特表2017-534544(P2017-534544A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-534544新規合成結晶材料のEMM−26、その調製、およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-534544(P2017-534544A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(54)【発明の名称】新規合成結晶材料のEMM−26、その調製、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20171027BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20171027BHJP
   B01J 20/10 20060101ALI20171027BHJP
   B01J 20/08 20060101ALI20171027BHJP
   B01J 20/06 20060101ALI20171027BHJP
   B01J 20/04 20060101ALI20171027BHJP
   B01J 20/02 20060101ALI20171027BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20171027BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20171027BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20171027BHJP
【FI】
   C01B39/48
   C01B32/50
   B01J20/10 A
   B01J20/10 C
   B01J20/08 A
   B01J20/08 C
   B01J20/06 A
   B01J20/06 B
   B01J20/06 C
   B01J20/04 A
   B01J20/04 B
   B01J20/04 C
   B01J20/02 A
   B01J20/02 B
   B01J20/30
   B01J20/18 A
   B01D53/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-512378(P2017-512378)
(86)(22)【出願日】2015年8月28日
(85)【翻訳文提出日】2017年3月24日
(86)【国際出願番号】US2015047375
(87)【国際公開番号】WO2016036590
(87)【国際公開日】20160310
(31)【優先権主張番号】62/045,094
(32)【優先日】2014年9月3日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】390023630
【氏名又は名称】エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】アレン・ダブリュー・バートン
(72)【発明者】
【氏名】カール・ジー・ストローマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ヒルダ・ビー・ブローマン
(72)【発明者】
【氏名】モバエ・アフェウォルキ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・アイ・ラビコビッチ
(72)【発明者】
【氏名】チャランジット・エス・ポール
(72)【発明者】
【氏名】シャオドン・ゾウ
(72)【発明者】
【氏名】ペン・グオ
(72)【発明者】
【氏名】ジュンリアン・スン
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
4G073
4G146
【Fターム(参考)】
4D012BA02
4D012CA03
4D012CG01
4G066AA02B
4G066AA11B
4G066AA12B
4G066AA13B
4G066AA15B
4G066AA16B
4G066AA18B
4G066AA19A
4G066AA19B
4G066AA20B
4G066AA21B
4G066AA22
4G066AA22B
4G066AA23B
4G066AA25B
4G066AA26B
4G066AA27B
4G066AA32B
4G066AA33B
4G066AA36B
4G066AA37B
4G066AA38B
4G066AA39B
4G066AA41B
4G066AA45B
4G066AA49B
4G066AA51B
4G066AA61B
4G066AB10D
4G066AB12D
4G066BA31
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA01
4G066FA03
4G066FA05
4G066FA21
4G066FA37
4G066FA38
4G073BA02
4G073BA56
4G073BA63
4G073BA75
4G073BA80
4G073BA81
4G073BB03
4G073BB07
4G073BB44
4G073BB58
4G073BD13
4G073BD16
4G073BD22
4G073CZ55
4G073DZ04
4G073FA15
4G073FB01
4G073FB04
4G073FB11
4G073FB50
4G073FC12
4G073FC18
4G073FC25
4G073FD24
4G073FE09
4G073FE20
4G073GA01
4G073GA03
4G073GA04
4G073GA05
4G073GA11
4G073GA19
4G073GB02
4G073GB05
4G073UA06
4G073UB40
4G146JA02
4G146JB02
4G146JB04
4G146JC12
4G146JC18
4G146JC19
4G146JC27
4G146JD03
4G146JD10
(57)【要約】
EMM−26は、独特のT−原子連結性と、新たな材料として同定されるX線回折パターンとを有する1つの結晶相を有する新規合成結晶材料である。EMM−26は、約6.3Å×約3.2Åの細孔寸法を有する四面体配位原子の10員環によって規定される二次元細孔系を有する。EMM−26は、1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンおよび/または1,6−ビス(N−メチルピペリジニウム)ヘキサンジカチオンなどの有機構造指向剤を用いて調製することができる。EMM−26は、有機化合物の変換および/または収着のプロセスに使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋原子によって連結された四面体原子(T)の骨格を有する合成結晶材料であって、前記四面体原子の骨格が、表1に示されるように最近接四面体(T)原子を連結することによって規定されている、合成結晶材料。
【請求項2】
