【実施例1】
【0202】
化合物合成及びその特徴付け
1.1- X線構造及び計算研究
c-Src-SI192の結晶化及び構造決定。
Michalczykら
58によって先に報告されているものと同様の条件を使用して、阻害剤SI192をc-Srcと共結晶化した。手短に述べると、最終濃度の540μM阻害剤(DMSO中100mMストック)及び180μM野生型c-Src (50mMトリス pH8.0、100mM NaCl、1mM DTT、5%グリセロール(v/v)中に貯蔵)を氷上で1時間にわたってプレインキュベートして、結晶化前に酵素-阻害剤複合体を形成した。1μLタンパク質-阻害剤溶液を1μLリザーバー溶液(0〜30mM NaCl、pH7.0、9〜20%エチレングリコール)と混合した後、懸滴法を使用し、20℃で結晶を成長させた。30% (v/v)グリセロールの更なる添加により、すべての結晶を凍結させた。c-Src-SI192複合体結晶の回折データを、Swiss Light Source(PSI社、Villingen、Switzerland)のPX10SAビームラインで、1Åに近い波長を使用して2.1Åの解像度まで収集した。データセットをXDS
60で加工し、XSCALE
59-60を使用してスケーリングした。
【0203】
c-Src-SI192の構造決定及び精密化。公開されているc-Src構造2OIQ
62をテンプレートとして使用するPHASER
61を用いる分子置き換えによって、c-Src-阻害剤複合体構造を解明した。不斉単位中の2個のc-Src分子を、プログラムCOOTを使用して手動で改変した
63。モデルを、最初にシミュレートしたアニーリングを使用してCNS
64で精密化して、モデルバイアスを除去した。最終精密化は、REFMAC5を用いて実施した
65。阻害剤トポロジーファイルは、Dundee社PRODRG2サーバーを使用して生成した
66。精密化された構造をPROCHECKで検証した
67。詳細データ、精密化及びラマチャンドラン統計を、Table 1 (表1)に提供する。
【0204】
【表1】
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【0205】
コンピューターモデリング
ループモデリングプロトコール。c-SrcのFASTA配列をクエリーとして使用し、本発明者らの結晶構造(SI192と複合体としたc-Src)の2つの鎖の座標を今度はテンプレートとして用い、プログラムPrimeを使用することによって不足残基を構築した
68。各鎖について、正確さのレベルとして「拡張」を選択する(6と11残基との間のループ長のために推奨される)ことによってシリアルループサンプリングアプローチを適用し、最低エネルギー立体配座を次の分析のために確保しておいた。同様に、Primeを使用して、Cys277不足残基の構築によって鎖BのA-ループを充填し、鎖A中に存在しないアミノ酸300及び301を組み立てた
69。戻す構造の最大数を10に設定した。10kcal/molのエネルギーカットオフを適用した。ループ立体配座がクラスター化し、各クラスターの代表を選択した。最高得点のループ構造を最後に選択した。
【0206】
モンテカルロ/自由エネルギー摂動。MC/FEP計算は、MCPROプログラム及び下記の標準的なプロトコールを用いて実施した
70,71。c-Src-リガンド複合体についてのZ-マトリックスは、本発明者らの結晶構造(PDB-コード: 4O2P)内のSI192のポーズから出発し、分子成長プログラムBOMB
70を用いて取得した。モデルは、リガンドに最も近い160のアミノ酸残基を含んでいた。すべての複合体について、初期構造に対し、短コンジュゲート勾配最小化を行って、あらゆる不都合な接触を解放した。遊離リガンドについての座標は、複合体からの抽出によって取得した。次に、OPLS/CM1Ax力場及びGB/SA水和を用いるBOSS
72プログラムを使用して、リガンドについて1500工程の立体配座の検索分析を行った。結果として生じた、最低エネルギーを持つ配座異性体をFEP計算に使用した。未結合のリガンド及び複合体を、25Åの半径を持つTIP4P水球体(「キャップ」)と溶媒和させた。溶質原子と密着しすぎている水分子は除去した。各システムについて全体的な電荷中性を維持するために、少数の遠隔側鎖を中和した。任意のリガンドの10Å以内のリガンド及びタンパク質側鎖を、MCシミュレーション中にサンプリングした。唯一の制約は側鎖における結合長さであり、すべての主鎖原子を短コンジュゲート勾配最小化後に凍結させた。システムのためのエネルギー論を、タンパク質についてはOPLS-AAx力場、及びリガンドについてはOPLS/CM1Axを用いて評価した
73。CM1A原子電荷を、中性分子については1.14倍でスケーリングした。結合の自由エネルギーにおける差異は、1つのリガンドから、水中で遊離している及びタンパク質と結合している両方の別のリガンドへの変換を必要とする通常の熱力学サイクルから決定した。FEP計算では、11ウィンドウの単純な重複サンプリングを利用した。未結合のリガンドについては、各ウィンドウは、平衡の40Mコンフィギュレーション及び平均化のための60Mコンフィギュレーションからなるものであった。結合の計算については、各ウィンドウは、溶媒のみ平衡の20Mコンフィギュレーション、完全平衡の40Mコンフィギュレーション及び平均化の50Mコンフィギュレーションを網羅していた。ハロゲン結合スキャンの場合、コンフィギュレーションの数は、平衡の60M及び平均化の80Mまで増大した。すべてのMCシミュレーションは、298Kで実行した。
【0207】
X線構造及び計算研究。C6置換された誘導体結合モードのより深い構造的な理解を獲得するために、本発明者らは、c-Srcのキナーゼドメイン(aa 256〜533)とヒット化合物Si192との複合体の結晶構造を決定した。回折データを2.1Å解像度まで収集し、その後のデータ加工及び精密化は、この文書において鎖A及び鎖Bと称される結晶セルユニット内に、2個のタンパク質分子を呈した。経験的に決定されたタンパク質-リガンド構造の比較分析及び先のドッキング研究は、c-Srcに対してSi192の一致する結合モードを例証した(
図2)
20。C4アニリノ置換基及びN1側鎖は、疎水性領域I及びII内にそれぞれ位置付けられている。更に、X線構造は、2つの予測された水素結合の存在を裏付け、これは、Thr338側鎖及びピラゾロピリミジン足場のN2と相互作用してMet341の骨格と接触するC4アミノ基を伴うものであった。注目すべきことに、同じ結合配向は、化合物Si192について、各鎖のATP結合ポケット内で観察された。しかしながら、活性化ループの多くの残基が十分に定義されていないにもかかわらず(鎖A中の413から424まで及び鎖B中の411から424まで)、2つの鎖の間の有意な差異は、そのような柔軟なループの3D転位において(aa 402〜423)並びにαC-ヘリックスの位置において(aa 303〜318)及びグリシンリッチなループ立体配座において(aa 273〜281)観察された(
図3A)。特に、鎖Aにおいて、Glu310側鎖は、Tyr527でリン酸化されたc-Srcの閉鎖及び阻害されたもの(PDBコード: 2SRC)と同様の立体配座を採用しているATP結合部位から離れて突出している
75。対照的に、鎖Bにおいて、Glu310は、その側鎖が、活性部位に向けられて活性キナーゼの典型であるLys295との塩橋を形成しているのを示す。その上、鎖Aにおいて、活性化ループの解明されたアミノ酸(Phe405〜Asp413)は、リン酸化c-Src (PDBコード: 2SRC)と同一ではないが同様に3ターンのアルファヘリックスに配置されている
75。逆もまた同様に、鎖Bの決定された活性化ループは、c-Srcの活性立体配座(PDBコード: 1Y57)について解明されたものを想起させるものである
76。鎖AとBとの間の別の有意な差異は、DFGモチーフの配向にあり、鎖Aにおいて、Glu404は、その側鎖をATP結合部位中に深く突出しており、それにより、C4置換基を内包する疎水性ポケットIのサイズを低減させる。小分子阻害剤の存在下におけるc-Srcの構造的可塑性については、最近記述された
77。立体配座の差異を考慮に入れるために、両方の鎖をその後の計算研究すべてにおいて使用した。最初に不足残基を充填するために分子モデリングプロトコールを適用し(詳細については上記の実験の項を参照)、2つの精密化された鎖を互いに整列させた(
図3B)。これらの完成した構造から出発し、モンテカルロ自由エネルギー摂動(MC/FEP)計算の結果によって主に導かれる計算的駆動アプローチを使用して、Si192の最適化を追求した
78。とりわけ、Si192のラセミ混合物をX線結晶構造の調製に使用したが、R-鏡像異性体のみが両方の鎖中のキナーゼ活性部位内で結合することができると分かり、キラル中心についての更なる調査に向かって本発明者らの研究を後押した。c-Srcに対する2つの鏡像異性体の活性において差異は観察されなかった(以下のインビトロ生物学的活性の段落、Table 6 (表7)を参照)。
【0208】
次に、本発明者らは、c-Srcキナーゼに対する親和性を増大させることによってSi192の活性を最適化することを狙いとして、C4アニリノ環に着目した。MC/FEPハロゲン(塩素、臭素及びフッ素)及びヒドロキシルスキャンを実施して、C4アニリノ水素の置換に最も有望な部位及び基を同定した。現在の計算において、オルト位2,6及びメタ位3,5は、各配座異性体について別個のシミュレーションを必要とするMC実行中には相互変換しないため、同等ではない。Table 2 (表2)における環の番号付けによれば、OHによる水素の置き換えは、開始複合体が鎖Bを使用して構築された場合、C2、C3及びC4においてそれぞれ5.11、4.89、1.49kcal/molで好都合(結合の正の自由エネルギー、ΔΔG
b)、C5及びC6で不都合(それぞれ-6.68及び-5.08kcal/molのΔΔG
b)と予測された。
【0209】
【表2】
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【0210】
正のΔΔG
b値は、C2における、塩素、臭素又はフッ素の導入でも見られた(それぞれ、4.8、1.28及び1.96kcal/mol)。対照的に、鎖Aにおいて、これらの置換基の実体は、負のΔΔG
bを持つ不都合なものとなった(Table 3 (表3))。
【0211】
【表3】
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【0212】
MC/FEP結果を考慮に入れて、研究中の化合物の水溶性及びc-Src結合親和性の両方を増大させるために、C4アニリノ環にm-OH置換基を担持するピラゾロ[3,4-d]ピリミジン誘導体の集中的ライブラリーを合成した。更に、メタ位において、臭素、塩素及びフッ素で置換された類似体も合成し、不都合な転帰の予測にもかかわらず、構造活性相関を拡張するための酵素アッセイ(Table 4 (表4))において試験した。これらの最後の置換に関して、本発明者らの阻害剤とATP結合部位との間のハロゲン結合の可能性も、m-Br及びm-Cl置換基を考慮した鎖A及びB両方に対するハロゲン結合スキャンによって調査した(Table 4 (表4))。
【0213】
【表4】
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【0214】
ハロゲン結合相互作用の限界効果は、鎖Bシミュレーション中、C5位における塩素及び臭素置換基について見られ(それぞれ、1.14及び0.35kcal/mol)、一方、鎖Aを使用した場合には負の結果が取得された。ハロゲン結合の計算された正の寄与は、Cl又はBrの、ルイス塩基として働くIle336のカルボニル骨格との相互作用によるものであった。しかしながら、この寄与は、C4アニリノ基のメタ位における臭素又は塩素の導入のために計算された結合の総自由エネルギーに対して限定された効果を有するに過ぎず、依然として概して負のままである。要約すれば、MC/FEP結果の分析は、C4アニリノ環の3位において水素をヒドロキシル基によって置き換えることにより、c-Src結合親和性が増強されうることを明らかに強調するものであった。この置換は、c-Srcの活性立体配座と本明細書において研究されているピラゾロ[3,4-d]ピリミジンとの間の複合体の安定化を可能にする。リガンドの3-OHとGlu310側鎖との間の水素-結合相互作用は、通常、Lys295との塩橋の形成に関与し、疑う余地なく、結合親和性に重要な寄与をする。その一方で、2位におけるヒドロキシル基又はハロゲンの導入も好都合として予測されたため、本発明者らの将来の研究に供されるであろう。
【0215】
1.2-化学:材料及び方法
出発材料は、Aldrich-Italia社(Milan、Italy)から購入した。融点は、Buchi社530装置を用いて決定したものであり、補正していない。IRスペクトルは、Perkin-Elmer社398分光光度計を用い、KBr又はCHCl
3中で測定した。
1H NMRスペクトルは、400MHzにて、CDCl
3又は(CH
3)
2SO中、Bruker社Avance DPX400分光計で記録した。化学シフトは、内部標準J (単位Hz)としてのTMSに対するδ(ppm)として報告される。
1Hパターンは、下記の略語を使用して記述される: s =一重線、d =二重線、t =三重線、q =四重線、quint =五重線、sx =六重線、sept=七重線、m =多重線、br =広域シグナル、br s =広域一重線。TLCは、Merck TLCプレートシリカゲル60 F
254を使用して行った。クロマトグラフィー精製は、フラッシュ技術のためのMerck 60シリカゲル、230〜400メッシュを詰めたカラムで実施した。
【0216】
元素分析は、元素分析装置EA 1110 (Fison-Instruments社、Milan、Italy)を用いて決定され、分析された、すべての合成した化合物の純度は95%超であった。
【0217】
質量スペクトル(MS)データは、Agilent 1100 LC/MSD VLシステム(G1946C)を使用し、0.4mL/分の流速で、95:5メタノール/水の二成分溶媒系を使用して取得した。UV検出は、254nmでモニターした。MSは、50〜1500m/zの範囲にわたってスキャンして、正ES (+)及び負ES (-)モードで獲得した。下記のイオン源パラメーターを使用した:乾燥ガス流量、9mL/分;ネブライザー圧力、40psig;乾燥ガス温度、350℃。
【0218】
本発明において、下記の略語が使用される:
【0219】
【表5】
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【0220】
別段の指示がある場合を除き、すべての温度は、℃(摂氏度)又はK (ケルビン)で表現される。
【0221】
収率は、別段記載されていなければ、生成物が純度100%であったと仮定して計算される。
【0222】
化合物(SI又はSiは同じである) Si192、Si181、Si319、Si320、Si321、Si328、Si315、Si316、Si317、Si318、Si322、Si331、Si188、Si189、Si190、Si323、Si171、Si170、Si330、Si176、Si174、Si138、Si135、Si109、Si180、Si182、Si34、Si39、Si1001、Si1003は、本発明者らが先に報告した手順によって合成し、中間体6、7、8、12、16、24a-b、24a-b、Si58及び26は、本発明者らが既に報告した
18,20,21,22,23。
【0223】
鏡像異性体分離(
図4及び5)
ラセミ体Si192のキラル分離。
計測器
キラル分離研究は、手動注入バルブ付きバイナリポンプ及びモデルProstar 325 UV-VIS検出器を備えたVarian Prostar HPLCシステム(Varian Analytical Instruments社、USA)で行った。CD検出は、Jasco CD-815円二色性分散計(日本分光株式会社、東京、日本)で実現した。旋光度は、Perkin-Elmer Mod 343旋光計を用い、589nmで10
-1dmマイクロセルを使用して決定した。濃度はg mL
-1として表現する。
【0224】
エナンチオ選択的カラム及び化学物質
多糖由来のカラムは、10μmのシリカゲルにコーティングされたセルローストリス-3,5-ジメチルフェニルカルバメート(250mm×4.6mm、Chiralcel OD)であった。キラルカラムは、株式会社ダイセル社(東京、日本)から入手した。溶媒及び試薬はすべて、Sigma Aldrich Srl社(Milan、IT)製であった。
【0225】
LC (液体クロマトグラフィー)エナンチオ選択的条件
