特表2017-533880(P2017-533880A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-533880ホモ金属シアン化物を含有している無機高分子、および関連化合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-533880(P2017-533880A)
(43)【公表日】2017年11月16日
(54)【発明の名称】ホモ金属シアン化物を含有している無機高分子、および関連化合物
(51)【国際特許分類】
   C01C 3/11 20060101AFI20171020BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20171020BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20171020BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20171020BHJP
【FI】
   C01C3/11
   H01M4/58
   H01M4/136
   H01M4/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2017-540965(P2017-540965)
(86)(22)【出願日】2015年10月14日
(85)【翻訳文提出日】2017年6月21日
(86)【国際出願番号】US2015055588
(87)【国際公開番号】WO2016064640
(87)【国際公開日】20160428
(31)【優先権主張番号】14/523,825
(32)【優先日】2014年10月24日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517143377
【氏名又は名称】アルヴェオ エナジー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】モタレビ,シャフロク
(72)【発明者】
【氏名】ウェッセルス,コリン ディーン
(72)【発明者】
【氏名】フィロウジ,アリ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA01
5H050AA05
5H050AA07
5H050AA10
5H050BA08
5H050CA01
5H050CB01
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA09
5H050EA10
5H050EA23
5H050EA24
5H050EA28
5H050FA17
5H050FA19
5H050FA20
5H050HA02
5H050HA05
(57)【要約】
1)AMn(y−k)[Mn(CN)(6−p)(NC).(Vac)(1−z).nHO(式中、VacはMn(CN)(6−p)(NC)の空格子点)、または2)AMn(y−k)[Mn(CN).(Vac)(1−z).nHOに係る組成物、化合物、装置およびその使用。ここで、AはNa、K、Liであり;MはMg、Al、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Pbであり;0<j≦4、0≦k≦0.1、0≦p≦3、0<x≦4、0≦y≦1、0<z<1、0<n≦6であり;x+2(y−k)+jk+(m−6)z=0である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iによって表される組成物の1つ以上を含んでいる、物質。
【化1】
ここで、式I中、それぞれのAは、独立に、アルカリ金属のLi、NaまたはKから選択され;
それぞれのドーパントMは、任意に、平均価数がjであるアルカリ土類金属のMgもしくはCa、平均価数がjであるポスト遷移金属のAl、Ga、In、SnもしくはPb、または、平均価数がjである遷移金属のSc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、AgもしくはCd、から独立に選択される1つ以上であってよく;
0<j≦4、0≦k≦0.1、0<p≦3、0<x≦4、0<y≦1、0<z<1、0≦n≦6であり;
x+2(y−k)+jk+(m−6)z=0であり;
式Iは、それぞれがMn原子を含んでいる、1つ以上のMn(CN)(6−p)(NC)複合体を含んでおり;
pは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p)(NC)複合体に含まれているNC基の平均数であり;
mは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p)(NC)複合体に含まれている上記Mn原子の平均価数であり;
(Vac)はMn(CN)(6−p)(NC)の空格子点と同じであり;
それぞれの特定のMn(CN)(6−p)(NC)複合体は、上記Mn原子を含んでおり、当該Mn原子は、複数のシアノ基に結合されており、かつ1つ以上のイソシアノ基に結合されている。
【請求項2】
上記組成物は、面心立方構造、単斜構造、面心立方構造と単斜構造との混合構造、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の結晶構造を含んでいる、請求項1に記載の物質。
【請求項3】
上記1つ以上の結晶構造は、好ましくは、200nmを超える大きさの粒子を含んでいる、請求項1に記載の物質。
【請求項4】
上記大きさは、より好ましくは、1ミクロンを超えている、請求項3に記載の物質。
【請求項5】
zが0.8を超えている、請求項1に記載の物質。
【請求項6】
zが、より好ましくは、0.9を超えている、請求項5に記載の物質。
【請求項7】
集電体;ならびに
上記集電体上に塗布されている複合材料であって、組成物を含んでいる電気化学的活物質、バインダー、および導電材料、を含んでいる、複合材料
を備えている電極であって、
上記組成物は、式Iによって表される組成物の1つ以上を含んでいる、電極。
【化2】
ここで、式I中、それぞれのAは、独立に、アルカリ金属のLi、NaまたはKから選択され;
それぞれのドーパントMは、任意に、平均価数がjであるアルカリ土類金属のMgもしくはCa、平均価数がjであるポスト遷移金属のAl、Ga、In、SnもしくはPb、または、平均価数がjである遷移金属のSc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、AgもしくはCd、から独立に選択される1つ以上であってよく;
0<j≦4、0≦k≦0.1、0<p≦3、0<x≦4、0<y≦1、0<z<1、0≦n≦6であり;
x+2(y−k)+jk+(m−6)z=0であり;
式Iは、それぞれがMn原子を含んでいる、1つ以上のMn(CN)(6−p)(NC)複合体を含んでおり;
pは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p)(NC)複合体に含まれているNC基の平均数であり;
mは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p)(NC)複合体に含まれている上記Mn原子の平均価数であり;
(Vac)はMn(CN)(6−p)(NC)の空格子点と同じであり;
それぞれの特定のMn(CN)(6−p)(NC)複合体は、上記Mn原子を含んでおり、当該Mn原子は、複数のシアノ基に結合されており、かつ1つ以上のイソシアノ基に結合されている。
【請求項8】
上記複合材料は、添加物をさらに含んでいる、請求項7に記載の電極。
【請求項9】
上記バインダーは、フッ化ビニル/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、これらの混合物、およびスチレン−ブタジエンゴム系ポリマーからなる群より選択される1つ以上の成分を含んでいる、請求項7に記載の電極。
【請求項10】
上記導電材料は、黒鉛状炭素、非晶質炭素、またはこれらの混合物からなる群より選択される1つ以上の成分を含んでいる、請求項7に記載の電極。
【請求項11】
式IIによって表される組成物の1つ以上を含んでいる、物質。
【化3】
ここで、式II中、それぞれのAは、独立に、アルカリ金属のLi、NaまたはKから選択され;
それぞれのドーパントMは、任意に、平均価数がjであるアルカリ土類金属のMgもしくはCa、平均価数がjであるポスト遷移金属のAl、Ga、In、SnもしくはPb、または、平均価数がjである遷移金属のSc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、AgもしくはCd、から独立に選択される1つ以上であってよく;
0<j≦4、0≦k≦0.1、0<x≦4、0<y≦1、0<z<1、0≦n≦6であり;
x+2(y−k)+jk+(m−6)z=0であり;
式IIは、それぞれがMn原子を含んでいる、1つ以上のMn(CN)複合体を含んでおり;
mは、上記1つ以上のMn(CN)複合体に含まれている上記Mn原子の平均価数であり;
(Vac)はMn(CN)の空格子点と同じであり;
それぞれの特定のMn(CN)複合体は、上記Mn原子を含んでおり、当該Mn原子は、複数のシアノ基に結合されている。
【請求項12】
上記組成物は、面心立方構造、単斜構造、面心立方構造と単斜構造との混合構造、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1つ以上の結晶構造を含んでいる、請求項11に記載の物質。
【請求項13】
上記1つ以上の結晶構造は、好ましくは、200nmを超える大きさの粒子を含んでいる、請求項11に記載の物質。
【請求項14】
上記大きさは、より好ましくは、1ミクロンを超えている、請求項13に記載の物質。
【請求項15】
zが0.8を超えている、請求項11に記載の物質。
【請求項16】
zが、より好ましくは、0.9を超えている、請求項15に記載の物質。
【請求項17】
集電体;ならびに
上記集電体上に塗布されている複合材料であって、組成物を含んでいる電気化学的活物質、バインダー、および導電材料、を含んでいる、複合材料
を備えている電極であって、
上記組成物は、式IIによって表される組成物の1つ以上を含んでいる、電極。
【化4】
ここで、式II中、それぞれのAは、独立に、アルカリ金属のLi、NaまたはKから選択され;
それぞれのドーパントMは、任意に、平均価数がjであるアルカリ土類金属のMgもしくはCa、平均価数がjであるポスト遷移金属のAl、Ga、In、SnもしくはPb、または、平均価数がjである遷移金属のSc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、AgもしくはCd、から独立に選択される1つ以上であってよく;
0<j≦4、0≦k≦0.1、0<x≦4、0<y≦1、0<z<1、0≦n≦6であり;
x+2(y−k)+jk+(m−6)z=0であり;
式IIは、それぞれがMn原子を含んでいる、1つ以上のMn(CN)複合体を含んでおり;
mは、上記1つ以上のMn(CN)複合体に含まれている上記Mn原子の平均価数であり;
(Vac)はMn(CN)の空格子点と同じであり;
それぞれの特定のMn(CN)複合体は、上記Mn原子を含んでおり、当該Mn原子は、複数のシアノ基に結合されている。
【請求項18】
上記複合材料は、添加物をさらに含んでいる、請求項17に記載の電極。
【請求項19】
上記バインダーは、フッ化ビニル/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、これらの混合物、およびスチレン=ブタジエンゴム系ポリマーからなる群より選択される1つ以上の成分を含んでいる、請求項17に記載の電極。
【請求項20】