架橋原子によって連結された四面体原子(T)の骨格を有する合成結晶材料であって、前記四面体原子の骨格が、表2に列挙されるオングストロームの原子座標を有する単位格子によって規定されていて、各座標位置は、±1オングストロームの範囲内で変動し得る、合成結晶材料。
【請求項3】
焼成されたままの形態で、表4に列挙される面間隔dおよび相対強度を含むX線回折パターンを含む、合成多孔質結晶材料。
【請求項4】
合成されたままの形態で、表3に列挙される面間隔dおよび相対強度を含むX線回折パターンを含む、合成多孔質結晶材料。
【請求項5】
前記四面体原子が、Li、Be、B、Al、P、Si、Ga、Ge、Zn、Cr、Mg、Fe、Co、Ni、Cu、Mn、As、In、Sn、Sb、TiおよびZrからなる群から選択される1種類以上の元素、例えばB、AlおよびSiからなる群から選択される1種類以上の元素を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の結晶材料。
【請求項6】
前記架橋原子が、O、N、F、S、SeおよびCからなる群から選択される1種類以上の元素を含む、例えば酸素を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶材料。
【請求項7】
以下の組成:
aHal:bQ:cX:YO:zH
[式中、Halは、ハロゲン化物イオンであり;Qは、1,6−ビス(N−メチル−ピロリジニウム)ヘキサンジカチオンおよび1,6−ビス(N−メチルピペリジニウム)ヘキサンジカチオンの1種類以上から選択される有機構造指向剤であり、Xは、三価元素であり、Yは、四価元素であり、aは、0以上で0.2以下の値を有する数であり、bは、0を超え0.10以下の値を有する数であり、0.015<c<0.125であり、zは、0以上で0.15以下の値を有する数である]
を有する、請求項1〜2および4〜6のいずれか1項に記載の結晶材料。
【請求項8】
以下の組成:
mM:bQ:cX:YO:zH
[式中、Mは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり;Qは、1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンおよび1,6−ビス(N−メチルピペリジニウム)ヘキサンジカチオンの1種類以上から選択される有機構造指向剤であり、Xは、三価元素であり、Yは、四価元素であり、mは、0以上で0.1以下の値を有する数であり、bは、0を超え0.10以下の値を有する数であり、0.015<c<0.125であり、zは、0以上で0.15以下の値を有する数である]
を有する、請求項1〜2および4〜6のいずれか1項に記載の結晶材料。
【請求項9】
Xがホウ素を含み、Yがケイ素を含み、必要に応じて、BのSiOに対するモル比が約0.125〜約0.033であり、必要に応じて、COに対する約1気圧(約100kPa)における収着能が約0.8mmol/g〜約2.0mmol/gである、請求項7または請求項8に記載の結晶材料。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれからも独立した結晶材料または請求項1〜9のいずれか1項に記載の結晶材料の調製方法であって、
(a)水の供給源と、四価元素Yの酸化物の供給源と、三価元素Xの酸化物の供給源と、必要に応じてハロゲン化物イオンの供給源と、必要に応じて水酸化物イオンの供給源と、1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンおよび1,6−ビス(N−メチルピペリジニウム)ヘキサンジカチオンの1種類以上から選択される構造指向剤(Q)の供給源とを含む反応混合物を提供する工程と、
(b)100℃〜200℃の温度を含む結晶化条件下で、前記結晶材料の結晶が形成されるまで、前記反応混合物を加熱する工程と、
(c)前記工程(b)で生成した結晶を回収する工程と、
必要に応じて、(d)前記構造指向剤(Q)の少なくとも一部を除去するために、前記工程(c)で回収した結晶を処理する工程と
を含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法によって製造される合成多孔質結晶材料。
【請求項12】
二酸化炭素と、アルカン、酸素、窒素、HS、SOおよびNOの1種類以上とを含む混合物から二酸化炭素を分離するための方法であって、前記混合物を、請求項1〜9および11のいずれか1項以上に記載の多孔質結晶材料と接触させることを含む、方法。
【請求項13】
二酸化炭素およびメタンを含む混合物から二酸化炭素を分離するための方法であって、前記混合物を、請求項1〜9および11のいずれか1項以上に記載の多孔質結晶材料と接触させる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、新規合成結晶材料であるEMM−26、およびその調製方法に関する。本発明は、有機変換および収着プロセスにおける多孔質形態EMM−26の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
天然および合成の両方のゼオライト材料は、収着材料として有用であり、様々な種類の炭化水素変換反応に対して触媒特性を有することが知られている。ある種のゼオライト材料は、X線回折によって測定される明確な結晶構造を有し、その中には多数のより小さな空隙が存在し、それらは多数のさらに小さなチャネルまたは細孔によって相互接続される場合がある規則的で多孔質の結晶メタロシリケートである。これらの空隙および細孔は、特定のゼオライト材料中で大きさが均一である。これらの細孔の寸法は、特定の寸法の分子の収着を受け入れ、より大きな寸法の分子は拒絶するような寸法であるため、これらの材料は、「モレキュラーシーブ」として知られるようになっており、これらの性質を利用する多数の方法で使用されている。
【0003】
天然および合成のこのようなモレキュラーシーブとしては、多種多様な陽イオンを含有する結晶シリケート、およびケイ素が部分的にまたは完全に別の四価元素で置換された置換シリケートが挙げられる。これらのシリケートは、SiO四面体の剛性三次元骨格として、および、必要に応じて、酸素原子を共有することによって四面体が架橋し、それによって三価元素およびケイ素原子の合計と酸素原子との局所的な比が約1:約2となる三価元素酸化物、たとえばAlOおよび/またはBOの四面体の剛性三次元骨格として表すことができる。三価元素を含有する四面体のイオン原子価は、カチオン、たとえばアルカリ金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンが結晶中に混入されることでバランスが取られる。これは、三価元素、たとえばアルミニウムと、Ca/2、Sr/2、Na、K、またはLiなどの種々のカチオンの数との比がほぼ1となることで表すことができる。従来方法でのイオン交換技術を用いて、ある種類のカチオンを別の種類のカチオンと、完全または部分的のいずれかで交換することができる。このようなカチオン交換によって、カチオンを適切に選択することで特定のシリケートの性質を変化させることが可能となっている。
【0004】
