(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-534511(P2017-534511A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】耐離座性の高いタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 15/00 20060101AFI20171027BHJP
B60C 15/02 20060101ALI20171027BHJP
B60C 15/06 20060101ALI20171027BHJP
B60B 21/02 20060101ALI20171027BHJP
【FI】
B60C15/00 H
B60C15/02 D
B60C15/06 B
B60C15/06 A
B60B21/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-516111(P2017-516111)
(86)(22)【出願日】2015年9月18日
(85)【翻訳文提出日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】EP2015071394
(87)【国際公開番号】WO2016046069
(87)【国際公開日】20160331
(31)【優先権主張番号】1459002
(32)【優先日】2014年9月24日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(71)【出願人】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】ボルド フランシス
(72)【発明者】
【氏名】パコード パスカル
(72)【発明者】
【氏名】モーブル リオネル
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA35
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3D131HA35
3D131HA42
3D131HA43
3D131HA45
3D131HA57
(57)【要約】
本発明は、離座に対する乗用車用タイヤの耐性の向上を目的とする。この目的は、受座のところの軸方向幅Dを備えるとともに少なくとも1つの円周方向補強要素(22)を含む少なくとも1つのタイヤビードを有するタイヤであって、円周方向補強要素(22)の半径方向最も内側の箇所(222)がタイヤビードの半径方向最も内側の箇所(211)から半径方向距離Zおよび軸方向距離Yを置いたところに位置し、Y/Dが少なくとも0.5でありかつ比Z/Dが多くとも0.4であることを特徴とするタイヤによって達成される。カーカス補強材の端(311)は、円周方向補強要素の半径方向最も外側の箇所(233)の半径方向外側に位置する。このタイヤビードは、少なくとも1つのビード層(23)を有し、かかる少なくとも1つのビード層(23)は、少なくとも1つのビード層(23)の軸方向最も外側の端(231)が端(311)の半径方向外側に位置するとともに少なくとも1つのビード層(23)の軸方向最も内側の端(232)が箇所(222)の少なくとも半径方向外側に位置するようトレッドガム(21)を包囲している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り付けリムに取り付けられるようになったタイヤ(1)であって、
前記取り付けリムに接触するようになっている2つのビード(2)を有し、前記取り付けリムは、実質的に半径方向部分または側部および実質的に軸方向部分または受座を有し、
各ビード(2)は、前記受座のところの軸方向幅と称される軸方向距離Dのところに前記受座に対して位置決めされた半径方向最も内側の箇所(211)を有し、各ビードは、少なくとも1種類のゴム配合物および少なくとも1つの円周方向補強要素(22)で構成された少なくとも1つのビードフィラー(21)を有し、
前記円周方向補強要素(22)の子午面断面は、半径方向最も内側の箇所(222)、半径方向最も外側の箇所(223)および軸方向最も内側の箇所(224)を有し、前記半径方向最も内側の箇所(222)は、前記ビードの前記半径方向最も内側の箇所(211)から半径方向距離Zおよび軸方向距離Yを置いたところに位置し、
前記2つのビード(2)を互いに連結するカーカス補強材を有し、前記カーカス補強材は、各ビード(2)内で内側に向かってカーカス層端(311)まで半径方向に延びる少なくとも1つのカーカス層(31)を有し、
少なくとも一方のビード(2)に関し、前記カーカス層端(311)は、前記タイヤの最大軸方向幅(SM)の箇所(301)の半径方向内側にかつ前記円周方向補強要素(22)の前記軸方向最も内側の箇所(224)の軸方向外側に位置している、タイヤにおいて、
前記ビード(2)に関し、前記円周方向補強要素(22)の前記半径方向最も内側の箇所(222)から前記ビード(2)の前記半径方向最も内側の箇所(211)までの軸方向距離Yと受座のところの前記ビードの前記軸方向幅Dとの比Y/Dは、少なくとも0.5に等しく、
前記ビード(2)に関し、前記円周方向補強要素(22)の前記半径方向最も内側の箇所(222)から前記ビード(2)の前記半径方向最も内側の箇所(211)までの半径方向距離Zと前記受座のところの前記ビードの前記軸方向幅Dの比Z/Dは、多くとも0.4に等しく、
前記ビードに関し、前記円周方向補強要素(22)の前記半径方向最も外側の箇所(223)の半径方向内側に位置する前記カーカス補強材の任意のカーカス層(31)の任意の部分は、前記円周方向補強要素(22)の前記半径方向最も内側の箇所(222)の軸方向外側に位置し、