クロマトグラフ分離は、周囲温度で、移動相n-ヘキサン/ 2-プロパノールにアセトニトリル5%をドープしたもの90:10 (v/v)を使用して行った。検出は、280nmで行った。注入体積は、20μLであった。10mgのラセミ体から出発して、4mgのSi192 (R) (t
R: 31分33秒)及び4mgのSi192 (S) (t
R:36分20秒)が取得された(
図4)。
【0226】
CD (円偏光二色性(cicular dichroism))条件
CDスペクトルは、線形データアレイ、2つの蓄積物及び100nm分
-1のスキャン速度を用いる、Jasco J-815偏光二色性分光計で獲得した。1.0mm経路長の石英セルを使用し、CDスペクトルを室温で記録した。ラセミ混合物の分離により溶出された化合物から取得したCDスペクトルを、190〜400nmの範囲内で獲得した。純粋な鏡像異性体をメタノールに溶解して、0.001mol L
-1の溶液を得た。3回のスキャンを平均し、ブランク減算して、CDスペクトルを取得した(
図5)。
【0227】
すべての標的化合物は、理論値との比較による元素分析によって検証される通り、95%以上の純度を保有していた。
【0228】
[2-(4-フルオロフェニル)エチル]ヒドラジン(2)。
【0229】
【化65】
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【0230】
イソプロパノール(10mL)中の1-(2-ブロモエチル)-4-フルオロベンゼン1 (5g、24.6mmol)の溶液を、イソプロパノール(200mL)中のヒドラジン一水和物(10mL、206.2mmol)の溶液に滴下添加し、反応物を10時間にわたって還流させた。室温に冷却した後、過剰のヒドラジン及び溶媒を減圧下で除去した。次いで、40%KOH溶液(10mL)を添加し、水性相をジエチルエーテル(3×15mL)で抽出した。有機相を今度はH
2O (2×15mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO
4)、減圧下で蒸発させて油状物を得、これを、バルブ・ツー・バルブ蒸留によって精製して、2を淡黄色油状物(3.1g、81%)として得て、これを粗製のまま次の工程において使用した。
【0231】
エチル5-アミノ-1-[2-(4-フルオロフェニル)エチル]-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート(3)。
【0232】
【化66】
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【0233】
無水トルエン(30mL)中の[2-(4-フルオロフェニル)エチル]ヒドラジン2 (1.54g、10mmol)及びエチル(エトキシメチレン)シアノアセテート(1.69g、10mmol)の溶液を、80℃で8時間にわたって加熱した。溶液を減圧下で半分の体積に濃縮し、室温に冷却させた。得られた黄淡色固体を濾過し、トルエンから再結晶させて、所望の化合物3を白色固体(2.16g、78%)として得た;融点: 129〜131℃。
【0234】
【数1】
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【0235】
エチル5-{[(ベンゾイルアミノ)カルボノチオイル]アミノ}-1-[2-(4-フルオロフェニル)エチル]-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート(4)。
【0236】
【化67】
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【0237】
無水THF(10mL)中のエチル5-アミノ-1-[2-(4-フルオロフェニル)エチル]-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート3 (500mg、1.8mmol)及びベンゾイルイソチオシアネート (0.97mL、7.2mmol)の溶液を、12時間にわたって還流させた。室温に冷却した後、溶媒を減圧下で除去し、ジエチルエーテル(20mL)を添加することにより、粗製物が白色固体として結晶化した(713mg、90%);融点: 185〜187℃。
【0238】
【数2】
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【0239】
1-[2-(4-フルオロフェニル)エチル]-6-チオキソ-1,5,6,7-テトラヒドロ-4H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-オン(5)。
【0240】
【化68】
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【0241】
2N NaOH (10mL)中のエチル5-{[(ベンゾイルアミノ)カルボノチオイル]アミノ}-1-[2-(4-フルオロフェニル)エチル]-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート4 (600mg、1.36mmol)の溶液を、10時間にわたって還流させ、次いで、H
2O (10mL)で希釈し、氷酢酸で酸性化した。4℃で12時間後、結晶化した固体を濾過し、無水エタノールから再結晶させて、1-[2-(4-フルオロフェニル)エチル]-6-チオキソ-1,5,6,7-テトラヒドロ-4H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-オン5を白色固体(249mg、63%)として得た;融点: 257〜259℃。
【0242】
【数3】
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【0243】
化合物9、10、11の合成のための一般的手順。
無水DMF (1mL)及び無水エタノール(3mL)中の、1-置換6-チオキソ-1,5,6,7-テトラヒドロ-4H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-オン5又は6又は7のいずれか(1mmol)と、4-(2-クロロエチル)モルホリン(224mg、1.5mmol)、NaOH (40mg、1mmol)との混合物を、6時間にわたって撹拌還流した。室温に冷却した後、溶媒を減圧下で蒸発させ、混合物を冷水(20mL)に注ぎ入れた。得られた固体を濾過し、水で洗浄し、無水エタノールから再結晶させた。
【0244】
1-[2-(4-フルオロフェニル)エチル]-6-[(2-モルホリン-4-イルエチル)チオ]-1,5-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-オン(9)。
【0245】
【化69】
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【0246】
白色固体(347mg、86%);融点: 213〜215℃。
【0247】
【数4】
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【0248】
6-[(2-モルホリン-4-イルエチル)チオ]-1-(2-フェニルエチル)-1,5-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-オン(10)。
【0249】
【化70】
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【0250】
白色固体(197mg、51%);融点: 197〜198℃。
【0251】
【数5】
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【0252】
6-[(2-モルホリン-4-イルエチル)チオ]-1-(2-フェニルプロピル)-1,5-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-オン(11)。
【0253】
【化71】
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【0254】
白色固体(200mg、50%);融点: 128〜130℃。
【0255】
【数6】
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【0256】
化合物13、14、15の合成のための一般的手順。
POCl
3 (0.74mL、8mmol)及び無水DMF (590mg、8mmol)から予め調製したビルスマイヤー錯体を、CH
2Cl
2 (10mL)中の9、10、11又は12のいずれか(1mmol)の懸濁液に添加した。混合物を6〜12時間にわたって還流させた。化合物14及び15については、溶液を、4N NaOH溶液(2×10mL)、水(2×10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO
4)、濾過し、減圧下で濃縮した。粗製油状物を、溶出液としてジエチルエーテルを使用するカラムクロマトグラフィー(Florisil (登録商標)、100〜200メッシュ)によって精製して、純粋な生成物を得た。
【0257】
4-クロロ-1-[2-(4-フルオロフェニル)エチル]-6-[(2-モルホリン-4-イルエチル)チオ]-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン(13)。
【0258】
【化72】
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【0259】
白色固体(363mg、86%);融点: 101〜102℃。
【0260】
【数7】
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【0261】
4-クロロ-6-[(2-モルホリン-4-イルエチル)チオ]-1-(2-フェニルエチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン(14)。
【0262】
【化73】
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【0263】
黄色油状物(323mg、80%)。
【0264】
【数8】
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【0265】
4-クロロ-6-[(2-モルホリン-4-イルエチル)チオ]-1-(2-フェニルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン(15)。
【0266】
【化74】
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【0267】
黄色油状物(288mg、69%)。
【0268】
【数9】
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【0269】
化合物Si303、Si313、Si314、Si307、Si327、Si306の合成のための一般的手順。
好適なアニリン(2mmol)を、無水エタノール(5mL)中の4-クロロ誘導体13、14、15又は16 (1mmol)の溶液に添加し、混合物を3〜5時間にわたって還流させた。室温に冷却した後、得られた固体を濾過し、水で洗浄し、無水エタノールから再結晶させた。
【0270】
N-(3-クロロフェニル)-6-[(2-モルホリン-4-イルエチル)チオ]-1-(2-フェニルエチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(Si303)。
【0271】
【化75】
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【0272】
白色固体(233mg、47%);融点: 235〜237℃。
【0273】
【数10】
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【0274】
6-[(2-モルホリン-4-イルエチル)チオ]-N-フェニル-1-(2-フェニルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(Si313)。
【0275】
【化76】
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【0276】
白色固体(332mg、70%);融点: 212〜213℃。
【0277】
【数11】
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【0278】
N-(3-フルオロフェニル)-6-[(2-モルホリン-4-イルエチル)チオ]-1-(2-フェニルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(Si314)。
【0279】
【化77】
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【0280】
白色固体(182mg、37%);融点: 236〜237℃。
【0281】
【数12】
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【0282】
N-(3-クロロフェニル)-6-[(2-モルホリン-4-イルエチル)チオ]-1-(2-フェニルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(Si307)。
【0283】
【化78】
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【0284】
淡黄色固体(265mg、52%);融点: 247〜249℃。
【0285】
【数13】
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【0286】
N-(3-クロロフェニル)-1-[2-(4-フルオロフェニル)エチル]-6-[(2-モルホリン-4-イルエチル)チオ]-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(Si327)。
【0287】
【化79】
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【0288】
白色固体(159mg、31%);融点: 127〜128℃。
【0289】
【数14】
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【0290】
N-(3-ブロモフェニル)-1-(2-クロロ-2-フェニルエチル)-6-[(2-モルホリン-4-イルエチル)チオ]-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(Si306)。
【0291】
【化80】
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【0292】
白色固体(350mg、61%);融点: 232〜233℃。
【0293】
【数15】
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【0294】
化合物Si332、Si329の合成のための一般的手順。
3-アミノフェノール(545mg、5mmol)を、無水エタノール(10mL)中の好適な4-クロロ誘導体14又は15 (1mmol)の溶液に添加し、混合物を3〜5時間にわたって還流させた。室温に冷却した後、溶媒を減圧下で蒸発させ、粗製物を酢酸エチル(10mL)に溶解し、0.1N HCl溶液(2×10mL)、1N NaOH溶液(10mL)、ブライン(2×10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO
4)、濾過し、減圧下で濃縮して、褐色油を得、これは、ジエチルエーテル/石油エーテルの1:1混合物(沸点40〜60℃)を添加することによって4℃で結晶化した。必要ならば、得られた固体を、溶出液としてCH
2Cl
2を使用するシリカゲルクロマトグラフィーカラムによって精製した。化合物Si332及びSi329を塩酸塩として得た。
【0295】
3-{[6-[(2-モルホリン-4-イルエチル)チオ]-1-(2-フェニルエチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル]アミノ}フェノール塩酸塩(Si332)。
【0296】
【化81】
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【0297】
淡黄色固体(261mg、51%);融点: 261〜262℃。
