特表2017-534296(P2017-534296A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-534296HIV‐1エンベロープ標的化アームを備える二重特異性分子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-534296(P2017-534296A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】HIV‐1エンベロープ標的化アームを備える二重特異性分子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20171027BHJP
   C07K 16/10 20060101ALI20171027BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20171027BHJP
   C07K 14/155 20060101ALI20171027BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20171027BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20171027BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20171027BHJP
   A61K 31/365 20060101ALI20171027BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20171027BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20171027BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20171027BHJP
   A61K 31/145 20060101ALI20171027BHJP
   A61K 31/551 20060101ALI20171027BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20171027BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20171027BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20171027BHJP
【FI】
   C12N15/00 A
   C07K16/10ZNA
   C07K19/00
   C07K14/155
   A61K39/395 D
   A61K39/395 S
   A61K35/761
   A61K35/76
   A61K31/365
   A61K31/167
   A61K38/07
   A61K31/4045
   A61K31/145
   A61K31/551
   A61K31/137
   A61P31/18
   A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】80
(21)【出願番号】特願2017-536234(P2017-536234)
(86)(22)【出願日】2015年9月29日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月19日
(86)【国際出願番号】US2015053027
(87)【国際公開番号】WO2016054101
(87)【国際公開日】20160407
(31)【優先権主張番号】62/206,586
(32)【優先日】2015年8月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/056,834
(32)【優先日】2014年9月29日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】507189666
【氏名又は名称】デューク ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】504438727
【氏名又は名称】マクロジェニクス,インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】509110851
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティー オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル
(74)【代理人】
【識別番号】100123858
【弁理士】
【氏名又は名称】磯田 志郎
(72)【発明者】
【氏名】ヘインズ バートン エフ.
(72)【発明者】
【氏名】フェラーリ グイド
(72)【発明者】
【氏名】ケーニヒ スコット
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン レスリー エス.
(72)【発明者】
【氏名】ラム チャーイン カオ
(72)【発明者】
【氏名】スング ジュリア エー.
(72)【発明者】
【氏名】マーゴリス デイヴィッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】リュウ リキン
(72)【発明者】
【氏名】ノードストローム ジェフリー リー.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C087
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA16
4C084BA26
4C084BA27
4C084CA04
4C084DA27
4C084MA05
4C084MA16
4C084MA28
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC551
4C084ZC552
4C084ZC751
4C084ZC752
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA38
4C085BA69
4C085BB11
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB41
4C085BB42
4C085BB43
4C085CC01
4C085CC03
4C085CC05
4C085CC08
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF12
4C085FF17
4C085FF18
4C085GG02
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC13
4C086CA03
4C086CB30
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA16
4C086MA28
4C086MA56
4C086MA59
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC55
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA05
4C087MA16
4C087MA28
4C087MA56
4C087MA59
4C087MA63
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB33
4C087ZC55
4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA13
4C206CA31
4C206FA11
4C206JA72
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA36
4C206MA48
4C206MA76
4C206MA79
4C206MA83
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZB33
4C206ZC55
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA05
4H045DA76
4H045DA86
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は:HIV‐1エンベロープ標的化アームと、エフェクタ細胞を標的化するアームとを備える、二重特異性分子;これらの二重特異性分子を含む組成物;及びその使用方法を対象とする。特定の態様では、本発明の二重特異性分子は、2つの異なる細胞上の2つの異なる標的又はエピトープに結合でき、ここで第1のエピトープは、第2のエピトープとは異なる細胞タイプにおいて発現し、これにより上記二重特異性分子は、これら2つの細胞を一体とすることができる。特定の態様では、本発明の二重特異性分子は、2つの異なる細胞に結合でき、ここで上記二重特異性分子は、A32、7B2、CH27、CH28又はCH44の結合特異性を有するアームを備える。
【選択図】図8A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対して共有結合した第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖を備える、二重特異性分子であって:
(I)前記第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に:
(i)A32、7B2、CH28、又はCH44 HIV‐1抗体の結合特異性を有する第1のイムノグロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL1)を備える、ドメイン(A);
(ii)エピトープ(2)に対して特異的な第2のイムノグロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH2)を備える、ドメイン(B)であって、前記ドメイン(A)及び前記ドメイン(B)は、ペプチドリンカー1によって互いから隔てられている、ドメイン(B);並びに
(iii)Kコイル又はEコイルを含むヘテロ二量体促進ドメインを備える、ドメイン(C)であって、前記ヘテロ二量体促進ドメイン(C)及び前記ドメイン(B)は、ペプチドリンカー2によって隔てられている、ドメイン(C);
を備え、
(II)前記第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に:
(i)前記エピトープ(2)に対して特異的な前記第2のイムノグロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL2)を備える、ドメイン(D);
(ii)前記A32、7B2、CH28、又はCH44 HIV‐1抗体の結合特異性を有する前記第1のイムノグロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH1)を備える、ドメイン(E)であって、前記ドメイン(D)及び前記ドメイン(E)は、ペプチドリンカー1によって互いから隔てられている、ドメイン(E);並びに
(iii)Kコイル又はEコイルを含むヘテロ二量体促進ドメインを備える、ドメイン(F)であって、前記ヘテロ二量体促進ドメイン(F)及び前記ドメイン(E)は、ペプチドリンカー2によって隔てられている、ドメイン(F);
を備え、
前記ドメイン(A)及び前記ドメイン(B)は、互いと連結してエピトープ結合部位を形成せず;
前記ドメイン(D)及び前記ドメイン(E)は、互いと連結してエピトープ結合部位を形成せず;
前記ドメイン(A)及び前記ドメイン(E)は連結して、A32、7B2、CH28、又はCH44抗体のような前記HIV‐1エンベロープ(1)に結合する結合部位を形成し;
前記ドメイン(B)及び前記ドメイン(D)は連結して、前記エピトープ(2)に結合する結合部位を形成する、二重特異性分子。
【請求項2】
第1のポリペプチド鎖、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖を備える、二重特異性分子であって、
前記ポリペプチドは共有結合し:
(I)前記第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に:
(i)A32、7B2、CH28、又はCH44 HIV‐1抗体の結合特異性を有する第1のイムノグロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL1)を備える、ドメイン(A);
(ii)エピトープ(2)に対して特異的な第2のイムノグロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH2)を備える、ドメイン(B)であって、前記ドメイン(A)及び前記ドメイン(B)は、ペプチドリンカー1によって互いから隔てられている、ドメイン(B);
(iii)Kコイル又はEコイルを含むヘテロ二量体促進ドメインを備える、ドメイン(C)であって、前記ヘテロ二量体促進ドメイン(C)及び前記ドメイン(B)は、ペプチドリンカー2によって隔てられている、ドメイン(C);
(iv)CH2‐CH3ドメインであって、前記CH2‐CH3ドメイン及び前記ドメイン(C)は、ペプチドリンカー3又はスペーサリンカー3によって隔てられている、CH2‐CH3ドメイン;
を備え、
(II)前記第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に:
(i)前記エピトープ(2)に対して特異的な前記第2のイムノグロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL2)を備える、ドメイン(D);
(ii)前記A32、7B2、CH28、又はCH44 HIV‐1抗体の結合特異性を有する前記第1のイムノグロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH1)を備える、ドメイン(E)であって、前記ドメイン(D)及び前記ドメイン(E)は、ペプチドリンカー1によって互いから隔てられている、ドメイン(E);
(iii)Kコイル又はEコイルを含むヘテロ二量体促進ドメインを備える、ドメイン(F)であって、前記ヘテロ二量体促進ドメイン(F)及び前記ドメイン(E)は、ペプチドリンカー2によって隔てられている、ドメイン(F);
を備え、
(III)前記第3のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に:
(i)ペプチドリンカー3;
(ii)CH2‐CH3ドメイン;
を備え、
前記ドメイン(A)及び前記ドメイン(B)は、互いと連結してエピトープ結合部位を形成せず;
前記ドメイン(D)及び前記ドメイン(E)は、互いと連結してエピトープ結合部位を形成せず;
前記ドメイン(A)及び前記ドメイン(E)は連結して、A32、7B2、CH28、又はCH44抗体のような前記HIV‐1エンベロープ(1)に結合する結合部位を形成し;
前記ドメイン(B)及び前記ドメイン(D)は連結して、前記エピトープ(2)に結合する結合部位を形成し;
前記第1のポリペプチド及び前記第3のポリペプチドの前記CH2‐CH3ドメインは、Fc鎖を形成する、二重特異性分子。
【請求項3】
第1のポリペプチド鎖、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖を備える二重特異性分子であって、
前記ポリペプチドは共有結合し:
(I)前記第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に:
(i)CH2‐CH3ドメインが続くペプチドリンカー3;
(ii)A32、7B2、CH28、又はCH44 HIV‐1抗体の結合特異性を有する第1のイムノグロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL1)を備える、ドメイン(A)であって、前記CH2‐CH3ドメイン及び前記ドメイン(A)は、ペプチドリンカー4によって隔てられている、ドメイン(A);
(iii)エピトープ(2)に対して特異的な第2のイムノグロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH2)を備える、ドメイン(B)であって、前記ドメイン(A)及び前記ドメイン(B)は、ペプチドリンカー1によって互いから隔てられている、ドメイン(B);
(iv)Kコイル又はEコイルを含むヘテロ二量体促進ドメインを備える、ドメイン(C)であって、前記ヘテロ二量体促進ドメイン(C)及び前記ドメイン(B)は、ペプチドリンカー2によって隔てられている、ドメイン(C);
を備え、
(II)前記第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に:
(i)前記エピトープ(2)に対して特異的な前記第2のイムノグロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL2)を備える、ドメイン(D);
(ii)前記A32、7B2、CH28、又はCH44 HIV‐1抗体の結合特異性を有する前記第1のイムノグロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH1)を備える、ドメイン(E)であって、前記ドメイン(D)及び前記ドメイン(E)は、ペプチドリンカー1によって互いから隔てられている、ドメイン(E);
(iii)Kコイル又はEコイルを含むヘテロ二量体促進ドメインを備える、ドメイン(F)であって、前記ヘテロ二量体促進ドメイン(F)及び前記ドメイン(E)は、ペプチドリンカー2によって隔てられている、ドメイン(F);
を備え、
(III)前記第3のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に:
(i)ペプチドリンカー3;
(ii)CH2‐CH3ドメイン;
を備え、
前記ドメイン(A)及び前記ドメイン(B)は、互いと連結してエピトープ結合部位を形成せず;
前記ドメイン(D)及び前記ドメイン(E)は、互いと連結してエピトープ結合部位を形成せず;
前記ドメイン(A)及び前記ドメイン(E)は連結して、A32、7B2、CH28、又はCH44抗体のような前記HIV‐1エンベロープ(1)に結合する結合部位を形成し;
前記ドメイン(B)及び前記ドメイン(D)は連結して、前記エピトープ(2)に結合する結合部位を形成し;
前記第1のポリペプチド及び前記第3のポリペプチドの前記CH2‐CH3ドメインは、Fc鎖を形成する、二重特異性分子。
【請求項4】
前記第1のポリペプチド鎖の前記CH2‐CH3ドメインは「ノブ」設計であり、前記第3のポリペプチド鎖の前記CH2‐CH3ドメインは「ホール」設計であるか、又はその逆である、請求項2又は3に記載の二重特異性分子。
【請求項5】
前記エピトープ(2)は、CD3エピトープ又はCD16エピトープである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二重特異性分子。
【請求項6】
前記二重特異性分子は、A32抗体の特異性を有するHIVエンベロープに結合し、またCD3又はCD16にも結合する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二重特異性分子。
【請求項7】
前記二重特異性分子は、7B2抗体の特異性を有するHIVエンベロープに結合し、またCD3又はCD16にも結合する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二重特異性分子。
【請求項8】
前記二重特異性分子は、CH28抗体の特異性を有するHIVエンベロープに結合し、またCD3又はCD16にも結合する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二重特異性分子。
【請求項9】
前記二重特異性分子は、CH44抗体の特異性を有するHIVエンベロープに結合し、またCD3又はCD16にも結合する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二重特異性分子。
【請求項10】
A32イムノグロブリンの前記ドメイン(A)結合領域(VL1)は、VL‐A32CDR3、CDR2及びCDR1を備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二重特異性分子。
【請求項11】
A32イムノグロブリンの前記ドメイン(E)結合領域(VH1)は、VH‐A32CDR3、CDR2及びCDR1を備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二重特異性分子。
【請求項12】
7B2イムノグロブリンの前記ドメイン(A)結合領域(VL1)は、VL‐7B2CDR3、CDR2及びCDR1を備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二重特異性分子。
【請求項13】
7B2イムノグロブリンの前記ドメイン(E)結合領域(VH1)は、VH‐7B2CDR3、CDR2及びCDR1を備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二重特異性分子。
【請求項14】
CH28イムノグロブリンの前記ドメイン(A)結合領域(VL1)は、VL‐CH28CDR3、CDR2及びCDR1を備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二重特異性分子。
【請求項15】
CH28イムノグロブリンの前記ドメイン(E)結合領域(VH1)は、VH‐CH28CDR3、CDR2及びCDR1を備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二重特異性分子。
【請求項16】
CH44イムノグロブリンの前記ドメイン(A)結合領域(VL1)は、VL‐CH44CDR3、CDR2及びCDR1を備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二重特異性分子。
【請求項17】
CH44イムノグロブリンの前記ドメイン(E)結合領域(VH1)は、VH‐CH44CDR3、CDR2及びCDR1を備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二重特異性分子。
【請求項18】
前記ドメイン(A)は、VL‐A32、VL‐7B2、VL‐CH28又はVL‐CH44を備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二重特異性分子。
【請求項19】
前記ドメイン(E)は、VH‐A32、VH‐7B2、VH‐CH28、VH‐CH44を備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二重特異性分子。
【請求項20】
前記第1のポリペプチドは、配列番号9、配列番号13、配列番号17、配列番号21、配列番号25、又は配列番号44を備える、請求項1に記載の二重特異性分子。
【請求項21】
前記第2のポリペプチドは、配列番号11、配列番号15、配列番号19、配列番号23、配列番号27、又は配列番号45を備える、請求項1に記載の二重特異性分子。
【請求項22】
配列番号9、配列番号13、配列番号17、配列番号21、配列番号25又は配列番号44の前記第1のポリペプチドと、配列番号11、配列番号15、配列番号19、配列番号23、配列番号27又は配列番号45の前記第2のポリペプチドとを備える、請求項1に記載の二重特異性分子。
【請求項23】
配列番号46の前記第1のポリペプチドと、配列番号47の前記第2のポリペプチドと、配列番号48の前記第3のポリペプチドとを備える、請求項2に記載の二重特異性分子。
【請求項24】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載の二重特異性分子、又は前記二重特異性分子のいずれの組み合わせを含む、組成物。
【請求項25】
HIV‐1抗体A32、HIV‐1抗体7B2、HIV‐1抗体CH28又はHIV‐1抗体CH44の結合特異性を有する第1のアームと、CD3又はCD16を標的化する第2のアームとを備える二重特異性分子を含む、組成物。
【請求項26】
前記二重特異性分子は、Fc部分を含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
HIV‐1抗体A32、HIV‐1抗体7B2、HIV‐1抗体CH28、HIV‐1抗体CH44の結合特異性を有する第1のアームと、CD3又はCD16を標的化する第2のアームとを備える第2の二重特異性分子を更に含み、
前記第1の二重特異性分子と前記第2の二重特異性分子とは異なる、請求項24に記載の組成物。
【請求項28】
必要とする被験者においてHIV‐1感染を治療又は予防するための方法であって、
前記方法は、請求項1乃至23のいずれか1項に記載の二重特異性分子又は前記二重特異性分子のいずれの組み合わせを治療的有効量で含む組成物を、前記被験者に投与するステップを含む、方法。
【請求項29】
潜伏活性化剤を投与するステップを更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記潜伏活性化剤は、ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、ジスルフィラム、JQ1、ブリオスタチン、PMA、イノモマイシン、又はこれらのいずれの組み合わせである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載の二重特異性分子をエンコードするヌクレオチドを含む核酸を含む、ベクター。
【請求項32】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載の二重特異性分子をエンコードする核酸を含むベクターを含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2014年9月29日出願の米国特許第62/056,834号、2015年8月18日出願の米国特許第62/206,586号の利益、及びこれらに対する優先権を主張するものであり、これらの特許の内容は、その全体が参照により本出願に援用される。
【0002】
本特許開示は、著作権保護を受けている内容を含む。著作権所有者は、いずれの人物による、米国特許商標庁の特許ファイル又は記録にあるままの本特許文書又は本特許開示のファクシミリ複製に対して、一切の異論を唱えないが、それ以外についてはいずれのあらゆる著作権を留保する。
【0003】
本出願に引用される全ての特許、特許出願及び刊行物は、その全体が参照により本出願に援用される。これらの刊行物の開示は、本出願に記載の発明の時点において当業者に公知である最新技術をより完全に説明するために、その全体が参照により本出願に援用される。
【0004】
政府の支援
本発明は、国立衛生研究所によって付与された助成金番号U19 AI067854及びUM1 AI100645の下での政府の支援によってなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0005】
本発明は、HIV‐1結合ドメイン及びエフェクタ細胞結合ドメインを備えるHIV‐1抗体及び二重特異性分子、並びにこれらの使用を対象とする。
【背景技術】
【0006】
高活性抗レトロウイルス療法(Highly Active Antiretroviral Therapy:HAART)は、感染した個体におけるウイルス量の低減及びHIV‐1感染の影響の改善に有効であった。しかしながら、この治療にもかかわらず、HIV感染細胞の潜伏残存がこの治療を逃れるため、ウイルスは上記個体内に存続する。従って、HIV‐1感染個体の治療のための治療剤、及びウイルス感染細胞を標的とし、HIV‐1感染細胞の潜伏残存を減少させる可能性のある薬剤に対する需要が存在する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、二重特異性分子、例えば抗体、共有結合性ダイアボディ及び/又は共有結合性ダイアボディ分子を形成するための共有結合したポリペプチド鎖、並びにHIV‐1の治療におけるその使用を対象とする。特定の態様では、本発明の二重特異性分子は、2つの異なる標的、又は2つの異なる細胞上のエピトープに結合でき、ここで第1のエピトープは、第2のエピトープとは異なる細胞タイプ上に発現し、これにより上記二重特異性分子は、これら2つの細胞を一体とすることができる。特定の態様では、本発明の二重特異性分子は、2つの異なる細胞に結合でき、ここで上記二重特異性分子は、A32、7B2、CH27、CH28又はCH44の結合特異性を有するアームを備え、上記アームは、例えばHIV感染細胞である第1の細胞上に発現するHIV‐1エンベロープに結合でき、また上記二重特異性分子は、上記第1の細胞とは異なる細胞タイプ上に発現するエピトープに対する結合特異性を有する第2のアームを備え、これにより上記二重特異性分子は、これら2つの細胞を一体とすることができる。特定の実施形態では、上記第2の細胞は、CD3又はCD16を発現するエフェクタ細胞である。
