(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-533438(P2017-533438A)
(43)【公表日】2017年11月9日
(54)【発明の名称】材料試験機用加熱装置
(51)【国際特許分類】
G01N 3/42 20060101AFI20171013BHJP
【FI】
G01N3/42 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-523537(P2017-523537)
(86)(22)【出願日】2015年11月2日
(85)【翻訳文提出日】2017年6月13日
(86)【国際出願番号】EP2015075490
(87)【国際公開番号】WO2016071295
(87)【国際公開日】20160512
(31)【優先権主張番号】14191443.2
(32)【優先日】2014年11月3日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517147375
【氏名又は名称】アントン パール トリテック エスエイ
【氏名又は名称原語表記】ANTON PAAR TRITEC SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】バートランド ベラトン
(72)【発明者】
【氏名】マルチェッロ コント
(57)【要約】
試料(120)の表面と接触させるように構成された少なくとも1つの表面測定プローブ(11)を備える材料試験機(100)用の加熱装置であって、前記加熱装置は、赤外線放射を放射するように構成された赤外線放射素子(3)と、前記赤外線放射を前記表面測定プローブ(11)の遠位端に向けるように構成された反射面(15a)を有する反射器(5)とを有するプローブヒータ(1a)を備える。本発明によれば、反射器は第1の焦点(7)と第2の焦点(9)とを備え、赤外線放射素子(3)は実質的に前記第1の焦点(7)に位置する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(120)の表面と接触させるように構成された少なくとも1つの表面測定プローブ(11)を備える材料試験機(100)用の加熱装置であって、前記加熱装置は、
赤外線放射を放射するように構成された赤外線放射素子(3)と、
前記赤外線放射を前記表面測定プローブ(11)の遠位端に向けるように構成された反射面(15a)を有する反射器(5)と
を有するプローブヒータ(1a)を備え、
前記反射器は第1の焦点(7)と第2の焦点(9)とを備え、前記赤外線放射素子(3)は実質的に前記第1の焦点(7)に位置することを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記第2の焦点(9)が前記表面測定プローブ(11)の一部に実質的に位置するように、前記反射器(5)が形成され、かつ、配置される、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記反射器(5)は、その反射面(5a)の少なくとも一部において実質的に楕円形である、請求項1または2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記反射器(5)は、その開放端にマスク部(5b)を備える、請求項1〜3の何れか1項に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記赤外線放射素子(3)は、ハロゲンランプ等の白熱ランプである、請求項1〜4の何れか1項に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記赤外線放射素子(3)は、セラミックヒータである、請求項1〜4の何れか1項に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記反射器(5)は、金、銀、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウムまたは白金コーティング等の赤外線反射コーティングを備える、請求項1〜6の何れか1項に記載の加熱装置。
【請求項8】
試料(120)を支持するように構成されており、かつ、赤外線を放射するように適合された少なくとも1つのさらなる赤外線放射素子(123)と、さらなる赤外線放射素子によって放出された前記赤外線を前記試料(120)に向けるように構成されたさらなる反射面(125)を有するさらなる反射器(121)とを有する試料加熱モジュール(1b)をさらに備える、請求項1〜7の何れか1項に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記さらなる反射器(121)のさらなる反射面(125)は、実質的に放物線状である、請求項8に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記さらなる反射器(121)は、冷却装置(122)を備えたブロックに含まれる、請求項8または9に記載の加熱装置。