【0298】
【数16】
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【0299】
3-{[6-[(2-モルホリン-4-イルエチル)チオ]-1-(2-フェニルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル]アミノ}フェノール塩酸塩(Si329)。
【0300】
【化82】
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【0301】
淡黄色固体(248mg、47%);融点: 177〜178℃。
【0302】
【数17】
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【0303】
18a、18b、18c、18d、18eの合成のための一般的手順。
鉱油中60%水素化ナトリウム分散液(1.21g、30.3mmol)を、0/5℃で予冷した乾燥THF (25mL)中のマロニトリル(1.00g、15.1mmol)の溶液に、小バッチで添加した。0/5℃で30分後、好適な塩化アシル(15.1mmol)を滴下添加した。橙色溶液を室温で2〜12時間にわたって撹拌し、次いで、硫酸ジメチル(1.75mL、18.2mmol)をゆっくり添加し、溶液を3〜6時間にわたって還流させた。最後に、乾燥THF (2mL)に溶解した2-ヒドラジノ-1-フェニルエタノール17 (4.62g、30.2mmol)を添加し、反応物を4時間にわたって還流させた。室温に冷却した後、水(25mL)及び濃NH
3 (5mL)を撹拌しながら添加した。15分後、THFを減圧下で除去し、水性相をCH
2Cl
2 (3×30mL)で抽出した。有機相を、水(15mL)、ブライン(15mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で蒸発させた。粗製物を、溶出液としてEt
2O/PE (沸点40〜60℃)を使用するフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル0.060〜0.200mm、40Å)によって、勾配溶出(3:1→9:1)で精製して、化合物18a、18b、18c、18d又は18eを得た。
【0304】
5-アミノ-3-(4-フルオロフェニル)-1-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-1H-ピラゾール-4-カルボニトリル(18a)。
【0305】
【化83】
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【0306】
白色固体(1.54g、32%);融点: 175〜176℃。
【0307】
【数18】
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【0308】
5-アミノ-3-(4-クロロフェニル)-1-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-1H-ピラゾール-4-カルボニトリル(18b)。
【0309】
【化84】
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【0310】
白色固体(2.50g、49%);融点: 173〜174℃。
【0311】
【数19】
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【0312】
5-アミノ-1-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-3-(4-メチルフェニル)-1H-ピラゾール-4-カルボニトリル(18c)。
【0313】
【化85】
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【0314】
白色固体(2.02g、42%);融点: 172〜174℃。
【0315】
【数20】
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【0316】
5-アミノ-1-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-3-(4-メトキシフェニル)-1H-ピラゾール-4-カルボニトリル(18d)。
【0317】
【化86】
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【0318】
白色固体(2.50g、50%);融点: 144〜145℃。
【0319】
【数21】
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【0320】
5-アミノ-1-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-3-フェニル-1H-ピラゾール-4-カルボニトリル(18e)。
【0321】
【化87】
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【0322】
白色固体(1.84g、40%);融点: 165〜166℃。
【0323】
【数22】
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【0324】
19a、19b、19c、19d、19eの合成のための一般的手順。
ホルムアミド(18mL、450mmol)中の好適な中間体18a、18b、18c、18d又は18e (3mmol)の懸濁液を、190℃で3〜4時間にわたって加熱し、次いで、水(40mL)に注ぎ入れた。粗固体を濾過し、水で洗浄し、エタノールに懸濁し、木炭とともに10分間にわたって沸騰させた。固体はエタノールの沸点で溶解した。木炭濾過後、化合物19b、19c又は19eが純粋な固体として沈殿した。化合物19a又は19dが沈殿し、溶出液としてCH
2Cl
2/CH
3OH (98:2)を使用するフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル0.060〜0.200mm、40Å)によって更に精製して、純粋な油を得て、これは、Et
2O/PEの混合物(沸点40〜60℃) (1:1)を添加することにより、ゆっくり結晶化した。
【0325】
2-[4-アミノ-3-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]-1-フェニルエタノール(19a)。
【0326】
【化88】
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【0327】
白色固体(497mg、48%);融点: 190〜192℃。
【0328】
【数23】
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【0329】
2-[4-アミノ-3-(4-クロロフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]-1-フェニルエタノール(19b)。
【0330】
【化89】
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【0331】
白色固体(509mg、46%);融点: 200〜201℃。
【0332】
【数24】
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【0333】
2-[4-アミノ-3-(4-メチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]-1-フェニルエタノール(19c)。
【0334】
【化90】
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【0335】
白色固体(496mg、48%);融点: 93〜95℃。
【0336】
【数25】
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【0337】
2-[4-アミノ-3-(4-メトキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]-1-フェニルエタノール(19d)。
【0338】
【化91】
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【0339】
白色固体(427mg、39%);融点: 161〜163℃。
【0340】
【数26】
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【0341】
2-(4-アミノ-3-フェニル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル)-1-フェニルエタノール(19e)。
【0342】
【化92】
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【0343】
白色固体(549mg、55%);融点: 160〜161℃。
【0344】
【数27】
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【0345】
Si244、Si308、Si309、Si310、Si311の合成のための一般的手順。
SOCl
2 (80μL、1.1mmol)を、乾燥CH
2Cl
2 (5mL)中の好適な中間体19a、19b、19c、19d又は19e (0.5mmol)の溶液に滴下添加し、反応物を、窒素雰囲気下、室温で12時間にわたって撹拌した。水(5mL)及び1N NaOH (1mL)を慎重に添加し、水性相をCH
2Cl
2 (2×5mL)で抽出した。次いで、有機相を、水(5mL)、ブライン(5mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で濃縮した。Et
2O/PEの混合物(沸点40〜60℃) (1:1)を添加して、最終化合物Si308、Si309、Si310又はSi311が白色固体として得られた。黄色油状物になった化合物Si244は、乾燥Et
2O中のHClの飽和溶液を添加することにより、塩酸塩として沈殿した。
【0346】
1-(2-クロロ-2-フェニルエチル)-3-(4-フルオロフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(Si310)。
【0347】
【化93】
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【0348】
白色固体(125mg、68%);融点: 203〜206℃。
【0349】
【数28】
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【0350】
3-(4-クロロフェニル)-1-(2-クロロ-2-フェニルエチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(Si308)。
【0351】
【化94】
[この文献は図面を表示できません]
【0352】
白色固体(65mg、34%);融点: 150〜151℃。
【0353】
【数29】
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【0354】
1-(2-クロロ-2-フェニルエチル)-3-(4-メチルフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(Si309)。
【0355】
【化95】
[この文献は図面を表示できません]
【0356】
白色固体(90mg、49%);融点: 159〜160℃。
【0357】
【数30】
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【0358】
1-(2-クロロ-2-フェニルエチル)-3-(4-メトキシフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(Si311)。
【0359】
【化96】
[この文献は図面を表示できません]
【0360】
白色固体(146mg、77%);融点: 152〜153℃。
【0361】
【数31】
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【0362】
1-(2-クロロ-2-フェニルエチル)-3-フェニル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン塩酸塩 (Si244)。
【0363】
【化97】
[この文献は図面を表示できません]
【0364】
白色固体(135mg、70%);融点: 129〜132℃。
【0365】
【数32】
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【0366】
5-アミノ-1H-ピラゾロ-4-カルボニトリル(20)の合成。
【0367】
【化98】
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【0368】
ヒドラジン一水和物(800μL、16.4mmol)を、無水エタノール(10mL)中の(エトキシメチレン)マロノニトリル(2g、16.4mmol)の溶液に添加し、混合物を4時間にわたって還流させた。室温に冷却した後、溶媒を減圧下で蒸発させた。次いで、冷水(50mL)を添加し、粗製物を濾過し、水(3×40mL)で洗浄して、化合物20を赤色固体(1.40g、81%)として得た;融点: 172〜174℃。(文献値74%;融点: 169〜170℃)。
【0369】
1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(21)の合成。
【0370】
【化99】
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【0371】
5-アミノ-1H-ピラゾロ-4-カルボニトリル20 (400mg、3.7mmol)及びホルムアミド(5mL、125.8mmol)の溶液を、200℃で1時間にわたって撹拌した。室温に冷却した後、水を添加し(20mL)、得られた固体を濾過した。粗生成物を温水(40mL)及び濃HCl (5mL)に懸濁し、次いで、木炭(600mg)を添加し、混合物を15分間にわたって沸騰させた。木炭濾過後、濃NH
3を添加し、沈殿した固体を濾過して、化合物21を白色固体(405mg、81%)として得た;融点353〜356℃。(文献値58%、融点>300℃)。
【0372】
3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(22)の合成。
【0373】
【化100】
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【0374】
N-ヨードコハク酸イミド(2g、8.9mmol)を、乾燥DMF(5mL)中の1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン21 (800mg、5.9mmol)の溶液に添加し、混合物を、窒素雰囲気下、80℃で14時間にわたって加熱した。室温に冷却した後、水を添加し(20mL)、沈殿した固体を濾過し、水(50mL)で洗浄した。粗生成物を無水エタノールから再結晶させて、化合物22を薄黄色固体(1.31g、85%)として得た;融点272〜275℃。(文献値97%)。
【0375】
3-ヨード-1-(2-フェニルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(23)の合成。
【0376】
【化101】
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【0377】
K
2CO
3 (600mg、4.34mmol)を、乾燥DMF (5mL)中の3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン22 (400mg、1.53mmol)の溶液に添加し、混合物を50℃で1時間にわたって加熱した。1-ブロモ-2-フェニルプロパン(350μL、2.30mmol)を添加し、反応物を130℃で18時間にわたって撹拌した。室温に冷却した後、水を添加し(30mL)、沈殿した固体を濾過し、溶出液としてCH
2Cl
2/MeOH (95:5)の混合物を使用するカラムクロマトグラフィー(シリカゲル0.060〜0.200mm、40Å)によって精製して、化合物23を白色固体(390mg、67%)として得た;融点265〜268℃。
【0378】
【数33】