前記ビード(2)は、少なくとも1つのビード層で構成されたビード補強材(23)を有し、該ビード層(23)は、前記ビード層(23)の軸方向最も外側の端(231)が前記カーカス層(31)の半径方向最も内側の端(311)の半径方向外側に位置するとともに前記ビード層(23)の軸方向最も内側の端(232)が前記円周方向補強要素(22)の前記半径方向最も内側の箇所(222)の少なくとも半径方向外側に位置するよう前記ビードフィラー(21)を包囲し、
外側フェースを有する前記ビード(2)に関し、前記円周方向補強要素(22)の前記半径方向最も内側の箇所(222)の半径方向内側に位置するビード補強材上の箇所は、前記ビードの前記外側フェースに対し、前記ビードの前記外側フェースに垂直に測定して、多くともZ/2、すなわち前記ビードの前記半径方向最も内側の箇所(211)と前記円周方向補強要素の前記半径方向最も内側の箇所(222)との間の前記半径方向距離Zの半分を表す距離のところに位置し、
前記ビード(2)に関し、前記ビードフィラー(21)は、前記円周方向補強要素(22)の前記半径方向最も内側の箇所(222)の少なくとも半径方向内側に位置していて少なくとも15MPaに等しい10%伸び率における弾性モジュラスE21を有するビードフィラー部分を有する、タイヤ。
【請求項2】
前記円周方向補強要素(22)の前記半径方向最も内側の箇所(222)から前記ビード(2)の前記半径方向最も内側の箇所(211)までの前記軸方向距離Yと前記受座のところの前記ビードの前記軸方向幅Dの比Y/Dは、多くとも0.75に等しい、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記円周方向補強要素(22)の前記半径方向最も内側の箇所(222)から前記ビード(2)の前記半径方向最も内側の箇所(211)までの半径方向距離Zと前記受座のところの前記ビードの前記軸方向幅Dの比Z/Dは、少なくとも0.25に等しい、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ビード層(23)の前記軸方向最も外側の端(231)は、少なくとも10mmに等しく、好ましくは少なくとも20mmに等しい半径の差だけ前記カーカス層(31)の前記半径方向最も内側の端(311)の半径方向外側に位置している、請求項1〜3のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記軸方向最も外側のビード層(23)の前記端(231)は、前記半径方向最も内側のカーカス層(31)の前記端(311)の軸方向外側に位置している、請求項1〜4のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記軸方向最も外側のビード層(23)の前記端(231)は、前記半径方向最も内側のカーカス層(31)の前記端(311)の軸方向内側に位置している、請求項1〜4のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記カーカス層の前記端(311)は、前記円周方向補強要素(22)の前記半径方向最も外側の箇所(223)の半径方向外側に位置している、請求項1〜6のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ビード層(23)の前記補強要素は、繊維材料で作られ、好ましくは脂肪族ポリアミドで作られ、芳香族ポリアミドで作られ、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの組み合わせで作られ、ポリエチレンテレフタレートで作られ、またはレーヨンで作られている、請求項1〜7のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記カーカス層(31)の前記補強要素は、金属または繊維材料、好ましくは脂肪族ポリアミドで作られ、芳香族ポリアミドで作られ、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの組み合わせで作られ、ポリエチレンテレフタレートで作られ、またはレーヨンで作られている、請求項1〜8のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記カーカス層(31)の前記補強要素は、互いに平行でありかつ円周方向と65°〜115°の角度をなしている、請求項1〜9のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記ビード層(23)の前記補強要素は、互いに平行でありかつ円周方向と20°〜160°の角度をなしている、請求項1〜10のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記円周方向補強要素の前記半径方向最も外側の箇所(223)の半径方向外側に位置する前記ビードフィラー部分(212)は、前記円周方向補強要素の前記半径方向最も内側の箇所(222)の少なくとも半径方向内側に位置する前記ビードフィラー部分(212)の10%伸び率における弾性モジュラスE21の0.5倍未満である10%伸び率における弾性モジュラスE212を有する、請求項1〜11のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記円周方向補強要素の前記半径方向最も外側の箇所(223)の軸方向外側に位置する前記ビードフィラー部分(213)は、前記円周方向補強要素の前記半径方向最も内側の箇所(222)の少なくとも半径方向内側に位置する前記ビードフィラー部分(212)の10%伸び率における弾性モジュラスE21の0.5倍未満である10%伸び率における弾性モジュラスE213を有する、請求項1〜11のうちいずれか一に記載のタイヤ。