上記導電材料は、黒鉛状炭素、非晶質炭素、またはこれらの混合物からなる群より選択される1つ以上の成分を含んでいる、請求項17に記載の電極。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、米国特許出願第14/523,825号(現米国特許第9,099,740号、2015年10月24日出願)の利益を主張している。上記出願の内容は、参照により明白に、あらゆる目的のために、本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔連邦の支援を受けた研究または開発に関する陳述〕
本発明は、助成金番号第DE−AR0000300号(合衆国エネルギー省、エネルギー高等研究計画局により支給)の下、合衆国政府の支援を受けて成された。合衆国政府は、本発明に関して一定の権利を有する。
【0003】
〔発明の分野〕
本発明は、その他のデバイスおよび組成物もしくは複合材料のその他の用途の中でも、一般的には、組成物、上記組成物から調製される複合材料、上記組成物もしくは上記複合材料を用いている電極、上記電極を用いている電気化学構造物、および電気化学デバイスを備えている二次電池に関する。そしてより具体的には、ホモ金属シアン化物を含有している結晶質の無機高分子組成物に関するが、限定はされない。
【0004】
〔発明の背景〕
本項目において議論されている内容は、単に本項目において言及されていることの帰結として、先行技術であると見做されるべきではない。同様に、本項目において言及されている課題、または本項目の内容と関連する課題は、従来技術において従前認識されていたと見做されるべきではない。本項目における内容は、単に、異なるアプローチを表している。上記アプローチもまた、元来それ自体として、発明でありうる。
【0005】
電池科学における昨今の潮流として、安全で、経済的で、エネルギー効率の良い貯蓄を解決する、エネルギー蓄積技術用の新材料の開発が続いている。水系電解質電池用の、シアニドにより架橋された配位高分子電極における近年の開発からは、期待できる成果の可能性が示唆されている。しかし、多くの困難な課題が解決を要している。比較的高い電極の劣化速度、活物質の熱分解およびその加工の困難、ならびに酸素存在下における物質の扱いが、これらの材料に伴っている、いくつかの主要な技術上・安全上の関心事である。
【0006】
例えば、いくつかの解決方法においては、熱安定性が重要である。特に、上記の材料と共に加工される成分が、高温(例えば、100〜120℃以上の温度)に曝されうる状況において用いられる化合物にとって、重要である。シアン化物を含有している電極材料は、通常、上記の温度帯においてシアン化水素を放出し始める。
【0007】
優れたエネルギー効率、改善された劣化速度、および非常に良好な熱安定性を有する組成物が求められている。
【0008】
〔発明の概要〕
優れたエネルギー効率、改善された劣化速度、および非常に良好な熱安定性を有する組成物が開示されている。
【0009】
上記組成物、上記組成物由来の複合材料、上記組成物および上記複合材料の製造方法および使用方法、ならびに、上記組成物および上記複合材料を用いて作製される構造物および素子に関するいくつかの技術的特徴の理解を促すために、以下の本発明の概要は与えられている。そして、以下の記載は、本発明全体の説明であることは意図されていない。本発明の種々の態様の完全な理解は、明細書全文、特許請求の範囲、図面および要約書を総体として解釈することによって得られる。他の複合体、使用方法、ならびに構造物および素子に対して、本発明を適用することができる。さらに、それらのデバイスへの応用において考えられる使用である、二次電池デバイス、電気化学デバイス、分子磁石およびナノワイヤなどにも、本発明を適用することができる。
【0010】
本発明の製品および方法は、下記式の、ホモ金属シアン化物を含有している無機高分子の組成物を包含している。
【0011】
【化1】
【0012】
式中、それぞれのAは、独立に、アルカリ金属(例えば、Li、NaまたはK)から選択され;それぞれのドーパントMは、任意に、平均価数がjであるアルカリ土類金属(例えば、MgまたはCa)、平均価数がjであるポスト遷移金属(例えば、Al、Ga、In、SnまたはPb)、または平均価数がjである遷移金属(例えば、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、AgまたはCd)から独立に選択される1つ以上であってよく;0<j≦4、0≦k≦0.1、0<p≦3、0<x≦4、0<y≦1、0<z≦1、0≦n≦6であり;x+2(y−k)+jk+(m−6)z=0であり;上記式は、それぞれがMn原子を含んでいる、1つ以上のMn(CN)(6−p)(NC)複合体を含んでおり;pは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p)(NC)複合体に含まれているNC基の平均数であり;mは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p)(NC)複合体に含まれている上記Mn原子の平均価数であり;(Vac)はMn(CN)(6−p)(NC)の空格子点と同じであり;それぞれの特定のMn(CN)(6−p)(NC)複合体は、上記Mn原子を含んでおり、当該Mn原子は、複数のシアノ基に結合されており、かつ、p>0の場合には、当該Mn原子は、1つ以上のイソシアノ基に結合されている。
【0013】
上記組成物にとって最適な構造は、空格子点の数が最小である構造に該当する。このとき、上記組成物の性能が向上する。本発明の製品は、粒子の大きさが200nmを超える、好ましくは1ミクロンを超える、ファセットが非常に明確な結晶構造を含んでいる。上記組成物の上記結晶構造は、面心立方構造、単斜構造、または、面心立方構造と単斜構造との混合構造である。
【0014】
上記組成物は、イオンを保持することができる。これらの高分子の酸化・還元に伴うイオンの挿入・脱離によって、上記製品は、他の使用および他の構造物の中でも、特に電極組成物および二次電池用化合物として有力な候補となりうる。
【0015】
特定の用途において、本発明の重要な特徴の一つは、上記組成物の熱安定性に関する。すなわち、高温で熱してもシアン化水素を放出しないことに関する。例えば、上記組成物の高い熱安定性は、二次電池技術に関して、特に人々の近くで用いられる用途(例えば、電気/ハイブリッド乗用車)において、一般的には非常に重要な安全上の側面である。
【0016】
上記組成物に固有の結晶構造は、その電気化学的特性に影響を及ぼす。本発明の高分子骨格においては、空格子点が少ない。これは、良く制御された合成方法の結果であり、上記高分子の電気化学的性能の向上をもたらしている。
【0017】
式Iによって表される組成物の1つ以上を含んでいる、物質。
【0018】
【化2】
【0019】
ここで、式I中、それぞれのAは、独立に、アルカリ金属のLi、NaまたはKから選択され;それぞれのドーパントMは、任意に、平均価数がjであるアルカリ土類金属のMgもしくはCa、平均価数がjであるポスト遷移金属のAl、Ga、In、SnもしくはPb、または、平均価数がjである遷移金属のSc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、AgもしくはCd、から独立に選択される1つ以上であってよく;0<j≦4、0≦k≦0.1、0<p≦3、0<x≦4、0<y≦1、0<z≦1、0≦n≦6であり;x+2(y−k)+jk+(m−6)z=0であり;式Iは、それぞれがMn原子を含んでいる、1つ以上のMn(CN)(6−p)(NC)複合体を含んでおり;pは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p)(NC)複合体に含まれているNC基の平均数であり;mは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p)(NC)複合体に含まれている上記Mn原子の平均価数であり;(Vac)はMn(CN)(6−p)(NC)の空格子点と同じであり;それぞれの特定のMn(CN)(6−p)(NC)複合体は、上記Mn原子を含んでおり、当該Mn原子は、複数のシアノ基に結合されており、かつ1つ以上のイソシアノ基に結合されている。
【0020】
集電体;ならびに上記集電体上に塗布されている化合物であって、組成物、バインダー、導電材料、および溶媒を含んでいる化合物;を備えている電極であって、上記組成物は、本明細書に開示されている、ホモ金属シアン化物を含有している無機高分子を含んでいる、電極。
【0021】
集電体;ならびに上記集電体上に塗布されている複合材料であって、組成物を含んでいる電気化学的活物質、バインダー、および導電材料を含んでいる複合材料;を備えている電極であって、上記組成物は、式Iによって表される組成物の1つ以上を含んでいる、電極。
【0022】
【化3】
【0023】
ここで、式I中、それぞれのAは、独立に、アルカリ金属のLi、NaまたはKから選択され;それぞれのドーパントMは、任意に、平均価数がjであるアルカリ土類金属のMgもしくはCa、平均価数がjであるポスト遷移金属のAl、Ga、In、SnもしくはPb、または、平均価数がjである遷移金属のSc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、AgもしくはCd、から独立に選択される1つ以上であってよく;0<j≦4、0≦k≦0.1、0<p≦3、0<x≦4、0<y≦1、0<z≦1、0≦n≦6であり;x+2(y−k)+jk+(m−6)z=0であり;式Iは、それぞれがMn原子を含んでいる、1つ以上のMn(CN)(6−p)(NC)複合体を含んでおり;pは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p)(NC)複合体に含まれているNC基の平均数であり;mは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p)(NC)複合体に含まれている上記Mn原子の平均価数であり;(Vac)はMn(CN)(6−p)(NC)の空格子点と同じであり;それぞれの特定のMn(CN)(6−p)(NC)複合体は、上記Mn原子を含んでおり、当該Mn原子は、複数のシアノ基に結合されており、かつ1つ以上のイソシアノ基に結合されている。
【0024】
式Iには、以下に説明する、p=0の特殊な場合が含まれている。この場合は、式IIとして特定される。
【0025】
【化4】
【0026】
ここで、式II中、それぞれのAは、独立に、アルカリ金属のLi、NaまたはKから選択され;それぞれのドーパントMは、任意に、平均価数がjであるアルカリ土類金属のMgもしくはCa、平均価数がjであるポスト遷移金属のAl、Ga、In、SnもしくはPb、または、平均価数がjである遷移金属のSc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、AgもしくはCd、から独立に選択される1つ以上であってよく;0<j≦4、0≦k≦0.1、0<x≦4、0<y≦1、0<z≦1、0≦n≦6であり;x+2(y−k)+jk+(m−6)z=0であり;式IIは、それぞれがMn原子を含んでいる、1つ以上のMn(CN)複合体を含んでおり;mは、上記1つ以上のMn(CN)複合体に含まれている上記Mn原子の平均価数であり;(Vac)はMn(CN)の空格子点と同じであり;それぞれの特定のMn(CN)複合体は、上記Mn原子を含んでおり、当該Mn原子は、複数のシアノ基に結合されている。
【0027】
式IIによって表される組成物の1つ以上を含んでいる、物質。
【0028】
【化5】
【0029】
