のFSHに対するCF12抗体の増強作用を評価および定量するために同じアプローチを行った。
【0124】
図9Bは、0.5μgのヒツジFSH+hCGまたはhCG+CF12と予め複合体化された0.5μgのヒツジFSHでメスのラットを処置することによって得られたバイオアッセイ(5匹のメスからなるバッチ)の代表例を示している。CF12を含まない処置を受けたメスと比較してoFSH/CF12複合体+hCGで処置されたメスにおいて卵巣の平均重量の170%の増加が得られ、卵巣の平均重量が100gの体重当たり107mgから183mgへ推移した(
**、p<0.01)。
【0125】
この試験をより多く(n=10)に対して反復することによってoFSHの生理活性に対するCF12の増強作用が非常に有意に確認され(表15)、平均重量が従来の処置の場合の115.5±7.45mgからoFSH/CF12複合体+hCGで処置された場合の166.4±9.54mgまで増加した(
***、p<0.001)。
【0126】
【表15】
【0127】
前記抗体のV
H可変領域およびV
L可変領域の配列から開発されたCF12 scFvをヒトFSHの生理活性に対して同様に評価した。前もって、完全抗体の同じ注射量に相当する一回の注射につき0.06μg(2.5×10
−9molの完全抗体と等モルの量に相当する)から2μgまでの数種類の用量のscFvを評価した。そのバイオアッセイにおける様々な用量のscFvの比較より、一回の注射につき2μg、すなわち8×10
−8molのscFvの注射によって最適な増強作用が得られることが示された。
【0128】
ヒトFSHの様々な調製物について得られた結果が
図10Aに示されている。それらの結果は、前記scFvによって記録された作用が前記3種類のヒトFSH調製物に対して完全抗体を用いて測定された作用と非常に近いことを示している。卵巣の平均重量は、hFSH+hCGで従来通りに処置されたメスのラットと比較してhFSH/scFv/CF12複合体+hCGで処置されたメスのラットにおいて一貫して高かった。したがって、190%の増加がhFSHであるゴナールFについて記録され(CF12 scFvを
含まないバッチにおける89mgの平均重量に対してCF12 scFvを含むバッチにおける170mgの平均重量、p<0.01)、151%の増加がhFSHであるピュレゴンについて記録され(scFvを含まないバッチにおける86mgの平均重量に対してCF12 scFvを含むバッチにおける130mgの平均重量、p<0.05)、そして148%の増加がhFSHであるフォスティモンについて記録された(scFvを含まないバッチにおける77mgの平均重量に対してCF12 scFvを含むバッチにおける114mgの平均重量、P<0.05)。ノンパラメトリックt検定(マン・ホイットニー検定)を用いて分析を行った。卵巣応答の増加の程度がCF12完全抗体を用いて得られた増加の程度と等しい(同じ倍率)ことが留意されるべきである。この有意で重要な結果は、scFvによるにしても、または完全抗体によるにしても循環ゴナドトロピンの全く同一の増強作用をインビボで得ることができ、器官における生理学的応答を確実に増強することができることを示している。
【0129】
前記ホルモン/抗体またはscFvの混合物の注射の様々な方法をCF12の場合についても従来のプロトコル(皮下注射)と評価および比較した。したがって、前記ホルモン混合物の腹膜内注射を前記ホルモン混合物の腹膜内注射とそれに続き15分後に行った2つ目のCF12 scFvの注射と比較することを目的としたバイオアッセイを実施した。結果が
図10Bに示されており、それらの結果は2ステップで腹膜内注射された、すなわち1)hCG+hFSH混合物を注射され、その後で2)15分後に行った注射によりscFvを注射されたメスにおける卵巣重量の122%の増加、すなわちhCG+hFSH ゴナールFバッチにおける100gの体重当たり58.8mgの卵巣に対するhCG+hFSH ゴナールFとそれに続くscFvバッチにおける100gの体重当たり72mgの卵巣という増加を示している。その差はそれらの2つのバッチの間で数の少なさから有意ではないが、それらの結果は前記ホルモンと前記scFvを2ステップで、且つ、2つの異なる注射部位に注射することによるFSHの増強傾向を示している。したがって、増強されるべきホルモンを注射し、その後で時間と様々な注射部位に関して独立して抗体またはscFvを注射することを後の適用のために考えることができる。
【0130】
別の注射方式をホルモン/抗体複合体で処置された動物において評価した。一方の注射方式はhCG+FSH+CF12の単回皮下注射を有し、他方の注射方式は最初のFSH+CF12の皮下注射とその後の15分後のこれも皮下注射のhCGの注射を有した。
図19Cに示されている結果はそれらの2つの事例において観察された増強作用が似ていることを示しており、抗体を用いずに処置されたバッチの83mgという卵巣の平均重量に対して、CF12抗体で処置されたメスでは100gの体重当たり160mgの卵巣に対して159mgの卵巣である。
【0131】
ラットにおけるLH/CGの生理活性に対する抗体の増強作用
ヒツジLHは非常に高価であるため、これらの生物学的アッセイは、容易に入手でき、非常に純粋であり、且つ、安価な形態であるhCGを用いて実施された。前記抗体の作用を抽出型hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の2種類の調製物、すなわち一方の生殖補助医療処置の背景でのヒトの生殖に使用されるENDO5000(シェリングプラウ・ラボラトリー)と他方の獣医学で使用されるコルロン(MSDラボラトリー)に対して検討した。
【0132】
Scobeyら[13]のプロトコルにしたがって、アンドロゲン依存的に発生する精嚢の重量増に関してLHまたはhCGの生理活性を定量した。その重量はhCGの活性と比例して変化し、したがってそれにより、単独で、または試験抗体と複合体化されて注射されたホルモンの生物活性を定量および比較することが可能になる。1.5IUのhCG、または37℃で20分間にわたってプレインキュベートされた1.5IUのhCGと2μgの抗体の混合物の100μlを4日間にわたって一日一回皮下注射した25日齢の若
