(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-534499(P2017-534499A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】延伸フィルムの耐引裂性向上方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/48 20060101AFI20171027BHJP
B29C 55/12 20060101ALI20171027BHJP
B32B 7/02 20060101ALI20171027BHJP
【FI】
B29C65/48
B29C55/12
B32B7/02 102
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-543866(P2017-543866)
(86)(22)【出願日】2015年10月17日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月9日
(86)【国際出願番号】CN2015092142
(87)【国際公開番号】WO2016074552
(87)【国際公開日】20160519
(31)【優先権主張番号】201410631681.1
(32)【優先日】2014年11月11日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517161452
【氏名又は名称】蘇州莫立克新型材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】黄 斌
(72)【発明者】
【氏名】孫 坤
【テーマコード(参考)】
4F100
4F210
4F211
【Fターム(参考)】
4F100AK42
4F100BA02
4F100BA25
4F100EC18
4F100EJ08
4F100EJ37A
4F100EJ37B
4F100EJ54
4F100JK03
4F210AA24
4F210AG01
4F210AG03
4F210AH54
4F210QA02
4F210QC07
4F210QG01
4F210QW50
4F211AD08C
4F211AG03
4F211TA03
4F211TN01
4F211TN09
4F211TQ01
4F211TQ03
(57)【要約】
本発明には、延伸フィルムの耐引裂性向上方法が開示されている。かかる方法は、二層の延伸フィルムをそれらの主延伸方向が互いに交差するように接着剤で熱間圧延または紫外線硬化によって複合する方法である。同じ厚みの単層二軸延伸フィルムより、本発明によって得た複合フィルムのスリット引裂強さが顕著に向上され、耐引裂性が明らかに改善される。かかる方法は、各種従来材質と従来製造方法からなる延伸フィルムの耐引裂性向上に幅広く応用でき、そして操作が簡単で大規模化されやすい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二層の延伸フィルムをそれらの主延伸方向が互いに交差するように接着剤で熱間圧延または紫外線硬化によって複合することを特徴とする延伸フィルムの耐引裂性向上方法。
【請求項2】
前記二層の延伸フィルムの主延伸方向が30〜150度の角度をなすことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記二層の延伸フィルムの主延伸方向が60〜120度の角度をなすことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記二層の延伸フィルムの主延伸方向が90度の角度をなすことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記延伸フィルムが非対称延伸フィルムであり、一軸延伸フィルムと非対称二軸延伸フィルムを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記非対称延伸フィルムの主延伸方向と副次的延伸方向との延伸倍率が(1.2:1)〜(4:1)にあることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記非対称延伸フィルムが平膜法で生産されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸フィルムの耐引裂性向上方法に関し、材料加工技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
延伸フィルムは、製膜時に延伸されて配向させられ、使用中に熱を受けて収縮する熱可塑性プラスチックフィルムである。一般的には、押出ブロー成形法または押出流延法で製造された平面フィルムを、軟化温度以上そして溶融温度以下である高弾性化温度において、縦と横両方向に延伸し、或はその中の一つの方向だけに延伸して配向させ、もう一つの方向に延伸しない。前者は二軸延伸フィルムと呼ばれ、後者は一軸延伸フィルムと呼ばれる。
【0003】