従来技術では、多種多様の合成ゼオライトが形成されている。これらのゼオライトの多くは、単なる一部の例として、ゼオライトA特許文献1;ゼオライトX特許文献2;ゼオライトY特許文献3;ゼオライトZK−5特許文献4;ゼオライトZK−4特許文献5;ゼオライトZSM−5特許文献6;ゼオライトZSM−11特許文献7;ゼオライトZSM−12特許文献8、ゼオライトZSM−20特許文献9;ZSM−35特許文献10;ゼオライトZSM−23特許文献11;ゼオライトMCM−22特許文献12;およびゼオライトMCM−35特許文献13で示されるように文字またはその他の好都合な記号によって示されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第2,882,243号明細書
【特許文献2】米国特許第2,882,244号明細書
【特許文献3】米国特許第3,130,007号明細書
【特許文献4】米国特許第3,247,195号明細書
【特許文献5】米国特許第3,314,752号明細書
【特許文献6】米国特許第3,702,886号明細書
【特許文献7】米国特許第3,709,979号明細書
【特許文献8】米国特許第3,832,449号明細書
【特許文献9】米国特許第3,972,983号明細書
【特許文献10】米国特許第4,016,245号明細書
【特許文献11】米国特許第4,076,842号明細書
【特許文献12】米国特許第4,954,325号明細書
【特許文献13】米国特許第4,981,663号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
国際ゼオライト学会(International Zeolite Association)によって認識される現在200を超える周知のゼオライト骨格構造が存在する。多くの有機化合物の変換および収着のプロセスの性能(又はパフォーマンス)を改善するために、周知の材料とは異なる性質を有する新規構造が必要とされている。それぞれの構造は、独自の細孔、チャネル、およびケージの寸法を有し、それによって、前述のような特別な性質が得られる。EMM−26は、約6.3Å(オングストローム)(±約0.4Å)×約3.2Å(±約0.3Å)の細孔寸法を有する四面体配位原子の10員環によって規定される二次元細孔系を有する独特の骨格構造を有する新規合成結晶材料である。EMM−26は、有機化合物の変換および/または収着のプロセスにおいて有用となりうる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
したがって、一態様では、本発明は、新たな合成結晶材料(synthetic crystalline material)であるEMM−26にあり、これは、特定の形態では、微孔質(microporosity)を示し、架橋原子によって連結された四面体原子(又はテトラヘドラル原子)(T)の独自の骨格(又はフレームワーク)を有する。EMM−26の四面体原子骨格は、以下の表1に示されるように(又は表1に示される様式または方法)で最近接四面体(T)原子を連結することによって規定(又は画定)されている。
【0008】
1つ以上の実施形態では、EMM−26の四面体原子骨格は、以下の表2に列挙されるオングストローム(Å)の(単位での)原子座標を有する単位格子によって規定されていてもよく、各座標位置は、±(プラスマイナス)1オングストローム(Å)の範囲内で変動し得る。
【0009】
ある実施形態では、EMM−26は、少なくとも、その合成されたままの形態で、以下の表3に列挙される線(又はライン)を含むX線回折パターンによって同定することができる。
【0010】
1つ以上の実施形態では、EMM−26は、合成されたままの形態で、
aHal:bQ:cX:YO:zH
[式中、Halは、ハロゲン化物イオン(又はハライドイオン)であり;Qは、1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンおよび1,6−ビス(N−メチルピペリジニウム)ヘキサンジカチオンの1種類以上から選択される有機構造指向剤(organic structure directing agent)であり、Xは、三価元素であり、Yは、四価元素であり、aは、0以上で0.2以下の値を有する数であり、bは、0を超え0.10以下の値を有する数であり、0.015<c<0.125であり、zは、0以上で0.15以下の値を有する数である]
を含む組成(又はコンポジション)、上記式から本質的になる組成、または上記の式の組成を有することができる。ある実施形態では、Xは、ホウ素および/またはアルミニウムを含むことができ、Yは、ケイ素および/またはゲルマニウムを含むことができる。
【0011】
他の実施形態では、EMM−26は、合成されたままの形態で、
mM:bQ:cX:YO:zH
[式中、Mは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり;Qは、1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンおよび1,6−ビス(N−メチル−ピペリジニウム)ヘキサンジカチオンの1種類以上から選択される有機構造指向剤であり、Xは、三価元素であり、Yは、四価元素であり、mは、0以上で0.1以下の値を有する数であり、bは、0を超え0.10以下の値を有する数であり、0.015<c<0.125であり、zは、0以上で0.15以下の値を有する数である]
の組成を有することができる。ある実施形態では、Xは、ホウ素および/またはアルミニウムを含むことができ、Yは、ケイ素および/またはゲルマニウムを含むことができる。
【0012】
さらなる一態様では、本発明は、水の供給源と、四価元素Yの酸化物の供給源と、三価元素Xの酸化物の供給源と、1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンおよび1,6−ビス(N−メチル−ピペリジニウム)ヘキサンジカチオンの1種類以上から選択される構造指向剤(Q)の供給源とを含む反応混合物を提供すること(又は工程もしくはステップ)と;EMM−26の結晶が形成されるのに十分な温度および時間で反応混合物を加熱すること(又は工程もしくはステップ)と;必要に応じて、好ましくは、反応混合物からのEMM−26結晶生成物の精製および/または分離を行うこと(又は工程もしくはステップ)とを含むEMM−26の製造方法にある。
【0013】
なお、さらなる一態様では、本発明は、二酸化炭素と、アルカン、酸素、窒素、SOおよびNOの1種類以上とを含む混合物から二酸化炭素を分離するためのプロセス(又は方法)にあり、当該プロセスは、前記混合物を多孔質形態のEMM−26と接触させて、前記二酸化炭素を選択的に収着させて、前記二酸化炭素混合物の二酸化炭素含有量よりも低い二酸化炭素含有量を有する生成物流を形成すること(又は工程もしくはステップ)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1の生成物のX線回折パターンを示している。
図2】実施例1の生成物の走査電子顕微鏡写真(SEM)画像を示している。
図3】実施例2の生成物のX線回折パターンを示している。