いラットを使用して前記プロトコルを実施した。5日目にそれらのラットの体重を測定し、その後で殺処理した。それらのラットの精嚢(SV)を取り出し、解剖し、そしてそれらの重量を量った。様々なバッチを用いて得られた結果を比較し、まとめるために精嚢重量が100gの体重当たりのmgとして表されている。各実験において、5匹のラットからなるバッチに対して前記条件の各々を検査した。同じ実験を数回繰り返した。
【0133】
図11A、BおよびCは、hCGであるコルロンとの複合体およびhCGであるEndo5000との複合体の状態であるCF12抗体で処置されたラットを用いて得られた結果を示している。
図11Aは5匹のラットからなる6つのバッチに対して行われたバイオアッセイの代表的結果を示している。hCG単独で処置されたバッチと比較した精嚢重量の220%の増加を含む非常に有意な増強作用(p<0.0001、クラスタル・ウォリス検定)が、hCG コルロン/CF12複合体を用いて得られた。hCG Endo5000/CA5複合体で処置されたバッチについても189%の重量増加を含む有意効果が得られた(p<0.0001)。CF12抗体単独で処置されたバッチは生理食塩水で処置された対照動物と比較して精嚢重量の変化を示していないことが観察されている。したがって、前記ホルモンに複合体化していないCF12は標的器官に対して特異的作用を持たない。
【0134】
CF12を用いて行われた様々なバイオアッセイの結果をまとめたものが
図11のヒストグラムBおよびCに表されている。前記ホルモン/CF12複合体の非常に有意な増強作用(p<0.0001、対応のないt検定)がhCGであるコルロンとhCGであるEndo5000を用いて測定され、
−それぞれ33匹と36匹という数の動物において、SVの平均重量はhCGであるコルロンで処置されたラットでは29.36mg/100gであったのに対して前記複合体で処置されたラットでは51.40mg/100g(175%の増加)であり(
図11B)、
−それぞれ18匹と20匹という数の動物において、SVの平均重量はhCGであるEndo5000で処置されたラットでは25.35mg/100gであり、前記複合体で処置されたラットでは50.54mg/100gであった(208%の増加)(
図11C)。
【0135】
実施例4:雌羊における内在性ゴナドトロピンの生理活性に対する本発明のリガンドの増強作用のインビボ測定
げっ歯類動物(小動物)においてCF12モノクローナル抗体の増強作用をインビボで実証し、特徴解析した後、多産でより大型の家畜、すなわち雌羊においてFSHの活性に対する各抗体の作用を研究することを目的とした。
【0136】
このため、処置される雌羊自身のホルモン(内在性ホルモン)に対する前記抗体の増強作用を評価することを目的として全て同じ年齢の思春期のイル・ド・フランス種の雌羊に対して試験を行った。特異性試験によりCF12抗体のヒツジFSHへの強い結合とヒツジLHへのより可変的な結合が示された。この目的のため、抗体だけの注射のみを含む処置がその処置の有効性を評価するために開発された。
【0137】
雌羊に設定されたそれらのプロトコルでは、したがって前記抗体は単独で注射され、メスのラットでの試験で行われたように外因性のFSHとプレインキュベートされることがなかった。さらに、各抗体はそれ以前にどのような卵巣刺激も受けていない雌羊に、すなわち、ゴナドトロピンを用いる排卵刺激のためのホルモン処理をその抗体の注射の前に受けていない動物に注射された。
【0138】
抗FSH CF12抗体の増強作用を発情期のちょうど真ん中(1月)または発情期の
最後(3月末)に行われたプロトコルの間に評価した。それらのプロトコルは全て、プロゲストゲン(45mgの酢酸フルロゲストン(FGA);MSD)を染み込ませた膣内スポンジを14日間にわたって差し込むことにより排卵周期を予め同期させた雌羊に対して行われた。対照雌羊(生理食塩水バッチ)、ブタFSH処理で刺激された雌羊(FSHバッチ)、および抗体だけを用いて刺激された雌羊(抗体バッチ)において排卵応答(排卵回数)および高品質の1つ以上の機能的黄体の樹立(プロゲステロン分泌の程度)を比較することにより増強作用を分析した。
【0139】
各プロトコルではLHの排卵前のピークを検出し、その日付をつけるためにELISA法によって血漿中LHアッセイを行った。排卵応答を評価するため、膣内スポンジの撤去から8日後に黄体の数を計数し、且つ、それらの黄体の外観を観察するために麻酔下で腹腔鏡検査法により卵巣の内視鏡観察を行った。
【0140】
その黄体の機能性と品質を評価するため、前記スポンジの撤去後の1日目から21日目までの毎日の血液試料を使用して定量的プロゲステロンELISAアッセイを行った。
【0141】
GraphPad Prismバージョン5.0ソフトウェア(GraphPad、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)を使用して全ての統計分析を行った。
【0142】
CF12抗体およびそのscFv
排卵の測定パラメーターおよび樹立された黄体の機能的品質の測定パラメーターを使用してCF12(IgM)およびそのscFvの増強作用を検討および比較した。注射用量は1mgを2回であった。
【0143】
発情期において実施されたプロトコルは次の4つのバッチから構成された。
−CF12抗体バッチ(n=7)は前記スポンジの撤去の24時間前に1mgの抗体の筋肉内注射を受け、そのスポンジが撤去されるときに2回目の1mgの注射を受けた。
−CF12 scFvバッチ(n=5)は前記スポンジの撤去の24時間前に1mgのscFvの筋肉内注射を受け、そのスポンジが撤去されるときに2回目の1mgの注射を受けた。
−「対照」バッチ(n=9)は前記スポンジの撤去の24時間前とその撤去時に生理食塩水の筋肉内注射を受けた。
−「FSH」バッチ(n=11)は前記スポンジの撤去の24時間前に100μgのブタFSH(pFSH)の筋肉内注射を受け、そのスポンジの撤去の12時間前に90μgの筋肉内注射を受けた。