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【0379】
Si312、Si336、Si337、Si338、Si339の合成のための一般的手順。好適なボロン酸(1.08mmol)を、乾燥トルエン(5mL)中の3-ヨード-1-(2-フェニルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン23 (100mg、0.27mmol)の懸濁液に添加し、混合物を、窒素雰囲気下、室温で10分間にわたって撹拌した。次いで、Cs
2CO
3 (350mg、1.07mmol)及びPdCl
2(dppf) (20mg、10%mol)を添加した。反応物を90℃で14時間にわたって撹拌した。室温に冷却した後、水(70mL)を添加し、水性懸濁液をEtOAc (2×40mL)で抽出した。有機相を水(40mL)及びブライン(40mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、減圧下で濃縮して、粗製物を得、これを、溶出液としてCH
2Cl
2/MeOHの混合物(95:5)を使用するカラムクロマトグラフィー(シリカゲル0.060〜0.200mm、40Å)によって精製して、化合物Si312、Si336、Si337、Si338又はSi339を得た。
【0380】
3-フェニル-1-(2-フェニルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(Si312)。
【0381】
【化102】
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【0382】
白色固体(24mg、27%);融点: 105〜109℃。
【0383】
【数34】
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【0384】
1-{4-[4-アミノ-1-(2-フェニルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-イル]フェニル}エタノン(Si336)。
【0385】
【化103】
[この文献は図面を表示できません]
【0386】
黄色固体(50mg、50%);融点232〜235℃。
【0387】
【数35】
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【0388】
3-(4-クロロフェニル)-1-(2-フェニルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(Si337)。
【0389】
【化104】
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【0390】
黄色固体(42mg、43%);融点153〜154℃。
【0391】
【数36】
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【0392】
3-(4-メチルフェニル)-1-(2-フェニルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(Si338)
【0393】
【化105】
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【0394】
薄褐色固体(30mg、32%);融点152〜155℃。
【0395】
【数37】
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【0396】
3-(1H-インドール-5-イル)-1-(2-フェニルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(Si339)。
【0397】
【化106】
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【0398】
薄褐色固体(30mg、30%);融点240〜241℃。
【0399】
【数38】
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【0400】
6-(sec-ブチルチオ)-1-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-1,5-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-オン(24c)の合成。
【0401】
【化107】
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【0402】
無水DMF(10mL)中の、1-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-6-チオキソ-1,5,6,7-テトラヒドロ-4H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-オン8 (2.88g、10mmol)、2-ブロモブタン(1.11mL、10.14mmol)及び無水K
2CO
3 (1.38g、10mmol)の混合物を、室温で24時間にわたって撹拌した。混合物を冷水に注ぎ入れ、得られた白色固体を濾過し、水で洗浄し、酢酸エチルで再結晶させた。白色固体(1.58g、46%);融点: 171〜172℃。
【0403】
【数39】
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【0404】
6-(sec-ブチルチオ)-4-クロロ-1-(2-クロロ-2-フェニルエチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン(25c)の合成。
【0405】
【化108】
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【0406】
POCl
3 (9.32mL、100mmol)及び無水DMF (7.7mL、100mmol)から予め調製したビルスマイヤー錯体を、CHCl
3 (50mL)中の6-(sec-ブチルチオ)-1-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-1,5-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-オン24c (3.44g、10mmol)の懸濁液に添加した。混合物を8時間にわたって還流させた。溶液を水(2×20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO
4)、濾過し、減圧下で濃縮した。粗製油状物を、溶出液としてジエチルエーテルを使用するカラムクロマトグラフィー(Florisil (登録商標)、100〜200メッシュ)によって精製して、純粋な生成物を得た。黄色油状物(1.91g、50%)。
【0407】
【数40】
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【0408】
化合物Si146及びSi147の合成のための一般的手順。好適なアミン(4mmol)を、無水トルエン(5mL)中の4-クロロ誘導体25c (381mg、1mmol)の溶液に添加し、混合物を室温で48時間にわたって撹拌した。有機相を水(2×10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO
4)、濾過し、減圧下で濃縮した。粗製油状物を、溶出液としてジエチルエーテルを使用するカラムクロマトグラフィー(Florisil (登録商標)、100〜200メッシュ)によって精製した。化合物は、Et
2O/石油エーテル(PE)の1:1混合物(沸点40〜60℃)を添加することによって結晶化した。
【0409】
N-ベンジル-6-(sec-ブチルチオ)-1-(2-クロロ-2-フェニルエチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(Si146)。
【0410】
【化109】
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【0411】
白色固体(271mg、60%);融点: 112〜113℃。
【0412】
【数41】
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【0413】
6-(Sec-ブチルチオ)-1-(2-クロロ-2-フェニルエチル)-N-(2-フェニルエチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(Si147)。
【0414】
【化110】
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【0415】
白色固体(368mg、79%);融点: 97〜98℃。
【0416】
【数42】
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【0417】
化合物Si170及びSi148の合成のための一般的手順。適切なアニリン(2mmol)を、無水エタノール(5mL)中の4-クロロ誘導体25b又は25c (1mmol)の溶液に添加し、混合物を3〜5時間にわたって還流させた。室温に冷却した後、得られた固体を濾過し、水で洗浄し、無水エタノールから再結晶させた。
【0418】
1-(2-クロロ-2-フェニルエチル)-6-(シクロペンチルチオ)-N-(3-フルオロフェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(Si170)。
【0419】
【化111】
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【0420】
白色固体(206mg、44%);融点: 226〜227℃。
【0421】
【数43】
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【0422】
6-(Sec-ブチルチオ)-N-(3-クロロフェニル)-1-(2-クロロ-2-フェニルエチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(Si148)。
【0423】
【化112】
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【0424】
白色固体(236mg、50%);融点: 213〜214℃。
【0425】
【数44】
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【0426】
N-[2-(3-クロロフェニル)エチル]-6-(メチルチオ)-1-[2-フェニルビニル]-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(Si215)の合成。
【0427】
【化113】
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【0428】
4N NaOHの溶液(2mL)を、95%エタノール(12mL)中のN-[2-(3-クロロフェニル)エチル]-1-(2-クロロ-2-フェニルエチル)-6-(メチルチオ)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミンSi58 (458mg、1mmol)の懸濁液に添加し、混合物を5時間にわたって還流させた。冷却した後、固体を濾過し、水で洗浄し、無水エタノールから再結晶させた。白色固体(273mg、65%);融点: 104〜106℃。
【0429】
【数45】
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【0430】
2-(4-ベンジルアミノ-1-スチリル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イルアミノ)-エタノール(Si74)の合成。
【0431】
【化114】
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【0432】
エタノールアミン(180μL、3mmol)を、ブタン-1-オール(16mL)及びDMSO (4mL)中の26 (405mg、1mmol)の懸濁液に添加し、混合物を90℃で12時間にわたって加熱した。室温に冷却した後、ブタン-1-オールを減圧下で除去し、次いで、水(20mL)を添加し、溶液を酢酸エチル(2×20mL)で抽出し、有機相を水(20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO
4)、減圧下で蒸発させた。得られた固体を濾過し、無水エタノールから再結晶させた(recrystalized)。白色固体。(255mg、66%);融点: 148〜149℃。
【0433】
【数46】
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【0434】
6-ベンジル-1-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-1,5-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-オン(28)の合成。
【0435】
【化115】
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【0436】
ナトリウム(138mg、6mmol)及び無水エタノール(5mL)から調製したナトリウムエトキシドの溶液並びにフェニル酢酸メチル(900mg、6mmol)を、無水エタノール(5mL)中の5-アミノ-1-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド27 (246mg、1mmol)の溶液に添加した。混合物を6時間にわたって還流させ、室温に冷却した後、氷水(30mL)を添加し、溶液を3%酢酸で酸性化した。沈殿した固体を濾過し、水で洗浄し、無水エタノールから再結晶させて、化合物28白色固体(200mg、58%)を得た;融点: 205〜207℃。
【0437】
【数47】
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【0438】
6-ベンジル-4-クロロ-1-(2-クロロ-2-フェニルエチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン(29)の合成。
【0439】
【化116】
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【0440】
POCl
3 (2.80mL、30mmol)及び無水DMF (2.3mL、30mmol)から予め調製したビルスマイヤー錯体を、CHCl
3 (10mL)中の6-ベンジル-1-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-1,5-ジヒドロ-4H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-オン28 (346mg、1mmol)の懸濁液に添加した。混合物を12時間にわたって還流させた。溶液を水(2×20ml)で洗浄し、乾燥させ(MgSO
4)、濾過し、減圧下で濃縮した。粗製油状物を、溶出液としてジエチルエーテルを使用するカラムクロマトグラフィー(Florisil (登録商標)、100〜200メッシュ)によって精製して、化合物を黄色油状物として得て、これを、Et
2O/PEの1:1混合物(沸点40〜60℃) (1:1)を添加することにより、冷蔵庫内で静置させて結晶化した。白色固体(320mg、84%);融点: 172〜173℃。
【0441】
【数48】
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【0442】
N,6-ジベンジル-1-(2-クロロ-2-フェニルエチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン(Si164)。
【0443】
【化117】
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【0444】
ベンジルアミン(440μL、4mmol)を、無水トルエン(5mL)中の4-クロロ誘導体29 (383mg、1mmol)の溶液に添加し、混合物を室温で48時間にわたって撹拌した。有機相を水(2×10mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO
4)、濾過し、減圧下で濃縮した。粗製油状物を、Et
2O/PEの1:1混合物(沸点: 40〜60℃)を添加することによって結晶化して、Si164を得た。白色固体(250mg、55%);融点: 125℃。
【0445】
【数49】
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【0446】
【化118】
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【0447】
【化119】
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【0448】
【化120】
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【0449】
【化121】
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【0450】
【化122】
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【0451】
【化123】
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【0452】
【化124】
[この文献は図面を表示できません]
【0453】
1.3-化学:考察
化合物Si327は、1-(2-ブロモエチル)-4-フルオロベンゼン1の、ヒドラジン一水和物との、イソプロパノール中、還流させながら10時間にわたる反応(スキーム1)によって得た、[2-(4-フルオロフェニル)エチル]ヒドラジン2から出発して合成した。ヒドラジン誘導体2を、エチル(エトキシメチレン)シアノアセテートと、無水トルエン中、80℃で8時間にわたって反応させて、エチル5-アミノ-1-[2-(4-フルオロフェニル)エチル]-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート3を得て、これを、ベンジルイソチオシアネートにより、無水THF中、還流させながら12時間にわたって処理して、中間体4を得た。この化合物を、次に、2N NaOHによる100℃で10分間にわたる処理、続いて、酢酸による酸性化により、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジノン5に環化した。C6位のチオカルボニル基の、4-(2-クロロエチル)モルホリンによる、無水DMF中、アルコール性NaOH溶液の存在下でのアルキル化により、化合物9を得て、これを、ビルスマイヤー錯体(POCl
3/DMF、1:1)により、CH
2Cl
2中、還流させながら12時間にわたって処理して、ハロゲン化合物13を得た(スキーム2)。最後に、後者を、過剰の3-クロロアニリンと、無水エタノール中、還流させながら5時間にわたって反応させて、所望の化合物Si327を得た。C6にN-モルホリノ-エタンチオ置換基を担持する他の化合物の合成は、スキーム2において報告されている。本明細書においてTable 2 (表2)に示されている比較化合物Si181は、本発明者らが先に報告したものである
21。4-(2-クロロエチル)モルホリンによる誘導体5〜8
20のチオカルボニル基のアルキル化により、6-アルキルチオ誘導体9〜12を得て、これを次に、ビルスマイヤー錯体(POCl
3/DMF、1:1)により、CH
2Cl
2中、還流させながら6〜8時間にわたって処理して、C4に塩素原子を担持する化合物13〜16を取得した。最後に、13〜16の、好適なアニリンとの、無水エタノール中、還流させながら3〜5時間にわたる反応により、所望のSi化合物を良好な収率で得た。
【0454】
3-置換ピラゾロ[3,4-d]ピリミジンSi244、Si308、Si309、Si310及びSi311の合成は、3成分ワンポット合成を使用して実施した
24。水素化ナトリウムを、0/5℃で予冷した乾燥THF中のマロノニトリルの溶液に、小バッチで添加し、30分後、好適な塩化アシルを添加し、溶液を室温で2〜12時間にわたって撹拌した。次いで、硫酸ジメチルを添加し、溶液を3〜6時間にわたって還流させた。最後に、乾燥THF (2mL)に溶解した2-ヒドラジノ-1-フェニルエタノール17を添加し、反応物を4時間にわたって還流させて、中間体18a〜cを得て、フラッシュクロマトグラフィーによって精製した。化合物18a〜cをホルムアミドに懸濁し、混合物を190℃で3〜4時間にわたって加熱して、ピラゾロ-ピリミジン19a〜cを得て、これを次に、塩化チオニルと、乾燥CH
2Cl
2中、窒素雰囲気下、室温で12時間にわたって反応させて、最終化合物Si308、Si309及びSi310を得た(スキーム3)。先に記述したワンポット反応が非常に低い収率につながったことから、化合物Si312、Si337、Si336、Si338及びSi339の合成は、鈴木クロスカップリングを介して実施した。(エトキシメチレン)マロノニトリルの、ヒドラジン一水和物との反応によって得られた5-アミノ-1H-ピラゾロ-4-カルボニトリル20
20を、ホルムアミドとの、200℃で1時間にわたる反応によって環化して、1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン21を得た
20。21の、N-ヨードコハク酸イミド(NIS)との、乾燥DMF中、窒素雰囲気下、80℃で14時間にわたる反応により、3-ヨード-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン22を得た
26。これを次に、K
2CO
3及び1-ブロモ-2-フェニルプロパンにより、130℃で18時間にわたって処理して、3-ヨード-1-(2-フェニルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-アミン23を良好な収率で得た。最後に、化合物23を、過剰の好適なボロン酸と、Cs
2CO
3及びPdCl
2(dppf)の存在下、乾燥トルエン中、90℃で14時間にわたって反応させて、化合物Si336及びSi339を得た(スキーム4)。化合物Si170、Si146、Si147、Si148及びSi74の合成は、本発明者らが先に報告した1-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-6-チオキソ-1,5,6,7-テトラヒドロ-4H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-オン8から出発して実施した
20。C6チオカルボニル基の、好適な臭化アルキルとの、無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中、室温でのアルキル化により、6-アルキルチオ誘導体24a〜cを得て、次に、ビルスマイヤー錯体(POCl
3/DMF、1:1)により、CHCl
3中で処理して、ジクロロ-誘導体25a〜cを得た。最後に、過剰の適切なアミンとの、トルエン中、室温での反応により、化合物Si146、Si147、Si58及びSi34を良好な収率で得た。それとは異なって、化合物Si170及びSi148は、25b、cを、好適なアニリンと、無水エタノール中、還流させながら3〜5時間にわたって反応させて得た。化合物Si215は、Si34の、4N NaOH溶液による、還流させながら5時間にわたる処理によって得た (スキーム5)。化合物Si39の、メタ-クロロ過安息香酸(mCPBA)による、CHCl
3中での酸化により、6-メチルスルホニル誘導体26を得た。最後に、Si74は、メチルスルホニル基の、2-アミノエタノールによる、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びブタン-1-オール中、90℃で12時間にわたる求核置換により、良好な収率で得た (スキーム6)。化合物Si164は、27から出発して得られ
18、これを、ビルスマイヤー錯体により、CHCl
3中、還流させながら12時間にわたって塩素化し、ジクロロ誘導体29を得て、これをベンジルアミンと反応させて、Si164を得た(スキーム7)。
【実施例3】
【0473】
神経芽細胞腫、膠芽細胞腫及び白血病に対する酵素アッセイ及び生物学的活性
3.1-酵素アッセイ:
3.1.1-酵素アッセイ:材料及び方法
単離されたFynキナーゼに対する酵素アッセイ。活性な組換えFyn及び特異的ペプチド基質(Src基質ペプチド、カタログ12〜140)は、Merk-Millipore社から購入した。キナーゼアッセイは、200μM ATP及び100μMペプチド基質の存在下で実施した。すべての阻害アッセイは、0.01μg活性キナーゼ、0.33pmol [
γ32P]ATP、60mM HEPES-NaOH pH7.5、3μM Na-オルトバナデート、1.2mM DTT、50μg/ml PEG
20.000、10mM酢酸マグネシウム、0,004%NP40及び10%DMSOを、10μLの最終体積で用いて行った。Fyn及び阻害剤を氷中で5分間にわたってプレインキュベートし、基質の添加後、反応を30℃で10分間にわたって行った。5μLの3%リン酸を添加することによって反応を停止させた。次いで、アリコート(10μL)をP30フィルターマット(PerkinElmer社)に移し、75mMリン酸で5回及びアセトンで1回5分間にわたって洗浄した。フィルターを乾燥させ、密封可能なプラスチック袋に移し、シンチレーションカクテル(4mL)を添加した。スポットした反応物を、MicroBeta Liquid (Perkinelmer社)シンチレーションカウンターで読み取った。ID
50値は、下記の方程式:
v=V/(1+(I/ID
50)
[式中、vは測定された反応速度であり、Vは阻害剤の非存在下での見掛けの最大速度であり、Iは阻害剤濃度であり、ID
50は50%阻害用量である]に従って取得した。
【0474】
組換えFynに対するKi値は、方程式:
Ki=(ID
50/(1+K
mATP/[S
ATP]))
[式中、[S
ATP]は、ATPの濃度である]を使用し、ATP基質に対する阻害の競合機構に従って計算した。曲線当てはめは、プログラムGraphPad Prismバージョン5.00を用いて実施した。
【0475】
単離されたSrcに対する酵素アッセイ。組換えヒトSrcは、Upstate社(Lake Placid、NY)から購入した。活性は、市販キット(Srcアッセイキット、Upstate社)を使用するフィルター結合アッセイにおいて、製造業者のプロトコールに従い、150μMの特異的Srcペプチド基質(KVEKIGEGTYGVVYK)を使用し、0.125pMolのSrc及び10μMの[γ-32P]-ATPの存在下で測定した。そのペプチド及びATP基質に使用したSrc調製物の見掛けの親和性(Km)値を別個に決定し、それぞれ30μM及び5μMであることが分かった。
【0476】
単離されたAblに対する酵素アッセイ。組換えヒトAblは、Upstate社から購入した。活性は、フィルター結合アッセイにおいて、Abl特異的ペプチド基質(アブチド、Upstate社)を使用して測定した。反応条件は、10μM [γ-32P]-ATP、50μMペプチド、0.022μM c-Ablであった。そのペプチド及びATP基質に使用したAbl調製物の見掛けの親和性(Km)値を別個に決定し、それぞれ1.5μM及び10μMであることが分かった。
【0477】
3.1.2-酵素アッセイ:考察
基準化合物Si192を含むすべての合成した化合物を、無細胞アッセイにおいて最初に試験して、単離されたc-Srcに対するそれらの親和性を評価した(Table 6 (表7))。
【0478】
【表7A】
[この文献は図面を表示できません]
【0479】
【表7B】
[この文献は図面を表示できません]
【0480】
【表7C】
[この文献は図面を表示できません]
【0481】
【表7D】
[この文献は図面を表示できません]
【0482】
【表7E】
[この文献は図面を表示できません]
【0483】
【表7F】
[この文献は図面を表示できません]
【0484】
【表7G】
[この文献は図面を表示できません]
【0485】
【表7H】
[この文献は図面を表示できません]
【0486】
【表7I】
[この文献は図面を表示できません]
【0487】
【表7J】
[この文献は図面を表示できません]
【0488】
【表7K】
[この文献は図面を表示できません]
【0489】
本発明者らによって既に公開された化合物Si181及びSi135
18,24も、比較目的でTable 6 (表7)に挿入されている。Table 6 (表7)から分かるように、合理的に設計された誘導体Si332、Si329、Si322、Si323及びSi330は、低ナノモル範囲内のK
i値を持つc-Srcに対して、強力なインビトロ阻害効果を示した(それぞれ、40nM、70nM、30nM、10nM及び7nM)。これらの効力は、本発明者らの分子モデリング計算によって仮定され、観察された構造活性相関によって更に裏付けられた通り、アニリノ環のメタ位におけるヒドロキシル基の寄与により惹起された可能性が最も高い。C4アニリノ環上のm-OH置換基の単純な添加により、2から30倍の増大された活性を持つ強力な作用物質が同定された(Table 6 (表7)において、Si328をSi319と、Si329をSi313と、Si323をSi188と、及びSi330をSi171と比較している)。対照的に、同じ位置における、フッ素、塩素又は臭素の導入では、明確な傾向は観察されなかった。しかしながら、顕著な活性を持つ化合物は、Si317、Si327、Si170及びSi306等のこれらのシリーズにおいても同定され、100nM前後のK
i値を惹起した。最も活性なc-Src阻害剤Si332、Si329、Si322、Si323及びSi330を、Ablに対しても試験した。これらの化合物は、リード構造Si192及びSi181のデュアルSrc/Abl阻害プロファイルを維持したが、Srcに対してよりも1桁高いK
i値を示し、Ablよりもc-Srcに対する有意な選択性を保有していた。誘導体Si192は、7.5μMのK
iを持つ中等度の活性を呈した。Table 6 (表7)から分かるように、誘導体Si308及びSi309は、Fynに対して強力なインビトロ阻害効果を、ナノモル範囲内のK
i値とともに示した(それぞれ、70nM及び95nM)。これらの効力は、C3フェニル環のパラ位における塩素又はメチル置換基の寄与により惹起された可能性が最も高い(Si308をSi244と、及びSi309をSi244と比較している)。マイクロモル未満の親和性(それぞれ、0.36μM、0.78μM及び0.995μM)を呈した化合物Si310、Si337及びSi338についても、興味深い活性が見られた。
【0490】
更に、Si174、Si74、S13及びSi244には、それぞれ、1.4μM、1.15μM、3.5μM及び0.9μMのK
i値が結果的に与えられた。誘導体Si109、Si180、Si192、Si215、Si148、Si164は、7.5μMから16μMの範囲のK
iを持つ中等度の活性を呈した。残りの化合物については活性が検出されなかった。
【0491】
一般的な傾向として、N1側鎖におけるメチルによる塩素の置換は、約1/10に減少した活性を持つ親和性の著しい低減につながった(Si312対Si244、Si337対Si308及びSi338対Si309を比較している)。
【0492】
3.2-神経芽細胞腫:
3.2.1-神経芽細胞腫:材料及び方法
神経芽細胞腫ヒト細胞株SH-SY5Yに対する抗増殖活性。インビトロ実験は、ヒト神経芽細胞腫細胞株SH-SY5Yを使用して行った。細胞は、American Type Culture Collection社(ATCC、Manassas、VA、USA)から購入し、10%ウシ胎仔血清を補充したDMEM培地中で培養した。薬物の抗増殖効果を決定するために、SH-SY5Y細胞を2×105細胞/ml密度で播種し、0.01から50μMまでの漸増濃度の化合物で処理した。培養物を、37℃、5% v/v CO2中で72時間にわたって維持した。自動細胞カウンターNucleoCounter (登録商標) (Chemometec社、Denmark)を使用して、細胞数及び生命力を評価した。NucleoCounterからの結果は、製造業者により指示された試料調製に応じて、全又は非生存細胞濃度のいずれかを表した。IC50 (50%の成長阻害を決定した薬物濃度)は、最良当てはめシグモイド曲線を使用するGrafit v4.0 (Erithacus Software Limited社)ソフトウェアによって計算した。
【0493】
