(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-534524(P2017-534524A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】プロペラ駆動式の船舶の船尾管シール装置用の保護装置
(51)【国際特許分類】
B63H 23/32 20060101AFI20171027BHJP
B63H 23/36 20060101ALI20171027BHJP
【FI】
B63H23/32 C
B63H23/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-525869(P2017-525869)
(86)(22)【出願日】2015年11月12日
(85)【翻訳文提出日】2017年5月12日
(86)【国際出願番号】EP2015076424
(87)【国際公開番号】WO2016075230
(87)【国際公開日】20160519
(31)【優先権主張番号】102014223064.0
(32)【優先日】2014年11月12日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】509015590
【氏名又は名称】アクツィエブーラゲート エスケイエフ
【氏名又は名称原語表記】Aktiebolaget SKF
(71)【出願人】
【識別番号】517070958
【氏名又は名称】エス・ケイ・エフ マリーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SKF Marine GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ニルス ベトヒャー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ブラント
(72)【発明者】
【氏名】カルロス ファンガウフ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ゲッツ
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ ハマーシュミット
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス コニエチニー
(72)【発明者】
【氏名】フレート メーニヒ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン プライスラー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ルッシュ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ヴラーゲ
(72)【発明者】
【氏名】ラース ツィーメン
(57)【要約】
本発明は、船尾管(2)とプロペラハブ(3)との間に中間室が設けられていて、該中間室は、プロペラハブと同心の管状の保護周壁(4)によって覆われており、該保護周壁(4)は、一方では船尾管(2)に不動に固定されていて、かつ他方ではプロペラハブ(3)を、リング間隙(5)を残しながら取り囲んでおり、船尾管(2)とプロペラハブ(3)との間の中間室において保護周壁(4)の内部に、プロペラハブ(3)と同心でかつ半径方向断面で見てU字形に形成されたリング(6)が配置されていて、該リング(6)のU字形の開口が、半径方向外側に向けられている、プロペラ駆動式の船舶の船尾管シール装置(1)用の保護装置に関する。取扱いが容易でかつ費用対効果が大きい解決策を得るために、本発明では、リング(6)は少なくとも部分的に、室温(T=20℃)において流し込み可能な粘稠性を有することができる材料(B)から成っている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船尾管(2)とプロペラハブ(3)との間に中間室が設けられていて、該中間室は、前記プロペラハブと同心の管状の保護周壁(4)によって覆われており、該保護周壁(4)は、一方では前記船尾管(2)に不動に固定されていて、かつ他方では前記プロペラハブ(3)を、リング間隙(5)を残しながら取り囲んでおり、前記船尾管(2)と前記プロペラハブ(3)との間の前記中間室において前記保護周壁(4)の内部に、前記プロペラハブ(3)と同心でかつ半径方向断面で見てU字形に形成されたリング(6)が配置されていて、該リング(6)のU字形の開口が、半径方向外側に向けられている、プロペラ駆動式の船舶の船尾管シール装置(1)用の保護装置であって、
前記リング(6)は少なくとも部分的に、室温(T=20℃)において流し込み可能な粘稠性を有することができる材料(B)から成っていることを特徴とする、プロペラ駆動式の船舶の船尾管シール装置(1)用の保護装置。
【請求項2】