延伸フィルムは薄肉、高度の透明性、良好な靭性、耐寒、耐熱、耐圧、防塵、防水などの利点を持つため、食品、薬品、電子機器など様々な製品の外装に広く応用されている。延伸フィルムの高分子チェーンが延伸方向に沿って高度に配向しているため、この延伸方向における耐引裂性が低下している問題がある。しかも、広く用いられた一般的な二軸延伸フィルムの高分子チェーンが何れかの軸方向にも配向していることは、その耐引裂性に欠陥をもたらし、延伸フィルムの応用を大きく制限している。それ故に、延伸フィルムの耐引裂性を向上させる必要がある。
【0004】
延伸フィルムの耐引裂性問題を解消するための従来方法は、物理法と化学法とに分類されてよい。例えば、中国特許出願CN201280003595.5号には、フイルム材にTmが約10℃〜20℃であるSEEPS弾性ブロック共重合体を含有させることによってなる耐引裂性フィルムが開示されている。一方、中国特許CN200710050055.3号には、筒状フィルムを平に伸ばしてからガラス移転温度と粘稠化温度との間の温度間隔で一軸延伸してマクロ分子を配向させた後にブロー処理で再び筒状フィルムに膨らせ、それを軸の方向と15度以上75度以下の角度になる斜め方向で螺旋切りしてからマクロ分子の延伸・配向方向がフィルム長手方向と15度以上75度以下の角度をなす平膜に伸ばし、最後にこのような切り・伸ばし処理から得た平膜の少なくとも二層を当該各層のマクロ分子の配向方向が互いに交差するように複合して作製される多方向耐引張・耐引裂性複合フィルムが開示されている。しかしながら、上述した各方法の応用には制限があり、各種従来材質と従来製造方法からなる延伸フィルムの生産改良に幅広く使用されることができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、各種従来材質と従来製造方法からなる延伸フィルムの耐引裂性向上に広く適用できる延伸フィルムの耐引裂性向上方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の内容は以下に示すとおりである。
【0007】
二層の延伸フィルムをそれらの主延伸方向が互いに交差するように接着剤で熱間圧延または紫外線硬化によって複合する延伸フィルムの耐引裂性向上方法である。
【0008】
好ましい実施態様として、前記二層の延伸フィルムの主延伸方向が30〜150度の角度をなす。
【0009】
より好ましい実施態様として、前記二層の延伸フィルムの主延伸方向が60〜120度の角度をなす。
【0010】
更に好ましい実施態様として、前記二層の延伸フィルムの主延伸方向が90度の角度をなす。
【0011】
好ましい実施態様として、前記延伸フィルムが非対称延伸フィルムであり、一軸延伸フィルムと非対称二軸延伸フィルムを含む。
【0012】
より好ましい実施態様として、前記非対称延伸フィルムの主延伸方向と副次的延伸方向との延伸倍率が(1.2:1)〜(4:1)にある。
【0013】
更に好ましい実施態様として、前記非対称延伸フィルムの主延伸方向と副次的延伸方向との延伸倍率が(1.4:1)〜(3.5:1)にある。
【0014】
より好ましい実施態様として、前記非対称延伸フィルムが平膜法で生産される。
【0015】
本発明における非対称延伸とは、二軸延伸の場合、一つの方向(縦または横)における延伸倍率がもう一つの方向における延伸倍率より大きいことをいう。非対称延伸の極端例は一軸延伸であり、すなわち、一つの方向のみにおいて延伸を行い、もう一方の方向において延伸を完全にしないことである。非対称延伸の場合には、延伸倍率が大きい方が主延伸方向であり、延伸倍率が小さい方が副次的延伸方向である。一軸延伸の場合には、延伸が行われる方向が主延伸方向であり、延伸が行われない方向が副次的延伸方向である。
【0016】
本発明における平膜法とは、押出機から押し出されたペレットをTダイを用いてシートを流延し、それを急冷してから加熱ロールにて延伸温度までに加熱して同時または逐次に延伸し、最後に成型を行う方法を言う。同時延伸とは、縦と横両方向ともにおいて同時に延伸を行うことをいい、逐次延伸とは一つの方向において延伸を行ってから、もう一方の方向において延伸を行うことをいう。
【0017】
本発明は同時延伸か逐次延伸かによって得た延伸フィルムに限定されず、そして毎層の延伸フィルムの厚みには限定がなく、特定の用途に応じて設計してよい。
【0018】
本発明における熱間圧延または紫外線硬化による複合に用いられる接着剤は、溶媒を含有するまたは含有しない従来のフィルム接着用接着剤であり、溶媒を含有しない二成分ポリウレタン系接着剤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
従来技術にたいして、本発明は以下とおりの著しい進歩性を示す:
1、同じ厚みの単層二軸延伸フィルムより、本発明によって得た複合フィルムのスリット引裂強さが顕著に向上され、耐引裂性が明らかに改善される。
2、幅広い用途に適用でき、何らかの延伸フィルム材質または何らかの延伸方法に限らず、従来延伸フィルムの生産に一般化・応用されやすい。
3、操作が簡単で大規模化されやすい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施例により本発明の内容をもっと詳しく完全に説明する。
