特表2017-534436(P2017-534436A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-534436(P2017-534436A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】流動床反応器用の流体注入ノズル
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/24 20060101AFI20171027BHJP
   C10G 9/32 20060101ALI20171027BHJP
   B01F 5/06 20060101ALI20171027BHJP
   B05B 7/04 20060101ALI20171027BHJP
【FI】
   B01J8/24
   C10G9/32
   B01F5/06
   B05B7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-511628(P2017-511628)
(86)(22)【出願日】2015年7月29日
(85)【翻訳文提出日】2017年3月22日
(86)【国際出願番号】US2015042662
(87)【国際公開番号】WO2016032671
(87)【国際公開日】20160303
(31)【優先権主張番号】62/042,911
(32)【優先日】2014年8月28日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・リード
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・マクミラン
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン・プーギャッチ
(72)【発明者】
【氏名】マーサ・イー・サルクディーン
【テーマコード(参考)】
4F033
4G035
4G070
4H129
【Fターム(参考)】
4F033QA10
4F033QB02Y
4F033QB03X
4F033QB12Y
4F033QB15Y
4F033QD02
4F033QD15
4G035AB04
4G035AB27
4G035AC26
4G035AC37
4G035AC55
4G035AE13
4G070AA01
4G070AB07
4G070BB32
4G070CA06
4G070CA07
4G070CA13
4G070CB05
4G070CB07
4G070CB17
4G070DA04
4H129AA02
4H129CA08
4H129CA10
4H129CA11
4H129CA21
4H129DA03
4H129FA02
4H129FA11
4H129NA21
4H129NA41
(57)【要約】
(i)液体原料を噴霧化スチームと組み合わせて、液体中に気泡を含む液体原料/スチームの混合物を形成するスロットル本体プレミキサ(13)と、
(ii)プレミキサ(13)と吐出ノズル(29)とに接続された、プレミキサ(13)によって形成される液体/スチームの混合物の流れをノズル本体(29)に移送するための導管(15)と、
(iii)流れ導管(15)に接続され、液体原料/スチームの混合物を剪断し、低減された寸法の液体原料小滴を形成する、吐出ノズル(29)と、
(iv)吐出ノズル(29)の出口にある、円筒状噴流に比して増加した表面積を有する液体原料の噴霧噴流を提供するためのディスペンサと、
を含む、循環流動床反応器のための液体原料ノズルアセンブリ。
ノズルアセンブリは、タールサンドビチューメンなどの重質油原料を用いる流動コーキングユニットにおいて特に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環流動床反応器であって、垂直軸線の周りに円形断面を有する反応器壁と、流動化ガス用の下方入口と、前記下方流動化ガス入口の上方及び前記反応器壁の周りにある液体重質油原料及び噴霧化スチーム用の原料注入ノズルアセンブリとを有し、
前記ノズルアセンブリがそれぞれ、前記反応器壁を貫通して前記反応器内へと延び、前記反応器内に吐出口と、前記吐出口から離れた端部に前記液体重質油原料用の原料入口とを有し、各原料注入ノズルアセンブリが、
前記液体重質油原料を噴霧化スチームと組み合わせて、液体中に気泡を含む液体原料/スチームの混合物を形成するプレミキサ部であって、前記プレミキサ部が、連続する収束用領域及び発散用領域を含み、前記収束用領域の進入部に配置される複数の径方向スチーム入口ポートを有する、プレミキサ部と、
前記プレミキサ部の出口に続いて接続され、前記プレミキサ部から吐出ノズルまで延び、前記プレミキサによって形成される前記液体/スチームの混合物の流れを前記吐出ノズルへと移送する、流れ導管部と、
前記流れ導管部に続いて接続される収束進入部を有する吐出ノズルであって、前記液体原料/スチームの混合物を剪断し、前記吐出ノズルから出る際に、低減された寸法の液体原料小滴を形成する、吐出ノズルと、
を含む、
循環流動床反応器。
【請求項2】
前記プレミキサ部が、前記収束用領域と前記発散用領域とを接続する中心円筒状スロート部を含む、請求項1に記載の循環流動床反応器。
【請求項3】
前記ノズルアセンブリが、流れ導管部を有し、前記流れ導管部が、前記プレミキサからの前記液体原料/スチームの混合物中の前記気泡の寸法を低減するための、連続する収束領域及び発散領域を含む、請求項1に記載の循環流動床反応器。
【請求項4】
前記ノズルアセンブリが、拡散領域によって分離されるタンデム型収束領域を含む流れ導管部を有する、請求項1に記載の循環流動床反応器。
【請求項5】
前記吐出ノズルの出口に、円筒状噴流に比して増加した表面積を有する、同様に形成される液体噴流プルームを発生させるためのマルチローブディスペンサを含む、請求項1に記載の循環流動床反応器。
【請求項6】
前記ディスペンサが、円形断面を有する中心流路を含む本体と、前記本体内の複数のローブとを有し、各ローブの壁は中空円錐部の一部分を規定し、前記中空円錐部の軸線は前記ディスペンサの中心軸線と対称に交差し、前記ディスペンサ本体内に、増加する断面積を有する、増大するマルチローブ出口通路を規定する、請求項3に記載の循環流動床反応器。
【請求項7】
流動コーキング反応器であって、垂直軸線の周りに円形断面を有する反応器壁と、流動化ガス用の下方入口と、前記下方流動化ガス入口の上方及び前記反応器壁の周りにある液体重質油原料及び噴霧化スチーム用の原料注入ノズルアセンブリとを有し、
前記ノズルアセンブリがそれぞれ、前記反応器壁を貫通して当該反応器内へと延び、前記反応器内に吐出ノズルオリフィスと、前記吐出ノズルから離れた端部に前記液体重質油原料用の入口とを有し、各原料注入ノズルアセンブリが、
前記液体重質油原料を噴霧化スチームと組み合わせて、液体中に気泡を含む液体原料/スチームの混合物を形成するプレミキサ部であって、前記プレミキサ部が、連続する収束用領域及び発散用領域と、前記収束用領域と前記発散用領域とを接続する中心スロート部とを含み、前記収束用領域の進入部に配置される複数の径方向スチーム入口ポートを有する、プレミキサ部と、
前記プレミキサ部の出口に続いて接続され、前記プレミキサ部から吐出ノズルまで延び、前記プレミキサによって形成される前記液体/スチームの混合物の流れを前記吐出ノズルへと移送する、流れ導管部と、
前記流れ導管部に続いて接続される収束進入部を有する吐出ノズルであって、前記液体原料/スチームの混合物を剪断し、前記吐出ノズルから出る際に、低減された寸法の液体原料小滴を形成する、吐出ノズルと、
を含む、
流動コーキング反応器。
【請求項8】
前記プレミキサ部が、前記収束用領域と前記発散用領域とを接続する中心円筒状スロート部を含む、請求項6に記載の流動コーキング反応器。