【請求項14】
取り付け型組立体であって、請求項1〜13のうちいずれか一に記載のタイヤと、高さが少なくとも1mmに等しい少なくとも1つのこぶ状突起を備えたホイールとを含む、取り付け型組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意形式の車両用のタイヤ、特に低圧タイヤに関する。低圧という表現は、例えば乗用車用タイヤの場合には1.5barのオーダー、スポーツ車用タイヤの場合には1.2barのオーダー、農業車両用では0.6barのオーダーの圧力を意味しているが、これらに限られるわけではない。この低圧は、封止度の低下の結果または特定の性能、例えばスポーツ車の場合のグリップを得るために行われる慎重な選択の結果であると言える。
【0002】
タイヤは、トレッド表面(踏み面ともいう)を介して路面に接触するようになったトレッドを有するクラウン、リムに接触するようになった2つのビードおよびクラウンをビードに連結する2つのサイドウォールを有する。
【0003】
タイヤが離座(その受座から離れた)状態になり(これは、この離座状態によりタイヤのビードがあちこちに動くことを意味している)、次にリムから外れる(これは、横荷重がタイヤに加わったときにリムから離脱状態になることを意味する)ことになりやすいかどうかは、車両の乗客の安全性にとって重要なタイヤ特徴のうちの1つである。
【0004】
離座は、以下の低圧タイヤ、
‐常用圧力を減少させることによって増大する接触パッチを有することによってグリップを向上させることが望ましいスポーツ車用のタイヤ、
‐常用圧力を減少させることによって耕作地の圧密に対する影響を減少させることが望ましい農業車両タイヤ、
‐圧力の損失に続き数百キロメートルにわたって走行するよう設計されている乗用車用タイヤに関して特に問題である。
【0005】
例えば、乗用車の場合、標準化協会は、離座及びリムからのタイヤの離脱に関して、達成されるべき設定標的(目標)値(例えば、中国規格GB/T2978‐2008)および対応の試験方法(例えば、中国規格GB/T4502‐2009において推奨される方法)を設定した。試験方法の一例は、米国特許第3,662,597号明細書にも記載されており、かかる試験方法では、円錐形型をタイヤのサイドウォールに装着し、次に、サイドウォールに加わる圧力を増大させ、サイドウォールの運動を記録する。類似の試験方法が、American Federal Road Safety Organization(米国連邦道路安全協会)、NHTSA(National Highway Traffic Safety Administration:全国高速道路交通安全事業団)による連邦自動車安全規格番号109において採用されている。
【0006】
これら標準化当局からのこれら要求がますます高まっている推奨により、これらタイヤは、離座およびこれらのリムからの離脱に対してこれまで以上に高い耐性を持って製造されることが必要である。
【0007】
従来、タイヤを取り付けリムに結合することによって耐離座性を高めることができるが、この解決策は、タイヤを取り外すのが極めて困難になるという欠点を備えている。また、欧州特許第103346(B1)号明細書または同第1307351(B1)号明細書または欧州特許出願公開第358490(A2)号明細書に開示されているようにタイヤの幾何学的形状およびリムの幾何学的形状を設計変更して離座をより困難にすることが可能であるが、この方式は、リムの規格から外れるのを必然的に伴い、場合によってはタイヤを製造するために用いられるモールドに対して費用の高くつく改造を必要とする。
【0008】
タイヤは、回転軸線に関して回転対称を示す幾何学的形状を有するので、一般に、タイヤの幾何学的形状は、タイヤの回転軸線を含む子午面で見て説明されていた。所与の子午面に関し、半径方向、軸方向および円周方向は、それぞれ、互いの回転軸線に垂直な方向、互いの回転軸線に平行な方向および子午面に垂直な方向を表している。
【0009】
以下において、「〜の半径方向内側」および「〜の半径方向外側」という表現は、それぞれ、「半径方向に見て〜よりもタイヤの回転軸線の近くに位置する」および「半径方向に見て〜よりもタイヤの回転軸線から離れて位置する」ことを意味している。「〜の軸方向内側」および「〜の軸方向外側」という表現は、「軸方向に見て〜よりも赤道面の近くに位置する」および「軸方向に見て〜よりも赤道面から遠くに位置する」ことを意味している。「半径方向距離」は、タイヤの回転軸線に対する距離であり、「軸方向距離」は、タイヤの赤道面に対する距離である。「半径方向厚さ」は、半径方向に測定され、「軸方向幅」は、軸方向に測定される。
【0010】
「ゴムコンパウンド」という用語は、少なくとも1種類のエラストマーおよび少なくとも1種類のフィラー(充填剤)を含むゴムの配合物を意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第3,662,597号明細書
【特許文献2】欧州特許第103346(B1)号明細書
【特許文献3】欧州特許第1307351(B1)号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第358490(A2)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の主目的は、タイヤの脱着を困難にすることなく、しかも従来用いられている取り付けリムに対する改造を必要としないで、タイヤの耐離座性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、取り付けリムに取り付けられるようになったタイヤであって、