【0008】
特定の実施形態では、ある抗体はある特定の標的に対して、この特異的エピトープが公知のペプチド又は多糖(例えば病原体の表面に存在する抗原、例えばgpl20、gp41又はCD3)でない場合であっても、特異的に結合し、試料又は被験者中に存在する他のタンパク質又は多糖には有意量では結合しない。特異的結合は、当該技術分野において公知の方法で決定できる。様々な競合的結合アッセイが当該技術分野において公知である。抗体抗原複合体に関して、特定の実施形態では、抗原及び抗体の特異的結合は、約106モル未満、例えば約106モル、107モル、108モル、109モル未満、又は更に約1010モル未満のKDを有する。
【0009】
特定の態様では、本発明は、互いに対して共有結合した第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖を備える、二重特異性分子を提供し:
(I)上記第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に:
(i)A32、7B2、CH28、又はCH44 HIV‐1エンベロープ抗体の結合特異性を有する第1のイムノグロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL1)を備える、ドメイン(A);
(ii)エピトープ(2)に対して特異的な第2のイムノグロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH2)を備える、ドメイン(B)であって、上記ドメイン(A)及び上記ドメイン(B)は、ペプチドリンカー1によって互いから隔てられている、ドメイン(B);並びに
(iii)Kコイル又はEコイルを含むヘテロ二量体促進ドメインを備える、ドメイン(C)であって、上記ヘテロ二量体促進ドメイン(C)及び上記ドメイン(B)は、ペプチドリンカー2によって隔てられている、ドメイン(C);
を備え、
(II)上記第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に:
(i)上記エピトープ(2)に対して特異的な上記第2のイムノグロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL2)を備える、ドメイン(D);
(ii)上記A32、7B2、CH28、又はCH44 HIV‐1抗体の結合特異性を有する上記第1のイムノグロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH1)を備える、ドメイン(E)であって、上記ドメイン(D)及び上記ドメイン(E)は、ペプチドリンカー1によって互いから隔てられている、ドメイン(E);並びに
(iii)Kコイル又はEコイルを含むヘテロ二量体促進ドメインを備える、ドメイン(F)であって、上記ヘテロ二量体促進ドメイン(F)及び上記ドメイン(E)は、ペプチドリンカー2によって隔てられている、ドメイン(F);
を備え、
上記ドメイン(A)及び上記ドメイン(B)は、互いと連結してエピトープ結合部位を形成せず;
上記ドメイン(D)及び上記ドメイン(E)は、互いと連結してエピトープ結合部位を形成せず;
上記ドメイン(A)及び上記ドメイン(E)は連結して、A32、7B2、CH28、又はCH44抗体のような上記HIV‐1エンベロープ(1)に結合する結合部位を形成し;
上記ドメイン(B)及び上記ドメイン(D)は連結して、上記エピトープ(2)に結合する結合部位を形成する。
【0010】
特定の態様では、本発明は、第1のポリペプチド鎖、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖を備える、二重特異性分子を提供し、ここで上記ポリペプチドのうちのいくつかは共有結合し(図8参照):
(I)上記第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に:
(i)A32、7B2、CH28、又はCH44 HIV‐1抗体の結合特異性を有する第1のイムノグロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL1)を備える、ドメイン(A);
(ii)エピトープ(2)に対して特異的な第2のイムノグロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH2)を備える、ドメイン(B)であって、上記ドメイン(A)及び上記ドメイン(B)は、ペプチドリンカー1によって互いから隔てられている、ドメイン(B);
(iii)Kコイル又はEコイルを含むヘテロ二量体促進ドメインを備える、ドメイン(C)であって、上記ヘテロ二量体促進ドメイン(C)及び上記ドメイン(B)は、ペプチドリンカー2によって隔てられている、ドメイン(C);
(iv)CH2‐CH3ドメインであって、上記CH2‐CH3ドメイン及び上記ドメイン(C)は、ペプチドリンカー3又はスペーサリンカー3によって隔てられている、CH2‐CH3ドメイン;
を備え、
(II)上記第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に:
(i)上記エピトープ(2)に対して特異的な上記第2のイムノグロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL2)を備える、ドメイン(D);
(ii)上記A32、7B2、CH28、又はCH44 HIV‐1抗体の結合特異性を有する上記第1のイムノグロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH1)を備える、ドメイン(E)であって、上記ドメイン(D)及び上記ドメイン(E)は、ペプチドリンカー1によって互いから隔てられている、ドメイン(E);
(iii)Kコイル又はEコイルを含むヘテロ二量体促進ドメインを備える、ドメイン(F)であって、上記ヘテロ二量体促進ドメイン(F)及び上記ドメイン(E)は、ペプチドリンカー2によって隔てられている、ドメイン(F);
を備え、
(III)上記第3のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に:
(i)ペプチドリンカー3;
(ii)CH2‐CH3ドメイン;
を備え、
上記ドメイン(A)及び上記ドメイン(B)は、互いと連結してエピトープ結合部位を形成せず;
上記ドメイン(D)及び上記ドメイン(E)は、互いと連結してエピトープ結合部位を形成せず;
上記ドメイン(A)及び上記ドメイン(E)は連結して、A32、7B2、CH28、又はCH44抗体のような上記HIV‐1エンベロープ(1)に結合する結合部位を形成し;
上記ドメイン(B)及び上記ドメイン(D)は連結して、上記エピトープ(2)に結合する結合部位を形成し;
上記第1のポリペプチド及び上記第3のポリペプチドの上記CH2‐CH3ドメインは、Fc鎖を形成する。
【0011】
第1のポリペプチド鎖、第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖を備える二重特異性分子であって、ここで上記ポリペプチドのうちのいくつかは共有結合し(図8参照):
(I)上記第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に:
(i)CH2‐CH3ドメインが続くペプチドリンカー3
(ii)A32、7B2、CH28、又はCH44 HIV‐1抗体の結合特異性を有する第1のイムノグロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL1)を備える、ドメイン(A)であって、上記CH2‐CH3ドメイン及び上記ドメイン(A)は、ペプチドリンカー4によって隔てられている、ドメイン(A);
(iii)エピトープ(2)に対して特異的な第2のイムノグロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH2)を備える、ドメイン(B)であって、上記ドメイン(A)及び上記ドメイン(B)は、ペプチドリンカー1によって互いから隔てられている、ドメイン(B);
(iv)Kコイル又はEコイルを含むヘテロ二量体促進ドメインを備える、ドメイン(C)であって、上記ヘテロ二量体促進ドメイン(C)及び上記ドメイン(B)は、ペプチドリンカー2によって隔てられている、ドメイン(C);
を備え、
(II)上記第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に:
(i)上記エピトープ(2)に対して特異的な上記第2のイムノグロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL2)を備える、ドメイン(D);
(ii)上記A32、7B2、CH28、又はCH44 HIV‐1抗体の結合特異性を有する上記第1のイムノグロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH1)を備える、ドメイン(E)であって、上記ドメイン(D)及び上記ドメイン(E)は、ペプチドリンカー1によって互いから隔てられている、ドメイン(E);
(iii)Kコイル又はEコイルを含むヘテロ二量体促進ドメインを備える、ドメイン(F)であって、上記ヘテロ二量体促進ドメイン(F)及び上記ドメイン(E)は、ペプチドリンカー2によって隔てられている、ドメイン(F);
を備え、
(III)上記第3のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に:
(i)ペプチドリンカー3;
(ii)CH2‐CH3ドメイン;
を備え、
上記ドメイン(A)及び上記ドメイン(B)は、互いと連結してエピトープ結合部位を形成せず;
上記ドメイン(D)及び上記ドメイン(E)は、互いと連結してエピトープ結合部位を形成せず;
上記ドメイン(A)及び上記ドメイン(E)は連結して、A32、7B2、CH28、又はCH44抗体のような上記HIV‐1エンベロープ(1)に結合する結合部位を形成し;
上記ドメイン(B)及び上記ドメイン(D)は連結して、上記エピトープ(2)に結合する結合部位を形成し;
上記第1のポリペプチド及び上記第3のポリペプチドの上記CH2‐CH3ドメインは、Fc鎖を形成する、二重特異性分子。
【0012】
特定の実施形態では、上記第1のポリペプチド鎖の上記CH2‐CH3ドメインは「ノブ」設計であり、上記第3のポリペプチド鎖の上記CH2‐CH3ドメインは「ホール」設計であるか、又はその逆である。
【0013】
特定の実施形態では、上記エピトープ(2)は、CD3エピトープ又はCD16エピトープである。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、A32抗体の特異性を有するHIVエンベロープに結合し、またCD3にも結合する。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、7B2抗体の特異性を有するHIVエンベロープに結合し、またCD3にも結合する。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、CH28抗体の特異性を有するHIVエンベロープに結合し、またCD3にも結合する。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、CH44抗体の特異性を有するHIVエンベロープに結合し、またCD3にも結合する。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、A32抗体の特異性を有するHIVエンベロープに結合し、またCD16にも結合する。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、7B2抗体の特異性を有するHIVエンベロープに結合し、またCD16にも結合する。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、CH28抗体の特異性を有するHIVエンベロープに結合し、またCD16にも結合する。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、CH44抗体の特異性を有するHIVエンベロープに結合し、またCD16にも結合する。
【0014】
特定の実施形態では、上記ドメイン(A)及び上記ドメイン(E)は連結して、A32、7B2、CH28又はCH44抗体の結合特異性を有するHIV‐1エンベロープに結合する結合部位を形成する。特定の実施形態では、上記ドメイン(A)及び上記ドメイン(E)は連結して、A32、7B2、CH28又はCH44 HIV‐1抗体エピトープに結合する結合部位を形成する。
【0015】
特定の実施形態では、A32イムノグロブリンのドメイン(A)結合領域(VL1)は、VL‐A32CDR3、CDR2及びCDR1を備える。特定の実施形態では、A32イムノグロブリンのドメイン(E)結合領域(VH1)は、VH‐A32CDR3、CDR2及びCDR1を備える。特定の実施形態では、7B2イムノグロブリンのドメイン(A)結合領域(VL1)は、VL‐7B2CDR3、CDR2及びCDR1を備える。特定の実施形態では、7B2イムノグロブリンのドメイン(E)結合領域(VH1)は、VH‐7B2CDR3、CDR2及びCDR1を備える。特定の実施形態では、CH28イムノグロブリンのドメイン(A)結合領域(VL1)は、VL‐CH28CDR3、CDR2及びCDR1を備える。特定の実施形態では、CH28イムノグロブリンのドメイン(E)結合領域(VH1)は、VH‐CH28CDR3、CDR2及びCDR1を備える。特定の実施形態では、CH44イムノグロブリンのドメイン(A)結合領域(VL1)は、VL‐CH44CDR3、CDR2及びCDR1を備える。特定の実施形態では、CH44イムノグロブリンのドメイン(E)結合領域(VH1)は、VH‐CH44CDR3、CDR2及びCDR1を備える。
【0016】
特定の実施形態では、上記ドメイン(A)は、VL‐A32、VL‐7B2、VL‐CH28又はVL‐CH44を備える。特定の実施形態では、上記ドメイン(E)は、VH‐A32、VH‐7B2、VH‐CH28、VH‐CH44を備える。
【0017】
特定の実施形態では、上記第1のポリペプチドは、配列番号9、配列番号13、配列番号17、配列番号21、配列番号25、又は配列番号44を備える。特定の実施形態では、上記第2のポリペプチドは、配列番号11、配列番号15、配列番号19、配列番号23、配列番号27、又は配列番号45を備える。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は相補的な第2のポリペプチドを備え、上記第2のポリペプチドは、配列番号11、配列番号15、配列番号19、配列番号23、配列番号27、又は配列番号45を備える。
【0018】
特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、配列番号9、配列番号13、配列番号17、配列番号21、配列番号25又は配列番号44の上記第1のポリペプチドと、配列番号11、配列番号15、配列番号19、配列番号23、配列番号27又は配列番号45の上記第2のポリペプチドとを備える。
【0019】
特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、配列番号9の上記第1のポリペプチドと、配列番号11の上記相補的な第2のポリペプチドとを備える。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、配列番号13の上記第1のポリペプチドと、配列番号15の上記相補的な第2のポリペプチドとを備える。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、配列番号17の上記第1のポリペプチドと、配列番号19の上記相補的な第2のポリペプチドとを備える。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、配列番号21の上記第1のポリペプチドと、配列番号23の上記相補的な第2のポリペプチドとを備える。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、配列番号25の上記第1のポリペプチドと、配列番号27の上記相補的な第2のポリペプチドとを備える。
【0020】
特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、配列番号9、配列番号13、配列番号17、配列番号21、配列番号25、又は配列番号44の上記第1のポリペプチドと、配列番号11、配列番号15、配列番号19、配列番号23、配列番号27、又は配列番号45の上記第2のポリペプチドとで本質的に構成される。
【0021】
特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、配列番号9、配列番号13、配列番号17、配列番号21、配列番号25、又は配列番号44の上記第1のポリペプチドと、配列番号11、配列番号15、配列番号19、配列番号23、配列番号27、又は配列番号45の上記第2のポリペプチドとで構成される。
【0022】
特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、配列番号46、47及び48を備える。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、配列番号46、47及び48で本質的に構成される。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、配列番号46、47及び48で構成される。特定の実施形態では、上記二重特異性分子の上記第1のポリペプチドは配列番号46を備え、上記二重特異性分子の上記第2のポリペプチドは配列番号47を備え、上記二重特異性分子の上記第3のポリペプチドは配列番号48を備える。
【0023】
特定の態様では、本発明は、上記二重特異性分子のいずれか1つ、又は上記二重特異性分子のいずれの組み合わせを含む、組成物を提供する。特定の実施形態では、上記組成物は、HIV‐1抗体A32、HIV‐1抗体7B2、HIV‐1抗体CH28、HIV‐1抗体CH44の結合特異性を有する第1のアームと、CD3又はCD16を標的化する第2のアームとを備える二重特異性分子を含む、組成物を含む。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、Fc部分、又は血清半減期を延長する他のいずれの修飾を含む。特定の実施形態では、上記組成物は更に、HIV‐1抗体A32、HIV‐1抗体7B2、HIV‐1抗体CH28、HIV‐1抗体CH44の結合特異性を有する第1のアームと、CD3又はCD16を標的化する第2のアームとを備える第2の二重特異性分子を含み、ここで上記第1の二重特異性分子と上記第2の二重特異性分子とは異なる。
【0024】
特定の態様では、本発明は、必要とする被験者においてHIV‐1感染を治療又は予防するための方法を提供し、上記方法は:本発明の二重特異性分子のうちのいずれか1つ又は上記二重特異性分子のいずれの組み合わせを治療的有効量で含む組成物を、上記被験者に投与するステップを含む。特定の実施形態では、本方法は、潜伏活性化剤を投与するステップを更に含む。いくつかの実施形態では、上記潜伏活性化剤は、ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、ジスルフィラム、JQ1、ブリオスタチン、PMA、イノモマイシン、又はこれらのいずれの組み合わせである。
【0025】
特定の態様では、本発明は、本発明の二重特異性分子をエンコードするヌクレオチドを含む核酸を提供する。特定の態様では、本発明は、本発明の二重特異性分子をエンコードするヌクレオチドを含む核酸を含むベクターを提供する。また、上記二重特異性分子をエンコードする核酸を含むベクターを含む組成物も提供される。特定の態様では、本発明は、本発明の二重特異性分子をエンコードするベクター又は核酸を含む細胞株を提供し、上記ベクターは、本発明の二重特異性分子の発現のためのポリペプチド鎖、例えばポリペプチド鎖1及びポリペプチド鎖2、又はポリペプチド鎖1、ポリペプチド鎖2及びポリペプチド鎖3をエンコードする。特定の実施形態では、上記ベクターは、遺伝子送達及び発現に好適である。特定の実施形態では、上記ベクターはアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス系ベクター、又はこれらの組み合わせである。
【0026】
特定の態様では、本発明は、二重親和性標的転換試薬(dual affinity retargeting reagent:DART)を有するポリペプチドを含む、二重特異性分子を提供し、上記DARTは、互いに対して共有結合した第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖を備えるダイアボディ分子を含み:
(A)上記第1のポリペプチド鎖は:
(i)第1のエピトープ(1)に対して特異的な第1のイムノグロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL1)を備える、ドメイン(A)であって、上記第1のVL1は、A32、7B2、CH27、CH28、又はCH44 HIV‐1抗体からのVL若しくはVLCDR1、VLCDR2及びVLCDR3を含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなる、ドメイン(A);
(ii)第2の標的、例えばエピトープ(2)に対して特異的な、第2のイムノグロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH2)を備える、ドメイン(B)であって、上記ドメイン(A)及び上記ドメイン(B)は、ペプチドリンカーによって互いから隔てられている、ドメイン(B);並びに
(iii)ヘテロ二量体促進ドメインを備える、ドメイン(C);
を備え;
(B)上記第2のポリペプチド鎖は:
(i)上記エピトープ(2)に対して特異的な、上記第2のイムノグロブリンの軽鎖可変ドメインの結合領域(VL2)を備える、ドメイン(D);
(ii)上記第1のエピトープ(1)に対して特異的な、上記第1のイムノグロブリンの重鎖可変ドメインの結合領域(VH1)を備える、ドメイン(E)であって、上記第1のVH1は、A32、7B2、CH27、CH28、又はCH44 HIV‐1抗体からのVH若しくはVHCDR1、VHCDR2及びVHCDR3を含むか、これらから本質的になるか、又はこれらからなり、上記ドメイン(D)及び上記ドメイン(E)は、ペプチドリンカーによって互いから隔てられている、ドメイン(E);並びに
(iii)ヘテロ二量体促進ドメインを備える、ドメイン(F);
を備え;
上記ドメイン(A)及び上記ドメイン(B)は、互いと連結してエピトープ結合部位を形成せず;
上記ドメイン(D)及び上記ドメイン(E)は、互いと連結してエピトープ結合部位を形成せず;
上記ドメイン(A)及び上記ドメイン(E)は連結して、上記A32、7B2、CH27、CH28、又はCH44 HIV‐1抗体エピトープ(1)に結合する結合部位を形成し;
上記ドメイン(B)及び上記ドメイン(D)は連結して、上記第2の標的、例えばエピトープ(2)に結合する結合部位を形成する。
【0027】
特定の実施形態では、本発明は二重特異性分子を提供し、ここでHIV抗体VH及びVLドメインと、CD3及びCD16 VH及びVLドメインとは、配向が異なっている。例えば非限定的な実施形態では、ポリペプチド鎖1のVL1ドメインはCD3からのものであり、VH2ドメインはHIVエンベロープ結合抗体からのものである。この実施形態では、ポリペプチド2のVH1ドメインはCD3からのものであり、VL2ドメインはHIVエンベロープ結合抗体からのものである。
【0028】
特定の態様では、本発明は、HIV‐1エンベロープ及びCD3のエピトープに対して特異的に結合できる二重特異性分子を提供し、上記二重特異性分子は、互いに対して共有結合した第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖を備え:
A.上記第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に:
i.ドメイン1であって:
(1)CD3に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLCD3)を含む、サブドメイン(1A);及び
(2)HIV‐1に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHHIV‐1)を含む、サブドメイン(1B)
を備え、
上記サブドメイン1A及び1Bは、ペプチドリンカー(例えば配列番号1)によって互いから隔てられている、ドメイン1;
ii.ドメイン2であって、上記ドメイン2は、Eコイルドメイン(例えば配列番号7)又はKコイルドメイン(例えば配列番号8)であり、上記ドメイン2は、ペプチドリンカー(配列番号2)によって上記ドメイン1から隔てられている、ドメイン2
を備え;
B.上記第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に:
i.ドメイン1であって:
(1)HIV‐1に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLHIV‐1)を含む、サブドメイン(1A);及び
(2)CD3に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHCD3)を含む、サブドメイン(1B)
を備え、
上記サブドメイン1A及び1Bは、ペプチドリンカー(例えば配列番号1)によって互いから隔てられている、ドメイン1;並びに
ii.ドメイン2であって、上記ドメイン2は、Kコイルドメイン(例えば配列番号8)又はEコイルドメイン(配列番号7)であり、上記ドメイン2は、ペプチドリンカー(配列番号2)によって上記ドメイン1から隔てられており、また上記第1のポリペプチド鎖の上記ドメイン2及び上記第2のポリペプチド鎖の上記ドメイン2は、両方ともEコイルドメイン、又は両方ともKコイルドメインではない、ドメイン2
を備え:
(a)上記第1のポリペプチド鎖の上記VLドメイン及び上記第2のポリペプチド鎖の上記VHドメインは、CD3のエピトープに特異的に結合できる抗原結合ドメインを形成し;
(b)上記第2のポリペプチド鎖の上記VLドメイン及び上記第1のポリペプチド鎖の上記VHドメインは、HIV‐1エンベロープに特異的に結合できる抗原結合ドメインを形成する。
【0029】
HIV‐1エンベロープ及びCD16のエピトープに対して特異的に結合できる二重特異性分子であって、上記二重特異性分子は、互いに対して共有結合した第1のポリペプチド鎖及び第2のポリペプチド鎖を備え:
A.上記第1のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に:
i.ドメイン1であって:
(1)CD16に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLCD16)を含む、サブドメイン(1A);及び
(2)HIV‐1に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHHIV‐1)を含む、サブドメイン(1B)
を備え、
上記サブドメイン1A及び1Bは、ペプチドリンカー(例えば配列番号1)によって互いから隔てられている、ドメイン1;
ii.ドメイン2であって、上記ドメイン2は、Eコイルドメイン(配列番号7)又はKコイルドメイン(例えば配列番号8)であり、上記ドメイン2は、ペプチドリンカー(配列番号2)によって上記ドメイン1から隔てられている、ドメイン2
を備え;
B.上記第2のポリペプチド鎖は、N末端からC末端への方向に:
i.ドメイン1であって:
(1)HIV‐1に結合できるモノクローナル抗体のVLドメイン(VLHIV‐1)を含む、サブドメイン(1A);及び
(2)CD16に結合できるモノクローナル抗体のVHドメイン(VHCD16)を含む、サブドメイン(1B)
を備え、
上記サブドメイン1A及び1Bは、ペプチドリンカー(例えば配列番号1)によって互いから隔てられている、ドメイン1;並びに
ii.ドメイン2であって、上記ドメイン2は、Kコイルドメイン(例えば配列番号8)又はEコイルドメイン(例えば配列番号7)であり、上記ドメイン2は、ペプチドリンカー(配列番号2)によって上記ドメイン1から隔てられており、また上記第1のポリペプチド鎖の上記ドメイン2及び上記第2のポリペプチド鎖の上記ドメイン2は、両方ともEコイルドメイン、又は両方ともKコイルドメインではない、ドメイン2
を備え:
(a)上記第1のポリペプチド鎖の上記VLドメイン及び上記第2のポリペプチド鎖の上記VHドメインは、CD16のエピトープに特異的に結合できる抗原結合ドメインを形成し;
(b)上記第2のポリペプチド鎖の上記VLドメイン及び上記第1のポリペプチド鎖の上記VHドメインは、HIV‐1エンベロープに特異的に結合できる抗原結合ドメインを形成する。
【0030】