【請求項9】
前記ノズル本体が、流れ導管部を有し、前記流れ導管部が、前記プレミキサからの前記液体原料/スチームの混合物中の前記気泡の寸法を低減するための、連続する収束領域及び発散領域を含む、請求項6に記載の流動コーキング反応器。
【請求項10】
前記ノズルアセンブリが、拡散領域によって分離されるタンデム型収束領域を含む流れ導管部を有する、請求項6に記載の流動コーキング反応器。
【請求項11】
前記原料注入ノズルがそれぞれ、前記吐出ノズルの出口に、円筒状噴流に比して増加した表面積を有する、同様に形成される液体噴流プルームを発生させるためのマルチローブディスペンサを含む、請求項6に記載の流動コーキング反応器。
【請求項12】
前記ディスペンサが、円形断面を有する中心流路を含む本体と、前記本体内の複数のローブとを有し、各ローブの壁は中空円錐部の一部分を規定し、前記中空円錐部の軸線は前記ディスペンサの中心軸線と対称に交差し、前記ディスペンサ本体内に、増加する断面積を有する、増大するマルチローブ出口通路を規定する、請求項8に記載の流動コーキング反応器。
【請求項13】
流動床コーキング反応器を有する流動コーキングユニットであって、
垂直軸線の周りに円形断面を有していて反応器壁によって閉じ込められている反応部と、
高密度床反応部の下方にある基部領域であって、前記基部領域において、前記高密度床反応部内で、細かく分割された固体コークス粒子の高密度床を流動化するために流動化ガスが注入される、基部領域と、
前記反応器壁の前記周縁部に前記基部領域の上方で複数の高さに配置される複数の重質油入口と、
前記反応部の上方にあり、前記高密度床反応部から分離されるスクラバ部と、
前記高密度床反応部の頂部にある少なくとも1つのサイクロンであって、各サイクロンが、前記反応部を出るガス及びコークス粒子のための入口と、前記スクラバ部へと吐出するサイクロンガス出口と、前記サイクロン内でガスから分離されるコークス粒子を前記高密度床反応部へと戻すためのサイクロンディプレグとを有する、少なくとも1つのサイクロンと、
前記反応器の前記基部領域にあるストリッピング部と、
原料注入ノズルアセンブリと
を含み、
前記原料注入ノズルアセンブリがそれぞれ、前記反応器壁を貫通して前記反応器内へと延び、前記反応器内に吐出口と、前記吐出ノズルから離れた端部に液体重質油原料用の入口とを有し、各原料注入ノズルアセンブリが、
前記液体重質油原料を噴霧化スチームと組み合わせて、液体中に気泡を含む液体原料/スチームの混合物を形成するプレミキサ部であって、前記プレミキサ部が、連続する収束用領域及び発散用領域を含み、前記収束用領域の進入部に配置される複数の径方向スチーム入口ポートを有する、プレミキサ部と、
前記プレミキサ部の出口に続いて接続され、前記プレミキサ部から吐出ノズルまで延び、前記プレミキサによって形成される前記液体/スチームの混合物の流れを前記吐出ノズルへと移送する、流れ導管部と、
前記流れ導管部に続いて接続される収束進入部を有する吐出ノズルであって、前記液体原料/スチームの混合物を剪断し、前記吐出ノズルから出る際に、低減された寸法の液体原料小滴を形成する、吐出ノズルと、
を含む、
流動コーキングユニット。
【請求項14】
前記プレミキサ部が、前記収束用領域と前記発散用領域とを接続する中心円筒状スロート部を含む、請求項13に記載の流動コーキング反応器。
【請求項15】
前記ノズル本体が、流れ導管部を有し、前記流れ導管部が、前記液体原料/スチームの混合物中の前記気泡の寸法を低減するための、連続する収束領域及び発散領域を含む、請求項13に記載の流動コーキングユニット。
【請求項16】
前記ノズルアセンブリが、拡散領域によって分離されるタンデム型収束領域を含む流れ導管部を有する、請求項13に記載の流動コーキングユニット。
【請求項17】
各原料注入ノズルアセンブリが、前記吐出ノズルの出口に、円筒状噴流に比して増加した表面積を有する、同様に形成される液体噴流プルームを発生させるためのディスペンサを含み、前記ディスペンサが、円形断面を有する中心流路を含む本体と、前記本体内の複数のローブとを有し、各ローブの壁は中空円錐部の一部分を規定し、前記中空円錐部の軸線は前記ディスペンサの中心軸線と対称に交差し、前記ディスペンサ本体内に、増加する断面積を有する、増大するマルチローブ出口通路を規定する、請求項13に記載の流動コーキングユニット。
【請求項18】
前記ディスペンサが、4つのローブを含む本体を有し、各ローブの壁は中空円錐部の一部分を規定し、前記中空円錐部の軸線は前記ディスペンサの中心軸線と対称に交差し、前記ディスペンサ本体内に、増加する断面積を有する、増大する4ローブの出口通路を規定する、請求項17に記載の流動コーキングユニット。
【請求項19】
前記反応器が、前記ユニット内において、コークスラインによってバーナ/ヒータに結合されており、前記コークスラインは、コークスを前記ストリッパの底部から前記バーナ/ヒータに移送するための低温コークス移送ラインと、高温コークスを前記バーナ/ヒータから前記反応器に戻すための高温コークス戻りラインとを含む、請求項13に記載の流動コーキングユニット。
【請求項20】
コークス移送ラインによって前記ヒータ/バーナに接続されたコークスガス化器部を含む、請求項17に記載の流動コーキングユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、循環流動床反応器に流体を注入するのに有用なノズルアセンブリに関する。本発明は、特に、石油残渣分及びビチューメンなどの重質油を流動コーキング反応器内に注入するのに有用なノズルアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
循環流動床(CFB:circulating fluid bed)反応器は、種々の多相化学反応を行うために使用され得る周知のデバイスである。この種の反応器では、流体(ガス又は液体)が、粒状固体物質内を、固体を懸濁し、固体を流体であるかのように挙動させるほど十分に速い速度で送られる。流動化は、反応器の基部にある分配器(グリッド、スパージャ又は他の手段)を通じて注入される、空気、スチーム又は反応物ガスなどの流動化ガス(又は流動用ガス(fluidizing gas))によって維持される。CFB反応器は、現在、多くの工業用途で使用されており、この用途の中には、石油重質油の接触分解、オレフィン重合、石炭のガス化、並びに水及び廃棄物の処理がある。主要な用途の1つは循環流動床燃焼器の分野にある。この分野では、石炭又は別の高硫黄燃料が、石灰石の存在下で燃焼され、SOxの排出量を低減させる。窒素酸化物の排出量もまた、床において得られる比較的低い温度により低減される。別の用途は、流動床コーキングプロセスであり、このプロセスは流動コーキング及びその変化形であるFlexicoking(商標)として知られている。この双方とも、Exxon Research and Engineering Companyによって開発されたものである。
【0003】