ここで、式II中、それぞれのAは、独立に、アルカリ金属のLi、NaまたはKから選択され;それぞれのドーパントMは、任意に、平均価数がjであるアルカリ土類金属のMgもしくはCa、平均価数がjであるポスト遷移金属のAl、Ga、In、SnもしくはPb、または、平均価数がjである遷移金属のSc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、AgもしくはCd、から独立に選択される1つ以上であってよく;0<j≦4、0≦k≦0.1、0<x≦4、0<y≦1、0<z≦1、0≦n≦6であり;x+2(y−k)+jk+(m−6)z=0であり;式IIは、それぞれがMn原子を含んでいる、1つ以上のMn(CN)複合体を含んでおり;mは、上記1つ以上のMn(CN)複合体に含まれている上記Mn原子の平均価数であり;(Vac)はMn(CN)の空格子点と同じであり;それぞれの特定のMn(CN)複合体は、上記Mn原子を含んでおり、当該Mn原子は、複数のシアノ基に結合されている。
【0030】
集電体;ならびに、上記集電体上に塗布されている複合材料であって、組成物を含んでいる電気化学的活物質、バインダー、および導電材料を含んでいる複合材料;を備えている電極であって、上記組成物は、式IIによって表される組成物の1つ以上を含んでいる、電極。
【0031】
【化6】
【0032】
ここで、式II中、それぞれのAは、独立に、アルカリ金属のLi、NaまたはKから選択され;それぞれのドーパントMは、任意に、平均価数がjであるアルカリ土類金属のMgもしくはCa、平均価数がjであるポスト遷移金属のAl、Ga、In、SnもしくはPb、または、平均価数がjである遷移金属のSc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、AgもしくはCd、から独立に選択される1つ以上であってよく;0<j≦4、0≦k≦0.1、0<x≦4、0<y≦1、0<z≦1、0≦n≦6であり;x+2(y−k)+jk+(m−6)z=0であり;式IIは、それぞれがMn原子を含んでいる、1つ以上のMn(CN)複合体を含んでおり;mは、上記1つ以上のMn(CN)複合体に含まれている上記Mn原子の平均価数であり;(Vac)はMn(CN)の空格子点と同じであり;それぞれの特定のMn(CN)複合体は、上記Mn原子を含んでおり、当該Mn原子は、複数のシアノ基に結合されている。
【0033】
本明細書に開示されている任意の実施形態は、単一で、または、任意の組み合わせにおいて互いに組み合わせて用いられうる。本明細書に包含されている発明はまた、本項目または要約書において、(1)部分的に言及もしくは示唆されている実施形態、または(2)全く言及されていないもしくは全く示唆されていない実施形態、を包含していてもよい。本発明の種々の実施形態は、先行技術に伴う種々の欠陥(本明細書の1箇所以上において、議論または示唆する場合がある)によって、動機付けられていたかもしれない。しかし、本発明の実施形態は、上記の欠陥のいずれをも、扱っている必然性はない。換言すれば、本発明の異なる実施形態は、異なる欠陥(本明細書において議論されている場合がある)を扱っていてよい。いくつかの実施形態は、いくつかの欠陥または単一の欠陥(本明細書において議論する場合がある)を、部分的にしか扱っていない場合がある。いくつかの実施形態は、上記の欠陥に全く扱っていない場合がある。
【0034】
本発明の他の特徴、利点および長所は、本開示(本明細書、図面および特許請求の範囲を包含している)の吟味に基づけば、明白である。
【0035】
〔図面の簡単な説明〕
添付の図面において、同じ参照数字は、個々の図を通じて、同じ要素または機能上類似した要素を表している。また、添付の図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成している。さらに、添付の図面は、本発明をさらに図示しており、発明の詳細な説明とともに、本発明の本質を説明することに役立っている。
【0036】
図1aは、物質に関して、面心立方状の、金属−ヘキサシアノ金属結晶構造を図示している。
【0037】
図1bは、単斜状の、ホモ金属シアン化物を含有している無機高分子構造を図示している。
【0038】
図2は、種々のホモ金属シアン化物を含有している無機高分子物質(a〜h)の、X線回折(XRD)の結果を図示している。
【0039】
図3a〜3cは、種々のホモ金属シアン化物を含有している無機高分子物質の、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果を図示している。
【0040】
図3aは、図2において図示されている物質aの、SEMによる観察結果を図示している。
【0041】
図3bは、図2において図示されている物質cの、SEMによる観察結果を図示している。
【0042】
図3cは、図2において図示されている物質hの、SEMによる観察結果を図示している。
【0043】
図4は、ホモ金属シアン化物を含有している無機高分子電極、および第2の電極を備えている電池の概略を図示している。
【0044】
図5aは、図2において図示されている物質hの、熱重量測定分析の結果を図示している。
【0045】
図5bは、図2において図示されている物質hの、質量分析の結果を図示している。
【0046】
図6は、種々のホモ金属シアン化物を含有している無機高分子の、元素分析の結果を図示している。
【0047】
図7は、ホモ金属シアン化物を含有している無機高分子電極の、サイクリックボルタモグラムを図示している。
【0048】
図8a〜8cは、種々のホモ金属シアン化物を含有している無機高分子電極の、1Cサイクルの結果を図示している。
【0049】
図8aは、図2において図示されている物質aの、サイクル性を図示している。
【0050】
図8bは、図2において図示されている物質cの、サイクル性を図示している。
【0051】
図8cは、図2において図示されている物質hの、サイクル性を図示している。
【0052】
図9は、ホモ金属シアン化物を含有している無機高分子電極の、比容量vsサイクルを図示している。
【0053】
図10a〜10cは、種々のホモ金属シアン化物を含有している無機高分子の、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果を図示している。
【0054】
図10aは、実施例40において作製された組成物の、SEMによる観察結果を図示している。
【0055】
図10bは、実施例41において作製された組成物の、SEMによる観察結果を図示している。
【0056】
図10cは、実施例42において作製された組成物の、SEMによる観察結果を図示している。
【0057】
〔発明の詳細な説明〕
本発明の実施形態は、優れたエネルギー効率、改善された劣化速度、および非常に良好な熱安定性を有する組成物を提供する。以下の説明は、当業者が本発明を製造および使用できるように与えられている。以下の説明はまた、特許出願およびその要件との関連において与えられている。
【0058】
本明細書に説明されている好ましい実施形態、ならびに一般的な本質および特徴に対する種々の変更は、当業者にとって容易に理解できるであろう。したがって、本発明を、示されている実施形態に限定する意図はない。そうではなく、本発明は、本明細書において説明されている本質および特徴と一致する、最も広い範囲に認められるべきである。
【0059】
[定義]
別途定義されていない限り、本明細書において用いられている全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明思想の全般が属する技術分野の当業者によって通常理解されるものと、同じ意味を有する。用語(通常用いられている辞書において定義されている用語など)は、関連する技術および本開示との関連における上記用語の意味と整合的な意味を有する、と解釈されるべきであることが、さらに理解される。また、本明細書において明示的にそうであると定義されていない限り、上記用語は、理念化された意味または過度に形式的な意味として解釈されないことも、理解される。
【0060】
下記の定義は、本発明のいくつかの実施形態に関して説明されている、いくつかの態様に対して適用される。これらの定義はまた、本明細書において敷衍され得る。
【0061】
本明細書において用いられるとき、用語「または」は、「および/または」を包含している。また、用語「および/または」は、関連する列挙されている項目の1つ以上の、任意の組み合わせおよび全ての組み合わせを包含している。「1つ以上の」などの表現は、要素のリストに先行する場合には、要素のリスト全体を修飾しているのであり、上記リストの個々の要素を修飾しているのではない。
【0062】
本明細書において用いられるとき、単数形を表す用語「ある」および「その」(the singular terms "a," "an," and "the")は、文脈上明らかにそうではないと指示されていない限り、複数形の対象をも包含している。したがって、文脈上明らかにそうではないと指示されていない限り、例えば、ある対象(an object)への言及は、複数の対象を包含しうる。
【0063】
また、本明細書および引き続く特許請求の範囲の記載に用いられているとき、文脈上明らかにそうではないと指示されていない限り、「中」の意味には、「中」および「上」が包含される(meaning of "in" includes "in" and "on")。ある要素が他の要素の「上」にあると言及されている場合、当該要素は当該他の要素の直接上にあってもよいし、あるいは、それらの間に挟まれている要素が存在してもよいことが理解される。逆に、ある要素が他の要素の「直接上("directly on")」にあると言及されている場合、挟まれている要素は存在しない。
【0064】
本明細書において用いられるとき、用語「群(set)」は、1つ以上の対象の集合を表す。したがって、例えば、「対象の群(set of objects)」は、1つの対象または複数の対象を包含しうる。また、「群の対象(objects of a set)」は、上記群の要素を表しうる。群の対象は、同一または非同一でありうる。いくつかの事例において、群の対象は、1つ以上の共通の性質を共有しうる。
【0065】
本明細書において用いられるとき、用語「隣接する(adjacent)」は、近くにあること、または接触していることを表す。隣接する対象は、互いに間を隔てていてもよいし、あるいは、実際にまたは直接に、互いに接触していてもよい。いくつかの事例において、隣接する対象は、互いに一組になっていてもよいし、あるいは、互いに一体化して形成されていてもよい。
【0066】
本明細書において用いられるとき、用語「接続する」「接続されている」および「接続している」("connect," "connected," and "connecting")は、直接の連結または結合を表す。文脈に示されている通り、接続されている対象は、仲介する対象または対象の群が存在しないか、または実質的に存在しない。
【0067】
本明細書において用いられるとき、用語「一組の」「一組にされている」および「一組になっている」("couple," "coupled," and "coupling")は、機能的な連結または結合を表す。一組にされている対象は、互いに直接に連結されていてもよいし、あるいは、互いに直接には接続していなくてもよい(例えば、仲介する対象の群を介して)。
【0068】
本明細書において用いられるとき、用語「実質的に」および「実質的な」("substantially" and "substantial")は、相当な度合いまたは程度を表す。事象または状況と連結して用いられた場合、上記用語は、上記事象または状況がまさに起こっている事例に加えて、上記事象または状況が近似的に起こっている事例(例えば、本明細書において説明されている実施形態の、通常の許容範囲または可変性と見做される)をも表してよい。
【0069】