図4】実施例3の製造されたままの生成物、焼成されたままの生成物、およびオゾン処理した生成物のX線回折パターンを示している。
図5】実施例3の製造されたままの生成物のSEM画像を示している。
図6】実施例3の製造されたままの生成物およびオゾン処理した生成物の11B MAS NMRスペクトルを示している。
図7】実施例4の製造されたままの生成物のSEM画像を示している。
図8】実施例6の生成物のX線回折パターンを示している。
図9】実施例6の製造されたままの生成物のSEM画像を示している。
図10】シリカ−CHAおよびシリカ−DDRの骨格型のゼオライトの同等の収着能と比較した場合の、実施例3の焼成されたままのEMM−26生成物のCO、CH、およびNに対する相対収着能をプロットしたグラフである。
図11】実施例3および6の焼成されたままのEMM−26生成物のCO、CH、およびNに対する相対収着能を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態の詳細な説明)
EMM−26は、約6.3Å(オングストローム)×約3.2Å(オングストローム)の細孔寸法(又はポアディメンション)を有する四面体で配位された原子(又は四面体配位原子)の10員環によって規定される二次元細孔系(又は二次元ポアシステム)を有する独特の結晶骨格構造を有する新規組成物である。特定の形態、特にその合成されたままの形態では、EMM−26の細孔は、外部骨格材料によって部分的または完全に閉鎖されていてもよい。その多孔質形態では、EMM−26は、有機化合物の変換および/または収着のプロセスにおいて有用となり得る。
【0016】
EMM−26の独特の結晶構造は、幾つかの実施形態では(in come embodiments)、各単位格子中の四面体配位原子の間の連結性(又はコネクティビティ)によって規定することができる。特に、EMM−26の各単位格子は、架橋原子によって連結された四面体(T)原子の骨格を有することができ、この四面体原子骨格は、以下の表1に示されるように最近接四面体(T)原子を連結することによって規定することができる。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
【0020】
四面体配位原子は、限定するものではないが、ホウ素(B)、リチウム(Li)、ベリリウム(Be)、アルミニウム(Al)、リン(P)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、ヒ素(As)、インジウム(In)、銅(Cu)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の1種類以上を含む四面体配位を有することができる原子である。架橋原子は、2つの四面体配位原子を連結可能な原子であり、その例としては、限定するものではないが、酸素(O)、窒素(N)、フッ素(F)、硫黄(S)、セレン(Se)および炭素(C)の1種類以上が挙げられる。EMM−26の骨格中の好ましい四面体原子は、B、Al、SiおよびGeからなる群から選択される1種類以上の元素を含むことができる。
【0021】
EMM−26の完全な構造は、上記で定義されるように、複数の単位格子を、完全に連結した三次元骨格で連結することによって構成することができる。1つの単位格子中の四面体配位原子は、そのすべての隣接単位格子中の特定の四面体配位原子と連結することができる。表1は、EMM−26の所定の単位格子のすべての四面体配位原子の連結を列挙しているが、これらの連結は、同じ単位格子中の特定の原子への連結でなくてもよく、隣接単位格子に対するものであってよい。表1中に列挙されるすべての連結は、それらが同じ単位格子中であるか、又は隣接単位格子中であるかとは無関係に、それらが最も近い四面体配位原子に対する連結となるように提供され得る。
【0022】
EMM−26の構造は、これに加えて、またはこれとは別に、単位格子中の各四面体配位原子の位置のx、y、およびzの(デカルト)座標によって画定することができる。このような構成では、各四面体配位原子は、架橋原子に結合することができ、それらの架橋原子は次に隣接四面体配位原子に結合することができる。四面体配位原子は、別の結晶力(たとえば無機種または有機種が存在するため)、および/または四面体配位原子および/または架橋原子の選択のために動き回ることができるので、本明細書では報告されるx、y、およびzの座標位置で±1.0オングストロームの範囲が含まれている。T=ケイ素であり架橋原子が酸素である場合に典型的なオングストロームの単位でのEMM−26の四面体配位原子(T−原子)のおおよそのx、y、およびz座標位置を以下の表2に列挙している。
【0023】
【表4】
【0024】
【表5】
【0025】
【表6】
【0026】
EMM−26の合成されたまま形態および焼成された形態は、基本的な反射線を表3(合成されたままの形態)および表4(焼成された形態)に示すことができる特性X線回折(XRD)パターンを有することができる。特定の組成およびその構造中の充填によってばらつきが生じうる。この理由のため、表3および4中で相対強度および面間隔d(d-spacing)がある範囲として示されている。
【0027】
【表7】
【0028】
【表8】
【0029】
表3中および4中のXRDパターンは、CuKα放射線を使用し、PANalytical X’Pert 回折計(diffactometer)を使用し、X’celerator検出器、ブラッグ−ブレンターノ配置、約45kVおよび約40mAの管電圧および電流、約1/8°の固定発散スリットおよび散乱除去スリット、約0.04ラジアンのソーラースリット、ならびに約0.017°のステップサイズを用いて測定した。
【0030】
1つ以上の実施形態では、EMM−26は、合成されたままの形態で、
aHal:bQ:cX:YO:zH
[式中、Halは、塩化物イオンまたはフッ化物イオンなどのハロゲン化物イオンであり;Qは、1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンおよび1,6−ビス(N−メチルピペリジニウム)ヘキサンジカチオンの1種類以上から選択される有機構造指向剤であり、Xは、三価元素であり、Yは、四価元素であり、aは、0以上で0.2以下の値を有する数であり、bは、0を超え0.10以下の値を有する数であり、0.015<c<0.125であり、zは、0以上で0.15以下の値を有する数である]
の組成を有することができる。ある実施形態では、Xは、ホウ素および/またはアルミニウムを含むことができ、Yは、ケイ素および/またはゲルマニウムを含むことができる。
【0031】
さらなる実施形態または別の実施形態では、EMM−26は、合成されたままの形態で、
mM:bQ:cX:YO:zH
[式中、Mは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり;Qは、1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンおよび1,6−ビス(N−メチル−ピペリジニウム)ヘキサンジカチオンの1種類以上から選択される有機構造指向剤であり、Xは、三価元素であり、Yは、四価元素であり、mは、0以上で0.1以下の値を有する数であり、bは、0を超え0.10以下の値を有する数であり、0.015<c<0.125であり、zは、0以上で0.15以下の値を有する数である]