【0144】
前記スポンジの撤去から8日後に卵巣の内視鏡検査を行った。
【0145】
血漿中プロゲステロンをELISAアッセイによってアッセイするために前記スポンジの撤去後の1日目から21日目までの毎日の血液試料を採取した。
【0146】
排卵応答の分析によって下の表16に示されている結果が得られた。フィッシャーの正確検定によって統計分析を行った。
【0147】
【表16】
【0148】
対照バッチおよびFSHバッチと比較して、CF12バッチおよびCF12 scFvバッチにおいて得られた結果は単独で注射された前記抗体またはそのscFvの排卵応答に対する非常に有意な効果を示している。実際に、血清ΦバッチおよびFSHバッチのそれぞれ44%および36%と比較して、2回の1mgの抗体またはscFvの注射を受けたメスの100%(CF12については7匹/7匹、およびCF12 scFvについては5匹/5匹)が排卵した(p<0.0001、フィッシャーの正確検定)。バッチの総数についてメス当たり得られた黄体の数は、FSHバッチおよび血清Φバッチと比較してCF12 scFvバッチにおいて有意に大きく(p<0.05、クラスカル・ウォリス検定)、それぞれ0.9個(FSH)および0.67個(血清Φ)の黄体に対して2.2個の黄体である。CF12 scFvバッチとCF12バッチの間には有意差が無い。
【0149】
LHピークが現れる平均時間には前記3種類のバッチの間で有意差が無い。それでも、LHピークに到達する時間(およびしたがって排卵の時間)がFSHバッチおよび特に血清Φバッチと比較してわずかに変化する傾向がCF12バッチおよびCF12 scFvバッチにおいて観察されている。この仮説ではこのことは前記抗体またはそのscFvを受領した雌羊におけるより良好な排卵同期化を示していることになる。
【0150】
様々なバッチにおける排卵後の黄体期におけるプロゲステロン分泌プロファイルが
図12Aに示されている。それぞれのバッチについて黄体の数に対してプロゲステロン濃度値(ng/ml)を正規化した。その図の各曲線は各バッチのメスにおいて各サンプリングポイントで測定されたプロゲステロン値の平均を表している。CF12バッチおよびCF12 scFvバッチについて得られた分泌曲線は非常に明白にFSHバッチおよび血清Φバッチの上である。得られた結果はCF12 scFvバッチ、CF12バッチ、FSHバッチおよび血清Φバッチについてそれぞれ前記スポンジの撤去から10日後に1.46ng/ml、1.4ng/ml、1.1ng/mlおよび0.6ng/mlの平均プロゲステロン値、および15日後に1.93ng/ml、1.78ng/ml、1.22ng/mlおよび1ng/mlの平均プロゲステロン値を示している。
【0151】
対応のあるノンパラメトリックt検定(ウィルコクソン検定)によってそれらの4本の曲線の比較を行った。CF12バッチおよびCF12 scFvバッチの曲線は血清Φバッチの曲線と有意に異なっている(p<0.01)。同様に、FSHバッチの曲線は対照バッチの曲線と有意に異なっている(p<0.001)。CF12およびCF12 sc
Fvで処置された雌羊の曲線とFSHで処置された雌羊の曲線との間の差は有意ではなく、したがって傾向を表している。
【0152】
プロゲステロン分泌曲線間の差を定量するためにGraphPad Prismソフトウェア・バージョン5.0を用いて曲線下面積(AUC)の分析を行った。結果が
図12Bに示されており、それらの結果はCF12 scFv曲線のAUC(16.98ユニット)が血清Φ曲線のAUC(8ユニット)よりも1.55倍有意に高いことを示している(p<0.01、ノンパラメトリックマン・ホイットニーt検定)。同様に、CF12曲線のAUC(16.78ユニット)と血清Φ曲線のAUC(8ユニット)は有意に異なっている(p<0.05、マン・ホイットニーノンパラメトリックt検定)。他方、FSH曲線のAUC(10.82ユニット)と血清Φ曲線のAUCの間に有意差は無く、この実験の環境ではCF12またはCF12 scFvを用いる処置がFSHを用いる処置よりも有効であることを示している。
【0153】
結論として、それらの結果の全てより、CF12の一価断片が二価CF12抗体と同じ増強作用を有することが示されている。それらの2つのバッチに含まれた雌羊の応答の間には有意差がこれまで観察されなかった。それらの2種類の分子のどちらかを用いる2回の1mgずつの筋肉内注射の形態の処置は、非常に有意なことにFSHを用いる従来の処置よりも
−排卵誘導に対する有効性に関して(100%の雌羊が排卵し、且つ、総数について雌羊当たり1.3個および0.8個追加の黄体が得られる)、
−黄体期を通してより多くのプロゲステロン分泌を有する樹立された黄体の品質に関して良好な結果を生じた。
【0154】
それらの結果の全てより、雌羊にインビボで注射されたCF12増強抗体は動物の内在性性腺刺激ホルモンと複合体化することができ、且つ、動物自身のホルモンの生物活性を増強することができることが示されている。
【0155】
雌羊におけるCF12抗体の増強作用は従来のFSHホルモン処理より強い卵巣刺激を誘導することができる。排卵誘導は発情期において100%であり、且つ、全ての事例において循環プロゲステロン濃度の大幅な増加が黄体期を通して維持される。この追加的作用はプロゲストゲン依存性胚発生不全率および流産のリスクの低下にとって重要である。
【0156】
CF12の一価scFv断片が雌羊における排卵の誘導についても黄体の品質とプロゲステロン分泌の増加についても完全抗体と同じ増強作用を誘導することが示された。さらに、我々のプロトコルにおけるCF12 scFvの注射により、処置された雌羊において抗CF12 scFv抗体の分泌が誘導されないことが分かった。したがって、一価断片の将来の使用によってある特定の雌羊において誘導され得る液性免疫応答のリスクが低下する。
【0157】
実施例5:メスのサルにおけるFSHの生理活性に対する本発明のCF12リガンドの増強作用のインビボ測定