本明細書において用いられるとき、用語「任意の」および「任意に」("optional" and "optionally")は、引き続いて説明されている事象または状況が、起こっても起こっていなくてもよいことを意味する。また、その記載が、上記事象または状況が起こっている事例と、上記事象または状況が起こっていない事例とを包含していることを意味する。
【0070】
本明細書において用いられるとき、用語「大きさ(size)」は、対象に固有の寸法を表す。したがって、例えば、球形の対象の大きさは、上記対象の直径を表してよい。非球形の対象の場合には、上記非球形の対象の大きさは、対応する球形の対象の直径を表してよい。上記対応する球形の対象は、特定の導出可能または計算可能な特性の群(上記非球形の対象のそれと実質的に同じである)を示すか、有している。したがって、例えば、非球形の対象の大きさは、上記非球形の対象のそれと実質的に同じ光散乱または他の特性を示す、対応する球形の対象の直径を表してよい。その代わりに、あるいはそれと組み合わせて、非球形の対象の大きさは、上記対象の種々の直交する寸法の平均を表してよい。したがって、例えば、楕円体状の対象の大きさは、上記対象の、長径と短径との平均を表してよい。対象の群について特定の大きさであると言及している場合、上記対象が、上記特定の大きさ近傍に、大きさの分布を有していてよいことが意図される。したがって、本明細書において用いられるとき、「対象の群の大きさ」は、大きさの分布の典型的な大きさ(平均の大きさ、中央値の大きさ、または最頻値の大きさなど)を表してよい。
【0071】
本明細書において用いられるとき、用語「電池」は、蓄えている化学エネルギーを電気エネルギーに変換する、充電可能な電気化学デバイスを意味しており、ボルタ電池を包含している。上記ボルタ電池は、1つ以上の導電性液体の電解液によって互いに連結されている2つの半電池を、それぞれ含んでいてよい。
【0072】
本開示の態様に関して、本明細書において用いられるとき、用語「ホモ金属シアン化物を含有している無機高分子」は、下記式Iまたは下記式II(式Iにおいてp=0の特殊な例)によって表される化合物の1つ以上を含んでいる、組成物である。
【0073】
[式I]
【0074】
【化7】
【0075】
ここで、式I中、それぞれのAは、独立に、アルカリ金属のLi、NaまたはKから選択され;それぞれのドーパントMは、任意に、平均価数がjであるアルカリ土類金属のMgもしくはCa、平均価数がjであるポスト遷移金属のAl、Ga、In、SnもしくはPb、または、平均価数がjである遷移金属のSc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、AgもしくはCd、から独立に選択される1つ以上であってよく;0<j≦4、0≦k≦0.1、0<p≦3、0<x≦4、0<y≦1、0<z≦1、0≦n≦6であり;x+2(y−k)+jk+(m−6)z=0であり;式Iは、それぞれがMn原子を含んでいる、1つ以上のMn(CN)(6−p)(NC)複合体を含んでおり;pは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p)(NC)複合体に含まれているNC基の平均数であり;mは、上記1つ以上のMn(CN)(6−p)(NC)複合体に含まれている上記Mn原子の平均価数であり;(Vac)はMn(CN)(6−p)(NC)の空格子点と同じであり;それぞれの特定のMn(CN)(6−p)(NC)複合体は、上記Mn原子を含んでおり、当該Mn原子は、複数のシアノ基に結合されており、かつ1つ以上のイソシアノ基に結合されている。
【0076】
[式II]
【0077】
【化8】
【0078】
ここで、式II中、それぞれのAは、独立に、アルカリ金属のLi、NaまたはKから選択され;それぞれのドーパントMは、任意に、平均価数がjであるアルカリ土類金属のMgもしくはCa、平均価数がjであるポスト遷移金属のAl、Ga、In、SnもしくはPb、または、平均価数がjである遷移金属のSc、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pd、AgもしくはCd、から独立に選択される1つ以上であってよく;0<j≦4、0≦k≦0.1、0<x≦4、0<y≦1、0<z≦1、0≦n≦6であり;x+2(y−k)+jk+(m−6)z=0であり;式IIは、それぞれがMn原子を含んでいる、1つ以上のMn(CN)複合体を含んでおり;mは、上記1つ以上のMn(CN)複合体に含まれている上記Mn原子の平均価数であり;(Vac)はMn(CN)の空格子点と同じであり;それぞれの特定のMn(CN)複合体は、上記Mn原子を含んでおり、当該Mn原子は、複数のシアノ基に結合されている。
【0079】
また、式Iおよび式IIにおいて、上記組成物または上記化合物は、明瞭な形状を有している。上記組成物または上記化合物はまた、粒子の大きさが200nmを超える、より好ましくは大きさが1ミクロンを超える結晶を含んでいる。上記結晶の構造は、面心立方構造、単斜構造、または、面心立方構造と単斜構造との混合構造である。開示されている一実施形態において、zは0.8を超えていることが好ましく、0.9を超えていることがより好ましい。
【0080】
本開示の態様に関して、本明細書において用いられるとき、本発明のホモ金属シアン化物を含有している無機高分子(例えば式Iおよび式IIに表されている)は、金属複合体(代わりに、「配位複合体」または「配位単位(coordination entities)」と表記される場合がある)を含んでいる。上記金属複合体は、複合体中心(例えば、金属原子または金属イオン)に結合されている、1つ以上のリガンド(例えば、シアノ基および/または1つ以上のイソシアノ基)を含んでいる。上記リガンドが基(シアノ基またはイソシアノ基など)である場合、当該基に関する正確な命名法は、考慮されている特定の複合体中心に関連し、依存する。本明細書において用いられるとき、用語「シアニド(cyanide)」は、複合体中心を有する複合体中のリガンドに関連しては、その炭素側の端によって上記複合体中心に結合されている、シアン化物アニオン(CN)を表す。本明細書において用いられるとき、用語「イソシアニド(isocyanide)」は、複合体中心を有する複合体中のリガンドに関連しては、その窒素側の端によって上記複合体中心に結合されている、シアン化物アニオン(CN)を表す。特定の実施形態について本明細書で説明されているとき、複合体の上記シアン化物アニオンは、隣接する複合体中心に結合されている。したがって、特定の複合体中心にとってのシアノ基は、上記シアン化物アニオンを共有しながら隣接している複合体中心にとっては、イソシアノ基として定義される。
【0081】
図1aは、従来物質について、面心立方状の、金属−ヘキサシアノ金属結晶構造を図示している。図1bは、本発明の実施形態を含んでいる物質について、単斜状の、ホモ金属シアン化物を含有している無機高分子構造を図示している。
【0082】
図2は、式Iの、種々のホモ金属シアン化物を含有している無機高分子物質の、X線回折(XRD)の結果を図示している(同図においては、高分子A〜高分子Hと表記されている)。回折角のピークは、面心立法構造の組成物、単斜構造の組成物、または、面心立方構造と単斜構造との混合構造である組成物に対応している。
【0083】
図3は、式Iの、種々のホモ金属シアン化物を含有している無機高分子の、走査型電子顕微鏡(SEM)像を図示している。図3a、図3bおよび図3cの画像から判るように、明瞭な形状であり、結晶の大きさが200nmを超えている。図3aは、図2において図示されている物質aの、SEMによる観察結果を図示している。図3bは、図2において図示されている物質cの、SEMによる観察結果を図示している。図3cは、図2において図示されている物質hの、SEMによる観察結果を図示している。
【0084】
図4は、式Iのホモ金属シアン化物を含有している無機高分子から作製される、電池400の概略を図示している。電池400は、膜によって隔てられている、一組の電極を備えている。それぞれの電極は、側面にある集電体を備えている。電池400において、1つ以上の電極は、式Iに係る組成物を含んでいる。
【0085】
図5aは、図2において図示されている物質hの、熱重量測定分析の結果を図示している。図5bは、図2において図示されている物質hの、質量分析の結果を図示している。これらの図は、上記組成物が、非常に良好な熱安定性を有しており、高温で熱されない限りはシアン化水素を放出しないことを示している。
【0086】
図6は、式Iに係る種々のホモ金属シアン化物を含有している無機高分子組成物の、元素分析の結果を図示している。上記組成物の固有の結晶構造が、その電気化学的特性に影響を及ぼしている。本明細書に図示および説明されている通り、空格子点の数が少ないと、上記組成物の電気化学的性能の向上がもたらされる。良く制御された合成方法(本明細書において説明されている方法など)の結果、空格子点の数が少なくなっている。
【0087】
式Iの組成物に関する、いくつかの向上した電気化学的特性が、図7図9に示されている。図7は、ホモ金属シアン化物を含有している無機高分子複合材料の、サイクリックボルタモグラムを図示している。図8は、種々のホモ金属シアン化物を含有している無機高分子組成物電極の、1Cサイクルの結果を図示している。図9は、ホモ金属シアン化物を含有している無機高分子組成物電極の、比容量vsサイクル回数のグラフを図示している。上記電極は、ホモ金属シアン化物を含有している無機高分子組成物電極の、種々のサンプルを含むように構成されている。
【0088】
図10は、式Iの、種々のホモ金属シアン化物を含有している無機高分子の、走査型電子顕微鏡(SEM)像を図示している。図10a、図10bおよび図10cの画像から判るように、上記ホモ金属シアン化物を含有している無機高分子の合成は、30秒間の反応時間後において、ほぼ完了していた(それぞれ実施例40、41および42にて説明されているように、それぞれ30秒間、2分間または55分間をかけて合成された)。
【0089】
上記組成物は、直接的または非直接的に、電極(例えば、アノード)を作製するために用いられてよい。このような組成物は、集電体上に塗布されるスラリーまたはインク(ink)に該当してもよい。上記電極は、上記組成物、バインダー、導電材料、添加物および溶媒の混合物に該当する。上記バインダーは、フッ化ビニル/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、およびこれらの混合物、ならびにスチレン−ブタジエンゴム系ポリマーからなる群より選択される、1つ以上の成分であってもよい。上記導電材料は、結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらの混合物から選択されてもよい。上記導電材料は、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブおよびグラフェンから選択されてもよい。上記溶媒は、非プロトン性の極性溶媒(N−メチルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルスルホキシドなど)から選択される。好ましい溶媒は、N−メチルピロリジノンである。
【0090】
[実施例]
実施例1:脱気した水(40g)中の塩化マンガン四水和物(16.0g、80.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(40g)中のシアン化カリウム(12.0g、184mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、290分間にわたり滴下した。生じた混合物を、さらに15分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた緑色粉末を、脱気した水(200mL)で洗浄し、脱気したメタノール(100mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、9.6gの緑色粉末を得た。