取り付けリムに接触するようになっている2つのビードを有し、取り付けリムは、実質的に半径方向部分または側部および実質的に軸方向部分または受座を有し、
各ビードは、受座のところの軸方向幅と称される軸方向距離Dのところに受座に対して位置決めされた半径方向最も内側の箇所を有し、各ビードは、少なくとも1種類のゴム配合物および少なくとも1つの円周方向補強要素で構成された少なくとも1つのビードフィラーを有し、
円周方向補強要素の子午面断面は、半径方向最も内側の箇所、半径方向最も外側の箇所および軸方向最も内側の箇所を有し、半径方向最も内側の箇所は、ビードの半径方向最も内側の箇所から半径方向距離Zおよび軸方向距離Yを置いたところに位置し、
2つのビードを互いに連結するカーカス補強材を有し、カーカス補強材は、各ビード内で内側に向かってカーカス層端まで半径方向に延びる少なくとも1つのカーカス層を有し、
少なくとも一方のビードに関し、カーカス層端は、タイヤの最大軸方向幅の箇所(幅の測定の基準点の意)の半径方向内側にかつ円周方向補強要素の軸方向最も内側の箇所の軸方向外側に位置し、
ビードに関し、円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所からビードの半径方向最も内側の箇所までの軸方向距離Yと受座のところのビードの軸方向幅Dとの比Y/Dは、少なくとも0.5に等しく、
ビードに関し、円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所からビードの半径方向最も内側の箇所までの半径方向距離Zと受座のところのビードの軸方向幅Dの比Z/Dは、多くとも0.4に等しく、
ビードに関し、円周方向補強要素の半径方向最も外側の箇所の半径方向内側に位置するカーカス補強材の任意のカーカス層の任意の部分は、円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所の軸方向外側に位置し、
ビードは、少なくとも1つのビード層で構成されたビード補強材を有し、このビード層は、ビード層の軸方向最も外側の端がカーカス層の半径方向最も内側の端の半径方向外側に位置するとともにビード層の軸方向最も内側の端が円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所の少なくとも半径方向外側に位置するようビードフィラーを包囲し、
外側フェースを有するビードに関し、円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所の半径方向内側に位置するビード補強材上の箇所は、ビードの外側フェースに対し、ビードの外側フェースに垂直に測定して、多くともZ/2、すなわちビードの半径方向最も内側の箇所と円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所との間の半径方向距離Zの半分を表す距離のところに位置し、
ビードに関し、円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所の少なくとも半径方向内側に位置するビードフィラー部分は、少なくとも15MPaに等しい10%伸び率における弾性モジュラスE21を有するビードフィラー部分を有することを特徴とするタイヤを提供することによって達成される。
【0014】
設定された取り付け方向を持つタイヤの場合、考えられる一解決手段は、ビードのうちの一方だけ、すなわち、車外側に位置するビードに本発明を利用することにある。これは、車内側に位置するビードがコーナリング中に車両の荷重移動のために極めて軽い荷重を受ける離座に抵抗する荷重を受けるかのいずれかだからである。
【0015】
先行技術のビードでは、離座は、クラウンに加えられて円周方向補強要素の下を通るカーカス層を引く横荷重の影響を受けて起こり、カーカス層がリムから離座状態になる。この荷重に対抗する主要な力は、タイヤの内圧である。それほど強くはインフレートされるわけではないタイヤの場合、この力は、加えられる横荷重に応じて、特に、タイヤのグリップの限界でスピードを出して走行するスポーツ車の場合または重量物を積んだ車両の場合に不十分であることが判明しているといえる。
【0016】
離座に対抗する横荷重を増大させるため、当業者は、ビードトウと呼ばれているゴム状材料のウェッジを半径方向最も内側のカーカス層の半径方向最も内側の箇所の内側に配置している。この解決手段を用いて、当業者は、受座のところのビードの軸方向幅Dを増大させている。摩擦によるこのビードトウは、離座に対抗する。ビードトウとリムとの間の接触箇所は、ビードが動く中心となる回動点となる。この幾何学的形状により、円周方向補強要素がビードトウと円周方向補強要素との間に位置する材料を圧縮した後にピボット点を越えて軸方向に延びている場合に離座が起こる。
【0017】
受座のところのビードの軸方向幅は、ビードの半径方向最も内側の箇所と、受座とビードの側部との間の連結箇所との間の軸方向距離である。受座とビードの側部との間の連結箇所は、タイヤの輪郭に接する子午面の2本の直線、すなわち、円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所の外部軸方向投影箇所の第1の接線方向の直線と円周方向補強要素の軸方向最も外側の箇所の内部への半径方向投影箇所の第2の接線方向直線の交点である。受座のところのビードの軸方向幅Dは、通常、タイヤを2つの子午面に沿って区分することによって得られたタイヤの子午面断面で測定される。一例を挙げると、タイヤの子午面断面は、トレッドのところに約60mmの円周方向における厚さを有する。この測定は、2つのビード相互間の距離をタイヤのそのリムへの取り付けビードと軽くインフレートされたタイヤのビードとの距離に等しく保った状態で行われる。