の組成を有することができる。ある実施形態では、Xは、ホウ素および/またはアルミニウムを含むことができ、Yは、ケイ素および/またはゲルマニウムを含むことができる。
【0032】
上記有機構造指向剤の中で、1,6−ビス(N−メチル−ピロリジニウム)ヘキサンジカチオンは、以下の構造式:
【化1】
を有し、1,6−ビス(N−メチルピペリジニウム)ヘキサンジカチオンは、以下の構造式:
【化2】
を有する。
【0033】
上記のジ第4級アンモニウム化合物は、周知の技術を用いて、それぞれ、N−メチルピロリジンおよびN−メチルピペリジンと、1,6−ジブロモヘキサンとの反応によって容易に合成することができる。
【0034】
新規結晶材料EMM−26は、水の供給源と、四価元素Y、好ましくはケイ素および/またはゲルマニウムの酸化物の供給源と、三価元素X、好ましくはホウ素および/またはアルミニウムの酸化物の供給源と、1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンおよび1,6−ビス(N−メチルピペリジニウム)ヘキサンジカチオンの1種類以上から選択される構造指向剤(Q)の供給源とを含む反応混合物から調製することができる。
【0035】
四価元素Yの適切な供給源は、選択される元素Yによって決定することができ、Yがケイ素および/またはゲルマニウムを含む、またはそれらである好ましい実施形態では、供給源としては、シリカ、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、アルカリ金属シリケート、あるとケイ酸テトラアルキル、酸化ゲルマニウムなどのコロイド懸濁液、またはそれらの組合せを挙げることができる。三価元素Xの適切な供給源も同様に、選択される元素によって決定され、Xがホウ素および/またはアルミニウムを含む、またはそれらである場合、ホウ酸および水溶性ホウ酸塩、アルミナ水和物および硝酸アルミニウムなどの水溶性アルミニウム塩など、ならびにそれらの組合せを挙げることができる。これに加えて、またはこれとは別に、XおよびYの複合的な供給源を使用することができ、そのようなものとしては、たとえば、アルミノシリケートゼオライト、たとえばゼオライトY、および粘土もしくは処理粘土、たとえばメタカオリンを挙げることができる。
【0036】
Qの好適な供給源は、関連のジ第4級アンモニウム化合物の水酸化物、塩化物、臭化物、および/またはその他の塩である。
【0037】
ある実施形態では、反応混合物は、存在する場合には、ハロゲン化物(Hal)イオン、好ましくは塩化物イオンおよび/またはフッ化物イオンの1種類以上の供給源を含むことができる。このような実施形態では、反応混合物は、酸化物のモル比に関して以下の範囲内の組成を有することができる。
【0038】
【表9】
【0039】
ある実施形態では、反応混合物は、水酸化物イオンの1種類以上の供給源を含むことができる。このような実施形態では、反応混合物は、酸化物のモル数に関して以下の範囲内の組成を有することができる。
【0040】
【表10】
【0041】
反応混合物は、前回の合成によるEMM−26などの結晶材料の種結晶を、望ましくは反応混合物の約0.01重量ppm〜約10,000重量ppm、たとえば約100重量ppm〜約5,000重量ppmの量で含有することもできる。
【0042】
上記合成混合物からのEMM−26の結晶化は、静的条件または撹拌条件のいずれかで、たとえば、ポリプロピレン瓶、またはテフロンでライニングされたオートクレーブもしくはステンレス鋼オートクレーブなどの適切な反応容器中、約100℃〜約200℃、たとえば約130℃〜約180℃の温度で、使用される温度で結晶化が起こるのに十分な時間、たとえば約2時間〜約168時間または約5日〜約40日の間で、行うことができる。その後、結晶を液体/混合物から分離し、回収することができる。
【0043】
本発明の方法によって生成された合成されたままのEMM−26は、その合成に使用された有機指向剤Qの一部またはすべてを除去するために、後に処理を行うことができる。これは、合成されたままの材料を少なくとも約370℃の温度で少なくとも約1分、一般には約24時間以下加熱することができる熱処理によって好都合に行うことができる。この熱処理に大気圧よりも低い圧力および/または大気圧よりも高い圧力を使用することができるが、好都合であるという理由で大気圧が典型的には望ましくなりうる。熱処理は最高約925℃の温度で行うことができる。これに加えて、またはこれとは別に、オゾンを用いた処理によって有機指向剤Qを除去することができる(たとえば、Parikh et al.,Microporous and Mesoporous Materials 76(2004)17−22参照)。
【0044】
希望する程度まで、材料のX/YOモル比に応じて、合成されたままのEMM−26中の任意のアルカリ金属またはアルカリ土類金属のカチオンは、当技術分野において周知の技術により、別のカチオンとのイオン交換によって置換することができる。好ましい置換用カチオンとしては、金属イオン、水素イオン、水素前駆体、たとえば、アンモニウムイオン、およびそれらの混合物を挙げることができる。特に好ましいカチオンとしては、ある種の炭化水素変換反応の触媒活性を調整するカチオンを挙げることができる。このようなものとしては、水素、希土類金属、および元素周期表の2族から15族の金属を挙げることができるが、これらに限定されない場合もある。本明細書において使用される場合、周期表の族に関する番号付け方式は、Chemical and Engineering News,63(5),27(1985)に開示されるような方式である。
【0045】
本発明の生成物は、水素化−脱水素の機能を行うことができる場合に、モリブデン、レニウム、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、および/または白金もしくはパラジウムなどの貴金属などの水素化成分と密接に組み合わせることができる。このような成分は、共結晶化によって、三価元素X、たとえばアルミニウムが構造中に存在する程度で組成物中に交換することによって、組成物の内部に含浸させることによって、組成物と物理的に密接に混合することによって、または当業者に周知のあらゆる適切な方法によって組成物中に存在させることができる。このような成分は、たとえば白金の場合は白金金属含有イオンを含有する溶液でシリケートを処理することなどによって、生成触媒組成物中/上に含浸させることができる。したがって、この目的に適切な白金化合物としては、クロロ白金酸、塩化第一白金、および白金アミン錯体を含有する種々の化合物が挙げられる。
【0046】