【請求項11】
前記さらなる反射面(125)は、前記ブロック上に直接形成される、請求項10に記載の加熱装置。
【請求項12】
前記さらなる反射器(121)は、金、銀、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウムまたは白金コーティング等の赤外線反射コーティングを備える、請求項11に記載の加熱装置。
【請求項13】
前記試料(120)を支持するように適合された試料ホルダ(127)をさらに備え、前記試料ホルダ(127)は絶縁リング(129)内に取り付けられ、前記さらなる反射器(121)の開放面に対向して配置される、請求項8〜12の何れか1項に記載の加熱装置。
【請求項14】
前記絶縁リング(129)と前記試料ホルダ(127)の周辺部とを覆う環状のキャップ(131)をさらに備える、請求項13に記載の加熱装置。
【請求項15】
前記環状キャップ(131)は、その少なくとも1つの表面に、金、銀、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウムまたは白金コーティング等の赤外線反射コーティングを備える、請求項14に記載の加熱装置。
【請求項16】
試料(120)の表面と接触させるように構成された少なくとも1つの表面測定プローブ(11)と、請求項1〜15の何れか1項に記載の加熱装置とを含む材料試験機(100)。
【請求項17】
前記表面測定プローブ(11)を支持するように構成されたヘッドストック(101)と、前記ヘッドストックに取り付けられたヒートシンク(103)とを備え、前記ヒートシンク(103)は、前記表面測定プローブ(11)を取り囲む内部キャビティ(103a)を画定し、前記プローブヒータ(1a)は、前記ヒートシンク(103)に設けられた、前記内部キャビティ(103a)に開口する通路(105)内に取り付けられており、内部キャビティには、任意選択で、金、銀、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウムまたは白金コーティング等の赤外線反射コーティングが施される、請求項16に記載の材料試験機(100)。
【請求項18】
前記反射器(5)は、前記ヒートシンク(103)と一体的に形成される、請求項17に記載の材料試験機(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の表面試験の分野に関する。より詳細には、本発明は、圧子等の材料試験機用加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
材料科学は、ナノスケールにおいてさえ、材料、表面およびコーティングの機械的特性、およびこれらの特性の温度依存性に関する詳細な知識を必要とする。圧痕試験は、ヤング率、硬度、歪み速度感度、トライボロジー特性等を任意の尺度で測定可能とする。マイクロメートルおよびナノメートルの尺度での測定は、特に有用であり、多結晶構造における単結晶の特性の測定を可能にする。
【0003】
これらの特性の多くは、特に材料が結晶相変化またはガラス転移温度を示す場合に、温度に依存するので、高温でこのような測定を行うために多くのシステムが開発されている。しかしながら、測定の精度に影響を与えるチップの熱膨張および試料の熱収縮を引き起こす、高温の試料の局所的な冷却を防止するために、プローブチップを試料と同じ温度に等しく加熱しなければならない。しかしながら、システム全体の加熱を回避するために、試料およびチップに対して加熱をできるだけ局部的に維持しなければならず、これはシステムの他の構成要素の熱膨張を誘発することにより、測定の精度に再び影響する。さらに、これは熱ドリフトを測定に導入する可能性がある。
【0004】
この問題に対処するための様々な方策が開発されている。
【0005】
例えば、国際公開第2003/074623号は、ミクロン以下の尺度での機械的試験に使用するように構成された加熱アセンブリを記載している。プローブチップアセンブリは、プローブに埋め込まれた加熱素子を有するプローブチップヒータシステムを含む。
【0006】
米国特許出願公開第2010/0212411号は、プローブチップを加熱するために、外壁の周りに螺旋状に巻回された電気部材によって加熱された熱伝導材料で作られた中実体を含むチップ圧痕装置を記載している。
【0007】
しかし、プローブチップに一体化された加熱素子を組み込んだかかるシステムは、満足のいくものではない。すなわち、かかるシステムはかさばり、したがって比較的大きな量の材料を加熱する結果となり、熱膨張および熱慣性の両方において望ましくない。顕著な熱慣性は、時間遅れをもたらし、したがって、チップの温度を操作する際の不安定性を支配する。さらに、達成可能な温度は、測定の再現性が良好である温度と同様に、幾分限定されている。