スフェロイド成長アッセイ。阻害剤のインビトロ抗腫瘍作用を、神経芽細胞腫スフェロイドアッセイによって評価した。SH-SY5Y細胞株を、ヒト神経芽細胞腫の細胞モデルとして利用した。細胞は、American Type Culture Collection社(ATCC、Manassas、VA、USA)から購入し、10%ウシ胎仔血清を補充したDMEM培地中で培養した。IBIDI血管新生マイクロスライド(IBIDI GmbH社)に成長因子低減マトリゲル(BD、Bioscience社)をコーティングし、30分間にわたって重合させた。SH-SY5Y細胞を、阻害剤の存在下又は非存在下(CTR)で、96マルチウェルプレートに播種した。播種後24時間から出発して、基礎条件で、球状の外観を持つ細胞凝集体(直径>100μm)が可視であった。細胞の球のサイズは、面積及び直径の観点から、5つのランダムフィールド/処理(400×倍率)を考慮し、Image Pro-plus v 4.5分析システムを使用して決定した。IC
50 (50%の成長阻害を決定した薬物濃度)は、最良当てはめシグモイド曲線を使用するGrafit v4.0 (Erithacus Software Limited社)ソフトウェアによって計算した。
【0494】
細胞周期分析。細胞(SH-SY5Y)を、60mmのペトリ皿に3×10
5の密度で播種した。処理及びその後の加湿雰囲気における37℃及び5%CO
2で24時間にわたるインキュベーションの後、収穫した細胞を洗浄し、70%エタノールで終夜固定した。次いで、エタノールを遠心分離によって除去し、細胞をPBSに再懸濁し、50μg/mLヨウ化プロピジウム(PI)により、4℃で30分間にわたって暗所にて染色した。染色した細胞を、試料について20のフィールドをカウントするTaliイメージベースサイトメーター(Life Technologies社、Carlsbad、CA、USA)によって分析し、エクスポートされたfcs生データをFlowingソフトウェア(v. 2.5.0、Perttu Terho、University of Turku、Finland)によって精巧化した。
【0495】
動物及び実験的インビボモデル。雄CD1ヌードマウス(Charles River社、Milan、Italy)を、本発明者らの施設によって確立されたガイドライン下で維持した(University of L'Aquila、Medical School and Science and Technology School Board Regulations、実験動物の使用については1992年1月27日のイタリア政府規制n.116に従う)。あらゆる侵襲的な操作の前に、ケタミン(25mg/mL)/キシラジン(5mg/mL)の混合物でマウスに麻酔をかけた。100μLの12mg/mLマトリゲル(Becton Dickinson社、Franklin Lakes、NJ、USA)中の1×10
6 SH-SY5Y細胞を皮下注射することによって、腫瘍移植片を取得した。平均腫瘍径を測定することによって腫瘍成長を毎日モニターした。腫瘍体積を、式4/3πr
3に従ってmm
3で表現した。インビボ投与のために、Si306を0.5%メチルセルロース溶液中懸濁液として調製した。各マウスに、メチルセルロースビヒクルの、又は50mg/kg Si306の経口投与を毎日受けさせた。
【0496】
発芽アッセイ。脳微小血管内皮細胞株hBMECは、ScienCell Research Laboratory社(Carlsbad、CA、USA)から購入した。HBMEC細胞を、20%メチルセルロースを含有する培養培地に懸濁し、1000細胞/ウェルの密度で非接着性96ウェルプレートに播種し、37℃(5%CO
2、100%湿度)で培養した。これらの条件下で、懸濁した内皮細胞(EC)は、スフェロイドとして公知の単一細胞凝集体を4時間以内に自発的に形成する。スフェロイドを24時間以内に収穫し、ゲル内発芽血管新生実験に使用した。手短に述べると、スフェロイドを、マトリゲルでコーティングしたマイクロスライドに播種し、画像を24時間後に観察し、倒立顕微鏡によって捕捉し、NIH社Image J分析システムで分析した。統計的分析のために、スフェロイド当たりの新芽の数を、各処理につき10のスフェロイドの最小で、考慮した。
【0497】
3.2.2-神経芽細胞腫:考察
インビトロ生物学的活性。選択されたc-Src阻害剤を、神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞の増殖を阻害するそれらの能力について評価した(
図6)。細胞を、漸増濃度の阻害剤(0.1〜50μM)で72時間にわたって処理し、対照に対するスフェロイドの平均面積を考慮してIC
50値を計算した。SH-SY5Yに対する最強の効果は、0.12及び0.34μMのIC
50値をそれぞれ示すSi322及びSi306によって取得された。抗腫瘍性効果もスフェロイド形成アッセイによって試験した。Si306の存在下におけるスフェロイドの成長速度は、有意に抑えられた(
図7)。Si306の生物学的効果も、細胞周期の分析を介して評価した(
図8)。SH-SY5Y細胞を、漸増濃度のSi306 (0.1〜10μM)で処理し、細胞周期の各期における細胞の百分率を、DNA含有量の蛍光分析によって評価した。Si306は、0.1μMから出発して、細胞周期のG1相における細胞の有意且つ用量依存性の蓄積を決定した。並行して、本発明者らは、アポトーシス細胞の存在を示す低二倍体細胞の進行性蓄積を観察した。10μM Si306による処理は、処理細胞の約50%においてアポトーシスを誘発した。
【0498】
インビボ研究。最も有望なc-Src阻害剤の中でも、化合物Si306が、異なるADME特性、無細胞アッセイにおける顕著な活性、及びSH-SY5Y神経芽細胞腫細胞に対する有望なマイクロモル未満の効力の適切なバランスを示したことから、これをインビボ研究に選択した。Si306の抗がん活性は、異種移植片マウスモデルを使用してインビボで試験した。SH-SY5Y神経芽細胞腫細胞を接種したマウスを、可視腫瘍塊の出現から出発して50mg/kgのSi306で毎日処理し、腫瘍体積を一定の間隔で評価した。Si306は、60日の経口治療後に、腫瘍体積における有意な低減を引き起こし、プラセボ処理マウスと比較して平均腫瘍体積において50%超低減させた。インビボでのダサチニブ処理(50mg/kg)は非常に類似する阻害傾向が決定されたが、明瞭な腫瘍塊の出現はダサチニブ群の方がSi306で処理したマウスと比べて早かった(
図9A)。注目すべきことに、マウスは、実験中に苦痛又は体重減少の兆候を示さなかった。エンドポイントにおける腫瘍関連血管新生が、Si306で処理したマウスにおいて有意に損なわれたことは、注目に値する(データは示されていない)。故に、内皮細胞の血管新生応答に対するSi306の効果を分析するために、3次元インビトロ発芽アッセイを実施した。内皮HBMEC由来のスフェロイドを、マトリゲル上に播種した。実験の開始から24時間後、本発明者らは、未処理対照細胞と比較した、0.5μM及び1μM濃度の化合物で処理したスフェロイドに由来する新芽の数の低減によって実証される通り、血管新生の有意な低減を観察した(
図9B)。
【0499】
3.3-膠芽細胞腫:
3.3.1-膠芽細胞腫:材料及び方法
U87及びU251細胞に対する増殖アッセイ。U87及びU251細胞は、European Collection of Cell Cultures社(ECACC、Salisbury、UK)から購入し、10%ウシ胎仔血清を補充したDMEM培地中で培養した。薬物の抗増殖効果を決定するために、腫瘍細胞を2×105細胞/ml密度で播種し、示されている濃度の化合物で処理した。培養物を、37℃、5% v/v CO
2で72時間にわたって維持した。細胞数及び生存率をトリパンブルー排除試験によって評価した。生存細胞を、ビヒクルで処理した細胞(=100%)に対する百分率として表現した。少なくとも3つの異なる実験の平均及びSD値を示す。
【0500】
U87異種移植片。雄CD1ヌードマウス(Charles River社、Milan、Italy)を、実験動物の使用についてはイタリア政府規制に従い、University of L'Aquila、Medical School and Science and Technology School Board Regulationsによって確立されたガイドライン下で維持した。あらゆる侵襲的な操作の前に、ケタミン(25mg/mL)/キシラジン(5mg/mL)の混合物でマウスに麻酔をかけた。100μLの12mg/mLマトリゲル(Becton Dickinson社、Franklin Lakes、NJ、USA)中の1×106 U87細胞を皮下注射することによって、腫瘍移植片を得た。マウスを4つの群に分けた:ビヒクルで処理したもの、放射線療法で処理したもの、Si306で処理したもの及び放射線療法と組み合わせたSi306で処理したもの。インビボ投与のために、Si306を0.5%メチルセルロース溶液中懸濁液として調製した。各マウスに、メチルセルロースビヒクルの、又は40mg/kg Si306の経口投与を毎日受けさせた。エンドポイントで、腫瘍を回収し、秤量した。明瞭な腫瘍塊の最初の兆候時に、腫瘍異種移植片に4Gy線量を1回照射した。
【0501】
低密度成長アッセイ。クローン密度におけるU87細胞の成長のための能力は、10%ウシ胎仔補充DMEM中、10細胞/cm
2の密度で細胞を平板培養することによって評価した。2週間の培養後、接着性細胞を冷メタノールで固定し、PBS/BSAで洗浄し、風乾させた。接着性細胞を、0.5%クリスタルバイオレットにより、室温で15分間にわたって染色した。染色されたコロニーを顕微鏡撮影し、パブリックドメインソフトウェアImageJ (Wayne Rasband開発、http://rsb.info.nih.gov/ij/)を用いて数及びサイズによって分析した。少なくとも3つの異なる実験の平均及びSD値を示す。細胞増殖を、マイトマイシン(20μM、2μM、0.2μM及び0.02μM)と、又は放射線(4Gy、細胞平板培養の翌日)と組み合わせたSi306でも試験した。
【0502】
免疫組織化学(IHC)分析。スライドに載せた組織切片(厚さ4μm)をキシレン中で脱パラフィンし、100%、95%及び80%エタノール中で連続的に水和させ、3%H2O2で処理し、次いで、抗アルファ平滑筋アクチン(アルファ-SMA)抗体とともに室温で1時間にわたってインキュベートした。切片をPBS中で3回洗浄し、Sigma fast 3,30-ジアミノベンジジン錠セット(Sigma社、St.Louis、MO)を製造業者の指示に従って使用して、抗体結合を明らかにした。抗体は、Cell Signaling (Cell Signaling Technology,Inc.社)から購入した。
【0503】
ウエスタンブロット分析。全細胞溶解物は、1%トリトン、0.1%SDS、2mM CaCl2、10mg/mlオルトバナデート及び1×プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有する溶解緩衝剤(Sigma社、St. Louis、MI、USA)中で細胞をインキュベートすることによって得た。タンパク質含有量は、タンパク質アッセイキット2 (Bio-Rad Laboratories社、Hercules、CA、USA)を使用して決定した。60マイクログラムのタンパク質を、10% SDS-ポリアクリルアミドゲル中で電気泳動させた。電気泳動の後、ゲルをトランスブロットTurboミニニトロセルロース転写パック上に置き、トランスブロットTurbo転写システム(Bio-Rad Laboratories社、Hercules、CA、USA)を使用して転写した。膜を、1μg/mlの一次抗体とともに、次いで、適切な西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体とともにインキュベートした。一次抗体β-アクチン、PDGFR-ベータ、アルファ-SMAは、Cell Signaling Technology社から購入し、タンパク質バンドは、化学発光検出システム(Thermo Scientific社、Rockford、IL、USA)を使用して可視化し、シグナルは、Chemidoc XRSシステム(Bio-Rad Laboratories社)によってデジタル方式で獲得した。
【0504】
同所性移植マウスモデル。雄CD1ヌードマウス(Charles River社、Milan、Italy)を、実験動物の使用についてはイタリア政府規制に従い、University of L'Aquila、Medical School and Science and Technology School Board Regulationsによって確立されたガイドライン下で維持した。あらゆる侵襲的な操作の前に、ケタミン(25mg/mL)/キシラジン(5mg/mL)の混合物でマウスに麻酔をかけた。定位機器上に載せたハミルトンシリンジで、2microL PBS (David Kopf Instruments社、CA、USA)に再懸濁した2*10
3 U87細胞を注射することによって、腫瘍移植片を得た。細胞は、骨膜クラニック(cranic)部位の露出並びに線条体から4mm及び4mmの深さに限局した直径1mmの穴のドリミング(drimming)後に注射した。創傷を抗生物質で処置し、外科的に縫合した。
【0505】
3.3.2-膠芽細胞腫:考察
Si306の抗増殖効果を、U251及びU87細胞株においてインビトロで試験した(
図10及び11)。U251悪性神経膠腫細胞株は、当初、Pontenその他によってGBMを持つ75歳の男性から確立された
29,30。Ponten及び同僚らは、GBMを持つ女性から、U87 GBMモデルを当初確立した
30。これらのGBM細胞株は、ヒトGBMの目立った特色を模倣することが公知であり、そのため、がんの異種マウスモデルにおいて、この40年にわたって大きな注目を集めている
29,31。U251及びU87細胞株は、重要な分子態様が異なる。U87はU251よりも本質的に放射線抵抗性であり、これは最も放射線感受性細胞期であるG2/Mにおいて見られるより多くのサイクリングU251細胞に部分的に起因しており、一方、より多くのU87細胞は、より放射線抵抗性の細胞期であるS及びG1にあることが見出されている
32。U251は突然変異体p53を含有し、U87はWT p53を含有する
33。
【0506】
5μMの濃度のSi306は、処理の72時間後の対照と比較した場合に、総細胞数の約50%の低減を誘発した(
図10及び11)。U87細胞(
図11)において、80%超の死細胞が30μMの化合物の存在下で観察されたため、Si306の効果は、U251細胞におけるものよりも顕著であった(
図10)。
【0507】
Si306を、U87 (
図12)及びU251 (
図13)膠芽細胞腫細胞株において、周知の遺伝毒性剤であるマイトマイシンCとも組み合わせて試験した。細胞を、漸増マイトマイシンC濃縮物により、1μM Si306の存在下で72時間にわたって処理した。併用治療は、相乗的抗増殖効果を決定し、これはU87細胞においてより顕著であった。
【0508】
U87細胞を皮下接種したヌードマウスにSi306をインビボで投与した。マウスに50mg/kgのSi306を1日おきに受けさせ、化合物の抗腫瘍性効果を単一の放射線治療(4Gy)とも組み合わせて評価した。エンドポイントで、併用療法を受けたマウスは、他の実験群に対して最小の腫瘍(未処理群に対して<80%)を示した(
図14)。
【0509】
Si306プラス放射線療法の併用療法を、低密度成長アッセイによってインビトロでも評価した。U87細胞を低密度(100細胞未満/cm
2)で播種し、1回の照射(4Gy)プラス1μM又は10μMのSi306を1日おきに受けさせた。15日後、10を超える細胞を持つコロニーの数をカウントした。併用療法は、対照と及び単一の治療に対して、コロニーの数を有意に低減させた(
図15)。
【0510】
インビボ実験からの腫瘍塊を分析することにより、発明者らは、組織学パターンにおける有意差を観察した。Si306処理は、分化マーカーアルファ-SMAの発現によって評価される通り、筋線維芽細胞含有量の低減を決定した(
図16)。筋線維芽細胞分化を妨げるSi306の能力を、TGF-ベータで処理したヒト線維芽細胞wi38上においてインビトロで試験した。Si306は、TGF-ベータシグナル伝達の下流のPDGFR及びアルファ-SMAの発現を遮断することができた(
図17)。次いで、発明者らは、膠芽細胞腫の同所性移植インビボモデルにおいてSi306及びプロドラッグpro-Si306の抗腫瘍性活性を評価した。Si306及びpro-Si306はいずれも、対照群に対するマウスの生存延長における有意な能力を実証し、この能力は、放射線治療に匹敵するものであった(
図18)。
【0511】
3.4-白血病:
3.4.1-白血病:材料及び方法
ヒト細胞株K562に対する抗増殖活性。