流動床コーキングは石油精製プロセスであり、このプロセスでは、重質石油原料、典型的には、分留による非留出残油(残渣分)又は重質油が、典型的には約480〜590℃(約900〜1100°F)、ほとんどの場合においては、500〜550℃(約930〜1020°F)の高い反応温度での熱分解(コーキング)によって、より軽質で、より有用な生成物に転化される。流動コーキングプロセスにより処理され得る重質油としては、重質常圧残渣分(heavy atmospheric resids)、芳香性抽出物、アスファルト、並びにCanada(Athabasca,Alta.)、Trinidad、Southern California(La Brea,Los Angeles)、McKittrick(Bakersfield,California)、Carpinteria(Santa Barbara County,California)、Lake Bermudez(Venezuela)のタールサンド、タールピット、及びピッチ湖から、及びTexas、Peru、Iran、Russia及びPolandで見つかるものなどの同様の堆積物からのビチューメンが挙げられる。このプロセスは、高温のコークス粒子を含む大型の反応容器を備えるユニット内で行われる。コークス粒子は必要な反応温度において流動化した状態で維持され、スチームが容器の底部において注入され、コークス粒子の平均移動方向は、床全体を通して下方向である。重質油原料は、典型的には、350〜400℃(約660〜750°F)の範囲の圧送可能な温度に加熱され、噴霧スチームと混合され、反応器内のいくつかの連続する高さに配置された複数の原料ノズルを通じて供給される。スチームは、反応器の底部にあるストリッパ部に注入され、ストリッパ内のコークス粒子を通して上方に送られる。その際、コークス粒子は、上方の反応器の主要部分から降下する。原料液体の一部分は流動床内のコークス粒子を被覆し、続いて、固体コークスの層と、ガス又は気化液体として発生するより軽質の生成物とに分解する。反応器の圧力は、炭化水素蒸気の気化を有利にするために比較的低く、典型的には、約120〜400kPag(約17〜58psig)、最も通常は、約200〜350kPag(約29〜51psig)の範囲である。コーキング(熱分解)反応の軽質炭化水素生成物は、気化して、流動化スチームと混合し、流動床を通過して上方に、コークス粒子の高密度流動床上方の希釈相領域へと進む。コーキング反応で形成される気化炭化水素生成物のこの混合物は、スチームとともに、約1〜2メートル/秒(約3〜6フィート/秒)の空塔速度で希釈相内を上方に流れ続け、いくらかのコークスの微細な固体粒子を同伴する。同伴される固体のほとんどは、1つ以上のサイクロン分離器で遠心力により気相から分離され、重力によって、サイクロンディプレグを通過して高密度流動床に戻る。反応器からのスチームと炭化水素蒸気との混合物は、その後、サイクロンガス出口から、反応部上方に配置され、隔壁によって反応部から分離されたプレナム内のスクラバ部に排出される。この混合物は、スクラバ部において、スクラバ部内のスクラバシェッド(scrubber shed)上に降下する液体との接触によりクエンチされる。ポンプアラウンドループは、凝縮された液体を外部冷却器へと循環させ、スクラバ部の頂段に戻し、液体生成物の最重質留分のクエンチ及び凝縮のための冷却を行う。この重質留分は、典型的には、流動床反応領域に供給して戻すことにより消滅するまで再利用される。
【0004】
即座に気化されない原料の成分は、反応器内のコークス粒子を被覆し、その後、固体コークスの層と、ガス又は気化液体として発生するより軽質の生成物とに分解される。原料と流動床との接触時、一部のコークス粒子は、原料で不均一に被覆されるか、原料で厚く被覆され過ぎる場合があり、他のコークス粒子との衝突時に互いに付着する場合がある。これらのより重いコークス粒子は、ストリッパ部の底部に注入されたスチームによって効率的に流動化されない場合がある。そのため、これらの粒子は、その後、反応器部からストリッパ部へと下方に送られ、そこで、ストリッパ部内のシェッド、主にシェッドの最上段に付着しかつそれに蓄積する場合がある。従来、ストリッパ部は、いくつかのバッフルを有する。バッフルは、ストリッパの本体全体にいくつかの重ねられた段又は層で長手方向に延びる、逆向きのチャネル部の形態におけるその形状から、通常、「シェッド」と称される。コークスは、コークスがストリッパ内を下方に通過する際にこれらシェッド上を通過し、シェッド下の容器底部にあるスパージャから入るスチームに曝露され、ストリッパを上に移動する際に再分配される。反応器の固体コークスは、主に炭素からなり、より少量の水素、硫黄、窒素、並びに微量のバナジウム、ニッケル、鉄及び原料由来の他の元素を含む。この固体コークスは、ストリッパを通過し、反応容器を出てバーナへと進み、そこで、一部が流動床内で空気とともに燃焼され、その温度は約480から700℃(約900°Fから1300°F)に上昇し、その後、高温のコークス粒子は、流動床反応領域に再循環され、コーキング反応のための熱を供給するとともに、コークス形成のための核として機能する。
【0005】
同じくExxon Research and Engineering Companyによって開発されたFlexicoking(商標)プロセスは、実際には、上述のように、反応器及びバーナ(当該プロセスのこの変形形態においてはヒータと呼ばれることが多い)を含み、コークス生成物を空気/スチームの混合物との反応によってガス化し、低発熱量の燃料ガスを形成するためのガス化器も含むユニット内において操作される流動コーキングプロセスである。ヒータは、この場合、酸素欠乏環境で動作される。同伴されるコークス粒子を含む、ガス化器による生成物ガスは、反応器の熱必要量の一部を供給するためにヒータに戻される。ガス化器からヒータに送られるコークスの戻り流が、熱必要量の残りを供給する。ヒータを出る高温コークスガスは、浄化のため処理される前に、高圧スチームを発生させるために使用される。コークス生成物は反応器から連続的に除去される。Flexicokingプロセスと流動コーキングプロセスとの間の類似性に鑑み、用語「流動コーキング」は、本明細書において、区別が必要とされる場合を除き、流動コーキング及びFlexicokingの両方を意味しかつ包含するように用いられる。
【0006】
流動コーキングユニットのストリッピング部は、反応器の下方部分に配置されている。反応器からのコークス粒子はストリッパに送られ、そこでストリッピング部の底部に配置されたスパージャからのストリップ用スチームと接触し、炭化水素蒸気相生成物がコークスから除去される。コークスは、ユニットの底部から出される。反応器の十分に混合される性質により、ストリッパに入るある量のコークスは、依然として、分解可能な炭化水素物質で被覆されている。この物質に関して、ストリッパは、分解及び乾燥がその内部で起こり得る更なる反応部として機能する。この物質がストリッパ内を進むにつれて、更なる分解反応が起こる。このため、ストリッパ内においては、炭化水素キャリアンダとしてバーナ又はヒータに送られる分解可能物質の量を最小限にするために、プラグフローの挙動が極めて望ましい。バーナ又はヒータで、この物質は、事実上、コークスへと品質が落とされる。Flexicokerとは異なり、ベーシックな流動コーカーでは、この現象は、量が少ないことから大きく不利にはならないが、Flexicokerの場合、この物質はヒータに送られ、そこで、高温の酸素欠乏環境に曝露される。ヒータに入る未反応物質は分解して、広範な蒸気相生成物を形成し得る。これら生成物は、その後、ヒータのオーバーヘッドに運び上げられ、そこで、表面上に凝縮し得る。その結果、設備能力及び/又は運転長さの制約が生じる。
【0007】
高密度流動床は、一般に、十分に混合される反応器として挙動する。しかしながら、低温流体力学を用いたモデルシミュレーション及びトレーサ研究では、かなりの量の湿潤コークス(wetted coke)が反応部を迅速にバイパスして、ストリッパシェッドに接触し、そこで、湿性膜の一部がコークスへと転化され、コークス粒子が互いに結合することができることを示している。時間の経過とともに、蒸気相からの炭化水素種は、粒子間の間隙内で凝縮し、非常に硬質で除去が困難な堆積物を生成する。流動コーキングユニットにおける現行の手法は、反応器温度を上昇させて熱分解反応を加速することである。このことは、コークスのより迅速な乾燥を可能にし、それにより、ストリッパに入る湿潤コークスの量を低減する。しかしながら、反応器温度が高いほど炭化水素蒸気の再分解の速度が増し、C+の液体の収率が低下し、経済的損失につながる。