特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、そのHIV‐1エンベロープが由来するHIV抗体のようなHIV‐1エンベロープに結合する。特定の実施形態では、上記二重特異性分子はA32‐HIV‐1エンベロープエピトープに結合し、即ち上記二重特異性分子は、A32抗体のようなHIV‐1エンベロープ、及びCD3又はCD16に結合する。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、7B2‐HIV1エンベロープエピトープ、及びCD3又はCD16に結合する。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、CH27‐HIV‐1エンベロープエピトープ、及びCD3又はCD16に結合する。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、CH28‐HIV‐1エンベロープエピトープ、及びCD3又はCD16に結合する。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、CH44‐HIV‐1エンベロープエピトープ、及びCD3又はCD16に結合する。
【0031】
特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、A32 HIV‐1エンベロープ抗体の結合特異性を有する。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、7B2 HIV‐1エンベロープ抗体の結合特異性を有する。上記二重特異性分子は、CH27 HIV‐1エンベロープ抗体の結合特異性を有する。上記二重特異性分子は、CH28 HIV‐1エンベロープ抗体の結合特異性を有する。特定の実施形態では、上記二重特異性分子は、CH44 HIV‐1エンベロープ抗体の結合特異性を有する。
【0032】
特定の実施形態では、本発明の二重特異性分子は、本明細書(例えば表2及び表3)に記載の配列を含むか、上記配列から本質的になるか、又は上記配列からなる。
【0033】
特定の実施形態では、本発明の二重特異性分子は配列番号9及び11;配列番号13及び15;配列番号17及び19;配列番号21及び23;配列番号25及び27;配列番号44及び45(表2及び表3参照)を含むか、上記配列から本質的になるか、又は上記配列からなる。
【0034】
特定の態様では、本発明は、本明細書に記載の二重特異性分子のうちのいずれか、又は上記二重特異性分子の組み合わせを含む組成物を提供する。特定の実施形態では、これらの組成物は、治療的使用のための医薬組成物として処方される。
【0035】
特定の態様では、本発明は、本発明の二重特異性分子をエンコードする核酸を対象とする。特定の実施形態では、これらの核酸はベクターに含まれ、プロモータに作用可能に連結する。特定の態様では、本発明は、本発明の二重特異性分子の発現のための核酸を含む細胞株又は単離された細胞を提供する。
【0036】
特定の態様では、本発明は、HIV感染を治療又は予防する方法において使用するための、本発明の二重特異性分子又は上記二重特異性分子をエンコードする核酸を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、これらの方法は更に、潜伏活性化試薬を投与するステップを含む。上記潜伏活性化試薬の非限定的な例としては、例えばボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、ジスルフィラム、JQ1、ブリオスタチン、PMA、イノモマイシン、又はこれらのいずれの組み合わせといった、HDAC阻害剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、この併用療法は、潜伏的に感染しているHIV細胞のプールを標的とする。
【0037】
特定の態様では、本発明は、被験者のHIV感染を治療又は予防する方法を提供し、上記方法は、本発明の二重特異性分子のうちのいずれか1つ、又は上記二重特異性分子の組み合わせを含む組成物を、治療的に十分な量で、上記被験者に投与するステップを含む。特定の実施形態では、本方法は更に、潜伏活性化剤を投与するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、ADCC仲介型mAbの効力を示す。22個のHIV‐1 IMCに対する5つのCHAVI mAbのADCC活性を、特異的殺滅の最大パーセンテージとして報告している。各点は、個々のIMCに対する、mAbの各群に関する全ての陽性結果の平均活性を表す。線は、平均±標準偏差を表す。黒色の線は、陽性応答に関するカットオフを表す。
図2図2は、抗HIV‐1‐DART仲介型細胞毒性活性を示す。HIV‐1血清陰性ドナーからの活性化CD4+T細胞に、HIV‐1サブタイプB BaL、AE CM235及びC 1086.c IMC(上から下)を感染させた。これらの細胞を、エフェクタ:標的細胞比33:1において、6、24及び48時間にわたって、6つの濃度の抗HIV‐1(A32xCD3◆及び7B2xCD3■)並びに対照(4420×CD3●)DARTの存在下で、自己休止CD8T細胞を用いてインキュベートした。その結果を、各時点において観察される特異的殺滅の最大パーセンテージとして報告している。
図3図3は、抗HIV‐1 BaL DART仲介型細胞毒性活性の用量依存を示す。HIV‐1血清陰性ドナーからの活性化CD4+T細胞に、HIV‐1サブタイプB BaLを感染させた。これらの細胞を、エフェクタ:標的細胞比33、11及び3:1(上から下)において、48時間にわたって、6つの濃度の抗HIV‐1(A32xCD3◆及び7B2xCD3■)並びに対照(4420×CD3●)DARTの存在下で、自己休止CD8T細胞を用いてインキュベートした。その結果を、特異的殺滅のパーセンテージとして報告している。
図4図4は、50%特異的殺滅に到達するためのDART濃度を示す。HIV‐1血清陰性ドナーからの活性化CD4+T細胞に、HIV‐1サブタイプB BaL、AE CM235及びC 1086.c IMCを感染させた。これらの細胞を、エフェクタ:標的細胞比33:1において、48時間にわたって、6つの濃度の抗HIV(A32xCD3:赤色及び7B2xCD3:青色)並びに対照(4420×CD3:黒色)DARTの存在下で、自己休止CD8T細胞を用いてインキュベートした。各バーは、各感染標的集団に対する50%特異的殺滅を検出するために必要な濃度を表す。
図5図5は、CH27、CH28及びCH44 HIV‐1抗体の配列を示す。CDRがこれらの配列(配列番号57〜74)中に示されている。
図6図6は、A32抗体のVH及びVL鎖をエンコードするヌクレオチド配列、並びにA32のVH及びVL鎖のアミノ酸配列(順に配列番号75〜78)を示す。
図7図7は、7B2抗体のVH及びVL鎖をエンコードするヌクレオチド配列、並びに7B2のVH及びVL鎖のアミノ酸配列(順に配列番号79〜82)を示す。
図8図8A‐Cは、本発明の二重特異性分子の構造及びドメインを示す。図8Aは、2つのポリペプチド鎖からなる二重特異性分子の構造を示す。図8B及び8Cは、Fcドメインを有する3鎖二重特異性分子の第1、第2及び第3のポリペプチド鎖の2つのバージョンの構造を示す(バージョン1、図8B;バージョン2、図8C)。
図9図9は、様々な配列:リンカー1(配列番号1);リンカー2(配列番号2);ヘテロ二量体促進ドメイン並びにKコイル及びEコイル配列(配列番号3‐6、7及び8);リンカー3(DKTHTCPPCP(配列番号49));リンカー4‐‐配列番号39、40;CH2‐CH3断片‐‐配列番号41‐43;CH3VH鎖-配列番号51;CD3VL鎖‐‐配列番号52、CD16VH鎖‐配列番号53;CH16VL鎖‐配列番号54;7B2VL鎖‐配列番号55;7b2VH鎖‐配列番号56を示す。配列番号9‐38、44‐48は、様々な二重特異性抗体を示す(表2参照)。
図10図10A‐10Cは、HIVxCD3 DART構造を示す。(図10A‐10B)これらのDART分子は、抗CD3結合アーム(hXR32)と組み合わさった、抗HIV‐1結合アーム(A32又は7B2)を含有する。これらは2つのポリペプチド鎖:抗HIVのVHに連結した抗CD3のVLを有する第1のもの;抗CD3のVHに連結した抗HIVのVLを有する第2のものからなる。これらの鎖のカルボキシ末端は、鎖間ジスルフィド結合と、対になった、反対の電荷を有するEコイル/Kコイル二量体化ドメインとを有する。対照DARTは、上記アームのうちの1つを、抗FITC抗体(4420)又は抗RSV抗体パリビズマブ(RSV)配列由来の無関係のもので置換されている。(図10C)2つの別個の抗原への同時のHIVxCD3 DARTの結合、及びEnv発現HIV‐1感染細胞(標的)の溶解のための細胞毒性T細胞(エフェクタ)の標的転換の概略図。
図11図11A‐11Fは、HIVxCD3 DART結合特性を示す。図11A‐11Cは、ELISAによって、抗原結合を示す。ヒトCD3タンパク質(図11A)、JR‐FL gp140タンパク質(図11B)、又は同時にJR‐FL gp140及びCD3タンパク質両方(図11C)に対する、DART結合。図11D‐11Fは、FACSによって、細胞表面結合を示す。CD3を発現する初代ヒトT細胞(図11D)、HIV‐1 Env、CM244、サブタイプAEを発現するHEK293‐D371細胞(図11E)、又はCD3及びHIV‐1 Env、HXBC2、サブタイプBを発現するJurkat522‐F/Y細胞(図11F)に対するDART結合。データを、平均蛍光強度(mean fluorescence intensity:MFI)として報告する。細胞のCD3及びEnv発現特性は丸括弧内で報告されている。A32及び7B2はそれぞれHIV‐1 gp120及びgp41を認識する標的化アームであり;CD3はCD3εを認識するエフェクタアームであり;4420は無関係な陰性対照アームである。
図12図12A‐12Hは、Env+標的細胞のHIVxCD3 DART標的転換T細胞殺滅を示す。図12Aは、LDH放出アッセイによって測定された細胞溶解を用いた、48時間にわたるE:T比10:1におけるヒトT細胞の存在下でのEnv+ Jurkat522‐F/Y細胞のDART濃度依存性殺滅を示し、EC50値は、A32xCD3及び7B2xCD3それぞれに関して230及び160pg/mLであった。対照DART(A32×4420、7B2×4420、4420×CD3)は不活性であった。図12Bは、LDH放出アッセイによって測定された細胞溶解を用いた、エフェクタT細胞の不在下でのEnv+ Jurkat522‐F/Y細胞のDART仲介型殺滅の欠如を示す。図12Cは、LDH放出アッセイによって測定された細胞溶解を用いた、48時間にわたるE:T比10:1における、Env JurkatΔKS細胞のDART標的転換殺滅の欠如を示す。図12Dは、LUMアッセイによって測定された細胞溶解を用いた、48時間にわたるE:T比10:1におけるヒトT細胞の存在下でのEnv+ Jurkat522‐F/Y GF細胞のDART濃度依存性殺滅を示し;EC50値は、A32xCD3及び7B2xCD3それぞれに関して172及び147pg/mLであった。図12E‐12Gは、LUMアッセイによって測定された細胞溶解を用いた、異なるE:T比(10:1、5:1、1:1)及びインキュベーション時間(24、48、72時間)におけるEnv+ Jurkat522‐F/Y GF細胞の7B2xCD3 DART濃度依存性標的転換T細胞殺滅を示す。図12Hは、異なるE:T比における7B2xCD3(図12E‐12Gからのデータ)による、最大細胞溶解活性の時間経過を示す。
図13図13A‐13Fは、異なる複数のHIV‐1 IMCサブタイプに感染したCD4+細胞に対する、HIVxCD3 DART標的転換T細胞の細胞毒性を示す。図13A‐13Cは、DART濃度依存性を示す。HIV‐1血清陰性ドナーからの活性化CD4+T細胞に、HIV‐1サブタイプB BaL(図13A)、サブタイプAE CM235(図13B)又はサブタイプC 1086.C(図13C)IMCを感染させ、E:T比33:1(中実の記号)又はエフェクタ細胞の不在下(E:T比0:1)(中空の記号)において、自己休止CD8+T細胞の存在下で、A32xCD3(赤色の円)、7B2xCD3(青色の正方形)又は4420×CD3(黒色の菱形)を用いて48時間インキュベートした。データを、特異的溶解のパーセンテージ(%SL)として報告する。DART濃度は、0.001〜1000ng/mLの範囲であった。図13D‐13Fは時間経過を示す。データは、HIV‐1サブタイプB BaL(図13D)、サブタイプAE CM235(図13E)又はサブタイプC 1086.C(図13F)IMCに感染させ、E:T比33:1で自己休止CD8T+細胞を用いてインキュベートしたCD4+T細胞に対して、各DARTに関して6、24及び48時間において観察された最大%SLを表す。
図14図14A‐14Hは、HIVxCD3 DARTが、CD8+T細胞の特異的脱顆粒化を誘発することを示す。図14A‐14Dは、6時間にわたるDARTの存在下でのHIV‐1 BaL感染標的細胞を用いたインキュベーション後に、生存/CD3+CD8+CD107+T細胞を識別するための、ゲート戦略の概略図を示す。(図14E‐14G)点によるプロットは、1ng/mLの4420×CD3(図14E)、7B2xCD3(図14F)又はA32xCD3(図14G)の存在下において観察された生存/CD3+CD8+CD107+細胞のパーセンテージを表す。図14Hは、E:T比33:1を用いた、自己感染CD4+T細胞を用いた6時間のインキュベーション後に、5体のHIV‐1血清陰性の健康なドナーそれぞれにおいて観察された、CD3+CD4CD8+CD107+T細胞の頻度を示す。各記号は、各ドナーに関して実施した二重刺激の平均を表す。線は、平均±標準偏差を表す。*は、ダネットの多重比較検定後のp<0.05を示す。
図15図15A‐15Cは、健康なHIV血清陰性ドナーからの自己JR‐CSF感染CD4+T細胞のHIVxCD3 DART標的転換CD8+T細胞殺滅を評価するための、ウイルスクリアランスアッセイを示す。HIV血清陰性ドナーからの活性化CD4+T細胞に、HIV‐1クローンJR‐CSFを感染させた後、7日間にわたり、100ng/mLの濃度のHIVxCD3又は対照DARTの不在下(DARTなし)、又は存在下で、E:T比1:1において、自己休止CD8+T細胞を用いてインキュベートした。結果を、2体の健康なドナーに関して(図15A‐15B)、並びにウイルス複製を阻害するための共培養期間中のインテグラーゼ及び非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤の存在下の健康なドナー2に関して(図15C)、示す。各バーは、培養上清中で検出された絶対p24濃度を表す。エラーバーは、n=3の標準誤差平均(SEM)を表す。*は、ダネットの多重比較検定によるp<0.05を示す。
図16図16A‐16Hは、ウイルスクリアランスアッセイが、HIV感染ART抑制患者からのリンパ球を用いて、JR‐CSF又は自己残存(autologous reservoir:AR)ウイルス感染CD4+細胞のHIVxCD3 DART標的転換CD8+T細胞クリアランスを検出することを示す。HIV感染ART抑制患者からのCD4+欠失T細胞をPHAで活性化し、HIV‐1サブタイプBクローンJR‐CSF(図16A‐16C)又は自己残存(AR)ウイルス単離株(図16D‐16F)に感染させた後、7日間にわたり、100ng/mLの濃度のHIVxCD3(A32xCD3、7B2xCD3)又は対照(7B2×4420、4420×CD3)DARTの不在下(DARTなし)又は存在下で、自己CD8+Tエフェクタ細胞を用いずに(図16A、16D)、又はE:T比1:10(図16B、16E)若しくは1:1(図16C、16F)の自己CD8+Tエフェクタ細胞を用いて、インキュベートした。「コンボ(combo)」は、合計濃度100ng/mLの7B2xCD3及びA32xCD3の1:1混合を示す。各バーは、対数(感染標的細胞のみの対照のp24を試験条件のp24で除算)として計算された、培養上清中で検出されたp24のログ倍減少を示す。図16Gは、6時間にわたるDARTの存在下でのHIV‐1 JR‐CSF感染標的細胞を用いたインキュベーション後に、生存/CD3+CD4+CD107+エフェクタ(TFL4‐)T細胞を識別するための、ゲート戦略の概略図を示す。図16Hは、n=4患者における、示されているDART及びJR‐CSF感染標的を用いた6時間のインキュベーション後の生存/エフェクタ細胞(TFL4陰性)/CD3+/CD4+/107a+細胞の%を示す。エラーバーは、n=8(図16A‐16C、ただしコンボ:n=5及び7B2×4420:n=6を除く)、n=5(図16D‐16F)、及びn=4(図16G‐16H)のSEMを表す。*は、ダネットの多重比較検定によるp<0.05を示す。
図17図17A‐17Bは、HIVxCD3 DART標的転換CD8+T細胞活性を評価するための、潜伏クリアランスアッセイを示す。HIV感染ART抑制患者からの休止CD4+T細胞を、PHA(図17A)又はボリノスタット(図17B)を用いてインキュベートし、患者の潜伏残存のサイズに応じて12‐36個の複製ウェルに播種し、24時間(又は指示されている場合は最大96時間)にわたり、100ng/mLのHIVxCD3又は対照DARTの不在下又は存在下において、E:T比1:10の自己CD8+T細胞を用いて共培養した後、DARTを洗い流し、血清陰性ドナーからのCD8‐欠失PBMCを添加して、残留ウイルスを増幅した。15日目に、ELISAによって、p24の存在又は不在に関してウェルを評価した。「コンボ」は、合計濃度100ng/mLの7B2xCD3及びA32xCD3の1:1混合を示す。結果を、CD8+T細胞を添加しなかった対照に対して平準化された%ウイルス回復(陽性ウェルの数/播種した数の合計)として示す。NTは、図21に示す表による細胞の可用性の低さにより、試験を実施しなった条件を示す。
図18図18は、HIV‐1サブタイプ及び中和TierによるIMCのリストを示す。
図19図19は、A32xCD3及び7B2xCD3と組み換えEnv及びCD3タンパク質との結合に関する平衡解離定数(KD)を示す。
図20図20は、臨床的特徴を示す。
図21図21は、DARTが、JR‐CSF感染自己標的細胞に対して患者T細胞を標的転換すること、及び絶対p24濃度を示す。
図22図22は、DARTを用いた潜伏クリアランスアッセイにおける陽性ウェルの絶対数を示す。
図23図23は、ADCC仲介型mAbの効力及び幅広さを示す。A32(抗gp120 C1/C2)mAb(◆)及び7B2(抗gp41クラスタI)mAb(■)のADCC活性を、22個のHIV‐1 IMCそれぞれに対する特異的溶解の最大パーセンテージ(%SL)として報告する。各点は1つのHIV‐1 IMCを表す。1体のHIV‐1血清陽性(陽性対照:pos ctrl)及び1体の血清陰性(陰性対照;neg ctrl)ドナーからの血漿から得られた結果も報告する。線は、平均±標準偏差を表す。黒色の線は、陽性応答に関するカットオフを表す。
図24図24は、7B2及びA32 mAbの結合に影響を及ぼすことが公知であるHIV‐1 Env残基の保存を示す。gp41(gp160、598‐604位;免疫優性クラスタI)の7残基の直鎖配列は、7B2 mAbに対する結合部位を含有することが報告されている(28、29)。(点突然変異誘発研究に基づいて)A32 mAb結合に影響を及ぼすことが公知であるgp120 C1‐C4中の不連続残基は、52、53、66、69、83、86、96、100、103、107、112、215、217、252、256、262、427及び479位に発生する(37、39、68)。ロスアラモス国立研究所(Los Alamos National Laboratory:LANL)HIV1 Envアミノ酸選別ウェブアラインメント(amino acid filtered web alignment)(全てのサブタイプの表現を伴う4556個のHIV‐1 Env配列からなるデータベース)におけるこれらの残基の保存を、QuickAlign分析(http://www.hiv.lanl.gov/content/sequence/QUICK_ALIGNv2/QuickAlign.html)によって評価した。Envの各位における残基の高さは、HIV‐1単離株間における上記残基の分布頻度に比例する。残基は、疎水性に応じて着色される:黒色、親水性;緑、中性;青、疎水性。N5‐i5のFab断片(A32様mAb)と複合体化したCD4安定化gp120コアの結晶構造に基づいて、(C1‐C2内に位置する)52、53、69、103、107及び217位の残基は、直接エピトープ接点である(27)。
図25図25は、A32×4420及び7B2×4420対照DARTの細胞表面Env結合を示す。HIV‐1Env、CM244、サブタイプAEを発現するHEK293‐D371細胞に結合するDARTを測定し、データを、平均蛍光強度(MFI)として報告する。A32及び7B2は、それぞれHIV‐1 gp120及びgp41を認識する標的化アームであり;4420は、無関係な陰性対照アームである。
図26図26A‐26Dは、HIVxCD3 DART仲介型T細胞活性化が、標的細胞との共会合に左右されることを示す。健康な血清陰性ドナーからの未刺激CD4+又はCD8+T細胞を、48時間にわたり、40、0.32、及び0ng/mLの対照(RSVxCD3)又はHIVxCD3(A32xCD3、7B2xCD3)DARTの不在下又は存在下において、Jurkat‐522 F/Y細胞株を発現するEnvを用いて(図26A、26C)及び用いずに(図26B、26D)、インキュベートした。CD8+図26A‐26B)及びCD4+図26C‐26D)T細胞活性化を、CD25 Ab細胞による染色によって評価した。データを、活性化(CD25+)T細胞の頻度(%)として報告する。各バーは、2体の異なるドナーから得られた結果の平均を表す。
図27図27は、HIV DARTがHIV‐1 IMC感染CD4+T細胞に特異的に結合することを示す。「方法」のセクションにおいて報告するように、健康なHIV‐1血清陰性ドナーから得られた活性化CD4+T細胞を、48時間にわたり、HIV‐1サブタイプB BaL、AE CM235、及びC 1086.Cを示すHIV‐1 IMCに感染させた。非感染CD4+T細胞(模擬)を陰性対照として利用した。これらの細胞を、7B2×4420及びA32×4420 DARTを用いて染色し、ここではCD3受容体への結合を回避するために、CD3アームが無関係な4420タンパク質に置換された。DARTを用いたインキュベーション後、これらの細胞を、二次抗EK‐IgG2a‐ビオチン化複合体で染色することにより、DARTの結合を明らかにした。二次マウス抗ヒトIgG mAbを用いた間接染色技術を利用した、7B2及びA32 mAbによる染色を、対照として実施した。二次蛍光標識抗ヒトIgG Ab及びパリビズマブmAbを、陰性対照として利用した。「方法」のセクションにおいて報告するように、感染細胞の頻度を、抗p24 mAbを用いた細胞内染色によって決定した。各バーは、上でグラフで示したようなIMCに感染したCD4+T細胞及び対照を表す。結果を、x軸上に列挙された、DART、mAb及び対照のそれぞれによって染色された生存可能な(p24+)CD4+T細胞の頻度(%)として報告する。
図28図28A‐28Dは、HIV‐1感染ドナーからのPBMCを用いた、追加の標的細胞の不在下における、T細胞生存率又は活性化状態に対するHIVxCD3 DARTの影響の欠如を示す。HIV感染ART抑制患者からの未刺激CD4+又はCD8+T細胞を、7日にわたり、100ng/mLの対照(4420×CD3、7B2×4420、A32×4420)又は活性(A32xCD3、7B2xCD3)DARTの不在下又は存在下でインキュベートした。(図28A‐28B)T細胞生存率を、アネキシンV/7‐AADに関して細胞を染色することによって評価した。生存細胞は、アネキシンV及び7‐AAD陰性の細胞として識別した。(図28C‐28D)T細胞活性化を、HLA‐DR及びCD25発現に関して細胞を染色することによって評価した。両分析に関するデータ点は、3回の別個の機会に実施された、n=3患者からのものである。エラーバーは、標準誤差平均を表す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
単独の、又は潜伏逆転剤と組み合わせた高活性抗レトロウイルス療法(HAART)は、潜伏感染細胞のプールを減少させることはできない。これは、HIV‐1潜伏感染細胞を排除するCD8+T細胞の能力が限られているためである。二重親和性再標的化タンパク質(DART)は、2つの別個の抗原に同時に結合できる、二重特異性の抗体ベースの分子である。HIV‐1 DARTは、エフェクタ細胞結合アームと組み合わされたHIV‐1結合アームを含有し、細胞毒性CD3+T細胞を標的転換して、HIV感染細胞に会合してこれを殺滅させるように設計されている。モノクローナル抗体(mAb)のパネルを研究して、上記モノクローナル抗体が、22個の異なる単離株に対してADCCを仲介する大きさ及び幅広さを決定した。目標は:1)DARTのHIV‐1結合アームとして使用できるmAbを同定すること;2)HIV‐1感染細胞の殺滅を仲介する能力に関して、得られたDARTを試験することである。本明細書では、HIV‐1感染性分子クローン(Infectious Molecular Clone:IMC)感染標的細胞に対する、ADCC仲介mAb及び得られたDARTの異なる複数の群の効力に関連するデータを提供する。
【0040】
抗体及び他の結合分子
抗体
本発明は、ポリクローナル又はモノクローナル抗体、変異体、必要な特異性の抗原認識部位を有する抗体部分を備える融合タンパク質、ヒト化抗体及びキメラ抗体、並びに必要な特異性の抗原認識部位を備える免疫グロブリン分子の他のいずれの修飾構成を提供する。本出願全体を通して、抗体の軽鎖及び重鎖のアミノ酸残基の番号付与は、非特許文献18中のもののようなEUインデックスに従ったものである。いくつかの実施形態では、抗体の抗原結合性断片は、少なくとも1つの抗原認識部位を有する抗体の一部分である。断片は、例えばFab、Fab’、F(ab’)2Fv及び単鎖scFvを含むが、これらに限定されない。
【0041】
モノクローナル抗体は、当該技術分野において公知である。特定の実施形態では、モノクローナル抗体は、完全なモノクローナル抗体及び完全長モノクローナル抗体だけでなく、これらの断片(Fab、Fab'、F(ab')2、Fv等)、単鎖(scFv)、その突然変異体、抗体部分を備える融合タンパク質、ヒト化モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、及び必要な特異性及び抗原への結合能力を有する抗原認識部位を備える免疫グロブリン分子の他のいずれの修飾構成を包含する。モノクローナル抗体は、抗原の源又は抗原を作製する方法(例えば、ハイブリドーマ、ファージ選択、組み換え発現、遺伝子導入動物等による)に関して、限定されていない。
【0042】
モノクローナル抗体の作製方法は当該技術分野において公知である。特定の実施形態では、上記抗体は、当該技術分野で公知のいずれの手段によって、組み換え産生できる。一実施形態では、このような抗体を配列し、続いてポリヌクレオチド配列を発現又は繁殖のためのベクターにクローン化する。関心対象の抗体をエンコードする配列は、宿主細胞中のベクター中に保持され、続いて上記宿主細胞を、将来使用するために膨張させて冷凍できる。このような抗体のポリヌクレオチド配列は、本発明の二重特異性分子及びキメラ抗体、ヒト化抗体又はイヌ化抗体を生成して、抗体の親和性若しくは他の特徴を改善するための、遺伝子操作のために使用してよい。抗体をヒト化する際の一般原理は、抗体の抗原結合部分の塩基配列を保持しながら、抗体の非ヒト残部をヒト抗体配列と交換するステップを伴う。モノクローナル抗体をヒト化するためには、4つの一般的なステップが存在する。上記ステップは以下の通りである:(1)開始抗体の軽鎖及び重鎖可変ドメインのヌクレオチド及び予測されるアミノ酸配列を決定するステップ;(2)ヒト化抗体又はイヌ化抗体を設計するステップ、即ちヒト化又はイヌ化プロセス中に使用する抗体フレームワーク領域を決定するステップ;(3)実際のヒト化又はイヌ化法/技術;並びに(4)ヒト化抗体のトランスフェクション及び発現。例えば米国特許第4,816,567号;米国特許第5,807,715号;米国特許第5,866,692号;及び米国特許第6,331,415号を参照。
【0043】
二重特異性抗体、多重特異性ダイアボディ及びDART(商標)ダイアボディ