ラット、メスのラットおよび雌羊においてCF12モノクローナル抗体の増強作用をインビボで実証し、且つ、特徴解析した後、そのモノクローナル抗体の増強作用をヒトに近い種、すなわちカニクイザル(Macaca fascicularis)において検討した。このため、ヒトFSH(hFSH)に対する前記抗体の増強作用を評価することを目的として少なくとも36か月齢の思春期のメスのサルに対して試験を行った。
【0158】
確立されたプロトコルにおいて、前記抗体はhFSHとの複合体(前記抗体が外因性のFSHとプレインキュベートされた)として注射されるか、またはhFSHの注射から2
0分後に単独で注射された。
【0159】
月経期の1日目にメスのサルが1.5mgの持続放出性GnRH調製(デカペプチル(登録商標)LP、3mg、IPSENファーマ)の筋肉内注射を受けた。GnRHの注射から15日後にそれらのメスのサルを様々なプロトコルに従って処置した。プロトコルにつき一匹のメスのサルを処置した。
【0160】
hFSHの最後の注射から36時間後に1000IUのhCG(絨毛性ゴナドトロピンEndo5000、MSD)をそれらの動物に注射した。hCGの注射から36時間後に開腹術によって穿刺により卵母細胞を取り出し、それらの卵母細胞の成熟の程度を評価するために顕微鏡下でそれらを観察した。
【0161】
卵胞成長の誘導(卵胞の表面積とエストラジオール分泌の程度)および良好な品質の黄体の樹立(プロゲステロン分泌の程度)を比較することによって増強作用を分析した。このため、卵胞を計数し、且つ、それらの表面積(mm
2で表される)を測定するために経腹卵巣超音波検査を48時間毎に行った。処置の1日目から卵胞穿刺より最大で30日後まで48時間毎に採取された血液試料により、定量的エストラジオールELISAアッセイ(pg/mlで表される)および定量的プロゲステロンELISAアッセイ(ng/mlで表される)を行うことができた。
【0162】
GraphPad Prismバージョン5.0ソフトウェア(GraphPad、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)を使用して全ての統計分析を行った。
【0163】
(1)25IUのhFSHの注射後に単独で投与されたCF12リガンドの作用
CF12の増強作用を最初にhFSHについて評価した。このため、1〜3と表示された3つのプロトコルを実施した。
(1)25IUのhFSHの単回注射で処置される動物:処置の1日目における25IUのヒトFSH(ゴナールF(登録商標)プレフィルドペン、メルクセローノ)の皮下注射(「hFSH 25IU X1」)、
(2)CF12+hFSHで処置される動物:処置の1日目と5日目に25IUのヒトFSH(ゴナールF(登録商標)プレフィルドペン、メルクセローノ)の20分間にわたる注射から20分後にCF12抗体(400μg)の皮下注射を行った(「hFSH 25IU+CF12 X2」)、
(3)8日間にわたって25IUのhFSHで処置される動物:8日間にわたる25IUのヒトFSH(ゴナールF(登録商標)プレフィルドペン、メルクセローノ)の毎日の皮下注射(「hFSH 25IU X8」)。
【0164】
卵胞成長の誘導(卵胞の表面積)を超音波検査により測定することによってそれらの3種類の処置の効果をモニターした。処置開始から9日後(9日目)に得られた結果が
図13Aに示されている。それらの結果は、25IUのhFSHの単回注射で処置されたメスのサルがFSH処置の開始から9日目において被刺激卵胞を示さなかった(曲線下面積がゼロ)ことを示している。逆に、処置の1日目と5日目に400μgのCF12+25IUのhFSHの混合物で二回処置されたメスのサルは28mm
2という被刺激卵胞の総面積を示した。8回のhFSHの注射を受けたメスのサルでは被刺激卵胞の総面積は35mm
2であった。
【0165】
処置開始から11日後(11日目)に得られた結果が
図13Bに示されている。それらの結果は、CF12+hFSHで二回処置されたメスのサルが6個の被刺激卵胞で29mm
2という卵胞総面積を示したことを示している。対照的に、8回のhFSHの注射を受けたメスのサルにおいて測定された卵胞の面積は11個の被刺激卵胞で22.6mm
2で
あった。したがって、400μgのCF12+25IUのhFSHの2回の注射によって25IUのhFSHの8回の注射よりも良好な卵胞の成長が誘導され、それぞれ4.83mm
2/卵胞に対して2.05mm
2/卵胞であった。卵胞の成長に対するその複合体の効果は、被刺激卵胞の面積の減少が顕著であるFSHの8回の注射を含む処置と対照的に11日目まで一定であった。この結果は、循環FSHが内在性のものであるか、または外因性のものであるかに関係なく、メスのサルにおけるその循環FSHに対するCF12のインビボでの増強作用を示している。実際には、FSHの半減期は1時間未満なので、処置の1日目と5日目にCF12が25IUのhFSHと共に注射されたときに観察された効果は共注射されたFSHの効果だけによるものとすることができず、前記メスのサルの内在性FSHの効果も反映している。
【0166】
(2)37.5IUのhFSHの注射後に単独で投与されたCF12リガンドの作用
次に37.5IUのhFSHの注射後に後から単独で注射されたCF12の増強作用を検討した。このため、GnRHの注射から15日後に1から4と表示された4つのプロトコルに着手した。プロトコルにつき1匹のメスのサルを処置した。
(1)12日間にわたって37.5IUのhFSHで処置される動物:12日間にわたる37.5IUのヒトFSH(ゴナールF(登録商標)プレフィルドペン、メルクセローノ)の毎日の皮下注射(「hFSH 37.5IU X12」)、
(2)毎日37.5IUのhFSHで処置され、且つ、2日毎に400μgのCF12で処置される動物:12日間の37.5IUのヒトFSH(ゴナールF(登録商標)プレフィルドペン、メルクセローノ)の毎日の皮下注射とhFSHの注射から20分後における400μgの用量のCF12抗体の2日毎の注射(「hFSH 37.5IU X12+400μg CF12 X6」)、