【0008】
この課題を克服するための他の試みがこれまでになされており、様々な程度の成功を収めている。1つの手法は、非特許文献1に報告されているように、例えば、ストリッパシェッドの下に配置されたスチームスパージャをストリッパに取り付けることによってストリッパの動作を向上させることであった。
【0009】
反応器のファウリングを低減する、及び液体の収率を増加する、の両方のための別の手法は、原料が床に入る際における、原料の噴霧化を向上させることである。向上した噴霧化により、油が液体形態でストリッパへと下方に運ばれる程度が低減されることが期待される。流動コーキングプロセスにおいて用いられる従来の噴霧化ノズルでは、スチームを用いて、高温のコークス粒子の流動化床への、加熱された残渣分又はビチューメンの噴霧を補助する。反応器の操作性及び液体生成物の収率を向上させるには、残渣分小滴と同伴されたコークス粒子との効果的な接触が重要である。注入された噴霧は床内に噴流を形成し、この噴流中に、流動化したコークス粒子が同伴される。不十分な性能の噴霧化ノズルにおける主な懸念は、床内に液固凝集体が形成しがちとなり、固体への高度の局所的な液体の充填が生じ、大きな湿性の原料/コークス凝集体が形成されることである。これらのより重い凝集体は、反応器の下方部分へと分離され、反応器の内部、特に、ストリッパ部を汚損する傾向があり得る。高められた原料噴霧化性能によって、噴霧化された原料とコークス固体との間の接触が向上し、反応器の操作性の全体的な向上につがなり、ストリッパのファウリング低減により運転期間が長くなる及び/又はより低い反応器温度での操作により液体生成物の収率が高くなる。改良された原料ノズルの使用によって、より高い液体供給速度も促進される可能性がある。
【0010】
流動コーキングユニットでの使用のために提案されたスチームアシスト式ノズルが特許文献1(Base)及び特許文献2(Chan)に記載されている。ノズルが壁を貫通してコークス粒子の流動床に入るように、典型的には、流動コーカーの側壁に取り付けられるこのノズルでは、重質油/スチームの混合物の泡状の流れのストリームが生成され、ノズルオリフィスにおいて噴霧される。使用されるノズルは、順に、入口と、縮径の第1の収縮部と、拡径の拡散部分と、縮径の第2の収縮部と、オリフィス出口と、を含む円形の流れ通路を有する。収束部は流れの混合を加速させ、伸張及び剪断応力流動機構により泡径の低減を引き起こす。第2の収縮部は、混合物の流れを第1の収縮部よりも加速させるように設計されており、その結果、第1の収縮によって生成された泡は、第2の収縮で大きさが更に低減される。拡散部分は、混合物が2回目の加速の前に減速し、速度を落とすことを可能にする。この目的は、ノズルを出る小滴の平均中心径を、比較的微細な大きさ、典型的には、300μmのオーダーに低減することであるが、これは、重質油小滴が加熱されたコークス粒子と衝突する最大確率が、小滴及び加熱された粒子の両方が同様の直径を有する場合に発生すると報告されていることが理由である。したがって、200又は300μmの小滴径が望ましいと考えられる。特許文献1のノズルの目的は、従来の見解によれば、コークス粒子と油小滴との間のより良好な接触に至る可能性のある微細な油小滴の噴霧を生成することである。非特許文献2に概念が詳述されている後に続く手法では、液体の小滴と高温のコークス粒子との間の初期の接触及び混合は、噴霧中の液体の小滴の大きさをあまり考慮することなく高められるべきであると提案している。吸出し管を用いるスプレーノズルが提案されており、この種のノズルはまた、特許文献3(Chan)に記載されている。このノズルデバイスは、ノズルオリフィスから出る液体噴流の運動量を利用して固体を吸出し管のミキサ内に引き込み、ミキサ内の固体と液体の激しい混合を引き起こし、こうすることで、個々の小滴と粒子とが接触する確率を高めることにより機能する。この結果、より多くのコークス粒子が油で薄く被覆される可能性があり、液体の収率の向上につながり、凝集体の生成が減少し、ファウリングの低減につながり、液体気化プロセスにおける物質移動の制限を低下させることにより液体生成物の高い収率をなお達成しつつも反応器の動作温度が低下する可能性がある。実際のアセンブリは、反応器の側壁を貫通する、噴流を生成するための噴霧ノズルと、開放式の吸出し管型ミキサと、を含む。開放式の吸出し管型ミキサは、反応器内に水平に配置され、ノズルから噴霧された噴流が管内を移動し、コークス粒子及び流動化ガスのストリームを、コークスと液体の小滴との混合が行われる管へと同伴するように、ノズルと位置合わせされている。吸出し管は、管内の低圧状態を促進し、コークス粒子及び流動化ガスの誘導を補助するためのベンチュリ部を有することが好ましい。しかしながら、このデバイスは、流動床内のアセンブリのファウリングに対する懸念から、商業的に成功を収めてはいない。
【0011】
例えば、Baseの特許で示されるノズルの円形出口オリフィスは、ノズル出口部から放出される円筒状の液体プルームを形成する。このプルームは、最小の面積対外周部比を有し、これは、噴流の中心コアに固体粒子が進入することへの著しい障害となり、おそらくは、高温のコークス粒子と注入された油ストリームとの間の、最適に満たない接触につながる。
【0012】
改良された混合機構が特許文献4(McCracken)に記載されている。ここでは二方向流れ調整器と呼ばれるこのデバイスは、主流れ導管に対して鋭角及び互いに対してある角度で配置された原料導管を通じて、油とスチームを、ノズルに通じる主流れ導管へと導く。加えて、スチームが主導管に入る際に加速するように、スチームライン内の、スチームが主導管に入る箇所に、流量制限器が配置される。この、ノズルの混合部の構成が、流れ特性の向上に寄与すると記載されている。
【0013】
特許文献5(Chan)は、循環流動床反応器のための改良された液体原料ノズルアセンブリについて記載している。このノズルアセンブリは、重質油液体原料をノズル本体の上流側で噴霧化スチームと混合して、液体原料/スチームの混合物を形成するとともに、吐出ノズル本体に通じる下流側導管を備える、スロットル本体プレミキサを有する。吐出ノズル本体は、吐出ノズルの出口にあるディスペンサにより液体原料/スチームの混合物を剪断(シヤ(shear))して、低減された寸法(又はサイズもしくは大きさ)の液体原料小滴を形成し、円筒状噴流に比して増加した表面積を有する液体原料の噴霧を提供するように構成されている。ノズルアセンブリは、タールサンドビチューメンなどの重質油原料を用いる流動コーキングユニットにおいて特に有用である。
【0014】
ノズル先端の上流に配置されたプレミキサは、ノズルの性能において重要な役割を果たす。プレミキサはスチームをビチューメンと密に混合し、ノズルに通じる導管内に泡状の流れを形成する。分散した泡状の流れの質は結果的な噴霧化性能にとって重要である。良好なプレミキサは、広範なスチーム及びビチューメンの流量にわたって安定的な泡状の流れを形成し、原料ノズルの機能窓を大きくすることにつながる。この大きな機能窓により、噴霧化が乏しく、大きな湿性凝集体の形成の原因となる脈動範囲に入る可能性が低下する。
【0015】
特許文献5に記載されているノズルアセンブリは、その対向する、衝突するスチームジェットによって、特許文献4に記載されているBFCプレミキサと比べると大幅に広範な動作条件にわたって非常に安定的な(動圧力脈動が少ない)泡状の流れを提供するが、運用経験から、ベンチュリ管のスロートの近傍において、スチーム注入ポートの下流側の部分に馬蹄渦の形状の中程度の摩耗が現れる侵食の可能性の懸念があることが判明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第6,003,789号明細書