【0008】
サーフェスシステム+テクノロジー GmbH & Co KGにより、圧痕チップのレーザ加熱を伴う代替の解決策が提案されている。しかし、チップで到達可能な最高温度は約500℃であり、多くの用途には不十分である。他の既知の構成は、誘導によってプローブを加熱することを含むが、これは、高感度測定装置の動作に影響を与え得る顕著な電磁干渉を生成する。
【0009】
より一般的な加熱構成に関して、米国特許第5,777,330号は、プラスチックを熱分解して、その組成を赤外線分光法によって識別するためのヒータを記載している。
【0010】
米国特許第4,184,065号には、楕円形反射鏡を備えた加熱装置であって、反射鏡の一部を貫通し、集中した赤外線によって溶融されるロッドを加熱するための加熱装置が記載されている。この構成は、耐火性酸化物の結晶化のためのシステムで使用される。
【0011】
米国特許第3,600,553号には、複数の焦点を有し、そのうちの1つに赤外線放射源が配置されている加熱装置が記載されている。反射器が、頂点でヒンジ結合された2つの半体で形成されており、2つの半体の相対位置を調整することによって1つまたは2つの焦点を形成することができる。焦点が2つの場合には、これらの焦点を分離することで、例えば、集積回路本体の反対側から延びる2本のリード線を、集積回路自体を過熱することなく、単一の半田付け作業で関連する導電性コーティングに同時にハンダ付けすることができる。
【0012】
米国特許第5,805,769号には、食品に炭火焼き表面効果を生成するように、複数の楕円形反射器を組み込んだ食品加熱装置が記載されている。
【0013】
米国特許第3,763,348号には、基板の加熱および写真複写のために楕円形反射器を使用する、均一に表面を照射するための装置が記載されている。
【0014】
米国特許第5,762,707号には、大型の単結晶を成長させるための浮遊帯域溶融装置が記載されている。この装置は、複数の楕円形反射器を使用して赤外線放射を材料のロッドに集中させる。
【0015】
しかしながら、これらの加熱装置のいずれも、構造上の不適合または光学的理由のために、材料試験機での使用に適していない。実際、これらの文献に記載されている構成のいくつかは、圧痕プローブチップを加熱するのに必要な単一の集中焦点とは反対の、いくつかの離散した点に集中した放射、または、表面全体にわたって均一な放射を提供することに関するものである。さらに、上記の文献のいずれも、上記の材料試験機のための既存の加熱装置の欠点のいずれかを克服するためのこのような構成の使用を暗示的または明示的に示唆していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2003/074623号
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0212411号
【特許文献3】米国特許第5,777,330号
【特許文献4】米国特許第4,184,065号
【特許文献5】米国特許第3,600,553号
【特許文献6】米国特許第5,805,769号
【特許文献7】米国特許第3,763,348号
【特許文献8】米国特許第5,762,707号
【発明の概要】
【0017】
したがって、本発明の目的は、従来技術のこれらの欠点の少なくとも一部を克服し、広い温度範囲にわたって使用可能であり、熱慣性が低い材料試験機用の加熱システムを提案することである。
【0018】
この目的は、試料の表面と接触させるように構成された少なくとも1つの表面測定プローブを備える材料試験機用の加熱装置によって達成される。加熱装置は、赤外線放射を放射するように構成された赤外線放射素子と、前記赤外線放射を前記表面測定プローブの遠位端に向けるように構成された反射面を有する反射器とを有するプローブヒータを備える。
【0019】
本発明によれば、反射器は第1の焦点と第2の焦点とを備え、赤外線放射素子は実質的に第1の焦点に位置する。
【0020】
その結果、ハロゲンランプ、セラミックヒータ、レーザ等であるがこれらに限定されない任意の好適な赤外線放射素子から赤外線の集中ビームを生成することができ、次いでこれをプローブ上に所望のように集束することができる。かかる構成により、レーザを用いた場合よりも高い温度を達成することが可能であり、局所的なホットスポットを避けるために必要に応じて赤外線をプローブに多少なりとも鋭く集束させることができる。
【0021】
前記第2の焦点が、前記表面測定プローブの、例えばその遠位端またはその近く等の一部に実質的に位置するように、前記反射器が形成され、かつ、配置されると有利である。
【0022】
前記反射器は、その反射面の少なくとも一部において実質的に楕円形であると有利である。かかる形状は、所望の2つの焦点を示し、従来の工具で容易に加工できる。
【0023】