非単一特異性「ダイアボディ(diabody)の提供は、異なるエピトープを発現する複数の細胞を共連結(co‐ligate)して共存させることができる能力という、抗体に対する有意な利点を提供する。従って2価ダイアボディは、療法及び免疫診断を含む広範な用途を有する。2価性は、様々な用途におけるダイアボディの設計及び操作の大幅な柔軟性を可能とし、これにより、多量体抗原の結合活性の上昇、異なる複数の抗原の架橋、及び両標的抗原の存在に基づく特定の細胞タイプに対する指向性標的化を提供する。当該技術分野において公知のダイアボディ分子は、(〜50kDa以下の小さいサイズのダイアボディに関して)その高い結合価、低い解離率及び循環からの迅速な排除により、腫瘍撮像の分野での特定の使用も示している(Fitzgerald et al. (1997) “Improved Tumour Targeting By Disulphide Stabilized Diabodies Expressed In Pichia pastoris,” Protein Eng. 10:1221)。特に重要なのは、異なる細胞の共連結、例えば細胞毒性T細胞と腫瘍細胞との架橋である(Staerz et al. (1985) “Hybrid Antibodies Can Target Sites For Attack By T Cells,” Nature 314:628-631, and Holliger et al. (1996) “Specific Killing Of Lymphoma Cells By Cytotoxic T-Cells Mediated By A Bispecific Diabody,” Protein Eng. 9:299-305)。
【0044】
ダイアボディエピトープ結合ドメインはまた、CD19、CD20、CD22、CD30、CD37、CD40及びCD74といったB細胞の表面決定基を指向してよい(Moore, P.A. et al. (2011) “Application Of Dual Affinity Retargeting Molecules To Achieve Optimal Redirected T-Cell Killing Of B-Cell Lymphoma,” Blood 117(17):4542-4551; Cheson, B.D. et al. (2008) “Monoclonal Antibody Therapy For B-Cell Non-Hodgkin’s Lymphoma,” N. Engl. J. Med. 359(6):613-626; Castillo, J. et al. (2008) “Newer monoclonal antibodies for hematological malignancies,” Exp. Hematol. 36(7):755-768)。多くの研究において、エフェクタ細胞決定基(例えばFcγ受容体(FcγR))に対するダイアボディ結合は、エフェクタ細胞を活性化させることも発見された(Holliger et al. (1996) “Specific Killing Of Lymphoma Cells By Cytotoxic T-Cells Mediated By A Bispecific Diabody,” Protein Eng. 9:299-305; Holliger et al. (1999) “Carcinoembryonic Antigen (CEA)-Specific T-Cell Activation In Colon Carcinoma Induced By Anti-CD3 x Anti-CEA Bispecific Diabodies And B7 x Anti-CEA Bispecific Fusion Proteins,” Cancer Res. 59:2909-2916;国際公開第2006/113665号;国際公開第2008/157379号;国際公開第2010/080538号;国際公開第2012/018687号;国際公開第2012/162068号)。通常、エフェクタ細胞の活性化は、抗原に結合した抗体がFc‐FcγR相互作用によってエフェクタ細胞に結合することによってトリガされる。従ってこれに関して、ダイアボディ分子は、(例えば当該技術分野において公知の、又は本出願において例示されるいずれのエフェクタ機能アッセイ(例えばADCCアッセイ)において分析されるように)Fcドメインを備えるかどうかとは独立して、Igのような機能性を呈し得る。腫瘍とエフェクタ細胞とを架橋することによって、ダイアボディはエフェクタ細胞を腫瘍細胞近傍にもたらすだけでなく、効果的な腫瘍の殺滅をもたらす(例えばCao et al. (2003) “Bispecific Antibody Conjugates In Therapeutics,” Adv. Drug. Deliv. Rev. 55:171-197参照)。
【0045】
このような非単一特異性ダイアボディの形成は、2つ以上の別個の異なるポリペプチドの良好な集合を必要とする(即ち上記形成は、ダイアボディが、異なるポリペプチド鎖種のヘテロ二量体形成によって形成されることを必要とする)。この事実は、同一のポリペプチド鎖のホモ二量体形成によって形成される単一特異性ダイアボディとは対照的である。非単一特異性ダイアボディを形成するために少なくとも2つの異なるポリペプチド(即ち2つのポリペプチド種)を提供しなければならないため、及びこのようなポリペプチドのホモ二量体形成は不活性分子をもたらす(Takemura, S. et al. (2000) “Construction Of A Diabody (Small Recombinant Bispecific Antibody) Using A Refolding System,” Protein Eng. 13(8):583-588)ため、このようなポリペプチドの産生は、同一種のポリペプチド間での共有結合を防止するような方法で(即ちホモ二量体化を防止するように)達成しなければならない(Takemura, S. et al. (2000) “Construction Of A Diabody (Small Recombinant Bispecific Antibody) Using A Refolding System,” Protein Eng. 13(8):583-588)。従って本技術分野は、このようなポリペプチドの非共有結合的連結を教示している(例えばOlafsen et al. (2004) “Covalent Disulfide-Linked Anti-CEA Diabody Allows Site-Specific Conjugation And Radiolabeling For Tumor Targeting Applications,” Prot. Engr. Des. Sel. 17:21-27; Asano et al. (2004) “A Diabody For Cancer Immunotherapy And Its Functional Enhancement By Fusion Of Human Fc Domain,” Abstract 3P-683, J. Biochem. 76(8):992; Takemura, S. et al. (2000) “Construction Of A Diabody (Small Recombinant Bispecific Antibody) Using A Refolding System,” Protein Eng. 13(8):583-588; Lu, D. et al. (2005) “A Fully Human Recombinant IgG-Like Bispecific Antibody To Both The Epidermal Growth Factor Receptor And The Insulin-Like Growth Factor Receptor For Enhanced Antitumor Activity,” J. Biol. Chem. 280(20):19665-19672参照)。
【0046】
本技術分野は、非共有結合的に連結したポリペプチドで構成される二重特異性ダイアボディが不安定であり、非機能性モノマーへと容易に分解することを認識している(例えばLu, D. et al. (2005) “A Fully Human Recombinant IgG-Like Bispecific Antibody To Both The Epidermal Growth Factor Receptor And The Insulin-Like Growth Factor Receptor For Enhanced Antitumor Activity,” J. Biol. Chem. 280(20):19665-19672参照)。
【0047】
この課題をものともせず、本発明は、DART(商標)と呼ばれる、安定した共有結合ヘテロ二量体性非単一特異性ダイアボディを提供する(例えば米国公開特許第2014-0099318号;米国公開特許第2013-0295121号;米国公開特許第2010-0174053号及び米国公開特許第2009-0060910号;欧州公開特許第2714079号;欧州公開特許第2601216号;欧州公開特許第2376109号、欧州公開特許第2158221号、及び国際公開第2015/026894号;国際公開第2015/026892号;国際公開第2015/021089号;国際公開第2014/159940号;国際公開第2012/162068号;国際公開第2012/018687号;国際公開第2010/080538号;Moore, P.A. et al. (2011) “Application Of Dual Affinity Retargeting Molecules To Achieve Optimal Redirected T-Cell Killing Of B-Cell Lymphoma,” Blood 117(17):4542-4551; Veri, M.C. et al. (2010) “Therapeutic Control Of B Cell Activation Via Recruitment Of Fcgamma Receptor IIb (CD32B) Inhibitory Function With A Novel Bispecific Antibody Scaffold,” Arthritis Rheum. 62(7):1933-1943; Johnson, S. et al. (2010) “Effector Cell Recruitment With Novel Fv-Based Dual-Affinity Re-Targeting Protein Leads To Potent Tumor Cytolysis And in vivo B-Cell Depletion,” J. Mol. Biol. 399(3):436-449参照(以上の刊行物の内容は、その全体が参照によって本出願に援用される))。このようなダイアボディは、2つ以上の共有結合的に複合体化したポリペプチドを備え、1つ又は複数のシステイン残基を、採用した各ポリペプチド種中に組み込むステップを伴う。例えば、このような構造のC末端へのシステイン残基の追加は、ポリペプチド鎖間のジスルフィド結合を可能とすることが分かっており、これは、2価分子の結合特性に干渉することなく、得られるヘテロ二量体を安定化させる。
【0048】
いくつかの実施形態では、DART(商標)の2つのポリペプチドはそれぞれ3つのドメインを備える(図8A)。第1のポリペプチドは:(i)第1の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメイン(VL1)の結合領域を備えるドメイン;(ii)第2の免疫グロブリンの重鎖可変ドメイン(VH2)の結合領域を備える、第2のドメイン;並びに(iii)上記第2のポリペプチドとのヘテロ二量体化を促進する役割、及びダイアボディの第2のポリペプチドに対する第1のポリペプチドの共有結合を促進する役割を果たす、第3のドメインを備える。第2のポリペプチドは:相補的な第1のドメイン(VL2ドメイン);相補的な第2のドメイン(VH1ドメイン);並びに第1のポリペプチド鎖の第3のドメインと複合体化して、第1のポリペプチド鎖とのヘテロ二量体化及び共有結合を促進する、第3のドメインを含有する。このような分子は、安定かつ強力であり、2つ以上の抗原を同時に結合する能力を有する。これらの分子は、標的抗原を発現する細胞の標的転換T細胞(CD3)又はNK(CD16)細胞仲介型殺滅を促進できる。
【0049】
特定の態様では、本発明は、HIV‐1及びCD3、又はHIV‐1及びCD16に同時に結合できる、HIV‐1×CD3及びHIV‐1×CD16二重特異性1価ダイアボディ、並びにHIV‐1感染の治療におけるこのような分子の使用を対象とする。
【0050】
特定の実施形態では、本発明のHIV‐1×CD3及びHIV‐1×CD16二重特異性1価ダイアボディは、2つの異なるポリペプチド鎖からなり、上記2つの異なるポリペプチド鎖は互いに関連して、HIV‐1のエピトープに対して特異的な1つの結合部位、及びCD3又はCD16のエピトープに対して特異的な1つの結合部位を形成する(図8参照)ことにより、HIV‐1とCD3又はCD16とに同時に結合できる。従ってこれらのダイアボディは、CD3又はHIV‐1であってよい「第1の抗原(first antigen)」と、上記第1の抗原がCD3である場合はHIV‐1、上記第1の抗原がHIV‐1である場合はCD3である、「第2の抗原(second antigen)」とに結合する。あるいはこれらのダイアボディは、CD16又はHIV‐1であってよい「第1の抗原」と、上記第1の抗原がCD16である場合はHIV‐1、上記第1の抗原がHIV‐1である場合はCD16である、「第2の抗原」とに結合する。
【0051】
特定の実施形態では、図8に示すように、これら2つのポリペプチド鎖のうちの第1のものは、N末端からC末端への方向に、N末端、「第1の」抗原(CD3又はHIV‐1エンベロープ)の軽鎖可変ドメイン(VL)の抗原結合ドメイン、第2の抗原(上記第1の抗原がCD3であった場合はHIV‐1、上記第1の抗原がHIV‐1であった場合はCD3)の重鎖可変ドメイン(VH)の抗原結合ドメイン、ヘテロ二量体化促進ドメイン、及びC末端を含有する。介在リンカーペプチド(リンカー1)は、軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメインを、重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインから隔てる。特定の実施形態では、重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインは、介在リンカーペプチド(リンカー2)によってヘテロ二量体化促進ドメインに連結される。特定の実施形態では、上記2つのポリペプチド鎖のうちの第1のものは、N末端からC末端への方向において:VL第1の抗原‐リンカー1‐VH第2の抗原‐リンカー2‐ヘテロ二量体化促進ドメインを含有する。
【0052】
特定の実施形態では、これら2つのポリペプチド鎖のうちの第2のものは、N末端からC末端への方向において、N末端、第2の抗原の軽鎖可変ドメイン(VL)の抗原結合ドメイン、第1の抗原の重鎖可変ドメイン(VH)の抗原結合ドメイン、ヘテロ二量体化促進ドメイン、及びC末端を含有する。介在リンカーペプチド(リンカー1)は、軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメインを、重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインから隔てる。特定の実施形態では、重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインは、介在リンカーペプチド(リンカー2)によって、ヘテロ二量体化促進ドメインに連結される。特定の実施形態では、上記2つのポリペプチド鎖のうちの第2のものは、N末端からC末端への方向において:VL第2の抗原‐リンカー1‐VH第1の抗原‐リンカー2-ヘテロ二量体化促進ドメインを含有する。
【0053】
第1のポリペプチド鎖の軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメインは、第2のポリペプチド鎖の重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインと相互作用して、第1の抗原(即ちHIV‐1エンベロープ又はCD3/CD16)に対して特異的な機能性抗原結合部位を形成する。同様に、第2のポリペプチド鎖の軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメインは、第1のポリペプチド鎖の重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインと相互作用して、第2の抗原(即ち第1の抗原の種別に応じてCD3/16又はHIV‐1エンベロープ)に対して特異的な第2の機能性抗原結合部位を形成する。このように、第1及び第2のポリペプチド鎖の軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメイン及び重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインの選択は、2つのポリペプチド鎖が全体として、目的とする標的、特定の実施形態では例えばHIV‐1エンベロープ及びCD3又はCD16に結合できる軽鎖及び重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインを含むように、整合される。
【0054】
特定の実施形態では、ポリペプチド鎖の上述のVLドメインとVHドメインとを隔てるリンカー1の長さは、上記VL及びVHドメインが互いに対して結合するのを実質的に又は完全に防止するよう選択される。従って第1のポリペプチド鎖のVL及びVHドメインは、互いに対して結合することが実質的に又は全くできない。同様に、第2のポリペプチド鎖のVL及びVHドメインは、互いに対して結合することが実質的に又は全くできない。特定の実施形態では、これはVHドメインとVLドメインとを隔てるリンカーが原因である。特定の実施形態では、リンカーは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14個、ただし15個を超えないアミノ酸である。特定の実施形態では、介在スペーサペプチド(リンカー1)は、配列(配列番号1):GGGSGGGGを有する。
【0055】
リンカー2は、ポリペプチド鎖のVHドメインを、上記ポリペプチド鎖のヘテロ二量体促進ドメインから隔てる。リンカー2の目的のために、多様なリンカーのうちのいずれを使用できる。特定の実施形態では、このようなリンカー2に関する配列は、アミノ酸配列: GGCGGG(配列番号2)を有し、これは、ジスルフィド結合を介して第1及び第2のポリペプチド鎖を互いに対して共有結合させるために使用できるシステイン残基を有する。
【0056】
第1及び第2のポリペプチド鎖のヘテロ二量体の形成は、ヘテロ二量体化促進ドメインを含むことによって開始させることができる。このようなドメインは、一方のポリペプチド鎖上にGVEPKSC(配列番号3)又はVEPKSC(配列番号4)、及び他方のポリペプチド鎖上にGFNRGEC(配列番号5)又はFNRGEC(配列番号6)を含む(その全体が参照によって本出願に援用される米国特許第2007/0004909号を参照)。
【0057】
特定の実施形態では、本発明のヘテロ二量体化促進ドメインは、少なくとも6つ、少なくとも7つ又は少なくとも8つの荷電アミノ酸残基を含む、反対の極の1つ、2つ、3つ又は4つのタンデム反復コイルドメインから形成される(Apostolovic, B. et al. (2008) “pH‐Sensitivity of the E3/K3 Heterodimeric Coiled Coil,” Biomacromolecules 9:3173-3180; Arndt, K.M. et al. (2001) “Helix‐stabilized Fv (hsFv) Antibody Fragments: Substituting the Constant Domains of a Fab Fragment for a Heterodimeric Coiled‐coil Domain,” J. Molec. Biol. 312:221‐228; Arndt, K.M. et al. (2002) “Comparison of In Vivo Selection and Rational Design of Heterodimeric Coiled Coils,” Structure 10:1235‐1248; Boucher, C. et al. (2010) “Protein Detection By Western Blot Via Coiled-Coil Interactions,” Analytical Biochemistry 399:138‐140; Cachia, P.J. et al. (2004) “Synthetic Peptide Vaccine Development: Measurement Of Polyclonal Antibody Affinity And Cross‐Reactivity Using A New Peptide Capture And Release System For Surface Plasmon Resonance Spectroscopy,” J. Mol. Recognit. 17:540‐557; De Crescenzo, G.D. et al. (2003) “Real‐Time Monitoring of the Interactions of Two‐Stranded de novo Designed Coiled‐Coils: Effect of Chain Length on the Kinetic and Thermodynamic Constants of Binding,” Biochemistry 42:1754‐1763; Fernandez‐Rodriquez, J. et al. (2012) “Induced Heterodimerization And Purification Of Two Target Proteins By A Synthetic Coiled‐Coil Tag,” Protein Science 21:511‐519; Ghosh, T.S. et al. (2009) “End‐To‐End And End‐To‐Middle Interhelical Interactions: New Classes Of Interacting Helix Pairs In Protein Structures,” Acta Crystallographica D65:1032‐1041; Grigoryan, G. et al. (2008) “Structural Specificity In Coiled‐Coil Interactions,” Curr. Opin. Struc. Biol. 18:477‐483; Litowski, J.R. et al. (2002) “Designing Heterodimeric Two‐Stranded α‐Helical Coiled‐Coils: The Effects Of Hydrophobicity And α‐Helical Propensity On Protein Folding, Stability, And Specificity,” J. Biol. Chem. 277:37272‐37279; Steinkruger, J.D. et al. (2012) “The d′‐‐d‐‐d′ Vertical Triad is Less Discriminating Than the a′‐‐a‐‐a′ Vertical Triad in the Antiparallel Coiled‐coil Dimer Motif,” J. Amer. Chem. Soc. 134(5): 2626-2633; Straussman, R. et al. (2007) “Kinking the Coiled Coil - Negatively Charged Residues at the Coiled‐coil Interface,” J. Molec. Biol. 366:1232‐1242; Tripet, B. et al. (2002) “Kinetic Analysis of the Interactions between Troponin C and the C‐terminal Troponin I Regulatory Region and Validation of a New Peptide Delivery/Capture System used for Surface Plasmon Resonance,” J. Molec. Biol. 323:345-362; Woolfson, D.N. (2005) “The Design Of Coiled‐Coil Structures And Assemblies,” Adv. Prot. Chem. 70:79‐112; Zeng, Y. et al. (2008) “A Ligand‐Pseudoreceptor System Based On de novo Designed Peptides For The Generation Of Adenoviral Vectors With Altered Tropism,” J. Gene Med. 10:355‐367)。
【0058】
このような反復コイルドメインは、完全な反復であってよく、又は置換を有してよい。例えば、第1のポリペプチド鎖のヘテロ二量体化促進ドメインは、8つの負荷電アミノ酸残基のシーケンスを含んでよく、第2のポリペプチド鎖のヘテロ二量体化促進ドメインは、8つの負荷電アミノ酸残基のシーケンスを含んでよい。反対の電荷のコイルを他方のポリペプチド鎖に対して使用する場合、第1又は第2のポリペプチド鎖にどちらのコイルを設けるかは重要ではない。
【0059】
特定の実施形態では、本発明のHIV‐1×CD3二重特異性1価ダイアボディは、負荷電コイルを有する第1のポリペプチド鎖を有する。正荷電アミノ酸は、リジン、アルギニン、ヒスチジン等であってよく、及び/又は負荷電アミノ酸は、グルタミン酸、アスパラギン酸等であってよい。特定の実施形態では、正荷電アミノ酸はリジンであり、及び/又は負荷電アミノ酸はグルタミン酸である。(このようなドメインはホモ二量体化を阻害し、これによってヘテロ二量体化を促進するため)単一のヘテロ二量体促進ドメインしか採用できない。特定の実施形態では、本発明のダイアボディの第1及び第2のポリペプチド鎖両方が、ヘテロ二量体化促進ドメインを含有することが好ましい。
【0060】
特定の実施形態では、ヘテロ二量体化促進ドメインのうちの1つは、4つのタンデム「Eコイル」螺旋ドメイン(配列番号7:EVAALEK‐EVAALEK‐EVAALEK‐EVAALEK)を備え、そのグルタミン酸残基は、pH7において負の電荷を形成し、またその一方で、ヘテロ二量体化促進ドメインのうちのもう一方は、4つのタンデム「Kコイル」ドメイン(配列番号8:KVAALKE‐KVAALKE‐KVAALKE‐KVAALKE)を備え、そのリジン残基は、pH7において正の電荷を形成する。このような荷電ドメインの存在により、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとの間の連結が促進され、従ってヘテロ二量体化が促進される。いくつかの実施形態では、Kコイル及びEコイルドメインの数は変更でき、当業者は、異なる数のKコイル又はEコイルドメインがヘテロ二量体化につながるかどうかを容易に判定できる。
【0061】
本発明のHIV‐1×CD3又はHIV‐CD16二重特異性1価ダイアボディは、その第1及び第2のポリペプチド鎖が、その長さに沿って位置決めされた1つ又は複数のシステイン残基を介して互いに対して共有結合するよう、操作されている。このようなシステイン残基は、上記ポリペプチドのVL及びVHドメインを隔てる介在リンカーに導入され得る。あるいはリンカー2はシステイン残基を含有してよい。
【0062】
本発明はまた、組み換えEnvタンパク質に結合する能力、ウイルス感染細胞の表面に結合する能力、及び/又は具体的に開示されている抗体のADCC仲介特性を保持する変異体を含む、本明細書において開示されている抗体(及び断片)の変異体、並びに例えばHIV‐1感染リスクを低減するための上記変異体の使用方法を含む。本明細書において開示されている抗体又はその断片の組み合わせも、本発明の方法において使用できる。
【0063】
特定の実施形態では、本発明は二重特異性抗体を提供する。二重特異性又は二重官能性抗体は、2つの異なる重/軽鎖のペアと、2つの異なる結合部位とを有する、人工的なハイブリッド抗体である(例えばRomain Rouet & Daniel Christ “Bispecific antibodies with native chain structure” Nature Biotechnology 32, 136-137 (2014); Byrne et al. “A tale of two specificities: bispecific antibodies for therapeutic and diagnostic applications” Trends in Biotechnology, Volume 31, Issue 11, November 2013, Pages 621-632 Songsivilai and Lachmann, Clin. Exp. Immunol., 79:315-321 (1990); Kostelny et al., J. Immunol. 148:1547-53 (1992)(及びその中の参考文献)を参照)。特定の実施形態では、上記二重特異性抗体は、いずれのアイソタイプの全抗体である。他の実施形態では、上記二重特異性断片は、限定するものではないが例えばF(ab)2断片である。いくつかの実施形態では、上記二重特異性抗体はFc部分を含まず、これにより、これらのダイアボディは比較的サイズが小さくなり、組織に容易に貫入できる。