【0018】
円周方向補強要素の内径が所与の場合、ビードトウと円周方向補強要素との間の距離が長ければ長いほど、離座荷重がそれだけ一層大きくなる。本発明によれば、円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所をビードの半径方向最も内側の箇所から半径方向距離Zを置いたところにおよび軸方向距離Yを置いたところに位置決めしてY/Dが少なくとも0.5に等しくかつZ/Dが多くとも0.4に等しくすることにより、最小離座荷重を保証することができ、これは、これら2つの箇所相互間に位置する材料が十分に剛性であることを条件とする。その結果、円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所の半径方向内側に位置するビードフィラーの部分は、15MPa以上の弾性モジュラスを有することが必要である。
【0019】
このビードフィラー部分の圧縮剛性を高める一解決手段は、誘起される横方向変形に対抗することであり、かかる変形の量は、ゴム状材料の場合、大きい。本発明により提案される解決手段は、このビードフィラー部分の全てを繊維材料レインフォーサまたは補強要素の少なくとも1つの層で包囲することであり、これら繊維材料レインフォーサは、互いに平行であってこの変形を制限する。繊維材料レインフォーサのこの層は、ビード層と呼ばれ、これら層の組立て状態の集まりは、ビード補強材と呼ばれる。
【0020】
離座時にカーカス層の張力によって生じる円周方向補強要素の運動を制限するため、本発明は、カーカス層のどの部分であっても張力を受けて離座に有利なように円周方向補強要素の変形を増大させるのを除外しており、その結果、円周方向補強要素の半径方向最も外側の箇所の半径方向内側に位置するカーカス補強材の任意のカーカス層の任意の部分が円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所の軸方向外側に位置するようにする。
【0021】
誘起される横方向変形を最適に制限するためには、ビード層が可能な限りビードの外側に向かって遠くに位置するようにすることが適切であり、しかしながらこの場合、レインフォーサを損傷させてレインフォーサが所望の機能を果たすことができないようにする摩擦現象が起こるところでリムと接触しないようにする。加うるに、取り付け時にこぶ状突起の乗り越えを容易に吸収するため、円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所とビード層との間にコンパウンドの層が設けられることが絶対に必要不可欠である。タイヤ受座は、ほぼ軸方向に直線なので、しかも外側フェースとビード層との間の距離がZ/2未満なので、円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所とビード層との間のゴム状材料の層は、Z/2に近い。
【0022】
ビードの半径方向最も内側の箇所と円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所との間の半径方向距離の半分であるZ/2までの厚さにわたる摩擦に耐えるよう特別に設計されたゴムを用いると、ビード層をこの摩耗現象から保護することができる。摩擦に対して保護をもたらすこれらゴムの厚さは、これらゴムがビードフィラーコンパウンドよりも圧縮性であり、これによりこれに対応して本発明の有効性が低下するので最小限に抑えられる必要がある。本発明によれば、外側フェースを有するビードに関し、円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所の半径方向内側に位置するビード補強材上の箇所は、離座荷重に対して効果的な対抗手段をもたらすように、ビードの外側フェースに対しビードの外側フェースに垂直に測定して多くともZ/2、すなわちビードの半径方向最も内側の箇所と円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所との間の半径方向距離Zの半分を表す距離のところに位置する。
【0023】
円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所の半径方向内側に位置する部分についてビードの外側フェースに対するビード補強材の幾何学的形状および特にその位置を保証するためには、タイヤの成型中カーカス補強材に加えられる荷重によって引き起こされるビードフィラーゴムの運動をなくすことが必要である。提案される解決手段は、ビード中に存在するカーカス補強材をなくすとともにカーカス補強材とビード補強材との間のオーバーラップ領域と呼ばれているゾーンを介してビードとサイドウォールを固定することにある。
【0024】
加うるに、カーカス補強材がクラウンとのその連結機能を果たすようにするため、この端は、タイヤの最も幅の広い軸方向断面の箇所の半径方向内側に位置する。タイヤがそのリムに取り付けられて軽くインフレートされた状態で、すなわち、例えばタイヤ・リム境界、すなわちTRAによって推奨される公称圧力の10%に等しい圧力までインフレートされた状態で、タイヤの最大軸方向幅は、サイドウォールのところで測定される。
【0025】
ビードとサイドウォールとの間の連結は、ビード層とカーカス層のオーバーラップ領域と呼ばれるゾーンを介してであり、したがって、軸方向最も外側のビード層の端は、半径方向最も内側のカーカス層の端の半径方向外側に位置する。