前記材料(B)は、コンクリート、特にミネラルキャストである、請求項1記載の保護装置。
【請求項3】
前記リング(6)は、少なくとも2つのリングセクタ(6’,6’’,6’’’,6’’’’)から成っており、このとき各リングセクタ(6’,6’’,6’’’,6’’’’)は、確定された周囲角にわたって延びていて、前記リングセクタ(6’,6’’,6’’’,6’’’’)は、好ましくは互いに結合されている、請求項1または2記載の保護装置。
【請求項4】
2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのリングセクタ(6’,6’’,6’’’,6’’’’)が前記リング(6)を形成している、請求項3記載の保護装置。
【請求項5】
前記リングセクタ(6’,6’’,6’’’,6’’’’)は、センタリングエレメント(7)を用いて互いに相対的に方向付けられており、該センタリングエレメント(7)は、好ましくは、前記リングセクタ(6’,6’’,6’’’,6’’’’)の、周方向に向いている端部領域の、互いに相補的な異形成形部から形成される、請求項3または4記載の保護装置。
【請求項6】
前記リング(6)もしくは前記リングセクタ(6’,6’’,6’’’,6’’’’)は、ねじ結合部(8)を用いて、前記プロペラハブ(3)または前記保護周壁(4)に固定されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の保護装置。
【請求項7】
前記リング(6)もしくは前記リングセクタ(6’,6’’,6’’’,6’’’’)内に、少なくとも1つのねじ(8)によって貫通される挿入部材(9)が配置されている、請求項6記載の保護装置。
【請求項8】
前記挿入部材(9)は、前記リング(6)の前記材料(B)によって少なくとも部分的に取り囲まれている、請求項7記載の保護装置。
【請求項9】
前記材料(B)は、充填剤および結合剤および場合によっては添加剤から成っており、このとき前記充填剤は、好ましくは80%〜95%の重量割合を有していて、前記結合剤は、好ましくは5%〜20%の重量割合を有しており、前記結合剤は、好ましくは樹脂、特にエポキシ樹脂と、硬化剤、特にアミン系硬化剤とから成っている、請求項1から8までのいずれか1項記載の保護装置。
【請求項10】
前記材料(B)に、強化繊維、特にガラス繊維、炭素繊維または鉱物繊維が添加されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船尾管とプロペラハブとの間に中間室が設けられていて、該中間室は、プロペラハブと同心の管状の保護周壁(ロープガード)によって覆われており、該保護周壁は、一方では船尾管に不動に固定されていて、かつ他方ではプロペラハブを、リング間隙を残しながら取り囲んでおり、船尾管とプロペラハブとの間の中間室において保護周壁の内部に、プロペラハブと同心でかつ半径方向断面で見てU字形に形成されたリングが配置されていて、該リングのU字形の開口が、半径方向外側に向けられている、プロペラ駆動式の船舶の船尾管シール装置用の保護装置に関する。
【0002】
このような形式の保護装置は、独国特許発明第3718419号明細書(DE 37 18 419 C2)に基づいて公知である。この明細書によれば、船舶には、船尾管シール装置および船尾管支持装置を保護するために網防止装置(Netzschutz)が設置される。この網防止装置は、多くの場合駆動プロペラに直にフランジ結合される。網およびロープが水中にある場合、これらの網およびロープは、防止装置のU字形の幾何学形状によって巻き上げられ、ドック入りまで、つまりドック入りの際に網およびロープの除去が行われるまで、U字形の構成部内において収容される。
【0003】
リングはこのときリング間隙に関して次のように、すなわちリング間隙を通って場合によっては侵入する、釣り糸、漁網またはこれに類した紐状物の端部が、リングによって捕捉されて巻き上げられるように、配置されかつ寸法設定されている。
【0004】
問題のリングの大きな直径、使用される材料(多くの場合そのためにはアルミニウム青銅が使用される)、製造方法および加工に基づいて、比較的高いコストが発生し、このようなコストは、船舶の操縦者を往々にして、網防止装置を断念するという気持ちにさせる。さらに、リングの取扱い、取付けおよび保守を困難にする大きな重量という問題がある。もちろん、網防止装置、つまり上に述べたリングを断念するということは、船舶駆動の大きな危険を意味する。
【0005】
網防止装置、つまりリングを、ねじを用いて取り付けるためには、フランジ結合のためにリングにおける孔パターンが必要であり、この孔パターンは、船舶に応じてもしくはそれぞれの使用に応じて変化する。従って孔は、使用例に関連して、網防止装置の引渡しもしくは取付けの直前に形成される。