(3)毎日37.5IUのFSHで処置され、且つ、2日毎に70μgのCF12で処置される動物:12日間の37.5IUのヒトFSH(ゴナールF(登録商標)プレフィルドペン、メルクセローノ)の毎日の皮下注射とhFSHの注射から20分後における70μgの用量のCF12抗体の2日毎の注射(「hFSH 37.5IU X12+70μg CF12 X6」)、
(4)8日間にわたって75IUのFSHで処置される動物:8日間にわたる75IUのヒトFSH(ゴナールF(登録商標)プレフィルドペン、メルクセローノ)の毎日の皮下注射(「hFSH 75IU X8」)。
【0167】
卵胞成長の誘導(mm
2単位の卵胞の表面積)を超音波検査により測定することによってそれらの4種類の処置の効果をモニターした。
図14は卵胞穿刺の日(15日目)に各処置の後に得られた被刺激卵胞の表面積を表している。卵胞刺激の強度は処置に応じて変化する。その刺激の強度は「hFSH 37.5IU X12+70μg CF12 X6」処置を受けたメスのサルにおいて最大であり、且つ、非常に大きなものであり、それらのサルについて387.5mm
2という表面積が測定された。それはメスの対照サル「hFSH 37.5IU X12」において測定された112.3mm
2であった表面積よりも3.5倍大きく、且つ、「hFSH 37.5IU X12+400μg CF12 X6」で処置されたメスのサルにおいて得られた124.2mm
2という表面積よりも3.2倍大きい。最小の面積(87.2mm
2)の卵胞が75IUのhFSHで8日間にわたって処置されたメスのサルにおいて得られた。
【0168】
穿刺日に得られた卵胞の総数は「hFSH 37.5IU X12+400μg CF12 X6」と「hFSH 75IU X8」については7であり、「hFSH 37.5IU X12」と「37.5IU X12+70μg CF12 X6」については10である(表17)。
【0169】
【表17】
【0170】
最大の卵胞のサイズは処置間でかなり変化することが強調されるべきである。こうして、直径が7mmよりも大きい5個の卵胞(最大のものは9.15mmの直径を有する)の形成が「37.5IU X12+70μg CF12 X6」処置によって誘導され、一方で他の全ての処置は7mm未満の卵胞しか誘導しなかった。
【0171】
穿刺により採取された卵母細胞の数は「hFSH 37.5IU X12+400μg
CF12 X6」と「hFSH 75IU X8」については11個の卵母細胞であり、hFSH 37.5IU X12については8個の卵母細胞であった。hFSH 37.5IU X12+70μg CF12 X6で処置されたメスのサルは、穿刺の日の前に自然に排卵が起きたことを示す若い黄体を卵巣に示した。
【0172】
これらの結果は、FSH単独によって誘導される卵胞成長よりもずっと大きな卵胞成長を引き起こし、且つ、高度に刺激され、前進した排卵応答を引き起こす、70μgの用量で投与されたCF12の非常に大きな増強作用を示している。「hFSH 37.5IU
X12+400μg CF12 X6」処置と「hFSH 37.5IU X12+70μg CF12 X6」処置との間で観察された応答の差も、CF12が及ぼす増強作用が用量依存的であり、70μgの用量が卵巣に対して最も強い刺激を誘導することを示している。
【0173】
処置の1日目から卵胞穿刺より最大で30日後まで48時間毎にエストラジオールとプロゲステロンの分泌を測定することによっても前記4つの処置の効果を分析および比較した。
【0174】
結果が
図15に示されており、各処置が前記周期を通して各メスザルについて得られたエストラジオールとプロゲステロンの分泌プロファイルを示すグラフ(A、B、C、D)によって示されている。
【0175】
37.5IUのhFSH単独で(
図15A)、または400μg(
図15B)および70μg(
図15C)のCF12の処置と組み合わせて処置されたメスのサルが相互に有意に異なるエストラジオール分泌プロファイルを示している(
****p<0.0001、二元配置ANOVA)。9日目では濃度はそれぞれ157pg/ml、323pg/mlおよび220pg/mlであり、CF12を組み合わせる処置でより良好なエストロゲン応答を示している。卵胞穿刺の2日前である13日目ではエストラジオール濃度はそれぞれ70pg/ml(
図15A)、200pg/ml(
図15B)および1950pg/ml(
図15C)である。対照的に、卵胞穿刺の2日前にhFSH 75IU X8で処置されたメスのサル(
図15D)では濃度は395ng/mlである。これらの結果は、エストラジオールピークが、FSHだけを用いる対照処置と比較して400μgの用量のCF12については3倍増加し、70μgの用量のCF12については28倍増加することになる、エストロゲン応答に対するCF12の非常に大きな増強作用を示している。「hFSH 37.5IU X12+70μg CF12 X6」の場合に13日目に観察された大きなエストラジオールピークは卵胞穿刺の前に起きた早期排卵の誘導を説明し得る。
【0176】
良好な品質の黄体の樹立を反映するプロゲステロン分泌プロファイルを測定した。
図15A、
図15Bおよび
図15Cの比較から、FSH単独で処置されたメスのサルと比較したCF12とFSHで処置されたメスのサルにおけるプロゲステロンレベルの用量依存的増加が非常に明確に示されている。したがって、卵胞穿刺から4日後である19日目においてプロゲステロン濃度はFSH単独については2.4ng/mlであり(
図15A)、400μgのCF12については14.5ng/ml(6倍)であり(
図15B)、70μgのCF12については37ng/ml(15倍)に達する(
図15C)。対照的に、75IUのFSH単独で8回処置されたメスのサルにおける卵胞穿刺から4日後に測定されたプロゲステロンレベルは1.5ng/mlであり(
図15D)、37.5IUで12回の処置と統計的に異ならない。逆に、400μgと70μgのCF12での処置によってFSH単独での処置と統計的に異なるプロゲステロンレベルが誘導されている(
****p<0.0001、二元配置ANOVA)。
【0177】