【0091】
実施例2:脱気した水(40g)中の酢酸マンガン四水和物(19.6g、80.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(40g)中のシアン化カリウム(12.0g、184mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、300分間にわたり滴下した。生じた混合物を、さらに15分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた緑色粉末を、脱気した水(300mL)で洗浄し、脱気したメタノール(200mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、9.35gの緑色粉末を得た。
【0092】
実施例3:脱気した水(40g)中のシアン化カリウム(12.0g、184mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(40g)中の酢酸マンガン四水和物(19.6g、80.0mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、300分間にわたり滴下した。生じた混合物を、さらに15分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた緑色粉末を、脱気した水(200mL)で洗浄し、脱気したメタノール(100mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、10.4gの緑色粉末を得た。
【0093】
実施例4:脱気した水(40g)中の酢酸マンガン四水和物(9.8g、40.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(40g)中のシアン化カリウム(12.0g、184mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、325分間にわたり滴下した。生じた混合物を、さらに20分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた緑色粉末を、脱気した水(100mL)で洗浄し、脱気したメタノール(100mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、6.6gの緑色粉末を得た。
【0094】
実施例5:脱気した水(40g)中の酢酸マンガン四水和物(9.8g、40.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(40g)中のシアン化カリウム(12.0g、184mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、130分間にわたり滴下した。生じた混合物を、さらに30分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた緑色粉末を、脱気した水(100mL)で洗浄し、脱気したメタノール(100mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、6.7gの緑色粉末を得た。
【0095】
実施例6:脱気した水(40g)中の酢酸マンガン四水和物(4.9g、20.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(40g)中のシアン化カリウム(12.0g、184mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、135分間にわたり滴下した。生じた混合物を、さらに60分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた緑色粉末を、脱気した水(100mL)で洗浄し、脱気したメタノール(100mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、3.05gの緑色粉末を得た。
【0096】
実施例7:脱気した水(40g)中の酢酸マンガン四水和物(7.35g、30.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(40g)中のシアン化カリウム(12.0g、184mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、110分間にわたり滴下した。生じた混合物を、さらに15分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた緑色粉末を、脱気した水(75mL)で洗浄し、脱気したメタノール(60mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、5.0gの緑色粉末を得た。
【0097】
実施例8:脱気した水(40g)中の酢酸マンガン四水和物(12.25g、50.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(40g)中のシアン化カリウム(12.0g、184mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、110分間にわたり滴下した。生じた混合物を、さらに15分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた緑色粉末を、脱気した水(75mL)で洗浄し、脱気したメタノール(60mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、8.2gの緑色粉末を得た。
【0098】
実施例9:脱気した水(20g)中のシアン化カリウム(2.92g、45mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(20g)中の酢酸マンガン四水和物(3.7g、15.0mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、70分間にわたり滴下した。水(20g)を加え、生じた混合物をさらに20分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた緑色粉末を、脱気した水(60mL)で洗浄し、脱気したメタノール(60mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、2.3gの緑色粉末を得た。
【0099】
実施例10:脱気した水(20g)中のシアン化カリウム(6.0g、92mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(20g)中の酢酸マンガン四水和物(3.7g、15.0mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、20分間にわたり滴下した。水(20g)を加え、生じた混合物をさらに60分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた緑色粉末を、脱気した水(75mL)で洗浄し、脱気したメタノール(75mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、2.4gの緑色粉末を得た。
【0100】
実施例11:脱気した水(100g)中の塩化マンガン四水和物(8.0g、40.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(100g)中のシアン化カリウム(6.0g、92mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、160分間にわたり滴下した。生じた混合物を、さらに25分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた緑色粉末を、脱気した水(150mL)で洗浄し、脱気したメタノール(150mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、2.55gの緑色粉末を得た。
【0101】
実施例12:脱気した水(200g)中の塩化マンガン四水和物(16.0g、80.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(200g)中のシアン化カリウム(12.0g、184mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて加えた。生じた混合物を、さらに20分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた緑色粉末を、脱気した水(150mL)で洗浄し、脱気したメタノール(150mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、5.05gの緑色粉末を得た。
【0102】
実施例13:脱気した水(100g)中の酢酸マンガン四水和物(9.8g、40.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(100g)中のシアン化カリウム(6.0g、92mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、240分間にわたり滴下した。生じた混合物を、さらに40分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた緑色粉末を、脱気した水(200mL)で洗浄し、脱気したメタノール(100mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、4.2gの緑色粉末を得た。
【0103】
実施例14:脱気した水(100g)中の酢酸マンガン四水和物(9.8g、40.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(100g)中のシアン化カリウム(6.0g、92mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて加えた。生じた混合物を、さらに40分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた緑色粉末を、脱気した水(75mL)で洗浄し、脱気したメタノール(75mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、4.8gの緑色粉末を得た。
【0104】
実施例15:脱気した水(100g)中のシアン化カリウム(6.0g、92mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(100g)中の塩化マンガン四水和物(8.0g、40.0mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて加えた。水(20g)を加え、生じた混合物をさらに30分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた緑色粉末を、脱気した水(75mL)で洗浄し、脱気したメタノール(75mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、3.4gの緑色粉末を得た。
【0105】