【0006】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の、プロペラ駆動式の船舶の船尾管シール装置用の保護装置を改良して、上に述べた欠点を排除することである。従って、取扱いが容易でかつ費用対効果が大きい解決策を提供することが望まれている。ひいては網防止装置の製造およびその取付けを簡単にできることが望ましい。
【0007】
この課題を解決する本発明の構成は、リングは少なくとも部分的に、室温(T=20℃)において流し込み可能な粘稠性を有することができる材料から成っていることを特徴とする。このような材料としては、好ましくはコンクリート、特にミネラルキャストが挙げられる。
【0008】
リングは、好ましくは、少なくとも2つのリングセクタから成っており、このとき各リングセクタは、確定された周囲角にわたって延びていて、リングセクタは、好ましくは互いに結合されている。このとき特に好適には、リングを形成する2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのリングセクタが設けられている。
【0009】
さらにリングセクタは、センタリングエレメントを用いて互いに相対的に方向付けられていてよく、すなわちセンタリングエレメントは、好ましくは、リングセクタの、周方向に向いている端部領域の、互いに相補的な異形成形部から形成される。
【0010】
リングもしくは前記リングセクタは、好ましくはねじ結合部を用いて、プロペラハブまたは保護周壁に固定されている。このとき好ましくは、リングもしくはリングセクタ内に、少なくとも1つのねじによって貫通される挿入部材が配置されている。このとき好ましくは、挿入部材は、リングの材料によって少なくとも部分的に取り囲まれている。
【0011】
材料は、好ましくは充填剤および結合剤および場合によっては添加剤から成っており、このとき充填剤は、好ましくは80%〜95%の重量割合を有していて、結合剤は、好ましくは5%〜20%の重量割合を有しており、結合剤は、好ましくは樹脂、特にエポキシ樹脂と、硬化剤、特にアミン系硬化剤とから成っている。材料のすべての成分は、合わせて100重量%である。
【0012】
さらに材料に、強化繊維、特にガラス繊維、炭素繊維または鉱物繊維が添加されていてよい。
【0013】
リングの材料には、既に述べたように、強化繊維が添加されていてよい。この強化繊維には、上に述べた繊維の他に、通常のコンクリートにおいても使用される鋼線材、網材、補強鉄、ケージ、鋼織布およびこれに類したエレメントが含まれる。さらにまた材料には、織布が挿入されていてもよい。
【0014】
コンクリートは、セメント、骨材および混合水から成る混合物であり、場合によってはコンクリート添加剤およびコンクリート混和剤をも含む。セメントは、他の構成部分を結合するために結合剤として働く。コンクリートの強度は、水を吸収した状態におけるセメントのクリンカー成分の結晶化によって発現する。
【0015】
繊維補強コンクリートを得るために、コンクリートに、鋼、プラスチック、カーボンまたはガラス製の繊維を添加することができる。
【0016】
ミネラルキャスト(ポリマコンクリートとも呼ばれる)は、通常のコンクリートとは異なり、ポリマ、つまりプラスチック材料を、骨材を結合する結合剤として含んでいる。セメントは、ミネラルキャストでは、せいぜい充填剤としてしか使用されず、結合作用を引き受けない。ミネラルキャスト用の最も広く知られているポリママトリックスは、不飽和ポリエステル樹脂である。
【0017】
ミネラルキャストはその使用分野において、セメントコンクリートに比べて大幅に良好な機械的および化学的な特性を有している。これらの樹脂のゲル化時間は、使用される触媒および硬化剤の量によって調節することができる。良好な振動緩衝特性を発現させるためには、ポリマとして、つまり結合剤として、エポキシ樹脂が使用される。
【0018】
一般的に、「常温(kalt)で」鋳造することができるすべての材料、つまり室温(20℃)において流し込み可能な粘稠性を有することができる材料を、提案された思想を実現するために使用することができる。
【0019】
本発明は従って、特にミネラルキャストから成る、船舶駆動装置のための効果的な網防止装置を提供する。このときリングは一体であってもまたは複数のセグメントから成っていてもよい。セクタ(もしくはセグメント)においては、複数のセクタを正確に結合して1つの完全なリングを形成することを容易にするために、種々様々な分割幾何学形状を実現することができる。しかしながら正確な結合には機能に対して大きな意味はない。
【0020】
リングもしくはリングのセクタを固定するための孔は、製造時に一緒に鋳造することができる。このときまた、種々様々な材料製の(例えば特殊鋼製の、真鍮製の、青銅製の、アルミニウム製の、GFK製の、CFK製のまたはプラスチック製の)挿入部材(インレー)を、使用することができる。インレーは、種々様々な形状を有することができ、ねじからの力伝達のために働き、ミネラルキャストのスポーリングを阻止する。さらに、例えばねじ山付ブシュおよびねじ山付ボルトのようなインレーを一緒に鋳造することが可能である。