これらの結果は、CF12を受領したメスのサルにおける黄体のより良好な品質を反映する血中プロゲステロンレベルに対するその抗体の増強作用を非常に明確に示している。子宮内膜の形成、胚の着床、および胚の初期発生におけるプロゲステロンの重要な役割のため、前記抗体は動物種において、且つ、女性における適用にとって重要な存在となっている。
【0178】
FSHの非常に短い半減期(1時間未満)を考慮すると、(25または37.5IUのhFSHを用いた)結果の全てによって、循環FSHが内在性のものでも、または外因性のものでも、CF12抗体はその循環FSHに対して増強作用をインビボで及ぼすことができることが確認されている。70μgの抗体で処置されたメスのサルにおいて観察された非常に大きな効果は、実際は前記メスのサルの内在性ホルモンに対する前期抗体の「長期」作用と関連している。
【0179】
これらの結果より、人工受精の状況下で単排卵を誘導するためであれ、または体外受精(IVF)の状況下で多排卵を誘導するためであれ、適切な投与量を規定することによりヒトにおいて臨床的に、特にART治療において排卵を誘導するための新規治療法を確立する手掛かりがCF12抗体によって与えられる可能性があることも示されている。
【0180】
実施例6:本発明のCF12リガンドが認識するエピトープの予測、およびそのパラトープの予測
CF12抗体のエピトープが、天然型立体構造と非天然型立体構造を区別することを可能にするボロノイ図と様々なスコア関数進化的学習法による最適化を用いるタンパク質構造モデリングに基づくプロテインドッキングアルゴリズム(Bernauer et al., Bioinformatics 2007, 5:555, [14]; Bernauer et al., Bioinformatics 2008, 24:652, [15]; Bourquard et al., PLoS One 2011, 6:e18541, [16] および Bourquard et al., Sci. Reports 2015, 5:10760 [17])を用いて様々な種の性腺刺激ホルモンに対して決定された。
【0181】
各抗体がヒトFSH(hFSH)、ヒトLH(hLH)、ヒトCG(hCG)、ヒツジFSH(oFSH)およびヒツジLH(oLH)、ブタFSH(pFSH)およびブタLH(pLH)とドッキングされた。hFSHおよびhCGの結晶構造がそれぞれ4MQWおよび1QFWとしてプロテインデータバンク(PDB)において入手可能である。ヒトFSH受容体の細胞外ドメインと複合体化されたヒトFSHの構造 (Fan and Hendrickson, Nature 2005, 433:269) [18]が使用された。他のホルモン(hLH、oFSH、oLH、pFSHおよびpLH)については相同モデルを作製し、そしてドッキングのために使用した。
【0182】
CF12抗体の3D構造は入手できないのでCF12の一価VH断片と一価VL断片の配列を使用して検討を行った。このために可変部分の相同モデルを作製した。VHモデルとVLモデルを異なる構造から別々に作製し、VHモデリングを支援するものとして働いたその構造からそれらのモデルの配向を決定した。相同モデルとして使用される構造であるCF12のVH用の1PLVとCF12のVL用の3TT1はプロテインデータバンク(PDB)において入手可能である。
【0183】
そのドッキングの結果が
図16に示されている。CF12リガンドは前記の7種類の標的ホルモンに同様にドッキングするようである。そのエピトープは検討されたゴナドトロピンのαサブユニットとβサブユニット上に断続的に局在する幾つかの領域によって規定されている。そのエピトープにはヒトFSH受容体のエクトドメインのHis7−Cys8−Ser9−Asn10配列も含まれている。したがって、CF12リガンドのそのエピトープは非常に立体構造的である。すなわち、そのエピトープは前記ホルモンのαサブユニットとβサブユニットの幾つかの領域と前記受容体の配列の両方から構成されている。これらの断続的な領域の全てが前記ホルモンとそのホルモンの活性化型受容体の天然の立体構造において空間的に近傍にある。
【0184】
CF12リガンドとの接触面に含まれる前記ホルモンと前記受容体の様々な残基が
図16中の長方形によって囲まれている。hFSHのαサブユニット上の斜線部分によって表示されている2つの残基は主要な相互作用に関与し、したがって抗体/抗原認識に主要な役割を有する。すなわち、これらの残基はhFSHのαサブユニットの位置9のグルタミン酸(Glu9)と位置33のフェニルアラニン(Phe33)である。これらの2つの残基は他の標的ホルモンの配列において同一であり、認識される。前記接触面に含まれるαサブユニットの他の残基の中ではGlu9をはじめとする9つの残基を含む領域が留意されている。その領域はGln5−Asp6−Cys7−Pro8−Glu9−Cys10−Thr11−Leu12−Gln13モチーフである。
【0185】
前記天然ホルモンにおいて空間的に近傍にある位置35のアルギニン残基(Arg35)と位置56のグルタミン酸残基(Glu56)の存在も前記エピトープにおいて留意されている。これらの2つの残基によってβサブユニットのC末端が固定され、そうして「シートベルト」がαサブユニットの周りに固定される。これらの2つの残基は全ての標的ホルモンにおいて常に存在し、且つ、認識される。それらの残基は前記ホルモンの安定性と生理活性に重要な役割を果たす。この機構により、これらの残基に前記抗体が結合することでFSH二量体の安定性を高めることが可能になる。
【0186】
CF12リガンドは前記シートベルトを構成するβサブユニットのC末端の残基100〜102および残基108〜109も認識する。このシートベルトの役割は前記ホルモンのα/β二量体の結合を安定化することであるので、これらの2つの残基へのCF12リガンドの結合はシートベルトを確実に締めることに役立ち、そうして前記ホルモンの生理活性に必須である前記二量体のより良好な安定性をもたらすとも考えられている。
【0187】
CF12リガンドのエピトープの別の特徴はCF12によって認識される接触面にヒトFSH受容体のN末端領域の残基7〜10(His7−Cys8−Ser9−Asn10)が含まれることである。CF12リガンドの結合は、前記ホルモンの受容体上でのそのホルモンの相互作用をこの機構を介して促進し、それによって「増強」作用を確立することに役立つとも考えられている。