さらに、反射器は、その開放端にマスク部を備えると有利である。例えば円錐形(すなわち先細の突出部として形成されている)とすることができ、または、環状マスクとすることができるこのマスクは、余分な非集束赤外線放射が反射器から出てシステムの望ましくない部分を加熱することを防ぐ。
【0024】
赤外線放射素子は、ハロゲンランプ等の白熱ランプであると有利である。かかるランプは、交換の容易な、安価で既製の構成部品であり、かつ、フィラメントの質量が小さく、それに対応して熱容量が小さいために熱遅れが非常に小さい。この後者の特性の結果として、優れた応答性および制御安定性が、低い時間遅れで達成され得る。あるいは、赤外線放射素子を、セラミックヒータとすることができる。
【0025】
前記反射器は、金、銀、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウムまたは白金コーティング等の赤外線反射コーティングを備えると有利である。かかるコーティングは、反射器による赤外線放射の吸収を制限し、したがって達成可能なプローブの最高温度を最大にする働きをする。
【0026】
加熱装置は試料加熱モジュールをさらに備えると有利である。任意の形態の試料加熱モジュールを加熱装置に使用することができるが、この特に有利な試料加熱モジュールは、試料がプローブと接触できるように試料を支持するように構成されており、かつ、赤外線を放射するように適合された少なくとも1つのさらなる赤外線放射素子と、さらなる赤外線放射素子によって放出された前記赤外線を前記試料に向けるように構成されたさらなる反射面を有するさらなる反射器とを備える。このようにして試料を支持し、所望の温度に加熱することができる。
【0027】
さらなる反射器は、実質的に放物線状であると有利であり、これにより、ホットスポットの無い均一な試料の加熱をもたらす。
【0028】
さらなる反射器は、冷却装置を備えたブロックに含まれると有利である。これにより、さらなる反射器からの赤外線の再放射が最小限に抑えられる。
【0029】
前記さらなる反射面は、前記ブロック上に直接形成されると有利であり、これにより、優れた熱結合を保証し、部品点数を最小限に抑える。また、反射器は、金、銀、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウムまたは白金コーティング等の赤外線反射コーティングを備えることができる。
【0030】
前記加熱装置は、前記試料を支持するように適合された試料ホルダを備え、前記試料ホルダは絶縁リング内に取り付けられ、前記さらなる反射器の開放面に対向して配置されると有利である。試料ホルダはアルミナ製とすることができる。絶縁リングと前記試料ホルダの周辺部とを覆う環状のキャップを設けることができる。この環状キャップは、外来の赤外線放射が望ましくない方向に伝達されるのを防ぎ、または、望ましくない物体に吸収されないようにする。キャップによる赤外線の吸収を最小限に抑えるために、環状キャップは、その少なくとも1つの表面に、金、銀、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウムまたは白金コーティング等の赤外線反射コーティングを備えると有利である。
【0031】
本発明の目的は、試料の表面と接触させるように構成された少なくとも1つの表面測定プローブおよび上述したような加熱装置を含む材料試験機によっても同様に達成される。
【0032】
この材料試験機は、前記表面測定プローブを支持するように構成されたヘッドストックと、前記ヘッドストックに取り付けられたヒートシンクとを備え、ヒートシンクは、前記表面測定プローブを取り囲む前記内部キャビティを画定し、プローブヒータは、ヒートシンクに設けられた、前記内部キャビティに開口する通路内に取り付けられている。この内部キャビティには、任意選択で、金、銀、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウムまたは白金コーティング等の赤外線反射コーティングを施すことができる。
【0033】
その結果、ヘッドストックへの熱の伝達を可能な限り最小限に抑えることができる。
【0034】
プローブヒータの反射器は、ヒートシンクと一体的に形成されると有利であり、反射器とヒートシンクとの間の材料接合を排除することによって熱流を改善する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】本発明の加熱装置を組み込んだ材料試験機の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明のさらなる詳細は、図面を参照した以下の説明においてより明確となるであろう。
図1は、本発明による加熱装置に含まれるプローブヒータ1aの基本原理を概略的に示す。
【0037】