【0064】
特定の実施形態では、上記二重特異性抗体は、Fc領域を含んでよい。例えばFc担持DARTであるがこれに限定されないFc担持ダイアボディは比較的重く、新生児Fc受容体に結合でき、これによって上記Fc担持ダイアボディの循環半減期が増大する。Garber “Bispecific antibodies rise again” Nature Reviews Drug Discovery 13, 799-801 (2014), Figure 1a;米国公開特許第20130295121号、米国公開特許第20140099318号(これらはその全体が参照によって本出願に援用される)を参照。特定の実施形態では、本発明は、Fcドメイン又はその一部分(例えばCH2ドメイン若しくはCH3ドメイン)を含むダイアボディ分子を包含する。Fcドメイン又はその一部分は、IgA、IgD、IgG、IgE及びIgMを含むがこれらに限定されない、いずれの免疫グロブリンアイソタイプ又はアロタイプに由来するものであってよい。いくつかの実施形態では、Fcドメイン(又はその一部分)は、IgGに由来する。いくつかの実施形態では、IgGアイソタイプはIgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4又はそのアロタイプである。いくつかの実施形態では、ダイアボディ分子はFcドメインを含み、このFcドメインは、いずれの免疫グロブリンアイソタイプから独立して選択されたCH2ドメイン及びCH3ドメインを含む(即ち、IgGに由来するCH2ドメイン及びIgEに由来するCH3ドメイン、又はIgG1に由来するCH2ドメイン及びIgG2に由来するCH3ドメイン等を含むFcドメイン)。いくつかの実施形態では、上記Fcドメインは、本発明のダイアボディ分子を含むポリペプチド鎖に、上記ポリペプチド鎖の他のドメイン又は部分に対していずれの位置において組み込むことができる(例えば上記Fcドメイン又はその一部分は、鎖のポリペプチドのVL及びVHドメインに対するC末端であってよく、又は一方のドメインに対するN末端及び他方のドメインに対するC‐末端(即ちポリペプチド鎖の2つのドメインの間)であってよい)。
【0065】
上記二重特異性分子の半減期を増大させるために、上記二重特異性分子の他の修飾が考えられる。いくつかの実施形態では、これらの修飾は、血清結合タンパク質のポリペプチド部分の添加を含む。参照により援用される米国特許第20100174053A1号を参照。
【0066】
いくつかの実施形態では、本発明の二重特異性分子のFc変異体は、非Fc変異体に比べて増大した半減期を有することが期待される。当業者は、これらの分子の半減期を決定するために、薬物動態研究を含む様々なアッセイを容易に実施できる。
【0067】
いくつかの実施形態では、本発明はポリペプチド鎖を含み、これらのポリペプチド鎖はそれぞれ、本明細書に記載されているようにCDRを含むVH及びVLドメインを備える。特定の実施形態では、各ポリペプチド鎖を構成するVL及びVHドメインは同一の特異性を有し、多量体分子は2価かつ単一特異性である。他の実施形態では、各ポリペプチド鎖を構成するVL及びVHドメインは異なる特異性を有し、多量体は2価かつ二重特異性である。
【0068】
いくつかの実施形態では、多量体中の上記ポリペプチド鎖は更に、Fcドメインを備える。上記Fcドメインの二量体化は、イムノグロブリン様機能性、即ちFc仲介型機能(例えばFc‐FcγR相互作用、補体結合等)を呈するダイアボディ分子の形成につながる。
【0069】
上述のような二重特異性ダイアボディ分子の形成は、異なる複数のポリペプチド鎖の相互作用を必要とする。このような相互作用は潜在的に発生し得る鎖の誤ったペアリングの様々な変形例により、単一細胞組み換え産生系内で効率的に達成するのが困難である。誤ったペアリングの蓋然性を増大させる1つの解決策は、「ノブ・イントゥ・ホール(knobs‐into‐holes)」タイプの突然変異を所望のポリペプチド鎖ペアに組み込むことである。このような突然変異は、ホモ二量体化を抑えてヘテロ二量体化を促進する。例えばFc‐Fc間相互作用に関して、CH2又はCH3ドメインにアミノ酸置換(好ましくは「ノブ(knob)」を形成する嵩高な側鎖基、例えばトリプトファンを含むアミノ酸による置換)を導入して、立体障害により、同様に突然変異させたドメインとの相互作用を防止し、上記変化させたドメインを、相補的な又は適応した突然変異(例えばグリシンによる置換)を施されたドメイン、即ち「ホール(hole)」とペアにすることができる。このような一連の変化は、上記ダイアボディ分子を構成するポリペプチドのいずれのペアに施すことができ、また更に、上記ペアのポリペプチド鎖のいずれの部分に施すことができる。ホモ二量体化を抑えてヘテロ二量体化を促進するためのタンパク質加工の方法は、特に免疫グロブリン様分子の加工に関して当該技術分野で公知であり、本明細書に包含される(例えばRidgway et al. (1996) “‘Knobs‐Into‐Holes’ Engineering Of Antibody CH3 Domains For Heavy Chain Heterodimerization,”Protein Engr. 9:617‐621; Atwell et al. (1997) “Stable Heterodimers From Remodeling The Domain Interface Of A Homodimer Using A Phage Display Library,” J. Mol. Biol. 270: 26‐35;及びXie et al. (2005) “A New Format Of Bispecific Antibody: Highly Efficient Heterodimerization, Expression And Tumor Cell Lysis,” J. Immunol. Methods 296:95‐101を参照(これらはそれぞれ参照によりその全体が本出願に援用される))。
【0070】
本発明はまた、変異型Fc又はその一部分)を含むダイアボディ分子も包含し、上記変異型Fcドメインは、同等の野生型Fcドメイン又はヒンジFcドメイン(又はその一部分)に対する少なくとも1つのアミノ酸修飾(例えば置換、挿入、欠失)を含む。変異型Fc又は変異型ヒンジFcドメイン(又はその一部分)を含む分子(例えば抗体)は通常、野生型Fcドメイン又はヒンジFcドメイン又はその一部分を含む分子に対して変化した表現型を有する。この変異型表現型は、変化した血清半減期、変化した安定性、細胞酵素に対する変化した感受性、又はNK依存性若しくはマクロファージ依存性アッセイで測定されるような変化したエフェクタ機能として表現され得る。変化したエフェクタ機能として表されるFcドメイン変異体については、当該技術分野において公知である。例えば国際公開第04/063351号、米国特許出願公開第2005/0037000号、米国特許出願公開第2005/0064514号。
【0071】
本発明の二重特異性ダイアボディは、2つの分離した別個のエピトープに同時に結合できる。特定の実施形態では、上記エピトープは同一の抗原に由来する。他の実施形態では、上記エピトープは異なる抗原に由来する。非限定的な実施形態では、少なくとも1つのエピトープ結合部位は、Tリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞又は他の単核細胞上に発現する、免疫エフェクタ細胞上に発現する決定因子(例えばCD3、CD16、CD32、CD64等)に対して特異的である。一実施形態では、上記ダイアボディ分子は、上記エフェクタ細胞決定因子に結合し、また上記エフェクタ細胞を活性化させる。この点に関して、本発明のダイアボディ分子は、これらがFcドメインを更に備えるかどうかにかかわらず、(例えば当該技術分野において公知のいずれのエフェクタ機能アッセイにおいてアッセイされるような、又は本明細書に例示されるような)Ig‐様機能性を呈し得る。
【0072】
特定の実施形態では、上記二重特異性抗体は、例えば本明細書に開示されている抗体のいずれかに由来するHIVエンベロープ結合断片であるがこれに限定されない、HIVエンベロープ結合断片を含む。他の実施形態では、上記二重特異性抗体は更に、第2の抗原相互作用部位/断片を含む。他の実施形態では、上記二重特異性抗体は更に、少なくとも1つのエフェクタドメインを備える。
【0073】
特定の実施形態では、上記二重特異性抗体は、抗体依存性細胞仲介型細胞毒性(Antibody‐Dependent Cell‐mediated Cytotoxicity:ADCC)のために、細胞と会合する。特定の実施形態では、上記二重特異性抗体はナチュラルキラー細胞、好中球多形核白血球、単球及びマクロファージと会合する。特定の実施形態では、上記二重特異性抗体はT細胞エンゲージャである。特定の実施形態では、上記二重特異性抗体は、HIVエンベロープ結合断片及びCD3結合断片を含む。様々なCD3抗体が当該技術分野において公知である。例えば、様々なCD3抗体に関する様々な開示を提供する米国特許第8,784,821号、及び米国公開特許第2014‐0099318号(これらの開示はその全体が参照によって本出願に援用される)を参照。特定の実施形態では、上記二重特異性抗体は、HIVエンベロープ結合断片及びCD16結合断片を含む。
【0074】
特定の実施形態では、本発明は、二重標的化特異性を有する抗体を提供する。特定の態様では、本発明は、免疫エフェクタ細胞HIV‐1エンベロープ発現細胞に対して局在化することによって上記HIV‐1エンベロープ発現細胞の殺滅を促進できる、二重特異性分子を提供する。この点に関して、二重特異性抗体は、1つの「アーム」を用いて標的細胞の表面抗原に結合し、第2の「アーム」は、T細胞受容体(TCR)複合体の、活性化不変異体構成要素に結合する。このような抗体の、両方の標的に対する同時結合は、標的細胞とT細胞との間の一時的な相互作用を生み、これにより、いずれの細胞毒性T細胞の活性化及びこれに続く標的細胞の溶解が引き起こされる。従って免疫応答は標的細胞に対して標的転換され、CTLの正常なMHC制限活性化に関連するような標的細胞によるペプチド抗原提示、又はT細胞の特異性とは無関係となる。この文脈において、CTLが、標的細胞がCTLに対して二重特異性抗体を提示する場合、即ち免疫学的シナプスを模倣する場合にのみ活性化されることが重要である。特に望ましいのは、標的細胞の効率的な溶解を誘発するためにリンパ球の予備的調整又は共刺激を必要としない二重特異性抗体である。
【0075】
特定の実施形態では、本発明は、例えばDARTであるがこれに限定されない二重特異性分子の1つ若しくは複数のHIV‐1結合アーム、又は毒素標識HIV‐1結合分子として、VH及び/若しくはVL鎖の1つ若しくは複数のCDR、又は本発明の抗体のVH及び/若しくはVL鎖を含む、抗体又は断片を提供する。
【0076】
特定の実施形態では、このような二重特異性分子は、HIV‐1エンベロープを標的とする1つの部分と、第2の標的に結合する第2の部分とを備える。特定の実施形態では、上記第1の部分は、本明細書に記載の抗体に由来するVH及びVL配列又はCDRを含む。特定の実施形態では、上記第2の標的は例えばエフェクタ細胞であってよいが、これに限定されない。特定の実施形態では、上記第2の部分はT細胞エンゲージャである。特定の実施形態では、上記第2の部分は、CD3を標的とする配列/パラトープを備える。特定の実施形態では、上記第2の部分は、CD3抗体、任意に公知のCD3抗体に由来する抗原結合領域である。特定の実施形態では、上記抗CD抗体は、T細胞仲介型殺滅を誘発する。特定の実施形態では、上記二重特異性抗体は全抗体である。他の実施形態では、この二重標的化抗体は本質的にFab断片からなる。他の実施形態では、上記二重標的化抗体は、重鎖定常領域(CH1)を備える。特定の実施形態では、上記二重特異性抗体はFc領域を備えない。特定の実施形態では、上記二重特異性抗体は、改善されたエフェクタ機能を有する。特定の実施形態では、上記二重特異性抗体は、改善された細胞殺滅活性を有する。二重特異性抗体の設計のための様々な方法及びプラットフォームが当該技術分野において公知である。例えば米国公開特許第20140206846号、米国公開特許第20140170149号、米国公開特許第20100174053号、米国公開特許第20090060910号、米国公開特許第20130295121号、米国公開特許第20140099318号、米国公開特許第20140088295号(これらの内容はその全体が参照によって本出願に援用される)を参照。
【0077】
特定の実施形態では、本発明は、ヒト、ヒト化及び/又はキメラ抗体を提供する。このような抗体を構築する方法は、当該技術分野において公知である。
【0078】
特定の態様では、本発明は、個体におけるHIV‐1感染を治療及び予防する方法における、二重特異性抗体を含む本発明の抗体の使用を提供し、上記方法は、治療的有効量の、本発明の抗体を含む組成物を、薬学的に許容可能な形態で、上記個体に投与するステップを含む。特定の実施形態では、本方法は、2つ以上のHIV‐1標的化抗体を含む組成物を含む。特定の実施形態では、上述のような組み合わせ中の上記HIV‐1標的化抗体は、HIV‐1エンベロープ上の異なるエピトープに結合する。特定の実施形態では、2つ以上のHIV‐1エピトープを標的とする二重特異性抗体の上述のような組み合わせは、HIV‐1感染細胞の殺滅の増大を提供する。他の実施形態では、2つ以上のHIV‐1エピトープを標的とする二重特異性抗体の上述のような組み合わせは、異なる複数のHIV‐1サブタイプの認識における幅広さの増大を提供する。
【0079】
本発明はまた、組み換えEnvタンパク質に結合する能力、ウイルス感染細胞の表面に結合する能力、及び/又は具体的に開示されている抗体のADCC仲介特性を保持する変異体を含む、本明細書において開示されている抗体(及び断片)の変異体、並びに例えばHIV‐1感染リスクを低減するための上記変異体の使用方法を含む。本明細書において開示されている抗体又はその断片の組み合わせも、本発明の方法において使用できる。
【0080】
ポリペプチドに特異的に結合する抗体のVL又はVHの相同体及び変異体は典型的には、少なくとも約75%、例えば少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の、関心対象のアミノ酸配列との全長に及ぶ整列全体にわたって計数された配列同一性を有することを特徴とする。基準配列に対して更に高い類似性を有するタンパク質は、この方法によって評価した場合に、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性といった、上昇したパーセンテージ同一性を示す。配列同一性に関して、全配列未満の配列を比較する場合、相同体及び変異体は典型的には、アミノ酸10〜20個の短いウィンドウにわたって少なくとも80%の配列同一性を有し、また基準配列との類似性に応じて、少なくとも85%又は少なくとも90%若しくは95%の配列同一性を有する場合がある。このような短いウィンドウにわたって配列同一性を決定する方法は、インターネット上のNCBIウェブサイトにおいて入手可能である。当業者は、これらの配列同一性範囲が単に指針としてのみ提供されていることを理解するであろう。ここで提供した範囲外の非常に有意な相同体が得られることは大いにあり得る。
【0081】
特定の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の抗体のVH及びVLアミノ酸配列と99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%同一であり、かつエピトープ結合の幅広さ及び/又は効力を依然として維持している、抗体を提供する。特定の実施形態では、本発明は、本明細書に記載の抗体のVHアミノ酸配列のCDR1、2及び/又は3並びにVLアミノ酸配列のCDR1、2及び/3と99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%同一であり、かつエピトープ結合の幅広さ及び/又は効力を依然として維持している、抗体を提供する。
【0082】
別の態様では、本発明はFc担持二重特異性分子を提供する。いくつかの実施形態では、一方又は両方のポリペプチドの第3のドメインは更に、CH2‐CH3ドメインの配列を有してよく、これにより、ダイアボディポリペプチドの複合体化によって、細胞(Bリンパ球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球及び肥満細胞等)のFc受容体に結合できるFcドメインが形成される(図8B‐8C)。このような分子の多数の変形例が記載されている(例えば米国特許公開第2014‐0099381号;米国特許公開第2013‐0295121号;米国特許公開第2010‐0174053号;及び米国特許公開第2009‐0060910号;欧州特許公開第2714079号;欧州特許公開第2601216号;欧州特許公開第2376109号;欧州特許公開第2158221号;及び国際公開第2015/026894号;国際公開第2015/026892号:国際公開第2015/021089号;国際公開第2014/159940号;国際公開第2012/162068号;国際公開第2012/018687号;国際公開第2010/080538号(これらの各刊行物の内容はその全体が参照によって本出願に援用される)参照)。
【0083】
いくつかの実施形態では、これらのFc担持DARTは、3つのポリペプチド鎖を備えてよい。このようなダイアボディの第1のポリペプチドは、3つのドメイン:(i)VL1含有ドメイン;(ii)VH2含有ドメイン;(iii)上記第1ボディの第1のポリペプチド鎖とのヘテロ二量体化及び共有結合を促進するドメイン;及び(iv)CH2‐CH3配列を含有するドメインを含有する。このようなDART(商標)の第2のポリペプチドは:(i)VL2含有ドメイン;(ii)VH1含有ドメイン;並びに(iii)ダイアボディの第1のポリペプチド鎖とのヘテロ二量体化及び共有結合を促進するドメインを含有する。このようなDART(商標)の第3のポリペプチドは、CH2‐CH3配列を備える。従って、このようなDART(商標)の第1及び第2のポリペプチド鎖は、一体として連結して、エピトープに結合可能なVL1/VH1結合部位、及び第2のエピトープに結合可能なVL2/VH2結合部位を形成する。第1及び第2のポリペプチドは、それぞれの第3のドメイン内のシステイン残基が関与するジスルフィド結合を介して、互いに結合される。特に、第1及び第3のポリペプチド鎖は互いと複合体化して、ジスルフィド結合によって安定化されたFcドメインを形成する。このようなダイアボディは、増強された強度を有する。このようなFc担持DART(商標)は、2つの配向(表1)のうちのいずれを有してよい:
【0084】
【表1】
【0085】
HIV×CD3二重特異性1価Fcダイアボディは、3つの異なるポリペプチド鎖からなり、上記3つの異なるポリペプチド鎖は互いに関連して、HIVのエピトープに対して特異的な1つの結合部位、及びCD3のエピトープに対して特異的な1つの結合部位を形成する(図8B‐8C参照)ことにより、HIVとCD3とに同時に結合できる。従ってこれらのダイアボディは、CD3又はHIVであってよい「第1の抗原」と、上記第1の抗原がCD3である場合はHIV、上記第1の抗原がHIVである場合はCD3である、「第2の抗原」とに結合する。
【0086】
図8Bに示すように、これら3つのポリペプチド鎖のうちの第1のものは、N末端からC末端への方向に、N末端、「第1の」抗原(CD3又はHIV)の軽鎖可変ドメイン(VL)の抗原結合ドメイン、第2の抗原(上記第1の抗原がCD3であった場合はHIV、上記第1の抗原がHIVであった場合はCD3)の重鎖可変ドメイン(VH)の抗原結合ドメイン、ヘテロ二量体化促進ドメイン、及びC末端を含有する。介在リンカーペプチド(リンカー1)は、軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメインを、重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインから隔てる。非限定的な実施形態では、重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインは、介在リンカーペプチド(リンカー2)によってヘテロ二量体化促進ドメインに連結される。HIV×CD3二重特異性1価Fcダイアボディの場合、ヘテロ二量体化促進ドメインのC末端は、介在リンカーペプチド(リンカー3)によって、又は介在スペーサリンカーペプチド(スペーサリンカー3)によって、Fc領域のCH2‐CH3ドメイン(「Fcドメイン」)に連結される。非限定的な実施形態では、上記3つのポリペプチド鎖のうちの第1のものは、N末端からC末端への方向において:VL第1の抗原‐リンカー1‐VH第2の抗原‐リンカー2‐ヘテロ二量体化促進ドメイン‐スペーサリンカー3‐Fcドメインを含有する。
【0087】
あるいは、図8Cに示すように、これら3つのポリペプチド鎖のうちの第1のものは、N末端からC末端への方向に、N末端、リンカー3、Fc領域のCH2‐CH3ドメイン(「Fcドメイン」)、例えばアミノ酸配列APSSS(配列番号39)又はアミノ酸配列APSSSPME(配列番号40)を有する介在スペーサペプチド(リンカー4)、第1の抗原(CD3又はHIV)の軽鎖可変ドメイン(VL)の抗原結合ドメイン、第2の抗原(上記第1の抗原がCD3であった場合はHIV、上記第1の抗原がHIVであった場合はCD3)の重鎖可変ドメイン(VH)の抗原結合ドメイン、ヘテロ二量体化促進ドメイン、及びC末端を含有する。介在リンカーペプチド(リンカー1)は、軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメインを、重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインから隔てる。非限定的な実施形態では、重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインは、介在リンカーペプチド(リンカー2)によってヘテロ二量体化促進ドメインに連結される。非限定的な実施形態では、上記3つのポリペプチド鎖のうちの第1のものは、N末端からC末端への方向において:リンカー3‐Fcドメイン‐リンカー4‐VL第1の抗原‐リンカー1‐VH第2の抗原‐リンカー2‐ヘテロ二量体化促進ドメインを含有する。
【0088】
非限定的な実施形態では、これら3つのポリペプチド鎖のうちの第2のものは、N末端からC末端への方向において、N末端、第2の抗原の軽鎖可変ドメイン(VL)の抗原結合ドメイン、第1の抗原の重鎖可変ドメイン(VH)の抗原結合ドメイン、ヘテロ二量体化促進ドメイン、及びC末端を含有する。介在リンカーペプチド(リンカー1)は、軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメインを、重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインから隔てる。非限定的な実施形態では、重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインは、介在リンカーペプチド(リンカー2)によって、ヘテロ二量体化促進ドメインに連結される。非限定的な実施形態では、上記3つのポリペプチド鎖のうちの第2のものは、N末端からC末端への方向において:VL第2の抗原‐リンカー1‐VH第1の抗原‐リンカー2-ヘテロ二量体化促進ドメインを含有する。
【0089】
非限定的な実施形態では、これら3つのポリペプチド鎖のうちの第3のものは、リンカーペプチド(リンカー3)、及びFc領域のCH2‐CH3ドメイン(「Fcドメイン」)を含有することになる。
【0090】
本発明の二重特異性分子は、上記ポリペプチド鎖が備える異なるドメインを様々なリンカーが隔てる設計を考えている。上記リンカーの非限定的な具体例を、本明細書において開示している。他のリンカーを容易に決定できる。リンカーのいくつかの更なる例は、米国公開特許第20100174053号(その全体が参照によって本出願に援用される)に開示されている。
【0091】
第1のポリペプチド鎖の軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメインは、第2のポリペプチド鎖の重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインと相互作用して、第1の抗原(即ちHIV又はCD3/CD)に対して特異的な機能性抗原結合部位を形成する。同様に、第2のポリペプチド鎖の軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメインは、第1のポリペプチド鎖の重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインと相互作用して、第2の抗原(即ち第1の抗原の種別に応じてCD3又はHIV)に対して特異的な第2の機能性抗原結合部位を形成する。このように、第1及び第2のポリペプチド鎖の軽鎖可変ドメインの抗原結合ドメイン及び重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインの選択は、2つのポリペプチド鎖が全体として、HIV及びCD3に結合できる軽鎖及び重鎖可変ドメインの抗原結合ドメインを含むように、整合される。
【0092】
本発明のHIV×CD3二重特異性1価FcダイアボディのFcドメインは、完全Fc領域(例えば完全IgG Fc領域)であってよく、又は完全Fc領域の断片でしかなくてもよい。本発明の二重特異性1価FcダイアボディのFcドメインは、1つ又は複数のFc受容体(例えば1つ又は複数のFcγR)に結合できる能力を有してよいが、非限定的な実施形態では、上記Fcドメインは、(野生型Fc領域が示す結合に比べて)FcγRIA(CD64)、FcγRIIA(CD32A)、FcγRIIB(CD32B)、FcγRIIIA(CD16a)若しくはFcγRIIIB(CD16b)への結合の低下を引き起こし、又は上記Fcドメインの、1つ若しくは複数の上記受容体に結合する能力を有意に低減する。本発明の二重特異性1価FcダイアボディのFcドメインは、完全Fc領域のCH2ドメインのうちのある程度若しくは全体及び/若しくはCH3ドメインのうちのある程度若しくは全体を含んでよく、又は(例えば完全Fc領域のCH2若しくはCH3ドメインに対する1つ若しくは複数の挿入及び/若しくは1つ若しくは複数の欠失を含んでよい)変異型CH2及び/若しくは変異型CH3配列を備えてよい。本発明の二重特異性1価FcダイアボディのFcドメインは、非Fcポリペプチド部分を備えてよく、又は自然に発生しない完全Fc領域の部分を備えてよく、又はCH2及び/若しくはCH3ドメインの自然に発生しない配向を備えてよい(例えば2つのCH2ドメイン若しくは2つのCH3領域、若しくはN末端からC末端への方向において、CH3ドメインと、これが連結したCH2ドメイン、等)。
【0093】
非限定的な実施形態では、本発明のHIV×CD3二重特異性1価Fcダイアボディの第1及び第3のポリペプチド鎖はそれぞれCH2‐CH3ドメインを備え、これらは一体に複合体化して免疫グロブリン(IgG)Fcドメインを形成する。ヒトIgG1のCH2‐CH3ドメインのアミノ酸配列は(配列番号41):
APELLGGPSV FLFPPKPKDT LMISRTPEVT CVVVDVSHED PEVKFNWYVD
GVEVHNAKTK PREEQYNSTY RVVSVLTVLH QDWLNGKEYK CKVSNKALPA
PIEKTISKAK GQPREPQVYT LPPSREEMTK NQVSLTCLVK GFYPSDIAVE
WESNGQPENN YKTTPPVLDS DGSFFLYSKL TVDKSRWQQG NVFSCSVMHE
ALHNHYTQKS LSLSPGK
である。
【0094】
従って、上記第1及び第3のポリペプチド鎖のCH2及び/又はCH3ドメインはいずれも、配列番号41又はその変異型からなってよい。
【0095】
非限定的な実施形態では、本発明のHIV×CD3二重特異性1価Fcダイアボディの第1及び第3のポリペプチド鎖のCH2‐CH3ドメインは、(野生型Fcドメイン(配列番号41)が示す結合と比べて)FcγRIA(CD64)、FcγRIIA(CD32A)、FcγRIIB(CD32B)、FcγRIIIA(CD16a)又はFcγRIIIB(CD16b)への結合が低下する(又は結合を実質的に示さない)。このような変化した結合を仲介できるFc変異型及び突然変異型は当該技術分野において公知であり、234位及び235位におけるアミノ酸置換、265位における置換、又は297位におけるアミノ酸置換を含む(例えば米国特許第5,624,821号(これは参照により本出願に援用される)参照)。非限定的な実施形態では、本発明のHIV×CD3二重特異性1価Fcダイアボディの第1及び/又は第3のポリペプチド鎖のCH2‐CH3ドメインは、234位におけるアラニンによる置換、及び235位におけるアラニンによる置換を含む。