実施例16:脱気した水(20g)中の酢酸マンガン四水和物(7.35g、30.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(20g)中のシアン化カリウム(6.0g、92mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、120分間にわたって滴下した。生じた混合物を、さらに20分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた緑色粉末を、脱気した水(60mL)で洗浄し、脱気したメタノール(60mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、4.5gの緑色粉末を得た。
【0106】
実施例17:脱気した水(40g)中の酢酸マンガン四水和物(12.25g、50.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(40g)中のシアン化カリウム(12.0g、184mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、40分間にわたって滴下した。生じた混合物を、さらに180分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた緑色粉末を、脱気した水(60mL)で洗浄し、脱気したメタノール(100mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、8.5gの緑色粉末を得た。
【0107】
実施例18:脱気した水(40g)中のシアン化カリウム(12.0g、184mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(40g)中の酢酸マンガン四水和物(12.25g、50.0mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、40分間にわたり滴下した。生じた混合物を、さらに180分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた緑色粉末を、脱気した水(75mL)で洗浄し、脱気したメタノール(60mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、8.3gの緑色粉末を得た。
【0108】
実施例19:脱気した水(40g)中の酢酸マンガン四水和物(7.35g、30.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(40g)中のシアン化ナトリウム(9.0g、184mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、255分間にわたり滴下した。生じた混合物を、さらに15分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気した水(75mL)で洗浄し、脱気したメタノール(75mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、3.9gの青色粉末を得た。
【0109】
実施例20:脱気した水(20g)中の酢酸マンガン四水和物(4.9g、20.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(25g)中のシアン化ナトリウム(9.0g、184mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、195分間にわたり滴下した。メタノール(15mL)を加え、生じた混合物をさらに30分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気した水(75mL)で洗浄し、脱気したメタノール(75mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、2.9gの青色粉末を得た。
【0110】
実施例21:脱気した水(20g)中の酢酸マンガン四水和物(7.35g、30.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(20g)中のシアン化ナトリウム(4.5g、92mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、115分間にわたり滴下した。生じた混合物を、さらに120分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気した水(75mL)で洗浄し、脱気したメタノール(75mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、4.7gの青色粉末を得た。
【0111】
実施例22:脱気した水(40g)中の酢酸マンガン四水和物(12.2g、50.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(40g)中のシアン化ナトリウム(9.0g、184mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、40分間にわたり滴下した。生じた混合物を、さらに180分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気した水(75mL)で洗浄し、脱気したメタノール(75mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、8.2gの青色粉末を得た。
【0112】
実施例23:脱気した水(40g)中の酢酸マンガン四水和物(12.2g、50.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(40g)中のシアン化ナトリウム(9.0g、184mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて加えた。生じた混合物を、さらに25分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気した水(75mL)で洗浄し、脱気したメタノール(75mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、8.3gの青色粉末を得た。
【0113】
実施例24:脱気した水(25g)中の酢酸マンガン四水和物(12.2g、50.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(25g)中のシアン化ナトリウム(9.0g、184mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて加えた。生じた混合物を、さらに210分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気した水(75mL)で洗浄し、脱気したメタノール(75mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、8.3gの青色粉末を得た。
【0114】
実施例25:脱気した水(20g)および脱気したメタノール(20mL)中の酢酸マンガン四水和物(7.35g、30.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(40g)中のシアン化ナトリウム(9.0g、184mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、115分間にわたり滴下した。生じた混合物を、さらに70分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気した水(60mL)で洗浄し、脱気したメタノール(60mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、3.6gの青色粉末を得た。
【0115】
実施例26:脱気した水(40g)中の酢酸マンガン四水和物(7.35g、30.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(40g)中のシアン化ナトリウム(4.5g、92mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて加えた。生じた混合物を、さらに65分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気した水(80mL)で洗浄し、脱気したメタノール(50mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、3.5gの青色粉末を得た。
【0116】
実施例27:脱気した水(20g)中の酢酸マンガン四水和物(7.35g、30.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(20g)中のシアン化ナトリウム(4.5g、92mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて加えた。生じた混合物を、さらに65分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気した水(80mL)で洗浄し、脱気したメタノール(50mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、2.9gの青色粉末を得た。
【0117】
実施例28:脱気した水(40g)中の酢酸マンガン四水和物(9.8g、40.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(40g)中のシアン化ナトリウム(9.0g、184mmol)溶液を、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて加えた。生じた混合物を、さらに30分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気した水(80mL)で洗浄し、脱気したメタノール(50mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、5.75gの青色粉末を得た。
【0118】
実施例32:脱気した水(60g)中の酢酸マンガン四水和物(7.35g、30.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(50g)中のシアン化ナトリウム(7.35g、153.0mmol)溶液を、11℃、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて加えた。生じた混合物を、さらに120分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。生じた青色粉末を、脱気した水(120mL)で洗浄し、脱気したメタノール(120mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、4.0gの青色粉末を得た。
【0119】
実施例33:脱気した水(60g)中の酢酸マンガン四水和物(7.35g、30.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(40g)中のシアン化ナトリウム(7.35g、153.0mmol)溶液を、15℃、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて加えた。生じた混合物を、さらに60分間攪拌した。水(65g)を30分間にわたり滴下した後、上記混合物をさらに10分間攪拌した。生じた混合物を、0.45ミクロンのフィルターで濾過し、脱気した水(110mL)で洗浄し、脱気したメタノール(100mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、4.65gの青色粉末を得た。