【0188】
表18はCF12リガンドのパラトープの様々な領域を提示している。使用されている付番は配列番号2および配列番号4の配列の付番である。
【0189】
2本のVH鎖とVL鎖がそれらの3か所のCDRとそれらのフレームワークの幾つかの残基を介して前記ホルモンの認識に関与している。
【0190】
主な相互作用について、hFSHのαサブユニットのGlu9残基はVH鎖のCDR3のTyr102残基とAsp104残基およびVL鎖のLeu50残基によってそれぞれ認識される。そのαサブユニットのPhe33残基はVH鎖のCDR1のSer31残基とTyr33残基およびVH鎖のCDR2のTyr52残基によって認識される。
【0191】
【表18】
【0192】
表18:CF12リガンドのエピトープを構成する様々な領域とそのリガンドのパラトープを構成する様々な領域。主な相互作用に関与する残基が斜線によって示されている。
【0193】
αサブユニットのArg35残基とGlu56残基に対する相互作用にはVH鎖の幾つかの残基が関与する。CDR1のSer30残基とCDR2のTyr52残基およびGly54−Thr55残基がArg35と相互作用する。CDR2のTyr52残基はαサブユニットのGlu56とも相互作用する。
【0194】
β鎖(シートベルト)のC末端に対する相互作用にはVH鎖の幾つかの残基、すなわちCDR1のSer30残基、CDR2のGly54残基およびフレームワーク3のAsp73−Thr74−Ser75残基が関与する。
【0195】
そのVH鎖だけがFSH受容体のエクトドメインの認識にも関与し、特に位置26のグリシン(Gly26)を含むその鎖のCDR1、およびフレームワーク1のある特定の残基(Gln1−Gly2−Gln3、Lys23−Thr24−Ser25)、およびフレームワーク3のある特定の残基(Ser75)が関与する。
【0196】
結論として、CF12リガンドは、hFSHのαサブユニット、βサブユニットおよび特にシートベルトを形成するそのサブユニットのC末端に関係し、且つ、FSH受容体のエクトドメインにも関係する高度の立体構造エピトープを認識することを特徴とする。VH鎖は基本的に前記受容体との相互作用に関与し、VL鎖は前記ホルモンとの相互作用に関与する。このエピトープによってCF12リガンドは一方で前記ホルモン二量体の結合を安定化することができ、他方で前記ホルモンのその受容体への結合を安定化することができる。これらの2つの機構は前記ホルモンの受容体上でのそのホルモンのより良好な相互作用の形成について相補的であり、且つ、ゴナドトロピンに対するCF12リガンドの増強作用の基礎を構成する可能性がある。
【0197】
実施例7:本発明のCF12リガンドの様々な断片の構築、作製、および特性解析
ヒツジFSHおよびヒトFSHの生物活性を増強する能力を評価するためにCF12抗体の様々な断片を構築した。「CF12 VL」と呼ばれる軽可変鎖だけを含む断片、「CF12 VH」と呼ばれる重可変鎖だけを含む断片、および本発明の実施例1第4段落に記載されている基準のCF12 scFvのVH−VL配列(配列番号10および配列番号11)と比較して逆のVL−VH順で構築された「リバースCF12 scFv」を作製した。
【0198】
(1)抗体断片の構築と作製
CF12抗体から得られたCF12 VL断片とリバースCF12 scFv断片をコードする合成遺伝子がATG:バイオシンセティクスGmbH(ドイツ)によって合成された。リバースCF12 scFvはCF12 scFvのCF12 VL−リンカー−CF12 scFvのCF12 VHという融合体から構成される。各合成遺伝子はpSW1プラスミド[7]の配列を融合することにより設計されており、HindIII部位とPelBタンパク質をコードする配列の末端との間に含まれ、そして合成予定の目的のタンパク質の配列(配列番号27および配列番号31)の横にXhoI制限部位が付加される。それらの配列はpSW1プラスミドのHindIII部位とXhoI部位の間に挿入されている。大腸菌での発現向けにコドンを最適化した。
【0199】
pSW1CF12 VH発現プラスミドは、pSW1リバースCF12 scFvプラスミドの次の酵素による消化から生じた断片のpSW1プラスミド[7]PstI−XhoI部位への挿入により得られた。
【0200】
それらの構築物の品質のシーケンシングによる検証の後、pSW1−CF12 VLプラスミド、pSW1−CF12 VHプラスミドおよびpSW1リバースCF12 scFvプラスミドを使用して、コンピテントセルになった[8]HB2151細菌(T53040、Interchim、フランス)のヒートショックによる形質転換を行った。
【0201】
【表19】
【0202】
【表20】
【0203】
【表21】
【0204】
本発明の実施例1において先に記載された方法に従って断片の作製を行った。
【0205】
(2)FSHの生理活性に対するCF12 VL断片、CF12 VH断片およびリバースCF12 scFv断片の作用のインビトロ測定
本発明の実施例2において先に記載されたプロトコルに従い、ヒトFSH受容体とGlosensor(登録商標)システムが安定的に形質移入されたHEK293細胞株を用いてヒトFSHの生理活性に対する「CF12 VL」断片、「CF12 VH」断片および「リバースCF12 scFv」断片のインビトロ作用を検討した。単独の、または混合物としての「CF12 VL」断片および「CF12 VH」断片をそれぞれ40nMで検査した。リバースCF12 scFvをちょうど基準CF12 scFvのように80nMの濃度で検査した。ヒトFSHを0.1nMで検査した。
【0206】
図17は、0.1nMのヒトFSH(hFSH)が単独で、または様々なCF12断片と複合体化されて存在する中で得られた、時間(分)の関数として相対発光単位で表されるcAMP産生カイネティクス曲線を示している。4つの条件、すなわちhFSH+CF12 VL複合体(
図17A)、hFSH+CF12 VH複合体(