各実施例において、下記のとおりに平膜法を利用して延伸フィルム試料を作製した。まずは、多層押出機(南京創博機械設備有限公司製)でプラスチック又は樹脂(各実施例において、市販PET樹脂を使用した)から厚み140〜560mmの流延シートを形成した。次いで、流延シートをフィルム引張試験機(ブルックナー社製、北京化工研究院にて試験実行)にて掴み具で把持した状態で予め設定されたプログラム(延伸倍率、延伸温度)に従って延伸を実行した。延伸されたフィルムを空気中にて素早く冷却して成型した。
【0021】
各実施例において、下記のとおりにCH−9002A−20多機能引張試験機(蘇州宝?通測定設備有限公司製)を使って耐引裂性を測定した。測定すべき引裂方向に沿ってフィルム試料に20mm程度のスリットを切り入れ、掴み具でスリットの両側を把持し、自動プログラム制御によって測定を開始させかつデータ収集を行った。
【0022】
実施例1
一層の延伸フィルムの片面に接着剤(例えば、研泰社製のTS9002AまたはTS9002BまたはTS9002C接着剤)を均一に塗り、溶媒が蒸発した後、それにもう一層の延伸フィルムを第2層目の主延伸方向(延伸倍率の大きい方向)が第1層目の主延伸方向と90度の角度をなすように被せた。こうして得た複合フィルムを60〜85度のロールにて熱間圧延し(具体的な熱間圧延温度が使用された接着剤によった)してから、完全に硬化したまで室温に放置した。
【0023】
表1には、本実施例の方法によって主延伸方向の延伸倍率と副次的延伸方向の延伸倍率との比率が互いに異なる延伸フィルムから形成された複合フィルム間の耐引裂性比較結果を示す
【0024】
【表1】
表1から分かるように、本発明の方法によって得た全ての複合延伸フィルムの引裂強さが同じ厚みの単層二軸延伸フィルムに比べて著しく向上された。試料の引裂強さが厚みの増加につれて大きくなる傾向があるものの、厚み150μmの単層二軸延伸フィルムの引裂強さがただ19.86N/mmであったことに対して、本発明によって得た厚み100μmの複合延伸フィルム(主延伸方向と副次的延伸方向との延伸倍率が2.7であった場合)の引裂強さが337.27N/mmにも達し、耐引裂性には著しい向上が得られた。しかも、非対称性が高ければ高いほど、スリット引裂強さが大きくなる傾向があった。主延伸方向と副次的延伸方向との延伸倍率が(1.4:1)〜(3.5:1)にあった場合、スリット引裂強さが240〜340N/mmにもなった。しかしながら、主延伸方向と副次的延伸方向との延伸倍率が4であった場合、厚みを150μmに増やしたとしても、引裂強さが減少する傾向があった。
【0025】
実施例2
一層の延伸フィルムの片面に接着剤(例えば、漢高社製の6062Aまたは7725B接着剤)を均一に塗り、それにもう一層の延伸フィルムを第2層目の主延伸方向(延伸倍率の大きい方向)が第1層目の主延伸方向と90度の角度をなすように被せた。こうして得た複合フィルムを60〜85度のロールにて熱間圧延し(具体的な熱間圧延温度が使用された接着剤によった)してから、完全に硬化したまで室温に放置した。
【0026】
表2には、本実施例の方法によって主延伸方向の延伸倍率と副次的延伸方向の延伸倍率との比率が互いに異なる延伸フィルムから形成された複合フィルム間の耐引裂性比較結果を示す
【0027】
【表2】
表2から分かるように、本発明の方法によって得た全ての複合延伸フィルムの引裂強さが同じ厚みの単層二軸延伸フィルムに比べて著しく向上された。試料の引裂強さが厚みの増加につれて大きくなる傾向があるものの、厚み150μmの単層二軸延伸フィルムの引裂強さがただ19.86N/mmであったに対して、本発明によって得た厚み100μmの複合延伸フィルム(主延伸方向と副次的延伸方向との延伸倍率が3.5であった場合)の引裂強さが609.79N/mmにも達し、耐引裂性には著しい向上が得られた。しかも、非対称性が高ければ高いほど、スリット引裂強さが大きくなる傾向があった。主延伸方向と副次的延伸方向との延伸倍率が(2:1)〜(3.5:1)にあった場合、スリット引裂強さが340〜610N/mmにもなった。しかしながら、主延伸方向と副次的延伸方向との延伸倍率が4であった場合、厚みを150μmに増やしたとしても、引裂強さが減少する傾向があった。
【0028】
表1と表2とを比べれば分かるように、熱間圧延による複合に溶媒を含有した接着剤を使用する場合、その溶媒が延伸フィルムの分子の配向・配列度を低下させることに従ってその引裂強さを弱める可能性がある。
【0029】
実施例3
実施例2に参照して、同時延伸によって得た非対称二軸延伸フィルムと逐次延伸によって得た非対称二軸延伸フィルムをそれぞれ複合して耐引裂性を比較した。
試験の結果が表3に示されている
【0030】
【表3】
表3の試験結果から分かるように、同時延伸フィルムの複合体のスリット引裂強さが逐次延伸フィルムの複合体のスリット引裂強さよりやや大きかったが、その向上幅が顕著ではなかった。
【0031】
最後に、ここで留意すべきなのは、上記実施例は単なる本発明の内容をより詳しく説明するつもりのもので、本発明の保護範囲を限定することを意図したものではない。当業者が本発明の上述内容の基づいてなし得た非本質的な改良と調整がすべて本発明の保護範囲に属する。
【国際調査報告】