【0021】
変化する孔パターンを考慮するため、およびこれを可能な限り1つの鋳型によってカバーできるようにするために、以下に記載のアプローチが存在する:
一方では、長孔のインレーが好適であることが判明している。このようなインレーは、真っ直ぐにまたは腎臓形に曲げられて(つまり周方向において半径をもってまたは半径なしに)設けることができる。このようなインレーは、ミネラルキャスト内に挿入され、特に鋳込まれることができる。
【0022】
インレーは、中実材料のインレーとして形成されていてもよい。このようなインレーは、この場合、リングまたはリングセクタの鋳造時に一緒に鋳込まれる中実材料(例えば青銅、真鍮、特殊鋼、プラスチック)から製造される。そして孔パターンは、型からのリングまたはリングセクタの離型後に、直接顧客の希望に応じて中実材料のインレー内に穿孔によって形成することができる。このようなインレーは、ミネラルキャスト内において確実に固定できるようにするために、相応の幾何学形状を有する必要がある。
【0023】
偏心インレーも可能である。このようなインレー内には、偏心的に孔が形成され、すなわちインレーは、滑り軸受の形式で形成されていてよい。インレーの一部を回転させることによって、孔の位置を変化させ、必要な接続幾何学形状に合わせることができる。
【0024】
ミネラルキャストの密度は、アルミニウム青銅の密度(これは8.6g/cm
3)の約1/4である。従って大幅な重量低減、ひいてはリングもしくはそのセクタの取扱いおよび取付け時における利点が生じる。セグメント化との組合せによって、取扱いおよび取付けにおける利点は拡大する。そして今や、手による取付けが可能である。このことは、クレーン、リフト装置および取付け装置の使用を節約し、時間の消費を減じる。
【0025】
変化の多様性は、エンドユーザのために引き続き残されているが、リングのメーカのためには大幅に減じられている。上に述べたインレーを形成することによって、1つの鋳型だけで作業すること、およびそれにもかかわらず、種々様々な孔パターンを完全に網羅して再現することができる。その結果コストと時間を節減することができる。
【0026】
従って、従来の材料であるアルミニウム青銅の代わりに、ミネラルキャストを使用することによって、コスト上のかなりの利点が得られる。
【0027】
次に図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】リングとして形成された網防止装置を備えた船舶駆動装置の船尾管シール装置用の保護装置を示す半径方向断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態によるリング(網防止装置)を示す半径方向断面図である。
【
図3】
図2に示したリングの半径方向断面図および正面図である。
【
図4】本発明の別の実施形態によるリングを示す半径方向断面図である。
【
図5】本発明の別の実施形態によるリングを示す半径方向断面図である。
【
図6】本発明の別の実施形態によるリングの構成部分であるリングセクタを示す正面図である。
【
図7】一緒になってリングを形成する、
図6に示した4つのリングセクタを示す正面図である。
【
図8】
図8a、
図8bおよび
図8cは、リングの1つの周囲箇所における、互いに隣接する2つのリングセクタの突合せ箇所をその結合直前において、半径方向から見て示す図である。
【
図9】本発明の別の実施形態によるリングを示す半径方向断面図である。
【
図10】本発明の別の実施形態によるリングを示す半径方向断面図である。
【
図11】挿入部材が示されている、リングを示す正面図である。
【
図12】固定のための2つの長孔が示されている、リングを示す正面図である。
【
図13】固定のための偏心挿入体が示されている、リングを示す正面図である。
【0029】
図1には、船尾管シール装置1が示されており、この船尾管シール装置1は、多重のリップシール装置として形成されていて、複数のシールリップ13を有しており、これらのシールリップ13は、プロペラ軸15に取り付けられたブシュ14と共働する。ブシュ14は、一端でフランジ16を介してプロペラハブ3に結合されていて、かつ他端で船尾管2内に進入している。
【0030】
これによって形成された中間室17は、管状の保護周壁4によって覆われており、この保護周壁4は、一方の側で船尾管2に不動に固定されていて、かつ他方の側で、プロペラハブ3を、リング間隙5を残しながら幾分突出している。
【0031】