図17B)、hFSH+リバースCF12 scFv複合体(
図17C)、および40nMのCF12 VLと40nMのCF12 VHからなる等モルの混合物とhFSHの複合体(
図17D)をhFSH単独の条件と比較した。発光応答のレベルを刺激から40分の時点で比較する。
【0207】
0.1nMのhFSHと複合体化された40nMの濃度の「CF12 VL」断片が非常に有意な増強作用(p<0.001)を及ぼし、その作用はhFSH単独による刺激と比較して、CF12 scFv(180%の増加)に匹敵するように、細胞応答を218%増加させる(
図17A)ことが観察されている。0.1nMのhFSHと複合体化された40nMの濃度の「CF12 VH」断片は非常に有意な増強作用(p<0.001)を及ぼし、その作用はhFSH単独による刺激と比較して、CF12 scFv(180%の増加)よりも大幅に、細胞応答を250%増加させる(
図17B)。
【0208】
リバースCF12 scFv(
図17C)は基準CF12 scFvと同様にFSHの作用を増強し、両方ともFSHに対する応答と比較して180%の発光シグナルの増加を提示しており、この作用は有意である(p<0.001)。
【0209】
最後に、hFSHと複合体化されたCF12 VHとCF12 VLの2種類の断片の混合物(
図17D)は278%という有意な細胞応答の増加(p<0.001)を誘導し、その増加は基準CF12 scFv(180%の増加)よりも大きい。
【0210】
これらの結果の全てから、単離されたVL断片またはVH断片がFSHの生理活性に対して増強作用を及ぼすことができることが示されている。これに関し、それらの2本の可変鎖のFSH/受容体複合体上での相互作用への関与を示す本発明の実施例6に記載されている相互作用モデルの予測が検証されている。そのVLとVHの2つの断片の混合物はこのアッセイにおいて最も大きな増強作用を及ぼしている。
【0211】
(3)メスのラットにおけるFSHの生理活性に対するCF12 VL断片、CF12
VH断片およびリバースCF12 scFv断片の増強作用のインビボ測定
インビトロで特徴解析された後、hFSHの生理活性に対する様々なCF12断片の増強作用がメスのラットにおいてインビボで検討された。
【0212】
FSHの生理活性を測定するため、使用したプロトコルは本発明の実施例において記載されたSteelmanとPohleyの生物学的アッセイ (Steelman SL, Pohley FM. Endocrinology, 53:604-616. 1953) [12]のプロトコルであった。各バッチは5匹のメスのラットから構成された。
【0213】
結果が
図18に示されている。リバースCF12 scFvと複合体化されたhFSHで処置されたバッチは、基準hFSH/CF12 scFv複合体で処置されたバッチの(160±5mg)を有する100g当たりの卵巣平均重量よりもわずかに多い100gの体重当たり195±15mgという卵巣平均重量、すなわちホルモン処置のみを受けたバッチと比較した175%の増加(p<0.01)を生じた。hFSHと複合体化されたCF12 VL断片およびCF12 VH断片で処置されたバッチはそれぞれ186±24mgおよび237±15mgという卵巣平均重量、すなわちホルモン処置のみを受けたバッチと比較した167%および213%の増加(p<0.05およびp<0.001)を有した。
【0214】
これらの結果は、hFSHと複合体化されるscFvの構築の順序(VL−VH対VH−VL)がFSHの生理活性に対するそのscFvの増強特性に影響しないことを示している。それらの結果は、CF12の可変鎖、特にVL断片が前記ホルモンの生理活性をインビボおよびインビトロで増強することができることも非常に顕著に示している。このことは、本発明の実施例7に記載されている相互作用モデルによって予測されるように、それらの2本の鎖のこの作用へのそれぞれの関与を反映している。
【0215】
参照文献のリスト
1- Patent EP 1518863
2- International application WO 2012/066519
3- Brochet et al., Nucl. Acids Res., 36: W503-508, 2008
4- Giudicelli et al., Cold Spring Harb Protoc., 2011(6): 695-715, 2011
5- Giudicelli et al., Nucl. Acids Res., 33: D256-261, 2005
6- Corpet, Nucl. Acids Res., 16(22): 10881-10890, 1988
7- Ward et al. Nature, 341: 544-546, 1989)
8- Li et al., Afr. J. Biotechnol., 9(50): 8549-8554, 2010
9- Chopineau et al., Mol. Cell Endocrinol., 92(2): 229-239, 1993
10- Wehbi et al., Endocrinology, 151(6): 2788-2799, 2010
11- Reverchon et al., Human Reprod., 27(6): 1790-1800, 2012
12- Steelman SL, Pohley FM., Endocrinology, 53: 604-616, 1953
13- Scobey et al, Reprod. Biol. Endocr. 3 :61, 2005
14- Bernauer et al., Bioinformatics, 5: 555, 2007
15- Bernauer et al., Bioinformatics, 24: 652, 2008
16- Bourquard et al., PLoS One, 6:e18541, 2011
17- Bourquard et al., Sci. Reports, 5:10760, 2015
18- Fan and Hendrickson, Nature, 433: 269, 2005.