【0120】
実施例34:脱気した水(60g)中の酢酸マンガン四水和物(7.35g、30.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(40g)中のシアン化ナトリウム(8.08g、168.0mmol)溶液を、15℃、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて加えた。生じた混合物を、さらに60分間攪拌した。その後、0.45ミクロンのフィルターで濾過し、脱気した水(110mL)で洗浄し、脱気したメタノール(100mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、3.7gの青色粉末を得た。
【0121】
実施例35:脱気した水(60g)中の酢酸マンガン四水和物(7.35g、30.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(40g)中のシアン化ナトリウム(9.0g、184.0mmol)溶液を、15℃、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて加えた。生じた混合物を、さらに30分間攪拌した。水(100g)を45分間にわたり滴下した後、上記混合物をさらに15分間攪拌した。生じた混合物を、0.45ミクロンのフィルターで濾過し、脱気した水(120mL)で洗浄し、脱気したメタノール(70mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、4.25gの青色粉末を得た。
【0122】
実施例36:脱気した水(30g)中の酢酸マンガン四水和物(7.35g、30.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(30g)中のシアン化ナトリウム(5.15g、107.0mmol)溶液を、15℃、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて加えた。生じた混合物を、さらに15分間攪拌した。水(60g)を75分間にわたり滴下した後、上記混合物をさらに15分間攪拌した。生じた混合物を、0.45ミクロンのフィルターで濾過し、脱気した水(120mL)で洗浄し、脱気したイソプロパノール(60mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、5.0gの青色粉末を得た。
【0123】
実施例37:脱気した水(30g)中の酢酸マンガン四水和物(7.35g、30.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(20g)中のシアン化ナトリウム(4.85g、101.0mmol)溶液を、14℃、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて加えた。生じた混合物をさらに30分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過し、脱気した水(100mL)で洗浄し、脱気したイソプロパノール(100mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、4.0gの青色粉末を得た。
【0124】
実施例38:脱気した水(30g)中の酢酸マンガン四水和物(7.35g、30.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(30g)中のシアン化カリウム(6.43g、101.0mmol)溶液を、15℃、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて加えた。生じた混合物をさらに30分間攪拌した後、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。緑色の粉末を、脱気した水(150mL)で洗浄し、脱気したイソプロパノール(100mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、4.15gの緑色粉末を得た。
【0125】
実施例39:脱気した水(30g)中の酢酸マンガン四水和物(7.35g、30.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(22g)中のシアン化ナトリウム(4.85g、101.0mmol)溶液を、15℃、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、1.0分間をかけて加えた。生じた混合物をさらに30分間攪拌した。水(50g)を30分間にわたり滴下した後、上記混合物をさらに15分間攪拌した。生じた混合物を0.45ミクロンのフィルターで濾過した。粉末を脱気した水(200mL)で洗浄し、脱気したメタノール(50mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、4.9gの青色粉末を得た。
【0126】
実施例40:脱気した水(30g)中の酢酸マンガン四水和物(7.35g、30.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(22g)中のシアン化ナトリウム(4.85g、101.0mmol)溶液を、−7℃、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、30秒間をかけて加えた。生じた混合物を、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。粉末を脱気した水(200mL)で洗浄し、脱気したメタノール(50mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、4.9gの青色粉末を得た。
【0127】
実施例41:脱気した水(30g)中の酢酸マンガン四水和物(7.35g、30.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(22g)中のシアン化ナトリウム(4.85g、101.0mmol)溶液を、−7℃、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、2.0分間をかけて加えた。生じた混合物を、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。粉末を脱気した水(200mL)で洗浄し、脱気したメタノール(50mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、4.9gの青色粉末を得た。
【0128】
実施例42:脱気した水(30g)中の酢酸マンガン四水和物(7.35g、30.0mmol)溶液を攪拌しながら、脱気した水(22g)中のシアン化ナトリウム(4.85g、101.0mmol)溶液を、−7℃、窒素の不活性雰囲気下(酸素<0.1ppm)にて、55.0分間をかけて加えた。生じた混合物を、0.45ミクロンのフィルターで濾過した。粉末を脱気した水(200mL)で洗浄し、脱気したメタノール(50mL)ですすいだ。その後、真空下で乾燥させて、4.9gの青色粉末を得た。
【0129】
実施例43:上述の実施例の一つから選択される活物質を、乳鉢および乳棒で磨り潰すことによって、カーボンブラックと充分に混合した。次に、得られた灰色粉末を、N−メチル−2−ピロリジノン中のポリフッ化ビニリデン(Kynar HSV900)溶液と混合して、黒色スラリーを調製した。活物質、カーボンブラックおよびポリフッ化ビニリデンの質量比は、80:10:10であった。得られたスラリーの薄層で炭素繊維布製の集電体上を覆い、得られた電極を真空下で乾燥させた。得られたアノード電極を、それ以上の処理を施すことなく、電気化学電池の組み立てに用いる。
【0130】
実施例44:上述の実施例の一つから選択される活物質を、乳鉢および乳棒で磨り潰すことによって、カーボンブラックと充分に混合した。次に、得られた灰色粉末を、N−メチル−2−ピロリジノン中のポリフッ化ビニリデン(Kynar 761)溶液と混合して、黒色スラリーを調製した。活物質、カーボンブラックおよびポリフッ化ビニリデンの質量比は、80:10:10であった。得られたスラリーの薄層で炭素繊維布製の集電体上を覆い、得られた電極を真空下で乾燥させた。得られたアノード電極を、それ以上の処理を施すことなく、電気化学電池の組み立てに用いる。
【0131】
実施例45:上述の実施例の一つから選択される活物質を、乳鉢および乳棒で磨り潰すことによって、カーボンブラックと充分に混合した。次に、得られた灰色粉末を、N−メチル−2−ピロリジノン中のポリフッ化ビニリデン溶液と混合して、黒色スラリーを調製した。活物質、カーボンブラックおよびポリフッ化ビニリデンの質量比は、70:20:10であった。得られたスラリーの薄層で炭素繊維布製の集電体上を覆い、得られた電極を真空下で乾燥させた。得られたアノード電極を、それ以上の処理を施すことなく、電気化学電池の組み立てに用いる。
【0132】
実施例46:上述の実施例の一つから選択される活物質を、乳鉢および乳棒で磨り潰すことによって、カーボンブラックおよび黒鉛と充分に混合した。次に、得られた灰色粉末を、N−メチル−2−ピロリジノン中のポリフッ化ビニリデン溶液と混合して、黒色スラリーを調製した。活物質、カーボンブラック、ポリフッ化ビニリデンおよび黒鉛の質量比は、80:9:9:2であった。得られたスラリーの薄層で炭素繊維布製の集電体上を覆い、得られた電極を真空下で乾燥させた。得られたアノード電極を、それ以上の処理を施すことなく、電気化学電池の組み立てに用いる。
【0133】
[考察]
式Iを満たす、本発明のいくつかの実施形態(例えば、イソシアニドNCを欠いている実施形態)について、上記実施形態に関する化学式は、単斜晶構造の相が存在する物質を表している。上記単斜晶構造の相は、面心立方構造を有することが知られている金属−ヘキサシアノ金属複合体とは、両立しない。本発明の物質のX線回折スペクトル(例えば、図2を参照)は、単斜晶構造の相が存在することの明白な証拠を与えている。
【0134】
加えて、イソシアノ基を含んでいる化学式(例えば、式Iにおいてp>0)を有する、本発明の上記の実施形態について、金属−ヘキサシアノ金属物質は、イソシアノ基を全く含んでいない。データ、ならびに背景にある化学および合成は、いくつかの式Iの実施形態においてイソシアノ基が存在することを、強く支持している。これは、以下の理由による。
【0135】
上記に開示されている実施例の方法を、従来の金属−ヘキサシアノ金属合成と比較した際の根本的な違いは、上記に開示されている実施例の方法は全て、金属カチオン(例えば、マンガン)およびシアン化物アニオンだけを採用していることである。これらの2種の化学種は、反応容器中に高濃度で存在している。本明細書に説明されている組成物を形成するための反応が、段階的な合成により進行しているとは考えられない。すなわち、第1の段階においては、上記化学種が反応してある程度の量のヘキサシアノマンガン複合体が形成され、未反応のマンガンカチオンが脱離し;続く第2の段階は、ヘキサシアノマンガン複合体と残存する未反応のマンガンとが、Mn[Mn(CN)]の組成を有する固形物を形成する反応に対応している、とは考えられない。上述の段階的な反応機構は、エントロピーの観点から不利であり、それゆえ、エネルギー論の観点からも不利である。なぜならば、全てのシアン化物アニオン前駆体が、全てのマンガンカチオン前駆体のごく一部と、選択的に結合することになるからである。
【0136】