保護周壁4によって形成された中間室17内には、プロペラハブ3と同心のU字形のリング6が配置されており、このリング6は、半径方向外側に向かって、つまり保護周壁4に向かって開放していて、プロペラハブ3の端面に、単に略示されたねじ結合部8を用いて固定されている。このときリング6の寸法は、このリング6がそのU字形の構造によって形成された収容室内に、場合によってはリング間隙5に侵入する釣り糸端部、漁網端部等の多数の巻き層を収容することができるように選択されている。これによって船尾管シール装置1は保護される。
【0032】
詳細については、上において既に述べた独国特許発明第3718419号明細書(DE 37 18 419 C2)を参照のこと。
【0033】
重要なことは、リング6が本発明によれば少なくとも部分的に、室温(T=20℃)において流し込み可能な粘稠性を有することができる材料Bから成っていることである。ここでは特にミネラルキャストが考えられる。
【0034】
図2には、リング6が半径方向断面図で示されている。この
図2から分かるように、リング6内には孔10が形成されており、これによってリング6をプロペラハブ3にねじ8を用いて固定することができる。取付けのために、孔10に整合するように取付け孔18が設けられており、この取付け孔18は、相応の工具を通すために設けられている。
【0035】
図3から分かるように、リング6は一体の部材として形成されていてよい。
【0036】
孔10には、好ましくは金属製の挿入部材9が挿入されていても、もしくはリング6の鋳造時に挿入部材9が鋳型に入れられることも可能であり、これによって、リング6の固定のために安定した保持を保証することができる。特に、リング6の材料のスポーリングを回避することができる。
図4および
図5には、ここに2つの異なる解決策が示されている。
【0037】
図6および
図7から分かるように、リング6は、それぞれ1つの周方向部分をカバーする複数のセクタ6’,6’’,6’’’,6’’’’から成っていてよい。
【0038】
個々のセクタが周方向において互いに正確に付き合わせられかつ軸方向a(
図1参照)において位置決めされるようにするために、センタリングエレメント7が設けられていてよく、これらのセンタリングエレメント7の3つの異なる変化形態は、
図8a、
図8bおよび
図8cに示されている。これにより、リングセクタ6’,6’’の正確な軸方向における組立てを、ここに示されている処置によって改善することができる。
【0039】
ここにはリングセクタ6’,6’’の間における移行領域が示されており、このとき半径方向から見た図が略示されている。
図8a、
図8bおよび
図8cにおける3つの図示から分かるように、突合せ箇所は、平らに形成されているのではなく、斜めにもしくは角度を付けられて(
図8a参照)もしくは矢印形状のように(
図8bおよび
図8c参照)形成されている。後に述べた2つの可能性は、互いに突き合わせられる2つのリングセクタ6’,6’’の正確な軸方向における結合を保証するので、リングセクタの組立て時に、個々の部分は互いに正確に配置される。
【0040】
これによって、特に単に2つのセグメントもしくはセクタにおいて、より良好な組立て可能性が得られる。さらに、セクタを互いに相対的にセンタリングする簡単な可能性が得られる。
【0041】
図9には、リング6もしくはそのセクタの鋳造時に一緒に鋳込まれた挿入部材9が、再度略示されている。
図10には、次いで前記挿入部材9が貫通穿孔されている様子が示されており、これによってリング6を所望の孔パターンによって固定することができるようになる。
【0042】
さらに
図11には、種々異なった複数の孔を有していて、ある一定の変更可能性の枠内においてリング6のねじ固定を可能にする挿入部材9が、設けられ得ることが示されている。
【0043】
この変更可能性は、
図12から分かるように、長孔11を設けることによってさらに高められ、これらの長孔11は、ここでは腎臓形に形成されていて、リング6が比較的簡単にねじ固定され得ることを可能にしている。
【0044】
図13にはさらに別の可能性が示されており、この別の可能性では、偏心挿入体12として形成された挿入部材が設けられている。この偏心挿入体12は、滑り軸受の形式で形成されていて、相対的に回動することができる(
図13の矢印参照)2つのリングを有している。これによって偏心挿入体12の内側のリングの回転によって、ねじのための貫通孔の位置を変化させることができ、かつプロペラハブ3におけるねじ山付孔に合わせることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 船尾管シール装置
2 船尾管
3 プロペラハブ
4 保護周壁(ロープガード)
5 リング間隙
6 リング
6’ リングセクタ
6’’ リングセクタ
6’’’ リングセクタ
6’’’’ リングセクタ
7 センタリングエレメント
8 ねじ結合部
9 挿入部材
10 孔
11 長孔
12 偏心挿入体
13 シールリップ
14 ブシュ
15 プロペラ軸
16 フランジ
17 中間室
18 取付け孔
B 材料(ミネラルキャスト、ポリマコンクリート)
a 軸線方向
【国際調査報告】