【0096】
第1及び第3のポリペプチド鎖のCH2及び/又はCH3ドメインは配列において同一である必要はなく、有利には2つのポリペプチド鎖間の錯体形成を促進するために修飾される。例えば、CH2又はCH3ドメインにアミノ酸置換(例えば「ノブ(knob)」を形成する嵩高な側鎖基、例えばトリプトファンを含むアミノ酸による置換)を導入して、立体障害により、同様に変異させたドメインとの相互作用を防止し、上記変化させたドメインを、相補的な又は適応した変異(例えばグリシンによる置換)を施されたドメイン、即ち「ホール(hole)」とペアにすることができる。このような一連の変化は、二重特異性1価Fc二重特異性1価Fcダイアボディ分子を構成するポリペプチドのいずれのペアに施すことができ、また更に、上記ペアのポリペプチド鎖のいずれの部分に施すことができる。ホモ二量体化を抑えてヘテロ二量体化を促進するためのタンパク質加工の方法は、特に免疫グロブリン様分子の加工に関して当該技術分野で公知であり、本明細書に包含される(例えばRidgway et al. (1996) “‘Knobs‐Into‐Holes’ Engineering Of Antibody CH3 Domains For Heavy Chain Heterodimerization,” Protein Engr. 9:617‐621; Atwell et al. (1997) “Stable Heterodimers From Remodeling The Domain Interface Of A Homodimer Using A Phage Display Library,” J. Mol. Biol. 270: 26‐35;及びXie et al. (2005) “A New Format Of Bispecific Antibody: Highly Efficient Heterodimerization, Expression And Tumor Cell Lysis,” J. Immunol. Methods 296:95‐101を参照(これらはそれぞれ参照によりその全体が本明細書に援用される))。非限定的な実施形態では、「ノブ」は第1のポリペプチド鎖のCH2‐CH3ドメインに加工され、「ホール」は第3のポリペプチド鎖のCH2‐CH3ドメインに加工される。従って「ノブ」は、第1のポリペプチド鎖がそのCH2及び/又はCH3ドメインを介してホモ二量体化するのを防止する役割を果たすことになる。非限定的な実施形態では、第3のポリペプチド鎖は「ホール」置換基を含有するため、第1のポリペプチド鎖とヘテロ二量体化し、かつそれ自体とホモ二量体化する。非限定的な実施形態では、ノブは、天然IgG Fcドメインを修飾して修飾基T366Wを含有させることによって生成される。非限定的な実施形態では、ホールは、天然IgG Fcドメインを修飾して修飾基T366S、L368A及びY407Vを含有させることによって生成される。第3のポリペプチド鎖ホモ二量体を、第1、第2及び第3のポリペプチド鎖を含む最終的な二重特異性1価Fcダイアボディから精製するのを補助するために、第3のポリペプチド鎖のCH2及びCH3ドメインのタンパク質A結合部位を、位置435(H435R)におけるアミノ酸置換によって変異させる。このようにして、第3のポリペプチド鎖ホモ二量体はタンパク質Aに結合せず、その一方で二重特異性1価Fcダイアボディは、第1のポリペプチド鎖のタンパク質A結合部位を介してタンパク質Aに結合する能力を有したままとなる。
【0097】
非限定的な実施形態では、本発明のHIV×エフェクタ(例えばCD3)二重特異性1価Fcダイアボディの第1のポリペプチド鎖のCH2及びCH3ドメインに関する配列は、「ノブ担持」配列(配列番号42):
APEAAGGPSV FLFPPKPKDT LMISRTPEVT CVVVDVSHED PEVKFNWYVD
GVEVHNAKTK PREEQYNSTY RVVSVLTVLH QDWLNGKEYK CKVSNKALPA
PIEKTISKAK GQPREPQVYT LPPSREEMTK NQVSLWCLVK GFYPSDIAVE
WESNGQPENN YKTTPPVLDS DGSFFLYSKL TVDKSRWQQG NVFSCSVMHE
ALHNHYTQKS LSLSPGK
を有する。
【0098】
非限定的な実施形態では、本発明のHIV×エフェクタ(例えばCD3)二重特異性1価Fcダイアボディの第3のポリペプチド鎖のCH2及びCH3ドメインに関する配列は、「ホール担持」配列(配列番号43):
APEAAGGPSV FLFPPKPKDT LMISRTPEVT CVVVDVSHED PEVKFNWYVD
GVEVHNAKTK PREEQYNSTY RVVSVLTVLH QDWLNGKEYK CKVSNKALPA
PIEKTISKAK GQPREPQVYT LPPSREEMTK NQVSLSCAVK GFYPSDIAVE
WESNGQPENN YKTTPPVLDS DGSFFLVSKL TVDKSRWQQG NVFSCSVMHE
ALHNRYTQKS LSLSPGK
を有する。
【0099】
上述のように、配列番号42及び配列番号43のCH2‐CH3ドメインは、アラニンによる234位の置換及びアラニンによる235位の置換を含み、従って、(野生型Fc領域(配列番号41)が示す結合と比べて)FcγRIA(CD64)、FcγRIIA(CD32A)、FcγRIIB(CD32B)、FcγRIIIA(CD16a)又はFcγRIIIB(CD16b)への結合が低下した(又は結合を実質的に示さない)Fcドメインを形成する。
【0100】
非限定的な実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、配列番号42のもの等の「ノブ担持」CH2‐CH3配列を有する。しかしながら、理解されるように、第1のポリペプチド鎖中に「ホール担持」CH2‐CH3ドメイン(例えば配列番号43)を採用でき、この場合「ノブ担持」CH2‐CH3ドメイン(例えば配列番号42)は、第3のポリペプチド鎖中に採用される。
【0101】
非限定的な実施形態では、上記Fcドメインをアミノ酸置換によって修飾することにより、新生児Fc受容体に対する結合、及びこれに伴って被験者に投与した場合の上記抗体の半減期を増大させることができる。上記Fcドメインは、IgA、IgM、IgD、IgE又はIgG Fcドメインとすることができる。上記Fcドメインは、参照によって本出願に援用される米国特許出願第20100093979号に記載されているような、最適化されたFcドメインとすることができる。特定の実施形態では、上記抗体は、例えばエピトープ結合の外側のFc領域におけるアミノ酸改変又はその組み合わせを含み、上記改変は抗体の特性を改善できる。様々なFc修飾が当該技術分野において公知である。アミノ酸の番号付与は、KabatにおけるEUインデックスに従ったものである。いくつかの実施形態では、本発明は、新生児Fc受容体(FcRn)結合、抗体半減期、並びに粘膜部位における抗体の局在化及び持続性に影響を及ぼす突然変異を含む抗体について考える。例えばKo SY et al., Nature 514: 642-45, 2014,図1a及びその中の引用文献; Kuo, T. and Averson, V., mAbs 3(5): 422-430, 2011, 表1:米国公開特許第20110081347号(Kabat残基288のアスパラギン酸及び/又はKabat残基435のリジン)、様々なFc領域突然変異に関する米国公開特許第20150152183号(これらはその全体が参照によって本出願に援用される)を参照。
【0102】
特定の実施形態では、上記抗体は、上記抗体のFc領域又はその周囲にAAAA置換を含み、これは、S298A並びにE333A及びK333AのFc領域aaを含有するNK細胞によってADCCを増強する(AAA突然変異)ことが報告されており(Shields RI et al JBC , 276: 6591-6604, 2001)、また4番目のA(N434A)は、粘膜部位へのIgGのFcR新生児仲介型輸送を増強する(Sields RI et al、同上)。抗体の半減期又は機能又はこれら両方を改善する他の抗体突然変異も報告されており、抗体の配列に組み込むことができる。これらは:DLE突然変異セット(Romain G, et al. Blood 124: 3241, 2014);単独の、又は他のFc領域突然変異と組み合わせた、LS突然変異M428L/N434S(Ko SY et al. Nature 514: 642‐45, 2014,図1a及びその中の引用文献; Zlevsky et al., Nature Biotechnology, 28(2): 157‐159, 2010; 米国特許公開第20150152183号);YTE Fc突然変異(Robbie G et al Antimicrobial Agents and Chemotherapy 12: 6147‐53, 2013);並びにQL突然変異、IHH突然変異等の上記抗体に対する他の操作された突然変異(Ko SY et al. Nature 514: 642‐45, 2014,図1a及び引用文献;Rudicell R et al. J. Virol 88: 12669‐82, 201も参照)を含む。いくつかの実施形態では、限定するものではないが抗体のフコース化等の修飾は、Fc受容体との相互作用に影響を及ぼし得る(例えばMoldt, et al. JVI 86(11): 66189‐6196, 2012参照)。いくつかの実施形態では、上記抗体は、限定するものではないが例えばグリコシル化等の修飾を含むことができ、これは、抗体の多応答性を低減又は排除する。例えばChuang, et al. Protein Science 24: 1019‐1030, 2015参照。いくつかの実施形態では、上記抗体は、Fcドメインが、未修飾Fcドメインに比べて:抗体依存性細胞仲介型細胞毒性(ADCC)の増強;FcγRIIA若しくはFcγRIIIAに対する結合の増大;FcγRIIBに対する結合の低下;又はFcγRIIBに対する結合の増大を呈するように、Fcドメインに修飾を含むことができる。例えば米国公開特許第20140328836号参照。
【0103】
上述の抗体及びその断片は、組成物(例えば医薬組成物)として処方できる。好適な組成物は、薬学的に許容可能なキャリア(例えば水性媒体)中に溶解又は分散されたADCC仲介型抗体(又は抗体断片)を含むことができる。上記組成物は無菌とすることができ、また注射可能な形態とすることができる(ただし例えば皮内注射又は筋肉内注射に好適な形態に限定されない)。上記抗体(及びその断片)はまた、皮膚又は粘膜への局所投与に適切な組成物として処方できる。このような組成物は、液体、軟膏、クリーム、ゲル及びペーストの形態を取ることができる。上記抗体(及びその断片)はまた、鼻腔内投与に適切な組成物として処方できる。上記抗体(及びその断片)はまた、性交後の洗浄液として又はコンドームと共に投与できるように処方できる。標準的な処方技法を用いて、好適な組成物を調製できる。
【0104】
本明細書に記載の上記抗体(及びその断片)、例えばADCC仲介型抗体は、例えば以下のものを含むがこれらに限定されない状況において有用性を有する:
i)HIV‐1感染への予想される既知の曝露の状況において、本明細書に記載の抗体(又はその切断片)を殺菌剤として予防的に(例えば、IV、局所又は鼻腔内)投与できる;
ii)強姦の犠牲者、又は商業的なセックスワーカー、又はコンドームの保護のない同性間若しくは異性間接触の状況において発生するような、既知の曝露の又は曝露が疑われる状況において、本明細書に記載の抗体(又はその断片)を、曝露後の予防として、例えばIV又は局所投与できる;
iii)急性HIV‐1感染(AHI)の状況において、本明細書に記載の抗体(又はその断片)を、初期ウイルス量を制限するためのAHIの治療として、又はウイルス感染CD4 T細胞の除去のために投与できる。
【0105】
本発明によると、本明細書に記載のADCC仲介型抗体(又は抗体断片)は、被験者若しくは被験者の免疫系/細胞がHIV‐1と接触する前、又は上記接触の約48時間以内に、投与できる。この時間枠内での投与は、被験者の脆弱な細胞のHIV‐1による感染の阻害を最大化できる。更に、本明細書に記載の抗体の様々な形態を、慢性又は急性感染HIV‐1患者に投与でき、またこれらの抗体がウイルス感染細胞の表面に結合して、これらの残存細胞に毒素を送達できるため、残存するウイルス感染細胞を殺滅するために使用できる。特定の実施形態では、本発明の抗体は、HIV感染細胞の潜伏残存を活性化するために、潜伏活性化剤と共に投与できる。予想されるのは、休止細胞中の潜伏プロウイルスHIV DNAを活性化することによって、不活性細胞が新規のウイルスを産生し始め、免疫系によって認識されて排除されることである。潜伏活性化剤の非限定的な例は、HDAC阻害剤、例えばボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、ジスルフィラム、JQ1、ブリオスタチン、PMA、イオノマイシン、又はこれらの組み合わせである。Bullen et al. Nature Medicine 20, 425-429 (2014)参照。
【0106】
好適な用量範囲は、抗体(又は断片)、並びに処方の特性及び投与経路に左右され得る。最適な用量は、過度の実験を行わずに当業者が決定できる。例えば、(毒素又は放射性部分を有する)非標識又は標識抗体の、1‐50mg/kgの範囲の抗体用量を使用できる。毒素を有する又は有しない抗体断片を用いる場合、又は特異的CD4感染T細胞に対して標的化できる抗体を使用する場合、より少ない抗体(例えば5mg/kg〜0.01mg/kg)を使用することができる。
【0107】
本発明の抗体及びその断片は、図及び実施例に示されているものから選択されたVH及びVL配列をエンコードするヌクレオチド配列を含む核酸を用いて、組み換えによって産生できる。
【0108】
特定の実施形態では、本発明は、完全な抗体/全抗体を提供する。特定の実施形態では、本発明は、その抗体結合断片を提供する。典型的には、断片は、別個の重鎖、軽鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2、F(ab)c、ダイアボディ、Dab、ナノボディ及びFvを含む標的への特異的結合に関して、上記断片が由来する完全な抗体と競合する。断片は、組み換えDNA技術によって、又は完全なイムノグロブリンの酵素若しくは化学的分割によって、産生できる。
【0109】
本明細書に記載の特異性を有する二重特異性抗体の産生のための、ポリペプチドをエンコードする核酸配列を用いて、組み換え抗体の安定した発現のためのプラスミドを産生できる。組み換え発現及び精製のための方法は、当該技術分野において公知である。Fcの特定の実施形態では、上記プラスミドはまた、本明細書に記載のFc部分に対する変化のいずれを含む。いくつかの実施形態では、上記変化は、上記抗体のFc領域及びその周辺におけるAAAA置換であり、これは、S298A並びにE333A及びK333AのFc領域aaを含有するNK細胞によってADCCを増強する(AAA突然変異)ことが報告されており(Shields RI et al JBC , 276: 6591-6604, 2001)、また4番目のA(N434A)は、粘膜部位へのIgGのFcR新生児仲介型輸送を増強する(Sields RI et al、同上)。
【0110】
特定の実施形態では、上記核酸は、好適な宿主細胞における組み換え発現のために最適化されている。特定の実施形態では、ベクターは、遺伝子送達及び発現に好適である。大腸菌、他の微生物宿主、酵母、並びにCOS、CHO、HeLa及び骨髄腫細胞株等の様々な高等真核細胞を含む、タンパク質の発現のために使用できる多数の発現系が存在する。
【0111】
CHO細胞、293T細胞を含むがこれらに限定されないいずれの好適な細胞株を、本発明のポリペプチドの発現のために使用できる。いくつかの態様では、本発明は、これらの抗体をエンコードする核酸、これらの核酸を含む発現カセット及びベクターを提供し、また本発明の抗体をエンコードする上記核酸を発現する単離株細胞も提供される。本発明のポリペプチドは、ポリペプチド及び/又は抗体の精製のためのいずれの好適な方法で精製できる。
【0112】
本明細書全体を通して引用されている様々な刊行物の内容は、その全体が参照により援用される。
【実施例】
【0113】
実施例1A:HIV‐1xCD3又はHIV‐1xCD16二重特異性分子及び対照二重特異性分子の構築
表2は、設計、発現及び精製された二重特異性ダイアボディのリストを含む。上記二重特異性ダイアボディは、列挙したアミノ酸配列のヘテロ二量体又ヘテロ三量体である。二重特異性ダイアボディの形成方法は、国際公開第2006/113665号、国際公開第2008/157379号、国際公開第2010/080538号、国際公開第2012/018687号、国際公開第2012/162068号、国際公開第2012/162067号、国際公開第2014/159940号、国際公開第2015/021089号、国際公開第2015/026892号及び国際公開第2015/026894号において提供されている。
【0114】
【表2】

【0115】
HIV‐1×CD3二重特異性ダイアボディは、HIV‐1及びCD3に同時に結合できる。HIV‐1×CD16二重特異性ダイアボディは、HIV‐1及びCD16に同時に結合できる。対照二重特異性ダイアボディ(4420×CD3)は、FITC及びCD3に同時に結合できる。対照二重特異性ダイアボディ(4420×CD16)は、FITC及びCD16に同時に結合できる。対照二重特異性ダイアボディ(7B2×4420)は、HIV‐1及びFITCに同時に結合できる。対照二重特異性ダイアボディ(A32×4420)は、HIV‐1及びFITCに同時に結合できる。対照二重特異性ダイアボディ(パリビズマブ×CD3)は、RSV及びCD3に同時に結合できる。
【0116】
表3は、二重特異性分子のいくつかの実施形態の概要を示す。本明細書中の情報は、列挙した二重特異性分子の代替設計のため、並びにこれらの分子からの、CDR又はVH及びVL鎖を用いた、他の二重特異性分子、例えば7B2、CH27、CH28、CH44の設計のために、容易に使用できる。
【0117】
【表3】
【0118】
実施例1C:ADCC活性を有するHIV‐1抗体
モノクローナル抗体。HIV‐1 env gp120定常領域1(C1;n=1)、CD4結合部位(CD4bs;n=3)、及びgp41クラスタ1[Pollara J. Curr. HIV Res.2013; 11(8):378-3870]を指向するものを表す、5つのmAb。全てのmAbは表1に列挙されている。ほとんどのmAbは、Fcγ受容体(Fcγ‐R)IIIaへの結合を最適化するためのShields et alに従ったアミノ酸置換を含むFc領域のための配列を用いて産生された[Shields RL J Biol Chem 2001; 276(9): 6591-6604]。
【0119】
A32 mAbは、HIV‐1 Env gp120のC1領域において立体配座的なエピトープを認識し(Wyatt et al, J. Virol. 69:5723‐5733 (1995))、強力なADCC活性を仲介でき、HIV‐1感染個体において検出可能なADCC仲介型Ab活性の大部分をブロックできた(Ferrari et al, J. Virol. 85:7029‐7036 (2011))。
【0120】
CH28又はCH44は、HIV‐1 CD4 bs中和抗体である。
【0121】
【表4】
【0122】
感染性分子クローン(IMC)。HIV‐1 IMCは、A3R5細胞株を用いた試験に基づいて、様々な程度の中和感受性を有するものを代表する22種の分離株を示した。IMCのリストは表5に報告されている。
【0123】
【表5】
【0124】
全てのIMCは、既に記載されているように、NHL4‐3単離株由来の骨格上に生成された[Edmonds TG. Virology. 2010;408(1):1-13; Adachi A. J Virol. 1986;59(2):284-291]が、サブタイプAE92TH023については、IMCは、40021AE HIV‐1単離株からの骨格を利用して生成された。全てのIMCはRenillaルシフェラーゼレポータ遺伝子を発現し、9つのウイルスオープンリーディングフレーム全てを保持した。Renillaルシフェラーゼレポータ遺伝子は、HIV‐1 Tat遺伝子の制御下で発現した。CD4+T細胞がHIV‐1に感染すると、HIV‐1複製中のTatの発現は、ルシフェラーゼの発現を誘発し、感染細胞は相対発光単位の測定によって容易に定量化できる。
【0125】
抗体依存性細胞毒性(ADCC)アッセイ。このアッセイは、mAbによって仲介される細胞毒性に関する読み出し値として、ルシフェラーゼベースのプラットフォームを用いて、本出願人らが以前に公開した方法に従って実施した[Pollara J. J Virol。 2014; 88(14):7715‐7726]。エフェクタ細胞集団は全て、Fcγ‐R IIIaの158位のアミノ酸に特徴的なヘテロ接合表現型F/Vを有する単一のドナーから得られた。エフェクタ対標的比は、各アッセイにおいて30:1であった。HIV‐1感染個体(A300)由来の血漿、及びパリビズマブ(抗RSV)mAbを、各アッセイにおいて陽性対照及び陰性対照として使用した。全てのmAbを、各IMCに対して共に試験した。特異的殺滅のパーセンテージ(%SK)を、既に報告したように計算した。%SKが>20%であれば、結果を陽性とみなした。
【0126】
ADCC仲介型mAbの効力及び幅。表1に列挙した各mAbを、表2に列挙した22個のIMCそれぞれに対して個別に試験した。結果を評価し、活性が観察された濃度とは無関係に、最大ADCC活性を%SKとして識別した。mAbを、認識されたenv gp120及びgp41領域に基づいてグループ化した。各mAbの陽性応答の平均を図1で報告する。mAbの大きさ及び幅を表3にまとめる。gp120 C1及びgp41クラスタ1に対する非中和Abは、それぞれ21個(95%)及び20個(91%)のHIV‐1分離株を認識することにより、最も広いADCCスペクトルを提供した。特異的殺滅の平均%(%SK)は、C1 mAbに関して37%、gp41クラスタI mAbに関して34%であった。A32及び7B2の最大%SKの平均は、それぞれ45及び42であった。累積的に、CH44 mAbは、21〜60%SKの活性範囲で試験した単離株の<60%を認識した。
【0127】
【表6】
【0128】
実施例2:二重親和性再標的化(DART)分子A32/CD3及び7B2/CD3による細胞殺滅
二重親和性再標的化分子A32/CD3(配列番号9及び11)並びに7B2/CD3(配列番号13及び15)を設計し、発現させた。これらの分子は、抗HIV‐1モノクローナル抗体(mAb)(tier2伝染/始祖(transmitted/founder:T/F)ウイルス感染CD4T細胞の表面に結合する特性を有するmAb(即ちA32又は7B2)[Ferrari G, J Virol. 2011; 85(14):7029-7036; Pollara J. Curr. HIV Res. 2013; 11(8):378-3870]のFabをベースとして生成されたHIV‐1結合アームと、CD3(αCD3εアーム)又はCD16(αCD16 h3G8アーム)レポータに結合できるエフェクタ細胞結合アームとを含む。HIV‐1又はエフェクタアームの代わりに無関係な結合アーム[αフルオレセイン(4420)又はαRSV]を有する適切な陰性対照も開発した。この実施例において提示される結果は、CD3‐DARTを用いた実験によるものである。
【0129】
ルシフェラーゼベース細胞毒性アッセイ。本発明者らは、既に報告されている最終的な読み取り値として、ルシフェラーゼ活性の検出に基づいて、DARTによって動員された細胞毒性CD8 T細胞によるHIV‐1感染細胞の排除を定量化するための方法を最適化した[Pollara J. J Virol. 2014; 88(14):7715‐7726]。正常かつ健康なHIV‐1血清陰性ドナー由来の、凍結保存した休止PBMCを、抗ヒトCD3(クローンOKT3;eBioscience)/抗ヒトCD28(クローンCD28.2;BD Pharmingen)を用いて、72時間活性化した。続いて、磁気ビーズを用いてCD4+富化細胞集団を得、HIV‐1サブタイプAE(CM235)、B(BaL)及びC(1086.c)を提示するIMCの存在下でスピノキュレート(spinoculate)し、72時間培養した。CD4+感染標的細胞を、33:1、11:1、3:1及び0:1のエフェクタ対標的比で、休止CD8+エフェクタ細胞と共に播種した。組み合わせた細胞に、DART(4420×CD3、7B2×CD3又はA32×CD3)を0.001〜1000ng/mlの濃度で添加し、6時間、24時間及び48時間の時点までインキュベートした。DARTを有しない組み合わせたエフェクタ及び標的細胞、非感染細胞、並びに標的細胞単独を、対照条件として各プレートに含めた。各インキュベーション時間の終わりに、Viviren基質を各ウェルに添加し、細胞をルミノメータで分析し、ルシフェラーゼ読み取り値によってRLU値を測定した。目的の細胞毒性細胞の存在下で、感染標的細胞の排除を、既に公表された適切な処方[Pollara J. J Virol. 2014; 88(14):7715‐7726]を用いて評価した。結果を、ADCCアッセイに関して記載したように、%SKとして報告する。
【0130】
抗HIV‐1 DART仲介型細胞毒性活性。上述の結果に基づいて、抗HIV‐1アームがA32及び7B2 Fab領域であり、エフェクタ細胞結合アームがαCD3εアームである、2つのDARTを生成した。本発明者らはこれら2つのDART分子を、感染CD4+T細胞を認識してこれらの殺滅を仲介する能力に関して研究した。HIV‐1血清陰性ドナーから得られた白血球搬出試料をインビトロで感染させて、既に説明したADCCルシフェラーゼベースアッセイを用いて、「材料及び方法」のセクションにおいて記載したような標的細胞を生成し、これにより、DARTの細胞毒性効果を検出した。本発明者らは、上記2つのCD3‐DART分子(7B2×CD3及びA32×CD3)を、休止CD8+T細胞の細胞毒性をサブタイプB BaL、AE CM235及びC 1086.c HIV‐1 IMC感染自己CD4+T細胞に対して標的転換する能力に関して試験した。本発明者らは、エフェクタ:標的比33、11及び3:1におけるエフェクタ及び標的細胞のインキュベーションの6、24及び48時間後に、DART仲介型細胞毒性を評価した。細胞毒性活性はインキュベーションの6時間後に既に観察されたが、各HIV‐1 IMCに対して33:1のE:T比を用いると、48時間においてピーク細胞毒性活性(>70%SK)が検出された(図2)。上記2つのHIV‐1 DARTの活性は、4420×CD3対照DARTを用いて観察されたバックグラウンドの最大殺滅よりも常に大きかった。本発明者らはまた、BaL IMC(図3)に関して図示されているように、各HIV‐1 IMC感染標的細胞集団(これもまた各E:T比のレベルにおいて考察される)に対する上記2つのDARTの用量依存性効力も観察した。
【0131】
33:1のE:Tにおいて48時間で50%の特異的殺滅が検出されたDART濃度(殺滅濃度50又はKC50)として、上記2つのDARTの効力の違いも分析した。A32×CD3 DART KC50は、各HIV‐1 IMCに対して、7B2×CD3 DART KC50よりも対数でおよそ1桁小さかった(図4)。
【0132】
これらの結果は、DARTが効果的にCD8+T細胞を動員でき、またCD8+T細胞の細胞毒性活性をHIV‐1感染細胞に向けることができることを示している。
【0133】
実施例3:A32/CD16及び7B2/CD16 DART
二重親和性再標的化分子A32/CD16(配列番号44及び45)並びに7B2/CD16(配列番号25及び27、表2参照)を、実施例6に記載されているように、ルシフェラーゼベース細胞毒性アッセイ、及び休止エフェクタ細胞と共にCD4+感染標的細胞を用いて、分析する。CD16‐DARTアッセイに関しては、エフェクタ細胞はCD16+細胞であり、これは全PBMCからCD3+CD20+細胞を除去することによって精製できる。
【0134】
実施例2に記載のルシフェラーゼベース殺滅アッセイを用いて、CD3‐DARTに関して既に提案したように、増殖性感染のCD16‐DART増強クリアランスの効力及び動態を検査及び比較する。手順は同一であるが、エフェクタ細胞の陰性選択により、CD16+細胞の富化集団が提供される。
【0135】
実施例4:CH28及びCH44 DART
CH28又はCH44の結合特異性を有するHIV‐1アームと、CD3又はCD16を標的とするエフェクタ細胞アームとを有するDART分子を作製し、基本的に実施例2及び3に記載したようなルシフェラーゼベース殺滅アッセイにおいて試験する。CH28又はCH44は、HIV‐1 CD4 bs中和抗体である。2013年9月27日出願の米国仮特許出願第61/883,220号、及びそれに対応するPCT出願を参照。CH28/CD3は配列番号17及び19を備える。CH44/CD3は配列番号21及び23を備える。