加熱装置は、白熱ランプ(例えば、ハロゲンランプ)、セラミック発熱体、レーザ等の赤外線放射素子3を含むプローブヒータ1aを備える。ハロゲンランプは、安価であり、交換が容易で、既製品として入手可能であり、比較的低い電流でフィラメントを3000Kの領域の温度に容易に到達させることができるので、特に有利である。本実施形態では、このような赤外線放射素子3を例示している。典型的な電力は約150Wであるが、特定の用途には35W程度の低い電力が適当である。さらに、このようなランプは、可視波長域および赤外波長域の両方で、広いスペクトルでエネルギーを放射し、フィラメントの質量が小さく、ひいては熱容量が小さくことから、熱慣性が低い。従って、それらの温度は、それを通過する電流を変化させることによって、比較的迅速な応答時間で、非常に容易にかつ非常に迅速に調整され得る。
【0038】
赤外線放射素子3は、反射器5の凹状の内部に配置されている。反射器5は、赤外線放射素子3の高温部、例えばハロゲンランプのフィラメントが位置する第1の焦点7と、表面測定プローブ11の先端が位置する第2の焦点9とを有するような形状とされた反射面15aを有するように形成される。焦点7、9は絶対的に完全な微小点である必要はなく、幾分拡散していてもよく、反射器5内の赤外線放射素子3の正確な位置を調節して、赤外線ビームの形状を最適化することができることに留意すべきである。その中に位置する物体の体積に実質的に対応する体積を覆うように焦点を配置して、赤外線放射素子3によって放出された最大のエネルギーを捕捉し、表面測定プローブ11の対応する部分に伝達し、次いで、この部分をできるだけ均等に加熱することができる。実験により、本発明の加熱装置を備えた表面測定プローブ11に対して、最高800℃または最高1000℃までの温度が容易に達成可能であることが分かっている。
【0039】
必要な2つの焦点を有する反射器の形状の一例は、反射器5の主反射部5aにおいて楕円13の形状に実質的に従う凹状反射面15aを含む楕円形反射器である。数学的に完全な楕円からのわずかな逸脱は、製造公差の観点から考えられる可能性があり、焦点が拡散していることが望ましい場合には実際に望ましい場合がある。実際、この逸脱を、焦点の寸法および形状を所望されるように決定するように正確に計算することができる。
【0040】
凹状反射面15aを、金、銀、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウムまたは白金等の高赤外線反射材料でコーティングして、高反射仕上げを提供し、反射器5の材料による赤外線の吸収を最小限に抑えることが理想的である。アルミニウム、鋼鉄、セラミック、ガラスまたはガラスセラミック等の任意の好適な材料を反射器5に使用することができる。反射器5として金属材料を選択した場合、反射体5の材料を単純に高仕上げにすることができるので、かかるコーティングは厳密に必要というわけではない。また、反射器5には、加熱された場合に反射器5の本体からの赤外線放射が横方向に放射されないように、水または他の好適な冷却剤用の導管等の冷却手段を設けることもできる。
【0041】
プローブヒータ1aが一体化された材料検査装置の他の構成要素に外来の赤外線が当たらないようにするために、反射器5はマスク部5bをさらに備える。図示の例では、マスク部5bは、第2の焦点9に向かう経路上を移動していない赤外線を遮断する働きをする円錐形のマスキング面15bを備える。このような放射は、凹状反射面15a上での散乱効果、または赤外線放射素子3の封入材料(例えば、ハロゲンランプの外側ガラス)によって引き起こされる屈折から発散し得る。この目的のために、マスキング面15bは、赤外線を吸収するように仕上げ加工することができ、したがって、粗く、つや消しで、黒色等とすることができる。例えば、アルミニウム反射器5の場合、反射面15aを高級仕上げにまで研磨し、および/または、金、銀、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウムまたは白金等でコーティングする一方で、マスキング表面15bを黒色に陽極酸化することができる。
【0042】
また、マスク部5bを、一次反射部5aの端部に取り付けられた単純な環状マスク等の他の形状にすることも可能である。
【0043】
反射器5は、赤外線放射素子3を支持し、電気的に接続するソケット19と、赤外線放射素子3に電力を供給するための電気接点21とを含む、例えばセラミック製の端子要素17に取り付けられる。代替的に、端子要素17は、赤外線放射素子3の一体部分とすることができ、赤外線放射素子3を交換する必要がある場合には、その全体が交換される。
【0044】
図2は、一対のプローブヒータ1aと試料加熱モジュール1bとが一体化された材料試験機100の斜視図である。試料加熱モジュール1bについては、以下でより詳細に説明する。
図3は、試料の位置から見た材料試験機100を下方から見た図であり、ベースプレート111は除去されている。図示のように、材料試験機100は、ナノメートルスケールで動作するように適合されたナノインデンターであるが、マイクロインデンターまたはビッカース圧子等の従来の圧子であってもよい。
【0045】