【0026】
ビードとサイドウォールとの間の連結は、ビード層の補強要素とカーカス層の補強要素との間に位置する材料、一般的に言えば、シャーゴム(shear rubber)と呼ばれるゴム材料の剪断を介してである。これらシャーゴムの厚さおよびオーバーラップの長さは、タイヤの横剛性と耐久性との性能のバランスを定める。低圧で動作するタイヤの場合、このオーバーラップ領域の長さは、最小シャーゴム厚さが0.3mmを超えかつ2mm未満の場合、10mmを超える。高い耐久性を得るためには、一解決手段は、20mmを超えるオーバーラップ長さを提供することである。
【0027】
螺旋状に巻かれまたは互いに撚り合わせた金属補強要素を用いるかまたは繊維材料補強要素を用いるかのいずれかによって円周方向補強要素を作るのが良い。
【0028】
好ましい一実施形態では、円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所は、ビードの半径方向最も内側の箇所から軸方向距離Yを置いたところに位置し、この軸方向距離(Y)と受座のところのビードの軸方向幅(D)の比(Y/D)は、多くとも0.75に等しいようにする。これは、円周方向補強要素をビード層と接触関係をなして配置しないようにすることが必要だからであり、その目的は、摩擦によるこれらの構成部分の摩耗を生じさせず、しかもビード層および円周方向補強要素である2つの補強要素相互間のこの材料の過度に小さい厚さの結果として剪断によるビードフィラーのゴム配合物の割れを生じさせないようにすることにある。
【0029】
これらと同じ理由で、補強要素の摩耗または受座のところのビードフィラーの割れの恐れを相殺するためには、円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所をビードの半径方向最も内側の箇所から半径方向距離(Z)を置いたところに位置させてこの半径方向距離(Z)と受座のところのビードの軸方向幅(D)の比(Z/D)が少なくとも0,25に等しくなるようにすることが特に有利である。
【0030】
本発明によれば、オーバーラップが生じるカーカス層は、オーバーラップに関与するビード層の軸方向内側か軸方向外側かのいずれかに位置するのが良い。
【0031】
カーカス補強材中のカーカス層の数およびビード補強材中のビード層の数に応じて、本解決手段を補強材の各々の2つの層相互間の単一のオーバーラップ長さに制限するかカーカス層とビード層またはビード層、2つのカーカス層、ビード層を交互に配置することによってオーバーラップ長さを増やすかのいずれかを行うことが可能である。ビード層をクラウンの直ぐ下までずっと配することが可能である。この解決手段により、タイヤのサイドウォールの剛性を高めることが可能であり、その目的は、車両の動的応答基準を満たすことにある。しかしながら、これを行うためには、1つまたは複数のカーカス層は、タイヤのインフレートと関連した半径方向における張力の全てに反作用することが絶対にできなければならない。当業者であれば、この目的のため、周知の解決手段、例えばビード層を構成するレインフォーサと比較してカーカス層を構成するレインフォーサの幾何学的形状およびモジュラスを持っている。
【0032】
タイヤの製造を容易にするため、好ましい一実施形態は、カーカス層の端(311)が円周方向補強要素(22)の半径方向最も外側の箇所(223)の半径方向外側に位置決めされるようにすることである。
【0033】
有利には、ビード層の補強要素は、繊維材料で作られ、好ましくは脂肪族ポリアミドで作られ、芳香族ポリアミドで作られ、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの組み合わせで作られ、ポリエチレンテレフタレートで作られ、またはレーヨンで作られている。と言うのは、これらは、種々のビード幾何学的形状に容易に適合するからである。
【0034】
また、タイヤの常用圧力に応じて、カーカス層の補強要素は、金属または繊維材料、好ましくは脂肪族ポリアミドで作られ、芳香族ポリアミドで作られ、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの組み合わせで作られ、ポリエチレンテレフタレートで作られ、またはレーヨンで作られることが有利である。常用圧力が1.5bar未満のタイヤの場合、繊維材料で作られた補強要素を含むカーカス補強材は、これらの重量が低くかつ使用しやすいので好ましい場合が多い。常用圧力が約1.5barを超えるが、圧力が1.5bar未満での使用を予測する延長モードを備えたタイヤの場合、金属で作られた補強要素を含むカーカス補強材は、これらの圧縮強度および疲労強度が高いので好ましい場合が多い。
【0035】
特定の一実施形態によれば、周知の転がり抵抗およびコンフォート性能に関し、カーカス層の補強要素は、互いに平行でありかつ円周方向と65°〜115°の角度をなしている。
【0036】
2つの補強要素は、これら2つの要素のなす角度が5°以下である場合、本明細書では「平行」と呼ばれている。
【0037】
好ましい一実施形態によれば、ビード層は、互いに平行でありかつ円周方向と20°〜160°の角度をなす補強要素を含み、これにより、取り付けリムとの接触時の摩耗を制限するための円周方向剛性とビード中に存在するゴムの相当な体積が与えられている場合に多量のエネルギー散逸源であるリムフランジ回りの変形を制限するための曲げ剛性との有利な妥協策を見出すことができる。さらに、ビード層の角度の選択は、特に車両の動的基準を満たすためにタイヤ設計者が得ようとする剛性で決まる。ビード層の端の半径方向位置は、タイヤの構造剛性を設定する際の有利なパラメータでもある。