インビトロ実験は、ヒト慢性骨髄性白血病細胞株K562を使用して行った。細胞は、American Type Culture Collection社(ATCC、Manassas、VA、USA)から購入し、10%ウシ胎仔血清を補充したRPMI培地中で培養した。Fyn阻害剤の抗増殖効果を決定するために、K562細胞を2×105細胞/ml密度で播種し、0.01から50μMまでの漸増濃度の化合物で処理した。培養物を、37℃、5% v/v CO
2中で72時間にわたって維持した。自動細胞カウンターNucleoCounter (登録商標) (Chemometec社、Denmark)を使用して、細胞数及び生命力を評価した。NucleoCounterからの結果は、製造業者により指示された試料調製に応じて、全又は非生存細胞濃度のいずれかを表した。IC
50 (50%の成長阻害を決定した薬物濃度)は、最良当てはめシグモイド曲線を使用するGrafit v4.0 (Erithacus Software Limited社)ソフトウェアによって計算した。
【0512】
3.4.2-白血病:考察
Srcキナーゼファミリーのいくつかのメンバーは、CMLにおいて上方調節及び/又は過剰活性化され、それらの活性ががん細胞の増殖及び分化を調節する。K562細胞において、Fynキナーゼ発現は、BCR-ABL1癌遺伝子の直接制御下にあり、その上方調節は、K562増殖を持続する上で基本的なものである。試験化合物は、インビトロ阻害アッセイによって決定されたKi値と十分に相関する有効な抗増殖活性を示した。最も有効な化合物、Si308及びSi309は、マイクロモル未満の範囲内の細胞生存率について、有望なIC
50値を示した(
図19)。それらの化合物は、ヒト正常線維芽細胞において試験した場合には、細胞毒性のいかなる兆候も示さなかったことに留意することが重要である。
【実施例5】
【0516】
本発明の化合物のプロドラッグ
別段の指定がない限り、材料及び方法は、実施例1、2及び3について先に報告されているものと同じである。
【0517】
5.1-化学:材料及び方法
化合物S13、Si35、Si83、Si214、Si221、Si223、Si278及びSi306は、本発明者らが既に報告した
18,20,21,22,23。
【0518】
ピラゾロ[3,4-d]ピリミジンプロドラッグ(proS13、proS13(A)、proSi221、proSi214、proSi306、proSi35、proSi223、proSi83、proSi20、proSi278(A)、proSi278(B)、proSi278(C)、proSi278(D))の合成のための一般的手順
NaHCO
3 (2.25mmol、5.00当量)を、DCM乾燥(8mL)中の適切なピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物(0.45mmol、1.00当量)の溶液に添加した。室温で5分間の撹拌後、懸濁液を氷浴で冷却し、次いで、DCM乾燥(8mL)中のトリホスゲン(0.45mmol、1.00当量)の溶液を添加した。30分後、氷浴を除去し、反応混合物を室温に加温し、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物のスポットがTLCから消失するまで(2時間、およそ)撹拌した。DCM乾燥(8mL)中の2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エタノール(又は適切なアルコール) (0.90mmol、2.00当量)の溶液を添加し、得られた混合物を室温で16時間にわたって撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、得られた残留物を、溶出液としてDCM及びMeOHの混合物を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0519】
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチルベンジル(1-(2-クロロ-2-フェニルエチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)カルバメート(proS13)
【0520】
【化125】
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【0521】
柔らかい白色固体。収率: 79%。
【0522】
【数52】
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【0523】
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル(1-(2-(4-ブロモフェニル)-2-クロロエチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)(2-クロロベンジル)カルバメート(proSi221)
【0524】
【化126】
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【0525】
柔らかい白色固体。収率: 76%。
【0526】
【数53】
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【0527】
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル(3-クロロフェニル)(6-(メチルチオ)-1-フェネチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)カルバメート(proSi214)
【0528】
【化127】
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【0529】
透明油状物。収率: 75%。
【0530】
【数54】
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【0531】
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル(3-ブロモフェニル)(1-(2-クロロ-2-フェニルエチル)-6-((2-モルホリノエチル)チオ)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)カルバメート(proSi306)
【0532】
【化128】
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【0533】
柔らかい白色固体。収率: 51%。
【0534】
【数55】
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【0535】
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル(3-ブロモフェニル)(6-(メチルチオ)-1-(2-フェニルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)カルバメート(proSi278 (A))
【0536】
【化129】
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【0537】
透明油状物。収率: 30%。
【0538】
【数56】
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【0539】
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチルブチル(1-(2-クロロ-2-フェニルエチル)-6-(エチルチオ)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)カルバメート(proSi20)
【0540】
【化130】
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【0541】
透明油状物。収率: 39%。
【0542】
【数57】
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【0543】
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル(1-(2-クロロ-2-フェニルエチル)-6-(メチルチオ)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)(フェネチル)カルバメート(proSi35)
【0544】
【化131】
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【0545】
透明油状物。収率: 71%。
【0546】
【数58】
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【0547】
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル(1-(2-(4-ブロモフェニル)-2-クロロエチル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)(フェニル)カルバメート(proSi223)
【0548】
【化132】
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【0549】
白色固体。収率: 25%。
【0550】
【数59】
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【0551】
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エチル(1-(2-クロロ-2-フェニルエチル)-6-(メチルチオ)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)(3-クロロフェニル)カルバメート(proSi83)
【0552】
【化133】
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【0553】
透明油状物。収率: 85%。
【0554】
【数60】
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【0555】
1-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパン-2-イル(3-ブロモフェニル)(6-(メチルチオ)-1-(2-フェニルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)カルバメート2 (proSi278 (B))
【0556】
【化134】
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【0557】
透明油状物。収率: 30%。
【0558】
【数61】
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【0559】
1-(4-メチルピペラジン-1-イル)ブタン-2-イル(3-ブロモフェニル)(6-(メチルチオ)-1-(2-フェニルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)カルバメート(proSi278 (C))
【0560】
【化135】
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【0561】
透明油状物。収率: 40%。
【0562】
【数62】
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【0563】
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1-フェニルエチル(3-ブロモフェニル)(6-(メチルチオ)-1-(2-フェニルプロピル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)カルバメート(proSi278 (D))
【0564】
【化136】
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【0565】
透明油状物。収率: 32%。
【0566】
【数63】
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【0567】
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エタノール(30)
【0568】
【化137】
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【0569】
メチルピペラジン(3.54mL、31.9mmol、1.33当量)をトルエン(11mL)に溶解し、ブロモエタノール(1.70mL、23.9mmol、1.00当量)をゆっくり添加し、混合物を室温で終夜撹拌した。次いで、これを濾過し、有機相を回収し、溶媒を減圧下で除去して、所望生成物を得た。収率: 80%。白色固体。
【0570】
【数64】
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【0571】
1-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロパン-2-オール(31)
【0572】
【化138】
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【0573】
メチルピペラジン(55.0μL、0.50mmol、2.00当量)をトルエン(7mL)に溶解し、1-ブロモ-2-プロパノール(23.0μL、0.25mmol、1.00当量)をゆっくり添加し、混合物を室温で終夜撹拌した。次いで、これを濾過し、有機相を回収し、溶媒を減圧下で除去して、所望生成物を得た。収率: 38%。透明油状物。
【0574】
【数65】
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【0575】
1-(4-メチルピペラジン-1-イル)ブタン-2-オール(32)
【0576】
【化139】
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【0577】
ZnCl
2 (12.4mg、0.09mmol、0.10当量)を、ACN (8mL)中のメチルピペラジン(110μL、1.00mmol、1.10当量)及び1,2-エポキシブタン(79.0μL、0.91mmol、1.00当量)の溶液に添加し、混合物を還流させながら16時間撹拌した。次いで、溶出液としてPE:EtOAc:MeOH:Et
3N = 10:8:1:1を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。収率: 31%。透明油状物。
【0578】
【数66】
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【0579】
2-(4-メチルピペラジン-1-イル)-1-フェニルエタノール(33)
【0580】
【化140】
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【0581】
メチルピペラジン(55.0μL、0.50mmol、2.00当量)をトルエン(7mL)に溶解し、混合物を100℃に加熱し、次いで、スチレンオキシド(23.0μL、0.25mmol、1.00当量)をゆっくり添加し、混合物を130℃で終夜撹拌した。H
2Oを添加し、DCMによる抽出を実施し(×3)、有機相を収集し、ブラインで洗浄し、Na
2SO
4で脱水した。溶媒の蒸発後に得られた油性残留物を、溶出液としてEtOAc:MeOH = 8:2を使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。収率: 60%。透明油状物。
【0582】
【数67】
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【0583】
クロマトグラフィー法
LC分析は、真空溶媒脱気装置、バイナリ高圧勾配ポンプ、1100シリーズUV検出器、及び1100 MSDモデルVLベンチトップ型質量分析計によって構成される、Agilent 1100 LC/MSD VLシステム(G1946C) (Agilent Technologies社、Palo Alto、CA)を用いて実施した。
【0584】
クロマトグラフィープロファイルは、Varian社Polaris C18-Aカラム(150-4.6mm、5μm粒径)及び勾配溶出(溶出液AはACNであり、溶出液Bは水からなる)を使用して取得した。分析は、2%の溶出液Aから出発し、これを12分間で70%まで急速に増大させ、次いで、20分間で98%までゆっくり増大させた。流速は0.8mL分