材料試験機100は、本出願人によって市販されているもの等の任意の好適な種類のヘッドストック101を備え、このヘッドストック101は、本出願人により同日に出願された同時係属出願に記載されているもの等の一対の表面測定プローブ11の支持として機能する。かかるヘッドストックは、典型的には、プローブ11に力を加える手段と、プローブ11に加えられる力および/またはプローブ11の変位を測定する手段とを備える。他の好適な表面測定プローブを使用することもでき、本発明は特定の種類の表面測定プローブでの使用に限定されないことに留意すべきである。一般に知られているように、前記一対の表面測定プローブ11の一方は、典型的には基準プローブとして配置され、他方は圧入プローブとして配置され、これらのプローブ11は、従来の方法で試料120の表面と接触するように配置される。
【0046】
図2から分かるように、材料試験機100は、ヘッドストック101に取り付けられたヒートシンク103をさらに備え、プローブヒータ1aを収容するように形成された通路105がヒートシンクを通して設けられ、プローブヒータ1aがその中に取り付けられ、ヒートシンク103と熱的に密着されている。プローブヒータ1aは、ヒートシンクの内部キャビティ103a内に出現し、赤外線をプローブ11の先端に向けて集束させるように配置されているので、プローブヒータ1aは、そのようにするのに適した角度で取り付けられる。なお、プローブヒータ1aの反射器5及び/又はマスク部5bをヒートシンク103と一体的に形成することも可能である。かかる場合には、端子要素17は、ヒートシンク103と直接的に接触する。このような配置は、ヒートシンク103への熱流に対して抵抗を示す材料接合がないので、反射器5からの熱の最大限の除去を保証する。
【0047】
さらに別の一対のプローブヒータ1aを、
図2に示したものと逆の角度で取り付けて、各プローブ11が一対のプローブヒータ1aによって加熱されるようにすることができることに留意されたい。
【0048】
プローブ11および試料120の温度を数秒以上維持しなければならない場合には、ヒートシンク103に設けられた導管104(
図3参照)を流れる水によってヒートシンク103を水冷することができる。ヒートシンク103の様々な内面には、金、銀、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウムまたは白金コーティング等の反射コーティングを設けて反射器5の開口部の周囲およびプローブ11の周囲の領域等の、赤外線放射の吸収が望ましくない領域での赤外線放射領域の吸収を最小限に抑えることができる。その結果、プローブ11の先端が浸された赤外線浴が設けられる。本質的には、周囲の材料を冷たく保ちつつ、吸収された赤外線の再放射を防止しながら、反射によってできるだけ多くの赤外線をプローブの領域に保持することが目的である。
【0049】
プローブ11は、対応する孔107を通過し、ヘッドストック101に到達する熱を最小限に抑え、プローブ11および孔107は、プローブ11の近位端に向かう領域にねじ山が形成されており、螺合されている。これにより、プローブ11とヒートシンク103との間の熱接触が増加し、ヒートシンク103への熱伝達が最大となり、ヘッドストック101が可能な限り低温に保たれる。この熱伝達は、黒色塗料、黒色の陽極酸化されたアルミニウム等の吸収性材料でねじ山を塗装またはコーティングすることによって、最大にすることができる。孔107の下端部(すなわち、試料120に向かう端部)は、ねじ山が形成されておらず、金、銀、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウムまたは白金等の赤外線反射材料でコーティングすることができる。
【0050】
プローブ11の遠位端の周りにできるだけ多くの赤外線を封じ込め、それによってプローブヒータ1aによる試料120の加熱を最小にするために、ベースプレート111がヒートシンク103の下側に取り付けられる。このベースプレート111は、プローブ11の先端が貫通する開口部113を有する。プローブヒータ1aに対向する、および/または、試料120に対向するベースプレート111の外面を、金、銀、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウムまたは白金等の赤外線反射コーティングでコーティングすることができる。
【0051】
さらに、ヒートシンク103の内部キャビティ103aは、プローブヒータ1aとは反対側で、外周の約2/3にわたってプローブ11を部分的に取り囲む補助反射器115(
図3参照)を提供するような形状をしている。従って、赤外線浴効果が最大になり、プローブ11の加熱はできるだけ均一になる。プローブ11の頂点は、ベースプレート111の、プローブヒータ1aとは反対側に位置しているので、プローブ11の頂点は、頂点までの僅かな距離の伝達により加熱され、ベースプレート111に近接するプローブ11の遠位端の領域が加熱される。