むしろ、上記シアン化物アニオン前駆体にとっては、第1の段階において全ての反応可能なマンガンカチオン前駆体と反応する方が、エントロピーの観点から有利である。この際、異なる数のシアニドを含有している、シアン化マンガン複合体が形成される。次に、第2の段階(第1の段階が完了するよりも前に始まる場合もある)において、上記シアン化マンガン複合体は互いに結合し、固形物を形成する。上記固形物において、個々の複合体は、最大限のシアニド(6つのシアニド)が結合している構造を含有していない。このように固形組成物の形成が進行する場合、第1の複合体における、元々6つよりも少ないシアニドに結合されていたマンガンカチオンは、第2の複合体のマンガンカチオンに既に結合されているシアノ基の、窒素側の端とも結合する。上記結合は、上記固形組成物の形成において、上記の2つの複合体が反応する前に生じる。ゆえに、いくつかのイソシアノ基が最終的な固形化合物に存在することは、エントロピーの観点から有利である。その結果、p個のイソシアニドを有する、Mn[Mn(CN)6−p(NC)]を含んでいる組成物となる。
【0137】
式Iのイソシアノ基を有する複合材料の合成に関連して説明されている、上述の過程は、金属−ヘキサシアノ金属合成においては、起こりえない。なぜならば、金属−ヘキサシアノ金属に対する前駆体は、必ずヘキサシアノ金属複合体(Fe(CN)、Co(CN)、Cr(CN)、Mn(CN)、およびこれらの類似物など)であるためである。上記の前駆体複合体においては、全てのシアニドは、その炭素側の端によって、同じ金属カチオンに既に結合している。そのため、金属−ヘキサシアノ金属が生成する反応が起きるときには、最終的な組成物は、M’[M''(CN)](式中、M’およびM''は金属)であるに違いなく、p個(0ではない)のイソシアニドを有するM’[M''(CN)6−p(NC)]ではありえない。
【0138】
上記の説明を支持して、["HANDBOOK OF PREPARATIVE INORGANIC CHEMISTRY", vol. 2, 2nd ed., Georg Brauer, 1965]を参照する(参照により明白に、あらゆる目的のために、本明細書に組み込まれる)。Brauerは、「溶液中の遊離複合体としてのMn(CN)の合成には、70〜80℃の温度にて、少なくとも30分間を要する」と述べている(1473〜4頁)。対照的に、開示されている合成の多く(実施例40〜42にて説明されており、図10a〜図10cにて示されているものなど)は、約−7〜20℃の温度にて、約30秒間でほぼ完了している(少量の前駆体の反応に長時間を要する場合には、反応の収率を100%に近づけられるように、より長い攪拌のための時間を選択している)。一般的に、化学反応は、より高い温度においてより速く進行することが知られている。このことから、本明細書で報告されている組成物の実施形態について、以下の結論が導かれる。すなわち、合成反応が非常に速い速度で進行するので、固形組成物が生成する反応の開始前には、溶液中でMn(CN)複合体が形成されるために充分な時間がない。そして、その代わりに、上記の産物は、異なる数のシアニドを有するシアン化マンガン複合体から形成され、その結果、シアノ基およびイソシアノ基の両方を有する最終的な組成物が生じた。
【0139】
上述した通り、式Iにおいてpの最大値は3である。この場合、6つの結合を有するマンガンは、3つのシアノ基および3つのイソシアノ基に結合されている。合計で6つの結合が存在し、p>3である場合には、考慮されている特定のマンガンは、結晶構造中において隣接するマンガン複合体のシアノ基の窒素側の端と面している位置にある。例えば、p=5の場合(対応する組成物はMn[Mn(CN)(NC)]である)は、考慮されている隣接するMnにとっては、p=1の場合(対応する組成物はMn[Mn(CN)(NC)]である)と、等価である。
【0140】
同じく上述した通り、いくつかの合成では、マンガン塩をシアン化物溶液に徐々に加えた(実施例3、9など)。上記の実施例において、シアン化物アニオンは、それぞれ、約300分間および約70分間をかけて加えられた。このような場合、固形物が形成される前に、Mn(CN)複合体が形成されうる可能性がある。ゆえに、組成物にはイソシアノ基が含まれている場合もあるし、含まれていない場合もある。このため、本明細書および特許請求の範囲には、0≦p≦3の範囲が含まれている。上記の事例であり、かつp=0の場合について、実施形態は、上述の金属−ヘキサシアノ金属とは異なる。これは、少なくとも、上記の物質の少なくとも一部が対応している結晶構造(例えば、単斜晶)が理由である。
【0141】
本発明の好ましい実施形態の詳細を理解することを助けるために、上記のシステムおよび方法を、一般論として説明した。本明細書の記載において、数値特異的な詳細(成分および/または方法の例など)は、本発明の実施形態の充分な理解を提供するために与えられている。本発明のいくつかの特徴および利点は、このような形態において実現されるのであり、全ての場合において必要とされる訳ではない。しかしながら、本発明の実施形態は、1つ以上の特定の細目がなくとも実施しうることを、当業者は認識するであろう。あるいは、本発明の実施形態は、他の機器、システム、組立部品(assemblies)、方法、成分、物質、部品(parts)などとともに実施しうることも、当業者は認識するであろう。他の事例において、周知の構造、物質または操作は、具体的に示されていないか、または詳細に説明されていない。これは、本発明の実施形態の態様を不明確にすることを避けるためである。
【0142】
本明細書を通じて、「一実施形態」「実施形態」または「特定の実施形態」("one embodiment," "an embodiment," or "a specific embodiment")に対する言及は、以下のことを意味する。すなわち、上記実施形態に関連して説明されている特定の特徴、構造または特徴点は、本発明の1つ以上の実施形態に含まれているのであり、全ての実施形態に含まれている必要はない。したがって、本明細書を通した種々の箇所において、「一実施形態において」「実施形態において」または「特定の実施形態において」の語がそれぞれ登場していることは、同じ実施形態について言及しているとは限らない。さらに、本発明の任意の特定の実施形態の、上記特定の特徴、構造または特徴点は、任意の適切な方法により、1つ以上の実施形態と組み合わされてもよい。本明細書に説明および図示されている、本発明の実施形態の他の変更および修正は、本明細書の教示に照らして可能であると理解されるべきであり、本発明の本質および範囲の一部として見做されるべきと理解されるべきである。
【0143】
また、図面/図に描かれている1つ以上の要素もまた、分割または統合された方法によっても実施されうる、と理解されるべきである。あるいは、特定の用途に関して有用であるならば、特定の場合においては除去または操作不能なものとされてもよい。
【0144】
加えて、図面/図における、任意の信号を表す矢印(signal arrows)は、単なる例示と見做されるべきであり、そうではないと具体的に注記されていない限り、限定的でない。用語が分離または結合されてもよいと見做されることが不明確である場合には(where terminology is foreseen as rendering the ability to separate or combine is unclear)、構成要素または工程の組み合わせもまた、注記されているものとして見做されるべきである。
【0145】
説明されている本発明の実施形態の、上述の記載(要約書に記載されている事項を含む)は、網羅的であることを意図しておらず、あるいは、本明細書において開示されているそのものの形態に、本発明を制限することを意図していない。本発明の特定の実施形態(および例)は、単に説明の目的のみのために、本明細書において説明されている。その一方で、当業者が認識および理解する通り、本発明の本質およびの範囲の内で、種々の均等な変更が可能である。上述したように、これらの変更は、説明されている本発明の実施形態の上述の記載に照らして、本発明に対してなされうる。また、これらの変更は、本発明の本質およびの範囲の内に含まれるべきである。
【0146】
このように、本発明を、その特定の実施形態に関して、本明細書において説明してきたが、変更の範囲、種々の修正および置換が、上述の開示において意図されている。また、いくつかの事例において、本発明の実施形態のいくつかの特徴は、記載されている本発明の範囲および本質を離れることなく、対応する他の特徴の使用なしに採用される、と理解される。したがって、特定の状況または物質に適用するために、本発明の本質的な範囲および本質に対して、多くの変更がなされうる。本発明は、下記の特許請求の範囲に用いられている特定の用語、および/または、本発明を実行するために考慮されたベストモードとして開示されている特定の実施形態に制限されないことが、意図される。そうではなく、本発明は、任意のおよび全ての実施形態、ならびに添付の特許請求の範囲に含まれる均等物を包含していることが意図される。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ決定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0147】
図1a図1aは、物質について、面心立方状の、金属−ヘキサシアノ金属結晶構造を図示している。
図1b図1bは、単斜状の、ホモ金属シアン化物を含有している無機高分子構造を図示している。
図2図2は、種々のホモ金属シアン化物を含有している無機高分子物質(a〜h)の、X線回折(XRD)の結果を図示している。
図3a図3a〜3cは、種々のホモ金属シアン化物を含有している無機高分子物質の、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果を図示している。図3aは、図2において図示されている物質aの、SEMによる観察結果を図示している。
図3b図3bは、図2において図示されている物質cの、SEMによる観察結果を図示している。
図3c図3cは、図2において図示されている物質hの、SEMによる観察結果を図示している。
図4図4は、ホモ金属シアン化物を含有している無機高分子電極、および第2の電極を備えている電池の概略を図示している。
図5a図5aは、図2において図示されている物質hの、熱重量測定分析の結果を図示している。
図5b図5bは、図2において図示されている物質hの、質量分析の結果を図示している。
図6図6は、種々のホモ金属シアン化物を含有している無機高分子の、元素分析の結果を図示している。
図7図7は、ホモ金属シアン化物を含有している無機高分子電極の、サイクリックボルタモグラムを図示している。
図8a図8a〜8cは、種々のホモ金属シアン化物を含有している無機高分子電極の、1Cサイクルの結果を図示している。図8aは、図2において図示されている物質aの、サイクル性を図示している。
図8b図8bは、図2において図示されている物質cの、サイクル性を図示している。
図8c図8cは、図2において図示されている物質hの、サイクル性を図示している。
図9図9は、ホモ金属シアン化物を含有している無機高分子電極の、比容量vsサイクルを図示している。
図10a図10a〜10cは、種々のホモ金属シアン化物を含有している無機高分子の、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果を図示している。図10aは、実施例40において作製された組成物の、SEMによる観察結果を図示している。
図10b図10bは、実施例41において作製された組成物の、SEMによる観察結果を図示している。
図10c図10cは、実施例42において作製された組成物の、SEMによる観察結果を図示している。
図1a-1b】
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図9
図10a
図10b
図10c
【国際調査報告】