-1であり、注入体積は20μLであった。
【0585】
Agilent 1100シリーズ質量スペクトル検出(MSD)シングル四重極機器は、直交スプレーAPI-ES (Agilent Technologies社、Palo Alto、CA)を備えていた。窒素を霧化及び乾燥ガスとして使用した。霧化ガスの圧力、乾燥ガスの流量、キャピラリー電圧、フラグメンター電圧及び気化温度は、それぞれ、40psi、9L/分、3000V、70V及び350℃に設定した。UV検出は254nmでモニターした。LC-ESI-MS決定は、MSDを正イオンモードで操作することによって実施した。スペクトルは、0.1uの刻み幅を使用して、スキャン範囲m/z 100〜1500にわたって獲得した。
【0586】
水溶性アッセイ。
固体化合物(1mg)を、1mLの水に添加した。試料を、シェーカー浴中、20℃で24時間にわたって振とうした。懸濁液を0.45μmのナイロンフィルター(Acrodisc社)に通して濾過し、可溶化した化合物をLC-MS-MSアッセイによって決定した。決定を三連で実施した。
【0587】
クロマトグラフィー分析は、上記で報告された方法を用いて実施し、化合物の定量化は、メタノール中標準溶液で実現された適切な較正曲線との比較によって行った。
【0588】
並列人工膜透過性アッセイ(PAMPA)。
試験化合物のドナー溶液(0.5mM)は、リン酸緩衝液(pH7.4、25mM)を使用して、1mMジメチルスルホキシド(DMSO)化合物ストック溶液を希釈することによって調製した。フィルターを、5μLのホスファチジルコリンの1% (w/v)ドデカン溶液、又はCHCl
3溶液10%w/vから調製した4μLの脳極性脂質溶液(20mg/mL 16%CHCl
3、84%ドデカン)で、それぞれ腸透過性及びBBB透過性のためにコーティングした。ドナー溶液(150μL)をフィルタープレートの各ウェルに添加した。アクセプタープレートの各ウェルに、300μLの溶液(リン酸緩衝液中50%DMSO)を添加した。化合物を、3つの異なるプレート中で異なる日に試験した。サンドイッチを、穏やかに振とうしながら、室温で5時間にわたってインキュベートした。インキュベーション時間後、プレートを分離し、試料をレシーバー及びドナー側の両方から採取し、254nmにおけるUV検出でLCを使用して分析した。
【0589】
クロマトグラフィー分析は、上記で報告された方法を用いて実施した。
【0590】
PAMPAについての透過性(P
app)は、Wohnsland及びFaller並びにSuganoら
27, 28から入手した下記の方程式に従って計算した。
【0591】
透過性値をcm/秒で取得するために、方程式に若干の修正を加えた:
【0592】
【数68】
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【0593】
[式中、V
Aはアクセプターウェル中における体積であり、V
Dはドナーウェル中における体積(cm
3)であり、Aは膜の「有効面積」(cm
2)であり、tはインキュベーション時間(秒)であり、rはアクセプター中における薬物濃度と全体積(V
D+V
A)中における薬物の平衡濃度との比である]。薬物濃度は、ピーク面積積分を使用して推定される。
【0594】
膜保持(%)は、下記の方程式:
【0595】
【数69】
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【0596】
[式中、rは、アクセプター中における薬物濃度と平衡濃度との比であり、D、A及びEqは、それぞれ、ドナー、アクセプター及び平衡溶液中における薬物濃度を表していた]に従って計算した。
【0597】
5.2-生物学的活性:材料及び方法
ミクロソーム安定性アッセイ。
DMSO中で可溶化した各化合物を、25mMリン酸緩衝液(pH7.4)、5μLのヒト肝臓ミクロソームタンパク質(0.2mg/mL)中、NADPH-生成システムの存在下、0.5mLの最終体積(化合物最終濃度、50μM)にて、37℃で60分間にわたってインキュベートし、DMSOは2% (最終溶液)を超えなかった。氷中で冷却し、1.0mLのアセトニトリルを添加することによって、反応を停止させた。次いで、反応混合物を10000rpmで15分間にわたって遠心分離し、その後、親薬物及び代謝物をLC-UV-MSによって決定した。
【0598】
クロマトグラフィー分析は、上記で報告された方法を用いて実施した。
【0599】
代謝されなかった化合物の百分率は、基準溶液との比較によって計算した。決定を三連で実施した。
【0600】
安定性試験
20℃に維持したプロドラッグ溶液(500μM)は、化合物を、0,0125M pH7.4リン酸緩衝液、水及びメタノールにそれぞれ溶解することによって調製した。48時間のインキュベーション期間中に引き抜いたアリコート(20μL)を、HPLCによって分析した。
【0601】
酵素安定性を決定するために、プールされたヒト血漿(750μL)、pH7.4リン酸緩衝液(700μL)及び50μLのMeOH中プロドラッグの3.0mM溶液(最終濃度100μM)を、試験管中で混合した。
【0602】
管を、37℃及び所定の時点でインキュベートし、150μLアリコートを除去し、600μLの冷アセトニトリルと混合し、5000rpmで15分間にわたって遠心分離した。上清を除去し、HPLCによって分析した。
【0603】
化合物の加水分解に続いて、上記で報告されたUV-MS検出方法を用いるHPLCを行った。
【0604】
減衰量の半減期(t
1/2)を、Sobolら
79から入手した下記の方程式に従って計算した:
【0605】
【数70】
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【0606】
[式中、ln(2)は2の自然対数(0.693)であり、kは消失速度定数である]。
値は分で表現する。
【0607】
神経芽細胞腫ヒト細胞株SH-SY5Yに対する抗増殖活性。インビトロ実験は、ヒト神経芽細胞腫細胞株SH-SY5Yを使用して行った。細胞は、American Type Culture Collection社(ATCC、Manassas、VA、USA)から購入し、10%ウシ胎仔血清を補充したDMEM培地中で培養した。薬物の抗増殖効果を決定するために、SH-SY5Y細胞を2×105細胞/ml密度で播種し、0.01から50μMまでの漸増濃度の化合物で処理した。培養物を、37℃、5% v/v CO2中で72時間にわたって維持した。自動細胞カウンターNucleoCounter (登録商標) (Chemometec社、Denmark)を使用して、細胞数及び生命力を評価した。NucleoCounterからの結果は、製造業者により指示された試料調製に応じて、全又は非生存細胞濃度のいずれかを表した。IC50 (50%の成長阻害を決定した薬物濃度)は、最良当てはめシグモイド曲線を使用するGrafit v4.0 (Erithacus Software Limited社)ソフトウェアによって計算した。
【0608】
増殖アッセイ。U87及びU251細胞は、European Collection of Cell Cultures社(ECACC、Salisbury、UK)から購入し、10%ウシ胎仔血清を補充したDMEM培地中で培養した。薬物の抗増殖効果を決定するために、腫瘍細胞を2×105細胞/ml密度で播種し、示されている濃度の化合物で処理した。培養物を、37℃、5% v/v CO2で72時間にわたって維持した。細胞数及び生存率をトリパンブルー排除試験によって評価した。生存細胞を、未処理細胞(=100%)に対する百分率として表現した。少なくとも3つの異なる実験の平均及びSD値を示す。
【0609】
ヒト細胞株K562に対する抗増殖活性。インビトロ実験は、ヒト慢性骨髄性白血病細胞株K562を使用して行った。細胞は、American Type Culture Collection社(ATCC、Manassas、VA、USA)から購入し、10%ウシ胎仔血清を補充したRPMI培地中で培養した。Fyn阻害剤の抗増殖効果を決定するために、K562細胞を2×105細胞/ml密度で播種し、0.01から50μMまでの漸増濃度の化合物で処理した。培養物を、37℃、5% v/v CO
2で72時間にわたって維持した。自動細胞カウンターNucleoCounter (登録商標) (Chemometec社、Denmark)を使用して、細胞数及び生命力を評価した。NucleoCounterからの結果は、製造業者により指示された試料調製に応じて、全又は非生存細胞濃度のいずれかを表した。IC
50 (50%の成長阻害を決定した薬物濃度)は、最良当てはめシグモイド曲線を使用するGrafit v4.0 (Erithacus Software Limited社)ソフトウェアによって計算した。
【0610】
インビボ薬物動態。使用した動物プロトコールは、Animal Care and Ethics Committee of the Universita degli Studi di Siena、Italyによって総説され承認されたものである。雄BALB/Cマウス(体重20〜30g)をCharles River社(Milan、Italy)から入手した。実験は三連で実施し、マウスを3つの群に分け、各群に、DMSO (腹腔内、50mg
.Kg
-1)中の100μLのDMSO (対照)、薬物(Si306)又はプロドラッグ(pro-Si306)溶液を受けさせた。動物をヘパリン溶液で処理し、CO
2下、異なる時点(0,25時間〜24時間)で屠殺し、血液(心臓穿刺によって抜き取った)及び脳を次の定量分析のために収集した。予めヘパリン化した血液を、4000rpmで20分間にわたって遠心分離して、血漿分画を分離し、次いで、500μlを試験管中に収集した。各試料につき1mlのACNを(内部標準として化合物S34 5μMの存在下で)添加してタンパク質を変性させ、薬物及びプロドラッグを抽出した。試料を4000rpmで20分間にわたって遠心分離し、上清を回収し、真空下で乾燥させ、LC-UV-MSによって分析した。ガラス/ガラスポッターエルベジェム型ホモジナイザーを使用し、トリス-HCl緩衝液(50mM)の存在下で脳をホモジナイズし、7mLのACNを使用して化合物を回収し、次いで、血液試料について先に記述した通りに処理した。
【0611】
5.3-プロドラッグ:考察
インビボ転換を経た後に活性薬物を放出する薬学的に活性な薬物の化学的に修飾されたバージョンであるプロドラッグの使用は、潜在的な薬物候補の、物理化学的、生物薬剤学的又は薬物動態学的特性を改善するための十分に確立された戦略を代表する
34,35。
【0612】
ピラゾロ[3,4-d]ピリミジンの生物学的活性は、時に、これらの推定上の薬物候補の将来の開発に影響を及ぼし得る低い水溶性に関連する。この問題を克服し、薬物動態学的特性を増強し、インビボ分布を容易にするために、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン化合物のプロドラッグが合成された
36。
【0613】
これらの化合物は、可溶化部分、すなわち、O-アルキルカルバメート鎖によってピラゾロ[3,4-d]ピリミジン核のC4位に連結しているN-メチルピペラジノ基を特徴とする。
【0614】
先に合成した幅広い最終化合物に適用可能な、より迅速且つ多目的な合成(既に報告したものに対して)
36の開発は、魅力的な目標であった。適切なアルコール30、31、32及び33の合成(スキーム5)後、重炭酸ナトリウムを塩基として使用して、クロロカーボネート形成及びその後のアルコールによる塩素の置き換えのためのワンポット2工程手順を実施した(スキーム6)。すべてのプロドラッグ(proS13、proS13(A)、proSi221、proSi214、proSi306、proSi35、proSi223、proSi83、proSi20、proSi278(A)、proSi278(B)、proSi278(C)、proSi278(D))は、Table 7 (表8)に列挙されている対応するSi化合物(S13、Si221、Si214、Si306、Si35、Si223、Si83、Si20、Si278)から出発して合成された。
【0615】
【化141】
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【0616】
【化142】
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【0617】
[式中、
R
35'OHは、アルコール化合物であり、
R
8、R
27'、R
28'、R
29'、R
30'、R
31'、R
32'、R
34'は、上記で定義された通りであり、及び
R
35'は、
式:
【0618】
【化143】
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【0619】
{式中、Yは、NH又はO又はSであり; R
36'は、H又はアルキル又はアリール又はアラルキルであり; Xは、CH又はNであり; Wは、NH又はNCH
3又はOであり; mは、0から2までの整数であり; iは、0から1までの整数である}
又は:
【0620】
【化144】
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【0621】
{式中、Yは、NH又はO又はSであり;
nは、0から4までの整数である}
又は:
【0622】
【化145】
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【0623】
{式中、Yは、NH又はO又はSであり;
nは、0から4までの整数である}
を持つアルキル鎖である]。
【0624】
【表8A】
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【0625】
【表8B】
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【0626】
水溶解度、GI (胃腸)及びBBB (血液脳関門)見掛けの透過性を評価した。PBS、MeOH及び血漿中における安定性についても報告する(Table 8 (表9))。
【0627】
【表9A】
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【0628】
【表9B】
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【0629】
プロドラッグは、それぞれの薬物に関して増強された水溶性を実証した。更に、プロドラッグ部分のかさ高性を増大させることにより、血漿安定性の増強をもたらし、故に、本発明者らは、必要に応じて正しい置換基を選択することができた(ヒト血漿におけるt
1/2: proSi278 (A) (3.21時間) < proSi278 (B) (10.4時間) < proSi278 (C) (11.31時間))。
【0630】
Table 9 (表10)は、神経膠腫U251及びU87細胞(
図22)、神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞(
図21)並びに白血病K562細胞(
図23)における細胞データ(IC
50)を表し、プロドラッグは、がん細胞株に対する活性の全般的改善を示した。
【0631】
【表10】
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【0632】
図24は、インビボ薬物動態を示す: proSi306 (及びその加水分解で誘導された生成物、すなわちSi306)は、薬物に対して、より高い脳内濃度(神経膠腫腫瘍の部位)を示した。同じアッセイは、proSi306のインビボ加水分解を、結果として生じる薬物Si306の放出とともに実証した。更に、血漿分析は、proSi306の分布の、より良好なプロファイルを示した。これらの結果は、プロドラッグアプローチの妥当性を実証し、実際に、加水分解によって生成されたproSi306及びSi306の和によって与えられる総化合物の量は、薬物Si306投与によって得られるものよりも高い脳及び血液組織結果にそれぞれ到達することができる。Table 10 (表11)は、固定の時点で脳及び血液組織において見られる化合物の量を記述している。
図25は、24時間の時点で脳及び血漿において見られる化合物の量を図示している。
【0633】
【表11】
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【0634】
[参考文献]
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