【0038】
好ましくは、円周方向補強要素の半径方向最も外側の箇所の半径方向外側に位置するビードフィラー部分は、ビードに対してサイドウォールに加わる曲げを促進し、かくしてエネルギーの散逸を制限するよう円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所の少なくとも半径方向内側に位置するビードフィラー部分の10%伸び率における弾性モジュラスの0.5倍未満である10%伸び率における弾性モジュラスを有する。
【0039】
走行中のエネルギーの散逸を制限するとともに製造を容易にするというこの同じ目的により、円周方向補強要素の半径方向最も外側の箇所の軸方向外側に位置するビードフィラー部分は、円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所の少なくとも半径方向内側に位置するビードフィラー部分の10%伸び率における弾性モジュラスの0.5倍未満である10%伸び率における弾性モジュラスを有することが好ましい場合がある。
【0040】
少なくともホイールとタイヤとを含む本発明の取り付け型組立体は、これが、高さが1mmを超える少なくとも1つのこぶ状突起を備えたホイールを含む場合にかつてないほど良好に作動する。このこぶ状突起により、横荷重を受けた場合のビードトウの軸方向運動を停止することが可能であり、しかもビードトウとリムとの接触箇所の滑りが阻止され、かくしてビードは、この周りに動くようになる。こぶ状突起は、当業者には知られている用語であり、このこぶ状突起は、ホイールリムのビード着座面上の「バンプ」を意味している。乗用車用タイヤのリムは、こぶ状突起を備えている場合が非常に多い。
【0041】
本発明の特徴および他の利点は、
図1〜
図12の助けにより良好に理解され、図は、縮尺通りには描かれておらず、単純化された形態で描かれており、その目的は、本発明の理解を容易にすることにある。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図2】トレッドの「車内側の縁」および「車外側の縁」の用語の意味を説明する図である。
【
図3】離座試験中においてタイヤサイドウォールに加えられる荷重の関数としてのタイヤのサイドウォールの動きを示す図である。
【
図4】離座試験中においてタイヤサイドウォールに加えられる荷重の関数としてのタイヤのサイドウォールの動きを示す図である。
【
図5】離座試験中においてタイヤサイドウォールに加えられる荷重の関数としてのタイヤのサイドウォールの動きを示す図である。
【
図6】離座試験中においてタイヤサイドウォールに加えられる荷重の関数としてのタイヤのサイドウォールの動きを示す図である。
【
図7】離座試験中においてタイヤサイドウォールに加えられる荷重の関数としてのタイヤのサイドウォールの動きを示す図である。
【
図8】離座試験中においてタイヤサイドウォールに加えられる荷重の関数としてのタイヤのサイドウォールの動きを示す図である。
【
図9】本発明のビードおよびサイドウォールの正面断面図であり、特に、距離Y,Zおよび受座のところのビードの軸方向幅Dを示す図である。
【
図10】本発明のビードおよびサイドウォールの子午面断面図であり、ビードフィラーゴムの好ましい分布状態を示す図である。
【
図11】本発明のビードおよびサイドウォールの子午面断面図であり、ビードフィラーゴムの好ましい分布状態を示す図である。
【
図12】離座試験の際にタイヤのサイドウォールに加えられる荷重の関数としての本発明のタイヤと先行技術のタイヤのサイドウォールの動きを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、先行技術のタイヤ1を概略的に示している。タイヤ1は、トレッド7によって包囲されたクラウン補強材(図では見えない)を含むクラウン4、クラウンの半径方向内方への延長部としての2つのサイドウォール3、およびサイドウォール3の半径方向内側に位置した2つのビード2を有する。
【0044】
図2は、車両200のホイールの取り付けリムに取り付けられるようになっていて車両への設定された取り付け方法を有するタイヤを概略的に示している。このタイヤは、車外側の軸方向縁45および車内側の軸方向縁46を有し、車外側の軸方向縁45は、タイヤが所定の取り付け方法にしたがって車両に取り付けられた場合には車両のボデーシェルまたは車体の側に取り付けられるようになった縁であり、車外側軸方向縁45の場合にはこれとは逆である。本明細書において、「車外側」という用語は、車外側軸方向縁45を意味している。
【0045】
図5に示されたグラフ図は、中国規格GB/T4502‐2009に準拠した離座試験の数値シミュレーション結果を示している。円錐形型がタイヤのサイドウォールに押し付けられる。この円錐形型は、設定速度で前進する。円錐形型をこの速度で前進させるのに必要な力ETが円錐形型の移動距離DTの関数としてプロットされている。
【0046】
タイヤの取り付けリム5上におけるタイヤ1(ビードおよびサイドウォールの一部だけが示されている)の初期状況が
図3に示されている。
【0047】
円錐形型が動くと、タイヤの抵抗が荷重ETのほぼ直線状の増加として現れる。ビードは、これが傾き始める箇所まで動き始める。これは、
図4に示されている状況である。この傾動により、円錐形型を前進させるのに必要な荷重は、
図8に示されているようにビードが完全に傾けられるまで減少する。次に、この荷重は、ビードが
図7に示されているように今や取り付けリム5のこぶ状突起6に乗り上がるようになっていなければならないので、再び増大する。離座が完了するのは、ビードがこぶ状突起6に打ち勝ったとき(