本発明の結晶材料は、収着剤としておよび/または触媒として使用される場合、典型的には少なくとも部分的に脱水すべきである。これは、約200℃〜約370℃の範囲内の温度に、空気、窒素などの雰囲気中、大気圧、大気圧よりも低い圧力、または大気圧よりも高い圧力で、約30分〜約48時間の間加熱することによって行うことができる。これに加えて、またはこれとは別に、脱水は、単にEMM−26を真空中に置くことによって室温(約20〜25℃)で行うことができるが、十分な量の脱水を行うためにはより長い時間が必要となりうる。
【0047】
本明細書に記載のEMM−26は、たとえば、二酸化炭素と、メタン、エタン、プロパン、および/またはブタンなどの1種類以上のアルカンとを含む混合物、および/または二酸化炭素と、酸素、窒素、HS、SO、および/またはNO。とを含む混合物からの二酸化炭素の分離における収着剤として使用することができる。この分離方法は、混合物の他の成分に対する二酸化炭素に関するEMM−26の平衡選択性、EMM−26の動的選択性、またはEMM−26の平衡選択性と動的選択性との両方を使用することができる。特に、BのSiOに対するモル比が約0.125〜約0.033であるEMM−26材料は、典型的にはCOに対して約1気圧(約100kPa)で約0.8mmol/g〜約2.0mmol/gの収着能を有することができる。これは別に、またはこれに加えて、特にそのアルミノシリケート形態では、EMM−26は、現在多くの商業的/工業的に重要なものなどの1種類以上の有機化合物変換プロセスを促進する触媒として使用することができる。
【0048】
有機化合物(炭化水素)変換プロセスに使用される多くの触媒の場合と同様に、本発明のEMM−26を、有機変換プロセスに使用される温度およびその他の条件に対して抵抗性である別の材料と組み合わせることが望ましい場合がある。このような材料としては、活性および不活性の材料、および合成もしくは天然のゼオライト、ならびに粘土、シリカ、および/またはアルミナなどの金属酸化物などの無機材料を挙げることができる。最後のものは、天然のもの、またはシリカと金属酸化物との混合物を含むゲル状沈殿物もしくはゲルの形態のいずれであってもよい。本発明のEMM−26と組み合わされる、すなわち、新しい結晶の合成中に組み合わされる、および/または存在する材料であって、活性である材料を使用することによって、特定の有機変換プロセスにおける触媒の反応率および/または選択性が変化する傾向が生じることがある。不活性材料は、特定のプロセスの変換量を制御するための希釈剤として適切に機能することがあり、それによって、反応速度を制御する別の(より費用のかかる)手段を使用することなく、経済的で秩序立った方法で生成物を得ることができる。商業的な運転条件下での触媒の粉砕強度を改善するために、これらの材料を天然の粘土、たとえば、ベントナイトおよびカオリンの中に混入することができる。上記材料、すなわち、粘土、酸化物などは、触媒のバインダーとして機能することができる。商業的使用では触媒が粉末状材料に崩壊(摩滅)するのを防止することが望ましい場合があるので、良好な粉砕強度を有する触媒が得られることが望ましい場合がある。これらの粘土および/または酸化物のバインダーは、通常は、触媒の粉砕強度を改善する目的でのみ使用されている。
【0049】
本発明のEMM−26と複合材料を形成できる天然の粘土としては、限定するものではないが、モンモリロナイトおよびカオリンのファミリーを挙げることができ、これらのファミリーには、サブベントナイト(subbentonite)、ならびにDixie粘土、McNamee粘土、Georgia粘土、およびFlorida粘土として一般に知られているカオリン、または主要無機成分がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、またはアナウキサイトであるその他のものが含まれる。このような粘土は、最初に採掘された未加工の状態で使用することができるし、または焼成、酸処理、もしくは化学的改質を最初に行うこともできる。EMM−26と複合材料を形成するのに有用なバインダーは、これに加えて、またはこれとは別に、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ベリリア、アルミナ、およびそれらの混合物などの無機酸化物を含むことができる。
【0050】
上記材料とは別に、またはこれに加えて、本発明のEMM−26は、多孔質マトリックス材料、たとえばシリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニア、および/または1種類以上の三元組成物、たとえばシリカ−アルミナ−トリア、シリカ−アルミナ−ジルコニア、シリカ−アルミナ−マグネシア、およびシリカ−マグネシア−ジルコニアと複合材料を形成することができる。
【0051】
EMM−26および無機酸化物マトリックスの相対的比率は、EMM−26含有量が約1重量%〜約90重量%の範囲、より通常では、特に複合材料がビーズの形態で調製される場合、複合材料の約2重量%〜約80重量%の範囲内となる、広範囲で変動させることができ。代表的なマトリックスの含有量範囲は約10重量%〜約50重量%を含むことができる。
【0052】
これに加えて、またはこれとは別に、本発明は、有利には、以下の実施形態の1つ以上を含むことができる。
【0053】
実施形態1
架橋原子によって連結された四面体原子(T)の骨格を有する合成結晶材料(synthetic crystalline material)であって、前記四面体原子の骨格が、表1に示されるように最近接四面体(T)原子(nearest tetrahedral (T) atoms)を連結することによって規定されている、合成結晶材料。
【0054】
実施形態2
架橋原子によって連結された四面体原子(T)の骨格を有する合成結晶材料であって、前記四面体原子の骨格が、表2に列挙されるオングストローム(Å)の(単位での)原子座標を有する単位格子によって規定されていて、各座標位置は、±1オングストロームの範囲内で変動し得る、合成結晶材料。
【0055】
実施形態3
焼成されたままの形態で、表4に列挙される面間隔dおよび相対強度を含むX線回折パターンを含む、合成多孔質結晶材料(synthetic porous crystalline material)。
【0056】
実施形態4
合成されたままの形態で、表3に列挙される面間隔dおよび相対強度を含むX線回折パターンを含む、合成多孔質結晶材料。
【0057】
実施形態5
前記四面体原子が、Li、Be、B、Al、P、Si、Ga、Ge、Zn、Cr、Mg、Fe、Co、Ni、Cu、Mn、As、In、Sn、Sb、TiおよびZrからなる群から選択される1種類以上の元素、例えばB、AlおよびSiからなる群から選択される1種類以上の元素を含む、上記実施形態のいずれか1つに記載の結晶材料。
【0058】
実施形態6
前記架橋原子が、O、N、F、S、SeおよびCからなる群から選択される1種類以上の元素を含む、例えば酸素を含む、上記実施形態のいずれか1つに記載の結晶材料。
【0059】
実施形態7
以下の組成:
aHal:bQ:cX:YO:zH