【特許文献2】カナダ国特許第2224615号明細書
【特許文献3】米国特許第7,025,874号明細書
【特許文献4】米国特許第7,140,558号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2012/0063961号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Hsiaotao Bi et al.“Flooding of Gas−Solids Countercurrent Flow in Fluidized Beds”(Eng.Chem.Res.,2004,43,5611−5619)
【非特許文献2】“Injection of a Liquid Spray into a Fluidized Bed:Particle−Liquid Mixing and Impact on Fluid Coker Yields”,Ind.Eng.Chem.Res.,43(18),5663.,House,P.at al
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、ミキサの下流側における制御された低圧脈動によりスチームとビチューメンの適切な混合をなお維持しつつも、噴霧スチームと重質油原料とが接触し混合する部分の侵食(又はエロージョン)を最小限にすることができるノズルアセンブリに対する需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の要旨)
本出願人は、ここで、重質油原料インジェクタアセンブリの改良されたプレミクシング部を考案した。スチームとビチューメンとを混合して、噴霧化ノズルに通じる導管内に、米国特許出願公開第2012/0063961号明細書に記載されている手法で、分散した泡状の流れを発生させる改良型プレミキサは収束−発散スロート部を有するが、特徴として、噴霧化ガス、通常スチームが収束部のすぐ上流側の2つ以上のオリフィスを通じて導入され、これにより、原料を、ベンチュリ管のスロート内部の代わりにスロート内に導く。この構成は、スチームとビチューメンとの混合を高め、安定性の向上及び侵食の低減につながることが判明している。
【0020】
したがって、本発明によれば、ノズルアセンブリ内の収束−発散部の進入部に、径方向ポート式のスロットル本体インジェクタの形態のプレミキサを用いることによって、重質油原料と噴霧スチームとの間の混合の向上を達成することができる。このミキサは、ノズルの動作の安定性向上をもたらすとともに、より広範な条件にわたるより広い機能窓を用いることも可能にする。改良された流れ調整器及びディスペンサ構成を有するノズルとともに使用する場合、反応器内のコークス粒子と油との間の接触の向上を達成することができる。
【0021】
ノズルアセンブリは、プレミキサを含む。プレミキサは、吐出ノズルに流体流関係において接続されており、吐出ノズルは、流れ導管によって反応器内部を循環している粒子上に、噴霧化された原料を噴霧として吐出する。反応器壁の外側の油及びスチームの接続部と、内部のノズル先端との間の流れ導管は、典型的には、現行の反応器では、長さ約40〜150cm延在する。以下に記載される好適なスロットル本体プレミキサは、より長い導管にわたって、おそらくは長さ150cmにわたって流れを安定させる一方で、同時に、スチーム/油比の広い機能窓を維持し、高い相対スチーム比における噴流脈動又は高い油比における閉塞の可能性を低下させる。
【0022】
プレミキサの安定化効果は、プレミキサと吐出ノズルとの間の流れ導管内で特定の流れ調整器又は安定器を用いることにより向上させてもよい。吐出ノズルからの噴霧パターンもまた、向上させてもよく、流動床内の油と粒子との間の接触は、吐出ノズルのオリフィスにおいて適切なディスペンサを用いることによって向上させてもよい。
【0023】
本発明によれば、噴霧スチームは、流れ導管内の収束−発散狭窄部又はスロートのすぐ上流側にある径方向スチーム注入ポートによって規定されるスロットル本体プレミキサ内の油ストリームに導入される。噴霧スチームは、径方向に配置された入口ポートを通じて、油ストリームよりも高い圧力で注入される。狭窄部の下流側で行われる激しい混合は、噴霧の安定性の向上につながる。
【0024】
このプレミキサの使用により生じる油/コークス粒子の接触の向上は、ノズルアセンブリの反応器端部にある単純な円形オリフィスによって実現してもよいが、結果として生じるコークス粒子上の油の膜厚の低減を伴う更なる向上を、米国特許出願公開第2012/0063961号明細書に記載される吐出ノズルのオリフィスにマルチローブディスペンサを用いることにより達成してもよい。このディスペンサは、表面積が増加した、ディスペンサ内の流路の形状に合致する噴霧パターンの噴流プルームを提供し、原料噴流と床内の固体との間の接触、及び液体噴流による固体の同伴の著しい向上をもたらす。
【0025】
吐出ノズルのオリフィスにあるディスペンサは、その好適な形態において、本体の後部(供給側)から、ディスペンサの吐出端部へと通じる中心流路を有する本体と、中心流路に連通している、本体内の複数の分散ローブと、を含む。好適な形態において、マルチローブディスペンサはクローバ葉の構成を有し、クローバ葉の構成は、通常、中心軸線の周りに対称に配置され、流れ導管から中心流路へと開かれた3つ又は4つの、発散用準円錐形流路を含む。これら分散ローブは、ディスペンサ本体内のローブの構成に適合する構成を有する油噴霧小滴の分散したパターンを形成する。各ローブは、ディスペンサの本体内に形成された壁によって規定され、各ローブの壁は中空円錐部の一部分(又はホローコーンのセグメント)を規定し、中空円錐部の軸線は中心流路と対称に交差するため、各中空円錐部はその長さに沿って流路へと開き、断面積がディスペンサ本体の後部から前部に向かって増加する、増加するマルチローブ出口通路を規定する。この形態において、ディスペンサはクローバ葉構成のものであり、3ローブ又は4ローブのいずれかであり、3つ又は4つのローブが本体内に形成されている。
【0026】
ディスペンサは、通常、流路の端部にある円形ノズル本体から拡張部として作製され、この拡張部は、より広い、非円形の、マルチローブ型の開口部へと拡張し、ノズルオリフィスの外周部対面積比を増加させる。ディスペンサによって、ノズルオリフィスから出る液体噴流もまた、対応する非円形形態となり、液体分散を大幅に向上させるだけでなく、噴流と固体の流動床との間の界面の表面積及び同伴も増加させる。ローブ型ディスペンサの代替として、単純なファン形のディスペンサを使用し、噴霧の表面積を、単純な円形噴霧パターンの表面積に比して増加させてもよい。
【0027】
プレミキサを吐出ノズルと接続する流れ導管は、また、噴霧の安定性及び有効性を制御するように機能する。プレミキサとノズルとの間の単純な円筒状の流れ導管は本プレミキサ構成において効果的であり、マルチローブディスペンサにおいてより効果的であるものの、噴霧の小滴径の制御は、プレミキサと吐出ノズルとの間の流れ導管内に流れ安定器又は調整器を用いることによって実施してもよい。
【0028】
ノズルアセンブリは、流動床の構成要素と、注入される流体との間の良好な接触が必要とされる種々のタイプの循環流動床反応器内に流体を注入するのに有用である。ノズルアセンブリは、流動コーキング反応器において特に有用であるが、場合によっては、類似の課題が生じた他のCFB反応器において有用である。
【0029】