図6に示されている状況)のみである。
【0048】
図9は、本発明のビード2およびサイドウォール3の一部の子午面断面を概略的に示している。タイヤ1は、取り付けリム(図示せず)に接触するようになった2つのビード2を有する。少なくとも、車外側に(
図2を比較参照されたい)位置決めされたビード2およびサイドウォール3は、
‐円周方向補強要素22を含み、この円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所222は、タイヤの半径方向最も内側の箇所211から半径方向距離Z置いたところにかつこの同じ箇所から軸方向距離Y置いたところに配置されている。
‐少なくとも1つのカーカス層31を含むカーカス補強材を有し、このカーカス層の端311は、円周方向補強要素22の半径方向最も外側の箇所223の半径方向外側にかつタイヤの最も大きな幅の箇所301の半径方向内側に位置している。カーカス層の端311はまた、円周方向補強要素の軸方向最も内側の箇所224の軸方向外側に位置している。
‐少なくとも1つのビード層23を含むビード補強材を有し、このビード層の軸方向最も外側の端231は、カーカス層31の端311の半径方向外側に位置し、このビード層の軸方向最も内側の端232は、円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所222の半径方向外側に位置する。
‐円周方向補強要素22の軸方向最も外側の箇所225およびタイヤの輪郭上へのその内部半径方向投影箇所226ならびにこの箇所226のところでのまたはビードの受座でのタイヤの輪郭の接線T226を有する。
‐円周方向補強要素の軸方向最も内側の箇所222およびタイヤの輪郭上へのその外部軸方向投影箇所227ならびにこの箇所227のところでのまたはビードの受座でのタイヤの輪郭の接線T227を有する。
‐箇所228のところ、すなわち、受座(「シート」または単に「座」と呼ばれることがある)とビードの側とが交わる箇所のところでのこれら2本の接線T226,T227の交点を有する。
‐半径方向最も内側の箇所211と受座およびビードの側が交わる箇所228との間の軸方向距離に等しい受座のところのビードの軸方向幅Dを有する。
【0049】
図9に示されているビード2は、取り付けリム(図示せず)に接触するようになった部分をさらに有する。
【0050】
図10および
図11は、ビードフィラーの部分21,212,213の種々の好ましい形態を示している。ビードフィラー部分21は、少なくとも、円周方向補強要素22の半径方向最も内側の箇所222の半径方向内側に位置する。ビードフィラー部分212は、円周方向補強要素(
図10)の半径方向最も外側の箇所223の半径方向外側に位置する。ビードフィラー部分213は、箇所223(
図11)の軸方向外側に位置する。
【0051】
図12は、中国規格GB/T4502‐2009に準拠した離座試験の円錐形型を本発明のタイヤと先行技術のタイヤとの間で円錐形型の運動DTの関数として前進させるために必要とされる荷重ETを示している。離座が生じるという観点で本発明によって得られるゲインは、荷重の観点で座標軸上の2本の曲線の最大値相互間でかつ運動の観点でこれら2つの最大値に関する横座標値相互間で測定されている。
【0052】
本発明者は、半径方向と±85°の角度をなすポリエステルの2つのカーカス層で構成されたカーカス補強材、半径方向と55°の角度をなすアラミドで作られたビード層、断面積が10.6mm
2である撚り合わせ金属コードで構成された円周方向補強要素を有するサイズ335/30_ZR_18のタイヤについて本発明を実施しており、ビードフィラー21の10%伸び率における弾性モジュラスは、54MPaに等しく、ビードフィラー213の10%伸び率における弾性モジュラスは、23MPaに等しい。円周方向補強要素の位置決めは、Y=8.5mm、Z=5mm、D=15.5mm、Y/D=0.55、Z/D=0.33であるようなものである。カーカス層とビード層とのオーバーラップ長さは、25mmに等しく、カーカス層の端の半径方向位置は、円周方向補強要素の半径方向最も外側の箇所の半径方向位置に等しく、ビードトウの保護ゴムの平均厚さは、1.5mmであり、ビード層と円周方向補強要素の半径方向最も内側の箇所との間のゴムの厚さは、3mmである。
【0053】
半径方向と±85°の角度をなすポリエステルの2つのカーカス層で構成されたカーカス補強材、断面積が17mm
2である撚り合わせ金属コードの円周方向補強要素、弾性モジュラスが23MPaに等しいビードワイヤフィラーおよび10%伸び率における弾性モジュラスが23MPaに等しいビードトウを有し、円周方向補強要素の位置決めがY=7mm、Z=8mm、D=16mm、Y/D=0.43、Z/D=0.5であるようなものであるような先行技術の解決策335/30_ZR_18と比較する。ビードとカーカスとの間の機械的連結は、カーカスを円周方向補強要素周りに巻き上げることによって達成されている。試験方法は、中国規格GB/T4502‐2009で推奨される方法とほぼ同じである。この試験を0.7barの圧力で実施した。この試験において離座を生じさせるのに必要な荷重を18%だけ増大させ、取り付け中にリムのこぶ状突起を乗り越えるのに必要な圧力を50%だけ減少させた場合にサイドウォールの移動量を19%だけ移動させ、かくして、取り付けの容易性が保たれるだけでなくそれどころか向上していることが実証された。
【0054】
ビード補強材は、保護機能をも果たし、この補強材に対する損傷は、局所化されたままであり、しかもカーカス補強材の耐久性に対して影響を及ぼしていない。
【国際調査報告】