[式中、Halは、ハロゲン化物イオンであり;Qは、1,6−ビス(N−メチル−ピロリジニウム)ヘキサンジカチオンおよび1,6−ビス(N−メチルピペリジニウム)ヘキサンジカチオンの1種類以上から選択される有機構造指向剤であり、Xは、三価元素であり、Yは、四価元素であり、aは、0以上で0.2以下の値を有する数であり、bは、0を超え0.10以下の値を有する数であり、0.015<c<0.125であり、zは、0以上で0.15以下の値を有する数である]
を有する、実施形態1〜2および4〜6のいずれか1つに記載の結晶材料。
【0060】
実施形態8
以下の組成:
mM:bQ:cX:YO:zH
[式中、Mは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり;Qは、1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンおよび1,6−ビス(N−メチルピペリジニウム)ヘキサンジカチオンの1種類以上から選択される有機構造指向剤であり、Xは、三価元素であり、Yは、四価元素であり、mは、0以上で0.1以下の値を有する数であり、bは、0を超え0.10以下の値を有する数であり、0.015<c<0.125であり、zは、0以上で0.15以下の値を有する数である]
を有する、実施形態1〜2および4〜6のいずれか1つに記載の結晶材料。
【0061】
実施形態9
Xがホウ素を含み、Yがケイ素を含み、必要に応じて、BのSiOに対するモル比が約0.125〜約0.033であり、必要に応じて、COに対する約1気圧(約100kPa)における収着能(sorption capacity)が約0.8mmol/g〜約2.0mmol/gである、実施形態7または実施形態8に記載の結晶材料。
【0062】
実施形態10
上記実施形態のいずれからも独立した結晶材料または上記いずれか1つの実施形態に記載の結晶材料の調製方法であって、
(a)水の供給源と、四価元素Yの酸化物の供給源と、三価元素Xの酸化物の供給源と、必要に応じてハロゲン化物イオンの供給源と、必要に応じて水酸化物イオンの供給源と、1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンおよび1,6−ビス(N−メチルピペリジニウム)ヘキサンジカチオンの1種類以上から選択される構造指向剤(Q)の供給源とを含む反応混合物を提供する工程(又はステップ)と、
(b)100℃〜200℃の温度を含む結晶化条件下で、前記結晶材料の結晶が形成されるまで、前記反応混合物を加熱する工程(又はステップ)と、
(c)前記工程(b)で生成した結晶を回収する工程(又はステップ)と、
必要に応じて、(d)前記構造指向剤(Q)の少なくとも一部を除去するために、前記工程(c)で回収した結晶を処理する工程(又はステップ)と
を含む、方法。
【0063】
実施形態11
実施形態10に記載の方法(又はプロセス)によって製造される合成多孔質結晶材料。
【0064】
実施形態12
二酸化炭素と、アルカン、酸素、窒素、HS、SOおよびNOの1種類以上とを含む混合物から二酸化炭素を分離するための方法(又はプロセス)であって、前記混合物を、実施形態1〜9および11のいずれか1つ以上に記載の多孔質結晶材料と接触させること(又は工程もしくはステップ)を含む、方法(又はプロセス)。
【0065】
実施形態13
二酸化炭素およびメタンを含む混合物から二酸化炭素を分離するための方法(又はプロセス)であって、前記混合物を、実施形態1〜9および11のいずれか1つ以上に記載の多孔質結晶材料と接触させる、方法(又はプロセス)。
【0066】
以下の実施例および添付の図面を参照しながら、これより本発明をより詳細に記載する。
【実施例】
【0067】
実施例1
ホウ素源としてのホウ酸、シリカ源としてのLudox AS−40(商標)、ハロゲン化物イオン源としてのHCl、および構造指向剤Qとしての水酸化1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンを使用して、Q/Si≒0.2;Si/B≒5;HCl/Si≒0.10;およびHO/Si≒35のモル比の反応混合物を密封した約1.5mLのステンレス鋼反応容器中で調製した。
【0068】
反応混合物を対流オーブン中、タンブリング条件下(約30rpm)、約160℃で約56日間加熱した。試料を、一連の3回の遠心分離、デカンテーション、最懸濁、および脱イオン水での洗浄によって処理した。生成物の粉末XRDによって図1のパターンが得られ、生成物がEMM−26の新しい相と、非晶質材料および少量のゼオライトβの不純物との混合物であることが示された。図2は、この生成物のSEM画像であり、生成物が長さ約5ミクロン、幅約1〜2ミクロン、および厚さ約0.3ミクロンの大型結晶を含むことを示している。
【0069】
実施例2
水酸化1,6−ビス(N−メチルピペリジニウム)ヘキサンを構造指向剤Qとして使用し、HClは反応混合物には加えず、反応混合物を約28日間加熱したことを除けば、実施例1を繰り返した。生成物の粉末XRD(図3)は、生成物が実施例1で観察したEMM−26の新しい相の純粋な形態であることを示した。粉末XRDパターンはa≒19.43、b≒15.75、およびc≒17.85ÅのC中心斜方晶系格子に帰属することができた。
【0070】
実施例3
水酸化1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサン(約25.8重量%)の約1.67グラムの溶液と約5.39グラムの脱イオン水とを、約23mLの鋼製Parrオートクレーブのテフロンライナーの内側で混合した。次に、約0.19グラムのホウ酸を上記溶液に加え、ほぼ完全に溶解するまで混合した。次に約2.25gのLudox AS−40(商標)を上記混合物に加え、約1.50グラムの約1NのHClを加えて混合して、Q/Si≒0.1;Si/B≒5;HCl/Si≒0.10;およびHO/Si≒35のモル組成を有する比較的均一な懸濁液を形成した。
【0071】
実施例1で調製した約0.04グラムの種結晶を上記懸濁液に加え、ライナーに蓋をして、約23mLオートクレーブの内部を密封し、タンブリング条件下(約40rpm)で約160℃に加熱した。約14日後に反応器を取り出し、冷却し、固形分を濾過によって分離し、脱イオン水で徹底的に洗浄し、乾燥させ、粉末XRDによる分析を行った。図4(下のXRDパターン)は、EMM−26の新しい相の粉末回折パターンを示しており、図5はその相のSEM画像を示している。
【0072】
実施例3の製造されたままの生成物の一部を、窒素雰囲気下、マッフル炉中で、約4℃/分で周囲温度(約20〜25℃)から約400℃まで加熱し、次に空気中約4℃/分で約550℃まで加熱し、次に空気中で約550℃で約2時間維持した。図4の中央のXRDパターンは、焼成後に回折強度が大きな減少、およびピーク位置の移動を示していることが分かる。にもかかわらず、焼成後に粉末回折パターンの残存が観察された。
【0073】