流動コーキングユニット(fluid coking units)で使用される好適な形態では、ユニットの反応器は、
反応器壁によって閉じ込められていて(confined)、典型的には、その主断面が最上部にある円錐台形の構成である高密度床反応部(dense bed reaction section)と、
高密度床反応部の下方にある基部領域であって、この基部領域において、高密度床反応部内で、細かく分割された固体コークス粒子の高密度床(dense bed)を流動化するための流動化ガスが注入される(in injected)、基部領域と、
その原料注入ノズルが、反応器壁の周縁部に基部領域の上方で複数の(又は様々な)高さに配置される重質油入口と、
高密度床反応部の上方にあり、高密度床反応部から分離されるプレナム又はスクラバ部と、
高密度床反応部の頂部にあるサイクロンであって、そのそれぞれが、出るガス及びコークス粒子の流れのためのサイクロン入口と、反応部の上方のプレナムへと吐出するサイクロンガス出口と、サイクロン内でガスから分離されたコークス粒子を高密度床反応部へと戻すためのサイクロンディプレグとを有する、サイクロンと、
反応器の基部領域にあり、ストリップ用スチーム(又はストリッピングスチーム)のためのストリッパシェッド及びスパージャを含むストリッピング部と、
を含む。
【0030】
反応器は、ユニット内において、通常の手法で、コークスラインによってバーナ/ヒータに結合されている。すなわち、低温コークス移送ラインがコークスをストリッパの底部からバーナ/ヒータに送り、高温コークス戻りラインが高温コークスをバーナ/ヒータから反応器に戻す。フレキシコーカー(Flexicoker)の場合、上述のように、ガス化器部はヒータ容器に続いている。
【0031】
流動コーカーにおいては、原料入口ノズルは、反応器の上端部に、かつ反応器の周縁部に実質的に水平に配置されている。これら原料入口ノズルは重質油原料を反応器へと導く。これら原料入口ノズルはそれぞれ、好ましくは改良型プレミキサ及び流れ調整器を有し、かつノズルから反応器に入る噴霧の最適な構成を付与するためのマルチローブディスペンサを有する上述の原料ノズルアセンブリを有する。
【0032】
本発明は、その好適な形態において、垂直軸線の周りに円形断面を有する反応器壁と、流動化ガス用の下方入口と、下方流動化ガス入口の上方の反応器の上部分の近傍及び反応器壁の周りにある液体重質油原料及び噴霧化スチーム用のノズルアセンブリとを有する循環流動床反応器を提供する。ノズルアセンブリはそれぞれ、反応器壁を貫通して反応器内へと実質的に水平に延び、反応器内に吐出ノズルオリフィスを有し、それぞれが、吐出ノズルから離れた端部に液体重質油原料用の入口を有する。各ノズルアセンブリは、
液体重質油原料を噴霧化スチームと組み合わせて(又は一緒にして)、気泡を含む液体原料/スチームの混合物を形成するプレミキサ部であって、プレミキサ部が、原料入口から吐出ノズルへの方向に連続する収束用領域及び発散用領域と、収束用領域と発散用領域とを接続する中心スロート部とを含み、収束用領域の進入部(又はエントリ(entry))に配置される複数の径方向スチーム入口ポートを有する、プレミキサ部と、
プレミキサ部の出口に続いて接続され、プレミキサ部から吐出ノズルまで延び、プレミキサによって形成される液体/スチームの混合物の流れを吐出ノズルへと移送する、流れ導管部(又はフローコンジットセクション)と、
流れ導管部に続いて接続される収束進入部(convergent entry)を有する吐出ノズルであって、液体原料/スチームの混合物を剪断(シヤ(shear))し、ノズルから出る際に、低減された寸法(又はサイズもしくは大きさ)の液体原料小滴を形成する、吐出ノズルと、
を含む。
【0033】
ノズルアセンブリは収束−発散するプレミキサ部を用いて、スロットル本体のスロートに向かって狭くなる収束部のすぐ先の重質油ストリーム内に圧力下で噴霧化スチームを導入する。プレミキサの使用によって与えられる原料の流れの安定性は、プレミキサとノズルオリフィスとの間の、流れ導管内における、狭窄−拡張する流れ調整器又は安定器の使用によって更に向上する。
【0034】
添付の図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】スロットル本体プレミキサを組み込んだノズルアセンブリを断面図において示す。
図2】好適なプレミキサ本体の拡大断面図を示す。
図3】プレミキサと吐出ノズルとの間の、流れ導管内で使用するための流れ安定器−調整器の断面を示す。
図4】流れ安定器−調整器の別の構成の断面を示す。
図5A】マルチローブディスペンサの長手方向断面図を示す。
図5B図5Aのマルチローブディスペンサの末端の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(詳細な説明)
ノズルアセンブリ
流動床内における原料分散の向上をもたらすための完全なノズルアセンブリを図1に示す。反応器の壁11を貫通し、反応器の内部12に入るノズルアセンブリ10は、スロットル本体プレミキサ部13を含み、スロットル本体プレミキサ部13の吐出又は下流側端部にはフランジ14が固定されている。フランジ14は、プレミキサ部の端部に適切に溶接しても、任意の他の適切な手法で、例えば、ねじ式で取り付けることにより取り付けてもよい。プレミキサから吐出ノズルまで延びる流れ導管15には、その入口又は上流側端部にフランジ16が取り付けられており、プレミキサフランジ14との流体フロー接続(fluid flow connection)を提供する。円形断面を有する流れ導管15はその先端部に吐出ノズル29を備え、反応器内部において、外部支持シュラウド17のフランジ付き端部18上のプレミキサ部とともに、通しボルト(図示せず)によって従来の手法で保持される。導管20はプレミキサ部13の入口側にフランジ式に取り付けられ、クリーニングポート21まで延出する。クリーニングポート21は、動作時には、通常、フランジ式に取り付けられたカバープレート(図示せず)によって閉じられている。クリーニングポートは、カバーが外されたクリーニングポートから吐出ノズルまで、また、ロッドが十分に小さい場合は、ノズルの内端部にある吐出口(又は吐出オリフィス)にかけてクリーニングロッドを通すことによりノズルアセンブリのファウリングの清掃を可能にするために設けられる。
【0037】
重質油原料のための入口ポート22が設けられ、噴霧スチームが、2つの径方向に対向するスチーム入口ライン23、24を通り、プレミキサ(図2に示される)の本体のスチーム入口ポート30、31に入る。入口ポート30、31は収束領域の起端に配置されており、プレミキサ部内のスロットル本体狭窄部への進入部(又はエントリ(entry))を形成する。この狭窄部で、重質油原料と注入されたスチームとの激しい混合が開始される。スチームラインにはその外端部にクリーニングポート25、26も設けられる。クリーニングポート25、26は、通常、フランジ式カバープレートによってカバーされており、クリーニングロッドをプレミキサの本体の入口ポートまで通すことを可能にする。
【0038】
反応器の壁11を通り、反応器内部に通じている導管15は、シュラウド28内に吐出ノズル本体まで収容されている。この目的は主に、構造的支持のため、及び反応器内を循環する固体による侵食から導管を保護するためである。
【0039】
プレミキサ
プレミキサの目的は、反応器内における効果的な噴霧化のための安定な二相流を形成することである。噴霧化ノズルへと通じている、スチームと重質油原料とを混合して導管内に分散した「泡状」の流れ(又はフロー)を発生させるスロットル本体プレミキサ部の好適な構成の詳細を、図2により効果的に示す。プレミキサ13は、スチーム入口ポート30、31を有する。スチーム入口ポート30、31は、収束部32の起端に配置された入口ライン23、24からスチームを入れる。収束部32は、スロート33へと、次いで、発散部34へと通じている。スチームは、収束スロート部のすぐ先のポートを通じて、油の圧力よりも高い圧力で導入される。プレミキサを通る通路の入口直径と出口直径はほぼ同じである。