【0052】
最後に、
図3に最もよく示されるように、少なくとも1つの接続パッド109が、プローブ11に位置する熱電対との電気的接続を可能にするように設けられ、電気接続110を介して別の電子デバイスに接続される。他の熱電対(図示せず)を好適な位置でベースプレート111および/またはヒートシンク103に設け、装置の温度を制御するために有用な温度および熱流束を測定することができる。
【0053】
図2に示すように、加熱装置は、ベースプレート111の下の材料試験機100内に配置された試料加熱モジュール1bをさらに備える。この試料加熱モジュール1bは、モジュールを概略的に分解図で示す
図4においてより詳細に示されている。なお、後述する試料加熱モジュール1bは、特に有利であり、上述したプローブヒータ1bと特に良好に機能するが、両者の組み合わせは必須ではない。本質的に、本発明のプローブヒータ1bは、単純な従来の抵抗ヒータ等の任意の形式の試料ヒータと共に使用することができる。
【0054】
全体的には、試料加熱モジュール1bは、試料120をプローブ11のチップに接触する位置に配置し、プローブ11と同じ温度に加熱する働きをする。試料加熱モジュール1bは、一般に、少なくともZ軸方向に、すなわちプローブ11の軸線に平行に移動可能な可動ベース上に配置される。通常、このような可動ベースは、X、Y、Zの3つの平行移動軸線に沿って移動することができる。あるいは、試料加熱モジュール1bを固定し、ツールヘッド101および取り付けられた全ての部品、またはプローブ11のみを代わりに移動することができる。
【0055】
試料加熱モジュール1bは、さらなる反射器121を備え、この反射器の凹状の空洞の内部には、本例ではハロゲンランプであるが、セラミックヒータ、単純コイル等も同様に用いることができる、1つ以上のさらなる赤外線放射素子123が配置されている。図示した例では、さらなる反射器121は放物線形状であり、導管122を介して水冷されたアルミニウム等の金属のブロックに直接機械加工される。さらなる反射器121のさらなる反射面125は、金、銀、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウムまたは白金等の熱反射材料でコーティングすることができる。代替的には、さらなる反射器121は、セラミック等の絶縁材料上に、金、銀、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウムまたは白金層として形成することができる。球面反射器等の非放物線形状を設けることもできると考えられるが、放物面反射器の主な利点は、赤外線放射の分布ができるだけ均質であることである。
【0056】
試料ホルダ127は、例えばマコール(コーニング社によって市販されている、ホウケイ酸ガラスマトリックス中にフッ素金雲母を含む、機械加工可能なガラスセラミック)等の材料で作られた絶縁リング129を介してさらなる反射器121の開放端に取り付けられており、試料ホルダは、結合され、溶接され、または圧入される。他の適切な材料には、耐熱ガラス、セラミック、およびガラスセラミックを含む。試料ホルダ127に特に適した材料は、中赤外線および遠赤外線で不透明であり、したがって赤外線のかなりの割合を吸収し、それによって試料ホルダ127を加熱するため、アルミナである。この熱は、主に伝導によって試料120に伝達される。反射器121は放物線状であるので、赤外線は本質的に平行ビームとなって移動し、したがって、試料ホルダ127にできるだけ均一に衝突して、これをできるだけ均等に加熱する。
【0057】
ベースプレート111の孔113を通過した外来の赤外線が試料120の温度に影響を及ぼさないようにし、試料加熱モジュール1bからの赤外線放射がプローブ11の先端とできるだけ相互作用しないようにするために、絶縁リング129および試料ホルダの一部を覆う環状のキャップ131が設けられており、プローブ11の先端が貫通して試料120に接触することができるように、開口131aを十分に大きく残している。また、環状キャップ131は、絶縁リング129の側面およびさらなる反射器127の一部を覆って延在し、絶縁リング129を外来の赤外線から保護する。環状キャップ131は、理想的には、金、銀、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム又は白金層等の赤外線反射層で内側及び外側の両方にコーティングされている。
【0058】
提案された加熱装置により、プローブ11の先端を試料120と同じ温度にまで加熱することができ、材料試験機は一般的に知られているように使用することができるので、材料試験機をこれ以上説明する必要はない。
【0059】
特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これらは本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含む。
【国際調査報告】