【0136】
実施例5:CD13‐及びCD16‐DARTの組み合わせ
上記ルシフェラーゼベース殺滅アッセイを用いて、併用処方中のCD13‐DART及びCD16‐DARTが増強された便益を提供するかどうかを試験する。DARTの組み合わせそれぞれに関して、本発明者らは、3つの異なるFcγ‐R IIIa(CD16)表現型を発現する細胞と、確立されたIMCのパネルとを利用して、CD3+及びCD16+エフェクタ細胞を同時に動員するDARTの能力を試験する。これらの評価は、HIV‐1血清陰性ドナーから回収された白血球搬出試料を用いて実施する。
【0137】
本明細書中に引用される全ての文献及び他の情報源は、その全体が参照によって本出願に援用される。
【0138】
実施例6:二重親和性再標的化(DART)タンパク質は、潜伏HIV感染細胞のT細胞仲介型細胞溶解を指示する
HIV特異性免疫の増強は、潜伏HIV感染を排除するために必要であると思われる。この目的のために、新規の免疫治療モダリティ、即ち2つの異なる細胞表面分子に同時に結合できる二重特異性抗体ベースの分子である、二重親和性再標的化(DART)タンパク質が開発されている。ここで説明されるのは、HIV感染標的細胞に結合することが公知である、幅広く結合するADCC仲介型抗体に由来する1価HIV‐1エンベロープ(Env)結合アームを用いて設計された、HIV×CD3 DARTであり、これは、細胞溶解性エフェクタT細胞に会合するよう設計された1価CD3結合アームに連結する。従ってDARTはポリクローナルT細胞を、異なるHIV‐1サブタイプに感染したCD4+T細胞を含むEnv発現細胞に特異的に会合してこれを殺滅するよう、標的転換させ、これにより、HIV特異的免疫の必要性を取り除く。抑制性抗レトロウイルス療法(anti‐retroviral therapy :ART)を受けている患者からのリンパ球を用いて、DARTは、HIV‐1株JR‐CSFに重感染した、又はHIV感染患者の休止CD4+T細胞から単離された自己残存ウイルスに感染した、CD4+T細胞の、インビトロでのCD8+T細胞クリアランスを仲介した。重要なことには、DARTは、潜伏ウイルスの発現の誘発後に、休止CD4+T細胞培養物からのHIVのCD8+T細胞クリアランスも仲介した。HIV潜伏逆転剤と組み合わせると、HIV×CD3 DARTは、HIV感染個体の潜伏HIV‐1残存をクリアする、効果的な免疫治療剤となる潜在能力を有する。
【0139】
抗レトロウイルス療法(ART)がHIVを根絶できないことは、まず、休止CD4+T細胞の潜伏感染の実証(1)によって示唆され、次に、強力なARTを受けている患者の休止CD4+記憶T細胞からの、珍しい完全な自律増殖性(replication‐competent)HIVの回復(2‐4)によって示唆された。現行のARTはHIV感染を根絶できないというのは、これらの長寿命のCD4+T細胞は、HIV遺伝子又はタンパク質を最小限しか発現しない状態で、持続的に感染したままとなり、また免疫系によって認識されないままとなるためである(1、5、6)。主に中枢記憶T細胞内における、休止状態のHIV感染の持続性は、HIV感染の根絶の主要な障害である(2‐4、7‐9)。
【0140】
ウイルスの持続性は、効果的な一連の新規複製のないウイルス粒子の発現を示し、薬物耐性又は治療の失敗をもたらさないように思われる(12、13)ような、非常に低いレベルの検出可能なウイルスRNAによって、治療された患者のかなりの割合で現れる(10、11)。しかしながら、持続性ウイルス血症は、免疫応答によってHIV‐1感染細胞を認識及びクリアすることができないことを実証している。
【0141】
慢性的に感染した個体は一般に、ARTを撤退させると急速なウイルスのリバウンドを有する(14‐16)。この観察は、患者の免疫系が、更なる介入によって補強されない限り、ウイルス血症を制御できないことを示唆している。従って、治療上の免疫付与は、CD4+及びCD8+細胞性免疫応答が比較的保存されたままであるときにARTを開始した個体においてさえも、ARTの不在下でウイルス血症を抑制できる増強された抗HIV免疫の誘発には現在まで成功していない(17)。従って、ARTにもかかわらず持続するHIV感染細胞、及び同様にARTにもかかわらずほとんどの患者に見られる低レベルのウイルス血症の原因である未知の細胞の潜伏プールの除去は、新規で革新的な戦略を必要とする。1つの初期段階、即ち潜伏期の破壊及び潜伏感染した細胞におけるウイルス抗原発現の誘導が、集中的に調査されている(18、19)。しかしながら、潜伏逆転剤(LRA)の開発において早期の進歩が得られているため、持続性感染をクリアする能力の改善も探求する必要がある。
【0142】
潜伏感染細胞は非常に稀であり、たとえ潜在残存が、休止中枢記憶CD4+細胞106個あたり感染細胞約1個という典型的な推定値の60倍も多い場合(20)であっても、現在のLRAは、この集団のごく一部分においてしかプロウイルス転写を誘発し得ず、また提示されるウイルス抗原の量も少なくなり得る(21、22)。従って、低レベルのウイルス血症を産生する細胞及び潜伏状態を離れるよう誘導された休止状態の感染細胞の両方を検出及びクリアするために、新規かつロバストな免疫応答が必要となり得る。
【0143】
潜伏HIVの再活性化後、ウイルス抗原が細胞の表面に提示され、従って抗体又は抗体由来分子によって標的とされ得る。このアプローチの実証概念は、免疫毒素、即ち毒素エフェクタドメインに連結した抗体又はリガンド等の標的化ドメインからなる二重官能性キメラタンパク質によって提供されている(23)。HIV感染個体における、免疫毒素を用いた初期臨床試験は、免疫学的又は臨床的マーカに対して持続的な影響を与えることができなかった(24)が、免疫毒素3B3‐PE38(25)は、BLTヒト化マウスモデルにおいて、ARTにもかかわらず持続するHIV感染細胞のレベルを低下させることが報告されている(26)。
【0144】
いくつかのモノクローナル抗体(mAb)が、HIV‐1感染細胞を認識でき、Fcγ受容体担持細胞に会合して、抗体依存性細胞毒性(ADCC)を仲介できるものとして報告されており(27)、例えばA32及び7B2は、それぞれgp120(28)及びgp41(29、30)中の保存された残基に結合する非中和mAbである。これらの特性に基づいて、2つの二重親和性再標的化(DART)タンパク質(31、32)が生成され、上記タンパク質中では、A32及び7B2 mAbに由来するHIVエンベロープ標的化アームを、ヒト化抗CD3ε mAbであるhXR32に由来するCD3エフェクタアームと組み合わせることによって、2つのHIV×CD3 DART、即ちA32×CD3及び7B2×CD3が生成された(図10)。
【0145】
T細胞とDART等の抗原発現標的細胞及び二重特異性T細胞エンゲージャタンパク質(BiTE)とを共会合させる二重特異性分子は、主に腫瘍学における使用のために特性決定され、開発されている(31‐34)。これらは、両方の結合アームの会合に依存し、これにより、主要組織適合性複合体(major histocompatibility complex:MHC)とは独立した様式で、標的細胞を発現する抗原に対して、ポリクローナルT細胞の細胞溶解活性を活性化及び標的転換する(31‐34)。このクラスの二重特異性分子は、mAbに関して典型的に採用されるものよりも何倍も低い用量においてインビボで有効であり(33、34)、また上記二重特異性分子は、再発性又は難治性B前駆細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)の治療のための、CD19×CD3 BiTEであるブリナツムマブの承認によって証明されているように、許容可能な安全性を有しながら臨床的に強力かつ効果的であることが示されている(35、36)。C末端に鎖間ジスルフィド結合を有し、構造的にコンパクトであることによって、標的とエフェクタ細胞との間の安定した細胞間接触を形成するのに非常に好適となったDARTは、並列比較においてBiTEよりも高い効力を示す(32、37)。
【0146】
本明細書において開示されるのは、潜在的な臨床HIV根絶戦略を模倣するために設計されたモデル系において、HIV感染患者の細胞から発生した真正潜伏ウイルス単離株に感染したものを含む、HIV‐1に感染したCD4+細胞に対してCD8+T細胞を標的転換する、HIV×CD3 DARTの能力である。感染細胞上の保存されたHIV‐1抗原を認識し、同時にポリクローナルエフェクタT細胞上の受容体と会合する、HIV×CD3 DARTの能力は、既存のHIV特異的細胞毒性エフェクタ細胞を活性化する必要を克服し(38)、従ってCD4+T細胞の残存の効果的な排除を妨げる大きなハードルを乗り越える。
【0147】
DARTに関するHIVアーム選択。A32 mAbは、(エピトープクラスタA内の)gp120 C1/C2立体構造のCD4誘発性エピトープに結合し(28、39‐41)、また7B2 mAbは、gp41クラスタIの線形エピトープに結合する(29、30、42)。上記2つのmAbを、サブタイプA、AE、B及びCの22個の代表的なHIV‐1感染分子クローン(infectious molecular clone:IMC)のパネルに対して、抗体依存性細胞仲介型細胞毒性(ADCC)を仲介する能力に関して試験した(図18)。A32 mAbは、平均パーセント特異的溶解(%SL)43.69%(12‐86%の範囲;図23)で、HIV‐1単離株のうちの21個(95%)を認識した。7B2 mAbは、平均%SL39.58%(15‐74%の範囲;図23)で、HIV‐1単離株のうちの20個(91%)を認識した。ADCCの仲介の幅広さ及び効率性を有すること、即ちHIV×CD3 DARTに必須の特性である、HIV感染細胞の表面におけるエピトープアクセス可能性を示すことに加えて、A32及び7B2 mAbは、これらのmAbによる結合に影響を及ぼすEnv中の残基が全てのHIV‐1サブタイプにわたって良好に保存されているため、DARTのためのEnv結合ドメインの魅力的な源となる(図24)。これらの特性に基づき、A32及び7B2 mAbに由来するHIV標的化アームが、ヒト化抗CD3ε mAbであるhXR32に由来するCDエフェクタアームと組み合わせられた、2つのHIV×CD3 DARTが生成された(図10A‐10C)。これらのHIV×CD3 DARTは、A32×CD3及び7B2×CD3と名付けられる。HIVアーム(4420×CD3、RSV×CD3)又はCD3アーム(A32×4420、7B2×4420)の代わりに、抗FITC抗体(4420)由来、又は呼吸器合胞体ウイルス(RSV)融合タンパク質抗体に対する抗体であるパリビズマブ由来の無関係なアームを有する、対照DARTも生成した。HIVアーム(4420×CD3、RSV×CD3)又はCD3アーム(A32×4420、7B2×4420)の代わりに、抗FITC抗体(4420)由来、又は呼吸器合胞体ウイルス(RSV)融合タンパク質抗体に対する抗体であるパリビズマブ由来の無関係なアームを有する、対照DARTも生成した。
【0148】
HIV DART結合特性。A32×CD3及び7B2×CD3はそれぞれ、ELISAによって示されるように、組み換えヒトCD3及びHIV‐1 Envタンパク質に対する結合を、別個にかつ同時に示した(図11A‐11C)。CD3タンパク質への結合は両方のDARTに関して同様であるが、JR‐FL gp140 CFに対する結合の大きさは、7B2×CD3に関しての方がA32×CD3に関してより大きく、これは恐らく、立体構造のA32エピトープがより高度にCD4依存性であるという事実によるものである(41‐44)。表面プラズモン共鳴(SPR)に基づき、CD3アーム結合に関する平衡解離定数(KD)は、A32×CD3及び7B2×CD3に関してそれぞれ3.6及び6.1nMであり、HIVアーム結合に関するKDは、M.ConS gp140 CFIを用いてA32×CD3に関して47.7nM、そしてJR‐FL gp140 CFを用いて7B2×CD3に関して15.1nMであった(図19)。SPR研究において、これら2つのDARTに対して異なるEnvタンパク質を利用したが、これは、JR‐FL gp140 CFに対するA32×CD3結合は不十分であり、またM.ConS gp140 CFIに対する7B2×CD3結合は、gp41クラスタI配列の欠如を理由として排除されるためである。
【0149】
HIV×CD3 DARTは、その細胞表面抗原に特異的に結合する。CD3エフェクタアームを有するDART(A32×CD3、7B2×CD3、4420×CD3)は、ヒトCD3+T細胞に同様の効率で結合するが、CD3アームを無関係なアームで置換されたDART(A32×4420、7B2×4420)又は2つの無関係なアームを有するDART(4420×4420)は結合しない(図11D)。HIV×CD3 DART(A32×CD3、7B2×CD3)は、サブタイプAE CM244 Envを発現するHEK293‐D371細胞に効率的に結合し(図11E)、A32×4420及び7B2×4420対照DARTでも同様の結合活性が観察される(図25)。予想されるように、4420×CD3対照DARTはこれらの細胞には結合しない(図11E)。A32×CD3及び7B2×CD3は、Jurkat‐522 F/Y細胞に結合し、これはCD3及びサブタイプB HXBc2 Envの両方を発現し(45)、CD3アームを介した結合は、4420×CD3、A32×CD3及び7B2×CD3結合の等価性によって示されるように、支配的である。CD3アームを無関係な4420アームで置換してCD3結合を切除した場合、細胞表面Envに対する低レベルの結合が、A32×4420を用いると検出されるが、7B2×4420を用いると検出されない(図11F)。
【0150】
Env発現細胞株のHIV×CD3 DART標的転換T細胞殺滅、及び付随するT細胞活性化。Jurkat 522‐F/Yは、Envを発現し、かつHIV感染CD4+T細胞のためのモデルとして機能する、ヒトCD4+細胞株であり、Jurkat‐ΔKSは、Env遺伝子の発現を排除するEnv遺伝子中の欠失/フレームシフト突然変異を除いて同一の、対照細胞株である(45)。これらの細胞株を利用して、HIV×CD3 DARTの、Env+標的細胞の標的転換T細胞殺滅を仲介する能力を評価した。標的細胞の細胞溶解は、乳酸デヒドロゲナーゼ(lactate dehydrogenase:LDH)放出を標準的なアッセイで測定することによって決定し、その結果を、ルミネッセンス(luminescence:LUM)アッセイによって確認した。LDH放出アッセイによって測定されるように、A32×CD3及び7B2×CD3は、健康なドナー由来のヒトT細胞を標的転換させて、E:T比10:1において濃度依存的な様式でJurkat‐522 F/Y細胞を殺滅し、これら2つのHIV×DARTは、インキュベーションの48時間後に、50パーセント有効濃度(EC50)が160‐230pg/mLであるという、同様の効力を示した(図12A)。Jurkat‐522 F/Y細胞のDART仲介型標的転換T細胞殺滅は、HIVアーム又はCD3アームが無関係なアームで置換された対照DART(4420×CD3、A32×4420、7B2×4420)を用いると発生しなかった(図12A)。A32×CD3及び7B2×CD3 DARTは、エフェクタT細胞を省略した場合(図12B)又は標的細胞がEnV発現を欠いていた場合(図12C)、標的細胞殺滅を仲介しなかった。これらのデータは、Env発現標的細胞及びEnv発現標的細胞とCD3発現エフェクタ細胞の共会合が、HIV×CD3 DART仲介型細胞溶解活性のために厳密に必要であることを実証している。
【0151】
LUMアッセイによって測定されるように、A32×CD3及び7B2×CD3は、Jurkat 522‐F/Y GF細胞の標的転換T細胞殺滅に関して、EC50値140‐170pg/mLという同様の効力を示し(図12D)、これはLDH放出アッセイによって測定されたものに近く、これは2つの異なるアッセイのモダリティ間に一貫性があることを示している。更に、LUMアッセイの感受性及び特異性によると、Env+標的細胞のDART依存性の排除は略完璧であり(>98%)、その一方で4420×CD3対照DARTは細胞毒性を仲介しなかった(図12D)。HIV×CD3 DART標的転換T細胞殺滅活性は、E:T比依存性であった。7B2×CD3による略完全な細胞溶解は、E:T比10:1及び5:1において、48時間の時点で達成されたが、E:T比1:1における高レベルの細胞溶解(>80%)は72時間まで遅れ(図12E‐12H)、これは、比較的低いE:T細胞比において、時間が、標的細胞の効率的な排除のための制限因子となることを示唆している。
【0152】
T細胞殺滅活性の標的転換に付随して、HIV×CD3 DARTは、Env+標的細胞の存在下で(活性化マーカCD25の上方制御によって測定される)T細胞活性化を誘発し、ここでCD25はCD8+T細胞において、CD4+T細胞よりも大きく上方制御された(図26A‐26D)。データ全体は、A32×CD3及び7B2×CD3がT細胞、特にCD8+T細胞を強力に活性化及び標的転換し、Env発現標的細胞を特異的に殺滅させることを実証している。更に上記殺滅のデータは、FACS分析によるEnv結合の検出が無視できる程度のものであっても、両方のDARTがCD4+細胞株の表面上のEnv抗原を認識してこれに結合できることを確認するものである(図13F)。
【0153】
HIV×CD3 DARTは、HIV感染CD4+T細胞の表面に結合し、CD8+T細胞を標的転換して、HIV‐1血清陰性ドナーからのリンパ球を用いてHIV‐1感染CD4+細胞を殺滅させる。A32×4420及び7B2×4420 DARTを、サブタイプAE CM235、サブタイプB BaL、及びサブタイプC 1086.C HIV‐1単離株を提示するHIV‐1感染性分子クローンに感染したCD4+T細胞に結合してその殺滅を標的転換する能力に関して評価した。各IMCは、感染標的細胞の細胞溶解を定量的に測定するために、ルシフェラーゼレポータ遺伝子を用いて操作した。感染細胞表面Envへの結合を評価するために、(CD3エフェクタアームを欠いた)A32×4420及び7B2×4420 DARTを、親A32及び7B2 mAbと比較した。感染のために用いたHIV‐1 IMCに独立して由来する両方のHIV×CD3 DARTによる、p24+(感染)CD4+T細胞の同様の染色(図27)が観察された。興味深いことに、A32×4420 DARTによる染色は、A32 mAbによる染色を略再現し;対照的に、7B2×4420 DARTは、7B2 mAbによる>24%(24‐38の範囲)の認識に比べて、HIV‐1感染細胞の>66%(66‐78%の範囲)を認識し、これは上記DARTが上記mAbに比べて、クラスタI gp41エピトープに対するより良好なアクセス可能性を有していることを示唆している(図27)。対照として利用した二次コンジュゲートAb及びパリビズマブmAbは、HIV‐1感染CD4+T細胞の<5%未満を認識した。
【0154】
次に、A32×CD3及び7B2×CD3の、HIV‐1血清陰性ドナーからのCD8+T細胞を3つのHIV‐1 IMCに感染した自己CD4+T細胞に対して標的転換する能力を調査した。上記2つのHIV×CD3 DARTは、自己CD8+Tエフェクタ細胞を標的転換して、サブタイプB BaL(図13A)、サブタイプAE CM235(図13B)及びサブタイプC 1086.C(図13C)IMC感染CD4+標的細胞を、濃度依存的な様式で殺滅させたが、その一方で対照DART(4420×CD3)は不活性であった。IMC感染CD4+細胞を用いたこれらの研究において、7B2×CD3(EC50〜10ng/mL)に比べてA32×CD3(EC50≦1ng/mL)がより高い効力を示したことは、Env+細胞株を用いた研究において同様の効力が観察されたこと(図12A‐12C)と対照的である。IMC感染CD4+T細胞のDART仲介型殺滅は、CD8+エフェクタ細胞の存在に依存しており、これらが存在していない場合、細胞溶解活性は観察されなかった(図13A‐13C)。時間経過研究では、DART依存性細胞溶解活性は、6時間において明らかであり、48時間において最大活性(>70%の細胞溶解)であった(図13D‐13F)。
【0155】
DARTによって動員されたエフェクタT細胞がHIV‐1感染標的細胞を殺滅する頻度に関する洞察を得るために、DARTの、細胞溶解活性を検出するために使用したものと同一の条件下で自己HIV‐1 BaL IMC感染CD4+細胞とコインキュベートした場合に、5体のHIV‐1血清陰性ドナーから得たCD8+T細胞の脱顆粒化を誘発する能力を評価した。データ分析に採用したゲート戦略の例を図14A‐14Gに示す。対照条件(HIV×CD3 DARTの不在又は対照DARTの存在)下での生存/CD3+/CD8+/CD107+細胞の平均頻度(図14H)は、0.38%(標準偏差0.10%;0.24‐0.51の範囲)であり、これは、1ng/mLの7B2×CD3又はA32×CD3の存在下ではそれぞれ平均3.53%(1.5‐6.9%の範囲)又は18.23%(12.30‐23.35%の範囲)まで上昇した。このデータは、HIV×CD3DARTが、Env発現標的細胞(自己HIV‐1感染CD4+T細胞)の存在下で、休止CD8+T細胞の脱顆粒化を特異的に誘発できることを実証している。
【0156】
血清陰性ドナーからのJR‐CSF感染細胞に対するHIV×CD3 DART標的転換CD8+T細胞殺滅活性。
HIV gag p24抗原産生を測定するウイルスクリアランスアッセイを、DART標的転換T細胞殺滅活性を評価するための代替的な方法として利用した。健康なドナーからのCD4+細胞に、HIV‐1クレードBクローンJR‐CSFを重感染させ、100ng/mLのDARTの不在下又は存在下において、E:T比1:1で自己CD8+T細胞を用いて7日間インキュベートした。2体の異なるドナーを用いた実験では、対照DART(4420×CD3)の添加は、DARTの不在下で実施したインキュベーションに比べてp24産生を有意には低減しなかったが、A32×CD3又は7B2×CD3の添加は、p24産生を同様の程度で有意に低減した(それぞれ72‐96%又は87‐99%;p<0.01ステューデントT検定;図15A‐15B)。上記ウイルスクリアランスアッセイを、インテグラーゼ及び非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤の存在下でも、感染が確立された後、エフェクタ細胞及びDARTの添加時に、更なる一連の感染をブロックするために実施した。抗レトロウイルス薬(ARV)がアッセイに含まれる場合、A32×CD3及び7B2×CD3は依然として、p24産生の低減への傾向を仲介するが、これは、抗レトロウイルスによるベースラインp24産生のレベルが低いことを恐らく原因として、統計的に有意なものとはならず(図15C)、これは、上記DARTがウイルス拡散の阻害によってではなく、感染細胞のクリアランスによって作用していることを示唆している。
【0157】
HIV×CD3 DARTは、抑制性ARTを受けている患者のリンパ球を使用して、JR‐CSF‐重感染CD4+細胞をクリアするよう、CD8+T細胞を標的転換させる。慢性ARTは、機能不全及び消耗したT細胞応答を特徴とし(46、47)、従って、生体外での患者試料における強力なDART仲介型T細胞標的転換クリアランス活性の確認が重要である。抑制性ARTを受けている8人のHIV感染個体からのリンパ球を用いたウイルスクリアランスアッセイにおける、HIV×CD3 DARTの活性を評価した。全ての参加者は、ウイルス量<50コピー/mLの研究の時点で少なくとも6ヶ月間ARTを受けていたが、それ以外は多様な臨床的背景を示した(図20)。
【0158】
HIV‐1血清陽性被験者からのT細胞は、血清陰性被験者からのものに比べてアポトーシスに対する感受性が高い場合があるため、HIV×CD3 DARTが、標的細胞の不在下において、T細胞生存率に影響を及ぼし得るかどうか(これは患者の細胞を用いたDART活性の分析を混乱させ得る)を評価した。ウイルスクリアランスアッセイ条件を模倣した、100ng/mLDARTの存在下での、HIV感染ART抑制患者からのCD4+又はCD8+T細胞の7日間の培養の後、アネキシンV/7AAD染色に基づくT細胞生存率の低下(図28A‐28B)は観察されなかった。更に、HIV×CD3又は対照DARTを用いた培養後、未刺激CD4+又はCD8+T細胞上の活性化マーカ(HLA‐DR、CD25)の変化は観察されず(図28C‐28D)、これは、CD3アームの会合単独では、生体外の患者のCD8+又はCD4+T細胞を活性化させないことを示唆している。
【0159】
抑制性ARTを受けている8人のHIV患者からのリンパ球を用いて、ウイルスクリアランスアッセイを実施した。このウイルスクリアランスアッセイでは、CD4+細胞にHIV‐1 JR‐CSF(標的細胞)を重感染させ、100ng/mLのDARTの不在下又は存在下において、E:T比0:1、1:10又は1:1で自己CD8+T細胞(エフェクタ)を用いて7日間インキュベートした。HIV×CD3 DART活性は、追加のCD8+T細胞の不在下でさえ発生し、これは、これらの実験条件下において、CD4+T細胞をエフェクタ細胞として動員できることを示し;対照と比べて、p24産生は、7B2×CD3(p<0.05)を用いた場合0.89ログ、A32×CD3を用いた場合0.32ログ(p=NS)、及び両方のDARTの1:1混合を用いた場合0.81ログ(p<0.05)だけ低下した(図16A)。実際のところ、完全に活性のDARTの添加は、感染標的細胞の存在時、CD4+T細胞の脱顆粒化の有意な増大につながった(図16G、16H)。CD8+T細胞をエフェクタとして添加すると、1:10のE:TにおいてCD8+T細胞単独時に見られた0.13ログの低減と比べて更なるp24レベルの低減がもたらされ、p24産生は、7B2×CD3を用いた場合1.2ログ(p<0.05)、A32×CD3を用いた場合0.6ログ(p=NS)、及び2つのDARTの混合を用いた場合1.8ログ(p<0.05)だけ低下した(図16B)。1:1というより高いE:T非の場合は更に顕著な低減が見られ、CD8単独では0.7ログの低下をもたらすが、p24産生は、7B2×CD3を用いた場合2.8ログ(p<0.05)、A32×CD3を用いた場合1.6ログ(p=NS)、及び2つのDARTの混合を用いた場合2.8ログ(p<0.05)だけ低下した(図16C)。有意な低減は、いずれの検出可能なベースラインCD8T細胞抗ウイルス活性の不在下でさえ見られ、3つのケースにおいて、DARTを用いたインキュベーション後に、ウイルスは回復できなかった(患者749に対して完全活性DART、並びに患者720及び725に対して7B2×CD3)。HIV gag p24抗原の絶対値を図21中で提供する。
【0160】
HIV×CD3 DARTはCD8+T細胞を、抑制性ARTを受けている患者からのリンパ球を用いて自己残存(autologous reservoir:AR)ウイルス重感染CD4+細胞をクリアするよう、標的転換する。5人の患者からの自己残存(AR)ウイルス感染CD4+標的細胞を用いたウイルスクリアランスアッセイを用いて、潜伏残存から発生したEnv配列を発現する標的細胞に対してT細胞を標的転換するDARTの能力を評価した(図16D‐16F)。潜伏ウイルスの再活性化後にインビボで発生し得るウイルスの多様性を考察するために、患者のARウイルス単離株を、マイトジェン刺激休止CD4+T細胞の限定希釈培養物のプールされた上清から生成した。AR ウイルス単離株の多様性にもかかわらず、JR‐CSF感染標的細胞を用いた場合に見られるDART活性が反映された。CD8+エフェクタの不在下においてARは感染標的細胞を用いると、中程度の活性が観察され(従ってCD4+T細胞に属する;図16D)、p24産生は、7B2×CD3を用いた場合0.32ログ、A32×CD3を用いた場合0.20ログ(p=N.S:7B2×CD3に対する応答の変動が比較的大きいため)、両方のDARTの1:1混合を用いた場合0.51ログ(p<0.05)だけ低減され、その一方で、対照DARTを用いると活性は観察されなかった(図16D)。ARウイルス感染CD4+標的細胞と自己CD8+エフェクタ細胞との混合物にHIV×CD3 DARTを添加すると、p24産生の低減は大幅に増強された。E:T比1:10では、p24産生は、CD8+細胞を単独で使用した場合のわずか0.02ログの低減と比較して、7B2×CD3を用いた場合0.51ログ(p<0.05)、A32×CD3を用いた場合0.37ログ、これら2つのDARTの1:1混合を用いた場合0.79ログ(p<0.05)だけ低減された(図16E)。HIV×CD3 DARTの存在下におけるp24産生の低減への傾向は、1:1というより高いE:T比においても見られるが、効果の大きさは、DARTの不在下で見られる可変ベースラインCD8+活性だけ低減される(図16F)。特に生体外DART活性は、2つのHIV×CD3 DARTのうちの少なくとも一方を用いて評価した5人の患者全てからのリンパ球を用いて、及び1:1DART混合を用いた全ての場合において、観察された。
【0161】