【0040】
スチームポートは、スチームが液体原料と混合される高速のスチームジェットを発生させ、スチーム/油の混合物は最大剪断力でプレミキサのスロートに入り、分散した泡状の流れを形成する。ポートの数は保守要件及びアセンブリの寸法(又はサイズもしくは大きさ)に応じて異なってもよく、通常、2つから6つが適切であり、ほとんどの場合においては、2つから4つである。2つのポートが良好な結果をもたらすことが判明しており、また、これらポートは、汚損の可能性を低減するほど十分に大きく作製することができる。2つのポートは直径の方向に対向する、4つのポートは四半分にあるなどの、対称な径方向のポート配置が好ましい。スチームポートは、ポートからの対向するスチームジェットの、互いに対する衝撃による原料の混合及び噴霧化を促進するために、対で対向することが好ましい。対向していないポートからのスチームの衝突によるプレミキサ壁の侵食も低減される。良好な混合、圧力脈動の低減による安定な泡の流れ、及びスロート部自体の侵食の低減のためには、スロート領域のちょうど進入部におけるガスと液体の混合が最適であると考えられる。スチームラインに、必要であれば、示されるように、クリーニングロッドを受け入れてスロットル本体の収束部の上流側部分まで通すフランジなしのクリーニングポートを設けてもよい。
【0041】
プレミキサの重要な性能基準は、スロート進入部の収束角、スロート直径及び長さ、スロートからの発散角、進入部及び出口部直径である。これらの値は原料特性(主に粘性)及び必要とされる流量に応じて経験的に最良に設定される。典型的には、浅い収束/発散角が好ましく、通常、約3〜15°(円錐の半角)であり、4〜8°の値が好ましいが、より高い流量では、不安定性指数により示される性能の差異は消失する傾向があるため、より大きな値の半角、例えば20°は許容可能である。好ましくは、収束領域と発散領域との間に円筒状の中心領域を有する対称な収束/発散領域を付与するために、収束角と発散角は、通常、実質的に同一である。
【0042】
性能9270kg/hrのプレミキサの典型的な概算寸法は、以下、表1に示す通りである(寸法はすべてmm。)。
【0043】
【表1】
【0044】
オリジナルのスロート(米国特許出願公開第2012/0063961号明細書と同様の)と本改良済みスロートの最高侵食速度を、混合を定量化するために用いる、ミキサの下流側の液体体積フラクションの標準偏差とともに、表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
プレミキサのスロート領域を作製するためにステライトなどの異なる物質も使用できる。あるいは、スロート領域は、侵食を低減するために、熱間等方加圧法によって作製することができる。
【0047】
例えば約7mmの小さなガスポートによって、より広範な液体流量にわたって流れの安定性が比較的より一定に維持されるが、この場合も、差異は液体流量が高くなるほど消失する傾向があるため、そのファウリングに対する耐性を高めるためには、ポートを大きくすることが好ましい。加えて、より大きなガスポートを使用すると、スチームの速度が低下し、侵食が最小限になる。流れの安定性はスロート直径が小さくなるほど付与されるが、圧力損失は直径が大きくなるほど小さくなる。しかし、ここでは、スロートの大きさは、ノズルアセンブリの所望の流量に応じて選択しなければならない。
【0048】
スロットル本体プレミキサの非常に好ましい特徴の1つは、スロットル本体プレミキサにより、流れの安定性を広範な流量にわたり維持することによって、プレミキサとノズルとの間により長い流れ導管を使用することが容易になることである。二方向流れ調整器(Bilateral Flow Conditioner)は、短い流れ導管(長さ約80cm以下)を備えるスロットル本体プレミキサと同程度の性能を提供するものの、例えば130cm以上のより長い導管内における、ガス/液体比率約1.8重量パーセント超の流れは、コールドフロー試験において急激に不安定になる傾向にある。
【0049】
プレミキサは必然的に、良好な噴霧化のための付随するスチーム流とともに、所望の流量の重質油に適応するように設計される必要がある。一般に、スチーム/油の比率は、油の0.3〜1.2重量%の範囲であり、通常はむしろこれより低く、スチーム/油0.4〜0.9の範囲内であり、約0.86の比率が典型的であると思われる。スチームの供給ヘッダの圧力は、典型的には、1500〜2000kPag(約200〜290psig)の範囲内である。
【0050】
流れ調整器(又はフローコンディショナ)
プレミキサの使用により形成された、分散し、安定した泡状の流れを、広範なノズル動作条件において維持することで、特定のノズルアセンブリの動作の柔軟性が高まる。ノズルまで通じている導管において、液体は連続相であり、気(スチーム)泡が液体中に存在する。ノズル出口部において、転相が発生してガスが連続相になり、その結果、液体の小滴がガス中に分散する。プレミキサ及び流れ調整器内の剪断(シヤ(shear))により、気泡の大きさの低減が生じる。分散した泡状の流れが完全にノズルオリフィスへと運ばれない場合、ノズルは、固体の流動床に液体原料のスラグを送る傾向がある。ノズルアセンブリは、図1に示すように、プレミキサと吐出ノズルとの間の、一定の断面を有する単純な管状の流れ導管によって良好に機能するが、流れ導管内の流れ安定器又は調整器によって、プレミキサ13の下流側の導管15内の乱流を更に安定させてもよく、また、吐出ノズルの前において分散した泡状の流れを維持してもよい。その最も単純な形態において、流れ調整器は、導管内に、断面が低減された流れ領域を有する部分を含み、この領域は、吐出ノズルの上流側において混合物の加速した流れを生成する。したがって、その最も単純な形態において、流れ調整器は、プレミキサと吐出ノズルとの間の導管内に配置されたカラーを含む。カラーは、単純な矩形の断面を有しても、角度を成した面を各側に有してもよい。いずれの場合においても、流れ調整器は、流れ導管の吐出端部への流れの安定性を向上するために、好ましくは、プレミキサと吐出ノズルとの間のその長さの第2の半分以内、つまり、プレミキサよりも吐出ノズルのより近傍に配置されることが好ましい。流れ調整器をプレミキサの近傍に配置すると、実質的にすべてのガス流量において、単純な流れ導管と比して限られた安定性の向上しかもたらさない。プレミキサと吐出ノズルとの間の流れ導管に沿う約50パーセント位置が著しい向上をもたらす一方で、いくつかの導管直径、例えば、吐出ノズルの2〜10個、好ましくは、2〜5個の管の直径内の位置は吐出ノズルにおける最適な流れの安定性をもたらす。
【0051】
流れ調整器の1つの好ましい形態を図3に示す。この図では、調整器35は、プレミキサの狭窄部に類似する、漸進的な収束領域に続いて漸進的な発散領域を提供する環状狭窄部を含む。この流れ調整器の形態は、機械加工され、例えば、溶接又はねじ式で取り付けることにより導管に接続され得る。流れ調整器35は、円錐の部分を規定する収束進入領域36と、同じく円錐の部分を規定する発散吐出部37と、を有し、中間円筒状スロート部39を有する。流れは、矢印によって示される方向に発生する。
【0052】