ふさがれた有機物をゼオライト構造から分解/除去するために、実施例3の製造されたままの生成物の別の一部をオゾンで処理した。オゾン発生器から約3500cm/分の空気流が起こられる水平管炉中に生成物の薄い層を配置した。オゾン発生器は約1%のオゾンを有する空気流を発生させた。生成物をオゾン含有流の存在下で周囲温度(約20〜25℃)から約300℃まで約30分間で加熱した。温度を約300℃で約4時間維持し、オゾンの発生を停止し、次に炉を室温(約20〜25℃)まで冷却した。図4の上のXRDパターンは、オゾン処理した生成物の粉末回折パターンを示している。これによるとオゾン処理した材料のパターン中のピークが、製造されたままの材料のピークと同様の位置にあることが分かる。製造されたままの材料およびオゾン処理した材料の両方のパターンは同様のC中心斜方晶系単位格子に帰属できた。図6は、新しいEMM−26相の製造されたままのものおよびオゾン処理したものの11B MAS NMRスペクトルを示している。−3.3ppm付近の共鳴は、四面体配位ホウ素によるものと考えられ、11.5ppm付近を中心とする幅広の特徴は非四面体配位ホウ素によるものと考えられる。オゾン処理後にホウ素の約53%が非四面体であることが分かった。
【0074】
実施例4
約23mLの鋼製Parrオートクレーブ用の風袋を測ったテフロンライナー中で、約0.99グラムのテトラメチルオルトシリケートおよび約2.93グラムの水酸化1,6−ビス(N−メチル−ピロリジニウム)ヘキサンの水酸化物溶液([OH]≒1.11mmol/g)を互いに混合した。得られた懸濁液を約20分間部分的に加水分解させ、次に約0.13グラムの約50%HF溶液および約0.033グラムのホウ酸を加えて混合して、比較的均一なペーストを形成した。このテフロンライナーを排気したフード中に入れて、終夜(約8〜16時間)蒸発させた。次に、追加の脱イオン水を混合物に加えて、HO/Siのモル比を約10に調節した。実施例3の製造されたままの生成物の約0.01グラムの種結晶を加えてQ/Si≒0.25;Si/B≒12;F/Si≒0.5;およびHO/Si≒10の組成を有するゲルを生成した。
【0075】
テフロンライナーに蓋をして、鋼製Parrオートクレーブ中に密封して、次に約23mLのタンブリング(約50rpm)オートクレーブ中約150℃で約22日間加熱した。次にオートクレーブをオーブンから取り出し、周囲温度(約20〜25℃)まで冷却した。固形分を濾過によって分離し、脱イオン水で徹底的に洗浄し、乾燥させ、粉末XRDによる分析を行った。粉末XRDにより、試料が少量のゼオライトβを有するEMM−26であることが示された。図7は生成物のSEM画像を示している。
【0076】
実施例5
約7のHO/Siのモル比、および約20のSi/Bのモル比で合成を行い、反応混合物を約175℃で約14日間加熱したことを除けば実施例4を繰り返した。粉末XRDにより、生成物がEMM−26およびゼオライトβの混合物であることが示された。
【0077】
実施例6
約12のSi/Bのモル比を使用し、反応混合物を約7日間のみ加熱したことを除けば実施例5を繰り返した。粉末XRD(図8)は、生成物が純粋なEMM−26であることを示している。図9は生成物のSEM画像を示している。これらの画像中の結晶は、図5および図7中の結晶よりも全体的に厚かった。
【0078】
実施例7
シリカ−CHAおよびシリカ−DDRの骨格型のゼオライトの同等の収着能と比較した場合の、実施例3の焼成されたままのEMM−26生成物のCO、CH、およびNに対する相対収着能に関して一連の実験を行った。測定前、ゼオライトは、約400℃において真空(たとえば、約0.01torr以下)下でガスを放出させた。QuantachromeInstrumentsの自動容量測定機器Autosorb−1(商標)中で収着等温線を測定した。
【0079】
結果を図10に示しており、収着取込値は乾燥試料の重量を基準としている。さらに、表5は、それぞれのガスの約800torrの分圧において試験した各ゼオライトの平衡CO/CH収着選択性(SCO2/CH4)および平衡CO/N収着選択性(SCO2/N2)を列挙している。
【0080】
【表11】
【0081】
実験データは、COがEMM−26の細孔構造に到達することを示しており、測定されたように、EMM−26の平衡CO/CHおよびCO/N収着選択性は、シリカDDRおよびシリカCHAのゼオライトの場合の対応する値よりも大きいことが分かった。
【0082】
実施例8
実施例6の焼成されたままのEMM−26生成物を用いて実施例7の収着実験をくりかえした。両方の実験の組の結果を図11にプロットしており、試料Aは実施例3の生成物に対応し、試料Bは実施例6の生成物に対応する。実施例6の生成物は実施例3の生成物よりも高い収着能を有するであろうことが分かった。
【0083】
実施例9
EMM−26構造中のCOおよびCHの拡散を、“Diffusion in Nanoporous Materials”,J.Karger,D.N.Ruthven,D.N.Theodorou,Wiley−VCH,2012 p.227[Karger et al.]に記載されるような確立された方法に従って分子動力学シミュレーションを用いてモデル化した。平衡分子動力学シミュレーションをNVTアンサンブルにおいてNoseサーモスタットを用いて種々の温度で行った。CO分子の分子モデルは、J.J.Potoff,J.I.Siepmann,AIChE Journal,47(2001),1676から得られ、CH分子の分子モデルはC.D.Wick,M.G.Martin,J.L.Siepmann,J.Phys.Chem.B 104(2000)8008から得られた。O.Talu,A.L.Myers,Colloids and Surfaces A:Physicochem.Eng.Aspects 187−188(2001)83に記載されるようなゼオライト骨格との相互作用を使用し、ローレンツ−ベルテロの結合則を使用した。ゼオライト骨格上の電荷はSi(+2)およびO(−1)であることを確認した。アインシュタインの関係式[Karger et al.参照]を用いて分子の平均二乗変位から自己拡散係数を計算した。シミュレーションによって、周囲温度(約300°K)および低充填量(<約1mmol/g)におけるCOの拡散率が1E−10m/秒および1E−9m/秒の間であると予測された。シミュレーションによってはるかに遅いCHの拡散率が予測された。CHの推定拡散率は1E−13m/秒のオーダーであった。シミュレーションは剛性骨格構造を用いて行った。たとえばR.Awati,P.I.Ravikovitch,D.S.Sholl,J.Phys.Chem.C 117(2013)13462に開示されるように、より現実的な可撓性の骨格モデルを用いた場合、CHの拡散率は1e−12m/秒〜1e−11m/秒のオーダーとなると予測される。シミュレーション結果は、EMM−26は、速度論的に高い選択性となるはずであり、CO対CHの拡散率の比として定義される分離係数が約10を超え、より多くの場合で約100を超え、可能であれば、さらに約500を超えることを示唆している。
【0084】
特定の実施形態を参照して本発明を記載し説明してきたが、当業者であれ、本発明が、必ずしも本明細書に示されていない変形形態に役立つことを理解されよう。このため、本発明の真の範囲を決定するためには添付の請求項のみを参照すべきである。
図1
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【国際調査報告】