HIV×CD3 DARTは、潜在ウイルス発現の誘発後に休止CD4+T細胞からのウイルスをクリアするよう、抑制性ARTを受けているHIV感染個体からのT細胞を標的転換する。最終的に、「衝撃及び殺滅(shock and kill)」HIV根絶戦略において使用される試薬は、潜伏状態から出現する際に低レベルの抗原を発現する可能性がある稀な感染細胞を認識及びクリアしなければならない。既に説明されている潜伏状態クリアランスアッセイ(49)を採用した。このアッセイは、抑制性ARTを受けているHIV感染個体の休止CD4+T細胞の誘発後のウイルス回復を低減するよう、自己CD8+T細胞を標的転換する、DARTの能力を測定することを目指している。完全活性DART、又はA32×CD3及び7B2×CD3の1:1混合を、CD8+T細胞とPHA刺激休止CD4+T細胞とのE:T比1:10での共培養物に添加すると、6人の患者のうち6人全てにおいてウイルス回復が低減されたが、低減の大きさは患者によって異なっていた(図17A、22)。
【0162】
インビボでの最大マイトジェン刺激を用いたHIV潜伏の逆転は臨床的に現実的ではない(50)。しかしながら、全体的なT細胞活性化をもたらさない作用剤、例えばボリノスタット(VOR)を用いた潜伏の逆転後のウイルス抗原の提示は、最大マイトジェン刺激後に比べて小さくなり得る。臨床的に関連する文脈でHIV×CD3 DARTを評価するために、潜伏ウイルスエンベロープ発現を誘発するためのインビボでの400mgの単回投薬後に得られたものをモデル化する、VORへの生理学的に関連する曝露(18)を用いた。この設定では、E:T比1:10でのCD8+細胞及び完全活性DARTの添加は、試験した5人の患者のうち4人において、対照DARTを用いない又は用いる場合のCD8+細胞と比較して、24時間の共培養期間後のウイルス回復の低減につながった。24時間の共培養期間後にDARTに応答しなかった1人の患者(患者795)においては、共培養期間を24時間から96時間に延長することにより、ウイルス回復の完全な排除が得られた(図17B、22)。
【0163】
議論
潜在HIV‐1残存の排除における大きなハードルとしては:1)潜伏逆転剤(LRA)による誘発の前又は後における、中程度のHIV抗原レベルを提示する稀なHIV‐1感染細胞を認識する、免疫系の限定された能力(38、51);2)HIV‐1潜伏残存中の、CD8+細胞毒性Tリンパ球エスケープ突然変異体の存在(52);並びに3)感染細胞が提供する刺激が不十分であることによる、ARTを受けている患者の循環性HIV特異性CD8+T細胞の頻度の低さ、及び上記循環性HIV特異性CD8+T細胞を活性化する必要性(38)が挙げられる。本明細書において記載されるのは、HIV×CD3 DARTがこれらの主要な障害のそれぞれを克服し得るというデータである。
【0164】
非中和mAbであるA32及び7B2に由来するHIVアームを有するHIV×CD3 DARTは、細胞表面Env発現が低いように思われる場合であっても、HIV‐1 Env発現細胞株の認識、及び標的転換T細胞殺滅活性の誘発が可能であった。更にHIV×CD3 DARTは、VORへの曝露後のウイルス非保有(aviremic)ART治療患者から得られた休止CD4+T細胞をクリアするようにCD8+T細胞を標的転換するにあたって、生体外において有効であった。
【0165】
潜伏残存中に現れるHIV‐1単離株は、CD8+T細胞応答によって生成されるエスケープ突然変異体を含むことが報告されており(52)、これは、HIV‐1感染細胞をクリアするために自然感染によって誘発されるMHCクラスI制限CD8+CTL応答を制限し得る。HIV×CD3 DARTのA32及び7B2アームは、それぞれgp120及びgp41の良好に保存された残基と相互作用して、様々なサブタイプのHIV‐1単離株に感染した細胞に対するADCC活性を効率的に仲介する、幅広い応答性を有する非中和抗HIV mAbをベースとしている。なお、A32 mAbエピトープは、シンシチウム形成プロセス中(53)又はtier 2ウイルス感染後(54)に感染細胞の表面上に発現することが知られている最も早いものであり、7B2 mAbエピトープはgp41スタンプにアクセス可能であり、これは、出芽中に感染細胞の表面上に発現して、gp120サブユニットが解離する際に膜表面に保持される(29、55)。これらの特性は、感染細胞の表面に対するA32及び7B2エピトープのアクセス可能性の指標となる。重要なことには、CTLエピトープはDART仲介型標的転換殺滅活性には無関係であるため、CTL突然変異体の存在は制約にはならない。更に、DARTのような二重特異性分子によって動員されるエフェクタT細胞はポリクローナルであり、MHC制限を受けない(33)。これらの主張と矛盾することなく、A32×CD3及び7B2×CD3は、療法の開始前に蓄積され得るいずれのエスケープ突然変異体の存在にもかかわらず、自身の自己残存(AR)ウイルスに感染したCD4+細胞をクリアするように、患者からのCD8+T細胞を標的転換させるにあたって、有効であった(52)。興味深いことに、標的細胞として使用されるCD4+T細胞をインビトロで活性化させると、CD8+T細胞の不在下でのウイルス回復の特異的低減が観察され、これは、DARTがこれらの特定の実験条件下において、細胞毒性CD4+T細胞も動員し得ることを示唆している。これらと矛盾することなく、DARTが、Env発現Jurkat‐522 F/Y細胞の存在下においてCD4+T細胞の活性化を誘発し、HIV陽性個体からの感染自己標的細胞と共培養した場合に、CD4+T細胞の脱顆粒化を増大させることができることが分かった。細胞毒性CD4+T細胞は、HIV‐1(56)及びサイトメガロウイルス(57)への応答の文脈において過去に報告されている。有効なDART動員及び細胞毒性CD4+T細胞の標的転換がインビボ設定で発生するかどうかを決定するために、更なる研究が必要である。
【0166】
A32×CD3及び7B2×CD3 DARTの相対的な効力は、本発明者らの研究において採用した異なる複数の試験系にわたって変化したが、これはEnv発現標的細胞及び/又はエフェクタT細胞の特徴の変化によるものである可能性が最も高い。しかしながら、DARTのうちの一方が他方よりも高い活性を示した場合は常に、感染患者の細胞を用いた研究において2つのDARTの組み合わせを利用した場合(図16A‐16H及び17A‐17B)におけるより強力なDARTの活性と同様の活性が、一貫して観察された。従って、異なるHIVエピトープを標的とするDARTの組み合わせは、ADCC仲介型(58)又は幅広く中和された抗HIV‐1 mAb(59、60)の組み合わせに関して説明したものと同様に、活性のレベル及び幅広さの両方を最大化するための有利な戦略となり得る。
【0167】
HIV‐1特異的CD8+T細胞応答による潜伏感染細胞のプールの排除は、感染個体におけるこれらの細胞の頻度の低さ、及びこれらの細胞を休止状態から活性化させる必要によって制限される(38)。過去にHIV‐1抗原に曝露されていないHIV‐1血清陰性個体からの休止CD8+T細胞を用いると、HIV×CD3 DARTは、殺滅されることになる自己HIV‐1感染標的細胞と共にインキュベートした場合に、これらの休止CD8+T細胞の最大23%の脱顆粒化を誘発した。またDARTは、ウイルスクリアランスアッセイにおいて抗レトロウイルス療法を受けたHIV‐1血清陽性個体からのCD8+T細胞も標的転換できた。従ってHIV×CD3 DARTタンパク質は、HIV抗原に対する過去の曝露に関係なく、及び慢性HIV‐1感染において存在し続ける場合があるいずれの機能障害にかかわらず、CD8+T細胞毒性細胞を効果的に動員及び標的転換できる(46、47、61)。
【0168】
HIV‐1 Env発現標的に対するDART標的転換T細胞活性は、HIV×CD3DART濃度、エフェクタ:標的(E:T)細胞比及びインキュベーション時間に対して依存性であった。上記HIV×CD3 DART分子の各結合アームの1価性によって、標的細胞殺滅が、CD19×CD3及び他のDARTを用いて観察されたように(31、32、34)、エフェクタ/標的細胞の共会合のみに依存することが保証される。HIV×CD3 DART仲介型T細胞活性又は標的転換殺滅活性は、標的細胞上のEnv発現の不在下では観察されなかった。同様に、抑制性ARTを受けているHIV感染患者からのT細胞を用いると、ウイルス感染標的細胞の不在下ではT細胞活性化は観察されなかった。HIV×CD3 DARTは、HIV‐1感染Env発現標的細胞の近傍においてのみ、循環T細胞からの細胞毒性活性を誘発するため、HIV×CD3 DARTは、Env発現標的細胞が稀であることを理由として、ARTを受けているHIV感染患者において、炎症性サイトカイン放出等の広範な全身性効果を誘発することは期待されない。HIV×CD3 DARTが誘発するT細胞標的転換応答の特異性は、HIV感染が、疾患の急性期及び慢性期の両方において、HIV‐1特異的T細胞サブセット及び一般的なCD8+T細胞集団において免疫系の非特異的活性化を誘発することを考慮すると、臨床的に極めて重要である(62‐64)。
【0169】
細胞表面Envを発現するHIV感染CD4+T細胞は、HIV×CD3 DART標的転換T細胞殺滅活性の主要なインビボ標的である。これらの標的細胞はCD3も発現するため、上記DART分子は、感染CD4+T細胞と非感染CD4+T細胞との間のシナプスを仲介でき、これは、感染細胞の殺滅の標的転換ではなく、又は感染細胞の殺滅の標的転換に加えて、未感染細胞へのウイルスの拡散を恐らく促進し得る。しかしながら、DARTはCD8+T細胞の不在下であってもp24産生を低減した(図16A及び16D)ため、DARTがウイルスの拡散を増強したことを示唆するエビデンスは観察されなかった。
【0170】
要約すると、本明細書に記載の実験は、非中和A32及び7B2 mAb由来のHIVアームを有するHIV×CD3 DARTが、細胞溶解T細胞を:1)HIV‐1 Env発現CD4+細胞株;2)異なる複数のサブタイプのHIV‐1 IMVに感染した血清陰性個体からの活性化CD4+細胞;3)JR‐CSF若しくは自己残存ウイルスに感染した、抑制性ARTを受けている血清陽性患者からの活性化CD4+細胞;又は4)T細胞マイトジェン(フィトヘマグルチニン、PHA)若しくは潜伏逆転剤(ボリノスタット、VOR)に生体外曝露されたHIV感染患者からの休止CD4+細胞からなる標的細胞に対して標的転換させる特異的かつ強力な作用剤であることを実証した。重要なことには、本研究は、抑制性ARTを受けているHIV感染患者からの自己CD8+T細胞が、DARTの存在下においてエフェクタ細胞として有効であることを実証した。ボリノスタットの存在下でのHIV×CD3 DART仲介型T細胞殺滅活性の実証は特に注目に値する。というのは、これは、生体外拡張CTLを用いた以前の発見(49)と同様に、見込みのある臨床的HIV根絶戦略を模倣するために設計されたモデル系において、HIV感染患者の細胞から発現される真正潜伏ウイルス単離株に対する活性のエビデンスを提供するためである。従って、開示されているデータは、HIV×CD3 DARTが、「衝撃及び殺滅」HIV根絶戦略における、LRAと組み合わせたインビボでの試験のために、好適な作用剤であることを示している。
【0171】
方法
本発明者らは、本研究の試料の数が比較的限られていることから適切であると見做されたダネットの多重比較検定を用いて、データを再分析した。ここでは、計算されたp値を本文中(14ページ)、及び図5〜7に関する説明文中に示している。統計的分析のための「方法」のセクションも再び参照した。
【0172】
患者集団。示されているように、白血球搬出試料を、HIV血清陰性ドナー、又は少なくとも6ヶ月にわたって安定したARTを受けている、検出不可能な血漿ウイルス血症(<50コピー/mL)を有するHIV感染ドナーから得た。各患者からは文書によるインフォームドコンセントが得られており、研究はDuke and UNC Biomedical Institutional Review Boardsによって承認された。
【0173】
感染性分子クローン(Infectious Molecular Clones:IMC)。サブタイプB BaL、サブタイプAE CM235及びサブタイプC 1086.CのためのHIV‐1 IMCを、既に説明されているように(65、66)、NHL4‐3単離株由来の骨格を用いて生成した。全てのIMCはRenillaルシフェラーゼレポータ遺伝子を発現し、9つのウイルスオープンリーディングフレーム全てを保持した。Renillaルシフェラーゼレポータ遺伝子は、HIV‐1 Tat遺伝子の制御下で発現した。CD4+T細胞がHIV‐1に感染すると、HIV‐1複製中のTatの発現は、ルシフェラーゼの発現を誘発し、これにより、相対発光単位(RLU)の測定による感染細胞の定量化が可能となる。
【0174】
HIV×CD3 DARTの構築、発現及び精製。このDARTは、2つのポリペプチド鎖:抗CD3のVLが抗HIVのVHに連結した第1のもの;抗HIVのVLが抗CD3のVHに連結した第2のものを共発現するプラスミドから産生された。これら2つのポリペプチド鎖のカルボキシ末端は、ペアになった反対の電荷を有するEコイル/Kコイル二量体化ドメインからなり、これは鎖間ジスルフィド結合を含む(図10A‐10C)。HIVアーム配列は、非中和mAbであるA32[Genbank登録番号3TNM_H及び3TNM_L]並びに7B2[Genbank登録番号AFQ31502及びAFQ31503]に由来し、またCD3アーム配列は、hXR32、ヒト化マウス抗ヒトCD3εmAbに由来した(L. Huang, L. S. Johnson, CD3‐binding molecules capable of binding to human and nonhuman CD3,米国特許第20140099318号(2014))。対照DARTは同様に、HIV又はCD3特異性を、抗フルオレセインmAb(4420)(67)又は抗RSV mAb(パリビズマブ)(68)からの無関係な特異性によって置換することによって構築された。DARTエンコード配列は、CET1019AD UCOEベクター(EMD Millipore)にクローニングされ、既に説明したように(31)精製されたCHO細胞及びタンパク質にトランスフェクトされた。精製されたタンパク質を(NuPAGE Bis‐Tris gel system, Invitrogen)及び分析用SEC(TSK GS3000SWxL SE‐HPLC,Tosoh Bioscience)で分析した。
【0175】
ELISA。単一特異的結合アッセイのために、重炭酸塩緩衝液中において組み換えタンパク質(ヒトCD3ε/δヘテロ二量体、JR‐FL gp140DCF;(69))でコーティングしたMaxiSorpマイクロタイタープレート(Nunc)を、3%BSA及び0.1%Tween‐20でブロックした。DARTタンパク質を塗布した後、ビオチン化抗EKコイル抗体及びストレプトアビジン‐HRP(BD Biosciences)を順次添加した。二重特異性結合アッセイのために、上記プレートをJRFL gp140ΔCFでコーティングし、DART塗布後、ビオチン化CD3ε/δ及びストレプトアビジン‐HRPを順次添加した。HRP活性を、SuperSignal ELISAピコ化学発光基質(Thermo Scientific)を用いて検出した。
【0176】
SPR分析。抗原に結合するHIV×CD3 DARTを、既に説明したように(31、32)BIAcore 3000 biosensor(GE,Healthcare)で分析した。ヒトCD3ε/δを、製造元の手順に従ってCM5センサチップ上で不動化した。不動化されたCD3に対するDART結合を分析して、CD3アームの特性を評価し、また不動化されたCD3上で捕捉されたHIV DARTに結合するHIV‐1 Envタンパク質を分析して、HIVアームの特性を評価した。JRFL gp140ΔCFを用いて7B2×CD3結合を評価し、M.ConS gp140ΔCFI(69)を用いてA32×CD3結合を評価した。A32×CD3はJR‐FL gp140ΔCFに効率的に結合せず、またM.ConS gp140ΔCFIは7B2×CD3に対するgp41結合部位を有しないため、異なる複数のEnvタンパク質を利用した。結合実験は、10mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA及び0.005%P20界面活性剤中で実施した。不動化された受容体表面の再生成を、pH1.5の10mMグリシンのパルス注入によって実施した。KD値を、Langmuir1:1結合モデルに対する結合曲線のグローバルフィットによって決定した(BIA評価ソフトウェアv4.1)。
【0177】
細胞株。カイアシ類緑色蛍光タンパク質(Copepod Green Fluorescent Protein:copGFP)及びホタルルシフェラーゼ(System Biosciences)の融合タンパク質を構成的に発現するJurkat‐522 F/Y GF細胞を、形質導入及びクローン選択によって、Jurkat‐522 F/YからMacrogenicsにおいて生成した。HIV‐1 CM244(サブタイプAE)gp140のドキシサイクリン誘発性発現を有するHEK293‐D371細胞を、Dr. John Kappes(University of Alabama、Birmingham)から得た。
【0178】
細胞に対するDART又はmAb結合のフローサイトメトリー分析。4μg/mLのDARTを、10%ヒトAB血清を含有する200μLのFACS緩衝液中で、105細胞を用いて、室温で30分間インキュベートした。洗浄後、細胞を、100μLの1μg/mLビオチンコンジュゲートマウス抗EK抗体(これはDARTタンパク質のE/Kヘテロ二量体化領域を認識する)中に再懸濁し、1:500希釈ストレプトアビジンPEと混合し、2‐8度において暗所で45分間インキュベートした。細胞を洗浄し、FACS緩衝液を用いて再懸濁し、BD Caliburフローサイトメータ及びFlowJoソフトウェア(TreeStar,Ashland OR)で分析した。正常なヒトドナーからのIMC感染CD4+T細胞に対する結合は、A32及び7B2 mAbに関して既に説明したように(54)、HIV×4420 DARTに関してビオチンコンジュゲートマウス抗EK抗体及び1:500希釈ストレプトアビジン‐PEを用いて実施した。
【0179】
HIV‐1 Env発現細胞株に対する標的転換T細胞細胞毒性アッセイ及びT細胞活性化の評価。PanT細胞を、健康なヒトPBMCから、Dynabeads(登録商標)Untouched(商標)ヒトT細胞キット(Invitrogen)を用いて単離した。HIV‐1 Env発現細胞株(1‐4×105細胞/mL)を、エフェクタ:標的(E:T)比=10:1、又は示されているような可変E:T比においてヒトT細胞と合わせて、DARTの連続希釈によって処理し、37℃、5%CO2において一晩インキュベートした。細胞毒性を、既に説明したように(32)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出によって測定した(CytoTox96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ、Promega)。Jurkat‐522 F/Y GF細胞株の場合、細胞毒性を、ルシフェラーゼ‐Glo基質(Promega)を用いてルミネッセンスによっても測定した。特異的溶解を、ルミネッセンス計数(RLU)から算出した:細胞毒性(%)=100×(1‐(試料のRLU÷対照のRLU))、ここで対照=DARTの不在下でエフェクタ細胞を用いてインキュベートした標的細胞の平均RLUである。データをシグモイド用量応答関数にフィットさせて、50%有効濃度(EC50)及びパーセント最大特異的溶解値を得た。アッセイプレート中の細胞をCD8‐FITC、CD4‐APC及びCD25‐PE抗体(BD Biosciences)を用いて標識し、それに続く取得ソフトウェアCellQuest Pro Version 5.2.1(BD Biosciences)を備えたFACS Caliburフローサイトメータによる細胞回収の後、T細胞活性化をFACS分析によって測定した。データ分析を、FlowJoソフトウェア(Treestar, Inc)を用いて実施した。
【0180】
HIV‐1 IMC感染CD4+細胞に対する標的転換T細胞の細胞毒性アッセイ。正常かつ健康なHIV‐1血清陰性ドナーからの凍結保存休止PBMCを、抗ヒトCD3(クローンOKT3;eBioscience)及び抗ヒトCD28(クローンCD28.2;BD Pharmingen)を用いて72時間活性化させた。続いて、CD4+富化細胞集団(純度>92.3%;平均±標準偏差95.73±2.6%)を、磁気ビーズ(Miltenyi Biosciences)を用いたCD8+T細胞の欠失によって得て、HIV‐1サブタイプAE(CM235)、B(BaL)又はC(1086.C)を提示するルシフェラーゼ発現IMCの存在下でスピノキュレートし、72時間培養した。CD4+感染標的細胞を、1000〜0.0001ng/mLの濃度において、DARTの不在下又は存在下で、E:T比33:1、11:1、3:1及び0:1で、休止CD8+エフェクタ細胞(自己PBMCからの陰性選択によって単離、CD8+T細胞単離キット、Miltenyi Biosciences)を用いて6‐48時間インキュベートした。単独の未感染及び感染標的細胞を追加の対照として含めた。各条件を二重試験した。インキュベーション後、ViviRen(商標)生存細胞基質(Promega)を添加し、標的細胞の、ルミノメータで測定されたRLU;パーセンテージ特異的溶解(%SL)を、既に説明したように決定した(58)。
【0181】
T細胞脱顆粒化(CD107)アッセイ。HIV‐1 IMC感染細胞を標的として用いた細胞毒性アッセイに関して記載したように、HIV‐1 BaL IMCに感染したCD4+細胞を、1ng/mLのDARTの不在下又は存在下において、E:T比33:1で休止CD8+エフェクタ細胞と共に播種し、6時間インキュベートした。CD4T細胞の脱顆粒化に関して、活性化CD4+T細胞を、JR‐CSFに感染させて、本発明者らのADCCアッセイにおいて通常利用される(70)生存率(NFL1)及び標的特異性(TFL4)マーカを用いて標識するか、又はDARTの添加前に10:1の比でエフェクタとして標的に添加した。各条件を二重試験した。CD107 PE‐Cy5(クローンH4A3;eBioscience)を滴定し、インキュベーションの最後の6時間の間に、モネンシン溶液(BD GolgiStop)と共に添加した(71)。LIVE/DEAD Aqua染色、抗CD3 APC‐H7(クローンSK7;BD Pharmingen)、抗CD4 BV605(クローンOKT4;Biolegend)、抗CD8 BV650(クローンRPA‐T8;Biolegend)からなる抗体のパネルを用いて、CD107+CD8+T細胞を検出した。洗浄及び固定後、続く24時間以内に、カスタムメイドのLSRII(BD Bioscience,San Jose,CA)上で試料を得た。各試験に関して、合計最低300,000件の有望なイベントを取得した。データの分析を、Flow‐Joソフトウェア(Treestar,Ashland,OR)を用いて実施した。
【0182】
T細胞生存率及び活性化アッセイ。HIV感染ART抑制患者から得られたCD8+T細胞及びCD8欠失PBMCを、示されている100ng/mLのDARTと共に、96ウェルプレートに5×104細胞/ウェルで播種した。細胞を、10%のFBS、1%のペニシリン/ストレプトマイシン及び5U/mLのIL‐2を補充したcIMDM媒体0.2mL中で7日間培養した後、以下の抗体を用いて染色した:HLA‐DR‐PerCP(クローンL243)、CD25‐PE(クローンM‐A251)、CD8‐FITC(クローンHIT8a)、CD8‐PE(クローンHIT8a)、CD4‐FITC(クローンRPA‐T4)、並びにアネキシンV‐PE及び7‐AAD(全てBD biosciences,San Jose,CA)。
【0183】
標的転換T細胞ウイルスクリアランスアッセイ。CD8+T細胞を、陽性選択(EasySepヒトCD8+選択キット、Stem Cell)によって、PBMCから単離した。まず、CD8欠失PBMCを、2μg/mLのPHA(Remel,Lenexa,KS)及び60U/mLのIL‐2を用いて活性化し、次に90分間の1200xgにおけるスピノキュレーションによって、既に説明したように(47)MOI=0.01において、JR‐CSF又は自己残存ウイルス(AR)に感染させた。ARウイルスは、既に説明したように(72)実施した、各患者に対する休止CD4+T細胞の増生(outgrowth)アッセイからの複製ウェルの、プールされた上清から得た。5万(5×104)標的/ウェルを、10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシ及び5U/mLのIL‐2を補充したcIMDM媒体0.2mL中で100ng/mLのDARTの不在下又は存在下において、示されているE:T比で、CD8+T細胞と共に3重に共培養した。抗レトロウイルス薬(ARV)の存在下で実施した実験に関しては、接種の24時間後に細胞を洗浄し、1μMのラルテグラビル及び4μMのアバカビル、続いてDART及びCD8+T細胞を、培養物に添加した。7日目に、上清をp24ELISA(ABL,Rockville,MD)によってアッセイした、結果を、対数(単に対照としての感染標的細胞のp24を、試験条件のp24で除算する)として算出する。
【0184】
潜伏クリアランスアッセイ(Latency Clearance Assay:LCA)。CD4+感染細胞からのウイルス回復の低減を、過去に説明されているように(49)、抗ウイルスエフェクタ細胞及び/又は分子の添加後のウイルス非保有(aviremic)ART治療患者の休止CD4+T細胞を用いた、標準的な定量的ウイルス増生(outgrowth)アッセイによって評価した。この場合、LCAは、臨床的かつ薬理学的に関連する条件下で潜伏残存から出現するウイルスをクリアするDARTの能力をモデル化するために使用された。既に説明されているように(72)、休止CD4+T細胞を白血球搬出産物から単離して、PHA(4μg/mL)及びIL‐2(60U/mL)に24時間、又はボリノスタット(VOR)(335nM,6時間)(Merck Research Laboratories)に曝露し、0.5〜1×106細胞/ウェルで、上記残存の大きさに応じて12〜36個の複製ウェルに播種した。続いてVORを洗い落とし、CD8を1:10のE:Tで、及び指示されたDARTを100ng/mL添加した。細胞を(他の時間を指定されていない限りは)24時間にわたって共培養し、その後、DARTタンパク質を洗い落とし、HIV陰性ドナーからの同種異系CD8欠失PBMCを添加して、残留ウイルスを増幅した。各ウェルに関して、15日目のp24抗原の存在に関して上清をアッセイした。結果を、CD8+T細胞を添加していない対照に対して平準化された%ウイルス回復[(陽性ウェルの数/播種した合計数)×100]として算出する。
【0185】
統計的分析。グループ間の統計的比較を、GraphPad Prism Softward(La Jolla、CA)を用いたダネットの多重比較検定を用いて分析した。ダネットの多重比較補正を用いて算出されたp値<0.05は、有意であると考えた。ダネットの多重比較検定は、本研究の試料の数が比較的限られていることから、適切であると見做された。
【0186】
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【配列表フリーテキスト】
【0187】
配列表の数字見出し<223>の記載は、以下のとおりである。
配列番号1乃至8、39、40、49及び50:「人工配列の説明:合成ペプチド」
配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29乃至38、42乃至48、51乃至54、61、62、67、68、73、74、77、78、80及び81:「人工配列の説明:合成ポリペプチド」
配列番号10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、57乃至60、63乃至66、69乃至72、75、76、79及び82:「人工配列の説明:合成ポリヌクレオチド」
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
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図9G
図9H
図9I
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図9K
図9L
図9M
図10
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図12
図13
図14
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図16
図17
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図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
【配列表】
2017534296000001.app
【国際調査報告】