流れ調整器の別の構成を図4に示す。図3の調整器と同様に、この部分は、適切な剪断力(ノズル本体における圧力損失により)を生成し、細かく均一な原料の小滴を形成する一方で、ノズルから吐出された噴流中の小滴を固体の床に十分に運ぶのに十分な運動量も提供するように設計されている。流れ調整器40は、一方の端から他方の端まで延びる軸流通路41を有し、上流側端部に、導管15の端部に接続するための適切なコネクタを有する。コネクタは、例えば、溶接部であっても、ねじ状のブッシュであってもよい。その他端には、流れ調整器が溶接される、ねじ式で取り付けられる、又はそうでなければ、吐出ノズル29の本体に取り付けられる。流れ導管内の中心通路は、順に、スロート43に向かって狭くなる収束領域42、これに続く発散拡散領域44、これに続く吐出ノズル29の本体内の第2の収束領域45、更にこれに続く、ノズルオリフィス自体46を含む。この場合、流れ調整器は、図3の流れ調整器に比して大幅に長くなり、拡散領域45におけるより漸進的な発散がもたらされる。この流れ調整器の形態は、単純なノズル(ディスペンサなし)を用いて動作する場合であっても、噴霧を、200ミクロン未満の平均小滴径の微細な液体の小滴で提供することが判明しており、床へのより良好な浸透をもたらすものの、フローディスペンサによって、床における油/コークス粒子の接触は向上する可能性がある。
【0053】
流れ調整器部分に通じている、プレミキサの下流側のノズル本体内の円形導管15の直径及び長さもまた、分散した泡状の流れ、ゆえに、ノズルの噴霧化性能の安定性に影響を及ぼす。導管内における過度に長い滞留時間は泡の凝集及び二相流の不安定性につながる。したがって、導管内の流体滞留時間を最小限に維持する必要性と、ノズルの全体的な圧力要件に対する導管内の圧力損失の寄与との間で、導管の直径/長さの比率の選択のバランスがある。
【0054】
流れ安定器又は調整器の環状狭窄部−拡張部は、スロットル本体プレミキサの好適な形態と同様の手法で便利に作製してもよい。このスロットル本体プレミキサの好適な形態は、等しい進入角及び吐出角を有するか、あるいは、長い、継続的に拡張する発散−拡張領域に続き、狭窄部のスロートを有する。この長い発散領域は、吐出ノズルの収束部分が開始する箇所まで延在しても、そこに到達せずに終了してもよい。プレミキサとノズルとを接続する流路内の収束/発散流れ調整器と、ノズル本体内の収束流通路とを組み合わせることは、混合物中の液体油小滴に剪断力(シヤ(shear))を与え、吐出ノズルを出る際にその大きさを低減するのに非常に効果的である。
【0055】
いずれの形態の流れ調整器においても、第1の収束領域の目的は、プレミキサからのスチーム/油の混合物を加速し、伸張及び剪断応力によって泡の大きさを低減することである。これに続く、拡張する直径を有する発散又は拡散部は、混合物が減速することを可能にする。このため、ノズル内の次の収束部において、泡の大きさを更に低減するための、及び好ましくは、泡の大きさが、混合物が吐出口に入る更に一層前に伸張及び剪断応力によって低減され、スチーム中に分配される比較的微細な油小滴の噴流の形態で現れるように、混合物を第1の収縮部を超える加速で加速するための十分な加速が実現され得る。
【0056】
ノズルアセンブリは、以下の考察に従い設計されることが好ましい。
流れ調整器の上流側の収束領域は、混合物を加速させて、後に続く、収束領域の下流側の発散領域内での流れの広がりにより、比較的小さな泡の流れを発生させるべきである。オリフィス直前の、ノズル本体内の流路の端部に配置された第2の収束領域は、混合を、第1の収束領域により実施される混合よりも加速すべきである。約2倍の加速をもたらす領域が適切であり、かつ好適である。
第1の収束領域及び拡散領域によって生成される微細な泡の寸法(又はサイズもしくは大きさ)が更に低減される場合、比較的増加した伸張及び剪断応力にそれらを曝す必要がある。この目的のため、拡散領域では流路の直径を、第2の収束領域における所望の加速が達成され得るほど十分に増加すべきである。しかしながら、この収束領域の長さは、泡の過度の再結合を避けるように制限される必要がある。3°の収束がちょうど良いことが判明している一方で、この領域における6°の収束(全角度)はあまり有用でない。第2の収束領域における収束の角度は、したがって、通常、2〜6°、好ましくは3〜5°の範囲内である。
【0057】
ディスペンサ
上に示したように、単純な円筒状ノズル(すなわち、収束進入部に続いて円錐形の出口を備える)を好適なプレミキサとともに使用してもよいが、ノズルオリフィスにディスペンサを用いることで、油と固体との接触の向上が可能になる。ディスペンサの目的は、液体を中心線から引き出して、液体の固体との接触を最大にすることである。これにより、コークス粒子をより薄い膜でより均一かつ平均的に原料でコーティングすることが可能になる。より薄い膜では拡散路が短くなるため、二次的な分解が減少する傾向にあり、その結果、液体の収率が向上する。したがって、収率の更なる向上は、主として、ノズルにディスペンサを用いることから得られる。初期の試験でいくつかの種類のディスペンサを評価した。これらには、「手裏剣型」、複数穴型、複数ローブ型、例えば、クローバ及びファン型の設計が含まれる。パタネータを用いた流束測定に基づくと、「手裏剣型」及び複数穴型の設計は、重質油小滴を液体コアから引き離すのに効果的でないことが判明した。平坦2ローブ形又はファン形の噴流噴霧パターンをもたらすクローバパターン及び2ローブパターン又はファンパターンは、噴流の流動床との相互作用において同程度の性能を有していた。好ましい複数ローブ型クローバ構成は、噴流/床相互作用試験に基づくものであり、この試験では、面積に対する外周部の比率がより高く、固体の同伴が高められたディスペンサが、全般的により良好な性能を示した。パタネータは、ノズルからの噴霧のパターンを試験するために作製された機器である。この機器は、機械的パタネーションの代わりに用いられ、その高い速度及び高い分解能により、噴霧の均一性及びパターンが重要な種々の用途に使用することが可能である。この技術は、West Lafayette,INに所在のEn’Urga Inc.により開発されたものである。この機器は、米国特許第6184989号に包含されることがEn’Urgaによって示されている。
【0058】
クローバ型ディスペンサの特定の実施形態を図5A及び図5Bに示す。ディスペンサ50は、ノズル本体の収束部分の端部にある入口51から、断面が継続的に増加する出口オリフィス52まで流路を有する。これにより、スチームが、狭窄したノズル通路を出る際に圧力が低下するにつれて広がり、その際、油/スチームの混合物が、ディスペンサの幾何学的形状によって決定される拡張パターンへと分散することが可能になる。複数ローブ型ディスペンサは、本体に機械加工した4つのローブ53を有し、各ローブの壁は、中空円錐部の一部分を規定する。いくつかの中空円錐部の軸線はディスペンサの中心軸線と対称に交差し、ディスペンサの増加する断面積を提供して、スチームが広がり、油の噴流を微細な噴霧へと分割することを可能にする。複数ローブ型ディスペンサのローブの数は、原料特性及び利用可能な物理的空間に従い選択してもよく、一般に、2つから6つのローブが好適であり、ほとんどの場合においては、4つが最適な数である。2ローブ型設計は端面から見ると、ファンに類似するものの狭いウエスト領域を有するパターンとなる数字の8に類似し、噴流における強固な中心コアの形成の排除を補助し、3ローブ型設計は3つ葉のクローバ等に類似する。使用においては、4つ葉のクローバが、「+」よりもむしろ「x」の配向で、つまり、「+」の垂直/水平配向とは対照的に、水平位に対し45°/135°のローブを有して使用される場合に、より良好な油/コークスの接触をもたらすことが判明している。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
【国際調査報告】